JP2013202673A - 溶接装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接作業を自動化することができ、溶接作業の効率化を図ることができる溶接装置を提供する。
【解決手段】溶接装置1は、溶接用ワークである鉄骨構造物Wを溶接する溶接ロボット30の動作を制御する溶接制御装置90を備え、溶接制御装置90が、少なくとも、鉄骨構造物Wの寸法および溶接継手の形状のいずれかもしくは両方と、溶接実行可否の情報とが、作業者による入力あるいは鉄骨構造物WのCADデータの入力によって入力される入力手段91を備え、鉄骨構造物Wの寸法および溶接継手の形状のいずれかもしくは両方に応じて予め定められた溶接ロボット軌跡および溶接条件に従って、溶接時における溶接ロボット動作軌跡および溶接条件を自動的に生成し、溶接させることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉄骨柱構造物を溶接する溶接装置に関するものである。
従来、鉄骨柱構造物の溶接装置として特許文献1に示すような技術が提案されている。すなわち、特許文献1では、ティーチペンダントからロボット制御装置に対して、溶接速度設定信号および溶接トーチの動作軌跡データが入力され、これらの信号およびデータに基づいて再生を行う溶接装置が提案されている。
中国特許出願公開第200410012044.2号明細書
しかしながら、特許文献1において提案された溶接装置は、ティーチペンダントから入力される情報に従って再生を行うため、様々な形状およびサイズからなる鉄骨構造物に対応するためには、その各々に応じたティーチングデータや溶接条件を個別に作成する必要があった。すなわち、特許文献1において提案された溶接装置は、例えば鉄骨構造物の寸法等の情報を簡易に入力することができる手段や、当該鉄骨構造物の寸法等の情報等に基づいて溶接ロボットの動作軌跡や溶接条件を自動で作成するような手段を備えていないため、溶接作業に取り掛かるための準備に多大な時間を要することとなり、鉄骨構造物のように個々に溶接対象物が変わるものに対して溶接作業の効率化を妨げていた。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、溶接作業を自動化することができ、溶接作業の効率化を図ることができる溶接装置を提供することを課題とする。
前記した課題を解決するために本発明に係る溶接装置は、溶接用ワークである鉄骨構造物を溶接ロボットによって溶接する溶接装置であって、前記溶接ロボットの動作を制御する溶接制御装置を備え、前記溶接制御装置が、少なくとも、前記鉄骨構造物の寸法および溶接継手の形状のいずれかもしくは両方と、溶接実行可否の情報とが、作業者による入力あるいは前記鉄骨構造物のCADデータの入力によって入力される入力手段を備え、前記鉄骨構造物の寸法および前記溶接継手の形状のいずれかもしくは両方に応じて予め用意された溶接ロボット軌跡および溶接条件に従って、溶接時における溶接ロボット動作軌跡および溶接条件を自動的に生成し、溶接させる構成とした。
このような構成を備える溶接装置は、溶接制御装置の入力手段に入力された鉄骨構造物の寸法等の情報に基づいて、溶接ロボットの動作軌跡および溶接条件を自動的に生成することができる。
また、前記した課題を解決するために本発明に係る溶接装置は、前記鉄骨構造物の長手方向に移動可能に設けられ、当該鉄骨構造物を保持して回転させる一対の回転ポジショナと、前記一対の回転ポジショナの移動方向と平行な方向に移動可能に設けられた台車と、前記台車上において、前記回転ポジショナの移動方向と直交する方向に移動可能に設けられた前記溶接ロボットと、前記溶接ロボットの先端に設けられた溶接トーチと、を備え、前記一対の回転ポジショナが、前記鉄骨構造物が内部に収容され、複数の固定治具によって当該鉄骨構造物を保持する一対の環状保持部と、前記一対の環状保持部の一方または双方を回転させる駆動部と、を備え、前記環状保持部が、前記鉄骨構造物を収容できるように環状部分の所定位置が分断されて当該環状部分の一部が開口して形成されていることが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、一対の回転ポジショナによって鉄骨構造物を保持するとともに、例えば溶接ロボットによって鉄骨構造物の直線部分を溶接する場合は、当該鉄骨構造物を回転させずに溶接ロボットによって溶接することができ、また、溶接ロボットによって鉄骨構造物の円弧部分(コーナー部)を溶接する場合は、当該鉄骨構造物を回転させながら溶接することができる。これにより、溶接装置は、鉄骨構造物の直線部分のみならず、円弧部分においてもアークを切ることなく連続して溶接することができる。
また、前記した課題を解決するために本発明に係る溶接装置は、前記溶接用ワークである鉄骨構造物の長手方向に移動可能に設けられ、当該鉄骨構造物を保持して回転させる一対の回転ポジショナと、前記一対の回転ポジショナの移動方向と平行な方向に移動可能に設けられた複数の台車と、前記複数の台車上において、前記回転ポジショナの移動方向と直交する方向に移動可能にそれぞれ設けられた前記溶接ロボットと、前記溶接ロボットの先端に設けられた溶接トーチと、を備え、前記一対の回転ポジショナが、前記鉄骨構造物が内部に収容され、複数の固定治具によって当該鉄骨構造物を保持する一対の環状保持部と、前記一対の環状保持部の一方または双方を回転させる駆動部と、を備え、前記環状保持部が、前記鉄骨構造物を収容できるように環状部分の所定位置が分断されて当該環状部分の一部が開口して形成されていることが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、一対の回転ポジショナによって鉄骨構造物を保持するとともに、例えば台車ごとに設けられた溶接ロボットによって鉄骨構造物の別々の直線部分を溶接する場合は、当該鉄骨構造物を回転させずに複数の溶接ロボットによって溶接することができ、また、台車ごとに設けられた溶接ロボットによって鉄骨構造物の別々の円弧部分(コーナー部)を溶接する場合は、当該鉄骨構造物を回転させながら複数の溶接ロボットによって溶接することができる。これにより、溶接装置は、複数の溶接ロボットによって、鉄骨構造物の直線部分のみならず、円弧部分においてもアークを切ることなく連続して溶接することができる。
また、溶接装置は、前記溶接制御装置が、所定突き出し長さに設定された溶接ワイヤを支持する前記溶接トーチと前記鉄骨構造物との間にセンシング電圧を印加し、前記溶接ワイヤと前記鉄骨構造物との接触による通電状態を検出して前記鉄骨構造物の位置を検出するセンシング手段と、前記センシング手段によって検出された、少なくとも一つの前記鉄骨構造物表面からの設定開先深さに対する所定深さの検出開始位置から開先幅方向の両開先面の検出位置データと、前記設定開先深さと前記検出開始位置との差と、予め設定されている前記両開先面の角度とに従ってルートギャップを求めるルートギャップ算出手段と、を備えることが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、センシング手段によって鉄骨構造物の位置を検出し、ルートギャップ算出手段によって鉄骨構造物の位置に従ってルートギャップを算出することができるため、開先の底面の位置を検出する必要がなく、例えば裏当部材への仮付け溶接による凹凸や仮付け溶接によるスラグの付着に関係なくルートギャップを求めることができる。
また、溶接装置は、前記溶接制御装置が、前記鉄骨構造物の寸法、もしくは、前記鉄骨構造物の寸法およびルートギャップに対して予め用意された積層パターンおよび溶接条件と、入力もしくはセンシングにより得られたルートギャップ情報とから、溶接しようとする溶接継手に対する積層パターンおよび溶接条件を自動生成することが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、鉄骨構造物の寸法、もしくは、鉄骨構造物の寸法およびルートギャップに応じて、積層パターンおよび溶接条件を自動生成することができる。
また、溶接装置は、前記溶接制御装置が、前記鉄骨構造物の寸法、もしくは、前記鉄骨構造物の寸法およびルートギャップに対して予め用意された積層パターンおよび溶接条件と、入力もしくはセンシングにより得られたルートギャップ情報とから、溶接しようとする溶接継手に対する積層パターンおよび溶接条件を自動生成するとともに、同一の鉄骨構造物に存在する断面積と溶接長のいずれかもしくは両方が異なることで、溶接すべき体積の異なる複数の溶接継手を複数の溶接ロボットによって同時に溶接する場合に、基点から次の基点までの溶接時間を同じにするために、溶接ワイヤの送り量を変えるように制御することで、溶接すべき体積の違いを補うことが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、複数の溶接ロボットによる溶接ワイヤの送り量を変えることで、複数の溶接ロボットによって、溶接すべき体積の異なる複数の溶接継手を同時に溶接することができる。
また、溶接装置は、前記溶接制御装置が、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲を設け、その範囲内での溶接を行い、その結果生じる肉量の違いをそれ以降のパスで補うように制御することで、トータルの肉量を所望の値内にすることが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、溶接の際に生じる肉量の違いを後のパスで補い、トータルの肉量を所望の値内にすることで、複数の溶接ロボットによって、複数の溶接継手を同時に効率よく、かつ、適正に溶接することができる。
また、溶接装置は、前記溶接制御装置が、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲内での溶接が行えない場合において、少なくとも1つのパスを溶接継手ごとに個別に溶接するように制御することで、全体の肉量誤差を補うことが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、少なくとも1つのパスを溶接継手ごとに個別に溶接し、全体の肉量誤差を補うことで、溶接継手ごとで基点間の溶接すべき体積の差が大きくても、複数の溶接ロボットによって、複数の溶接継手を同時に効率よく、かつ、適正に溶接することができる。
また、溶接装置は、前記溶接制御装置が、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲内での溶接が行えない場合において、ワイヤ送給量の差を大きくするとともに、溶接電流が適正範囲外となることに対して当該溶接電流が所望の値となるように溶接ワイヤの突き出し長さを変えるように制御することが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、複数の溶接ロボットの溶接ワイヤの突き出し長さを変えることで、複数の溶接ロボットによって複数の溶接継手を同時に効率よく、かつ、適正な溶接電流を保って溶接することができる。
また、溶接装置は、溶接トーチ先端に設けられたノズルを交換するノズル交換装置を備え、前記ノズル交換装置が、前記ノズルが挿入されるコイルバネと、前記ノズルが挿入された前記コイルバネをその中心軸回りに回転駆動させることで、前記ノズルを前記溶接トーチのトーチ本体から取り外す回転駆動源と、を備えることが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、コイルバネに対してノズルがずれて挿入された場合であっても、コイルバネの変形および撓みによってそのズレに容易に追従することができるため、ノズルに熱変形や寸法誤差があってもノズルの交換を確実に行うことができる。
また、溶接装置は、前記溶接ロボットの先端に設置され、前記鉄骨構造物の溶接部に発生したスラグを除去するスラグ除去装置を備えることが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、溶接部に発生したスラグを除去することができるため、溶接不良や溶接欠陥を防止することができる。
また、溶接装置は、前記溶接制御装置が、所定突き出し長さに設定された溶接ワイヤを支持する前記溶接トーチと前記鉄骨構造物との間にセンシング電圧を印加し、前記溶接ワイヤと前記鉄骨構造物との接触による通電状態を検出して前記鉄骨構造物の位置を検出するセンシング手段と、予め入力された前記鉄骨構造物の寸法と、前記センシング手段によって検出された前記鉄骨構造物の位置とから、前記鉄骨構造物の中心位置を算出する中心位置算出手段と、予め入力された前記回転ポジショナの回転中心位置と、前記鉄骨構造物の中心位置とから、前記回転ポジショナの回転中心に対する前記鉄骨構造物の偏心量を算出する偏心量算出手段と、前記偏心量算出手段によって算出された前記偏心量に従って、前記ロボット動作軌跡を修正する修正手段と、を備えることが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、中心位置算出手段によって鉄骨構造物の中心位置を算出し、偏心量算出手段によって鉄骨構造物の偏心量を算出することができるため、回転ポジショナによって偏心しながら回転する鉄骨構造物であっても正確に溶接を行うことができる。
また、溶接装置は、前記鉄骨構造物が、角形鋼管であり、前記溶接制御装置が、所定突き出し長さに設定された溶接ワイヤを支持する前記溶接トーチと前記角形鋼管との間にセンシング電圧を印加し、前記溶接ワイヤと前記角形鋼管との接触による通電状態を検出して前記角形鋼管の位置を検出するセンシング手段と、前記センシング手段によって検出された、前記角形鋼管における上面または下面の位置と、前記角形鋼管における一方または他方の側面の位置とに従って、予め入力された前記角形鋼管における角部の位置を補正する位置補正手段と、前記位置補正手段によって補正された前記角形鋼管における角部の位置と、前記センシング手段によって検出された前記角形鋼管における角部の位置から前記角形鋼管におけるコーナー部の円弧中心を結ぶ鋼材表面位置とに従って、前記コーナー部の半径を算出するコーナー部半径算出手段と、前記位置補正手段によって補正された角部の位置と、前記コーナー部半径算出手段によって算出された前記コーナー部の半径とに従って、前記ロボット動作軌跡を修正する修正手段と、を備えることが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、位置補正手段によって角形鋼管の角部の位置を補正し、コーナー部半径算出手段によって角形鋼管のコーナー部の半径を算出することができるため、入力された角形鋼管の位置が実際の位置とずれている場合やコーナー部半径が異なる場合であっても正確に溶接を行うことができる。
