JP2012096409A - ガスバリア性フィルムの製造方法及びガスバリア層の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特に耐湿熱性が良好で、低コストで、ガスバリア性の良いガスバリア性フィルムの製造方法及びガスバリア層の形成方法を提供する。
【解決手段】プラスチック基材11上に、一般式(1)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物と重合開始剤と前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤とを含む組成物で有機層2を形成する工程と、その有機層2上に無機層3を形成する工程と、を有する(一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基を表すか、又は、R及びRは一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。)
Figure 2012096409

【選択図】なし

Description

本発明は、次世代の省エネルギー製品(例えば太陽電池、発電素子、ディスプレイ装置、照明装置等)に適用されるキー・パーツとして位置づけられるガスバリア性フィルムの製造方法及びガスバリア層の形成方法に関する。
ガスバリア性フィルムは、有機EL素子、液晶表示素子、薄膜トランジスタ、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパー等の装置に対し、それらの性能を劣化させる酸素又は水蒸気等の化学成分の透過を防ぐために好ましく適用されている。特に最近では、次世代の省エネルギー製品(例えば太陽電池、発電素子、ディスプレイ装置、照明装置等)に適用されるキー・パーツとして位置づけられている。そのため、ガスバリア性フィルムには、電子デバイスの高性能化と高品質化に伴い、高いガスバリア性が求められている。反面、特に著しい低価格化の要請から、ガスバリア性フィルムにおいてもコスト低減が要請されている。
近年のガスバリア性フィルムには、プラスチックフィルムと、そのプラスチックフィルム上に設けられた有機層と、その有機層上に設けられた無機層とで構成されているものがある。有機層は、ガスバリア性の無機層の下に平坦化層として設けられ、無機層に生じる欠陥を低減してガスバリア性を高めるという役割を担うとされている。
ガスバリア性フィルムの研究開発は盛んに行われており、例えば特許文献1では、基材の突起やピンホール等の影響を低減することを目的として、密着性無機化合物層、有機樹脂層、無機化合物層を順に成膜したガスバリア性フィルムが提案されている。同文献では、平坦化層として作用する有機樹脂層の好ましい構成材料として、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート樹脂と多塩基酸無水物、多官能アクリレートモノマー、重合開始剤、及び、エポキシ基を1分子中に2個以上有するエポキシ樹脂、を必須成分とするカルドポリマーが提案されている。
また、特許文献2においても、基材の突起やピンホール等の影響を低減することを目的として、ガスバリア層として用いる窒化珪素等の無機層と、カルドポリマーからなる平坦化層との積層順を任意に組み合わせた2層又は3層のガスバリア性フィルムが提案されている。同文献でも、上記特許文献1と同様、平坦化層の好ましい構成材料として、ビスフェノール化合物から誘導されるフルオレン骨格を有する樹脂を含有するカルドポリマーが提案されている。
最近のガスバリア性フィルムには、必要十分なガスバリア性を確保した上でより一層の低コスト化が求められている。しかし、平坦化層としては実績のあるカルドポリマーを用い、その上に無機層を成膜した場合、良好なガスバリア性を安定して得られないという問題があった。
特開2005−324406号公報(実施例及び第0049〜0065段落) 特開2004−299233号公報(実施例及び第0046〜0049段落) 特開2010−94863号公報(第0055段落の比較例2)
本発明者は、カルドポリマー以外の有機樹脂材料について検討している過程で、本件出願人が既に出願した特許文献3の比較例2に記載の、マレイミド基を有する化合物について検討した。この特許文献3には、プラスチックフィルム上に紫外線硬化樹脂層とガスバリア性無機化合物層とがこの順で1層ずつ形成された態様が提案されている。その比較例2には、紫外線硬化樹脂層に用いる材料として「UVT−302」(マレイミド基を有する化合物)を用いることが記載されている。
しかしながら、「UVT−302」は、マレイミド基を有するモノマー化合物であるため、反応部位であるマレイミド基の間隔が離れており、特に単独での使用の場合は硬化性が良好ではなかった。そのため、有機層中に未反応成分が残り、経時的にその未反応成分が有機層と無機層の界面に移動し、無機層の密着性を悪化させてバリア性を悪くするという問題があった。
本発明者は、ディスプレイ等の表示装置や太陽電池等の発電素子等に好適に使用されるガスバリア性フィルムを得ることを目指し、耐湿熱性が良好で、必要十分な水蒸気透過率を確保でき、より低コストなガスバリア性フィルムを2層(有機層と無機層との積層)でも達成できるガスバリア層を、上記のマレイミド基を有するモノマーを用いて実現することを課題とした。
本発明の目的は、前記課題を解決するためになされたものであって、特に耐湿熱性が良好で、低コストで、ガスバリア性の良いガスバリア性フィルムの製造方法及
びガスバリア層の形成方法を提供することにある。
本発明者は、上記したマレイミド基を有するモノマー化合物を用いて、ガスバリア性を高める検討を行った。その結果、有機層中の未反応成分を低減させるために、マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤を必須の構成とすることにより、上記課題を解決して本発明を完成させた。
すなわち、上記課題を解決するための本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法は、プラスチック基材上に、下記一般式(1)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物と重合開始剤と前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤とを含む組成物で有機層を形成する工程と、前記有機層上に無機層を形成する工程と、を有することを特徴とする。但し、一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基を表すか、又は、R及びRは一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。
Figure 2012096409
なお、上記のモノマー化合物は少なくとも一般式(1)で表されるマレイミド基を有する化合物であればよい。したがって、式(1)中の「*」は特に限定されず、各種の水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基を表し、シクロヘキシル基、フェニル基、又はそれらにハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基が置換基として付加したものを含んでいてもよい(以下同じ。)。また、前記の「一つとなって」とは、R及びRの枝が結合すること、を意味する(以下同じ。)。
