JP2013197394A - 磁性流体用磁性粉末、磁性流体およびダンパー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ダンパー1は、シリンダー2と、このシリンダー2の天井部21を貫通し、シリンダー2内に延伸するよう設けられたピストンロッド31と、ピストンロッド31の下端に設けられたピストン3と、シリンダー2内に収納された磁性流体10と、を有している。また、ダンパー1には、磁性流体10に磁界を付与する磁界形成手段が設けられている。また、磁性流体10は、Crと、M(MはSiおよびAlの少なくとも一方)と、を含み、残部がFeおよび不可避元素で構成されており、Crの含有率が0.5質量%以上13質量%以下であり、かつ、Mの含有率が0.5質量%以上13質量%以下である磁性粉末を含んでいる。
【選択図】図1
Description
また、磁性流体には、外部磁界に応じて、その粘度や流動性を変化させる性質がある。このため、この性質を利用し、減衰力を自在に変化させることができるダンパー(緩衝器)が実用化されている。
減衰力可変ダンパーに用いる磁性流体としては、表面を界面活性剤等で被覆した、主に鉄とフェライトの混合物を含む粒子を、ヒマシ油のような植物油の誘導体に分散してなる磁性流体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、フェライトのような飽和磁束密度が比較的低い材料では、外部磁界の変化に対して、磁性流体における流体特性の変化に著しく時間を要することがある。この場合、減衰力特性の変化を高い精度で制御することが困難となる。
なお、同様の課題解決を目指すものとして、特許文献2には、Fe−Cr系合金で構成された磁性粒子を含む磁性流体が開示されているが、この磁性流体においても上記課題を十分に解決するには至っていない。
本発明の磁性流体用磁性粉末は、Crと、M(MはSiおよびAlの少なくとも一方)と、を含み、残部がFeおよび不可避元素で構成されており、
Crの含有率が0.5質量%以上13質量%以下であり、かつ、Mの含有率が0.5質量%以上13質量%以下であることを特徴とする。
これにより、Crの含有率とMの含有率の最適化を図ることによって、流体特性の長期安定性に寄与し、かつ、磁性流体に適した高い磁気特性を有する磁性流体用磁性粉末が得られる。
これにより、Crによる耐候性の向上とMによる透磁率の向上とをバランスよく両立させることができる。
本発明の磁性流体用磁性粉末では、Siの含有率が1質量%以上12質量%以下であることが好ましい。
これにより、磁性粉末の透磁率を高めることができ、かつ、磁性粉末の比抵抗を高め磁性粉末に発生する誘導電流を低減することができるので、透磁率の向上と渦電流損失の低減とを両立することができる。
これにより、磁性粉末の透磁率を高めることができ、かつ、磁性粉末の比抵抗を高め磁性粉末に発生する誘導電流を低減することができるので、透磁率の向上と渦電流損失の低減とを両立することができる。
これにより、磁性流体における流体特性の最適化を図ることのできる磁性流体用磁性粉末が得られる。
本発明の磁性流体用磁性粉末では、酸素含有率が質量比で100ppm以上10000ppm以下であることが好ましい。
これにより、磁気特性と耐候性とを高度に両立し得る磁性流体用磁性粉末が得られる。
前記磁性流体用磁性粉末の粒子表面を覆う界面活性剤と、
前記磁性流体用磁性粉末を分散させる液相分散媒と、を有することを特徴とする。
これにより、流体特性の長期安定性に寄与し、かつ、高い磁気特性を有する磁性流体用磁性粉末を含んでいるので、長期安定性と優れた流体特性とを有する磁性流体が得られる。
これにより、流動性に優れるとともに、外部磁界の変化に対して十分な応答性を示す磁性流体が得られる。
本発明の磁性流体では、前記界面活性剤は、オレイン酸塩を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、安定性に優れた磁性流体が得られる。
これにより、耐久性に優れた磁性流体が得られる。
本発明のダンパーは、本発明の磁性流体を貯留するシリンダーと、
該シリンダー内を摺動し、前記シリンダー内の空間を2つに仕切るピストンと、
