JP2018052041A - 積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】水蒸気に対する高いガスバリア性と高い膜質安定性を有し、同時にフレキシブル性を有する積層体の提供。
【解決手段】基材1の少なくとも片側に、SiとOとNとを含有する層[A]2を有する積層体であって、層[A]2の厚み方向において20nm以上有し、層[A]2の基材側に無機層[B]3を有することで、層[A]2の元素比O/Nが、0<O/N<0.170の範囲を満たす領域に存在するSi−N結合やSi−H結合を、基材1側から保護することができ、層[A]2の膜質安定性が向上する。
【選択図】図1
【解決手段】基材1の少なくとも片側に、SiとOとNとを含有する層[A]2を有する積層体であって、層[A]2の厚み方向において20nm以上有し、層[A]2の基材側に無機層[B]3を有することで、層[A]2の元素比O/Nが、0<O/N<0.170の範囲を満たす領域に存在するSi−N結合やSi−H結合を、基材1側から保護することができ、層[A]2の膜質安定性が向上する。
【選択図】図1
Description
本発明は、高いガスバリア性が必要とされる用途、例えば食品、医薬品の包装用途や太陽電池、電子ペーパー、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレーなどの電子デバイス用途に使用される積層体に関する。
基材の表面に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムなどの無機物(無機酸化物を含む)を使用し、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理気相成長法(PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法などの化学気相成長法(CVD法)などを利用して、その無機物の蒸着膜を形成してなる高いガスバリア性を有する積層体は、水蒸気や酸素などの各種ガスの遮断を必要とする食品や医薬品などの包装材および薄型テレビ、太陽電池などの電子デバイス部材として用いられている。
ガスバリア性向上技術としては、例えば、有機ケイ素化合物の蒸気と酸素を含有するガスを用いてプラズマCVD法により基材上に、ケイ素酸化物を主体とした無機層を積層することによって、透明性を維持しつつガスバリア性を向上させる方法が開示されている(特許文献1)。また、プラズマCVD法などの成膜方法以外によるガスバリア性向上技術としては、ウェットコート法により形成したポリシラザン膜を酸化ケイ素膜や酸窒化ケイ素膜へ転化させる方法(特許文献2〜11)が開示されている。
しかしながら、特許文献1のように、プラズマCVD法によりケイ素酸化物を主成分とした無機層を形成する方法では、無機層の欠陥を抑制することが難しいことから安定したガスバリア性が得られず、ガスバリア性を安定させたり、高いバリア性を得るためには厚膜化や多層積層する必要があり、耐屈曲性が低下したり製造コストが増加したりするといった問題がある。また、特許文献2,3,4のポリシラザンによって無機層を形成する方法では、基材側からのガス透過により層が酸化しやすく、高温高湿下での層の安定性が不十分である。また、特許文献5,6,7,8では第一のガスバリア層の上にポリシラザン層を形成させているが、層を形成する際の条件(塗布時の塗液の大気暴露や改質時の照射強度)や第一のガスバリア層の性能によりポリシラザン層内の酸化が進んでいて、膜質安定性、耐久性が低下しており、電子デバイス用途として十分なガスバリア性は得られていない。特許文献9では酸窒化ケイ素膜の酸化抑制を試みているものの、酸化抑制が不十分な組成であり、電子デバイス用途として十分なガスバリア性は得られていない。さらに、特許文献5〜11ではポリシラザン層内を構成する窒素元素に対する酸素の比率が高いため、ポリシラザン層のフレキシブル性が不足し、ガスバリア層の割れなどによって曲面形状への成形が困難である。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、厚膜化や多層積層をせずとも水蒸気に対する高いガスバリア性と高い膜質安定性を有し、同時にフレキシブル性を有する積層体を提供することである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような構成を採用する。
[1]
基材の少なくとも片側に、SiとOとNとを含有する層[A]を有する積層体であって、前記層[A]の元素比O/Nが、0<O/N<0.170の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有する、積層体。
[2]
前記層[A]の元素比O/Nが、0<O/N<0.150の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有する、[1]に記載の積層体。
[3]
前記層[A]の元素比O/Nが、0<O/N<0.100の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有する、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]
前記基材と前記層[A]との間に、無機層[B]を有し、該無機層[B]が、亜鉛、ケイ素、スズ、アルミニウム、インジウム、チタン、銀、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンおよびパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]
前記無機層[B]が亜鉛とケイ素とを含有する、[4]に記載の積層体。
[1]
基材の少なくとも片側に、SiとOとNとを含有する層[A]を有する積層体であって、前記層[A]の元素比O/Nが、0<O/N<0.170の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有する、積層体。
[2]
前記層[A]の元素比O/Nが、0<O/N<0.150の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有する、[1]に記載の積層体。
[3]
前記層[A]の元素比O/Nが、0<O/N<0.100の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有する、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]
前記基材と前記層[A]との間に、無機層[B]を有し、該無機層[B]が、亜鉛、ケイ素、スズ、アルミニウム、インジウム、チタン、銀、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンおよびパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]
前記無機層[B]が亜鉛とケイ素とを含有する、[4]に記載の積層体。
本発明によれば、水蒸気に対する高いガスバリア性と高い膜質安定性およびフレキシブル性を有する積層体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、水蒸気などに対する高いガスバリア性と高い膜質安定性およびフレキシブル性を有する積層体を得ることを目的として鋭意検討を重ね、基材の少なくとも片側に、SiとOとNとを含有する層[A]を有する積層体であって、前記層[A]の元素比O/Nが、0<O/N<0.170の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有する積層体とすることで、前記課題を解決することを見出したものである。
以下、本発明の積層体の各構成要素について説明する。
[基材]
本発明に用いられる基材として使用できる材料としては、例えばシリコンなどの金属基板、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂フィルムなどが挙げられる。柔軟性を確保する観点からフィルム形態を有することが好ましい。フィルムの構成としては、単層フィルム、または2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムであってもよい。フィルムの種類としては、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルムなどを使用してもよい。
本発明に用いられる基材として使用できる材料としては、例えばシリコンなどの金属基板、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂フィルムなどが挙げられる。柔軟性を確保する観点からフィルム形態を有することが好ましい。フィルムの構成としては、単層フィルム、または2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムであってもよい。フィルムの種類としては、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルムなどを使用してもよい。
本発明に用いられる基材の素材は特に限定されないが、有機高分子を主たる構成成分とするものであることが好ましい。本発明に好適に用いることができる有機高分子としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの結晶性ポリオレフィン、環状構造を有する非晶性環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタールなどの各種ポリマーなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性や汎用性、機械特性に優れたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンを素材とするフィルムであることが好ましい。また、前記有機高分子は、単独重合体、共重合体のいずれでもよいし、有機高分子として1種類のみを用いてもよいし、複数種類をブレンドして用いてもよい。
基材における層[A]を形成する側の表面には、密着性や平滑性を良くするためにコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、イオンボンバード処理、溶剤処理、有機物もしくは無機物またはそれらの混合物で構成されるアンダーコート層の形成処理などの前処理が施されていてもよい。また、層[A]を形成する側の反対側には、フィルムの巻き取り時の滑り性の向上を目的として、有機物や無機物あるいはこれらの混合物のコーティング層が積層されていてもよい。
本発明に用いる基材の厚みは、用途により適宜選択することができるが、柔軟性を確保する観点から500μm以下が好ましく、引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から5μm以上が好ましい。さらに、フィルムの加工やハンドリングの容易性から基材の厚みは10μm〜200μmがより好ましい。
[層[A]]
本発明において層[A]はSiとOとNとを含有し、かつ元素比O/Nが、0<O/N<0.170の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有することが好ましい。
本発明において層[A]はSiとOとNとを含有し、かつ元素比O/Nが、0<O/N<0.170の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有することが好ましい。
本発明の層[A]を適用することにより高いガスバリア性と高い膜質安定性およびフレキシブル性を有する積層体が得られる理由は以下のように推定している。すなわち、SiとOとNとを含有する層[A]において、元素比O/Nが、0<O/N<0.170の範囲を満たす領域は、酸化が抑制され、窒素元素に対する酸素の比率が制御された領域となる。酸素原子は水分子と強く相互作用し、水素結合を作りやすいため、酸素原子が多く存在する領域は、水分子が安定に存在しやすい領域となる。この逆として、酸化が抑制され、窒素元素に対する酸素の比率が制御された領域では、水分子が安定に存在しにくくなるため、高いガスバリア性を有する領域となる。
