JP4090933B2 - 自動溶接制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、建築鉄骨のコラムを溶接する際等に使用される自動溶接制御方法に関し、特に複数の溶接ロボットを使用して同一ワークの複数の継手を同時に溶接する自動溶接における制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築鉄骨のコラムコアのように、溶接線が鉛直面内におかれ、溶接線として直線部と円弧部(コーナー部)を含む角形部材を自動溶接する方法が、種々提案されている(特許文献1乃至4参照)。これらの方法においては、直線部を溶接する際には、ワークを固定し、円弧部を溶接する際には、ワークを回転させている。これにより、円弧部でアークを切ることなく、連続して自動溶接する。
【0003】
この場合に、円弧部でアークを切ることなく連続して健全な溶接部を得るために、直線部と円弧部で、電流、電圧及び溶接速度等の溶接条件を変更したり(特許文献1及び特許文献2)、予め用意した標準的なコラムコアのルートギャップについての溶接条件を、実際のルートギャップに応じて変更している(特許文献3及び4)。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−307675号公報
【特許文献2】
特開平2−307678号公報
【特許文献3】
特開平6−285627号公報
【特許文献4】
特開平6−285637号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来技術においては、直線部と円弧部とで溶接速度等の溶接条件を変更したり、ルートギャップに応じて溶接条件を変更したりしているが、ルートギャップが相違して溶接部の断面積が異なる場合には、常に異なる溶接速度を適用している。従って、同一ワーク内の複数の継手を同時に溶接することができない。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、複数の溶接ロボットを使用して同一ワークの複数の継手を同時に自動溶接することができ、溶接時間を大幅に短縮することができ、又は溶接歪みによる板の変形を防止することができる自動溶接制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る自動溶接制御方法は、複数の溶接ロボットを使用して同一ワークの複数の継手を同時に溶接する自動溶接において、前記複数の継手間で、溶着金属断面積及び溶接長の少なくとも一方が異なるために、基点から次の基点まで溶接するときの溶接すべき体積が異なる場合に、前記基点から前記次の基点までの溶接時間が、前記複数の溶接ロボットについて同一になるように、各継手の該当基点間で必要な溶着金属量の平均値と、各継手の基準となる溶接条件でのワイヤ送り速度の平均値とから、その該当基点間の所定溶接時間を求め、その所定溶接時間で溶接したときに各継手で該当基点間で必要な溶着金属量が得られるように、各継手の溶接ワイヤの送り速度を調整することを特徴とする。
【0008】
この自動溶接制御方法により多層盛溶接する場合は、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲を設定し、その範囲内で溶接電流を設定し、前記基点から前記次の基点までの溶接時間が、前記複数の溶接ロボットについて同一になるように、溶接ワイヤの送り速度を調整しても、特定のパスにおける肉量が所望値よりも少ない場合に、その肉量の不足をそれ以降のパスで補い、全パス終了時の全肉量を所望の範囲に制御するように構成することができる。
【0009】
また、多層盛溶接において、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲を設定し、その範囲内で溶接電流を設定し、前記基点から前記次の基点までの溶接時間が、前記複数の溶接ロボットについて同一になるように、溶接ワイヤの送り速度を調整しても、全パス終了時の全肉量を所望の範囲に制御することができないと判断される場合は、少なくとも1つの継手の1つのパスについては、個別に溶接することにより、全パス終了時の全肉量を所望の範囲に制御するように構成することができる。
