JP2014240051A - ガスバリアーフィルム、ガスバリアーフィルムの製造方法及びガスバリアーフィルムの製造装置 - Google Patents

ガスバリアーフィルム、ガスバリアーフィルムの製造方法及びガスバリアーフィルムの製造装置 Download PDF

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【課題】本発明の課題は、ガスバリアーフィルムの製造時間を短縮しつつガスバリアー性及び湿熱耐性を向上させることである。【解決手段】本発明のガスバリアーフィルムの製造方法は、樹脂製のフィルム基材の一方の面に対し、ポリシラザンを含む溶液を液滴化して塗布する液滴塗布工程と、前記液滴塗布工程により前記一方の面に塗布された前記溶液を乾燥させてポリシラザン層を形成する乾燥工程と、低酸素濃度の雰囲気下で前記ポリシラザン層に対して紫外線照射又はプラズマ照射を行うことで、前記ポリシラザン層を改質してガスバリアー層とする改質工程と、をこの順に行い、前記液滴塗布工程では、液滴化された前記溶液に対して光エネルギーを付与することを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、ガスバリアーフィルム、ガスバリアーフィルムの製造方法及びガスバリアーフィルムの製造装置に関する。より詳しくは、液晶や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、太陽電池、電子ペーパー等の電子デバイスのガス遮断に用いられる、可撓性に優れた透明なガスバリアーフィルム、ガスバリアーフィルムの製造方法及びガスバリアーフィルムの製造装置に関する。
従来、電子デバイス分野では、軽量化及び大型化という要求に加え、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の要求が加わり、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基材に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。
ただし、透明プラスチック等のフィルム基材はガラス基材よりもガスバリアー性が劣るという問題がある。
ガスバリアー性が劣る基材を用いると、水蒸気や酸素が浸透してしまい、例えば、電子デバイス内の機能を劣化させてしまうという問題があることがわかっている。
そこで、ガスバリアー性を有する膜(以下、ガスバリアー層とする)をフィルム基材に形成し、この形成物をガスバリアーフィルムとして使用することが一般的に知られている。ガスバリアー層の材料としては、ポリシラザンが注目されている。ポリシラザンは、そのままではバリアー性をほとんど有しないものの、Wet方式によって平滑でバリアー性の高いガスバリアー層を形成することができる。
ポリシラザンを用いてガスバリアー層を形成するには、例えば、プラズマ化学蒸着法で形成したケイ素酸化物層上にポリシラザン層を形成し、160度に加熱する。これにより、ポリシラザン層にガスバリアー性が付与されて、ガスバリアー層が形成される(例えば特許文献1参照)。
ただし、この技術では、フィルム基材の耐熱温度との関係から加熱温度が低く設定されており、ポリシラザン層を緻密にすることができないため、有機ELデバイス等に使用するのに十分なガスバリアー性を得ることはできない。
そのため、近年では、ポリシラザン層を緻密化するための技術が開発されている。例えば、ポリシラザン層に対して真空紫外線やプラズマを照射すると、雰囲気中のOやHOとの反応によってポリシラザン層が改質されて緻密化する(例えば特許文献2,3参照)。
しかしながら、本発明者等が鋭意研究を重ねたところ、これら特許文献2,3の技術では、以下のような問題があることが分かった。
即ち、これらの技術でポリシラザン層の改質を行うと、真空紫外線やプラズマエネルギー(あるいはプラズマにより発生するイオン、ラジカル)の最初の到達位置、つまり最表面から順にポリシラザン層の改質が進んでガスバリアー性が高くなるため、最表面よりも内側の領域(フィルム基材側の領域)では、改質に必要なOやHOの供給が当該最表面によって妨げられてしまい、不安定な状態のポリシラザン(以下、不安定ポリシラザンとする)が形成されてしまう。更に、ポリシラザン層よりもフィルム基材側に他のガスバリアー層が下地としてあらかじめ形成されている場合には、フィルム基材側からのOやHOの供給も妨げられてしまうため、不安定ポリシラザンがより多く形成されてしまう。そして、このように不安定ポリシラザンがガスバリアー層に形成されたガスバリアーフィルムでは、湿熱環境などにより微量なHOがガスバリアー層の最表面などを透過して不安定ポリシラザンに到達してしまうと、HOと不安定ポリシラザンとの反応によって、ガスバリアーフィルムの性能を顕著に劣化させてしまう。
一方、不安定ポリシラザンの形成を抑制するためにO雰囲気で紫外線やプラズマの照射を行い、改質中にポリシラザン層にOを積極的に供給すると、O自体が紫外線やプラズマのエネルギーを吸収するため、光エネルギーが大きく低下して改質が不十分になってガスバリアー性が不十分になったり、改質に長い時間を必要としたりしてしまう。
特開平8−281861号公報 特開2009−255040号公報 特開2007−237588号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、製造時間を短縮しつつガスバリアー性及び湿熱耐性を向上させることのできるガスバリアーフィルムの製造方法、ガスバリアーフィルムの製造装置及びガスバリアーフィルムを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、液滴化され光エネルギーの付与されたポリシラザン溶液でポリシラザン層を形成することで、本発明の課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.樹脂製のフィルム基材の一方の面に対し、ポリシラザンを含む溶液を液滴化して塗布する液滴塗布工程と、
前記液滴塗布工程により前記一方の面に塗布された前記溶液を乾燥させてポリシラザン層を形成する乾燥工程と、
低酸素濃度の雰囲気下で前記ポリシラザン層に対して紫外線照射又はプラズマ照射を行うことで、前記ポリシラザン層を改質してガスバリアー層とする改質工程と、
をこの順に行い、
前記液滴塗布工程では、
液滴化された前記溶液に対して光エネルギーを付与することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
2.前記液滴塗布工程では、
微量溶媒塗布法により前記溶液を塗布することを特徴とする第1項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
3.前記液滴塗布工程では、
静電塗布法により前記溶液を塗布することを特徴とする第1項又は第2項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
4.前記液滴塗布工程よりも前に、前記一方の面に対し、前記ガスバリアー層とは異なり、かつ水蒸気透過度が1×10−1g/m/24h以下の他のガスバリアー層を形成するガスバリアー層形成工程を行うことを特徴とする第1項から第3項のいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
5.前記ガスバリアー層の層厚を50nm以上に形成することを特徴とする第1項から第4項のいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
6.前記液滴塗布工程では、
液滴化された前記溶液に対して紫外線波長の光エネルギーを付与することを特徴とする第1項から第5項のいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
7.第1項から第6項のいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法により製造されたことを特徴とするガスバリアーフィルム。
8.樹脂製のフィルム基材の一方の面に対し、ポリシラザンを含む溶液を液滴化して塗布する液滴塗布部と、
前記液滴塗布部により前記一方の面に塗布された前記溶液を乾燥させてポリシラザン層を形成する乾燥部と、
低酸素濃度の雰囲気下で前記ポリシラザン層に対して紫外線照射又はプラズマ照射を行うことで、前記ポリシラザン層を改質してガスバリアー層とする改質部と、
を備え、
前記液滴塗布部は、
液滴化された前記溶液に対して光エネルギーを付与する光源を有することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造装置。
9.前記液滴塗布部は、
前記溶液を加熱乾燥しつつ前記一方の面にスプレー塗布することを特徴とする第8項に記載のガスバリアーフィルムの製造装置。
10.前記液滴塗布部は、
静電塗布法により前記溶液を塗布することを特徴とする第8項又は第9項に記載のガスバリアーフィルムの製造装置。
11.前記ガスバリアー層よりも前記フィルム基材側で前記一方の面に対し、前記ガスバリアー層とは異なり、かつ水蒸気透過度が1×10−1g/m/24h以下の他のガスバリアー層を形成するガスバリアー層形成部を備えることを特徴とする第8項から第10項のいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造装置。
12.前記ガスバリアー層の層厚を50nm以上に形成することを特徴とする第8項から第11項のいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造装置。
13.前記光源は、
液滴化された前記溶液に対して紫外線波長の光エネルギーを付与することを特徴とする第8項から第12項のいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造装置。
本発明の上記手段により、ガスバリアーフィルムの製造時間を短縮しつつガスバリアー性及び湿熱耐性を向上させることができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、本発明者は以下のように推察している。
すなわち、樹脂製のフィルム基材の一方の面に対し、ポリシラザンを含む溶液を液滴化して塗布する液滴塗布工程では、液滴化された前記溶液に対して光エネルギーを付与するので、液滴中のポリシラザンが雰囲気中や溶液中のOと反応して、ある程度まで改質されると考えられる。そして、このようにある程度まで改質されたポリシラザンの含有溶液を乾燥させてポリシラザン層を形成し、ポリシラザン層に対して改質処理を行う改質処理においては、紫外線エネルギーやプラズマエネルギー(あるいは紫外線やプラズマにより発生するイオン、ラジカル)の最初の到達位置、つまり最表面から順にポリシラザン層の改質が進んでガスバリアー性が高くなる場合であっても、最表面よりも内側の領域(フィルム基材側の領域)では、あらかじめポリシラザンにOが供給された状態となり、不安定ポリシラザンの形成が防止されると考えられる。したがって、従来と異なり、微量なHOがガスバリアー層の最表面などを透過して不安定ポリシラザンと反応するのが防止されるため、ガスバリアーフィルムの性能が劣化してしまうのが防止され、湿熱耐性が向上すると考えられる。
また、O雰囲気でプラズマや紫外線を照射してOを積極的に供給しつつポリシラザン層を改質する場合と異なり、プラズマや紫外線のエネルギーがOで吸収されてしまうことがないため、ポリシラザン層を確実に改質してガスバリアー性を向上させるとともに、処理時間が短縮されると考えられる。
ガスバリアーフィルムの構成を示す模式図である。 ガスバリアーフィルムの製造装置の一例を示す概略図である。 ESD法を用いた液滴塗布装置の構成を示す概略図である。 ESD法を用いた液滴塗布装置の動作を説明するための図である。 ガスバリアーフィルムを具備した有機ELパネルの模式図である。 ESDUS法を用いた液滴塗布装置の構成を示す概略図である。 スプレー法を用いた液滴塗布装置の構成を示す概略図である。
本発明のガスバリアーフィルムの製造装置(及び製造方法)は、樹脂製のフィルム基材の一方の面に対し、ポリシラザンを含む溶液を液滴化して塗布する液滴塗布工程(液滴塗布部)と、前記液滴塗布工程により前記一方の面に塗布された前記溶液を乾燥させてポリシラザン層を形成する乾燥工程(乾燥部)と、低酸素濃度の雰囲気下で前記ポリシラザン層に対して紫外線照射又はプラズマ照射を行うことで、前記ポリシラザン層を改質してガスバリアー層とする改質工程(改質部)と、をこの順に行い、前記液滴塗布工程では、液滴化された前記溶液に対して光エネルギーを付与することを特徴とする。この特徴は請求項1から請求項13までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、液滴塗布工程では、微量溶媒塗布法、好ましくは静電塗布法により前記溶液を塗布することが、ガスバリアー及び湿熱耐性を向上することができ、好ましい。
さらに、本発明においては、液滴塗布工程よりも前に、前記一方の面に対し、前記ガスバリアー層とは異なり、かつ水蒸気透過度が1×10−1g/m/24h以下の他のガスバリアー層を形成するガスバリアー層形成工程を行うことが、ガスバリアーフィルムのガスバリアー性能をいっそう向上させることができ、好ましい。また、ガスバリアー層の層厚を50nm以上に形成することが、ガスバリアーフィルムのガスバリアー性能をいっそう向上させることができ、好ましい。また、液滴塗布工程では、液滴化された前記溶液に対して紫外線波長の光エネルギーを付与することが、確実にガスバリアー性や湿熱耐性を向上させることができ、好ましい。
なお、本発明でいう「ガスバリアー性」とは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(温度:60±0.5℃、相対湿度(RH):90±2%)が3×10−3g/m/24h以下であり、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/m/24h・atm以下であることを意味する。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
<1.本発明のガスバリアーフィルムの概要>
本発明のガスバリアーフィルムは、樹脂製のフィルム基材の一方の面に対し、ポリシラザンを含む溶液を液滴化して塗布する液滴塗布工程と、前記液滴塗布工程により前記一方の面に塗布された前記溶液を乾燥させてポリシラザン層を形成する乾燥工程と、低酸素濃度の雰囲気下で前記ポリシラザン層に対して紫外線照射又はプラズマ照射を行うことで、前記ポリシラザン層を改質してガスバリアー層とする改質工程と、をこの順に行い、前記液滴塗布工程では、液滴化された前記溶液に対して光エネルギーを付与することによって製造されたことを特徴とする。
<1−1.ガスバリアーフィルムの構成>
本発明のガスバリアーフィルムの構成は特に限定されるものではないが、図1に一例を示す。本実施の形態におけるガスバリアーフィルム1は、フィルム基材10と、当該フィルム基材10に積層されたガスバリアー層11,12(以下、第1のガスバリアー層11、第2のガスバリアー層12とする)とを備えている。なお、フィルム基材10と第1のガスバリアー層11との間に硬化性樹脂層や下地層(図示せず)を設けても良いし、第2のガスバリアー層12上にオーバーコート層(図示せず)を設けても良い。また、フィルム基材10における第2のガスバリアー層12との反対側の面には、ブリードアウト防止層(図示せず)を設けても良い。また、第1のガスバリアー層11を設けないこととしても良い。
<1−2.フィルム基材>
本実施形態において、フィルム基材10は、ガスバリアー層を保持することができる樹脂で作製されたものであれば特に限定されない。
