JP6562690B2 - イオン伝導性ゲル電解質 - Google Patents

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Description

本発明は、イオン伝導性ゲル電解質に関する。
非水系電解液を含む非水系二次電池は、軽量、高エネルギー、及び長寿命であることが大きな特徴であり、例えば、ノートブックコンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の携帯用電子機器電源として広範囲に用いられている。また、低環境負荷社会への移行に伴い、ハイブリッド型電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、「HEV」)及びプラグインHEV(Plug−in Hybrid Electric Vehicle、「PHEV」)の電源、住宅用蓄電システム等の電力貯蔵分野においても注目されている。
自動車等の車両、及び住宅用蓄電システムに非水系二次電池を搭載する場合、高温環境下におけるサイクル性能、長期信頼性等の観点から、電池の構成材料には、化学的及び電気化学的な安定性、強度、耐腐食性等に優れた材料が求められる。更に、非水系二次電池は、携帯用電子機器電源とは使用条件が大きく異なり、寒冷地においても作動しなければならない。このことから、低温環境下における高出力性能及び長寿命性能も必要物性として求められる。また、車両及び住宅用の蓄電システムでは、使用する電解液量がモバイル用途と比較して極めて多くなるため、電解液の漏洩、電解液への引火等への配慮といった安全性が問題となる。更に、車両及び住宅用の蓄電システムに非水系二次電池を用いるためには、電極合剤を厚目付化することによる高容量化とともに、低コスト化が要求されている。
以上のような事情の下、非水系二次電池の分野における上記の要求を満たすために、高いイオン伝導度を示すとともに、高度の安全性を有する非水系電解液の開発が求められている。
リチウムイオン二次電池においては、電解液の耐漏洩性の改善、及び電解液に用いられている揮発性有機溶媒の引火点の上昇を目的として、ポリマーに電解液を含浸させて膨潤させたポリマー電解質の適用が試みられている。例えば、特許文献1には、4官能以上の多官能モノマーとカーボネート基を有するモノマーとから成る液状混合物に無機酸化物を含ませることにより、膜強度が高く、耐漏洩性に優れたゲル状ポリマー電解質、及び該ポリマー電解質を用いたポリマー電解質電池を提供する手法が開示されている。しかし、従来技術におけるポリマー電解質は、電解液と比較してイオン伝導度が低いため、低出力用途に応用が限られる。
これに対して、電解液に有機ゲル化剤を微量添加して電解液をゲル化させたゲル電解質が、液状の電解質と同等の高イオン伝導度と、耐漏洩性と、の双方を兼ね備えるものとして検討されている。
例えば、特許文献2には、カーボネート系の溶媒を含有する電解液に対して、低分子量の有機ゲル化剤を微量添加して得られるゲル状の電解液の使用によって、有機ゲル化剤未添加の場合と同等のイオン電導度を維持しつつ、耐漏洩性を備える技術が開示されている。
このように、電解液に有機ゲル化剤を添加して得られるゲル電解質は、耐漏液性の向上に対して、一定の寄与を示しつつある。
しかしながら、従来技術におけるゲル電解質は、イオン伝導度が未だ不十分であり、車両及び住宅用蓄電システムに適用するためには、更なるイオン電導度の向上が望まれている。
特開2002−252031号公報 国際公開第2010/095572号
本発明は、車両及び住宅用蓄電システムに使用される非水系二次電池にも用いることが可能であり、高度の耐漏液性とともに高いイオン電導度を示す、ゲル電解質の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、アセトニトリルとリチウム塩とを含有する非水系電解液に対して、特定のゲル化剤を添加して得られるゲル電解質が、従来技術におけるゲル電解質と比較して、高い耐漏液性を示しつつ、高度のイオン電導度を達成し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1] アセトニトリル40〜100体積%を含む非水系溶媒、及びリチウム塩を含有する非水系電解液と、
下記一般式(1)
Figure 0006562690
{式中、Arは置換又は非置換の核原子数5〜30の2価の芳香族基を示し、
は飽和又は不飽和の炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示し、
mは2〜16の整数を示し、そして
pは0〜6の整数を示す。}で表される化合物と、
を含有することを特徴とする、イオン伝導性ゲル電解質。
[2] 前記Arは置換又は非置換の核原子数8〜20の2価の芳香族基である、[1]に記載のイオン伝導性ゲル電解質。
[3] 前記Arは、ビフェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基、及びアントラニレン基からなる群より選ばれる基である、[1]又は[2]に記載のイオン伝導性ゲル電解質。
[4] 前記リチウム塩は、リチウムビス(オキサラト)ボレートを含有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のイオン伝導性ゲル電解質。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載のイオン電導性ゲル電解質と、
リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料から成る正極活物質を含有する正極と、
リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料、並びに金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料から成る負極活物質を含有する負極と、
を備えることを特徴とする、リチウムイオン二次電池。
本発明によれば、優れた電解液の耐漏洩性と、高いリチウムイオン拡散性とを同時に実現するゲル電解質が提供される。該ゲル電解質は、例えば、車両及び住宅用蓄電システムに使用される非水系二次電池に、好適に適用可能である。
本実施形態の高イオン伝導性ゲル電解質を用いた非水系二次電池の構成の一例を概略的に示す平面図である。 図1の非水系二次電池のA−A線断面図である。 実施例における「電解液の耐漏洩性試験」の実験操作を説明するための参考断面図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて記載される数値範囲は、その前後に記載される数値を含むものである。
本実施形態のイオン伝導性ゲル電解質は、アセトニトリル40〜100体積%を含む非水系溶媒、及びリチウム塩を含有する非水系電解液と、
特定のゲル化剤と、
を含有するイオン伝導性ゲル電解質である。ここで記載するゲル電解質は、非水系溶媒とリチウム塩とを含有する非水系電解液(以下、単に「電解液」ともいう。)に少量のゲル化剤を添加して、前記電解液がゲル化又は固化してなるものとされる。該ゲル電解質は、例えばリチウムイオン二次電池用の電解質として好適に使用することができる。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極及び負極とともに、上記ゲル電解質を備える二次電池である。より具体的には、例えば、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料から成る正極活物質を含有する正極と、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な負極材料並びに金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料から成る負極活物質を含有する負極と、を備えるリチウムイオン二次電池等が挙げられる。
本実施形態の非水系二次電池の一例を、図1及び図2に示した。図1はリチウムイオン二次電池を模式的に表す平面図であり、図2は図1のA−A線断面図である。