【0010】
更に、溶接可能な適正溶接電流範囲を設定し、その範囲内で溶接電流を設定し、前記基点から前記次の基点までの溶接時間が、前記複数の溶接ロボットについて同一になるように、溶接ワイヤの送り速度を調整しても、溶接終了時の肉量を所望の範囲に制御することができないと判断される場合は、前記溶接ワイヤの突き出し長さを調整することにより、溶接終了時の肉量を所望の範囲に制御するように構成することができる。
【0011】
電流と溶接ワイヤ送り速度との関係は、突き出し長さが一定のもとで、相関関係があり、電流は溶接ワイヤ送り速度の関数として表すことができる。このため、突き出し長さを変えることにより、異なるワイヤ送り速度で、同一の電流を作り出すことができる。従って、上記実施態様においては、溶接電流は適正溶接電流範囲から逸脱しない条件で、溶接ワイヤ送り速度を最大限調節しても溶接終了時の肉量を所望の範囲に制御できない場合であっても、溶接ワイヤの突き出し長さを調整することにより、溶接電流はそのままで、溶接ワイヤの送り速度を変えて溶接終了時の肉量を所望の範囲に制御することができる。
【0012】
更にまた、多層盛溶接において、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲を設定し、その範囲内で溶接電流を設定し、前記基点から前記次の基点までの溶接時間が、前記複数の溶接ロボットについて同一になるように、溶接ワイヤの送り速度を制御しても、全パス終了時の全肉量を所望の範囲に制御することができないと判断される場合は、少なくとも1つの継手の1つのパスについては、個別に溶接すると共に、前記溶接ワイヤの突き出し長さを調整することにより、全パス終了時の全肉量を所望の範囲に制御するように構成することができる。
【0013】
このように、1つの継手についてみたときに、仮にこの特定の継手のルートギャップが同じ(一定)であっても、同時に溶接する他の継手の形状及び溶接条件が変化すれば、この特定の継手には、異なる溶接条件を使用する。
【0014】
本発明においては、ルートギャップが異なるとか、板厚が異なるとか、又は脚長が異なるといったように、溶接部の断面積(開先断面積)が異なるワークを、そのコーナ部を溶接するために回転させながら溶接する場合、溶接ロボット(自動溶接装置)を複数台、同時に適用するので、溶接時間を大幅に短縮することが可能である。また、同じ板の両側を溶接するような場合には、溶接ひずみによる板の変形を抑制することが可能となり、後工程での歪み矯正作業の省略又は軽減が可能となり、後工程で前記板に取り付ける部材との間の位置ずれを抑制することができる。このように、本発明は製作コストの低減と、製品品質の向上に効果がある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の実施形態に係る自動溶接制御方法に使用する装置を示すブロック図、図2はこの自動溶接装置を示す図、図3は溶接により組み立てようとするコラム柱を示す斜視図である。このコラム柱は、図4に示すように、コラムコア3と、仕口2と、コラム1とから構成されている。コラムコア3は、図5に示すように、筒状のコラム部4の両端部にダイヤフラム5を溶接により接合して組み立てられている。このコラム部4とダイヤフラム5との溶接は、図6に示すように、コラム部4の端面を傾斜するように形成し、コラム部4を水平に設置し、ダイヤフラム5を垂直に設置して、このコラム部4とダイヤフラム5との間にレ型の開先を設け、この開先の下部に、裏当材6を配置し、裏当金方式で自動溶接することにより、コラム部4とダイヤフラム5とを接合する。
【0016】
