JP2013226757A - ガスバリア性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたガスバリア性を有し、透明性およびバリア層の屈曲性に優れたガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面に真空成膜法により形成される無機物を含む第1のバリア層と、前記第1のバリア層上にポリシラザンを含む層を改質処理して形成される第2のバリア層と、を含み、前記第1のバリア層の前記第2のバリア層と接する面の中心線平均表面粗さ(Ra)が0.1〜60nmである、ガスバリア性フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリア性フィルムに関する。
ディスプレイ用基板、太陽光発電モジュール基板、サーキットボード用基板等の電子デバイスに使用される基板は、ガスバリア性、耐熱性や層間密着性等、物性の良いものが求められる。これまでは、基板用の基材としてシリコンウェハやガラスなど無機材料の硬い基材が使用されていたが、ディスプレイの軽量化、薄形化や有機EL等の適用、用途拡大のため、プラスチック等の樹脂基材が注目され、従来のガラス等の無機基材からプラスチック等の樹脂基材の使用へ移行されつつある。
しかし、樹脂基材は、ガラス等の無機基材と比較した場合、一般にガスの透過度が高く、ガスバリア性が大幅に劣る。このため、樹脂基材上に酸化珪素を蒸着したものや酸化アルミニウムを蒸着したものが知られている。しかしながら、それらの技術では、せいぜい1g/m・day程度の水蒸気バリア性を有するに過ぎず、求められている要求を満たしていない。
ガスバリア性を向上する目的で、特許文献1には、バリア層の上層に透明高分子層を設けることが開示されている。また、特許文献2には、孔や凹部等の欠陥を解消したフィルムが開示されている。すなわち、樹脂基材上に真空蒸着やCVD法により無機化合物の膜を形成し、その上にゾルゲルコート層を積層して、さらにゾルゲルコート層の上に真空蒸着やCVD法により無機化合物の層を形成するフィルムの製造方法および三層構造のフィルムが開示されている。
また、特許文献3には、ポリマー多層(Polymer Multilayer、PML)技法が記載されている。この技法は、ポリマーの層と酸化アルミニウムの層とからなるコーティングをフレキシブル基板に施してその基板をシールする。両方とも堆積工程は、ウェブ処理装置を使って極めて高速で操作することができる。水および酸素の浸透性に対する耐性は、未コートのPET膜に比して3ないし4桁まで改善されることが開示されている。
しかしながら、上記の薄膜形成法は、高温の蒸気として噴出した有機物がフィルム上で凝集して薄膜を形成するものであるため、一時的にフィルムが加熱されて部分的に変形を起こし、その後の積層工程が不均一となって充分なバリア能が得られないという問題を有していた。
一方、特許文献4には、ポリシラザン骨格を基本ユニットとするポリマーを塗工して膜厚250nm以下のポリマー膜を形成し、形成された膜に真空紫外光を照射して、シリカ膜を形成し、更にポリマーを塗工し、真空紫外光を照射し、積層してフレキシブルガスバリアフィルムを製造する技術が開示されており、ガスバリア性も0.01g/m・day未満の水蒸気透過度を達成している。
しかしながら、ガスバリア性の長期保存性(耐久性)に問題があった。
特開平6−234186号公報 特開2005−288851号公報 米国再発行特許発明第40,531号明細書 特開2009−255040号公報
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の従来のガスバリア性フィルムでは、上述のように十分なガスバリア性を示し、透明性およびバリア層の屈曲性が十分なものがないのが現状であった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、優れたガスバリア性を有し、透明性およびバリア層の屈曲性に優れたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、透明樹脂基材フィルムの少なくとも一方の面に、真空成膜法により形成され無機化合物を含む第1のバリア層と、ポリシラザンを含む層を改質処理して形成される第2のバリア層と、を含み、
かつ、前記第1のバリア層の中心線平均表面粗さ(Ra)を特定の範囲とすることにより、上記課題が解決された優れたガスバリア性フィルムが得られることを見出した。上記知見に基づいて、本発明を完成した。
すなわち、上記目的は、基材の少なくとも一方の面に真空成膜法により形成される無機物を含む第1のバリア層と、前記第1のバリア層上にポリシラザンを含む層を改質処理して形成される第2のバリア層と、を含み、前記第1のバリア層の前記第2のバリア層と接する面の中心線平均表面粗さ(Ra)が0.1〜60nmである、ガスバリア性フィルムによって達成できる。
本発明のガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性を有し、透明性およびバリア層の屈曲性に優れる。
本発明は、基材の少なくとも一方の面に真空成膜法により形成される無機物を含む第1のバリア層と、前記第1のバリア層上にポリシラザンを含む層を改質処理して形成される第2のバリア層と、を含み、前記第1のバリア層の前記第2のバリア層と接する面の中心線平均表面粗さ(Ra)が0.1〜60nmである、ガスバリア性フィルムに関する。
前記第1のバリア層の中心線平均表面粗さ(Ra)を0.1〜60nmとすることにより、ガスバリア性に優れ、透明性およびバリア層の屈曲性に優れたガスバリア性フィルムを得ることができる。
また、真空成膜法により形成される前記第1のバリア層とポリシラザンを含む層を改質処理して形成される第2のバリア層とは、形成方法が異なるため、層中のガスの通り道を互いに塞ぎ合うことができ、ガスバリア性がより向上すると考えられる。
以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔第1のバリア層〕
第1のバリア層は、真空成膜法で形成され、無機物を含む。真空成膜法の例としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの物理気相成長法(PVD)、熱CVD法、触媒化学気相成長法(Cat−CVD)、容量結合プラズマCVD法(CCP−CVD)、光CVD法、プラズマCVD法、エピタキシャル成長法、原子層成長法、反応性スパッタ法などの化学気相成長法(CVD)などが挙げられる。
一般的に、有機層と無機層との積層体からなるガスバリア性フィルムでは、無機層を真空製膜法によって製膜すると、屈曲後にバリア性が著しく低下してしまうという問題があった。しかしながら、本発明のガスバリア性フィルムでは、第1のバリア層を真空成膜法によって成膜しても、屈曲後にも高いガスバリア性を維持することができる。
第1のバリア層に含まれる無機物は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、セリウム(Ce)およびタンタル(Ta)からなる群より選択される少なくとも1種の金属の単体、上記金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物または酸化炭化物等が挙げられる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、ZnおよびTiからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む酸化物、窒化物または酸窒化物が好ましく、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、炭化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、およびこれらの複合体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。酸窒化珪素、アルミニウムシリケートなどのSiまたはAlの金属酸化物、窒化物、酸窒化物、またはこれらの複合体がさらに好ましく、酸窒化珪素およびアルミニウムシリケートの少なくとも一方が特に好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
好ましい酸窒化物として、酸窒化珪素が挙げられるが、第1のバリア層に含まれる酸窒化珪素は、主たる構成元素が珪素、酸素、および窒素からなる組成物を有する。成膜の原料や基材・雰囲気等から取り込まれる少量の水素・炭素等の上記以外の構成元素は各々5%未満であることが好ましく、各々2%未満であることがより好ましい。
本発明に係る第1のバリア層に含まれる酸窒化珪素を構成する珪素、酸素、および窒素の構成比は、組成式をSiOと表した場合に、x/y=0.2〜5.0であるものが好ましい。x/yが5以下であれば、十分なガスバリア能をより得やすくなる。また、x/yが0.2以上であれば、隣接しうる有機中間層との間で剥離が生じにくいため、ロール搬送や屈曲して使用する場合にも好ましく適用できるフィルムとなりやすい。x/yの値としては0.33〜4.8がより好ましく、0.5〜4.5の間がさらに好ましい。また、x、yの値は(2x+3y)/4=0.8〜1.1となる組み合わせが好ましい。0.8以上であれば着色が抑えられているためフィルムを広範な用途に用いやすい。1.1以下であれば、珪素、窒素、酸素の構成元素比率が高くて欠陥比率を抑えやすく、より十分なガスバリア能が期待できる。(2x+3y)/4は、0.9〜1.1となる組み合わせがより好ましい。特に0.95〜1.0の場合には可視光線透過率が高く、かつ安定したガスバリア能が得られるため、さらに好ましい。
