JP2012228859A - ガスバリア性フィルム及びガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents

ガスバリア性フィルム及びガスバリア性フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高いバリア性能を有し、尚且つ連続生産性に優れたガスバリア性フィルムの製造方法を提供すること、及び該ガスバリア性フィルムの製造方法を用いたガスバリア性フィルムを提供することである。
【解決手段】本発明によれば、基板を用意する工程と、基板の少なくとも一方の面に、金属の硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩および蓚酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の金属塩を含む前駆体層を形成する工程と、前記前駆体層を変換処理し、金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物からなる群から選択される少なくとも一種を含むガスバリア性層を形成する工程と、を含む、ガスバリア性フィルムの製造方法、および、前記方法を用いて製造したガスバリア性フィルムが提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリア性フィルム及びガスバリア性フィルムの製造方法に関する。より詳しくは、主に電子デバイス等のパッケージ、太陽電池や有機EL素子、液晶等のプラスチック基板といったディスプレイ材料に用いられるガスバリア性フィルム及びガスバリア性フィルムの製造方法に関する。
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(EL)基板等で使用されている。このうち、特に有機EL等の電子デバイスに使用されるガスバリア性フィルムについては、フレキシブルな樹脂基板への適用と共に、高いガスバリア性が要求されている。
このようなガスバリア性フィルムを形成する方法として、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法とも称する)によりガスバリア性層を形成する技術や、ポリシラザンを主成分とする塗布液を塗布し、表面処理をする技術が知られている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。しかしながら、いずれの技術も、基本的にはシリコン酸化物薄膜を形成しガスバリア性を高めようとする技術であり、低温かつ短時間の成膜で、高い表面平滑性を持ちながら、水蒸気に対するガスバリア性が10−2g/(m・24h)を下回る様なガスバリア性フィルムは実現できていない。
特許文献1においては、異なる周波数の電界を形成する大気圧プラズマによるCVD積層体の基材側からの硬さを規定することでバリア性と密着性、及び耐屈曲性を改良する技術が開示されている。
特許文献2においては、ポリシラザン膜を湿式法で形成し、真空紫外線処理を施すことでポリシラザン膜の一部をシリカに転化しガスバリア性層を形成する技術が開示されている。
特許文献3においては、ポリシラザン膜を湿式法で形成し、水蒸気を含む雰囲気においてUV光を照射することによりガスバリア性層を形成する技術が開示されている。
特開2008−56967号公報 特開2009−255040号公報 特表2009−503157号公報
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術は、CVD製膜方式であるために、製造装置が大掛かりであり高コストであるという問題があった。また、特許文献2に開示されている作製方法では、真空紫外線を1分〜5分もの長時間照射しており、例えばロール・トゥ・ロールの様な連続生産を考えた場合、非常に長い照射ラインが必要になり生産性が高いとは言えない。また、上記の特許文献3では、水蒸気を含む雰囲気によりシラノール形成後の脱水反応が十分に進まず、そのために得られる膜密度が低く、ガスバリア性能としては十分でなかった。残存シラノールを脱水縮合するためには、300℃〜400℃程度の熱若しくはそれに類するエネルギーを与える必要があり、特にフレキシブルな樹脂基板で高いガスバリア性を発現させることは困難であった。
このように、高いガスバリア性を有し、かつ、連続生産性に優れたフィルムは、今まで提供されていなかった。本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、高いバリア性能を有し、尚且つ連続生産性に優れたガスバリア性フィルムの製造方法を提供すること、及び該ガスバリア膜の製造方法を用いたガスバリア性フィルムを提供することである。
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
すなわち、本発明の一態様によれば、基板を用意する工程と、基板の少なくとも一方の面に、金属の硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩および蓚酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の金属塩を含む前駆体層を形成する工程と、前記前駆体層を変換処理し、金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物からなる群から選択される少なくとも一種を含むガスバリア性層を形成する工程と、を含む、ガスバリア性フィルムの製造方法が提供される。
前記製造方法の一実施形態では、前記前駆体層が水系溶液の塗布により形成される。
前記製造方法の一実施形態では、前記金属塩が、Ga、AlおよびInからなる群から選択される少なくとも一種の金属の塩を含む。この際、前記前駆体層中の金属元素の50原子%以上がGaであることが好ましい。
前記製造方法の一実施形態では、前記金属塩が硝酸塩である。
前記製造方法の一実施形態では、前記変換処理が50℃〜250℃の加熱処理および紫外線照射処理の少なくとも一方である。さらに、前記紫外線照射処理に用いる紫外線が、300nm以下の真空紫外線であることが好ましい。
前記製造方法の一実施形態では、前記基板が樹脂基板である。
また、本発明の別の態様によれば、上記製造方法により得られた、水蒸気に対するガスバリア性能が1×10−2g/(m・24h)以下である、ガスバリア性フィルムが提供される。
本発明の上記解決手段によれば、高いバリア性能を有し、尚且つ連続生産性に優れたガスバリア性フィルムが実現される。
本発明のガスバリア性フィルムの製造プロセスの一例を説明するための図である。 本発明の硝酸ガリウムのガスバリア性層の熱分析(TGおよびDTA)結果のグラフである。 実施例で製造した本発明のガスバリア性層の断層組成分析結果のグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。特に、図1を参照しながら、(1)基板を用意する工程、(2)前駆体層を形成する工程、(3)変換処理する工程に区分して本発明の製造方法を説明する。
(1)基板を用意する工程
本発明の製造方法においてはまず基板を用意する。基板(以下、支持体ともいう。)は、製造時にはその上にガスバリア性層を形成するために使用され、加えて、運搬の際やガスバリア性を付与したい対象物にフィルムを適用する際には、ガスバリア性層を維持する支持体の役割も果たす。基板としては、後述のバリア性を有するガスバリア性層を保持することができる材料であれば特に限定されたものではないが、ロール・トゥ・ロールによる連続生産や、デバイスの軽量化、割れ防止のため有機材料で形成された樹脂基板が好ましい。
有機材料としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性、無機層、ガスバリア性層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムを好ましく用いることができる。支持体の厚さは5〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。