フィルム基材10の材料としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、エチレン−環状オレフィン等のポリエチレン共重合体、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリマー、セルローストリアセテート(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP、製品名ゼオネックス、日本ゼオン株式会社製)、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム基材(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記ポリマーを2層以上積層して成る基材等を挙げることができる。
フィルム基材10の材料としては、コストや入手の容易性の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。また、光学的透明性、耐熱性、無機層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いられる。
フィルム基材10の厚さは、取扱い性や機械的強度の観点から、5〜500μmが好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。また、本発明の実施形態のガスバリアーフィルム1を発光素子に使用する場合も鑑みて、フィルム基材10のガラス転移温度(Tg)は100℃以上であることが好ましい。また、熱収縮率も低いことが好ましい。
更に、フィルム基材10は、透明であることが好ましい。フィルム基材10が透明であり、フィルム基材10上に作製するガスバリアー層11,12も透明であると、透明なガスバリアーフィルム1となるため、太陽電池や有機EL素子等の透明基材とすることが可能となるからである。
また、上記のポリマー等を用いたフィルム基材10は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。また、フィルム基材10の表面には、コロナ処理を施してあってもよい。
フィルム基材10は、従来公知の一般的な方法によって製造することが可能である。例えば、材料となるポリマーを押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸のフィルム基材10を製造することができる。
また、未延伸のフィルムを一軸延伸や、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、フィルムの流れ方向(縦軸方向)、又は当該流れ方向の直交方向(横軸方向)に延伸することにより、延伸フィルムとしてフィルム基材10を製造することができる。この場合の延伸倍率は、フィルム基材10の材料となるポリマーに応じて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
<1−3.ガスバリアー層(第1、第2のガスバリアー層)>
本実施形態において、ガスバリアー層とは、水分子や酸素分子等の気体の透過を抑制することができる層のことをいう。ガスバリアー層は、単層でも複数の同様な膜を積層してもよく、複数の層を設けることにより更にガスバリアー性を向上させることができる。
<1−3−1.第1のガスバリアー層>
第1のガスバリアー層11は、本発明における他のガスバリアー層であり、第2のガスバリアー層12よりもフィルム基材10の側で、当該フィルム基材10上に設けられている。ただし、第1のガスバリアー層11とフィルム基材10との間には、下地層(平滑層やアンカー層とも称する)などが介在しても良い。
この第1のガスバリアー層11は、水蒸気透過度が1×10−1g/m/24h以下であり、層厚が10〜1000nm、好ましくは10〜300nmとなっている。
第1のガスバリアー層11を形成する材料としては、ケイ素化合物やチタン化合物、アルミニウム化合物が有用である。特に、二酸化ケイ素等のケイ素酸化物、ケイ素酸窒化物又はケイ素酸炭化物の薄膜をフィルム基材上に形成することにより優れたガスバリアー性をフィルム基材10に付与することができる。
第1のガスバリアー層11を製造する方法としては、気相法による無機成膜方法を利用した方法が知られている。当該気相法による無機成膜方法としては、フィルム等の基材上に、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法)によって金属(テトラエトキシシラン(TEOS)に代表される有機ケイ素化合物等)を酸素プラズマで酸化しながら蒸着して無機膜(ガスバリアー層)を形成する方法や、半導体レーザー等を用いて金属を蒸発させて、酸素の存在下で基材上に堆積する真空蒸着法、スパッタ法により無機膜(ガスバリアー層)を形成する方法等が挙げられる。
化学蒸着法(化学気相成長法、Chemical Vapor Deposition)は、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基材表面あるいは気相での化学反応により基材上に膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマを発生させる方法などがあり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、真空プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法など公知のCVD方式等が挙げられる。特に限定されるものではないが、成膜速度や処理面積の観点から、プラズマCVD法を適用することが好ましい。化学蒸着法により第1のガスバリアー層11を形成すると、ガスバリアー性の点で有利である。
真空プラズマCVD法や、大気圧又は大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法により得られるガスバリアー層は、原材料(原料ともいう)である金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、目的の化合物を製造できるため好ましい。
例えば、ケイ素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、ケイ素酸化物が生成される。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
原料化合物としては、ケイ素化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物を用いる。
これらのうち、ケイ素化合物として、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトライソポロポキシド、チタンn−ブトキシド、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
アルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、トリエチルジアルミニウムトリ−s−ブトキシド等が挙げられる。
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気などが挙げられる。また、上記分解ガスを、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスと混合してもよい。
原料化合物を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで所望のバリアー層を得ることができる。化学蒸着法により形成される第1のガスバリアー層11は、酸化物、窒化物、酸窒化物又は酸炭化物である。
<1−3−2.第2のガスバリアー層>
第2のガスバリアー層12は、第1のガスバリアー層11上に設けられた層である。ただし、第1のガスバリアー層11と第2のガスバリアー層12との間には、他の層が介在しても良い。
この第2のガスバリアー層12は、層厚が50nm以上であることが好ましい。
第2のガスバリアー層12を形成する材料としては、ポリシラザンが用いられている。
<1−3−2(1).ポリシラザン>
ポリシラザンとは、ケイ素−窒素結合を有するポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO、Si、及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
具体的には、ポリシラザンは、好ましくは下記の一般式(I)の構造を有する。
一般式(I):
−[Si(R)(R)−N(R)]n−
上記一般式(I)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R、R及びRは、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。ここで、アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。また、アリール基としては、炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。より具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などの縮合多環炭化水素基が挙げられる。(トリアルコキシシリル)アルキル基としては、炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換されたシリル基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基が挙げられる。より具体的には、3−(トリエトキシシリル)プロピル基、3−(トリメトキシシリル)プロピル基などが挙げられる。上記R〜Rに場合によって存在する置換基は、特に制限はないが、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基(−OH)、メルカプト基(−SH)、シアノ基(−CN)、スルホ基(−SOH)、カルボキシ基(−COOH)、ニトロ基(−NO)などがある。なお、場合によって存在する置換基は、置換するR〜Rと同じとなることはない。例えば、R〜Rがアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。これらのうち、好ましくは、R、R及びRは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ビニル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基又は3−(トリメトキシシリルプロピル)基である。
また、上記一般式(I)において、nは、整数であり、一般式(I)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
上記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、好ましい態様の一つは、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンである。
又は、ポリシラザンとしては、下記の一般式(II)で表される構造を有するものを用いても良い。
一般式(II):
−[Si(R’)(R’)−N(R’)]n’−[Si(R’)(R’)−N(R’)]p−
上記一般式(II)において、R’、R’、R’、R’、R’及びR’は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R’、R’、R’、R’、R’及びR’は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記における、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(I)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(II)において、n’及びpは、整数であり、一般式(II)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n’及びpは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(II)のポリシラザンのうち、R’、R’及びR’が各々水素原子を表し、R’、R’及びR’が各々メチル基を表す化合物;R’、R’及びR’が各々水素原子を表し、R’、R’が各々メチル基を表し、R’がビニル基を表す化合物;R’、R’、R’及びR’が各々水素原子を表し、R’及びR’が各々メチル基を表す化合物が好ましい。
又は、ポリシラザンとしては、下記一般式(III)で表される構造を有するものを用いても良い。
一般式(III):
−[Si(R”)(R”)−N(R”)]n”−[Si(R”)(R”)−N(R”)]p”−[Si(R”)(R”)−N(R”)]q−
上記一般式(III)において、R”、R”、R”、R”、R”、R”、R”、R”及びR”は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R”、R”、R”、R”、R”、R”、R”、R”及びR”は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記における、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(I)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(III)において、n”、p”及びqは、整数であり、一般式(III)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n”、p”及びqは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(III)のポリシラザンのうち、R”、R”及びR”が各々水素原子を表し、R”、R”、R”及びR”が各々メチル基を表し、R”が(トリエトキシシリル)プロピル基を表し、R”がアルキル基又は水素原子を表す化合物が好ましい。
一方、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地である基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。このため、用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体又は固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
ポリシラザンは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン層形成用の塗布液として使用することができる。この塗布液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のアクアミカ(登録商標) NN120−10、NN120−20、NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL120−20、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
本発明で使用できるポリシラザンの別の例としては、以下に制限されないが、例えば、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等の、低温でセラミック化するポリシラザンが挙げられる。
