JP5093391B2 - ガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルム、このガスバリア性フィルムを用いた装置、並びにガスバリア性フィルムの製造方法に関する。
ガスバリア性フィルムは、有機EL素子、液晶表示素子、薄膜トランジスタ、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパー等の装置に対し、それらの性能を劣化させる酸素又は水蒸気等の化学成分の透過を防ぐために好ましく適用されている。特に最近の電子デバイスの高性能化と高品質化に伴い、ガスバリア性フィルムにおいても高いガスバリア性が求められている。
近年のガスバリア性フィルムには、プラスチックフィルムと、そのプラスチックフィルム上に設けられた有機層と、その有機層上に設けられた無機層とで構成されているものがある。有機層は、無機層の下に設けられてガスバリア性を高めるという役割を担うとされている。
特許文献1は、プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に有機層と無機層を含むバリア層を有するガスバリアフィルムであって、バリア層が有機層、膜密度が1.7以上である第一無機層、および第一無機層よりも膜密度が0.5〜1.5高い第二無機層から構成されているガスバリアフィルムに関する発明が記載されている。
同文献によれば、有機層と無機層を含むバリア層を有するガスバリアフィルムにおいて、有機層とこの無機層との間に無機層とは物性が異なる他の無機下地層を導入することにより、その上層に形成される無機層のバリア性が高まるとのことである。
同文献において有機層については以下の記載がある。まず、ガスバリアフィルムの有機層は硬化性樹脂で構成されていることが好ましいとされている。また、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂及び放射線硬化性樹脂に、さらにポリマー分子との相互作用を強めるために、アルコキシシランの加水分解物やシランカップリング剤を混合してもよいとされている。シランカップリング剤としては、一方にメトキシ基、エトキシ基、アセトキシ基等の加水分解可能な反応基を持ち、もう一方にはエポキシ基、ビニル基、アミノ基、ハロゲン基、メルカプト基を有するものが好ましく、この場合、特に好ましくは主成分樹脂に固定するため、同じ反応基を持つビニル基を有するものが好ましく、例えば、信越化学工業(株)のKBM−503、KBM−803、日本ユニカー(株)製のA−187などが用いられる、とされている。そして、シランカップリング剤の添加量は、0.2〜3質量%であることが好ましい、とされている。
また、同文献の実施例においては、有機層の形成の際にシランカップリング剤として信越化学工業(株)製、KBM−503を0.5g(2.4質量%)用いている。
特開2009−95989号公報(請求項1、第0009、0022〜0024、0066段落)
最近の高性能化の要請はガスバリア性フィルムに対しても同様であり、必要十分なガスバリア性を確保した上で、熱や湿度に対する耐久性(耐湿熱性)を高くすることが望まれている。具体的には、本発明者の検討によれば、高温・多湿の環境下にガスバリア性フィルムを保持した場合に無機層が有機層から剥離し、ガスバリア性が大きく悪化するという新たな課題が見出された。ガスバリア性フィルムは、上記のとおり多種多様な用途に使用されつつ今度もその用途が拡大すると予想され、種々の過酷環境下に保持されることが想定される。したがって、ガスバリア性フィルムの耐湿熱性を改善することは、実使用可能なガスバリア性フィルムを得る上で重大な課題となっている。
本発明は、上記課題を解決したものであって、その目的は、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムを提供することにある。本発明の他の目的は、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムを用いた装置を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、上記ガスバリア性フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明者が上記課題につき鋭意検討した結果、同課題解決のためには、有機層と無機層との接着性の改善が重要であることを見出した。そして、接着性の改善のために、有機層中にシリコンを有する基が共有結合をしているアクリル系樹脂を含有させるとともに、無機層と接する有機層の面に上記シリコンを有する基に由来するシリコンを所定量以上存在させることで、良好なガスバリア性を達成しつつも耐久性(耐湿熱性)が大きく改善されることを見出した。
上記課題を解決するための本発明に係るガスバリア性フィルムは、基材と、該基材上に設けられた有機層と、該有機層上に設けられた無機層とを有し、シリコンを有する基が共有結合をしているアクリル系樹脂が前記有機層に含有され、前記無機層と接する前記有機層の面に前記シリコンが0.1原子%以上存在することを特徴とする。
この発明によれば、シリコンを有する基が共有結合をしているアクリル系樹脂が有機層に含有され、無機層と接する有機層の面に前記シリコンが0.1原子%以上存在するので、シリコンを有する基が強く結合したアクリル系樹脂の前記シリコンが、有機層と無機層との界面(有機層表面)に十分に存在してシリコンと無機層の表面とが反応して結合するようになり、その結果、有機層と無機層との密着性が改善され、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムを提供することができる。
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、前記無機層と接する前記有機層の面に存在する前記シリコンが0.25原子%以下であることが好ましい。
この発明によれば、無機層と接する有機層の面に存在するシリコンの量を0.25原子%以下とするので、有機層表面に存在するシリコン量を適正な範囲とすることができるようになり、その結果、ガスバリア性フィルムのガスバリア性を高いレベルで維持しやすくなる。
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、前記有機層中のシリコンの含有量が0.9質量%以上、2.5質量%以下であることが好ましい。
この発明によれば、有機層中のシリコンの含有量が0.9質量%以上、2.5質量%以下であるので、有機層中のシリコンの含有量を適正な範囲とすることができるようになり、その結果、有機層と無機層との密着性が改善され、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムがより得られやすくなる。
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、前記シリコンを有する基が下記内部構造式(1)又は(2)を有することが好ましい。式(2)中、Rは水素原子又は炭素数3以下のアルキル基を示す。
Figure 0005093391
Figure 0005093391
この発明によれば、シリコンを有する基が上記内部構造式(1)又は(2)を有するので、有機層と無機層との密着性が改善され、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムがより得られやすくなる。
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、前記アクリル系樹脂が下記内部構造式(3)を有することが好ましい。式(3)中、Rは水素原子又は炭素数3以下のアルキル基を示す。
Figure 0005093391
この発明によれば、アクリル系樹脂が上記内部構造式(3)を有するので、有機層と無機層との密着性が改善され、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムがより得られやすくなる。
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、前記アクリル系樹脂が、下記内部構造式(4)をとることにより前記無機層と結合していることが好ましい。式(4)中、Rは水素原子又は炭素数3以下のアルキル基を示し、Mは無機層の構成元素を示す。
Figure 0005093391
この発明によれば、アクリル系樹脂が、上記内部構造式(4)をとることにより無機層と結合しているので、有機層と無機層とがより強く密着する傾向となり、その結果、有機層と無機層との密着性がより改善されたガスバリア性フィルムがより得られやすくなる。
上記課題を解決するための本発明に係る装置は、上記本発明に係るガスバリア性フィルムを用いる表示装置又は発電装置であることを特徴とする。
この発明によれば、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムを用いたので、ガスバリア性に優れ耐久性が要求される装置を提供できる。
上記課題を解決するための本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法は、基材上に有機層を形成する工程と、前記有機層上に無機層を形成する工程と、を有し、前記有機層を形成する工程における有機層の形成が、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物及びエチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤を含有するとともに、前記エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤が固形分全質量に対して10質量%以上25質量%以下含有されている有機層形成用塗布液を用いて行われることを特徴とする。
