JP2013213008A - ケイ素化合物及びその製造方法、並びにその利用 - Google Patents

ケイ素化合物及びその製造方法、並びにその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】ラジカル重合開始能を有する新規なケイ素化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)、より好ましくは式(4)で表されるケイ素化合物である(式中、Aはラジカル重合開始能基、Z及びZはそれぞれ独立に少なくとも炭素原子を含む2価の基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、nは1〜3の整数、Xはハロゲン、R及びRはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜3のアルキル基であるが、ともに水素であることはない。aは3〜11の整数、mは1〜3の整数)。
【化1】
Figure 2013213008

【選択図】なし

Description

本発明は、新規なケイ素化合物、及びその製造方法に関するものである。本発明は、また、該ケイ素化合物からなるラジカル重合開始剤、それを用いたポリマーの製造方法、及び得られたポリマーを含むゴム組成物に関し、更に、該ケイ素化合物を用いて固体物質にポリマーグラフト鎖を形成した複合体及びその製造方法、並びに該複合体からなる成形体に関するものである。
固体物質の表面に高分子をグラフトする方法の1つとして、固体物質表面からリビングラジカル重合することにより、濃厚な高分子ブラシを固体物質表面に生成させる試みがなされている。この方法では、予め固体物質の粒子表面に重合開始剤を固定化した後、各種モノマーを重合することによりポリマーグラフト鎖を形成する。
例えば、下記特許文献1や非特許文献1には、固体物質の表面に対してシランカップリング処理可能な重合開始剤を用いることが開示されている。具体的には、重合開始剤としては、(2−ブロモ−2−メチル)プロピオニルオキシヘキシルトリエトキシシラン(BHE)が開示されており、BHEは、分子鎖の一方にラジカル重合開始基を有しかつ他方に二重結合を有する化合物に対し、その二重結合にアルコキシシランをヒドロシリル化反応させることで合成されている。しかしながら、このような製造方法では、ヒドロシリル化反応の反応効率が高いとは言えず、必ずしも工業的とはいえない。
また、下記特許文献2,3には、上記と同様の重合開始剤であるリビングラジカル重合開始能を有するケイ素化合物の製造方法として、クロロシランをヒドロシリル化反応させた後、オルトギ酸エステルやアルコールを反応させてアルコキシ基を導入する方法が開示されている。この方法では反応効率を改善することはできるものの、ヒドロシリル化反応の触媒が禁水性であるなどの問題がある。
WO2005/108451 特開2006−213661号公報 特開2007−008859号公報
本発明は、ラジカル重合開始能を有する新規なケイ素化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様に係るケイ素化合物は、下記一般式(1)で表されるものである。
Figure 2013213008
式中、Aはラジカル重合開始能を有する基であり、Z及びZはそれぞれ独立に少なくとも炭素原子を含む2価の基であり、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基である。nは1〜3の整数である。
本発明の第2の態様に係るケイ素化合物は、下記一般式(4)で表されるものである。
Figure 2013213008
式中、Xはハロゲンであり、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基である。R及びRはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜3のアルキル基であるが、ともに水素であることはない。aは3〜11の整数であり、mは1〜3の整数であり、nは1〜3の整数である。
本発明に係る第3の態様は、下記一般式(5)で表されるケイ素化合物の製造方法であって、下記一般式(6)で表される化合物と下記一般式(7)で表される化合物を反応させる工程を含むものである。
Figure 2013213008
式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基である。R、R及びRはそれぞれ独立に炭素、水素、酸素、窒素、ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1つで構成される構造であり、R、R及びRのうち少なくとも1つはハロゲンである。Z、Z及びZはそれぞれ独立に少なくとも炭素原子を含む2価の基である。nは1〜3の整数である。
本発明の第4の態様に係るラジカル重合開始剤は、上記ケイ素化合物からなるものである。
本発明の第5の態様に係るポリマーの製造方法は、該ラジカル重合開始剤を用いて、モノマーをラジカル重合またはリビングラジカル重合するものである。
本発明の第6の態様に係るゴム組成物は、第5の態様の製造方法により得られた末端にアルコキシシリル基を有するポリマーを、ゴム成分100質量部に対して0.1〜100質量部含有するものである。
本発明の第7の態様に係る複合体の製造方法は、固体物質表面に上記ケイ素化合物を固着させ、固着したケイ素化合物からモノマーをリビングラジカル重合してポリマーグラフト鎖を形成するものである。
本発明の第8の態様に係る複合体は、第7の態様に係る製造方法により得られるものである。
本発明の第9の態様に係る成形体は、上記複合体からなるものである。
本発明によれば、ラジカル重合開始能を有する新規なケイ素化合物が提供される。このケイ素化合物はラジカル重合開始剤として好適に用いられ、例えば、各種材料への固定化が可能な重合開始剤として用いることができる。また、本発明によれば、簡便な方法で該ケイ素化合物を製造することができる。
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
本実施形態に係るケイ素化合物は、下記一般式(1)で表されるものである。
Figure 2013213008
式(1)中、Aはラジカル重合開始能を有する基(以下、単にラジカル重合開始基ということがある。)であり、Z及びZはそれぞれ独立に少なくとも炭素原子を含む2価の基であり、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基であり、nは1〜3の整数である。
本実施形態にかかるケイ素化合物は、構造中に有するチオエーテル基の硫黄原子に不対電子を有しているため、金属や無機物質、高分子物質との親和性が高く、それを有していない場合と比べて、固体物質表面への固着性が高く、また高分子やゴムといったマトリクスへの分散性が向上する。
上記Aは、ラジカル重合開始能を有する基であるが、好ましくはリビングラジカル重合開始能を有する基である。リビングラジカル重合の反応様式としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、イニファータによる方法、可逆的連鎖移動触媒重合(RTCP)などが挙げられるが、特に限定されない。
原子移動ラジカル重合開始能を有する基としては、例えば、ハロアルキル基、ハロエステル基、ハロアルキルフェニル基、ハロケトン基、ハロニトリル基、ハロゲン化スルホニル基、ジチオカルバメート基などが挙げられる。好ましくは、ハロエステル基、ハロアルキルフェニル基である。この場合、塩化銅/アミン錯体などの遷移金属錯体の存在下でラジカルが発生し、重合反応が進行する。可逆的付加開裂連鎖移動重合能を有する基としては、例えば、ジチオエステル基、トリチオカルボネート基、ザンテート基、ジチオカルボメート基などが挙げられる。この場合、アゾ化合物や有機過酸化物を重合触媒として使用する。イニファータの場合の例としては、ジチオカルバメート基が挙げられる。可逆的連鎖移動触媒重合(RTCP)の場合の例としては ヨウ化アルキル基があげられる。この場合、ラジカル発生剤とヨウ化物触媒の存在下でラジカルが発生し、重合反応が進行する。
