JP2015024384A - ガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐傷性および/または屈曲耐性に優れるガスバリア性フィルムおよびその製造方法を提供する。【解決手段】基材上にポリシラザンを含む塗布膜を形成し、前記塗布膜に波長172nmの真空紫外線を照射した後、波長150nm以下の真空紫外線を照射することにより、前記塗布膜の改質処理を行うことによって、バリア層を形成することを有する、ガスバリア性フィルムの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリア性フィルムの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、特定の波長の真空紫外光の照射により、改質の度合いを高めうるガスバリア性フィルムの製造方法に関する。また、本発明は、本発明の方法によって製造されるガスバリア性フィルムおよび本発明に係るガスバリア性フィルムを用いてなる電子デバイスに関する。
食品、包装材料、医薬品などの分野で、従来から樹脂フィルムの表面に金属酸化物などの蒸着膜や樹脂などの塗布膜を設けた、比較的簡易な水蒸気や酸素などの透過を防ぐガスバリア性フィルムが知られている。また、近年、液晶表示素子(LCD)、太陽電池(PV)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)などの電子デバイス分野においても、軽くて割れにくく、フレキシブル性を持たせることを目的として樹脂基材を用いたガスバリア性フィルムへの要望が高まっている。これらの電子デバイスにおいては、その使用形態から高温高湿下でも耐えうる、さらに高いレベルの水蒸気バリア性が求められている。
このようなガスバリア性フィルムを製造する方法としては、主に、ドライ法として、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法)によってフィルムなどの基材上にガスバリア層を形成する方法や、ウエット法として、ポリシラザンを主成分とする塗布液を基材上に塗布した後、塗膜に表面処理(改質処理)を施してガスバリア層を形成する方法が知られている。ドライ法とは異なり、ウェット法は大型の設備は必要とせず、さらに基材の表面粗さに影響されず、ピンホールもできないので、再現性良く均一なガスバリア膜を得る手法して注目されている。
従来知られているポリシラザンの改質方法としては、エキシマランプ(ピーク波長172nm近傍)などを用いて真空紫外光照射する方法やプラズマ処理する方法がある(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、真空紫外エキシマランプ照射したポリシラザン膜を積層することにより、フレキシブルなガスバリアフィルムを製造することが記載される。当該方法により得られるガスバリアフィルムは、欠陥がなく表面が平滑であり、クラックも生じにくく、ガスバリア性に優れる。
特許文献2には、酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下で、ポリシラザン膜にプラズマ照射または紫外線照射することにより、ガスバリア性フィルムを製造することが記載される。当該方法により得られるガスバリアフィルムは、水蒸気バリア性や酸素バリア性等のガスバリア性や耐擦傷性に優れる。
特許文献3には、酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下で、ポリシラザン膜に波長150nm以下の光照射(プラズマ処理)することにより、ガスバリア性フィルムを製造することが記載される。当該方法により得られるガスバリアフィルムは、水蒸気バリア性や酸素バリア性等のガスバリア性、耐擦傷性、耐湿熱性に優れる。
特開2009−255040号公報 国際公開第2011/007543号 特開2012−143996号公報
上記フレキシブルな電子デバイスの基材として用いる場合に求められる特性としては、高いガスバリア性、耐湿熱性に加えて、洗浄時、搬送時、ハンドリング時などの取り扱い時におけるバリアフィルム表面の耐傷性、屈曲耐性も重要な特性であり、上記取り扱い後も高いバリア性が維持されていることが強く求められる。しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のガスバリア性フィルムは、十分な耐傷性や屈曲耐性を発揮できない。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、耐傷性に優れるガスバリア性フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、屈曲耐性に優れるガスバリア性フィルムおよびその製造方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、本発明に係るガスバリア性フィルムを用いてなる電子デバイスを提供することである。
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、ポリシラザン膜の改質を、波長172nmの真空紫外線及び波長150nm以下の真空紫外線をこの順で照射して行うことによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記諸目的は、基材上にポリシラザンを含む塗布膜を形成し、前記塗布膜に波長172nmの真空紫外線を照射した後、波長150nm以下の真空紫外線を照射することにより、前記塗布膜の改質処理を行うことによって、バリア層を形成することを有する、ガスバリア性フィルムの製造方法によって達成される。
本発明によれば、耐傷性及び屈曲耐性に優れるガスバリア性フィルムが提供できる。
本発明は、基材上にポリシラザンを含む塗布膜(ポリシラザン塗膜)を形成し、前記塗布膜に波長172nmの真空紫外線を照射した後、波長150nm以下の真空紫外線を照射することにより、前記塗布膜の改質処理を行うことによって、バリア層を形成することを有する、ガスバリア性フィルムの製造方法を提供する。また、本発明の方法によって製造されるガスバリア性フィルムをも提供する。
従来、様々な方法によって、ガスバリア性フィルムのガスバリア性をはじめとする諸特性を向上させることが試みられていた。例えば、上記特許文献2では、アルゴンガスを用いた真空プラズマ処理後に、波長172nmの真空紫外線を照射することによって、ガスバリア性フィルムを製造することが記載されている(特許文献2の実施例11)。また、特許文献3にも、酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下での150nm以下のプラズマ処理後にさらに真空紫外エキシマランプ照射(172nmの真空紫外線照射)を行うことによって、ガスバリア性フィルムを製造することが記載されている(特許文献3の段落「0097」〜「0098」)。しかしながら、上記した方法によって製造されたガスバリア性フィルムは、ガスバリア性、過酷な条件での耐傷性(例えば、スチールウールで表面をこすった後のバリア性)、屈曲耐性(屈曲処理後のバリア性)が十分でないことが判明した(下記比較例7参照)。
これに対して、本発明は、ポリシラザン膜の改質を、ポリシラザン塗膜に対して、波長172nmの真空紫外線及び波長150nm以下の真空紫外線をこの順で照射して行うことを特徴とする。当該工程によって製造されるガスバリア性フィルムは、ガスバリア性、過酷な条件での耐傷性(例えば、スチールウールで表面をこすった後のバリア性)、屈曲耐性(屈曲処理後のバリア性)に優れる。ここで、本発明の構成による上記作用効果の発揮のメカニズムは以下のように推測される。なお、本発明は下記に限定されるものではない。
すなわち、例えば、上記特許文献1によるように、172nmの真空紫外線照射のみによりポリシラザン膜を改質した場合には、改質膜が十分緻密な構造を有さないため、ガスバリア性、耐傷性及び屈曲耐性が十分でない(下記比較例1参照)。また、特許文献3によるように、波長150nm以下の真空紫外線照射のみによりポリシラザン膜を改質した場合には、波長172nmの真空紫外線照射による場合に比べると、表層部分の改質膜はより緻密な構造となる。しかし、波長の短い真空紫外線(光)は、波長172nmの真空紫外線(光)に比べると、ポリシラザン塗膜による吸収が大きく、膜厚方向への光の侵入が浅い。このため、改質部分が薄いため、上記に比べると、耐傷性は向上できるものの、ガスバリア性、耐傷性及び屈曲耐性が十分であるとは言い難い(下記比較例2参照)。加えて、特許文献2や3によるように、波長150nm以下及び172nmの真空紫外線をこの順で照射してポリシラザン膜を改質した場合には、最初に波長150nm以下の真空紫外線照射を行うため、次に、172nmの真空紫外線照射を行っても、表層の緻密な改質部分により172nmの真空紫外線(光)は膜厚方向に深く侵入できないため、ガスバリア性、耐傷性及び屈曲耐性は、波長150nm以下の真空紫外線照射のみの場合と実質的に変わらない。これに対して、本発明によるように、波長172nm及び波長150nm以下の真空紫外線をこの順で照射する場合には、172nmの真空紫外線(光)が膜厚方向にかなり侵入した(改質が膜厚方向に進行した)状態で、波長150nm以下の真空紫外線照射による改質が行われるため、波長150nm以下の真空紫外線(光)が膜厚方向により深く侵入できる(改質がより膜厚方向に行われる)。このため、緻密な構造をポリシラザン改質膜表面からより深い部分にまで形成することができる。ゆえに、本発明に係るガスバリア性フィルムは、ガスバリア性、耐傷性及び屈曲耐性を有効に向上できる。
したがって、本発明の方法によって製造されるガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性(例えば、低い水蒸気透過率及び酸素透過率)を有する。また、本発明のガスバリア性フィルムは、例えば、スチールウールで表面をこすった後または屈曲処理後であっても優れたバリア性を維持できる(耐傷性や屈曲耐性に優れる)。このため、本発明の方法によって製造されるガスバリア性フィルムは、高いガスバリア性が要求される電子デバイス、特にフレキシブル電子デバイス等のパッケージ、光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子等の電子デバイスにも好適に適用できる。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
<ガスバリア性フィルム>
本発明に係るガスバリア性フィルムは、基材上に形成されたポリシラザン塗布膜に、波長172nm及び波長150nm以下の真空紫外線をこの順で照射されることによって改質されたポリシラザン層をバリア層(単に、ガスバリア層、バリア膜ともいう)として有する。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、基材及びバリア層を必須に有するが、他の部材をさらに含むものであってもよい。本発明に係るガスバリア性フィルムは、例えば、基材とバリア層との間に;(複数のバリア層が存在する場合には)バリア層間に;または基材のバリア層が形成されていない他方の面に、他の部材を有していてもよい。ここで、他の部材としては、特に制限されず、従来のガスバリア性フィルムに使用される部材が同様にしてあるいは適宜修飾して使用できる。具体的には、ハードコート層、アンカーコート層、ブリードアウト防止層、ならびに保護層、吸湿層や帯電防止層の機能化層、ならびに(カールバランス調整やデバイス作製プロセス耐性、ハンドリング適性等を改良するための)バックコート層などが挙げられる。上記他の部材は、単独で使用されてもあるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、他の部材は、単層として存在してもあるいは2層以上の積層構造を有していてもよい。
