JP2013228556A - 静電荷像現像用トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱保存性、及び低温定着性に優れ、高温でのオフセットの発生を抑制でき、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との離型性に優れ、形成画像における、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良や、かぶり等の画像不良を抑制できる、静電荷像現像用トナーを提供すること。
【解決手段】所定の貯蔵弾性率を有する結着樹脂の微粒子から構成されるコア粒子の表面が、所定の貯蔵弾性率を有する樹脂微粒子により被覆されている静電荷像現像用トナーであって、25℃でのヤング率が100〜150MPaであり、且つ25℃での圧壊強度が20MPa以上である、静電荷像現像用トナー。
【選択図】なし

Description

本発明は、静電荷像現像用トナーに関する。
一般に電子写真法においては、静電潜像担持体の表面をコロナ放電等により帯電させた後、レーザー等により露光して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、さらにこのトナー像を記録媒体に転写して高品質な画像を得ている。通常これらの現像法に適用するトナーには熱可塑性樹脂等の結着樹脂に、着色剤、電荷制御剤、離型剤、磁性材料等を混合して混練、粉砕、分級を行い平均粒径5〜10μmのトナー粒子としたものが用いられる。そしてトナーに流動性を付与したり、トナーの帯電制御を行ったり、トナーの潜像担持体からのクリーニング性を向上させたりする目的で、シリカや酸化チタン等の無機微粉末等がトナー母粒子の表面に外添されている。
このようなトナーに関して、省エネルギー化、装置の小型等の観点から、定着ローラーを極力加熱することなく良好に定着可能な、低温定着性に優れるトナーが望まれている。しかし、低温定着性に優れるトナーは、融点やガラス転移点の低い結着樹脂や、低融点の離型剤を使用していることが多く、一般的に、高温で保存する場合に凝集しやすいことや、加熱された定着ローラーにトナーが融着することによるオフセットが生じやすい問題がある。
そこで、低温域において幅広い温度で良好な定着性を得る目的、高温での保存安定性の向上の目的、耐ブロッキング性の向上等の目的等で、低融点の結着樹脂を用いたトナーコア粒子を、トナーコア粒子の結着樹脂のガラス転移点(Tg)よりもTgの高い樹脂により被覆するカプセルトナーが使用されている。
このようなカプセルトナーとしては、気流により体積平均粒径が3μm〜10μmの着色樹脂粒子(A)の流動層を形成させた状態で、粒子径が0.1〜1μmの樹脂粒子(B)の分散液を、スプレーノズルにて着色樹脂粒子(A)表面に塗布した後、乾燥を行い、乾燥後の粒子を、撹拌羽やメッシュスクリーンに衝突させることにより、樹脂微粒子に機械的ストレスを与えて、トナー表面に樹脂微粒子が固定化されたカプセルトナーが提案されている(特許文献1)。また、マイクロインデンテーション法を用いた装置(ピコインデンター)により、トナーに対する加圧に応じたトナーの変形量を評価し、その好適値により規定したトナーであって、乳化凝集法により製造する、トナーコア粒子を樹脂粒子のシェルで被覆したトナーが提案されている(特許文献2)。
特開2006−301373号公報 特開2010−113017号公報
しかし、特許文献1に記載のトナーを製造する場合、樹脂微粒子をトナー母粒子(着色樹脂粒子(A))の表面に固定する際に、機械的ストレスにより多量の熱が発生する。このために、特許文献1に記載のトナーは、トナー母粒子に含まれる離型剤等の成分がトナーの表面に染み出しやすいという問題がある。
離型剤のトナーの表面への染み出しが生じた場合、トナーを高温で保存した場合に、凝集が生じたり、画像を形成する際に、トナーの現像スリーブへの付着による画像不良や、トナーの帯電不良に起因するかぶり等の画像不良が形成画像に生じたりする。
特許文献1に記載のトナーについて、離型剤のトナー表面への染み出しを抑制するために、結着樹脂中に充填する離型剤の含有量を減らすことが考えられる。しかし、この場合、離型性や耐高温オフセット性に優れるトナーを得にくい。
また、特許文献1に記載のトナーでは、Tgの高い樹脂微粒子がトナー母粒子に強固に埋め込まれてしまうために、低温で良好に定着可能なトナーが得られない場合がある。
特許文献2に記載のトナーについて、加圧に応じたトナーの変形量を最適化することで、トナーの定着時の溶融特性は満足できるものの、さらなるトナー定着時の溶融特性の向上が要求されており、加圧に応じたトナーの変形量のみでトナーを規定しても、その要求を満足することができない。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、耐熱保存性、及び低温定着性に優れ、高温でのオフセットの発生を抑制でき、形成画像における、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良や、かぶり等の画像不良を抑制できる、静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
本発明者らは、所定の貯蔵弾性率を有する結着樹脂の微粒子から構成されるコア粒子の表面が、所定の貯蔵弾性率を有する樹脂微粒子により被覆されている静電荷像現像用トナーであって、25℃でのヤング率が100〜150MPaであり、且つ25℃での圧壊強度が20MPa以上である、静電荷像現像用トナーにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
本発明は、少なくとも、ポリエステル樹脂からなる結着樹脂を含むコア粒子の表面が(メタ)アクリル系樹脂、及びスチレン−(メタ)アクリル系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂からなる樹脂微粒子により被覆されている、静電荷像現像用トナーであって、
前記コア粒子の結着樹脂の微粒子は、100℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜2.0×10Paであり、150℃における貯蔵弾性率が1.0〜2.5×10Paであり、
前記樹脂微粒子は、100℃における貯蔵弾性率が2.5×10〜2.0×10Paであり、150℃における貯蔵弾性率が6.0×10〜2.0×10Paであり、
25℃でのヤング率が100〜150MPaであり、且つ25℃での圧壊強度が20MPa以上である、静電荷像現像用トナーに関する。
本発明によれば、耐熱保存性、及び低温定着性に優れ、高温でのオフセットの発生を抑制でき、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との離型性に優れ、形成画像における、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良や、かぶり等の画像不良を抑制できる、静電荷像現像用トナーを提供することができる。
高化式フローテスターによる軟化点の測定方法を説明する図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、トナーともいう)は、所定の貯蔵弾性率を有する結着樹脂を含むコア粒子の表面が、所定の貯蔵弾性率を有する樹脂微粒子により被覆されている静電荷像現像用トナーであって、25℃でのヤング率が100〜150MPaであり、且つ25℃での圧壊強度が20MPa以上である。
本発明の静電荷像現像用トナーは、所定の貯蔵弾性率を有する結着樹脂の微粒子を含むコア粒子の表面が、所定の貯蔵弾性率を有する樹脂微粒子により被覆されている静電荷像現像用トナーであって、トナーが所定のヤング率と圧壊強度とを備える限り限定されない。本発明の静電荷現像用トナーの好適な構造としては、結着樹脂中に、必要に応じて着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉等が配合されたコア粒子の表面が樹脂微粒子により被覆されている構造が好ましい。トナーの構造をこのような構造とする場合、弾性の異なる結着樹脂を含むコア粒子を用いることにより、トナーのヤング率を調整しやすい。また、この場合、機械的特性の異なる樹脂からなる樹脂微粒子を用いることにより、トナーの圧壊強度を調整しやすい。
静電荷像現像用トナーは、その表面に、さらに外添剤を付着させることもできる。また、本発明のトナーは、所望により、キャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。
以下、本発明の静電荷像現像用トナーがコア粒子とコア粒子を被覆する樹脂微粒子とから構成される場合について、コア粒子と、樹脂微粒子と、トナーの製造方法とについて順に説明する。
≪コア粒子≫
本発明のトナーが、コア粒子とコア粒子を被覆する樹脂微粒子とから構成される場合、コア粒子は、結着樹脂を必須に含む。また、コア粒子は、必要に応じて、結着樹脂中に、着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉等を含んでいてもよい。以下、結着樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉、及びコア粒子の製造方法について順に説明する。
[結着樹脂]
コア粒子は、結着樹脂を必須に含む。結着樹脂は、その微粒子の100℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜2.0×10Paであり、150℃における貯蔵弾性率が1.0〜2.5×10Paであり、従来からトナー用の結着樹脂として使用される樹脂から、コア粒子を用いて得られるトナーのヤング率と、圧壊強度とを勘案して、適宜選択される。
従来からトナー用の結着樹脂として使用される樹脂の例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、着色剤のトナー中における分散性、トナーの帯電性、及び用紙に対する定着性に優れたトナーを与えるコア粒子を得やすく、コア粒子を用いて所定のヤング率と、圧壊強度とを有するトナーを形成しやすいことから、ポリエステル樹脂が好ましい。