第1のバリア層を構成する材料の元素構成比は、エッチングしながらX線光電子分光法(XPS)により測定する方法等、公知の方法により測定することができる。
本発明に係る第1のバリア層の屈折率は1.7〜2.1であることが好ましく、1.8〜2.0がより好ましい。特に1.9〜2.0の場合には、可視光線透過率が高く、かつ高いガスバリア能が安定して得られるため、好ましい。
第1のバリア層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
第1のバリア層の1層当たりの厚みは特に限定されないが、通常、5〜500nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nmである。第1のバリア層は、複数のサブレイヤーからなる積層構造であってもよい。この場合、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。
本発明に係る第1のバリア層の第2のバリア層と接する面の中心線平均表面粗さ(Ra)は、0.1〜60nmである。Raが60nmを超えると、ガスバリア性が著しく低下する。一方、Raが0.1nm未満であると、第1のバリア層と第2のバリア層との間の密着性が低下し、第1のバリア層にクラックが入ってしまい、耐久性が著しく低下する。Raは、好ましくは、0.2〜50nmであり、より好ましくは0.3〜30nmである。なお、中心線平均表面粗さ(Ra)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
第1のバリア層の中心線平均表面粗さ(Ra)は、平滑な基材フィルムを用いる、基材上にプライマー層(平滑層)を設ける、または逆スパッタリング法により表面を粗面化処理する、などの方法を単独でまたは適宜併用して、所望の値に調整することができる。
〔第2のバリア層〕
本発明に係る第2のバリア層は、有機溶剤中にポリシラザンおよび必要に応じて触媒を含むポリシラザンを含む層(以下、単にポリシラザン層とも称する)用の塗布液を公知の湿式塗布方法により塗布し、この溶剤を蒸発させて除去し、それによって基材上にポリシラザン層を残し、続いて、オーブンに通すか、またはIRもしくはNIR放熱器を備えた乾燥域中に通す、あるいは紫外線照射によって行われる改質処理を行うことにより、第2のバリア層を形成することができる。IRもしくはNIR改質では、これらの放熱器は、それぞれ12〜1.2マイクロメータまたは1.2〜0.8マイクロメータの波長範囲で操作される。放熱強度は、好ましくは5〜1000kW/mの範囲である。この際、オーブン中での温度もしくは滞留時間、またはIRもしくはNIR放熱器の放熱強度は、過剰の加熱が生じないように、およびそれによって温度に敏感なポリマー材料が損傷されないように調節される。
好ましい改質方法は、ポリシラザン層に波長400nm以下の紫外光を照射してシリカ転化し、SiO(xは、1.2以上2.0以下)および/またはSiO(x:0.1〜1.8、y:0.2〜1.5)を含む第2のバリア層を形成する方法である。
本発明に係る第2のバリア層の形成に用いられるポリシラザンについて説明する。
本発明に係る第2のバリア層の形成に用いられるポリシラザンとは、珪素−窒素結合を有するポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO、Si、および両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
具体的には、本発明に係るポリシラザンは、好ましくは下記の構造を有する。
Figure 2013226757
上記一般式(I)において、R、RおよびRは、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R、RおよびRは、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。ここで、アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基が挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。また、アリール基としては、炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。より具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などの縮合多環炭化水素基が挙げられる。(トリアルコキシシリル)アルキル基としては、炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換されたシリル基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基が挙げられる。より具体的には、3−(トリエトキシシリル)プロピル基、3−(トリメトキシシリル)プロピル基などが挙げられる。上記R〜Rに場合によって存在する置換基は、特に制限はないが、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、メルカプト基(−SH)、シアノ基(−CN)、スルホ基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、ニトロ基(−NO)などがある。なお、場合によって存在する置換基は、置換するR〜Rと同じとなることはない。例えば、R〜Rがアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。これらのうち、好ましくは、R、RおよびRは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ビニル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基または3−(トリメトキシシリルプロピル)基である。
また、上記一般式(I)において、nは、整数であり、一般式(I)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
上記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、好ましい態様の一つは、R、RおよびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンである。
または、本発明に係るポリシラザンとしては、下記一般式(II)で表される構造を有する。
Figure 2013226757
上記一般式(II)において、R、R、R、R、RおよびRは、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記における、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(I)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(II)において、nおよびpは、整数であり、一般式(II)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、nおよびpは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(II)のポリシラザンのうち、R、RおよびRが各々水素原子を表し、R、RおよびRが各々メチル基を表す化合物;R、RおよびRが各々水素原子を表し、R、Rが各々メチル基を表し、Rがビニル基を表す化合物;R、R、RおよびRが各々水素原子を表し、RおよびRが各々メチル基を表す化合物が好ましい。
または、本発明に係るポリシラザンとしては、下記一般式(III)で表される構造を有する。
Figure 2013226757
上記一般式(III)において、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記における、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(I)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(III)において、n、pおよびqは、整数であり、一般式(III)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n、pおよびqは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(III)のポリシラザンのうち、R、RおよびRが各々水素原子を表し、R、R、RおよびRが各々メチル基を表し、Rが(トリエトキシシリル)プロピル基を表し、Rがアルキル基または水素原子を表す化合物が好ましい。