<1−3−2(2).ポリシラザン塗布液>
以上のポリシラザンは、溶液(以下、ポリシラザン塗布液120(図4参照)とする)の状態でフィルム基材10に塗布されて乾燥された後、改質されることで第2のガスバリアー層12を形成する。なお、本発明において溶液とは、必ずしも溶質が溶解していなくても良く、溶質が溶媒中に分散しているコロイド溶液であってもよい。
ポリシラザン塗布液120中のポリシラザンの含有量は、第2のガスバリアー層12の所望の層厚や塗布液のポットライフ等によっても異なるが、ポリシラザン塗布液120の全量に対して、0.2質量%〜35質量%であることが好ましい。
このポリシラザン塗布液120は、以下の溶媒を含んでおり、好ましくはさらに以下の触媒を含んでいる。
<1−3−2(3).溶媒>
ポリシラザン塗布液120を調製するのに用いることのできる有機溶媒としては、具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒や、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が挙げられる。詳しくは、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの有機溶媒は、ポリシラザン化合物の材料の溶解度や有機溶媒の蒸発速度等の特性に合わせて選択し、複数の有機溶媒を混合してもよい。
<1−3−2(4).触媒>
ポリシラザン層をガスバリアー層に改質するために、ポリシラザン層中のポリシラザンの少なくとも一部を酸化ケイ素化合物に転化させる反応を促進する触媒を用いてもよい。
本発明に好ましく用いられる触媒としては、特開平10−279362号公報に記載のニッケル、チタン、白金、ロジウム、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、イリジウム、アルミニウムの群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩、またニッケル、白金、パラジウム又はアルミニウムを含むアセチルアセトナート錯体、またAu、Ag、Pd、Niをはじめとする金属の微粒子、またメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、トリヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン等が挙げられる。なお、これらアミン化合物に含まれる炭化水素鎖は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。
これら触媒のポリシラザンに対する添加量は、ポリシラザンを含むガスバリアー層形成用塗布液中における固形分濃度比率として、ポリシラザン全質量に対し、質量比として0.1ppm以上、5.0%未満であることが好ましい。さらに好ましくは、100ppm以上、3.0%以下の範囲である。
<1−4.硬化性樹脂層>
本発明に係るガスバリアーフィルム1は、フィルム基材10上に、硬化性樹脂を硬化させてなる硬化性樹脂層を有することが好ましい。硬化性樹脂としては特に制限されず、活性エネルギー線硬化性材料等に対して紫外線等の活性エネルギー線を照射し硬化させて得られる活性エネルギー線硬化性樹脂や、熱硬化性材料を加熱することにより硬化して得られる熱硬化性樹脂等が挙げられる。該硬化性樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
このような硬化性樹脂層は、(1)フィルム基材10の表面を平滑にする、(2)積層される上層の応力を緩和する、(3)フィルム基材10と上層との接着性を高める、の少なくとも一つの機能を有する。このため、該硬化性樹脂層は、後述の平滑層、アンカーコート層(易接着層)と兼用されてもよい。
活性エネルギー線硬化性材料としては、例えば、アクリレート化合物を含有する組成物、アクリレート化合物とチオール基を含有するメルカプト化合物とを含有する組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを含有する組成物等が挙げられる。具体的には、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズ(シリカ微粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる化合物)を用いることができる。また、上記のような組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している活性エネルギー線硬化性材料であれば特に制限はない。
光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種又は2種以上の混合物として、あるいはその他の化合物との混合物として使用することができる。
活性エネルギー線硬化性材料を含む組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノホリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノホリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
熱硬化性材料としては、具体的には、クラリアント社製のトゥットプロムシリーズ(有機ポリシラザン)、セラミックコート株式会社製のSP COAT耐熱クリアー塗料、アデカ社製のナノハイブリッドシリコーン、DIC株式会社製のユニディック(登録商標)V−8000シリーズ、EPICLON(登録商標) EXA−4710(超高耐熱性エポキシ樹脂)、信越化学工業株式会社製のシリコン樹脂 X−12−2400(商品名)、日東紡績株式会社製の無機・有機ナノコンポジット材料SSGコート、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ポリアミドアミン−エピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる。
硬化性樹脂層の形成方法は、特に制限はないが、硬化性材料を含む塗布液をスピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法、グラビア印刷法等のウエットコーティング法、又は蒸着法等のドライコーティング法により塗布し塗膜を形成した後、可視光線、赤外線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等の活性エネルギー線の照射及び/又は加熱により、前記塗膜を硬化させて形成する方法が好ましい。活性エネルギー線を照射する方法としては、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い好ましくは100〜400nm、より好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は、走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射する方法が挙げられる。
硬化性材料を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を用いて硬化性樹脂層を形成する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−若しくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
硬化性樹脂層は、上述の材料に加えて、必要に応じて、熱可塑性樹脂や酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を含有することができる。また、成膜性向上及び膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
硬化性樹脂層の厚さとしては、特に制限されないが、0.1〜10μmの範囲が好ましい。
硬化性樹脂層の平滑性は、中心線平均表面粗さ(Ra)は、0.3〜2.0nmであることが好ましく、0.3〜1.0nmであることがより好ましい。このような範囲であれば、フィルム基材10の表面を平滑にするという硬化性樹脂層の一目的を達成しうる。なお、中心線平均表面粗さ(Ra)は、従来公知の方法(例えば、走査型プローブ顕微鏡(AFM)を用いる方法)により測定することができる。
硬化性樹脂層の弾性率は、2〜20Paであることが好ましい。このような範囲であれば、膜面のハードコート性が向上し、上層積層による応力を緩和できるという硬化性樹脂層の一目的を達成しうる。なお、弾性率は、従来公知の弾性率測定方法により求めることができ、例えば、オリエンテック社製バイブロンDDV−2を用いて一定の歪みを一定の周波数(Hz)で掛ける条件下で測定する方法、測定装置としてRSA−II(レオメトリックス社製)を用い、フィルム基材10上に硬化性樹脂層を形成した後、一定周波数で印加歪を変化させたとき得られる測定値により求める方法、あるいは、ナノインデンテーション法を適用したナノインデンター、例えば、MTSシステム社製のナノインデンター(Nano IndenterTMXP/DCM)により測定することができる。
<1−5.下地層>
本発明のガスバリアーフィルム1は、ガスバリアー層11,12を有する面に下地層(平滑層、プライマー層、アンカー層)を有していてもよい。下地層は突起等が存在するフィルム基材10の粗面を平坦化するために設けられる。このような下地層は、基本的には、活性エネルギー線硬化性材料又は熱硬化性材料等を硬化させて形成される。下地層は、上記のような機能を有していれば、基本的に上記の硬化性樹脂層と同じ構成をとっても構わない。
前記活性エネルギー線硬化性材料や前記熱硬化性材料の例、下地層の形成方法は、上記の硬化性樹脂層の欄で説明したものと同様であるので、ここでは説明を省略する。
下地層の厚さとしては、特に制限されないが、0.1〜10μmの範囲が好ましい。
なお、該平滑層は、下記アンカーコート層として用いてもよい。
(アンカーコート層)
本発明におけるフィルム基材10の表面には、バリアー層との接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として形成してもよい。このアンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及びアルキルチタネート等を、1又は2種以上併せて使用することができる。上記アンカーコート剤は、市販品を使用してもよい。具体的には、シロキサン系UV硬化型ポリマー溶液(信越化学工業株式会社製、「X−12−2400」の3%イソプロピルアルコール溶液)を用いることができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりフィルム基材10上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。なお、市販の易接着層付き基材を用いてもよい。
又は、アンカーコート層は、物理蒸着法又は化学蒸着法といった気相法により形成することもできる。例えば、特開2008−142941号公報に記載のように、接着性等を改善する目的で酸化ケイ素を主体とした無機膜を形成することもできる。
アンカーコート層の厚さは、特に制限されないが、0.5〜10.0μm程度が好ましい。
<1−6.ブリードアウト防止層>
本発明のガスバリアーフィルム1においては、ブリードアウト防止層を設けることができる。ブリードアウト防止層は、硬化性樹脂層/平滑層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム基材10中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、当該フィルム基材10への接触面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、フィルム基材10における硬化性樹脂層/平滑層とは反対側の面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に硬化性樹脂層/平滑層と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な、ハードコート剤としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
ここで、多価不飽和有機化合物としては、例え、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、単価不飽和有機化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の添加剤として、マット剤を含有してもよい。マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種又は2種以上を併せて使用することができる。
ここで、無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
また、ブリードアウト防止層には、ハードコート剤及びマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
このような熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマー等の1種又は2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に、電離放射線(紫外線又は電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
また、光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、塗布液をフィルム基材10の表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる好ましくは100〜400nm、より好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
ブリードアウト防止層の厚さとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、フィルムとしての耐熱性を十分なものにしやすくなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整しやすくなるとともに、硬化性樹脂層/平滑層を透明高分子フィルムの一方の面に設けた場合におけるガスバリアーフィルム1のカールを抑えやすくすることができるようになる。
本発明のガスバリアーフィルム1には、必要に応じてさらに別の有機層や保護層、吸湿層、帯電防止層等の機能化層を設けることができる。
<2.ガスバリアーフィルムの製造装置>
続いて、ガスバリアーフィルム1の製造装置について説明する。
ガスバリアーフィルム1の製造装置5(以下、ガスバリアーフィルム製造装置5とする)は、図2に示すように、搬送装置50と、第1ガスバリアー層形成装置51と、第2ガスバリアー層形成装置52とを備えている。
<2−1.搬送装置>
搬送装置50は、フィルム基材10を搬送方向Xに搬送する装置である。
この搬送装置50は、搬送方向Xの上流側に送り出しローラー(元巻きローラー)500を備えるとともに、搬送方向Xの下流側に巻取りローラー501を備えている。
送り出しローラー500は、フィルム基材10が巻回されたローラーであり、回転自在に配設されている。
巻取りローラー501は、第1のガスバリアー層11及び第2のガスバリアー層12が形成されたフィルム基材10、つまりガスバリアーフィルム1を巻き取るためのローラーであり、回転自在に配設されている。なお、本実施の形態における巻取りローラー501には、当該巻取りローラー501を回転させるためのモーター等の駆動源(図示せず)が接続されている。