また、溶接装置は、前記溶接制御装置が、前記溶接トーチの溶接開始位置で、センシング電圧を印加した溶接ワイヤを前記鉄骨構造物に対してインチング操作によって進出させることにより、前記溶接ワイヤの先端が前記鉄骨構造物と接触した際の短絡を検出して前記溶接ワイヤと前記鉄骨構造物との通電を確認した後、所定長さだけ前記溶接ワイヤを逆方向にインチング操作し、その後、前記溶接トーチの前記溶接開始位置で前記溶接ワイヤに所定の溶接電力を供給し、アークを点火して溶接を開始するように制御することが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、インチング手段を備えることで、溶接開始前にアーク発生の可不可を確認し、溶接開始位置で確実にアークをスタートすることができる。
また、溶接装置は、前記溶接制御装置が、前記複数の台車上におけるそれぞれの前記溶接ロボットの先端に設けられた前記溶接トーチのそれぞれの溶接開始位置で、センシング電圧を印加した溶接ワイヤを前記鉄骨構造物に対してインチング操作によって進出させることにより、前記溶接ワイヤの先端が前記鉄骨構造物と接触した際の短絡を検出して前記溶接ワイヤと前記鉄骨構造物との通電を確認した後、所定長さだけ前記溶接ワイヤを逆方向にインチング操作し、その後、複数の前記溶接トーチの前記溶接開始位置で同時に前記溶接ワイヤにそれぞれ所定の溶接電力を供給し、アークを点火して溶接を開始することにより、同一の前記鉄骨構造物の異なる溶接継手を複数の前記溶接トーチで同時に溶接を開始するように制御することが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、インチング手段を備えることで、溶接開始前にアーク発生の可不可を確認し、複数の溶接ロボットでアークスタートのタイミングを同期させながら、それぞれの溶接開始位置で確実にアークをスタートすることができる。
また、溶接装置は、前記溶接制御装置が、レ形開先を設けた裏当金方式の溶接継手を横向き姿勢で溶接する場合、開先の最深部について、下板から立板に向かう前記溶接ワイヤの運棒と前記立板から前記下板に向かう前記溶接ワイヤの運棒とを繰り返すウィービングによって、ルートギャップに依らず前記開先の長手方向にわたって肉厚dが略一定である鉛直方向の層を形成し、前記鉛直方向の層に接して前記下板の上に高さtで略一定の肉盛溶接を行って水平方向の層を形成し、前記水平方向の層と前記鉛直方向の層と前記立板とからなる新たな開先について、前記鉛直方向の層を形成する溶接と前記水平方向の層を形成する溶接とを繰り返し、前記肉盛溶接の高さtを、前記水平方向の層と前記鉛直方向の層と立板とからなる新たな開先の形状が最初の開先の最深部の形状と略同一となるような高さとするように制御することが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、下板から立板に向かって運棒し、立板から下板に向かって運棒する適切な幅のウィービングで開先を溶接するため、下板や立板と裏当部材が接するルートギャップにおける溶け込み不良を低減することができる。
また、溶接装置は、前記溶接制御装置が、レ形開先を設けた裏当金方式の溶接継手を立向き姿勢で溶接する場合、前記溶接トーチの前記溶接ワイヤ先端をウィービングさせながら上昇させて前記開先を溶接する際に、前記開先を始端側の始端部領域および終端側の終端部領域とこれ以外の本溶接部領域とに区分し、これら各領域の溶接特性を考慮した溶接条件を設定するとともに、前記ウィービングによる運棒パターンの1周期を1ループとし、前記ウィービングの軌跡中に含まれる教示点の位置座標を、X軸(溶接始端から溶接終端に向かう方向を+、開先のある前記鉄骨構造物の下端部を0)、Y軸(溶接方向から開先を投影して開先面のある方向を+、ルートギャップの中心を0)、Z軸(ルートギャップ側から開先側に向かう方向を+、裏当部材の表面を0)で表し、前記鉄骨構造物の下部に配置された固形タブの溝深さをD(mm)としたとき、前記端部領域の第1ループに含まれる教示点のうち、複数の前記鉄骨構造物の一方と前記裏当部材あるいは下層溶接ビード表面と前記固形タブとの接点に最も近い教示点Pの位置座標(xp1,yp1,zp1)および前記複数の鉄骨構造物の他方と前記裏当金あるいは下層溶接ビード表面と前記固形タブとの接点に最も近い教示点Pの位置座標(xp2,yp2,zp2)におけるX座標(xp1,xp2)の少なくとも一方の値が−D−2(mm)以上かつ+3(mm)以下であり、前記教示点Pおよび前記教示点Pに対して、0.2〜3.0sの停止時間で停止し、当該停止中の溶接電流を190A〜250Aにするように制御することが好ましい。
このような構成を備える溶接装置は、始端部領域の第1ループに含まれる教示点のうち、ルート側の教示点P(xp1,yp1,zp1)および教示点P(xp2,yp2,zp2)におけるX座標(xp1,xp2)の少なくとも一方の値を−D−2(mm)以上かつ+3(mm)以下に設定することによって、最も溶込みが得られにくい始端部領域の固形タブとの接点部分にアーク点を確実に配置し、融合不良等の欠陥を防止することができる。また、溶接装置は、前記した教示点に対して0.2〜3.0sの停止時間を設定することにより必要十分な大きさの溶融池を形成することができ、さらに停止中の溶接電流を190A〜250Aに設定することにより鉄骨構造物や裏当部材に対する良好な溶込みやなじみを得ることができる。
本発明に係る溶接装置によれば、溶接制御装置の入力手段に入力された鉄骨構造物の寸法等の情報に基づいて、溶接ロボットの動作軌跡および溶接条件を自動的に生成することができるため、動作軌跡や溶接条件などのティーチングデータを個別に作成すること無しに、溶接作業を自動化することができ、溶接作業の効率化を図ることができる。
本発明の実施形態に係る溶接装置の全体構成を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る溶接装置が備える回転ポジショナの構成および動作を説明するための概略図であって、(a)は、環状保持部の円弧部分を開放した状態を示す図、(b)は、環状保持部内に鉄骨構造物を収容した状態を示す図、(c)は、環状保持部の円弧部分を閉鎖した状態を示す図、である。 本発明の実施形態に係る溶接装置が備える回転ポジショナの構成および動作を説明するための概略図であって、(a)は、環状保持部を停止させた状態を示す図、(b)は、環状保持部を回転させた状態を示す図、である。 本発明の実施形態に係る溶接装置が備えるノズル交換装置の構成を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る溶接装置が備えるノズル交換装置のノズル着脱機構の動作を示す図であって、(a)は、ノズル着脱機構のコイルバネに溶接トーチ先端のノズルを挿入する前の状態を示す図、(b)は、ノズル着脱機構のコイルバネに溶接トーチ先端のノズルを挿入した状態を示す図、(c)は、ノズル着脱機構のコイルバネによって溶接トーチ先端のノズルを取り外した状態を示す図、である。 本発明の実施形態に係る溶接装置が備えるスラグ除去装置の構成を示す側面図である。 本発明の第1実施形態および第7実施形態に係る溶接装置が備える溶接制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る溶接装置によるギャップセンシングの手順を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る溶接装置が備える溶接制御装置の演算手段の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る溶接装置が備える溶接制御手段の処理手順を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係る溶接装置が備える溶接制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第3実施形態に係る溶接装置が備える溶接制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第3実施形態に係る溶接装置によるコーナー部半径センシングの手順を示す概略図である。 本発明の第4実施形態に係る溶接装置が備える溶接制御装置の構成を示すブロック図である。 (a)〜(f)は、本発明の第4実施形態に係る溶接装置が備える溶接制御装置によるインチング操作の手順を示す概略図である。 (a)〜(f)は、本発明の第4実施形態に係る溶接装置が備える溶接制御装置によるインチング操作の手順を示す概略図である。 (a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る溶接装置による横向き溶接の手順を示す概略図である。 本発明の第5実施形態に係る溶接装置による横向き溶接における鉄骨構造物のルートギャップがテーパギャップである場合を示す概略図である。 (a)、(b)は、本発明の第6実施形態に係る溶接装置による立向き溶接の手順を示す概略図である。 (a)、(b)は、本発明の第6実施形態に係る溶接装置による立向き溶接の手順を示す概略図である。 本発明の第7実施形態に係る溶接装置が備える溶接制御装置の演算手段の構成を示すブロック図である。
以下、本発明の実施形態に係る溶接装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図面中で部材の大きさや形状を誇張して示している場合や、一部の構成の描写を省略している場合がある。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る溶接装置について、図1〜図9を参照しながら説明する。溶接装置1は、溶接用ワークである鉄骨構造物を、例えばガスシールドアーク溶接によって溶接するものである。溶接装置1は、図1に示すように、回転ポジショナ10と、台車20と、溶接ロボット30と、ワイヤ供給容器40と、ノズル交換装置50と、ノズル清掃装置60と、ワイヤ切断装置80と、溶接制御装置90と、を備えている。また、溶接装置1は、図1に示した構成以外にも、スラグ除去装置70を備えている(図6参照)。
(回転ポジショナ)
回転ポジショナ10は、溶接の際に鉄骨構造物Wを保持するとともに回転させるものである。回転ポジショナ10は、図1に示すように、一対で構成され、柱状の鉄骨構造物Wを、当該鉄骨構造物Wの長手方向における2点で保持する。回転ポジショナ10は、例えば溶接ロボット30によって鉄骨構造物Wの直線部分を溶接する場合は当該鉄骨構造物Wを回転させず、溶接ロボット30によって鉄骨構造物Wの円弧部分(コーナー部)を溶接する場合は当該鉄骨構造物Wを回転させる。これにより、溶接装置1は、鉄骨構造物Wの直線部分のみならず、円弧部分においてもアークを切ることなく連続して溶接することができる。回転ポジショナ10は、ここでは図1に示すように、環状保持部11と、昇降アーム機構12と、ブラケット13と、レール台車14と、を備えている。
環状保持部11は、鉄骨構造物Wを内部に収容して保持するものである。環状保持部11の内側には、図1に示すように、鉄骨構造物Wを四方から保持するための複数の固定治具111が伸縮自在に設けられている。そして、環状保持部11は、図1に示すように、これら複数の固定治具111によって、鉄骨構造物Wを四方から挟んで固定する。また、環状保持部11の外周には、図2(a)に示すように、ギア11aが形成されており、後記するように、当該ギア11aがブラケット13内部に設けられたピニオンギア131と噛み合うように構成されている(図3参照)。なお、図1では、一部(円周の右側のみ)を除いてギア11aの図示を省略している。
昇降アーム機構12は、環状保持部11を分断して開閉するためのものである。昇降アーム機構12は、図2(a)に示すように、環状保持部11およびブラケット13の側方(ここでは右側)に設けられ、一端側が環状保持部11の上部に接続され、他端側がブラケット13の側面(ここでは右側)に接続されている。
昇降アーム機構12は、具体的には図2(a)に示すように、環状保持部11を所定位置で分断するように開放し、当該環状保持部11の一部である円弧部分11bを、環状保持部11の残りの部分から離間させることで、鉄骨構造物Wを収容可能な状態とする。そして、昇降アーム機構12は、図2(b)に示すように、鉄骨構造物Wが収容されると、図2(c)に示すように、円弧部分11bを再び閉鎖し、環状保持部11の内側に設けられた4つの固定治具111によって鉄骨構造物Wを挟んで保持させる。
ブラケット13は、図1に示すように、環状保持部11を収容するものである。ブラケット13は、図2(a)に示すように、環状保持部11の下半分を収容し、環状保持部11の上半分を露出させるような形状を呈している。また、ブラケット13の内部には、図3(a)に示すように、環状保持部11のギア11aと噛み合うように配置されたピニオンギア131と、当該ピニオンギア131を駆動させる駆動部132と、が設けられている。なお、この駆動部132は、一対の回転ポジショナ10の少なくとも一方に設けられていればよく、一方の回転ポジショナ10の回転に他方の回転ポジショナ10が従動する構成であっても構わない。
レール台車14は、回転ポジショナ10をポジショナ用移動レールR1に沿って移動可能とするものである。レール台車14は、図1に示すように、回転ポジショナ10の下部に一対で設けられ、当該回転ポジショナ10を鉄骨構造物Wの長手方向に移動可能とする。
