JP2013193884A - コンクリート用稠密層形成剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(1)で表される脂肪酸エステル混合物(A)を含有するコンクリート用稠密層形成剤。
R1CO−O−R2 (1)
(式中、R1COは炭素原子数12〜24の脂肪酸残基を表し、R2は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。該R1COは、その全脂肪酸残基中、長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割
合が20〜90質量%、長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が5〜80質量%である、脂肪酸残基を示す。)
【選択図】なし
Description
また、シラン系化合物からなる耐久性向上剤としては、例えば、特許文献3には撥水性を有するアルキルポリシロキサンを内添した成形体が提案されており、更に特許文献4にはアルキルアルコキシシランをコンクリート表面に含浸させて撥水性を付与する方法が提案されている。また、乾燥収縮の低減と水分の浸入を防止する表面含浸剤として、特許文献5にオルガノアルコキシシランとグリコールエーテル系界面活性剤の混合物が提案されている。また、特許文献6には、乾燥収縮低減性を向上させる剤としてテトラアルコキシシランのポリアルキレンオキサイド誘導体が提案されている。
化に加え、コンクリートのひび割れ防止の一手段としての収縮低減の需要も多い。
また、硬化体表面に塗布する塗料型の養生剤における高機能化という点において、従来は塗膜の表面の改質のみが着目され、コンクリートの表層から内部に渡って含浸させ、硬化体そのものを物理的性状を改質する技術については、未だ改善の余地があった。
このように、従来提案されている耐久性向上剤や撥水剤、乾燥収縮低減剤等では、短期的な乾燥抑制や、硬化体表面の撥水性付与など、劣化現象の要因に対して個別の対応にとどまっており、硬化体の短期及び長期にわたって乾燥抑制及び水分侵入防止(吸水防止)の両面を改良するべく工夫されたコンクリート硬化体向け薬剤は提案されていない。
本発明は、養生効果によるコンクリート硬化体の強度を充分に発現し、吸水防止性および収縮低減性を高めることで表面のひび割れに対する抵抗性も備え、さらには炭酸ガスや塩化物イオンの侵入を抑制してこれらによるコンクリート劣化を低減できる、新たなコンクリート硬化体向け薬剤として、コンクリート用稠密層形成剤を提供することにある。
R2CO−O−R3 (1)
(式中、R1COは炭素原子数12〜24の脂肪酸残基を表し、R2は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。該R1COは、その全脂肪酸残基中、長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割
合が20〜90質量%、長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が5〜80質量%である、脂肪酸残基を示す。)
全脂肪酸残基中、長鎖飽和脂肪酸残基の割合が0〜40質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割合が20〜90質量%、長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が5〜80質量%、そして長鎖トリ不飽和脂肪酸残基の割合が0〜15質量%であることが好ましい。
また一般式(1)で表される脂肪酸エステル混合物(A)において、R1COは、その
全脂肪酸残基中、炭素原子数16〜24の長鎖飽和脂肪酸残基の割合が3〜40質量%、炭素原子数16〜24の長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割合が20〜50質量%、炭素原子数16〜24の長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が10〜40質量%、そして炭素原子数16〜24の長鎖トリ不飽和脂肪酸残基の割合が0〜10質量%であることが好ましい。
さらに前記一般式(1)で表される脂肪酸エステル混合物(A)において、R2COは
、その全脂肪酸残基中、炭素原子数16〜24の長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割合が30〜50質量%、そして炭素原子数16〜24の長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が20〜40質量%であることがさらに好ましい。
特に、前記一般式(1)で表される脂肪酸エステル混合物(A)において、R2COは