さらに、酸化が抑制され、窒素元素に対する酸素の比率が制御された領域では、Si−O結合の数が制限され、ケイ素原子の4つの結合手は、酸素原子以外の原子と結合する。酸素原子以外の原子は、特に限定されるものではないが、例えば、窒素原子、ケイ素原子、水素原子などが挙げられる。中でも、窒素原子は結合手が3つあることから、Si−N結合は層の緻密化と柔軟性に寄与し、層に高いガスバリア性とフレキシブル性を付与する。また、水素原子と結合したSi−H結合は、水をはじく性質(疎水性)に加え、結合を水素原子で終端することで柔軟性も付与することができる。以上のように元素比O/Nを、0<O/N<0.170の範囲を満たす領域とすることで、本発明の積層体を屈曲させる際に生じる応力を緩和させられ、クラック生成に起因するガスバリア性低下を抑制できる、耐屈曲性に優れた領域となる。層[A]が、元素比O/Nが0<O/N<0.170の範囲を満たす領域を、厚み方向において20nm以上有することで、積層体全体として、高いガスバリア性と高い膜質安定性を有し、同時にフレキシブル性を有する積層体となる。
ここで、元素比O/Nが、0<O/N<0.170の範囲を満たす領域について、厚み方向において20nm以上である箇所が、層[A]の厚み方向で少なくとも1箇所あればよく、2箇所以上あってもよい。
また、層[A]は、より高いガスバリア性と高い膜質安定性が得られる観点から、元素比O/Nが、0<O/N<0.150の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有することがより好ましく、0<O/N<0.100の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有することがさらに好ましい。
ここで、層[A]の厚み方向の組成分布は、従来公知の組成分析方法により求めることができ、例えば、XPS分析(X線光電子分光分析)とエッチングを併用した方法により求めることができる。
以下、本発明におけるXPS分析とエッチングを併用した方法について説明する。
本発明の積層体のエッチングレートは各層ごとに異なる。そこで、SiO2換算のエッチングレートを元にして一旦求めておき、XPS分析と同一試料のTEM(透過型電子顕微鏡)による断面観察画像をもとに、各層の界面を特定して各層当たりの厚みを求める。断面観察画像をもとに求めた各層当たりの厚みを、XPS分析から求めた厚み方向の組成分布と比較しながら、厚み方向の組成分布における各層を特定する。XPS分析から求めた各層の厚みと、断面観察画像から求めた各層の厚みが一致するように、XPS分析から求めた各層の厚みに対して係数をかけることで厚み方向の補正を行う。
本発明の主旨に即した組成分析では、厚み方向の解像度が重要であり、測定点1点あたりのエッチング深さは2nmで行う。0<O/N<0.170の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有することとは、XPS分析から求めた0<O/N<0.170の範囲を満たす連続する測定点を結ぶことにより得られる線分の長さが厚み方向において20nm以上であることをいう。より具体的に説明すると、測定点1点あたりのエッチング深さが2nmであるので、0<O/N<0.170の範囲を満たす測定点が連続して11点以上あることである。この場合、0<O/N<0.170の範囲を満たす測定点を結ぶことにより得られる線分の長さが20nm以上となる。
例えば、層[A]の表層側から基材側に向かって連続する1〜4点の測定点が0<O/N<0.170の範囲を満たす測定点であり、層[A]の表層側から基材側に向かって5点目の測定点が0<O/N<0.170の範囲を満たさない測定点であり、層[A]の表層側から基材側に向かって連続する6〜13点の測定点が0<O/N<0.170の範囲を満たす測定点であった場合、1〜4点の測定点で得られる線分(6nm)および6〜13点の測定点で得られる線分(14nm)の合計は20nmとなるが、このような場合は0<O/N<0.170の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有するには該当しないこととする。
さらに、高いガスバリア性が得られる観点から、層[A]はSi−Hで表される結合(以下、Si−H結合と表すこともある)を有する成分を含むことが好ましい。Si−H結合は、水をはじく性質(疎水性)に加え、結合を水素原子で終端することで柔軟性も付与することができ、本発明の積層体を屈曲させる際に生じる応力を緩和させられ、クラック生成に起因するガスバリア性低下を抑制でき、高い耐屈曲性が得られる。ここで、層[A]がSi−Hで表される結合を有する成分を含むか否かは、フーリエ変換赤外分光法での分析によって判断し、2,140〜2,260cm−1にSi−H伸縮振動を示すピークを有すればSi−Hで表される結合を有する成分を含むと判断する。
加えて、高いガスバリア性と高い膜質安定性が得られる観点から、層[A]は、最表面側20nmの領域が、元素比O/Nが0.170≦O/Nの範囲を満たす領域であることが好ましい。ここで、最表面側20nmの領域とは、層[A]の基材と反対側の表面から厚み方向に0nm〜20nmの領域のことである。元素比O/Nが0.170≦O/Nの範囲を満たす領域は、Si−H結合が少ない領域となることで膜密度の高い領域となる。最表面側が膜密度の高い領域となることで、元素比O/Nが0<O/N<0.170の範囲を満たす領域に存在するSi−H結合を、最表面側から保護することができ、層[A]の膜質安定性が向上する。層[A]の最表面側20nmが、元素比O/Nが0.170≦O/Nの範囲を満たす領域であることで、積層体全体として、高いガスバリア性と高い膜質安定性を有する積層体となる。
(層[A]の厚み)
本発明において層[A]の厚みは、50〜500nmが好ましく、90〜500nmがより好ましい。層[A]の厚みが50nmより薄くなると、安定したガスバリア性を得ることができない場合がある。層[A]の厚みが500nmより厚くなると、層[A]内に残留する応力が大きくなり層[A]にクラックが発生してガスバリア性が低下する場合がある。層[A]の厚みは、TEMによる断面観察画像から測定することが可能である。
本発明において層[A]の厚みは、50〜500nmが好ましく、90〜500nmがより好ましい。層[A]の厚みが50nmより薄くなると、安定したガスバリア性を得ることができない場合がある。層[A]の厚みが500nmより厚くなると、層[A]内に残留する応力が大きくなり層[A]にクラックが発生してガスバリア性が低下する場合がある。層[A]の厚みは、TEMによる断面観察画像から測定することが可能である。
(層[A]を設ける工程)
本発明において層[A]の原料としては、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物が好ましく用いられる。ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物としては、例えば下記の化学式(1)で表される部分構造を有する化合物を好ましく用いることができる。具体的には、パーヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。本発明においては、ガスバリア性向上の観点から下記の化学式(1)に示されるR1、R2、R3の全てが水素であるパーヒドロポリシラザンを用いることが好ましいが、水素の一部又は全部がアルキル基などの有機基で置換されたオルガノポリシラザンであってもよい。また、単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。なお、nは1以上の整数を表す。
本発明において層[A]の原料としては、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物が好ましく用いられる。ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物としては、例えば下記の化学式(1)で表される部分構造を有する化合物を好ましく用いることができる。具体的には、パーヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。本発明においては、ガスバリア性向上の観点から下記の化学式(1)に示されるR1、R2、R3の全てが水素であるパーヒドロポリシラザンを用いることが好ましいが、水素の一部又は全部がアルキル基などの有機基で置換されたオルガノポリシラザンであってもよい。また、単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。なお、nは1以上の整数を表す。
本発明における層[A]を設ける工程は、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程[a]、前記塗膜を乾燥させる工程[b]、前記塗膜に光照射処理を施して前記塗膜を組成転化させる工程[c]をこの順に有することが好ましい。工程[a]、工程[b]、工程[c]を含んでいれば、その他の工程を含んでもよい。以下各工程の詳細を説明する。
[工程[a]]
前記工程[a]は、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程であることが好ましい。
前記工程[a]は、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程であることが好ましい。
ここで、工程[a]における塗液を塗布して塗膜を設ける工程としては、公知の方法を用いることができ、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スリットダイコート法などの方法により基材上に塗布することが好ましい。本発明においては、層[A]の酸化を抑制する観点から、塗布直前まで塗液が酸素または水蒸気に暴露されない状態で塗布できる方法を選択することがより好ましく、塗液の供給は乾燥窒素での送液や密閉状態のシリンジポンプを用いることが好ましく、スリットダイコート法により基材上に塗布することが特に好ましい。
また、本発明においては、塗工適性の観点から有機溶剤を用いて前記化学式(1)で表される化合物を含む塗料を希釈することが好ましい。具体的には、キシレン、トルエン、ターペン、ソルベッソなどの炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などを用いて、固形分濃度を15質量%以下に希釈して使用することが好ましい。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
層[A]を形成するケイ素化合物を含む塗料には、層[A]の効果が損なわれない範囲で、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、触媒、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤などを用いることができる。
[工程[b]]
前記工程[b]は、塗膜を乾燥させる工程[b]であることが好ましい。具体的には、工程[b]では、塗布後の塗膜を加熱乾燥させて希釈溶剤を除去することが好ましい。ここで、乾燥に用いられる熱源としては特に制限は無く、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターなど任意の熱源を用いることができる。なお、ガスバリア性向上のため、加熱温度は50〜150℃で行うことが好ましく、層[A]の酸化を抑制する観点から、50〜120℃で行うことがより好ましい。また、加熱処理時間は10秒〜30分間行うことが好ましく、10秒〜10分間行うことがより好ましい。加熱処理時間が30分間を超える、または加熱温度が150℃を超えると、塗膜の酸化が進行して高いガスバリア性が低下する場合があるため、30分間以内とすることが好ましい。また、加熱処理中は温度が一定であってもよく、徐々に温度を変化させてもよい。さらに、加湿処理は大気中もしくは不活性ガス中に封入した状態で行ってもよい。
