JPWO2015115314A1 - ガスバリア性フィルム - Google Patents
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Abstract
Description
(1)高分子基材の少なくとも片側に、無機層[A]とケイ素化合物層[B]とを前記高分子基材側からこの順に有するガスバリア性フィルムであって、ケイ素化合物層[B]が、少なくともSiNxHy、SiOpNqおよびSiOa(OH)4−2a(x+y=4、p+q=4、a≦2 x,y,p,q>0)で表される構造を有するケイ素化合物を含み、かつ無機層[A]とケイ素化合物層[B]が接しているガスバリア性フィルム。
(2)前記無機層[A]が、亜鉛化合物とケイ素酸化物とを含む(1)に記載のガスバリア性フィルム。
(3)前記ケイ素化合物層[B]の29Si CP/MAS NMRスペクトルにおいて、−30〜−120ppmのピーク面積総和を100としたとき、−30〜−50ppmのピーク面積総和が10以上、−50〜−90ppmのピーク面積総和が10以上、かつ−90〜−120ppmのピーク面積総和が80以下である(1)または(2)に記載のガスバリア性フィルム。
(4)前記無機層[A]が、以下の無機層[A1]〜[A3]から選ばれるいずれかである(1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
無機層[A1]:(i)〜(iii)の共存相からなる無機層
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
無機層[A2]:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる無機層
無機層[A3]:ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素
酸化物を主成分とする無機層
(5)前記無機層[A]が前記無機層[A1]であり、該無機層[A1]が、ICP発光分光分析法により測定される亜鉛原子濃度が20〜40atom%、ケイ素原子濃度が5〜20atom%、アルミニウム原子濃度が0.5〜5atom%、酸素原子濃度が35〜70atom%である組成により構成されたものである(4)に記載のガスバリア性フィルム。
(6)前記無機層[A]が前記無機層[A2]であり、該無機層[A2]が、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9である組成により構成されたものである(4)に記載のガスバリア性フィルム。
(7)前記高分子基材と前記無機層[A]との間に、芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]を架橋して得られる構造を含むアンダーコート層[C]を有する(1)〜(6)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(8)前記アンダーコート層[C]が有機ケイ素化合物および/または無機ケイ素化合物を含む(7)に記載のガスバリア性フィルム。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを用いた電子デバイス。
なお、上記3つの構造の意味はそれぞれ以下のとおりである。
SiNxHy:化合物中に存在するケイ素原子へ窒素および水素が結合し、ケイ素からそれぞれの元素への結合数がxおよびyである。
SiOpNq:化合物中に存在するケイ素原子へ酸素および窒素が結合し、ケイ素からそれぞれの元素への結合数がpおよびqである。
SiOa(OH)4−2a:ケイ素原子を1としたときの化合物の構造。
本発明に用いられる高分子基材は、柔軟性を確保する観点からフィルム形態を有することが好ましい。フィルムの構成としては、単層フィルム、または2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムであってもよい。フィルムの種類としては、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルム等を使用してもよい。
本発明における無機層[A]は、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等の元素の酸化物、窒化物、硫化物、または、それらの混合物が例示される。このような無機物を含んでいれば特に限定されるものではないが、無機層[A]がケイ素酸化物を含むことが好ましく、さらに亜鉛化合物とケイ素酸化物とを含むことがより好ましい。また、高いガスバリア性が得られる無機層[A]として、以下の無機層[A1]〜[A3]から選ばれるいずれかが好適に用いられる。
無機層[A1]:(i)〜(iii)の共存相からなる無機層
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
無機層[A2]:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる無機層
無機層[A3]:ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素酸化物を主成分とする無機層
無機層[A1]から[A3]のそれぞれの詳細は後述する。