このとき、図7に示すように、溶接ワイヤに給電するトーチと、被溶接材との間に電圧を印加し、溶接ワイヤが被溶接材に接触したことをそれらの電気的ショートにより検出するセンシング動作により、開先位置を自動的に検出する。図7に示す開先においては、一例として、溶接ワイヤの先端の位置が点P1から、水平のコラム部4の直上の位置P2まで移動するように、溶接ワイヤを斜めに降下させ、その後、センシング動作によりワイヤを鉛直(−Z方向)に降下させてコラム部4に接触させ、その位置P3とP2との間の距離TS1を求める。その後、溶接ワイヤの先端を位置P4まで斜めに上昇させ、位置P4から水平(Y方向)に移動させて、ワイヤ先端がダイヤフラム5に接触する位置P5までの距離TS2を求める。その後、位置P6まで斜めに上昇させて更に、位置P7まで溶接ワイヤの先端を斜めに降下させて、開先位置を認識することができる。
【0017】
コラム柱は図3及び図4に示すように、コア3のコラム部4の4側面に、仕口2を溶接接合し、コラム1をコア3のダイヤフラム5に垂直に溶接接合することにより組み立てられる。図2に示す自動溶接装置は、コラム1をコア3のダイヤフラム5に溶接する方法を示している。この自動溶接装置は、2基(1対)のポジショナ31,32と、2基の溶接ロボット33,35とが、ポジショナ31,32間に溶接ロボット33を配置し、溶接ロボット33,34間にポジショナ32を配置して、タンデムに配置されている。
【0018】
溶接ロボット33,34は、レール50上を走行する移動台車35を有し、この台車35上に、溶接ワイヤの供給容器37と電源装置42とが載置され、台車35のレール50に直交する方向の一端部には、アーム40,41が設置されている。このアーム40の先端部にはトーチ38が設けられており、ワイヤ供給容器37内にコイル状に巻回されて貯留されていた溶接ワイヤ39が巻き解かれてコンジットチューブ36を介してトーチ38に供給され、トーチ38を通過して溶接部に供給される。溶接電源装置42はケーブル43によりトーチ38に接続されており、トーチ38を介して溶接ワイヤ39に溶接電力を供給するようになっている。
【0019】
ポジショナ31,32は、台44に対して、回転部45が回転可能に設置されている。この回転部45は中央部が矩形に切りかかれた形状を有し、この中央切欠部には、少なくとも1対の対向する辺に、被溶接物を固定する固定具46が設けられている。被溶接物は図3に示すように予め仮溶接されて組み立てられており、固定具46により、被溶接物であるコラム1の面を挟持することにより、回転部45がコラム1を固定する。1対のポジショナ31,32はコラム1の長手方向に見てその切欠部が整合する(重なる)位置に設けられており、各ポジショナ31,32により1対のコラム1を挟持したときには、各コラム1の中心軸が一致するように、固定具46が調節される。
【0020】
このように、仮付けにより組み立てられたワーク(コラム柱)の1対のコラム1を夫々ポジショナ31、32により2箇所で挟持して、ワークを支持し、コラム1の端面とコラムコア3のダイヤフラム5との間の溶接部を、コラム1の端部の4辺に沿って溶接する。この場合に、コラム1の端部(又は横断面)は、図8に示すように、4辺の直線部と、4個のコーナ部とから構成され、このコーナ部は、適宜の半径で湾曲している。従って、コラム1の端部とダイヤフラム5の表面との間の溶接線は、このコラム1の端部の外縁に沿って、4辺の直線部と4個のコーナ部とから構成されるものとなる。
【0021】
そして、溶接線が直線である部分については、図9の▲1▼の期間に示すように、ポジショナ31,32は静止したままで、溶接ロボット33,34のアーム40,41を動かして、軌跡1にて示すように、トーチ38を水平方向に移動させる。これにより、溶接線の直線部を溶接ワイヤ39により溶接する。一方、コーナ部については、図9の▲2▼乃至▲5▼に示すように、ポジショナ31,32によりコラム1及びダイヤフラム5をコラム1の中心軸の周りに回転(自転)させつつ、トーチ38を軌跡2〜10まで経由して円弧状に移動させる。これにより、コーナ部が溶接ワイヤ39により溶接され、次順の直線部の溶接に移る。
【0022】
なお、溶接ロボット33,34による溶接に際し、前述と同様にタッチセンシング動作により、溶接線を検出する。コラム1とダイヤフラム5との間に、開先がない場合は、図10に示すように、ギャップセンシングをしないでタッチセンシングのみにより溶接線を検出する。つまり、コラム1の上方の位置に溶接ワイヤの先端を位置させ、ワイヤ先端をP1からP7まで移動させる。この間、P2からP3へのタッチセンシング動作により、コラム1の表面、つまり上下方向の被溶接材の位置を検出する。また、P4からP5へのタッチセンシング動作により、ダイヤフラム5の表面、つまり左右方向の被溶接材の位置を検出する。
