JP2015074160A - ガスバリア性フィルム - Google Patents

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浩行 上林
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【課題】厚膜化や多層積層をせずとも高度なガスバリア性および高温、高湿環境でも密着性が低下することが無い高度なガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。【解決手段】高分子フィルム基材の少なくとも片面にガスバリア層を有し、且つ前記ガスバリア層は少なくとも亜鉛を含む第1層とケイ素および炭素を含む第2層を高分子フィルム基材からこの順に有し、前記第2層はX線光電子分光法により測定される第2層内の炭素(C)原子濃度が1.5〜30.0atom%の範囲であるガスバリア性フィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、高いガスバリア性が必要とされる食品、医薬品の包装材料や、太陽電池、電子ペーパー、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレーなどの電子部品の材料に使用されるガスバリア性フィルムに関する。
高分子フィルムのガスバリア性を向上する技術としては、例えば、有機ケイ素化合物の蒸気と酸素を含有するガスを用いてプラズマCVD法により高分子フィルム基材上に、ケイ素酸化物を主成分とし、炭素、水素、ケイ素及び酸素を少なくとも1種類含有した化合物の層を形成することによって、透明性を維持しつつガスバリア性を向上させる技術が開示されている(特許文献1)。また、別のガスバリア性を向上する技術としては、基板上にエポキシ化合物を含む有機層とプラズマCVD法で形成されるケイ素系酸化物層を交互に多層積層することで、膜応力によるクラック及び欠陥の発生を防止した多層積層構成のガスバリア性の層を形成する方法が開示されている(特許文献2)。
特開平8−142252号公報(特許請求の範囲) 特開2003−341003号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、プラズマCVD法によりケイ素酸化物を主成分とした層を形成する特許文献1の方法では、使用時のガスバリア性低下が顕著であるという問題があった。
また、多層積層構成のガスバリア性の層を形成する特許文献2の方法では、水蒸気透過度1.0×10−3g/(m・24hr・atm)以下の高いガスバリア性を得るためには、数十層積層して厚膜のガスバリア性の層を形成する必要があるという問題、および、高温、高湿環境では使用時におけるガスバリア性が低下するという問題があった。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、多層積層をせずとも高度なガスバリア性の発現を可能にし、使用時、とりわけ高温、高湿環境においても高度なガスバリア性を維持することができるガスバリア性フィルムを提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、
(1)高分子フィルム基材の少なくとも片側に、少なくとも亜鉛を含む第1層とケイ素および炭素を含む第2層とを高分子フィルム基材からこの順に接して配されたガスバリア層を有し、前記第2層はX線光電子分光法により測定される炭素(C)原子濃度が1.5〜30.0atom%であるガスバリア性フィルム。
(2)前記ガスバリア層の第1層が、以下の1−A層または1−B層のいずれかである前記(1)に記載のガスバリア性フィルム。
1−A層:酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層
1−B層:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる層
(3)前記ガスバリア層の第2層が、二酸化ケイ素と炭化ケイ素の共存相からなる層である前記(1)または(2)に記載のガスバリア性フィルム。
(4)前記ガスバリア層の第1層が1−A層であり、かつICP発光分光分析法により測定される亜鉛(Zn)原子濃度が20.0〜40.0atom%、ケイ素(Si)原子濃度が5.0〜20.0atom%、アルミニウム(Al)原子濃度が0.5〜5.0atom%、酸素(O)原子濃度が35.0〜70.0atom%である組成により構成されたものである前記(1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(5)前記ガスバリア層の第1層が1−B層であり、かつ硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9である組成により構成されたものである前記(1)〜(4)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(6)前記ガスバリア層の第2層が、X線光電子分光法により測定されるケイ素(Si)原子濃度が30.0〜45.0atom%、炭素(C)原子濃度が1.5〜20.0atom%、酸素(O)原子濃度が40.0〜60.0atom%である組成により構成されたものである前記(3)〜(5)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(7)前記ガスバリア性フィルムが、高分子フィルム基材とガスバリア層との間に架橋樹脂層を有する前記(1)〜(6)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(8)前記架橋樹脂層は、鉛筆硬度がH以上かつ表面自由エネルギーが45mN/m以下である前記(7)に記載のガスバリア性フィルム。
(9)前記ガスバリア層の第2層の第1層と反対側の面にエポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層を有する前記(7)に記載のガスバリア性フィルム。
多層積層をせずとも高度なガスバリア性の発現を可能にし、使用時、とりわけ高温、高湿環境においても高度なガスバリア性を維持することができるガスバリア性フィルムを提供することができる。
本発明のガスバリア性フィルムの一例の断面図である。 本発明のガスバリア性フィルムの別の一例の断面図である。 本発明のガスバリア性フィルムの別の一例の断面図である。 本発明のガスバリア性フィルムを製造するための巻き取り式のスパッタリング装置の概略図である。
[ガスバリア性フィルム]
本発明のガスバリア性フィルムは、高分子フィルム基材の少なくとも片側に、少なくとも亜鉛を含む第1層とケイ素および炭素を含む第2層とを高分子フィルム基材からこの順に接して配されたガスバリア層を有し、前記第2層はX線光電子分光法により測定される炭素(C)原子濃度が1.5〜30.0atom%であるガスバリア性フィルムである。なお、「少なくとも亜鉛を含む第1層」を、単に「第1層」と、「ケイ素および炭素を含む第2層」を、単に「第2層」と略記することもある。
図1に本発明のガスバリア性フィルムの一例の断面図を示す。本例のガスバリア性フィルムは、高分子フィルム基材1の片面にガスバリア層2を有し、ガスバリア層2は、少なくとも亜鉛を含む第1層2aとケイ素および炭素を含む第2層2bとを高分子フィルム基材1の側からこの順に接して配されている。ガスバリア層2は亜鉛を含む第1層2aを有することによってガスバリア性を有するものとなり、ケイ素および炭素を含む第2層2bを有することによって、さらに高度なガスバリア性を発現するものとなる。また、第2層は、ケイ素および炭素を特定の原子濃度で含むことにより第1層との界面における高い密着性を有するものとなるため、使用時、とりわけ高温、高湿環境においても剥離が生じたり、密着性が低下することなく、これにより、高度なガスバリア性を維持することができるガスバリア性フィルムとなる。
また、本発明のガスバリア性フィルムの別の一例は図2に示すように、高分子フィルム基材1の片側において高分子フィルム基材1とガスバリア層2との間に架橋樹脂層3を有するものである。架橋樹脂層3を有することによって、ガスバリア性がさらに高くなり、さらに架橋樹脂層3が、特定の鉛筆硬度と表面自由エネルギーを有することによって、第1層の初期成長過程で膜質が緻密になり、結果として、第1層の層全体がより緻密な構造となるため、安定して高いガスバリア性を発現することができる。
さらに、本発明のガスバリア性フィルムの別の一例は図3に示すように、ケイ素および炭素を含む第2層2bの第1層と反対側の面にエポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層4を設有するものである。かかるオーバーコート層4を有することによって、高温、高湿環境でもガスバリア性をより維持できるガスバリア性フィルムとなる。
[高分子フィルム基材]
本発明のガスバリア性フィルムに使用する高分子フィルム基材としては、有機高分子化合物からなるフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール等の各種ポリマーからなるフィルムなどを使用することができる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムであることが好ましい。高分子フィルム基材を構成するポリマーは、ホモポリマー、コポリマーのいずれでもよいし、また、単独のポリマーであってもよいし複数のポリマーをブレンドして用いてもよい。
また、高分子フィルム基材として、単層フィルム、あるいは、2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムや、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルム等を使用してもよい。無機化合物層を形成する側の高分子フィルム基材表面には、密着性を良くするために、コロナ処理、イオンボンバード処理、溶剤処理、粗面化処理、および、有機物もしくは無機物またはそれらの混合物で構成されるアンカーコート層の形成処理といった前処理が施されていても構わない。また、ガスバリアを形成する側の反対面には、フィルムの巻き取り時の滑り性の向上および、ガスバリア層を形成した後にフィルムを巻き取る際に無機化合物層との摩擦を軽減することを目的として、有機物や無機物あるいはこれらの混合物のコーティング層が設けられていても構わない。