一端が前記ピストンに接続され、他端が前記シリンダーの外部に位置するピストンロッドと、
前記シリンダー内に貯留された前記磁性流体に及ぶように磁界を形成する磁界形成手段と、を有し、
磁界の作用によって前記磁性流体の流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得ることを特徴とする。
これにより、減衰力を長期にわたって正確に調整することができるダンパーが得られる。
前記磁界形成手段が前記流路近傍に設けられており、前記流路を通過する前記磁性流体に及ぶように磁界を形成して流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得ることが好ましい。
これにより、磁性流体の粘度をより厳密に調整することができ、減衰力を長期にわたって正確に調整することができるダンパーが得られる。
[ダンパー]
まず、本発明のダンパーについて説明する。
図1は、本発明のダンパーの実施形態を示す縦断面図、図2は、図1に示すダンパーの一部を拡大して示す部分拡大図、図3および図4は、図1に示すダンパーの動作を説明するための図である。なお、以下の説明では、図1ないし図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
また、ダンパー1は、ピストン3内に設けられ、シリンダー2内に収納された磁性流体10に対して磁界を付与するコイル4と、コイル4に電圧を印加する電源回路5とを有している。すなわち、コイル4と電源回路5とにより、磁性流体10に磁界を付与する磁界形成手段が構成されている。
図1に示すシリンダー2は2層構造(複筒式)になっており、外側の外筒22と内側の内筒23とで構成されている。
また、内筒23の内側の空間は、ピストン3の上方のロッド側室2aと、ピストン3の下方のピストン側室2bとに分けられている。
ベースバルブ24には、ベースバルブ24を貫通するオリフィス241が設けられており、このオリフィス241を介してピストン側室2bと第1リザーバ室25とが連通している。
また、内筒23の第1リザーバ室25と第2リザーバ室26とを隔てる部分には、この部分を貫通するオリフィス231が設けられており、このオリフィス231を介して、第1リザーバ室25と第2リザーバ室26とが連通している。
ピストンロッド31は、剛性の高い棒状部材で構成されており、シリンダー2の天井部21の中央部を貫通して、シリンダー2の内外に延伸している。
また、ピストン3を貫通するように、2つのオリフィス32、33が設けられている。この各オリフィス32、33により、ロッド側室2aとピストン側室2bとが連通している。
また、コイル4には、前述したように電源回路5が接続されている。そして、コイル4に電圧を印加すると、コイル4の周囲に、図2に磁力線(破線)として示すような磁界が発生する。
また、図示しないが、電源は、コイル4に印加する電圧を調整する変圧回路を有している。この変圧回路によれば、コイル4に印加する電圧を変えることができ、コイル4が発生する磁界の強度を変えることができる。
なお、図1では、ピストン3の内部にコイル4が設けられているが、コイル4の設置箇所は、特に限定されず、例えば、シリンダー2の外筒22や内筒23、ベースバルブ24等に設けられていてもよく、これらの中の複数箇所に併設されていてもよい。
また、図1では、ピストン3に設けられた2つのオリフィス32、33に対して、1つのコイル4を用いて磁界を付与しているが、それぞれ個別のコイルを用いて磁界を付与するようにしてもよい。この場合、各コイルの動作を独立して制御することにより、ダンパー1の減衰力を、より細かく厳密に制御することができる。
まず、ダンパー1の圧縮過程について説明する。
ここでは、図3(a)に示すように、ダンパー1が伸長した状態を初期状態とする。
初期状態にあるダンパー1において、ダンパー1の上端部に接続された上部材8と下端部に接続された下部材9との間の距離を縮めようとする外力が加わると、それに伴って、図3(b)に示すように、ピストン3がシリンダー2内を下方に摺動する。このとき、ピストン側室2b内の磁性流体10の一部が、ピストン3に押されてオリフィス241を通過し、第1リザーバ室25に押し出される。また、それに伴って、第1リザーバ室25に充填されていた磁性流体10は、各オリフィス231、231を通過して、第2リザーバ室26へと押し出される。さらに、ピストン側室2b内の磁性流体10の一部は、オリフィス33を通過して、ロッド側室2aへと移動する。