一方、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地である基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。このため、用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体または固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
ポリシラザンは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン層形成用塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のアクアミカ(登録商標) NN120−10、NN120−20、NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL120−20、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
本発明で使用できるポリシラザンの別の例としては、以下に制限されないが、例えば、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等の、低温でセラミック化するポリシラザンが挙げられる。
本発明に係る第2のバリア層中におけるポリシラザンの含有率としては、第2のバリア層の全重量を100重量%としたとき、100重量%でありうる。また、第2のバリア層がポリシラザン以外のものを含む場合には、バリア層中におけるポリシラザンの含有率は、10重量%以上99重量%以下であることが好ましく、40重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、特に好ましくは70重量%以上95重量%以下である。
上述したように、本発明に係る第2のバリア層の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が適用できるが、有機溶剤中にポリシラザンおよび必要に応じて触媒を含むポリシラザン層形成用塗布液を公知の湿式塗布方法により塗布し、この溶剤を蒸発させて除去し、それによって基材上にポリシラザン層を形成し、次いで、空気またはオゾンの存在下で、上記のポリシラザン層に波長400nm以下の紫外光を照射してシリカ転化し、SiO(xは、1.2〜2.0)および/またはSiO(x:0.1〜1.8、y:0.2〜1.5)を含む第2のバリア層を形成する方法が好ましい。
ポリシラザン層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ポリシラザンを溶解できるものであれば特に制限されないが、ポリシラザンと容易に反応してしまう水および反応性基(例えば、ヒドロキシル基、あるいはアミン基等)を含まず、ポリシラザンに対して不活性の有機溶剤が好ましく、非プロトン性の有機溶剤がより好ましい。具体的には、ポリシラザン層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、非プロトン性溶剤;例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒;塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類:例えば、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、モノ−およびポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)などを挙げることができる。上記溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等の目的にあわせて選択され、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
ポリシラザン層形成用塗布液におけるポリシラザンの濃度は、特に制限されず、ガスバリア層の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。
ポリシラザン層形成用塗布液は、酸窒化珪素への変性を促進するために、ポリシラザンとともに触媒を含有することが好ましい。本発明に適用可能な触媒としては、塩基性触媒が好ましく、特に、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等のアミン触媒、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N−複素環式化合物が挙げられる。これらのうち、アミン触媒を用いることが好ましい。この際添加する触媒の濃度としては、ポリシラザンを基準としたとき、好ましくは0.1〜10モル%、より好ましくは0.5〜7モル%の範囲である。触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、および膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けることができる。
本発明に係るポリシラザン層形成用塗布液には、必要に応じて下記に挙げる添加剤を用いることができる。例えば、セルロースエーテル類、セルロースエステル類;例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート等、天然樹脂;例えば、ゴム、ロジン樹脂等、合成樹脂;例えば、重合樹脂等、縮合樹脂;例えば、アミノプラスト、特に尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルもしくは変性ポリエステル、エポキシド、ポリイソシアネートもしくはブロック化ポリイソシアネート、ポリシロキサン等である。
このようなポリシラザン層形成用塗布液を用いることにより、亀裂および孔が無いガスに対する高いバリア作用に優れる緻密なガラス様の第2のバリア層を製造することができる。
本発明に係る第2のバリア層の形成において、ポリシラザンを含む層を形成するための塗布液を塗布する方法としては、従来公知の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚さは、乾燥後の厚さが10nm〜10μm程度であることが好ましく、15nm〜1μmであることがより好ましく、20〜500nmであることがさらに好ましい。ポリシラザン層の膜厚が10nm以上であれば十分なバリア性を得ることができ、10μm以下であれば、ポリシラザン層形成時に安定した塗布性を得ることができ、かつ高い光線透過性を実現できる。
本発明に係るガスバリア層においては、上記説明したポリシラザンをシリカ転化(改質処理)することが好ましい。
ここで、ポリシラザンのシリカ転化によりバリア層を形成する方法は特に制限されないが、ポリシラザン層への400nm以下の波長の光エネルギーを用いた紫外線照射、好ましくは300nm以下の波長の光エネルギーを用いた紫外線照射、特には、波長が180nm未満の真空紫外光(VUV)の照射により、ポリシロキサンをシリカ転化することが好ましい。ここで、シリカ転化では、Si−H、N−H結合の切断と、Si−O結合の生成が起こり、シリカ等のセラミックスに転化するが、この転化の度合はIR測定によって、以下に定義する式(1)により、SiO/SiN比で半定量的に評価することができる。
Figure 2013226757
ここで、SiO吸光度は約1160cm−1、SiN吸光度は約840cm−1での吸収(吸光度)により算出する。SiO/SiN比が大きいほど、シリカ組成に近いセラミックスへの転化が進んでいることを示す。
本発明において、セラミックスへの転化度合の指標となるSiO/SiN比は0.3以上、好ましくは0.5以上とすることが好ましい。0.3未満では、期待するガスバリア性が得られないことがある。
または、本発明に係るシリカ転化率(SiOにおけるx)の測定方法としては、例えば、XPS法を用いて測定することができる。
第2のバリア層の膜組成は、XPS表面分析装置を用いて、原子組成比を測定することで測定できる。また、バリア層を切断して切断面をXPS表面分析装置で原子組成比を測定することでも測定することができる。
また、第2のバリア層の膜密度は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、第2のバリア層の膜密度が、1.5〜2.6g/cmの範囲にあることが好ましい。この範囲を外れると、膜の緻密さが低下しバリア性の劣化や、湿度による膜の酸化劣化が起こる場合がある。
第2のバリア層の屈折率は、特に制限されないが、1.7〜2.1であることが好ましく、1.8〜2であることがより好ましく、1.9〜2.0であることが特に好ましい。このような屈折率を有するバリア層は、可視光線透過率が高く、かつ高いガスバリア能が安定して得られる。
〔第2のバリア層(ポリシラザン層)の改質処理〕