また、本発明に係る支持体は透明であることが好ましい。支持体が透明であり、支持体上に形成する層も透明であることにより、透明なガスバリア性フィルムとすることが可能となるため、有機EL素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた支持体は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に用いられる支持体は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、および/または支持体の流れ方向と直角(横軸)の方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍延伸することが好ましい。
また、本発明に使用する基板は、自ら製造してもよいが、市販品を使用してもよい。市販品としては、テトロン(登録商標)O3(帝人デュポンフィルム社製)、テトロン(登録商標)UX(帝人デュポンフィルム社製)等が好ましく使用できる。本発明のガスバリア性フィルムは、基板にフレキシブルな素材を好ましく使用することができる。それにより、フレキシブルな電子デバイスや有機ELなどに適用することができる。
図1(a)は、本発明のガスバリア性フィルムの製造に用いる基板1を表面処理する工程を示している。上記した基板1は、図1(a)に示すように表面処理を行うことが好ましい。表面処理によって、後述する前駆体層3を形成する際に、前駆体を含む溶液の濡れ性を向上することができ、溶液の塗布が容易になる。表面処理の方法としては、例えば、アニール加熱処理、火炎処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、酸素プラズマ処理、UVオゾン処理、エキシマ光処理等公知の表面処理法により処理することが可能である。その際、基板表面の表面処理により、塗布液の接触角が10°〜30°になる様に処理することが好ましい。30°より大きな接触角の場合、均一な塗膜形成が難しかったり、ガスバリア性層の密着強度が落ちたりすることがある。10°よりも小さくする場合、処理方法によっては基板表面の樹脂が劣化し、ガスバリア性層の密着強度が落ちる場合がある。
さらに、本発明に係る支持体表面には、前駆体層3との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及びアルキルチタネート等が挙げられる。これらは単独でも、1又は2種以上併せて使用してもよい。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。上記のアンカーコート剤は、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
(2)前駆体層を形成する工程
次に、図1(b)に示すように、上記した基板1の少なくとも一方の面に、金属の硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩および蓚酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の金属塩を含む前駆体層3を形成する。本明細書で言う前駆体とは、後述する変換処理により、金属の酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを生成することのできる物質、すなわち金属塩を意味する。前駆体層3を形成するためには、金属の硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩および蓚酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の金属塩を含む溶液2(以下、前駆体溶液2という)を、図1(b)に示すように、基板1上に塗布することができる。このようにして、後述する変換処理を施す、基板1上に前駆体層3が形成される。
<金属塩>
本発明に使用する金属の硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩および蓚酸塩は、TG及びDSCで測定する分解温度が250℃以下と低いものが好ましい。このような性質の金属塩を前駆体とすれば、ガスバリア性層を構成する金属酸化物を、低温で形成できる。このように分解温度が低く、後述する変換処理によって酸化物、窒化物または酸窒化物が形成できる金属塩であれば、特に制限なく本発明に使用できる。
本発明では、金属塩を使用することにより、反応経路の途中で水酸化物が形成されず、後述する変換処理、特に250℃以下の低い加熱温度でも高いガスバリア性能を実現することができる。低温形成によって、特にフレキシブルな樹脂基板を使用したときに熱による劣化を避けることができ、製造コストも下げることができる。これに対して、上記ポリシラザンを使用する従来技術の場合には、ポリシラザンからシロキサンの膜に変換する際に反応の途中で水酸化物が生成し、この水酸化物を脱水縮合してシロキサンの膜を形成している。このような脱水縮合を所望のガスバリア性が得られる程度に進めるには、通常300〜400℃の加熱が必要である。
また、例えば、金属アルコキシドや金属の塩化物を使用して金属酸化物を形成する方法では、ポリシラザンの場合と同様に、反応経路の途中で金属の水酸化物が形成され、その水酸化物を脱水縮合することが必要である。これらの方法で得られた金属酸化物膜をガスバリア性層として用いる場合には、低温で金属酸化物膜を形成すると水酸化物が残留し、この残留水酸基が特に水蒸気の膜内拡散速度を高くしてしまうために、十分なガスバリア性が得られない。ガスバリア性を向上しようとすると、前述のシラノールの場合の様に、残留水酸基をほぼ完全に脱水縮合させるために高い温度の熱エネルギー若しくはそれに類する高いエネルギーを与える必要があり、樹脂基板上への成膜や短時間成膜が非常に困難になる。
さらに、金属アルコキシドを前駆体として使用し、熱および/または紫外線により金属酸化物薄膜を形成した場合には、特に低温かつ短時間で形成すると、アルコキシドの有機基由来の残留カーボンもしくは薄膜内の欠陥により、ガスバリア性は著しく低下することが分かった。低温で金属酸化物膜を形成しようとすると、カーボンが残留しこれが酸化物膜内の欠陥を引き起こし、ガスバリア性を損なうためである。上記金属塩を用いる本発明の方法によれば、このよう酸化物膜の欠陥発生を防止することができ、高いガスバリア性能が実現できる。
金属塩を構成する金属元素としては、特に制限されないが、Ga、InおよびAlからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、特にGaが好ましい。これらの金属の塩であれば、TG及びDTAで測定する分解温度が250℃以下となり、変換処理によって酸化物(または、窒化物もしくは酸窒化物)の緻密な膜が形成される。
また、前記金属塩の中で、特に硝酸塩を用いることが好ましい。硝酸塩は分解温度が低く、上記したように、水酸化物を経由せずに結晶水の脱離過程と同時に酸化物形成が進行する。
硝酸塩としては、特にGaの硝酸塩を主成分とすることが好ましい。Gaの硝酸塩を主成分とするとは、前駆体溶液中に含まれる金属元素の50原子%以上がGaであることを示す。Gaの割合は、より好ましくは70〜100原子%、さらに好ましくは90〜100原子%である。Gaの硝酸塩は特に分解温度が低く、形成した酸化ガリウムはワイドギャップ半導体として知られているように、可視光領域では無色透明で、安定性の高い材料である。
更に、目的に応じてGa以外の金属種の硝酸塩を混合して、異種金属が混合された塗布液を作成し、塗布乾燥、改質することで異種の金属が混合した金属酸化物薄膜を形成することも可能である。混合する他の金属種としては、特にAl、Inが好ましく、これらの金属を用いることで、透明導電膜や半導体の薄膜を形成することが可能である。すなわち、本発明のガスバリア性フィルムでありながら、電子デバイスとして必要とされる他の機能の層を兼ねることができ、電子デバイス用途に好適である。