本発明のガスバリア性フィルムに使用する高分子フィルム基材の厚さは特に限定されないが、柔軟性を確保する観点から500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。すなわち、フィルムの加工やハンドリングの容易性から10μm〜200μmがより好ましい。
[亜鉛を含む第1層]
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア層が亜鉛を含む第1層を有することによってガスバリア性を有することができる。第1層において、亜鉛は亜鉛単体または亜鉛化合物として含まれていればよい。亜鉛単体または亜鉛化合物の含有量は、第1層全体の50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。なお、ここでいう亜鉛化合物とは、後述するX線光電子分光法(XPS法)、ICP発光分光分析、ラザフォード後方散乱法等により成分を特定された各元素の組成比が整数で表される組成式を有する化合物として扱う。たとえば、生成時の条件に依存して、ZnS、ZnO等が量論比から若干のずれた組成比となる場合でも、ZnS、ZnOとして扱い上記の質量含有率を算出するものとする(以下同様)。
第1層は、亜鉛を含んでいれば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等の元素の酸化物、窒化物、硫化物、または、それらの混合物を含んでいてもよい。例えば、高いガスバリア性が得られるものとして、酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層(以降[1−A]層と略記する)または硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる層(以降[1−B]層と略記する)が好適に用いられる。(なお、[1−A]層と[1−B]層のそれぞれの詳細説明は後述する。)
第1層を形成する方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等によって形成することができる。これらの方法の中でも、簡便かつ安価に第1層を形成可能な方法として、スパッタリング法が好ましい。
[酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層:1−A層]
本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア層の第1層として好適に用いられる[1−A]層として、酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層について説明する。なお、「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相」を「ZnO−SiO−Al」と略記することもある。また、二酸化ケイ素(SiO)は、生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO)が生成することがあるが、本明細書においては二酸化ケイ素あるいはSiOと表記し、その組成として扱うこととする。かかる組成比のずれに関しては、酸化亜鉛、酸化アルミニウムについても同様の扱いとし、それぞれ、本明細書においては、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、酸化亜鉛またはZnO、酸化アルミニウムまたはAlと表記し、それらの組成として扱うこととする。
本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア層の第1層として[1−A]層を適用することによりガスバリア性が良好となる理由は、酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相においては酸化亜鉛に含まれる結晶質成分と二酸化ケイ素の非晶質成分とを共存させることによって、微結晶を生成しやすい酸化亜鉛の結晶成長が抑制され粒子径が小さくなるため層が緻密化し、酸素および水蒸気の透過が抑制されるためと推測している。
また、酸化アルミニウムを共存させることによって、酸化亜鉛と二酸化ケイ素のみを共存させる場合に比べて、より結晶成長を抑制することができるため、クラックの生成に起因するガスバリア性低下が抑制できたものと考えられる。
[1−A]層の組成は、後述するようにICP発光分光分析法により測定することができる。ICP発光分光分析法により測定されるZn原子濃度は20.0〜40.0atom%、Si原子濃度は5.0〜20.0atom%、Al原子濃度は0.5〜5.0atom%、O原子濃度は35.0〜70.0atom%であることが好ましい。Zn原子濃度が40.0atom%より大きくなる、またはSi原子濃度が5.0atom%より小さくなると、酸化亜鉛の結晶成長を抑制する二酸化ケイ素が不足するため、空隙部分や欠陥部分が増加し、十分なガスバリア性が得られない場合がある。Zn原子濃度が20.0atom%より小さくなる、またはSi原子濃度が20.0atom%より大きくなると、層内部の二酸化ケイ素の非晶質成分が増加して層の柔軟性が低下し、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。また、Al原子濃度が5.0atom%より大きくなると、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の親和性が過剰に高くなるため、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。Al原子濃度が0.5atom%より小さくなると、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の親和性が不十分となり、層を形成する粒子間の結合力が向上できないため、柔軟性が低下し、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。また、O原子濃度が70.0atom%より大きくなると、[1−A]層内の欠陥量が増加するため、所定のガスバリア性が得られない場合がある。O原子濃度が35.0atom%より小さくなると、亜鉛、ケイ素、アルミニウムの酸化状態が不十分となり、結晶成長が抑制できず粒子径が大きくなるため、ガスバリア性が低下する場合がある。かかる観点から、Zn原子濃度が25.0〜35.0atom%、Si原子濃度が10.0〜15.0atom%、Al原子濃度が1.0〜3.0atom%、O原子濃度が50.0〜64.0atom%であることがより好ましい。
[1−A]層に含まれる成分は酸化亜鉛および二酸化ケイ素および酸化アルミニウムが上記組成の範囲でかつ主成分であれば特に限定されず、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)等から形成された金属酸化物を含んでも構わない。ここで主成分とは、[1−A]層の組成の50質量%以上であることを意味し、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
[1−A]層の組成は、層の形成時に使用した混合焼結材料と同等の組成で形成されるため、目的とする層の組成に合わせた組成の混合焼結材料を使用することで[1−A]層の組成を調整することが可能である。
[1−A]層の組成分析は、ICP発光分光分析法を使用して、亜鉛、ケイ素、アルミニウムの各元素を定量分析し、酸化亜鉛と二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび含有する無機酸化物の組成比を知ることができる。なお、酸素原子は亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子が、上述の通りそれぞれ酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)として存在すると仮定して算出する。ICP発光分光分析は、試料をアルゴンガスとともにプラズマ光源部に導入した際に発生する発光スペクトルから、多元素の同時計測が可能な分析手法であり、組成分析に適用することができる。[1−A]層上に無機層や樹脂層が積層されている場合、X線反射率法により求めた厚さ分をイオンエッチングや薬液処理により除去した後、ICP発光分光分析することができる。
高分子フィルム基材上(または高分子フィルム基材上に設けられた層上(例えば後述する架橋樹脂層の上))に[1−A]層を形成する方法は特に限定されず、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合焼結材料を使用して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの単体材料を使用する場合は、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムをそれぞれ別の蒸着源またはスパッタ電極から同時に成膜し、所望の組成となるように混合させて形成することができる。これらの方法の中でも、本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア層の第1層に使用する[1−A]層の形成方法は、ガスバリア性と形成した層の組成再現性の観点から、混合焼結材料を使用したスパッタリング法がより好ましい。
[硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる層:1−B層]