この発明によれば、前記モノマー化合物と前記重合開始剤と前記増感剤とを含む組成物で有機層を形成する工程を含むので、そのモノマー化合物が有するマレイミド基は、硬化時(紫外線照射時)に増感剤によって光二量化反応が促進されると共にラジカルを発生する。そのため、モノマー化合物の重合が促進されるので、重合開始剤の使用量を減らすことができる。その結果、硬化後の有機層中に残存する重合開始剤を減らすことができるという効果がある。有機層中に残存する重合開始剤が存在すると、その重合開始剤は経時的に有機層と無機層の界面に移動し、無機層の密着性が悪化してガスバリア性が悪くなるという問題が生じるが、この発明ではそうした問題を抑えることができる。
また、マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤を有するので、マレイミド基を有するモノマー化合物の分子量が大きく、仮に反応部位であるマレイミド基の間隔が離れている場合であっても、未反応成分の少ない良好な有機層(硬化膜)を得ることができる。その結果、未反応成分に由来した密着性の低下を低減できる。このように、上記モノマー化合物と重合開始剤と増感剤とを併用した組成物から得られた有機層と、無機層とを積層したガスバリア層は、経時での密着性を持続させることができ、耐湿熱性(耐久性)に優れたガスバリア性フィルムを安定して製造することができる。
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法において、前記マレイミド基を有するモノマー化合物が、下記一般式(2)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物である。但し、一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基を表すか、又は、R及びRは一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。また、Rはアルキレン基を表す。nは1〜6の整数を表す。
Figure 2012096409
この発明によれば、一般式(2)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物において、分子量が高くなるとマレイミド基の間隔が離れやすいが、こうしたモノマー化合物においては、マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤が特に有効に作用する。その結果、硬化性をさらに高めることができる。
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法において、前記増感剤が、三重項増感剤であることが好ましい。三重項増感剤としては、ベンゾフェノン類及び/又はチオキサントン類であることが好ましい。
この発明によれば、ベンゾフェノン類やチオキサントン類は三重項増感剤であり、こうした三重項増感剤が有効に作用する。なお、特にチオキサントン類は、三重項状態の寿命が長いため、特に効果的である。
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法において、前記基材の他方の面にも、前記有機層と前記無機層とをその順で設ける。この発明によれば、前記有機層と前記無機層とを基材の反対面にも設けたので、密着性と耐湿熱性のよい安定したガスバリア性フィルムを製造することができる。
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法において、前記基材が、ポリエチレンナフタレートフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記無機層が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、及び酸化珪素亜鉛から選ばれる1種又は2種以上からなる層である。
上記課題を解決するための本発明に係るガスバリア層の形成方法は、上記一般式(1)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物と重合開始剤と前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤とを含む組成物で有機層を形成する工程と、前記有機層上に無機層を形成する工程と、を有することを特徴とする。但し、上記一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基を表すか、又は、R及びRは一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。
この発明によれば、上記したガスバリア性フィルムの製造方法の作用効果と同様の効果を奏するガスバリア層の形成方法とすることができる。
本発明によれば、耐湿熱性が良好で、良好なガスバリア性を示すガスバリア性フィルムを低コストで製造する方法及びガスバリア層を形成する方法を低コストで提供することができる。これらの方法により、良好なガスバリア性を示すガスバリア性フィルム又はガスバリア層を用いた装置を提供することができるとともに、耐湿熱性とガスバリア性が良好なガスバリア性フィルム及びガスバリア層を提供することができる。こうして得られたガスバリア性フィルム及びガスバリア層は、ディスプレイ等の表示装置や太陽電池等の発電素子等に好適に使用することができる。
本発明に係る製造方法で得られたガスバリア性フィルムの一例を示す模式的な断面図である。 本発明に係る製造方法で得られたガスバリア性フィルムの他の一例を示す模式的な断面図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本願では、反応前の化合物を、分子量の大小にかかわらず「モノマー化合物」と呼ぶ。
[ガスバリア性フィルムの製造方法及びガスバリア層の形成方法]
本発明に係るガスバリア性フィルム10の製造方法は、プラスチック基材1上に、下記一般式(1)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物と重合開始剤と前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤とを含む組成物(有機層形成用組成物ともいう。)で有機層2を形成する工程と、その有機層2上に無機層3を形成する工程と、を有する。同様に、本発明に係るガスバリア層4の形成方法は、下記一般式(1)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物と重合開始剤と前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤とを含む組成物で有機層2を形成する工程と、その有機層2上に無機層3を形成する工程と、を有する。
Figure 2012096409