、その全脂肪酸残基中、炭素原子数18の長鎖飽和脂肪酸残基の割合が10質量%以下、炭素原子数18の長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割合が30〜50質量%、そして炭素原子数18の長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が20〜40質量%であることが好ましい。
キレン化合物を反応させることによって得られるアルコキシシラン誘導体(B)を含有する、コンクリート用稠密層形成剤に関する。
R3O−(AO)n−H (2)
(式中、R3は炭素原子数が1〜18の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2〜4のオ
キシアルキレン基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
前記アルコキシシラン誘導体(B)は、アルコキシシラン、その加水分解物又はその重縮合物をアルコキシポリオキシアルキレン基(その全体中、オキシアルキレン基の付加モル数2乃至6のものが90質量%以上を占める)で変性したアルコキシシラン誘導体(B)であることが好ましい。
また本発明のコンクリート用稠密層形成剤は、コンクリート外装などの広い面積に適用する場合においても、適用箇所で性能の差を生ずることがなく、乾燥防止と防水の均一性に優れたものとすることができる。
本発明のコンクリート用稠密層形成剤(以下、単に稠密層形成剤とも称する)に用いられる(A)脂肪酸エステルは下記一般式(1)で表される脂肪酸エステルである。
R1CO−O−R2 (1)
(式中、R1COは炭素原子数12〜24の脂肪酸残基を表し、R2は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。該R1COは、その全脂肪酸残基中、長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割
合が20〜90質量%、長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が5〜80質量%である、脂肪酸残基を示す。)
上記R1COは、好ましくは、その全脂肪酸残基中、長鎖飽和脂肪酸残基の割合が0〜
40質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割合が20〜90質量%、長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が5〜80質量%、そして長鎖トリ不飽和脂肪酸残基の割合が0〜15質量%
である。
ン酸、ミリスチン酸、ペンタシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸及びリグノセリン酸等由来の脂肪酸残基が挙げられる。
炭素原子数12〜24の長鎖モノ不飽和脂肪酸残基としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等由来の脂肪酸残基が挙げられる。
炭素原子数12〜24の長鎖ジ不飽和脂肪酸残基としては、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、等由来の脂肪酸残基が挙げられる。
炭素原子数12〜24の長鎖トリ不飽和脂肪酸残基としては、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸等由来の脂肪酸残基が挙げられる。
原子数16〜24の長鎖モノ、長鎖ジ、又は長鎖トリ不飽和脂肪酸残基であり、前記長鎖飽和脂肪酸残基:前記長鎖モノ不飽和脂肪酸残基:前記長鎖ジ不飽和脂肪酸残基:前記長鎖トリ不飽和脂肪酸残基の割合は、3〜40質量%:20〜50質量%:10〜40質量%:0〜10質量%であることが好ましい。
より好ましくはR1COは、前記長鎖モノ不飽和脂肪酸残基:前記長鎖ジ不飽和脂肪酸
残基が30〜50質量%:20〜40質量%の割合を有することが好ましく、例えば前記長鎖飽和脂肪酸残基:前記長鎖モノ不飽和脂肪酸残基:前記長鎖ジ不飽和脂肪酸残基:前記長鎖トリ不飽和脂肪酸残基の割合は同5〜30質量%:30〜50質量%:20〜40質量%:0〜10質量%、例えば同5〜20質量%:35〜50質量%:25〜40質量%:0〜10質量%、あるいは同5〜15質量%:40〜50質量%:30〜40質量%:0〜10質量%とすることができる。
そして前記一般式(1)で表される脂肪酸エステル混合物(A)において、R2COは
、その全脂肪酸残基中、炭素原子数18の長鎖飽和脂肪酸残基が10質量%以下、炭素原子数18の長鎖モノ不飽和脂肪酸残基が30〜50質量%、そして炭素原子数18の長鎖ジ不飽和脂肪酸残基が20〜40質量%の割合を有することが最も好ましい。