【0023】
一方、コラム1とダイヤフラム5との間に、例えば、図6と同様のレ型の開先がある場合は、図11に示すように、ギャップセンシングとタッチセンシング動作により溶接線を検出する。つまり、コラム1の上方の位置に溶接ワイヤの先端を位置させ、ワイヤ先端をP1からP11まで移動させる。この間、P2からP3へのタッチセンシング動作により、コラム1の表面、つまり上下方向の被溶接材の位置を検出する。また、P4からP5へのタッチセンシング動作により、ダイヤフラム5の表面、つまり左右方向の被溶接材の位置を検出する。そして、ポジショナの位置を0°、90°、180°、270°にして、各ポジショナ角度において、P6からP11までの移動により、夫々P7及びP10の位置でギャップセンシングを行う。これにより、4辺のギャップを検出する。
【0024】
上述の如く、溶接部の溶接線の位置及びギャップを検出し、溶接部が直線の場合は、この溶接線が水平になる位置でワークであるコラム1を固定した状態で、溶接ロボット33,34のトーチ38を動かして、開先を溶接する。一方、ワークのコーナ部を溶接する場合には、ポジショナ31,32によりワークを回転させつつ、溶接ロボット33,34により、開先を溶接する。
【0025】
この溶接ロボットによる溶接方法は、図1に示す自動制御装置により制御される。図1において、2基の溶接ロボットの本体10がロボット制御装置14により制御される。この溶接ロボットの溶接トーチ11には、ワイヤ送給装置12により溶接ワイヤが送給され、この溶接ワイヤはトーチ11からワークの溶接部に向けて供給される。このワイヤの送給は、ワイヤ送給装置12により駆動され、ワイヤ送給装置12は溶接電源装置13に格納された送給モータ制御装置13aにより制御される。また、溶接電源装置13から溶接トーチ11に対して溶接電流値及び溶接電圧値の電源が供給され、溶接トーチ11を通過するワイヤに電源が供給される。
【0026】
2つのロボット本体10、各ロボット本体10の首先端に設けた溶接トーチ11及びワークへ溶接電力を供給する外部装置の溶接電源13は、夫々ロボット制御装置14により制御される。一方のロボット制御装置14には、溶接するワークの姿勢を制御するポジショナ20が接続されている。また、2つのロボット制御装置14は各溶接ロボット本体10の位置制御及びインターロックのために通信ケーブルで接続されている。
【0027】
ロボット制御装置14は、演算処理装置17を中心として、入力装置15、記憶装置18,ロボット本体制御装置16及び外部制御装置19が設けられている。演算処理装置17は入力装置15から入力されたデータを基に、このデータを記憶装置18に記憶したり、記憶装置18から読み出したデータを基に演算して、外部制御装置19及びロボット本体制御装置16に制御信号を出力する。ロボット制御装置14は、送給モータ制御装置13aに制御信号を出力して、ワイヤの送給速度を制御する。また、一方のロボット制御装置14はワークの姿勢を調節するポジショナ本体20を制御する。
【0028】
ロボット本体は、例えば、6軸の垂直多関節型のもので、先端アームの手首部先端に溶接トーチが設けられている。このロボット本体は、教示ペンダントである教示作業入力装置による教示作業に基づく動作と、その教示作業によって作成された教示プログラム実行データに基づいて溶接トーチ先端を再生する再生動作とを行う。
【0029】
ポジショナは、例えば、鉄骨コラムであるワークの2箇所を支持する両持1軸のもので、この支持駆動部材にワークを保持するワーククランプ部があり、このワーククランプ部にクランプしたワークの各溶接継手をロボット制御装置からの指令によりポジショナ制御装置が回転駆動させ、ロボット本体に対して適性な溶接姿勢とするものである。
【0030】