本発明のトナーのコア粒子の体積平均粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、5〜10μmが好ましい。コア粒子の体積平均粒子径は、コア粒子を樹脂微粒子により被覆して得られるトナーの体積平均粒子径が所望の値となるように、樹脂微粒子の使用量を考慮して、適宜定められる。
結着樹脂の軟化点は、コア粒子を用いて得られるトナーが所定のヤング率と、圧壊強度とを有する範囲で特に限定されない。典型的には、結着樹脂の軟化点は、60〜100℃が好ましく、70〜95℃がより好ましい。結着樹脂の軟化点が高すぎると、コア粒子を用いて得られるトナーの現像スリーブへの付着が発生しないものの、トナーを低温で良好に定着させにくくなる場合がある。結着樹脂の軟化点が低すぎると、コア粒子を用いて得られるトナーの現像スリーブへの付着や、トナーの耐熱保存性が損なわれる場合がある。結着樹脂の軟化点は、以下の方法に従って測定することができる。
<軟化点測定方法>
高化式フローテスター(CFT−500D(株式会社島津製作所製))により結着樹脂(トナー)の軟化点の測定を行う。結着樹脂1.5gを試料として用い、高さが1.0mmで直径1.0mmのダイを使用し、昇温速度4℃/min、予熱時間300秒、荷重5kg、測定温度範囲60〜200℃の条件で測定を行う。フローテスターの測定により得られた、温度(℃)とストローク(mm)とに関するS字カーブより、軟化点を読み取る。
軟化点の読み取り方を、図1により説明する。ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とする。S字カーブにおいて、ストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を、測定試料の軟化点とする。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、コア粒子を用いて得られるトナーが所定のヤング率と、圧壊強度とを有する範囲で特に限定されない。典型的には、結着樹脂のTgは、30〜60℃が好ましく、35〜55℃がより好ましい。結着樹脂のTgが低すぎると、コア粒子を用いて得られるトナー粒子の強度が低下しやすく、高温多湿環境下でトナー粒子の凝集が生じる場合がある。また、結着樹脂のTgが低すぎると、コア粒子を用いて得られるトナーのヤング率が100MPaを下回りやすい。結着樹脂のTgが高すぎると、コア粒子を用いて得られるトナーを低温で良好に定着させにくくなる場合がある。また、結着樹脂のTgが高すぎると、コア粒子を用いて得られるトナーのヤング率が150MPaを超えやすい。結着樹脂のガラス転移点は、以下の方法に従って測定することができる。
<ガラス転移点測定方法>
結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、結着樹脂の吸熱曲線を測定することで求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/minで常温常湿下にて測定して得られた吸熱曲線よりガラス転移点を求めることができる。
結着樹脂の数平均分子量(Mn)は、コア粒子を用いて得られるトナーが所定のヤング率と、圧壊強度とを有する範囲で特に限定されない。典型的には、結着樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000〜5,000が好ましく、1,500〜3,000がより好ましい。また、数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜5.0が好ましく、1.8〜4.0がより好ましい。結着樹脂の分子量分布をこのような範囲とすることで、コア粒子を用いて得られるトナーにより画像を形成する際の、オフセットの発生を抑制しやすくなる。結着樹脂の数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
また、結着樹脂の酸価は、5〜30mgKOH/gが好ましい。結着樹脂の酸価が低すぎると、コア粒子を、微粒子を凝集させる方法により製造する場合に、微粒子の凝集が良好に進行しにくい場合がある。結着樹脂の酸価が高すぎると、高湿条件下で、湿度の影響によって、コア粒子を用いて得られるトナーの種々の性能が損なわれやすくなる。
また、コア粒子を構成する材料としてとして用いられる結着樹脂の微粒子は、下記方法に従って測定される貯蔵弾性率が、100℃で、1.0×10〜2.0×10Paであり、150℃で、1.0〜2.5×10Paである。貯蔵弾性率がこの範囲となる結着樹脂を含む微粒子を、コア粒子を構成する材料として用いることで、現像スリーブへのトナーの付着を抑制できるトナーを得ることができる。
<貯蔵弾性率測定方法>
測定装置(MCR301(株式会社アントンパール・ジャパン))を用いて、以下の条件にて貯蔵弾性率の測定を行った。樹脂0.35gをφ20錠剤成形器で60kg・f/cmで15秒加圧してペレット化(厚み約1.0mm)した。これをプレート径20mm(DISPO_20)に載せ、各樹脂の(Tm+3)℃で溶着を行った。続いて30℃までひずみ0.01%一定で10℃/minで降温したのち、200℃までひずみ量を0.01%〜5%の線形で増大させながら2℃/minで昇温して100℃及び150℃の貯蔵弾性率を測定した。
以下、コア粒子に含まれる結着樹脂を構成するポリエステル樹脂について説明する。
〔ポリエステル樹脂〕
ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコール成分と2価又は3価以上のカルボン酸成分との縮重合や共縮重合によって得られるものを使用することができる。ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が挙げられる。
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、或いはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂の酸価は、ポリエステル樹脂の合成に使用されるアルコール成分が有する水酸基と、カルボン酸成分が有するカルボキシル基との、官能基のバランスを調整することによって調整できる。
以上、結着樹脂を構成するポリエステル樹脂について説明したが、コア粒子を用いて得られるトナーが低温定着性に優れることから、ポリエステル樹脂の中では非晶質ポリエステル樹脂が好ましい。以下、非晶質ポリエステル樹脂について説明する。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる単量体としては、上記の2価又は3価以上のアルコール成分や2価又は3価以上のカルボン酸成分を使用できる。本出願の明細書、及び特許請求の範囲において、ポリエステル樹脂は結晶性指数が1.20以上、好ましくは1.50〜3.00となるようなポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂の結晶性指数は、単量体であるアルコール成分やカルボン酸成分の、種類、及び使用量を適宜調整することにより調整できる。
ポリエステル樹脂の結晶性指数は、ポリエステル樹脂の軟化点と融解熱の最大ピーク温度との比(軟化点/融解熱の最大ピーク温度)により求めることができる。ポリエステル樹脂の軟化点は後述するフローテスターによって測定され、融解熱の最大ピーク温度は後述する示差走査熱量計(DSC)によって測定される。
ポリエステル樹脂を調製する場合、得られるポリエステル樹脂の結晶化を抑制する必要がある。ポリエステル樹脂の結晶化の抑制方法は特に限定されないが、好適な結晶化抑制方法として、例えば、以下の1)〜3)の方法が挙げられる。
1)結晶化を促進するアルコール成分、及びカルボン酸成分を少量しか使用しないか、使用しない方法。
2)アルコール成分、及びカルボン酸成分として、それぞれ2種以上の化合物を使用する方法。
3)ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物や、アルキル置換コハク酸等を使用して結晶化を抑制する方法。
なお、ポリエステル樹脂の結晶化を促進しやすいアルコール成分としては、炭素原子数2〜8の脂肪族ジオールが挙げられ、脂肪族ジオールの中でも、特に、炭素原子数2〜8のα,ω−アルカンジオールが挙げられる。また、ポリエステル樹脂の結晶化を促進しやすいカルボン酸成分としては、炭素原子数2〜16の脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸の中でも、特に、炭素原子数2〜16のα,ω−アルカンジカルボン酸が挙げられる。
上述した結晶化抑制方法の中では、単量体の種類が少なく非晶質ポリエステル樹脂の調製が容易であることから、3)の方法がより好ましい。3)の方法では、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、及びアルキル置換コハク酸の使用量を増やすほど結晶化を抑制しやすいが、これらの単量体の使用量は、得られるポリエステル樹脂の結晶化度と、他の物性とを考慮して適宜調整される。
ポリエステル樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[着色剤]
