JP2013149483A - リチウム二次電池の負極の製造方法、リチウム二次電池の負極、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池の負極用の導電性金属粉末 - Google Patents

リチウム二次電池の負極の製造方法、リチウム二次電池の負極、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池の負極用の導電性金属粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】改善された充放電サイクル特性を有するリチウム二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】リチウム二次電池1の負極11の製造方法は、負極活物質粒子と、リチウムと合金化せず、表面の少なくとも一部が脂肪酸で被覆された導電性金属粉末と、負極バインダーとを混合して、負極合剤スラリーを得る工程と、負極合剤スラリーを負極集電体11aの表面の上に塗布し、乾燥させて、負極集電体11aの上に負極活物質層11bを形成する工程とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム二次電池の負極の製造方法、リチウム二次電池の負極、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池の負極用の導電性金属粉末に関する。
従来、携帯電話、ノートパソコン、PDAなどの電子デバイスには、リチウム二次電池が広く使用されている。
リチウム二次電池の負極活物質層に、リチウムと合金化しない導電性金属を含ませることにより、充放電サイクル特性を向上する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1には、リチウム二次電池の負極活物質層に、リチウムと合金化しない導電性金属を含ませる方法として、リチウムと合金化しない金属元素の塩の溶液に浸す方法が記載されている。
特開平8−50922号公報
例えば特許文献1に記載の方法では、導電性金属は負極活物質層の表層のみに含まれ、中央部分には導電性金属が含まれない。このような負極を用いたリチウム二次電池では、充放電サイクル特性が劣化する場合がある。
本発明は、改善された充放電サイクル特性を有するリチウム二次電池の製造方法を提供することを主な目的とする。
本発明のリチウム二次電池の負極の製造方法は、負極活物質粒子と、リチウムと合金化せず、表面の少なくとも一部が脂肪酸で被覆された導電性金属粉末と、負極バインダーとを混合して、負極合剤スラリーを得る工程と、負極合剤スラリーを負極集電体の表面の上に塗布し、乾燥させて、負極集電体の上に負極活物質層を形成する工程とを備える。
本発明のリチウム二次電池の負極は、負極集電体と負極活物質層とを備える。負極活物質層は、負極集電体の表面の上に設けられている。負極活物質層は、負極活物質粒子と、導電性金属粉末と、負極バインダーとを含む。導電性金属粉末は、リチウムと合金化しない。導電性金属粉末は扁平状である。負極活物質層の負極集電体とは反対側の表層における導電性金属粉末の濃度は、負極活物質層の負極集電体側の表層における導電性金属粉末の濃度よりも高い。
本発明に係るリチウム二次電池は、本発明に係る負極と、正極と、非水電解質と、セパレータとを備える。
本発明に係るリチウム二次電池の負極用の導電性金属粉末は、表面の少なくとも一部が脂肪酸及び脂肪酸の熱分解物の少なくとも一方で被覆され、リチウムと合金化しない扁平状の導電性金属粉末である。
本発明によれば、改善された充放電サイクル特性を有するリチウム二次電池の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の略図的断面図である。 本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の負極の略図的断面図である。 電池A1の負極活物質層の断面の1000倍の反射電子像である。 電池B1の負極活物質層の断面の1000倍の反射電子像である。
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
また、実施形態などにおいて参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態などにおいて参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率などが異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率などは、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
図1に示されるように、リチウム二次電池1は、電池容器17を備えている。本実施形態では、電池容器17は、円筒型である。但し、本発明において、電池容器は、円筒型に限定されない。電池容器17は、例えば、扁平型、角型であってもよい。
電池容器17内には、非水電解質を含浸した電極体10が収納されている。
非水電解質は、溶質及び非水系溶媒を含む。非水電解質の溶質としては、例えば、LiXF(式中、Xは、P、As、Sb、B、Bi、Al、GaまたはInであり、XがP、AsまたはSbのときyは6であり、XがB、Bi、Al、Ga、またはInのときyは4である)、リチウムペルフルオロアルキルスルホン酸イミドLiN(C2m+1SO)(C2n+1SO)(式中、m及びnはそれぞれ独立して1〜4の整数である)、リチウムペルフルオロアルキルスルホン酸メチドLiC(C2p+1SO)(C2q+1SO)(C2r+1SO)(式中、p、q及びrはそれぞれ独立して1〜4の整数である)、LiCFSO、LiClO4、Li10Cl10、及びLi12Cl12などが挙げられる。溶質としては、これらの中でも、LiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSOなどが好ましい。
非水電解質は、1種類の溶質を含んでいてもよいし、複数種類の溶質を含んでいてもよい。