また、ピストン3の摺動速度が所定の速度以上になると、弁体34が閉状態から開状態となり、オリフィス231にも磁性流体10の流れが形成される。この流れの形成により、ピストン3の摺動速度がこの所定の速度以上になったとき、減衰の程度を変化させることができる。
ここでは、図4(d)に示すように、ダンパー1が圧縮された状態を初期状態とする。
初期状態にあるダンパー1において、上部材8と下部材9との間の距離を広げようとする外力が加わると、それに伴って、図4(e)に示すように、ピストン3がシリンダー2内を上方に摺動する。このとき、ロッド側室2a内の磁性流体10の一部が、ピストン3に押されてオリフィス33を通過し、ピストン側室2bに押し出される。また、ピストン側室2bの体積が増大するのに伴い、第1リザーバ室25内の磁性流体10の一部が、オリフィス241を通過し、ピストン側室2bに流れ込む。さらに、第2リザーバ室26内の磁性流体10の一部は、各オリフィス231、231を通過して、第1リザーバ室25内に流れ込む。
このようにして、上部材8と下部材9との間の伸長力の一部が、ピストン3の摺動の駆動力や、磁性流体10の流れの駆動力へと変換されることにより、ダンパー1に吸収される。その結果、前記伸長力を緩和・減衰させることができる。
以上のような圧縮過程と伸長過程とを連続的に行うことにより、ダンパー1は、上部材8と下部材9との間に発生する伸長力および圧縮力を、それぞれ緩和させることができる。
次に、上述したようなダンパー1に用いることができる磁性流体(本発明の磁性流体)10および磁性流体10に含まれる磁性粉末(本発明の磁性流体用磁性粉末)について説明する。
本発明の磁性流体は、磁性粉末と、その粒子表面を覆う界面活性剤と、この磁性粉末を分散させる液相分散媒と、を有している。
ところが、ダンパーのような可動部品中に磁性流体を用いた場合、ダンパーが伸縮を繰り返すたびに、磁性流体にはピストンやシリンダーによる外力(例えば、せん断力等)が継続的に付与される。ところが、従来の磁性流体では、含まれる磁性粒子が液相分散媒中の水分や外気と接触することによって容易に酸化してしまう現象が多く認められた。この酸化が進行すると、磁性粒子の機械的特性が低下するため、磁性粒子の破壊・欠損を招くこととなる。その結果、磁性流体の流体特性が不本意に変化してしまい、ダンパーの減衰力が不安定になったり、本来の減衰力から逸脱してしまったりすることとなる。
さらに、フェライト粒子等は、飽和磁束密度が低いため、磁性流体中において外部磁界に対する磁化が弱くなり、磁化力を十分に得ることができなかった。
また、磁性流体用に特化したFe−Cr系合金粉末やFe−B系合金粉末も提案されているが、これらも磁性流体として使用されたときの長期安定性と優れた流体特性との両立という観点おいて十分とは言えなかった。
また、界面活性剤については後に詳述するが、粒子表面から界面活性剤が脱落してしまうと、磁性流体中において粒子同士が凝集し易くなり、流体特有の性質が失われることとなる。
また、Mの含有率は、好ましくは1.5質量%以上10.5質量%以下とされ、より好ましくは2.5質量%以上7.5質量%以下とされる。
一方、Siは、Feとともに合金を形成することにより磁性粉末の透磁率を高めることに寄与する。また、Siを前記範囲内で添加することにより、磁性粉末の比抵抗が高くなるため、磁性粉末に発生する誘導電流を低減し、渦電流損失を低減し得る。さらには、Siを前記範囲内で添加することにより、磁性粉末の保磁力も低下するため、磁性粉末は優れた軟磁性を示すものとなる。これにより、透磁率が高くかつ渦電流損失の小さい磁性粉末が得られる。このような磁性粉末を含む磁性流体は、例えば磁心としての機能を備えた磁性流体として好適に用いられる。
Siの含有率は1質量%以上12質量%以下であるのが好ましく、1.5質量%以上10質量%以下であるのがより好ましく、2.5質量%以上8.5質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、上記のSiを添加する効果がより顕著なものとなる。