本発明のトナーが、コア粒子とコア粒子を被覆する樹脂微粒子とから構成される場合、コア粒子は必要に応じて、着色剤を含んでいてもよい。コア粒子に含有させる着色剤は、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。コア粒子に含有させることができる好適な着色剤の具体例としては以下の着色剤が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤としては後述するイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤等の着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も利用することができる。トナーがカラートナーである場合に、コア粒子に配合される着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤等が挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリルアミド化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、194;ネフトールイエローS、ハンザイエローG、及びC.I.バットイエロー等が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254等が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等;フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、及びC.I.アシッドブルー等が挙げられる。
コア粒子における着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、結着樹脂100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましい。
[離型剤]
本発明のトナーが、コア粒子とコア粒子を被覆する樹脂微粒子とから構成される場合、コア粒子は必要に応じて、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、通常、トナーの定着性や耐オフセット性を向上させる目的で使用される。離型剤の種類は、従来からトナー用の離型剤として使用されているものであれば特に限定されない。
好適な離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックス等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、及び鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、及びベトロラクタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、及びカスターワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステルを一部、又は全部を脱酸化したワックスがあげられる。
好適に使用できる離型剤としては、さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、及びさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、及びバリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、及びさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、及びラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、及びヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、及びN,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーをグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、5〜20質量がより好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、形成画像におけるオフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離型剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によって保存安定性が低下する場合がある。
[電荷制御剤]
本発明のトナーが、コア粒子とコア粒子を被覆する樹脂微粒子とから構成される場合、コア粒子は必要に応じて、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、トナーの帯電レベルの安定性や、所定の帯電レベルに短時間でトナーを帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
好適に使用できる電荷制御剤としては、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディープブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
官能基として、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物等が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナート等のアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム等のサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナー全量を100質量部とした場合に、0.5〜20.0質量部が好ましく、1.0〜15.0質量部がより好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させ難いため、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ったり、画像濃度を長期にわたって維持することが困難になったりすることがある。また、この場合、電荷制御剤が結着樹脂中に均一に分散し難く、形成画像にかぶりが生じやすくなったり、潜像担持部の汚染が起こりやすくなったりする。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良に起因する形成画像における画像不良や、潜像担持部の汚染等が起こりやすくなる。
[磁性粉]
本発明のトナーが、コア粒子とコア粒子を被覆する樹脂微粒子とから構成される場合、コア粒子は必要に応じて、磁性粉を含んでいてもよい。静電荷像現像用トナーには、所望により、磁性粉を配合することができる。磁性粉の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な磁性粉の例としては、フェライト、マグネタイト等の鉄;コバルト、ニッケル等の強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理等の強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
磁性粉の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されない。具体的な磁性粉の粒子径は、0.1〜1.0μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。かかる範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
磁性粉は、トナー中での分散性を改良する目的等で、チタン系カップリング剤やシラン系カップリング剤等の表面処理剤により表面処理されたものを使用できる。
磁性粉の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な磁性粉の使用量は、トナーを1成分現像剤として使用する場合、トナー全量を100質量部とした場合に、35〜60質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。磁性粉の使用量が過多である場合、長期間にわたり画像を形成する際に所望の画像濃度を維持しにくかったり、定着性が極度に低下したりする場合がある。磁性粉の使用量が過少である場合、形成画像にかぶりが発生しやすくなることにより画像濃度の耐久性が低下する場合がある。また、トナーを2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量を100質量部とした場合に、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
[コア粒子の製造方法]
本発明のトナーが、コア粒子とコア粒子を被覆する樹脂微粒子とから構成される場合、コア粒子が、所定の成分を含有し、且つ、所定のヤング率と圧壊強度とを有するトナーを与えるものであれば、その製造方法は特に限定されない。コア粒子の製造方法として好適な方法としては、溶融混練法と、凝集法とが挙げられる。
溶融混練法は、結着樹脂と、着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉等の任意成分とを混合した後、混合物を溶融混練し、得られた溶融混練物を、粉砕、分級して、所望の粒子径のコア粒子を得る方法である。
凝集法は、結着樹脂を含む微粒子を少なくとも含む微粒子を、水性媒体中で凝集させて、結着樹脂を含む微粒子の凝集体の水性媒体分散液を得た後に、得られた微粒子の凝集体の水性媒体分散液を加熱し、形状制御された所望の粒子径のコア粒子を得る方法である。
これらの、コア粒子の製造方法の中では、形状の均一なコア粒子を得やすく、コア粒子を用いて、ヤング率や圧壊強度のばらつきの少ないトナーを形成しやすいことから、凝集法が好ましい。以下、凝集法について詳細に説明する。
凝集法について、微粒子の調製、微粒子の凝集、微粒子の合一化の順に説明する。
(微粒子の調製)
結着樹脂を含む微粒子の調製方法は特に限定されない。結着樹脂を含む微粒子は、結着樹脂の微粒子であるか、結着樹脂と、着色剤、離型剤、電荷制御剤等の任意成分とを含む樹脂組成物の微粒子である。通常、結着樹脂を含む微粒子は、水性媒体中で、結着樹脂又は結着樹脂を含む組成物を所望のサイズに微粒子化することにより、微粒子の水性媒体分散液として調製される。また、微粒子の水性媒体分散液は、結着樹脂を含む微粒子以外の微粒子を含んでいてもよい。結着樹脂を含む微粒子以外の微粒子の例としては、着色剤の微粒子、離型剤の微粒子、着色剤と離型剤とからなる微粒子等が挙げられる。以下、結着樹脂を含む微粒子の調製方法、着色剤の微粒子の調製方法、及び離型剤の微粒子の調製方法について順に説明する。なお、ここで説明する微粒子とは異なる成分を含む微粒子については、これらの微粒子の製造方法を、適宜選択することにより調製することができる。
