以下、本発明の樹脂粒子の製造方法について詳細に説明する。
本発明の樹脂粒子の製造方法は、非真球状の樹脂粒子の製造方法であって、重合性ビニルモノマーと、該重合性ビニルモノマーに対する共重合性を有しない疎水性の液状有機化合物とを含むモノマー混合物を水系懸濁重合する重合工程と、水系懸濁重合により得られる重合生成物から疎水性の液状有機化合物を除去する液状有機化合物除去工程と、上記疎水性の液状有機化合物が除去された重合生成物を乾燥する乾燥工程と、乾燥された重合生成物を気流衝撃式の解砕により解砕して、樹脂粒子を得る解砕工程とを含み、上記疎水性の液状有機化合物の除去を、上記水系懸濁重合の完了後24時間以内に完了する方法である。
〔重合工程〕
上記重合工程では、重合性ビニルモノマー(以下、「ビニルモノマー」という)と、ビニルモノマーに対する共重合性を有しない疎水性の液状有機化合物(以下、「液状化合物」という)とを含むモノマー混合物を水系懸濁重合する。これにより、液滴中でビニルモノマーと液状化合物とが相分離した状態で重合性ビニルモノマーが重合するため、所望の一次粒子である非真球状の樹脂粒子が複数個、樹脂皮膜を介して結合してなる重合生成物が得られる。例えば、図1に示すように、所望の一次粒子である両凸レンズ状の樹脂粒子1が複数個、その凸レンズ面を外方に向けた状態で樹脂皮膜2を介して結合してなる重合生成物が得られる。なお、重合工程完了後の重合生成物では、図1には示していないが、樹脂粒子間の間隙部(図1の例では、図1の白抜き部分)に液状化合物が溜まった状態となる。
本発明の方法で用いられるビニルモノマーは、後記の液状化合物と均一に混合溶解するものであれば、何ら限定されない。上記ビニルモノマーとしては、重合性単官能性ビニルモノマーおよび重合性多官能性ビニルモノマーの何れも使用できる。なお、本明細書において、「重合性ビニルモノマー」とは、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する化合物を指し、「重合性単官能性ビニルモノマー」とは、1個のエチレン性不飽和基を有する化合物を指し、「重合性多官能性ビニルモノマー」とは、2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を指すものとする。
上記重合性単官能性ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロフルフリル、メタクリル酸ラウリルなどのメタクリル酸エステル系単量体;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ネオデカン酸ビニルなどのビニルエステル系単量体;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミドなどのN−アルキル置換アクリルアミド;アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル系単量体などや、それらのハロゲン(フッ素、臭素、塩素)置換体が挙げられる。これらの化合物の中でも、本発明の効果が顕著であることから、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、およびスチレンが、重合性単官能性ビニルモノマーとして特に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリルまたはメタクリルを意味するものとする。
上記重合性多官能性ビニルモノマーとしては、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ジビニル化合物、不飽和有機酸アリルエステルモノマー、加水分解性官能基を有する重合性多官能性ビニルモノマーなどが挙げられる。
上記多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどが挙げられる。
上記芳香族ジビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびそれらの誘導体などが挙げられる。
上記不飽和有機酸アリルエステルモノマーとしては、例えば、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、桂皮酸アリル、ソルビン酸アリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、フマル酸ジアリルなどが挙げられる。これら化合物の中でも、本発明の効果が顕著であることから、メタクリル酸アリルおよびアクリル酸アリルが不飽和有機酸アリルエステルモノマーとして特に好ましい。
