JP5098763B2 - 磁性流体およびダンパー - Google Patents
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Description
このような磁性流体は、外部磁界に応じて、その粘度や流動性が変化する性質を有する。このため、この性質を利用し、減衰力を自在に変化させることができるダンパー(緩衝器)が実用化されている。
このような減衰力可変ダンパーに用いる磁性流体としては、例えば、表面を界面活性剤等で被覆した、主に鉄とフェライトの混合物を含む粒子を、ヒマシ油のような植物油の誘導体に分散してなる磁性流体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、フェライトのような飽和磁束密度が比較的低い材料では、外部磁界の変化に対して、磁性流体の流体特性の変化に著しく時間を要することがある。この場合、減衰力特性の変化を高い精度で制御することが困難となる。
本発明の磁性流体は、表面を界面活性剤で覆われた磁性粒子と、
該磁性粒子を分散させる液相分散媒とを有し、
前記磁性粒子が、Feを90〜98.612質量%の割合で含み、Crを0.1〜5質量%の割合で含み、P(リン)およびS(硫黄)のうちの少なくとも1種の補助剤をそれぞれ0.01〜0.5質量%の割合で含むFe基合金で構成され、
前記磁性粒子の平均粒径が0.1〜25μm、最大粒径が50μm以下であり、
前記磁性粒子の短径をS[μm]とし、長径をL[μm]としたときのS/Lで定義されるアスペクト比の平均値が0.4〜1であり、
前記磁性粒子の表面が不働態被膜で覆われており、
前記磁性粒子のビッカース硬度が100以上であることを特徴とする。
これにより、流体特性の長期安定性に優れ、かつ、外部磁界に対する流体特性の変化の応答性に優れた磁性流体が得られる。
また、このような補助剤は、Fe−Cr系金属の硬度を高めることができるので、補助剤を含むFe−Cr系金属で構成された磁性粒子は、耐摩耗性に優れたものとなり、破壊・欠損の発生をさらに確実に防止し得るものとなる。
また、これにより、磁性粒子の粒度バラツキを抑制し、流動性に優れた磁性流体が得られる。
また、これにより、磁性粒子は球形状に近いものとなるので、その形状作用によって、より破壊・欠損し難くなる。このため、耐久性に優れた磁性粒子が得られる。
また、これにより、磁性粒子は、耐酸化性に優れたものとなり、長期にわたって機械的特性の低下を確実に防止することができる。その結果、磁性粒子が破壊・欠損するのを防止することができる。
これにより、外部磁界の変化に対して、流体特性の変化の応答性(即応性および変化量の大きさ)に優れた磁性流体が得られる。
本発明の磁性流体では、前記磁性粒子は、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法により製造されたものであることが好ましい。
これにより、各粒子が球形に近い形状をなし、かつ、異形状の粒子が少なく、粒径の揃った磁性粒子を効率よく製造することができ、このようにして得られた磁性粒子は、形状特性に優れたものとなるため、破壊・欠損を生じ難いものとなる。
これにより、磁性粉末中の磁性粒子が焼鈍され、粉末製造時に生じた残留応力を緩和することができる。これにより、残留応力に伴う磁性粒子の亀裂・割れ等を確実に防止することができる。すなわち、焼鈍処理によって、磁性粒子が劣化に至るまでに許容される応力が拡大されることになるため、磁性粒子の耐久性を高めることができる。
また、残留応力が緩和されることにより、磁性粒子同士の耐久性のバラツキを抑制することもできる。
これにより、流動性に優れるとともに、外部磁界の変化に対して十分な応答性を示す磁性流体が得られる。
本発明の磁性流体では、前記界面活性剤は、オレイン酸塩を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、安定性に優れた磁性流体が得られる。
本発明の磁性流体では、前記液相分散媒は、炭化水素系オイル、シリコーン系オイルまたはフッ素系オイルを主成分とするものであることが好ましい。
これにより、耐久性に優れた磁性流体が得られる。
該シリンダ内を摺動し、前記シリンダ内の空間を2つに仕切るピストンと、
一端が前記ピストンに接続され、他端が前記シリンダの外部に位置するピストンロッドと、