<結着樹脂を含む微粒子の調製>
まず、結着樹脂、又は結着樹脂とコア粒子が含んでいてもよい任意成分とを含む樹脂組成物を、ターボミル等の粉砕装置により、粗粉砕する。粗粉砕品を、イオン交換水等の水性媒体に分散させた状態で、フローテスターで測定される結着樹脂の軟化点より10℃以上高い温度(最高でも200℃程度までの温度)に加熱し、加熱された結着樹脂の分散液に、クレアミックス等の高速剪断乳化装置によって強い剪断力を与えることにより、結着樹脂を含む微粒子の水性媒体中の分散液が得られる。
水性媒体には、界面活性剤を加えるのが好ましい。水性媒体に界面活性剤を加えることにより、結着樹脂組成物の微粒子化を良好に進行させ、分散安定性に優れる微粒子の分散液を得やすくなる。
結着樹脂が酸性基を有する樹脂である場合、結着樹脂をそのまま水性媒体中で微粒子化させることにより、結着樹脂の比表面積が増大するため、微粒子表面に露出した酸性基の影響により、水性媒体のpHが3〜4程度まで低下する場合がある。この場合、結着樹脂であるポリエステル樹脂の加水分解が生じたり、得られる微粒子の粒子径を所望の粒子径まで微粒子化しにくかったりする場合がある。
このような問題を抑制するために、結着樹脂を含む微粒子を調製する際に、水性媒体中に塩基性物質を加えるのが好ましい。塩基性物質は、上記問題を抑制できるものであれば特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、モノメタノールアミン、モルホリン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、ビニルピリジン等の含窒素有機塩基が挙げられる。
<着色剤の微粒子の調製>
界面活性剤を含む水性媒体中で、着色剤と、必要に応じて着色剤の分散剤等の成分とを、公知の分散機によって分散処理することによって、着色剤の微粒子が得られる。界面活性剤の種類は特に限定されず、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及びノニオン界面活性剤の何れも使用できる。界面活性剤の使用量は特に限定されないが、臨界ミセル濃度(CMC)以上であるのが好ましい。
<離型剤の微粒子の調製>
離型剤を予め100μm以下程度に粗粉砕しておく。離型剤の粗粉砕品を、界面活性剤を含む水性媒体中に添加し、そのスラリーを離型剤の融点以上の温度に加熱する。加熱したスラリーに、ホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて強い剪断力を付与し、離型剤を含む微粒子の分散液を調製する。
離型剤の融点は通常100℃以下の場合が多く、この場合は大気圧下で融点以上に加熱し、通常のホモジナイザーを用いて微粒子化が可能である。離型剤の融点が100℃を超える場合、耐圧型の装置を用いて微粒子化を行うことにより、離型剤の微粒子化が可能である。
(微粒子の凝集)
上記方法により調製された、結着樹脂を含む微粒子は、コア粒子に所定の成分が含まれるように、離型剤を含む微粒子、及び着色剤を含む微粒子を適宜組み合わせて、微粒子凝集体とされる。微粒子を凝集させる方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。微粒子を凝集させる好適な方法としては、水性媒体中の微粒子の分散液に、凝集剤を添加する方法が挙げられる。
凝集剤の例としては、無機金属塩、無機アンモニウム塩、2価以上の金属錯体等が挙げられる。無機金属塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等の無機金属塩重合体が挙げられる。無機アンモニウム塩としては、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。また、4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等も凝集剤として使用できる。
凝集剤としては、2価の金属の塩、及び1価の金属の塩が好ましく用いられる。2価の金属の塩と1価の金属の塩とは併用されるのが好ましい。2価の金属の塩と1価の金属の塩とでは、微粒子の凝集速度が異なるため、これらを併用することにより、得られる微粒子凝集体の粒子径の増大化を制御しつつ、粒度分布をシャープなものとしやすい。
凝集剤の添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、微粒子分散液の固形分に対して、0.1〜10mmol/gが好ましい。また、凝集剤の添加量は、微粒子分散液中に含まれる界面活性剤の種類、及び量に応じて、適宜調整するのが好ましい。
凝集剤の添加は、微粒子分散液のpHを調整した後で、結着樹脂のガラス転移点以下の温度で行う。特に結着樹脂がポリエステル樹脂である場合に、微粒子分散液のpHをアルカリ側、好ましくはpH10以上に調整した後に、凝集剤を添加するのがよい。これにより均一な凝集を行うことができ、微粒子凝集体の粒子径分布をシャープにすることが出来る。凝集剤は一時に添加してもよく、逐次的に添加することもできる。
微粒子凝集体が所望の粒子径となるまで凝集が進行した後には、凝集停止剤を添加するのが好ましい。凝集停止剤の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。このようにして微粒子凝集体を得ることが出来る。
(微粒子の合一化)
上記のようにして得られた微粒子凝集体の水性媒体中の分散液を加熱し、微粒子凝集体に含まれる成分を合一化して、所望の粒子径に形状が制御されたコア粒子を得る。微粒子凝集体の合一化において、微粒子凝集体の水性媒中の分散液を加熱する際の温度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、微粒子凝集体の水性媒中の分散液は、結着樹脂のガラス転移点以上、結着樹脂の融点以下の温度に加熱されるのが好ましく、結着樹脂のガラス転移点+10℃以上、結着樹脂の融点以下の温度に加熱されるのがより好ましい。微粒子凝集体の水性媒中の分散液をかかる範囲の温度に加熱することによって、微粒子凝集体に含まれる成分の合一化を良好に進行させることができる。
本発明のトナーが、コア粒子とコア粒子を被覆する樹脂微粒子とから構成される場合、以上説明した方法により調製されたコア粒子は、水性媒体中の分散液、又は水性媒体から回収され乾燥された粉体の状態で、後述する樹脂微粒子により被覆される。
≪コア粒子を被覆する樹脂微粒子≫
本発明のトナーが、コア粒子とコア粒子を被覆する樹脂微粒子とから構成される場合、トナーが所定のヤング率と圧壊強度とを有する範囲で、種々の樹脂からなる樹脂微粒子を用いることができる。
コア粒子を被覆する樹脂微粒子の製造方法は、特に限定されず、樹脂微粒子の粒子径を制御しやすく、粒子径のそろった樹脂微粒子を調製しやすいことから、乳化重合法が好ましい。
コア粒子を被覆する樹脂微粒子の体積平均粒子径は、樹脂微粒子によりコア粒子が被覆されたトナーが所定のヤング率と圧壊強度とを有する範囲で特に限定されない。コア粒子を被覆する樹脂微粒子の体積平均粒子径は、0.03〜0.50μmが好ましく、0.05〜0.30μmがより好ましい。コア粒子を被覆する樹脂微粒子の体積平均粒子径が、このような範囲である場合、コア粒子を均一に被覆しやすく、所定の圧壊強度を有するトナーを調製しやすい。コア粒子を被覆する樹脂微粒子の体積平均粒子径は、例えば、電気泳動光散乱光度計(LA−950V2(株式会社堀場製作所製))により、測定することができる。
コア粒子を被覆する樹脂微粒子の軟化点は、樹脂微粒子によりコア粒子が被覆されたトナーが所定のヤング率と圧壊強度とを有する範囲で特に限定されない。典型的には、樹脂微粒子の軟化点は、80〜180℃が好ましく、100〜160℃がより好ましい。樹脂微粒子の軟化点が高すぎると、トナーを低温で良好に定着させにくくなる場合がある。コア粒子を被覆する樹脂微粒子の軟化点が低すぎると、トナーの耐熱保存性が損なわれる場合がある。また、コア粒子を被覆する樹脂微粒子の軟化点が低すぎると、トナーの25℃における圧壊強度が20MPaを下回りやすい。コア粒子を被覆する樹脂微粒子の軟化点は、上記の結着樹脂の軟化点の測定方法と同様の方法によって測定することができる。
コア粒子を被覆する樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)は、樹脂微粒子によりコア粒子が被覆されたトナーが所定のヤング率と圧壊強度とを有する範囲で特に限定されない。典型的には、コア粒子を被覆する樹脂微粒子のTgは、45〜80℃が好ましく、55〜70℃がより好ましい。コア粒子を被覆する樹脂微粒子のTgが低すぎると、高温多湿環境下でトナー粒子の凝集が生じる場合がある。また、樹脂微粒子のTgが低すぎると、トナーの25℃における圧壊強度が20MPa下回りやすい。コア粒子を被覆する樹脂微粒子のTgが高すぎると、トナーを低温で良好に定着させにくくなる場合がある。樹脂微粒子のガラス転移点は、上記の結着樹脂のガラス転移点の測定方法と同様の方法によって測定することができる。
コア粒子を被覆する樹脂微粒子を構成する樹脂の数平均分子量(Mn)は、樹脂微粒子によりコア粒子が被覆されたトナーが所定のヤング率と圧壊強度とを有する範囲で特に限定されない。典型的には、コア粒子を被覆する樹脂微粒子を構成する樹脂の数平均分子量(Mn)は、3,000〜1,000,000が好ましく、5,000〜500,000がより好ましい。また、数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、2〜30が好ましく、3〜10がより好ましい。樹脂微粒子を構成する樹脂の数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