前記工程[b]は、塗膜を乾燥させる工程[b]であることが好ましい。具体的には、工程[b]では、塗布後の塗膜を加熱乾燥させて希釈溶剤を除去することが好ましい。ここで、乾燥に用いられる熱源としては特に制限は無く、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターなど任意の熱源を用いることができる。なお、ガスバリア性向上のため、加熱温度は50〜150℃で行うことが好ましく、層[A]の酸化を抑制する観点から、50〜120℃で行うことがより好ましい。また、加熱処理時間は10秒〜30分間行うことが好ましく、10秒〜10分間行うことがより好ましい。加熱処理時間が30分間を超える、または加熱温度が150℃を超えると、塗膜の酸化が進行して高いガスバリア性が低下する場合があるため、30分間以内とすることが好ましい。また、加熱処理中は温度が一定であってもよく、徐々に温度を変化させてもよい。さらに、加湿処理は大気中もしくは不活性ガス中に封入した状態で行ってもよい。
[工程[c]]
工程[c]は前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程であることが好ましい。具体的には、工程[c]では、加湿後の塗膜にプラズマ処理、紫外線照射処理、フラッシュパルス処理などの光照射処理を施すことで前記塗膜を組成転化させ、本発明の層[A]を得ることができる。
工程[c]は前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程であることが好ましい。具体的には、工程[c]では、加湿後の塗膜にプラズマ処理、紫外線照射処理、フラッシュパルス処理などの光照射処理を施すことで前記塗膜を組成転化させ、本発明の層[A]を得ることができる。
活性エネルギー線照射処理としては、簡便で生産性に優れ、かつ均一な層[A]組成を得ることが容易であることから紫外線処理を使用することが好ましい。紫外線処理としては、大気圧下または減圧下のどちらでも構わないが、汎用性、生産効率の観点から本発明では大気圧下にて紫外線処理を行うことが好ましい。前記紫外線処理を行う際の酸素濃度は1.0体積%以下が好ましく、0.5体積%以下がより好ましい。酸素濃度の低下には、乾燥窒素を用いることが好ましい。相対湿度は任意でよい。
紫外線発生源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波方式無電極ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、またアルゴンやクリプトンやキセノン等を用いたエキシマランプなど、既知のものを用いることができるが、生産効率や本発明の積層体を形成しやすい等の観点からキセノンエキシマランプを使用することが好ましい。照射する紫外線の波長は特に限定されるところではないが、生産効率の観点から10〜200nmが好ましく、100〜200nmがより好ましく、150〜180nmがさらに好ましい。
また、生産効率の観点から、波長が同一または異なる紫外線を複数回照射してもよい。例えば、波長が異なる紫外線を2回照射する場合、一回目の照射では、紫外線発生源として高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波方式無電極ランプのいずれかを使用することが好ましい、紫外線の波長は、200〜380nmが好ましく、280〜380nmがより好ましく、315〜380nmがさらに好ましい。続いて2回目の照射では、紫外線発生源としてキセノンエキシマランプを使用することが好ましく、紫外線の波長は、10〜200nmが好ましく、100〜200nmがより好ましく、150〜180nmがさらに好ましい。
紫外線照射の積算光量は、1.5〜10J/cm2であることが好ましく、2.5〜7J/cm2がより好ましい。前記積算光量が1.5J/cm2以上であると酸化を抑制する所望の層[A]組成が得ることができ、また、前記積算光量が10J/cm2以下であると基材へのダメージを少なくすることができるため好ましい。
また、本発明では、紫外線処理の際、生産効率を向上させるために加湿後の塗膜を加熱しながら紫外線処理を行うことがより好ましい。加熱温度としては、40〜100℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。加熱温度が40℃以上であれば高い生産効率が得られるため好ましく、また、加熱温度が100℃以下であれば基材など他の材料の変形や変質が起こりにくく、層[A]の酸化を抑制できるため好ましい。
[無機層[B]]
本発明の積層体では、高いガスバリア性と高い膜質安定性が得られる観点から、基材と層[A]との間に、無機層[B]を有することが好ましい。層[A]の基材側に無機層[B]を有することで、層[A]の元素比O/Nが0<O/N<0.170の範囲を満たす領域に存在するSi−N結合やSi−H結合を、基材側から保護することができ、層[A]の膜質安定性が向上する。従って、基材と層[A]との間に無機層[B]を有することで、積層体全体として、高いガスバリア性と高い膜質安定性、フレキシブル性を実現することが可能となる。
本発明の積層体では、高いガスバリア性と高い膜質安定性が得られる観点から、基材と層[A]との間に、無機層[B]を有することが好ましい。層[A]の基材側に無機層[B]を有することで、層[A]の元素比O/Nが0<O/N<0.170の範囲を満たす領域に存在するSi−N結合やSi−H結合を、基材側から保護することができ、層[A]の膜質安定性が向上する。従って、基材と層[A]との間に無機層[B]を有することで、積層体全体として、高いガスバリア性と高い膜質安定性、フレキシブル性を実現することが可能となる。
本発明の無機層[B]は、高いガスバリア性を得られる観点から、亜鉛、ケイ素、スズ、アルミニウム、インジウム、チタン、銀、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンおよびパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有することが好ましい。上記を満たしていれば、その他の元素や、酸化物、窒化物、硫化物、または、それらの混合物を含有していてもよい。また、無機層[B]は、高いガスバリア性が得られる観点から、亜鉛とケイ素とを含有することがより好ましい。
本発明における無機層[B]の厚みは、ガスバリア性を発現する層の厚みとして10nm以上、1,000nm以下が好ましい。層の厚みが10nmより薄くなると、十分にガスバリア性が確保できない箇所が発生し、面内でガスバリア性がばらつく場合がある。また、層の厚みが1,000nmより厚くなると、層内に残留する応力が大きくなるため、曲げや外部からの衝撃によって無機層[B]にクラックが発生しやすくなり、使用に伴いガスバリア性が低下する場合がある。従って、無機層[B]の厚みは10nm以上、1,000nm以下が好ましく、柔軟性を確保する観点から50nm以上、500nm以下がより好ましい。無機層[B]の厚みは、TEMによる断面観察画像から測定することが可能である。
本発明における無機層[B]の中心面平均粗さSRaは、10nm以下であることが好ましい。SRaが10nmより大きくなると、無機層[B]表面の凹凸形状が大きくなり、積層される粒子間に隙間ができるため、膜質が緻密になりにくく、膜厚を厚く形成してもガスバリア性の向上効果は得られにくくなる場合がある。また、SRaが10nmより大きくなると、無機層[B]上に積層する層[A]の膜質が均一にならないため、ガスバリア性が低下する場合がある。従って、無機層[B]のSRaは10nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは7nm以下である。本発明における無機層[B]のSRaは、三次元表面粗さ測定機を用いて測定することができる。
本発明において無機層[B]を形成する方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などによって形成することができる。これらの方法の中でも、簡便かつ緻密に無機層[B]を形成可能であることから、スパッタリング法またはCVD法が好ましい。
さらに、高いガスバリア性と高い膜質安定性が得られる観点から、無機層[B]が、以下の[B1]および/または[B2]を満たすことが好ましい。
無機層[B1]:(i)〜(iii)の共存相からなる無機層
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
無機層[B2]:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる無機層
以下、無機層[B1]、[B2]のそれぞれの詳細について説明する。
無機層[B1]:(i)〜(iii)の共存相からなる無機層
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
無機層[B2]:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる無機層
以下、無機層[B1]、[B2]のそれぞれの詳細について説明する。
[無機層[B1]]
本発明において無機層[B]として好適に用いられる、(i)酸化亜鉛、(ii)二酸化ケイ素、および(iii)酸化アルミニウムの共存相(以下、(i)酸化亜鉛、(ii)二酸化ケイ素、および(iii)酸化アルミニウムの共存相を「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウム共存相」と表記することもある)からなる層である無機層[B1]について詳細を説明する。なお、「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウム共存相」を「ZnO−SiO2−Al2O3」と略記することもある。また、二酸化ケイ素(SiO2)は、生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、酸化亜鉛、酸化アルミニウムについても同様の扱いとし、それぞれ、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、それぞれ酸化亜鉛またはZnO、酸化アルミニウムまたはAl2O3と表記することとする。
本発明において無機層[B]として好適に用いられる、(i)酸化亜鉛、(ii)二酸化ケイ素、および(iii)酸化アルミニウムの共存相(以下、(i)酸化亜鉛、(ii)二酸化ケイ素、および(iii)酸化アルミニウムの共存相を「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウム共存相」と表記することもある)からなる層である無機層[B1]について詳細を説明する。なお、「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウム共存相」を「ZnO−SiO2−Al2O3」と略記することもある。また、二酸化ケイ素(SiO2)は、生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、酸化亜鉛、酸化アルミニウムについても同様の扱いとし、それぞれ、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、それぞれ酸化亜鉛またはZnO、酸化アルミニウムまたはAl2O3と表記することとする。
本発明の積層体において無機層[B1]を適用することによりガスバリア性が良好となる理由は、酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウム共存相においては酸化亜鉛に含まれる結晶質成分と二酸化ケイ素の非晶質成分とを共存させることによって、微結晶を生成しやすい酸化亜鉛の結晶成長が抑制され粒子径が小さくなるため層が緻密化し、水蒸気の透過が抑制されるためと推測している。