リチウムイオン二次電池100は、2枚のアルミニウムラミネートフィルムで構成したラミネートフィルム外装体110の領域120内に、正極150と負極160とを、セパレータ170を介して積層して構成した積層電極体を収納して成る。この積層電極体中に、ゲル電解質(図示しない)を収容している。アルミニウムラミネートフィルム外装体110は、その外周部において、上下のアルミニウムラミネートフィルムを熱融着することにより封止されている。領域120は、外装体120の一部であって、正極150、負極160、及びセパレータ170から成る積層体を収納するために、膨らんだ空間である。
正極150及び負極160は、外部回路と接続するためにアルミニウム製タブ130及びニッケル製タブ140に、それぞれ電気的に接続されている。なお、図2においては、図面が煩雑になることを避けるために、アルミニウムラミネートフィルム外装体110を構成している各層、並びに正極150及び負極160の各層を区別して示していない。リチウムイオン二次電池100において、電解質を除く各部材としては、従来のリチウムイオン二次電池に備えられるものを用いることができ、例えば後述のものであってもよい。また、セパレータ170は短絡防止の観点からあることが望ましいが、無くとも本発明内容を実施発現することは可能である。
<1.ゲル化剤>
本実施形態に関わるゲル化剤は、上記一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」と表記する。)である。該化合物(1)は、下記に記載の非水系溶媒に少量を添加することにより、該非水系溶媒をゲル化又は固化することが可能である。
化合物(1)が含まれる割合は、電解液全量に対して、好ましくは0.3〜10質量%、より好ましくは0.4〜7質量%である。化合物(1)がこの範囲で添加されることによって、電解液のイオン伝導率が、より高い状態に維持されるとともに、電解質がゲル化又は固体されるため、金属の局所的な析出を抑制できると考えられる。
化合物(1)は、ペルフルオロアルキル(オリゴメチレン)スルホニル基と、炭化水素オキシ基と、を有する芳香族化合物である。
一般式(1)において、Arは置換又は非置換の核原子数5〜30の2価の芳香族基を示す。この2価の芳香族基は、いわゆる「芳香族性」を示す環式の2価の基であればよい。この2価の芳香族基は、炭素環式の基であっても複素環式の基であってもよい。これらの2価の芳香族基は、置換基により置換されていてもよく、置換されていない非置換のものであってもよい。2価の芳香族基の置換基は、後述のペルフルオロアルキル(オリゴメチレン)チオ基の導入及び炭化水素オキシ基の導入を容易に可能にする観点から選ぶこともできる。2価の芳香族基の置換基は、化合物(1)の溶解温度及びゲル化能の観点から選ぶこともできる。
上記2価の芳香族基が炭素環式の基である場合、該炭素環式の基は、その核原子数が6〜30であることが好ましい。該炭素環式の基は、置換基により置換されていてもよく、置換されていない非置換のものであってもよい。該炭素環式の基の具体例としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基、フェナンスリレン基、ピレニレン基、クリセニレン基、及びフルオランテニレン基に代表される、炭素環核を有する2価の基が挙げられる。
上記2価の芳香族基が複素環式の基である場合、該複素環式の基は、その核原子数が5〜30である。該炭素環式の基の具体例としては、例えば、ピローレン基、フラニレン基、チオフェニレン基、トリアゾーレン基、オキサジアゾーレン基、ピリジレン基、及びピリミジレン基に代表される、複素環核を有する2価の基が挙げられる。
一般式(1)におけるArは、原料入手の容易性及び合成容易性の観点、並びに電解液に対するゲル化能の観点から、置換又は非置換の核原子数8〜20の2価の芳香族基であると好ましく、ビフェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基、及びアントラニレン基からなる群より選ばれる基であるとより好ましい。
一般式(1)中のArに対する置換基としては、例えば、メチル基及びエチル基に代表されるアルキル基、並びにハロゲン原子が挙げられる。
は飽和又は不飽和の炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示す。該Rは、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基を有していてもよい。この炭化水素基が1価の脂肪族炭化水素基である場合、分岐していてもよく、分岐していなくてもよい。この炭化水素基が芳香族炭化水素基を有する場合、その芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。ただし、Rの炭化水素基は、化合物(1)が非水溶媒に溶解して該非水溶媒をゲル化又は固化させるために、化合物(1)を非水溶媒に溶解可能にする炭化水素基である必要がある。例えば、ベンジル基に代表されるアリールアルキル基等である。
の炭化水素基の炭素数が21以上であると、原料の入手が困難となる。Rで示される1価の炭化水素基は、本発明による上記の効果をより有効かつ確実に発現させるとの観点から、炭素数1〜14のアルキル基であると好ましく、炭素数5〜14のアルキル基であるとより好ましく、炭素数6〜10のアルキル基であると更に好ましい。Rは、ゲル化能とハンドリング性とのバランスの観点から、直鎖のアルキル基であると好ましい。
mは2〜16の整数を示し、4〜10の整数であると好ましい。mの範囲を上記の範囲にすることにより、化合物(1)はより高いゲル化能を示すとともに、合成が容易となり、ハンドリング性にも優れる化合物となる。C2m+1で表される基は直鎖状であることが好ましい。
化合物(1)のゲル化能の観点から、pは0〜6の整数を示し、2〜4の整数であると好ましい。C2pで表される基は、分岐を有さないことが好ましく、該非分岐のC2pがα位及びω位で結合していることがより好ましい。
化合物[1]としては、例えば、C13SO12OC17、C13SO12OC13、C13SOOC17、CSOOC1021、C1021SOOC13等を挙げることができる。上記において、(1)式中のC2m+1に相当する基は直鎖状であることが;
(1)式中のC2pに相当する基は、直鎖状であって、α位及びω位で結合していることが;
上記のC基はp−フェニレン基であることが;
式(1)中のRに相当する基は直鎖状であることが;
それぞれ好ましい。
化合物(1)は、有機化学合成における常法を、当業者の知識に従って適宜に組み合わせることにより、製造することが可能である。化合物(1)の製造では、例えば、水酸基とチオール基とを有する下記一般式(1a):
Figure 0006562690
{式中、Arは上記一般式(1)におけるのと同じ意味である。}で表される芳香族化合物(以下、「化合物(1a)」と表記する。)に対して、ペルフルオロアルキル(オリゴメチレン)チオ基、及び炭化水素オキシ基を順次に導入して、下記一般式(1’):
Figure 0006562690
{式中、Ar、R、m、及びpは、それぞれ、上記一般式(1)におけるのと同じ意味である。}で表される化合物(以下、「化合物(1’)」と表記する。)を得る。その後、更にペルフルオロアルキル(オリゴメチレン)チオ基におけるスルフィド基を酸化してスルホニル基に置換することにより、化合物(1)が製造される。
以下、化合物(1a)に対するペルフルオロアルキル(オリゴメチレン)チオ基の導入、次いで行われる炭化水素オキシ基の導入(化合物(1’)の製造)、及びスルフィド基のスルホニル基への酸化(化合物(1)の製造)について、順次に説明する。
[ペルフルオロアルキル(オリゴメチレン)チオ基の導入]
化合物(1a)を、例えばテトラヒドロフラン(THF)等の適当な溶媒に溶解し、ペルフルオロアルキル(オリゴメチレン)基を有する下記一般式(1b):
Figure 0006562690
{式中、Xはハロゲン原子であり、m及びpは、それぞれ、上記一般式(1)におけるのと同じ意味である。}で表されるハロゲン化化合物と反応させる。この反応は、好ましくはアミン等の塩基の存在下で行われる。Xのハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子が挙げられ、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