一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基を表すか、又は、R及びRは一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。なお、上記のモノマー化合物は少なくとも一般式(1)で表されるマレイミド基を有する化合物であればよい。したがって、式(1)中の「*」は特に限定されず、各種の水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基を表し、シクロヘキシル基、フェニル基、又はそれらにハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基が置換基として付加したものを含んでいてもよい(以下同じ。)。また、前記の「一つとなって」とは、R及びRの枝が結合すること、を意味する(以下同じ。)。
こうした方法で得られたガスバリア性フィルム10は、図1及び図2に示すように、プラスチック基材1と、そのプラスチック基材1上に設けられた有機層2と、その有機層2上に設けられた無機層3とを有する。そして、有機層2が、上記一般式(1)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物と、重合開始剤と、前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤とを含む組成物を硬化してなる層であることを特徴とする。
同様に、こうした方法で得られたガスバリア層4は、図1及び図2に示すように、有機層2と、有機層2上に設けられた無機層3とを有し、有機層2が、上記一般式(1)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物と、重合開始剤と、前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤とを含む組成物を硬化してなる層であることを特徴とする。
なお、有機層2と無機層3(これら2層で「ガスバリア層4」ともいう。)は、図1に示すようにプラスチック基材1の一方の面S1にその順で少なくとも設けられるが、図2に示すように他方の面S2にも有機層2’と無機層3’と(これら2層で「ガスバリア層4’」ともいう。)をその順で設けてもよい。また、他方の面S2には、図1に示すように有機層2’も無機層3’も設けなくてよく、また、有機層2’を設けずに無機層3’を設けてもよい。他方の面S2に無機層3’を設け又はガスバリア層4’(有機層2’と無機層3’)を設けてガスバリア性をさらに高めてもよい。
以下、ガスバリア性フィルムの製造方法及びガスバリア層の形成方法の構成要素を詳しく説明する。
<プラスチック基材>
プラスチック基材1の材質は特に制限はないが、汎用性、工業性の見地から、ポリエステル系樹脂を好ましく挙げることができる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、これらの共重合体、及びポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等を挙げることができる。ポリエステル系樹脂のうちでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びこれらの共重合体が好ましい。
プラスチック基材1の材質としてポリエステル系樹脂を適用する場合、その全てがポリエステル系樹脂からなるフィルム状基材であってもよいし、有機層2が形成される側(図1における片面S1又は図2における両面S1,S2)に少なくともポリエステル系樹脂層が形成されているフィルム状積層基材であってもよい。このフィルム状積層基材において、有機層2が形成されるポリエステル系樹脂層以外の層は、ポリエステル系樹脂層でなくてもよい。ポリエステル系樹脂層以外の層の種類の選定にあたっては、耐熱性、熱膨張、光透過性等を考慮して各種の樹脂層が任意に選定される。
プラスチック基材1の厚さは特に限定されないが、10μm以上500μm以下程度であることが好ましい。
プラスチック基材1の表面は、必要に応じて、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、加熱処理、薬品処理、及び易接着処理等の表面処理を行ってもよい。こうした表面処理の具体的な方法は従来公知のものを適宜用いることができる。また、有機層2を直接形成しない側の面には、他の機能層を設けてもよい。機能層の例としては、マット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
<有機層の形成>
有機層の形成は、プラスチック基材1上に、下記一般式(1)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物と、重合開始剤と、前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤とを含む組成物(有機層形成用組成物ともいう。)を用いて行う。
この有機層2は、プラスチック基材1上に設けられて後述する無機層3とともにガスバリア層4を構成する。本発明においては、有機層2として、上記一般式(1)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物と、重合開始剤と、前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤とを含む組成物を硬化してなる層を設ける。上記一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基を表すか、又は、R及びRは一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。
(マレイミド基を有するモノマー化合物)
マレイミド基を有するモノマー化合物は上記一般式(1)に記載のとおりである。その一般式(1)において、R及びRを構成するハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素等が好ましく、アルキル基としては炭素数4以下のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)が好ましく、アルケニル基としては炭素数4以下のアルケニル基(ビニル基(CH=CH−)、アリル基(CH=CHCH−)、等々)が好ましく、アリール基としてはフェニル基(C−)、トリル基(CH−)等が挙げられ、フェニル基が好ましい。また、R及びRが一つとなって5員環若しくは6員環を形成する飽和の炭化水素基としては−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−が挙げられ、不飽和の炭化水素基としては−CH=CH−CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH=CHCH2−等が挙げられる。なお、不飽和の炭化水素基において、マレイミド基が2量化反応するためには、最終的に得られる5員環又は6員環が芳香族性を有しないものを選択する必要がある。そうした炭化水素基としては、飽和の炭化水素基が好ましい。
一般式(1)におけるマレイミド基の好ましい具体例を、以下の式(3)〜式(8)に示す。なお、一般式(3)〜(8)中の「*」も上記一般式(1)の場合と同様である。
Figure 2012096409
Figure 2012096409
Figure 2012096409
これらの各式において、R1及びR2は、式(5)に示すように一方が水素原子で他方が炭素数4以下のアルキル基(例えばメチル基)、式(4)に示すように両方が炭素数4以下のアルキル基(例えばメチル基)、並びに、式(3)に示すようにそれぞれが一つとなって炭素環を形成する飽和炭化水素基、であることが好ましい。