−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ノニル基又はn−オクチル基である直鎖アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、2−エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基等が挙げられる。
中でもメチル基、n−ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基が好ましく、イソブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基が最も好ましい。
本発明のコンクリート用稠密層形成剤には、前記(A)脂肪酸エステル混合物に加え、(B)アルコキシシラン誘導体を含有し得る。前記(B)アルコキシシラン誘導体は、アルコキシシラン、その加水分解物又はその重縮合物と、下記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン化合物を反応させることによって得られるものである。
R3O−(AO)n−H (2)
(式中、R3は炭素原子数が1〜18の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2〜4のオ
キシアルキレン基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
が1〜18の炭化水素基を表し、該炭化水素基としては炭素原子数1〜30のアルキル基;フェニル基、アルキルフェニル基、アルキルフェニル基で置換されたフェニル基、及びナフチル基等のベンゼン環を有する炭素原子数6〜18の芳香族基;並びにオレイル基、リノレイル基等の炭素原子数2乃至18のアルケニル基が挙げられ、中でも炭素原子数1〜30のアルキル基であることが好ましい。
炭素原子数1〜30のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、1−ヘプチルデシル基、2−エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基が挙げられる。これらのうち、炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましく、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基がより好ましく、n−ブチル基が最も好ましい。
合は、ブロック付加、ランダム付加のいずれであってもよいが、ブロック付加であることが好ましく、特に水素原子に連結する末端がエチレンオキシ基であることがより好ましい。
モノメチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
R4 m−Si−(OR5)4-m (3)
上記式(3)中、
mは0乃至3の数を表し、
R4は、mが1を表す場合、あるいは、mが2又は3を表す場合にはそれぞれ独立して、
炭素原子数1乃至4のアルキル基、ビニル基、3−グリシドキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、フェニル基又は3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基を表し、
R5は、mが3を表す場合には−(AO)n−OR3基を表し、mが0乃至2を表す場合にはそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至4のアルキル基又は−(AO)n−OR3基を表
し、但しR5のうち少なくとも1つは−(AO)n−OR3基を表し、
R3、AO及びnは上記式(2)で定義されたものと同じ意味を表す。
(R6)(R7)(R8)Si−[O−Si(R9)(R10)]p−R11 (4)
上記式(4)中、
R6〜R11は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至
4のアルコキシ基、ビニル基、3−グリシドキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、フェニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、−(AO)n−OR3基を表
し、但し、R6〜R10のうち少なくとも1つは−(AO)n−OR3基を表し、pは自然数を表し、
R3、AO及びnは上記式(2)で定義されたものと同じ意味を表す。
特に、収縮低減効果と防水性の点で、nが2乃至6のものの割合が90質量%以上であることが好ましく、nが2乃至4のものの割合が90質量%以上であることがより好ましく、nが3のものの割合が90質量%以上であることが最も好ましい。
対して酸触媒や複合金属酸化物等の存在下アルキレンオキサイドを付加することで、蒸留等の分別操作を経ずに直接得ることもできる。