上記加水分解性官能基を有する重合性多官能性ビニルモノマーとしては、例えば、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシジメチルエトキシシラン、γ−メタクリルオキシトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジクロロシラン、メタクリルオキシプロピルジエチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリクロロシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シランなどが挙げられる。これら化合物の中でも、本発明の効果が顕著であることから、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、およびメタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシランが加水分解性官能基を有する重合性多官能性ビニルモノマーとして特に好ましい。
これらのビニルモノマーは、得られる樹脂粒子の屈折率を調整するなどの目的に応じて適宜選択され、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。ビニルモノマーは、重合性単官能性ビニルモノマーを70重量%以上含むのが好ましい。ビニルモノマーは、重合性単官能性ビニルモノマー70〜99.5重量%および重合性多官能性ビニルモノマー0.5〜30重量%からなることがより好ましく、ビニルモノマーは、重合性単官能性ビニルモノマー80〜99.5重量%および重合性多官能性ビニルモノマー0.5〜20重量部からなることがさらに好ましい。
ビニルモノマー中における、重合性単官能性ビニルモノマーの割合が70重量%を下回ると、本発明の樹脂粒子は、得られる樹脂粒子の形状が不揃いとなり易く、また、ビニルモノマーの重合体が液状化合物の表面を覆う厚い膜を形成することにより、液状化合物の除去が難しくなるため、好ましくない。
上記ビニルモノマーには、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、水酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、群青、紺青、マンガンバイオレット、群青紫、チタンブラック、カーボンブラック、アルミニウム粉、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、酸化鉄処理雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、アルミナ、タルク、マイカ、ベントナイト、カオリン、セリサイトなどの無機顔料;タートラジン、サンセットエロFCF、ブリリアントブルーFCFなどのアルミニウムレーキ、ジルコニウムレーキ、バリウムレーキ、へリンドンピンクCN、リソールルビンBCA、レーキレッドCBA、フタロシアニンブルー、パーマネントオレンジなどの有機顔料などを適宜添加してもよい。
本発明の方法で用いられる液状化合物は、ビニルモノマーに対して共重合性を有さないものであればよい。上記液状化合物は、水系懸濁重合時に、ビニルモノマー中に存在する官能基と反応せず、媒体である水によって変質せず、かつ加水分解反応などの反応を起こさないものであることが好ましい。
水系懸濁重合後、上記液状化合物は、樹脂粒子内に含有されたり、樹脂粒子に付着する。また、上記液状化合物は、好ましくは25℃における粘度が0.01〜10cStであり、より好ましくは0.1〜10cStである。上記液状化合物の25℃における粘度が10cStを上回ると、液状化合物の取り扱い性や重合後の樹脂粒子からの除去が難しくなり、しかも樹脂粒子製造後の重合反応設備の洗浄が困難となるため、好ましくない。
また、上記液状化合物は、1気圧下において−20〜200℃の沸点を有するのが好ましい。中でも、1気圧下における沸点が25℃〜200℃、特に50〜150℃である液状化合物は、高圧重合設備などを使用することなく樹脂粒子を製造でき、しかも、得られる樹脂粒子から液状化合物を容易に除去することができるので好ましい。
上記液状化合物の沸点が−20℃を下回ると、特殊な高圧重合設備を必要とする上、分解温度の低い不安定な重合開始剤を用いなければならないなど、一般に重合が難しくなるため、好ましくない。また、上記液状化合物の沸点が200℃を上回ると、樹脂粒子から液状化合物を除去するのが難しくなるので、好ましくない。
25℃における粘度が0.01〜10cStである液状化合物としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどの飽和炭化水素類が挙げられる。さらに、25℃における粘度が0.01〜10cStである液状化合物として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミルなどの酢酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン類;フッ化炭化水素類などのハロゲン化炭化水素類(水素原子の一部または全てがフッ素などのハロゲンで置換された有機化合物);ニトロ炭化水素類;エーテル類;ケトン類;エステル類なども挙げられる。
上記エーテル類としては、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジブチルエーテル鎖状エーテル;テトラヒドロフランなどの環状のエーテルが挙げられる。これらの化合物の中でも、本発明の効果が顕著であることから、ジブチルエーテルがエーテル類として特に好ましい。