回転ポジショナ10は、前記したように、環状保持部11の外周に形成されたギア11aと、ブラケット13内部に設けられたピニオンギア131とが噛み合うように構成されている(図3(a)参照)。従って、回転ポジショナ10は、図3(b)に示すように、駆動部132の駆動によって環状保持部11を回転させることで、溶接作業中に鉄骨構造物Wを回転させることができる。
(台車)
台車20は、溶接装置1を構成する各機構を載置するものである。台車20は、図1に示すように、平板状に形成されている。そして、台車20の上部には、図1に示すように、溶接ロボット30と、ワイヤ供給容器40と、ノズル交換装置50と、ノズル清掃装置60と、ワイヤ切断装置80と、溶接制御装置90と、が載置されている。また、台車20の上部には、図1に示すように、スラグ除去装置70(図6参照)を載置するスラグ除去装置載置台70aが載置されている。
台車20の下部には、図1に示すように、車輪21が設けられており、台車20は、当該車輪21によって、台車用移動レールR2に沿って移動可能に構成されている。すなわち、台車20は、図1に示すように、鉄骨構造物Wの長手方向であって、前記した回転ポジショナ10の移動方向と平行な方向に移動可能に設けられている。
台車20の上部には、図1に示すように、スライダ機構22が設けられており、当該スライダ機構22の上部に溶接ロボット30が載置されている。このスライダ機構22は、回転ポジショナ10の移動方向、すなわち鉄骨構造物Wの長手方向、と直交する方向に移動可能に構成されている。従って、当該スライダ機構22の上部に載置された溶接ロボット30は、溶接の際に、回転ポジショナ10の移動方向と直交する方向に移動可能に構成されている。
(溶接ロボット)
溶接ロボット30は、鉄骨構造物Wを溶接するものである。溶接ロボット30は、図1に示すように、アーム先端に溶接ワイヤを供給する溶接トーチ31を備えている。この溶接トーチ31は、図示しない溶接電源に接続されており、当該溶接トーチ31を介して、溶接ワイヤに電力が供給されるように構成されている。溶接ロボット30は、図1に示すように、スライダ機構22を介して台車20に載置されており、前記したように、回転ポジショナ10の移動方向と直交する方向(鉄骨構造物Wの幅方向)に移動可能に設けられている。また、溶接ロボット30は、図1に示すように、一対の回転ポジショナ10の間もしくはその外側に配置されており、当該一対の回転ポジショナ10の間の溶接継手を溶接する。
(ワイヤ供給容器)
ワイヤ供給容器40は、溶接トーチ31に供給される溶接ワイヤが収容されるものである。ワイヤ供給容器40は、図1に示すように、円筒状に形成されており、内部に溶接ワイヤがコイル状に巻かれながら収容されている。ワイヤ供給容器40内の溶接ワイヤは、図示しないワイヤ送給装置によって溶接時には巻き解かれ、容器上部のテーパ状にすぼまったワイヤ引き出し治具を通り、図示しないコンジットチューブを介して溶接トーチ31に供給される。
(ノズル交換装置)
ノズル交換装置50は、溶接トーチ31先端に設けられたシールドガス供給用のノズルを交換するものである。例えば、溶接装置1を用いて開先の深い溶接継手を溶接する場合、その初層または2層目の溶接ではノズルと開先との干渉を防ぐために短いノズルを用い、それ以降の層の溶接ではシールド性を確保するために長いノズルを用いることがある。このような場合に、ノズル交換装置50を用いることで、溶接の途中であってもノズルを交換することができるため、当該交換作業を自動化することができる。
ノズル交換装置50は、図1に示すように、台車20上おける溶接ロボット30の近傍に載置されている。ノズル交換装置50は、具体的には図4に示すように、円筒状の基台51と、当該基台51上に配置された円筒状のノズル着脱機構52と、基台51上に配置された円筒状のチップ清掃機構53と、ノズル着脱機構52とチップ清掃機構53とを接続する中間歯車55と、を備えている。なお、ここでは図示を省略したが、ノズル着脱機構52は、基台51上に複数配置されている。
ノズル着脱機構52は、溶接トーチ31先端のノズルを着脱するものである。ノズル着脱機構52は、図4に示すように、ノズルが挿入されるコイルバネ521と、当該コイルバネを支持する筒部材522と、平歯車523を介してコイルバネ521を正回転または逆回転させる回転駆動源524と、を備えている。なお、平歯車523は、図4に示すように、中間歯車55を介して平歯車534と接続されている。従って、ノズル交換装置50は、図4に示すように、ノズル着脱機構52側の平歯車523が回転すると、中間歯車55を介して、その回転力がチップ清掃機構53側の平歯車534にも伝達されるように構成されている。
このような構成を備えるノズル着脱機構52は、例えば以下のような手順によって溶接トーチ31からノズルを取り外す。まず、ノズル着脱機構52は、図5(a)に示すように、回転駆動源524により、バネ内径が広がる方向(ここでは左回り)にコイルバネ521を回転させる。次に、ノズル着脱機構52は、図5(b)に示すように、溶接トーチ31が降下してコイルバネ521内にノズル311が挿入されると、図5(c)に示すように、回転駆動源524により、バネ内径が縮まる方向(ここでは右回り)にコイルバネ521を回転させる。このような動作により、コイルバネ521のバネ内径が縮んでノズル311がコイルバネ521によって締め付けられることになる。従って、ノズル着脱機構52は、図5(c)に示すように、溶接トーチ31を上昇させることで、トーチ本体312からノズル311を容易に取り外すことができる。なお、このようにノズル311を取り外した後に新たなノズル311をトーチ本体312に取り付ける場合は、図5(a)〜図5(c)に示した手順を逆から行えばよい。
チップ清掃機構53は、ノズル311が取り外された溶接トーチ31先端のチップ313(図5参照)を清掃するものである。すなわち、ノズル交換装置50は、ノズル着脱機構52によって溶接トーチ31からノズル311を取り外した後、当該溶接トーチ31先端のチップ313を清掃するように構成されている。
チップ清掃機構53は、図4に示すように、筒状の装置本体53aの上部に、溶接トーチ31先端のチップ313(図5参照)が挿入される貫通孔53bが形成されている。また、装置本体53aの内部には、回転中心Oの方向に向かってばねで張力をかけ、負荷がかかった場合にはその回転半径が広がるように取り付けた複数のブラシが配置されている。そして、チップ清掃時は、回転中心Oの上方から、ノズル311が外され、チップ313およびオリフィスが装着された溶接トーチ31を降下させて貫通孔53bに挿入し、チップ313およびオリフィスに付着したスパッタを除去する。
以上説明したようなノズル交換装置50を備える溶接装置1は、コイルバネ521に対してノズル311がずれて挿入された場合であっても、コイルバネ521の変形および撓みによってそのズレに容易に追従することができるため、ノズル311に熱変形や寸法誤差があってもノズル311の交換を確実に行うことができる。
(ノズル清掃装置)
ノズル清掃装置60は、溶接トーチ31先端のノズル311を清掃するものである。ノズル清掃装置60の上部には、図1に示すように、溶接トーチ31のノズル311が挿入される貫通孔(図示省略)が形成されている。そして、ノズル清掃装置60は、当該貫通孔にノズル311が挿入された後、当該ノズル311に対してショット玉を吹きつけることで、ノズル311先端に付着しリング状になったスパッタを除去する。溶接装置1は、このようなノズル清掃装置60を備えることで、ノズル311に付着するスパッタの増加に伴うシールド性の低下を防止することができる。
(スラグ除去装置)
スラグ除去装置70は、鉄骨構造物Wを溶接ロボット30によって溶接する際に、溶接部に発生したスラグを除去するものである。スラグ除去装置70は、溶接ロボット30先端の溶接トーチ31と取り替えて用いるタイプと、溶接トーチ31に追加装着して用いるタイプとがあるが、以下では溶接トーチ31と取り替えて用いるタイプについて説明する。
スラグ除去装置70は、溶接時においては、図1に示すスラグ除去装置用載置台70aに載置され、溶接中における予め用意された所定のパスごとに溶接トーチ31と自動的に取り替えて溶接ロボット30先端に取り付けられて溶接部のスラグを除去するように構成されている。スラグ除去装置70は、ここでは図6に示すように、タガネ機構71と、スライド保持機構72と、タガネ側着脱機構73と、ロボット側着脱機構74と、を備えている。また、スラグ除去装置70は、図6に示すように、タガネ機構71、スライド保持機構72およびタガネ側着脱機構73と、ロボット側着脱機構74とが着脱可能に設けられている。
タガネ機構71は、溶接部に発生したスラグを打撃によって除去するものである。タガネ機構71は、図6に示すように、例えば直径3mmの複数のニードル711aを束ねたニードル集合体711と、ニードル集合体711の前部を突出させながら保持し、タガネ作動用エアの供給によりニードル集合体711を例えば4000回/分で進退移動させるニードル駆動体712と、を備えている。
スプリング726は、図6に示すように、軸芯方向がニードル移動方向と一致しており、ニードル駆動体712をニードル移動方向において柔支持している。すなわち、スプリング726は、ニードル駆動体712が水平状態の姿勢にされているときに、圧縮力および引張力を発生していない中立位置でニードル駆動体712をニードル移動方向において柔支持している。そして、このスプリング726は、軸芯方向がニードル移動方向に一致されることによって、伸縮による圧縮力および引張力からなる弾性力でニードル駆動体712からのニードル移動方向の衝撃力を1/10以下に効率良く減衰することができる。
ここで、スプリング726のバネ定数は、例えば稼動部の重量が3.3kgの場合、0.20〜0.35(kg/mm)の範囲であることが好ましい。バネ定数を当該範囲とする理由は、一般的にはスプリング726を柔らかくする方が振動を減衰させる効果が高いと考えられるものの、溶接継手の位置によってニードル駆動体712の姿勢が変化するため、あまり柔らかすぎると、ニードル駆動体712の姿勢変化によってスプリング726に付与される重量が変化してタガネ先端位置が大きく変化してしまうためである。また、スラグを良好に除去しようとする場合、ニードル駆動体712を所定以上の保持力で保持しなければ、スラグの除去に十分な衝撃力をビード21およびスラグに付与することができないためである。なお、スライド保持機構72は、スプリング726と同等の機能を有するものであれば、当該スプリング726に代えて他の方式のショックダンパを採用しても良い。
タガネ側着脱機構73は、タガネ機構71およびスライド保持機構72をロボット側着脱機構74に対して着脱可能とするものである。タガネ側着脱機構73は、図6に示すように、一方がスライド保持機構72のスライド支持部材725と接続されるとともに、他方がロボット側着脱機構74のロボット側着脱部材741と接続されている。タガネ側着脱機構73は、図6に示すように、スライド支持部材725の下面に連結された連結部材731と、当該連結部材731に接続され、スライド保持機構72から伝達された衝撃力を検出するショックセンサ732と、当該ショックセンサ732を支持するツールプレート733と、当該ツールプレート733に固設されたツール側着脱部材734と、を備えている。
ツール側着脱部材734の側周面には、図6に示すように、空気ポート734aが形成されている。空気ポート734aは、前記したニードル駆動体712にタガネ作動用エアを供給するように、図6に示すように、柔軟性を有した第1エア配管735aを介して、ニードル駆動体712に連結されている。また、ツール側着脱部材734の側周面には、図示しない空気ポートに、図6に示すような第2エア配管735bが接続されている。この第2エア配管735bは、図6に示すように、開口端がニードル集合体711の先端部近傍に配置されており、開口端からブロー用エアをニードル集合体711の先端部前方に噴出することで、溶接部表面のスラグを吹き飛ばすように構成されている。
また、ツール側着脱部材734には、図6に示すように、ロボット側着脱部材741が着脱用エアによって着脱可能に連結されている。そして、ツール側着脱部材734とロボット側着脱部材741とは、前記したショックセンサ732からのショック検出信号を伝達するように電気的に接続可能にされているとともに、タガネ作動用エアおよびブロー用エアを通過させるように空気路を形成できるように構成されている。
ロボット側着脱部材741の側周面には、図6に示すように、第1空気ポート741aおよび第2空気ポート741bが形成されているとともに、図示しない第3空気ポートが形成されている。この第1空気ポート741aは、前記したツール側着脱部材734の空気ポート734aに空気路を介して連通されているとともに、スラグ除去時にタガネ作動用エアを供給する図示しないタガネ作動用エア供給装置に接続されている。また、第2空気ポート741bは、着脱動作時に着脱用エアを供給する図示しない着脱用エア供給装置に接続されている。そして、第3空気ポートは、第2エア配管735bに空気路を介して連通されているとともに、スラグ除去時にブロー用エアを供給する図示しないブロー用エア供給装置に接続されている。なお、前記した3種類のエア供給装置(図示省略)は、所定のタイミングで開閉制御される3ポート分の開閉バルブと、各開閉バルブが接続された1台のエア送給装置とで構成しても構わない。
なお、ここでは図6に示すように、スライド保持機構72に対して、ショックセンサ732、ツールプレート733、ツール側着脱部材734、ロボット側着脱部材741、ブラケット742の順番で配置され、ツール側着脱部材734とロボット側着脱部材741とが着脱可能に構成されたスラグ除去装置70について説明を行ったが、各構成の配置は図6に示すものに限定されない。例えばスラグ除去装置70は、スライド保持機構72に対して、ツールプレート733に類似したブラケット(図示省略)またはベースプレート(図示省略)を介して、ツール側着脱部材734、ロボット側着脱部材741、ツールプレート733、ショックセンサ732、ブラケット742の順番で配置され、ツール側着脱部材734とロボット側着脱部材741とが着脱可能に構成されたものであっても構わない。