また、酸化アルミニウムを共存させることによって、酸化亜鉛と二酸化ケイ素を共存させる場合に比べて、より結晶成長を抑制することができるため、さらなる層の緻密化ができること、それに伴い、使用時におけるクラックの生成に起因するガスバリア性低下についても抑制できたものと考えられる。
無機層[B1]の組成は、亜鉛原子濃度が1〜35atm%、ケイ素原子濃度が5〜25atm%、アルミニウム原子濃度が1〜7atm%、酸素原子濃度が50〜70atm%の範囲にあることが好ましい。亜鉛原子濃度が1atm%よりも少ない、またはケイ素原子濃度が25atm%よりも多いと、ガスバリア層を柔軟性の高い性質にする亜鉛原子の割合が少なくなるため、積層体の柔軟性が低下する場合がある。かかる観点から、亜鉛原子濃度は、3atm%以上であることがより好ましい。亜鉛原子濃度が35atm%よりも多い、またはケイ素原子濃度が5atm%よりも少ないと、ケイ素原子の割合が少なくなることでガスバリア層は結晶層になりやすく、クラックが入りやすくなる場合がある。かかる観点から、ケイ素原子濃度は、7atm%以上であることがより好ましい。アルミニウム原子濃度が1atm%よりも少ないと、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の親和性が損なわれるため、ガスバリア層には空隙や欠陥が生じやすくなる場合がある。また、アルミニウム原子濃度が7atm%よりも多いと、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の親和性が過剰に高くなるため、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。酸素原子濃度が50atm%よりも少ないと、亜鉛、ケイ素、アルミニウムは酸化不足となり、光線透過率が低下する場合がある。また、酸素原子濃度が70atm%よりも多いと、酸素が過剰に取り込まれるため、空隙や欠陥が増加し、ガスバリア性が低下する場合がある。
無機層[B1]の組成は、層の形成時に使用した混合焼結材料と同様の組成で形成されるため、目的とする層の組成に合わせた組成の混合焼結材料を使用することで無機層[B1]の組成を調整することが可能である。
無機層[B1]の組成は、従来公知の組成分析方法により求めることができ、例えばXPS分析により測定することができる。ここで無機層[B1]の最表面は一般に過剰酸化されており、内部の組成比率と異なるため、XPS分析による分析の前処理としてアルゴンイオンを用いたスパッタエッチングにより、最表層を5nm程度エッチングして除去した後、組成分析を行い得た原子濃度を、本発明における原子濃度とする。なお、無機層[B1]上にさらに層が積層されている場合、必要に応じてイオンエッチングや薬液処理により層を除去した後、XPS分析にて測定することができる。
[無機層[B2]]
次に、本発明において無機層[B]として好適に用いられる、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相(以下、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相を「硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相」と表記することもある)からなる層である無機層[B2]について詳細を説明する。なお、「硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相」を、「ZnS−SiO2」と略記することもある。また、二酸化ケイ素(SiO2)は、その生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、硫化亜鉛についても同様の扱いとし、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、硫化亜鉛またはZnSと表記することとする。
次に、本発明において無機層[B]として好適に用いられる、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相(以下、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相を「硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相」と表記することもある)からなる層である無機層[B2]について詳細を説明する。なお、「硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相」を、「ZnS−SiO2」と略記することもある。また、二酸化ケイ素(SiO2)は、その生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、硫化亜鉛についても同様の扱いとし、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、硫化亜鉛またはZnSと表記することとする。
本発明の積層体において無機層[B2]を適用することによりガスバリア性が良好となる理由は、硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相においては硫化亜鉛に含まれる結晶質成分と二酸化ケイ素の非晶質成分とを共存させることによって、微結晶を生成しやすい硫化亜鉛の結晶成長が抑制され粒子径が小さくなるため層が緻密化し、水蒸気の透過が抑制されるためと推測している。
また、結晶成長が抑制された硫化亜鉛を含む硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相は、無機酸化物または金属酸化物だけで形成された層よりも柔軟性がより高くなり、熱や外部からの応力に対してクラックが生じにくい層となるため、かかる無機層[B2]を適用することにより、使用時におけるクラックの生成に起因するガスバリア性低下についても抑制できたものと考えられる。
無機層[B2]は、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9である組成により構成されたものであることが好ましい。硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.9より大きくなると、硫化亜鉛の結晶成長を抑制する二酸化ケイ素が不足するため、空隙部分や欠陥部分が増加し、所定のガスバリア性が得られない場合がある。また、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7より小さくなると、無機層[B2]内部の二酸化ケイ素の非晶質成分が増加して層の柔軟性が低下するため、機械的な曲げに対する柔軟性が低下する場合がある。硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率のさらに好ましい範囲は0.75〜0.85である。
無機層[B2]の組成は、層の形成時に使用した混合焼結材料と同様の組成で形成されるため、目的に合わせた組成の混合焼結材料を使用することで無機層[B2]の組成を調整することが可能である。
無機層[B2]の組成分析は、ICP発光分光分析によりまず亜鉛及びケイ素の組成比を求め、この値を基にラザフォード後方散乱法を使用して、各元素を定量分析し硫化亜鉛と二酸化ケイ素および含有する他の無機酸化物の組成比を知ることができる。ICP発光分光分析は、試料をアルゴンガスとともにプラズマ光源部に導入した際に発生する発光スペクトルから、多元素の同時計測が可能な分析手法であり、組成分析に適用することができる。また、ラザフォード後方散乱法は高電圧で加速させた荷電粒子を試料に照射し、そこから跳ね返る荷電粒子の数、エネルギーから元素の特定、定量を行い、各元素の組成比を知ることができる。なお、無機層[B2]は硫化物と酸化物の複合層であるため、硫黄と酸素の組成比分析が可能なラザフォード後方散乱法による分析を実施する。無機層[B2]上にさらに無機層や樹脂層が積層されている場合、必要に応じてイオンエッチングや薬液処理により層を除去した後、ICP発光分光分析及び、ラザフォード後方散乱法にて分析することができる。
以上のように、無機層[B]として[B1]および/または[B2]を満たすことで、より高いガスバリア性と高い膜質安定性が得られるが、無機層[B]は上記に限定されるものではなく、無機層[B]が以下の[B3]を満たすことも好ましい。また、その他の無機層[B]として、アルミナからなる無機層[B4]を適用してもよい。
無機層[B3]:ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素酸化物を主成分とする無機層
以下、無機層[B3]、[B4]の詳細について説明する。
無機層[B3]:ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素酸化物を主成分とする無機層
以下、無機層[B3]、[B4]の詳細について説明する。
[無機層[B3]]
本発明において無機層[B]として好適に用いられる、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素酸化物を主成分とする無機層[B3]について詳細を説明する。ここで、主成分とはケイ素酸化物が無機層[B3]全体の60質量%以上であることを意味し、80質量%以上であれば好ましい。なお、二酸化ケイ素(SiO2)は、その生成時の条件によって、前記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。従って、XPS分析によりケイ素原子に対する酸素原子の原子数比を求め、無機層[B]中のケイ素酸化物がすべてSiOx(xはXPS分析により求めたケイ素原子に対する酸素原子の原子数比)になっていると仮定して、無機層[B]中のケイ素酸化物の含有量を求める。
本発明において無機層[B]として好適に用いられる、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.5〜2.0であるケイ素酸化物を主成分とする無機層[B3]について詳細を説明する。ここで、主成分とはケイ素酸化物が無機層[B3]全体の60質量%以上であることを意味し、80質量%以上であれば好ましい。なお、二酸化ケイ素(SiO2)は、その生成時の条件によって、前記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiO2と表記することとする。従って、XPS分析によりケイ素原子に対する酸素原子の原子数比を求め、無機層[B]中のケイ素酸化物がすべてSiOx(xはXPS分析により求めたケイ素原子に対する酸素原子の原子数比)になっていると仮定して、無機層[B]中のケイ素酸化物の含有量を求める。
無機層[B3]の形成方法は、緻密な膜を形成することができるCVD法が好ましい。CVD法では、後述する有機ケイ素化合物のモノマー気体を高強度のプラズマにより活性化し、重合反応によって緻密な膜を形成することができる。ここでいう有機ケイ素化合物とは、例えば、シラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、テトラエチルシラン、プロポキシシラン、ジプロポキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、デカメチルシクロペンタシラザン、ウンデカメチルシクロヘキサシラザンなどが挙げられる。中でも取り扱い上の安全性からヘキサメチルジシロキサン、テトラエトキシシランが好ましい。
無機層[B3]の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が、1.5〜2.0の範囲であることが好ましく、さらに1.6〜1.8の範囲であることがより好ましい。酸素原子に対するケイ素原子の原子数比が2.0より大きくなると、含まれる酸素原子量が多くなるため、空隙部分や欠陥部分が増加し、所定のガスバリア性が得られない場合がある。また、酸素原子に対するケイ素原子の原子数比が1.5より小さくなると、酸素原子が減少し緻密な膜になるが、柔軟性が低下する場合がある。無機層[B3]の組成は、従来公知の組成分析方法により求めることができ、例えばXPS分析により測定することができる。