Alの含有率は1質量%以上6質量%以下であるのが好ましく、1.5質量%以上5.5質量%以下であるのがより好ましく、2.5質量%以上5質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、上記Alを添加する効果がより顕著なものとなる。
なお、MがSiとAlの双方を指す場合、SiとAlの比率(質量比)は1:9以上9:1以下であるのが好ましく、2:8以上8:2以下であるのがより好ましく、3:7以上7:3以下であるのがさらに好ましい。SiとAlの比率を前記範囲内に設定することで、磁性粉末の靭性が著しく低下することが防止され、磁性粉末が破壊、欠損し難くなる。
また、本発明に係る磁性粉末は、さらに不可避的に混入する不可避元素を含んでいてもよい。この不可避元素は磁性粉末の原料あるいは磁性粉末の製造時に意図せず混入するものである。具体的には、B(ホウ素)、C(炭素)、O(酸素)、N(窒素)等が挙げられる。なお、不可避元素を含む場合、その含有率は0.5質量%未満であるのが好ましく、0.3質量%以下であるのがより好ましい。
また、これらの補助剤は、磁性粉末を構成する磁性材料の融点を下げることができる。このため、磁性材料の溶融する際の加熱温度が同じであれば、溶融金属(溶湯)の粘性を下げることができる。その結果、例えば後述するアトマイズ法のような溶融金属を粉末化する方法で磁性粉末を製造する場合には、溶融金属の粘性が下がることによって、異形状が少なく粒径の揃った磁性粉末が得られる点で有用である。また、このような磁性粉末は、破壊、欠損し難くかつ流動性が高くなる等の利点を有するため、磁界に対する応答性に優れ、流体としての特性が長期にわたって安定的に維持される磁性流体の実現に寄与するものとなる。
本発明に係る磁性粉末の平均粒径は、1〜20μm程度であるのが好ましく、1.5〜15μm程度であるのがより好ましい。これにより、磁性流体において、流体特性の最適化を図ることができる。すなわち、磁性粉末の平均粒径が前記下限値を下回った場合、磁性流体の粘度が小さくなり過ぎたり、外部磁界に応じて磁性流体の粘度が変化する際に、その変化量を十分に確保できないおそれがある。一方、磁性粉末の平均粒径が前記上限値を上回った場合、磁性流体の粘度が大きくなり過ぎたり、破壊・欠損を生じ易くなるおそれがある。
また、磁性粉末の粒度分布は、できるだけ狭いのが好ましい。具体的には、磁性粉末の平均粒径が前記範囲内であれば、最大粒径が50μm以下であるのが好ましく、45μm以下であるのがより好ましい。磁性粉末の最大粒径を前記範囲内に制御することにより、磁性粉末の粒度バラツキを抑制し、流動性に優れた磁性流体が得られる。
なお、上記の最大粒径とは、累積質量が99.9%となるときの粒径のことをいう。
また、このような磁性粉末は、前述したように軟磁性を示し、保磁力が小さいものが好ましい。具体的には、磁性粉末の保磁力は、10Oe(796A/m)以下であるのが好ましく、5Oe(398A/m)以下であるのがより好ましい。保磁力が前記範囲内にある磁性粉末は、磁界がないときに凝集が確実に防止されるものとなる。
また、磁性粉末の硬度もできるだけ大きい方がよいが、好ましくは、ビッカース硬度Hvが100以上とされ、より好ましくは、150以上とされる。このような硬度の磁性粉末は、その破壊・欠損が特に確実に防止される。
なお、本発明に係る磁性粉末は、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、アトマイズ法、粉砕法等の方法で製造されたものを用いることができる。
このうち、アトマイズ法としては、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法を用いるのが好ましい。これらのアトマイズ法によれば、冷却媒として比重の大きい媒体(例えば、水等)を用いるため、溶湯をより微細に分断することができる。これにより、平均粒径の小さい微細な磁性粉末を容易に製造することができる。
