JP2013215740A - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、C:0.02〜0.08%、Si:0.2〜1.0%、Mn:1.0〜4.0%、フラックスに、TiO2換算値:3.0〜6.0%、SiO2換算値:1.0〜4.0%、FeO換算値:0.1〜1.0%、Mg、AlおよびZrの1種または2種以上の合計:0.2〜1.0%でかつ、Zr酸化物およびZrのZrO2換算値の合計:0.2〜1.5%、MgのMgO換算値およびMgOの合計:1.0〜3.5%、Al酸化物およびAlのAl2O3換算値の合計:0.05〜0.70%を満足し、F換算値:0.03〜0.30%、Na2O換算値およびK2O換算値の合計:0.05〜0.3%、スラグ形成剤の合計:6.0〜13.0%を含有する。
【選択図】 なし
Description
鋼製外皮のC:0.010質量%以下、
ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
C:0.02〜0.08%、
Si:0.2〜1.0%、
Mn:1.0〜4.0%、
さらに、フラックスに、
Ti酸化物のTiO2換算値:3.0〜6.0%、
Si酸化物のSiO2換算値:1.0〜4.0%、
Fe酸化物のFeO換算値:0.1〜1.0%、
Mg、AlおよびZrの内の1種または2種以上の合計:0.2〜1.0%であって、かつ、Zr酸化物およびZrのZrO2換算値の内の1種または2種の合計:0.2〜1.5%、MgのMgO換算値およびMgOの内の1種または2種の合計:1.0〜3.5%、Al酸化物およびAlのAl2O3換算値の内の1種または2種の合計:0.05〜0.70%、を満足し、
弗素化合物のF換算値:0.03〜0.30%、
Na化合物のNa2O換算値およびK化合物のK2O換算値の内の1種または2種の合計:0.05〜0.3%、
スラグ形成剤の合計:6.0〜13.0%を含有し、
残部は鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金からのFe分および不可避不純物であることを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
鋼製外皮のCは、アークの強さ、スパッタ発生量およびヒューム発生量などの溶接作業性や溶接性能に大きく影響する。特に、大脚長を得るための溶接で安定したビードを得るためには、アークの強さをできるだけソフトにして溶融プールに与える影響を少なくする必要がある。製鋼外皮のCが0.010%を超えると、アークが強くなり、溶融プールが乱れやすく、ビード波形が不揃いとなりやすく、安定したビード外観を得ることができない。なお、製鋼外皮のCの下限については特に限定しないが、製鋼時のコスト面から0.001%とする。したがって、鋼製外皮のCは0.010%以下とする。なお、好ましくは0.002〜0.008%とする。
Cは、鋼製外皮、Fe−Mnおよびグラファイト等から添加され、溶接金属の強度および靭性を調整する重要な元素の1つである。Cが0.02%未満であると、溶接金属の強度および靭性が低下する。一方、Cが0.08%を超えると、アークが強くなりすぎてスパッタ発生量が多くなる。さらに、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でCは0.02〜0.08%とする。なお、好ましくは0.03〜0.07%とする。
Siは、鋼製外皮、金属Si、Fe−SiおよびFe−Si−Mn等から添加され、脱酸剤として作用して溶接金属の強度および靭性を確保するために添加する。また、溶融金属の粘性を向上させてビードを整える役割も果たす。Siが0.2%未満であると、脱酸不足となり溶接部にピット等の溶接欠陥が発生するとともに溶接金属の強度および靭性が低下する。また、溶融金属の粘性が低下してビード形状が凸ビードになりやすく、良好なビード外観を得ることができなくなる。一方、Siが1.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.2〜1.0%とする。なお、好ましくは0.3〜0.8%とする。