これらの送り出しローラー500及び巻取りローラー501の間には、搬送方向Xに沿って複数の搬送ローラー503が配設されている。これらの搬送ローラー503は、それぞれ回動自在に配設されており、フィルム基材10に所定の張力を掛けつつ、当該フィルム基材10を搬送方向Xに搬送するようになっている。
なお、以上の搬送装置50としては、従来公知の搬送装置を用いることができる。
<2−2.第1ガスバリアー層形成装置>
第1ガスバリアー層形成装置51は、本発明におけるガスバリアー層形成部であり、フィルム基材10の上面に、第1のガスバリアー層11を形成するようになっている。なお、このような第1ガスバリアー層形成装置51としては従来公知の装置を用いることができ、例えばWO11/004698号公報や特開2011−194319号公報、WO06/025356号公報等に記載のように大気圧下で形成を行う装置のほか、真空条件下で形成を行う装置を用いることができる。真空条件下で形成を行う装置としては、例えば、特開2008−196001号公報や特開2012−97291号公報等に記載のプラズマCVD装置、スパッタリング装置、特表2012−511106号公報等に記載の原子層堆積法(ALD:atomic layer deposition)による形成装置を用いることができる。第1ガスバリアー層形成装置51として、真空条件下で形成を行う装置を用いる場合には、当該第1ガスバリアー層形成装置51はフィルム基材10の周囲の雰囲気を真空に維持するチャンバーを備える。この場合には、第1ガスバリアー層形成装置51は、ガスバリアーフィルム製造装置5とは別体の装置であっても良い。第1ガスバリアー層形成装置51がガスバリアーフィルム製造装置5と別体の装置である場合には、フィルム基材10の上面に第1のガスバリアー層11が形成された基材が用意されて、ガスバリアーフィルム製造装置5に供給される。
<2−3.第2ガスバリアー層形成装置>
第2ガスバリアー層形成装置52は、フィルム基材10の上面、本実施の形態においては第1のガスバリアー層11の上面に、第2のガスバリアー層12を形成するようになっている。
この第2ガスバリアー層形成装置52は、液滴塗布部6と、乾燥部521と、改質部522とを有している。
<2−3−1.液滴塗布部>
液滴塗布部6は、フィルム基材10の上面に対し、上述のポリシラザン塗布液120を液滴化して塗布するものであり、本実施の形態においては、微量溶媒塗布法によってポリシラザン塗布液120を塗布するようになっている。
ここで、本発明における「微量溶媒塗布法」とは、材料を溶媒中に溶解及び/又は分散してなる溶液を噴霧して液滴を形成すること、液滴中の溶媒を揮発させた液滴を基材上若しくは基材上に設けられた薄膜の上に堆積させること、を含む塗布方法である。微量溶媒塗布法として、具体的には、ESD法(Electro Spray Deposition法:静電スプレー堆積、静電塗布法)、ESDUS法(Evaporative Spray Deposition from Ultra-dilute Solution法:超希薄溶液濃縮スプレー堆積法)が挙げられる。
以下、本実施の形態においては、液滴塗布部6は、ESD法を用いてポリシラザン塗布液120を塗布することとして説明する。
即ち、本実施の形態における液滴塗布部6は、ポリシラザン塗布液120を電圧印加により帯電させてスプレー塗布する装置であり、例えば図3に示すように、金属等の導電体で形成された平坦な支持体60を有している。
支持体60は、フィルム基材10を裏面側から支持するものであり、本実施の形態においては水平に配設されている。支持体60の対向位置(本実施の形態においては上方)には、キャピラリー61が配設されている。
キャピラリー61は、ポリシラザン塗布液120が充填される微細な管であり、先端の開口(以下、噴霧口とする)を支持体60に向けて配設されている。キャピラリー61の噴霧口はポリシラザン塗布液120を送出することが可能となっており、噴霧口から送出されたポリシラザン塗布液120は、後述するように液滴化されて分散し、フィルム基材10に着弾することとなる。着弾直前の液滴はエアロゾル粒子状であることが好ましく、具体的には、粒径1μ未満の粒子状であることが好ましい。
このキャピラリー61は、金属等の導電体から構成することができる。キャピラリー61の噴霧口の内径は、特に限定されず、ポリシラザン塗布液120の流量や、形成したい液滴のサイズ等に応じて適宜設定することができるが、10〜300μmの範囲内が好ましく、より好ましくは30〜50μmの範囲内である。また、キャピラリー61の噴霧口からフィルム基材10の被成膜面(本実施形態では上面)までの距離Daは、ポリシラザン塗布液120からの溶媒の揮発が良好となるように適宜設定することができる。距離Daが大きいほど、溶媒が揮発して液滴が乾燥しやすいものの、液滴が広く分布して成膜面積が拡大するため、所望の層厚を形成するまでに時間を要する。このような傾向からすると、距離Daとしては特に限定されないが、好ましくは3〜20cmの範囲内であり、より好ましくは5〜10cmの範囲内である。なお、このキャピラリー61は、液滴塗布部6に一つのみ具備されても良いし、生産性を上げるため、複数具備されても良い。
以上のキャピラリー61には、溶液供給部62からポリシラザン塗布液120が供給されるようになっている。
溶液供給部62は、ポリシラザン塗布液120を貯蔵しつつキャピラリー61に供給するものであり、供給するポリシラザン塗布液120の流量、速度を適宜設定できるようになっている。溶液供給部62の送液方法としては、公知の方法を用いることができ、圧力送液、シリンジポンプ送液、チューブ送液等が挙げられる。求められる送液量、送液精度、溶液の固形分濃度、粘度、コスト等に応じて、最適な送液方法を選択することができる。なかでも、送液量と送液精度の制御が容易なことから、圧力送液が好ましい。送液されるポリシラザン塗布液120には、塗布範囲を制御する目的や、フィルム基材10上に付着後の表面張力勾配に伴う液流動(例えば、コーヒーリングと呼ばれる現象を引き起こす液流動)の抑制する目的に応じて、界面活性剤や複数種の溶媒を混合してもよい。界面活性剤としては、溶媒に含まれる水分の影響、レベリング性、基板Tへの濡れ性等の観点から、例えばアニオン性又はノニオン性の界面活性剤等が挙げられる。具体的には、含フッ素系活性剤等、国際公開第08/146681パンフレット、特開平2−41308号公報等に挙げられた界面活性剤を用いることができる。なお、液滴塗布部6が用いるポリシラザン塗布液120の粘度は、100mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは5mPa・s以下である。この粘度は、JIS Z 8803に従い、粘度計DV−II+Pro(ブルックフィールド社製)により、25℃の条件にて測定した値である。また、液滴塗布部6が用いるポリシラザン塗布液120の固形分濃度は、好ましくは2質量%以下であり、好ましくは0.01〜1.0質量%の範囲内である。
また、上述のキャピラリー61の管内には、線状に形成された電極610が配設されている。
そして、この電極610と、上述の支持体60とには、電圧印加部650、651が接続されている。
電圧印加部650はキャピラリー61内の電極610に電圧を印加し、電圧印加部651は支持体60に電圧を印加することで、キャピラリー61内のポリシラザン塗布液120と、支持体60上のフィルム基材10とを、それぞれ逆の極性に帯電させるようになっている。なお、本実施の形態においては、キャピラリー61の電極610には正電圧が印加され、支持体60には負電圧が印加されるようになっている。ただし、支持体60に負電圧を印加する代わりに当該支持体60をアース接地しても良いし、キャピラリー61の電極610に負電圧を印加して支持体60に正電圧を印加しても良い。印加する電圧(V)は特に限定されず、キャピラリー61の噴霧口からフィルム基材10までの距離Daや、ポリシラザン塗布液120の噴霧量との関係によって適宜設定することができるが、好ましくは5〜20kVの範囲内であり、より好ましくは10〜15kVの範囲内である。
また、上述のキャピラリー61の上部から支持体60までの空間は、チャンバー600によって覆われている。
チャンバー600は、ガス供給部601からガス供給ノズル602を介して供給されるガスを内部に充満させて、内部の雰囲気を維持するようになっている。ただし、チャンバー600は、キャピラリー61、フィルム基材10及び支持体60の全体を覆って雰囲気制御をおこなっても良い。
このチャンバー600は、キャピラリー61から噴霧されるポリシラザン塗布液120の液滴を雰囲気中の酸素に積極的に接触させる観点からは、内部を少なくとも酸素を含む雰囲気下に維持することが好ましいが、後述の光源605から液滴への照射効率を高める観点からは、光源605の種類に応じて、酸素を含まない雰囲気下などに維持しても良い。ここで、酸素を含む雰囲気とは、具体的には酸素を1%以上の濃度で含む雰囲気であり、好ましくは酸素を10%以上の濃度で含む雰囲気である。なお、後述の改質部においてポリシラザンを確実に改質する観点からは、ポリシラザン塗布液120の塗布時にポリシラザンを酸素の他に、水とも接触させる方が好ましいため、チャンバー600内の雰囲気は水を含んでいても良い。ここで、水を含む雰囲気とは、具体的に水を20%以上の濃度で含む雰囲気であり、好ましくは水を50%以上の濃度で含む雰囲気である。ただし、本発明においては、チャンバー600内の雰囲気は酸素や水を含まなくても良い。
チャンバー600の内側面には、少なくとも一つの光源605が配設されている。
この光源605は、キャピラリー61の噴霧口から送出されて液滴化されたポリシラザン塗布液に対して光エネルギーを照射することで、液滴中のポリシラザンを雰囲気中や溶液中のOと反応させ、ある程度まで改質するようになっている。このような光源605としては、ポリシラザン塗布液120により吸光される波長の光源を用いることができ、好ましくは紫外線波長の光源を用いることができる。波長200nm未満の光源は、ポリシラザン塗布液120の光吸収量が大きく、特に好ましい。
より具体的には、光源605としては、エキシマラジエータ(例えば、約172nmに最大放射を有するXeエキシマランプや約193nmに最大放射を有するArFエキシマランプ、約161nmに最大放射を有するArBrエキシマランプ等のエキシマランプ)、約185nm及び254nmに輝線を有する低圧水銀ランプやアマルガムランプ、重水素ランプ、約156nm及び約165nmに強い輝線を有する一酸化炭素を用いたランプ(例えば特開2010−135162公報に開示のランプ)、約193nmに最大放射を有するArFエキシマレーザー、約157nmに最大放射を有するF2エキシマレーザー、250〜320nm,365nmに強いスペクトルを持つ高圧水銀ランプ、260nm、280nm、300nm等各種波長のLEDランプ等が好適に用いられる。
なお、200nm未満の波長の光源を用いる場合は、酸素による光吸収が大きくなるため、ポリシラザン塗布液120の液滴に光エネルギーを効率よく照射する観点から、チャンバー600内の雰囲気の酸素濃度を1%以下とすることが好ましい。一方、200nm以上の波長の光源を用いる場合は、酸素による光吸収が小さいため、ポリシラザン塗布液120の液滴を雰囲気中の酸素に積極的に接触させる観点から、チャンバー600内の雰囲気の酸素濃度を高くすることが好ましい。具体的には酸素濃度1%以上が好ましく、更に好ましくは10%以上である。
また、以上の光源605は、好ましくはキャピラリー61の噴霧口と支持体60との間の空間の周囲に等間隔に複数配設されることが好ましい。
以上の光源605や電圧印加部650、651、溶液供給部62等には、制御部65が接続されている。
制御部65は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ハードディスク等の不揮発性メモリー等とにより構成され、不揮発メモリーに記憶されている制御プログラムを読み出して実行することにより、液滴塗布部6の各部の動作を制御する。例えば、制御部65は、電圧印加部650、651により印加する電圧や、溶液供給部62によりキャピラリー61に送液する送液速度、光源605から出力する光エネルギー等を制御する。
以上の液滴塗布部6においては、図4に示すように、ポリシラザン塗布液120が充填されたキャピラリー61の電極610と支持体60との間に電圧印加部650、651が電圧を印加すると、キャピラリー61内のポリシラザン塗布液120は正の極性に帯電し、支持体60上に設置されたフィルム基材10は負の極性に帯電する。この状態で、キャピラリー61からポリシラザン塗布液120が送出されると、このポリシラザン塗布液120はクーロン力により反発して分裂し、それぞれ正電荷を持つ液滴になる。このとき、分裂によってポリシラザン塗布液120中の溶媒が揮発し、揮発によって電荷密度が上昇することから、液滴はさらに反発して分裂を繰り返し、微粒子化される。この間、液滴に対して光源605から光エネルギーが付与される結果、液滴中のポリシラザンが雰囲気中や溶液中のOと反応して、ある程度まで改質される。そして、微粒子化された液滴は、負の極性のフィルム基材10に引き寄せられ、フィルム基材10上に付着して塗膜を形成する。フィルム基材10に到達するまでに溶媒はほとんど揮発するため、形成された有機層中に溶媒はほとんど無く、ドライ状態の有機層、より具体的には、ある程度まで改質されたドライ状態のポリシラザン塗膜が形成される。
<2−3−2.乾燥部>
上述の図2に示すように、乾燥部521は、液滴塗布部6によりフィルム基材10の上面に塗布された塗布液、つまり塗膜を乾燥させてポリシラザン層を形成するものである。
この乾燥部521は、従来公知の乾燥装置であり、適用する熱処理等の方法に応じて乾燥処理の条件(温度、湿度、処理時間など)が適宜設定されるようになっている。ここで、乾燥処理の温度は、迅速処理の観点から高い温度であることが好ましい。ただし、樹脂フィルムであるフィルム基材10に対する熱ダメージを考慮し、付与する温度は乾燥処理の時間を考慮して適宜設定することが好ましい。例えば、フィルム基材10として、ガラス転位温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと略記する)を用いる場合には、乾燥処理温度は150℃以下に設定することが好ましい。
乾燥処理の時間については、溶媒が除去され、かつ基材への熱ダメージが少なくなるように、短時間に設定することが好ましく、乾燥処理温度が150℃以下であれば、30分以内に設定することが好ましい。
乾燥処理中の雰囲気は酸素を含むことが好ましい。また、雰囲気は比較的低湿に制御されていることが好ましいが、低湿度環境における湿度は温度により変化するので、温度と湿度の関係は露点温度の規定により好ましい形態が示される。好ましい露点温度は4℃以下(温度25℃/湿度25%)で、より好ましい露点温度は−8℃(温度25℃/湿度10%)以下、さらに好ましい露点温度は−31℃(温度25℃/湿度1%)以下である。また、水分を取り除きやすくするため、乾燥部521は、減圧乾燥を行っても良い。減圧乾燥における圧力は常圧〜0.1MPaの範囲で選択することができる。
<2−3−3.改質部>
改質部522は、ポリシラザン層を改質して第2のガスバリアー層12とするものであり、低酸素濃度の雰囲気下でポリシラザン層に紫外線照射又はプラズマ照射を行うことで、改質を行うようになっている。
この改質部522は、チャンバー522Aと、当該チャンバー522A内に配設された照射装置522Bとを有している。