<溶媒>
上記の金属塩は水溶性であり、水を主成分とした溶液が作製可能である。これにより、工程環境を良好にし、排出ガスを低減させ、塗膜形成、乾燥による前駆体層形成工程での環境負荷が小さくなるというメリットがある。尚、水を主成分とする溶液とは、溶媒の50質量%以上が水である溶媒に、上記の金属塩を溶解した溶液のことを指す。水の混合比率は、好ましくは、70〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%である。水としては、ガスバリア性層内に欠陥が生じることを避けるため、不純物を含まない超純水が好ましい。
水以外に混合して使用できる溶媒としては、極性を有し、沸点が比較的低い有機溶媒が挙げられる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。有機溶媒を添加することにより、金属塩の種類によって溶解性を向上する、溶媒を蒸発させやすくする等の利点がある。
上記した溶媒であれば、金属塩は容易に溶解し、溶解のために特別な操作は必要ない。しかし、金属塩の分散性を向上させるために、10分程度超音波処理を行ってもよい。金属塩の濃度としては、溶液中に好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。このような濃度であれば、基板に塗布し易く、変換処理によってガスバリア性能の高い緻密な膜を形成できる。
また、基板に前駆体溶液を塗布する際の作業性のために、溶液には少量の界面活性剤を混合してもよい。界面活性剤を添加することにより前駆体溶液の粘度調整ができ、スピンコート法などで前駆体層を形成する場合に効率的である。界面活性剤としては、沸点が低く低分子量のものが好ましく、例えば、TRITON(登録商標)X−114、X−102、X−45、X−15(ダウ ケミカルズ社製)等のオクチルおよびノニルフェノールエトキシレート;BRIJ(登録商標)56、58(ICIアメリカズ社製)等のアルコールエトキシレート;およびSurfynols(登録商標)465および485(日信化学工業社製)等のアセチレン型ジオール挙げられる。このうち、特にSurfynols(登録商標)465が好ましい。
界面活性剤を使用する場合には、混合比率は、金属塩に対して0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1質量%である。この範囲の添加量であれば、前駆体溶液塗布の作業性が向上するように粘度調整ができ、かつ、変換処理によって分解され、ガスバリア性層内のカーボンの残留を避けることができる。
<前駆体層の形成>
上記した前駆体溶液2を用いて、基板1上に前駆体層3を形成する方法としては、前駆体溶液2を塗布する方法が好ましい。塗布方法としては特に限定はなく、押出しコート法、ディッピング法、バーコート法、スピンコート法、ドクターブレード法、噴霧塗布法、スクリーン印刷法、刷毛塗り、ロールコート法、カーテンコート法、ナイフコート法等の工業的に通常用いられている方法を用いることができる。このような塗布による方法は、従来使用されていた蒸着法やCVD法などの真空装置を必要とする薄膜形成方法に比較して、製造工程がはるかに簡単であり、短時間で済むため、製造コストが小さく、連続生産において大きな利点がある。上記の塗布方法のうち、簡便に均一な前駆体層を形成できることから、押出しコート法が特に好ましい。
前駆体溶液2の塗布厚さ、すなわち前駆体層3の厚みとしては、好ましくは乾燥膜厚(後述する変換処理した後の膜厚)が1〜500nm、より好ましくは10〜100nm、さらに好ましくは30〜50nmとなるように塗布することが好ましい。また、ガスバリア性層は複数積層してもよく、その場合には、複数層のガスバリア性層の厚みの合計が上記範囲に入るように、複数の前駆体層をそれぞれ形成することが好ましい。ガスバリア性層を複数積層する場合には、上記の手順で前駆体層を一層形成した後、後述の変換処理を施し一層のガスバリア性層を形成した後、その上にさらに前駆体層を形成し、変換処理を施す工程を繰り返せばよい。前駆体層が上記の範囲であれば、続く変換処理を効率的に行うことができる。
(3)変換処理する工程
基板1上に前駆体層3を形成した後、前駆体層3に変換処理を施す。変換処理によって前駆体層3は改質され、対応する金属の酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群から選択される少なくとも一種を含むガスバリア性層4が形成される。本明細書において、変換処理とは、上記した金属塩で構成される前駆体を、対応する金属の酸化物、窒化物または酸窒化物に改質させ得るいずれの処理をもいう。
具体的には、変換処理としては、加熱処理、紫外線照射処理、紫外線によって発生させたオゾン等の活性酸素を前駆体層3内に導入する処理等が挙げられる。しかし、活性酸素を前駆体層内に導入する方法は、前駆体層3内での活性酸素の拡散速度が変換処理の律速となり時間がかかってしまうため、加熱処理および紫外線照射処理の少なくとも一方がより好ましい。
加熱処理と紫外線処理とは、併用することにより、よりガスバリア性能の向上したガスバリア性フィルムを製造することができる。本発明の好ましい実施形態として、図1(c)に示すように、基板1および前駆体層3をまず加熱処理し、図1(d)に示すように、前駆体層3をさらに紫外線照射処理することができる。
<加熱処理>
加熱処理をする場合には、加熱温度は50℃〜300℃未満の間で適宜選択して良いが、原料のDTA分析により吸熱ピークが現れる最も高い温度、すなわち典型的には結晶水の脱離と酸化物(または、窒化物もしくは酸窒化物)形成が開始する温度以上の温度を選択することがより好ましい。通常、加熱によって、まず前駆体層3内の遊離している水分が蒸発する。次に金属塩のアニオン部分が脱離・分解することにより、アニオンに由来するガス、例えば硝酸塩であればNOが発生する。最後に、前駆体層3の金属塩は結晶水を含むものが多いため、この結晶水が脱離する。その際、結晶水は前駆体層3の構造中に取り込まれており、前駆体層3を水の沸点である100℃に加熱しても脱離しない場合が多い。すなわち、100℃より高い温度に加熱して脱離させる場合が多い。このような水やガスの脱離と共に、酸化物(または、窒化物もしくは酸窒化物)形成が進行する。
図2には、前駆体として硝酸ガリウムを使用した場合の前駆体層3のTGおよびDTA分析の結果を示す。図2のグラフ中ピークaは、最初に生じる、過剰水分の脱離を示している。図2のグラフ中ピークbは、次の、硝酸イオンに由来するNOの脱離を示している。図2のグラフ中ピークcは、最後の結晶水の脱離を示している。このように、図2の測定結果により上記説明した反応経路が裏付けられている。
このような反応経路を効率よく進行させるためには、加熱処理のより好ましい温度は50〜250℃、さらに好ましい温度は120〜200℃である。50℃未満では反応進行が非常に遅く、短時間で酸化物(または、窒化物もしくは酸窒化物)を形成することができず、300℃以上の温度では樹脂基板の耐熱性の問題により、基板自身の変形及び基材変形を起因としたひび割れや、層剥離が発生する。もっとも、樹脂基板は、金属塩原料の結晶水脱離/酸化物形成反応の温度やその他デバイス作製工程でのプロセス温度を鑑みて、上記した中から適宜選択が可能である。熱処理の時間は適宜選択可能であるが、生産性の観点から0.1分〜10分の間が好ましい。より好ましくは1分〜5分である。
<紫外線照射処理>
紫外線照射処理は、上記の加熱処理に代えて、または、加熱処理と共に実施できる。本明細書における紫外線とは、一般に、10〜400nmの波長を有する電磁波をいうが、本発明では、紫外線の波長は300nm以下、好ましくは210〜300nmの深紫外線または10〜200nmの真空紫外線を用いることが好ましい。このうち、紫外線の波長200nm以下の真空紫外線を用いることが特に好ましい。以下、通常の紫外線照射の場合と真空紫外線照射の場合とに分けて説明する。
(紫外線照射処理)