反応終了後、反応系を塩酸で中和し、溶媒及び未反応物質を留去すると、水酸基及びペルフルオロアルキル(オリゴメチレン)基を有する下記一般式(1c):
Figure 0006562690
{式中、Ar、m、及びpは、それぞれ、上記一般式(1)におけるのと同じ意味である。}で表される芳香族化合物(以下、「化合物(1c)」と表記する。)が生成する。
[炭化水素オキシ基の導入]
化合物(1c)を適当な溶媒に溶解した溶液に、ハロゲン化炭化水素と塩基とを加え、還流して反応させる。反応終了後、必要に応じて一旦濾過し、反応液から溶媒及び未反応物質を留去して、残渣をシリカゲルクロマトグラフにより精製する。こうして、炭化水素オキシ基が導入された化合物(1’)を得る。上記ハロゲン化炭化水素におけるハロゲン原子としては、化合物(1c)が有する水酸基OHとの反応性を有していればよく、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子が挙げられ、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
[スルフィド基のスルホニル基への酸化]
化合物(1’)を適当な溶媒に溶解した溶液に、適当な酸化剤を加えて、加熱しながら撹拌して酸化反応を行う。ここで使用される酸化剤としては、例えば過酸化水素水等が挙げられる。反応終了後、エーテル及び水を用いて抽出分離をし、水相を除去した後、更に有機相から溶媒及び未反応物質を留去して、残渣をシリカゲルクロマトグラフにより精製する。こうして、化合物(1’)の有するスルフィド基がスルホニル基へ酸化され、化合物(1)を得ることができる。
ただし、化合物(1)の製造方法は、上記の方法に限定されるものではない。
<2.非水系電解液>
本実施形態に係る非水系電解液は、アセトニトリル40〜100体積%を含む非水系溶媒、及びリチウム塩を含有する。本実施形態の非水系電解液は、水分を含まないことが好ましい。しかし、本発明の課題解決を阻害しない範囲であれば、ごく微量の水分を含有してもよい。そのような水分の含有量は、非水系電解液の全量に対して、0〜100ppmであってもよい。
<2−1.非水系溶媒>
本実施形態に関わる非水系電解液の溶媒はアセトニトリルを含有する。アセトニトリルの含有量は、非水系溶媒の全量に対して、40〜100体積%である。この値は、70〜100体積%であることが好ましく、85〜100体積%であることがより好ましい。非水系溶媒におけるアセトニトリルの含有量が上記の範囲内にあることによって、得られるリチウムイオン二次電池は、非水系二次電池としての基本的な機能を損なうことなく、アセトニトリルの優れた性能をより十分に発現することができ、サイクル性能、低温環境下における高出力性能、及びその他の電池特性のすべてを、より一層良好なものとすることができることとなる。
アセトニトリルと混合して用いられる非水系溶媒としては、特に制限はない。例えば、非プロトン性溶媒が挙げられ、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
そのような非水系溶媒の具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートに代表される環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンに代表されるラクトン;スルホラン、ジメチルスルホキシドに代表される硫黄化合物;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサンに代表される環状エーテル;メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートに代表される鎖状カーボネート;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、及びアクリロニトリルに代表されるモノニトリル;メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリルに代表されるアルコキシ基置換ニトリル;メチルプロピオネートに代表される鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタンに代表される鎖状エーテル等、並びにこれらのフッ素化物に代表されるハロゲン化物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
リチウムイオン二次電池の充放電に寄与するリチウム塩の電離度を高めるために、非水系溶媒は環状の非プロトン性極性溶媒を1種類以上含むことが好ましく、環状カーボネートを1種類以上含むことがより好ましい。また、リチウム塩の溶解性、伝導度、及び電離度という機能のすべてを良好にするために、2種以上の非プロトン性極性溶媒の混合溶媒であることが好ましい。この混合溶媒の成分となる非プロトン性極性溶媒としては、上記と同様のものを例示でき、混合溶媒の例としては、例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒が挙げられる。
<2−2.リチウム塩>
本実施形態の非水系電解液に含まれるリチウム塩としては、非水系二次電池の電解液に用いられているリチウム塩であればよい。無機リチウム塩であっても有機リチウム塩であっても特に制限はなく、いずれのものが含まれていてもよい。しかしながら、本発明においては、高いイオン電導度を実現するために、無機リチウム塩を含有することが好ましく、アセトニトリルの還元分解を抑制する観点から、有機リチウム塩を含有することが好ましい。従って最も好ましい態様は、無機リチウム塩と有機リチウム塩とが共存する場合である。ここで、「無機リチウム塩」とは、炭素原子をアニオンに含まず、アセトニトリルに可溶なリチウム塩をいい、「有機リチウム塩」とは、炭素原子をアニオンに含み、アセトニトリルに可溶なリチウム塩をいう。
本実施形態の非水系電解液におけるリチウム塩の含有割合としては、非水系溶媒1Lに対して、0.2mol以上であることが好ましく、0.5mol以上であることがより好ましく、0.8mol以上であることが更に好ましい。また、非水系溶媒1Lに対して、16mol以下であることが好ましく、5mol以下であることがより好ましく、3.8mol以下であることが更に好ましい。リチウム塩の濃度がこの範囲内にあることによって、電解液のイオン伝導性がより高い状態に保たれ、高い放電負荷特性及び低温下での高出力性が実現されると同時に、リチウムイオン二次電池の充放電効率もより高い状態に保たれる。
リチウム塩の具体例としては、例えば、LiN(SOCF、LiN(SO等のLiN(SO2m+1〔mは1〜8の整数〕で表される有機リチウム塩;LiPF(CF)等のLiPF(C2p+16−n〔nは1〜5の整数、pは1〜8の整数〕で表される有機リチウム塩;LiBF(CF)等のLiBF(C2s+14−q〔qは1〜3の整数、sは1〜8の整数〕で表される有機リチウム塩;LiB(Cで表されるリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB);ハロゲン化された有機酸を配位子とするボレートのリチウム塩;LiBF(C)で表されるリチウムオキサラトジフルオロボレート(LiODFB);LiB(Cで表されるリチウムビス(マロネート)ボレート(LiBMB);LiPF(C)で表されるリチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート等の有機リチウム塩;下記一般式(2a)、(2b)、及び(2c):
LiC(SO)(SO)(SO) (2a)
LiN(SOOR)(SOOR) (2b)
LiN(SO)(SOOR) (2c)
{式中、R、R、R、R、R、R、及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。}のそれぞれで表される有機リチウム塩等が挙げられる。