また、上記に代えてまたは上記に加えて、バリア層は、単層(1塗布工程で作製可能な層)として存在してもあるいは2層以上の積層構造を有していてもよい。複数の層を設けることで、更にガスバリア性を向上させることができる。後者の場合には、1層または複数層のバリア層が1つのユニットとして存在しても、あるいは上記ユニットが2以上積層した状態で存在していてもよい。また、基材の片面のみにガスバリア層を設けてもよいが、基材を挟んで両面に同様のガスバリア層を設けてもよい。
本明細書において、「ガスバリア性」とは、JIS K7129:1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(60±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、3×10-3g/(m2・24h)以下である、およびJIS K7126:1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10-3ml/m2・24h・atm以下(1atmとは、1.01325×105Paである)である、の少なくとも一方を満たす場合を意図し、好ましくは上記水蒸気透過度及び酸素透過度双方を満たすことが好ましい。
[基材]
本発明に係るガスバリア性フィルムは、通常、基材として、プラスチックフィルムまたはシートが用いられ、無色透明な樹脂からなるフィルムまたはシート(樹脂基材)が好ましく用いられる。用いられるプラスチックフィルムは、バリア層、ハードコート層等を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明に係るガスバリア性フィルムを有機EL素子等の電子デバイスの基板として使用する場合は、前記基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の樹脂基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。即ち、これらの用途に本発明のガスバリア性フィルムを用いる場合、ガスバリア性フィルムは、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリア性フィルムにおける基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、ガスバリア性フィルムを前記のような温度の工程に流す際に基板寸法が安定せず、熱膨張および収縮に伴い、遮断性性能が劣化する不都合や、或いは、熱工程に耐えられないという不具合が生じやすくなる。15ppm/K未満では、フィルムがガラスのように割れてしまいフレキシビリティが劣化する場合がある。
基材のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。また、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等も使用できる。
コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性等の観点から、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムも好ましく用いることができる。
本発明に係るガスバリア性フィルムを偏光板と組み合わせて使用する場合、ガスバリア性フィルムのバリア層がセルの内側に向くように配置することが好ましい。このとき、偏光板よりセルの内側にガスバリア性フィルムが配置されることになるため、ガスバリア性フィルムのレターデーション値が重要になる。このような態様でのガスバリア性フィルムの使用形態は、レターデーション値が10nm以下の基材フィルムを用いたガスバリア性フィルムと円偏光板(1/4波長板+(1/2波長板)+直線偏光板)を積層して使用するか、あるいは1/4波長板として使用可能な、レターデーション値が100nm〜180nmの基材フィルムを用いたガスバリア性フィルムに直線偏光板を組み合わせて用いるのが好ましい。
レターデーションが10nm以下の基材フィルムとしては、例えば、セルローストリアセテート(富士フィルム株式会社製:フジタック(登録商標))、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製:ピュアエース(登録商標)、株式会社カネカ製:エルメック(登録商標))、シクロオレフィンポリマー(JSR株式会社製:アートン(登録商標)、日本ゼオン株式会社製:ゼオノア(登録商標))、シクロオレフィンコポリマー(三井化学株式会社製:アペル(登録商標)(ペレット)、ポリプラスチック株式会社製:トパス(登録商標)(ペレット))、ポリアリレート(ユニチカ株式会社製:U100(ペレット))、透明ポリイミド(三菱ガス化学株式会社製:ネオプリム(登録商標))等を挙げることができる。
また1/4波長板としては、上記のフィルムを適宜延伸することで所望のレターデーション値に調整したフィルムを用いることができる。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、有機EL素子等の電子デバイスとして利用されることから、プラスチックフィルムは透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、本発明に係るガスバリア性フィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
本発明に係るガスバリア性フィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるため特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは5μm〜500μmであり、より好ましくは25〜250μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落番号「0036」〜「0038」に記載されているものを好ましく採用できる。
基材は、表面の平滑性が高いものが好ましい。表面の平滑性としては、平均表面粗さ(Ra)が2nm以下であるものが好ましい。下限は特にないが、実用上、0.01nm以上である。必要に応じて、基材の両面、少なくともバリア層を設ける側を研摩し、平滑性を向上させておいてもよい。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明で用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
基材の少なくとも本発明に係るバリア層を設ける側には、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、またはプラズマ処理や、後述するプライマー層の積層等を行うことが好ましく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行うことがより好ましい。
また、基材上にアンカーコート層(易接着層)を形成してもよい。また、シランカップリング剤のように単分子レベル〜ナノレベルの薄膜を形成し、層界面で分子結合を形成できるような材料でアンカーコート層を設けることも、より高い密着性が期待できる点で好ましく用いることができる。また、基材上に更に樹脂などから成る応力緩和層や樹脂基材の表面を平滑化するための平滑層(ハードコート層)、樹脂基材からのブリードアウトを防止するためのブリードアウト防止層などを別途設けてもよい。
[バリア層(ガスバリア層)]
本発明に係るバリア層(ガスバリア層)は、基材の少なくとも一方の面に形成される層であり、ポリシラザンを含む塗布膜(ポリシラザン塗布膜)に波長172nmの真空紫外線を照射した後、波長150nm以下の真空紫外線を照射して、ポリシラザン塗布膜の改質処理を行うことによって、形成される。より具体的には、バリア層は、(i)ポリシラザンを含む塗布液を塗布(湿式塗布)してポリシラザン塗布膜を形成し、(ii)このポリシラザン塗布膜に波長172nmの真空紫外線を照射した後、(iii)波長150nm以下の真空紫外線を照射して、ポリシラザン塗布膜の改質処理を行うことによって、形成される。なお、このようにして形成されたバリア層は、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si34)、酸窒化ケイ素(SiOxy)などからなる群より選択される少なくとも一種の無機物からなる。また、ポリシラザン塗布膜が改質処理を施すことによって無機膜からなるバリア層に転化形成されていることについては、XPS表面分析によってSi原子、N原子、O原子などの各原子組成比を求めることで確認できる。
以下、上記本発明の製造方法の好ましい実施形態を説明する。なお、本発明は、下記形態に限定されない。
(工程(i))
本工程は、ポリシラザンを含む塗布液を塗布してポリシラザン塗布膜を形成する。ここで、本工程(i)は、1回行われても(1層が単独で配置されても)、あるいは複数回行われても(2層以上が積層されて配置されても)いずれでもよい。
ポリシラザンは、構造内に珪素−窒素(Si−N)結合を有するポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO2、Si34及びこれらの中間固溶体SiOxy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。好ましくは、ポリシラザンは、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。このような構造を有するポリシラザン塗布は、比較的低温でセラミック化してシリカに変性するため、基材を損なうことなく塗布膜を形成できる。また、このような一般式(1)のポリシラザンは、例えば、特開平8−112879号公報に記載されている。なお、バリア層は、ポリシラザンを1種単独で含んでも、または2種以上のポリシラザンを含んでもよい。
Figure 2015024384
上記一般式(1)において、R1、R2及びR3は、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基を表す。この際、R1、R2及びR3は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。ここで、アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基が挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。また、アリール基としては、炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。より具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などの縮合多環炭化水素基が挙げられる。(トリアルコキシシリル)アルキル基としては、炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換されたシリル基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基が挙げられる。より具体的には、3−(トリエトキシシリル)プロピル基、3−(トリメトキシシリル)プロピル基などが挙げられる。上記R1〜R3に場合によって存在する置換基は、特に制限はないが、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、メルカプト基(−SH)、シアノ基(−CN)、スルホ基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)、ニトロ基(−NO2)などがある。なお、場合によって存在する置換基は、置換するR1〜R3と同じとなることはない。例えば、R1〜R3がアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。これらのうち、好ましくは、R1、R2及びR3は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ビニル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基または3−(トリメトキシシリルプロピル)基であり、水素原子であることが特に好ましい。