改質処理としては、基材上にポリシラザンを含有する塗布液を塗布してポリシラザン層を形成した後、該ポリシラザン層に400nm以下の波長の光エネルギーを用いた紫外線を照射してシリカ転化して形成する方法が好ましい。ここで、紫外線照射は、1回のみ行ってもあるいは2回以上繰り返して行ってもよいが、照射する波長400nm以下の紫外光の少なくとも1回は、300nm以下の波長成分を有する紫外線照射光(UV)、特に180nm未満の波長成分を有する真空紫外線照射光(VUV)であることが好ましい。例えば、約172nmに最大放射を有するXe エキシマラジエータや約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプなどの300nm以下の波長の放射線成分を有する放射線源を使用すると、酸素および/または水蒸気の存在下において、上記の波長範囲におけるこれらのガスの高い吸光係数による光分解によってオゾンならびに酸素ラジカルおよびヒドロキシルラジカルが非常に効率よく生じ、これらがポリシラザン層の酸化を促進する。両機序、すなわちSi−N結合の解裂と、オゾン、酸素ラジカルおよびヒドロキシルラジカルの作用は、ポリシラザン層の表面上に紫外線が到達して初めて起こり得る。
それゆえ、層表面上に紫外線(特にVUV放射線)を出来る限り高い線量で適用するためには、場合によっては紫外線(特にVUV放射線)処理経路を窒素で置換し、そこに酸素および水蒸気を調整可能なように供給することによって、上記紫外線のパス長を酸素および水蒸気濃度を相応して目的通りに減少することが上記波長範囲には必要である。
ガスバリア性フィルムの製造において、水分が取り除かれたポリシラザン層は、紫外光の照射による処理で改質する。紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化珪素膜または酸化窒化珪素膜を形成することが可能である。
この紫外光照射により、セラミックス化に寄与するOとHOや、紫外線吸収剤、ポリシラザン自身が励起、活性化される。そして、励起したポリシラザンのセラミックス化が促進され、得られるセラミックス膜が緻密になる。紫外光照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
ここで、真空紫外線照射工程でポリシラザンを含む塗膜が改質され、SiOの特定組成となる推定メカニズムを、パーヒドロポリシラザンを例にとって説明する。
パーヒドロポリシラザンは「−(SiH−NH)−」の組成で示すことができる。SiOで示す場合、x=0、y=1である。x>0となるためには外部の酸素源が必要であるが、これは、(i)ポリシラザン塗布液に含まれる酸素や水分、(ii)塗布乾燥過程の雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、(iii)真空紫外線照射工程での雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、オゾン、一重項酸素、(iv)真空紫外線照射工程で印加される熱等により基材側からアウトガスとして塗膜中に移動してくる酸素や水分、(v)真空紫外線照射工程が非酸化性雰囲気で行われる場合には、その非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気へと移動した際に、その雰囲気から塗膜に取り込まれる酸素や水分、などが酸素源となる。
一方、yについては、Siの酸化よりも窒化が進行する条件は非常に特殊であると考えられるため、基本的には1が上限である。
また、Si、O、Nの結合手の関係から、基本的にはx、yは2x+3y≦4の範囲にある。酸化が完全に進んだy=0の状態においては、塗膜中にシラノール基を含有するようになり、2<x<2.5の範囲となる場合もある。
真空紫外線照射工程でパーヒドロポリシラザンから酸窒化珪素、さらには酸化珪素が生じると推定される反応機構について、以下に説明する。
(I)脱水素、それに伴うSi−N結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−H結合やN−H結合は真空紫外線照射による励起等で比較的容易に切断され、不活性雰囲気下ではSi−Nとして再結合すると考えられる(Siの未結合手が形成される場合もある)。すなわち、酸化することなくSiN組成として硬化する。この場合はポリマー主鎖の切断は生じない。Si−H結合やN−H結合の切断は触媒の存在や、加熱によって促進される。切断されたHはHとして膜外に放出される。
(II)加水分解・脱水縮合によるSi−O−Si結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−N結合は水により加水分解され、ポリマー主鎖が切断されてSi−OHを形成する。二つのSi−OHが脱水縮合してSi−O−Si結合を形成して硬化する。これは大気中でも生じる反応であるが、不活性雰囲気下での真空紫外線照射中では、照射の熱によって基材からアウトガスとして生じる水蒸気が主な水分源となると考えられる。水分が過剰となると脱水縮合しきれないSi−OHが残存し、SiO2.1〜SiO2.3の組成で示されるガスバリア性の低い硬化膜となる。
(III)一重項酸素による直接酸化、Si−O−Si結合の形成
真空紫外線照射中、雰囲気下に適当量の酸素が存在すると、酸化力の非常に強い一重項酸素が形成される。パーヒドロポリシラザン中のHやNはOと置き換わってSi−O−Si結合を形成して硬化する。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。
(IV)真空紫外線照射・励起によるSi−N結合切断を伴う酸化
真空紫外線のエネルギーはパーヒドロポリシラザン中のSi−Nの結合エネルギーよりも高いため、Si−N結合は切断され、周囲に酸素、オゾン、水等の酸素源が存在すると酸化されてSi−O−Si結合やSi−O−N結合が生じると考えられる。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。
ポリシラザンを含有する層に真空紫外線照射を施した層の酸窒化珪素の組成の調整は、上述の(I)〜(IV)の酸化機構を適宜組み合わせて酸化状態を制御することで行うことができる。
本発明における真空紫外線照射工程において、ガス、特に水蒸気および酸素に対する優れたバリア作用は、上記のようにして塗布されたポリシラザン層(非晶質ポリシラザン層)が、100℃以下程度、好ましくは90〜40℃の温度で、0.1〜10分間で、ガラス様の二酸化ケイ素網状構造体に首尾良く転化されることにより得られる。ポリシラザン骨格から三次元SiO網状構造への酸化的転化をVUV光子によって直接開始することによって、単一の段階において非常に短い時間で成功裏にこの転化が行われる。この転化プロセスの機序は、VUV光子の浸透深さの範囲において、Si−N結合が切断されそして酸素および水蒸気の存在下において層の転化が起こる程に強く−SiH−NH−構成要素がそれの吸収によって励起されるということで説明することができる。なお、本発明は、下記機構によって限定されない。
本発明における真空紫外線照射工程において、ポリシラザン層塗膜が受ける塗膜面での該真空紫外線の照度は30〜200mW/cmであることが好ましく、50〜160mW/cmであることがより好ましい。30mW/cm未満では、改質効率が大きく低下する懸念があり、200mW/cmを超えると、塗膜にアブレーションを生じたり、基材にダメージを与えたりする懸念が出てくる。
ポリシラザン層塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量は、200〜5000mJ/cmであることが好ましく、500〜3000mJ/cmであることがより好ましい。200mJ/cm未満では、改質が不十分となる懸念があり、5000mJ/cm超えると過剰改質によるクラック発生や、基材の熱変形の懸念が出てくる。
真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスの原子は、化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。
しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの励起原子は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には、
Figure 2013226757
となり、励起されたエキシマ分子であるXe が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。
エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動および再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには、誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは、両電極間に透明石英などの誘電体を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じ、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電であり、micro dischargeのストリーマが管壁(誘導体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。
このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため、肉眼でも確認できる光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外に、無電極電界放電でも可能である。容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極およびその配置は基本的には誘電体バリア放電と同じで良いが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキが無い長寿命のランプが得られる。
誘電体バリア放電の場合は、micro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行なわせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。
このため、細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は、光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾンなどにより損傷しやすい。これを防ぐためには、ランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素などの不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって、仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば、酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には、外部電極を網状にする必要は無い。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は、構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。
細管ランプの管の外径は6nm〜12mm程度で、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は、誘電体バリア放電および無電極電界放電のいずれも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であっても良いが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
本発明において好適な放射線源は、約172nmに最大放射を有するエキシマラジエータ(例えば、Xeエキシマランプ)、約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプ、並びに230nm以下の波長成分を有する中圧および高圧水銀蒸気ランプ、および約222nmに最大放射を有するエキシマランプである。
このうち、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン層の改質を実現できる。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で、すなわち短い波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。
また、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプ(HgLPランプ)(185nm、254nm)またはKrClエキシマランプ(222nm)からの180nm以下の波長成分を含まないUV光の作用は、Si−N結合に対する直接的な光分解作用に限定され、すなわち、酸素ラジカルまたはヒドロキシルラジカルを生成しない。この場合、吸収は無視し得る程度に過ぎないので、酸素及び水蒸気濃度に関しての制限は要求されない。より短波長の光に対するさらに別の利点は、ポリシラザン層中への浸透深度がより大きい点にある。
紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度および水蒸気濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、10〜210,000体積ppmとすることが好ましく、より好ましくは50〜10,000体積ppmである。また、転化プロセスの間の水蒸気濃度は、好ましくは1000〜4000体積ppmの範囲である。
真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
本発明においては、SiO格子の形のガラス様の層(第2のバリア層)の形成は、層の温度を同時に高めることによって加速され、そして層の品質は、それのバリア性に関して向上される。熱の入力は、使用されたUVランプによってまたは赤外線ラジエータを用いて被膜および基材を介して行われるか、あるいはヒートレジスタを用いて気相空間を介して行うことができる。温度の上限は、使用した基材の耐熱性によって決定される。PETフィルムの場合には約180℃である。
本発明の好ましい態様の一つでは、酸化転化プロセスの間に、基材は、赤外線によって50〜200℃の温度(被覆するべき基材の耐熱性に依存する)に加熱され、そしてこれと同時に放射線に曝される。さらに別の好ましい態様の一つでは、真空紫外光照射の間の照射室中のガス温度は50〜200℃の温度に高められる。そうすることで、被膜が基材上で同時に加熱されて、ポリシラザン層の転化が加速される。
本発明の方法は、プラスチックフィルム上でポリシラザン層を照射することによって塗布、乾燥および酸化転化を一つの作業工程で行うこと、すなわち例えばフィルムのコーティングにおいてこれを“ロール・ツゥ・ロール(Roll to Roll)”方式で行うことを可能にする。本発明に従い得られる被膜は、酸素、二酸化炭素、空気などのガスまたは水蒸気に対する高いバリア作用を有している。
〔基材〕
本発明のガスバリア性フィルムは、通常、基材として、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、バリア性積層体を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明のガスバリア性フィルムを有機EL素子等のデバイスの基板として使用する場合は、前記基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつTgが100℃以上300℃以下の脂基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。即ち、これらの用途に本発明のガスバリア性フィルムを用いる場合、ガスバリア性フィルムは、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリア性フィルムにおける基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、ガスバリア性フィルムを前記のような温度の工程に流す際に基板寸法が安定せず、熱膨張および収縮に伴い、遮断性性能が劣化する不都合や、或いは、熱工程に耐えられないという不具合が生じやすくなる。15ppm/K未満では、フィルムがガラスのように割れてしまいフレキシビリティが劣化する場合がある。
基材のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
本発明のガスバリア性フィルムを偏光板と組み合わせて使用する場合、ガスバリア性フィルムのバリア性積層体がセルの内側に向くようにし、最も内側に(素子に隣接して)配置することが好ましい。このとき、偏光板よりセルの内側にガスバリア性フィルムが配置されることになるため、ガスバリア性フィルムのレターデーション値が重要になる。このような態様でのガスバリア性フィルムの使用形態は、レターデーション値が10nm以下の基材フィルムを用いたガスバリア性フィルムと円偏光板(1/4波長板+(1/2波長板)+直線偏光板)を積層して使用するか、あるいは1/4波長板として使用可能な、レターデーション値が100nm〜180nmの基材フィルムを用いたガスバリア性フィルムに直線偏光板を組み合わせて用いるのが好ましい。
レターデーションが10nm以下の基材フィルムとしては、例えば、セルローストリアセテート(富士フイルム株式会社製:フジタック(登録商標))、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製:ピュアエース(登録商標)、株式会社カネカ製:エルメック(登録商標))、シクロオレフィンポリマー(JSR株式会社製:アートン(登録商標)、日本ゼオン株式会社製:ゼオノア(登録商標))、シクロオレフィンコポリマー(三井化学株式会社製:アペル(登録商標)(ペレット)、ポリプラスチック株式会社製:トパス(登録商標)(ペレット))、ポリアリレート(ユニチカ株式会社製:U100(ペレット))、透明ポリイミド(三菱ガス化学株式会社製:ネオプリム(登録商標))等を挙げることができる。
また1/4波長板としては、上記のフィルムを適宜延伸することで所望のレターデーション値に調整したフィルムを用いることができる。