溶接電源は、例えば、炭酸ガスシールド消耗電極溶接方式のもので、溶接トーチとワークとに溶接電力を供給する溶接電力供給電源部と、センシング電源部とを兼用するようになっている。溶接電力供給電源部はロボット制御装置の溶接電源制御部からの溶接開始及び終了指令並びに溶接電流及び電圧の溶接条件指令等を受けて、この溶接条件指令による溶接電力を溶接トーチ及びワークに供給する。センシング電源部は、ロボット制御装置の溶接電源制御部からのセンシング開始及び終了指令を受けて溶接トーチとワークとにセンシング電圧を供給する。
【0031】
ロボット制御装置14は、演算処理装置17と、記憶装置18と、ロボット本体の各アーム及びポジショナの位置を制御するロボット本体制御装置16と、溶接電源13等の外部制御装置19と、入力装置15等とからなっている。
【0032】
演算処理装置17は、ロボット本体の教示演算指令動作と、ロボット本体と溶接電源とによる再生演算指令動作等を行う。記憶装置18には、教示プログラム記憶部と一次記憶部があり、教示プログラム記憶部は教示作業による各ワークの教示プログラムを記憶しており、一次記憶部は、溶接継手センシング動作による各検出情報等の各演算部での演算値を一時的に記憶している。ロボット本体制御装置16は、ロボット動作演算部からの教示演算指令によりロボット本体を移動制御する。外部制御装置19には、溶接継手検出制御部と溶接電源制御部があり、溶接継手検出制御部はセンシング動作による溶接継手位置検出情報を溶接継手センシング演算部に出力し、溶接電源制御部は、ロボット動作演算部から入力の溶接開始及び終了指令又は溶接電流及び電圧の溶接条件指令等を溶接電力供給電源部に出力すると共に、入力の溶接継手センシング開始及び終了指令をセンシング電源部に出力する。
【0033】
次に、上述の装置を使用して、図2に示すように、2つの溶接ロボット33,34により、コラムコア3のフランジ部5とコラム1との溶接部を、2箇所について同時に、溶接する際の制御方法について説明する。
【0034】
建築鉄骨のコラム溶接(ルートギャップが異なる裏当金方式レ型開先)を、炭酸ガスをシールドガスとして使用する2台の溶接ロボットを使用して溶接する場合において、溶接線が直線の部分はポジショナ31,32を固定して自動溶接し、コーナ部のように溶接線が円弧状に曲がっている部分ではポジショナ31,32を回転させながら自動溶接する。図9はコラム溶接において1台の溶接ロボットが直線部及び円弧部(コーナ部)を溶接するときの溶接点の軌跡を示す図である。そして、この軌跡は、コラム径、コーナ半径、コラム板厚、及びポジショナ回転中心に対する偏心量が同じであれば、ルートギャップが異なっていても、溶接ロボット33と溶接ロボット34とについて、同一である。この軌跡に示すように、▲1▼の期間は、ポジショナ31,32を静止させておいて、溶接ロボット33,34のアーム40,41を動かして溶接する。一方、▲2▼から▲5▼の期間は、ポジショナ31,32を回転させてコラム1を回転させつつ、溶接ロボット33,34のアーム40,41をその溶接ワイヤの先端が”2”から”10”まで円弧状に移動するように動かして、コーナ部を溶接する。
【0035】
複数台の溶接ロボットを動作させる場合に、基点と、次の基点との間の溶接時間は、各溶接ロボットについて同一であることが必要である。つまり、同じワークの異なる複数の連結位置における複数の溶接部を複数台の溶接ロボットで同時に溶接するためには、少なくとも直線区間の始端及び終端並びにコーナ区間の始端及び終端への各到着時刻が同時刻になるようにしておく必要がある。実際には、ルートギャップが変動しているため、図9に示すように細かく条件変更する必要があり、その各ステップ間を同じ時間で移動させることになる。また、直線区間についても、1−2間、10−1間でルートギャップの変動が大きい場合には、細かく条件を変更する必要がある。
【0036】
図12は基準溶接条件及び同時溶接継手の条件を示す模式図である。この図12を参照して、溶接条件生成方法について説明する。溶接前に以下の▲1▼乃至▲3▼の処理を実施する。
▲1▼先ず、予め、所定突き出し長さにおけるワイヤ送り速度に対する溶接電流及びそのときの適正アーク電圧の関係を求めておく。
▲2▼突き出し長さを増減させた場合のワイヤ送り速度に対する溶接電流及びそのときの適正アーク電圧との関係を求めておく。