さらに、これらの中でも、式(3)に示すようにそれぞれが一つとなって炭素環を形成する飽和炭化水素基は、接着力に優れる点でより好ましい。
シクロヘキシル基、フェニル基を付加した一例を下記に示す。なお、下記のモノマー化合物の分子量は、シクロヘキシル基が付加したN−シクロヘキシルマレイミド(株式会社日本触媒、商品名:イミレックス−C)が179で、フェニル基が付加したN−フェニルマレイミド(株式会社日本触媒、商品名:イミレックス−P)が173である。
Figure 2012096409
本発明で用いるモノマー化合物としては、マレイミド基と、マレイミド基以外のエチレン性不飽和基とを有するものであってもよい。例えば、下記一般式(2)及び一般式(9)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物は、製造が容易で硬化性に優れるため好ましく用いることができる。なお、下記式(10)はその一例のマレイミドアクリレート(東亞合成株式会社製、商品名:M−145)である。
Figure 2012096409
Figure 2012096409
Figure 2012096409
ここで、式(2)及び(9)において、R1及びR2は上記式(1)と同様の意味を示す。また、R3はアルキレン基を表し、R4は水素原子又はメチル基を表し、nは1から6の整数を表す。なお、R3のアルキレン基としては、直鎖状であっても又は分岐状を有していても良い。より好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基である。なお、一般式(2)(9)中の「*」も上記一般式(1)の場合と同様である。
式(2)(9)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物は、硬化性をさらに高めることができるのでより好ましく適用できる。こうしたモノマー化合物は、分子量が大きくなり、硬化しにくい傾向があるが、本発明では、前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤を適用するので、分子量が大きく硬化しにくいモノマー化合物については特に有効であり、十分に硬化させることができる。
以上説明したモノマー化合物(マレイミド基を有するモノマー化合物)を用いると、マレイミド基自体の極性が高く、後述する無機層3との密着性が良好となる。さらに、マレイミド基は紫外線照射時に光二量化すると共にラジカルを発生するため、特にマレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤を用いれば、重合開始剤の使用量を減らすことができ、有機層2中の残存開始剤を減らす効果がある。なお、有機層2中に重合開始剤が残存すると、残存した重合開始剤が経時で有機層2と無機層3の界面に移動し、無機層3との間の密着性が悪化して、ガスバリア性が悪くなる。
モノマー化合物の分子量(重量平均分子量)については、150〜40000が好ましく、より好ましくは5000〜35000であり、更に好ましくは10000〜30000である。重量平均分子量が1000に満たないと、硬化して得られる有機層が硬くなり過ぎて、無機層との密着性が不十分となる場合がある。一方、重量平均分子量が40000を超えると、組成物の粘度が高くなり過ぎ、塗工性が低下する場合がある。なお、重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ法により測定した分子量をポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。
これらのうち、分子量が小さいもの(例えば150〜1000の範囲)は、反応性が高いので、重合開始剤を減らすことができ、硬化後の有機層中に残存する重合開始剤を減らすことができるという作用効果がある。
一方、モノマー化合物の分子量が大きいもの(例えば10000〜40000の範囲)は、分子量が小さい場合(例えば150〜1000)に比べて柔軟な膜となる。そのため、無機層3との密着性が更に良好となる。その反面、分子量が大きいものは反応部位であるマレイミド基の間隔が離れる傾向があることから、硬化性が必ずしも良好であるわけではなく、未硬化成分が残る場合がある。しかし、本発明では、重合開始剤に加えて、マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤を併用することにより、マレイミド基を有するモノマー化合物の分子量が大きい場合であったとしても、マレイミド基の二量化反応が増感して重合開始剤とモノマー化合物との間の反応が十分に起こる。そのため、未反応成分の少ない良好な有機層(硬化膜)を得ることができる。その結果、未反応成分に由来した密着性の低下を低減できるという作用効果がある。
モノマー化合物の好ましい配合割合は、組成物中に5〜60質量%であり、より好ましくは10〜50質量%である。配合割合が上記範囲内である場合は、硬化性に優れることにより、良好な耐湿熱性を示すことができる。
具体例としては、後述の実施例1で用いる式(11)で表されるモノマー化合物の場合、組成物中の割合は5〜60質量%であり、好ましくは10〜50質量%である。この範囲内で、良好な耐湿熱性を示すことができる。また、後述の実施例2のように、マレイミド基を有さないモノマー化合物を併用する場合、そのモノマー化合物の組成物中の割合は0〜40質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。マレイミド基を有さないモノマー化合物を併用する場合であっても、この範囲であれば、良好な耐湿熱性を示すことができる。
(重合開始剤)
重合開始剤は特に限定されず、一般的な重合開始剤を用いることができる。本発明で一般的な重合開始剤を用いても十分な硬化膜を形成できるのは、重合開始剤と共にマレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤を併用しているためである。
重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類等を挙げることができ、これらを任意に適用できる。具体的には、後述の実施例で例示するように、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:IRGACURE(登録商標)184、BASF社)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名:IRGACURE(登録商標)651、BASF社)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名:IRGACURE(登録商標)907、BASF社)、等々を挙げることできる。もちろんこれら以外の重合開始剤であってもよい。
重合開始剤の好ましい配合割合は特に限定されないが、良好な重合が行われるという観点から、組成物中の配合割合で、1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%である。配合割合が1質量%より少ないと、たとえマレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤を併用したとしても、モノマー化合物に対する重合開始能が足りず、硬化不十分になることがある。一方、配合割合が10質量%より多いと、マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤を併用した場合であっても、残存する重合開始剤が多くなり、その残存する重合開始剤が無機層の真空成膜時にアウトガスとして発生し、無機層の形成を阻害することがある。