チャンバー522Aは、内部の雰囲気を低酸素濃度に維持するようになっている。ここで、低酸素濃度とは、具体的には酸素を1%未満の濃度で含むか、あるいは酸素を含まない雰囲気である。より具体的には、真空紫外光(VUV)を照射する環境の酸素濃度は300ppm以上、10000ppm(1%)未満の範囲内とすることが好ましく、更に好ましくは、500〜5000ppmの範囲内である。このような範囲内に酸素濃度を調整することにより、酸素過多のガスバリアー層12の生成を防止してバリアー性の劣化を防止することができる。真空紫外光(VUV)照射時の雰囲気における酸素以外のガスとしては、乾燥不活性ガスを用いることが好ましく、特に、コストの観点から乾燥窒素ガスを適用することが好ましい。酸素濃度の調整は、チャンバー522A内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで行うことが可能である。
照射装置522Bは、紫外線又はプラズマの照射によりポリシラザン層を改質するようになっている。
なお、以上のようなチャンバー522A及び照射装置522Bとしては、従来公知のものを用いることができる。
以下、改質部522によって行われる改質処理について説明する。
<2−3−3(1).ポリシラザンの改質>
本発明におけるポリシラザンの改質とは、ポリシラザン化合物の一部又は全部を、酸化ケイ素又は酸化窒化ケイ素へ転化する反応をいう。
この改質処理では、フィルム基材10への適応という観点から、より低温での転化反応が可能となるよう、紫外光を使う転化反応が好適に用いられる。
<2−3−3(2).真空紫外光照射処理>
本発明におけるガスバリアーフィルム製造装置5において、水分が取り除かれたポリシラザン塗膜(ポリシラザン層)は紫外光照射による処理で改質される。紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化ケイ素膜又は酸化窒化ケイ素膜を形成することが可能である。
この紫外光照射により、セラミックス化に寄与するOとHOや、紫外線吸収剤、ポリシラザン自身が励起、活性化される。そして、励起したポリシラザンのセラミックス化が促進され、得られるセラミックス膜、つまり第2のガスバリアー層12が緻密になる。紫外光照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
本発明に適用可能な真空紫外光照射処理として、常用されているいずれの紫外線発生装置を使用することも可能である。なお、本発明でいう紫外光とは、一般には、真空紫外光と呼ばれる10〜200nmの波長を有する電磁波を含む紫外光をいう。
真空紫外光の照射は、照射される改質前のポリシラザン層を担持しているフィルム基材10がダメージを受けない範囲で、照射強度や照射時間を適宜設定することが好ましい。
フィルム基材10としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、照射装置522Bの光源として2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、フィルム基材10の表面の強度が20〜300mW/cm、好ましくは50〜200mW/cmの範囲内になるように、基材−紫外線照射ランプ間の距離を設定し、0.1秒〜10分間の範囲内で照射を行うことができる。
一般に、紫外線照射処理時のフィルム基材10の温度が150℃以上になると、フィルム基材10がプラスチックフィルム等である場合には、フィルム基材10が変形したりその強度が劣化したりするなど、フィルム基材10の特性が損なわれることになる。しかしながら、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムなどの場合には、より高温での改質処理が可能である。したがって、この紫外線照射時の基材温度としては、一般的な上限はなく、フィルム基材10の種類によって当業者が適宜設定することができる。
このような紫外線の発生手段、つまり光源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ、UV光レーザー等が挙げられるが、特に限定されない。また、発生させた紫外線を、改質前のポリシラザン層に照射する際には、効率向上と均一な照射を達成する観点から、発生源からの紫外線を反射板で反射させてからポリシラザン層に当てることが望ましい。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用するフィルム基材10の形状によって適宜選定することができる。ポリシラザン層を有するフィルム基材10が長尺のフィルムである場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することにより、セラミックス化することができる。紫外線照射に要する時間は、使用するフィルム基材10やポリシラザン改質層(ポリシラザン層、第2のガスバリアー層12)の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分、好ましくは0.5秒〜3分の範囲内である。
以上のように、本発明におけるポリシラザン層の改質処理方法は、真空紫外光照射による処理である。ここで、真空紫外光照射による処理は、ポリシラザン化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光のエネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で酸化ケイ素膜の形成を行う方法である。これに必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
なお、Xe、Kr、Ar、Ne等の希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。
<2−3−3(3).プラズマ処理>
また、本発明におけるガスバリアーフィルム製造装置5において、水分が取り除かれたポリシラザン塗膜(ポリシラザン層)はプラズマ照射による処理で改質されても良い。
本発明における改質処理として用いることのできるプラズマ処理には、容量結合プラズマ(CCP)、マグネトロン併用プラズマ(特開平11−61416号公報等)、誘導結合プラズマ(ICP)、マイクロ波プラズマ(特開2006−269151号公報又は特開2007−317499号公報等)などの公知の方法を用いることができるが、特許第4000830号公報、特許第4433680号公報に記載されたような大気圧若しくはその近傍でプラズマを形成するプラズマ処理装置も好ましく用いることができる。大気圧若しくはその近傍の圧力とは20〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93〜104kPaが好ましい。大気圧プラズマCVD法は、真空下のプラズマCVD法に比べ、減圧にする必要がなく生産性が高いだけでなく、プラズマ密度が高密度であるために改質速度が速く、更には通常のCVD法の条件に比較して、大気圧下という高圧力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、極めて均質の改質効果が得られる。
大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガス又は周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
<3.ガスバリアーフィルムの製造方法>
続いて、以上のガスバリアーフィルム製造装置5を用いたガスバリアーフィルム1の製造方法について説明する。
まず、搬送装置50がフィルム基材10を搬送方向Xに搬送した状態で、当該フィルム基材10の上面に対し、第1ガスバリアー層形成装置51が第1のガスバリアー層11を形成する(第1ガスバリアー層形成工程)。
次に、フィルム基材10の上面のうち、第1のガスバリアー層11が形成された領域に対し、第2ガスバリアー層形成装置52が第2のガスバリアー層12を形成する(第2ガスバリアー層形成工程)。
具体的には、この第2ガスバリアー層形成工程では、まず液滴塗布部6が、静電塗布法によりポリシラザン塗布液120を液滴化してフィルム基材10の上面に塗布する(液滴塗布工程)。このとき、液滴化されたポリシラザン塗布液120に対して光源605が光エネルギーを付与することで、液滴中のポリシラザンを雰囲気中や溶液中のOと反応させ、ある程度まで改質する。次に、乾燥部521が、フィルム基材10の上面に塗布された塗布液、つまり塗膜を乾燥させてポリシラザン層を形成する(乾燥工程)。次に、改質部522が、低酸素濃度の雰囲気下でポリシラザン層に紫外線照射又はプラズマ照射を行うことで、ポリシラザン層を完全に改質して第2のガスバリアー層12とする(改質工程)。
そして、以上の第1ガスバリアー層形成工程と、第2ガスバリアー層形成工程とがフィルム基材10の各領域に対し、この順で行われることにより、長さ方向の全域にわたってフィルム基材10の上面に第1のガスバリアー層11と第2のガスバリアー層12とが形成され、ガスバリアーフィルム1が製造される。
<4.ガスバリアーフィルムが適用される電子デバイス>
本発明のガスバリアーフィルム1は、有機素子デバイス用フィルムとして使用することが好ましい。有機素子デバイスとしては、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略記する)、有機光電変換素子、液晶素子などが挙げられる。
〈電子デバイスとしての有機ELパネル〉
本発明のガスバリアーフィルム1は、太陽電池、液晶表示素子、有機EL素子等を封止する封止フィルムとして用いることができる。
このガスバリアーフィルム1を封止フィルムとして用いた電子デバイスである有機ELパネルPの一例を図5に示す。
有機ELパネルPは、図5に示すように、ガスバリアーフィルム1と、ガスバリアーフィルム1上に形成されたITOなどの透明電極100と、透明電極100を介してガスバリアーフィルム1上に形成された電子デバイス本体である有機EL素子101と、その有機EL素子101を覆うように接着剤層103を介して配設された対向フィルム102等を備えている。なお、透明電極100は、有機EL素子101の一部を成すこともある。
このガスバリアーフィルム1における第2のガスバリアー層12側の表面に、透明電極100と有機EL素子101が形成されるようになっている。
この有機ELパネルPにおいては、有機EL素子101が水蒸気に晒されないようにガスバリアーフィルム1によって好適に封止されており、劣化し難くなっているので、有機ELパネルPを長く使用することが可能になり、有機ELパネルPの寿命が延びる。
なお、対向フィルム102は、アルミ箔などの金属フィルムのほか、本発明に係るガスバリアーフィルムを用いてもよい。対向フィルム102としてガスバリアーフィルムを用いる場合、第2のガスバリアー層12が形成された面を有機EL素子101に向けて、接着剤層103によって貼付するようにすればよい。
以上、本実施の形態によれば、樹脂製のフィルム基材10の一方の面に対し、ポリシラザン塗布液120を液滴化して塗布する液滴塗布工程では、液滴化されたポリシラザン塗布液120に対して光エネルギーを付与するので、液滴中のポリシラザンを雰囲気中や溶液中のOと反応させてある程度まで改質することができる。そして、このようにある程度まで改質されたポリシラザンの含有溶液を乾燥させてポリシラザン層を形成し、ポリシラザン層に対して改質処理を行うので、仮にこの改質処理において紫外線エネルギーやプラズマエネルギー(あるいは紫外線やプラズマにより発生するイオン、ラジカル)の最初の到達位置、つまり最表面から順にポリシラザン層の改質が進んでガスバリアー性が高くなる場合であっても、最表面よりも内側の領域(フィルム基材10側の領域)では、あらかじめポリシラザンにOが供給されていることから、不安定ポリシラザンの形成が防止されることとなる。したがって、従来と異なり、微量なHOがガスバリアー層の最表面などを透過して不安定ポリシラザンと反応するのを防止することができるため、ガスバリアーフィルムの性能が劣化してしまうのを防止し、湿熱耐性を向上させることができる。
また、O雰囲気でプラズマや紫外線を照射してOを積極的に供給しつつポリシラザン層を改質する場合と異なり、プラズマや紫外線のエネルギーがOで吸収されてしまうことがないため、ポリシラザン層を確実に改質してガスバリアー性を向上させるとともに、処理時間を短縮することができる。
また、液滴塗布工程では微量溶媒塗布法、好ましくは静電塗布法によりポリシラザン塗布液120を塗布するので、液滴を分散させて均一に塗布することができる。したがって、層厚の均一なポリシラザン層、ひいては第2のガスバリアー層12を形成することができるため、第2のガスバリアー層12の層厚が不均一な場合と比較して、ガスバリアー性を向上させることができる。
また、第2のガスバリアー層12の層厚を50nm以上に形成するので、ガスバリアーフィルム1のガスバリアー性能をいっそう向上させることができる。なお、このように第2のガスバリアー層12の層厚を50nm以上に形成すると、ポリシラザン層を改質して第2のガスバリアー層12とするときに、ポリシラザン層の内部のポリシラザンに対してOが十分に供給されないおそれが生じるものの、本発明においては、上述のように、液滴塗布工程においてポリシラザン塗布液120中のポリシラザンを雰囲気中のO等に積極的に接触させてフィルム基材10に着弾させることができ、不安定ポリシラザンの形成を防止することができるため、第2のガスバリアー層12の層厚を大きくすることによるデメリットを無くすことができる。
また、液滴塗布工程よりも前に、当該フィルム基材10の上面に対し、水蒸気透過度が1×10−1g/m/24h以下の第1のガスバリアー層11を形成するので、ガスバリアーフィルム1のガスバリアー性能をいっそう向上させることができる。なお、このように第1のガスバリアー層11を形成すると、ポリシラザン層を改質して第2のガスバリアー層12とするときに、フィルム基材10側からポリシラザン層へのOの供給が妨げられることとなるものの、本発明においては、上述のように、液滴塗布工程においてポリシラザン塗布液120中のポリシラザンを雰囲気中のO等に積極的に接触させてフィルム基材10に着弾させることができ、不安定ポリシラザンの形成を防止することができるため、第1のガスバリアー層11の形成によるデメリットを無くすことができる。
また、液滴塗布工程では、液滴化されたポリシラザン塗布液120に対して紫外線波長の光エネルギーを付与するので、液滴中のポリシラザンを雰囲気中や溶液中のOと確実に反応させ、ある程度まで改質することができる。そのため、確実にガスバリアー性や湿熱耐性を向上させることができる。
[第1変形例]
続いて、上記実施形態の第1変形例について説明する。なお、上記の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図2に示すように、本変形例におけるガスバリアーフィルム製造装置5Aは、液滴塗布部6の代わりに液滴塗布部6Aを備えている。
この液滴塗布部6Aは、ESDUS法を用いてポリシラザン塗布液120を塗布するようになっている。ここで、ESDUS法とは、材料が溶媒に溶解又は分散する溶液のエアロゾルを形成し、当該エアロゾルを加熱して噴霧し、基材上に薄膜層を形成する方法である。溶液中の材料濃度が極めて低い場合であっても薄膜の形成が可能であることが、ESDUS法の特徴の一つである。
液滴塗布部6Aは、例えば図6に示すように、平坦な支持体60Aを備えている。
支持体60Aは、フィルム基材10を裏面側から支持するものであり、本実施の形態においては水平に配設されている。なお、本変形例における支持体60Aは、必ずしも導電体で形成されていなくても良い。この支持体60Aの対向位置(本実施の形態においては上方)には、溶液供給部62A及びガス供給部63Aに接続されたスプレーノズル61Aが配設されている。