▲3▼所定突き出し長さ/基準ルートギャップにおいて、板厚毎の基準となる溶接条件(基準溶接条件、即ち溶接電流、アーク電圧、溶接速度及び狙い位置)を実験等から求めておき、更に、その溶接パス(多層盛溶接を行う場合にはその各パス)について、変動可能な溶接電流範囲及びそれに対応したアーク電圧を求めておく(溶接電流範囲)。この際、薄い板厚の積層パターン、溶接電流及び溶接速度(各パスののど厚が同じになる)は、厚い板厚の途中までと同じ条件となるケースが多いと考えられるが、仕上げ付近のパスのように板厚個別の条件としてもよい。
【0037】
次に、溶接実施時に以下の処理▲4▼乃至▲9▼を実施する。
▲4▼同時に溶接しようとするパスについて、このパス終了後の基準溶接条件におけるのど厚が同じ場合、即ち積層パターン、溶接電流及び溶接速度が同じである場合、各基準溶接条件とその継手のルートギャップ及びそれ以前に溶接したパスがあるならそれまでに溶接したのど厚から、基準溶接条件でののど厚を保つことを前提とした場合の基点間の溶接に必要な溶着金属量を求め、その平均値を目標とする溶着金属量(目標溶着金属量)とする。予め求めてあるワイヤ送り速度と溶接電流との関係から、このパスの基準溶接条件の電流値を使用した場合の目標溶着金属量となる溶接時間を求める。直線部については、基点間の溶接長から溶接速度を算出する。コーナ部については、溶接時間がポジショナの回転時間となることから、今回溶接する溶接位置に応じた溶接長を、それまでののど厚が異なっていることを考慮して求め、溶接速度(ワークとトーチとの相対速度)を算出する。求めた溶接速度と各継手の当パスで必要とする溶着金属量から、各継手で必要なワイヤ送り速度を求め、予め求めてあるワイヤ送り速度と溶接電流との関係から、実電流値とそれに対応するアーク電圧を決定する。
【0038】
このパス終了後の目標のど厚が異なる場合、即ち積層パターン、溶接電流及び溶接速度が異なる場合、各基準溶接条件とその継手のルートギャップ、及びそれ以前に溶接したパスがあるなら、それまでに溶接したのど厚から夫々の継手について基準溶接条件でののど厚を保つことを前提とした場合の基点間の溶接に必要な溶着金属量を求め、その平均値を目標とする溶着金属量、即ち目標溶着金属量とする。次に、同じく各基準溶接条件から同時に溶接しようとするパスの電流値に対するワイヤ送り速度を求め、その平均値を求め、これをワイヤ平均送り速度とする。目標溶着金属量とワイヤ平均送り速度から、このときの溶接時間を求める。直線部については、基点間の溶接長と溶接時間から溶接速度を算出する。コーナ部については、溶接時間がポジショナの回転時間となることから、今回溶接する溶接位置に応じた溶接長を、それまでののど厚が異なっていることを考慮して求め、溶接速度(ワークとトーチの相対速度)を算出する。求めた溶接速度と各継手の当パスで必要とする溶着金属量から、各継手で必要なワイヤ送り速度を求め、予め求めてあるワイヤ送り速度と溶接電流との関係から実電流値とそれに対応するアーク電圧を決定する。
▲5▼このとき、実電流値が溶接電流範囲外となる場合で、かつ、トーチ及びロボットアームとワークが干渉しない場合については、後述の▲9▼の処理を実施する。この処理後も実電流値が溶接電流範囲外となる場合には、電流値をその上下限値になるようにし、ワイヤ送り量とアーク電圧をそれに合わせて変更する。
▲6▼溶接電流を所定の溶接電流範囲内に変更し、肉量を変えて溶接した場合、各継手の各パスにおける溶着金属量が所望の値にならなくなるが、この場合、その足りない溶着金属量又は溢れた溶着金属量を次のパスに繰り越す。また、今回のパスののど厚が0以下になった場合にも、下限値で溶接し、溢れた溶着金属量を次パスに繰り越すことにする。
▲7▼繰り越しした溶着金属量を加算したものをその継手の次パスで必要とする溶着金属量とし、前述同様の処理を行う。