本発明において用いるコア粒子を被覆する樹脂微粒子としては、上記のような物性の樹脂微粒子を得やすいことから、(メタ)アクリル系樹脂及びスチレン−(メタ)アクリル系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂からなる樹脂微粒子が好ましい。また、高湿条件下であっても、湿度の影響によるトナーの帯電量の低下を抑制しやすく、形成画像におけるかぶりの発生を抑制しやすい。以下、(メタ)アクリル系樹脂、及びスチレン−(メタ)アクリル系樹脂について順に説明する。
〔(メタ)アクリル系樹脂〕
(メタ)アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマーを共重合して得られる樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂に含まれる、(メタ)アクリル系モノマーに由来する単位の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂の調製に使用される(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、及びプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ジアリール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物が挙げられる。また、(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する単位に含まれるカルボキシル基を酸性基として含むのが好ましい。この場合、(メタ)アクリル系樹脂を調製する際に(メタ)アクリル酸の使用量を増減させることによって、(メタ)アクリル系樹脂の酸価を調整できる。
(メタ)アクリル系樹脂が、(メタ)アクリル系モノマー以外の他のモノマーを共重合した樹脂である場合、他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、及びオクテン−1等のオレフィン類;酢酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、及び乳酸アリル等のアリルエステル類;ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロルフェニルエーテル、及びビニルナフチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルジエチルアセテート、ビニルクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロル安息香酸ビニル、及びナフトエ酸ビニル等のビニルエステルが挙げられる。
〔スチレン−(メタ)アクリル系樹脂〕
スチレン−(メタ)アクリル系樹脂は、少なくともスチレン系モノマーと、(メタ)アクリル系モノマーとを含むモノマーを共重合して得られる樹脂である。スチレン−(メタ)アクリル系樹脂に含まれる、スチレン系モノマーに由来する単位と(メタ)アクリル系モノマーとに由来する単位の含有量の合計は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
スチレン−(メタ)アクリル系樹脂の調製に使用される、スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、及びp−クロロスチレン等が挙げられる。
スチレン−(メタ)アクリル系樹脂の調製に使用される(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル系樹脂の調製に使用される(メタ)アクリル系モノマーと同様である。
また、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する単位に含まれるカルボキシル基を酸性基として含むのが好ましい。この場合、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂の調製する際に(メタ)アクリル酸の使用量を増減させることによって、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂の酸価を調整できる。
スチレン−(メタ)アクリル系樹脂が、スチレン系モノマー、及び(メタ)アクリル系モノマー以外の他のモノマーを共重合した樹脂である場合、他のモノマーの例は、(メタ)アクリル系樹脂での、(メタ)アクリル系モノマー以外の他のモノマーと同様である。
樹脂微粒子の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、コア粒子に含まれる結着樹脂100質量部に対して、5〜15質量部が好ましい。
また、コア粒子を被覆するために用いられる樹脂微粒子は、上記方法に従って測定される貯蔵弾性率が、100℃で、2.5×10〜2.0×10Paであり、150℃で、6.0×10〜2.0×10Paである。貯蔵弾性率がこの範囲となる樹脂微粒子を、コア粒子を被覆する材料として用いることで、現像スリーブへのトナーの付着を抑制できるトナーを得ることができる。
≪トナーの製造方法≫
本発明のトナーが、コア粒子とコア粒子を被覆する樹脂微粒子とから構成される場合、本発明のトナーは、従来知られる種々の方法によって前述のコア粒子を、前述の樹脂微粒子により被覆することにより得られる。
コア粒子を、樹脂微粒子により被覆する方法は、所定のヤング率と圧壊強度とを有するトナーが得られる限り特に限定されず、乾式法であっても湿式法であってもよい。
乾式法では、撹拌された乾燥状態のコア粒子に対して、樹脂微粒子を供給し、コア粒子の表面に樹脂微粒子を付着させる。この場合、乾燥状態のコア粒子は、気相中に分散しているのが好ましい。また、樹脂微粒子は、乾燥された粉体、水性媒体中の懸濁液の何れの状態で供給されてもよい。
湿式法では、コア粒子が水性媒体中に分散した懸濁液に対して、樹脂微粒子が加え、コア粒子と樹脂微粒子とを含む懸濁液を撹拌して、コア粒子の表面に樹脂微粒子を付着させる方法である。コア粒子と樹脂微粒子とを含む懸濁液を撹拌する際には、加熱するのが好ましい。
以下、湿式法の中でも、好適な方法である、前述の凝集法により得られたコア粒子を水性媒体中に含む懸濁液に対して、樹脂微粒子を加え、コア粒子を樹脂微粒子により被覆する方法について説明する。
まず、凝集法により得られたコア粒子を水性媒体中に含む懸濁液に対して、樹脂微粒子を加える。樹脂微粒子は、乾燥状態の粉体であってもよく、例えば、乳化重合法により得た、樹脂微粒子の水性媒体中の懸濁液であってもよい。コア粒子を水性媒体中に含む懸濁液中に、樹脂微粒子が速やかに分散されることから、樹脂微粒子は、樹脂微粒子の水性媒体の懸濁液として用いるのが好ましい。
コア粒子と樹脂微粒子とを水性媒体中で混合した後には、コア粒子と樹脂微粒子とを含む懸濁液を、加熱しながら撹拌するのが好ましい。コア粒子と樹脂微粒子とを含む懸濁液を加熱する際の温度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、コア粒子と樹脂微粒子とを含む懸濁液は、樹脂微粒子のガラス転移点以上、コア粒子の結着樹脂として用いた樹脂微粒子の融点以下に加熱されるのが好ましい。このような範囲の温度に懸濁液を加熱することによって、形状が均一なトナーを調製しやすい。このようにして、コア粒子は、その表面を樹脂微粒子により被覆されトナーとされる。
このようにして得られたトナーは、懸濁液からろ過により回収された後、必要に応じ、水により洗浄される。ろ過されトナーは、トナーが熱により凝集したり変形したりしないような条件で乾燥される。
このようにして得られたトナーは、必要に応じてその表面に外添剤を付着させてもよい。なお、本出願の明細書、及び特許請求の範囲では、外添剤により処理される前の粒子を、トナー母粒子と記載する場合がある。
外添剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。また、これらの外添剤は、アミノシランカップリング剤やシリコーンオイル等の疎水化剤により疎水化して使用することもできる。疎水化された外添剤を用いる場合、高温高湿下でのトナーの帯電量の低下を抑制しやすく、流動性に優れるトナーを得やすい。
外添剤の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01〜1.0μmが好ましい。
外添剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。外添剤の使用量は、典型的には、トナー母粒子100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、2〜5質量部がより好ましい。
外添剤をトナー母粒子の表面に付着させる方法は特に限定されず、従来知られる方法から適宜選択できる。具体的には、外添剤の粒子がトナー母粒子に埋め込まれないように処理条件を調整し、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等の混合機によって、外添剤による処理が行われる。
以上説明した、本発明のトナーは、25℃でのヤング率が100〜150MPaであり、且つ25℃での圧壊強度が20MPa以上である。得られたトナーの、ヤング率、及び圧壊強度は、以下の方法により確認することができる。
<ヤング率、及び圧壊強度の測定方法>
トナーのヤング率と、圧壊強度とは、25℃の条件下において、微小圧縮試験機(MCT−211(株式会社島津製作所製))を用いて測定される。評価対象として用いるトナー粒子は、トナーの粒子径分布の中位径相当の粒子径であるトナー粒子を用いるのが好ましい。トナー粒子を、平面厚子(50μm径)を用いて、0.284mN/sの付加速度により、9.8mNまで加圧し、その際の応力(mN)と変位(μm)とを測定し、応力−変位曲線を得る。圧壊強度は、応力−変位曲線において、応力が一定になった時の応力及び粒子径から下記式により算出できる。また、ヤング率は、応力−変位曲線において、応力が一定になるまでの応力と変位との関係、及び粒子径から下記式により算出できる。なお、下記式において、応力はP(mN)、粒子径はD(μm)、圧縮変位はΔD(μm)である。