本発明において、紫外線照射により、前駆体を変換できるメカニズムは明らかではないが、光子エネルギーの高い紫外線が効果的であることから、前駆体層3中の結晶水脱離及び酸化物(または、窒化物もしくは酸窒化物)形成の反応を生じさせているものと考えられる。特に真空紫外線は結合を切断して再結合を促進し得る光子エネルギーを持ち、かつ水も強い吸収を示すことから、より効果的に結晶水脱離及び酸化物形成の反応を起こしていると思われる。
紫外線の照射エネルギーとしては10mJ/cm〜10000mJ/cmの範囲が好ましく、更に好ましくは100mJ/cm〜5000mJ/cmである。基板1として樹脂フィルムを用いた場合を例にとると、例えば2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基板1表面で強度が好ましくは20〜300mW/cm、より好ましくは50〜200mW/cmになるように基材−ランプ間距離を設定し、全体の照射エネルギーが上記範囲になるように照射時間を設定することが好ましい。照射エネルギーが10mJ/cmより小さいと紫外線照射の効果がない場合があり、10000mJ/cmより大きくてしても、効果が飽和して来るばかりでなく、特に樹脂基板を用いた場合に、基板へのダメージが出てくる場合もある。そのため、紫外線の照射は、照射される前駆体層3を担持している基板1がダメージを受けない範囲で照射強度及び/または照射時間を設定することが好ましい。本発明で好ましい、上記のようなエネルギーの紫外線照射強度は、従来技術に比して照射時間が短時間で済み、連続生産に適している。
この紫外線照射時の基板温度に一般的な上限はなく、基板の種類によって当業者が適宜設定することができる。一般には、紫外線照射処理時の基板温度が150℃以上になると、樹脂基板の場合には変形したり、その強度が劣化したりする等、基板が損なわれる恐れがある。しかしながら、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムを使用する場合にはより高温での処理を行ってもよい。また、紫外線照射雰囲気は、特に制限はなく、空気中で実施してもよいが、紫外線が効率よく前駆体層3に照射する様に、紫外領域に吸収をもつ酸素や水分を極力除いた不活性ガス雰囲気下で照射することが好ましい。特に以下に示す真空紫外線は酸素、水に強く吸収されるため乾燥した不活性雰囲気下での照射が特に好ましい。
本発明に係る方法では、常用されているいずれの紫外線発生装置も使用することが可能である。このような紫外線発生装置としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機株式会社製)、UV光レーザー、等が挙げられるが、特に限定されない。また、発生させた紫外線を前駆体層3に照射する際には、効率の向上のため均一な照射を達成するためにも、発生源からの紫外線を反射板で反射させてから塗膜に当てることが望ましい。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、基板1の形状によって適宜選定することができる。
例えば、バッチ処理の場合には、金属塩を含む前駆体層3を表面に有する基板1(例、シリコンウェハー)を上記のような紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス(株)製の焼成炉を使用することができる。また、金属塩を含む前駆体層3を表面に有する基板1が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することにより金属酸化物(または、窒化物もしくは酸窒化物)の薄膜を形成することができる。
(真空紫外線照射処理;エキシマ照射処理)
本発明において、さらに好ましい改質処理の方法として、真空紫外線照射による処理が挙げられる。真空紫外線照射による処理では、好ましくは100〜200nm、より好ましくは100〜180nmの波長の光子エネルギーにより、前駆体層に含有される有機物の分解除去、前駆体層内水分の除去や金属酸化物(または、窒化物もしくは酸窒化物)形成が行われていると考えられる。より詳細には、真空紫外線を用いる製造方法では、原子間結合の切断および再結合を、光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾン等による酸化反応を進行させることで、比較的低温で、金属酸化物(または、窒化物もしくは酸窒化物)の薄膜形成が行われる。また、真空紫外線照射では、光子エネルギーが殆どの有機物結合エネルギーより大きいため、不純物として取り込まれている有機物を効率的に分解除去でき、更には水も真空紫外領域に強い吸収を持つため、加熱だけではなかなか除けない、膜内の結晶水も効率よく除去できると考えられる。尚、基材を損なわない範囲で加熱を併用することにより、これらの効果がより一層高くなる。
真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。エキシマランプは、光の発生効率が高いため低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で単一波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を有する。このため、熱の影響を受けやすいとされるPET等のフレシキブルフィルム材料に適している。
エキシマ発光とは以下のようなメカニズムで発生する。Xe、Kr、Ar、Ne等の希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には下記式1に示すような反応が生じる。
上記のように励起されたエキシマ分子であるXe が基底状態に遷移するときに、172nmのエキシマ光を発光する。エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
また、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板等への照射を可能としている。
エキシマ発光を得るには、誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは、両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電で、micro dischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため肉眼でも分る光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外に無電極電界放電でも可能である。このような無電解放電は容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は、基本的には誘電体バリア放電と同じでよいが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキがない長寿命のランプが得られる。
誘電体バリア放電の場合は、micro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。このため細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾン等により損傷しやすい。
これを防ぐためにはランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素等の不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。この際、雰囲気中の窒素量が多いと、ガスバリア性層4内に金属の窒化物の割合が高くなり、酸素が含まれていれば、ガスバリア性層4内に金属酸化物の割合が高くなる。このように、雰囲気を制御することにより、ガスバリア性層4の組成を制御することも可能である。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いる場合には外部電極を網状にする必要はない。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため、一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。したがって、非常に安価な光源を提供できる。