▲8▼これを繰り返しても、継手間の溶接金属量の差が大きくなると、全パス終了時の各継手の溶接結果が溶着金属量に誤差が生じることにより所望の溶接品質の合格範囲外となるケースが発生するが、この場合、1つ以上のパスを同時溶接させないようにし、つまり、複数の継手のうち少なくとも1つの継手を同時溶接させないようにし、再度、基準溶接条件の溶接電流を前提とし、このときのポジショナ回転速度(溶接速度)をこのパスまでに必要な残りの溶着金属量に合わせて再計算し、溶接を行う。このとき、残りの継手はこの継手の溶接前又は溶接後に、このパスの溶接を行うものとする。この方法で求める同時溶接又は非同時溶接を決定した積層スケジュールをパススケジュールと呼び、このパススケジュールは溶接開始前に決定しておく
▲9▼溶接電流範囲は限られているため、継手間の溶接金属量の差が大きくなると、同時溶接できないパスが増加する。このようになると、結局、個別に溶接するケースに稼動時間が近づき、同時溶接の効果が薄れる。電流値を上下限値にしても、溶着金属量を所望の値にできない場合には、ワイヤ突き出し長さを変えることで溶接電流を範囲内に保ちつつ、溶着量を所望の値にする。つまり、予め、突き出し長さの変化に対する溶接電流及びアーク電圧の相関関係の変化を実験等から求めておき、溶接速度と溶着金属量から決まるワイヤ送り量における溶接電流値が電流範囲内になるように突き出し長さを変えることで、適正な溶接条件を保ち、同時溶接を可能にする。
【0039】
なお、溶接時の被溶接物への入熱量(J/cm)は、電流(A)×電圧(V)×60/溶接速度(cm/min)として求められる。一般的に、1つのパスの溶着金属量が多い方が、少ない方に比べて入熱量が高くなる。また、入熱を高くすることは、単位時間当たりの溶着金属量が多くなることから溶接時間が短縮でき、作業能率を上げることができる。従って、上述の項目▲4▼については、最も溶着金属量の多い継手の溶接条件を使用可能な溶接電流の最大値を使用し、最大入熱となる溶接速度(溶接時間)を求め、他の同時溶接継ぎ手の溶接条件をその溶接速度(溶接時間)に基づいて算出する方法もある。上記項目▲4▼に記載した方法は、基準溶接条件が総合的に最適であるという前提のもとに、できるだけその溶接条件に近い条件を選択するという考えに基づいた算出方法である。
【0040】
上述の溶接条件生成方法により、溶接条件を生成し、この条件に基づいて溶接ロボットによる自動溶接を実施する。先ず、入力装置15から、ワーク形状データを入力する。このワーク形状データは、図8に示すように、例えば、断面形状としてのコラム板厚(ギャップセンシングされない場合は、ルートギャップ)、コラム縦径、コラム横径、コーナ半径(第1コーナ部から第4コーナ部までの4個)と、長手方向の寸法とがあり、これを継手毎に入力する。そして、前述の図10又は図11に示す方法で、センシングデータを生成する。インプットされたワーク形状データ及びセンシング結果から得られた各継手の少なくとも直線4箇所(直線の始端から終端まで×4面)、コーナ部4箇所(コーナの始端から終端まで×4コーナ)の溶接長、ルートギャップ及びその板厚の基本溶接条件から、上記▲4▼乃至▲7▼及び▲9▼に示した溶接条件生成を行う。この場合に、ギャップ及び肉量の変化が大きい場合には、分割する区間を細かくする。
【0041】
生成した溶接条件が所望ののど厚範囲外となる場合には、上記▲8▼の処理を所望ののど厚範囲内になるまで行い、同時溶接の適用又は不適用を含めた溶接条件(パススケジュール)を生成する。そして、完了した溶接条件をもとに1パス目からの溶接を実行する。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、直線部及び円弧部を有する溶接線を円弧部についてはワークを回転させつつ溶接するような場合に、複数台の溶接ロボットを使用して、同一ワークの複数の溶接部を同時に溶接することが可能となり、溶接時間を大幅に短縮できるという優れた効果を奏する。また、同じ板の両側を溶接するような場合には、2台の溶接ロボットで同時に溶接することができ、これにより、溶接ひずみによる板の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る自動溶接制御方法にて使用する装置を示すブロック図である。
【図2】自動溶接装置を示す図である。
【図3】溶接により組み立てようとするコラム柱を示す斜視図である。
【図4】コラム柱の組み立て図である。