(圧壊強度)
圧壊強度(MPa)=2.8×P/(π×D×D)
(ヤング率)
ヤング率(MPa)=1000×(P/(π×(D/2)×(D/2)))/(ΔD/D)
25℃でのヤング率が100〜150MPaであり、且つ、25℃での圧壊強度が20MPa以上である本発明のトナーは、耐熱保存性、及び低温定着性に優れ、高温でのオフセットの発生を抑制でき、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との離型性に優れ、形成画像における、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良や、かぶり等の画像不良を抑制できる。このため、本発明の方法により製造された静電荷像現像用トナーは、種々の画像形成装置において好適に使用される。
<SP値>
また、本発明のトナーは、トナーのコア粒子に用いられる樹脂と、コア粒子を被覆するために用いられる樹脂とが、溶解度パラメータ(以下、単にSP値とも記す)について、そのSP値差(ΔSP)が、1.8〜2.4であるのが好ましい。トナーのコア粒子に用いられる樹脂のSP値と、コア粒子を被覆するために用いられる樹脂のSP値とが、かかる範囲である場合、シェル層とコア層とに明確な境界面が存在するため、圧壊強度に優れたトナーを得やすい。なお、SP値とは、分子凝集エネルギーの平方根で表される値であり、R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p147(1974)に記載の方法で計算することができる。単位は(MPa)1/2であり、25℃における値を指す。
以上説明した、本発明のトナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。以下、2成分現像剤について説明する。
≪2成分現像剤≫
2成分現像剤を調製する場合、キャリアとしては、磁性キャリアを用いるのが好ましい。好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、コバルト等の粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金等の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム等のセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等の高誘電率物質の粒子、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリア等が挙げられる。
キャリア芯材を被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20〜120μmが好ましく、25〜80μmがより好ましい。
本発明の静電荷像現像用トナーを2成分現像剤として用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をかかる範囲とすることにより、形成画像において適度な画像濃度を維持し、現像装置からのトナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙等へのトナーの付着を抑制できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
〔調製例1〕
以下の方法に従って、コア粒子の形成において、結着樹脂として用いられる樹脂微粒子分散液A〜Cを調製した。
(樹脂微粒子分散液Aの調製)
以下の方法に従って、ポリエステル樹脂aである樹脂微粒子の水性媒体中の分散液を調製した。
結着樹脂として下記の物性を有するポリエステル樹脂aを用いた。また、ポリエステル樹脂aの貯蔵弾性率は、100℃で1.5×10Paであり、150℃で1.2Paであった。
数平均分子量(Mn):1200
質量平均分子量(Mw):2300
分子量分布(Mw/Mn):1.92
融解温度(Tm):70.8℃
ガラス転移点(Tg):38.4℃
酸価:11.6mgKOH/g
SP値:11.3
なお、上記樹脂の数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記条件により測定した。また、樹脂の酸価(mgKOH/g)は、滴定により確認した。
<GPC測定条件>
GPC装置:HLC−8020GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー株式会社製、4.6mmID×15cm)
カラム本数:3本
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.35ml/分
サンプル注入量:10μl
測定温度:40℃
検出器:IR検出器
検量線は、標準試料(TSK standard,polystyrene、東ソー株式会社製)から、F−40、F−20、F−4、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、及びn−プロピルベンゼンの8種を選択して作成した。
ポリエステル樹脂aをターボミルT250(ターボ工業株式会社製)により粗粉砕した平均粒子径10μm程度の粗粉砕物100質量部と、アニオン界面活性剤(エマールE27C(花王株式会社製))2質量部と、0.1N−水酸化ナトリウム水溶液(塩基性物質)50質量部とを混合し、さらに水性媒体としてイオン交換水を加えて全量500質量部のスラリーを調製した。得られたスラリーを、耐圧丸底ステンレス容器に投入し、高速剪断乳化装置クレアミックス(CLM−2.2S(エム・テクニック社製))を用いて、スラリーを145℃、圧力0.5MPa(G)に加温加圧した状態で、ローター回転数を20000rpmで30分間剪断分散を行った。その後、ステンレス容器内温が50℃になるまでローター回転数15000rpmで撹拌を続け、5℃/分の速度で、スラリーを冷却した後、固形分濃度が20質量%になるようにイオン交換水を加えて、樹脂微粒子分散液Aを得た。
(樹脂微粒子分散液Bの調製)
ポリエステル樹脂aに変えて、以下の物性を有するポリエステル樹脂bを使用した他は、樹脂微粒子分散液Aと同様にして樹脂微粒子分散液Bを得た。また、ポリエステル樹脂bの貯蔵弾性率は、100℃で3.3×10Paであり、150℃で2.8Paであった。
数平均分子量(Mn):1500
質量平均分子量(Mw):3100
分子量分布(Mw/Mn):2.07
融解温度(Tm):80.4℃
ガラス転移点(Tg):46.0℃
酸価:10.9mgKOH/g
SP値:11.0
(樹脂微粒子分散液Cの調製)
ポリエステル樹脂aに変えて、以下の物性を有するポリエステル樹脂cを使用した他は、樹脂微粒子分散液Aと同様にして樹脂微粒子分散液Cを得た。また、ポリエステル樹脂cの貯蔵弾性率は、100℃で2.7×10Paであり、150℃で5.7Paであった。
数平均分子量(Mn):1400
質量平均分子量(Mw):3300
分子量分布(Mw/Mn):2.36
融解温度(Tm):90.3℃
ガラス転移点(Tg):52.3℃
酸価:12.1mgKOH/g
SP値:11.1
〔調製例2〕
以下の方法に従って、コア粒子の被覆に用いられる樹脂微粒子分散液D〜Fを調製した。
(樹脂微粒子分散液Dの調製)
ポリエステル樹脂aに変えて、以下の物性を有するアクリル樹脂dを使用した他は、樹脂微粒子分散液Aと同様にして樹脂微粒子分散液Dを得た。また、アクリル樹脂dの貯蔵弾性率は、100℃で1.3×10Paであり、150℃で1.2×10Paであった。
数平均分子量(Mn):34,000
質量平均分子量(Mw):87,000
分子量分布(Mw/Mn):6.70
融解温度(Tm):147.9℃
ガラス転移点(Tg):62.9℃
SP値:9.2
(樹脂微粒子分散液Eの調製)
ポリエステル樹脂aに変えて、以下の物性を有するアクリル樹脂eを使用した他は、樹脂微粒子分散液Aと同様にして樹脂微粒子分散液Eを得た。また、アクリル樹脂eの貯蔵弾性率は、100℃で4.3×10Paであり、150℃で6.7×10Paであった。
数平均分子量(Mn):29,000
質量平均分子量(Mw):90,000
分子量分布(Mw/Mn):3.10
融解温度(Tm):123.4℃
ガラス転移点(Tg):63.0℃
SP値:8.9
(樹脂微粒子分散液Fの調製)
ポリエステル樹脂aに変えて、以下の物性を有するアクリル樹脂fを使用した他は、樹脂微粒子分散液Aと同様にして樹脂微粒子分散液Fを得た。また、アクリル樹脂fの貯蔵弾性率は、100℃で8.2×10Paであり、150℃で9.5×10Paであった。
数平均分子量(Mn):5000
質量平均分子量(Mw):15,000
分子量分布(Mw/Mn):6.70
融解温度(Tm):117.4℃
ガラス転移点(Tg):63.1℃
SP値:10.6
〔調製例3〕
(着色剤微粒子分散液の作成)
着色剤としてカーボンブラック(MA−100(三菱化学株式会社製))60質量部、アニオン界面活性剤(エマールE27C(花王株式会社製))2質量部、及びイオン交換水340質量部を混合し、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50(IKA社製))を用いて乳化して、固形分濃度が15質量%の着色剤微粒子分散液を得た。
〔調製例4〕
(離型剤微粒子分散液の調製)
離型剤(WEP−5、ペンタエリスリトールベヘン酸エステルワックス、溶融温度84℃、(日本油脂株式会社製))200質量部、アニオン界面活性剤(エマールE27C(花王株式会社製))2質量部、及びイオン交換水800質量部を混合し、100℃に加熱し離型剤を融解させた後、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50(IKA社製))で5分間乳化した。次いで、高圧式ホモジナイザー(ナノマイザーNV−200(吉田機械興業株式会社製))を用いて温度100℃、吐出圧100MPaにて、再度乳化処理を行った。なお、高圧式ホモジナイザーでは、圧力ヘッドのプランジャー径をφ10mmとし、ジェネレータとして120ミクロンの貫通型ノズルを使用した。このようにして、平均粒子径が250nm、融点(Tm)が83℃、固形分濃度が20質量%の離型剤微粒子の分散液を得た。