これらの有機リチウム塩の中でも、構造上安定であることからホウ素原子を有する有機リチウム塩が好ましい。また、有機配位子を有する有機リチウム塩は、該有機配位子が電気化学的な反応に関与してSolid Electrolyte Interface(SEI)と呼ばれる保護皮膜を電極表面に形成するため、正極を含めた内部抵抗の増加を抑制する観点から好ましい。そのような有機リチウム塩としては、具体的には、ハロゲン化された有機酸を配位子とするボレートのリチウム塩、LiODFB、及びLiBMBが好ましく、LiBOBが特に好ましい。
リチウム塩としては、無機リチウム塩を上記有機リチウム塩とともに使用してもよい。この無機リチウム塩としては、通常の非水系電解質として用いられているものであれば特に限定されず、いずれのものであってもよい。そのような無機リチウム塩の具体例としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl4、LiN(SOF)2、Li12FbH12−b〔bは0〜3の整数〕等の、炭素原子を含まない多価アニオンと結合されたリチウム塩が挙げられる。
これらの無機リチウム塩は、上記有機リチウム塩とともに、1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。中でも、無機リチウム塩としてフッ素原子を有する無機リチウム塩を用いると、正極集電体である金属箔の表面に不働態皮膜を形成するため、内部抵抗の増加を抑制する観点から好ましい。また、無機リチウム塩として、リン原子を有する無機リチウム塩を用いると、遊離のフッ素原子を放出し易くなることからより好ましく、LiPFが特に好ましい。
本実施形態の電解液における無機リチウム塩の含有量については、特に制限はないが、非水系溶媒1Lに対して0.2mol以上であることが好ましく、0.5mol以上であることがより好ましく、0.8mol以上であることが更に好ましい。また、非水系溶媒1Lに対して15mol以下であることが好ましく、4mol以下であることがより好ましく、2.8mol以下であることが更に好ましい。無機リチウム塩の含有量が上述の範囲内にある場合、イオン伝導度が増大して高出力特性を発現できる傾向にあり、アセトニトリルの優れた性能を維持しながら、貯蔵特性及びその他の電池特性を一層良好なものとすることができる傾向にある。
本実施形態における有機リチウム塩の非水系電解液への添加量は、その使用による効果をより良好に発現する観点から、非水系電解液の非水系溶媒1L当たりの量として、0.005mol以上であることが好ましく、0.02mol以上であることがより好ましく、0.05mol以上であることが更に好ましい。ただし、有機リチウム塩の非水系電解液中の量が多すぎると析出する恐れがある。よって、前記の有機リチウム塩の非水系電解液への添加量は、非水系電解液の非水系溶媒1L当たりの量として、1.0mol未満であることが好ましく、0.5mol未満であることがより好ましく、0.2mol未満であることが更に好ましい。とりわけ好ましい態様は、上記の有機リチウム塩がLiBOBであり、非水系電解液の非水系溶媒1L当たりの量として、好ましくは0.02mol〜1.0mol、より好ましくは0.05mol〜0.2molのLiBOBを含有する場合である。
<3.添加剤>
本実施形態の非水系電解液は、上記の非水系溶媒及びリチウム塩のみからなっていてもよいし、これら以外の添加剤を含有していてもよい。
本実施形態における添加剤としては、本発明による課題解決を阻害しないものであれば特に制限はなく、リチウム塩を溶解する溶媒としての役割を担う物質(すなわち上記の非水系溶媒)と実質的に重複してもよい。添加剤は、本実施形態の非水系電解液及び非水系二次電池の性能向上に寄与する物質であることが好ましい。しかしながら該添加剤は、電気化学的な反応には直接関与しない物質をも包含する。添加剤は、1成分を単独で又は2成分以上を組み合わせて用いる。
添加剤としては、例えば、電極を保護する添加剤を挙げることができる。
添加剤の具体例としては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5,5−テトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、及び4,4,5−トリフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンに代表されるフルオロエチレンカーボネート;ビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、及びビニルエチレンカーボネートに代表される不飽和結合含有環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、及びε−カプロラクトンに代表されるラクトン;1,2−ジオキサンに代表される環状エーテル;メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルホルメート、エチルアセテート、エチルプロピオネート、エチルブチレート、n−プロピルホルメート、n−プロピルアセテート、n−プロピルプロピオネート、n−プロピルブチレート、イソプロピルホルメート、イソプロピルアセテート、イソプロピルプロピオネート、イソプロピルブチレート、n−ブチルホルメート、n−ブチルアセテート、n−ブチルプロピオネート、
n−ブチルブチレート、イソブチルホルメート、イソブチルアセテート、イソブチルプロピオネート、イソブチルブチレート、sec−ブチルホルメート、sec−ブチルアセテート、sec−ブチルプロピオネート、sec−ブチルブチレート、tert−ブチルホルメート、tert−ブチルアセテート、tert−ブチルプロピオネート、tert−ブチルブチレート、メチルピバレート、n−ブチルピバレート、n−ヘキシルピバレート、n−オクチルピバレート、ジメチルオキサレート、エチルメチルオキサレート、ジエチルオキサレート、ジフェニルオキサレート、マロン酸エステル、フマル酸エステル、及びマレイン酸エステルに代表されるカルボン酸エステル;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミドに代表されるアミド;エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、ブチレンサルファイト、ペンテンサルファイト、スルホラン、3−メチルスルホラン、3−スルホレン、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロパンジオール硫酸エステル、テトラメチレンスルホキシド、及びチオフェン1−オキシドに代表される環状硫黄化合物;モノフルオロベンゼン、ビフェニル、及びフッ素化ビフェニルに代表される芳香族化合物;ニトロメタンに代表されるニトロ化合物;シッフ塩基;シッフ塩基錯体;オキサラト錯体等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態の非水系電解液における添加剤の含有量については、特に制限はないが、本実施形態の非水系電解液の全量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、添加剤の含有量が多いほど本実施形態に係る電解液の劣化が抑えられるが、添加剤の含有量が少ないほど低温環境下における高出力特性が向上することになる。従って、添加剤の含有量が上記の範囲内にあることによって、リチウムイオン二次電池としての基本的な機能を損なうことなく、非水系電解液の高いイオン伝導度に基づく優れた性能をより十分に発揮することができる。このような組成で電解液を調製することにより、該電解液を含有するゲル電解質を具備するリチウムイオン二次電池において、サイクル性能、低温環境下における高出力性能、及びその他の電池特性のすべてを、より一層良好なものとすることができる。
<3.正極及び正極集電体>
正極は、非水系二次電池の正極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものであってもよい。本実施形態における好ましい正極は、正極活物質を含有し、場合により導電助剤及びバインダーを更に含有する。
正極が正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有すると、高電圧及び高エネルギー密度を得ることができる傾向にあるので好ましい。そのような材料としては、例えば、下記一般式(3a)及び(3b):
