JP5924916B2 - アルコキシシラン誘導体及びそれからなるコンクリート改質剤 - Google Patents

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Description

本発明は、アルコキシシラン誘導体に関する。更に詳しくは、セメント硬化体の表面状態を改質し、水分の進入および逸脱を防止することにより乾燥収縮を低減し、セメント硬化体の耐久性を向上、長期にわたり劣化を防止することができるアルコキシシラン誘導体に関する。
硬化コンクリートは水とセメントとの反応よりなる水硬性組成物であり、その硬化過程において硬化体中では水和に伴う水分の化学的損失が起こる一方、表層では暴露環境による乾燥を受け、水分の物理的損失が生じる。一般的には適切な養生等により硬化体中に水分を保持することによって長期にわたり強度が増進するが、硬化体外部への水分逸散はセメント硬化体の強度発現の妨げとなり、さらには初期ひび割れの主要因ともなりうる。また、長期にわたり乾燥を受けたセメント硬化体は、収縮によって部材のひずみが生じ、やがては部材面でのひび割れ発生、漏水等によるコンクリート構造物の劣化を促進し、ひいては構造的欠陥に繋がるおそれがある。前記以外のセメント硬化体の劣化現象としては、例えばアルカリ骨材反応、塩害が挙げられるが、これらの劣化現象は硬化体内部への水分浸入により促進されるものである。
上記劣化現象の防止策として、シラン系化合物からなる耐久性向上剤が提案されている。例えば、特許文献1には撥水性を有するアルキルポリシロキサンを内添した成形体が提案されており、更には特許文献2にはアルキルアルコキシシランをコンクリート表面に含浸させて撥水性を付与する方法が提案されている。また、乾燥収縮の低減と水分の浸入を防止する表面含浸剤として、特許文献3にオルガノアルコキシシランとグリコールエーテル系界面活性剤の混合物が提案されている。また、特許文献4には、長期に渡って防水性を維持し、乾燥収縮の低減する剤としてテトラアルコキシシランのポリアルキレンオキサイド誘導体が提案されている。
特開昭58−2252号公報 特開平2−16186号公報 特開平3−93680号公報 国際公開第04/108628号パンフレット
これまで提案されてきたシラン系化合物を中心としたコンクリートの耐久性向上剤は、上述の文献に示されているように、硬化体の乾燥収縮低減や防水性の付与等を主目的とするものであった。しかしながら、これらの技術は打設後短期間での劣化防止能には優れているものの、防水効果が経時で低下するなど、長期の耐久性確保においては未だ改善の余地があった。また、近年の土木建築構造物の長寿命化に加え、コンクリートのひび割れ防止の一手段としての収縮低減の需要も多い。
本発明者等は上記課題について検討し、研究を進めた結果、特定の構成を有するアルコキシシラン誘導体をセメント硬化体に適用することにより、硬化時のコンクリート収縮は勿論のこと、硬化後の経時的な使用を経て発生する乾燥収縮や防水性の劣化を有効に抑制できることを見出した。
すなわち本発明は、(A)アルコキシシラン、その加水分解物又はその重縮合物と、(B)下記一般式(1)で表される少なくとも一種の化合物であって、且つ該化合物のうちnが1以下のものの割合と、nが10以上のものの割合が、該化合物全体の質量に基づいてそれぞれ5質量%以下である化合物を反応させることによって得られるアルコキシシラン誘導体に関する。
RO−(AO)−H (1)
(式中、Rは炭素数が1〜18のアルキル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nは0〜20の整数を表す。)
本発明のアルコキシシラン誘導体をセメント硬化体等に適用することにより、長期にわたってセメント硬化体の乾燥を防止しつつ防水性を維持し、従来のものより飛躍的に高い収縮低減効果を発揮することができる。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明で用いるアルコキシシランとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類等を用いることができる。これらのうち、本発明においては入手容易性、取扱性等の観点からテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランの使用が特に好ましい。