これらの液状化合物の中でも、飽和炭化水素類、エーテル類、およびフッ化炭化水素類は、幅広い樹脂種について、特異な形状を有する樹脂粒子が得られやすいという点から特に好ましい。このような液状化合物としては、例えば、ヘプタン、シクロヘキサン、ジブチルエーテル、ハイドロフルオロエーテル、ヘプタフルオロシクロペンタンなどが挙げられる。これらの液状化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組合わせて用いることができる。
上記液状化合物の使用量は、ビニルモノマー100重量部に対して、1〜500重量部の範囲内であることが好ましく、10〜200重量部の範囲内であることがより好ましい。上記液状化合物の使用量が1重量部を下回ると、得られる樹脂粒子の形状が真球状に近くなる。また、上記液状化合物の使用量が500重量部を上回ると、ビニルモノマーの重合が阻害されるか、あるいは異なる形状の樹脂粒子が混じり合ったものが得られる。
本発明の方法では、ビニルモノマーと液状化合物とを均一に混合し、モノマー混合物が調製される。ビニルモノマーと液状化合物とを均一に混合するには、特に限定されないが、例えば、プロペラ翼、マグネチックスターラー、振とう機、超音波分散器などを用いて混合を行えばよい。
モノマー混合物には、ビニルモノマーと重合反応しない、亜燐酸モノエステル、亜燐酸ジエステル、燐酸モノエステル、および燐酸ジエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(以下「(亜)燐酸エステル」という)を相分離促進剤として添加し、溶解させることが好ましい。これにより、液滴中における重合性ビニルモノマーと液状化合物との相分離が促進され、より異形化した樹脂粒子が得られる。
上記(亜)燐酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ラウリルリン酸、ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(2)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(4)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(6)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(8)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエーテル(4)ノニルフェニルエーテルリン酸などが挙げられる。これらの化合物の中でも、本発明の効果が顕著であることから、ラウリルリン酸が(亜)燐酸エステルとして特に好ましい。これらの(亜)燐酸エステルは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(亜)燐酸エステルの添加量は、モノマー混合物100重量部に対して、0.001〜5重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜3重量部の範囲内であることがより好ましい。上記(亜)燐酸エステルの添加量が、0.001重量部を下回ると、充分な相分離効果が得られない。また、上記(亜)燐酸エステルの添加量が5重量部を上回ると、上記(亜)燐酸エステルが樹脂粒子表面に皮膜を形成して、重合生成物から液状化合物を除去することが困難となる。
上記モノマー混合物には、重合開始剤を添加してもよい。上記重合開始剤としては、例えば、油溶性でモノマー混合物に可溶であり、懸濁重合に通常用いられる、過酸化物系重合開始剤またはアゾ系重合開始剤が挙げられる。過酸化物系重合開始剤およびアゾ系重合開始剤中でも、液状化合物に対して溶解度の低いものが好ましい。
上記過酸化物系重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、o−クロロ過酸化ベンゾイル、o−メトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。
上記アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートなどが挙げられる。
これらの重合開始剤の中でも、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、および過酸化ラウロイルは、本発明に適した水系懸濁重合の重合温度範囲において、重合開始剤の分解半減期が20時間以内であるので、好ましい。
上記重合開始剤の使用量は、ビニルモノマー100重量部に対して、0.05〜20重量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜15重量部の範囲内であることがより好ましい。