このような構成を備えるスラグ除去装置70は、溶接トーチ31による溶接時は、例えば図1に示すスラグ除去装置用載置台70aに載置されている。そして、予め用意された所定のパスが終了した後に、図6に示すように、溶接ロボット30のアーム部先端32に取り付けられて溶接部のスラグを除去する。なお、スラグ除去装置70によってスラグを除去している間は、スラグ除去装置70の代わりに、溶接トーチ31がスラグ除去装置用載置台70aに載置されている。
ここで、スラグ除去装置70によってどの溶接パスでスラグを除去するのかは、予め教示データとして溶接制御装置90に入力されている。例えば、溶接制御装置90に第5パス目にスラグを除去する旨の教示データが入力されている場合、当該溶接制御装置90は、第5パス目の溶接処理が終了し、教示データがスラグ除去処理を指示していると判断した場合には、溶接ロボット30を作動させて溶接トーチ31を前記したスラグ除去装置用載置台70aの方向に移動させる。
次に、溶接制御装置90は、スラグ除去装置用載置台70aに溶接トーチ31を載置し、ツール側着脱部材734とロボット側着脱部材741との連結を解除し、溶接トーチ31を溶接ロボット30のアーム部先端32から切り離す。次に、溶接制御装置90は、スラグ除去装置用載置台70aに予め載置されているスラグ除去装置70を溶接ロボット30のアーム部先端32に装着する。そして、溶接制御装置90は、このように溶接トーチ35とスラグ除去装置70とを取り替えると、続いてスラグ除去用教示データを作成し、当該スラグ除去用教示データに基づいて溶接部のスラグを除去する。
なお、前記したスラグ除去装置70を溶接トーチ31と取り替えて用いるのではなく、溶接トーチ31に追加装着する場合は、例えば溶接トーチ31の近傍にタガネ把持用のツール着脱部材を設けるか、エア膨張式把持機構等によってスラグ除去装置70を把持する取付手段を設ける。そして、所定の溶接パスが終了した後に、溶接トーチ31の取付手段にスラグ除去装置70を追加装着してスラグを除去するように構成すればよい。
以上説明したようなスラグ除去装置70を備える溶接装置1は、溶接部に発生したスラグを除去することができるため、溶接不良や溶接欠陥を防止することができる。
(ワイヤ切断装置)
ワイヤ切断装置80は、溶接ワイヤを切断するものである。溶接ロボット30は、後記するように、溶接位置や鉄骨構造物Wの位置の検出のため溶接ワイヤによるセンシング(3方向、ギャップセンシング等)を行うが、溶接ワイヤ先端にスラグが付着しているとセンシング時の通電性が悪くなり正確な位置検出ができない場合がある。そのため、溶接装置1は、ワイヤ切断装置80によって溶接ワイヤの先端を切断してスラグを除去することでセンシング精度を上げる。
ワイヤ切断装置80は、図1に示すように、台車20上において、溶接トーチ31が届きやすい高さに配置されている。そして、ワイヤ切断装置80は、例えば溶接ワイヤを切断する複数のカッターを備えており、当該カッターの刃先が例えばエアによって駆動し、複数の刃先を交差させることで溶接ワイヤを切断する。
(溶接制御装置)
溶接制御装置90は、回転ポジショナ10、台車20、溶接ロボット30、ノズル交換装置50、ノズル清掃装置60、スラグ除去装置70およびワイヤ切断装置80の動作を制御するものである。溶接制御装置90は、ここでは図7に示すように、入力手段91と、センシング手段92と、ルートギャップ算出手段93と、演算手段94と、記憶手段95と、を備えている。なお、以下では、溶接制御装置90が備える手段のうち、主に溶接ロボット30の動作を制御するための手段について説明し、その他の装置(回転ポジショナ10、台車20、溶接ロボット30、ノズル交換装置50、ノズル清掃装置60、スラグ除去装置70およびワイヤ切断装置80)の動作を制御するための手段については説明を省略する。
入力手段91は、鉄骨構造物Wおよび溶接継手に関する情報が入力されるものである。入力手段91には、ここでは、鉄骨構造物Wの寸法と溶接継手の形状のいずれか、あるいはその両方と、溶接実行可否の情報とが、作業者による入力あるいは鉄骨構造物WのCADデータの入力によって入力される。そして、入力手段91は、図7に示すように、入力されたこれらの情報を演算手段94に出力する。なお、入力手段91には、作業者による入力あるいは鉄骨構造物WのCADデータの入力によって、例えば鉄骨構造物Wのルートギャップや、鉄骨構造物Wの位置座標等が入力されても構わない。
センシング手段92は、鉄骨構造物Wの位置座標を検出するものである。センシング手段92は、具体的には、所定突き出し長さに設定された溶接ワイヤを支持する溶接トーチ31と鉄骨構造物Wとの間にセンシング電圧を印加し、溶接ワイヤと鉄骨構造物Wとの接触による通電状態を検出することで鉄骨構造物Wの位置を検出する。センシング手段92は、より具体的には、センシング(タッチセンシング)を行った溶接トーチ31から、鉄骨構造物Wに接触した際の通電検出信号が入力され、当該通電検出信号に基づいて鉄骨構造物Wの位置座標を検出する。
以下、溶接トーチ31によるセンシングの手順の一例について説明する。なお、以下では、図8に示すように、鉄骨構造物Wが鉄骨構造物(コラム)W1および鉄骨構造物(ダイヤフラム)W2で構成されるとともに、両者の間にレ型の開先が形成され、さらにこの開先の底部に裏当部材BMが配置された場合の例について説明する。
まず、第1の手順として、図8に示すように、所定突き出し長さの溶接ワイヤを支持する溶接トーチ31をセンシング開始位置Pに位置決めし、溶接ワイヤと鉄骨構造物W1,W2との間にセンシング電圧を印加する。なお、センシング開始位置Pは、図8に示すように、鉄骨構造物W1の表面W1bの検出を開始する検出開始位置Pから、表面W1bに平行に距離Aだけ開先側に離れた位置に予め設定される。
次に、第2の手順として、図8に示すように、センシング開始位置Pから鉄骨構造物W1の表面W1bの検出を開始する検出開始位置Pまで、溶接トーチ31を−Y方向に移動させる。次に、第3の手順として、図8に示すように、検出開始位置Pから位置Pまで、溶接トーチ31を+X方向に移動させる。そして、溶接ワイヤを鉄骨構造物W1の表面W1bに接触させ、その通電検出信号を溶接トーチ31からセンシング手段92に出力する。これにより、センシング手段92は、鉄骨構造物W1の表面W1bの位置Pの位置座標を検出する。
次に、第4の手順として、図8に示すように、位置Pから予め用意された所定距離b(例えば2mm)だけ−X方向に引き戻した位置Pに溶接トーチ31を移動させる。次に、第5の手順として、図8に示すように、位置Pから位置Pまで、溶接トーチ31を+Y方向に移動させる。次に、第6の手順として、図8に示すように、位置Pから位置Pまで、溶接トーチ31を+X方向に所定距離Dだけ移動させる。なお、この所定距離Dは、例えば図8に示すように、予め設定された設定開先深さCと、鉄骨構造物W1の表面W1bの検知後の引き戻し距離bとから、開先深さCの距離割合比に基づいて演算設定されたものを用いることができる。
次に、第7の手順として、図8に示すように、位置Pから位置Pまで、溶接トーチ31を+Y方向に移動させる。そして、溶接ワイヤを鉄骨構造物W2の開先面W2aの位置Pに接触させ、その通電検出信号を溶接トーチ31からセンシング手段92に出力する。これにより、センシング手段92は、開先面W2aの位置Pの位置座標を検出する。次に、第8の手順として、図8に示すように、位置Pから位置Pまで、溶接トーチ31を−Y方向に移動させる。そして、溶接ワイヤを鉄骨構造物W1の開先面W1aの位置Pに接触させ、その通電検出信号を溶接トーチ31からセンシング手段92に出力する。これにより、センシング手段92は、開先面W1aの位置Pの位置座標を検出する。
次に、第9の手順として、図8に示すように、位置Pから位置Pまで、溶接トーチ31を+Y方向に移動させる。なお、位置Pは、開先面W1aの位置Pと開先面W2aの位置Pとの間の開先幅の中央位置のことであり、図示しない開先幅中央位置算出手段によって算出され、溶接ロボット30に入力される。そして、これらのセンシングが溶接トーチ31によって行われた後、センシング手段92は、図7に示すように、算出した位置P,P,Pの位置座標をルートギャップ算出手段93に出力する。
ルートギャップ算出手段93は、開先のルートギャップを算出するものである。ルートギャップ算出手段93は、例えば図8の例では、センシング手段92によって検出された開先面W1a,W2aの検出位置データ、すなわち位置P,Pの位置座標と、設定開先深さCと検出開始位置Pとの差と、予め設定された開先面W1a,W2aの角度θ,θとに基づいて、ルートギャップを算出する。すなわち、ルートギャップ算出手段93は、図8に示すように、位置Pの位置座標と開先面W1aの角度θ(ここでは90度)とから、開先ルート位置Qを算出する。また、ルートギャップ算出手段93は、図8に示すように、位置Pの位置座標と開先面W2aの角度θとから、開先ルート位置Qを算出する。そして、ルートギャップ算出手段93は、開先ルート位置Qと開先ルート位置Qとの距離rをルートギャップとして算出し、これを演算手段94に出力する。
演算手段94は、溶接しようとする溶接継手に対する積層パターンおよび溶接条件を自動生成して動作プログラムを作成するものである。演算手段94は、ここでは図9に示すように、積層パターン決定手段941と、溶接条件決定手段942と、動作プログラム作成手段943と、を備えている。
積層パターン決定手段941は、溶接しようとする溶接継手に対する積層パターンを決定するものである。積層パターン決定手段941は、具体的には、溶接しようとする溶接継手に対応して入力された鉄骨構造物Wの寸法(例えば板厚)、あるいは鉄骨構造物Wの寸法およびルートギャップに基づいて、記憶手段95に予め記憶された積層パターンデータベースの中から、溶接しようとする溶接継手に応じた積層パターンを選択して決定する。すなわち、記憶手段95には、鉄骨構造物Wの寸法ごと、あるいは鉄骨構造物Wの寸法およびルートギャップごとに、積層パターンがデータベースとして記憶されており、積層パターン決定手段941は、そのデータベースを参照して最適な積層パターンを決定する。なお、積層パターン決定手段941で用いられるルートギャップは、作業者によって入力手段91を介して入力された鉄骨構造物Wのルートギャップでもよく、あるいは、センシングにより得られた鉄骨構造物Wのルートギャップ、すなわちセンシング手段92およびルートギャップ算出手段93を経て得られたルートギャップであっても構わない。
溶接条件決定手段942は、溶接しようとする溶接継手に対する溶接条件を決定するものである。溶接条件決定手段942は、具体的には、溶接しようとする溶接継手に対応して入力された鉄骨構造物Wの寸法(例えば板厚)、あるいは鉄骨構造物Wの寸法およびルートギャップに基づいて、記憶手段95に予め記憶された溶接条件データベースの中から、溶接しようとする溶接継手に応じた溶接条件を選択して決定する。すなわち、記憶手段95には、鉄骨構造物Wの寸法ごと、あるいは鉄骨構造物Wの寸法およびルートギャップごとに、溶接条件がデータベースとして記憶されており、溶接条件決定手段942は、そのデータベースを参照して最適な溶接条件を決定する。なお、溶接条件決定手段942で用いられるルートギャップは、作業者によって入力手段91を介して入力された鉄骨構造物Wのルートギャップでもよく、あるいは、センシングにより得られた鉄骨構造物Wのルートギャップ、すなわちセンシング手段92およびルートギャップ算出手段93を経て得られたルートギャップであっても構わない。
動作プログラム作成手段943は、溶接ロボット30の動作プログラムを作成するものである。動作プログラム作成手段943は、具体的には、積層パターン決定手段941で決定された積層パターンと、溶接条件決定手段942で決定された溶接条件とに応じて、溶接ロボット30の動作軌跡を含むロボット動作プログラムを作成し、当該溶接ロボット30に出力して設定する。すなわち、動作プログラム作成手段943は、溶接ロボット30が本溶接処理を行う前に、溶接対象とする溶接継手の各パスのそれぞれの溶接に必要な手順を教示するプログラムを作成する。この教示プログラムは、溶接電流、溶接電圧、溶接速度、溶接トーチ31の突き出し長さ、ワイヤ送給速度に対応した電流値等の情報や、溶接ロボット30の動作軌跡、アークON位置、本溶接開始位置、クレータ形成位置、継目処理の開始位置等の情報を含んでいる。
記憶手段95は、鉄骨構造物Wの寸法ごと、あるいは鉄骨構造物Wの寸法およびルートギャップごとの積層パターンおよび溶接条件を記憶するものである。記憶手段95は、具体的には、データを記憶することができるメモリ、ハードディスク等で具現される。なお、記憶手段95は、ここでは図7に示すように、溶接制御装置90の内部に設けられているが、外部に設けても構わない。
以上のような構成を備える溶接装置1は、溶接制御装置90の入力手段91に入力された鉄骨構造物Wの寸法等の情報に基づいて、溶接ロボット30の動作軌跡および溶接条件を自動的に生成することができる。従って、溶接装置1によれば、動作軌跡や溶接条件などのティーチングデータを個別に作成すること無しに溶接作業を自動化することができ、溶接作業の効率化を図ることができる。
また、溶接装置1は、一対の回転ポジショナ10によって鉄骨構造物Wを保持するとともに、例えば溶接ロボット30によって鉄骨構造物Wの直線部分を溶接する場合は、当該鉄骨構造物Wを回転させずに溶接ロボット30によって溶接することができ、また、溶接ロボット30によって鉄骨構造物Wの円弧部分(コーナー部)を溶接する場合は、当該鉄骨構造物Wを回転させながら溶接することができる。これにより、溶接装置1は、鉄骨構造物Wの直線部分のみならず、円弧部分においてもアークを切ることなく連続して溶接することができる。
また、溶接装置1は、センシング手段92によって鉄骨構造物の位置を検出し、ルートギャップ算出手段93によって鉄骨構造物Wの位置に従ってルートギャップを算出することができるため、開先の底面の位置を検出する必要がなく、例えば裏当部材BMへの仮付け溶接による凹凸や仮付け溶接によるスラグの付着に関係なくルートギャップを求めることができる。
また、溶接装置1は、鉄骨構造物Wの寸法、もしくは、鉄骨構造物Wの寸法およびルートギャップに応じて、積層パターンおよび溶接条件を自動生成することができる。
[第1実施形態の処理手順]