この発明によれば、有機層を形成する工程における有機層の形成が、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物及びエチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤を含有するとともに、エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤が固形分全質量に対して10質量%以上25質量%以下含有されている有機層形成用塗布液を用いて行われるので、重合性化合物とシランカップリング剤との結合が強くなるとともに、多く含有されたシランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基が有機層表面に存在してこの基と無機層の表面とが反応して結合するようになり、その結果有機層と無機層との密着性が改善され、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムを製造できるガスバリア性フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明によれば、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムを提供することができる。また、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムを用いた装置を提供することができる。さらに、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムを製造できるガスバリア性フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明に係るガスバリア性フィルムの一例を示す模式的な断面図である。 本発明に係るガスバリア性フィルムの他の一例を示す模式的な断面図である。 有機層中のシリコンの含有量と、耐湿熱試験後の水蒸気透過率との関係をグラフにした結果である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[ガスバリア性フィルム及びガスバリア層]
本発明に係るガスバリア性フィルム10は、図1及び図2に示すように、基材1と、基材1上に設けられた有機層2と、その有機層2上に設けられた無機層3とを有する。そして、シリコンを有する基が共有結合をしているアクリル系樹脂が有機層2に含有され、無機層3と接する有機層2の面に前記シリコンが0.1原子%以上存在する。これにより、シリコンを有する基が強く結合したアクリル系樹脂の前記シリコンが、有機層と無機層との界面(有機層表面)に十分に存在してシリコンと無機層の表面とが反応して結合するようになり、その結果、有機層と無機層との密着性が改善され、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムを提供することができる。
ここで、無機層3と接する有機層2の面とは、有機層2と無機層3との界面における有機層2側の面をいう。同面におけるシリコン量の分析方法については後述する。
なお、有機層2と無機層3(これら2層で「ガスバリア層4」ともいう。)は、図1に示すように基材1の一方の面S1にその順で少なくとも設けられるが、図2に示すように他方の面S2にも有機層2’と無機層3’と(これら2層で「ガスバリア層4’」ともいう。)をその順で設けてもよい。また、他方の面S2には、図1に示すように有機層2’も無機層3’も設けなくてよく、また、有機層2’を設けずに無機層3’を設けてもよい。他方の面S2に無機層3’を設け又はガスバリア層4’(有機層2’と無機層3’)を設けてガスバリア性をさらに高めてもよい。
ガスバリア性フィルム10及びガスバリア層4における良好なガスバリア性及び耐久性の達成は、以下の検討経緯で得られた知見によるものである。
具体的には、本発明者は、ガスバリア性フィルムの層構成について鋭意検討を行う過程で、有機層を用いない場合や従来の有機層を用いた場合には、製造直後(初期)のガスバリア性や有機層と無機層との接着性が良好であっても、経時的にガスバリア性フィルムの劣化が進み、無機層が有機層から剥離してガスバリア性が悪化するという問題があることを見出した。具体的には、ガスバリア性フィルムの耐久性を加速的に試験するために、ガスバリア性フィルムを高温高湿環境下で保持する(耐湿熱試験をする)と、上記問題が顕著に発生することがわかった。そして、この問題の解決のために、本発明者は、無機層と有機層との密着性の向上が必須であると考察し検討をさらに行ったところ、以下の知見を見出した。
まず、有機層を硬化型の重合性化合物を用いてアクリル系樹脂で形成した場合に、このアクリル系樹脂と結合しつつも無機層とも化学結合するシランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基を有機層と無機層との界面に存在させることで、有機層と無機層との密着性を確保しやすくなることがわかった。シランカップリング剤は、有機物と珪素から構成される化合物で、分子中に、加水分解により水酸基となって無機材料と化学結合する反応基(以下、「加水分解性基」という場合がある。)と、有機材料と化学結合する反応基(以下、「反応性官能基」という場合がある。)の2種以上の異なった反応基を有する。そのため通常では非常に結びつけにくい有機材料と無機材料とを結びつける機能を発現する。
もっとも、シランカップリング剤は、上記のとおり有機層と無機層との界面で機能を発現するものの、分子量が100〜300程度の低分子材料であるため、有機層中で移動しやすい傾向にある。このため、どのような種類のシランカップリング剤でも適用可能というわけではなく、採用するシランカップリング剤の構造を検討しないと、製造直後(初期状態)では良好な密着性を有していても、経時的には、シランカップリング剤又はシランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基が有機層と無機層との界面から有機層中に潜り込む現象によるものと思われる密着性の低下が発生することもわかった。
そこで、本発明者は、有機層中でシランカップリング剤又はシランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基が自由に動き回るのを抑制して、時間が経過してもシランカップリング剤又はシランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基が有機層と無機層との界面に留まるようにするためには、アクリル系樹脂と、シランカップリング剤の反応性官能基とを共有結合させることが必要であると考えた。このような共有結合を形成させるための一例として、アクリル系樹脂を形成する重合性化合物はエチレン性不飽和二重結合を有するので、シランカップリング剤の反応性官能基もエチレン性不飽和二重結合を有する官能基とする方法を挙げることができる。これにより、紫外線や熱によりシランカップリング剤の反応性官能基が重合性化合物と共に反応して、有機層中に共有結合として強固に取り込まれやすくなる。
このように、シランカップリング剤の反応性官能基とアクリル系樹脂とを共有結合させることにより、シリコンを有する基が経時で有機層中へ潜り込む等の現象が発現しにくく、有機層と無機層との界面に存在し続けやすくなり、初期の良好なガスバリア性及び密着性は確保できた。しかし、それでもなお、経時では、無機層が有機層から剥離しガスバリア性が大きく低下するという問題は十分には解決されなかった。
このため、さらに検討を行った結果、有機層と無機層との界面に存在させるシリコンを有する基(より具体的には、アクリル系樹脂と共有結合したシランカップリング剤の加水分解性基)の絶対量(無機材料との結合反応点)を多くすることで経時での密着性が改善されることを見出した。具体的には、シリコンを有する基に含まれるシリコンを無機層と接する有機層の面に0.1原子%以上存在させると、経時での密着性が大きく改善されることがわかった。以上の検討を経て、本発明者は本発明を完成させたのである。
ところで、経時での密着性改善のためには上記シランカップリング剤を含有させればさせるほど好ましいものの、含有量が多すぎるとシランカップリング剤自体にバリア発現性は無いことに起因すると考えられるガスバリア性の低下が観察される傾向となる。そこで、無機層と接する有機層の面に存在するシリコン量は0.25原子%以下であることが好ましい。これにより、有機層表面に存在するシリコン量を適正な範囲とすることができるようになり、その結果、ガスバリア性フィルムのガスバリア性を高いレベルで維持しやすくなる。
ここで、無機層と接する有機層の面に存在するシリコン量の分析方法の具体例を説明する。まず、ガスバリア性フィルムを製造する前であれば以下の方法が挙げられる。すなわち、基材上に有機層を形成したサンプルを作成し、有機層の表面をESCA(X線光電子分光法)分析して、有機層の表面(この面が無機層と接する有機層の面となる。)に存在するシリコンの量(原子%)を求める分析方法である。次に、製造されたガスバリア性フィルムを用いる場合には、例えば以下の2つの方法が考えられる。第1は、無機層を酸でエッチング除去して有機層の表面を露出させて同表面に対してESCA分析をする方法である。エッチングの方法は無機層の材料によって適宜選択され特に制限されないが、例えば無機層が酸化珪素から形成される場合にはフッ酸によるエッチングを行えばよく、無機層が亜鉛を含む場合には塩酸によるエッチングを行えばよい。第2は、ガスバリア性フィルムの断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察して、無機層と有機層との境界及び無機層の厚さを特定した後、ESCA装置を用いて無機層の厚さ分だけアルゴンエッチングを行って、有機層表面を露出させてシリコンの存在量(原子%)をESCA分析する方法である。両者について、優先順位をつけるならば、第1の方法(エッチングによる方法)が優先され、第1の方法が難しい場合に第2の方法(断面のTEM観察による方法)が用いられる。これは、第1の方法(エッチングによる方法)は、容易に実施ができるためである。もっとも、無機層の材料によってはエッチングができない、もしくは無理にエッチングすると有機層までエッチングされる場合があるので、この点については注意する必要がある。第1の方法(エッチングによる方法)が難しい場合には第2の方法(断面のTEM観察による方法)を用いるが、第2の方法(断面のTEM観察による方法)は、ESCAで掘り下げる際の装置条件を慎重に選ぶ必要がある。
また、シランカップリング剤の反応性官能基(シリコンを有する基)と、アクリル系樹脂とが共有結合しているか否かは、以下の2つの方法を用いることで確認することができる。