本発明のガスバリア性フィルムは有機EL素子等のデバイスとして利用されることから、プラスチックフィルムは透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、本発明のガスバリア性フィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
本発明のガスバリア性フィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるため特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に記載されているものを好ましく採用できる。
基材は、最終製品の表面の平滑性を高め、また、第1のバリア層の第2のバリア層と接する面の中心線平均表面粗さをより小さくしたい場合には、表面の平滑性が高いものが好ましい。表面の平滑性としては、平均表面粗さ(Ra)が2nm以下であるものが好ましい。下限は特にないが、実用上、0.01nm以上である。必要に応じて、基材の両面、少なくとも、バリア層を設ける側を研摩し、平滑性を向上させておいてもよい。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
基材の両面、少なくとも本発明に係るバリア層(硬化型樹脂層)を設ける側には、接着性向上のための公知の種々の処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、もしくはプライマー層の積層等を、必要に応じて組み合わせて行うことができる。
〔アンカーコート層〕
本発明に係る基材表面には、バリア層との接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として形成してもよい。このアンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。上記アンカーコート剤は、市販品を使用してもよい。具体的には、シロキサン系UV硬化型ポリマー溶液(信越化学工業株式会社製、「X−12−2400」の3%イソプロピルアルコール溶液)を用いることができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。なお、市販の易接着層付き基材を用いてもよい。
または、アンカーコート層は、物理蒸着法または化学蒸着法といった気相法により形成することもできる。例えば、特開2008−142941号公報に記載のように、接着性等を改善する目的で酸化珪素を主体とした無機膜を形成することもできる。
また、アンカーコート層の厚さは、特に制限されないが、0.5〜10.0μm程度が好ましい。
〔プライマー層(平滑層)〕
本発明のガスバリア性フィルムは、プライマー層(平滑層)を有してもよい。プライマー層は突起等が存在する透明樹脂フィルム基材の粗面を平坦化し、あるいは、透明樹脂フィルム基材に存在する突起により、透明の第1のバリア層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。また、第1のバリア層の第2のバリア層と接する面のRaを制御するために設けられる。このようなプライマー層は、基本的には感光性材料または熱硬化性材料を硬化させて形成される。
プライマー層の形成に用いる感光性材料としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。具体的には、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズを用いることができる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、および、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種または2種以上の混合物として、あるいはその他の化合物との混合物として使用することができる。
感光性樹脂の組成物は、光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
熱硬化性材料として具体的には、クラリアント社製のトゥットプロムシリーズ(有機ポリシラザン)、セラミックコート株式会社製のSP COAT耐熱クリアー塗料、アデカ社製のナノハイブリッドシリコーン、DIC株式会社製のユニディック(登録商標)V−8000シリーズ、EPICLON(登録商標) EXA−4710(超高耐熱性エポキシ樹脂)、信越化学工業株式会社製のシリコン樹脂 X−12−2400(商品名)、日東紡績株式会社製の無機・有機ナノコンポジット材料SSGコート、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ポリアミドアミン−エピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる。
プライマー層の形成方法は、特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法、グラビア印刷法等のウエットコーティング法、あるいは蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
プライマー層の形成では、上述の樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、プライマー層の積層位置に関係なく、いずれのプライマー層においても、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
感光性樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いてプライマー層を形成する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
プライマー層の平滑性は、JIS B0601:2001で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。10nmよりも小さい場合には、後述のケイ素化合物を塗布する段階で、ワイヤーバー、ワイヤレスバー等の塗布方式で、プライマー層表面に塗工手段が接触する場合に、塗布性が損なわれる場合がある。また、30nmよりも大きい場合には、ケイ素化合物を塗布した後の、凹凸を平滑化することが難しくなる場合がある。なお、最大断面高さRt(p)の下限は、特に制限されず、0nmであるが、通常、0.5nm以上であればよい。
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
プライマー層の厚さとしては、特に制限されないが、0.1〜10μmの範囲が好ましい。
〔ブリードアウト防止層〕
本発明のガスバリア性フィルムにおいては、ブリードアウト防止層を設けることができる。ブリードアウト防止層は、プライマー層(平滑層)を有するフィルムを加熱した際に、フィルム基材中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染する現象を抑制する目的で、プライマー層(平滑層)を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的にプライマー層(平滑層)と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
ここで、多価不飽和有機化合物としては、例え、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、単価不飽和有機化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の添加剤として、マット剤を含有してもよい。マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種または2種以上を併せて使用することができる。
ここで、無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100重量部に対して2重量部以上、好ましくは4重量部以上、より好ましくは6重量部以上、20重量部以下、好ましくは18重量部以下、より好ましくは16重量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
また、ブリードアウト防止層には、ハードコート剤およびマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
このような熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニルおよびその共重合体、塩化ビニルおよびその共重合体、塩化ビニリデンおよびその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂、アクリル樹脂およびその共重合体、メタクリル樹脂およびその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマーもしくは光重合性モノマー等の1種または2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に、電離放射線(紫外線または電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