ハロアルキル基としては、例えば、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチルなどが挙げられる。ハロアルキルフェニル基としては、例えば、クロロメチルフェニル、ブロモメチルフェニル、ヨードメチルフェニル、(1−クロロエチル)フェニル、(1−ブロモエチル)フェニル、(1−ヨードエチル)フェニルなどが挙げられる。ハロケトン基としては、例えば、トリクロロエタノイル、ジクロロエタノイルなどが挙げられる。ハロニトリル基としては、例えば、クロロシアノメチル、ブロモシアノメチル、ヨードシアノメチルなどが挙げられる。ハロゲン化スルホニル基としては、例えば、クロロスルホニルなどが挙げられる。
上記Aのラジカル重合開始基としては、下記一般式(2)で表されるα−ハロエステル基が好ましい。
Figure 2013213008
式(2)中、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素、水素、酸素、窒素、ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1つで構成される構造であり、R、R及びRのうち少なくとも1つはハロゲンである。ハロゲンとしては、塩素、臭素またはヨウ素が好ましく、より好ましくは臭素である。R、R及びRは、基本的には、それぞれ、水素、炭化水素基またはハロゲンであるが、ラジカル重合開始能を損なわない限り、酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基を有してもよい。好ましくは、Rがハロゲンであり、R及びRが、それぞれ独立して水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基であり、但しR及びRがともに水素であることはない。アルキル基は、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。アリール基は、より好ましくはフェニル基およびメチルフェニル基である。アリールアルキル基は、より好ましくはベンジル基およびフェネチル基である。R及びRの特に好ましい例はメチル基である。
上記Aのラジカル重合開始基としては、下記一般式(3)で表されるチオカルボニルチオ基であることも好ましい態様である。
Figure 2013213008
式(3)中、Rは炭素、水素、酸素、窒素、ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1つで構成される構造である。ここで、Rが、炭化水素基の場合が、ジチオエステル基である。Rが、R−S−の場合(但し、Rは炭化水素である。)が、トリチオカルボネート基である。Rが、R−O−の場合(但し、Rは炭化水素である。)が、ザンテート基である。Rが、R1011N−の場合(但し、R10およびR11はそれぞれ独立して水素または炭化水素基である。)が、ジチオカルバメート基である。これらのチオカルボニルチオ基は、ラジカル重合開始能を損なわない限り、酸素、窒素及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基を有してもよい。より好ましくは、ジチオエステル基の場合、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基であり、特に好ましくはフェニル基である。トリチオカルボネート基及びザンテート基の場合、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基であることが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である。ジチオカルバメート基の場合、R10およびR11は、それぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基であることが好ましく、より好ましくはR10がアルキル基、R11がアリール基である。また、R10とR11は互いに結合してNとともに環を形成してもよい。
式(1)において、Zは、上記Aのラジカル重合開始基と−S−で表されるチオエーテル基とを結合する2価の基であり、好ましくは、炭素数が1〜20である2価の有機基であり、該有機基は、エーテル結合を含んでもよく、また酸素、窒素、ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基を有してもよい。より好ましくは、Zは、炭素数3〜11のアルキレン基である。
式(1)において、Zは、チオエーテル基と−Si(0R(R3−nで表されるアルコキシシリル基とを結合する2価の基であり、好ましくは、炭素数が1〜20である2価の有機基であり、該有機基は、エーテル結合を含んでもよく、また酸素、窒素、ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基を有してもよい。より好ましくは、Zは、炭素数1〜3のアルキレン基である。
式(1)において、Rは、炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくは、メチル基またはエチル基である。Rは、1分子中に複数有する場合、同一でも異なっていてもよい。Rは、炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくは、メチル基またはエチル基である。Rは、1分子中に複数有する場合、同一でも異なっていてもよい。また、nは1〜3の整数であり、好ましくはn=3である。すなわち、−Si(0R(R3−nで表されるアルコキシシリル基は、トリアルコキシシリル基であることが好ましく、より好ましくはトリエトキシシリル基またはトリメトキシシリル基である。
本実施形態に係るケイ素化合物としては、下記一般式(4)で表されるものが特に好ましい態様である。この態様は、ラジカル重合開始基としてα−ハロエステル基を有するものである。
Figure 2013213008
式(4)中、Xは、ハロゲンであり、塩素、臭素またはヨウ素が好ましく、より好ましくは臭素である。R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基である。R及びRは、それぞれ独立に水素又は炭素数1〜3のアルキル基であるが、ともに水素であることはない。R及びRは、好ましくはそれぞれメチル基またはエチル基であり、更に好ましくはともにメチル基である。aは、3〜11の整数であり、mは、1〜3の整数である。nは、1〜3の整数であり、特に好ましくはn=3である。
以上のような実施形態に係るケイ素化合物は、分子内にラジカル重合開始基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物と、メルカプト基を有するシランカップリング剤とを反応させることにより合成することができる。詳細には、下記一般式(6)で表される化合物と下記一般式(7)で表される化合物を反応させることにより、下記一般式(5)で表されるケイ素化合物を製造することができる。式(5)で表されるケイ素化合物は、上記一般式(1)においてラジカル重合開始基として上記一般式(2)で表されるα−ハロエステル基を有するものであり、以下では、これについて製造方法を詳細に説明するが、該製造方法は、ラジカル重合開始基として、上記一般式(3)で表されるチオカルボニルチオ基を有する場合でも、更には、他のラジカル重合開始基を有する場合でも、同様に行うことができる。
Figure 2013213008
式(5)〜(7)中、R、R、Z、Z及びnは、上記式(1)と同じである。また、R、R及びRは、上記式(2)と同じである。Zは、炭素原子を含む2価の基であり、好ましくは炭素数が1〜18である2価の有機基であって、該有機基は、エーテル結合を含んでもよく、また酸素、窒素、ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基を有してもよい。より好ましくは、Zは、炭素数1〜9のアルキレン基であり、Zよりも炭素数が2つ少ない基である。
式(6)で表される化合物が、分子内にラジカル重合開始基と二重結合を有する化合物であり、式(7)で表される化合物が、メルカプト基を有するシランカップリング剤である。この反応では、式(6)の化合物の二重結合に対し、式(7)の化合物のメルカプト基を、エン−チオール反応させることに結合するものである。