[無機層[B4]]
次に、本発明において無機層[B]として好適に用いられる、無機層[B4]について詳細を説明する。無機層[B4]はアルミナからなる層である。アルミナからなる層は、コスト、生産設備、着色、食品衛生性等の観点から好ましい。無機層[B4]の形成方法としては、例えば物理蒸着法や化学蒸着法を用いることができる。積層体への物理蒸着法には例えば真空蒸着法、スパッタリング法があり、特に酸化度の制御のしやすさから真空蒸着法が好ましく、さらに金属蒸気の高エネルギー化が可能な電子ビーム蒸着法が好ましい。無機層[B4]の組成は、従来公知の組成分析方法により求めることができ、例えばXPS分析により測定することができる。
次に、本発明において無機層[B]として好適に用いられる、無機層[B4]について詳細を説明する。無機層[B4]はアルミナからなる層である。アルミナからなる層は、コスト、生産設備、着色、食品衛生性等の観点から好ましい。無機層[B4]の形成方法としては、例えば物理蒸着法や化学蒸着法を用いることができる。積層体への物理蒸着法には例えば真空蒸着法、スパッタリング法があり、特に酸化度の制御のしやすさから真空蒸着法が好ましく、さらに金属蒸気の高エネルギー化が可能な電子ビーム蒸着法が好ましい。無機層[B4]の組成は、従来公知の組成分析方法により求めることができ、例えばXPS分析により測定することができる。
[アンカーコート層[C]]
本発明に適用される基材の表面には、ガスバリア性向上、耐屈曲性向上、密着性の向上を目的として、アンカーコート層を形成することが好ましい。得られた積層体の基材の表面にアンカーコート層を有することにより、基材に直接無機層[B]または層[A]を作製した場合よりも、無機層[B]または/および層[A]の平坦性が向上し、ガスバリア性、耐屈曲性、密着性が向上する。
本発明に適用される基材の表面には、ガスバリア性向上、耐屈曲性向上、密着性の向上を目的として、アンカーコート層を形成することが好ましい。得られた積層体の基材の表面にアンカーコート層を有することにより、基材に直接無機層[B]または層[A]を作製した場合よりも、無機層[B]または/および層[A]の平坦性が向上し、ガスバリア性、耐屈曲性、密着性が向上する。
無機層[B]のスパッタリングの際にアンカーコート層上に飛来してきたスパッタ粒子の表面拡散性を確保するため、アンカーコート層の鉛筆硬度はH以上3H以下であることが好ましい(鉛筆硬度は、(軟)10B〜B、HB、F、H〜9H(硬)である)。Hより軟らかいと、スパッタ粒子が飛来した際に、ミキシングが起こりやすくなり、十分な表面拡散性が得られないため、無機層[B]の緻密化を図ることが難しい場合がある。一方、3Hより硬い場合、積層体の屈曲性が損なわれ、無機層[B]または/および層[A]にクラックが入りやすくなる場合がある。
このアンカーコート層に用いられる材料としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネートなどが挙げられ、これらを1または2種以上併せて使用することもできる。本発明に用いるアンカーコート層の材料としては耐溶剤性の観点から主剤と硬化剤とからなる二液硬化型樹脂が好ましく、ガスバリア性、耐水性の観点からポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂を主剤として使用することがより好ましい。硬化剤としてはガスバリア性、透明性などの特性を阻害しない範囲内であれば、特に限定されることはなく、イソシアネート系、エポキシ系などの一般的な硬化剤を使用することができる。これらのアンカーコート層には、既知の添加剤を含有させることもできる。
本発明に用いるアンカーコート層の厚みは、0.3〜10μmが好ましい。層の厚みが0.3μmより薄くなると、基材の凹凸の影響を受けて、無機層[B]または/および層[A]の表面粗さが大きくなる可能性があり、ガスバリア性が低下する場合がある。層の厚みが10μmより厚くなると、アンカーコート層の層内に残留する応力が大きくなることによって基材が反り、無機層[B]または/および層[A]にクラックが発生するため、ガスバリア性が低下する場合がある。従って、アンカーコート層の厚みは0.3〜10μmが好ましい。さらに、柔軟性を確保する観点から1〜3μmがより好ましい。
基材の表面にアンカーコート層を形成する方法としては上記のアンカーコート層の材料に溶剤、希釈剤などを加えて塗剤とした後、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法などの方法により基材上に塗布して塗膜を形成し、溶剤、希釈剤などを乾燥除去することによりアンカーコート層を形成することができる。塗膜の乾燥方法は、熱ロール接触法、熱媒(空気、オイルなど)接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法などが利用できる。中でも、本発明のアンカーコート層の好ましい厚みである0.3〜10μmの厚みの層を塗工するに好適な手法として、グラビアコート法が好ましい。
[その他の層]
本発明の積層体の最表面の上には、ガスバリア性が低下しない範囲で耐擦傷性の向上を目的としたハードコート層を形成してもよいし、有機高分子化合物からなるフィルムをラミネートした積層構成としてもよい。なお、ここで積層体の最表面とは、基材上に層[A]が積層された後の、層[A]の基材側とは反対側の面をいう。
本発明の積層体の最表面の上には、ガスバリア性が低下しない範囲で耐擦傷性の向上を目的としたハードコート層を形成してもよいし、有機高分子化合物からなるフィルムをラミネートした積層構成としてもよい。なお、ここで積層体の最表面とは、基材上に層[A]が積層された後の、層[A]の基材側とは反対側の面をいう。
[用途]
本発明の積層体は水蒸気に対する高いガスバリア性と高い膜質安定性、およびフレキシブル性を活かして、曲面形状への成形可能なガスバリア性フィルムとして好適に用いることができる。
本発明の積層体は水蒸気に対する高いガスバリア性と高い膜質安定性、およびフレキシブル性を活かして、曲面形状への成形可能なガスバリア性フィルムとして好適に用いることができる。
[電子デバイス]
本発明の積層体は高いガスバリア性と高い膜質安定性、およびフレキシブル性を有するため、様々な電子デバイスに用いることができる。例えば、太陽電池のバックシートやフレキシブル回路基板のような電子デバイスに好適に用いることができる。本発明の積層体を用いた電子デバイスは、優れたガスバリア性を有するため、水蒸気などによるデバイスの性能低下を抑制することができる。
本発明の積層体は高いガスバリア性と高い膜質安定性、およびフレキシブル性を有するため、様々な電子デバイスに用いることができる。例えば、太陽電池のバックシートやフレキシブル回路基板のような電子デバイスに好適に用いることができる。本発明の積層体を用いた電子デバイスは、優れたガスバリア性を有するため、水蒸気などによるデバイスの性能低下を抑制することができる。
[その他の用途]
本発明の積層体は高いガスバリア性と高い膜質安定性およびフレキシブル性を有するため、電子デバイス以外にも、食品や電子部品の包装用フィルムなどとして好適に用いることができる。
本発明の積層体は高いガスバリア性と高い膜質安定性およびフレキシブル性を有するため、電子デバイス以外にも、食品や電子部品の包装用フィルムなどとして好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。特に記載のない限り評価n数は水準当たり5検体とし、得られた5検体の測定値の平均値を測定結果とした。
まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。特に記載のない限り評価n数は水準当たり5検体とし、得られた5検体の測定値の平均値を測定結果とした。
(1)層の厚み
各層の厚みは、TEMによる断面観察によって測定した。すなわち、断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム((株)日立製作所製 FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製 H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、層[A]、無機層[B]、アンカーコート層の厚みを測定した。観察倍率は、観察画像における層の厚みが占める割合が30〜70%となるように調整した。
各層の厚みは、TEMによる断面観察によって測定した。すなわち、断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム((株)日立製作所製 FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製 H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、層[A]、無機層[B]、アンカーコート層の厚みを測定した。観察倍率は、観察画像における層の厚みが占める割合が30〜70%となるように調整した。
(2)水蒸気透過度(g/(m2・day))−1(差圧法)
温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cm2の条件で、英国、テクノロックス(Technolox)社製の水蒸気透過率測定装置(機種名:DELTAPERM(登録商標))を使用して測定した。サンプル数は水準当たり2サンプルとし、測定回数は同一サンプルについて各5回測定を行った。1つのサンプルについて5回測定を行い得たデータを平均し、小数点第2位を四捨五入し、当該サンプルにおける平均値を求めた。同様に別のサンプルの平均値を求め、2つのサンプルの平均値をさらに平均した上で、小数点第2位を四捨五入し、その値を水蒸気透過度(g/(m2・day))とした。ただし、DELTAPERMにて2.0×10−4g/(m2・day)以下の測定試料については、後述の(3)のカルシウム腐食法により測定した。
温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cm2の条件で、英国、テクノロックス(Technolox)社製の水蒸気透過率測定装置(機種名:DELTAPERM(登録商標))を使用して測定した。サンプル数は水準当たり2サンプルとし、測定回数は同一サンプルについて各5回測定を行った。1つのサンプルについて5回測定を行い得たデータを平均し、小数点第2位を四捨五入し、当該サンプルにおける平均値を求めた。同様に別のサンプルの平均値を求め、2つのサンプルの平均値をさらに平均した上で、小数点第2位を四捨五入し、その値を水蒸気透過度(g/(m2・day))とした。ただし、DELTAPERMにて2.0×10−4g/(m2・day)以下の測定試料については、後述の(3)のカルシウム腐食法により測定した。
(3)水蒸気透過度(g/(m2・day))−2(カルシウム腐食法)
特許第4407466号に記載のカルシウム腐食法により、温度40℃、相対湿度90%RHの雰囲気下での水蒸気透過度を測定した。具体的には、真空蒸着により、積層体の層[A]の基材側とは反対側の面に、厚み100nmのカルシウム層を形成した。次いで、同じく真空蒸着により前記カルシウム層上に、カルシウム層全域を覆うように厚み3,000nmのアルミニウム層を形成した。さらに、前記アルミニウム層の表面に熱硬化性エポキシ樹脂を介して厚み1mmのガラスを貼り合わせ、100℃で1時間処理し、評価サンプルを得た。得られたサンプルを、温度40℃、相対湿度90%RH、800時間処理した。前記処理後、水蒸気により腐食したカルシウムの量を算出することにより水蒸気の透過量を算出し、水蒸気透過度(g/(m2・day))とした。