溶液供給部62Aは、ポリシラザン塗布液120を貯蔵し、スプレーノズル61Aに送液するものである。送液流量等は、適宜設定することができる。溶液供給部62Aの送液方法や、溶液供給部62Aにより送液されるポリシラザン塗布液120に混合すべき界面活性剤、溶媒としては、上記実施形態における溶液供給部62と同様の送液方法や界面活性剤、溶媒を用いることができる。
ガス供給部63Aは、搬送ガスをスプレーノズル61Aに供給するものである。搬送ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気等のガスを用いることができる。
スプレーノズル61Aは、供給されたポリシラザン塗布液120を液滴として搬送ガス中に浮遊させ、好ましくはエアロゾルを形成する。エアロゾルの形成手段としては特に限定されず、従来公知の手段を用いることができる。例えば、溶液と搬送ガスとを混合後、噴霧器から高速噴射することでエアロゾルを形成してもよいし、超音波振動子を用いて溶液を微粒子化し、搬送ガス中に浮遊させてエアロゾルを形成してもよい。液滴径を均一にする観点からは、超音波振動子を用いてエアロゾルを形成することが好ましい。
このスプレーノズル61Aの上部から支持体60Aまでの空間は、チャンバー600Aによって覆われている。
チャンバー600Aは、内部の雰囲気を維持するものであり、加熱部601Aによって加熱されるようになっている。チャンバー600Aの内部空間におけるスプレーノズル61Aの側方には熱風発生装置66Aが配設されており、この熱風発生装置66Aはガス供給部64Aから供給される搬送ガスを熱風として下方に吹き付けるようになっている。これにより、スプレーノズル61Aから噴霧された液滴中の溶媒が加熱され、気化することとなる。なお、チャンバー600Aの内部の雰囲気組成は、上記実施形態におけるチャンバー600内と同様であることが好ましい。また、チャンバー600は、スプレーノズル61A、フィルム基材10及び支持体60Aの全体を覆って雰囲気制御をおこなっても良い。
以上のチャンバー600Aの内側面には、少なくとも一つの光源605が配設されている。
この光源605や、溶液供給部62A、ガス供給部63A、加熱部601A等には、制御部65Aが接続されている。
制御部65Aは、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ハードディスク等の不揮発性メモリー等とにより構成され、不揮発メモリーに記憶されている制御プログラムを読み出して実行することにより、液滴塗布部6Aの各部の動作を制御する。例えば、制御部65Aは、溶液供給部62Aによりスプレーノズル61Aに送液する送液速度、ガス供給部63Aからスプレーノズル61Aへのガス供給速度、光源605から出力する光エネルギー等を制御する。
以上の液滴塗布部6Aにおいては、スプレーノズル61Aがポリシラザン塗布液120の液滴(エアロゾル粒子)を搬送ガスとともに噴霧すると、液滴が搬送ガス(スプレーノズル61Aからの搬送ガスか、あるいは熱風発生装置66Aからの搬送ガス)によって搬送される。このとき、加熱部601Aや熱風発生装置66Aによって液滴中の溶媒が気化し、有機材料の微粒子が生成される。そして、有機材料の微粒子が搬送ガスに搬送されてフィルム基材10上に付着し、ポリシラザン塗布液120の塗布膜が形成される。ただし、このようなESDUS法を用いた液滴塗布部6Aにおいても、ESD法を適用して液滴とフィルム基材10とをそれぞれ逆の特性に帯電させて、液滴を噴霧してもよい。この場合には、電荷の反発によっていっそうの微粒子化が可能となる。
以上のような液滴塗布部6Aを有するガスバリアーフィルム製造装置5Aによっても、上記実施形態におけるガスバリアーフィルム製造装置5と同様の効果を得ることができる。
[第2変形例]
続いて、上記実施形態の第2変形例について説明する。なお、上記の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図2に示すように、本変形例におけるガスバリアーフィルム製造装置5Aは、液滴塗布部6の代わりに液滴塗布部6Bを備えている。
この液滴塗布部6Bは、2流体スプレー法等を用いてポリシラザン塗布液120を塗布するようになっており、例えば図7に示すように、上記第1変形例と同様の支持体60Aを備えている。
この支持体60Aの対向位置(本実施の形態においては上方)には、溶液供給部62B及びガス供給部63Bに接続されたスプレーノズル61Bが配設されている。
溶液供給部62Bは、ポリシラザン塗布液120を貯蔵し、スプレーノズル61Bに送液するものである。送液流量等は、適宜設定することができる。溶液供給部62Bの送液方法や、溶液供給部62Bにより送液されるポリシラザン塗布液120に混合すべき界面活性剤、溶媒としては、上記実施形態における溶液供給部62と同様の送液方法や界面活性剤、溶媒を用いることができる。
ガス供給部63Bは、搬送ガスをスプレーノズル61Bに供給するものである。搬送ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気等のガスを用いることができる。
スプレーノズル61Bは、供給されたポリシラザン塗布液120を液滴として搬送ガス中に浮遊させて噴霧する。噴霧方法としては、公知の方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば超音波振動子を用いて溶液を微粒子化する超音波方式、2流体方式、回転式等が挙げられる。2流体方式により均一で平坦な薄膜を形成するためには、ノズルから噴霧される液滴の単位体積当りの数、及び液滴の大きさのばらつきが少ない方が好ましい。なお塗布液の噴霧は、基材とノズルとの相対位置を一定に保った状態で行ってもよく、また基材とノズルとの少なくとも一方を移動させることにより、基材とノズルとの相対位置を変動させながら行ってもよい。
スプレーノズル61Bの先端からフィルム基材10の被成膜面までの距離Dcは、溶液の送液量や固形分濃度等に応じて、適宜設定すればよい。スプレーノズル61Bから噴霧されたポリシラザン塗布液120は、フィルム基材10上に到達するまでに、若干ではあるが溶媒が徐々に揮発し、有機材料の固形分濃度が上昇して溶液の粘度が上昇する。距離Dcが大きいほど、溶液が広範囲に拡散し、生産性が上がるが、溶媒が揮発しやすく、固形分濃度が上昇するため、フィルム基材10上でのウェット性が低下し、均一な成膜が難しくなる。
このスプレーノズル61Bの上部から支持体60Aまでの空間は、チャンバー600Bによって覆われている。
チャンバー600Bは、内部の雰囲気を維持するものである。このチャンバー600Bは、スプレーノズル61B、フィルム基材10及び支持体60Aの全体を覆って雰囲気制御をおこなっても良い。
チャンバー600Bの内部空間におけるスプレーノズル61Bの側方にはガス供給ノズル66Bが配設されており、このガス供給ノズル66Bはガス供給部64Bから供給される搬送ガスを下方に吹き付けるようになっている。なお、チャンバー600Bの内部の雰囲気組成は、上記実施形態におけるチャンバー600内と同様であることが好ましい。
以上のチャンバー600Bの内側面には、少なくとも一つの光源605が配設されている。
この光源605や、溶液供給部62B、ガス供給部63B等には、制御部65Bが接続されている。
制御部65Bは、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ハードディスク等の不揮発性メモリー等とにより構成され、不揮発メモリーに記憶されている制御プログラムを読み出して実行することにより、液滴塗布部6Bの各部の動作を制御する。例えば、制御部65Bは、溶液供給部62Bによりスプレーノズル61Bに送液する送液速度、ガス供給部63からスプレーノズル61Bへのガス供給速度、光源605から出力する光エネルギー等を制御する。
以上の液滴塗布部6Bにおいては、スプレーノズル61Bがポリシラザン塗布液120の液滴を搬送ガスとともに噴霧すると、液滴が搬送ガス(スプレーノズル61Bからの搬送ガスか、あるいはガス供給ノズル66Bからの搬送ガス)によって搬送される。そして、液滴が搬送ガスに搬送されてフィルム基材10上に付着し、ポリシラザン塗布液120の塗布膜が形成される。ただし、このような液滴塗布部6Bにおいても、ESD法を適用して液滴とフィルム基材10とをそれぞれ逆の特性に帯電させて、液滴を噴霧してもよい。この場合には、電荷の反発によって液滴の微粒子化が可能となる。また、特許3541294号に記載されるように、液滴化されたポリシラザン塗布液120を加熱乾燥しつつスプレー塗布することにより、噴霧して生成された液滴を更に微細化しても良い。
以上のような液滴塗布部6Bを有するガスバリアーフィルム製造装置5Bによっても、液滴塗布部6Bによってポリシラザン塗布液120の液滴を分散させて均一に塗布することができるため、層厚の均一なポリシラザン層、ひいては第2のガスバリアー層12を形成することができる。したがって、第2のガスバリアー層12の層厚が不均一な場合と比較して、ガスバリアー性を向上させることができる。
なお、上記の実施の形態や変形例におけるガスバリアーフィルム1の各構成要素の細部構成や、ガスバリアーフィルム製造装置5の各構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
例えば、上記の実施形態や変形例においては、第1のガスバリアー層11及び第2のガスバリアー層12がフィルム基材10の一方の面(上面)に形成されることとして説明したが、両方の面(上面及び下面)に形成されることとしても良い。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
<ガスバリアーフィルムの作製>
[基材の準備]
フィルム基材として、両面に易接着加工された厚さ125μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、極低熱収PET Q83)を用い、下記に示すように、このフィルム基材の片面にブリードアウト防止層を、反対面に平滑層を形成したものをガスバリアーフィルムの「基材」として作製した。この基材のガスバリアー性能(水蒸気透過度)を、後述の「水蒸気透過度Aの測定」,[水蒸気透過度Bの測定]と同様の方法で測定したところ、いずれの方法によっても水蒸気透過度は5g/m/24hであった。
《ブリードアウト防止層の形成》
上記フィルム基材の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7535を、乾燥後の層厚が4μmになる条件でダイコーターにより塗布した後、乾燥条件80℃、3分間の乾燥を行い、空気雰囲気下で高圧水銀ランプを使用し、硬化条件1.0J/cmで硬化処理を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
《平滑層の形成》
次いで、上記フィルム基材の反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7501を、乾燥後の層厚が4μmになる条件でダイコーターにより塗布した後、乾燥条件80℃、3分間の乾燥を行い、空気雰囲気下で高圧水銀ランプを使用し、硬化条件1.0J/cmで硬化処理を行い、平滑層を形成した。得られた平滑層の最大断面高さRt(p)は16nmであった。この最大断面高さ(表面粗さ)は、AFM(原子間力顕微鏡)を用い、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さから求めた。
[ガスバリアーフィルム(1)の作製]
(ポリシラザン塗布液の調製)
無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NN120−20:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、5質量%のアミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)及び20質量%のパーヒドロポリシラザンを含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NAX120−20:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、を4:1の比率で混合し、さらに塗布液の固形分が10質量%になるようにジブチルエーテルでポリシラザン塗布液を希釈調製した。得られた塗布液は、アミン触媒が1質量%(固形分)であった。
(ポリシラザン塗布液の塗布、乾燥)
上記で調製したポリシラザン塗布液を、乾燥後の層厚が100nmとなる条件で酸素濃度21%程度の大気下で平滑層上に塗布し、酸素濃度21%程度の雰囲気で100℃で2分間乾燥させて、ポリシラザン膜を設けた試料を得た。塗布にはスピンコーターを用い、常温で塗布を行った。
(改質処理)
ポリシラザン層を形成した上記試料を、以下の改質処理装置の稼動ステージ上に固定した後、以下の条件で改質処理を行ってポリシラザン層をガスバリアー層(上記実施形態における第2のガスバリアー層)とし、ガスバリアーフィルム(1)を作製した。なお、改質処理条件における「Pass数」とは、ポリシラザン層の改質にあたって試料がエキシマ光(紫外線)照射領域を通過する回数である。
《改質処理装置》
装置 :株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
波長 :172nm
ランプ封入ガス:Xe
《改質処理条件》
エキシマ光強度 :130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 :1mm
ステージ加熱温度 :70℃
照射装置内の酸素濃度:0.1%
フィルムの搬送速度 :0.6m/min
Pass数 :1回
エキシマ照射時間 :5秒
1Passでポリシラザン塗膜に照射されるエネルギー:3.0J/cm
[ガスバリアーフィルム(2)の作製]
(ポリシラザン塗布液の調製)
無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NN120−20;AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、5質量%のアミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)及び20質量%のパーヒドロポリシラザンを含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NAX120−20;AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、を4:1の比率で混合し、さらに塗布液の固形分が1.0質量%になるようにジブチルエーテルでポリシラザン塗布液を調製した。得られた塗布液は、アミン触媒が1質量%(固形分)であった。
(ポリシラザン塗布液の塗布、乾燥、改質)
上記で調製したポリシラザン塗布液を、ガスバリアーフィルム(1)と同様の基材の平滑層上に、以下の塗布条件で塗布し、酸素濃度21%の雰囲気で100℃で2分間乾燥させて、ポリシラザン層を設けた試料を得た。塗布には、2流体スプレー成膜装置を用いた。
なお、塗布時の液滴速度をOXFORDLASERS社製の粒度分布測定装置で測定したところ、数10m/s以上であった。また、液滴に対して光エネルギーが照射される時間は0.01sec以下であり、照射量は0.05J/cm以下であった。この照射量は、後の改質処理工程で照射される光エネルギーに対し、無視できる程度に小さい。
その後、ガスバリアーフィルム(1)と同様にして改質処理を行い、ガスバリアーフィルム(2)を作製した。
《塗布条件(2流体スプレー法)》
ノズルからのスプレー流量 :1.50g/min