本発明において無機層[A]として好適に用いられる、(i)酸化亜鉛、(ii)二酸化ケイ素、および(iii)酸化アルミニウムの共存相(以下、(i)酸化亜鉛、(ii)二酸化ケイ素、および(iii)酸化アルミニウムの共存相を「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウム共存相」と表記することもある)からなる層である無機層[A1]について詳細を説明する。なお、二酸化ケイ素(SiO2)は、生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、ここでは二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、酸化亜鉛、酸化アルミニウムについても同様の扱いとし、それぞれ、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、それぞれ酸化亜鉛またはZnO、酸化アルミニウムまたはAl2O3と表記することとする。
次に、本発明において無機層[A]として好適に用いられる、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相(以下、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相を「硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相」と表記することもある)からなる層である無機層[A2]について詳細を説明する。なお、ここでも二酸化ケイ素(SiO2)は、その生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、硫化亜鉛についても同様の扱いとし、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、硫化亜鉛またはZnSと表記することとする。
次に、本発明において無機層[A]として好適に用いられる、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素酸化物を主成分とする無機層[A3]について詳細を説明する。ここで、主成分とは無機層[A3]全体の60質量%以上であることを意味し、80質量%以上であれば好ましい。なお、前記の主成分二酸化ケイ素(SiO2)は、その生成時の条件によって、前記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。
次に、ケイ素化合物層[B]について詳細を説明する。本発明におけるケイ素化合物層[B]は、SiNxHy、SiOpNqおよびSiOa(OH)4−2a(x+y=4、p+q=4、a≦2 x,y,p,q>0)で表される構造を有するケイ素化合物を含む層である。屈折率、硬さ、密着性などの制御を目的として、アルコキシシランやオルガノポリシロキサンなど他のケイ素化合物を含んでいてもよい。なお、ケイ素化合物層[B]の各化合物の組成は、29Si CP/MAS NMR法により測定することができる。
無機層[A]が有するピンホールやクラック等の欠陥にケイ素化合物層[B]を構成する成分が充填され高いバリア性を発現することが可能となること。
ケイ素化合物層[B]が無機層[A]と接することで、前記無機層[A]に含まれる亜鉛等の成分が触媒として作用してケイ素化合物層[B]の膜質が改質し易くなり、ガスバリア性がさらに向上する。
本発明のガスバリア性フィルムには、ガスバリア性向上、耐屈曲性向上のため、前記高分子基材と前記無機層[A]との間にアンダーコート層[C]を設けることが好ましい。高分子基材上に突起や小擦り傷などの欠点が存在する場合、前記欠点を起点に高分子基材上に積層する無機層[A]にもピンホールやクラックが発生してガスバリア性や耐屈曲性が損なわれる場合があるため、本発明のアンダーコート層[C]を設けるのが好ましい。また、高分子基材と無機層[A]との熱寸法安定性の差が大きい場合も、ガスバリア性や耐屈曲性が低下する場合があるため、アンダーコート層[C]を設けるのが好ましい。また、本発明に用いられるアンダーコート層[C]は、熱寸法安定性、耐屈曲性の観点から芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]を架橋して得られる構造を含むことが好ましく、さらに、エチレン性不飽和化合物[C2]、光重合開始剤[C3]ならびに有機ケイ素化合物[C4]および無機ケイ素化合物[C5]から選ばれる1種以上のケイ素化合物を含有することがより好ましい。
本発明に用いることができる芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]は、主鎖あるいは側鎖に芳香族環およびウレタン結合を有するものであり、例えば、分子内に水酸基と芳香族環とを有するエポキシ(メタ)アクリレート(c1)、ジオール化合物(c2)、ジイソシアネート化合物(c3)とを重合させて得ることができる。
アンダーコート層[C]の原料とすることができるエチレン性不飽和化合物[C2]としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールS型エポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシアクリレート等を挙げられる。これらの中でも、熱寸法安定性、表面保護性能に優れた多官能(メタ)アクリレートが好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