アルコキシシランの加水分解物/重縮合物は、例えば、アルコキシシランの所定量を水、メタノール、エタノール、酢酸エチル等の水もしくは有機溶媒に溶解し、そのまま加熱あるいは所定量の酸もしくは塩基を添加して部分的に加水分解させることにより調製することができる。通常、重合度は1〜10が好ましい。
前記一般式(1)において、Rは炭素数が1〜18のアルキル基であるが、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、1−ヘプチルデシル基、2−エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、エチル基、プロピル基、n−ブチル基がより好ましく、n−ブチル基が最も好ましい。
また、前記一般式(1)において、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、具体的にはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基が挙げられる。nはアルキレンオキサイドの付加モル数であって、0〜20の整数を表す。nが2以上の場合、オキシアルキレン基は同一のものであっても異なるものであってもよい。(AO)が2種以上のアルキレンオキシ基から構成される場合は、ブロック付加、ランダム付加のいずれであってもよいが、ブロック付加であることが好ましく、特に末端がエチレンオキシ基であれば好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
また本発明では、前記一般式(1)で表される化合物全体のうち、nが1以下のものの割合と、nが10以上のものの割合が、該化合物全体の質量に基づいてそれぞれ5質量%以下、好ましくはそれぞれ4質量%以下、特に好ましくはそれぞれ3質量%以下であるものを用いることを特徴とする。本発明のアルコキシシラン誘導体をコンクリート改質剤として使用した場合、nが1以下のものの割合が高いと、化合物の疎水性が高くなるため水分の保持性能が低下し、結果として乾燥質量減少率が高くなってしまう。一方nが10以上のものの割合が高いと、化合物中のポリオキシアルキレン基が占める割合が高くなるため親水性が高くなり、結果として吸水防止性が低下してしまう。さらに、収縮低減効果と防水性の点でnが2乃至6のものの割合が90質量%以上であることが好ましく、nが2乃至4のものの割合が90質量%以上であることがより好ましく、nが3のものの割合が90質量%以上であることが最も好ましい。
アルキレンオキサイドの付加モル数が2〜6程度のポリオキシアルキレンアルキルエーテルをアルカリ触媒を使用して得ようとした場合、通常付加モル数は分布を有するため、付加モル数が1以下のものが少なからず生成する。従って、その場合何らかの低減処理が必要になるが、その割合を低減させるには従来公知の方法が利用可能である。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの製造後に未精製の反応液を蒸留することにより、それらの含有割合を低減させることができる。また、炭素数1〜18の一価アルコールに対して酸触媒や複合金属酸化物等の存在下アルキレンオキサイドを付加することで、蒸留等の分別操作を経ずに直接得ることもできる。
本発明のアルコキシシラン誘導体は、例えば前記(A)と(B)を反応容器に仕込み、加熱して生成するアルコールを留去しながらエステル交換反応を行うことにより得ることができる。反応温度は通常50〜150℃程度である。また、上記のエステル交換反応に際しては、反応促進のために従来公知の触媒を使用することができる。また、(A)と(B)の反応比率は(A)中のアルコキシ基の1当量に対し、(B)が0.3〜1当量であれば好ましく、0.5〜1当量であればより好ましい。
本発明のアルコキシシラン誘導体の用途は特に限定されるものではないが、例えば水硬性組成物用改質剤、特にコンクリート改質剤としてセメント硬化体等に適用することにより、長期にわたってセメント硬化体の乾燥を防止しつつ防水性を維持し、従来のものより飛躍的に高い収縮低減効果を発揮することができる。
本発明のアルコキシシラン誘導体がコンクリート改質効果に優れる理由は明らかではないが、本発明のアルコキシシラン誘導体中のポリオキシアルキレン鎖が、セメント硬化体内部の水分の保持と、外部からの水分の浸入を防止することの双方に適した鎖長になっていることと関係しているものと推察される。