(増感剤)
増感剤は、マレイミド成分の光二量化反応を増感する化合物である。具体例としては、チオキサントン類やベンゾフェノン類等の三重項増感剤を好ましく挙げることができる。
チオキサントン類としては、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。チオキサントン類化合物の具体例を挙げると、2,4−ジメチルチオキサントン(日本化薬株式会社製:カヤキュアーRTX、日本化薬株式会社製:カヤキュアーDETX−S、DKSHジャパン社製:SPEEDCURE DETX、等)、2−クロロチオキサントン(日本化薬株式会社製:カヤキュアーCTX)、2−イソプロピルチオキサントン(日本化薬株式会社製:カヤキュアーITX)、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン(日本シイベルヘグナー社製:Speedcure CPTX)、2−ジイソプロピルチオキサントン(日本化薬株式会社製:カヤキュアーDITX)、等が挙げられる。
ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等を挙げることができる。ベンゾフェノン類化合物の具体例を挙げると、ベンゾフェノン(DKSHジャパン社製:SPEEDCURE BENZOPHENONE)、4−メチルベンゾフェノン(DKSHジャパン社製:SPEEDCURE MBP)、等が挙げられる。
その他の増感剤として、クマリン類やケトクマリン類を挙げることができ、クマリン類としては、クマリン1、クマリン338、クマリン102等を挙げることができ、ケトクマリン類としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)等を挙げることができる。また、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を上記三重項増感剤に混合して用いてもよい。
これらの中でも、特にチオキサントン類は三重項状態の寿命が長いため、特に効果が高く好ましい。
チオキサントン類やベンゾフェノン類等の三重項増感剤を用いた場合における増感剤の好ましい配合割合は、組成物中に0.1〜3質量%の範囲であり、特に好ましくは0.3〜2質量%の範囲である。配合割合が3質量%以下であると、硬化後の有機層の黄変が低減され好ましい。また、配合割合が0.1質量%以上であると、硬化性に優れるため好ましい。
(その他)
溶剤は、塗布液の粘度調整の見地から、有機層用組成物に応じて任意に混合される。溶剤としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;又はこれらの混合物を挙げることができる。
有機層用組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて適宜添加剤を添加する。添加剤としては、例えば、熱安定剤、ラジカル捕捉剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色素(着色染料、着色顔料)、体質顔料、光拡散剤等が挙げられる。
<有機層の形成>
有機層2は、プラスチック基材1上に、上記モノマー化合物と上記重合開始剤と上記増感剤とを含む有機層用組成物を塗布し、塗布後の塗膜に電離放射線を照射して架橋重合等させて形成する。このとき、マレイミド基は、硬化時(電離放射線照射時)に増感剤によって光二量化反応が促進されるとともに、ラジカルを発生する。そのため、モノマー化合物の重合が促進されるので、重合開始剤の使用量を減らすことができる。その結果、硬化後の有機層中に残存する重合開始剤を減らすことができる。
有機層形成用組成物の塗布方法は、通常、プラスチック基材1上に有機層用組成物を塗布し、その塗膜に電離放射線(紫外線等)を照射し、有機層用組成物を重合硬化させて有機層2を形成する。
有機層用組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスロールコート法、リバースロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法、及びダイコート法等を挙げることができる。
有機層用組成物を塗布した後は、必要に応じて乾燥を行う。乾燥温度は、常温であってもよいが、有機層用組成物が溶剤を含有する場合には、溶剤を除去するための乾燥を、溶剤の沸点以上の温度で行うことが好ましい。有機層用組成物に照射する電離放射線としては既述したとおりであるが、電離放射線として紫外線を適用する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が用いられる。
有機層2は、一回の成膜回数で形成してなる単層でも、2回以上の成膜回数で形成してなる2層以上の層であってもよい。2層以上の場合、本発明の構成要素を満たせば、各層は同じ有機層用組成物を用いてもよいし、異なる有機層用組成物を用いてもよい。有機層2の厚さは、単層又は2層以上に関わらず、基板のたわみの観点から0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、さらに表面性や生産性の観点を加えると0.5μm以上10μm以下であることがより好ましい。
以上のように、有機層2を、マレイミド基を有するモノマー化合物と重合開始剤と増感剤とを併用した組成物を用いて形成するので、マレイミド基を有するモノマー化合物の分子量が大きく、仮に反応部位であるマレイミド基の間隔が離れている場合であっても、重合開始剤とモノマー化合物との間の反応が十分に起こる。そのため、未反応成分の少ない良好な有機層(硬化膜)を得ることができる。その結果、未反応成分に由来した密着性の低下を低減できる。また、マレイミド基自体の極性が高く、後述する無機層3との密着性が良好となる。さらに、マレイミド基は紫外線照射時に光二量化すると共にラジカルを発生するため、特にマレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤を用いれば、重合開始剤の使用量を減らすことができ、有機層2中の残存開始剤を減らす効果がある。なお、有機層2中に重合開始剤が残存すると、残存した重合開始剤が経時で有機層2と無機層3の界面に移動し、無機層3との間の密着性が悪化して、ガスバリア性が悪くなる。
<無機層の形成>
無機層3を、水蒸気等のガスを遮断する機能層として有機層2上に形成する。この無機層3は有機層2と併せてガスバリア層4を構成する。
無機層3の形成材料としては、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物、及び酸化珪素亜鉛等から選ばれる1又は2以上の無機化合物を挙げることができる。具体的には、珪素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズ、インジウム、セリウム、及び亜鉛から選ばれる1種又は2種以上の元素を含有する無機化合物を挙げることができ、より具体的には、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物及びインジウム合金酸化物等の無機酸化物;珪素窒化物、アルミニウム窒化物、及びチタン窒化物等の無機窒化物;酸化窒化珪素等の無機酸化窒化珪素;を挙げることができる。特に好ましくは、酸化珪素、窒化珪素、酸化珪素亜鉛、及び酸化窒化珪素から選ばれる1又は2以上の無機化合物を挙げることができる。無機層3は上記材料を単独で用いてもよいし、本発明の要旨の範囲内で上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