特許第4407466号に記載のカルシウム腐食法により、温度40℃、相対湿度90%RHの雰囲気下での水蒸気透過度を測定した。具体的には、真空蒸着により、積層体の層[A]の基材側とは反対側の面に、厚み100nmのカルシウム層を形成した。次いで、同じく真空蒸着により前記カルシウム層上に、カルシウム層全域を覆うように厚み3,000nmのアルミニウム層を形成した。さらに、前記アルミニウム層の表面に熱硬化性エポキシ樹脂を介して厚み1mmのガラスを貼り合わせ、100℃で1時間処理し、評価サンプルを得た。得られたサンプルを、温度40℃、相対湿度90%RH、800時間処理した。前記処理後、水蒸気により腐食したカルシウムの量を算出することにより水蒸気の透過量を算出し、水蒸気透過度(g/(m2・day))とした。
(4)無機層[B1]、無機層[B3]、無機層[B4]の組成
無機層[B1]、無機層[B3]または無機層[B4]の組成分析は、XPS分析により行った。すなわち、アルゴンイオンを用いたスパッタエッチングにより、最表層を5nm程度エッチングして除去した後、各元素の含有比率を測定した。層中における組成傾斜はないものとし、この測定点における組成比率を、層の組成比率とした。なお、分析する試料が、無機層[B1]、無機層[B3]または無機層[B4]上にさらに層が積層されている場合は、必要に応じてイオンエッチングや薬液処理により層を除去した後、XPS分析にて測定することができる。XPS分析の測定条件は下記の通りとした。
・装置:ESCA 5800(アルバックファイ社製)
・励起X線:monochromatic AlKα
・X線出力:300W
・X線径:800μm
・光電子脱出角度:45°
・Arイオンエッチング:2.0kV、10mPa。
無機層[B1]、無機層[B3]または無機層[B4]の組成分析は、XPS分析により行った。すなわち、アルゴンイオンを用いたスパッタエッチングにより、最表層を5nm程度エッチングして除去した後、各元素の含有比率を測定した。層中における組成傾斜はないものとし、この測定点における組成比率を、層の組成比率とした。なお、分析する試料が、無機層[B1]、無機層[B3]または無機層[B4]上にさらに層が積層されている場合は、必要に応じてイオンエッチングや薬液処理により層を除去した後、XPS分析にて測定することができる。XPS分析の測定条件は下記の通りとした。
・装置:ESCA 5800(アルバックファイ社製)
・励起X線:monochromatic AlKα
・X線出力:300W
・X線径:800μm
・光電子脱出角度:45°
・Arイオンエッチング:2.0kV、10mPa。
(5)無機層[B2]の組成
無機層[B2]の組成分析はICP発光分光分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SPS4000)により行った。基材またはアンダーコート層上に無機層[B2]を形成した段階(層[A]を積層する前)でサンプリングした試料を、硝酸および硫酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解してろ別した。不溶解分は加熱灰化したのち、炭酸ナトリウムで融解し、希硝酸で溶解して、先のろ液とあわせて定容とした。この溶液について、亜鉛原子、ケイ素原子の含有量を測定した。次に、この値をもとにさらにラザフォード後方散乱法(日新ハイボルテージ(株)製 AN−2500)を使用して、亜鉛原子、ケイ素原子、硫黄原子、酸素原子を定量分析し、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の組成比を求めた。なお、分析する試料が、無機層[B2]上に層[A]等を積層したものである場合は、層[B]等をイオンスパッタリングにより除去した後、無機層[B2]の組成分析を行う。
無機層[B2]の組成分析はICP発光分光分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SPS4000)により行った。基材またはアンダーコート層上に無機層[B2]を形成した段階(層[A]を積層する前)でサンプリングした試料を、硝酸および硫酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解してろ別した。不溶解分は加熱灰化したのち、炭酸ナトリウムで融解し、希硝酸で溶解して、先のろ液とあわせて定容とした。この溶液について、亜鉛原子、ケイ素原子の含有量を測定した。次に、この値をもとにさらにラザフォード後方散乱法(日新ハイボルテージ(株)製 AN−2500)を使用して、亜鉛原子、ケイ素原子、硫黄原子、酸素原子を定量分析し、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の組成比を求めた。なお、分析する試料が、無機層[B2]上に層[A]等を積層したものである場合は、層[B]等をイオンスパッタリングにより除去した後、無機層[B2]の組成分析を行う。
(6)層[A]の厚み方向の組成分布
層[A]の厚み方向の組成分布は、XPS分析とイオンエッチングを併用した方法を用いて測定した。本発明の積層体のエッチングレートは各層ごとに異なるため、SiO2換算のエッチングレートを元にして一旦求めておき、前述のTEMによる断面観察によって求めた各層当たりの厚みを、XPS分析から求めた厚み方向の組成分布と比較しながら、厚み方向の組成分布における各層を特定した。XPS分析から求めた各層の厚みと、断面観察から求めた各層の厚みが一致するように、XPS分析から求めた各層の厚みに対して係数をかけることで厚み方向の補正を行った。
測定条件は下記の通りとした。
・装置:ESCA 5800(アルバックファイ社製)
・励起X線:monochromatic AlKα
・X線出力:300W
・X線径:800μm
・光電子脱出角度:45°
・Arイオンエッチング:2.0kV、10mPa
・測定点1点あたりのエッチング深さ:2nm
ここでは、測定点1点あたりのエッチング深さを2nmとしたため、層[A]のO/Nがある範囲を満たす領域を厚み方向に20nm以上有することとは、O/Nがある範囲を満たした測定点が連続して11点以上あること、すなわち、層[A]のO/Nがある範囲を満たす連続する測定点を結ぶことにより得られる線分の長さが厚み方向において20nm以上であることになる。
層[A]の厚み方向の組成分布は、XPS分析とイオンエッチングを併用した方法を用いて測定した。本発明の積層体のエッチングレートは各層ごとに異なるため、SiO2換算のエッチングレートを元にして一旦求めておき、前述のTEMによる断面観察によって求めた各層当たりの厚みを、XPS分析から求めた厚み方向の組成分布と比較しながら、厚み方向の組成分布における各層を特定した。XPS分析から求めた各層の厚みと、断面観察から求めた各層の厚みが一致するように、XPS分析から求めた各層の厚みに対して係数をかけることで厚み方向の補正を行った。
測定条件は下記の通りとした。
・装置:ESCA 5800(アルバックファイ社製)
・励起X線:monochromatic AlKα
・X線出力:300W
・X線径:800μm
・光電子脱出角度:45°
・Arイオンエッチング:2.0kV、10mPa
・測定点1点あたりのエッチング深さ:2nm
ここでは、測定点1点あたりのエッチング深さを2nmとしたため、層[A]のO/Nがある範囲を満たす領域を厚み方向に20nm以上有することとは、O/Nがある範囲を満たした測定点が連続して11点以上あること、すなわち、層[A]のO/Nがある範囲を満たす連続する測定点を結ぶことにより得られる線分の長さが厚み方向において20nm以上であることになる。
(7)層[A]のSi−H結合を有する成分の有無
層[A]のSi−H結合を有する成分の有無の確認はフーリエ変換赤外分光法により行った。すなわち、積層体を10mm×10mmにサンプリングし、層[A]の表面をATR結晶に圧着して以下の測定条件で測定し、2,140〜2,260cm−1におけるSi−Hに由来するピークの有無の確認を行った。ピークがある場合はSi−H結合を有する成分を含むと判断し、ピークがない場合はSi−H結合を有する成分を含まないと判断した。
測定条件は下記の通りとした。
・装置:FT/IR−6100
・光源:標準光源
・検出器:GTS
・分解能:4cm−1
・積算回数:256回
・測定方法:減衰全反射(ATR)法
・測定波数範囲:4,000〜600cm−1
・ATR結晶:Geプリズム、入射角:45°。
層[A]のSi−H結合を有する成分の有無の確認はフーリエ変換赤外分光法により行った。すなわち、積層体を10mm×10mmにサンプリングし、層[A]の表面をATR結晶に圧着して以下の測定条件で測定し、2,140〜2,260cm−1におけるSi−Hに由来するピークの有無の確認を行った。ピークがある場合はSi−H結合を有する成分を含むと判断し、ピークがない場合はSi−H結合を有する成分を含まないと判断した。
測定条件は下記の通りとした。
・装置:FT/IR−6100
・光源:標準光源
・検出器:GTS
・分解能:4cm−1
・積算回数:256回
・測定方法:減衰全反射(ATR)法
・測定波数範囲:4,000〜600cm−1
・ATR結晶:Geプリズム、入射角:45°。
(8)層[A]の膜質安定性
層[A]の膜質安定性は、層[A]のSi−H結合を有する成分の有無において、湿熱処理前後の変化で判断した。まず、10mm×10mmにサンプリングした積層体を2検体準備し、1検体については、湿熱処理をせずに上述の(7)の方法で層[A]のSi−H結合を有する成分の有無を確認した。その後、残りの1検体については、温度40℃、相対湿度90%RHの条件で72時間湿熱処理、湿熱処理後に上述の(7)の方法で層[A]のSi−H結合を有する成分の有無を確認した。湿熱処理前後の変化から以下のように膜質安定性を判断した。
○:湿熱処理前後ともにSi−H結合を有する成分を含む
×:湿熱処理前はSi−H結合を有する成分を含むが、湿熱処理後はSi−H結合を有する成分を含まない
−:湿熱処理前後ともにSi−H結合を有する成分を含まない。
層[A]の膜質安定性は、層[A]のSi−H結合を有する成分の有無において、湿熱処理前後の変化で判断した。まず、10mm×10mmにサンプリングした積層体を2検体準備し、1検体については、湿熱処理をせずに上述の(7)の方法で層[A]のSi−H結合を有する成分の有無を確認した。その後、残りの1検体については、温度40℃、相対湿度90%RHの条件で72時間湿熱処理、湿熱処理後に上述の(7)の方法で層[A]のSi−H結合を有する成分の有無を確認した。湿熱処理前後の変化から以下のように膜質安定性を判断した。
○:湿熱処理前後ともにSi−H結合を有する成分を含む
×:湿熱処理前はSi−H結合を有する成分を含むが、湿熱処理後はSi−H結合を有する成分を含まない
−:湿熱処理前後ともにSi−H結合を有する成分を含まない。
(9)フレキシブル性(耐屈曲)試験
積層体を100mm×100mmにサンプリングし、このサンプルにおいて、図3のように積層体の層[A]が積層されていない面側を外側、層[A]が形成された面を内側として装置に固定し、以下の屈曲条件にて耐屈曲試験を実施した。尚、本試験においては、以下に記載の折り曲げ半径が小さいほど厳しい条件での試験であること意味する。
・装置:小型卓上型 耐久試験機(ユアサシステム機器(株)製、DLDM111LH(直線往復仕様)、面状体無負荷 U字伸縮試験)
・折り曲げ半径:2mmまたは3mm(なお、2mmまたは3mmで試験を行うサンプルは別々にサンプルを準備した)
・屈曲速度:1回/秒
・屈曲回数:1万回
次いで、以下に記載の耐屈曲性評価A及びBを実施し、フレキシブル性の評価とした。
・耐屈曲性評価A
耐屈曲試験後に屈曲部分の層[A]側をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、VHX1000)にて倍率100〜500にて観察した。層[A]の割れ・クラックが発生しない場合を判定A(良好)、発生した場合を判定B(不良)とした。
・耐屈曲性評価B