Mnは、鋼製外皮、金属MnおよびFe−Mn、Fe−Si−Mn等から添加され、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属の強度および靭性を確保するために添加する。Mnが1.0%未満であると、脱酸不足となりピット等の溶接欠陥が発生する。さらに、溶接金属の強度および靭性が低下する。一方、Mnが4.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは1.0〜4.0%とする。なお、好ましくは1.5〜3.5%とする。
TiO2は、スラグ形成剤の主成分であり、ルチール、酸化チタン、チタン酸ソーダ、チタンスラグ、イルミナイト等から添加される。これらは溶融スラグの粘性を高め、ビード全体を均一に包被してビード形状を整える作用を有する。特に、水平すみ肉溶接の1パス溶接で大脚長のビードを得るためには必要不可欠な成分であり、アークを持続して安定させスパッタ発生量を低減させる効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値が3.0%未満であると、スラグ生成量が不足してビードを均一に被包できないためスラグ剥離が悪くなり、また、溶融スラグの粘性が低くなるので、ビード形状を整えることができなくなる。その結果、ビード形状が凸ビードとなり、満足するビード外観を得ることができない。また、アークを安定させる効果が弱いのでスパッタ発生量も増加する。一方、Ti酸化物のTiO2換算値が6.0%を超えると、アークは安定してスパッタ発生量は減少するが、溶融スラグの粘性が高くなりすぎてスラグMnは、鋼製外皮、金属MnおよびFe−Mn、Fe−Si−Mn等から添加され、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属の強度および靭性を確保するために添加する。Mnが1.0%未満であると、脱酸不足となりピット等の溶接欠陥が発生する。さらに、溶接金属の強度および靭性が低下する。一方、Mnが4.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは1.0〜4.0%とする。なお、好ましくは1.5〜3.5%とする。
TiO2は、スラグ形成剤の主成分であり、ルチール、酸化チタン、チタン酸ソーダ、チタンスラグ、イルミナイト等から添加される。これらは溶融スラグの粘性を高め、ビード全体を均一に包被してビード形状を整える作用を有する。特に、水平すみ肉溶接の1パス溶接で大脚長のビードを得るためには必要不可欠な成分であり、アークを持続して安定させスパッタ発生量を低減させる効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値が3.0%未満であると、スラグ生成量が不足してビードを均一に被包できないためスラグ剥離が悪くなり、また、溶融スラグの粘性が低くなるので、ビード形状を整えることができなくなる。その結果、ビード形状が凸ビードとなり、満足するビード外観を得ることができない。また、アークを安定させる効果が弱いのでスパッタ発生量も増加する。一方、Ti酸化物のTiO2換算値が6.0%を超えると、アークは安定してスパッタ発生量は減少するが、溶融スラグの粘性が高くなりすぎてスラグ巻き込みが発生しやすく、また、溶融プールからのガス抜けが悪くなるため、ガス溝やピットなどの気孔欠陥が発生しやすくなる。したがって、Ti酸化物のTiO2換算値は3.0〜6.0%とする。なお、好ましくは3.5〜5.5%とする。
SiO2は、珪砂、ジルコンサンド等から添加され、スラグ形成剤として作用し、ビード形状を整える効果がある。Si酸化物のSiO2換算値が1.0%未満であると、スラグ形成剤としての効果が不十分でアンダーカットが発生する。一方、Si酸化物のSiO2換算値が4.0%を超えると、ガスの放出が阻害されるので、耐ピット性が悪くなる。また、アークも荒くなりスパッタ発生量が多くなる。したがって、Si酸化物のSiO2換算値は1.0〜4.0%とする。なお、好ましくは1.5〜3.5%とする。
Fe酸化物は、酸化鉄、チタンスラグ、イルミナイト等から添加される。Fe酸化物は溶融スラグの粘性を調整してビード形状を整え、ビード形状を良好にする。Fe酸化物のFeO換算値が0.1%未満であると、溶融スラグの流動性が悪くビード形状を整えることができなくなり、下板側のビード止端部が不揃いになり、良好なビード外観を得ることができなくなる。一方、Fe酸化物のFeO換算値が1.0%を超えると、溶融スラグの粘性が過剰に低下して溶融スラグが流れて立板側にアンダーカットが発生する。したがって、Fe酸化物のFeO換算値は0.1〜1.0%とする。なお、好ましくは0.1〜0.8%とする。