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、オレイン酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩のような各種陰イオン(アニオン)界面活性剤、アミノ酸塩、第4級アンモニウム塩のような各種陽イオン(カチオン)界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステルのようなエステル型、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのようなエーテル型、脂肪酸ポリエチレングリコールのようなエステル・エーテル型等の各種非イオン(ノニオン)界面活性剤、アルキルベタインのような各種両性界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤は、分子内に、親水性の部分と、疎水性の部分とを有するものである。例えば、磁性粉末を分散させる液相分散媒としてオイルを用いた場合、磁性粉末と液相分散媒との界面に沿って界面活性剤の分子が配列する。このとき、界面活性剤の分子の親水性部分が磁性粉末の粒子側に向かって配向し、疎水性部分は液相分散媒側に向かって配向する。
また、液相分散媒としては、水のような水系分散媒、炭化水素系オイル、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、エーテル系オイル等が挙げられる。
このような磁性流体における磁性粉末の含有率は、50〜95質量%程度であるのが好ましく、60〜90質量%程度であるのがより好ましい。これにより、流動性に優れるとともに、外部磁界の変化に対して十分な応答性を示す磁性流体が得られる。
例えば、本発明の磁性流体は、前述したダンパーに用いられる他、回転軸のシール部材、スピーカー、センサ等にも用いることができる。
また、磁性流体用磁性粉末は、磁性流体に用いられる他、その他の用途、例えば圧粉磁心、磁気遮蔽シート、磁気記録媒体といった軟磁性粉末が用いられたあらゆる磁性素子にも好適に用いられる。
1.ダンパーの製造
(実施例1)
[1]まず、以下の組成の原材料を高周波誘導炉で溶融するとともに、水アトマイズ法により粉末化して、磁性粉末を得た。次いで、目開き32μmの標準ふるいを用いて分級した。
・Cr:0.5質量%
・Si:4.5質量%
・Fe:残部(不可避的に存在する微量元素を含む。)
なお、得られた金属粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、各磁性粒子が比較的球形に近い形をしていることがわかった。なお、100個の粒子におけるアスペクト比の平均値は0.8であった。
また、レーザー回折法により粒径を測定したところ、平均粒径10μm、最大粒径32μmであった。
次いで、得られた磁性粉末に対し、水素雰囲気下で、温度800℃×1時間の焼鈍処理を施した。
なお、磁性流体中の磁性粉末の含有率は、80質量%であった。
[3]次に、得られた磁性流体をダンパーのシリンダー内に注入し、ダンパーを作製した。
原材料の組成を、表1に示す組成に変更した以外は、それぞれ前記実施例1と同様にして磁性粉末を得るとともにダンパーを作製した。
なお、得られた磁性粉末の原材料の組成、平均粒径、酸素含有率および製造方法を、それぞれ表1に示す。
原材料の組成を、表1に示す組成に変更した以外は、それぞれ前記実施例1と同様にして磁性粉末を得るとともにダンパーを作製した。
なお、得られた磁性粉末の原材料の組成、平均粒径、酸素含有率および製造方法を、それぞれ表1に示す。
2.1 磁性粉末の磁気特性の評価
各実施例および各比較例で得られた磁性粉末について、それぞれ、単位質量当たりの飽和磁化の強さMm[emu/g]、単位質量当たりの残留磁化の強さMr[emu/g]および保磁力Hc[Oe]を測定した。測定結果を表1に示す。その結果、各実施例で得られた磁性粉末は、飽和磁化の強さが比較的大きく、残留磁化の強さが比較的小さく、保磁力が比較的小さいことが認められた。なお、磁化の強さの単位emu/gは4π×10−7Wb・m/kgである。また、保磁力の単位Oeは79.5775A/mである。
各実施例および各比較例で得られたダンパーについて、それぞれ、伸縮動作を1万回行った。
なお、伸縮動作をまず1000回行った時点で、シリンダー内から磁性流体を取り出し、磁性流体中の磁性粉末を走査型電子顕微鏡で観察した。