以下、第1実施形態に係る溶接装置1が備える溶接制御装置90の処理手順について、図10を参照(適宜図7および図9も参照)しながら説明する。まず、溶接制御装置90は、入力手段91に対して、作業者による入力あるいは鉄骨構造物WのCADデータの入力によって、鉄骨構造物Wの寸法と溶接継手の形状のいずれか、あるいはその両方と、溶接実行可否の情報とが入力される(ステップS1)。
次に、溶接制御装置90は、センシング手段92によって、鉄骨構造物Wの位置を検出する(ステップS2)。次に、溶接制御装置90は、ルートギャップ算出手段93によって、センシング手段92によって検出された開先面W1a,W2aの位置P,Pの位置座標と、設定開先深さCと検出開始位置Pとの差と、予め設定された開先面W1a,W2aの角度θ,θと、に基づいてルートギャップを算出する(ステップS3)。
次に、溶接制御装置90は、演算手段94によって、溶接しようとする溶接継手に対する積層パターンおよび溶接条件を自動生成して動作プログラムを作成する(ステップS4)。そして、溶接制御装置90は、演算手段94によって作成された動作プログラムを溶接ロボット30に出力して設定する(ステップS5)。以上のような処理手順を経て、溶接ロボット30による溶接が開始される。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る溶接装置1Aについて、図11を参照しながら説明する。溶接装置1Aは、図1および図11に示すように、溶接制御装置90の代わりに溶接制御装置90Aを備える以外は、第1実施形態に係る溶接装置1と同様の構成を備えている。従って、以下では、溶接装置1との相違点を中心に説明を行い、当該溶接装置1と重複する構成および溶接装置1Aの処理手順については詳細説明を省略する。
溶接制御装置90Aは、前記した溶接制御装置90に対して、鉄骨構造物Wの偏心量に基づいて動作プログラムを修正する機能を追加したものである。溶接制御装置90Aは、図11に示すように、入力手段91、センシング手段92、ルートギャップ算出手段93、演算手段94および記憶手段95に加えて、中心位置算出手段96と、偏心量算出手段97と、修正手段98と、をさらに備えている。
中心位置算出手段96は、鉄骨構造物Wの中心位置を算出するものである。中心位置算出手段96は、具体的には図11に示すように、入力手段91から入力された鉄骨構造物Wの寸法と、センシング手段92によって検出された鉄骨構造物Wの位置座標とから、鉄骨構造物Wの中心位置を算出する。そして、中心位置算出手段96は、図11に示すように、当該鉄骨構造物Wの中心位置を偏心量算出手段97に出力する。
偏心量算出手段97は、鉄骨構造物Wの偏心量を算出するものである。偏心量算出手段97は、具体的には、予め設定されている回転ポジショナ10の回転中心位置の位置座標と、中心位置算出手段96によって算出された鉄骨構造物Wの中心位置とから、回転ポジショナ10の回転中心に対する鉄骨構造物Wのズレ量である偏心量を算出する。そして、偏心量算出手段97は、図11に示すように、当該鉄骨構造物Wの偏心量を修正手段98に出力する。
修正手段98は、演算手段94によって作成されたロボット動作軌跡を修正するものである。修正手段98は、具体的には図7に示すように、偏心量算出手段97によって算出された偏心量に従って、演算手段94の動作プログラム作成手段943(図9参照)によって作成された動作プログラムに含まれるロボット動作軌跡を修正する。すなわち、演算手段94に作成される動作プログラムは、回転ポジショナ10の回転中心に対する鉄骨構造物Wの偏心量が0であることを前提として作成されているが、修正手段98によって、偏心量に基づいて動作プログラムの補正を行うことができる。なお、修正手段98による具体的なロボット動作軌跡の修正方法としては、例えば予め偏心量に応じたロボット動作軌跡の補正データを実験的に求めておき、偏心量算出手段97によって算出された偏心量に応じて補正データを選択して適用する方法が挙げられる。そして、修正手段98は、このようにして修正した動作プログラムを溶接ロボット30に出力する。
以上のような構成を備える溶接装置1Aは、中心位置算出手段96によって鉄骨構造物Wの中心位置を算出し、偏心量算出手段97によって鉄骨構造物Wの偏心量を算出することができるため、回転ポジショナ10によって偏心しながら回転する鉄骨構造物Wであっても正確に溶接を行うことができる。
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態に係る溶接装置1Bについて、図12を参照しながら説明する。溶接装置1Bは、図1および図12に示すように、溶接制御装置90の代わりに溶接制御装置90Bを備える以外は、第1実施形態に係る溶接装置1と同様の構成を備えている。従って、以下では、溶接装置1との相違点を中心に説明を行い、当該溶接装置1と重複する構成および溶接装置1Bの処理手順については詳細説明を省略する。
溶接制御装置90Bは、前記した溶接制御装置90に対して、鉄骨構造物Wのコーナー部の半径をセンシングで求める機能を追加したものである。溶接制御装置90Bは、図12に示すように、入力手段91、センシング手段92、ルートギャップ算出手段93、演算手段94および記憶手段95に加えて、位置補正手段99と、コーナー部半径算出手段100と、をさらに備えている。
位置補正手段99は、鉄骨構造物Wの角部の位置を補正するものである。ここで、溶接装置1Bによって溶接する鉄骨構造物Wが、例えば図13に示すような角形鋼管WSである場合、入力手段91に入力された入力時における角形鋼管WSの位置と、実際の角形鋼管WSの位置とが異なる場合がある。このような場合に、位置補正手段99は、センシングによって取得された角形鋼管WS表面の位置座標に基づいて、予め入力された角形鋼管WSの角部の位置Pを、実際の角部の位置P’に補正する。
以下、位置補正手段99によって角形鋼管WSの角部の位置を補正する際における溶接トーチ31によるセンシングの手順の一例について説明する。なお、以下では、入力手段91を介して、位置補正手段99に対して、図13の(1)〜(3)に示す角形鋼管WSにおける上面の位置Pの位置座標と、角形鋼管WSにおける側面の位置Pの位置座標と、角形鋼管WSにおける角部の位置Pの位置座標とが予め入力されていることを前提に説明を行う。
まず、第1の手順として、図13の(1)’に示すように、溶接トーチ31先端の溶接ワイヤを実際の角形鋼管WSにおける上面の位置P’に接触させ、その通電検出信号をセンシング手段92に出力する。そして、センシング手段92によって、当該通電検出信号に基づいて、実際の角形鋼管WSにおける上面の位置P’の位置座標を検出し、図12に示すように、当該位置座標を位置補正手段99に出力する。
次に、第2の手順として、図13の(2)’に示すように、溶接トーチ31先端の溶接ワイヤを実際の角形鋼管WSにおける側面の位置P’に接触させ、その通電検出信号をセンシング手段92に出力する。そして、センシング手段92によって、当該通電検出信号に基づいて、実際の角形鋼管WSにおける側面の位置P’の位置座標を検出し、図12に示すように、当該位置座標を位置補正手段99に出力する。
次に、第3の手順として、位置補正手段99によって、実際の角形鋼管WSにおける上面の位置P’の位置座標と、実際の角形鋼管WSにおける側面の位置P’の位置座標とに基づいて、実際の角形鋼管WSにおける角部の位置P’の位置座標を算出し、予め入力されている位置P’の位置座標と置き換えることで補正する。そして、位置補正手段99によって、図12に示すように、実際の角形鋼管WSにおける角部の位置P’の位置座標を溶接ロボット30に出力する。
次に、第4の手順として、図13の(3)’に示すように、溶接トーチ31先端の溶接ワイヤを、実際の角形鋼管WSにおける角部の位置P’に向かって、45度方向(角形鋼管WSのコーナー部Pの直角方向)から接近させる。そして、図13の(3)’に示すように、溶接トーチ31先端の溶接ワイヤを、角形鋼管WSにおけるコーナー部の位置Pに接触させ、その通電検出信号をセンシング手段92に出力する。そして、センシング手段92によって、当該通電検出信号に基づいて角形鋼管WSにおけるコーナー部の円弧中心を結ぶ鋼材表面位置Pの位置座標を検出し、図12に示すように、当該位置座標をコーナー部半径算出手段100に出力する。
コーナー部半径算出手段100は、角形鋼管WSにおけるコーナー部の半径を算出するものである。コーナー部半径算出手段100は、具体的には図12に示すように、位置補正手段99によって補正された角形鋼管WSにおける角部の位置P’の位置座標と、センシング手段92によって検出された角形鋼管WSにおける角部の位置P’から角形鋼管WSにおけるコーナー部の円弧中心を結ぶ鋼材表面位置(コーナー部)Pの位置座標とに従って、コーナー部の半径を算出する。コーナー部半径算出手段100は、より具体的には図13に示すように、前記した角部の位置P’の位置座標と、鋼材表面位置Pの位置座標とから寸法Dを算出し、以下の式(1)によってコーナー部半径を算出する。そして、コーナー部半径算出手段100は、これらの計算を角形鋼管WSの4つのコーナー部全てに対して行い、図12に示すように、これらのコーナー部半径を修正手段98Aに出力する。
コーナー部半径=寸法D×(1+√2) ・・・式(1)
修正手段98Aは、演算手段94によって作成されたロボット動作軌跡を修正するものである。修正手段98Aは、具体的には図12に示すように、位置補正手段99によって補正された角部の位置と、コーナー部半径算出手段100によって算出されたコーナー部半径とに従って、演算手段94の動作プログラム作成手段943(図9参照)によって作成された動作プログラムに含まれるロボット動作軌跡を修正する。なお、修正手段98Aによる具体的なロボット動作軌跡の修正方法としては、例えば予めコーナー部半径に応じたロボット動作軌跡の補正データを実験的に求めておき、コーナー部半径算出手段100によって算出されたコーナー部半径に応じて補正データを選択して適用する方法が挙げられる。そして、修正手段98Aは、このようにして修正した動作プログラムを溶接ロボット30に出力する。
以上のような構成を備える溶接装置1Bは、位置補正手段99によって角形鋼管WSの角部の位置を補正し、コーナー部半径算出手段100によって角形鋼管WSのコーナー部の半径を算出することができるため、入力された角形鋼管WSの位置が実際の位置とずれている場合やコーナー部半径が異なる場合であっても正確に溶接を行うことができる。
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態に係る溶接装置1Cについて、図14〜図16を参照しながら説明する。溶接装置1Cは、図1および図14に示すように、溶接制御装置90の代わりに溶接制御装置90Cを備える以外は、第1実施形態に係る溶接装置1と同様の構成を備えている。従って、以下では、溶接装置1との相違点を中心に説明を行い、当該溶接装置1と重複する構成および溶接装置1Cの処理手順については詳細説明を省略する。
溶接制御装置90Cは、前記した溶接制御装置90に対して、鉄骨構造物Wに対するインチングの機能を追加したものである。溶接制御装置90Cは、図14に示すように、入力手段91、センシング手段92、ルートギャップ算出手段93、演算手段94および記憶手段95に加えて、インチング手段101をさらに備えている。
インチング手段101は、溶接トーチ31から突き出された溶接ワイヤをインチングするものである。インチング手段101は、具体的には溶接トーチ31の溶接開始位置で、センシング電圧を印加した溶接ワイヤを鉄骨構造物Wに対してインチング操作によって進出させる。次に、インチング手段101は、溶接ワイヤの先端が鉄骨構造物Wと接触した際の短絡を検出し、溶接ワイヤと鉄骨構造物Wとの通電を確認する。次に、インチング手段101は、溶接ワイヤを所定長さだけ逆方向にインチング操作する。そして、インチング手段101は、溶接トーチ31の溶接開始位置で溶接ワイヤに所定の溶接電力を供給し、アークを点火して溶接を開始させる制御信号を生成し、図14に示すように、当該制御信号を溶接ロボット30に出力する。
以下、インチング手段101によるインチング操作の一例について、図15および図16を参照しながら説明する。なお、以下では、図15および図16に示すように、鉄骨構造物Wが鉄骨構造物(コラム)W3および鉄骨構造物(ダイヤフラム)W4で構成されるとともに、両者の間にレ型の開先が形成され、さらにこの開先の底部に裏当部材BMが配置された場合の例について説明する。
まず、インチング手段101は、図15(a)に示すような初期状態の溶接トーチ31を、アークスタート位置である鉄骨構造物W3と鉄骨構造物W4との接合部であって、裏当部材BMが配置された開先に到達させる前に、図15(b)に示すように、溶接ワイヤの切断または溶接ワイヤの逆インチング操作によって、溶接トーチ31先端の溶接ワイヤの突き出し長さを溶接時の突き出し長さよりも短くする。なお、図15(a)において、θは開先角度であり、rはルートギャップである。
次に、インチング手段101は、図15(c)に示すように、溶接トーチ31先端の溶接ワイヤの長さを溶接時の突き出し長さよりも短くした溶接トーチ31をアークスタート位置に移動させ、この状態で、溶接ワイヤにセンシング電圧を印加してワイヤインチング操作を行う。
次に、インチング手段101は、溶接ワイヤのインチング操作中に、最大ワイヤインチング量、例えば20mmに達する前に、溶接ワイヤと鉄骨構造物W3,W4との間で、図15(d)に示すように、センシング電圧が低下することによって通電を検出し、これによって溶接開始位置を検出できた場合、図15(e)に示すように、溶接ワイヤが鉄骨構造物W3,W4から離れてセンシング電圧が上昇するまで逆方向にインチング操作する。そして、インチング手段101は、図15(f)に示すように、所定長さ、例えば5mmだけ溶接ワイヤを逆方向インチング操作してアークスタート性を向上させた後、アークをスタートして溶接を開始する。