反応に際しては、ラジカル発生剤を反応触媒として用いる。ラジカル発生剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物などが挙げられ、熱によりラジカルが発生するものや光照射によりラジカルが発生するものが含まれる。アゾ化合物の例としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)などが挙げられる。有機化酸化物の例としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシドなどが挙げられる。このようなラジカル発生剤を用いる場合、一般的に考えれば、式(6)の化合物がそのビニル結合により重合すると考えられるが、実際にはエン−チオール反応の方が優先的に進行し、式(5)で表されるケイ素化合物が生成されることが判明した。
該反応は、より詳細には、式(6)で表される化合物と、式(7)で表される化合物と、ラジカル発生剤を、トルエンなどの有機溶剤とともに混合し、ラジカルが発生する条件に保持することにより行うことができる。特に限定するものではないが、反応温度は50〜120℃であることが好ましい。
なお、式(6)で表される化合物の合成方法は特に限定されず、上記特許文献2,3に開示された方法により合成することができる。すなわち、例えば、分子鎖の一端に水酸基を有しかつ他端に付加重合性二重結合を有する化合物に対し、α位の炭素にハロゲンが結合している酸ハロゲン化物を、トリエチルアミンの存在下で反応させればよい。一方、式(7)で表される化合物についても特に限定されないが、メルカプト基を有するシランカップリング剤が市販されているので、それを用いればよい。もちろん公知の方法で合成してもよい。
本実施形態において、上記式(4)で表される好ましい態様のケイ素化合物を製造するためには、下記一般式(8)で表される化合物と下記一般式(9)で表される化合物を反応させればよい。
Figure 2013213008
式(8)及び(9)において、X、R、R、R、R、a、m及びnは、上記式(4)と同じである。
本実施形態に係るケイ素化合物は、上記のように分子内にラジカル重合開始基を有するため、ラジカル重合開始剤として、より好ましくはリビングラジカル重合開始剤として用いることができる。すなわち、該ケイ素化合物からなるラジカル重合開始剤を用いて、ビニルモノマーやジエンモノマーなどのモノマーを、ラジカル重合またはリビングラジカル重合することによりポリマーを製造することができる。得られたポリマーは、その分子末端に、該ケイ素化合物によるアルコキシシリル基を有するため、変性ポリマーであると言える。アルコキシシリル基は、シリカなどの無機物質と反応可能なため、無機物質に対するポリマーの親和性を高めることができる。
ビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸系モノマー、メタクリル酸系モノマー、アクリルアミド系モノマー、スチレン系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどが挙げられる。
アクリル酸系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2−カルボキシエチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、1,1,1,3,3,3―ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ソジウムアクリレート、イソボルニルアクリレート、プロパルギルアクリレート、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソデシルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、トリメチルシリルアクリレート、2,2,2―トリフルオロエチルアクリレート、4−tert―ブチルシクロヘキシルアクリレート、フルオロセイン 0−アクリレート、9−アントラセンメチルアクリレートなどが挙げられる。
メタクリル酸系モノマーとしては、例えば、3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、11−[4−(4−ブチルフェニルアゾ)フェノキシ]ウンデシルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、エチレングリコールモノエイチルエーテルメタクリレート、エチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチレングリコールメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、1H,1H,5H−パーフルオロペンチルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、N−スクシンイミドメタクリレート、3−スルホプロピルカリウムメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、2−(トリメチルシリルオキシ)エチルメタクリレート、3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルメタクリレートなどが挙げられる。
アクリルアミド系モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、6−アクリルアミドヘキサン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、trans−3−フェニルアクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−エチル−N−(4−ピリジルメチル)−2−フェニルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなどが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、4−アミノスチレン、4−ブロモ−β,β−ジフルオロスチレン、2−ブロモスチレン、3−ブロモスチレン、4−ブロモスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−(クロロメチル)スチレン、4−クロロ−α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、4−フルオロ−α−メチルスチレン、3−フルオロスチレン、4−フルオロスチレン、4−イソプロペニルトルエン、4−メトキシスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、4−ニトロスチレン、4−n−オクチルスチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロビニルスチレン、α−(トリメチルシリルオキシ)スチレン、β−スチレンスルホン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルスチレン、ビニルベンジルシアニド、2−アセトキシスチレン、4−アセトキシスチレンなどが挙げられる。
ジエン系モノマーとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。
以上例示したモノマーは、いずれか1種類で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記ケイ素化合物をリビングラジカル重合開始剤として用いて、モノマーをリビングラジカル重合させる場合、例えば、ラジカル重合開始基が原子移動ラジカル重合開始能を有するものでは、遷移金属錯体を触媒として用いる。このような遷移金属錯体としては、周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体が好ましく、より好ましくは、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケル錯体であり、特には1価の銅錯体が好ましく、アミン/イミン系の多座配位子を有する銅(I)錯体、例えば、塩化銅/アミン錯体が好ましく用いられる。また、例えば、ラジカル重合開始基が可逆的付加開裂連鎖移動重合能を有するものでは、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)などのアゾ化合物、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシドなどの有機過酸化物を、重合触媒として用いる。