前記シリンダ内に貯留された前記磁性流体に及ぶように磁界を形成する磁界形成手段とを有し、
磁界の作用によって前記磁性流体の流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得ることを特徴とする。
これにより、減衰力を長期にわたって正確に調整することができるダンパーが得られる。
前記磁界形成手段が前記流路近傍に設けられており、前記流路を通過する前記磁性流体に及ぶように磁界を形成して流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得ることが好ましい。
これにより、磁性流体の粘度をより厳密に調整することができ、減衰力を長期にわたって正確に調整することができるダンパーが得られる。
[ダンパー]
まず、本発明の磁性流体について説明する前に、本発明のダンパーについて説明する。
図1は、本発明のダンパーの実施形態を示す縦断面図、図2は、図1に示すダンパーの一部を拡大して示す部分拡大図、図3および図4は、図1に示すダンパーの動作を説明するための図である。なお、以下の説明では、図1ないし図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
また、ダンパー1は、ピストン3内に設けられ、シリンダ2内に収納された磁性流体10に対して磁界を付与するコイル4と、コイル4に電圧を印加する電源回路5とを有している。すなわち、コイル4と電源回路5とにより、磁性流体10に磁界を付与する磁界形成手段を構成している。
図1に示すシリンダ2の側面は、2層構造(複筒式)になっており、外側の外筒22と、内側の内筒23とで構成されている。
また、内筒23の内側の空間は、ピストン3の上方のロッド側室2aと、ピストン3の下方のピストン側室2bとに分けられている。
ベースバルブ24には、ベースバルブ24を貫通するオリフィス241が設けられており、このオリフィス241を介してピストン側室2bと第1リザーバ室25とが連通している。
また、内筒23の第1リザーバ室25と第2リザーバ室26とを隔てる部分には、この部分を貫通するオリフィス231が設けられており、このオリフィス231を介して、第1リザーバ室25と第2リザーバ室26とが連通している。
ピストンロッド31は、剛性の高い棒状部材で構成されており、シリンダ2の天井部21の中央部を貫通して、シリンダ2の内外に延伸している。
また、ピストン3を貫通するように、2つのオリフィス32、33が設けられている。この各オリフィス32、33により、ロッド側室2aとピストン側室2bとが連通している。
また、コイル4には、前述したように電源回路5が接続されている。そして、コイル4に電圧を印加すると、コイル4の周囲に、図2に磁力線(破線)として示すような磁界が発生する。
電源回路5は、電源と、この電源とコイル4とを接続する導線とで構成されている。このようなコイル4および電源回路5により、磁界形成手段が構成されている。
磁心を構成する材料としては、例えば、純鉄、Fe−Si系合金、Fe−Cr系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、アモルファス金属、ソフトフェライトのような各種軟磁性材料等を用いることができる。
なお、図1では、ピストン3の内部にコイル4が設けられているが、コイル4の設置箇所は、特に限定されず、例えば、シリンダ2の外筒22や内筒23、ベースバルブ24等に設けられていてもよく、これらの中の複数箇所に併設されていてもよい。
また、図1では、ピストン3に設けられた2つのオリフィス32、33に対して、1つのコイル4を用いて磁界を付与しているが、それぞれ個別のコイルを用いて磁界を付与するようにしてもよい。この場合、各コイルの動作を独立して制御することにより、ダンパー1の減衰力を、より細かく厳密に制御することができる。
まず、ダンパー1の圧縮過程について説明する。
ここでは、図3(a)に示すように、ダンパー1が伸長した状態を初期状態とする。
ダンパー1の上端部に接続された上部材8と、下端部に接続された下部材9との間の距離が縮まると、それに伴って、図3(b)に示すように、ダンパー1においてもピストン3がシリンダ2内を下方に摺動する。
さらに、ピストン側室2b内の磁性流体10の一部は、オリフィス33を通過して、ロッド側室2aへと移動する。