LiMO (3a)
Li (3b)
{式中、Mは遷移金属を示し、xは0〜1の数を示し、yは0〜2の数を示す。}のぞれぞれで表されるリチウム含有化合物、並びにその他のリチウム含有化合物が挙げられる。
上記一般式(3a)及び(3b)のそれぞれで表されるリチウム含有化合物としては、例えば、LiCoOに代表されるリチウムコバルト酸化物;LiMnO、LiMn、及びLiMnに代表されるリチウムマンガン酸化物;LiNiOに代表されるリチウムニッケル酸化物;LiMO(MはNi、Mn、Co、Al、及びMgからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、zは0.9超1.2未満の数を示す。)で表されるリチウム含有複合金属酸化物が挙げられる。
その他のリチウム含有化合物としては、リチウムを含有するものであればよい。このようなその他のリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、リチウムを有する金属カルコゲン化物、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物、及びリチウムと遷移金属元素とを含むケイ酸金属化合物(例えばLiSiO、Mは上記式(3a)におけるのと同義であり、tは0〜1の数を示し、uは0〜2の数を示す。)が挙げられる。より高い電圧を得る観点から、その他のリチウム含有化合物としては、特に、
リチウムと、
コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、及びチタン(Ti)からなる群より選ばれる1種以上の遷移金属元素と
を含む複合酸化物、並びにリン酸化合物が好ましい。
その他のリチウム化合物としてより具体的には、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物又はリチウムと遷移金属元素とを含む金属カルコゲン化物、及びリチウムを有するリン酸金属化合物が好ましく、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物及びリチウムを有するリン酸金属化合物が更に好ましい。例えば、それぞれ下記一般式(4a)及び(4b):
Li (4a)
LiIIPO (4b)
{式中、M及びMIIはそれぞれ1種以上の遷移金属元素を示し、v及びwの値は、電池の充放電状態によって異なり、vは0.05〜1.10の数を示し、wは0.05〜1.10の数を示す。}のそれぞれで表される化合物が挙げられる。
上記一般式(4a)で表される化合物は層状構造を有し、上記一般式(4b)で表される化合物はオリビン構造を有する。これらの化合物は、構造を安定化させる等の目的から、Al、Mg、又はその他の遷移金属元素により、M又はMIIで示される遷移金属元素の一部を置換したもの、これらの遷移金属元素を結晶粒界に含ませたもの、酸素原子の一部をフッ素原子等で置換したもの、これらの化合物から成る正極活物質表面の少なくとも一部に他の正極活物質を被覆したものであってもよい。
本実施形態における正極活物質としては、上記のようなリチウム含有化合物のみを用いてもよいし、該リチウム含有化合物とともにその他の正極活物質を併用してもよい。
このようなその他の正極活物質としては、例えば、トンネル構造及び層状構造を有する金属酸化物又は金属カルコゲン化物;イオウ;導電性高分子等が挙げられる。トンネル構造及び層状構造を有する金属酸化物又は金属カルコゲン化物としては、例えば、MnO、FeO、FeS、V、V13、TiO、TiS、MoS、及びNbSeに代表される、リチウム以外の金属の酸化物、硫化物、セレン化物等が例示される。
導電性高分子としては、例えばポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、及びポリピロールに代表される導電性高分子が例示される。
正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
正極活物質として、リチウム含有化合物とその他の正極活物質とを併用する場合、両者の使用割合としては、正極活物質の全部に対するリチウム含有化合物の使用割合として、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましい。
正極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.05μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。正極活物質の数平均粒子径は、湿式の粒子径測定装置(例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布計、動的光散乱式粒度分布計等)により測定することができる。或いは、透過型電子顕微鏡を用いて観察した画像から粒子100個をランダムに抽出し、画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフト、商品名「A像くん」)で解析し、その相加平均を算出することによっても得られる。この場合、同じ試料に対して、測定方法間で数平均粒子径が異なる場合は、標準試料を対象として作成した検量線を用いて較正してもよい。
導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック、及びケッチェンブラックに代表されるカーボンブラック、並びに炭素繊維が挙げられる。導電助剤の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは10nm〜10μm、より好ましくは20nm〜1μmである。導電助剤の数平均粒子径は、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。導電助剤の含有割合は、正極活物質100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは1〜5質量部である。
バインダーとしては、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、及びフッ素ゴムが挙げられる。バインダーの含有割合は、正極活物質100質量部に対して、6質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜4質量部である。
正極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、先ず、上記正極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤、バインダー等を加えて混合した正極合剤を溶剤に分散させて正極合剤含有スラリーを調製する。溶剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを用いてよいが、例えば、N―メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水等が挙げられる。正極合剤含有スラリー中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
次いで、この正極合剤含有スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥して正極活物質層を形成する。
正極集電体は、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔、ステンレス箔等の金属箔により構成される。正極集電体は、表面にカーボンコートが施されていてもよく、メッシュ状に加工されていてもよい。正極集電体の厚みは5〜40μmであることが好ましく、7〜35μmであることがより好ましく、9〜30μmであることが更に好ましい。
乾燥後に得られた正極活物質層をロールプレス等により圧縮することにより、正極合剤層(正極)が形成される。圧縮後の正極合剤の厚さは、10〜300μmであることが好ましく、20〜280μmであることがより好ましく、30〜250μmであることが更に好ましい。
<4.負極及び負極集電体>