耐屈曲試験後に屈曲部分の層[A]側を測定面として、前記(2)もしくは(3)の方法にて水蒸気透過度を測定し、耐屈曲試験前の水蒸気透過度W0にて、耐屈曲試験後の水蒸気透過度値Wを除して、耐屈曲試験前後の水蒸気透過度の変化比率としてW/W0値を求めた。W/W0値が10未満の場合を判定A(最良)、10以上100未満を判定B(良好)、100以上を判定C(不良)とした。
積層体を100mm×100mmにサンプリングし、このサンプルにおいて、図3のように積層体の層[A]が積層されていない面側を外側、層[A]が形成された面を内側として装置に固定し、以下の屈曲条件にて耐屈曲試験を実施した。尚、本試験においては、以下に記載の折り曲げ半径が小さいほど厳しい条件での試験であること意味する。
・装置:小型卓上型 耐久試験機(ユアサシステム機器(株)製、DLDM111LH(直線往復仕様)、面状体無負荷 U字伸縮試験)
・折り曲げ半径:2mmまたは3mm(なお、2mmまたは3mmで試験を行うサンプルは別々にサンプルを準備した)
・屈曲速度:1回/秒
・屈曲回数:1万回
次いで、以下に記載の耐屈曲性評価A及びBを実施し、フレキシブル性の評価とした。
・耐屈曲性評価A
耐屈曲試験後に屈曲部分の層[A]側をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、VHX1000)にて倍率100〜500にて観察した。層[A]の割れ・クラックが発生しない場合を判定A(良好)、発生した場合を判定B(不良)とした。
・耐屈曲性評価B
耐屈曲試験後に屈曲部分の層[A]側を測定面として、前記(2)もしくは(3)の方法にて水蒸気透過度を測定し、耐屈曲試験前の水蒸気透過度W0にて、耐屈曲試験後の水蒸気透過度値Wを除して、耐屈曲試験前後の水蒸気透過度の変化比率としてW/W0値を求めた。W/W0値が10未満の場合を判定A(最良)、10以上100未満を判定B(良好)、100以上を判定C(不良)とした。
[実施例および比較例におけるアンカーコート層[C]の形成]
基材上に、アンカーコート層形成用の塗工液として、ウレタンアクリレート(中国塗料(株)製フォルシード420C)100質量部をトルエン70質量部で希釈した塗工液Aを調製した。次いで、塗工液Aを前記高分子フィルム基材の片面にマイクログラビアコーター(グラビア線番200UR、グラビア回転比100%)で塗布、60℃で1分間乾燥後、紫外線(ピーク波長365nm)を1.0J/cm2照射、硬化させ、厚み1μmのアンカーコート層を設けた。
基材上に、アンカーコート層形成用の塗工液として、ウレタンアクリレート(中国塗料(株)製フォルシード420C)100質量部をトルエン70質量部で希釈した塗工液Aを調製した。次いで、塗工液Aを前記高分子フィルム基材の片面にマイクログラビアコーター(グラビア線番200UR、グラビア回転比100%)で塗布、60℃で1分間乾燥後、紫外線(ピーク波長365nm)を1.0J/cm2照射、硬化させ、厚み1μmのアンカーコート層を設けた。
[実施例および比較例における無機層[B1]の形成方法]
巻き取り式スパッタリング装置を使用し、基材の片面に、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムで形成された混合焼結材であるスパッタターゲット(酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの組成質量比が77/20/3)を用いて、下記条件でスパッタリングを実施し、無機層[B1]を設けた。無機層[B1]の組成は、Zn原子濃度が27.6atm%、Si原子濃度が13.1atm%、Al原子濃度が2.3atm%、O原子濃度が57.0atm%であった。
・減圧度:2×10−1Pa
・導入ガス:アルゴンガス量45ccm、酸素ガス量5ccm
・電力:直流電源により投入電力4,000Wを印加。
巻き取り式スパッタリング装置を使用し、基材の片面に、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムで形成された混合焼結材であるスパッタターゲット(酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの組成質量比が77/20/3)を用いて、下記条件でスパッタリングを実施し、無機層[B1]を設けた。無機層[B1]の組成は、Zn原子濃度が27.6atm%、Si原子濃度が13.1atm%、Al原子濃度が2.3atm%、O原子濃度が57.0atm%であった。
・減圧度:2×10−1Pa
・導入ガス:アルゴンガス量45ccm、酸素ガス量5ccm
・電力:直流電源により投入電力4,000Wを印加。
[実施例および比較例における無機層[B2]の形成方法]
巻き取り式スパッタリング装置を使用し、基材の片面に、硫化亜鉛および二酸化ケイ素で形成された混合焼結材であるスパッタターゲット(硫化亜鉛/二酸化ケイ素のモル組成比が80/20)を用いて、下記条件でスパッタリングを実施し、無機層[B2]を設けた。無機層[B2]の組成は、硫化亜鉛のモル分率が0.80であった。
・減圧度:2×10−1Pa
・導入ガス:アルゴンガス
・電力:高周波電源により投入電力500Wを印加。
巻き取り式スパッタリング装置を使用し、基材の片面に、硫化亜鉛および二酸化ケイ素で形成された混合焼結材であるスパッタターゲット(硫化亜鉛/二酸化ケイ素のモル組成比が80/20)を用いて、下記条件でスパッタリングを実施し、無機層[B2]を設けた。無機層[B2]の組成は、硫化亜鉛のモル分率が0.80であった。
・減圧度:2×10−1Pa
・導入ガス:アルゴンガス
・電力:高周波電源により投入電力500Wを印加。
[実施例および比較例における無機層[B3]の形成方法]
巻き取り式CVD装置を使用し、基材の片面に、ヘキサメチルジシロキサンを原料として、下記条件で化学気相蒸着を実施し、無機層[B3]を設けた。無機層[B3]の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.95であった。
・減圧度:2×10−1Pa
・導入ガス:酸素ガス0.5L/分、ヘキサメチルジシロキサン70cc/分
・電力:高周波電源からCVD電極に投入電力3,000Wを印加。
巻き取り式CVD装置を使用し、基材の片面に、ヘキサメチルジシロキサンを原料として、下記条件で化学気相蒸着を実施し、無機層[B3]を設けた。無機層[B3]の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.95であった。
・減圧度:2×10−1Pa
・導入ガス:酸素ガス0.5L/分、ヘキサメチルジシロキサン70cc/分
・電力:高周波電源からCVD電極に投入電力3,000Wを印加。
[実施例および比較例における無機層[B4]の形成方法]
巻き取り式真空蒸着装置を使用し、基材の片面に、純度99.99質量%アルミニウムを電子ビーム(出力5.1kW)で加熱蒸発させ、酸素ガス(2.0L/分)を金属蒸気と同じ方向に供給して、アルミナの蒸着薄膜層からなる無機層[B4]を設けた。
巻き取り式真空蒸着装置を使用し、基材の片面に、純度99.99質量%アルミニウムを電子ビーム(出力5.1kW)で加熱蒸発させ、酸素ガス(2.0L/分)を金属蒸気と同じ方向に供給して、アルミナの蒸着薄膜層からなる無機層[B4]を設けた。
(実施例1:試料1)
基材として厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”(登録商標)U48)を使用し、この基材の片面にアンカーコート層[C]を設け、さらにその上に無機層[B]として無機層[B1]を厚み150nmとなるよう設けた。
基材として厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”(登録商標)U48)を使用し、この基材の片面にアンカーコート層[C]を設け、さらにその上に無機層[B]として無機層[B1]を厚み150nmとなるよう設けた。
次いで、層[A]形成用の塗液として、ジブチルエーテル中のパーヒドロポリシラザン溶液(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製「NN120−20」)100質量部を、ジブチルエーテル100質量部とジイソプロピルエーテル200質量部で希釈して塗液Iを窒素気流下で調製し、層[A]の酸化を抑制するため塗液1を無機層[B1]上にスリットダイコーター(塗液供給手段:シリンジポンプ)で塗布し、100℃で1分間乾燥した。次いで、紫外線処理を下記の処理条件にて施して、厚み150nmの層[A]を設けた積層体を得た。
・ランプ型式:MEBF−440HQ(エム・ディ・エキシマ社製)
・紫外線発生源:172nmキセノンエキシマランプ
・照射強度:250mW/cm2
・導入ガス:N2
・酸素濃度:500ppm
・積算光量:5.0J/cm2
・試料温調:70℃。
・ランプ型式:MEBF−440HQ(エム・ディ・エキシマ社製)
・紫外線発生源:172nmキセノンエキシマランプ
・照射強度:250mW/cm2
・導入ガス:N2
・酸素濃度:500ppm
・積算光量:5.0J/cm2
・試料温調:70℃。
(実施例2:試料2)
層[A]形成時の吐出量を調整して層[A]の厚みを400nmに変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
層[A]形成時の吐出量を調整して層[A]の厚みを400nmに変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
(実施例3:試料3)
層[A]形成時の吐出量を調整して層[A]の厚みを550nmに変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の層[A]側の表面には、目視で測定に不要な箇所におけるクラックの発生を確認したが、それ以外の箇所を使用しそのまま評価を続けた。
層[A]形成時の吐出量を調整して層[A]の厚みを550nmに変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の層[A]側の表面には、目視で測定に不要な箇所におけるクラックの発生を確認したが、それ以外の箇所を使用しそのまま評価を続けた。
(実施例4:試料4)
層[A]形成時の吐出量を調整して層[A]の厚みを70nmに変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
層[A]形成時の吐出量を調整して層[A]の厚みを70nmに変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
(実施例5:試料5)
基材を厚み50μmのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(日本ゼオン株式会社製“ゼオノアフィルム”(登録商標)ZF−14)に変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
基材を厚み50μmのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(日本ゼオン株式会社製“ゼオノアフィルム”(登録商標)ZF−14)に変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
(実施例6:試料6)
無機層[B]を無機層[B1]から厚み150nmの無機層[B2]に変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
無機層[B]を無機層[B1]から厚み150nmの無機層[B2]に変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
(実施例7:試料7)
無機層[B]を無機層[B1]から厚み300nmの無機層[B3]に変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
無機層[B]を無機層[B1]から厚み300nmの無機層[B3]に変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