また、ピストン3の摺動速度が所定の速度以上になると、弁体34が閉状態から開状態となり、オリフィス231にも磁性流体10の流れが形成される。この流れの形成により、ピストン3の摺動速度がこの所定の速度以上になったとき、減衰の程度を変化させることができる。
磁界が付与されると、各オリフィス32、33中の磁性流体10では、例えば、磁力線に沿って磁性流体10中の磁性粒子(金属粒子)が配列する。
このようにして、コイル4および電源回路5を用いて、各オリフィス32、33を流れる磁性流体10の流体特性を変化させることができる。そして、ダンパー1の減衰力を変化させることができる。また、シリンダ2に比べて細径の各オリフィス32、33において、磁性流体10に磁界を付与することにより、磁性流体10の粘度をより厳密に調整することができる。
ここでは、図4(d)に示すように、ダンパー1が圧縮された状態を初期状態とする。
上部材8と下部材9との間の距離が広がると、それに伴って、図4(e)に示すように、ダンパー1においてもピストン3がシリンダ2内を上方に摺動する。
このとき、ロッド側室2a内の磁性流体10の一部が、ピストン3に押されて、オリフィス33を通過し、ピストン側室2bに押し出される。
さらに、第2リザーバ室26内の磁性流体10の一部は、各オリフィス231、231を通過して、第1リザーバ室25内に流れ込む。
このようにして、上部材8と下部材9との間の伸長力の一部が、ピストン3の摺動の駆動力や、磁性流体10の流れの駆動力へと変換されることにより、ダンパー1に吸収される。その結果、前記伸長力を緩和・減衰させることができる。
以上のような圧縮過程と伸長過程とを連続的に行うことにより、ダンパー1は、上部材8と下部材9との間に発生する伸長力および圧縮力を、それぞれ緩和させることができる。
次に、以上のようなダンパー1に用いることができる磁性流体(本発明の磁性流体)10について説明する。
本発明の磁性流体は、表面を界面活性剤で覆われた磁性粒子と、この磁性粒子を分散させる液相分散媒とを有している。このうち、磁性粒子は、Fe−Cr系金属材料で構成されたものである。
前述したように、ダンパー1では、付与される磁界の有無や強度に応じて、磁性流体の流体特性が変化することを利用して、その減衰力が調整可能になっている。
ところが、ダンパーのような可動部品中に磁性流体を用いた場合、ダンパーが伸縮を繰り返すたびに、磁性流体にはピストンやシリンダによる外部応力(例えば、せん断力等)が継続的に付与される。ところが、このような従来の磁性流体では、含まれる磁性粒子が液相分散媒中の水分や外気と接触することによって容易に酸化してしまう。この酸化が進行すると、磁性粒子の機械的特性が低下するため、磁性粒子の破壊・欠損を招くこととなる。その結果、磁性流体の流体特性が不本意に変化してしまい、ダンパーの減衰力が不安定になったり、本来の減衰力から逸脱してしまうこととなる。
さらに、フェライト粒子等は、飽和磁束密度が低いため、磁性流体中において外部磁界に対する磁化が弱くなり、磁化力を十分に得ることができなかった。
Fe−Cr系金属では、Feが酸化するより先にCrが酸化する性質を有する。そして、Crの酸化物は化学的に極めて安定であるため、これにより、Feが酸化され難くなる。その結果、磁性粒子の酸化が防止されることとなる。
また、このような磁性粒子では、その磁気特性を主に形成しているFeの酸化が防止される。その結果、酸化による磁気特性の低下を確実に防止する磁性粒子が得られる。
以上のことから、Fe−Cr系金属で構成された磁性粒子を含む本発明の磁性流体を用いれば、ダンパー1の減衰力を長期にわたって安定的に制御することができる。
磁性粒子を構成するFe−Cr系金属は、Feを主成分とし、Crを含む金属(Fe基合金)材料である。
具体的には、Fe−Cr系金属におけるCrの含有率は、0.1〜5質量%程度であるのが好ましく、0.1〜3質量%程度であるのがより好ましい。Crの含有率を前記範囲内とすることにより、磁性粒子において、Crによる耐酸化性向上の作用が十分に発揮されるとともに、相対的にFeの含有率が低くなり過ぎて、磁性粒子の磁気特性(飽和磁束密度等)が著しく低下するのを防止することができる。