本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア層の第1層として好適に用いられる[1−B]層である、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる層について説明する。なお、「硫化亜鉛−二酸化ケイ素の共存相」を、「ZnS−SiO」と略記することもある。また、本系においても二酸化ケイ素(SiO)は、その生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO)が生成することがあるが、本明細書においては前述と同様二酸化ケイ素あるいはSiOと表記する。かかる組成比のずれに関しては、硫化亜鉛についても同様の扱いとし、本明細書においては、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、硫化亜鉛またはZnSと表記し、その組成として扱うこととする。
本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア層の第1層に[1−B]層を適用することによりガスバリア性が良好となる理由は、硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相においては硫化亜鉛に含まれる結晶質成分と二酸化ケイ素の非晶質成分とを共存させることによって、微結晶を生成しやすい硫化亜鉛の結晶成長が抑制され粒子径が小さくなるため層が緻密化し、酸素および水蒸気の透過が抑制されるためと推測している。また、結晶成長が抑制された硫化亜鉛を含む硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相は、無機酸化物または金属酸化物だけで形成された層よりも柔軟性が高いため、熱や外部からの応力に対してクラックが生じにくく、かかる[1−B]層を適用することによりクラックの生成に起因するガスバリア性低下が抑制できたものと考えられる。
[1−B]層の組成は、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9であることが好ましい。硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.9より大きくなると、硫化亜鉛の結晶成長を抑制する二酸化ケイ素が不足するため、空隙部分や欠陥部分が増加し、所定のガスバリア性が得られない場合がある。また、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7より小さくなると、[1−B]層内部の二酸化ケイ素の非晶質成分が増加して層の柔軟性が低下し、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率のより好ましい範囲は0.75〜0.85である。
[1−B]層に含まれる成分は硫化亜鉛および二酸化ケイ素が上記組成の範囲でかつ主成分であれば特に限定されず、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)等の金属酸化物を含んでも構わない。ここで主成分とは、[1−B]層の組成の50質量%以上であることを意味し、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
[1−B]層の組成は、層の形成時に使用した混合焼結材料と同等の組成で形成されるため、目的に合わせた組成の混合焼結材料を使用することで[1−B]層の組成を調整することが可能である。
[1−B]層の組成分析は、ICP発光分光分析によりまず亜鉛及びケイ素の組成比を求め、この値を基にラザフォード後方散乱法を使用して、各元素を定量分析し硫化亜鉛と二酸化ケイ素および含有する他の無機酸化物の組成比を知ることができる。ICP発光分光分析は、試料をアルゴンガスとともにプラズマ光源部に導入した際に発生する発光スペクトルから、多元素の同時計測が可能な分析手法であり、組成分析に適用することができる。また、ラザフォード後方散乱法は高電圧で加速させた荷電粒子を試料に照射し、そこから跳ね返る荷電粒子の数、エネルギーから元素の特定、定量を行い、各元素の組成比を知ることができる。なお、[1−B]層は硫化物と酸化物の複合層であるため、硫黄と酸素の組成比分析が可能なラザフォード後方散乱法による分析を実施する。[1−B]層上に無機層や樹脂層が積層されている場合、X線反射率法により求めた厚さ分をイオンエッチングや薬液処理により除去した後、ICP発光分光分析及び、ラザフォード後方散乱法にて分析することができる。
高分子フィルム基材上(または高分子フィルム基材上に設けられた層上(例えば後述する架橋樹脂層の上))に[1−B]層を形成する方法は特に限定されず、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の混合焼結材料を使用して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。硫化亜鉛と二酸化ケイ素の単体材料を使用する場合は、硫化亜鉛と二酸化ケイ素をそれぞれ別の蒸着源またはスパッタ電極から同時に成膜し、所望の組成となるように混合させて形成することができる。これらの方法の中でも、本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア層の第1層に使用する[1−B]層の形成方法は、ガスバリア性と形成した層の組成再現性の観点から、混合焼結材料を使用したスパッタリング法がより好ましい。
[ケイ素および炭素を含む第2層]
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア層に亜鉛を含む第1層に接してケイ素および炭素を特定の原子濃度で含んだ第2層が配されることによって、ガスバリア性付与と共に第1層と第2層の界面における高い密着性を有するものとなるため、使用時、とりわけ高温、高湿環境でも剥離が生じたり、密着性が低下しにくく、高いガスバリア性を維持することができるガスバリア性フィルムとなる。
本発明のガスバリア性フィルムにケイ素および炭素を特定の原子濃度で含んだ第2層を設けることにより、第1層と第2層の密着性が良好となる理由は、第1層に含まれる亜鉛と第2層に含まれる炭素(C)が接した状態で、外気から水が浸入することにより、第1層と第2層の界面で炭酸亜鉛が生成する反応により結合が生じるため、第1層と第2層の密着が強固なものになると推測している。また、本発明のガスバリア層の第2層は高温、高湿環境下でガスバリア性をさらに維持させる観点から、二酸化ケイ素と炭化ケイ素の共存相からなる層が好適に用いられる。ガスバリア層の第2層に二酸化ケイ素と炭化ケイ素の共存相からなる層を適用することにより高温、高湿環境でも高いガスバリア性をさらに維持できる理由としては、非結晶質でガスバリアに優れた二酸化ケイ素に耐熱性および水により亜鉛との化合物を形成し高密着性を発現する炭化ケイ素を共存させることによって、高温・高湿環境によるガスバリア性が低下する原因となる第1層との剥離をさらに効果的に防止できるためと考えられる。
また、第2層は後述するエポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層との密着性が良好である。その理由は、第2層に炭素(C)が含まれることで第2層表面が有機的になり、接着剤や樹脂などとの親和性が高くなるため、エポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層の塗膜が硬化する場合に、第2層表面の炭素(C)が架橋反応の反応点として作用し、強く接着するためと推測している。
第2層が二酸化ケイ素と炭化ケイ素の共存相からなる層である場合において、第2層におけるケイ素化合物の含有率は50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。なお、ここでいうケイ素化合物とは、後述するX線光電子分光法(XPS法)、ICP発光分光分析、ラザフォード後方散乱法等により成分を特定された各元素の組成比が整数で表される組成式を有する化合物として扱う。本系においても、二酸化ケイ素(SiO)は、生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO)が生成することがあるが、そのような場合でも、SiOとして扱い上記の質量含有率を算出するものとする(以下同様)。
第2層が二酸化ケイ素と炭化ケイ素の共存相からなる層である場合において、その組成は、後述するようにX線光電子分光法(XPS法)により測定することができる。X線光電子分光法により測定されるケイ素(Si)原子濃度が30.0〜45.0atom%、炭素(C)原子濃度が1.5〜30.0atom%、酸素(O)原子濃度が40.0〜60.0atom%であることが好ましい。Si原子濃度が45.0atom%より大きくなると、ケイ素原子に結合する酸素原子および膜内部に含有する炭素原子のいずれかが不足するため、高温高湿環境でガスバリア性と密着性の両立ができなくなる場合がある。Si原子濃度が30.0atom%より小さくなると、膜を形成するケイ素化合物が減少し、空隙部分や欠陥部分が多くなるため、十分なガスバリア性が得られない場合がある。また、C原子濃度が30.0atom%より大きくなると、第2層表面が有機的になりすぎ、外気からの水を膜内部に取り込みやすくなるため、高温高湿環境でガスバリア性が大きく低下する場合がある。さらに第2層内部への水の取り込みで、第1層と第2層間で剥離が生じる場合がある。C原子濃度が1.5atom%より小さくなると、第1層と第2層の界面で生じる塩基性炭酸亜鉛の生成反応が不足し、熱や外部からの応力に対して剥離やクラックが生じやすくなり、ガスバリア性が低下する場合がある。また、O原子濃度が60.0atom%より大きくなると、ケイ素原子と結合しない過剰な酸素原子が膜内部に取り込まれ、空隙部分や欠陥部分が増加するため、十分なガスバリア性が得られない場合がある。O原子濃度が40.0atom%より小さくなると、ケイ素原子に結合する酸素原子が減少し、粒子径が小さい緻密な膜質になるが、膜の応力が大きくなるため、フィルムのカールや柔軟性の低下によりクラックが生じやすくなる。かかる観点から、Si原子濃度が35.0〜40.0atom%、C原子濃度が1.5〜25.0atom%、O原子濃度が45.0〜55.0atom%であることがより好ましく、さらにはSi原子濃度が35.0〜40.0atom%、C原子濃度が1.5〜15.0atom%、O原子濃度が45.0〜55.0atom%であることがより好ましい。