(実施例8:試料8)
無機層[B]を無機層[B1]から厚み20nmの無機層[B4]に変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
無機層[B]を無機層[B1]から厚み20nmの無機層[B4]に変更した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
(比較例1:試料9)
無機層[B]を設けず、アンカーコート層[C]の上に直接層[A]を積層した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
無機層[B]を設けず、アンカーコート層[C]の上に直接層[A]を積層した以外は、試料1と同様にして積層体を得た。
(比較例2:試料10)
層[A]形成時の吐出量を調整して層[A]の厚みを40nmに変更し、紫外線処理を下記の処理条件に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
・ランプ型式:MEBF−440HQ(エム・ディ・エキシマ社製)
・紫外線発生源:172nmキセノンエキシマランプ
・照射強度:250mW/cm2
・導入ガス:N2
・酸素濃度:500ppm
・積算光量:1.5J/cm2
・試料温調:70℃。
層[A]形成時の吐出量を調整して層[A]の厚みを40nmに変更し、紫外線処理を下記の処理条件に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
・ランプ型式:MEBF−440HQ(エム・ディ・エキシマ社製)
・紫外線発生源:172nmキセノンエキシマランプ
・照射強度:250mW/cm2
・導入ガス:N2
・酸素濃度:500ppm
・積算光量:1.5J/cm2
・試料温調:70℃。
(比較例3:試料11)
層[A]形成時の紫外線処理を下記の処理条件に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の層[A]側の表面には、目視でフィルムしわの発生を確認したが、そのまま評価を続けた。
・紫外線処理装置:CV−110QC−G(ヘレウス株式会社製)
・ランプ型式:LH−10−10
・ピーク波長:365nm
・バルブ:Hバルブ
・導入ガス:N2
・酸素濃度:500ppm
・積算光量:3.0J/cm2
・試料温調:22℃。
層[A]形成時の紫外線処理を下記の処理条件に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の層[A]側の表面には、目視でフィルムしわの発生を確認したが、そのまま評価を続けた。
・紫外線処理装置:CV−110QC−G(ヘレウス株式会社製)
・ランプ型式:LH−10−10
・ピーク波長:365nm
・バルブ:Hバルブ
・導入ガス:N2
・酸素濃度:500ppm
・積算光量:3.0J/cm2
・試料温調:22℃。
(比較例4:試料12)
層[A]形成時の紫外線処理を下記の処理条件に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
・紫外線処理装置:CV−110QC−G(ヘレウス株式会社製)
・ランプ型式:LH−10−10
・ピーク波長:365nm
・バルブ:Hバルブ
・導入ガス:N2
・酸素濃度:500ppm
・積算光量:1.5J/cm2
・試料温調:22℃。
層[A]形成時の紫外線処理を下記の処理条件に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
・紫外線処理装置:CV−110QC−G(ヘレウス株式会社製)
・ランプ型式:LH−10−10
・ピーク波長:365nm
・バルブ:Hバルブ
・導入ガス:N2
・酸素濃度:500ppm
・積算光量:1.5J/cm2
・試料温調:22℃。
(比較例5:試料13)
層[A]形成時の乾燥後の紫外線処理を下記条件の湿熱処理に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
処理温度:85℃
処理湿度:85%RH
処理時間:96時間。
層[A]形成時の乾燥後の紫外線処理を下記条件の湿熱処理に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
処理温度:85℃
処理湿度:85%RH
処理時間:96時間。
(比較例6:試料14)
無機層[B]を無機層[B1]から厚み20nmの無機層[B4]に変更し、層[A]形成用の塗液を、塗液Iから以下の塗液IIへと変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
無機層[B]を無機層[B1]から厚み20nmの無機層[B4]に変更し、層[A]形成用の塗液を、塗液Iから以下の塗液IIへと変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
ジブチルエーテル中のパーヒドロポリシラザン溶液(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製「NAX120−20」)80質量部、アミン系触媒を含有するジブチルエーテル中のパーヒドロポリシラザン溶液(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製「NAX120−20」)20質量部を、ジブチルエーテル150質量部とジイソプロピルエーテル150質量部で希釈して塗液IIを調製した。
(比較例7:試料15)
層[A]を設けない以外は、試料1と同様にして積層体を得た。比較例7は層[A]を設けていないため水蒸気透過度が大きく、フレキシブル性(耐屈曲)試験については実施しなかった。
層[A]を設けない以外は、試料1と同様にして積層体を得た。比較例7は層[A]を設けていないため水蒸気透過度が大きく、フレキシブル性(耐屈曲)試験については実施しなかった。
(比較例8:試料16)
無機層[B]を無機層[B1]から厚み150nmの無機層[B2]に変更し、層[A]を設けない以外は、試料1と同様にして積層体を得た。比較例8は層[A]を設けていないため水蒸気透過度が大きく、フレキシブル性(耐屈曲)試験については実施しなかった。
無機層[B]を無機層[B1]から厚み150nmの無機層[B2]に変更し、層[A]を設けない以外は、試料1と同様にして積層体を得た。比較例8は層[A]を設けていないため水蒸気透過度が大きく、フレキシブル性(耐屈曲)試験については実施しなかった。
(比較例9:試料17)
無機層[B]を無機層[B1]から厚み300nmの無機層[B3]に変更し、層[A]を設けない以外は、試料1と同様にして積層体を得た。比較例9は層[A]を設けていないため水蒸気透過度が大きく、フレキシブル性(耐屈曲)試験については実施しなかった。
無機層[B]を無機層[B1]から厚み300nmの無機層[B3]に変更し、層[A]を設けない以外は、試料1と同様にして積層体を得た。比較例9は層[A]を設けていないため水蒸気透過度が大きく、フレキシブル性(耐屈曲)試験については実施しなかった。
(比較例10:試料18)
無機層[B]を無機層[B1]から厚み20nmの無機層[B4]に変更し、層[A]を設けない以外は、試料1と同様にして積層体を得た。比較例10は層[A]を設けていないため水蒸気透過度が大きく、フレキシブル性(耐屈曲)試験については実施しなかった。
無機層[B]を無機層[B1]から厚み20nmの無機層[B4]に変更し、層[A]を設けない以外は、試料1と同様にして積層体を得た。比較例10は層[A]を設けていないため水蒸気透過度が大きく、フレキシブル性(耐屈曲)試験については実施しなかった。
得られた積層体の評価結果を表1および2に示す。
表1および2から明らかなように、本発明の実施例1〜8(試料1〜8)の積層体は、対応する比較例1〜10(試料9〜18)の積層体と比較して、高いガスバリア性と高い膜質安定性、フレキシブル性を有することが分かった。
本発明の積層体は、酸素ガス、水蒸気等に対するガスバリア性に優れているので、例えば、食品、医薬品などの包装材および薄型テレビ、太陽電池などの電子デバイス用部材として有用に用いることができるが、用途がこれらに限定されるものではない。
1 基材
2 層[A]
3 無機層[B]
4 アンカーコート層[C]
5 積層体
6 積層体の層[A]が積層されている面側
7 積層体の層[A]が積層されていない面側
8 耐屈曲試験装置の可動板
9 耐屈曲試験装置の固定板
10 耐屈曲試験装置の可動板の往復方向
11 折り曲げ半径
2 層[A]
3 無機層[B]
4 アンカーコート層[C]
5 積層体
6 積層体の層[A]が積層されている面側
7 積層体の層[A]が積層されていない面側
8 耐屈曲試験装置の可動板
9 耐屈曲試験装置の固定板
10 耐屈曲試験装置の可動板の往復方向
11 折り曲げ半径
Claims (5)
- 基材の少なくとも片側に、SiとOとNとを含有する層[A]を有する積層体であって、前記層[A]の元素比O/Nが、0<O/N<0.170の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有する、積層体。
- 前記層[A]の元素比O/Nが、0<O/N<0.150の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有する、請求項1に記載の積層体。
- 前記層[A]の元素比O/Nが、0<O/N<0.100の範囲を満たす領域を厚み方向において20nm以上有する、請求項1または2に記載の積層体。
- 前記基材と前記層[A]との間に、無機層[B]を有し、該無機層[B]が、亜鉛、ケイ素、スズ、アルミニウム、インジウム、チタン、銀、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンおよびパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
- 前記無機層[B]が亜鉛とケイ素とを含有する、請求項4に記載の積層体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016193145A JP2018052041A (ja) | 2016-09-30 | 2016-09-30 | 積層体 |
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JP (1) | JP2018052041A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112888730A (zh) * | 2018-10-26 | 2021-06-01 | 株式会社Lg化学 | 阻挡膜 |
EP3872226A4 (en) * | 2018-10-26 | 2021-12-29 | LG Chem, Ltd. | Barrier film |
US12006575B2 (en) | 2018-10-26 | 2024-06-11 | Lg Chem, Ltd. | Barrier film |
-
2016
- 2016-09-30 JP JP2016193145A patent/JP2018052041A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN112888730A (zh) * | 2018-10-26 | 2021-06-01 | 株式会社Lg化学 | 阻挡膜 |
EP3872120A4 (en) * | 2018-10-26 | 2021-12-15 | LG Chem, Ltd. | BARRIER FILM |
EP3872226A4 (en) * | 2018-10-26 | 2021-12-29 | LG Chem, Ltd. | Barrier film |
CN112888730B (zh) * | 2018-10-26 | 2023-03-17 | 株式会社Lg化学 | 阻挡膜 |
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