また、磁性粒子を構成するFe−Cr系金属は、その構成元素として、さらに、P(リン)、S(硫黄)およびMn(マンガン)のうちの少なくとも1種の補助剤を含んでいてもよい。このような補助剤は、Fe−Cr系金属の硬度を高めることができる。このため、補助剤を含むFe−Cr系金属で構成された磁性粒子は、耐摩耗性に優れたものとなり、破壊・欠損の発生をさらに確実に防止し得るものとなる。
また、異形状が少ない磁性流体は、流動性の高いものとなる。このため、このような磁性流体は、外部から付与される磁界に対して速やかに反応することができる。そして、流体特性の変化の応答性に優れたものとなる。
このような磁性粒子の平均粒径は、0.1〜25μm程度であるのが好ましく、1〜15μm程度であるのがより好ましい。これにより、磁性流体において、流体特性の最適化を図ることができる。すなわち、磁性粒子の平均粒径が前記下限値を下回った場合、磁性流体の粘度が小さくなり過ぎたり、外部磁界に応じて磁性流体の粘度が変化する際に、その変化量を十分に確保できないおそれがある。一方、磁性粒子の平均粒径が前記上限値を上回った場合、磁性流体の粘度が大きくなり過ぎたり、著しく破壊・欠損を生じ易くなるおそれがある。
なお、上記の最大粒径とは、累積重量が99.9%となる粒径のことを言う。
このような磁性粒子は、前述したように軟磁性を示し、保磁力が小さいものが好ましい。具体的には、磁性粒子の保磁力は、20Oe(1592A/m)以下であるのが好ましく、15Oe(1194A/m)以下であるのがより好ましい。保磁力が前記範囲内にある磁性粒子は、磁界がないときに凝集が確実に防止されるものとなる。
また、磁性粒子の硬度もできるだけ大きい方がよいが、好ましくは、ビッカース硬度Hvが100以上とされ、より好ましくは、150以上とされる。このような硬度の磁性粒子は、その破壊・欠損が特に確実に防止される。
このうち、磁性粒子は、アトマイズ法で製造されたものが好ましい。
アトマイズ法は、溶融物(溶湯)を、冷却媒(液体やガス等)に衝突させることにより粉末化する方法である。溶湯は、噴霧されたり、冷却媒と衝突させることにより、微細な液滴となるとともに、この液滴が冷却媒と接触することにより急速に冷却され固化する。この際、液滴は自然落下しつつ冷却されるため、自らの表面張力によって形状が球形化される。これにより、球形に近い形状をなし、かつ、異形状の粒子が少なくなるので、粒径の揃った磁性粒子(磁性粉末)を効率よく製造することができる。その結果、得られる磁性粒子のアスペクト比をより1に近づけることができる。
このうち、アトマイズ法としては、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法を用いるのが好ましい。これらのアトマイズ法によれば、冷却媒として比重の大きい媒体(例えば、水等)を用いるため、溶湯をより微細に分断することができる。これにより、平均粒径の小さい微細な磁性粒子を容易に製造することができる。
この焼鈍処理における加熱条件は、温度600〜1000℃×0.5〜10時間であるのが好ましく、温度700〜900℃×0.5〜2時間であるのがより好ましい。このような加熱条件で焼鈍処理を施すことにより、磁性粉末中の磁性粒子が焼鈍され、粉末製造時に生じた残留応力を緩和することができる。これにより、残留応力に伴う磁性粒子の亀裂・割れ等を確実に防止することができる。すなわち、焼鈍処理によって、磁性粒子が劣化に至るまでに許容される応力が拡大されることになるため、磁性粒子の耐久性を高めることができる。
このような磁性粒子の表面は、界面活性剤で覆われている。
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、オレイン酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩のような各種陰イオン(アニオン)界面活性剤、アミノ酸塩、第4級アンモニウム塩のような各種陽イオン(カチオン)界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステルのようなエステル型、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのようなエーテル型、脂肪酸ポリエチレングリコールのようなエステル・エーテル型等の各種非イオン(ノニオン)界面活性剤、アルキルベタインのような各種両性界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤は、分子内に、親水性の部分と、疎水性の部分とを有するものである。例えば、磁性粒子を分散させる液相分散媒としてオイルを用いた場合、磁性粒子と液相分散媒との界面に沿って界面活性剤の分子が配列する。このとき、界面活性剤の分子の親水性部分が磁性粒子側に配向し、疎水性部分は液相分散媒側に配向する。