〔調製例5〕
(シリカの調製)
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製)100g、及び3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)100gをトルエン200gに溶解させた後、10倍に希釈した。次いで、ヒュームドシリカアエロジル#90(日本アエロジル株式会社製)200gを撹拌しながら、ジメチルポリシロキサンと3−アミノプロピルトリメトキシランとの希釈溶液を徐々に滴下した後、30分間超音波照射・撹拌して混合した。得られた混合物を150℃の恒温槽で加熱した後、トルエンをロータリーエヴァポレーターで留去して固形物を得た。得られた固形物を減圧乾燥機にて設定温度50℃で減量しなくなるまで乾燥した。さらに、電気炉にて、窒素気流下において200℃で3時間処理を行いシリカの粗粉体を得た。シリカの粗粉体をジェットミル(IDS型ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製))により解砕してバグフィルターで捕集し、シリカを得た。
〔実施例1〕
ステンレス製の容量2Lの丸底フラスコ容器に、樹脂微粒子分散液Aを500g、離型剤微粒子分散液を68g、及び着色剤微粒子分散液を33g入れ、これらを25℃で混合した。次いで、フラスコ内を、撹拌羽根により速度100rpmで撹拌した状態で、1N−水酸化ナトリウム水溶液1gをフラスコ内に加えて、pHを11に調整した。その後、フラスコの内容物を25℃で10分間撹拌した後、凝集剤(塩化マグネシウムと水との混合液、塩化マグネシウム含有量50質量%)17gを5分間かけて、フラスコ内に添加した。凝集剤添加後、フラスコ内の温度を、0.2℃/分の昇温速度で50℃まで上げ、同温度で、粒度計(マルチサイザー3(ベックマンコールター株式会社製))により測定したフラスコの内容物の凝集粒子の体積平均粒子径が5.0μmになるまで、フラスコの内容物を撹拌した。その後、撹拌羽根の速度を200rpmにし、フラスコ内の温度を、0.2℃/分の昇温速度で55℃まで上げ、同温度で、60分間、フラスコの内容物を撹拌して、コア粒子の分散液を得た。FPIA3000(シスメック株式会社製)により測定した、コア粒子の平均円形度は0.940であった。
次いで、コア粒子の分散液が入ったフラスコ容器に、樹脂微粒子分散液Dを50g投入し、フラスコ内の温度を、0.2℃/分の昇温速度で70℃まで上げ、同温度で、120分間、フラスコの内容物を回転数133rpmで撹拌した後、凝集剤(濃度20質量%の塩化ナトリウム水容液)50gを添加した。その後、フラスコ内の温度を、0.2℃/分の昇温速度で80℃まで上げ、同温度で、120分間、フラスコの内容物を撹拌した。その後、10℃/分で25℃まで冷却して、トナー母粒子の分散液を得た。
トナー母粒子の分散液から、吸引ろ過により、トナー母粒子のウエットケーキをろ取した後、ウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナー母粒子を洗浄した。同様の操作を繰り返し、トナー母粒子を5回洗浄したのちに回収したトナー母粒子のウエットケーキを、次工程で乾燥させた。
トナー母粒子のウエットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを連続式表面改質装置(コートマイザー(フロイント産業株式会社製))により乾燥させて、トナー母粒子を得た。コートマイザーによる乾燥条件は、熱風温度40℃で72時間、ブロアー風量2m/分であった。粒度計(マルチサイザー3(ベックマンコールター株式会社製))により測定したトナーの体積平均粒子径は、5.6μmであった。また、FPIA3000(シスメック株式会社製)により測定した、トナー母粒子の平均円形度は0.974であった。
得られたトナー母粒子100質量部と、シリカ2質量部とを、ヘンシェルミキサー(三井三池工業株式会社製,容量5L)にて混合し、その後、混合物を篩(#300メッシュ、目開き48μm)により篩別し、実施例1のトナーを得た。
〔実施例2〕
樹脂微粒子分散液Dを樹脂微粒子分散液Eに変えることの他は、実施例1と同様にして実施例2のトナーを得た。
〔実施例3〕
樹脂微粒子分散液Aを樹脂微粒子分散液Bに変えることの他は、実施例1と同様にして実施例3のトナーを得た。
〔実施例4〕
実施例1と同様に調製されたコア粒子の分散液から、吸引ろ過により、コア粒子のウエットケーキをろ取した後、ウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてコア粒子を洗浄した。同様の操作を繰り返し、コア粒子を5回洗浄したのちに回収したコア粒子のウエットケーキを、次工程で乾燥させた。
コア粒子のウエットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを連続式表面改質装置(コートマイザー(フロイント産業株式会社製))により乾燥させて、コア粒子を得た。コートマイザーによる乾燥条件は、熱風温度40℃で72時間、ブロアー風量2m/分であった。粒度計(マルチサイザー3(ベックマンコールター株式会社製))により測定したコア粒子の体積平均粒子径は、5.0μmであった。また、FPIA3000(シスメック株式会社製)により測定した、コア粒子の平均円形度は0.940であった。
10L微粒子コーティング装置(パウレック社製 SFP−01)を用いて、上記トナーコア粒子100gに対し、40mlの樹脂微粒子分散液Eをスプレーノズルより噴射してコーティングを行った。前記スプレー液を噴霧させる際、25nl/分の圧縮空気をスプレーノズルに送り、スプレー液を5.0ml/分のペースで噴霧するとともに、0.5m/分のペースで80℃の空気を通気部から流動層容器内に送り込んだ。第1撹拌羽根の周速を0.75m/sで回転させ、第1撹拌羽根とメッシュスクリーンとの間隙を0.5mmなるように設定した。メッシュスクリーンは、厚みが1mm、開口率50%、孔の直径が1mmのものを使用した。8分後、スプレー液の供給が終了した微粒子コーティング装置の中からトナー母粒子を取り出した。体積平均粒子径5.19μm、平均円形度0.982のトナー母粒子を得た。
得られたトナー母粒子100質量部と、シリカ2質量部とを、ヘンシェルミキサー(三井三池工業株式会社製,容量5L)にて混合し、その後、混合物を篩(#300メッシュ、目開き48μm)により篩別し、実施例4のトナーを得た。
〔比較例1〕
実施例4と同様にしてコア粒子を調製した。得られたコア粒子をトナー母粒子として用いて、実施例1と同様の方法によりトナー母粒子を外添剤により処理し、比較例1のトナーを得た。
〔比較例2〕
樹脂微粒子分散液Aを樹脂微粒子分散液Cに変えることの他は、実施例1と同様にして比較例2のトナーを得た。
〔比較例3〕
樹脂微粒子分散液Dを樹脂微粒子分散液Fに変えることの他は、実施例1と同様にして比較例3のトナーを得た。
実施例1〜4、及び比較例1〜3で得られたトナーについて、以下の方法に従って、ヤング率、及び圧壊強度を測定した。実施例1〜4、及び比較例1〜3のトナーのヤング率、及び圧壊強度を、表1及び表2に記す。
<ヤング率、及び圧壊強度の測定方法>
トナーのヤング率と、圧壊強度とを、25℃の条件下において、微小圧縮試験機(MCT−211(株式会社島津製作所製))を用いて測定した。評価対象として用いたトナー粒子は、トナーの粒子径分布の中位径相当の粒子径であるトナー粒子を用いた。トナー粒子を、平面厚子(50μm径)を用いて、0.284mN/sの付加速度により、9.8mNまで加圧し、その際の応力(mN)と変位(μm)とを測定し、応力−変位曲線を得た。圧壊強度は、応力−変位曲線において、応力が一定になった時の応力及び粒子径から下記式により算出した。また、ヤング率は、応力−変位曲線において、応力が一定になるまでの応力と変位との関係、及び粒子径から下記式により算出した。なお、下記式において、応力はP(mN)、粒子径はD(μm)、圧縮変位はΔD(μm)である。
(圧壊強度)
圧壊強度(MPa)=2.8×P/(π×D×D)
(ヤング率)
ヤング率(MPa)=1000×(P/(π×(D/2)×(D/2)))/(ΔD/D)
また、実施例1〜4、及び比較例1〜3で得られたトナーを用いて、以下の方法に従って、耐熱保存性を評価した。実施例1〜4、及び比較例1〜3のトナーの耐熱保存性の評価結果を、表1及び表2に記す。
≪耐熱保存性の評価方法≫
トナー3gを、容量20mlのポリ容器に秤量し、60℃に設定された恒温器内に3時間静置した後、25℃65%RHの環境下で30分間静置し、耐熱保存性評価用のトナーを得た。その後、目開き105μm、63μm、及び45μmの篩を、目開きの小さいものから順に上に重ねて用い、目開き105μmの篩に耐熱保存性評価用のトナーを載せて、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)により、振動目盛り5にて30秒間、篩別を行った。篩別後、目開き105μmの篩に残ったトナーの質量(T(g))、63μmの篩に残ったトナーの質量を(T(g))、及び45μmの篩に残ったトナーの質量(T(g))それぞれ秤量し、下記式によりトナーの凝集度を測定した。
/3×100=C
/3×100×3/5=C
/3×100×1/5=C
トナーの凝集度(%)=C+C+C
耐熱保存性の評価は、下記の基準により評価し、○、及び△の評価を合格、×の評価を不合格とした。
○:トナーの凝集度が2%未満。
△:トナーの凝集度が2%以上、15%未満。
×:トナーの凝集度が15%以上。
また、実施例1〜4、及び比較例1〜3で得られたトナーを用いて、以下の方法に従って、低温定着性、耐高温オフセット性、及び定着分離性(分離可能トナー載り量)を評価した。低温定着性、耐高温オフセット性、及び定着分離性の評価には、カラー複合機(TASKalfa 550ci(京セラミタ株式会社製))の定着装置(定着部)に、外部駆動装置、及び定着温度制御装置を取り付けた定着試験機を用いた。被記録媒体には、普通紙を用いた。なお、低温定着性、耐高温オフセット性、及び定着分離性の評価は、以下の方法に従って調製した2成分現像剤を用いて行った。実施例1〜4、及び比較例1〜3のトナーの評価結果を、表1及び表2に記す。