そして、1万回の伸縮動作後、再び、シリンダー内から磁性流体を取り出し、磁性流体中の磁性粉末を走査型電子顕微鏡で観察した。
以上のようにして1000回の伸縮動作後の磁性粉末および1万回の伸縮動作後の磁性粉末について、それぞれの形状を以下の基準にしたがって評価することにより、磁性粉末の耐久性を評価した。
◎:磁性粉末の粒子の形状が評価前からほぼ変化していない
○:一部の磁性粉末の粒子に破壊・欠損が認められる
△:多数の磁性粉末の粒子に破壊・欠損が認められる
×:ほぼ全ての磁性粉末の粒子に破壊・欠損が認められる
次いで、伸縮動作後の磁性粉末に対し、JIS C 60068−2−3に規定の条件に準じた下記の条件で、高温高湿環境下における加速試験を行った。
・温度 :40±2℃
・相対湿度:93+2 −3%
・試験時間:4日
そして、試験後の磁性粉末に錆が発生しているか否かを、光学顕微鏡による観察に基づき、以下の評価基準にしたがって評価した。
<錆の有無の評価基準>
無:磁性粒子に錆の発生がほとんど認められない
有:多数の磁性粒子に錆の発生が認められる
以上、2.1および2.2の評価結果を表1に示す。
また、磁性粒子の破壊・欠損が認められた磁性流体では、破壊・欠損が生じていない粒子が凝集している様子が認められた。これは、耐久性の評価試験に伴って粒子表面の酸化物被膜が失われ、それに伴って界面活性剤が脱落し、分散状態を維持できなくなったためと考えられる。
Claims (12)
- Crと、M(MはSiおよびAlの少なくとも一方)と、を含み、残部がFeおよび不可避元素で構成されており、
Crの含有率が0.5質量%以上13質量%以下であり、かつ、Mの含有率が0.5質量%以上13質量%以下であることを特徴とする磁性流体用磁性粉末。 - Crの含有率をaとし、Mの含有率をbとしたとき、b/aは0.05以上12以下である請求項1に記載の磁性流体用磁性粉末。
- Siの含有率が1質量%以上12質量%以下である請求項1または2に記載の磁性流体用磁性粉末。
- Alの含有率が1質量%以上6質量%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の磁性流体用磁性粉末。
- 平均粒径が1μm以上20μm以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の磁性流体用磁性粉末。
- 酸素含有率が質量比で100ppm以上10000ppm以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の磁性流体用磁性粉末。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の磁性流体用磁性粉末と、
前記磁性流体用磁性粉末の粒子表面を覆う界面活性剤と、
前記磁性流体用磁性粉末を分散させる液相分散媒と、を有することを特徴とする磁性流体。 - 前記磁性流体用磁性粉末の含有率が50〜95質量%である請求項7に記載の磁性流体。
- 前記界面活性剤は、オレイン酸塩を主成分とするものである請求項7または8に記載の磁性流体。
- 前記液相分散媒は、炭化水素系オイル、シリコーン系オイルまたはフッ素系オイルを主成分とするものである請求項7ないし9のいずれかに記載の磁性流体。
- 請求項7ないし10のいずれかに記載の磁性流体を貯留するシリンダーと、
該シリンダー内を摺動し、前記シリンダー内の空間を2つに仕切るピストンと、
一端が前記ピストンに接続され、他端が前記シリンダーの外部に位置するピストンロッドと、
前記シリンダー内に貯留された前記磁性流体に及ぶように磁界を形成する磁界形成手段と、を有し、
磁界の作用によって前記磁性流体の流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得ることを特徴とするダンパー。 - 前記ピストンに形成され、前記2つの空間と互いに連通する流路を有し、
前記磁界形成手段が前記流路近傍に設けられており、前記流路を通過する前記磁性流体に及ぶように磁界を形成して流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得る請求項11に記載のダンパー。
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