第1の方法は、有機層の表面を洗浄する方法である。例えば、有機層の表面に対して純水による超音波洗浄を行うと、遊離シリコンのようなアクリル系樹脂と結合していない(乗っかっているだけの)シリコンが除去できる。そして、洗浄後にESCAによる表面元素分析を行った結果、消失したシリコン(シリコンを有する基)は遊離シリコンであってアクリル系樹脂と共有結合をしていないことになり、残留するシリコン(シリコンを有する基)は、アクリル系樹脂と共有結合していることになる。
第2の方法は、ESCAによる化学結合状態を分析する方法である。シリコンを有する基とアクリル系樹脂とがイオン結合をしている場合、通常は上記第1の方法の洗浄で除去できるものの、結合状態によっては除去できない場合もあり得る。この場合には、ESCAによる化学結合状態の分析を行う。具体的には、ESCAによる各元素のピーク位置が結合状態に応じて数eVの範囲で変化するので、この現象(化学シフト)を利用して、原子の化学結合状態に関する知見を得る。そして、結合元素種類や、イオン・共有結合の知見が得られるために、共有結合とイオン結合とを切り分けることが可能になる。
次に、ガスバリア性フィルム10及びガスバリア層4の構成要素をさらに詳しく説明する。
<基材>
基材1の材質は特に制限はないが、汎用性、工業性の見地から、プラスチック材料で形成された基材(以下、「プラスチック基材」という場合がある。)を用いることが好ましい。プラスチック材料としては、実使用の見地から、ポリエステル系樹脂を好ましく挙げることができる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、これらの共重合体、及びポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等を挙げることができる。ポリエステル系樹脂のうちでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びこれらの共重合体が好ましい。特に好ましくは、プラスチック基材1をポリエチレンナフタレートフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムとすることである。
プラスチック基材1の材質としてポリエステル系樹脂を適用する場合、その全てがポリエステル系樹脂からなるフィルム状基材であってもよいし、有機層2が形成される側(図1における片面S1又は図2における両面S1,S2)に少なくともポリエステル系樹脂層が形成されているフィルム状積層基材であってもよい。このフィルム状積層基材において、有機層2が形成されるポリエステル系樹脂層以外の層は、ポリエステル系樹脂層でなくてもよい。ポリエステル系樹脂層以外の層の種類の選定にあたっては、耐熱性、熱膨張、光透過性等を考慮して各種の樹脂層が任意に選定される。
プラスチック基材1の厚さは特に限定されないが、10μm以上500μm以下程度であることが好ましい。
プラスチック基材1の表面は、必要に応じて、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、加熱処理、薬品処理、及び易接着処理等の表面処理を行ってもよい。こうした表面処理の具体的な方法は従来公知のものを適宜用いることができる。また、有機層2を直接形成しない側の面には、他の機能層を設けてもよい。機能層の例としては、マット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
<有機層>
有機層2は、基材(プラスチック基材)1上に設けられて後述する無機層3とともにガスバリア層4を構成する。有機層2については、一部の説明はすでに記載したとおりであるが、以下さらに詳しく説明する。なお、ガスバリア性フィルム10は、プラスチック基材1と有機層2とが接している例であるが、本発明において、両者は必ずしも接している必要はなく、必要に応じ、その間に他の層を設けてもよい。
有機層2中のシリコンの含有量は、0.9質量%以上、2.5質量%以下であることが好ましい。これにより、有機層2中のシリコンの含有量を適正な範囲とすることができるようになり、その結果、有機層2と無機層3との密着性が改善され、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルム10がより得られやすくなる。シリコンの含有量は、本発明の効果をより確実に得るという見地から、0.92質量%以上が好ましく、0.95質量%以上が特に好ましい。
有機層2中のシリコンの含有量は、例えば、原料として用いるシランカップリング剤の量から算出することができるし、またESCAによって有機層の深さ方向の組成分析を行って各断面での組成を積算することによって分析することもできる。
有機層2において、シリコンを有する基が下記内部構造式(1)又は(2)を有することが好ましい。これにより、有機層2と無機層3との密着性が改善され、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルム10がより得られやすくなる。式(2)中、Rは水素原子又は炭素数3以下のアルキル基を示す。
Figure 0005093391
Figure 0005093391
(2)式中、Rは、水素原子又は炭素数3以下のアルキル基を示すが、安全性の見地から炭素数3以下のアルキル基であることが好ましい。炭素数3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができるが、立体構造の点からメチル基が好ましい。
なお、本発明において内部構造式とは、シリコンを有する基やアクリル系樹脂が、分子内に所定の構造式で示す構造を有することを意味する。例えば、上記内部構造式(1)を例に説明すれば、構造式中のシリコンの4つの結合手のうち、炭素と結合している結合手以外の3つの結合手は、他の所定の元素と結合することができることを意味する。同様に、内部構造式(1)内の炭素原子についていえば、シリコン及び水素と結合している3つの結合手以外の結合手は、他の所定の元素と結合することができる。このことは、内部構造式(2)についても同様であり、以下説明する各内部構造式においても同様である。
有機層2において、アクリル系樹脂が下記内部構造式(3)を有することが好ましい。これにより、有機層2と無機層3との密着性が改善され、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルム10がより得られやすくなる。式(3)式中、Rは水素原子又は炭素数3以下のアルキル基を示す。
Figure 0005093391
(3)式中、Rは、水素原子又は炭素数3以下のアルキル基を示すが、安全性の見地から炭素数3以下のアルキル基であることが好ましい。炭素数3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができるが、立体構造の点からメチル基が好ましい。
ガスバリア性フィルム10において、アクリル系樹脂が、下記内部構造式(4)をとることにより無機層3と結合していることが好ましい。これにより、有機層2と無機層3とがより強く密着する傾向となり、その結果、有機層2と無機層3との密着性がより改善されたガスバリア性フィルム10がより得られやすくなる。式(4)中、Rは水素原子又は炭素数3以下のアルキル基を示し、Mは無機層の構成元素を示す。
Figure 0005093391
(4)式中、Rは、水素原子又は炭素数3以下のアルキル基を示すが、安全性の見地から炭素数3以下のアルキル基であることが好ましい。炭素数3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができるが、立体構造の点からメチル基が好ましい。
(4)式中、Mは無機層の構成元素を示す。すなわち、シリコンを有する基ひいてはアクリル系樹脂は、酸素を介して無機層と結合している。より具体的には、無機層の構成元素上に形成される水酸基と、シリコンを有する基(シランカップリング剤)の加水分解性基が加水分解されて得られた水酸基と、から上記M−O−Siの結合が形成される。
Mは無機層の構成元素である。無機層の構成材料は、後述するとおり、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物、及び酸化珪素亜鉛等から選ばれる1又は2以上の無機化合物を挙げることができる。具体的には、珪素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズ、インジウム、セリウム、及び亜鉛から選ばれる1種又は2種以上の元素を含有する無機化合物を挙げることができ、より具体的には、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物及びインジウム合金酸化物等の無機酸化物;珪素窒化物、アルミニウム窒化物、及びチタン窒化物等の無機窒化物;酸化窒化珪素等の無機酸化窒化珪素;を挙げることができる。特に好ましくは、無機層3が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、及び酸化珪素亜鉛から選ばれる1種又は2種以上からなる層である。無機層3は上記材料を単独で用いてもよいし、本発明の要旨の範囲内で上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。以上の材料を用いる場合、Mは上記材料を構成する元素の一つから選ばれるものとなる。
ガスバリア性フィルム10において、アクリル系樹脂が、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物及びエチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤が共有結合したものであり、エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤の含有量が、有機層2の質量に対して10質量%以上25質量%以下であることが好ましい。これにより、重合性化合物とシランカップリング剤との結合が強くなるとともに、多く含有されたシランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基が有機層2表面に存在してこの基と無機層3の表面とが反応して結合するようになり、その結果有機層2と無機層3との密着性が改善され、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルム10が得られやすくなる。
エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物としては、熱硬化型樹脂又は紫外線硬化型樹脂を形成する材料を挙げることができる。こうした熱硬化型の重合性化合物と紫外線硬化型の重合性化合物のうち、工業生産性を考慮すると、紫外線硬化型の重合性化合物を用いることが好ましい。熱硬化型の重合性化合物の場合、硬化のために例えば160℃程度の加熱を要するため、耐熱性を有するプラスチック基材1を用いる必要があり、プラスチック基材1の材質の選択が若干狭まることになる。また、熱硬化型樹脂では、一定の硬化時間(例えば30分程度)が必要となるので、ロールtoロール方式の生産工程上で十分な乾燥時間を確保することが難しくなる場合がある。この場合、より確実に硬化させるためにロールに巻き取った状態で加熱オーブンに投入することがあるが、ロールに巻き取った巻物状態であるためブロッキングの問題や、ロールの外側とロールの中心付近とで硬化ムラが発生しやすくもなる。これに対して、紫外線硬化型樹脂は、必要露光量を照射すれば充分に硬化可能であることから硬化が短時間ですみ、工業生産上、プラスチック基材1上に良好な有機層2を形成しやすくなる。
有機層2の形成に用いる重合性化合物は、エチレン性不飽和二重結合を有するようにすればよく特に制限はないが、アクリル系樹脂を形成する見地からアクリルモノマーを主成分とする樹脂を用いることが好ましい。アクリルモノマーを主成分とする樹脂の具体例としては、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー又はプレポリマー、反応性希釈剤等が挙げられる。これらのうち、工業生産等を考慮すると、ポリエステルアクリレートを用いることが好ましい。より具体的には、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ビスフェノールAEO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ウレタンアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤としては、特に制限はないが、ビニル系シランカップリング剤、メタクリロキシ系シランカップリング剤、及びアクリロキシ系シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これにより、工業的に得やすいシランカップリング剤を用いることができ、その結果より実使用可能なガスバリア性フィルムを得やすくなる。安全性を考慮すると、メタクリロキシ系シランカップリング剤を用いることが最も好ましい。
エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤の加水分解性基については、特に制限はないが、通常、メトキシ基、エトキシ基、アセトキシ基を用いる。
ビニル系シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランを挙げることができる。メタクリロキシ系シランカップリング剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランを挙げることができる。アクリロキシ系シランカップリング剤としては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらの材料のうち、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM−503)、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBE−502)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBE−503)が、安全性や工業的に好ましい。
有機層2において、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物及びエチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤は複合物を形成していることが好ましい。複合物とは、通常、硬化して重合した重合性化合物の未反応のエチレン性不飽和二重結合と、シランカップリング剤の反応性官能基であるエチレン性不飽和二重結合とが反応して化学結合(共有結合)を形成している状態をいう。
有機層2を構成する複合物は、硬化して重合した重合性化合物の未反応のエチレン性不飽和二重結合と、シランカップリング剤の反応性官能基であるエチレン性不飽和二重結合とが反応して化学結合(共有結合)したものであれば特に限定されず、各種の形態を例示できる。例えば、下記式(5)及び式(6)に示すように、アクリル系樹脂が有するアクリル構造と、シランカップリング剤の反応性官能基とが共有結合した構造を例示できる。なお、有機層2を構成する複合物は、下記式(5)や式(6)に限定されない。
Figure 0005093391
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上記式(5)及び式(6)中、R,Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、又は下記式(7a)〜(7o)で示される置換基を示す。アルキル基は、炭素数1〜4,10,12,13,16〜18,22の直鎖アルキル基が好ましい。式(7a)〜(7o)は一例であり、これらに限定されるものではない。R,Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、上記式(6)中、Rは、水素原子又は炭素数3以下のアルキル基を示す。炭素数3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができる。
Figure 0005093391
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式(7d)中、nは1〜10の整数を示し、式(7e)中、nは1〜15の整数を示し、式(7f)中、nは1〜100の整数を示し、式(7g)中、m,nは1〜5の整数を示し、式(7h)中、m,nは1〜10の整数を示し、式(7i)中、m,nは1〜10の整数を示し、式(7j)中、nは1〜10の整数を示し、式(7k)中、nは1〜50の整数を示し、式(7l)中、nは1〜10の整数を示し、式(7m)中、m,nは1〜10の整数を示し、式(7n)中、nは1〜10の整数を示し、式(7o)中、m,nは1〜10の整数を示す。
下記化学式(8)は、有機層2を構成する複合物が無機層3に結合している構造式を示した例である。式(8)中、Mは無機層の構造元素であり、R,R,Rは上記式(6)で説明したのと同じである。
Figure 0005093391
上記式(8)において、Aはアクリル系樹脂の領域を表し、Bはシランカップリング剤の領域を表し、Cは無機層の領域を表している。このように、アクリル系樹脂と、シランカップリング剤の反応性官能基とが共有結合しているので、有機層2中でシランカップリング剤又はシランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基が自由に動き回るのが抑制されるのである。その結果、時間が経過してもシランカップリング剤又はシランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基は、有機層2と無機層3との界面に留まり、初期の良好なガスバリア性及び密着性を確保できる。さらに、上記のように、有機層2と無機層3との界面に存在させるシリコンを有する基(より具体的には、アクリル系樹脂と共有結合したシランカップリング剤の加水分解性基)の絶対量(無機材料との結合反応点)を所定量存在させることで、経時での密着性も大きく改善することができるのである。
エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤の含有量は、有機層2の質量に対して10質量%以上25質量%以下とすることが好ましい。すなわち、有機層2の質量を100質量%としたときに、シランカップリング剤の含有量が10質量%以上25質量%以下となるように制御されていることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤の含有量を10質量%以上とすると、シランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基が、有機層と無機層との界面に十分に存在することとなり、経時での密着性持続の効果が得られやすくなる。一方、25質量%以下とすることで、ガスバリア発現性に寄与しない上記シランカップリング剤の含有量を制御することができ、ガスバリア性を高いレベルを維持しやすくなる。
有機層2の形成方法は、特に制限はないものの、通常は有機層形成用塗布液を用いて行われる。有機層形成用塗布液は、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物、エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤を含有し、エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤の含有量が、塗布液中の固形分全質量(100質量%)に対して10質量%以上25質量%以下となっている。
有機層形成用塗布液は、上記以外の重合性化合物を併せて含んでいてもよい。
有機層形成用塗布液には、重合開始剤や光増感剤を含有させることが好ましい。具体的には、重合開始剤として、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類を挙げることができる。より具体的には、光重合開始剤として、例えば、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン]を用いることができる。また、光増感剤としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリーn−ブチルホスフィン等を挙げることができる。有機層形成用塗布液中の重合開始剤や光増感剤の含有量は、特に制限はなく、良好な硬化が行われる程度の含有量であればよいが、通常、有機層形成用塗布液100質量部に対して0.1〜5質量部程度含有させる。