本発明のアルコキシシラン誘導体をコンクリート改質剤として使用した場合に配合され得るその他の成分としては、汎用的に使用される防水剤、耐水剤、撥水剤、消泡剤、養生剤、収縮低減剤が挙げられる。例えば、シリコーン、ポリシロキサン、脂肪油、脂肪酸および/またはそのアルキルエステル等の疎水性化合物、パラフィンワックスエマルジョンに代表されるエマルジョン類、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、具体的には炭素原子数1ないし18のアルキル基またはアルケニル基を有し、炭素原子数2ないし4のアルキレンオキシドの平均付加モル数が1ないし50モルのポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル類;炭素原子数1ないし8のアルキレン基またはアルケニル基を有し、炭素原子数2ないし4のアルキレンオキシドの平均付加モル数が1ないし50モルのポリオキシアルキレングリコール類;或いは、炭素原子数1ないし8のアルキル基またはアルケニル基を有し、炭素原子数2ないし4のアルキレンオキシドの平均付加モル数が1〜50モルのポリオキシアルキレンジアルキルエーテル類などが挙げられる。これら併用される化合物の配合比は、質量比で本発明のアルコキシシラン誘導体:併用される化合物=50:50〜99:1の割合で、好ましくは70:30〜99:1である。
本発明のアルコキシシラン誘導体は、主としてセメント組成物の硬化後、その表面に塗布または含浸させることによって効果を発現するが、あらかじめセメント類に配合して使用することもできる。使用されるセメントとしては、特に限定はなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、超速硬ポルトランドセメント、膨張セメント、酸性リン酸塩セメント、自硬性セメント、石灰スラグセメント、高炉セメント、高硫酸塩スラグセメント、フライアッシュセメント、キーンスセメント、ポゾランセメント、アルミナセメント、ローマンセメント、白セメント、マグネシアセメント、水滓セメント、カルシウムアルミネート、シリカセメント、シリカフュームセメント、ジェットセメント、石膏等が挙げられる。また、これらのセメントに、砂、小石、石灰等を配合したコンクリート(コンクリート製品、生コンクリート、軽量コンクリート)やモルタルに、本発明のアルコキシシラン誘導体を用いることができる。
本発明のアルコキシシラン誘導体をセメント硬化体に対して塗布する場合、通常その表面に対して100〜300g/m程度を使用する。また、あらかじめセメント類と配合して用いる場合は、セメント質量に対して0.1〜10質量%が好ましい。但しコンクリートの材料、配合条件により異なるので本発明のアルコキシシラン誘導体の添加量はこれに限定されるものではない。
本発明のアルコキシシラン誘導体の使用態様は特に限定されず、従来公知のコンクリート改質剤と同様の使用態様、例えば、セメント類の練り水に添加して使用する態様、セメント類を混練しながらそこに添加する態様、シリカ等の吸油性粉体に吸収させて固体状とし、それをセメント類に添加する態様、或いは、半硬化したセメント硬化体表面に塗布して含浸させる態様等を適用できる。
本発明のアルコキシシラン誘導体は、他のセメント用添加剤と混和し、所謂セメント混和剤の形態として使用することもできる。配合され得る他のセメント用添加剤としては、高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、減水剤、AE剤、起泡剤、消泡剤、養生剤、撥水剤、凝結促進剤、凝結遅延剤等が挙げられる。これらのほか、増粘剤、膨張材、防錆剤、有機繊維、無機繊維、有機ポリマー、顔料など、セメント組成物に通常用いる種々の混和材料を使用できる。
次に、実施例に基づいて本発明をより詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、前記一般式(1)で表される化合物を構成する各成分の割合は、以下に測定条件によりガスクロマトグラフィーによって測定した値に基づくものである。
[ガスクロマトグラフィー測定条件]
機種:島津製作所(株)製 GC−14A