得られたポリマーの分子量は、特に限定されず、用途に応じて種々の分子量に設定すればよい。例えば、ゴム組成物に配合する場合、上記ビニルモノマーをリビングラジカル重合してなるポリマーの数平均分子量は、1000 〜500000であることが好ましく、より好ましくは5000〜100000である。
該ポリマーは、ゴム成分やプラスチック成分などの他のポリマー成分に添加して、各種成形体の特性を変えるために用いることができる。その場合、特に限定するものではないが、他のポリマー成分100質量部に対して、例えば0.1〜100質量部にて配合することができる。好ましくは、上記ポリマーを、ゴム成分100質量部に対して0.1〜100質量部含有するゴム組成物である。該ポリマーは、上述したように、末端にアルコキシシリル基を有するので、例えば、ゴム組成物に充填剤としてシリカを配合した場合に、シリカ表面のシラノール基と反応させることができ、特性の改良に寄与することができる。また、該ポリマーは、末端に上記ケイ素化合物によるチオエーテル基を有するため、マトリックスゴムへの分散性にも優れると考えられる。
該ゴム組成物におけるゴム成分の例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(例えば、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などが挙げられ、これらはいずれか1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。ゴム成分として、好ましくはジエン系ゴムを用いることである。
上記ポリマーの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜70質量部、更に好ましくは5〜50質量部であり、特に好ましくは10〜30質量部である。
該ゴム組成物には、上記ポリマーの他に、シリカやカーボンブラックなどの充填剤、シランカップリング剤、オイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。充填剤の配合量は、特に限定しないが、ゴム成分100質量部に対して10〜150質量部であることが好ましく、より好ましくは30〜100質量部である。充填剤としては、シリカを用いることが好ましく、その配合量は、充填剤に占める割合で50質量%以上であることが好ましい。加硫剤としては、硫黄、及び硫黄含有化合物(例えば、塩化硫黄、二塩化硫黄、高分子多硫化物、モルホリンジスルフィド、及びアルキルフェノールジスルフィド等)が挙げられ、これらはいずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤を用いることができ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
該ゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。このようにして得られるゴム組成物の用途は、特に限定されないが、トレッドやサイドウォール等のタイヤ、コンベアベルト、防振ゴムなどの各種ゴム組成物に用いることができ、常法に従い、例えば140〜200℃で加硫成形することにより、各種成形体を得ることができる。
本実施形態に係るケイ素化合物は、また、上記のように分子内にアルコキシシリル基を有するためシランカップリング剤としての機能も有し、従って、各種材料への固定化が可能な重合開始剤であるといえる。そのため、固体物質表面に該ケイ素化合物を固着させた後、固着したケイ素化合物を重合開始点としてモノマーをリビングラジカル重合することにより、ポリマーと固体物質との複合体、すなわち固体物質表面にポリマーグラフト鎖が形成された複合体を得ることができる。
固体物質の例としては、金属、金属化合物、無機物質(無機化合物を含む)、高分子化合物からなるものが挙げられ、形状としては任意であり、鍛造、鋳造、押出成形、プレス成形、射出成形などの各種成形体の他、球状、繊維状、フィルム状、織布、編布、不織布などを含み、微粒子や微小繊維なども含まれる。
微粒子の平均粒子径は、0.1nm〜1mmの範囲にあり、好ましくは1nm〜100μmであり、より好ましくは1nm〜1μmである。ここで微粒子の粒子径としてはレーザー回折・散乱法から求められる平均粒子径(50%積算値の粒径)である。また、微粒子の1次粒子径が上記範囲にあるものの、アグリゲートなど凝集構造の形態をとる場合、BET法(JIS K6217−7)により比表面積を評価する。この場合、BET比表面積が1〜1000m/gの範囲にあり、好ましくは40〜250m/gにある。微小繊維としては、平均繊維径が0.1nm〜100μm、平均繊維長さが100nm〜10mmの範囲にあり、好ましくは、平均繊維径が1nm〜10μm、平均繊維長さが100nm〜1mmの範囲にあり、より好ましくは平均繊維径が1nm〜1μm、平均繊維長さが100nm〜100μmの範囲にある。ここで、平均繊維径は、走査型電子顕微鏡観察(SEM)像より、フィブリル化繊維を10個無作為に抽出し、短径を測定してその相加平均を平均繊維径とする。平均繊維長は、カジャーニ(KAJAANI)社の繊維長測定機(FS−200)を用い、JIS P8121により測定される。
固体物質として、より好ましくは、シリカ微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化チタン微粒子及びチタン酸バリウム微粒子などの粒子表面に水酸基を持つ無機微粒子が挙げられ、アルコキシ基を持つ上記ケイ素化合物と良好な化学結合を形成しやすく、ラジカル重合鎖が強固に結合した複合微粒子を得ることができる。
固体物質表面に上記ケイ素化合物を固着させる方法は、特に限定されず、例えばシランカップリング剤について通常用いられている表面処理方法を適用することができる。例えば、該ケイ素化合物をそのまま又は適当な溶媒に溶かしたものを固体物質表面に塗布してもよく、また、例えば固体物質が微粒子である場合には、ケイ素化合物をそのまま又は適当な溶媒とともに固体物質と混合することで表面処理してもよい。
ここで、固着とは、ケイ素化合物がアルコキシ基の加水分解等により固体物質表面と化学結合していてもよく、水素結合などの物理結合でもよく、固体表面の細孔内にトラップされていてもよい。固着されているか否かの確認方法としては、固着処理後、有機溶媒等により洗浄した後、固着処理表面にケイ素化合物中の元素が存在するかを、エネルギー分散型X線分光法(EDX)やX線電子分光分析法(XPS)などを用いて測定することができる。
ケイ素化合物が固着した固体物質を用いて、該ケイ素化合物からモノマーをリビングラジカル重合させる場合、上記のように遷移金属錯体やアゾ化合物、有機過酸化物を触媒として用いて、ビニルモノマーやジエンモノマーなどのモノマーをリビングラジカル重合すればよい。ビニルモノマー及びジエンモノマーの例としては上記したとおりである。
このようにして得られた複合体においては、上記モノマーのリビングラジカル重合により形成されたポリマーグラフト鎖の量が、固体物質(特に好ましくは無機微粒子)100質量部に対して5〜1000質量部であることが好ましい。ポリマーグラフト鎖の量は、より好ましくは固体物質100質量部に対して30〜500質量部であり、更に好ましくは50〜300質量部である。
本実施形態に係る成形体は、該複合体からなるものである。詳細には、該複合体として、原料となる固体物質が微粒子からなり、これに熱可塑性ポリマーグラフト鎖を形成してなる複合微粒子を用い、該複合微粒子を粉末成形や射出成形などにより所定の形状に成形することで、複合微粒子からなる成形体が得られる。
上記の複合体や成形体の用途としては、特に限定されず、例えば、ゴム組成物やプラスチック組成物に配合される補強剤として、光通信分野やカラー映像機器、高出力レーザー分野等におけるナノ光学材料に用いられる高分子コロイド結晶として、リチウムイオン電池等の電解質膜や誘電材料として用いることができる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<ケイ素化合物の合成>