また、液相分散媒としては、水のような水系分散媒、炭化水素系オイル、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、エーテル系オイル等が挙げられる。
このうち、特に、炭化水素系オイル、シリコーン系オイルまたはフッ素系オイルを主成分とするものが好ましい。これらのオイルは、耐熱性および化学的な安定性に優れることから、磁性流体の液相分散媒として特に好適に用いられる。すなわち、耐久性に優れた磁性流体が得られる。
以上、本発明の磁性流体およびダンパーについて、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の磁性流体は、前述したダンパーに用いられる他、回転軸のシール部材、スピーカー、センサ等にも用いることができる。
1.ダンパーの製造
(実施例1)
[1]まず、以下の組成の原材料を高周波誘導炉で溶融するとともに、水アトマイズ法により粉末化して、金属粉末(磁性粒子)を得た。次いで、目開き32μmの標準ふるいを用いて32μmで分級した。
・Cr:0.05質量%
・P :0.009質量%
・S :0.003質量%
・Mn:0.06質量%
・Fe:残部
・その他、不可避的に存在する微量元素(Si、C等)を含む。
また、得られた金属粉末の飽和磁束密度を測定したところ、飽和磁束密度が2.05Tであった。また、金属粉末の平均粒径は6μm、最大粒径は32μm、アスペクト比の平均値は0.5であった。
次いで、得られた金属粉末に対し、水素雰囲気下で、温度800℃×1時間の焼鈍処理を施した。
なお、磁性流体中の金属粉末の含有率は、80質量%であった。
[3]次に、得られた磁性流体をダンパーのシリンダ内に注入し、ダンパーを作製した。
原材料の組成を、表1に示す組成に変更した以外は、それぞれ前記実施例1と同様にして金属粉末を得るとともにダンパーを作製した。
なお、得られた金属粉末の平均粒径、最大粒径、アスペクト比の平均値、および飽和磁束密度を、それぞれ表1に示す。
原材料の組成を、表1に示す組成に変更するとともに、金属粉末の製造方法(粉末化方法)を水アトマイズ法からガスアトマイズ法に変更した以外は、前記実施例1と同様にして金属粉末を得るとともにダンパーを作製した。
(実施例15)
焼鈍処理を省略した以外は、前記実施例4と同様にして金属粉末を得るとともにダンパーを作製した。
原材料の組成を、表1に示す組成に変更した以外は、それぞれ前記実施例1と同様にして金属粉末を得るとともにダンパーを作製した。
なお、得られた金属粉末の平均粒径、最大粒径、アスペクト比の平均値、および飽和磁束密度を、それぞれ表1に示す。
粉砕法によって製造されたカルボニル鉄の粉末を用いるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてダンパーを作製した。
なお、用いた金属粉末の平均粒径、最大粒径、アスペクト比の平均値、および飽和磁束密度を、それぞれ表1に示す。
また、分級は省略した。
各実施例および各比較例で得られたダンパーについて、それぞれ、伸縮動作を1万回行った。
なお、伸縮動作をまず1000回行った時点で、シリンダ内から磁性流体を取り出し、磁性流体中の金属粉末を走査型電子顕微鏡で観察した。
そして、1万回の伸縮動作後、再び、シリンダ内から磁性流体を取り出し、磁性流体中の金属粉末を走査型電子顕微鏡で観察した。
以上のようにして1000回の伸縮動作後の金属粉末および1万回の伸縮動作後の金属粉末について、それぞれの形状を以下の基準にしたがって評価することにより、金属粉末(磁性粒子)の耐久性を評価した。
◎:磁性粒子の形状が評価前からほぼ変化していない
○:一部の磁性粒子に破壊・欠損が認められる
△:多数の磁性粒子に破壊・欠損が認められる
×:ほぼ全ての磁性粒子に破壊・欠損が認められる
次いで、伸縮動作後の金属粉末に対し、JIS C 60068−2−3に規定の条件に準じた下記の条件で、高温高湿環境下における加速試験を行った。
・温度 :40±2℃
・相対湿度:93+2 −3%
・試験時間:4日