ここで、最大ワイヤインチング量に達しても、溶接ワイヤのインチング操作中に溶接ワイヤと鉄骨構造物W3,W4との通電を検知できなかった場合であって、所定のアークスタート可能位置検索回数、例えば3回に満たない場合は、インチング手段101は、図15(d)に示すように、現在の位置で通電を検出できなかったとして異なる位置で再度検索を試みる。また、インチング手段101は、図16(a)に示すように、所定距離、例えば5mmだけ溶接トーチ31を引き上げ、溶接ワイヤを逆方向に例えば15mmインチング操作し、図16(b)に示すように、XYZ方向のアークスタート位置を基準とした位置に溶接トーチ31を引き上げる。
次に、インチング手段101は、図16(c)に示したように、XYZ方向に所定距離シフトした前記溶接開始位置とは異なる位置、例えば溶接線進行方向のシフト量を0mm、溶接線左右シフト量を壁から1mm離れる位置まで移動し、この位置で図16(d)に示すように、再度センシング電圧を印加して通電性確認操作を実施する。ここで、図16(e)に示すように、この通電性確認操作によっても溶接ワイヤと鉄骨構造物W3,W4との導通を検出できなかった場合は、インチング手段101は、再度所定長さだけ溶接ワイヤを逆方向にインチング操作する。そして、インチング手段101は、図16(f)に示すように、溶接ワイヤの引き上げ処理を行い、通電が検出されるまで、または、予め設定した所定回数だけこの通電性確認操作を繰り返す。なお、前記した溶接開始位置とは異なる位置とは、前記溶接開始位置の近傍であって溶接開始位置以外の位置をいい、この位置から溶接を開始しても差し支えない位置のことを意味している。
一方、最大ワイヤインチング量に達しても、溶接ワイヤのインチング操作中に溶接ワイヤと鉄骨構造物W3,W4との通電を検知できない場合であって、所定のアークスタート可能位置検索回数、例えば3回を超えた場合は、インチング手段101は、アークスタート開始位置を検出できなかったとしてエラー処理へ移行する。なお、このエラー処理の詳細についてはここでは説明を省略する。
以上のような構成を備える溶接装置1Cは、インチング手段101を備えることで、溶接開始前にアーク発生の可不可を確認し、溶接開始位置で確実にアークをスタートすることができる。
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態に係る溶接装置1Dについて、図17および図18を参照しながら説明する。溶接装置1Dは、図1に示すように、溶接制御装置90の代わりに溶接制御装置90Dを備える以外は、第1実施形態に係る溶接装置1と同様の構成を備えている。従って、以下では、溶接装置1との相違点を中心に説明を行い、当該溶接装置1と重複する構成および溶接装置1Dの処理手順については詳細説明を省略する。
溶接制御装置90Dは、横向き溶接継手の溶接の際に溶接ロボット30の動作を制御するものである。溶接制御装置90Dは、具体的には図17(a)、(b)に示すように、鉄骨構造物Wが鉄骨構造物(下板)W5および鉄骨構造物(立板)W6で構成されるとともに、両者の間にレ型の開先が形成され、さらにこの開先の底部に裏当部材BMが配置された裏当金方式の溶接継手を横向き姿勢で溶接する際に、溶接ロボット30の動作を制御する。
以下、溶接制御装置90Dによる溶接ロボット30の具体的な制御方法について、図17および図18を参照しながら説明する。下板W5と立板W6との間には、図17(a)に示すように、開先角度θでルートギャップがrのレ形開先A−B−C−Dが形成されている。溶接制御装置90Dは、このレ形開先A−B−C−Dに対して、鉛直方向の層a→水平方向の層b→鉛直方向の層a→水平方向の層b→鉛直方向の層aの順に溶接を行うような動作プログラムを作成して溶接ロボット30に設定する。この水平方向の層b,bの存在によって、図17(a)に示すように、鉛直方向の層a,a,aの断面形状が同じとなるように構成されている。
図17(b)は、鉛直方向の層aを形成するための溶接手順を示している。但し、図17(b)に示す手順は、他の鉛直方向の層a,aにも同様に適用される。鉛直方向の層aを形成するための溶接手順は、図17(a)に示すように、基本的には下板W5と立板W6との間を往復動させるウィービングであり、具体的には鋸歯状にウィービングを行うことが好ましい。
鉛直方向の層aを形成するための溶接手順は、具体的には図17(b)の(1)→(2)→(3)に示すように、立板W6から下板W5に向かって運棒し、下板W5に至って折り返す工程と、図17(b)の(3)→(4) →(5)に示すように、下板W5から立板W6に向かって運棒し、立板W6に至って折り返す工程とを繰り返し、右方向に溶接を進める。
この鋸歯状のウィービングは、図17(b)に示すように、ウィービングピッチP、ウィービング幅H、下板W5に向かう運棒の方向と溶接方向(下板W5)とがなす角度αと、立板W6に向かう運棒の方向と溶接方向(下板W5)とがなす角度αとで規定することができる。また、ルートギャップのB点やC点に溶接欠陥を生じさせないためには、ウィービング幅Hをルートギャップrに対して±2mmとし、かつ、鋸歯状となるように、前記した2つの角度をそれぞれα,αとすることが好ましい。
そして、鉛直方向の層aを形成した後に、図17(a)に示すように、水平方向の層bを肉盛溶接によって形成する。これにより、図17(a)に示すように、立板W6と鉛直方向の層aと水平方向の層bとによって、新たなレ形開先A−B’−C’−D’が形成されることになる。そして、この新たなレ形開先A−B’−C’−D’がレ形開先A−B−C−Dと同じ形状になるように水平方向の層bを形成することができれば、鉛直方向の第2の層aが第1の層aと同じ条件で溶接できるので自動溶接を行う際に有利となる。
そのためには、図17(a)に示すように、水平方向の層bの高さtが、鉛直方向の層aの肉厚dにtanθを乗じた値となるように溶接を行えばよい。これにより、図17(a)に示すように、開先が斜め上方にずれるだけで形状が同じになる。そして、図17(a)に示すように、同様の関係を水平方向の第2の層bと鉛直方向の第2の層aとに適用し、最後に同じ形状の鉛直方向の第3の層aを形成する。
なお、前記した図17(a)、(b)に示した溶接手順は、図18に示すように、ルートギャップがrからrへと徐々に変化するテーパギャップにも適用でき、テーパギャップに生じやすい溶接欠陥を減少させることができる。この場合、図17(a)の水平方向の高さ一定の層b,bはそのまま図18のテーパギャップに適用することができ、図17(a)の鉛直方向の層a,a,aの高さがルートギャップに沿って徐々に変化する。すると、長手方向の溶接の切れ目が生じず、切れ目で生じやすい溶接不良が発生しなくなる。このように、鉛直方向の層a,a,aの高さがルートギャップに沿って変化する場合は、ウィービング条件、例えば図17(b)の角度α,α、ウィービング幅H、ウィービングピッチP、ウィービング回数、ウィービングの狙い位置を変化させることで、肉厚を一定に保つことができる。
以上のような構成を備える溶接装置1Dは、下板W5から立板W6に向かって運棒し、立板W6から下板W5に向かって運棒する適切な幅のウィービングで開先を溶接するため、下板W5や立板W6と裏当部材BMが接するルートギャップにおける溶け込み不良を低減することができる。
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態に係る溶接装置1Eについて、図19および図20を参照しながら説明する。溶接装置1Eは、図1に示すように、溶接制御装置90の代わりに溶接制御装置90Eを備える以外は、第1実施形態に係る溶接装置1と同様の構成を備えている。従って、以下では、溶接装置1との相違点を中心に説明を行い、当該溶接装置1と重複する構成および溶接装置1Eの処理手順については詳細説明を省略する。
溶接制御装置90Eは、立向き溶接継手の溶接の際に溶接ロボット30の動作を制御するものである。溶接制御装置90Eは、具体的には図19に示すように、鉄骨構造物Wが鉄骨構造物W7および鉄骨構造物W8で構成されるとともに、両者の間にレ型の開先が形成され、さらにこの開先の底部に裏当部材BMが、鉄骨構造物W7の下部に下側固形タブTBが配置された裏当金方式の溶接継手を立向き姿勢で溶接する際に、溶接ロボット30の動作を制御する。なお、前記した下側固形タブTBは、例えばMgO,SiO,Al,CaCO等を主成分とする非導電性材料で構成されている。
以下、溶接制御装置90Eによる溶接ロボット30の具体的な制御方法について、図19および図20を参照しながら説明する。溶接制御装置90Eは、図19に示すように、始端部の溶接開始点に溶接トーチ31を移動させた後、矩形状の運棒パターンのウィービングによって溶接トーチ31先端を移動させながら溶接方向(図19における上方向)に上昇させる。これにより、運棒パターンの1周期分の1ループごとに板状のビードが溶接方向に積層されることになる。なお、前記した「運棒パターンの1周期分の1ループ」とは、ある教示点から運棒を開始した場合における開先に対する位置関係が、上昇成分を除いて、前記した教示点と略同様に対応している教示点に至るまでのパターンのことを意味している。
この際、溶接制御装置90Eは、ビード形成部および始端乗り移り部からなる溶接始端側の端部領域(始端部領域)の溶接時においては、始端の下側固形タブTBにとって最適な溶接条件(溶接電流、溶接電圧、停止時間、次教示点への移動速度、移動中の溶接電流、トーチ角度、アークのON/OFF)を設定する。
溶接制御装置90Eは、具体的には図19に示すように、始端部領域に含まれる教示点のうち、鉄骨構造物W7の壁面W7aと裏当部材BMと下側固形タブTBとの接点に最も近い教示点Pの位置座標(xp1,yp1,zp1)、および、鉄骨構造物W8の壁面W8aと裏当部材BMと下側固形タブTBとの接点に最も近い教示点Pの位置座標(xp2,yp2,zp2)におけるX座標(xp1,xp2)の少なくとも一方の値を、−D−2mm以上かつ+3mm以下に設定する。その理由は、X座標(xp1,xp2)が−D−2mm未満であると、溶接トーチ31から突出された溶接ワイヤが下側固形タブTBに突っ込んでしまうことによって、始端部領域のビード形状が劣化したり、あるいは、溶接トーチ31が鉄骨構造物W7等に干渉する危険性が高まるためである。また、X座標(xp1,xp2)が−D+3mmを越えると、始端部領域のビードなじみが不十分となるためである。
ただし、教示点の位置座標は、図20(a)、(b)に示すように、X軸(溶接始端から溶接終端に向かう方向を+、開先のある鉄骨構造物W7,W8の下端部を0)、Y軸(溶接方向から開先を投影して開先面のある方向を+、ルートギャップの中心を0)、Z軸(ルートギャップ側から開先側に+、裏当金面を0)で表されるものとする。なお、裏当金面とは、図20(a)に示すように、裏当部材BMの開先側の面のことを意味している。また、下側固形タブTBは、ここでは図19に示すように、溝深さDmmを有しているものとする。
また、溶接制御装置90Eは、図19に示すように、教示点P,Pにおいては、溶接電流が190A〜250Aの範囲に設定する。その理由は、溶接電流が190A未満であると、溶け込みが不十分になる一方、250Aを越えると、裏当部材BM等をアークで抜いてしまって溶け落ち等が発生するという問題があるためである。なお、溶接制御装置90Eは、前記したような問題を確実に防止するために、溶接電流を200A〜240Aの範囲に設定することが好ましい。
また、溶接制御装置90Eは、図19に示すように、教示点P,Pにおける溶接トーチ31に対して、0.2s〜3.0sの停止時間を設定する。その理由は、停止時間が0.2s未満であると、溶融池が十分に形成されずにビード形状が不良になる一方、停止時間が3.0sを越えると、溶融池が大きくなって開口部側へのビードの垂れ落ちが発生ためである。なお、溶接制御装置90Eは、前記したような問題を確実に防止するために、停止時間を0.5s〜3.0sに設定することが好ましい。
以上のような構成を備える溶接装置1Eは、始端部領域の第1ループに含まれる教示点のうち、ルート側の教示点P(xp1,yp1,zp1)および教示点P(xp2,yp2,zp2)におけるX座標(xp1,xp2)の少なくとも一方の値を−D−2(mm)以上かつ+3(mm)以下に設定することによって、最も溶込みが得られにくい始端部領域の固形タブ(下側固形タブTB)との接点部分にアーク点を確実に配置し、融合不良等の欠陥を防止することができる。また、溶接装置1Eは、前記した教示点に対して0.2〜3.0sの停止時間を設定することにより必要十分な大きさの溶融池を形成することができ、さらに停止中の溶接電流を190A〜250Aに設定することにより鉄骨構造物Wや裏当部材BMに対する良好な溶込みやなじみを得ることができる。
[第7実施形態]
以下、本発明の第7実施形態に係る溶接装置について、図21を参照しながら説明する。第7実施形態に係る溶接装置は、溶接ロボット30を2台備えることを特徴としている。すなわち、第7実施形態に係る溶接装置は、図1に示す溶接装置1の構成に加えて、台車20と、溶接ロボット30と、ワイヤ供給容器40と、ノズル交換装置50と、ノズル清掃装置60と、スラグ除去装置70と、ワイヤ切断装置80とをそれぞれもう一組備えている。また、第7実施形態に係る溶接装置は、1台の溶接制御装置によって、各装置を制御できるように構成されている。ここで、第7実施形態に係る溶接装置における溶接制御装置以外の構成は既に説明済みであるため、説明を省略する。
第7実施形態に係る溶接装置の溶接制御装置90Fは、前記した図7に示すように、入力手段91、センシング手段92、ルートギャップ算出手段93および記憶手段95に加えて、演算手段94Fを備えている。また、この演算手段94Fは、図21に示すように、積層パターン決定手段941、溶接条件決定手段942および動作プログラム作成手段943に加えて、溶接条件修正手段944を備えている。ここで、溶接制御装置94Fにおける演算手段94F以外の構成と、演算手段94Fにおける溶接条件修正手段944以外の構成は既に説明済みであるため、説明を省略する。
溶接条件修正手段944は、溶接条件決定手段942によって決定された溶接条件を修正するものである。溶接条件修正手段944は、具体的には、同一の鉄骨構造物Wに存在する断面積と溶接長のいずれかもしくは両方が異なることで、溶接すべき体積の異なる複数の溶接継手を2台の溶接ロボット30によって同時に溶接する場合に、基点から次の基点までの溶接時間を同じにするため、溶接条件決定手段942によって決定された溶接条件に含まれる溶接ワイヤの送り量を変更する。これにより、溶接条件修正手段944は、複数の溶接継手における溶接すべき体積の違いを補うことができる。