上記モノマー混合物には、樹脂粒子の分子量を調整するために、連鎖移動剤を添加してもよい。上記連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン、インデン、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレンなどが挙げられる。
本発明の方法では、上記のモノマー混合物を水系懸濁重合する。すなわち、上記のモノマー混合物を水性媒体中に懸濁させて重合する。上記水性媒体としては、特に限定されず、例えば、水、水と低級アルコール(メタノール、エタノール等の炭素数5以下のアルコール)との混合媒体が挙げられる。上記水系懸濁重合においては、モノマー混合物の液滴の安定化を図るために、モノマー混合物100重量部に対して、水100〜1000重量部を分散媒として使用するのが好ましい。
上記分散媒には、水性媒体中へのモノマー混合物の懸濁を安定化させるために、懸濁安定剤を添加してもよい。上記懸濁安定剤としては、特に限定されないが、例えば、難水溶性無機化合物が挙げられる。上記難水溶性無機化合物としては、例えば、第三リン酸カルシウムなどのリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛などのリン酸塩;ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛などのピロリン酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;メタケイ酸カルシウムなどのメタケイ酸カルシウム塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;コロイダルシリカなどが挙げられる。これらの化合物の中でも、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、およびコロイダルシリカが上記懸濁安定剤として好ましい。これらを用いれば、目的とする樹脂粒子を安定して得ることができる。これら懸濁安定剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよく、得られる樹脂粒子の粒子径と重合時の分散安定性とを考慮して、その種類が適宜選択される。
上記懸濁安定剤の添加量は、特に限定されないが、通常、分散媒に対して0.5〜15重量%程度である。
上記分散媒には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などの界面活性剤が添加されていてもよい。
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリなどの脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどのアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩などが挙げられる。
上記カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
上記両性イオン界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどが挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。
上記界面活性剤は、得られる樹脂粒子の粒子径と重合時の分散安定性とを考慮して適宜選択され、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記界面活性剤の添加量は、特に限定されないが、分散媒に対して、通常、0.001〜0.1重量%の範囲内で使用される。
上記分散媒には、水溶性の重合禁止剤が添加されていてもよい。上記水溶性の重合禁止剤を分散媒に添加すると、重合禁止剤を添加しない場合および重合禁止剤をビニルモノマーに添加する場合に比べ、分散媒中でのビニルモノマーの重合が抑制され易く、樹脂粒子同士を結合する皮膜の形成が抑制される。その結果、解砕工程において皮膜をより確実に除去してより多くの樹脂粒子を一次粒子の状態にすることができるので、得られる樹脂粒子の吸油量をより安定化させることができる。
上記水溶性の重合禁止剤としては、例えば、亜硝酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸などの水に可溶なラジカル捕捉剤が挙げられる。これらの化合物の中でも、本発明の効果が顕著であることから、亜硝酸塩類が好ましい。上記亜硝酸塩類としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどの水溶性を示す亜硝酸のアルカリ金属塩;亜硝酸マグネシウムなどの水溶性を示すアルカリ土類金属塩;亜硝酸アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、亜硝酸ナトリウムは、水溶性、水中での解離性などの点で好ましい。