送液時のエアー圧力 :0.1MPa
ノズルと基材との相対速度 :0.5m/sec
ノズルの噴霧口から基材までの距離:50mm
塗布雰囲気の酸素濃度 :21%
塗布雰囲気の温度 :25℃
《塗布される液滴に対する照射条件》
光源 :ロングライフ アマルガムランプ(ヘレウス株式会社製)
光強度:150mW/cm (254nm)
[ガスバリアーフィルム(3)の作製]
(ポリシラザン塗布液の調製)
無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NN120−20;AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、5質量%のアミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)及び20質量%のパーヒドロポリシラザンを含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NAX120−20;AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、を4:1の比率で混合し、さらに塗布液の固形分が1.0質量%になるようにジブチルエーテルでポリシラザン塗布液を調製した。得られた塗布液は、アミン触媒が1質量%(固形分)であった。
上記で調整したポリシラザン塗布液を用い、ポリシラザン層を以下の塗布条件で塗布した以外は、ガスバリアーフィルム(2)と同様にして、ガスバリアーフィルム(3)を作製した。塗布には、ESDUS法による液滴塗布装置を用いた。
なお、塗布時の液滴速度をOXFORDLASERS社製の粒度分布測定装置で測定したところ、数10m/s以上であった。また、液滴に対して光エネルギーが照射される時間は0.01sec以下であり、照射量は0.05J/cm以下であった。この照射量は、後の改質処理工程で照射される光エネルギーに対し、無視できる程度に小さい。
《塗布条件(ESDUS法)》
ノズルからのスプレー流量 :1.50g/min
送液時のエアー圧力 :0.1MPa
ノズルと基材との相対速度 :0.5m/sec
ノズルの噴霧口から基材までの距離:50mm
塗布雰囲気の酸素濃度 :21%
塗布雰囲気の温度 :70℃
《塗布される液滴に対する照射条件》
光源 :ロングライフ アマルガムランプ(ヘレウス株式会社製)
光強度:150mW/cm (254nm)
[ガスバリアーフィルム(4)の作製]
ポリシラザン層を以下の塗布条件で塗布した以外は、ガスバリアーフィルム(3)と同様にして、ガスバリアーフィルム(4)を作製した。塗布には、ESD法による液滴塗布装置を用いた。
なお、塗布時の液滴速度をOXFORDLASERS社製の粒度分布測定装置で測定したところ、数10m/s以上であった。また、液滴に対して光エネルギーが照射される時間は0.01sec以下であり、照射量は0.05J/cm以下であった。この照射量は、後の改質処理工程で照射される光エネルギーに対し、無視できる程度に小さい。
《塗布条件(ESD法)》
キャピラリーの噴霧口の内径 :40μm
キャピラリーへの送液速度 :10μl/min
噴霧口から基材までの距離 :5cm
キャピラリーと基材との間に印加された電圧:10kV
塗布雰囲気の酸素濃度 :1%
《塗布される液滴に対する照射条件》
光源 :MDエキシマ製エキシマランプ
光強度:130mW/cm (172nm)
[ガスバリアーフィルム(5)の作製]
ガスバリアーフィルム(1)と同様の基材の平滑層上に、以下の成膜条件でプラズマCVD法によりガスバリアー層(上記実施形態における第1のガスバリアー層)を形成した。
その後、ガスバリアーフィルム(1)と同様にして、当該バリアー層上にポリシラザンの層を形成して改質し、ポリシラザン層をガスバリアー層(上記実施形態における第2のガスバリアー層)として、ガスバリアーフィルム(5)を作製した。ただし、ポリシラザン塗布液としては、ガスバリアーフィルム(1)と同様の塗布液を用いた。なお、ポリシラザンの層の形成前に、基材とバリアー層との積層体のガスバリアー性能(水蒸気透過度)を、後述の「水蒸気透過度Aの測定」,[水蒸気透過度Bの測定]と同様の方法で測定したところ、いずれの方法によっても水蒸気透過度は0.05g/m/24hであった。
(CVD法による成膜条件)
真空プラズマCVD装置を用いて基材上に厚さ50nmのSiOC膜を成膜した。この真空プラズマCVD装置は、基材を下方から支持する平板状のサセプタと、サセプタと平行になるよう、サセプタ上方に配設された平板状のカソード電極とを備えており、カソード電極の下面に設けられた複数のノズルから原料ガス等を供給しつつ、カソード電極とサセプタとの間に電圧を印加することで、プラズマを発生させるようになっている。なお、カソード電極に電圧を印加する電源としては27.12MHzの高周波電源を用い、電極間距離(カソード電極とサセプタとの距離)を20mmとした。原料ガスとしては流量7.5sccmのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を用い、流量30sccmの酸素ガスとともに真空槽内へ導入した。また、成膜開始時の基材温度を100℃、成膜時の気圧を30Paに設定した。
続いて、同じ真空プラズマCVD装置を用いて、SiOC膜上に厚さ50nmのSiO膜を成膜し、これらの膜(厚さ50nmのSiOC膜及び厚さ50nmのSiO膜)によってガスバリアー層を形成した。電源としては27.12MHzの高周波電源を用い、電極間距離を20mmとした。原料ガスとしては流量7.5sccmのシランガスを用い、流量30sccmの酸素ガスとともに真空槽内へ導入した。また、成膜開始時の基材温度を100℃、成膜時の気圧を30Paに設定した。
[ガスバリアーフィルム(6)の作製]
(ポリシラザン塗布液の調製)
無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NN120−20;AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、5質量%のアミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)及び20質量%のパーヒドロポリシラザンを含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NAX120−20;AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、を4:1の比率で混合し、さらに塗布液の固形分が1.0質量%になるようにジブチルエーテルでポリシラザン塗布液を調製した。得られた塗布液は、アミン触媒が1質量%(固形分)であった。
上記で調整したポリシラザン塗布液を用い、ポリシラザン層を以下の塗布条件で塗布した以外は、ガスバリアーフィルム(5)と同様にして、ガスバリアーフィルム(6)を作製した。塗布には、ESD法による液滴塗布装置を用いた。
なお、塗布時の液滴速度をOXFORDLASERS社製の粒度分布測定装置で測定したところ、数10m/s以上であった。また、液滴に対して光エネルギーが照射される時間は0.01sec以下であり、照射量は0.05J/cm以下であった。この照射量は、後の改質処理工程で照射される光エネルギーに対し、無視できる程度に小さい。
《塗布条件(ESD法)》
キャピラリーの噴霧口の内径 :40μm
キャピラリーへの送液速度 :10μl/min
噴霧口から基材までの距離 :5cm
キャピラリーと基材との間に印加された電圧:10kV
塗布雰囲気の酸素濃度 :1%
《塗布される液滴に対する照射条件》
光源 :MDエキシマ製エキシマランプ
光強度:130mW/cm (172nm)
[ガスバリアーフィルム(7)の作製]
スプレー時間を長くしてポリシラザン層の層厚を800nmにした以外は、ガスバリアーフィルム(6)と同様にして、ガスバリアーフィルム(7)を作製した。
[ガスバリアーフィルム(8)の作製]
プラズマCVD法によるバリアー層の成膜条件を以下のようにした以外は、ガスバリアーフィルム(6)と同様にして、ガスバリアーフィルム(8)を作製した。なお、ポリシラザンの層の形成前に、基材とバリアー層との積層体のガスバリアー性能(水蒸気透過度)を、後述の「水蒸気透過度Aの測定」,[水蒸気透過度Bの測定]と同様の方法で測定したところ、いずれの方法によっても水蒸気透過度は0.005g/m/24hであった。
(CVD法による成膜条件)
ガスバリアーフィルム(5)の作製に使用したものと同じ真空プラズマCVD装置を用いて基材上に厚さ50nmのSiOC膜を成膜した。電源としては27.12MHzの高周波電源を用い、電極間距離を20mmとした。原料ガスとしては流量7.5sccmのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を用い、流量30sccmの酸素ガスとともに真空槽内へ導入した。また、成膜開始時の基材温度を100℃、成膜時の気圧を30Paに設定した。
続いて、同じ真空プラズマCVD装置を用いて、SiOC膜上に厚さ50nmのSiO膜を成膜した。電源としては27.12MHzの高周波電源を用い、電極間距離を20mmとした。原料ガスとしては流量7.5sccmのシランガスを用い、流量30sccmの酸素ガスとともに真空槽内へ導入した。また、成膜開始時の基材温度を100℃、成膜時の気圧を30Paに設定した。
続いて、同じ真空プラズマCVD装置を用いて、基材上に厚さ200nmのSiOC膜を成膜した。電源としては27.12MHzの高周波電源を用い、電極間距離を20mmとした。原料ガスとしては流量7.5sccmのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を用い、流量30sccmの酸素ガスとともに真空槽内へ導入した。また、成膜開始時の基材温度を100℃、成膜時の気圧を30Paに設定した。
続いて、同じ真空プラズマCVD装置を用いて、SiOC膜上に厚さ50nmのSiO膜を成膜し、これらの膜(厚さ50nmのSiOC膜、厚さ50nmのSiO膜、厚さ200nmのSiOC膜及び厚さ50nmのSiO膜)によってガスバリアー層を形成した。電源としては27.12MHzの高周波電源を用い、電極間距離を20mmとした。原料ガスとしては流量7.5sccmのシランガスを用い、流量30sccmの酸素ガスとともに真空槽内へ導入した。また、成膜開始時の基材温度を100℃、成膜時の気圧を30Paに設定した。
[ガスバリアーフィルム(9)の作製]
(ポリシラザン塗布液の塗布、乾燥、改質)
ポリシラザン層を以下のような塗布条件で形成した以外は、ガスバリアーフィルム(6)と同様にして、ガスバリアーフィルム(9)を作製した。塗布には、2流体スプレー成膜装置を用いた。
なお、塗布時の液滴速度をOXFORDLASERS社製の粒度分布測定装置で測定したところ、数10m/s以上であった。また、液滴に対して光エネルギーが照射される時間は0.01sec以下であり、照射量は0.05J/cm以下であった。この照射量は、後の改質処理工程で照射される光エネルギーに対し、無視できる程度に小さい。
《塗布条件(2流体スプレー法)》
ノズルからのスプレー流量 :1.50g/min
送液時のエアー圧力 :0.1MPa
ノズルと基材との相対速度 :0.5m/sec
ノズルの噴霧口から基材までの距離:50mm
塗布雰囲気の酸素濃度 :1%
塗布雰囲気の温度 :25℃
《塗布される液滴に対する照射条件》
光源 :MDエキシマ製エキシマランプ
光強度:130mW/cm (172nm)
[ガスバリアーフィルム(10)の作製]
スプレー時間を短くしてポリシラザン層の層厚を50nmにした以外は、ガスバリアーフィルム(6)と同様にして、ガスバリアーフィルム(10)を作製した。
[ガスバリアーフィルム(11)の作製]
(ポリシラザン塗布液の調製)
無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NN120−20;AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、5質量%のアミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)及び20質量%のパーヒドロポリシラザンを含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NAX120−20;AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、を4:1の比率で混合し、さらに塗布液の固形分が2.0質量%になるようにジブチルエーテルでポリシラザン塗布液を調製した。得られた塗布液は、アミン触媒が1質量%(固形分)であった。
上記で調整したポリシラザン塗布液を用い、ポリシラザン層を以下のように形成し、改質した以外は、ガスバリアーフィルム(5)と同様にして、ガスバリアーフィルム(11)を作製した。
(ポリシラザン塗布液の塗布、乾燥、改質)
ガスバリアーフィルム(1)と同様に調製したポリシラザン塗布液を、ガスバリアーフィルム(1)と同様の基材の平滑層上に、乾燥後の層厚が25nmとなるように塗布し、酸素濃度21%の雰囲気で100℃で2分間乾燥させて、ポリシラザン層を設けた試料を得た。塗布には、スピンコーターを用いた。次に、ポリシラザン層を形成した試料を、以下の改質処理装置の稼動ステージ上に固定した後、以下の条件で改質処理を行った。
以上の塗布、乾燥、改質の処理を4回繰り返すことで100nmのポリシラザン層を形成して改質し、当該ポリシラザン層をガスバリアー層(上記実施形態における第2のガスバリアー層)として、ガスバリアーフィルム(11)を作製した。
《改質処理装置》
装置 :株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
波長 :172nm
ランプ封入ガス:Xe
《改質処理条件》
エキシマ光強度 :130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 :1mm
ステージ加熱温度 :70℃
照射装置内の酸素濃度:0.1%
フィルムの搬送速度 :1.2m/min
Pass数 :1回
エキシマ照射時間 :0.675秒
1Passでポリシラザン塗膜に照射されるエネルギー:1.5J/cm
[ガスバリアーフィルム(12)の作製]
ポリシラザン層を以下のように改質した以外は、ガスバリアーフィルム(5)と同様にして、ガスバリアーフィルム(12)を作製した。
《改質処理装置》
装置 :株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
波長 :172nm
ランプ封入ガス:Xe
《改質処理条件》
エキシマ光強度 :130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 :1mm
ステージ加熱温度 :70℃
照射装置内の酸素濃度:0.1%
フィルムの搬送速度 :0.2m/min
Pass数 :1回
エキシマ照射時間 :3.75秒
1Passでポリシラザン塗膜に照射されるエネルギー:9.0J/cm
[ガスバリアーフィルム(13)の作製]
(ポリシラザン塗布液の調製)
無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NN120−20;AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、5質量%のアミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)及び20質量%のパーヒドロポリシラザンを含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NAX120−20;AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)と、を4:1の比率で混合し、さらに塗布液の固形分が2.0質量%になるようにジブチルエーテルでポリシラザン塗布液を調製した。得られた塗布液は、アミン触媒が1質量%(固形分)であった。