本発明のコンクリート用稠密層形成剤において、前記(A)脂肪酸エステル混合物に加えて(B)アルコキシシラン誘導体を使用する場合、(A)脂肪酸エステル混合物と(B)アルコキシシラン誘導体の配合割合は、質量比で5〜95:95〜5の範囲内で使用でき、より好ましくは20〜95:80〜5、50〜95:50〜5、70〜95:30〜5、最も好ましくは70〜90:30〜10にて使用することができる。
名)」等の超速硬セメント、さらに、半水石膏、高炉スラグ等の潜在水硬性物質等が挙げられる。これらセメント類は一種単独で、又はこれらから選ばれる一種又は二種以上を混合して使用することができる。また、これらのセメントに、砂、小石、石灰等を配合したコンクリート(コンクリート製品、生コンクリート、軽量コンクリート)やモルタルに、本発明のコンクリート用稠密層形成剤を用いることができる。
合して用いる場合は、セメント質量に対して0.1〜10質量%が好ましい。但しコンクリートの材料、配合条件により異なるので本発明のコンクリート用稠密層形成剤の添加量はこれに限定されるものではない。
本発明のコンクリート用稠密層形成剤がコンクリート表層の湿り気の調節効果に優れる理由の一つとして、稠密層形成剤に不飽和結合の数が異なる脂肪酸エステルを組み合わせて脂肪酸エステル混合物の形態として用いることにより、硬化体表層に浸透して脂肪酸エステルが配列する際に各々の分子間相互作用を緩和でき、これにより脂肪酸エステルの配列がより緻密なものとなり、上述の稠密な層を形成しているものと推察される。そしてこれによりコンクリート表層の湿り気を適切なものに保つことができ、結果、高い養生効果と吸水防止性に寄与し、さらには炭酸ガスや塩化物イオンの侵入抑制にも貢献しているものと推察される。
さらにアルコキシシラン誘導体は、親水性と疎水性のバランスが最適化された構造を有し、セメント硬化体表面から数cm内部までの表層部分へと浸透するのに適した構造となっている。アルコキシシラン誘導体をさらに添加することにより、該誘導体が前述の脂肪酸エステル同様に硬化体の表層部分に浸透し、ここで該誘導体は加水分解してシリケートとなり、硬化体内部の空隙に存在する水や水酸化カルシウムと反応してゲルを形成し、これが水分保持に寄与するとともに、空隙の閉鎖そしてコンクリート表層部分における稠密な層形成にも寄与するとみられる。そのため、前述の脂肪酸エステル混合物が有する外部
からの水分の浸入防止と高い養生効果の実現と相まって、コンクリート表層における適度な湿り気を有する環境の実現、そしてセメント硬化体の乾燥防止と防水性の維持、さらには炭酸ガスや塩化物イオンの侵入抑制における相乗効果の発現につながると推察される。
以下の実施例で使用したアルコキシシラン誘導体を以下の手順にて調製した。なお文中、アルコキシシランに対するポリオキシアルキレン化合物(以降、ポリアルキレングリコールとも称する)のモル比率とは、アルコキシシラン構造中のアルコキシ基1モルに対するポリオキシアルキレン化合物の仕込みモル比である。
撹拌機、温度計、コンデンサー、留出物回収槽及び窒素導入管を備え付けた反応容器にテトラエトキシシラン401部、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位の平均が3であるもの)1593部(アルコキシシランに対するモル比率:4)及びトリエチルアミン5部を仕込んだ。反応器内を窒素気流下とし、140℃まで2時間かけて昇温後、同温にて7時間撹拌し、生成するエタノールを留出
させながら反応させた。反応の終点はエタノールの回収量により判断し、淡黄色液体(化合物B−1)1569部(収率95%)を得た。
トリエチルアミンの仕込み量、装置および製造手順は製造例1に従い、テトラエトキシシラン317部、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルのかわりにポリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位の平均が3であるもの)1601部(アルコキシシランに対するモル比率:4)を用いて、化合物B−2(1560部、収率95%)を得た。
トリエチルアミンの仕込み量、装置および製造手順は製造例1に従い、テトラエトキシシランのかわりにエトキシシラン重縮合物(平均重合度5)1087部、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位の平均が3であるもの)908部(アルコキシシランに対するモル比率:3)を用いて、化合物B−3(1707部、収率95%)を得た。
コンクリートの仕様は呼び強度30MPaとし、スランプ:8±2.5cm、空気量:4.5±1.5%とした。試験用コンクリートの配合を表2に示す。練り混ぜ方法は、公称容量1m3の水平二軸強制練りミキサを用いて、各バッチのコンクリート製造量を0.