以下、溶接条件修正手段944における具体的な処理について説明する。ここで、溶接条件修正手段944における処理の前段階として、以下のような準備を行っておく。まず、所定突き出し長さにおけるワイヤ送り速度に対する溶接電流と適正アーク電圧との関係を予め求めておく。次に、突き出し長さを増減させた場合のワイヤ送り速度に対する溶接電流と適正アーク電圧との関係を求めておく。そして、所定突き出し長さおよび基準ルートギャップの場合において、板厚ごとの基準となる溶接条件(基準溶接条件、すなわち溶接電流、アーク電圧、溶接速度および狙い位置)を実験等から求めておき、さらに、その溶接パス(多層盛溶接を行う場合にはその各パス)について、変動可能な溶接電流範囲およびそれに対応したアーク電圧を求めておく(溶接電流範囲)。この場合、薄い板厚の積層パターン、溶接電流および溶接速度(各パスののど厚が同じになる)は、厚い板厚の途中までと同じ条件となるケースが多いと考えられるが、仕上げ付近のパスのように板厚個別の条件としても構わない。そして、これらの情報を記憶手段95に格納し、図21に示すように、溶接条件修正手段944に対して出力可能な状態とする。
以上のような準備を行った上で、溶接条件修正手段944は、以下のような処理を行う。まず、溶接条件修正手段944は、2台の溶接ロボット30で同時に溶接しようとするパスについて、このパス終了後の基準溶接条件におけるのど厚が同じ場合、すなわち積層パターン、溶接電流および溶接速度が同じである場合、各基準溶接条件とその溶接継手のルートギャップ、および、それ以前に溶接したパスがある場合はそれまでに溶接したのど厚から、基準溶接条件におけるのど厚を保つことを前提とした場合の基点間の溶接に必要な溶着金属量を求め、その平均値を目標とする溶着金属量(目標溶着金属量)として定める。
次に、溶接条件修正手段944は、予め求めてあるワイヤ送り速度と溶接電流との関係から、このパスの基準溶接条件の電流値を使用した場合の目標溶着金属量となる溶接時間を求める。この場合、溶接条件修正手段944は、鉄骨構造物Wの直線部分については、基点間の溶接長から溶接速度を算出する。また、溶接条件修正手段944は、鉄骨構造物Wの円弧部分(コーナー部)については、溶接時間が回転ポジショナ10の回転時間となることから、今回溶接する溶接位置に応じた溶接長を、それまでののど厚が異なっていることを考慮して求め、溶接速度(鉄骨構造物Wと溶接トーチ31との相対速度)を算出する。次に、溶接条件修正手段944は、求めた溶接速度と各溶接継手の当パスで必要とする溶着金属量から、各溶接継手で必要なワイヤ送り速度を求め、予め求めてあるワイヤ送り速度と溶接電流との関係から、実電流値とそれに対応するアーク電圧を決定する。
一方、2台の溶接ロボット30で同時に溶接しようとするパスについて、このパス終了後の基準溶接条件におけるのど厚が異なる場合、すなわち積層パターン、溶接電流および溶接速度が異なる場合、溶接条件修正手段944は、各基準溶接条件とその溶接継手のルートギャップ、および、それ以前に溶接したパスがある場合はそれまでに溶接したのど厚からそれぞれの溶接継手について基準溶接条件におけるのど厚を保つことを前提とした場合の基点間の溶接に必要な溶着金属量を求め、その平均値を目標とする溶着金属量(目標溶着金属量)として定める。
次に、溶接条件修正手段944は、各基準溶接条件から同時に溶接しようとするパスの電流値に対するワイヤ送り速度を求め、その平均値を求め、これをワイヤ平均送り速度とする。次に、溶接条件修正手段944は、目標溶着金属量とワイヤ平均送り速度から、この時の溶接時間を求める。この場合、溶接条件修正手段944は、鉄骨構造物Wの直線部分については、基点間の溶接長と溶接時間から溶接速度を算出する。また、溶接条件修正手段944は、鉄骨構造物Wの円弧部分(コーナー部)については、溶接時間が回転ポジショナ10の回転時間となることから、今回溶接する溶接位置に応じた溶接長を、それまでののど厚が異なっていることを考慮して求め、溶接速度(鉄骨構造物Wと溶接トーチ31との相対速度)を算出する。次に、溶接条件修正手段944は、求めた溶接速度と各溶接継手の当パスで必要とする溶着金属量から、各溶接継手で必要なワイヤ送り速度を求め、予め求めてあるワイヤ送り速度と溶接電流との関係から実電流値とそれに対応するアーク電圧を決定する。
このように、第7実施形態に係る溶接装置は、複数の溶接ロボット30による溶接ワイヤの送り量を変えることで、複数の溶接ロボット30によって、溶接すべき体積の異なる複数の溶接継手を同時に溶接することができる。
ここで、溶接条件修正手段944は、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲を設け、その範囲内での溶接を行い、その結果生じる肉量の違いをそれ以降のパスで補うことにより、トータルの肉量を所望の値内とするように溶接条件を修正することが好ましい。すなわち、溶接電流を所定の溶接電流範囲内に変更し、肉量を変えて溶接した場合、各溶接継手の各パスにおける溶着金属量が所望の値にならなくなるが、この場合、その足りない溶着金属量または溢れた溶着金属量を次のパスに繰り越すこととする。また、今回のパスののど厚が0以下になった場合にも、下限値で溶接し、溢れた溶着金属量を次パスに繰り越すこととする。従って、溶接条件修正手段944は、繰り越しした溶着金属量の目標に対する誤差を加算したものをその溶接継手の次パスで必要とする溶着金属量とし、前記したものと同様の処理を行う。
このように、第7実施形態に係る溶接装置は、溶接の際に生じる肉量の違いを後のパスで補い、トータルの肉量を所望の値内にすることで、複数の溶接ロボット30によって、複数の溶接継手を同時に効率よく、かつ、適正に溶接することができる。
また、溶接条件修正手段944は、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲内での溶接が行えない場合、少なくとも1つのパスを溶接継手ごとに個別に溶接することにより、全体の肉量誤差を補うように溶接条件を修正することが好ましい。すなわち、複数の溶接継手間の溶接金属量の差が大きくなると、全パス終了時の溶接結果において、各溶接継手の溶着金属量に誤差が生じ、所望の溶接品質を得られないケースが発生する。この場合、溶接条件修正手段944は、1つ以上のパスを同時溶接させないようにし、つまり、複数の溶接継手のうちの少なくとも1つの溶接継手を同時溶接させないようにし、再度、基準溶接条件の溶接電流を前提として、この時の回転ポジショナ10の回転速度(溶接速度)をこのパスまでに必要な残りの溶着金属量に合わせて再計算する。そして、このように修正された溶接条件に基づいて溶接を行う。なお、この場合における残りの溶接継手は、この溶接継手の溶接前または溶接後に、このパスの溶接を行うものとする。
このように、第7実施形態に係る溶接装置は、少なくとも1つのパスを溶接継手ごとに個別に溶接し、全体の肉量誤差を補うことで、溶接継手ごとで基点間の溶接すべき体積の差が大きくても、複数の溶接ロボット30によって、複数の溶接継手を同時に効率よく、かつ、適正に溶接することができる。
また、溶接条件修正手段944は、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲内での溶接が行えない場合、ワイヤ送給量の差を大きくし、その際、溶接電流が適正範囲外になることに対して当該溶接電流が所望の値となるように溶接ワイヤの突き出し長さを変えるように溶接条件を修正することが好ましい。すなわち、前記した溶接電流範囲は限られているため、溶接継手間の溶接金属量の差が大きくなると、同時溶接できないパスが増加することになる。そしてこのように同時溶接できないパスが増加すると、結局、個別に溶接するケースに稼動時間が近づき、同時溶接の効果が薄れてしまう。従って、溶接条件修正手段944は、電流値を上下限値にしても、溶着金属量を所望の値にできない場合には、ワイヤ突き出し長さを変えることで溶接電流を範囲内に保ちつつ、溶着量を所望の値にする。つまり、溶接条件修正手段944は、予め、突き出し長さの変化に対する溶接電流およびアーク電圧の相関関係の変化を実験等から求めておき、溶接速度と溶着金属量から決まるワイヤ送り量における溶接電流値が電流範囲内になるように突き出し長さを変えることで、適正な溶接条件を保ち、同時溶接を可能とする。
このように、第7実施形態に係る溶接装置は、複数の溶接ロボット30の溶接ワイヤの突き出し長さを変えることで、複数の溶接ロボット30によって複数の溶接継手を同時に効率よく、かつ、適正な溶接電流を保って溶接することができる。
溶接条件修正手段944は、以上のように修正した溶接条件を、図21に示すように、動作プログラム作成手段943に出力する。そして、動作プログラム作成手段943は、積層パターン決定手段941で決定された積層パターンと、溶接条件修正手段944で修正された溶接条件とに応じて、溶接ロボット30のロボット動作プログラムを作成し、当該溶接ロボット30に出力して設定する。
以上のような構成を備える第7実施形態に係る溶接装置は、溶接制御装置90Fの入力手段91に入力された鉄骨構造物Wの寸法等の情報に基づいて、複数の溶接ロボット30の動作軌跡および溶接条件を自動的に生成することができる。
また、第7実施形態に係る溶接装置は、一対の回転ポジショナ10によって鉄骨構造物Wを保持するとともに、台車20ごとに設けられた溶接ロボット30によって鉄骨構造物Wの別々の直線部分を溶接する場合は、当該鉄骨構造物Wを回転させずに複数の溶接ロボット30によって溶接することができ、また、台車20ごとに設けられた溶接ロボット30によって鉄骨構造物Wの別々の円弧部分(コーナー部)を溶接する場合は、当該鉄骨構造物Wを回転させながら複数の溶接ロボット30によって溶接することができる。これにより、第7実施形態に係る溶接装置は、鉄骨構造物Wの直線部分のみならず、円弧部分においてもアークを切ることなく連続して溶接することができる。
以上、本発明に係る溶接装置について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
例えば、ノズル清掃装置60は、図5(a)〜(c)に示すように、ノズル着脱機構52が溶接トーチ31のノズル311の着脱のみを行っていたが、例えば例えば取り外したノズル311の内面(内周面)をワイヤブラシ等で自動清掃する構成を備えても構わない。これにより、ノズル311の内面に付着したスパッタを除去し、シールド性の低下をより効果的に防止することができる。
また、溶接装置1A,1Bは、いずれも1台の溶接ロボット30を備える場合(図1参照)について説明を行ったが、第7実施形態に係る溶接装置のように、2台の溶接ロボット30を備える場合であっても適用することができる。この場合、第7実施形態に係る溶接装置の溶接制御装置90F(図7参照)内に、溶接装置1Aの中心位置算出手段96、偏心量算出手段97および修正手段98を追加することで、鉄骨構造物Wの偏心量に基づいて動作プログラムを修正することができるとともに、第7実施形態に係る溶接装置の溶接制御装置90F(図7参照)内に、溶接装置1Bの位置補正手段99、コーナー部半径算出手段100および修正手段98Aを追加することで、鉄骨構造物Wのコーナー部半径センシングを行うことができる。
また、溶接装置1Cは、いずれも1台の溶接ロボット30を備える場合(図1参照)について説明を行ったが、第7実施形態に係る溶接装置のように、2台の溶接ロボット30を備える場合であっても適用することができる。この場合、第7実施形態に係る溶接装置の溶接制御装置90F(図7参照)内に、溶接装置1Cのインチング手段101を追加することで、2台の溶接ワイヤ31から突き出された溶接ワイヤをそれぞれインチング操作することができる。
ここで、溶接制御装置90F(図7参照)内に、溶接装置1Cのインチング手段101を追加した場合、当該インチング手段101は、具体的には複数の台車20上におけるそれぞれの溶接ロボット30の先端に設けられた溶接トーチ31のそれぞれの溶接開始位置で、センシング電圧を印加した溶接ワイヤを鉄骨構造物W3,W4に対してインチング操作によって進出させる。次に、インチング手段101は、溶接ワイヤの先端が鉄骨構造物W3,W4と接触した際の短絡を検出し、溶接ワイヤと鉄骨構造物W3,W4との通電を確認する。そして、次に、インチング手段101は、溶接ワイヤを所定長さだけ逆方向にインチング操作する。そして、インチング手段101は、複数の溶接トーチ31の溶接開始位置で同時に溶接ワイヤにそれぞれ所定の溶接電力を供給し、アークを点火して溶接を開始させる制御信号を生成し、当該制御信号を溶接ロボット30に出力する。これにより、溶接開始前にアーク発生の可不可を確認し、複数の溶接ロボット30でアークスタートのタイミングを同期させながら、それぞれの溶接開始位置で確実にアークをスタートすることができる。
また、溶接装置1D,1Eは、いずれも1台の溶接ロボット30を備える場合(図1参照)について説明を行ったが、第7実施形態に係る溶接装置のように、2台の溶接ロボット30を備える場合であっても適用することができる。
1,1A,1B,1C,1D,1E 溶接装置
10 回転ポジショナ
11 環状保持部
11a ギア
11b 円弧部分
111 固定治具
12 昇降アーム機構
13 ブラケット
131 ピニオンギア
132 駆動部
14 レール台車
20 台車
21 車輪
22 スライダ機構
30 溶接ロボット
31 溶接トーチ
311 ノズル
312 トーチ本体
313 チップ
32 アーム部先端
40 ワイヤ供給容器
50 ノズル交換装置
51 基台
51a 貫通孔
52 ノズル着脱機構
521 コイルバネ
522 筒部材
523 平歯車
524 回転駆動源
53 チップ清掃機構
534 平歯車
55 中間歯車
60 ノズル清掃装置
70 スラグ除去装置
70a スラグ除去装置載置台
71 タガネ機構
711 ニードル集合体
711a ニードル
72 スライド保持機構
725 スライド支持部材
726 スプリング
73 タガネ側着脱機構
731 連結部材
732 ショックセンサ