【図5】コラムコア3の構造を示す図である。
【図6】コラムコア3を溶接により組み立てる方法を示す図である。
【図7】センシング動作を示す図である。
【図8】コラム断面を示し、自動制御装置への入力データを示す図である。
【図9】直線部と円弧部の溶接ワイヤ先端の軌跡を示す図である。
【図10】ギャップセンシングを行わない場合のタッチセンシング動作を示す図である。
【図11】ギャップセンシングを行う場合のタッチセンシング動作を示す図である。
【図12】基準溶接条件及び同時溶接継手の条件を示す模式図である。
【符号の説明】
1:コラム
2:仕口
3:コラムコア
4:コラム部
5:ダイヤフラム
6:裏当材
10:溶接ロボット本体
11:溶接トーチ
12:ワイヤ送給装置
13:溶接電源装置
13a:送給モータ制御装置
14:ロボット制御装置
20:ポジショナ本体
31,32:ポジショナ
33,34:溶接ロボット
35:台車
36:レール
37:溶接ワイヤ貯留容器
38:トーチ
39:溶接ワイヤ
40、41:アーム
42:電源装置
43:ケーブル
45:回転部
50:レール
Claims (5)
- 複数の溶接ロボットを使用して同一ワークの複数の継手を同時に溶接する自動溶接において、前記複数の継手間で、溶着金属断面積及び溶接長の少なくとも一方が異なるために、基点から次の基点まで溶接するときの溶接すべき体積が異なる場合に、前記基点から前記次の基点までの溶接時間が、前記複数の溶接ロボットについて同一になるように、各継手の該当基点間で必要な溶着金属量の平均値と、各継手の基準となる溶接条件でのワイヤ送り速度の平均値とから、その該当基点間の所定溶接時間を求め、その所定溶接時間で溶接したときに各継手で該当基点間で必要な溶着金属量が得られるように、各継手の溶接ワイヤの送り速度を調整することを特徴とする自動溶接制御方法。
- 多層盛溶接において、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲を設定し、その範囲内で溶接電流を設定し、前記基点から前記次の基点までの溶接時間が、前記複数の溶接ロボットについて同一になるように、溶接ワイヤの送り速度を調整しても、特定のパスにおける肉量が所望値よりも少ない場合に、その肉量の不足をそれ以降のパスで補い、全パス終了時の全肉量を所望の範囲に制御することを特徴とする請求項1に記載の自動溶接制御方法。
- 多層盛溶接において、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲を設定し、その範囲内で溶接電流を設定し、前記基点から前記次の基点までの溶接時間が、前記複数の溶接ロボットについて同一になるように、溶接ワイヤの送り速度を調整しても、全パス終了時の全肉量を所望の範囲に制御することができないと判断される場合は、少なくとも1つの継手の1つのパスについては、個別に溶接することにより、全パス終了時の全肉量を所望の範囲に制御することを特徴とする請求項1に記載の自動溶接制御方法。
- 溶接可能な適正溶接電流範囲を設定し、その範囲内で溶接電流を設定し、前記基点から前記次の基点までの溶接時間が、前記複数の溶接ロボットについて同一になるように、溶接ワイヤの送り速度を調整しても、溶接終了時の肉量を所望の範囲に制御することができないと判断される場合は、前記溶接ワイヤの突き出し長さを調整することにより、溶接終了時の肉量を所望の範囲に制御することを特徴とする請求項1に記載の自動溶接制御方法。
- 多層盛溶接において、各パスで溶接可能な適正溶接電流範囲を設定し、その範囲内で溶接電流を設定し、前記基点から前記次の基点までの溶接時間が、前記複数の溶接ロボットについて同一になるように、溶接ワイヤの送り速度を調節しても、全パス終了時の全肉量を所望の範囲に制御することができないと判断される場合は、少なくとも1つの継手の1つのパスについては、個別に溶接すると共に、前記溶接ワイヤの突き出し長さを調整することにより、全パス終了時の全肉量を所望の範囲に制御することを特徴とする請求項1に記載の自動溶接制御方法。
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