有機層形成用塗布液には、塗布液の粘度調整の見地から溶剤を含有させてもよい。溶剤としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;又はこれらの混合物を挙げることができる。こうした溶媒は、本発明の要旨の範囲内において、任意の割合で混合して用いてもよい。
有機層形成用塗布液には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、熱安定剤、ラジカル捕捉剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色素(着色染料、着色顔料)、体質顔料、光拡散剤等が挙げられる。
有機層形成用塗布液を用いる場合、有機層2は、プラスチック基材1上に有機層形成用塗布液を塗布し、塗布後の塗膜に電離放射線を照射して架橋重合等させて形成する。塗布方法は、後述の「製造方法」欄で説明する塗布方法から選択して適用できる。このときの電離放射線の照射は、従来公知の方法・装置を用いればよい。例えば、電離放射線として紫外線を用いる場合には、後述の「製造方法」欄で説明する光源を任意に選択して適用できる。なお、電離放射線としては、代表的には紫外線又は電子線を挙げることができるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線等の荷電粒子線を挙げることができる。こうした電離放射線を照射して重合性化合物及びシランカップリング剤を重合等させることにより、有機層2を形成できる。
有機層2は、一回の成膜回数で形成してなる単層でも、2回以上の成膜回数で形成してなる2層以上の層であってもよい。2層以上の場合、本発明の構成要素を満たせば、各層は同じ有機層形成用塗布液を用いてもよいし、異なる有機層形成用塗布液を用いてもよい。有機層2の厚さは、単層又は2層以上に関わらず、基板のたわみの観点から0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、さらに表面性や生産性の観点を加えると0.5μm以上10μm以下であることがより好ましい。
<無機層>
無機層3は、水蒸気等のガスを遮断する機能層として有機層2上に形成され、有機層2と併せてガスバリア層4を構成する。無機層3の形成材料としては、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物、及び酸化珪素亜鉛等から選ばれる1又は2以上の無機化合物を挙げることができる。具体的には、珪素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズ、インジウム、セリウム、及び亜鉛から選ばれる1種又は2種以上の元素を含有する無機化合物を挙げることができ、より具体的には、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物及びインジウム合金酸化物等の無機酸化物;珪素窒化物、アルミニウム窒化物、及びチタン窒化物等の無機窒化物;酸化窒化珪素等の無機酸化窒化珪素;を挙げることができる。特に好ましくは、無機層3が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、及び酸化珪素亜鉛から選ばれる1種又は2種以上からなる層である。無機層3は上記材料を単独で用いてもよいし、本発明の要旨の範囲内で上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
無機層3の厚さは、使用する無機化合物によっても異なるが、ガスバリア性確保の見地から、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、クラック等の発生を抑制する見地から、通常5000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。また、無機層3は1層であってもよいし、合計厚さが上記範囲内となる2層以上の無機層3であってもよい。2層以上の無機層3の場合には、同じ材料同士を組み合わせてもよいし、異なる材料同士を組み合わせてもよい。
<その他の構成>
ガスバリア性フィルム10は、上述のとおり、基材1、有機層2、及び無機層3で構成されているが、例えば、これら以外の層を有機層2と基材1との間に適宜挿入したり、プラスチック基材1の有機層2が形成されていない側の面S2に積層したり、無機層3上又は無機層3’上に積層したりしてもよい。任意の層としては、本発明の特徴を阻害しない範囲で、例えば、従来公知のプライマー層、マット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
こうして構成された本発明に係るガスバリア性フィルム10は、良好なガスバリア性及び耐久性を有するものとなる。
[製造方法]
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法は、基材上に有機層を形成する工程(有機層形成工程)と、有機層上に無機層を形成する工程(無機層形成工程)と、を有し、有機層を形成する工程における有機層の形成が、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物及びエチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤を含有するとともに、エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤が固形分全質量に対して10質量%以上25質量%以下含有されている有機層形成用塗布液を用いて行われる。
これによれば、重合性化合物とシランカップリング剤との結合が強くなるとともに、多く含有されたシランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基が有機層表面に存在してこの基と無機層の表面とが反応して結合するようになり、その結果有機層と無機層との密着性が改善され、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムを製造できるガスバリア性フィルムの製造方法を提供することができる。以下、各工程について説明する。
(有機層形成工程)
有機層形成工程では、有機層の形成が、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物及びエチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤を含有するとともに、エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤が固形分全質量に対して10質量%以上25質量%以下含有されている有機層形成用塗布液を用いて行われる。具体的には、プラスチック基材上に、上記所定の有機層形成用塗布液を塗布して有機層を形成する工程である。有機層形成用塗布液については、上記説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
有機層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスロールコート法、リバースロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法、及びダイコート法等を挙げることができる。
有機層形成用塗布液を塗布した後は、必要に応じて乾燥を行う。乾燥温度は、常温であってもよいが、有機層形成用塗布液が溶剤を含有する場合には、溶剤の沸点以上の温度として溶剤を除去するための乾燥を行うことが好ましい。有機層形成用塗布液に照射する電離放射線や有機層形成用塗布液の硬化については既述したとおりであるが、電離放射線として紫外線を適用する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が用いられる。
(無機層形成工程)
無機層形成工程は、有機層上に無機層用材料(無機層の形成材料)を堆積して無機層を形成する工程である。無機層用材料は、上記「無機層」の説明欄で説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
無機層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法又はプラズマ化学気相成長法等を好ましく挙げることができる。こうした各種の形成方法での成膜条件は、得ようとする無機層の物性及び厚さ等を考慮し、従来公知の成膜条件を適宜調整して行えばよい。
より具体的には、(1)無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、又は金属等の原料を基材上に加熱蒸着させる真空蒸着法、(2)原料に酸素ガスを導入して酸化させ、基材に蒸着させる酸化反応蒸着法、(3)ターゲット原料にアルゴンガス、酸素ガスを導入してスパッタリングすることにより、基材に堆積させるスパッタリング法、(4)原料をプラズマガンで発生させたプラズマビームで加熱させ、基材に堆積させるイオンプレーティング法、(5)有機珪素化合物等を原料とし、酸化珪素膜を基材に堆積させるプラズマ化学気相成長法、等を利用することができる。
無機層形成工程では、無機層が有機層上に形成される際に、有機層の表面に所定のシリコンを有する基が十分に存在し、これらシリコンを有する基の水酸基(加水分解性基が加水分解によって水酸基とされたもの)と無機層用材料の表面とが反応して結合が形成されると考えられる。これによって、無機層と有機層との密着性が確保され、初期だけでなく経時でも安定したガスバリア性能を有するガスバリア性フィルムが得られる。
なお、ガスバリア性フィルムが、上述した他の機能層を有する場合には、それらの層の形成工程が任意に含まれる。
[装置]
本発明に係る装置は、上記本発明のガスバリア性フィルム又は上記本発明のガスバリア層を用いる表示装置又は発電装置であることを特徴とする。これにより、良好なガスバリア性及び耐久性を示すガスバリア性フィルムを用いたので、ガスバリア性に優れ耐久性が要求される装置を提供できる。より具体的には、装置の品質特性を低下させる水蒸気等のガス成分の影響を低減できる。