また、上記一般式(1)において、nは、式:−[Si(R1)(R2)−N(R3)]−の構成単位の数を表わす整数であり、一般式(1)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
バリア層の膜としての緻密性の観点からは、R1、R2およびR3のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPS)が特に好ましい。パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6員環および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されており、その分子量は、数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算)であり、液体または固体の物質である。ポリシラザンは、有機溶媒に溶解した溶液の状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−10、NN120−20、NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL120−20、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
本発明に係るケイ素化合物は、式:−[Si(R1)(R2)−N(R3)]−の構成単位に加えて、他の構成単位を含んでもよい。このようなケイ素化合物は、特に制限されないが、例えば、下記一般式(2)または(3)で示される構造を有するケイ素化合物が好ましく使用される。
Figure 2015024384
Figure 2015024384
上記一般式(2)において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記における、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(1)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(2)において、nおよびpは、整数であり、一般式(2)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、nおよびpは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(2)のポリシラザンのうち、R1、R3及びR6が各々水素原子を表し、R2、R4及びR5が各々メチル基を表す化合物;R1、R3及びR6が各々水素原子を表し、R2、R4が各々メチル基を表し、R5がビニル基を表す化合物;R1、R3、R4及びR6が各々水素原子を表し、R2及びR5が各々メチル基を表す化合物が好ましい。
上記一般式(3)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記における、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(1)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(3)において、n、pおよびqは、整数であり、一般式(3)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n、pおよびqは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(3)のポリシラザンのうち、R1、R3及びR6が各々水素原子を表し、R2、R4、R5及びR8が各々メチル基を表し、R9が(トリエトキシシリル)プロピル基を表し、R7がアルキル基または水素原子を表す化合物が好ましい。
ここで、Siと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地である基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。このため、用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
本発明で使用できるポリシラザンの別の例としては、以下に制限されないが、例えば、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等の、低温でセラミック化するポリシラザンが挙げられる。
本発明に係るバリア層におけるポリシラザンの含有率としては、バリア層の全重量を100重量%としたとき、100重量%でありうる。また、バリア層がポリシラザン以外のものを含む場合には、バリア層におけるポリシラザンの含有率は、10重量%以上99重量%以下であることが好ましく、40重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、特に好ましくは70重量%以上95重量%以下である。
ここで、塗布方法としては、従来公知の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、ワイヤレスバーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
また、上記したように、バリア層は、2層以上の積層体であってもよい。ここで、バリア層が2層以上の積層体である場合のバリア層の形成方法としては、特に制限されず、逐次重層塗布方式であってもまたは同時重層塗布方式であってもよい。各層の塗布、乾燥を繰り返す逐次重層塗布方式としては、リバースロールコーティング、グラビアロールコーティング等のロール塗布方式、ブレードコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等が挙げられる。また、同時重層塗布方式としては、複数のコーターを用いて既塗布層の乾燥前に次の層を塗布して複数層を同時に乾燥させたり、スライドコーティングやカーテンコーティングを用いて、スライド面で複数の塗布液を積層させて塗布したりする方式がある。
また、塗布液は、ポリシラザン及び必要であれば触媒を、溶媒に溶解して調製できる。ここで、塗布液を調製するための溶剤としては、ポリシラザンを溶解できるものであれば特に制限されないが、ポリシラザンと容易に反応してしまう水及び反応性基(例えば、ヒドロキシル基、あるいはアミン基等)を含まず、ポリシラザンに対して不活性の有機溶剤が好ましく、非プロトン性の有機溶剤がより好ましい。具体的には、ポリシラザン層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、非プロトン性溶剤;例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒;塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類:例えば、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、モノ−及びポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)などを挙げることができる。上記溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等の目的にあわせて選択され、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。塗布液におけるポリシラザン(ポリシラザン)の濃度は、特に制限されず、バリア層の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは0.2〜80重量%、より好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは5〜35重量%である。
上記塗布液は、酸窒化珪素への変性を促進するために、ポリシラザンとともに触媒を含有させてもよい。本発明に適用可能な触媒としては、塩基性触媒が好ましく、特に、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等のアミン触媒、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N−複素環式化合物が挙げられる。これらのうち、アミン触媒を用いることが好ましい。この際添加する触媒の濃度としては、ポリシラザンを基準としたとき、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜7重量%の範囲である。触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、および膜密度の低下、膜欠陥の増大のなどを避けることができる。
また、上記塗布液に、必要に応じて下記に挙げる添加剤を用いることができる。例えば、セルロースエーテル類、セルロースエステル類;例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート等、天然樹脂;例えば、ゴム、ロジン樹脂等、合成樹脂;例えば、重合樹脂等、縮合樹脂;例えば、アミノプラスト、特に尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルもしくは変性ポリエステル、エポキシド、ポリイソシアネートもしくはブロック化ポリイソシアネート、ポリシロキサン等である。
このような塗布液を用いることにより、亀裂及び孔が無いガスに対する高いバリア作用に優れる緻密なガラス様のバリア層を製造することができる。
バリア層の厚さ(塗布厚さ)は、特に制限されず、所望のバリア層の厚さ(乾燥膜厚)に応じて適切に設定され得る。例えば、バリア層の厚さ(塗布厚さ)は、乾燥後の厚さ(乾燥膜厚)として、1nm〜100μm程度であることが好ましく、10nm〜10μm程度であることがより好ましく、50nm〜1μmであることがより好ましく、100〜500nmであることが特に好ましい。バリア層の膜厚が1nm以上であれば十分なバリア性(例えば、低酸素透過性、低水蒸気透過性)を得ることができ、100μm以下であれば、バリア層形成時に安定した塗布性を得ることができ、かつ高い光線透過性を実現できる。なお、バリア層が積層される場合には、バリア層全体の厚さが上記したような厚さになることが好ましい。