無機層3の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法又はプラズマ化学気相成長法等を好ましく挙げることができる。こうした各種の形成方法での成膜条件は、得ようとする無機層3の物性及び厚さ等を考慮し、従来公知の成膜条件を適宜調整して行えばよい。
より具体的には、(1)無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、又は金属等の原料を基材上に加熱蒸着させる真空蒸着法、(2)原料に酸素ガスを導入して酸化させ、基材に蒸着させる酸化反応蒸着法、(3)ターゲット原料にアルゴンガス、酸素ガスを導入してスパッタリングすることにより、基材に堆積させるスパッタリング法、(4)原料をプラズマガンで発生させたプラズマビームで加熱させ、基材に堆積させるイオンプレーティング法、(5)有機珪素化合物を原料とし、酸化珪素膜を基材に堆積させるプラズマ化学気相成長法、等を利用することができる。
無機層3の厚さは、使用する無機化合物によっても異なるが、ガスバリア性確保の見地から、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、クラック等の発生を抑制する見地から、通常5000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。また、無機層3は1層であってもよいし、合計厚さが上記範囲内となる2層以上の無機層3であってもよい。2層以上の無機層3の場合には、同じ材料同士を組み合わせてもよいし、異なる材料同士を組み合わせてもよい。
<その他の構成>
ガスバリア性フィルム10は、上述のとおり、プラスチック基材1、有機層2、及び無機層3で構成されているが、例えば、これら以外の層を有機層2と無機層3との間に適宜挿入したり、プラスチック基材1の有機層2が形成されていない側の面S2に積層したり、無機層3上又は無機層3’上に積層したりしてもよい。任意の層としては、本発明の特徴を阻害しない範囲で、例えば、従来公知のプライマー層、マット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。これらの各層は、各層の形成工程が任意に含まれる。
こうして構成されたガスバリア性フィルム10及びガスバリア層4は、後述する実施例に示すように、温度60℃、湿度90%で、500時間経過時の水蒸気透過率が、0.05g/m・day未満であり、優れた耐湿熱性を有していた。なお、水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、型名:PERMATRAN−W3/31)を用いて行った結果で評価した。
このように、上記モノマー化合物と重合開始剤と増感剤とを併用した組成物で形成した有機層2と、無機層3とを積層したガスバリア層4は、経時での密着性を持続させることができ、耐湿熱性(耐久性)に優れたガスバリア性フィルムを安定して製造することができる。
[装置]
ここでの装置は、上記本発明に係る製造方法で得られたガスバリア性フィルム又は上記本発明に係る形成方法で得られたガスバリア層を用いる表示装置又は発電装置である。上記したガスバリア性フィルム10及びガスバリア層4はいずれも耐湿熱性が良好で、良好なガスバリア性を安定して実現できるものであるので、そのガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4を用いれば、表示装置及び発電装置の低コスト化と高品質化に貢献できる。こうした装置に用いるガスバリア性フィルム又はガスバリア層は、次世代の省エネルギー製品(例えば太陽電池、発電素子、ディスプレイ装置、照明装置等)に適用されるキー・パーツとして位置づけられる。
表示装置としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子、タッチパネル、電子ペーパー等を挙げることができる。また、これらの表示装置をアクティブマトリックス駆動する薄膜トランジスタも、この表示装置に含まれる。なお、これら各表示装置の構成は特に限定されず、それぞれ従来公知の構成を適宜採用することができ、且つそうした各表示装置に適用するガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4による封止手段も特に限定されず、従来公知の手段とすることができる。
具体的には、例えば、有機EL素子としては、本発明に係る製造方法で得られたガスバリア性フィルム10上に陰極と陽極を有し、両電極の間に、有機発光層(単に「発光層」ともいう。)を含む有機層を有するものを挙げることができる。発光層を含む有機層の積層態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。また、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間に電子注入層を有してもよい。また、発光層は一層だけでもよく、また、第一発光層、第二発光層及び第三発光層等のように発光層を分割してもよい。さらに、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。なお、有機EL素子は発光素子であることから、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
発電装置としては、例えば、太陽電池素子(太陽電池モジュール)を挙げることができる。発電装置の構成は特に限定されず、従来公知の構成を適宜採用することができる。さらに、そうした発電装置に適用するガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4による封止手段も特に限定されず、従来公知の手段とすることができる。例えば、ガスバリア性フィルム10を太陽電池素子の裏面保護シートとして用いることができる。
具体的には、例えば、太陽電池モジュールとしては、本発明に係る製造方法で得られたガスバリア性フィルム10を太陽電池バックシートとして使用した例を挙げることができる。こうした太陽電池モジュールは、太陽光側から厚さ方向に順に、前面基材(ガラス又はフィルム等の高光線透過性を有するもの)、充填材、太陽電池素子、リード線、端子、端子ボックス、太陽電池バックシートの構成で、それらがシール材を介して両端の外装材(アルミ枠等)に固定されている。その太陽電池バックシートとしては、裏面封止用フィルムと、外層側に配置されるフィルムとの間に、本発明に係る製造方法で得られたガスバリア性シート10を挟んで構成される例を挙げることができる。裏面封止用フィルムとしては、太陽電池モジュール側で太陽光を反射して電換効率を高めるべく、高度な反射率を有する例えば白色のポリエステルフィルム等が使用される。また、外層側に配置されるフィルムとしては、耐候性、耐加水分解性フィルム等が使用される。
本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