二重円筒型ランプは内外管の両端を接続して閉じる加工をしているため、細管ランプに比べ取り扱いや輸送で破損しやすい。細管ランプの管の外径は6〜12mm程度で、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は誘電体バリア放電および無電極電界放電のいずれでも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であってもよいが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
図1(d)に示す、上記のような変換処理によって、前駆体層3は、図1(e)に示すようなガスバリア性層4に改質される。このようにして、本発明のガスバリア性フィルムが製造される。
<後処理>
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア性層4内の残留水分をさらに除去する目的で後処理を施しても良い。具体的には大気下での加熱、不活性雰囲気による加熱、減圧下での加熱等が挙げられる。加熱の方法は、抵抗体の発熱を利用した一般的なオーブン等による加熱や赤外線等の光による加熱等特に限定されない。また、加熱せずに不活性雰囲気や減圧雰囲気で保管する方法でも良い。
後処理における加熱の温度は、基板材料がダメージを受けない範囲であれば特に制限は無いが、基板がダメージを受けていなくても熱膨張、熱収縮に代表される寸法変化により金属酸化物との界面に応力がかかり剥離が発生する場合があるため、これらを考慮して適宜選択されることが好ましい。
<ガスバリア性フィルム>
上記のように、(1)〜(3)の工程を経て、ガスバリア性能の高いガスバリア性フィルムが製造される。したがって、本発明の別の態様によれば、上記の製造方法により得られた、水蒸気に対するガスバリア性能が1×10−2g/(m・24h)以下であるガスバリア性フィルムが提供される。以下、本発明のガスバリアフィルムの構成について説明する。
本発明のガスバリア性フィルムは、もっとも簡単には、基板およびその上に形成されたガスバリア性層で構成される。より詳細には、本発明のガスバリア性フィルムは、基板、例えば樹脂フィルム基板(例えばポリエチレンテレフタレート)等の少なくとも片面に、少なくとも一層の、金属塩を含有する前駆体層に改質処理を施して形成されたガスバリア性層4を有している。本発明においては、「ガスバリア性層」とは、上記した金属塩を含有する前駆体溶液2を塗布して形成された少なくとも一層の前駆体層3に、上記した変換処理を施して形成された金属酸化物、窒化物、および酸窒化物からなる群から選択される少なくとも一種を含む層を言うこととする。
ガスバリア性層は、単層でも複数層を積層してもよく、複数の層構成にすることによりさらにガスバリア性を向上させることもできる。また、後述する平滑層、ブリードアウト防止層など、他の材料の層と積層しても良く、例えば、水吸着性若しくは水と反応性のある材料を積層し、デシカント層として設置したり、公知のガスバリア性層を積層しても良い。ただし、本発明のガスバリア性層が塗膜形成と加熱および紫外線の少なくとも一方による改質処理を基本プロセスとしているため、紫外線照射処理を選択する場合には、パーヒドロポリシラザンを前駆体として用いた光改質法によるケイ素酸化物を含むガスバリア性層との積層が、工程及びプロセスが煩雑にならずに好ましい。
なお、本発明において、「ガスバリア性」を有するとは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(60±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−2g/(m・24h)以下であり、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−2ml/m・24h・atm以下であることを言う。
すなわち本発明によれば、基板の少なくとも一方の面に、水を主成分とする溶媒に前駆体、好ましくは硝酸ガリウムを主成分とする金属硝酸塩を溶解した溶液を塗布して、硝酸ガリウムを主成分とする前駆体層を形成し、前駆体層に加熱及び/又は紫外線(好ましくは真空紫外線)照射処理を施して、好ましくは酸化ガリウムを主成分とするガスバリア性層となる金属酸化物の層を形成することが可能である。ガスバリア性層を有した本発明のガスバリア性フィルムは、水蒸気透過度(60±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−2g/(m・24h)以下であり、好ましくは5×10−3g/(m・24h)以下のガスバリア性能が実現される。また、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−2ml/m・24h・atm以下、好ましくは5×10−3ml/m・24h・atm以下であるガスバリア性能を有する。
<ガスバリア性層の厚み>
本発明のガスバリア性層の厚みは1層あたり1nm〜100nmが好ましく、10nm〜50nmが更に好ましい。1nm未満の厚みであるとバリア性能が発揮できない場合があり、100nmより厚くなると、緻密な金属酸化物層へのクラックが入りやすくなる場合がある。ガスバリア性能の向上とクラック防止を両立する方法の例として、ガスバリア性層全体の膜厚を一定にしたまま、層を細分化し、2層以上で構成する方法が挙げられる。ガスバリア性層が複数層で構成されることにより、金属酸化物形成時の残留応力が低減できクラックを抑制することが可能であり、各層を同じエネルギー量で変換処理した場合、一層あたりの膜質が向上するためガスバリア性能も向上する。
<表面粗さ:表面平滑性>
本発明に係るガスバリア性層表面の表面粗さ(Ra)は、2以下が好ましく、さらに好ましくは1以下である。表面粗さがこの範囲にあることで、各種電子デバイスの樹脂基材としてガスバリア性層を使用する際に、凹凸が少ない平滑な膜面により光透過効率が向上し、電極間リーク電流の低減によりエネルギー変換効率が向上するので好ましい。本発明のガスバリア性層の表面粗さ(Ra)は以下の方法で測定することができる。
表面粗さ測定の方法;AFM測定:
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)、例えば、Digital Instrments社製DI3100で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
高い表面平滑性は本発明の様な塗布方式によるメリットであり、CVD等の蒸着成膜では達成が困難である。
<平滑層>
本発明のガスバリア性フィルムは、基板とガスバリア性層との間にさらに平滑層を有してもよい。平滑層は突起等が存在する基板、例えば透明樹脂フィルム等の粗面を平坦化し、凹凸やピンホールを埋めるために設けられる。このような平滑層は、基本的には光重合性モノマーを光硬化させて形成される。
平滑層を形成する光重合性モノマーとしては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する光重合性モノマー組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する光重合性モノマー組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた光重合性モノマー組成物等が挙げられる。また、上記のような光重合性モノマー組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している組成物であれば特に制限はない。
光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