[実施例1]
・6−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)ヘキシル 2−ブロモ−2−メチルプロパネートの合成:
5−ヘキセン−1−オール(42.6g)とトリエチルアミン(45.8g)とテトラヒドロフラン(0.8L)を混合後、氷冷し、2−ブロモイソブチリルブロミド(100g)を滴下した。その後、反応液を4℃、3時間攪拌し、室温で15時間攪拌した。反応液をろ過し、エボポレーターで濃縮後、ジエチルエーテル(300mL)に溶解させ、それを1Nの塩酸溶液(2×300mL)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2×300mL)、及び蒸留水(2×300mL)の順で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、エバポレーターにて濃縮させ、シリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=15/1)により精製し、濃縮後、下記化学式で表される5−ヘキセニル 2−ブロモ−2−メチルプロパネート(化合物1)を74.2g得た。
Figure 2013213008
次に、化合物1(10.1g)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(9.58g:東京化成工業(株)製「 3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン」)、AIBN(0.194g)、及びトルエン(20g)を混合し、窒素ガスで30分バブリングした後、反応溶液を70℃、3時間保持し、エバポレーターにて濃縮後、下記化学式で表される6−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)ヘキシル 2−ブロモ−2−メチルプロパネート(化合物2)を17.2g得た(収率:88%)。
以下のNMR結果から、生成物が下記化学式で表される化合物であることを同定した。1H-NMR(400MHz, TMS標準=0.0ppm):1.93(s, 6H, (CH)BrC-)、4.17(t, 2H, -(O=C)-O-CH2-)、1.70(m, 2H, -(O=C)-O-CH2-CH 2-) 、1.43(t, 4H, -(O=C)-O-CH2-CH2-CH 2-CH 2-) 、1.60(t, 2H, O=C-O-CH2-CH2-CH2-CH2-CH 2-) 、2.5(t, 2H, -CH 2-S-CH2-) 、2.53(t, 2H, -CH2-S-CH 2-) 、1.69(m, 2H, -CH2-S-CH2-CH 2-)、0.74(t, 2H, -CH 2-Si-(O-CH2-CH3)3、3.82(q, 6H, -CH2-Si-(O-CH 2-CH3)3、1.23(t, 9H, -CH2-Si-(O-CH2-CH 3)3.
13C-NMR(400MHz, TMS標準=0.0ppm):30.9(()BrC-)、55.9((CH)Br-)、171.5(-(O=C)-O-CH2-)、65.9(-(O=C)-O-CH2-) 、28.3(-(O=C)-O-CH2-CH2-) 、25.9(-(O=C)-O-CH2-CH2-CH2-) 、28.4(-(O=C)-O-CH2-CH2-CH2-CH2-) 、29.6(-(O=C)-O-CH2-CH2-CH2--CH2-CH2-) 、32.0(-CH2-S-CH2-) 、35.3(-CH2-S-CH2-) 、23.2(-CH2-S-CH2-CH2-)、10.3(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3、58.4(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3、18.3(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3.
Figure 2013213008
[実施例2]
・3−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)プロピル 2―ブロモ−2−メチルプロパネート:
2−(2−ブロモ−2−メチル)プロピオン酸アリル(1.5g:シグマアルドリッチ社製)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(1.73g)、AIBN(0.036g)、及びトルエン(20g)を混合し、窒素ガスで30分バブリングした後、反応溶液を70℃、3時間保持し、エバポレーターにて濃縮後、下記化学式で表される3−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)プロピル 2−ブロモ−2−メチルプロパネート(化合物3)を2.95g得た(収率:91%)。
以下のNMR結果から、生成物が下記化学式で表される化合物であることを同定した。1H-NMR(400MHz, TMS標準=0.0ppm):1.93(s, 6H, (CH)BrC-)、4.27(t, 2H, -(O=C)-O-CH2-)、1.97(m, 2H, -(O=C)-O-CH2-CH 2-) 、2.61(t, 2H, -CH 2-S-CH2-) 、2.55(t, 2H, -CH2-S-CH 2-) 、1.71(m, 2H, -CH2-S-CH2-CH 2-)、0.74(t, 2H, -CH 2-Si-(O-CH2-CH3)3、3.82(q, 6H, -CH2-Si-(O-CH 2-CH3)3、1..23(t, 9H, -CH2-Si-(O-CH2-CH 3)3.
13C-NMR(400MHz, TMS標準=0.0ppm):30.8(()BrC-)、55.9((CH)Br-)、171.5(-(O=C)-O-CH2-)、64.6(-(O=C)-O-CH2-) 、28.6(-(O=C)-O-CH2-CH2-) 、28.3(-CH2-S-CH2-) 、35.2(-CH2-S-CH2-) 、23.2(-CH2-S-CH2-CH2-)、9.94(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3、58.4(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3、18.4(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3.
Figure 2013213008
[実施例3]
・11−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)ウンデシル 2−ブロモ−2−メチルプロパネート:
実施例1の5−ヘキセン−1−オールの代わりに、10−ウンデセン−1−オールを用い、同様の手順で、下記化学式で表される10−ウンデセニル 2−ブロモ−2−メチルプロパネート(化合物4)を得た。
Figure 2013213008
次いで、実施例1と同様の手順で10−ウンデセニル 2−ブロモ−2−メチルプロパネートと3−メルカプトプロピルトリエトキシシランを反応させることにより、下記化学式で表される11−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)ウンデシル 2−ブロモ−2−メチルプロパネート(化合物5)を得た。
以下のNMR結果から、生成物が下記化学式で表される化合物であることを同定した。1H-NMR(400MHz, TMS標準=0.0ppm):1.92(s, 6H, (CH)BrC-)、4.16(t, 2H, -(O=C)-O-CH2-)、1.28〜1.38(m, 16H, -(O=C)-O-CH2-(CH 2)8-) 、1.56(m, 16H, -(O=C)-O-CH2-(CH2)8-CH 2-) 、2.5(t, 2H, -CH 2-S-CH2-) 、2.53(t, 2H, -CH2-S-CH 2-) 、1.70(m, 2H, -CH2-S-CH2-CH 2-)、0.73(t, 2H, -CH 2-Si-(O-CH2-CH3)3、3.82(q, 6H, -CH2-Si-(O-CH 2-CH3)3、1..23(t, 9H, -CH2-Si-(O-CH2-CH 3)3.