本明細書において、層(バリア層、他の層を含む)の厚さ(乾燥膜厚)は、各試料を、以下のFIB加工装置により薄片を作製した後、断面のTEM観察を行うことによって測定される。また、層の改質の有無は、上記と同様にして、以下のFIB加工装置により薄片を作製した後、この試料に電子線を照射し続けると、電子線ダメージを受ける部分とそうでない部分にコントラスト差が現れる。この際、改質処理を受けた部分は緻密化するために電子線ダメージを受けにくいが、そうでない部分は電子線ダメージを受け変質が確認される。このようにして確認できた断面TEM観察により、改質部分及び未改質部分の膜厚の算出も可能になる。
Figure 2015024384
上記塗布後は、塗布膜を乾燥することによって、バリア層が形成されうる。塗布膜は溶媒が除去された均一な乾燥膜を得る上で、アニールすることが好ましい。ここで、乾燥(アニール)条件は、特に制限されない。例えば、均一な乾燥膜の形成しやすさの観点から、乾燥(アニール)温度は、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは70〜160℃である。また、乾燥(アニール)時間は、好ましくは5秒〜24時間程度、さらに好ましくは10秒〜2時間程度である。このように、次工程の改質処理前に、このような条件で乾燥(アニール)を行うことにより、均一な塗布膜を安定的に得ることができる。なお、アニールは、一定温度で行ってもよく、段階的に温度を変化させてもよく、連続的に温度を変化(昇温及び/または降温)させてもよい。
また、ポリシラザンを含有する塗布液及び塗膜を一旦、湿度の高い状態に晒してしまうと、その塗布液や塗膜から脱水するのは困難なこと、更には加水分解反応が進行をはじめてしまうことから、塗布液の調製段階から改質処理が終わるまでの間を露点10℃(25℃39%RH)以下の雰囲気、更に好ましくは露点8℃(25℃10%RH)以下の雰囲気で保管若しくは取り扱うことで膜内のSi−OH生成を抑制することが可能となる。より好ましくは露点−31℃(25℃1%RH)以下である。また、薄膜が形成されると塗膜体積あたりの表面積が増えて水蒸気の影響が大きくなることから、特に、ポリシラザン塗布膜形成から波長172nmの真空紫外線(VUV光)照射による改質処理までの間は雰囲気湿度の制御が重要である。下記に記載の改質処理における低湿度環境下とは、上記雰囲気下をいう。なお、露点温度とは、雰囲気中の水分量を表す指標であり、露点温度とは、水蒸気を含む空気を冷却したとき、凝結が始まる温度をいう。露点温度は、露点温度計により直接測定を行うか、気温と相対湿度から水蒸気圧を求め、その水蒸気圧を飽和水蒸気圧とする温度を求めることにより得ることができる。相対湿度が100%の場合は現在の温度がそのまま露点温度になる。
(工程(ii))
本工程は、上記工程(i)で形成されたポリシラザン塗布膜に波長172nmの真空紫外線を照射する。紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすい。このため、ガスバリア性の向上の観点から、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度および/または水蒸気濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、波長172nmの真空紫外線照射は、酸素濃度の低い雰囲気で行うことが好ましい。ここで、酸素濃度(処理環境の酸素濃度)は、特に制限されないが、好ましくは1体積%(10,000体積ppm)以下、より好ましくは0.5体積%(5000体積ppm)以下、さらにより好ましくは0.1体積%(1000体積ppm)以下である。上記雰囲気であれば、バリア性能の劣化を有効に抑制・防止できる。なお、酸素濃度は、上限のみが記載されているが、上記したような上限以下であれば、本発明による効果は達成できるため、下限は特に制限されず、通常の装置において可能である下限が同様にして設定されうる。また、水蒸気濃度(処理環境の水蒸気濃度)は、特に制限されないが、好ましくは1000〜4000体積ppmの範囲である。
以下に、波長172nmの真空紫外光照射によりパーヒドロポリシラザンが転化される際の反応機構を説明するが、当該反応機構は推定されるものであり、実際の反応が説明される反応機構と異なる経路で進行しても本発明の技術的範囲に含まれる。
(I)脱水素、およびこれに伴うSi−N結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−H結合やN−H結合は、真空紫外光照射による励起等で比較的容易に切断され、不活性雰囲気下ではSi−Nとして再結合すると考えられる(Siの未結合手が形成される場合もある)。すなわち、酸化することなくSiNy組成として硬化する。この場合はポリマー主鎖の切断は生じない。Si−H結合やN−H結合の切断は触媒の存在や、加熱によって促進される。切断されたHはH2として膜外に放出される。
(II)加水分解・脱水縮合によるSi−O−Si結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−N結合は水により加水分解され、ポリマー主鎖が切断されてSi−OHを形成する。2つのSi−OHが脱水縮合すると、Si−O−Si結合を形成して硬化する。これは大気中でも生じうる反応であるが、不活性雰囲気下における真空紫外光照射では、照射の熱によって基材からアウトガスとして生じる水蒸気が主な水分源となると考えられる。水分が過剰となると脱水縮合しきれないSi−OHが残存し、SiO2.12.3の組成で表されるガスバリア性の低い硬化膜となる。
(III)一重項酸素による直接酸化、Si−O−Si結合の形成
真空紫外光照射中、適当量の酸素が存在すると、酸化力が非常に強い一重項酸素が形成される。パーヒドロポリシラザン中のHやNは、Oと置き換わってSi−O−Si結合を形成して硬化する。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。
(IV)真空紫外光照射・励起によるSi−N結合切断を伴う酸化
真空紫外光のエネルギーはパーヒドロポリシラザン中のSi−Nの結合エネルギーよりも高いため、Si−N結合は切断され、周囲に酸素源(酸素、オゾン、水等)が存在すると酸化されてSi−O−Si結合(場合によってはSi−O−N結合)を生じると考えられる。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。
ポリシラザン化合物を含有する層に真空紫外光照射を施した層の酸化窒化ケイ素の組成の調整は、上述の(I)〜(IV)の酸化機構を適宜組み合わせて酸化状態を制御するこ
とで行うことができる。上述のように、当該酸化機構は、シラノールを経由することなく直接酸化されることから(光量子プロセスと呼ばれる光子の作用)、当該酸化過程において体積変化が少なく、高密度で欠陥の少ない酸化ケイ素膜および/または酸窒化ケイ素膜が得られうる。その結果、より緻密な酸化ケイ素膜および/または酸窒化ケイ素膜が得られうる。したがって、真空紫外光の照射によりポリシラザン化合物が改質されて得られるガスバリア層は、高いバリア性を有しうる。
波長172nmの真空紫外光の光源としては、特に限定されず、公知のものが使用されうる。例えば、エキシマランプ、特にキセノン(Xe)エキシマランプを好ましく使用できる。
Xeガスの原子は最外殻電子が閉殻となっており、化学的に非常に不活性であることから不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガス(励起原子)は、他の原子と結合して分子を形成することができる。例えば、希ガスがキセノンの場合には、下記反応が起こる。
Figure 2015024384
この際、励起されたエキシマ分子であるXe2 *が基底状態に遷移するとき、172nmのエキシマ光(真空紫外光)が発光する。上記エキシマランプは前記エキシマ光を利用する。前記エキシマ光を発生させる方法としては、例えば、誘電体バリア放電を用いる方法および無電極電界放電を用いる方法が挙げられる。
誘電体バリア放電とは、両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加した場合に、ガス空間に生じる雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電である。前記micro dischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると、誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。誘電体バリア放電は、このmicro dischargeは管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返していることから、肉眼でも分かる光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
また、無電極電界放電とは、容量性結合による無電極電界放電であり、別名RF放電とも呼ばれる。具体的には、誘電体バリア放電と同様にランプや電極等が配置され、前記電極に極間に印加される高周波は数MHzの高周波電圧を印加した場合に生じる空間的・時間的に一様な放電である。当該無電極電界放電を用いる方法では、チラツキが無く、長寿命のランプが得られうる。
誘電体バリア放電の場合にはmicro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ、外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。当該外部電極としては、光を遮らないように細い金属線を用いた網状の電極が用いられうる。しかしながら、前記外部電極は、真空紫外光照射によって発生するオゾン等により損傷しうる。そこで、電極の損傷を防ぐために、ランプの周囲、すなわち、照射装置内を窒素等の不活性ガスの雰囲気とし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。二重円筒型ランプは、外径が約25mmであるため、ランプ軸の直下とランプ側面とでは照射面までの距離の差を無視することができず、前記距離によっては照度に大きな差が生じうる。したがって、仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られるとは限らない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られうる。しかし、前記合成石英の窓は、高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じうる。
一方、無電極電界放電の場合には、外部電極を網状にする必要はなく、ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がりうる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用されうる。しかしながら、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため、一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。
細管ランプの管の外径は6〜12mmであることが好ましく、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は誘電体バリア放電であっても、無電極電界放電であってもよい。電極の形状はランプに接する面が平面であってもよいが、ランプの曲面に合わせた形状にすることでランプをしっかり固定でき、また、電極がランプに密着することで放電がより安定しうる。またアルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板としても機能しうる。