表示装置としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子、タッチパネル、電子ペーパー等を挙げることができる。また、これらの表示装置をアクティブマトリックス駆動する薄膜トランジスタも、この表示装置に含まれる。なお、これら各表示装置の構成は特に限定されず、それぞれ従来公知の構成を適宜採用することができ、且つそうした各表示装置に適用するガスバリア性フィルム又はガスバリア層による封止手段も特に限定されず、従来公知の手段とすることができる。
具体的には、例えば、有機EL素子としては、本発明に係るガスバリア性フィルム上に陰極と陽極を有し、両電極の間に、有機発光層(単に「発光層」ともいう。)を含む有機層を有するものを挙げることができる。発光層を含む有機層の積層態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。また、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間に電子注入層を有してもよい。また、発光層は一層だけでもよく、また、第一発光層、第二発光層及び第三発光層等のように発光層を分割してもよい。さらに、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。なお、有機EL素子は発光素子であることから、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
発電装置としては、例えば、太陽電池素子(太陽電池モジュール)を挙げることができる。発電装置の構成は特に限定されず、従来公知の構成を適宜採用することができる。さらに、そうした発電装置に適用するガスバリア性フィルム又はガスバリア層による封止手段も特に限定されず、従来公知の手段とすることができる。例えば、ガスバリア性フィルムを太陽電池素子の裏面保護シートとして用いることができる。
具体的には、例えば、太陽電池モジュールとしては、本発明に係るガスバリア性フィルムを太陽電池バックシートとして使用した例を挙げることができる。こうした太陽電池モジュールは、太陽光側から厚さ方向に順に、前面基材(ガラス又はフィルム等の高光線透過性を有するもの)、充填材、太陽電池素子、リード線、端子、端子ボックス、太陽電池バックシートの構成で、それらがシール材を介して両端の外装材(アルミ枠等)に固定されている。その太陽電池バックシートとしては、裏面封止用フィルムと、外層側に配置されるフィルムとの間に、本発明に係るガスバリア性シートを挟んで構成される例を挙げることができる。裏面封止用フィルムとしては、太陽電池モジュール側で太陽光を反射して電換効率を高めるべく、高度な反射率を有する例えば白色のポリエステルフィルム等が使用される。また、外層側に配置されるフィルムとしては、耐候性、耐加水分解性フィルム等が使用される。
本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
プラスチック基材として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、コスモシャインA−4300)の片面に、下記の組成に調整した有機層形成用塗布液Aをダイコートにて塗布し、100℃で2分間乾燥させた後、波長260nm〜400nmの範囲における積算光量300mJ/cmの条件で紫外線を照射し、厚さ5μmの有機層を形成した。
(有機層形成用塗布液Aの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503):8質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は20質量%である。
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503)は下記構造式を有する化合物である。
Figure 0005093391
無機層は、上記有機層上に形成した。具体的には、上記有機層が形成されたプラスチック基材をホローカソード型イオンプレーティング装置にセットした。そして、蒸発源材料である酸化珪素(高純度化学研究所製)を、ホローカソード型イオンプレーティング装置内の坩堝に投入した後、真空引きを行った。真空度が5×10−4Paまで到達した後、プラズマガンにアルゴンガスを15sccm導入し、電流110A、電圧90Vのプラズマを発電させた。チャンバー内を1×10−1Paに維持することと磁力によりプラズマを所定方向に曲げ、蒸発源材料に照射させた。坩堝内の蒸発源材料は溶融状態を経て昇華することが確認された。イオンプレーティングを15秒間行って基板に堆積させることにより、膜厚100nmの酸化珪素層を形成した。
以上のようにして得た実施例1のガスバリア性フィルムの層構成は、プラスチック基材/有機層/無機層である。
[実施例2]
下記の組成に調整した有機層形成用塗布液Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のガスバリア性フィルムを製造した。有機層形成用塗布液Bは、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を10質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(有機層形成用塗布液Bの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503):4質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):34質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は10質量%である。
[実施例3]
下記の組成に調整した有機層形成用塗布液Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のガスバリア性フィルムを製造した。有機層形成用塗布液Cは、シランカップリング剤の種類を変更したこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(有機層形成用塗布液Cの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBE−502):8質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は20質量%である。
3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBE−502)は下記構造式を有する化合物である。
Figure 0005093391
[実施例4]
下記の組成に調整した有機層形成用塗布液Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のガスバリア性フィルムを製造した。有機層形成用塗布液Dは、シランカップリング剤の種類を変更したこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(有機層形成用塗布液Dの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBE−503):8質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は20質量%である。
3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBE−503)は下記構造式を有する化合物である。
Figure 0005093391
[実施例5]
下記の組成に調整した有機層形成用塗布液Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例5のガスバリア性フィルムを製造した。有機層形成用塗布液Eは、シランカップリング剤の種類を変更したこと、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を25質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(有機層形成用塗布液Eの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBE−503):10質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):28質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は25質量%である。
[実施例6]
下記の組成に調整した有機層形成用塗布液Fを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例6のガスバリア性フィルムを製造した。有機層形成用塗布液Fは、シランカップリング剤の種類を変更したこと、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を10質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(有機層形成用塗布液Fの組成)
・ビニル系シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−1003):4質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):34質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・ビニル系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は10質量%である。
ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−1003)は下記構造式を有する化合物である。
Figure 0005093391
[実施例7]
下記の組成に調整した有機層形成用塗布液Gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例7のガスバリア性フィルムを製造した。有機層形成用塗布液Gは、シランカップリング剤の種類を変更したこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(有機層形成用塗布液Gの組成)