アンダーコート層[C]の原料とすることができる光重合開始剤[C3]としては、本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア性および耐屈曲性を保持することができ、光重合を開始できれば特に限定されない。本発明に好適に用いることができる光重合開始剤としては、以下のものが例示される。
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤。
2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤。
ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤。
1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(0−ベンゾイルオキシム)]等オキシムエステル構造を持つ光重合開始剤等。
アンダーコート層[C]の原料とすることができる有機ケイ素化合物[C4]としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アンダーコート層[C]の原料とすることができる無機ケイ素化合物[C5]としては、表面保護性能、透明性の観点からシリカ粒子が好ましく、さらにシリカ粒子の一次粒子径が1〜300nmの範囲であることが好ましく、5〜80nmの範囲であることがより好ましい。なお、ここでいう一次粒子径とは、ガス吸着法により求めた比表面積sを下記の式(2)に適用することで求められる粒子直径dを指す。
d=6/ρs(2)ここでρは粒子の密度である。
アンダーコート層[C]の厚みは、200nm以上、4,000nm以下が好ましく、300nm以上3,000nm以下がより好ましく、500nm以上、2,000nm以下がさらに好ましい。アンダーコート層[C]の厚みが小さすぎると、高分子基材上に存在する突起や、小擦り傷などによる欠点の悪影響を抑制できない場合がある。アンダーコート層[C]の厚みが大きすぎると、アンダーコート層[C]の平滑性が低下して前記アンダーコート層[C]上に積層する無機層[A]表面の凹凸形状も大きくなり、積層されるスパッタ粒子間に隙間ができるため、膜質が緻密になりにくく、ガスバリア性の向上効果が得られにくくなる場合がある。
本発明のガスバリア性フィルムの最表面の上には、ガスバリア性が低下しない範囲で耐擦傷性の向上を目的としたハードコート層を形成してもよいし、有機高分子化合物からなるフィルムをラミネートした積層構成としてもよい。なお、ここでいう最表面とは、高分子基材上に無機層[A]およびケイ素化合物層[B]が接するようにこの順に積層された後の、無機層[A]と接していない側のケイ素化合物層[B]の表面をいう。
本発明のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を有するため、様々な電子デバイスに用いることができる。例えば、太陽電池のバックシートやフレキシブル回路基板のような電子デバイスに好適に用いることができる。本発明のガスバリア性フィルムを用いた電子デバイスは、優れたガスバリア性を有するため、水蒸気等によるデバイスの性能低下を抑制することができる。
本発明のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を有するため、電子デバイス以外にも、食品や電子部品の包装用フィルム等として好適に用いることができる。
まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。特に記載のない限り評価n数は水準当たり5検体とし、得られた5検体の測定値の平均値を測定結果とした。
断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム((株)日立製作所製 FB−2000A)を使用して集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)法により作製した。透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製 H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、無機層[A]、ケイ素化合物層[B]、アンダーコート層[C]の厚みを測定した。
三次元表面粗さ測定機(小坂研究所社製)を用いて、以下の条件で各層表面について測定した。
システム:三次元表面粗さ解析システム「i−Face model TDA31」
X軸測定長さ/ピッチ:500μm/1.0μm
Y軸測定長さ/ピッチ:400μm/5.0μm
測定速度:0.1mm/s
測定環境:温度23℃、相対湿度65%RH、大気中。
真空蒸着により、ガスバリア性フィルムのケイ素化合物層[B]面に厚さ100nmのカルシウム層を形成し、次いで、同じく真空蒸着により前記カルシウム層上に、カルシウム層全域を覆うように厚さ3000nmのアルミニウム層を形成した。さらに、アルミニウム層形成後、前記アルミニウム層面に熱硬化性エポキシ樹脂を介して厚さ1mmのガラスを貼り合わせ、100℃で1時間処理し、評価サンプルを得た。得られたサンプルを、温度40℃、相対湿度90%RH、800時間処理し、前記処理後、水蒸気により腐食したカルシウムの量を算出することにより水蒸気の透過量を測定した。水蒸気透過度サンプル数は水準当たり2検体とし、測定回数は各検体について5回とし、得られた10点の平均値を水蒸気透過度(g/(m2・d))とした。