光重合性モノマー組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性物質とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
平滑層の形成方法は特に制限はないが、スピンコート法、スプレーコート法、ブレードコート法、バーコート法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により上記光重合性モノマー組成物を塗布した後、紫外線を照射することにより形成することが好ましい。尚、紫外線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射することにより行うことができる。照射エネルギーは、0.1〜100J/cmが好ましい。
平滑層の形成では、上述の光重合性モノマー組成物を、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
光重合性モノマー組成物を塗布液に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
平滑層の平滑性は、JIS B 0601(2001年)で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。この範囲よりも値が小さい場合には、後述の金属塩を含む前駆体層を塗布する段階で、ワイヤーバー、ワイヤレスバーなどの塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合に、塗布性が損なわれる場合がある。また、この範囲よりも大きい場合には、金属塩を含む前駆体塗層を塗布した後の、凹凸を平滑化することが難しくなる場合がある。
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
<平滑層への添加剤>
好ましい態様のひとつは、前述の平滑層を構成する樹脂中に表面に平滑層を構成する樹脂と重合反応性を有する重合性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むものである。例えば、光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。また前記光重合性モノマー組成物は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。また前記光重合性モノマー組成物としては、このような反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物に適宜汎用の希釈溶剤を混合することによって固形分を調整したものを用いることができる。
ここで、反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径の測定方法としては、特に限定する所では無いが測定精度や簡便性から動的光散乱法若しくはレーザー散乱法を用いることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、後述する平均粒子径1〜10μmの無機粒子からなるマット剤と組合せて用いることによって、本発明の効果である防眩性と解像性とをバランス良く満たす光学特性と、ハードコート性とを兼ね備えた平滑層を形成し易くなる。尚、このような効果をより得易くする観点からは、更に平均粒子径として0.001〜0.01μmのものを用いることがより好ましい。本発明に用いられる平滑層中には、上述の様な無機粒子を質量比として20%以上60%以下含有することが好ましい。20%以上添加することで、ガスバリア性層との密着性が向上する。また60%以下であれば、フィルムを湾曲させたり、加熱処理を行った場合にクラックが生じたりする恐れがなく、ガスバリア性フィルムの透明性や屈折率などの光学的物性に影響を及ぼす恐れがない。
本発明では、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシリル基、アセトキシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられる。
重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
本発明における平滑層の厚さとしては、好ましはく1〜10μm、より好ましくは2〜7μmである。1μm以上にすることにより、平滑層を有するフィルムとしての平滑性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面にのみ設けた場合における平滑フィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
平滑層に用い得る他の添加剤としては、マット剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、前記電離放射線樹脂を形成するために用いられる光重合開始剤等を含有させてもよい。
マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種又は2種以上を併せて使用することができる。
ここで、無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤(平滑層を構成する上記の樹脂)の固形分100質量部に対して好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、さらに好ましくは6質量部以上、かつ好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下、さらに好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体、ポリ塩化ビニル及びその共重合体、ポリ塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリアセタール系樹脂、ポリアクリル酸樹脂及びその共重合体、ポリメタクリル酸樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーなどの1種又は2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に電離放射線(紫外線又は電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
また、光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
<ブリードアウト防止層>
本発明のガスバリア性フィルムは、さらにブリードアウト防止層を有していてもよい。ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム支持体中から未反応のオリゴマーなどが表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、平滑層を有する基板の面とは反対側の面に設けられることが好ましい。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
また、前駆体層の塗膜を改質して金属酸化物(または、窒化物もしくは酸窒化物)にする際、大きな膜収縮を伴うため、その横方向の変形を抑制しひび割れを防止することが好ましい。そのためには、表面硬度、若しくは弾性率が高い、所謂ハードコート層を設けることができるが、上記のブリードアウト防止層がハードコート層の役割を兼ねることができる。したがって、本発明において金属酸化物(または、窒化物もしくは酸窒化物)薄膜を形成する際は、ブリードアウト防止層は、表面硬度として2H以上、弾性率として15GPa以上とすることが好ましい。この様な薄膜の機械物性を計測するには、後述するナノインデンテーション測定が好ましく用いられる。