カラム:GLサイエンス社製 OV−17
昇温プログラム:100℃→300℃(10℃/1分)、インジェクション 330℃、ディテクタ 340℃
キャリアガス:窒素ガス、40ml/分
注入量:1μl
(合成例1)
窒素およびエチレンオキサイド導入管を備えたSUS製オートクレーブにn−ブタノール148部を仕込み、次いで水酸化カリウム0.14部を仕込んだ。その後系内の窒素置換を行い、反応温度120℃にてエチレンオキサイド264部を導入した後125℃で45分間の熟成を行い、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル(X−1)402部を得た。この化合物の組成をGCで測定したところ、前記nが1以下のものの割合は9.0%、nが10以上のものの割合は1.1%であった。
(合成例2)
前記ポリエチレングリコールモノブチルエーテルX−1を蒸留することによって低沸点留分を除去し、化合物B−1を得た。この化合物の組成をGCで測定したところ、nが1以下のものの割合は3.0%、nが10以上のものの割合は1.2%であった。
上記した化合物以外に実施例並びに比較例において一般式(1)で表される化合物として使用した化合物を表1に示す。なお、表1中「EO」はオキシエチレン基、「PO」はオキシプロピレン基を表し、nは各化合物中、最も多く含まれる成分のアルキレンオキサイド付加モル数を表す。
Figure 0005924916
(実施例1)
攪拌機、温度計、コンデンサー、留出物回収槽及び窒素導入管を備え付けた反応容器にテトラエトキシシラン(コルコート社製エチルシリケート28)401部、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル(化合物B−1)1593部及びトリエチルアミン5部を仕込んだ。反応器内を窒素気流下とし、140℃まで2時間かけて昇温後、同温にて7時間撹拌し、生成するエタノールを留出させながら反応させた。反応の終点はエタノールの回収量により判断し、淡黄色液体1569部を得た。得られたテトラエトキシシラン誘導体を以下の各試験に供した。試験結果を表3に示す。
(実施例2〜8および比較例2〜4)
実施例1と同様に表1に記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテルとテトラエトキシシランもしくはその縮合物を反応させることにより得られたテトラエトキシシラン誘導体についても評価した。試験結果を表3に示す。
[モルタル試験]
JIS R 5201の規定に従い、下記表2に示すモルタル配合にてモルタルを調製し、モルタル試験に供した。詳細には、モルタルの練り混ぜにはホバートミキサーを使用し、はじめに水とセメントを低速で30秒練り混ぜたのち、砂を投入し低速で30秒練り混ぜた。その後高速で30秒練り混ぜた後に撹拌を停止し、90秒間静置した。静置開始から15秒間で容器の壁に付着したモルタルを掻き落し、静置後、高速で60秒間練り混ぜを行った。
Figure 0005924916
<乾燥質量減少率>
乾燥質量減少率の測定は、前記手順にて作製したモルタルをJIS R 5201に従い、4×4×16cmの型枠に流し込み、24時間後に供試体を型枠から脱型した。その後供試体の側面及び下面をテープ等で封緘し、実施例の数だけ供試体を用意し、それぞれの供試体上面に実施例及び比較例のアルコキシシラン誘導体を0.96g/64cm(150g/mに相当する)塗布したのち、供試体の質量を測定した。塗布直後の質量を基点として、その後20℃、60%RHの環境下にて91日間質量減少率を測定した。
乾燥質量減少率は、測定開始時の各供試体の質量と、試験後の供試体質量、ならびにモルタル配合から算出される供試体中に含まれる単位水量の値を用い、乾燥によって供試体中に含まれる単位水量がどの程度失われたかを下記式により算出した。なお、乾燥質量減少率が小さい供試体ほど、供試体中の水分逸散を抑制できていることを意味する。
乾燥質量減少率(%)=(供試体からの水分逸散量)/(供試体の単位水量)×100
<吸水防止性能試験>
吸水防止性能の測定は、前記同様にして作製したモルタルを用いた。供試体の側面及び下面をテープ等で封緘し、実施例の数分供試体を用意し、それぞれの供試体上面に実施例及び比較例のアルコキシシラン誘導体を0.96g/64cm(150g/mに相当する)塗布し、薬剤の塗布面に、粘着剤を用いて円筒状のガラス管を均等間隔に3本接着させた。設置したガラス管の内部をイオン交換水で満たし、パラフィルムで上面を覆い密封した。その後20℃、60%RHの環境下にて28日間イオン交換水の減少量を測定し、減少量の平均値を吸水面積で除した値を吸水量とした。