・アクリロキシ系シランカップリング剤(3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−5103):8質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・アクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量20質量%である。
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−5103)は下記構造式を有する化合物である。
Figure 0005093391
[実施例8]
下記の組成に調整した有機層形成用塗布液Hを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例8のガスバリア性フィルムを製造した。有機層形成用塗布液Hは、重合性化合物の種類を変更したこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(有機層形成用塗布液Hの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503):8質量部
・ビスフェノールA EO変性ジアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−211B):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は20質量%である。
[実施例9]
下記の組成に調整した有機層形成用塗布液Iを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例9のガスバリア性フィルムを製造した。有機層形成用塗布液Iは、重合性化合物の種類を変更したこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(有機層形成用塗布液Iの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503):8質量部
・イソシアヌル酸EOジアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−215):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は20質量%である。
[比較例1]
下記の組成に調製した、シランカップリング剤を配合していない比較有機層形成用塗布液αを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のガスバリア性フィルムを製造した。
(比較有機層形成用塗布液αの組成)
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):38質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は0質量%である。
[比較例2]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液aを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液aは、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を1質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液aの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503):0.4質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):37.6質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は1質量%である。
[比較例3]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例3のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液bは、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を3質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液bの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503):1.2質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):36.8質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は3質量%である。
[比較例4]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例4のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液cは、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を5質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液cの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503):2質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):36質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は5質量%である。
[比較例5]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例5のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液dは、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を30質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液dの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503):12質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):26質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は30質量%である。
[比較例6]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例6のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液eは、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を40質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液eの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503):16質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):22質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は40質量%である。
[比較例7]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液fを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例7のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液fは、シランカップリング剤の種類を変更したこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液fの組成)
・エポキシ系シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−403):8質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・エポキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は20質量%である。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−403)は下記構造式を有する化合物である。
Figure 0005093391
[比較例8]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例8のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液gは、シランカップリング剤の種類を変更したこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液gの組成)
・アミノ系シランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−903):8質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・アミノ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は20質量%である。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−903)は下記構造式を有する化合物である。
Figure 0005093391
[比較例9]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液hを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例9のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液hは、シランカップリング剤の種類を変更したこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液hの組成)