本発明の方法では、分散媒にモノマー混合物を加えて、水系懸濁重合が行われる。分散媒にモノマー混合物を加える方法としては、例えば、分散媒にモノマー混合物を直接加え、プロペラ翼などの撹拌力によりモノマー混合物を液滴として分散媒中に分散させる方法;ローターとステーターとから構成される高剪断力を利用する分散機であるホモミキサー(ホモジナイザー)または超音波分散機などの分散機を用いてモノマー混合物を分散媒中に分散させる方法;マイクロフルイダイザー、ナノマイザーなどの高圧型分散機を用い、モノマー混合物の液滴同士の衝突や器壁へのモノマー混合物の衝突力を利用して、モノマー混合物を分散媒中に分散させる方法;MPG(マイクロポーラスガラス)多孔膜を通してモノマー混合物を分散媒中に圧入することによって、モノマー混合物を分散媒中に分散させる方法などが挙げられる。これらのうち、高圧型分散機を用いる方法やMPG多孔膜を用いる方法は、粒子径をより均一に揃えられるので、好ましい。
次いで、モノマー混合物が球状の液滴として分散媒中に分散された分散液を加熱することにより、水系懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、例えば、モノマー混合物の液滴の浮上や重合により生成した樹脂粒子の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。重合反応温度は、30〜100℃の範囲内であることが好ましく、40〜80℃の範囲内であることがより好ましい。重合反応温度を保持する時間は、0.1〜20時間の範囲内であることが好ましい。
なお、液状化合物またはビニルモノマーの沸点が重合温度付近あるいは重合温度以下である場合には、液状化合物またはビニルモノマーが揮発しないように、オートクレーブなどの耐圧重合設備を使用して、密閉下あるいは加圧下で重合を行うことが好ましい。
〔液状化合物除去工程〕
上記液状化合物除去工程では、水系懸濁重合により得られる重合生成物から疎水性の液状有機化合物を除去する。これにより、重合生成物における樹脂粒子間の間隙部(図1の例では、図1の白抜き部分)から液状化合物が除去されて、重合生成物における樹脂粒子間の間隙部が空隙部となる。
重合生成物から液状化合物を除去する方法としては、常圧蒸留、減圧蒸留、水蒸気蒸留、気体バブリング処理、減圧処理、加熱処理などの処理により、液状化合物を蒸発させる方法を用いることができる。この方法により、容易な操作により液状化合物を除去できる。重合生成物から液状化合物を除去する方法としては、具体的には、例えば、水系懸濁重合後のスラリーを常圧または減圧下でそのまま蒸留する方法、水系懸濁重合後のスラリーを水蒸気蒸留する方法などを用いることができる。
本発明の製造方法では、水系懸濁重合の完了後24時間以内に、液状化合物の除去を完了する。これにより、液状化合物除去工程において樹脂粒子同士を結合する樹脂皮膜が成長して強度が高くなることが抑制されるので、より多くの樹脂粒子を一次粒子まで解砕できる。その結果、得られる樹脂粒子は、部分による吸油量のばらつきが小さく、吸油量が安定したものとなる。水系懸濁重合の完了後、液状化合物の除去を完了するまでの時間は、20時間以内であることがより好ましく、15時間以内であることがさらに好ましい。これにより、得られる樹脂粒子の吸油量をより安定化させることができる。水系懸濁重合の完了後、液状化合物の除去を完了するまでの時間は、液状化合物の除去が可能となる限りにおいて、短ければ短いほど良く、下限については特に制限はない。
上記液状化合物除去工程では、所望により、液状化合物を除去した後に、懸濁安定剤を塩酸などの酸により分解する。また、上記液状化合物除去工程では、液状化合物を除去した後、重合生成物を、吸引濾過、遠心分離、遠心濾過などの固液分離操作により分散液から単離する。また、上記液状化合物除去工程では、所望により、液状化合物を除去した後に、重合生成物を水で洗浄する。
〔乾燥工程〕
上記乾燥工程では、液状化合物が除去された重合生成物を乾燥する。これにより、重合生成物中に残留する水や液状化合物を除去することができる。
乾燥方法としては、例えば、重合生成物を常圧あるいは減圧下にて通常の乾燥機またはオーブンによって乾燥する方法を用いることができる。
〔解砕工程〕
上記解砕工程では、乾燥された重合生成物を気流衝撃式の解砕により解砕して、一次粒子の非真球状の樹脂粒子を得る。例えば、気流衝撃式の粉砕により、図1に示す重合生成物が、図2に示す部分的に解砕された状態を経て、図3に示す曲率半径の異なる2つの凸面を両側に有する両凸レンズ状の樹脂粒子1となる。
一般的な粒子の解砕方法としては、ハンマーミルやチョッパーミル等の機械衝撃式の解砕機によって解砕する方法も良く知られている。しかしながら、機械衝撃式の解砕機は、ハンマーやチョッパー等の部材を粒子に直接衝突させる機械的構造によって、粒子を粉砕するものである。しかしながら、上記解砕工程において、乾燥された重合生成物をハンマーミルやチョッパーミル等の機械衝撃式の解砕機を用いて解砕した場合、解砕機の解砕能力が劣るために、多くの重合生成物が、一次粒子まで解砕されず、樹脂皮膜を介して複数の樹脂粒子が結合した粒子集合体の状態で残ってしまう。その結果、得られる樹脂粒子は、部分によって吸油量がばらつき、吸油量が安定しない。