[A1]の組成分析はICP発光分光分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SPS4000)により行った。高分子基材またはアンダーコート層上に無機層[A1]を形成した段階(ケイ素化合物層[B]を積層する前)でサンプリングした試料を硝酸および硫酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解してろ別した。不溶解分は加熱灰化したのち、炭酸ナトリウムで融解し、希硝酸で溶解して、先のろ液とあわせて定容とした。この溶液について、亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子の含有量を測定し、原子数比に換算した。なお、酸素原子は亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子が、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)として存在すると仮定して求めた計算値とした。
無機層[A2]の組成分析はICP発光分光分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SPS4000)により行った。高分子基材またはアンダーコート層上に無機層[A2]を形成した段階(ケイ素化合物層[B]を積層する前)でサンプリングした試料を、硝酸および硫酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解してろ別した。不溶解分は加熱灰化したのち、炭酸ナトリウムで融解し、希硝酸で溶解して、先のろ液とあわせて定容とした。この溶液について、亜鉛原子、ケイ素原子の含有量を測定した。次に、この値をもとにさらにラザフォード後方散乱法(日新ハイボルテージ(株)製 AN−2500)を使用して、亜鉛原子、ケイ素原子、硫黄原子、酸素原子を定量分析し、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の組成比を求めた。
無機層[A3]の組成分析はX線光電子分光法(XPS法)を用いることにより、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比を算出した。測定条件は下記の通りとした。
装置:Quantera SXM(PHI社製)
励起X線:monochromatic AlKα1,2
X線径:100μm
光電子脱出角度:10° 。
ケイ素化合物層[B]を片刃で削り取った粉末試料を7.5mmφの試料管に充填し、29Si CP/MAS NMR法を用いて組成分析を行い、図4に例を示したようなスペクトルを求めた。前記スペクトルにおける−30〜−120ppmのピーク面積総和を100としたときの−30〜−50ppmのピーク面積総和、−50〜−90ppmのピーク面積総和、−90〜−120ppmのピーク面積総和を算出した。測定条件は下記のとおりとした。
装置:Chemagnetics社製 CMX−300
測定核周波数:59.636511MHz(29Si核)
スペクトル幅:30.03kHz
パルス幅:4.5sec(90°パルス)、2.2sec(45°パルス)
パルス繰り返し時間:ACQTM;0.0682sec,PD;5.0sec
コンタクトタイム:2.0sec
観測ポイント:2048 データポイント;8192
基準物質:ヘキサメチルシクロトリシロキサン(外部基準;−9.66ppm)
温度:室温(約22℃)
試料回転数:5.0kHz
ピーク面積の算出:積分法。
ガスバリア性フィルムを100mm×140mmに水準当たり2検体サンプリングした。図5に示すとおり、ガスバリア性フィルムを(符号19)の無機層[A]およびケイ素化合物層[B]が形成された面と反対面(符号21)の側の中央部に直径5mmの金属円柱(符号20)を固定し、この円柱に沿って、円柱の抱き角0°(サンプルが平面の状態)から、円柱への抱き角が180°(円柱で折り返した状態)となる範囲で、100回折り曲げ動作を行った後、(3)に示す方法で水蒸気透過度評価を行った。測定回数は各検体について5回とし、得られた10点の平均値を耐屈曲性試験後の水蒸気透過度とした。
JIS K5600−5−6:1999に準拠し、ケイ素化合物層[B]に1×1mmの直角の格子パターン25マスの切り込みを入れ、密着性を評価した。評価結果を密着性良好なものから順に分類0から分類5までの6段階に分類した。
(無機層[A1]の形成)
図2に示す構造の巻き取り式のスパッタリング装置(符号6a)を使用し、高分子基材(符号5)の片面に酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムで形成された混合焼結材であるスパッタターゲットを用いてスパッタリングを実施し、無機層[A1]を設けた。
図2に示す構造の巻き取り式のスパッタリング装置(符号6a)を使用し、高分子基材(符号5)の片面に、硫化亜鉛および二酸化ケイ素で形成された混合焼結材であるスパッタターゲットを用いてスパッタリングを実施し無機層[A2]を設けた。
図3に示す構造の巻き取り式のCVD装置(符号6b)を使用し、高分子基材(5)の片面に、ヘキサメチルジシロキサンを原料とした化学気相蒸着を実施し無機層[A3]を設けた。