・イソシアネート系シランカップリング剤(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBE−9007):8質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・イソシアネート系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は20質量%である。
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBE−9007)は下記構造式を有する化合物である。
Figure 0005093391
[比較例10]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液iを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例10のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液iは、シランカップリング剤の種類を変更したこと、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を3質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液iの組成)
・ビニル系シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−1003):1質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・ビニル系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は3質量%である。
[比較例11]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液jを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例11のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液jは、シランカップリング剤の種類を変更したこと、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を5質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液jの組成)
・アクリロキシ系シランカップリング剤(3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−5103):1.7質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・アクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は5質量%である。
[比較例12]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液kを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例12のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液kは、重合性化合物の種類を変更したこと、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を5質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液kの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503):1.7質量部
・ビスフェノールA EO変性ジアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−211B):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は5質量%である。
[比較例13]
下記の組成に調整した比較有機層形成用塗布液lを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例13のガスバリア性フィルムを製造した。比較有機層形成用塗布液lは、重合性化合物の種類を変更したこと、シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量を5質量%としたこと、以外は有機層形成用塗布液Aと同様のものである。
(比較有機層形成用塗布液lの組成)
・メタクリロキシ系シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−503):1.7質量部
・イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−215):30質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
・メタクリロキシ系シランカップリング剤の固形分全質量に対する含有量は5質量%である。
[評価と結果]
(ガスバリア性の測定方法)
実施例1〜9及び比較例1〜13のガスバリア性フィルムについて、(ア)製造直後(初期状態)の水蒸気透過率の測定、(イ)耐湿熱試験後の水蒸気透過率の測定、及び(ウ)耐湿熱試験後の密着性試験を行った。
水蒸気透過率の測定は、温度37.8℃、湿度100%RHの条件下で、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、商品名:PERMATRAN−W3/31)を用いて行った。
耐湿熱試験は、ガスバリア性フィルムを、温度:60℃、湿度:90%RHに調節された恒温恒湿槽に500時間保持することによって行った。
密着性試験は、クロスカット試験で行った。クロスカット試験は、JIS−K5400の8.5.1の記載に準拠して行った。具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、無機層を貫通してプラスチック基材に達する切り傷を縦横につけて、100個のマス目状とし、セロハン粘着テープ(ニチバン社製405番 24mm幅)をマス状の切り傷面に張り付け、消しゴムでこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がした。そして、剥離後の面を目視により観察し、剥離の有無を確認した。
結果を表1に示す。
Figure 0005093391
また、表1から得られた有機層中のシリコンの含有量と、耐湿熱試験後の水蒸気透過率との関係をグラフにした結果を図3に示す。図3から、シリコンの含有量を0.9質量%以上、2.5質量%以下の範囲とすると、耐湿熱試験後でも良好なガスバリア性が得られることがわかる。なお、図3は、エチレン性不飽和二重結合を反応性官能基として持つシランカップリング剤を用いた実施例1〜9及び比較例2〜6,10〜13の結果をプロットしている。
[参考実験]
比較例1(メタクリロキシ系シランカップリング剤の含有量:0)、比較例2(同含有量1質量%)、比較例4(同含有量:5質量%)、実施例2(同含有量:10質量%)、実施例1(同含有量:20質量%)について、プラスチック基材上に有機層のみを設けたサンプルを作製した。そして、それぞれのサンプルの有機層表面のESCA(X線光電子分光法)分析を行った。分析装置、分析条件は以下のとおりで行った。
測定装置:ESCALAB220i−XL
X線源:Monochromated Al Kα(単色化X線)
X線出力:10kV・16mA(160W)
レンズ:Large Area XL (磁場レンズ)
アパーチャ開度:F.O.V.=open、A.A.=open
測定領域:700μmφ
光電子取込角度:90度(試料法線上にインプットレンズが存在)
帯電中和:電子中和銃 +4(V)・0.08(mA)、中和補助マスク使用
結果を表2に示す。
Figure 0005093391
表2の結果から、シランカップリング剤の含有量が10質量%以上となると有機層表面に0.1原子%のSiが検出されるようになり、無機層と有機層との結合点となるシランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基が有機層表面に現れることがわかる。この結果と、表1の結果とをあわせれば、シランカップリング剤の含有量を10質量%以上とすることで、シランカップリング剤により形成されるシリコンを有する基が有機層の表面に現れるようになって有機層と無機層との耐湿熱試験後の密着性が大きく改善することがわかる。
また、表1から、シランカップリング剤の含有量を25質量%以下とすることで良好なガスバリア性を確保できることがわかる。なお、この結果と表2の結果とから、シランカップリング剤の含有量が25質量%の場合、有機層表面(無機層と接する有機層の面)のシリコン量は0.25原子%となると推測される。
さらに、表1から、エチレン性不飽和二重結合を有するシランカップリング剤とすることで、耐湿熱試験後の密着性を大きく改善できることがわかる。
1 基材(プラスチック基材)
2,2’ 有機層
3,3’ 無機層
4,4’ ガスバリア層
10,10A,10B ガスバリア性フィルム
S1 プラスチック基材の片面
S2 プラスチック基材の他の面


Claims (1)

  1. 基材上に有機層を形成する工程と、前記有機層上に無機層を形成する工程と、を有し、前記有機層を形成する工程における有機層の形成が、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物及びメタクリロキシ系シランカップリング剤を含有するとともに、前記メタクリロキシ系シランカップリング剤が固形分全質量に対して10質量%以上25質量%以下含有されている有機層形成用塗布液を用いて行われ、前記無機層を形成する工程における無機層の形成が、イオンプレーティング法により行われることを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
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