これに対し、本発明の製造方法では、気流衝撃式の解砕方法を用いる。気流衝撃式とは、気流によって粒子同士を衝突させて粉砕する方式であり、機械衝撃式と比較して解砕能力に優れている。気流衝撃式の解砕方法を用いて重合生成物を解砕することで、重合生成物から樹脂皮膜を比較的確実に除去することができ、多くの重合生成物から一次粒子まで解砕することができる。その結果、得られる樹脂粒子は、部分による吸油量がばらつきが小さく、吸油量が安定したものとなる。
気流衝撃式の解砕方法としては、例えば、ジェットミルを用いて重合生成物を解砕する方法が挙げられる。ジェットミルとは、高圧ガスを噴射ノズルから噴出させ、このジェット気流によって粒子を加速し、粒子同士の衝突または粒子と器壁との衝突によって粉砕を行う装置である。
〔分級工程〕
本発明の製造方法は、上記解砕工程の後に、樹脂粒子を分級する工程をさらに含むことが好ましい。これにより、所望の用途に適していない粒子径を持つ樹脂粒子を除去して、所望の用途に適した粒子径を持つ樹脂粒子を得ることができる。例えば、ファンデーションなどの化粧料に添加されたときに皮膚への化粧料の塗布性を損なう大きな粒子径を持つ樹脂粒子を除去して、化粧料に適した範囲内の粒子径を持つ樹脂粒子を得ることができる。
樹脂粒子の分級方法としては、例えば、篩分級法、気流分級法(遠心分級法)などが挙げられる。
上記篩分級法は、所定の目開きの篩(例えば篩網)に粒子を通すことによって、篩の目開きより大きい粒子径を持つ粒子と、篩の目開きより小さい粒子径を持つ粒子とに分け、何れかを除去することによって分級するものである。より具体的には、篩分級法では、例えば、粒子を気流中に分散させて所定の目開きの篩に通し、篩の目(穴)を通過できずに篩の手前に落ちた、篩の目開きより大きい粒子径を持つ粒子を除去し、篩の目を通過できた、篩の目開きより小さい粒子径を持つ粒子だけを使用する。
上記気流分級法は、粒子を気流中に分散させ、回転体の回転や旋回流等によって粒子に遠心力を働かせることによって、重い大粒子径の粒子を外側へ送り、軽い小粒子径の粒子を内側へ送るものである。これによって、所定の粒子径より大きい粒子径を持つ粒子と、所定の粒子径より小さい粒子径を持つ粒子とに分離することができる。上記気流分級法は、粒子径分布の中央に近い粒子径を境として分級を行うことができるという利点がある。
本発明の製造方法では、分級によって所定の粒子径(例えば30〜40μmの範囲内から選択される粒子径)より大きい粒子径を持つ樹脂粒子を除去することが好ましい。
〔樹脂粒子〕
本発明の方法で得られる非真球状の樹脂粒子の形状は、ビニルモノマーの種類および比重、液状化合物の種類および比重、ビニルモノマーの使用量に対する液状化合物の使用量の割合、重合速度などによって調整することが可能であるが、ビニルモノマーの使用量に対する液状化合物の使用量の割合によって大きく左右される。
本発明の方法により得られる非真球状の樹脂粒子は、例えば、半球状、碁石状、凸レンズ状(特に両凸レンズ状)あるいはそれらに準ずる非真球状の形状を有する。具体的には、本発明の方法により得られる非真球状の樹脂粒子は、通常、二つの凸面から形成される形状(例えば両凸レンズ状)、または一つの凸面と一つの平面とから形成される形状(例えば半球状)であり、したがって、少なくとも1つの凸面を有する。このような本発明の方法により得られる少なくとも1つの凸面を有する樹脂粒子は、例えば、光拡散性、集光性などの光学特性、樹脂粒子が塗料に添加された場合に滑り性などの摩擦特性を塗膜表面に付与できる特性などを有している。さらに、本発明の方法により得られる非真球状の樹脂粒子は、通常、曲率半径の異なる二つの凸面から形成される形状(例えば両凸レンズ状)、または一つの凸面と一つの平面とから形成される形状(例えば半球状)であり、したがって、一方の面が平面あるいは他方の凸面より大きい曲率半径を有する凸面である。このような本発明の方法により得られる一方の面が平面あるいは他方の凸面より大きい曲率半径を有する凸面である樹脂粒子は、真球状の樹脂粒子には見られない特性、例えば、付着性または固着性をも有している。
さらに、本発明の方法により得られる樹脂粒子は、その形状が非真球状であり、同じ粒子径を有する真球状の樹脂粒子と比べて大きい比表面積を有するため、表面反応性および機能性物質などの担持能力が増大している。また、本発明の方法により得られる、二つの凸面から形成される形状、または一つの凸面と一つの平面とから形成される形状の樹脂粒子は、従来の真球状粒子、板状粒子、中空粒子、多孔質粒子、真球状粒子の集合体では期待できなかった独特の光学特性、例えば、集光性、光拡散性、高光透過性、高隠蔽性、艶消し性などを有するばかりでなく、表面改質などの改質による物理的特性(バインダー中や溶剤中での分散安定性および流動性など)の向上を期待できる。
本発明の方法により得られる非真球状の樹脂粒子は、通常、0.1〜500μm程度の最大径(最大幅)を有する。樹脂粒子の最大幅の調整は、樹脂粒子の製造工程において、モノマー混合物と分散媒との混合条件、懸濁安定剤などの添加量および分散液の攪拌条件やモノマー混合物の分散媒中への分散条件を変更することにより可能である。