13C-NMR(400MHz, TMS標準=0.0ppm):30.8(()BrC-)、56.4((CH)Br-)、172.1(-(O=C)-O-CH2-)、66.2(-(O=C)-O-CH2-) 、29.0〜29.5(-(O=C)-O-CH2-(CH2)8-) 、29.8(-(O=C)-O-CH2-(CH2)8-CH2)、32.0(-CH2-S-CH2-) 、35.3(-CH2-S-CH2-) 、23.3(-CH2-S-CH2-CH2-)、9.7(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3、58.4(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3、18.4(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3.
Figure 2013213008
[実施例4]
・6−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)ヘキシル 2−ヨード−2−メチルプロパネートの合成:
実施例1の操作により得られた6−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)ヘキシル 2−ブロモ−2−メチルプロパネート(5g)とヨウ化ナトリウム(20g)とドライアセトン100mLを混合し、窒素雰囲気下にて75℃で10時間反応させた。反応後、抽出操作を行い、下記化学式で表される6−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)ヘキシル 2−ヨード−2−メチルプロパネート(化合物6)を得た。
以下のNMR結果から、生成物が下記化学式で表される化合物であることを同定した。1H-NMR(400MHz, TMS標準=0.0ppm):2.2(s, 6H, (CH)IC-)、4.17(t, 2H, -(O=C)-O-CH2-)、1.70(m, 2H, -(O=C)-O-CH2-CH 2-) 、1.43(t, 4H, -(O=C)-O-CH2-CH2-CH 2-CH 2-) 、1.60(t, 2H, O=C-O-CH2-CH2-CH2-CH2-CH 2-) 、2.5(t, 2H, -CH 2-S-CH2-) 、2.53(t, 2H, -CH2-S-CH 2-) 、1.69(m, 2H, -CH2-S-CH2-CH 2-)、0.74(t, 2H, -CH 2-Si-(O-CH2-CH3)3、3.82(q, 6H, -CH2-Si-(O-CH 2-CH3)3、1..23(t, 9H, -CH2-Si-(O-CH2-CH 3)3.
13C-NMR(400MHz, TMS標準=0.0ppm):27.5(()IC-)、57.4((CH)Br-)、171.5(-(O=C)-O-CH2-)、65.9(-(O=C)-O-CH2-) 、28.3(-(O=C)-O-CH2-CH2-) 、25.9(-(O=C)-O-CH2-CH2-CH2-) 、28.4(-(O=C)-O-CH2-CH2-CH2-CH2-) 、29.6(-(O=C)-O-CH2-CH2-CH2--CH2-CH2-) 、32.0(-CH2-S-CH2-) 、35.3(-CH2-S-CH2-) 、23.2(-CH2-S-CH2-CH2-)、10.3(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3、58.4(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3、18.3(-CH2-Si-(O-CH2-CH3)3.
Figure 2013213008
<複合体の合成>
[実施例5]
シリカ(35g:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」、BET比表面積=205m/g)、28質量%のアンモニア水(66g)、及びエタノール1000mLを混合し、1時間攪拌した後、化合物2:6−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)ヘキシル2−ブロモ−2−メチルプロパネート(10g)を滴下し、室温で16時間攪拌した。得られた溶液から遠心分離機によりシリカを回収し、エタノールおよびアニソールにて洗浄することにより、化合物2が粒子表面に固着したシリカ(重合開始剤導入シリカ)28gを得た。
次に、得られた重合開始剤導入シリカ(22.9g)、ベンジルメタクリレート(200g)、2−ブロモ酪酸エチル(1.14g)、4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジル(4.54g)、及びアニソール(300g)を混合し、1.5時間窒素バブリングした後、反応溶液に塩化銅(I)(0.56g)を添加し、50℃で5時間保持した。得られた溶液を遠心分離により、固相を分離し、アニソールで洗浄、乾燥後、複合体1(43g)を得た。
[実施例6]
重合開始剤に対するモノマー(ベンジルメタクリレート)の仕込み比(モル比)を、下記表1に示すように変更し、その他は実施例5と同様の手順により、複合体2及び3をそれぞれ得た。
[複合体のポリマーグラフト量の測定]
TGA(昇温速度5℃/分、温度範囲50℃〜500℃)による測定結果から、下記式(A)に基づき、表1の通りポリマーグラフト量を算出した。
式(A): P=(W初期−W500℃/0.9)/(W500℃/0.9)
P:シリカ単位質量当りのポリマーグラフト質量
W初期:TGA測定仕込み質量(mg)
W500℃:500℃における残渣の質量(mg)
Figure 2013213008
得られた複合体微粒子のTGA測定より、グラフトポリマー鎖の存在が確認された。また、表1に示すように、モノマーの仕込み比とポリマーグラフト鎖の量は比例関係にあり、シリカ表面からリビング的に重合していることが示された。
[実施例7](酸化亜鉛複合体)
酸化亜鉛(100g:堺化学工業(株)製「FINEX−30」)、28質量%のアンモニア水(66g)、及びエタノール1000mLを混合し、1時間攪拌した後、化合物2:6−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)ヘキシル2−ブロモ−2−メチルプロパネート(10g)を滴下し、室温で16時間攪拌した。得られた溶液から遠心分離機により酸化亜鉛を回収し、エタノールおよびアニソールにて洗浄することにより、化合物2が粒子表面に固着した酸化亜鉛(重合開始剤導入酸化亜鉛)82gを得た。
次に、得られた重合開始剤導入酸化亜鉛(62g)、ベンジルメタクリレート(200g)、2−ブロモ酪酸エチル(1.14g)、4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジル(4.54g)、及びアニソール(300g)を混合し、1.5時間窒素バブリングした後、反応溶液に塩化銅(I)(0.56g)を添加し、50℃で5時間保持した。得られた溶液を遠心分離により、固相を分離し、アニソールで洗浄、乾燥後、複合体4(75.9g)を得た。得られた複合体4について、上記複合体1〜3と同様にしてポリマーグラフト量を測定した。結果を下記表2に示す。
Figure 2013213008
[実施例8](チタン酸バリウム複合体)