このようなエキシマ光(真空紫外光)の照射装置は、市販のランプ(例えば、ウシオ電機株式会社製、株式会社エム・ディ・コム(MDエキシマ社)製)を使用することが可能である。
エキシマランプは、エキシマ光が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されない点に特徴を有し、効率性が高い。また、余分な光が放射されないことから、対象物の温度を低く保つことができる。さらに、始動・再始動に時間を要さないことから、瞬時に点灯点滅が可能となる。特に、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの真空紫外光を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。当該Xeエキシマランプは、172nmと波長が短く、エネルギーが高いことから、有機化合物の結合の切断能が高いことが知られている。また、Xeエキシマランプは、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素であっても効率よく活性酸素やオゾンを発生させることができる。したがって、例えば、波長185nmの真空紫外光を発する低圧水銀ランプと対比すると、Xeエキシマランプは、高い有機化合物の結合切断能を有し、活性酸素やオゾンを効率的に発生させることができ、低温かつ短時間でポリシラザン化合物の改質処理をすることができる。また、Xeエキシマランプは、光の発生効率が高いため、低電力で瞬時に点灯点滅が可能であり、単一の波長を発光できることから、高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小等の経済的観点、および熱によるダメージを受けやすい基材を用いたガスバリア性フィルムへの適用等の観点からも好ましい。
このように、エキシマランプは光の発生効率が高いため、低電力で点灯させることができ、また、照射対象物の表面温度の上昇を抑制することができる。また、内部まで侵入する光子の数も増加するため改質膜厚の増加および/または膜質の高密度化が可能である。
真空紫外光照射の条件は、一般的に、照射強度と照射時間の積で表される積算光量を指標として転化反応を検討するが、酸化シリコンのように組成は同一であっても、様々な構造形態をとる材料を用いる場合には、照射強度の絶対値が重要になることもある。
真空紫外光照射の照射強度は、使用する基材やバリア層の組成、濃度等によっても異なるが、1mW/cm2〜100kW/cm2であることが好ましく、100mW/cm2〜10W/cm2であることがより好ましい。
真空紫外光照射の時間は、使用する基材やバリア層の組成、濃度等によっても異なるが、0.1秒〜10分であることが好ましく、0.5秒〜3分であることがより好ましい。
真空紫外光の積算光量は、特に制限されないが、200〜10000mJ/cm2であることが好ましく、1000〜8000mJ/cm2であることがより好ましい。真空紫外光の積算光量が200mJ/cm2以上であると、十分な改質が行われることにより高いバリア性が得られうることから好ましい。一方、真空紫外光の積算光量が10000mJ/cm2以下であると、基材が変形することなく平滑性の高いガスバリア層が形成されうることから好ましい。
また、紫外線照射と同時に該塗膜を加熱することも、反応(酸化反応、転化処理、改質処理ともいう)を促進するために好ましく用いられる。加熱の方法は、ヒートブロック等の発熱体に基板を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターの様な赤外領域の光を用いた方法等が挙げられるが、特に限定はされない。塗膜の平滑性を維持できる方法を適宜選択してよい。真空紫外光の照射条件は、適用する基材によっても異なり、当業者によって適宜決定されうる。例えば、真空紫外光の照射(加熱)温度は、50〜200℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。照射条件が上記範囲内であると、基材の変形や強度の劣化等が生じにくく、基材の特性が損なわれないことから好ましい。照射(加熱)時間としては1秒〜10時間の範囲が好ましく、さらに好ましくは10秒〜1時間の範囲で加熱することである。
紫外線照射の対象となる塗膜は、塗布時に酸素および微量の水分が混入し、さらには基材や隣接層等にも吸着酸素や吸着水が存在しうる。当該酸素等を利用すれば、照射庫内に新たに酸素を導入しなくとも、改質処理を行う活性酸素やオゾンの発生に要する酸素源は十分でありうる。また、Xeエキシマランプのような172nmの真空紫外光は酸素により吸収されるため、塗膜に到達する真空紫外線量が減少する場合があることから、真空紫外光の照射時には、酸素濃度を低く設定し、真空紫外光が効率よく塗膜まで到達できる条件とすることが好ましい。
真空紫外光の照射雰囲気中の酸素以外のガスは、乾燥不活性ガスであることが好ましく、コストの観点から、乾燥窒素ガスであることがより好ましい。なお、酸素濃度は、照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガス等のガス流量を計測し、流量比を変えることで調整することができる。
発生させた真空紫外光は、照射効率向上と均一な照射を達成する観点から、発生源からの真空紫外光を反射板で反射させてから改質前のバリア層に照射してもよい。また、真空紫外光の照射は、バッチ処理にも連続処理にも適用可能であり、使用する基材の形状によって適宜選定されうる。例えば、基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら連続的に真空紫外光を照射して改質を行うことが好ましい。
上述の改質処理によって得られるバリア層の膜厚や密度等は、塗布条件や真空紫外光照射の条件等を適宜選択することにより制御することができる。例えば、真空紫外光の照射方法を、連続照射、複数回に分割した照射、複数回の照射が短時間な、いわゆるパルス照射等から適宜選択することで、バリア層の膜厚や密度等が制御されうる。
(工程(iii))
本工程は、上記工程(ii)で波長172nmの真空紫外線が予め照射されたポリシラザン塗布膜に、150nm以下の真空紫外線を照射する。かような光照射を行うことにより、塗布膜が有するSi−H結合やN−H結合に由来するH(水素原子)が効率よく膜外に除去され、膜がより緻密になる。また、予め波長172nmの真空紫外線照射を行っているため、改質が膜厚方向にある程度進行した状態となる。この状態で、次に、波長150nm以下の真空紫外線照射を行うことにより、波長150nm以下の真空紫外線が膜厚方向により深く侵入できる。このため、本工程(iii)により、高い緻密構造を有する改質膜を膜厚方向により深く(より大きな膜厚で)形成できる、即ち、緻密な構造を膜厚方向により深くまで有するバリア層を形成できる。
紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすい。このため、ガスバリア性の向上の観点から、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度および/または水蒸気濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、波長172nmの真空紫外線照射は、酸素濃度の低い雰囲気で行うことが好ましい。ここで、酸素濃度(処理環境の酸素濃度)は、特に制限されないが、好ましくは1体積%(10,000体積ppm)以下、より好ましくは0.5体積%(5000体積ppm)以下、さらにより好ましくは0.1体積%(1000体積ppm)以下である。上記雰囲気であれば、バリア性能の劣化を有効に抑制・防止できる。なお、酸素濃度は、上限のみが記載されているが、上記したような上限以下であれば、本発明による効果は達成できるため、下限は特に制限されず、通常の装置において可能である下限が同様にして設定されうる。また、水蒸気濃度(処理環境の水蒸気濃度)は、特に制限されないが、好ましくは1000〜4000体積ppmの範囲である。
すなわち、波長172nmの真空紫外線による照射(工程(ii))および波長150nm以下の真空紫外線による照射(工程(iii))の少なくとも一方が、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気中で行われることが好ましく、波長172nmの真空紫外線による照射(工程(ii))および波長150nm以下の真空紫外線による照射(工程(iii))の双方が、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気中で行われることがより好ましい。
なお、真空紫外光の照射雰囲気中の酸素以外のガスは、乾燥不活性ガスであることが好ましく、コストの観点から、乾燥窒素ガスであることがより好ましい。なお、酸素濃度は、照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガス等のガス流量を計測し、流量比を変えることで調整することができる。
また、相対湿度を適宜調節してもよく、この際、相対湿度は、特に制限されないが、好ましくは0.5%RH以下、より好ましくは0.2%RH以下、さらに好ましくは相対湿度0.1%RH以下、さらに好ましくは、相対湿度0.05RH%以下である。また、水蒸気濃度(室温23℃における水蒸気分圧/大気圧)は、好ましくは140ppm以下、より好ましくは56ppm以下、さらに好ましくは28ppm以下である。
光照射としては、波長150nm以下の光を照射する。波長が30〜150nmの範囲の光を照射することが好ましい。波長150nm以下の光を照射する方法としては、特に制限されないが、光の照射量の低減、高エネルギーである光を得ることができる、光の効率的な利用等の観点から、プラズマで発生した真空紫外光を全て直接照射できるプラズマ処理が好ましい。
以下、プラズマ処理について以下に説明する。
(プラズマ処理)
プラズマ処理は、前記のように、酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気で実施することが好ましい。酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気で実施する方法として、装置内を減圧にする方法、ガスフローする方法等が挙げられるが、減圧にする方法が好ましい。装置内の圧力を、真空ポンプを用いて大気圧から好ましくは100Pa以下、より好ましくは20Pa以下まで減圧した後、所定のガスを導入し、所定の圧力にすることで、プラズマで励起する雰囲気をつくる。
減圧下における酸素濃度および水蒸気濃度は、一般的に、酸素分圧および水蒸気分圧で表される。具体的には、酸素濃度は、上記したような雰囲気であることが好ましいが、より好ましくは0.5体積%(5000体積ppm)以下、より好ましくは0.1体積%(1000体積ppm)以下になるまで減圧した後、雰囲気ガスを導入することで行われる。また、水蒸気濃度は、上記したような雰囲気であることが好ましいが、より好ましくは10体積ppm以下、特に好ましくは1体積ppm以下になるまで減圧した後、雰囲気ガスを導入することで行われる。なお、上記酸素濃度および水蒸気濃度は、上限のみが記載されているが、上記したような上限以下であれば、上記効果は達成できるため、下限は特に制限されず、通常の装置において可能である下限が同様にして設定されうる。