8m3×1バッチとし、まずセメントと細骨材をミキサへ投入し10秒練り、その後練り
混ぜ水、混和剤と粗骨材を投入して120秒間練り混ぜ、その後排出し、以降の試験の供した。
<コンクリートの圧縮強度試験>
前記の手順にて作製したフレッシュコンクリートで、圧縮強度試験用の供試体(φ10cm×20cm)を作製し、圧縮強度試験を行った。供試体は作製の翌日に脱型し、供試体全面(上面、底面、側面)に表3に示す各稠密層形成剤を均一に塗布(150g/m2
)し、温度20℃、湿度60%の環境下にて気中養生を行った。圧縮強度試験はJIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)に準拠し、改質剤塗布後、材齢7日及び材齢28日における圧縮強度を測定した。結果を表3に示す。
前記の手順にて作製したフレッシュコンクリートで、乾燥質量減少率ならびに長さ変化率測定用のコンクリート供試体(縦10cm×横10cm×高さ40cm)を作製し、乾燥質量減少率の測定を行った。供試体は材齢3日で脱枠し、脱枠直後に作製したコンクリート供試体上面に表3に示す各稠密層形成剤を塗布(150g/m2)したのち、供試体
の質量を測定し、乾燥質量減少率の基点とした。またモールドゲージ方法にて供試体の寸法を測定し、これを長さ変化率の基準値とした。以降供試体を温度20℃、湿度60%の条件にて保管し、材齢28日における乾燥質量減少率および長さ変化率を後述の式を用いて算出した。
ここで、乾燥質量減少率の値が小さい供試体ほど、供試体中の水分逸散を抑制できていることを意味する。また長さ変化率の値は、稠密層形成剤を塗布していない供試体(比較例1)の長さ変化率の値より小さいほど、供試体の乾燥収縮を抑制していることを意味する。結果を表3に示す。
乾燥質量減少率(%)={[試験後の供試体の質量−試験前の供試体の質量]/[試験前の供試体の質量]}×100
《長さ変化率》
長さ変化率(10-6)=[試験後の各供試体の長さ(mm)−試験前の供試体の長さ(mm)]/[試験前の供試体の長さ(mm)]
前記手順にして作製したフレッシュコンクリートで試験板(縦1,000mm×横1,000mm×厚さ100mm、図1参照)を作製し、吸水防止性能の測定に適用した。表3に示す各稠密層形成剤を試験板表面に塗布(150g/m2)した後、該試験板を単管
パイプで組み立てた試験板設置枠を用いて屋外放置した(図2参照)。
材齢28日の時点で、試験板1表面の6箇所に太さの異なる2つの円柱が組み合わさってできた漏斗形状のガラス器具2を粘着剤3を用いて設置(接着)した(図1(B)参照)。なおこのガラス器具2の試験板1と接する太い円柱部分の径2aは27mmφ、この太い円柱部分の長さ2cは40mm、細い円柱部分の径2bは12mmφ、細い円柱部分の長さ2dは115mmである。図1(A)にガラス器具の接着箇所(試験点):上部A点〜C点、下部D〜F点を示す。設置したガラス器具2の内部をイオン交換水で満たし、パラフィン製フィルムでガラス器具2の開口部2−1を覆い密封した。試験点A〜Fのそれぞれにつき、48時間経過後のイオン交換水の吸水量を測定し、上部試験点(A点〜C点)と、下部試験点(D点〜E点)のそれぞれの単位面積(1cm2)当たりの吸水量の
平均値(単位吸水量)を求めた。結果を表3に示す。
前記手順にして作製したフレッシュコンクリートでJIS A 1153(コンクリートの促進中性化試験方法)に準拠して試験体(10×10×20cm)を作製し、試験体全面(上面、底面、側面)に表3に示す各緻密層形成剤を均一に塗布(150g/m2)
し、各試験体を温度20℃、湿度60%の条件にて保管した。材齢1週間経過後、温度20℃、湿度60%、CO2濃度5%促進養生を行い、JIS A 1152(コンクリー
トの中性化深さの測定方法)に準拠し、試験体の28日後の中性化深さ(炭酸ガス浸透性)を測定した。
前記手順にして作製したフレッシュコンクリートで試験体(10×10×40cm)を作製し、試験体全面(上面、底面、側面)に表3に示す各緻密層形成剤を均一に塗布(150g/m2)し、各試験体を温度20℃、湿度60%の条件にて保管した。材齢1週間
経過後より、各試験体を40℃の5%NaCl水溶液を3日間噴霧したのち、4日間湿度60%で乾燥させるという塩水噴霧乾湿繰り返しサイクルを1ヶ月間継続し、JIS A
1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に準拠し、28日後の塩分浸透深さを測定した。
が均一に得られているとする結果となった。
また、アルコキシシラン誘導体(B−1〜B−3)と組み合わせることにより(実施例9〜実施例11)、強度、収縮低減性(乾燥質量減少率、長さ変化率)並びに吸水防止性がより優れたものとなるとする結果が得られた。
さらに、本発明のコンクリート用稠密層形成剤を適用した硬化体(実施例1〜実施例11)は、比較例の硬化体と比べ、いずれも炭酸ガスや塩化物イオンの浸透性(拡散性)も抑えられたものとなっているとする結果が得られた。