プラスチック基材1として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、コスモシャインA−4300)の片面に、下記の組成に調整した有機層形成用組成物A(紫外線硬化型有機層用インキ)をダイコートにて塗布し、120℃で2分間乾燥させた後、波長260nm〜400nmの範囲における積算光量300mJ/cmの条件で紫外線を照射し、厚さ5μmの有機層2を形成した。
(有機層形成用組成物Aの組成)
・下記式(11)で表される、マレイミド基を有するモノマー化合物(重量平均分子量:23000、東亞合成株式会社製:UVT−302、マレイミド基の成分含量はモノマー化合物中の約30質量%)38質量部
・重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名:IRGACURE(登録商標)184、BASF社)2質量部
・増感剤(2,4−ジメチルチオキサントン、DKSHジャパン社製:SPEEDCURE DETX)1質量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)60質量部
Figure 2012096409
無機層3は、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に有機層2を形成したプラスチックフィルムを有機層側に成膜する向きにして、ホローカソード型イオンプレーティング装置にセットした。そして、蒸発源材料である酸化珪素(高純度化学研究所製)を、ホローカソード型イオンプレーティング装置内の坩堝に投入した後、真空引きを行った。真空度が5×10−4Paまで到達した後、プラズマガンにアルゴンガスを15sccm導入し、電流110A、電圧90Vのプラズマを発電させた。チャンバー内を1×10−1Paに維持することと磁力によりプラズマを所定方向に曲げ、蒸発源材料に照射させた。坩堝内の蒸発源材料は溶融状態を経て昇華することが確認された。イオンプレーティングを15秒間行って基板に堆積させることにより、膜厚100nmの酸化珪素層を形成した。
以上のようにして得た実施例1のガスバリア性フィルム10の層構成は、ポリエチレンテレフタレート/有機層/無機層である。
[実施例2]
下記の組成に調整した有機層形成用組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2のガスバリア性フィルム10を製造した。
(有機層形成用組成物Bの組成)
・上記式(11)で表される、マレイミド基を有するモノマー化合物(重量平均分子量:23000、東亞合成株式会社製:UVT−302)19質量部
・下記一般式(12)の化合物(R〜R=水素原子、n+n=2、新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A−BPEF)19質量部
・重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名:IRGACURE(登録商標)184、BASF社)2質量部
・増感剤(2,4−ジメチルチオキサントン、DKSHジャパン社製:SPEEDCURE DETX)1質量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)60質量部
Figure 2012096409
[実施例3]
下記の組成に調整した有機層形成用組成物Cを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3のガスバリア性フィルム10を製造した。
(有機層形成用組成物Cの組成)
・上記式(11)で表される、マレイミド基を有するモノマー化合物(重量平均分子量:23000、東亞合成株式会社製:UVT−302)38質量部
・重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名:IRGACURE(登録商標)184、BASF社)2質量部
・増感剤(2−クロロチオキサントン、日本化薬株式会社製:カヤキュアーCTX)1質量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)60質量部
[実施例4]
下記の組成に調整した有機層形成用組成物Dを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例4のガスバリア性フィルム10を製造した。
(有機層形成用組成物Dの組成)
・上記式(11)で表される、マレイミド基を有するモノマー化合物(重量平均分子量:23000、東亞合成株式会社製:UVT−302)38質量部
・重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名:IRGACURE(登録商標)184、BASF社)2質量部
・増感剤(2−イソプロピルチオキサントン、日本化薬株式会社製:カヤキュアーITX)1質量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)60質量部
[実施例5]
下記の組成に調整した有機層形成用組成物Eを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例5のガスバリア性フィルム10を製造した。
(有機層形成用組成物Eの組成)
・上記式(11)で表される、マレイミド基を有するモノマー化合物(重量平均分子量:23000、東亞合成株式会社製:UVT−302)38質量部
・重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名:IRGACURE(登録商標)184、BASF社)2質量部
・増感剤(ベンゾフェノン、DKSHジャパン社製:SPEEDCURE BENZOPHENONE)1質量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)60質量部
[実施例6]
下記の組成に調整した有機層形成用組成物Fを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例6のガスバリア性フィルム10を製造した。
(有機層形成用組成物Fの組成)
・上記式(11)で表される、マレイミド基を有するモノマー化合物(重量平均分子量:23000、東亞合成株式会社製:UVT−302)38質量部
・重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名:IRGACURE(登録商標)184、BASF社)2質量部
・増感剤(4−メチルベンゾフェノン、DKSHジャパン社製:SPEEDCURE MBP)1質量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)60質量部
[比較例1]
下記の組成に調整した有機層形成用組成物Gを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1のガスバリア性フィルム10を製造した。
(有機層形成用組成物Fの組成)
・上記一般式(12)の化合物(R〜R=水素原子、n+n=2、新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A−BPEF)38質量部