吸水量(ml/cm)=(吸水量の平均値)/(吸水量測定面の面積)
吸水防止性能は、1日および28日間における単位面積当たりの吸水量を求めることによって判定した。改質剤を塗布していないブランクの供試体と比較して、単位面積当たりの吸水量が少ない実施例ほど、供試体中への水分浸入を抑制できていることを意味する。また、1日吸水防止能が良好であっても、その後28日間で吸水量が著しく増大するものは、吸水防止能が経時で低下しているものとみなし、長期安定性に欠けることを意味する。
<乾燥収縮低減率:塗布>
乾燥収縮低減率の測定は、乾燥質量減少率の測定と同様にしてアルコキシシラン誘導体を塗布したモルタル供試体を作製した。JIS A 1129−2記載のコンタクトゲージ方法にて供試体の寸法を測定し、これを基準値とした。以降供試体を温度20℃、湿度60%の条件にて保管し、材齢91日に再度供試体の寸法を測定し、長さ変化率を算出した。
収縮低減率の値は、前述のモルタル供試体の長さ変化率と、ブランクとして改質剤を塗布していないモルタル供試体の長さ変化率を用いて、下記式により算出した。なお、収縮低減率の値が大きい供試体ほど、収縮を抑制できていることを意味する。
収縮低減率(%)=[1−(実施例・比較例の長さ変化率)/(ブランク長さ変化率)]
×100
<乾燥収縮低減率:内添(練りこみ)>
収縮低減率の測定は、JIS R 5201に従い、表2に示すモルタル配合にてモルタルを調製し、モルタル試験に供した。なお、実施例及び比較例化合物は、セメント質量に対して一律2質量%の添加量で練り水と共に加えた。ここでモルタルの空気量が7〜9%となるように、適宜AE剤と消泡剤にて調整した。硬化後の供試体を24時間後に脱型し、その後1週間の水中養生(20℃)を行った。水中養生終了後、JIS A 1129−2記載のコンタクトゲージ方法にて供試体の寸法を測定し、これを基準値とした、その後、供試体を温度20℃、湿度60%の条件にて保管し、材齢91日に再度供試体の寸法を測定し、長さ変化率を算出した。
収縮低減率の値は、前述のモルタル供試体の長さ変化率と、ブランクとして改質剤を使用していないモルタル供試体の長さ変化率を用いて、下記式により算出した。なお、収縮低減率の値が大きい供試体ほど、収縮を抑制できていることを意味する。
収縮低減率(%)=[1−(実施例・比較例の長さ変化率)/(ブランク長さ変化率)]
×100
Figure 0005924916
表3に示した結果からも明らかなように、本発明のアルコキシシラン誘導体をセメント硬化体等に適用することにより、長期にわたってセメント硬化体の乾燥を防止しつつ防水性を維持し、従来のものより飛躍的に高い収縮低減効果を発揮することができる。

Claims (4)

  1. (A)アルコキシシラン、その加水分解物又はその重縮合物と、(B)下記一般式(1)で表される少なくとも一種の化合物であって、且つ該化合物のうちnが1以下のものの割合と、nが10以上のものの割合が、該化合物全体の質量に基づいてそれぞれ5質量%以下であり、かつ、nが2乃至6のものの割合が90質量%以上である化合物を反応させることによって得られるアルコキシシラン誘導体。
    RO−(AO)−H (1)
    (式中、Rは炭素数が1〜18のアルキル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nは0〜20の整数を表す。)
  2. 請求項1に記載のアルコキシシラン誘導体からなる水硬性組成物用改質剤
  3. 請求項1に記載のアルコキシシラン誘導体からなるコンクリート改質剤。
  4. 請求項1記載のアルコキシシラン誘導体、並びに、高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、減水剤、AE剤、起泡剤、消泡剤、養生剤、撥水剤、凝結促進剤及び凝結遅延剤からなる群から選択される少なくとも一種の他のコンクリート添加剤を含有することを特徴とする、セメント混和剤。
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