チタン酸バリウム(100g:堺化学工業(株)製「BT01」)、28質量%のアンモニア水(66g)、及びエタノール1000mLを混合し、1時間攪拌した後、化合物2:6−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)ヘキシル2−ブロモ−2−メチルプロパネート(10g)を滴下し、室温で16時間攪拌した。得られた溶液から遠心分離機によりチタン酸バリウムを回収し、エタノールおよびアニソールにて洗浄することにより、化合物2が粒子表面に固着したチタン酸バリウム(重合開始剤導入チタン酸バリウム)85gを得た。
次に、得られた重合開始剤導入チタン酸バリウム(68g)、ベンジルメタクリレート(200g)、2−ブロモ酪酸エチル(1.14g)、4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジル(4.54g)、及びアニソール(300g)を混合し、1.5時間窒素バブリングした後、反応溶液に塩化銅(I)(0.56g)を添加し、50℃で5時間保持した。得られた溶液を遠心分離により、固相を分離し、アニソールで洗浄、乾燥後、複合体5(82g)を得た。得られた複合体5について、上記複合体1〜3と同様にしてポリマーグラフト量を測定した。結果を下記表3に示す。
Figure 2013213008
<変性ポリマーの合成>
[実施例9]
ベンジルメタクリレート(30g)、化合物2:6−(3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ)ヘキシル2−ブロモ−2−メチルプロパネート(0.415g)、4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジル(0.70g)、及びアニソール(30g)を混合し、1.5時間窒素バブリングした後、反応溶液に塩化銅(I)(0.081g)を添加し、50℃で5時間保持した。得られた溶液を、エタノールへ再沈生成後、ポリベンジルメタクリレート(ポリマーE1)を得た。
得られたポリマーE1は、分子末端に、化合物2によるアルコキシシリル基及びチオエーテル基を有する変性ポリマーであった。また、数平均分子量が19000 、重量平均分子量が23000、分子量分布が1.24であった。
一方、通常のラジカル重合(ベンジルメタクリレート(30g)、AIBN(0.07g)、アニソール(30g)を混合し、1.5時間窒素バブリングした後、70℃、3時間重合した場合)では、得られたポリマーの数平均分子量が34000、重量平均分子量が75000、分子量分布が2.2であった。このことから、実施例7に係るポリマーE1では分子量分布が狭く、従って、化合物2の重合開始剤であれば、リビングラジカル重合が可能であることが示された。
ここで、分子末端にアルコキシシリル基及びチオエーテル基を有することの確認は、H−NMRおよび13C−NMRによりおこなった。
また、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)での測定により、ポリスチレン換算にて求めた。詳細には、測定試料は0.2mgをTHF1mLに溶解させたものを用いた。(株)島津製作所製「LC−20DA」を使用し、試料をフィルター透過後、温度40℃、流量0.7mL/分でカラム(Polymer Laboratories社製「PL Gel3μm Guard×2」)を通し、Spectra System社製「RI Detector」で検出した。
[実施例10]
モノマーの種類をベンジルメタクリレートからメチルメタクリレートに代え、その他は、ポリマーE1と同様の方法で、分子末端にアルコキシシリル基及びチオエーテル基を有する変性ポリマーであるポリメチルメタクリレート(ポリマーE2)を得た。該ポリマーE2は、数平均分子量が15000、重量平均分子量が18000、分子量分布が1.2であった。
[実施例11]
モノマーの種類をベンジルメタクリレートからトリデシルメタクリレートに代え、その他は、ポリマーE1と同様の方法で、分子末端にアルコキシシリル基及びチオエーテル基を有する変性ポリマーであるポリトリデシルメタクリレート(ポリマーE3)を得た。該ポリマーE3は、数平均分子量が23000、重量平均分子量が29000、分子量分布が1.26であった。
[比較例1]
ベンジルメタクリレート(30g)、2−ブロモ酪酸エチル(0.66g)、4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジル(1.4g)、及びアニソール(30g)を混合し、1.5時間窒素バブリングした後、反応溶液に塩化銅(I)(0.17g)を添加し、50℃で5時間保持した。得られた溶液を、エタノールへ再沈生成後、変性されてないポリベンジルメタクリレート(ポリマーC1)を得た。該ポリマーC1は、数平均分子量が19000、重量平均分子量が23000、分子量分布が1.24であった。
[比較例2]
モノマーの種類をベンジルメタクリレートからメチルメタクリレートに代え、その他は、ポリマーC1と同様の方法で、変性されていないポリメチルメタクリレート(ポリマーC2)を得た。該ポリマーC2は、数平均分子量が16000 、重量平均分子量が19000、分子量分布が1.2であった。
[比較例3]
モノマーの種類をベンジルメタクリレートからトリデシルメタクリレートに代え、その他は、ポリマーC1と同様の方法で、変性されていないポリトリデシルメタクリレート(ポリマーC3)を得た。該ポリマーC3は、数平均分子量が24000、重量平均分子量が30000、分子量分布が1.25であった。
<ゴム組成物の評価>
[実施例12及び比較例4,5]
バンバリーミキサーを使用し、下記表4に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して、ゴム組成物を調製した。表4中の各成分の詳細は、以下の通りである。
・SBR:スチレンブタジエンゴム、JSR(株)製「SBR1502」
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニック・デグサ社製「Si69」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1種」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・硫黄:細井化学工業(株)製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」
・2次加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
得られた各ゴム組成物について、160℃×20分で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて、25℃での動的弾性率E及びtanδ、60℃での動的弾性率E及びtanδを測定した。各測定方法は次の通りである。
・25℃動的弾性率E:UBM社製レオスペクトロメーターE4000を用いて、周波数50Hz、静歪み10%、動歪み2%、温度25℃の条件で動的弾性率を測定した。
・25℃tanδ:UBM社製レオスペクトロメーターE4000を用いて、周波数50Hz、静歪み10%、動歪み2%、温度25℃の条件で損失係数tanδを測定した。
・60℃動的弾性率E,60℃tanδ:温度を60℃に変え、その他は25℃動的弾性率E及び25℃tanδと同様にして測定した。
結果は表4に示す通りであり、コントロールである比較例4に対し、比較例5では、変性なしのポリマーC1を添加することにより、動的弾性率およびtanδ値が上昇した。一方、変性ポリマーE1を配合した実施例12では、比較例4に比べて、大幅に動的弾性率およびtanδ値が上昇した。比較例5、実施例12ではゴム配合中のシリカ成分とポリベンジルメタクリレート成分は同量であるが、実施例12ではポリベンジルメタクリレート成分末端に、シリカ表面のシラノール基と反応可能なエトキシシリル基が存在するため、比較例5と比べて、よりシリカ周辺にポリベンジルメタクリレート成分が存在し、動的弾性率とtanδが効率的に上昇している。このような60℃付近に大きなエネルギーロスを示すゴムは高グリップ性が要求されるトレッドゴム配合や、エネルギー吸収ゴムとして好適である。