また、光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、および必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、塗布液を基材フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる好ましくは100〜400nm、より好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
本発明におけるブリードアウト防止層の厚さとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、フィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、プライマー層(平滑層)を透明高分子フィルムの一方の面に設けた場合におけるバリアフィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
本発明のガスバリア性フィルムには、必要に応じてさらに別の有機層や保護層、吸湿層、帯電防止層等の機能化層を設けることができる。
また、本発明のガスバリア性フィルムは、基材上に、第1のバリア層、第2のバリア層、第1のバリア層をこの順で互いに隣接して配置されてなる3層構造(3層構成ユニット)を有していてもよい。この際、3層構造(3層構成ユニット)の、2つの第1のバリア層の第2のバリア層と接する面の中心線平均表面粗さが、上記範囲にあればよい。また、複数ある第1のバリア層は、各々の組成が同じであっても、異なっていてもよい。
上記したような本発明のガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性、透明性、屈曲性を有する。このため、本発明のガスバリア性フィルムは、電子デバイス等のパッケージ、光電変換素子(太陽電池素子)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子等の等の電子デバイスに用いられるガスバリア性フィルムおよびこれを用いた電子デバイスなど、様々な用途に使用することができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「重量部」あるいは「重量%」を表す。
ガスバリア性フィルムの各特性値は、下記の方法に従って測定される。
《ガスバリア性フィルムの特性値の測定方法》
〔中心線平均表面粗さ(Ra)〕
原子間力顕微鏡(AFM)として、セイコーインスツルメンツ株式会社製、走査型プローブ顕微鏡SPI3700を使用し、ダイナミックフォースモードで試料の表面を、測定面積10×10μm角、走査速度1Hz、x−y方向512×256分割、カンチレバーSI−DF−20(Si、f=126kHz、c=16N/m)の条件で測定したAFMトポグラフィー像につき傾斜自動補正処理を行い、次いで3次元粗さ解析にて中心線平均表面粗さRa(nm)を求めた。この際、測定に用いたカンチレバーは摩耗や汚れのない状態のものを用いた。
〔SiOにおけるxおよびyの測定〕
作製した各ガスバリア性フィルムの第1のバリア層について、XPS法により測定した。具体的には、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用い、X線アノードとしてMg、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定して、SiOにおけるxおよびyを算出した。
〔水蒸気バリア性(WVTR)の評価〕
以下の測定方法に従って、各ガスバリア性フィルムの透過水分量を測定し、下記の基準に従って、水蒸気バリア性を評価した。
(装置)
蒸着装置:日本電子株式会社製、真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリア性評価用セルの作製)
試料のバリア層面に、真空蒸着装置(日本電子株式会社製、真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリア性フィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。また、屈曲前後のガスバリア性の変化を確認するために、上記屈曲の処理を行わなかったガスバリア性フィルムについても同様に、水蒸気バリア性評価用セルを作製した。
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
なお、ガスバリア性フィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
以上により測定された各ガスバリア性フィルムの透過水分量(g/m・day;表中の「WVTR」)をCa法によって評価した。
〔折り曲げ耐性(屈曲性)の評価〕
各ガスバリア性フィルムを、半径が10mmの曲率になるように、180度の角度で100回の屈曲を繰り返した後、上記と同様の方法で透過水分量を測定し、屈曲処理前後での透過水分量の変化より、下式に従って耐劣化度を測定し、下記の基準に従って折り曲げ耐性を評価した。
耐劣化度=(屈曲試験後の透過水分量/屈曲試験前の透過水分量)×100(%)
5:耐劣化度が、90%以上である
4:耐劣化度が、80%以上、90%未満である
3:耐劣化度が、60%以上、80%未満である
2:耐劣化度が、30%以上、60%未満である
1:耐劣化度が、30%未満である
〔可視光透過率(透明性)の測定〕
各ガスバリア性フィルムの可視光透過率(%)を、分光光度計 V−570(日本分光株式会社製)を用いて測定した。
(実施例1〜5、比較例1)
〔ガスバリア性フィルムの作製〕
基材として100μm厚のPENフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、Q65FA、Tg:155℃、熱膨張係数:8ppm)を用い、片面にシロキサン系UV硬化型ポリマー溶液(信越化学工業株式会社製、「X−12−2400」の3%イソプロピルアルコール溶液)をグラビア印刷法により塗工し、120℃の温度で熱風乾燥を行なった後、紫外線硬化させ、膜厚が0.1μmのプライマー層を形成した。
次に、巻き取り式の真空蒸着装置を用い、チャンバの到達真空度が4.0×10−3Pa(3.0×10−5torr)になるまで排気した後、酸素ガスをコーティングドラムの近傍に、チャンバ内の圧力が4.0×10−2Pa(3.0×10−4torr)に保って導入し、蒸発源の一酸化ケイ素をピアス型電子銃により、約10kwの電力で加熱して蒸着させ、コーティングドラム上を120m/minの速度で走行するPENフィルムのプライマー層上に、厚みが50nmである酸化珪素の層(第1のバリア層)を形成した。
この試料を7分割して、そのうち6つの試料について、第1のバリア層の表面に逆スパッタリング処理を行い、第1のバリア層の表面を粗面化処理した。スパッタガスはArガスを用い、ガス流量は30ml/minとした。また、処理圧力は2Paとした。さらに、プラズマ励起電力として、電極に、−200VのDCパルス電圧を印加した。処理時間は、下記表2に示した秒数とした。
この第1のバリア層上へ、下記の方法に従ってポリシラザン層から形成される第2のバリア層を形成した。
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ(登録商標) NN120−10、無触媒タイプ、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)の10重量%ジブチルエーテル溶液を、ポリシラザン層形成用塗布液とした。
上記ポリシラザン層形成用塗布液を、ワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)膜厚が300nmとなるように塗布し、温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分間処理して乾燥させ、さらに温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行って、ポリシラザン層を形成した。
(第2のバリア層の形成:紫外光によるポリシラザン層のシリカ転化処理)
次いで、上記形成したポリシラザン層に対し、下記の方法に従って、露点温度が−8℃以下の条件下で、シリカ転化処理を実施した。
Figure 2013226757
〈改質処理条件〉
稼動ステージ上に固定したポリシラザン層を形成した基材に対し、以下の条件で改質処理を行って、第2のバリア層を形成した。
エキシマランプ光強度:130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:1.0体積%
エキシマランプ照射時間:5秒
このようにしてガスバリア性フィルム11〜16を作製した。
得られたガスバリア性フィルム11〜16について、Ra、水蒸気バリア性(下記表2中の「WVTR」)、折り曲げ耐性(下記表2中の「屈曲性」)および透明性を評価し、これらの結果を下記表2に示す。
(実施例6〜10、比較例2)
〔ガスバリア性フィルムの作製〕
第1のバリア層を以下の方法で作製したこと以外は、実施例1〜6と同様にして、ガスバリア性フィルム21〜26を作製した。