<2成分現像剤の調製>
(キャリアの調製)
MnO換算で39.7mol%、MgO換算で9.9mol%、Fe換算で49.6mol%、SrO換算で0.8mol%になるように各原材料を適量配合し、水を加え、湿式ボールミルで10時間かけて粉砕・混合した。得られた混合物を乾燥した後、950℃で4時間保持した。次いで、混合物を湿式ボールミルで24時間かけて粉砕してスラリーを調製した。スラリーを造粒乾燥した後、造粒物を、酸素濃度2%の雰囲気中で1270℃にて6時間保持した後、解砕、粒度調整を行い、マンガン系フェライト粒子(キャリア芯材)を得た。得られたマンガン系フェライト粒子は、平均粒子径が35μmであり、印加磁場が3000(103/4π・A/m)の時の飽和磁化が70Am/kgであった。
次に、ポリアミドイミド樹脂(無水トリメリット酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとの共重合体)をメチルエチルケトンで希釈して樹脂溶液を調製し、次いで4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体(FEP)と、酸化ケイ素(樹脂全体量の2質量%)とを樹脂溶液に分散させて、固形分換算で150gとなる量のキャリアコート液を得た。ポリアミドイミド樹脂とFEPとの質量比はポリアミドイミド樹脂/FEPとして、2/8であり、樹脂溶液の固形分比率は10質量%であった。
得られたキャリアコート液を用い、流動層被覆装置(スピラコータSP−25(岡田精工株式会社製))にて、マンガン系フェライト粒子10kgを被覆した。その後、樹脂により被覆されマンガン系フェライト粒子を220℃で1時間焼成して、樹脂被覆量3質量%の樹脂被覆フェライトキャリアを得た。
(トナーとキャリアとの混合)
得られた樹脂被覆フェライトキャリアと、実施例1〜4、及び比較例1〜3のトナーとを、2成分現像剤中のトナー濃度が10質量%となるように混合して、2成分現像剤を調製した。
≪低温定着性の評価方法≫
カラー複合機により、サイズ2cm×3cm、トナー量1.8g/cmの未定着ベタ画像を形成した。得られた未定着画像を、所定の温度に設定された定着試験機により、線速97mm/秒の条件で定着させた。定着後の画像を、画像部が内側となるように半分に折り曲げ、底面を布帛により被覆された1kgの重りにより、折り目上を5往復摩擦した。次いで、紙を広げ、画像部を重りにより5往復摩擦した。折り曲げ部のトナーの剥がれが1mm以内である画像を、以下の基準により評価した。○と判定し、1mm超を×と判定した。5℃刻みで定着温度を変えて評価を行い、トナーの剥がれが○と判定される最低の定着温度を、最低定着温度として、下記の基準により、低温定着性を評価し、○、及び△の評価を合格、×の評価を不合格とした。
○:最低定着温度が100℃未満。
△:最低定着温度が100℃以上、115℃未満。
×:最低定着温度が115℃以上。
≪耐高温オフセット性の評価方法≫
カラー複合機により、サイズ2cm×3cm、トナー量1.8g/cmの未定着ベタ画像を形成した。得られた未定着画像を、所定の温度に設定された定着試験機により、線速49mm/秒の条件で定着させた。5℃刻みで定着温度を変えて評価を行い、オフセットが発生しない最高の定着温度を、最高耐高温オフセット温度として、下記の基準により、耐高温オフセット性を評価し、○、及び△の評価を合格、×の評価を不合格とした。
○:最高耐高温オフセット温度が140℃以上。
△:最高耐高温オフセット温度が115℃以上、140℃未満。
×:最高耐高温オフセット温度が115℃未満。
≪定着分離性(分離可能トナー載り量)の評価方法≫
カラー複合機にて、先端マージン3mmのベタの未定着画像を得、得られた未定着画像を、紙上のトナー載り量をはかりながら、定着温度180℃、線速97mm/秒で定着試験機を通した。0.1mg/cm刻みで、トナー載り量を変化させ、紙が定着ローラーに巻きつかないトナー載り量(mg/cm)を分離可能トナー載り量とした。下記の基準により定着分離性を評価し、○、及び△の評価を合格、×の評価を不合格とした。
○:トナー載り量が1.5mg/cm以上。
△:トナー載り量が1.0mg/cm以上、1.5mg/cm未満。
×:トナー載り量が1.0mg/cm未満。
また、実施例1〜4、及び比較例1〜3で得られたトナーを用いて、以下の方法に従って、スリーブ付着、及びかぶりを評価した。スリーブ付着、及びかぶりの評価には、カラー複合機(TASKalfa 550ci(京セラミタ株式会社製))を用い、4色のトナーを用いてカラーの画像形成を行った。被記録媒体には、普通紙を用いた。実施例1〜4、及び比較例1〜3のトナーの評価結果を、表1及び表2に記す。
なお、4色のトナーは、実施例1〜4、及び比較例1〜3のトナーに用いたカーボンブラックを、イエロー顔料(C.Iピグメントイエロー180)、シアン顔料(C.Iピグメントブルー15−3)、又はマゼンタ顔料(C.Iピグメントレッド238)に変えることの他は、ブラックトナーと同様にして、イエロートナー、シアントナー、マゼンタトナーを得た。なお、イエロートナー、シアントナー、及びマゼンタトナーの体積平均粒子径(D50)は、何れも6.8μmであった。
≪スリーブ付着の評価方法≫
4色のトナーを用いて、カラー複合機にて、32.5℃60%RHの環境下、印字率20%の条件で、10000枚連続してラインパターンの形成を行った。10000枚画像形成後、現像スリーブの状態を目視により観察し、以下の基準に従ってスリーブ付着を評価した。画像品質の評価は、下記の基準により評価し、○の評価を合格、×の評価を不合格とした。
○:現像スリーブ上に付着物は見られない。
×:現像スリーブ上に付着物が見られる。
≪かぶりの評価方法≫
4色のトナーを用いて、カラー複合機にて、32.5℃60%RHの環境下、印字率2%の条件で、5000枚連続して文字パターンの形成を行った。その後、印字率50%の条件で、さらに1000枚連続してベタパッチパターンの形成を行った。1000枚のパッチパターンにおいて、反射濃度計で測定した白紙相当部の画像濃度の値から、ベースペーパー(すなわち、画像出力前の白紙)の画像濃度の値を引いた値をかぶり濃度とした。そして、かぶり濃度を所定枚数毎に測定し、その最大値によりかぶりを評価した。かぶりの評価は、下記の基準により評価し、○の評価を合格、×の評価を不合格とした。
○:かぶり濃度の最大値が0.01以下。
×:かぶり濃度の最大値が0.01超。
Figure 2013228556
Figure 2013228556
表1によれば、所定の貯蔵弾性率を有する結着樹脂の微粒子から構成されるコア粒子の表面が、所定の貯蔵弾性率を有する樹脂微粒子により被覆されている静電荷像現像用トナーであって、25℃でのヤング率が100〜150MPaであり、且つ25℃での圧壊強度が20MPa以上である、実施例1〜4のトナーは、耐熱保存性、及び低温定着性に優れ、高温でのオフセットの発生を抑制でき、定着ローラーと画像が形成された被記録媒体との離型性に優れ、また、形成画像における、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良や、かぶり等の画像不良を抑制できた。
一方、表2によれば、比較例1のトナーは、25℃でのヤング率が100MPa未満であり、圧壊強度が20MPa未満である。この場合、トナーの耐熱保存性が良好に得られず、形成画像における、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良や、かぶりによる画像不良を抑制しにくいことが分かる。これは、比較例1のトナーが、樹脂微粒子による被覆がされていないためと考えられる。
また、比較例2のトナーは、25℃での、圧壊強度が20MPa以上であるが、ヤング率が150MPa超である。この場合、トナーの低温定着性が良好に得られないことが分かる。ヤング率が150MPa超となるのは、コア粒子に比較的融点、及びガラス転移点の高いポリエステル樹脂が用いられているためと考えられる。このため、トナーを被記録媒体に定着するために、より多くのエネルギーが必要となり、低温で良好に定着できなかったと考えられる。
また、比較例3のトナーは、25℃での、ヤング率が100〜150MPaであるが、圧壊強度が20MPa未満である。この場合、トナーの耐熱保存性が良好に得られず、形成画像における、現像スリーブへのトナーの付着による画像不良を抑制しにくいことが分かる。圧壊強度が20MPa未満となるのは、トナーコア粒子を被覆する樹脂微粒子として、比較的融点、及びガラス転移点の低い(メタ)アクリル系樹脂、又はスチレン−(メタ)アクリル系樹脂が用いられているためと考えられる。このため、現像機内で生じるストレスにより、トナーコア粒子を被覆する樹脂微粒子の被膜が破壊されやすくなっていると考えられる。それにより、トナーの耐熱保存性が良好に得られず、また、現像スリーブへのトナーの付着が生じたと考えられる。

Claims (1)

  1. 少なくとも、ポリエステル樹脂からなる結着樹脂を含むコア粒子の表面が(メタ)アクリル系樹脂、及びスチレン−(メタ)アクリル系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂からなる樹脂微粒子により被覆されている、静電荷像現像用トナーであって、
    前記コア粒子の結着樹脂の微粒子は、100℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜2.0×10Paであり、150℃における貯蔵弾性率が1.0〜2.5×10Paであり、
    前記樹脂微粒子は、100℃における貯蔵弾性率が2.5×10〜2.0×10Paであり、150℃における貯蔵弾性率が6.0×10〜2.0×10Paであり、
    25℃でのヤング率が100〜150MPaであり、且つ25℃での圧壊強度が20MPa以上である、静電荷像現像用トナー。
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