プラズマによって励起された雰囲気ガスはエネルギーを放出して失活するが、その際、気体の種類と圧力に依存して、種々の波長の真空紫外光を放出する。プラズマ処理は、真空紫外光を放出する励起種で大別すると、(1)低圧プラズマ処理と、(2)大気圧近傍のプラズマ処理、との2つの方法に分けられる。
(1)低圧プラズマ処理
低圧プラズマ処理は、減圧することによって酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気にした後、ガスを装置内に導入することで行われる。低圧プラズマ処理では、低圧下のプラズマにより励起された原子、分子が基底状態もしくは下の準位に落ちる際の真空紫外の発光を利用する。低圧プラズマで発生する真空紫外光の波長は、プラズマを発生させるガス種に依存する。波長は、短い方がよく、波長が125nm以下の真空紫外の発光を利用した方がより好ましい。しかしながら、波長が短過ぎると、高いエネルギー準位に励起される頻度は低くなるため、発光強度は著しく減少する。実質的に低圧プラズマ処理で利用できる比較的高強度の真空紫外光の波長は、50nm以上となる。即ち、低圧プラズマ処理で利用する光の波長として50〜125nmの範囲がより好ましい。
プラズマで形成された励起状態の原子が発した真空紫外光が、別の基底状態の原子に吸収され、その原子の励起に使われる自己吸収の影響がある。そのため、あまり圧力が高いと、発生した真空紫外光は雰囲気ガスの原子や分子に吸収され、塗布膜に効率よく照射されない虞がある。よって、圧力は100Pa以下が好ましい。一方、圧力があまり低く過ぎると、プラズマの発生が困難になる場合がある。よって、圧力の下限はプラズマの発生方式により異なるが、概ね0.1Pa以上が好ましい。
本発明で用いられる低圧プラズマのガス種は、主としてヘリウム(He)、ネオン(Ne)、およびアルゴン(Ar)から選択される1種以上の希ガスが用いられる。これらの励起された希ガス原子の発する主要な真空紫外光の波長は、ヘリウム(He)の場合で58.4nm、ネオン(Ne)の場合で73.6nmおよび74.4nm、アルゴン(Ar)の場合で104.8nmおよび106.7nmであることが知られている。
また、これらの希ガス原子のプラズマは、プラズマによる励起によって真空紫外光を発するだけでなく、発光しない準安定な励起状態の原子を多量に形成する。この準安定な励起状態の原子が持つエネルギーを有効利用するために、希ガスに水素ガス(H2)および窒素ガス(N2)の少なくとも一方のガスを添加してもよい。希ガス中に前記のガスが添加されると、準安定な励起状態の希ガス原子の持つ励起エネルギーが効率よく添加ガスの励起に使われるため、希ガス原子の真空紫外発光に、添加ガスの真空紫外発光も加わり、波長150nm以下の真空紫外光の照射強度を増すことができる。添加ガスは、解離・励起された原子が真空紫外光を発する場合と、励起された分子が真空紫外光を発する場合とがあるが、分子の発光はバンド状になっており、その中心波長は原子の発光波長より長い。塗布膜の変性には、波長の短い原子の発光のほうが重要である。励起されたH原子の発する主要な真空紫外光の波長は121nm、N原子の場合は120nmであることが知られている。添加ガス種としては、準安定な励起状態を持たないH2がより好ましい。
好ましいガス種は、He、Ne、HeとH2の混合ガス、NeとH2の混合ガス、ArとH2との混合ガスである。添加ガスの比率は、0.1〜20体積%の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、添加ガスの効果が顕著に現れ、また、プラズマ密度の減少もほとんど見られず、添加ガスの励起に使われる準安定な励起状態の希ガス原子の密度が増すためである。添加ガスの比率は、より好ましくは0.5〜10体積%の範囲である。
さらに、効率よく波長150nm以下の光を塗布膜に照射するために、波長150nm以下の光を吸収して、自身が分解するような多原子分子のガス種(例えばCO、CO2、CH4Si−H4等)は、実質的に含まれない方がより好ましい。
低圧プラズマの生成に必要な電源の周波数は、1MHz〜100GHzが好ましい。この範囲であれば、プラズマ生成反応に直接寄与する電子に効率よくエネルギーを与えることができ、電子密度、すなわちプラズマ密度は高くなる。これに伴い、プラズマで発生する真空紫外光の強度も強くなる。また、エネルギーの伝達効率が向上する。電源の周波数は、より好ましくは、4MHz〜10GHzである。
波長150nm以下の光を発するプラズマの生成方式は、従来公知の方式を用いることができる。好ましくは、幅広の基材に形成した塗布膜の処理に対応できる方式がよく、例えば、容量結合プラズマ(CCP)、誘導結合プラズマ(ICP)、表面波プラズマ、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ、ヘリコン波プラズマ等が挙げられる。
塗布膜と対向したプラズマへの投入電力の大きさの指標として、プラズマの大きさを反映するプラズマ源の占める面積で規格化した投入電力密度を定義する。これは、単位面積あたりの塗布膜に照射される真空紫外光の照射強度に相関するパラメータとなる。特に、容量結合プラズマのような有電極プラズマの場合、高周波を印加する側の電極面積が、実質的にプラズマの大きさを規定しており、これをプラズマ源の占める面積とする。
投入電力密度は、好ましくは0.1〜20W/cm2であり、より好ましくは0.3〜10W/cm2である。この範囲であれば、十分な強度の照射ができ、基材の温度上昇による熱変形、プラズマの不均一化、電極などのプラズマ源を構成する部材の損傷などを防止することができる。
(2)大気圧近傍のプラズマ処理
大気圧近傍のプラズマ処理では、減圧またはガスフローによって酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気にした後、所定のガスを導入して装置内を所定の大気圧近傍の圧力にして処理を行う。大気圧近傍のプラズマ処理では、エキシマの発光を利用することが好ましい。現実的に利用可能なエキシマの発光としては、Arガスを用いたプラズマによって形成されるArエキシマの発光が最も波長が短く、中心波長が126nmの光になる。より波長の短い真空紫外光が利用できるという点では、プラズマ処理方法としては低圧プラズマ処理の方が好ましい。
大気圧近傍のプラズマ処理で利用できるガス種のうち、150nm以下のエキシマ光を出せるのは、Arガスである。尚、Arエキシマ(Ar2 *)は、プラズマで形成された準安定状態のAr原子(Ar*)をもとに、次式で表される3体衝突反応で生じるとされている。
Figure 2015024384
そのため、Ar以外の不純物ガスの比率は、プラズマ密度や上記の反応に影響しない程度に少ない方が良い。不純物濃度は1体積%以下が好ましく、0.5体積%以下がより好ましい。さらに、効率よく波長150nm以下の光を塗布膜に照射するために、波長126nm近傍の光を吸収して、自身が分解するような多原子分子のガス種(例えばCO、CO2、CH4等)は、実質的に含まれない方がより好ましい。
大気圧近傍とは、1〜110kPaの圧力を指し、大気に開放して使用できるほか、密閉容器の中で使用し、大気圧に比べ、わずかに減圧にする場合や、わずかに加圧状態にする場合にも使用可能であるという意味である。わずかに減圧にした方が、放電し易くなるため、プラズマによる準安定状態のAr原子の形成は容易になる。しかしながら、減圧にし過ぎるとAr密度が減少し、Arエキシマ(Ar2 *)の形成反応である3体衝突反応が起こる頻度が減る。Arエキシマによる発光の強度を増すためには、10〜90kPaの圧力の範囲とすることがより好ましい。また、このような範囲の減圧にすれば、処理に使用するガス量を削減できる上、酸素や水などの阻害成分の量を低下させることができる。
Arエキシマを発するプラズマの生成方式は、従来公知の大気圧近傍でプラズマを生成できる方式を用いることができる。好ましくは、プラズマで形成されたAr*とArとから生じたArエキシマ(Ar2 *)の発光を直接塗布膜に照射することができる方式であり、幅広の基材に形成した塗布膜の処理に対応できる方式がより好ましい。例えば、少なくとも一方の電極表面に誘電体を配した電極間に、塗布膜付き基材を配置し、そこへガスを通し、電極間に交流電力を印加し、放電プラズマを形成する誘電体バリア放電を使ったダイレクト処理方式を用いることができる。
電源周波数は、50Hz〜1GHzの範囲が好ましい。上記低圧プラズマ処理とは、動作させる圧力範囲が異なるため、使用する電源周波数帯も異なる。この範囲であれば、プラズマで形成される準安定状態のAr原子が多く、高い照射光度のArエキシマ光が得られ、また、プラズマのガス温度が低く抑えられ、基材に熱的な損傷を与えることを防止することができる。電源周波数は、好ましくは1kHz〜100MHzの範囲である。
低圧プラズマ処理の場合と同様に、塗布膜に対向したプラズマへの投入電力の大きさの指標として、プラズマの大きさを反映するプラズマ源の占める面積で規格化した投入電力密度を定義する。投入電力密度は、好ましくは0.1〜20W/cm2、より好ましくは0.3〜10W/cm2である。この範囲であれば、十分な強度の光照射ができ、十分な強度の照射ができ、基材の温度上昇による熱変形、プラズマの不均一化、電極などのプラズマ源を構成する部材の損傷などを防止することができる。
波長150nm以下の光の照射と同時に、基材の加熱処理を行うことで、より短時間で処理することができる。加熱処理温度としては、基材の耐熱性を考慮すると、好ましくは25℃〜200℃である。
上記のような方法により、本発明に係るバリア層が得られる。
[ハードコート層(クリアハードコート層、平滑層、プライマー層)]
本発明のガスバリア性フィルムは、基材のバリア層を有する面、好ましくは基材とバリア層との間にハードコート層(クリアハードコート層、平滑層、プライマー層)を有していてもよい。ハードコート層は突起等が存在する基材の粗面を平坦化するために、あるいは、基材に存在する突起により、バリア層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このようなハードコート層は、いずれの材料で形成されてもよいが、炭素含有ポリマーを含むことが好ましく、炭素含有ポリマーから構成されることがより好ましい。すなわち、本発明のガスバリア性フィルムは、バリア層が形成されていない側の基材面に、および/または基材とバリア層との間に、炭素含有ポリマーを含むハードコート層をさらに有することが好ましい。
また、ハードコート層は、炭素含有ポリマー、好ましくは硬化性樹脂を含む。前記硬化性樹脂としては特に制限されず、活性エネルギー線硬化性材料等に対して紫外線等の活性エネルギー線を照射し硬化させて得られる活性エネルギー線硬化性樹脂や、熱硬化性材料を加熱することにより硬化して得られる熱硬化性樹脂等が挙げられる。該硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
ハードコート層の形成に用いられる活性エネルギー線硬化性材料としては、例えば、アクリレート化合物を含有する組成物、アクリレート化合物とチオール基を含有するメルカプト化合物とを含有する組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを含有する組成物等が挙げられる。具体的には、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズ(シリカ微粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる化合物)を用いることができる。また、上記のような組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している活性エネルギー線硬化性材料であれば特に制限はない。