第2層に含まれる成分はケイ素および炭素および酸素が上記組成の範囲でかつ主成分であれば特に限定されず、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)等から形成された金属酸化物を含んでも構わない。ここで主成分とは、第2層の組成の50質量%以上であることを意味し、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
第2層の組成分析は、X線光電子分光法(XPS法)を使用して、各元素の原子濃度を定量分析することができる。第2層の上に無機層や樹脂層が積層されている場合、X線反射率法により求めた厚さ分をイオンエッチングや薬液処理により除去した後、分析することができる。
第2層の厚みは、10nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。層の厚みが10nmより薄くなると、十分にガスバリア性が確保できない箇所が発生しガスバリア層の面内でガスバリア性がばらつく等の問題やオーバーコート層との密着性も面内でばらつく等の問題が生じる場合がある。また、第2層の厚みは、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。層の厚みが1000nmより厚くなると、層内に残留する応力が大きくなるため、曲げや外部からの衝撃によって第2層にクラックが発生しやすくなり、使用に伴いガスバリア性が低下したり、クラックの部分からオーバーコート層との剥離が発生する場合がある。
第2層を形成する方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD法と略す)等によって形成することができる。真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法の場合は、二酸化ケイ素と炭素または炭化ケイ素の混合焼結材料を使用して形成することができる。第2層の組成は、層の形成時に使用した混合焼結材料と同等の組成で形成されるため、目的とする層の組成に合わせた組成の混合焼結材料を使用することで第2層の組成を調整することが可能である。二酸化ケイ素と炭素または炭化ケイ素の単体材料を使用する場合は、二酸化ケイ素と炭素または炭化ケイ素をそれぞれ別の蒸着源またはスパッタ電極から同時に成膜し、所望の組成となるように混合させて形成することができる。CVD法の場合は、ケイ素系有機化合物のモノマー気体を高強度のプラズマにより活性化し、重合反応によって緻密なケイ素系薄膜層を形成することが好ましい。
ケイ素系有機化合物とは、分子内部にケイ素を含有する化合物のことであり、例えば、シラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、テトラエチルシラン、プロポキシシラン、ジプロポキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメチルジシロキサン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、デカメチルシクロペンタシラザン、ウンデカメチルシクロヘキサシラザンなどが挙げられる。中でも取り扱い上の観点からヘキサメチルジシロキサン、テトラエトキシシランが好ましい。
これらの方法の中でも、本発明のガスバリア性フィルムの第2層の形成方法は、ガスバリア性と形成した層の組成再現性の観点から、混合焼結材料を使用したスパッタリング法がより好ましい。
[架橋樹脂層]
本発明のガスバリア性フィルムは、高分子フィルム基材とガスバリア層との間に架橋樹脂層を有する構成であることが好ましい。架橋樹脂層とは、架橋点を分子量20000あたりに1点以上有する架橋樹脂を主たる成分とする層である。ここで主たる成分とするとは、通常60質量%以上含有されることをいい、80質量%以上含有されることがより好ましい。高分子フィルム基材とガスバリア層との間に架橋樹脂層を有することで、高分子フィルム基材表面の凹凸を平坦化でき、ガスバリア層が偏りなく均一に成長するため、より高いガスバリア性を発現するガスバリア性フィルムとなる。
本発明のガスバリア性フィルムに架橋樹脂層を適用する場合、架橋樹脂層の厚みは、0.5μm以上、10μm以下が好ましい。架橋樹脂層の厚みが0.5μmより薄くなると、高分子フィルム基材の凹凸の影響を受けて、第1層の膜質が均一にならないため、ガスバリア性が低下する場合がある。架橋樹脂層の厚みが10μmより厚くなると、架橋樹脂層内に残留する応力が大きくなることによって高分子フィルム基材が反り、第1層にクラックが発生するため、ガスバリア性が低下する場合がある。従って、架橋樹脂層層の厚みは0.5μm以上、10μm以下が好ましく、フレキシブル性を確保する観点から1μm以上、5μm以下がより好ましい。架橋樹脂層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像から、測定することが可能である。
本発明のガスバリア性フィルムに架橋樹脂層を適用する場合、架橋樹脂層の鉛筆硬度がH以上であるとより安定したガスバリア性が発現するため好ましい。架橋樹脂層の鉛筆硬度がH以上であると、高分子フィルム基材の耐熱性及び寸法安定性がより良好となるため、第1層を形成する際、プラズマの発光熱やイオン、ラジカルの衝突による損傷を防止することができ、結果としてガスバリア性の再現性がより安定する。かかる観点から架橋樹脂層の鉛筆硬度はH以上がより好ましく、2H以上であればさらに好ましい。一方、架橋樹脂層の鉛筆硬度は、5Hを超えると、架橋樹脂層の柔軟性が低下するため、ガスバリア層形成後のハンドリングや後加工において、クラックによるガスバリア性の低下の原因となるとなる場合があるので、5H以下であることが好ましい(鉛筆硬度は、軟らかい(より硬度の低い)方から硬い(硬度が高い)方へ次のような序列で示される。(軟らかい)10B〜B、HB、F、H〜9H(硬い))。
架橋樹脂層の鉛筆硬度試験は、JIS K5600:1999に基づいて実施する。異なる硬度の鉛筆を用い、0.5kg荷重下で試験を実施し、傷の有無によって判定する。なお、架橋樹脂層の表面に第1層やガスバリア層(第1層と第2層)、さらにオーバーコート層等が積層されている場合、必要に応じてイオンエッチングや薬液処理によりこれらの層を除去した後、鉛筆硬度試験を行うことで鉛筆硬度を評価することができる。
また、本発明のガスバリア性フィルムに架橋樹脂層を適用する場合、架橋樹脂層の表面自由エネルギーが45mN/m以下であるとガスバリア性が飛躍的に向上するため好ましい。架橋樹脂層の表面自由エネルギーが45mN/m以下であると、第1層を形成する際の、ガスバリア化合物の初期成長過程において、膜の成長核となる原子や粒子が表面移動、拡散し易くなるため、第1層付近の膜質が緻密化し、結果として、層全体が緻密な構造となり、酸素および水蒸気の透過が抑制される。かかる観点から架橋樹脂層の表面自由エネルギーは、45mN/m以下であることが好ましく、さらに好ましくは40mN/m以下である。加えて、表面自由エネルギーが10mN/m以上であることが好ましい。表面自由エネルギーが10mN/m未満であると、架橋樹脂層と第1層の密着性が低下し、第1層が緻密な構造に形成されない場合がある。
架橋樹脂層の表面自由エネルギーは、表面自由エネルギーおよびその各成分(分散力、極性力、水素結合力)が既知の4種類の測定液(水、ホルムアミド、エチレングリコール、ヨウ化メチレン)を用いて、各測定液の接触角を測定し、拡張Fowkes式とYoungの式より導入される下記式(1)を用いて各成分を計算することにより得ることができる。
Figure 2015074160
なお、架橋樹脂層表面に第1層やガスバリア層(第1層と第2層)、さらにオーバーコート層等が積層されている場合、上記4種類の測定液の接触角は、架橋樹脂層を架橋樹脂層の厚みの30〜70%の範囲でイオンエッチングや薬液処理で研磨した後に測定するものとする。
本発明のガスバリア性フィルムに架橋樹脂層を適用する場合、架橋樹脂層の表面(ガスバリア性フィルムにおいては第1層との境界面)の平均表面粗さRaを1nm以下にすると積層する第1層のピンホールやクラックの発生をより低減できるので、ガスバリア性の繰り返し再現性が向上するため好ましい。架橋樹脂層の表面の平均表面粗さRaが1nmより大きくなると、凸部においては、第1層の積層後にピンホールが発生し易くなり、さらに凹凸が多い部分ではクラックが発生するため、ガスバリア性の繰り返し再現性が低下する原因となる場合がある。従って、本発明のガスバリア性フィルムに適用するに際しては、架橋樹脂層の表面の平均表面粗さRaを1nm以下にすることが好ましく、折り曲げ時のマイクロクラックなどの微細な欠陥の発生を抑制し、柔軟性を向上させる観点から0.6nm以下にすることがさらに好ましい。架橋樹脂層の表面の平均表面粗さRaは低ければ低いほど好ましく、0nmに近ければ近いほどよい。
架橋樹脂層の平均表面粗さRaは、原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。なお、架橋樹脂層表面に無機層や樹脂層が積層されている場合、X線反射率法(「X線反射率入門」(桜井健次編集)講談社p.51〜78、2009年)を使用して得られた値を架橋樹脂層の平均表面粗さRaとする。
本発明のガスバリア性フィルムに架橋樹脂層を適用する場合、用いられる架橋樹脂層の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられ、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、ナイロンやベンゾグアナミン等のポリアミド系樹脂、ABS樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の塩素元素(Cl元素)を含有する樹脂、フッ素元素(F元素)を含有する樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂、等の有機系の高分子化合物が挙げられる。これらの中でも、プラズマ熱の耐久性および鉛筆硬度の観点から、熱硬化型のアクリル系樹脂および活性線硬化型のアクリル系樹脂が好ましい。