尚、実施例1〜実施例11は比較例1に比べて、圧縮強度が9〜10%向上しているが、これは、実施例1〜実施例11のセメント硬化体が比較例1のセメント硬化体と比べ、硬化体表層内部が緻密な構造となっていることを示唆するものであり、これにより炭酸ガスや塩化物イオンの浸透性(拡散性)の抑制につながったものとみられる。
以上の通り、本発明の脂肪酸エステル混合物(A)を含有するコンクリート用稠密層形成剤をセメント硬化体等に適用することにより、長期にわたってセメント硬化体の乾燥を防止しつつ防水性を維持し、従来のものよりさらに高い収縮低減効果を発揮することができる。
2・・・ガラス器具
2−1・・・開口部
3・・・粘着剤
Claims (9)
- 下記一般式(1)で表される脂肪酸エステル混合物(A)を含有するコンクリート用稠密層形成剤。
R1CO−O−R2 (1)
(式中、R1COは炭素原子数12〜24の脂肪酸残基を表し、R2は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。該R1COは、その全脂肪酸残基中、長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割
合が20〜90質量%、長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が5〜80質量%である、脂肪酸残基を示す。) - 前記一般式(1)で表される脂肪酸エステル混合物(A)において、R1COは、その全
脂肪酸残基中、長鎖飽和脂肪酸残基の割合が0〜40質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割合が20〜90質量%、長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が5〜80質量%、そして長鎖トリ不飽和脂肪酸残基の割合が0〜15質量%である、請求項1記載のコンクリート用稠密層形成剤。 - 前記一般式(1)で表される脂肪酸エステル混合物(A)において、R1COは、その全
脂肪酸残基中、炭素原子数16〜24の長鎖飽和脂肪酸残基の割合が3〜40質量%、炭素原子数16〜24の長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割合が20〜50質量%、炭素原子数16〜24の長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が10〜40質量%、そして炭素原子数16〜24の長鎖トリ不飽和脂肪酸残基の割合が0〜10質量%の割合である、請求項1記載のコンクリート用稠密層形成剤。 - 前記一般式(1)で表される脂肪酸エステル混合物(A)において、R1COは、その全
脂肪酸残基中、炭素原子数16〜24の長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割合が30〜50質量%、そして炭素原子数16〜24の長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が20〜40質量%である、請求項3記載のコンクリート用稠密層形成剤。 - 前記一般式(1)で表される脂肪酸エステル混合物(A)において、R1COは、その全
脂肪酸残基中、炭素原子数18の長鎖飽和脂肪酸残基の割合が10質量%以下、炭素原子数18の長鎖モノ不飽和脂肪酸残基の割合が30〜50質量%、そして炭素原子数18の長鎖ジ不飽和脂肪酸残基の割合が20〜40質量%である、請求項3記載のコンクリート用稠密層形成剤。 - 前記一般式(1)で表される脂肪酸エステル混合物(A)は、40〜200のヨウ素価を有する、請求項1記載のコンクリート用稠密層形成剤。
- さらにアルコキシシラン、その加水分解物又はその重縮合物と、下記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン化合物を反応させることによって得られるアルコキシシラン誘導体(B)を含有する、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のコンクリート用稠密層形成剤。
R3O−(AO)n−H (2)
(式中、R3は炭素原子数が1〜18の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2〜4のオ
キシアルキレン基を表し、nは1〜20の整数を表す。) - 前記アルコキシシラン誘導体(B)は、アルコキシシラン、その加水分解物又はその重縮合物をアルコキシポリオキシアルキレン基(その全体中、オキシアルキレン基の付加モル数2乃至6のものが90質量%以上を占める)で変性したアルコキシシラン誘導体(B)である、請求項7に記載のコンクリート用稠密層形成剤。
- 請求項1乃至請求項8のうち何れか一項に記載のコンクリート用稠密層形成剤、並びに、高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、減水剤、AE剤、起泡剤、消泡剤、養生剤、撥水剤、凝結促進剤及び凝結遅延剤からなる群から選択される少なくとも一種の他のコンクリート添加剤を含有することを特徴とする、セメント混和剤。
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