光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、および、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種または2種以上の混合物として、あるいはその他の化合物との混合物として使用することができる。
活性エネルギー線硬化性材料を含む組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
熱硬化性材料としては、具体的には、クラリアント社製のトゥットプロムシリーズ(有機ポリシラザン)、セラミックコート株式会社製のSP COAT耐熱クリアー塗料、アデカ社製のナノハイブリッドシリコーン、DIC株式会社製のユニディック(登録商標)V−8000シリーズ、EPICLON(登録商標) EXA−4710(超高耐熱性エポキシ樹脂)、信越化学工業株式会社製のシリコン樹脂 X−12−2400(商品名)、日東紡績株式会社製の無機・有機ナノコンポジット材料SSGコート、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ポリアミドアミン−エピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる。
ハードコート層の形成方法は、特に制限はないが、硬化性材料を含む塗布液をスピンコーティング法、スプレー法、バーコーティング法、ブレードコーティング法、ディップ法、グラビア印刷法等のウエットコーティング法、または蒸着法等のドライコーティング法により塗布し塗膜を形成した後、可視光線、赤外線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等の活性エネルギー線の照射および/または加熱により、前記塗膜を硬化させて形成する方法が好ましい。活性エネルギー線を照射する方法としては、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い好ましくは100〜400nm、より好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または、走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射する方法が挙げられる。
硬化性材料を溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いてハードコート層を形成する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
ハードコート層は、上述の材料に加えて、必要に応じて、熱可塑性樹脂や酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を含有することができる。また、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニルおよびその共重合体、塩化ビニルおよびその共重合体、塩化ビニリデンおよびその共重合体等のビニル樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、アクリル樹脂およびその共重合体、メタクリル樹脂およびその共重合体等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
ハードコート層の平滑性は、JIS B 0601:2001年で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
ハードコート層の厚さ(乾燥後の膜厚)としては、特に制限されないが、0.1〜10μmの範囲が好ましい。
[アンカーコート層]
本発明に係る基材の表面には、接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として形成してもよい。このアンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1種または2種以上併せて使用することができる。上記アンカーコート剤は、市販品を使用してもよい。具体的には、シロキサン系UV硬化型ポリマー溶液(信越化学工業株式会社製、「X−12−2400」の3%イソプロピルアルコール溶液)を用いることができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。なお、市販の易接着層付き基材を用いてもよい。
または、アンカーコート層は、物理蒸着法または化学蒸着法といった気相法により形成することもできる。例えば、特開2008−142941号公報に記載のように、接着性等を改善する目的で酸化ケイ素を主体とした無機膜を形成することもできる。
また、アンカーコート層の厚さは、特に制限されないが、0.5〜10.0μm程度が好ましい。
[ブリードアウト防止層]
本発明のガスバリア性フィルムは、ブリードアウト防止層をさらに有することができる。ブリードアウト防止層は、ハードコート層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム基材中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染する現象を抑制する目的で、ハードコート層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的にハードコート層と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等のハードコート剤を挙げることができる。
ここで、多価不飽和有機化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、単価不飽和有機化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の添加剤として、マット剤を含有してもよい。マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種または2種以上を併せて使用することができる。
ここで、無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100重量部に対して2重量部以上、好ましくは4重量部以上、より好ましくは6重量部以上、20重量部以下、好ましくは18重量部以下、より好ましくは16重量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
また、ブリードアウト防止層には、ハードコート剤およびマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
このような熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニルおよびその共重合体、塩化ビニルおよびその共重合体、塩化ビニリデンおよびその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂、アクリル樹脂およびその共重合体、メタクリル樹脂およびその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマーもしくは光重合性モノマー等の1種または2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に、電離放射線(紫外線または電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
また、光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、および必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、塗布液を基材フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
ブリードアウト防止層の厚さとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、フィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、ハードコート層を透明高分子フィルムの一方の面に設けた場合におけるバリアフィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
本発明のガスバリア性フィルムは上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落番号「0036」〜「0038」に記載されているものを好ましく採用できる。
<電子デバイス>
本発明のガスバリア性フィルムは、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく用いることができる。したがって、本発明は、電子デバイス本体と本発明の方法によって製造されるガスバリア性フィルムまたは本発明に係るガスバリア性フィルムとを含む、電子デバイスをも提供する。
前記デバイスの例としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等の電子デバイスを挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、有機EL素子または太陽電池に好ましく用いられ、有機EL素子に特に好ましく用いられる。
本発明のガスバリア性フィルムは、また、デバイスの膜封止に用いることができる。すなわち、デバイス自体を支持体として、その表面に本発明のガスバリア性フィルムを設ける方法である。ガスバリア性フィルムを設ける前にデバイスを保護層で覆ってもよい。
本発明のガスバリア性フィルムは、デバイスの基板や固体封止法による封止のためのフィルムとしても用いることができる。固体封止法とはデバイスの上に保護層を形成した後、接着剤層、ガスバリア性フィルムを重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
(有機EL素子)
ガスバリア性フィルムを用いた有機EL素子の例は、特開2007−30387号公報に詳しく記載されている。
(液晶表示素子)
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明におけるガスバリア性フィルムは、前記透明電極基板および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN型(Twisted Nematic)、STN型(Super Twisted Nematic)またはHAN型(Hybrid Aligned Nematic)、VA型(Vertically Alignment)、ECB型(Electrically Controlled Birefringence)、OCB型(Optically Compensated Bend)、IPS型(In-Plane Switching)、CPA型(Continuous Pinwheel Alignment)であることが好ましい。
(太陽電池)
本発明のガスバリア性フィルムは、太陽電池素子の封止フィルムとしても用いることができる。ここで、本発明のガスバリア性フィルムは、バリア層が太陽電池素子に近い側となるように封止することが好ましい。本発明のガスバリア性フィルムが好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