・重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名:IRGACURE(登録商標)184、BASF社)2質量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)60質量部
[比較例2]
下記の組成に調整した有機層形成用組成物Hを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例2のガスバリア性フィルムを製造した。
(有機層形成用組成物Hの組成)
・上記式(11)で表される、マレイミド基を有するモノマー化合物(重量平均分子量:23000、東亞合成株式会社製:UVT−302)38質量部
・重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名:IRGACURE(登録商標)184、BASF社)2質量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)60質量部
[比較例3]
下記の組成に調整した有機層形成用組成物Iを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例3のガスバリア性フィルムを製造した。
(有機層形成用組成物Iの組成)
・上記式(11)で表される、マレイミド基を有するモノマー化合物(重量平均分子量:23000、東亞合成株式会社製:UVT−302)38質量部
・重合開始剤(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、商品名:IRGACURE(登録商標)651、BASF社)2質量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)60質量部
[比較例4]
下記の組成に調整した有機層形成用組成物Jを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例4のガスバリア性フィルムを製造した。
(有機層形成用組成物Jの組成)
・上記式(11)で表される、マレイミド基を有するモノマー化合物(重量平均分子量:23000、東亞合成株式会社製:UVT−302)38質量部
・重合開始剤(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、商品名:IRGACURE(登録商標)907、BASF社)2質量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)60質量部
[評価と結果]
(ガスバリア性の測定方法)
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られたガスバリア性フィルムについて、水蒸気透過率の測定を行った。測定は、ガスバリア性フィルムの製造後の初期時と、温度60℃・湿度90%の条件下で500時関経過させた後の耐久試験(耐湿熱試験)後とを評価した。初期時と耐久試験後の測定条件は、温度37.8℃、湿度100%RHの条件下で、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、商品名:PERMATRAN−W3/31)を用いて行った。その結果を表1に示す。
(結果)
表1に示すように、実施例1〜6は、初期時の水蒸気ガスバリア性が良好でいずれも0.05g/m・day未満となり、良好な水蒸気ガスバリア性を示した。また、耐久試験後も良好であり、いずれも0.08g/m・day以下であった。特に実施例1〜4は、耐久試験後であっても0.05g/m・day未満となり、耐湿熱性に特に優れたガスバリア性フィルムということができる。一方、比較例1〜4は、初期時の水蒸気ガスバリア性は良好であったが、耐久試験後の水蒸気ガスバリア性に劣った。
Figure 2012096409
1 プラスチック基材
2,2’ 有機層
3,3’ 無機層
4,4’ ガスバリア層
10,10A,10B ガスバリア性フィルム
S1 プラスチック基材の片面
S2 プラスチック基材の他の面

Claims (7)

  1. プラスチック基材上に、一般式(1)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物と重合開始剤と前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤とを含む組成物で有機層を形成する工程と、前記有機層上に無機層を形成する工程と、を有することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。但し、一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基を表すか、又は、R及びRは一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。
    Figure 2012096409
  2. 前記マレイミド基を有するモノマー化合物が、一般式(2)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物である、請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。但し、一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基を表すか、又は、R及びRは一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。また、Rはアルキレン基を表す。nは1〜6の整数を表す。
    Figure 2012096409
  3. 前記増感剤が、三重項増感剤である、請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  4. 前記三重項増感剤が、ベンゾフェノン類及び/又はチオキサントン類である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  5. 前記基材の他方の面にも、前記有機層と前記無機層とをその順で設ける、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  6. 前記基材が、ポリエチレンナフタレートフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記無機層が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、及び酸化珪素亜鉛から選ばれる1種又は2種以上からなる層である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  7. 一般式(1)で表されるマレイミド基を有するモノマー化合物と重合開始剤と前記マレイミド基の二量化反応を増感させる増感剤とを含む組成物で有機層を形成する工程と、前記有機層上に無機層を形成する工程と、を有することを特徴とするガスバリア層の形成方法。(但し、一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基若しくはアリール基を表すか、又は、R及びRは一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。)
    Figure 2012096409
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