熱硬化型のアクリル系樹脂および活性線硬化型のアクリル系樹脂としては、多官能アクリレートとアクリルオリゴマー、反応性希釈剤を含むものが好ましく例示され、その他必要に応じて光重合開始剤、光増感剤、熱重合開始剤あるいは改質剤などが添加されていてもよい。
上述したアクリル系樹脂に好適に用いられる多官能アクリレートは1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が挙げられる。かかる化合物の例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能アクリレートは、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、本発明において、多官能アクリレートには、多官能アクリレートの変性ポリマーを含んでもよい。
アクリルオリゴマーは、数平均分子量が、100〜5000であって、分子内に少なくとも1つの反応性のアクリル基が結合されたものである。骨格としてはポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、ポリエーテル系樹脂などが挙げられる。また、前記の骨格はメラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格であってもよい。
反応性希釈剤は、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
また、特に、紫外線による架橋の場合には、光エネルギーが小さいため、光エネルギーの変換や反応の促進のため、光重合開始剤および/または光増感剤を添加することが好ましい。
かかる場合に用いられる架橋樹脂層の材料の配合における多官能アクリレートの使用割合は、鉛筆硬度をH以上とする観点から、架橋樹脂層の総量に対して20〜90質量%が好ましく、より好ましくは40〜70質量%である。かかる割合が90質量%より大きくなると、硬化収縮が大きく高分子フィルム基材が反る場合があり、そのような場合にはガスバリア層にクラックが発生し、ガスバリア性が低下するなどの問題が生じる場合がある。また、多官能アクリレートの割合が20質量%より小さくなると、高分子フィルム基材と架橋樹脂層との密着強度が低下し、剥離するなどの問題が発生する場合がある。
本発明のガスバリア性フィルムに架橋樹脂層を適用する場合、架橋樹脂層を架橋させる方法として、光による硬化を適用する場合、光重合開始剤を加えることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などが挙げられる。
かかる場合、光重合開始剤の使用量は、重合性組成物100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、重合時の未反応物として残存し、ガスバリア性に影響しない範囲として、0.05〜5質量部が好ましい。
本発明のガスバリア性フィルムに架橋樹脂層を適用する場合、架橋樹脂層を形成する樹脂を含有する塗液には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚の制御を目的として、本発明の効果が損なわれない範囲において、有機溶剤を配合することが好ましい。有機溶剤を配合する好ましい範囲としては10質量%以上、90質量%以下、より好ましくは20質量%以上、80質量%以下である。
かかる場合に適用される有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエンなどの芳香族系溶剤などを用いることができる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、かかる場合に適用される塗液には、第1層との密着性の向上を目的として、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛等の無機粒子を配合することが好ましい。これらの中でもガスバリア層と強く密着するシリカ系無機粒子が好ましく、シラン化合物などで加水分解して得られるシリカ系無機粒子がさらに好ましい。無機粒子を配合する好ましい範囲としては、形成される架橋樹脂層に対して0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは、0.5質量%以上、10質量%以下である。
本発明のガスバリア性フィルムに架橋樹脂層を適用する場合には、効果が損なわれない範囲で、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤などを用いることができる。
本発明のガスバリア性フィルムに架橋樹脂層を適用する場合、架橋樹脂層の表面自由エネルギーを45mN/m以下とする方法としては、架橋樹脂層と第1層との密着性やガスバリア性が低下しない範囲で、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどの表面張力が低いシリコーン化合物を添加したり、親油性であるn−ステアリルアクリレートなどの長鎖のアルキル基をもつモノマーを添加したりする方法が挙げられる。
本発明のガスバリア性フィルムに架橋樹脂層を適用する場合、架橋樹脂層を形成する樹脂を含む塗液の塗布手段としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。中でも、本発明における架橋樹脂層の厚みである0.5μm以上、10μm以下の塗工に供する手法として、グラビアコート法が好ましい。
本発明のガスバリア性フィルムに架橋樹脂層を適用する場合、架橋樹脂層を架橋させる際に用いられる活性線としては、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線)などがあり、実用上簡便な方法として、紫外線が好ましい。また、熱による架橋させる場合に用いられる熱源としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターなどがあり、温度制御の安定性の観点から赤外線ヒーターが好ましい。
[エポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層]
本発明において、ガスバリア層の第2層上にエポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層を設けると外部からの水の浸入をさらに低減でき、第1層と第2層との密着性が向上し、使用時、とりわけ高温、高湿環境においても、さらにガスバリア性を維持することができるガスバリア性フィルムとなる。なお、オーバーコート層はガスバリア層の第2層上の少なくとも一部分に積層されていればよい。オーバーコート層を形成する手段としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
本発明のガスバリア性フィルムにオーバーコート層を適用する場合、オーバーコート層は、エポキシ系樹脂組成物を少なくとも1種含んでいればよく、また、2種以上のエポキシ系樹脂組成物や、さらにはオーバーコート層の効果を阻害しない範囲内でその他の樹脂成分や各種添加剤を含んでいてもよい。
かかる場合において、エポキシ系樹脂組成物は、ガスバリア層との密着性を向上させるために構造内に官能基を導入して変性したものが好ましい。官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、4級アンモニウム塩基、スルホン酸基、シアノ基等の極性基、またこれら極性基の一部がNa、K等のカウンターカチオンを有した状態(例えば、−ONa、−COONa、−SONaなど)の極性基、直鎖アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、ビニル・アリル・ヘキセニルなどのアルケニル基、フェニル・トリル・キシリル・スチリル・ナフチル・ビフェニルなどのアリール基、ベンジル・フェネチルなどのアラルキル基、ラクトン・オキサゾール・イミダゾールなどの複素環を含むその他芳香族基及びその開環基、メトキシ・エトキシ・イソプロポキシなどのアルコキシ基、アセトキシ基、アリルオキシカルボニル・ベンジルオキシカルボニルなどのオキシカルボニル基、イソシアネート基、メルカプト・スルフィドなどの含硫黄元素官能基、ウレイド・ケチミノなどの含窒素元素官能基、フロロアルキル基などの含ハロゲン元素官能基等が挙げられる。
本発明のガスバリア性フィルムにオーバーコート層を適用する場合、オーバーコート層は、ガスバリア性の観点から架橋構造を形成していることが好ましい。架橋構造は、エポキシ系樹脂組成物自体が架橋構造を有していても、後述するエポキシ系樹脂組成物とは別のその他の樹脂成分が架橋構造を有していてもよい。架橋構造を形成するためには、エポキシ系樹脂組成物またはその他の樹脂成分の構造内に反応性官能基を2官能以上有し、架橋反応によって形成することができる。なお、ガスバリア層との密着性向上に寄与する前記官能基のうち同時に反応性官能基となりうるものを選択してもよい。特に好ましくは、エポキシ基(グリシジル基も含む。)または重合反応に寄与する炭素−炭素二重結合基である。
かかる場合に重合反応に寄与する炭素−炭素二重結合基としては、例えば、イソプロペニル基、イソペンテニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリリデン基、アリリジン基、ビニルエーテル基や、炭素−炭素二重結合基の炭素にフッ素や塩素等のハロゲン元素が結合したもの(例えば、フッ化ビニル基、フッ化ビニリデン基、塩化ビニル基、塩化ビニリデン基等)や、炭素−炭素二重結合基の炭素にフェニル基やナフチル基等の芳香環を有する置換基が結合したもの(例えばスチリル基等)や、ブタジエニル基(例えば、CH=C(R)−C(R)=CH−、CH=C(R)−C(=CH)−(R、RはHまたはCH))のように共役ポリエン構造を有する基、等が挙げられる。これらから要求する特性や生産性等を考慮して、1種または2種以上混合して使用すればよい。