Figure 2013213008
[実施例13及び比較例6]
バンバリーミキサーを使用し、下記表5に示す配合(質量部)に従って、実施例12と同様にしてゴム組成物を調製し、得られた各ゴム組成物から作製した試験片を用いて、25℃での動的弾性率E及びtanδを測定した。
結果は、表5に示す通りであり、コントロールである比較例4に対し、比較例6では、変性なしのポリメチルメタクリレートであるポリマーC2を配合することにより動的弾性率が上昇しているが、変性ポリメチルメタクリレートであるポリマーE2を配合した実施例13では、さらに動的弾性率が上昇した。一方、tanδ値は、ポリメチルメタクリレートのガラス転移温度は高温領域にあるため、室温付近のtanδ値の上昇は抑制されていた。そのため、実施例13のゴム組成物は、低燃費タイヤ用ゴム等に好適である。
Figure 2013213008
[実施例14及び比較例7]
バンバリーミキサーを使用し、下記表6に示す配合(質量部)に従って、実施例12と同様にしてゴム組成物を調製し、得られた各ゴム組成物から作製した試験片を用いて、0℃での動的弾性率E及びtanδ、25℃での動的弾性率E及びtanδを測定した。0℃での動的弾性率E及びtanδの測定方法は、温度を0℃に変え、その他は25℃動的弾性率E及び25℃tanδと同様にして測定した。
結果は表6に示す通りであり、コントロールである比較例4に対し、比較例7では、変性なしのポリトリデシルメタクリレートであるポリマーC3を配合することにより、低温領域でのtanδ値が上昇するが、変性ポリトリデシルメタクリレートであるポリマーE3を配合した実施例14では、さらにtanδ値を上昇させることができた。また、ポリトリデシルメタクリレートのガラス転移温度は低温領域に存在するため、動的弾性率の上昇を抑制しつつ、低温領域でのtanδ値を上昇させることができた。そのため、実施例14のゴム組成物は、高グリップ性のタイヤ用ゴムや、冬用タイヤ用ゴム等として好適である。
Figure 2013213008
表4〜6に示されたように、上記ポリマーを添加することによる動的粘弾性の違いは、ポリマーの種類を変えることにより制御可能である。
以上の結果は、本実施形態のケイ素化合物を重合開始剤として用いてモノマーを重合することにより、末端にアルコキシシリル基を導入された変性ポリマーが得られ、モノマーを適宜選択することにより、ゴム組成物の動的粘弾性を効率的かつ任意に制御できることを示している。当然、変性ポリマーは2つ以上の種類からなる共重合体やブロック共重合体でもよく、2つ以上の種類の変性ポリマーをゴム成分に配合してもよい。

Claims (14)

  1. 下記一般式(1)で表されるケイ素化合物。
    Figure 2013213008
    (式中、Aはラジカル重合開始能を有する基であり、Z及びZはそれぞれ独立に少なくとも炭素原子を含む2価の基であり、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基である。nは1〜3の整数である。)
  2. 前記Aが下記一般式(2)または一般式(3)で表される請求項1記載のケイ素化合物。
    Figure 2013213008
    (式中、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素、水素、酸素、窒素、ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1つで構成される構造であり、R、R及びRのうち少なくとも1つはハロゲンである。)
    Figure 2013213008
    (式中、Rは炭素、水素、酸素、窒素、ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1つで構成される構造である。)
  3. 下記一般式(4)で表されるケイ素化合物。
    Figure 2013213008
    (式中、Xはハロゲンであり、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基である。R及びRはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜3のアルキル基であるが、ともに水素であることはない。aは3〜11の整数であり、mは1〜3の整数であり、nは1〜3の整数である。)
  4. 下記一般式(6)で表される化合物と下記一般式(7)で表される化合物を反応させる工程を含むことを特徴とする、下記一般式(5)で表されるケイ素化合物の製造方法。
    Figure 2013213008
    (式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基である。R、R及びRはそれぞれ独立に炭素、水素、酸素、窒素、ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1つで構成される構造であり、R、R及びRのうち少なくとも1つはハロゲンである。Z、Z及びZはそれぞれ独立に少なくとも炭素原子を含む2価の基である。nは1〜3の整数である。)
  5. ラジカル発生剤を反応触媒として用いて前記一般式(6)で表される化合物と前記一般式(7)で表される化合物を反応させることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のケイ素化合物からなるラジカル重合開始剤。
  7. 請求項6のラジカル重合開始剤を用いて、モノマーをラジカル重合またはリビングラジカル重合することを特徴とするポリマーの製造方法。
  8. 請求項7記載の方法により得られた末端にアルコキシシリル基を有するポリマーを、ゴム成分100質量部に対して0.1〜100質量部含有することを特徴とするゴム組成物。
  9. 固体物質表面に請求項1〜3のいずれか1項に記載のケイ素化合物を固着させ、固着したケイ素化合物からモノマーをリビングラジカル重合してポリマーグラフト鎖を形成することを特徴とする複合体の製造方法。
  10. 前記固体物質が、シリカ微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化チタン微粒子及びチタン酸バリウム微粒子からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項9記載の複合体の製造方法。
  11. 前記モノマーが、ビニルモノマー及びジエンモノマーからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項9又は10記載の複合体の製造方法。
  12. 前記モノマーのリビングラジカル重合により形成されたポリマーグラフト鎖の量が、前記固体物質100質量部に対して5〜1000質量部であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
  13. 請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法により得られる複合体。
  14. 請求項13に記載の複合体からなる成形体。
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