本発明の方法により得られる非真球状の樹脂粒子の球換算体積平均粒子径は、1〜50μmの範囲内であることが好ましく、3〜30μmの範囲内であることがより好ましい。球換算体積平均粒子径が1〜50μmの範囲内である樹脂粒子は、特に、化粧料の添加剤として用いられる場合に、化粧料の他の構成成分との混合性や化粧料を皮膚上に塗布した際における違和感の有無の観点から好ましい。
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。最初に、実施例および比較例における、樹脂粒子の球換算体積平均粒子径の測定方法および樹脂粒子の吸油量の測定方法を説明する。
〔樹脂粒子の球換算体積平均粒子径の測定方法〕
樹脂粒子の球換算体積平均粒子径(体積基準の粒度分布における算術平均径)は、コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製測定装置)により、測定する。なお、本測定に際しては、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、50μmアパチャーを用いてキャリブレーションを行い、測定する。
具体的には、樹脂粒子0.1gを0.1重量%ノニオン系界面活性剤10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)および超音波洗浄器(ヴェルボクリーア社製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて予備分散させ、分散液を得る。次いで、コールターマルチサイザーII本体に備え付けのISOTON(登録商標)II(ベックマンコールター社:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、前記分散液を緩く攪拌しながらスポイドで滴下して、コールターマルチサイザーII本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次にコールターマルチサイザーII本体に、アパチャーサイズ(径)を50μm、Current(アパチャー電流)を800μA、Gain(ゲイン)を4、Polarity(内側電極の極性)を+と入力してmanual(手動モード)で測定を行う。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。球換算体積平均粒子径(体積基準の粒度分布における算術平均径)は、10万個の粒子径の平均値である。
〔樹脂粒子の吸油量の測定方法〕
樹脂粒子の吸油量は、JIS K 5101−13−2の測定方法をベースとして、煮アマニ油に代えて精製アマニ油を使用し、終点の判断基準を変更した(「測定板をたてても、試料が流動しない」時点に変更した)方法によって、測定した。吸油量の測定の詳細は、以下の通りである。
(A)装置および器具
測定板:300×400×5mmより大きい平滑なガラス板
パレットナイフ(ヘラ):鋼製又はステンレス製の刃を持った柄つきのもの
化学はかり(計量器): 10mgオーダーまで計れるもの
ビュレット:JIS R 3505に規定する容量10mlのもの
(B)試薬
精製アマニ油:ISO 150に規定するもの(今回は一級アマニ油(和光純薬工業株式会社製)を用いる)
(C)測定方法
(1)樹脂粒子1gを測定板上の中央部に取り、精製アマニ油をビュレットから一回に4,5滴ずつ、徐々に樹脂粒子の中央に滴下し、その都度、樹脂粒子および精製アマニ油の全体をパレットナイフで充分練り合わせる。
(2)上記の滴下および練り合わせを繰り返し、樹脂粒子および精製アマニ油の全体が固いパテ状の塊になったら1滴ごとに練り合わせて、精製アマニ油の最後の1滴の滴下によりペースト(樹脂粒子および精製アマニ油の混練物)が急激に軟らかくなり、流動を始める点を終点とする。
(3)流動の判定
精製アマニ油の最後の1滴の滴下により、ペーストが急激に軟らかくなり、測定板を垂直に立てた時にペーストが動いた場合に、ペーストが流動していると判定する。測定板を垂直に立てた時もペーストが動かない場合には、更に精製アマニ油を1滴加える。
(4)終点に達したときの精製アマニ油の消費量をビュレット内の液量の減少分として読み取る。
(5)1回の測定時間は7〜15分以内に終了するように実施し、測定時間が15分を超えた場合は再測定し、規定の時間内で測定を終了した時の数値を採用する。
(D)吸油量の計算
下記式により試料100g当たりの吸油量を計算する。
O=(V/m)×100
ここで、O:吸油量(ml/100g)、m:樹脂粒子の質量(g)、V:消費した精製アマニ油の容積(ml)
〔実施例1〕
まず、水200重量部に、複分解法で製造されたピロリン酸マグネシウム5重量部を懸濁安定剤として添加し、分散媒を調製した。次いで、上記分散媒をセパラブルフラスコに供給し、この分散媒中に重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.1重量部を溶解させた。