5リットルの4つ口フラスコに、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(共栄社化学社製、商品名:エポキシエステル3000A)300質量部と、酢酸エチル710質量部とを入れ、内温60℃になるよう加温した。合成触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.2質量部を添加し、攪拌しながらジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート(東京化成工業社製)200質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後2時間反応を続行し、続いてジエチレングリコール(和光純薬工業社製)25質量部を1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、重量平均分子量20,000の芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を得た。
高分子基材として厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”(登録商標)U48)を使用し、この高分子基材の片面に無機層[A1]を厚み180nmとなるよう設けた。無機層[A1]の組成は、Zn原子濃度が27.5atom%、Si原子濃度が13.1atom%、Al原子濃度が2.3atom%、O原子濃度が57.1atom%であった。無機層[A1]を形成したフィルムから縦100mm、横100mmの試験片を切り出し、無機層[A1]の中心面平均粗さSRaの評価を実施した。結果を表1に示す。
紫外線処理装置:MEIRH−M−1−152−H(エム・ディ・エキシマ社製)
導入ガス:N2
酸素濃度:300〜800ppm
積算光量:3,000mJ/cm2
試料温調:100℃。
高分子基材として厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”(登録商標)U48)を使用した。
アンダーコート層[C]形成用の塗液として、前記ポリウレタン化合物150質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレートDPE−6A)20質量部と、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン(BASFジャパン社製、商品名:“IRGACURE”(登録商標)184)5質量部と、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製、商品名:KBM−503)3質量部と、酢酸エチル170質量部と、トルエン350質量部と、シクロヘキサノン170質量部とを配合して塗液2を調整した。次いで、塗液2を高分子基材上にマイクログラビアコーター(グラビア線番150UR、グラビア回転比100%)で塗布、100℃で1分間乾燥し、乾燥後、下記条件にて紫外線処理を施して厚み1,000nmのアンダーコート層[C]を設けた。
導入ガス:N2(窒素イナートBOX)
紫外線発生源:マイクロ波方式無電極ランプ
積算光量:400mJ/cm2
試料温調:室温。
高分子基材として厚み100μmの非晶性環状ポリオレフィンフィルム(日本ゼオン社製 “ゼオノアフィルム”ZF14)(“ゼオノア”は登録商標)を使用した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
高分子基材として厚み100μmの非晶性環状ポリオレフィンフィルム(日本ゼオン社製 “ゼオノアフィルム”ZF14)を使用した以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
無機層[A1]を厚み950nmとなるよう設けた以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
無機層[A1]に代えて無機層[A2]を厚み150nmとなるよう設けた以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
無機層[A1]に代えて無機層[A3]を厚み150nmとなるよう設けた以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
ケイ素化合物層[B]を厚み50nmとなるよう設けた以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
ケイ素化合物層[B]を厚み1,000nmとなるよう設けた以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
ケイ素化合物層[B]形成時、紫外線照射積算光量を1,500mJ/cm2に変更した以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
ケイ素化合物層[B]形成時、紫外線照射積算光量を1,000mJ/cm2に変更した以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
高分子基材上に無機層[A]を形成しないで、高分子基材の表面に直接、ケイ素化合物層[B]を厚み120nmとなるように設けた以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
無機層[A]上にケイ素化合物層[B]設けない以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
実施例1において、無機層[A]とケイ素化合物層[B]とを形成する順序を入れ替え、実施例1と層構成が異なるガスバリア性フィルムを得た。