Mg、AlおよびZrは、脱酸剤として添加され、溶融金属中の酸素量を下げることで、溶接金属の靭性の向上および溶融金属の粘性を調整し、ビード形状を整える効果がある。Mg、AlおよびZrの内の1種または2種以上の合計が0.20%未満であると、溶接金属中の酸素量が増え、溶接金属の靭性が低下する。また、溶融金属の粘性が低下して下板側のビード止端部が不揃いとなり、良好なビード外観を得ることができなくなる。一方、Mg、AlおよびZrの内の1種または2種以上の合計が1.0%を超えると、アークが粗くなりスパッタ発生量が多くなる。したがって、Mg、AlおよびZrの内の1種または2種以上の合計は0.2〜1.0%とする。なお、好ましくは0.3〜0.9%とする。
Zrは、金属ジルコン、Fe−Si−Zr等から添加され、脱酸剤として作用し、溶接中にZrO2となりスラグの一部となる。また、Zr酸化物は、ジルコンサンドおよび酸化ジルコニウム等から添加され、スラグ被包性を改善してビード形状を改善するスラグ形成剤として作用する。Zr酸化物を添加することにより、スラグの凝固温度が高くなりスラグの凝固が早くなるので、大脚長を得るためのビード保持作用が大きく、ビード形状を良好にする。Zr酸化物およびZrはスラグ形成剤として同様の作用を奏するものであるから1種の添加でよいが、2種添加してもよい。Zr酸化物およびZrのZrO2換算値の内の1種または2種の合計が0.2%未満であると、大脚長を得るためのビードを保持する力が弱まり、ビード波形が不揃いとなり、良好なビード外観を得ることができなくなる。一方、Zr酸化物およびZrのZrO2換算値の内の1種または2種の合計が1.5%を超えると、アークが荒くなりスパッタ発生量が多くなるとともに、スラグ剥離が悪くなる。したがって、Zr酸化物およびZrのZrO2換算値の内の1種または2種の合計は0.2〜1.5%とする。なお、好ましくは0.3〜1.3%とする。
Mgは、金属Mg、Al−Mg等から添加され、脱酸剤として作用し、溶接中にMgOとなりスラグの一部となる。また、MgOは、マグネシアクリンカー、天然マグネシア等から添加される。MgOは、スラグの凝固温度を高くしてスラグの凝固を早くするので、大脚長を得るためのビード保持作用が大きく、下板側のビード止端部形状をフラットに滑らかにする。MgとMgOはスラグに対して同様の作用を奏するものであるから1種の添加でよいが、2種添加してもよい。MgのMgO換算値およびMgOの1種または2種の合計が1.0%未満であると、ビードを保持する力が弱まり、アンダーカットが発生して大脚長を確保することができない。また、下板側のビード止端部形状がオーバーラップとなる。一方、MgのMgO換算値およびMgOの内の1種または2種の合計が3.5%を超えると、溶融スラグの粘性が高くなってスラグ巻き込みが発生しやすく、ビード外観が悪くなる。したがって、MgのMgO換算値およびMgOの内の1種または2種の合計は1.0〜3.5%とする。なお、好ましくは1.5〜3.0%とする。
Alは、金属Al、Fe−Al、Al−Mg等から添加され、脱酸剤として作用し、溶接中にAl2O3となりスラグの一部となる。また、Al酸化物は、アルミナ、カリ長石、曹長石等から添加される。Al酸化物は、スラグの凝固温度を上昇させてビード形状を整える効果がある。Al酸化物およびAlはスラグに対して同様の作用を奏するものであるから1種の添加でよいが、2種添加してもよい。Al酸化物およびAlのAl2O3換算値の内の1種または2種の合計が0.05%未満であると、アンダーカットが生じやすくなる。一方、Al酸化物およびAlのAl2O3換算値の内の1種または2種の合計が0.70%を超えると、スラグが固化してスラグ剥離性が悪くなる。したがって、Al酸化物およびAlのAl2O3換算値の内の1種または2種の合計は0.05〜0.70%とする。なお、好ましくは0.10〜0.60%とする。
Fは、弗化ソーダ、珪弗化カリ、氷晶石、弗化アルミニウム、弗化リチウムおよび蛍石等から添加され、アークの安定性を向上させて耐ピット性を向上させる。弗素化合物のF換算値が0.03%未満であると、アークの集中性が弱くなり安定したアーク状態を得ることができず、耐ピット性も悪化する。一方、弗素化合物のF換算値が0.30%を超えると、アークが荒くなりスパッタ発生量および溶接ヒュームの発生量が多くなる。したがって、弗素化合物のF換算値は0.03〜0.30%とする。なお、好ましくは0.05〜0.25%とする。