733 ツールプレート
734 ツール側着脱部材
734a 空気ポート
735a 第1エア配管
735b 第2エア配管
74 ロボット側着脱機構
741 ロボット側着脱部材
741a 第1空気ポート
741b 第2空気ポート
742 ブラケット
80 ワイヤ切断装置
90,90A,90B,90C,90D,90E,90F 溶接制御装置
91 入力手段
92 センシング手段
93 ルートギャップ算出手段
94,94F 演算手段
941 積層パターン決定手段
942 溶接条件決定手段
943 動作プログラム作成手段
944 溶接条件修正手段
95 記憶手段
96 中心位置算出手段
97 偏心量算出手段
98,98A 修正手段
99 位置補正手段
100 コーナー部半径算出手段
101 インチング手段
BM 裏当部材
O 軸線
R1 ポジショナ用移動レール
R2 台車用移動レール
TB 下側固形タブ
W 鉄骨構造物
W1 鉄骨構造物(コラム)
W1a 開先面
W1b 表面
W2 鉄骨構造物(ダイヤフラム)
W2a 開先面
W3 鉄骨構造物(コラム)
W4 鉄骨構造物(ダイヤフラム)
W5 鉄骨構造物(下板)
W6 鉄骨構造物(立板)
W7 鉄骨構造物
W7a 壁面
W8 鉄骨構造物
W8a 壁面
WS 鉄骨構造物(角形鋼管)

Claims (17)

  1. 溶接用ワークである鉄骨構造物を溶接ロボットによって溶接する溶接装置であって、
    前記溶接ロボットの動作を制御する溶接制御装置を備え、
    前記溶接制御装置は、
    少なくとも、前記鉄骨構造物の寸法および溶接継手の形状のいずれかもしくは両方と、溶接実行可否の情報とが、作業者による入力あるいは前記鉄骨構造物のCADデータの入力によって入力される入力手段を備え、前記鉄骨構造物の寸法および前記溶接継手の形状のいずれかもしくは両方に応じて予め用意された溶接ロボット軌跡および溶接条件に従って、溶接時における溶接ロボット動作軌跡および溶接条件を自動的に生成し、溶接させることを特徴とする溶接装置。
  2. 前記鉄骨構造物の長手方向に移動可能に設けられ、当該鉄骨構造物を保持して回転させる一対の回転ポジショナと、前記一対の回転ポジショナの移動方向と平行な方向に移動可能に設けられた台車と、前記台車上において、前記回転ポジショナの移動方向と直交する方向に移動可能に設けられた前記溶接ロボットと、前記溶接ロボットの先端に設けられた溶接トーチと、を備え、
    前記一対の回転ポジショナは、
    前記鉄骨構造物が内部に収容され、複数の固定治具によって当該鉄骨構造物を保持する一対の環状保持部と、
    前記一対の環状保持部の一方または双方を回転させる駆動部と、を備え、
    前記環状保持部は、前記鉄骨構造物を収容できるように環状部分の所定位置が分断されて当該環状部分の一部が開口して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接装置。
  3. 前記溶接用ワークである鉄骨構造物の長手方向に移動可能に設けられ、当該鉄骨構造物を保持して回転させる一対の回転ポジショナと、前記一対の回転ポジショナの移動方向と平行な方向に移動可能に設けられた複数の台車と、前記複数の台車上において、前記回転ポジショナの移動方向と直交する方向に移動可能にそれぞれ設けられた前記溶接ロボットと、前記溶接ロボットの先端に設けられた溶接トーチと、を備え、
    前記一対の回転ポジショナは、
    前記鉄骨構造物が内部に収容され、複数の固定治具によって当該鉄骨構造物を保持する一対の環状保持部と、
    前記一対の環状保持部の一方または双方を回転させる駆動部と、を備え、
    前記環状保持部は、前記鉄骨構造物を収容できるように環状部分の所定位置が分断されて当該環状部分の一部が開口して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接装置。
  4. 前記溶接制御装置は、
    所定突き出し長さに設定された溶接ワイヤを支持する前記溶接トーチと前記鉄骨構造物との間にセンシング電圧を印加し、前記溶接ワイヤと前記鉄骨構造物との接触による通電状態を検出して前記鉄骨構造物の位置を検出するセンシング手段と、
    前記センシング手段によって検出された、少なくとも一つの前記鉄骨構造物表面からの設定開先深さに対する所定深さの検出開始位置から開先幅方向の両開先面の検出位置データと、前記設定開先深さと前記検出開始位置との差と、予め設定されている前記両開先面の角度とに従ってルートギャップを求めるルートギャップ算出手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の溶接装置。
  5. 前記溶接制御装置は、前記鉄骨構造物の寸法、もしくは、前記鉄骨構造物の寸法およびルートギャップに対して予め用意された積層パターンおよび溶接条件と、入力もしくはセンシングにより得られたルートギャップ情報とから、溶接しようとする溶接継手に対する積層パターンおよび溶接条件を自動生成することを特徴とする請求項2に記載の溶接装置。
  6. 前記溶接制御装置は、前記鉄骨構造物の寸法、もしくは、前記鉄骨構造物の寸法およびルートギャップに対して予め用意された積層パターンおよび溶接条件と、入力もしくはセンシングにより得られたルートギャップ情報とから、溶接しようとする溶接継手に対する積層パターンおよび溶接条件を自動生成するとともに、同一の鉄骨構造物に存在する断面積と溶接長のいずれかもしくは両方が異なることで、溶接すべき体積の異なる複数の溶接継手を複数の溶接ロボットによって同時に溶接する場合に、基点から次の基点までの溶接時間を同じにするために、溶接ワイヤの送り量を変えるように制御することで、溶接すべき体積の違いを補うことを特徴とする請求項3に記載の溶接装置。
  7. 前記溶接制御装置は、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲を設け、その範囲内での溶接を行い、その結果生じる肉量の違いをそれ以降のパスで補うように制御することで、トータルの肉量を所望の値内にすることを特徴とする請求項6に記載の溶接装置。
  8. 前記溶接制御装置は、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲内での溶接が行えない場合において、少なくとも1つのパスを溶接継手ごとに個別に溶接するように制御することで、全体の肉量誤差を補うことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の溶接装置。
  9. 前記溶接制御装置は、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲内での溶接が行えない場合において、ワイヤ送給量の差を大きくするとともに、溶接電流が適正範囲外となることに対して当該溶接電流が所望の値となるように溶接ワイヤの突き出し長さを変えるように制御することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の溶接装置
  10. 溶接トーチ先端に設けられたノズルを交換するノズル交換装置を備え、
    前記ノズル交換装置は、
    前記ノズルが挿入されるコイルバネと、
    前記ノズルが挿入された前記コイルバネをその中心軸回りに回転駆動させることで、前記ノズルを前記溶接トーチのトーチ本体から取り外す回転駆動源と、
    を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶接装置。
  11. 前記溶接ロボットの先端に設置され、前記鉄骨構造物の溶接部に発生したスラグを除去するスラグ除去装置を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶接装置。
  12. 前記溶接制御装置は、
    所定突き出し長さに設定された溶接ワイヤを支持する前記溶接トーチと前記鉄骨構造物との間にセンシング電圧を印加し、前記溶接ワイヤと前記鉄骨構造物との接触による通電状態を検出して前記鉄骨構造物の位置を検出するセンシング手段と、
    予め入力された前記鉄骨構造物の寸法と、前記センシング手段によって検出された前記鉄骨構造物の位置とから、前記鉄骨構造物の中心位置を算出する中心位置算出手段と、
    予め入力された前記回転ポジショナの回転中心位置と、前記鉄骨構造物の中心位置とから、前記回転ポジショナの回転中心に対する前記鉄骨構造物の偏心量を算出する偏心量算出手段と、
    前記偏心量算出手段によって算出された前記偏心量に従って、前記ロボット動作軌跡を修正する修正手段と、
    を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶接装置。
  13. 前記鉄骨構造物は、角形鋼管であり、
    前記溶接制御装置は、
    所定突き出し長さに設定された溶接ワイヤを支持する前記溶接トーチと前記角形鋼管との間にセンシング電圧を印加し、前記溶接ワイヤと前記角形鋼管との接触による通電状態を検出して前記角形鋼管の位置を検出するセンシング手段と、
    前記センシング手段によって検出された、前記角形鋼管における上面または下面の位置と、前記角形鋼管における一方または他方の側面の位置とに従って、予め入力された前記角形鋼管における角部の位置を補正する位置補正手段と、
    前記位置補正手段によって補正された前記角形鋼管における角部の位置と、前記センシング手段によって検出された前記角形鋼管における角部の位置から前記角形鋼管におけるコーナー部の円弧中心を結ぶ鋼材表面位置とに従って、前記コーナー部の半径を算出するコーナー部半径算出手段と、
    前記位置補正手段によって補正された角部の位置と、前記コーナー部半径算出手段によって算出された前記コーナー部の半径とに従って、前記ロボット動作軌跡を修正する修正手段と、
    を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶接装置。
  14. 前記溶接制御装置は、
    前記溶接トーチの溶接開始位置で、センシング電圧を印加した溶接ワイヤを前記鉄骨構造物に対してインチング操作によって進出させることにより、前記溶接ワイヤの先端が前記鉄骨構造物と接触した際の短絡を検出して前記溶接ワイヤと前記鉄骨構造物との通電を確認した後、所定長さだけ前記溶接ワイヤを逆方向にインチング操作し、その後、前記溶接トーチの前記溶接開始位置で前記溶接ワイヤに所定の溶接電力を供給し、アークを点火して溶接を開始するように制御することを特徴とする請求項2に記載の溶接装置。
  15. 前記溶接制御装置は、
    前記複数の台車上におけるそれぞれの前記溶接ロボットの先端に設けられた前記溶接トーチのそれぞれの溶接開始位置で、センシング電圧を印加した溶接ワイヤを前記鉄骨構造物に対してインチング操作によって進出させることにより、前記溶接ワイヤの先端が前記鉄骨構造物と接触した際の短絡を検出して前記溶接ワイヤと前記鉄骨構造物との通電を確認した後、所定長さだけ前記溶接ワイヤを逆方向にインチング操作し、その後、複数の前記溶接トーチの前記溶接開始位置で同時に前記溶接ワイヤにそれぞれ所定の溶接電力を供給し、アークを点火して溶接を開始することにより、同一の前記鉄骨構造物の異なる溶接継手を複数の前記溶接トーチで同時に溶接を開始するように制御することを特徴とする請求項3に記載の溶接装置。
  16. 前記溶接制御装置は、
    レ形開先を設けた裏当金方式の溶接継手を横向き姿勢で溶接する場合、
    開先の最深部について、下板から立板に向かう前記溶接ワイヤの運棒と前記立板から前記下板に向かう前記溶接ワイヤの運棒とを繰り返すウィービングによって、ルートギャップに依らず前記開先の長手方向にわたって肉厚dが略一定である鉛直方向の層を形成し、前記鉛直方向の層に接して前記下板の上に高さtで略一定の肉盛溶接を行って水平方向の層を形成し、前記水平方向の層と前記鉛直方向の層と前記立板とからなる新たな開先について、前記鉛直方向の層を形成する溶接と前記水平方向の層を形成する溶接とを繰り返し、前記肉盛溶接の高さtを、前記水平方向の層と前記鉛直方向の層と立板とからなる新たな開先の形状が最初の開先の最深部の形状と略同一となるような高さとするように制御することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶接装置。
  17. 前記溶接制御装置は、
    レ形開先を設けた裏当金方式の溶接継手を立向き姿勢で溶接する場合、
    前記溶接トーチの前記溶接ワイヤ先端をウィービングさせながら上昇させて前記開先を溶接する際に、前記開先を始端側の始端部領域および終端側の終端部領域とこれ以外の本溶接部領域とに区分し、これら各領域の溶接特性を考慮した溶接条件を設定するとともに、前記ウィービングによる運棒パターンの1周期を1ループとし、前記ウィービングの軌跡中に含まれる教示点の位置座標を、X軸(溶接始端から溶接終端に向かう方向を+、開先のある前記鉄骨構造物の下端部を0)、Y軸(溶接方向から開先を投影して開先面のある方向を+、ルートギャップの中心を0)、Z軸(ルートギャップ側から開先側に向かう方向を+、裏当部材の表面を0)で表し、前記鉄骨構造物の下部に配置された固形タブの溝深さをD(mm)としたとき、前記端部領域の第1ループに含まれる教示点のうち、複数の前記鉄骨構造物の一方と前記裏当部材あるいは下層溶接ビード表面と前記固形タブとの接点に最も近い教示点Pの位置座標(xp1,yp1,zp1)および前記複数の鉄骨構造物の他方と前記裏当金あるいは下層溶接ビード表面と前記固形タブとの接点に最も近い教示点Pの位置座標(xp2,yp2,zp2)におけるX座標(xp1,xp2)の少なくとも一方の値が−D−2(mm)以上かつ+3(mm)以下であり、前記教示点Pおよび前記教示点Pに対して、0.2〜3.0sの停止時間で停止し、当該停止中の溶接電流を190A〜250Aにするように制御することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶接装置。
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