負極は、非水系二次電池の負極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものであってもよい。本実施形態における好ましい負極は、負極活物質を含有し、場合により導電助剤及びバインダーを更に含有する。
負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料、並びに金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有すると好ましい。そのような材料としては、例えば、金属リチウム;アモルファスカーボン(ハードカーボン)、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド、及びカーボンブラックに代表される炭素材料;リチウムとの合金を形成可能な元素を含む材料等が挙げられる。上記コークスとしては、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、及び石油コークスが挙げられる。有機高分子化合物の焼成体は、フェノール樹脂、フラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものである。炭素材料には、炭素以外にも、O、B、P、N、S、Si、SiC、SiO、SiO、BC等の、異種元素又は異種化合物を含んでいてもよい。異種元素又は異種化合物の含有量としては、0〜10質量%が好ましい。
上記リチウムとの合金を形成可能な元素を含む材料としては、金属又は半金属の単体、合金、又は化合物であることができ、これらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するものであってもよい。
本明細書において、「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含まれる。また、合金が、その全体として金属の性質を有するものであれば、非金属元素を含有していてもよい。合金の組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、若しくは金属間化合物、又はこれらのうちの2種以上が共存することができる。
上記リチウムとの合金を形成可能な元素を含む材料としては、例えば、チタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、及びイットリウム(Y)が挙げられる。これらの中でも、長周期型周期表における4族又は14族の金属元素及び半金属元素が好ましい。特に好ましいのは、リチウムを吸蔵及び放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができる、チタン、ケイ素、及びスズである。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、例えば、ケイ素、マグネシウム(Mg)、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、及びクロムからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有するものが挙げられる。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、例えば、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、及びクロムからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有するものが挙げられる。
チタンの化合物、スズの化合物、及びケイ素の化合物としては、例えば酸素(O)又は炭素(C)を有するものが挙げられる。チタン、スズ、又はケイ素に加えて、上述の第2の構成元素を有していてもよい。
負極は、負極活物質として、0.4〜3V vs.Li/Liの範囲でリチウムイオンを吸蔵することが可能な金属化合物を含有してもよい。このような金属化合物としては、例えば、金属酸化物、金属硫化物、及び金属窒化物が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物(リチウムチタン含有複合酸化物)、タングステン酸化物(例えばWO)、アモルファススズ酸化物(例えばSnB0.40.63.1)、スズ珪素酸化物(例えばSnSiO)、及び酸化ケイ素(SiO)が挙げられる。これらの中でも、チタン酸化物及びリチウムチタン酸化物を負極として用いると、溶媒として使用するアセトニトリルが還元されない電位においてLiの吸蔵が可能であるため、特に好ましい。
リチウムチタン酸化物としては、例えば、スピネル構造のチタン酸リチウム{例えばLi4+aTi12(aは充放電反応により−1≦a≦3の範囲で変化し得る。)}、ラムスデライト構造のチタン酸リチウム{例えばLi2+bTi(bは充放電反応により−1≦b≦3の範囲で変化し得る。)}等が挙げられる。
チタン酸化物としては、充放電前からLiを含むもの又は含まないもののいずれをも用いることができる。充放電前(合成時)にLiを含まないチタン酸化物としては、例えば、酸化チタン(例えばTiO、HTi1225)、
Tiと、
P、V、Sn、Cu、Ni、及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、
を含有するチタン複合酸化物が挙げられる。TiOとしては、アナターゼ型で熱処理温度が300〜500℃の低結晶性のものが好ましい。チタン複合酸化物としては、例えば、TiO−P、TiO−V、TiO−P−SnO、TiO−P−MeO(Meは、Cu、Ni、及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)が挙げられる。チタン複合酸化物は、結晶性が低く、結晶相とアモルファス相とが共存した、又はアモルファス相単独で存在したミクロ構造であることが好ましい。このようなミクロ構造であることにより、サイクル性能を大幅に向上することができる。
充放電前(合成時)からLiを含むチタン酸化物としては、例えば、LiTiO(cは0≦c≦1.1の数を示す。)が挙げられる。
金属硫化物としては、例えば、硫化チタン(例えばTiS)、硫化モリブデン(例えばMoS)、及び硫化鉄(例えば、FeS、FeS、LigFeS(gは0≦g≦1))が挙げられる。金属窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物(例えば、LiCoN、0<d<4、0<e<0.5)が挙げられる。
本実施形態におけるリチウムイオン二次電池は、電池電圧を高められるという観点から、負極が、負極活物質として、リチウムイオンを0.4V vs.Li/Liよりも卑な電位で吸蔵する材料を含有することが好ましい。そのような材料としては、例えば、アモルファスカーボン(ハードカーボン)、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド、及びカーボンブラックに代表される炭素材料の他、金属リチウム、金属酸化物、金属窒化物、リチウム合金、スズ合金、シリコン合金、金属間化合物、有機化合物、無機化合物、金属錯体、有機高分子化合物が挙げられる。
負極活物質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
負極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。負極活物質の数平均粒子径は、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。
導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック、及びケッチェンブラックに代表されるカーボンブラック、並びに炭素繊維が挙げられる。導電助剤の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは10nm〜10μm、より好ましくは20nm〜1μmである。導電助剤の数平均粒子径は、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。導電助剤の含有割合は、負極活物質100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。