本発明のガスバリア性フィルムにオーバーコート層を適用する場合にオーバーコート層の架橋構造を形成する方法は、前記反応性官能基を反応点として重合反応することで得られる。なお、かかる場合の重合反応を本明細書において硬化と記す。硬化する方法として、加熱硬化や、紫外光、可視光、電子線等の活性電子線の照射による光硬化(以降、光硬化と記す)が挙げられる。光硬化の場合は、開始剤を含有させ、そこに活性電子線を照射することで活性種を発生させ硬化させる。ここで開始剤とは、紫外領域の光、可視領域の光、電子線等の活性電子線を吸収し、反応を開始させる活性種であるラジカル種、カチオン種、アニオン種等の活性種を生成し、化学反応を開始させる物質である。
かかる場合の架橋の程度は硬化の進行具合で調整することができ、前記開始剤を1種のみ単独または吸収波長領域の異なる2種以上を含有する、前記活性電子線の照射量を調整する、等の方法を適宜組み合わせることで調整可能である。特に、前記活性電子線の照射量を調整する方法は比較的実施しやすいため、好ましく用いられる。照射量を調整する方法は、前記活性電子線を照射するランプ等の照射体の条件(出力条件等)を変更することで比較的容易に制御することができる。他にも、前記ランプ等の照射体と非照射体との照射距離を変更したり、本発明の導電積層体の製造に際する被照射体の搬送速度を調整することで照射時間を短くすることで積算の照射量を制御することもできる。また、前記活性電子線を照射するにあたり、窒素やアルゴン等の不活性ガスにて置換した雰囲気下や酸素脱気した雰囲気下等の酸素濃度を低くした特定の雰囲気下とする方法も有効である。
本発明のガスバリア性フィルムにオーバーコート層を適用する場合にオーバーコート層に含まれるエポキシ系樹脂組成物とは別のその他の樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられ、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ナイロンやベンゾグアナミン等のポリアミド系樹脂、ABS樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の塩素元素(Cl元素)を含有する樹脂、フッ素元素(F元素)を含有する樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂、等が挙げられる。
本発明のガスバリア性フィルムにオーバーコート層を適用する場合にオーバーコート層に含め得る各種添加剤としては、例えば、有機や無機の微粒子、架橋剤、難燃剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、レベリング剤、滑り賦活剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、核剤、染料、充填剤、分散剤およびカップリング剤などが挙げられる。
かかるエポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層を形成するための材料として、(株)MORESCO(モレスコ モイスチャーカットシリーズ)、長瀬産業(株)、ナガセケムテックス(株)等の各種メーカーより市販されているものを用いることができる。
本発明のガスバリア性フィルムにオーバーコート層を適用する場合、オーバーコート層の厚みは、0.5μm以上が好ましい。オーバーコート層の厚みが0.5μmより薄くなると、高温高湿環境において外部からの水の浸入に対する遮断性が不足し、高温高湿環境における使用時にオーバーコート層とガスバリア層との密着性が経時的に低下する場合がある。なお、オーバーコート層の厚みが100μmあれば、高温高湿環境における外部からの水の浸入に対する遮断性は十分であり、第1層と第2層の密着性の低下は十分に抑制される。
本発明のガスバリア性フィルムを太陽電池や有機EL照明、有機ELディスプレイなどの電子デバイスに使用する場合においては、本発明のガスバリア性フィルムを電子デバイス内に組み込んだ後に、必要に応じてオーバーコート層と同組成の樹脂をオーバーコート層の上に充填し、見かけ上オーバーコート層と同組成の樹脂が100μmより厚く形成されていてもよい。なお、かかる場合、オーバーコート層と同組成の樹脂の厚みが過度に厚くなると内部応力によってガスバリア層にストレスがかかり、クラックや欠陥発生によるガスバリア性の低下が生じる場合がある。かかる観点から、オーバーコート層と同組成の樹脂をオーバーコート層の上に充填する場合の厚みとしては1000μm以下が好ましい。
以下、本発明を実施例に基づき、具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。評価n数は、特に断らない限り、n=5とし平均値を求めた。
(1)各層の厚み
断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム((株)日立製作所製FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、各層の各厚みを測定した。
(2)[1−A]層の組成
[1−A]層の組成分析はICP発光分光分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SPS4000)により行った。試料中の亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子の含有量を測定し、原子数比に換算した。なお、酸素原子は亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子が、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)として存在する仮定で求めた計算値とした。
(3)[1−B]層の組成
[1−B]層の組成分析はICP発光分光分析(セイコー電子工業(株)製、SPS4000)により行い、この値をもとにさらにラザフォード後方散乱法(日新ハイボルテージ(株)製AN−2500)を使用して、各元素を定量分析し硫化亜鉛と二酸化ケイ素の組成比を求めた。
(4)第1層([1−A]層、[1−B]以外)、第2層の組成
第1層はX線光電子分光法(XPS法)を用いることにより、酸素原子に対する含有金属または非金属原子の原子数比を測定し、必要に応じて上記(2)および/または(3)の測定も併用した。
第2層はX線光電子分光法(XPS法)を用いることにより、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比(O/Si比率)を測定した。
測定条件は下記の通りとした。
・装置:Quantera SXM (PHI社製)
・励起X線:monochromatic AlKα1,2
・X線径100μm
・光電子脱出角度:10° 。
(5)鉛筆硬度試験
架橋樹脂層表面の鉛筆硬度を、鉛筆硬度試験機HEIDON−14(新東科学(株))を用いて、JIS K5600−5−4:1999に従い、n=1にて、鉛筆硬度を測定した。
(6)表面自由エネルギー
架橋樹脂層表面について、表面自由エネルギーおよびその各成分(分散力、極性力、水素結合力)が既知の4種類の測定液(水、ホルムアミド、エチレングリコール、ヨウ化メチレン)を用い、23℃の温度、相対湿度65%の条件下で接触角計CA−D型(協和界面科学(株)製)にて、各液体の試料上での接触角を測定した。各測定液毎に、n=5個で接触角を測定し、平均値を求め、この値を、拡張Fowkes式とYoungの式より導入される下記式(1)に代入して各成分を計算することにより得た。
Figure 2015074160
(7)平均表面粗さRa
原子間力顕微鏡を用いて、以下の条件で架橋樹脂層表面について測定した。
システム:NanoScopeIII/MMAFM(デジタルインスツルメンツ社製)
スキャナ:AS−130(J−Scanner)
プローブ:NCH−W型、単結晶シリコン(ナノワールド社製)
走査モ−ド:タッピングモ−ド
走査範囲:10μm×10μm
走査速度:0.5Hz
測定環境:温度23℃、相対湿度65%、大気中。
(8)水蒸気透過率
温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cmの条件で、英国、テクノロックス(Technolox)社製の水蒸気透過率測定装置(機種名:DELTAPERM(登録商標))を使用して下記条件の高温高湿保存前後の水蒸気透過率を測定した。サンプル数は1水準当たり2検体とし、測定回数は同一サンプルについて各10回とし、20回の平均値を水蒸気透過率とした。高温高湿保存後の水蒸気透過率を高温高湿保存前の水蒸気透過率で除した値を変化比とした。
<高温高湿保存条件>
・使用装置:エスペック(株)製環境試験器(型式:PR−2KTH)
・温度: 85℃
・湿度: 85%RH
・保存時間:500時間。
(9)密着性評価
上記(8)項と同条件にて高温高湿保存した後、JIS K5600−5−6:1999に準拠して、碁盤目テープ剥離試験を行った。まず、ガスバリア層またはオーバーコート層を形成した側の表面に10mm×10mm中に1マスが1mm×1mmの切れ込みを計100マス形成し試験面とした。次いで、試験面の表面にセロハンテープ(「CT24」、ニチバン(株)製)を用いて貼り付け、指の腹で密着させた後に90°方向に引っ張って剥離した。判定は100マスの内、剥離しないマス目の数が90マス以上の場合を合格とし密着性があると判断した。90マス未満の場合を不合格とし密着性なしと判断した。
(実施例1)
(第1層の形成)
高分子フィルム基材1として、厚み188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標)U35:一方の面に易接着層が形成され、もう一方の面はポリエチレンテレフタレートが露出している)を用いた。