実施例1で用いた基材と同じ基材を、ロール・トゥ・ロール(roll・to・roll)スパッターコーター中にスプライスロールを装填した。成膜チャンバの圧力を2.7×10−4Pa(2×10−6torr)までポンプで低下させた。2kWおよび600V、13Pa(0.1torr)の圧力で、51sccmのアルゴンおよび30sccmの酸素を含有する気体混合物、および0.43メートル/分のウェブ速度を使用して、Si−Al(95/5)ターゲット(アカデミー プリシジョン マテリアルズ(Academy Precision Materials)から市販品として入手可能)を反応性スパッタ法により、厚さ60nmのアルミニウムシリケート(SiAlO)を含む第1のバリア層を基材の上に形成した。
この試料を7分割して、そのうち6つの試料について、第1のバリア層の表面に逆スパッタリング処理を行い、第1のバリア層の表面を粗面化処理した。スパッタガスはArガスを用い、ガス流量は30ml/minとした。また、処理圧力は2Paとした。さらに、プラズマ励起電力として、電極に、−200VのDCパルス電圧を印加した。処理時間は、下記表2に示した秒数とした。
得られたガスバリア性フィルム21〜26について、Ra、水蒸気バリア性(下記表2中の「WVTR」)、折り曲げ耐性(下記表2中の「屈曲性」)および透明性を評価した。これらの結果を下記表2に示す。
Figure 2013226757
上記表2の結果から明らかなように、本発明のガスバリア性フィルム11〜15、21〜25は、比較例のガスバリア性フィルム16、26と比べて、ガスバリア性(WVTR)、折り曲げ耐性(屈曲性)に優れ、高い可視光透過性を有していることが分かる。
(実施例11〜40)
〔ガスバリア性フィルムの作製〕
第1のバリア層を以下の方法で作製したこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを作製した。
容量結合プラズマCVD(CCP−CVD法)による成膜を行う一般的なCVD装置(サムコ株式会社製、PD−220NA)を用いた。
実施例1で用いた基材と同じ基材を、真空チャンバ内の所定位置にセットして、真空チャンバを閉塞した。次いで、真空チャンバ内を排気して、圧力が0.01Paとなった時点で、反応ガスとして、シランガス(5体積%窒素希釈)および酸素ガス(5体積%窒素希釈)を導入した。なお、シランガスの流量は50sccm、酸素ガスの流量は5sccm、窒素ガスの流量は150sccmとした。さらに、真空チャンバ内の圧力が100Paとなるように、真空チャンバ内の排気を調整した。これにより、基材上に第1のバリア層として膜厚100nmの酸窒化珪素膜を形成した。この条件をD−1と称する。
さらに、酸窒化珪素の組成を変化させるために、表3に示すように成膜条件を変えた。
その後、第1のバリア層の表面に逆スパッタリング処理を行い、第1のバリア層の表面を粗面化処理した。スパッタガスはArガスを用い、ガス流量は30ml/minとした。また、処理圧力は2Paとした。さらに、プラズマ励起電力として、電極に、−200VのDCパルス電圧を印加した。処理時間は、下記表4および5に示した秒数とした。
得られた各ガスバリア性フィルムのRa、水蒸気バリア性(下記表4、5中の「WVTR」)、折り曲げ耐性(下記表4、5中の「屈曲性」)および透明性を評価した。評価結果を表4および5に示す。
Figure 2013226757
Figure 2013226757
Figure 2013226757
上記表4および5に記載の結果から明らかなように、本発明のガスバリア性フィルム(実施例11〜40)は、ガスバリア性(WVTR)、折り曲げ耐性(屈曲性)に優れ、高い可視光透過性を有していることが分かる。
(実施例41〜45、比較例3)
〔ガスバリア性フィルムの作製〕
基材として、特開2009−255040号公報の実施例1で使用している基材(PETフィルム、東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)U426、厚さ100μm、濡れ指数38、表面粗さRa=5nm)を用い、さらに逆スパッタリングの時間を変化させたこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム41〜45を作製した。
比較として、特開2009−255040号公報の実施例1に記載の、ポリシラザン層を改質処理した層が2層積層されているガスバリア性フィルム46も作製し、評価した。得られた各試料のRa、水蒸気バリア性(下記表6中の「WVTR」)、折り曲げ耐性(下記表6中の「屈曲性」)および透明性を評価した。評価結果を下記表6に示す。
Figure 2013226757
上記表6に記載の結果から明らかなように、本発明のガスバリア性フィルム41〜45は、比較例3のガスバリア性フィルムと比べて、ガスバリア性(WVTR)、折り曲げ耐性(屈曲性)に優れ、高い可視光透過性を有していることが分かる。この理由は、実施例のガスバリア性フィルムの第1のバリア層と第2のバリア層とは、形成方法や組成が異なっているため、層中のガスの通り道を互いに塞ぎ合うことができ、水蒸気透過度がより向上したものと考えられる。
一方、ポリシラザン層を改質処理した層が2層積層されている比較例3のガスバリア性フィルムは、層中のガスの通り道を塞ぎ合うことができず、水蒸気透過度が低下したものと考えられる。
(実施例46〜50)
〔ガスバリア性フィルムの作製〕
ポリシラザン層の塗布厚さを変え、第2のバリア層の膜厚を変化させたこと以外は、実施例3と同様にして、ガスバリア性フィルム51〜55を作製した。得られた各試料のRa、水蒸気バリア性(下記表7中の「WVTR」)、折り曲げ耐性(下記表7中の「屈曲性」)および透明性を評価した。評価結果を下記表7に示す。なお、下記表7には比較のため、実施例3の評価結果も示している。
Figure 2013226757
上記表7の結果から明らかなように、第2のバリア層の膜厚が20〜500nmであると、ガスバリア性(WVTR)、折り曲げ耐性(屈曲性)、および可視光透過性がより向上する。
(実施例51〜53、比較例4)
(高平滑化層用塗工液の調製)
活性エネルギー線硬化性化合物である多官能アクリレート混合物(荒川化学工業株式会社製、商品名「ビームセット577CB」、固形分濃度100%)100重量部に、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「イルガキュア(登録商標)907」]2重量部を添加して混合したのち、全体の固形分濃度が30重量%になるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)で希釈して、塗工液を調製した。
(高平滑化層の積層)
基材フィルムである厚さ188μmの両面易接着処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績株式会社製、商品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」)の表面に、上記で得られた塗工液を硬化後の厚さが10μmになるように、マイヤーバーNo.16で塗布した。次いで、90℃で3分間乾燥したのち、紫外線を光量250mJ/cmで照射して硬化させることにより高平滑化層をフィルム基材上に積層した。
(ガスバリア層の積層)
上記高平滑層の上に、実施例1と同様にして、第1のバリア層を設置し逆スパッタリングを行った後、第2のバリア層を設置して、ガスバリア性フィルム61〜64を作成した。
Figure 2013226757
上記表8の結果から明らかなように、本発明のガスバリア性フィルム61〜63は、比較例4のガスバリア性フィルムに比べて、ガスバリア性(WVTR)、折り曲げ耐性(屈曲性)に優れ、高い可視光透過性を有していることが分かる。

Claims (5)

  1. 基材の少なくとも一方の面に真空成膜法により形成される無機物を含む第1のバリア層と、
    前記第1のバリア層上にポリシラザンを含む層を改質処理して形成される第2のバリア層と、
    を含み、
    前記第1のバリア層の前記第2のバリア層と接する面の中心線平均表面粗さ(Ra)が0.1〜60nmである、ガスバリア性フィルム。
  2. 前記第1のバリア層が、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、炭化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、およびこれらの複合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記中心線平均表面粗さ(Ra)が0.3〜30nmである、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記第2のバリア層の膜厚が20〜500nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記第1のバリア層が酸窒化珪素およびアルミニウムシリケートの少なくとも一方を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
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