バインダーとしては、例えば、PVDF、PTFE、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、及びフッ素ゴムが挙げられる。バインダーの含有割合は、負極活物質100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜6質量部である。
負極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、先ず、上記負極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤、バインダー等を加えて混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有スラリーを調製する。溶剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを用いてよい。例えば、N―メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水等を使用することができる。負極合剤含有スラリー中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。次いで、この負極合剤含有スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥して負極活物質層を形成する。
負極集電体は、その表面にカーボンコートが施された態様、メッシュ状に加工された態様であってもよい。負極集電体の厚みは5〜40μmであることが好ましく、6〜35μmであることがより好ましく、7〜30μmであることが更に好ましい。
乾燥後に得られた負極活物質層をロールプレス等により圧縮することにより、負極合剤層(負極)が形成される。圧縮後の負極合剤厚さは、10〜300μmであることが好ましく、20〜280μmであることがより好ましく、30〜250μmであることが更に好ましい。
<5.セパレータ>
本実施形態におけるリチウムイオン二次電池は、正負極の短絡防止、シャットダウン等の安全性付与の観点から、正極と負極との間にセパレータを備えることが好ましい。セパレータとしては、公知の非水系二次電池に備えられるものと同様であってもよく、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。セパレータとしては、例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜が挙げられ、これらの中でも、合成樹脂製微多孔膜が好ましい。
合成樹脂製微多孔膜としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンを主成分として含有する微多孔膜、或いは、これらのポリオレフィンの双方を含有する微多孔膜等のポリオレフィン系微多孔膜が好適に用いられる。不織布としては、例えば、セラミック製、ポリオレフィン製、ポリエステル製、ポリアミド製、液晶ポリエステル製、アラミド製等の、耐熱樹脂製の多孔膜が用いられる。
セパレータは、1種の微多孔膜を単層又は複数積層したものであってもよく、2種以上の微多孔膜を積層したものであってもよい。
<6.電池外装>
本実施形態におけるリチウムイオン二次電池の電池外装は特に限定されないが、例えば、電池缶及びラミネートフィルム外装体のいずれかの電池外装を用いることができる。電池缶としては、例えば、スチール又はアルミニウムからなる金属缶を用いることができる。ラミネートフィルム外装体としては、例えば、熱溶融樹脂/金属フィルム/樹脂の3層構成からなるラミネートフィルムを、熱溶融樹脂側を内側に向けた状態で2枚重ねて端部をヒートシールにより封止したものを用いることができる。
ラミネートフィルム外装体を用いる場合、正極集電体及び負極集電体にそれぞれ正極端子(又は正極端子と接続するリードタブ)及び負極端子(又は負極端子と接続するリードタブ)を接続し、両端子(又はリードタブ)の端部が外装体の外部に引き出された状態でラミネートフィルム外装体を封止してもよい。
<7.電池の作製方法>
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上述のゲル電解質を備えることを特徴とする。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、例えば、上述のゲル電解質、正極、及び負極、並びに必要に応じてセパレータを用いて、公知の方法により作製することができる。
先ず、正極、負極、及びゲル電解質、並びに必要に応じてセパレータからなる積層体を形成する。
例えば、正極と負極とを、その間にゲル電解質及びセパレータを介在させた積層状態で巻回して巻回構造の積層体に成形する態様;
該積層体を折り曲げる、或いは該積層体の複数を積層する等の措置によって、複数組の正極と負極との間にそれぞれゲル電解質及びセパレータが介在する多層積層体に成形する態様
等が可能である。次いで、電池ケース(電池外装)内に上記の積層体を収容して封印することによって、本実施形態のリチウムイオン二次電池を作製することができる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形、及びラミネート形等が好適に採用される。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、初回充電により電池として機能し得るが、初回充電の際に非水系電解液の一部が分解することにより安定化する。本実施形態における初回充電の方法について特に制限はないが、初回充電が0.001〜0.3Cで行われることが好ましく、0.002〜0.25Cで行われることがより好ましく、0.003〜0.2Cで行われることが特に好ましい。初回充電が途中に定電圧充電を経由して行われることも好ましい結果を与える。定格容量を1時間で放電する定電流が1Cである。リチウム塩が電気化学的な反応に関与する電圧範囲を長く設定することによって、SEIが電極表面に形成され、正極を含めた内部抵抗の増加を抑制する効果がある。また、反応生成物が負極のみに強固に固定化されることなく、何らかの形で、正極、セパレータ等の、負極以外の部材にも良好な効果を与える。そのため、電解液に溶解したリチウム塩の電気化学的な反応を考慮して初回充電を行うことは、非常に有効である。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、複数個を直列又は並列に接続した電池パックとして使用することもできる。電池パックの充放電状態を管理する観点から、1個当たりの使用電圧範囲は2〜5Vであることが好ましく、2.5〜5Vであることがより好ましく、2.75V〜5Vであることが特に好ましい。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)Liの拡散係数の評価
(1−1)ゲル電解質の調製
溶媒としてアセトニトリルのみを使用し(アセトニトリル100体積%)、リチウム塩としてLiBOBを溶媒1Lあたり1モル含み、添加剤としてフルオロエチレンカーボネート(FEC)を10体積%含む電解液を調製した。ゲル化剤としては、C13SO12OC17を常法により合成したものを使用し、該ゲル化剤を、上記に記載の電解液の全量に対して3質量%添加することにより、ゲル電解質を得た。
(1−2)パルス磁場勾配核磁気共鳴(PFG−NMR)測定
上記手順で調製したゲル電解質についてPFG−NMR測定を行い、−30℃におけるリチウムイオン、溶媒、及びLiBOBの拡散係数Dを求めた。
磁場勾配NMR測定法では、観測されるピーク高さをE、磁場勾配パルスを与えない場合のピーク高さをE、核磁気回転比をγ(T−1・s−1)、磁場勾配強度をg(T・m−1)、磁場勾配パルス印加時間をδ(s)、拡散待ち時間をΔ(s)、及び自己拡散係数をD(m・s−1)とした場合、下式:
ln(E/E)=D×γ×g×δ×(Δ−δ/3)