そして、試験後の金属粉末に錆が発生しているか否かを、光学顕微鏡による観察に基づき、以下の評価基準にしたがって評価した。
無:磁性粒子に錆の発生がほとんど認められない
有:多数の磁性粒子に錆の発生が認められる
以下、磁性粒子の耐久性の評価結果および錆の有無の評価結果を表1に示す。
また、磁性粒子においてFeの含有率が低下するのにしたがって、飽和磁束密度が低下する傾向が認められたものの、各実施例で得られた磁性粒子は、一部を除いて、いずれも磁性流体に用いられる磁性粒子として十分な飽和磁束密度を有していた。
なお、破壊・欠損の認められる磁性粒子では、その磁気特性が当初の特性から変化してしまうため、磁性流体全体の磁気特性も当初との特性から変化してしまうこととなる。すなわち、そのような磁性流体を用いたダンパーは、本来の緩衝性能から逸脱してしまうおそれがある。
また、各実施例で用いた磁性粒子には、高温高湿環境下における加速試験後も、錆の発生がほとんど認められなかった。一方、各比較例で用いた磁性粒子では、多数の粒子に錆の発生が認められた。
さらに、焼鈍処理により、磁性粒子の耐久性を高め得ることが明らかとなった。
Claims (11)
- 表面を界面活性剤で覆われた磁性粒子と、
該磁性粒子を分散させる液相分散媒とを有し、
前記磁性粒子が、Feを90〜98.612質量%の割合で含み、Crを0.1〜5質量%の割合で含み、P(リン)およびS(硫黄)のうちの少なくとも1種の補助剤をそれぞれ0.01〜0.5質量%の割合で含むFe基合金で構成され、
前記磁性粒子の平均粒径が0.1〜25μm、最大粒径が50μm以下であり、
前記磁性粒子の短径をS[μm]とし、長径をL[μm]としたときのS/Lで定義されるアスペクト比の平均値が0.4〜1であり、
前記磁性粒子の表面が不働態被膜で覆われており、
前記磁性粒子のビッカース硬度が100以上であることを特徴とする磁性流体。 - 前記Fe基合金は、さらに、Mn(マンガン)を0.1〜2質量%の割合で含む請求項1に記載の磁性流体。
- 前記不働態被膜は、酸化クロムで構成されている請求項1または2に記載の磁性流体。
- 前記磁性粒子の飽和磁束密度は、1.7T以上である請求項1ないし3のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記磁性粒子は、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法により製造されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記磁性粒子は、温度600〜1000℃×0.5〜10時間の加熱条件で焼鈍処理を施したものである請求項1ないし5のいずれかに記載の磁性流体。
- 当該磁性流体における前記磁性粒子の含有率は、50〜95質量%である請求項1ないし6のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記界面活性剤は、オレイン酸塩を主成分とするものである請求項1ないし7のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記液相分散媒は、炭化水素系オイル、シリコーン系オイルまたはフッ素系オイルを主成分とするものである請求項1ないし8のいずれかに記載の磁性流体。
- 請求項1ないし9のいずれかに記載の磁性流体を貯留するシリンダと、
該シリンダ内を摺動し、前記シリンダ内の空間を2つに仕切るピストンと、
一端が前記ピストンに接続され、他端が前記シリンダの外部に位置するピストンロッドと、
前記シリンダ内に貯留された前記磁性流体に及ぶように磁界を形成する磁界形成手段とを有し、
磁界の作用によって前記磁性流体の流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得ることを特徴とするダンパー。 - 前記ピストンに形成され、前記2つの空間と互いに連通する流路を有し、
前記磁界形成手段が前記流路近傍に設けられており、前記流路を通過する前記磁性流体に及ぶように磁界を形成して流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得る請求項10に記載のダンパー。
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