ブリードアウト防止層を形成する重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、多価不飽和有機化合物としては、例え、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、単価不飽和有機化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ブリードアウト防止層に用い得る他の添加剤としては、マット剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、前記電離放射線樹脂を形成するために用いられる光重合開始剤等を含有させてもよい。
マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種又は2種以上を併せて使用することができる。
ここで、無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤(ブリードアウト防止層を構成する上記の樹脂)の固形分100質量部に対して好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、さらに好ましくは6質量部以上、かつ好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下、さらに好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体、ポリ塩化ビニル及びその共重合体、ポリ塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリアセタール系樹脂、ポリアクリル酸樹脂及びその共重合体、ポリメタクリル酸樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーなどの1種又は2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に電離放射線(紫外線又は電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
また、光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。尚、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。照射量としては、0.1〜100J/cmが好ましい。
本発明におけるブリードアウト防止層の厚さとしては、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、フィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面に設けた場合におけるバリアフィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
<粘着性保護フィルム>
本発明のガスバリア性フィルムは、さらに、粘着性保護フィルムを有していてもよい。粘着性保護フィルムを備えることにより、ガスバリア性フィルム表面を損傷から保護するのに役立ち、かつ、ガスバリア性フィルムを適用する対象物に設置し易い。
粘着性保護フィルムとしては、本発明のガスバリア性フィルムに適用できれば、特に制限はなく、従来公知のものを使用でき、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ケトン樹脂、ビニル樹脂、炭化水素樹脂等で形成されたものを使用できる。
<表面硬度弾性率測定の方法;ナノインデンテーション>
ガスバリア性層の弾性率は、従来公知の弾性率測定方法により求めることができ、例えば、オリエンテック社製バイブロンDDV−2を用いて一定の歪みを一定の周波数(Hz)で掛ける条件下で測定する方法、測定装置としてRSA−II(レオメトリックス社製)を用い、透明基材上にガスバリア性層を形成した後、一定周波数で印加歪を変化させたとき得られる測定値により求める方法、あるいは、ナノインデンション法を適用したナノインデンター、例えば、MTSシステム社製のナノインデンター(Nano Indenter TMXP/DCM)により測定することができる。これらの中でも、本発明に係る薄いガスバリア性層の弾性率を高い精度で測定できる観点から、ナノインデンターにより測定して求める方法が好ましい。
ここで、「ナノインデンテーション法」とは、測定対象物である透明基材上に設けたガスバリア性層に対し、超微小な荷重で先端半径が0.1〜1μm程度の三角錐の圧子を押し込んで負荷を付与した後、圧子を戻して除荷し、得られた荷重−変位曲線を作成し、荷重−変位曲線から得られた負荷荷重と押し込み深さより、弾性率(Reduced modulus)を測定する方法である。このナノインデンション法では、超低荷重、例えば、最大荷重20mN、荷重分解能1nNのヘッドアセンブリを用いて、変位分解能として0.01nmの高精度で測定することができる。
本発明のガスバリア性層に関しては、断面部より超微小な三角錐の圧子を押し込んで、断面部における基材側と反対側の弾性率を測定する方法が好ましく、この様な場合には、より精度を高める観点から走査型電子顕微鏡内で作動するナノインデンターも開発されており、それらを適用して求めることもできる。
<ガスバリア性フィルムの好ましい構成>
本発明のガスバリア性フィルムは、基板および上記の方法で製造したガスバリア性層を有していれば高いガスバリア性能を発揮し得る。さらに、上記したように、実使用により適したガスバリア性フィルムの構成としては、ブリードアウト防止層/基板/平滑層/ガスバリア性層/粘着性保護フィルムとなる。ブリードアウト防止層、平滑層、粘着性保護フィルム、をさらに備えたガスバリア性フィルムは、ガスバリア性を付与したい対象物や用途に応じて適宜選択でき、また、運搬や保存の際も損傷を防ぐことができ、実使用において有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(基板)
熱可塑性樹脂基板として、両面に易接着加工された125μmの厚さのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロン(登録商標)O3)の基板を、150℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
(平滑層及びブリードアウト防止層を有するフィルムの作製)
ガスバリア性フィルムの作製は、上記基板を30m/分の速度で搬送しながら、以下の形成方法により、片面にブリードアウト防止層、反対面に平滑層を形成後に、平滑層上に粘着性保護フィルムを貼合した、ロール状の基材フィルムを得た。
(ブリードアウト防止層の形成)
上記基板の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cmで硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
(平滑層の形成)
続けて上記基板の反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm硬化を行い、平滑層を形成した。
このときの最大断面高さRt(p)は16nmであった。
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さである。
(ガスバリア性フィルムの作製)
(ガスバリア性層の形成)
次に、上記平滑層、ブリードアウト防止層を設けた試料の平滑層側にガスバリア性層を以下に示す条件で、形成した。
ガスバリア性層塗布液(前駆体溶液)
市販の硝酸ガリウムの水和物(Sigma Aldorich製99.999%)を九水和物とし、硝酸ガリウムの重量で超純水に10重量%添加し、10分間撹拌後、10分間超音波(48Hz)で溶解し、前駆体溶液として、硝酸ガリウムを含有した水溶液を得た。その水溶液に界面活性剤としてSurfynol465(日信化学工業製)を硝酸ガリウムに対して0.2重量%添加し、減圧脱気して硝酸ガリウム含有の塗布液とした。(塗布液A)
また比較として、硝酸ガリウムをテトラエトキシシラン(TEOS)に置き換えた塗布液も作製した。(塗布液B)
<試料1の作製;比較例1>