図4に示す構造の巻き取り式のスパッタリング装置(以降スパッタ装置と略す)を使用し、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムで形成された混合焼結材であるスパッタターゲットをスパッタ電極12に設置し、アルゴンガスおよび酸素ガスによるスパッタリングを実施し、前記高分子フィルム基材1のポリエチレンテレフタレートが露出している面に、第1層として[1−A]層を膜厚200nm狙いで設けた。
具体的な操作は以下のとおりである。まず、スパッタ電極12に酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの組成質量比が77/20/3で焼結されたスパッタターゲットを設置したスパッタ装置5の巻き取り室6の中で、巻き出しロール7に前記高分子フィルム基材1の第1層を設ける側の面がスパッタ電極12に対向するようにセットし、巻き出し、ガイドロール8,9,10を介して、クーリングドラム11に通した。真空度2×10−1Paとなるように酸素ガス分圧10%としてアルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、直流パルス電源により投入電力4000Wを印加することにより、アルゴン・酸素ガスプラズマを発生させ、スパッタリングにより前記高分子フィルム基材1の表面上に[1−A]層を形成した。厚みは、フィルム搬送速度により調整した。その後、ガイドロール13,14,15を介して巻き取りロール16に巻き取った。
この[1−A]層の組成は、Zn原子濃度が27.0atom%、Si原子濃度が13.6atom%、Al原子濃度が1.9atom%、O原子濃度が57.5atom%であった。であった。
(第2層の形成)
図4に示すスパッタ装置を使用し、二酸化ケイ素と炭化ケイ素で形成された混合焼結材であるスパッタターゲットをスパッタ電極12に設置し、アルゴンガスプラズマによるスパッタリングを実施し、第1層の形成された面に第2層を膜厚150nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
具体的な操作は以下のとおりである。まず、スパッタ電極12に二酸化ケイ素/炭化ケイ素の組成質量比が70.0/30.0で焼結されたスパッタターゲットを設置したスパッタ装置5の巻き取り室6の中で、巻き出しロール7に前記高分子フィルム基材1の第1層を設けた面がスパッタ電極12に対向するようにセットし、巻き出し、ガイドロール8,9,10を介して、クーリングドラム11に通した。真空度2×10−1Paとなるようにアルゴンガスを導入し、高周波電源により投入電力500Wを印加することにより、アルゴンガスプラズマを発生させ、スパッタリングにより前記[1−A]層の表面上に第2層を形成した。厚みは、フィルム搬送速度により調整した。その後、ガイドロール13,14,15を介して巻き取りロール16に巻き取った。
この第2層の組成は、Si原子濃度が38.5atom%、O原子濃度が50.3atom%、C原子濃度が11.2atom%、であった。
以上のようにして得られたガスバリア性フィルムについて、評価結果を表1に示す。
(実施例2)
(第1層の形成)
高分子フィルム基材1として、厚み188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標)U35:一方の面に易接着層が形成され、もう一方の面はポリエチレンテレフタレートが露出している)を用いた。
図4に示す構造のスパッタ装置を使用し、硫化亜鉛と二酸化ケイ素で形成された混合焼結材であるスパッタターゲットをスパッタ電極12に設置し、アルゴンガスによるスパッタリングを実施し、前記高分子フィルム基材1のポリエチレンテレフタレートが露出している面に、第1層として[1−B]層を膜厚200nm狙いで設けた。
具体的な操作は以下のとおりである。まず、スパッタ電極12に硫化亜鉛/二酸化ケイ素のモル組成比が80/20で焼結されたスパッタターゲットを設置したスパッタ装置5の巻き取り室6の中で、巻き出しロール7に前記高分子フィルム基材1をセットし、巻き出し、ガイドロール8,9,10を介して、クーリングドラム11に通した。真空度2×10−1Paとなるようにアルゴンガスを導入し、高周波電源により投入電力500Wを印加することにより、アルゴンガスプラズマを発生させ、スパッタリングにより前記高分子フィルム基材1の表面上に[1−B]層を形成した。厚みは、フィルム搬送速度により調整した。その後、ガイドロール13,14,15を介して巻き取りロール16に巻き取った。
[1−B]層の組成は、硫化亜鉛のモル分率が0.86であった。
(第2層の形成)
実施例1と同様にして、スパッタリング法により前記[1−B]層上に第2層を150nm狙いで形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例3)
(第1層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより高分子フィルム基材の片面に第1層として[1−A]層を200nmとなるように形成した。
(第2層の形成)
実施例1において、二酸化ケイ素/炭化ケイ素の組成質量比が90.0/10.0で焼結されたスパッタターゲットを使用して、第1層の形成された面に第2層を膜厚150nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
この第2層の組成は、Si原子濃度が33.3atom%、O原子濃度が62.1atom%、C原子濃度が4.6atom%、であった。
(実施例4)
(第1層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより高分子フィルム基材の片面に第1層として[1−A]層を200nm狙いで設けた。
(第2層の形成)
実施例1において、二酸化ケイ素/炭化ケイ素の組成質量比が50.0/50.0で焼結されたスパッタターゲットを使用して、第1層の形成された面に第2層を膜厚150nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
この第2層の組成は、Si原子濃度が41.1atom%、O原子濃度が33.4atom%、C原子濃度が25.5atom%、であった。
(実施例5)
(第1層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより高分子フィルム基材の片面に第1層として[1−A]層を200nm狙いで設けた。
(第2層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより第1層の形成された面に第2層を膜厚150nm狙いで設けた。
(エポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層の形成)
エポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層の原料として、モレスコ モイスチャーカット WB90US(株)MORESCO)を用意した。次いで、前記第2層上に前記原料を塗布後、メタルハライドランプにて紫外線を2J/cm照射し硬化させ、さらにその後80℃で1時間加熱し後硬化させ、架橋構造を有する厚み1μmのオーバーコート層を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例6)
(架橋樹脂層の形成)
高分子フィルム基材1として、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商品名:“ルミラー”(登録商標)U48))を用いた。
架橋樹脂層形成用の塗工液として、ポリエステルアクリレート(日本化薬(株)製FOP−1740)100質量部にシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング(株)製SH190)0.2質量部を添加し、トルエン50質量部、MEK50質量部で希釈した塗工液2を調製し、塗工液2をマイクログラビアコーター(グラビア線番200UR、グラビア回転比100%)で塗布、60℃で1分間乾燥後、紫外線を1J/cm照射、硬化させ、厚み5μmの架橋樹脂層を設けた。
架橋樹脂層を形成したフィルムから縦100mm、横100mmの試験片を切り出し、架橋樹脂層の鉛筆硬度試験、表面自由エネルギー、平均表面粗さの評価を実施した。その結果、架橋樹脂層の鉛筆硬度が3H、表面自由エネルギーが25.5(mN/m)、平均表面粗さが0.6nmであった。
(第1層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより架橋樹脂層の形成された面に第1層として[1−A]層を200nm狙いで設けた。
(第2層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより第1層の形成された面に第2層を膜厚150nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例7)
(第1層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより高分子フィルム基材の片面に第1層として[1−A]層を200nm狙いで設けた。
(第2層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより第1層の形成された面に第2層を膜厚50nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例8)
(第1層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより高分子フィルム基材の片面に第1層として[1−A]層を200nm狙いで設けた。
(第2層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより第1層の形成された面に第2層を膜厚300nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例9)
(架橋樹脂層の形成)
実施例6と同様にしてマイクログラビアコーターにより、高分子フィルム基材の片面に厚み5μmの架橋樹脂層を設けた。