が成り立つ。上式から、g、δ、及びΔを変化させた場合のNMRピークの変化を観測することにより、Dが得られる。実際には、NMRシーケンスとしてbpp−led−DOSY法を用い、Δ、及びδを固定して、gを0からln(E/E)≦−3となる範囲で10点以上変化させて、ln(E/E)をY軸、γ×g×δ×(Δ−δ/3)をX軸としてプロットした直線の傾きから、Dを得た。Δ、及びδの設定値は任意であるが、測定対象の縦緩和時間をT(s)、横緩和時間をT(s)とした場合に下記の条件:
10ms<Δ<T
0.2ms<δ<T
を満たす必要がある。これらの条件を満たすように、リチウムイオン、溶媒、及びLiBOBについてそれぞれパラメータを設定し、PFG−NMR測定を実施した。
この測定から得られた拡散プロットの傾きから拡散係数Dを算出し、該拡散係数が1×10−10/s以上であった場合を「○」(Li拡散性良好)、1×10−10/s未満であった場合を「×」(Li拡散性不十分)とした。
評価結果を表1に示す。
(2)電解液の耐漏洩性試験
(2−1)単層ラミネートセルの組立
(正極の作製)
正極活物質としてリチウムのニッケル、マンガン及びコバルト混合酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3、数平均粒子径11μm)と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてPVDFとを、混合酸化物:グラファイト炭素粉末:アセチレンブラック粉末:PVDF=100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合した。得られた混合物に、N−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように加えて更に混合し、スラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体としての厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、80℃において30分加熱して溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延し、正極集電体上に正極活物質層を形成した。圧延後のものを50mm×30mmの矩形状に打ち抜くことにより、正極を得た。
(負極の作製)
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(I)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(II)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース溶液(固形分濃度1.83質量%)及びジエン系ゴム分散液(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、グラファイト炭素粉末(I):グラファイト炭素粉末(II):カルボキシメチルセルロース溶液:ジエン系ゴム分散液=90:10:1.44:1.76の固形分質量比で混合し、水を加えて全体の固形分濃度が45質量%になるように調整して、スラリーを調製した。このスラリーを、負極集電体としての厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延し、負極集電体上に負極活物質層を形成した。圧延後のものを50mm×30mmの矩形状に打ち抜くことにより、負極を得た。
(セルの組立)
アルミニウム層と樹脂層とを積層したラミネートフィルム(絞り加工なし、厚さ120μm、68mm×48mm)2枚を、アルミニウム層側を外側にして重ね、三辺をシールしてラミネートセル外装を作製した。セパレータとして、ポリエチレン製微多孔膜(膜厚20μm、53mm×33mm)を用意した。上述のようにして作製した正極と負極とを、(1−1)で作製したゲル電解質及び上記セパレータを介して重ね合わせ、正極−ゲル電解質−セパレータ−ゲル電解質−負極の順に積層された積層体を得た。この積層体をラミネートセル外装内に配置することにより、1C=22.5mAとなる単層ラミネートセルを得た。ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流放電して1時間で放電終了となる電流値を表す。
(2−2)耐漏洩性試験
上記手順で作製した単層ラミネートセルにつき、4.5mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で充電を継続し、合計8時間の充電を行った。その後、7.5mAの定電流及び3Vの定電圧で5時間の定電流定電圧放電を行い、放電状態とした。この単層ラミネートセルの長辺(図3中、「切り取り箇所」として示した部分)を切り取り、ゲル電解質の質量を測定し、上記充放電前後のゲル電解質質量の減少有無を確認することにより、電解液の耐漏洩性を評価した。
電解液の漏液がなかった場合を「○」(耐漏洩性良好)、電解液が漏液した場合を「×」(耐漏洩性不良)とした。結果を表2に示す。
<比較例1>
上記実施例1の「(1−1)ゲル電解質の調製」の前段において調製した電解液をポリフッ化ビニリデン(PVdF)に膨潤させて、ポリマー電解質を得た。この時、電解液は、該ポリマー電解質全量の90質量%となるように膨潤させた。
ゲル電解質の代わりに上記のポリマー電解質を用いた他は、「(1−2)パルス磁場勾配核磁気共鳴(PFG−NMR)測定」と同様にして、Li拡散性を調べた。結果を表1に示す。
<比較例2>
上記実施例1の「(2−1)単層ラミネートセルの組立」の「(セルの組立)」において、ゲル電解質を使用せずに、正極−セパレータ−負極の順に積層された積層体をラミネートセル外装内に配置した。次いで、そのセル外装内に、実施例1の「(1−1)ゲル電解質の調製」の前段において調製した電解液を0.5cc注入し、積層体を電解液に浸漬させて、1C=22.5mAとなる単層ラミネートセルを得た。この単層ラミネートセルを用いた他は、「(2)耐漏洩性試験」と同様の充放電を行った。その後、単層ラミネートセルの長辺を切り取り、充放電前後の電解液質量の減少有無を確認することにより、電解液の耐漏洩性を評価した。評価基準は実施例1におけるのと同じである。結果を表2に示す。
Figure 0006562690
Figure 0006562690

Claims (5)

  1. アセトニトリル40〜100体積%を含む非水系溶媒、及びリチウム塩を含有する非水系電解液と、
    下記一般式(1)
    Figure 0006562690
    {式中、Arは置換又は非置換の核原子数5〜30の2価の芳香族基を示し、
    は飽和又は不飽和の炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示し、
    mは2〜16の整数を示し、そして
    pは0〜6の整数を示す。}で表される化合物と、
    を含有することを特徴とする、イオン伝導性ゲル電解質。
  2. 前記Arは置換又は非置換の核原子数8〜20の2価の芳香族基である、請求項1に記載のイオン伝導性ゲル電解質。
  3. 前記Arは、ビフェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基、及びアントラニレン基からなる群より選ばれる基である、請求項1又は2に記載のイオン伝導性ゲル電解質。
  4. 前記リチウム塩は、リチウムビス(オキサラト)ボレートを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオン伝導性ゲル電解質。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオン電導性ゲル電解質と、
    リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料から成る正極活物質を含有する正極と、
    リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料、並びに金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料から成る負極活物質を含有する負極と、
    を備えることを特徴とする、リチウムイオン二次電池。
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