基板の平滑層表面を低圧水銀ランプ(5mW/cm、サムコ社製UV−1)を用いて、照射庫内に0.5L/minの酸素を送りながら70℃で3分間のUVオゾン処理を行った。その表面に塗布液Aを滴下し、スピンコーターにて乾燥膜厚(変換処理後の膜厚)50nmとなる様に酸化ガリウム前駆体層(硝酸ガリウム含有層)を形成した。そのフィルムを室温にて10分間放置し、ガスバリア性フィルム試料(以下、単に試料と言う)1を得た。
<試料2の作製;実施例1>
基板の平滑層表面を低圧水銀ランプ(5mW/cm、サムコ社製UV−1)を用いて、照射庫内に0.5L/minの酸素を送りながら70℃で3分間のUVオゾン処理を行った。その表面に塗布液Aを滴下し、スピンコーターにて乾燥膜厚50nmとなる様に酸化ガリウム前駆体層を形成した。そのフィルムを150℃、10分間ホットプレートで加熱し、試料2を得た。
<試料3の作製;実施例2>
試料2に於いて、前駆体層の乾燥膜厚を25nmになる様にして塗布し、150℃10分で加熱した。これを再度繰り返し、2層構成でトータル50nmの乾燥膜厚のガスバリア性層を形成し試料3とした。
<試料4の作製;比較例2>
塗布液を塗布液Bとした以外は試料3と同様にして、TEOSを前駆体材料とした2層構成のガスバリア性層を形成し試料4とした。
<試料5の作製;比較例3>
試料4において、25nmの1層を形成した後、基板温度100℃にて低圧水銀ランプ(5mW/cm、サムコ社製UV−1)を用いて波長185nmの紫外線を1000mJ/cm照射した。これを再度繰り返し、2層構成のガスバリア性層を形成して試料5とした。
<試料6の作製;比較例4>
試料5において、照射する紫外光の波長をXeエキシマ光照射装置(100mW/cm、エム・ディ・エキシマ製MEIRH−M−1−200H)を用いて、172nmに変更した以外は試料5と同様にして2層構成のガスバリア性層を有する試料6を得た。
<試料7〜18の作製;実施例3〜14>
表1に記載の様に、加熱温度と照射する紫外線の波長及び照射エネルギーとを各々変更して試料7〜18を作製した。
<試料19の作製;実施例15>
試料18のガスバリア性層の上に、更に乾燥膜厚150nmとなる様にアミン触媒を1wt%含むパーヒドロポリシラザンのジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ製)を塗布し、試料18の紫外線照射処理と同様の紫外線改質条件で処理して3層目を形成し、試料19とした。
<水蒸気透過率の評価>
試料1〜18のガスバリア性フィルムの水蒸気透過率WVTR(g/(m・24h))を以下に記載の方法で測定した。
水蒸気バリア性評価用セルの作製
ガスバリア性フィルム試料No.1〜19のガスバリア性層面に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリア性フィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐蝕量からセル内に透過した水分量を計算した。評価基準は以下のとおりであり、評価結果は下記表1に示す。
なお、ガスバリア性フィルム面から以外の水蒸気の透過が無いことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐蝕が発生しないことを確認した。
評価基準
◎:WVTR<1E−3
○:1E−3WVTR<5E−3
△:5E−3WVTR<1E−2
×:1E−2<WVTR
△以上を電子デバイス用途として実用に耐えうる範囲とする。なお、表1中、例えば8E−3は、8×10−3を意味する。表1中、E−2台とは、10−2の桁の測定値であったことを意味する。
表1の結果から、本発明の硝酸ガリウムを前駆体として用い熱及び/又は紫外線で改質した酸化ガリウムを主成分とするガスバリア性層を有するガスバリア性フィルム(実施例1〜15)は、加熱なしで作製したフィルム(比較例1)および同条件で作製したゾルゲル法によるシリカを主成分としたガスバリア性フィルム(比較例2〜4)に比較して、水蒸気透過率を低くできることが明らかである。すなわち、本発明によれば、樹脂基板に成膜可能な低温かつ連続生産性に優れる塗布方式で高いガスバリア性を有するガスバリア性フィルムが作製できる。更には、加熱温度が高いほど、紫外線の光子エネルギーが高いほどガスバリア性が高くなる傾向が分かる。また、加熱処理と紫外線照射処理とを両方行った場合に、紫外線の光子エネルギーがより高ければ、より短時間の加熱で済むことが分かる。
また、公知の方法で作製したガスバリア性フィルムと同様に、積層構造にした方が性能が高くなるため、一般的に緻密な無機層の積層によりもたらされる迂回効果や積層による良質膜の膜厚アップの効果が見られていると推定しており、硝酸ガリウム前駆体から形成した酸化ガリウムのガスバリア性層が緻密な無機層として機能していると考えられる。
本発明の試料18について、断層組成分析をArスパッタによりガスバリア性層を5nm毎にエッチングしながら光電子分光測定(XPS)した。その結果を図3に示す。横軸は表面からの膜厚を表わし、縦軸は原子数比率を表わしている。図3のグラフに示されるように、ガスバリア性層である膜表面からの厚さ0〜40nmのうちの大部分の断層組成は、Ga:Oの比率が1:1.5となり、一様に酸化ガリウム(Ga)となっていることが確認できた。
さらに、試料3と試料18とで同じ構成の有機薄膜光電変換素子を封止し発電効率の劣化を60℃90%RH加速評価した。その結果、試料3で封止した素子は効率が半減するまでに1時間を要し、試料18では効率が半減するまでに630時間を要した。このように、加熱処理と紫外線照射処理を併用することによって、経時的なガスバリア性能がさらに向上することが分かった。
上記実施例および比較例の結果から、本発明のガスバリア性フィルムが電子デバイス用途として使用可能であることが確認できた。
1 基板、
2 前駆体溶液、
3 前駆体層、
4 ガスバリア性層。

Claims (9)

  1. 基板を用意する工程と、
    基板の少なくとも一方の面に、金属の硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩および蓚酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の金属塩を含む前駆体層を形成する工程と、
    前記前駆体層を変換処理し、金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物からなる群から選択される少なくとも一種を含むガスバリア性層を形成する工程と、
    を含む、ガスバリア性フィルムの製造方法。
  2. 前記前駆体層が水系溶液の塗布により形成される、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記金属塩が、Ga、AlおよびInからなる群から選択される少なくとも一種の金属の塩を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記前駆体層中の金属元素の50原子%以上がGaである、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記金属塩が硝酸塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記変換処理が50℃〜250℃の加熱処理および紫外線照射処理の少なくとも一方である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記紫外線照射処理に用いる紫外線が、300nm以下の真空紫外線である、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記基板が樹脂基板である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法により得られた、水蒸気に対するガスバリア性能が水蒸気透過率1×10−2g/(m・24h)以下である、ガスバリア性フィルム。
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