(第1層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより架橋樹脂層の形成された面に第1層として[1−A]層を200nm狙いで設けた。
(第2層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより第1層の形成された面に第2層を膜厚150nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
(エポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層の形成)
実施例5と同様にして、エポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層を厚み1μm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例10)
(架橋樹脂層の形成)
実施例6と同様にしてマイクログラビアコーターにより、高分子フィルム基材の片面に厚み5μmの架橋樹脂層を設けた。
(第1層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより架橋樹脂層の形成された面に亜鉛を含む第1層として[1−A]層を100nm狙いで設けた。
(第2層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより第1層の形成された面に第2層を膜厚300nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
(エポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層の形成)
実施例5と同様にして、エポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層を厚み1μm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例1)
(第1層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより高分子フィルム基材の片面に第1層として[1−A]層を200nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例2)
(架橋樹脂層の形成)
実施例6と同様にしてマイクログラビアコーターにより、高分子フィルム基材の片面に厚み5μmの架橋樹脂層を設けた。
(第1層の形成)
実施例1と同様にして架橋樹脂層の形成された面に第1層として[1−A]層を200nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例3)
(第1層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより高分子フィルム基材の片面に第1層として[1−A]層を200nm狙いで設けた。
(第2層の形成)
実施例1において、純度99.99質量%の二酸化ケイ素からなるスパッタターゲットを使用して、第1層の形成された面に第2層としてSiO層を膜厚150nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
この第2層の組成は、Si原子濃度が30.6atom%、O原子濃度が69.4atom%であった。
(比較例4)
(架橋樹脂層の形成)
実施例6と同様にしてマイクログラビアコーターにより、高分子フィルム基材の片面に厚み5μmの架橋樹脂層を設けた。
(第1層の形成)
実施例1と同様にして架橋樹脂層の形成された面に第1層として[1−A]層を200nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
(第2層の形成)
比較例3と同様にしてスパッタリングにより第1層の形成された面に第1層として第2層としてSiO層を150nm狙いで設けた。
(エポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層の形成)
実施例5と同様にして、エポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層を厚み1μm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例5)
(第1層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより高分子フィルム基材の片面に第1層として[1−A]層を200nm狙いで設けた。
(第2層の形成)
実施例1において、二酸化ケイ素/炭化ケイ素の組成質量比が30.0/70.0で焼結されたスパッタターゲットを使用して、第1層の形成された面に第2層を膜厚150nm狙いで設け、ガスバリア性フィルムを得た。
この第2層の組成は、Si原子濃度が43.2atom%、O原子濃度が22.2atom%、C原子濃度が34.6atom%、であった。
(比較例6)
(架橋樹脂層の形成)
実施例6と同様にしてマイクログラビアコーターにより、高分子フィルム基材の片面に厚み5μmの架橋樹脂層を設けた。
(第1層の形成)
実施例1において、純度99.99質量%の酸化チタンからなるスパッタターゲットを使用して、架橋樹脂層の形成された面に第1層としてTiO膜を膜厚200nm狙いで設けた。
この第1層の組成は、Ti原子濃度が38.5atom%、O原子濃度が61.5atom%であった。
(第2層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより第1層の形成された面に第2層を膜厚150nm狙いで設けた。
(比較例7)
(架橋樹脂層の形成)
実施例6と同様にしてマイクログラビアコーターにより、高分子フィルム基材の片面に厚み5μmの架橋樹脂層を設けた。
(第1層の形成)
実施例1において、純度99.99質量%の酸化アルミニウムからなるスパッタターゲットを使用して、架橋樹脂層の形成された面に第1層としてAl膜を膜厚200nm狙いで設けた。
この第1層の組成は、Al原子濃度が37.8atom%、O原子濃度が62.2atom%であった。
(第2層の形成)
実施例1と同様にしてスパッタリングにより第1層の形成された面に第2層を膜厚150nm狙いで設けた。
Figure 2015074160
本発明のガスバリア性フィルムは、酸素ガス、水蒸気等に対するガスバリア性に優れているので、例えば、食品、医薬品などの包装材および薄型テレビ、太陽電池などの電子デバイス部材として有用に用いることができるが、用途がこれらに限定されるものではない。
1 高分子フィルム基材
2 ガスバリア層
2a 亜鉛を含む第1層
2b ケイ素および炭素を含む第2層
3 架橋樹脂層
4 エポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層
5 スパッタ装置
6 巻き取り室
7 巻き出しロール
8、9、10 巻き出し側ガイドロール
11 クーリングドラム
12 スパッタ電極
13、14、15 巻き取り側ガイドロール
16 巻き取りロール

Claims (9)

  1. 高分子フィルム基材の少なくとも片側に、少なくとも亜鉛を含む第1層とケイ素および炭素を含む第2層とを高分子フィルム基材からこの順に接して配されたガスバリア層を有し、前記第2層はX線光電子分光法により測定される炭素(C)原子濃度が1.5〜30.0atom%であるガスバリア性フィルム。
  2. 前記ガスバリア層の第1層が、以下の1−A層または1−B層のいずれかである請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
    1−A層:酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層
    1−B層:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる層
  3. 前記ガスバリア層の第2層が、二酸化ケイ素と炭化ケイ素の共存相からなる層である請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記ガスバリア層の第1層が1−A層であり、かつICP発光分光分析法により測定される亜鉛(Zn)原子濃度が20.0〜40.0atom%、ケイ素(Si)原子濃度が5.0〜20.0atom%、アルミニウム(Al)原子濃度が0.5〜5.0atom%、酸素(O)原子濃度が35.0〜70.0atom%である組成により構成されたものである請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記ガスバリア層の第1層が1−B層であり、かつ硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9である組成により構成されたものである請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  6. 前記ガスバリア層の第2層が、X線光電子分光法により測定されるケイ素(Si)原子濃度が30.0〜45.0atom%、炭素(C)原子濃度が1.5〜20.0atom%、酸素(O)原子濃度が40.0〜60.0atom%である組成により構成されたものである請求項3〜5のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  7. 前記ガスバリア性フィルムが、高分子フィルム基材とガスバリア層との間に架橋樹脂層を有する請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  8. 前記架橋樹脂層は、鉛筆硬度がH以上かつ表面自由エネルギーが45mN/m以下である請求項7に記載のガスバリア性フィルム。
  9. 前記ガスバリア層の第2層の第1層と反対側の面にエポキシ系樹脂組成物を含むオーバーコート層を有する請求項7に記載のガスバリア性フィルム。
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