(その他)
その他の適用例としては、特表平10−512104号公報に記載の薄膜トランジスタ、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のタッチパネル、特開2000−98326号公報に記載の電子ペーパー等が挙げられる。
<光学部材>
本発明のガスバリア性フィルムは、光学部材としても用いることができる。光学部材の例としては円偏光板等が挙げられる。
(円偏光板)
本発明におけるガスバリア性フィルムを基板としλ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角が45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「重量部」あるいは「重量%」を表す。また、下記操作において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で行う。
実施例1
1.基材
100μm厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャイン(登録商標)A4300、両面易接着層)を基材として使用した。
2.クリアハードコート層の形成
上記基材の両面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布し、80℃、3分で乾燥後、硬化条件;1.0J/cm2で、空気雰囲気下、高圧水銀ランプを使用して、硬化を行い、クリアハードコート層を形成した。ここで、始めに製膜した側を裏面、裏面と反対側を表面とした。
3.バリア層の形成
以下のようにして、バリア層を上記2.形成した表面側のクリアハードコート層上に形成して、ガスバリア性フィルム1を作製した。
すなわち、上記基材の表面側のクリアハードコート層上に、以下のようにして調製されたパーヒドロポリシラザン(PHPS)溶液をスピンコート法により塗布した後、80℃にて1分間乾燥して、厚さ(乾燥膜厚)が250nmのPHPS塗布膜を形成した。このPHPS塗布膜に、メインピーク発光波長が172nmの真空紫外(VUV)光を照射(処理1)後、メインピーク発光波長が126nmのVUV光を照射(処理2)して、バリア層(膜厚:250nm)を形成した。なお、膜厚は、TEM(Transmission Electron Microscope:透過電子顕微鏡)の断面写真より、明確な界面が見られることで確認できた。また、上記処理1及び処理2の条件は、以下のとおりである。
(パーヒドロポリシラザン(PHPS)溶液の調製)
パーヒドロポリシラザン(PHPS)溶液は、無触媒のパーヒドロポリシラザン20重量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製、アクアミカ(登録商標) NN120−20)、アミン触媒(N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)をパーヒドロポリシラザンに対して5重量%含有するパーヒドロポリシラザン20重量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製、アクアミカ NAX120−20)を混合して用い、ジブチルエーテルで適宜希釈することにより、アミン触媒をパーヒドロポリシラザンに対して1重量%、さらにパーヒドロポリシラザン5重量%を含むジブチルエーテル溶液として調製した。
(真空紫外線(VUV光)照射処理条件)
(処理1:メインピーク発光波長が172nmのVUV光照射)
処理1における真空紫外線(VUV光)の照射は、下記条件にて、下記の装置を用いランプと試料との間隔(Gapともいう)を3mmとなるように試料を設置し、照射した。照射時間は、可動ステージの可動速度を調整して変化させた。
また、真空紫外線(VUV光)照射時の酸素濃度の調整は、照射庫内に導入する窒素ガス、及び酸素ガスの流量をフローメーターにより測定し、庫内に導入するガスの窒素ガス/酸素ガス流量比により調整した。
真空紫外線照射装置:ステージ可動型キセノンエキシマ照射装置
(MDエキシマ社製、MECL−M−1−200)
照度:140mW/cm2(172nm)
ステージ温度:100℃
処理環境:ドライ窒素ガス雰囲気下
処理環境の酸素濃度:0.1体積%
ステージ可動速度と搬送回数:10mm/秒で15回搬送
エキシマ光露光積算量:6500mJ/cm2
(処理2:メインピーク発光波長が126nmのVUV光照射)
下記条件にて大気圧近傍のプラズマ処理を施した。
ガス:Ar
圧力:50kPa
基材加熱温度:室温(25℃)
処理環境:ドライ窒素ガス雰囲気下
処理環境の酸素濃度:0.1体積%以下
投入電力密度:0.4W/cm2
周波数:10kHz
処理時間:600秒
実施例2
実施例1において、処理2を下記操作にて行った以外は、上記実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム2を作製した。
(処理2:メインピーク発光波長が105nm,107nm,121nmのVUV光照射)
下記条件にて低圧プラズマ処理を施した。
ガス:Ar+H2(H2濃度:6体積%)
全圧力:19Pa
基材加熱温度:室温(25℃)
処理環境:ドライ窒素ガス雰囲気下
処理環境の酸素濃度:0.1体積%以下
投入電力密度:1.3W/cm2
周波数:13.56MHz
処理時間:60秒
実施例3
実施例1において、処理2を下記操作にて行った以外は、上記実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム3を作製した。
(処理2:メインピーク発光波長が58nmのVUV光照射)
下記条件にて低圧プラズマ処理を施した。
ガス:He
圧力:19Pa
基材加熱温度:室温(25℃)
処理環境:ドライ窒素ガス雰囲気下
処理環境の酸素濃度:0.1体積%以下
投入電力密度:1.3W/cm2
周波数:13.56MHz
処理時間:60秒
実施例4
実施例3において、処理1における処理環境の酸素濃度を1体積%の条件にて行った以外は、上記実施例3と同様にして、ガスバリア性フィルム4を作製した。
比較例1
実施例1において、処理1の後に処理2を行わなかった以外は、上記実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム5を作製した。
比較例2
実施例3において、処理2の前に処理1を行わなかった以外は、上記実施例3と同様にして、ガスバリア性フィルム6を作製した。
比較例3
実施例3において、処理1と処理2の順番を入れ替えた(処理2を行った後、処理1を行った)以外は、上記実施例3と同様にして、ガスバリア性フィルム7を作製した。
比較例4
実施例1において、処理2を下記操作にて行った以外は、上記実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム8を作製した。
(処理2:メインピーク発光波長が156nmのVUV光照射)
下記条件にてマイクロ波プラズマ処理を施した。
基材とマイクロ波プラズマ源の距離:150mm
ガス:Ar+CO(CO濃度:1体積%)
圧力:300Pa
基材加熱温度:室温(25℃)
処理環境:ドライ窒素ガス雰囲気下
処理環境の酸素濃度:0.1体積%以下
投入電力密度:2.5kW/500mm幅
周波数:2.45GHz
処理時間:2.4秒
フィルムの搬送速度:10m/min
このように作製したガスバリア性フィルム1〜8について、以下に記載の方法に従って、未処理、キズ処理後および屈曲処理後の水蒸気バリア性を、それぞれ、評価した。結果を下記表1に示す。
(未処理の水蒸気バリア性の評価)
以下の測定方法に従って、各ガスバリア性フィルムの水蒸気バリア性を評価した。
・装置
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
・水蒸気バリア性評価用セルの作製
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、それぞれのガスバリア性フィルム1〜8の表面に金属カルシウムを蒸着させた。その後、乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介して金属カルシウム蒸着面を対面させて接着し、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた試料(評価用セル)を85℃、85%RHの高温高湿下で保存し、金属カルシウムが100%腐食するまでにかかる時間を測定した。
なお、ガスバリア性フィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルムの代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な85℃、85%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
こうして得られた各ガスバリア性フィルムの100%腐食時間を下記5段階にて評価した。
Figure 2015024384
(キズ処理後の水蒸気バリア性の評価)
ガスバリア性フィルム1〜8それぞれについて、バリア層表面を#0000のスチールウールに荷重500gをかけて、ストローク幅25mm、速度30mm/secで20回往復摩擦することで、キズ処理を施した。上記キズ処理後のガスバリア性フィルムについて、上記未処理の水蒸気バリア性の評価に記載の方法と同様にして、100%腐食時間を測定・評価した。なお、スチールウールは約10mmφにまとめ、表面が均一になるようにカット、摩擦して均したものを使用した。
(屈曲処理後の水蒸気バリア性の評価)
ガスバリア性フィルム1〜8それぞれについて、直径50mmの曲率になるように、180度の角度で、表面(バリア面)500回および裏面(基材面)500回の、計1000回の屈曲を繰り返すことで、屈曲処理を施した。上記屈曲処理後のガスバリア性フィルムについて、上記未処理の水蒸気バリア性の評価に記載の方法と同様にして、100%腐食時間を測定・評価した。
Figure 2015024384
上記表1から明らかなように、本発明のガスバリア性フィルムは、高いガスバリア性(未処理)に加えて、過酷な条件での耐傷性(キズ処理のバリア性)および屈曲耐性(屈曲処理後のバリア性)に優れる。

Claims (4)

  1. 基材上にポリシラザンを含む塗布膜を形成し、前記塗布膜に波長172nmの真空紫外線を照射した後、波長150nm以下の真空紫外線を照射することにより、前記塗布膜の改質処理を行うことによって、バリア層を形成することを有する、ガスバリア性フィルムの製造方法。
  2. 前記波長172nmの真空紫外線による照射および前記波長150nm以下の真空紫外線による照射の少なくとも一方が、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気中で行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法によって製造されるガスバリア性フィルム。
  4. 電子デバイス本体と、請求項1または2に記載の方法によって製造されるガスバリア性フィルムまたは請求項3に記載されるガスバリア性フィルムとを含む、電子デバイス。
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JP2017177640A (ja) * 2016-03-31 2017-10-05 住友化学株式会社 積層フィルム及びその製造方法

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