NaおよびKは、カリ長石または珪酸ソーダや珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、弗化ソーダや珪弗化カリなどの弗素化合物から添加され、アーク安定剤としての作用だけではなく、スラグ形成剤として溶融スラグの凝固過程の急激な粘性増加を抑える作用がある。Na化合物のNa2O換算値およびK化合物のK2O換算値の内の1種または2種の合計が0.05%以下では、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる。一方、Na化合物のNa2O換算値およびK化合物のK2O換算値の内の1種または2種の合計が0.3%を超えると、スパッタやヒューム発生量が増加する。したがって、Na化合物のNa2O換算値およびK化合物のK2O換算値の内の1種または2種の合計は0.05〜0.3%とする。なお、好ましくは0.1〜0.25%とする。
スラグ形成剤は、ビード形状を整える作用がある。大脚長を得るための溶接時でのスラグ形成剤の役割は非常に大きく、溶融スラグが溶融金属を押さえ込み、良好なビード形状を得るためには不可欠である。スラグ形成剤の合計が6.0%未満であると、スラグ生成量が不足してビードを整えることができなくなり、アンダーカットが発生して大脚長のビードを得ることができなくなり、下板側のビード止端部形状がオーバーラップとなる。また、アークが荒くなりスパッタ発生量が多くなる。一方、スラグ形成剤の合計が13.0%を超えると、アークが安定してスパッタ発生量も減少するが、スラグ生成量が多くなり、スラグ巻き込みが発生しやすくなり、耐ピット性も悪くなる。したがって、スラグ形成剤の合計は6.0〜13.0%とする。なお、好ましくは7.0〜12.0%とする。
スラグ形成剤は、前記弗素化合物も含み、TiO2、SiO2、FeO、ZrO2、MgO、Al2O3、K2O、Na2O等の酸化物の合計をいう。なお、Mg、Al、Zr合金等は除くものとする。
Biは、金属Biや酸化Bi等から添加され、スラグ剥離性を向上させ、ビード表面に光沢を出しビード外観を良好にする作用があり、1種または2種添加する。金属BiおよびBi酸化物のBi換算値の内の1種または2種の合計が0.005%未満では、その効果が得られず、スラグ剥離性が悪くなる。一方、金属BiおよびBi酸化物のBi換算値の内の1種または2種の合計が0.045%を超えると、高温割れが発生し、溶接金属の靭性も低下する。したがって、金属BiおよびBi酸化物のBi換算値の内の1種または2種の合計は0.005〜0.045%とする。なお、好ましくは0.010〜0.035%とする。
Claims (2)
- 鋼製外皮にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
鋼製外皮のC:0.010質量%以下、
ワイヤ全質量に対する質量%で、
鋼製外皮とフラックスの合計で、
C:0.02〜0.08%、
Si:0.2〜1.0%、
Mn:1.0〜4.0%、
さらに、フラックスに、
Ti酸化物のTiO2換算値:3.0〜6.0%、
Si酸化物のSiO2換算値:1.0〜4.0%、
Fe酸化物のFeO換算値:0.1〜1.0%、
Mg、AlおよびZrの内の1種または2種以上の合計:0.2〜1.0%であって、かつ、Zr酸化物およびZrのZrO2換算値の内の1種または2種の合計:0.2〜1.5%、MgのMgO換算値およびMgOの内の1種または2種の合計:1.0〜3.5%、Al酸化物およびAlのAl2O3換算値の内の1種または2種の合計:0.05〜0.70%、を満足し、
弗素化合物のF換算値:0.03〜0.30%、
Na化合物のNa2O換算値およびK化合物のK2O換算値の内の1種または2種の合計:0.05〜0.3%、
スラグ形成剤の合計:6.0〜13.0%を含有し、
残部は鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金からのFe分および不可避不純物であることを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックスに、金属BiとBi酸化物のBi換算値の内の1種または2種の合計:0.005〜0.045%を更に含有することを特徴とする請求項1記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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