無機層[A]上にケイ素化合物層[B]を設けない以外は、実施例7と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
CVD法により無機層[A]上に無機層[A3]を設ける以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
実施例2において、ケイ素化合物層[B]に代えてSiNxHy並びにSiOa(OH)4−2aを含まずSiOpNqのみからなる層を形成すること以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
なお、SiOpNqのみからなる層の形成方法は、図2に示す構造の巻き取り式のスパッタリング装置を使用し、高分子基材の片面に、窒化珪素で形成されたスパッタターゲットを用いてスパッタリングを実施しSiOpNqのみからなる層を設けた。具体的な操作は、まず、スパッタ電極に窒化珪素で形成されたスパッタターゲットを設置した巻き取り式スパッタ装置の巻き取り室の中で、巻き出しロールに高分子基材をSiOpNq層を設ける側の面がスパッタ電極に対向するようにセットし、高分子基材を巻き出し、ガイドロールを介して、クーリングドラムに通した。減圧度2×10−1Paとなるように酸素ガス分圧10%としてアルゴンガスおよび酸素ガスをスパッタリング室へ導入した。さらに高周波電源により投入電力1,000Wを印加することにより、アルゴン・酸素ガスプラズマを発生させ、スパッタリングにより高分子基材の表面上にSiOpNq層を形成した。厚みは、フィルム搬送速度により調整した。その後、ガイドロールを介して巻き取りロールに巻き取った。
2 無機層[A]
3 ケイ素化合物層[B]
4 アンダーコート層[C]
5 高分子基材
6a 巻き取り式スパッタリング装置
6b 巻き取り式CVD装置
7 巻き取り室
8 巻き出しロール
9、10、11 巻き出し側ガイドロール
12 クーリングドラム
13 スパッタ電極
14 CVD電極
15、16、17 巻き取り側ガイドロール
18 巻き取りロール
19 ガスバリア性フィルム
20 金属円柱
21 無機層[A]およびケイ素化合物層[B]が形成された面と反対面
Claims (9)
- 高分子基材の少なくとも片側に、無機層[A]とケイ素化合物層[B]とを前記高分子基材側からこの順に有するガスバリア性フィルムであって、ケイ素化合物層[B]が、少なくともSiNxHy、SiOpNqおよびSiOa(OH)4−2a(x+y=4、p+q=4、a≦2 x,y,p,q>0)で表される構造を有するケイ素化合物を含み、かつ無機層[A]とケイ素化合物層[B]が接しているガスバリア性フィルム。
- 前記無機層[A]が、亜鉛化合物とケイ素酸化物とを含む請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記ケイ素化合物層[B]の29Si CP/MAS NMRスペクトルにおいて、−30〜−120ppmのピーク面積総和を100としたとき、−30〜−50ppmのピーク面積総和が10以上、−50〜−90ppmのピーク面積総和が10以上、かつ−90〜−120ppmのピーク面積総和が80以下である請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記無機層[A]が、以下の無機層[A1]〜[A3]から選ばれるいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
無機層[A1]:(i)〜(iii)の共存相からなる無機層
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
無機層[A2]:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる無機層
無機層[A3]:ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素酸化物を主成分とする無機層 - 前記無機層[A]が前記無機層[A1]であり、該無機層[A1]が、ICP発光分光分析法により測定される亜鉛原子濃度が20〜40atom%、ケイ素原子濃度が5〜20atom%、アルミニウム原子濃度が0.5〜5atom%、酸素原子濃度が35〜70atom%である組成により構成されたものである請求項4に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記無機層[A]が前記無機層[A2]であり、該無機層[A2]が、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9である組成により構成されたものである請求項4に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記高分子基材と前記無機層[A]との間に、芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]を架橋して得られる構造を含むアンダーコート層[C]を有する請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 前記アンダーコート層[C]が有機ケイ素化合物および/または無機ケイ素化合物を含む請求項7に記載のガスバリア性フィルム。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを用いた電子デバイス。
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