上記で調整したポリシラザン塗布液を用い、ポリシラザン層を以下のように形成し、改質した以外は、ガスバリアーフィルム(8)と同様にして、ガスバリアーフィルム(13)を作製した。
(ポリシラザン塗布液の塗布、乾燥、改質)
ガスバリアーフィルム(1)と同様に調製したポリシラザン塗布液を、ガスバリアーフィルム(1)と同様の基材の平滑層上に、乾燥後の層厚が25nmとなるように塗布し、酸素濃度21%の雰囲気で100℃で2分間乾燥させて、ポリシラザン層を設けた試料を得た。塗布には、スピンコーターを用いた。次に、ポリシラザン層を形成した試料を、以下の改質処理装置の稼動ステージ上に固定した後、以下の条件で改質処理を行った。
以上の塗布、乾燥、改質の処理を4回繰り返すことで100nmのポリシラザン層を形成して改質し、当該ポリシラザン層をガスバリアー層(上記実施形態における第2のガスバリアー層)として、ガスバリアーフィルム(13)を作製した。
《改質処理装置》
装置 :株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
波長 :172nm
ランプ封入ガス:Xe
《改質処理条件》
エキシマ光強度 :130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 :1mm
ステージ加熱温度 :70℃
照射装置内の酸素濃度:0.1%
フィルムの搬送速度 :2.4m/min
Pass数 :1回
エキシマ照射時間 :0.312秒
1Passでポリシラザン塗膜に照射されるエネルギー:0.75J/cm
[水蒸気透過度の劣化評価]
以下の測定方法に従って、各ガスバリアーフィルム(1)〜(13)の湿熱試験前の水蒸気透過度Aと、湿熱試験後の水蒸気透過度Bとを測定した。
(水蒸気バリアー性評価試料の作製装置)
蒸着装置:日本電子株式会社製、真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
〈原材料〉
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリアー性評価試料の作製)
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、作製した各ガスバリアーフィルム(1)〜(13)のガスバリアー層形成面に、マスクを通して12mm×12mmのサイズで9箇所に金属カルシウムを蒸着させた。
次いで、真空状態のままでマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムを蒸着させて仮封止をした。次いで、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下に移して、封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製)を介して厚さ0.2mmの石英ガラスにアルミニウム蒸着面を対向させ、紫外線を照射して樹脂を硬化接着させて本封止することで、水蒸気バリアー性評価試料を作製した。
(水蒸気透過度Aの測定)
得られた試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水蒸気透過度A(g/m・day)を計算した。
なお、ガスバリアーフィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリアーフィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を作製し、同様に60℃、90%RHの高温高湿下で保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
(水蒸気透過度Bの測定)
また、別途、ガスバリアーフィルム(1)〜(13)を用意し、85℃、85%RHに調整した高温高湿槽(恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M)内に100時間連続で保管し、水蒸気透過度Bを測定した。その他の条件については、水蒸気透過度Aの測定条件と同様にした。
(水蒸気透過度の劣化評価)
以下の式に従って水蒸気透過度の劣化度合いを算出し、ランク付けしたところ、表1に示す通りとなった。なお、ランクが大きいほど湿熱前後の変化が小さいことを示す。また、表1における「ポリシラザン」とは、実施形態における第2のガスバリアー層を意味し、「PE−CVD」とは第1のガスバリアー層を意味する。
B÷A=C
Rank4 : C≦3.0
Rank3 : 3<C<10.0
Rank2 : 10.0≦C<20.0
Rank1 : 20.0≦C
Figure 2014240051
表1に示した結果から明らかなように、本発明の実施例としてのガスバリアーフィルム、つまり液滴化され光エネルギーの付与されたポリシラザン塗布液を塗布したガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(10)では、比較例のガスバリアーフィルム(1),(5),(11)〜(12)と比較して湿熱試験後の水蒸気透過度の評価ランクが大きくなっており、湿熱耐性が向上していることが分かる。
また、ガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6),(9)に着目すると、微量溶媒塗布法でポリシラザン塗布液を塗布したガスバリアーフィルム(3),(4),(6)では、2流体スプレー法でポリシラザン塗布液を塗布したガスバリアーフィルム(2),(9)と比較して、湿熱耐性が向上していることが分かる。
また、ガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(9)に着目すると、これらのガスバリアーフィルムでは第2のガスバリアー層の層厚が50nm以上に形成されているため、当該第2のガスバリアー層を形成するためにポリシラザン層を改質するときに、ポリシラザン層の内部のポリシラザンに対してOが十分に供給されずに不安定ポリシラザンが形成されるおそれがあるものの、湿熱耐性は向上している。このことから、これらのガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(9)では、第2のガスバリアー層の層厚を大きくすることによるデメリットが無いことが分かる。
また、比較例としてのガスバリアーフィルム(1),(5)に着目すると、ポリシラザン層(第2のガスバリアー層)の形成前の基材(ここでは基材と第1のガスバリアー層との積層体)の水蒸気透過度が0.05g/m/24hのガスバリアーフィルム(5)、つまり、第2のガスバリアー層よりもフィルム基材側に水蒸気透過度が1×10−1g/m/24h以下の第1のガスバリアー層が形成されているガスバリアーフィルム(5)では、このような第1のガスバリアー層が形成されていないガスバリアーフィルム(1)と比較して、湿熱耐性が劣化していることが分かる。この理由は、水蒸気透過度が1×10−1g/m/24h以下の第1のガスバリアー層を形成したガスバリアーフィルム(5)では、ポリシラザン層を改質して第2のガスバリアー層とするときに、フィルム基材側からポリシラザン層へのOの供給を第1のガスバリアー層が妨げてしまい、不安定ポリシラザンが形成されるためであると推察される。
この点、実施例としてのガスバリアーフィルム(6)に着目すると、ガスバリアーフィルム(6)では、ガスバリアーフィルム(5)と同様の第1のガスバリアー層が第2のガスバリアー層よりもフィルム基材側に形成されてはいるものの、湿熱耐性が向上している。このことから、ガスバリアーフィルム(6)では、水蒸気透過度が1×10−1g/m/24h以下の第1のガスバリアー層を第2のガスバリアー層よりもフィルム基材側に形成することによるデメリットが無いことが分かる。
また、実施例としてのガスバリアーフィルム(8)と、比較例としてのガスバリアーフィルム(13)とに着目すると、ガスバリアーフィルム(13)では、層厚25nmの薄いポリシラザン層を改質してガスバリアー層(第2のガスバリアー層)を形成する工程を4回繰り返すことにより、総厚100nmの第2のガスバリアー層を形成しているため、各ポリシラザン層の改質時には、当該ポリシラザン層の内部のポリシラザンに対してOが十分に供給されうる。しかしながら、このガスバリアーフィルム(13)では、改質時の照射エネルギーが不十分なため、各ポリシラザン層が十分に改質されず、湿熱耐性が劣化している。一方、実施例のガスバリアーフィルム(8)では、同量の照射エネルギーで改質を行っても湿熱耐性が向上している。このことから、ガスバリアーフィルム(8)では、少ない照射エネルギーで湿熱耐性を向上させることが可能であることが分かる。
また、実施例としてのガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(10)と、比較例としてのガスバリアーフィルム(12)とに着目すると、比較例のガスバリアーフィルム(12)では、実施例のガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(10)と比較して3倍の照射エネルギーを改質処理に用いても、実施例のガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(10)よりも湿熱耐性が劣っている。このことから、実施例のガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(10)では、少ない照射エネルギーで湿熱耐性を向上させることが可能であることが分かる。
また、実施例としてのガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(10)と、比較例としてのガスバリアーフィルム(11)とに着目すると、比較例のガスバリアーフィルム(11)では、実施例のガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(10)と比較して2倍の照射エネルギーを改質処理に用いても、実施例のガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(10)における最も低い湿熱耐性しか得ることができていない。また、比較例のガスバリアーフィルム(11)では、厚さの薄いポリシラザン層を塗布、乾燥、改質する工程を4回繰り返し、実施例のガスバリアーフィルムの4倍程度の手間や時間を掛けることで、各ポリシラザン層を改質しやすい状況にしたにも関わらず、実施例のガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(10)における最も低い湿熱耐性しか得ることができていない。このことから、実施例のガスバリアーフィルム(2)〜(4),(6)〜(10)では、少ない照射エネルギー、かつ高い効率で湿熱耐性を向上させることが可能であることが分かる。
1 ガスバリアーフィルム
5,5A,5B ガスバリアーフィルム製造装置
6 液滴塗布部
10 フィルム基材
11 第1のガスバリアー層(他のガスバリアー層)
12 第2のガスバリアー層(ガスバリアー層)
51 第1ガスバリアー層形成装置(ガスバリアー層形成部)
521 乾燥部
522 改質部

Claims (13)

  1. 樹脂製のフィルム基材の一方の面に対し、ポリシラザンを含む溶液を液滴化して塗布する液滴塗布工程と、
    前記液滴塗布工程により前記一方の面に塗布された前記溶液を乾燥させてポリシラザン層を形成する乾燥工程と、
    低酸素濃度の雰囲気下で前記ポリシラザン層に対して紫外線照射又はプラズマ照射を行うことで、前記ポリシラザン層を改質してガスバリアー層とする改質工程と、
    をこの順に行い、
    前記液滴塗布工程では、
    液滴化された前記溶液に対して光エネルギーを付与することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
  2. 前記液滴塗布工程では、
    微量溶媒塗布法により前記溶液を塗布することを特徴とする請求項1に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
  3. 前記液滴塗布工程では、
    静電塗布法により前記溶液を塗布することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
  4. 前記液滴塗布工程よりも前に、前記一方の面に対し、前記ガスバリアー層とは異なり、かつ水蒸気透過度が1×10−1g/m/24h以下の他のガスバリアー層を形成するガスバリアー層形成工程を行うことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
  5. 前記ガスバリアー層の層厚を50nm以上に形成することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
  6. 前記液滴塗布工程では、
    液滴化された前記溶液に対して紫外線波長の光エネルギーを付与することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法により製造されたことを特徴とするガスバリアーフィルム。
  8. 樹脂製のフィルム基材の一方の面に対し、ポリシラザンを含む溶液を液滴化して塗布する液滴塗布部と、
    前記液滴塗布部により前記一方の面に塗布された前記溶液を乾燥させてポリシラザン層を形成する乾燥部と、
    低酸素濃度の雰囲気下で前記ポリシラザン層に対して紫外線照射又はプラズマ照射を行うことで、前記ポリシラザン層を改質してガスバリアー層とする改質部と、
    を備え、
    前記液滴塗布部は、
    液滴化された前記溶液に対して光エネルギーを付与する光源を有することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造装置。
  9. 前記液滴塗布部は、
    前記溶液を加熱乾燥しつつ前記一方の面にスプレー塗布することを特徴とする請求項8に記載のガスバリアーフィルムの製造装置。
  10. 前記液滴塗布部は、
    静電塗布法により前記溶液を塗布することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のガスバリアーフィルムの製造装置。
  11. 前記ガスバリアー層よりも前記フィルム基材側で前記一方の面に対し、前記ガスバリアー層とは異なり、かつ水蒸気透過度が1×10−1g/m/24h以下の他のガスバリアー層を形成するガスバリアー層形成部を備えることを特徴とする請求項8から請求項10までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造装置。
  12. 前記ガスバリアー層の層厚を50nm以上に形成することを特徴とする請求項8から請求項11までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造装置。
  13. 前記光源は、
    液滴化された前記溶液に対して紫外線波長の光エネルギーを付与することを特徴とする請求項8から請求項12までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造装置。
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