一方、重合性単官能性ビニルモノマーとしてのメタクリル酸メチル69.5重量部と、重合性多官能性ビニルモノマーとしてのエチレングリコールジメタクリレート0.55重量部と、液状化合物としてのn−ヘプタン30重量部と、相分離促進剤としてのラウリルリン酸0.05重量部と、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4重量部とを完全に混合溶解させて、単量体混合物を作製した。
この単量体混合物を上記分散媒に加え、ホモミキサー(IKA社製、商品名「ULTRA TURRAX(登録商標)T−25」)を用いて撹拌速度8000rpmで約10秒間攪拌して、単量体混合物を分散媒中に微分散させた。
そして、上記セパラブルフラスコに撹拌翼、温度計および還流冷却器を取付けてセパラブルフラスコ内を窒素置換した後、このセパラブルフラスコを60℃の恒温水槽(ウォーターバス)中に設置し、セパラブルフラスコ内の分散媒を撹拌速度200rpmで攪拌しつつ、セパラブルフラスコ内の分散媒の温度が60℃に達してから10時間に亘って懸濁重合を行った。
懸濁重合の完了後すぐに、セパラブルフラスコからスラリーを取り出し、その後すぐにエバポレーターを用いてスラリーからn−ヘプタンを14時間かけて減圧留去した。すなわち、本実施例では、n−ヘプタンの減圧留去を、懸濁重合の完了後すぐに開始し、懸濁重合の完了時から14時間後に完了した。
その後、スラリーを冷却し、次いでスラリーのpHが2程度になるまで塩酸を添加して懸濁安定剤を分解して、重合生成物を得た。
そして、上記重合生成物を、濾紙を用いたブフナー漏斗で吸引濾過して、分散媒を分離し、重合生成物の含水ケーキを得た。得られた重合生成物の含水ケーキを1200重量部のイオン交換水で洗浄することによって懸濁安定剤を除去して、含水ケーキを得た。前記含水ケーキを乾燥させて、乾燥粉体(重合生成物)を得た。
その後、得られた乾燥粉体をジェットミル(日清エンジニアリング株式会社製、CJ型)にて解砕(粉砕)した後、篩分級法で分級することにより所望の粒子径範囲より大きい粒子径を持つ大粒子を除去し、一次粒子の樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子は、両凸レンズ状であり、球換算体積平均粒子径が5μmであった。
得られた樹脂粒子の中から異なる3つの部分の樹脂粒子を取り出してそれぞれの樹脂粒子の吸油量を測定した。その結果、各部分の樹脂粒子の吸油量はそれぞれ、100ml/100g、102ml/100g、および105ml/100gであり、ばらつきが小さかった。したがって、本実施例の製造方法は、得られる樹脂粒子の吸油量が安定していた。
〔実施例2〕
n−ヘプタンの減圧留去を、懸濁重合の完了後すぐに開始し、懸濁重合の完了時から23時間後に完了したこと以外は実施例1と同様にして、球換算体積平均粒子径が5μmの両凸レンズ状の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の中から異なる3つの部分の樹脂粒子を取り出してそれぞれの樹脂粒子の吸油量を測定した。その結果、各部分の樹脂粒子の吸油量はそれぞれ、104ml/100g、110ml/100g、および106ml/100gであり、ばらつきが小さかった。したがって、本実施例の製造方法は、得られる樹脂粒子の吸油量が安定していた。
〔比較例1〕
n−ヘプタンの減圧留去を、懸濁重合の完了後すぐに開始し、懸濁重合の完了時から25時間後に完了したこと以外は実施例1と同様にして、球換算体積平均粒子径が5μmの両凸レンズ状の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の中から異なる3つの部分の樹脂粒子を取り出してそれぞれの樹脂粒子の吸油量を測定した。その結果、各部分の樹脂粒子の吸油量はそれぞれ、135ml/100g、110ml/100g、および87ml/100gであり、ばらつきが大きかった。したがって、本比較例の製造方法は、得られる樹脂粒子の吸油量が安定していなかった。
〔比較例2〕
乾燥粉体の粉砕をジェットミル(日清エンジニアリング株式会社製、CJ型)に代えてチョッパーミル(相互産業株式会社製、ソーゴ式粉砕機)を用いて行ったこと以外は実施例1と同様にして、球換算体積平均粒子径が5μmの両凸レンズ状の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の中から異なる3つの部分の樹脂粒子を取り出してそれぞれの樹脂粒子の吸油量を測定した。その結果、各部分の樹脂粒子の吸油量はそれぞれ、150ml/100g、134ml/100g、および94ml/100gであり、ばらつきが大きかった。したがって、本比較例の製造方法は、得られる樹脂粒子の吸油量が安定していなかった。
以上のように、液状化合物の除去を水系懸濁重合の完了後24時間以内に完了し、かつ重合生成物を気流衝撃式の解砕により解砕した本発明の実施例1および2の製造方法では、液状化合物の除去を水系懸濁重合の完了後24時間以上経過して完了した比較例1の製造方法、および、重合生成物を機械衝撃式の解砕により解砕した比較例2と比較して、得られる樹脂粒子の吸油量が安定することが分かった。