非水電解質の非水系溶媒としては、例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネートまたは環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒などが挙げられる。環状カーボネート及び鎖状カーボネートはフッ素化されていてもよい。環状カーボネートの具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどが挙げられる。フッ素化環状カーボネートの具体例としては、例えば、フルオロエチレンカーボネートが挙げられる。鎖状カーボネートの具体例としては、例えば、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが挙げられる。なかでも、低粘度かつ低融点でリチウムイオン伝導度の高い非水系溶媒として、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒が好ましく用いられる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒においては、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)は、体積比で、1:9〜5:5の範囲内にあることが好ましい。
非水系溶媒は、環状カーボネートと、1,2−ジメタキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどのエーテル系溶媒との混合溶媒であってもよい。
また、非水電解質の非水系溶媒としてイオン性液体を用いることもできる。イオン性液体のカチオン種、アニオン種は、特に限定されない。低粘度、電気化学的安定性、疎水性の観点から、カチオンとしては、例えばピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、4級アンモニウムカチオンが好ましく用いられる。アニオンとしては、例えばフッ素含有イミド系アニオンを含むイオン性液体が好ましく用いられる。
また、非水電解質は、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質、LiI、LiNなどの無機固体電解質などであってもよい。
電極体10は、負極11と、正極12と、負極11及び正極12の間に配置されているセパレータ13とが巻回されてなる。
セパレータ13は、負極11と正極12との接触による短絡を抑制でき、かつ非水電解質を含浸して、リチウムイオン伝導性が得られるものであれば特に限定されない。セパレータ13は、例えば、樹脂製の多孔膜により構成することができる。樹脂製の多孔膜の具体例としては、例えば、ポリプロピレン製やポリエチレン製の多孔膜、ポリプロピレン製の多孔膜とポリエチレン製の多孔膜との積層体などが挙げられる。
図2に示されるように、負極11は、負極集電体11aと負極活物質層11bとを備える。
負極集電体11aは、例えば、Cuなどの金属や、Cuなどの金属を含む合金からなる箔により構成することができる。負極集電体11aの厚みは、通常10μm〜30μm程度である。
負極活物質層11bは、負極集電体11aの上に設けられている。負極活物質層11bには、負極活物質粒子が含まれる。負極活物質粒子は、リチウムを可逆的に吸蔵・放出できるものであれば特に限定されない。負極活物質粒子は、例えば、炭素材料、リチウムと合金化する材料、酸化スズなどの金属酸化物などにより構成される。炭素材料の具体例としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス、ハードカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。リチウムと合金化する材料としては、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ及びアルミニウムからなる群から選ばれた1種以上の金属、またはケイ素、ゲルマニウム、スズ及びアルミニウムからなる群から選ばれた1種以上の金属を含む合金からなるものが挙げられる。負極活物質粒子は、ケイ素及びケイ素合金の少なくとも一方を含むことが好ましい。ケイ素及びケイ素合金の少なくとも一方を含む負極活物質粒子の具体例としては、多結晶ケイ素粉末などが挙げられる。
負極活物質粒子のメディアン径は、1μm〜20μm程度であることが好ましく、5μm〜15μm程度であることがより好ましく、7μm〜13μm程度であることがさらに好ましい。なお、本発明において、負極活物質粒子のメディアン径は、レーザー光回折法によって粒度分布測定をして得られた累積体積50%径である。
負極活物質層11b中の負極活物質粒子の含有量は、50質量%〜95質量%程度であることが好ましく、55質量%〜90質量%程度であることがより好ましく、60質量%〜85質量%程度であることがさらに好ましい。
負極活物質層11bは、導電性金属粉末をさらに含む。導電性金属粉末は、扁平状である。導電性金属粉末のアスペクト比は、50〜80程度であることが好ましく、60〜75程度であることがより好ましい。本発明において、導電性金属粉末のアスペクト比は、負極活物質層の断面を電子顕微鏡写真で観察して測定した値である。具体的には、電子顕微鏡写真に映し出された導電性金属粉末の像において、任意の20個の導電性金属粉末について、それぞれ最大径と最小径を測定して最大値を最小値で除して求めた値の平均値である。なお、導電性金属粉末の形状が扁平状であるため、導電性金属粉末の全表面積において、最小径が含まれる面が占める表面積は、最大径が含まれる面が占める表面積に比べて常に小さいと近似できる。よって、導電性金属粉末の表面積と比重から最小径を求め、粒度分布測定により得られた平均粒径を最大径として、導電性金属粉末のアスペクト比を算出してもよい。
導電性金属粉末の平均粒子径は、1μm〜20μm程度であることが好ましく、3μm〜15μm程度であることがより好ましい。導電性金属粉末の平均粒子径が、1μm未満である場合、導電性金属粉末の表面積が大きくなる。この場合、負極活物質層11b内の負極バインダーの分布が変化しやすく、負極活物質層11b内部の密着性が低下する場合がある。また、導電性金属粉末の平均粒子径が、20μmを超える場合、導電性金属粉末の表面積が小さくなる。この場合、後述のように、負極活物質層11bの負極集電体11aとは反対側の表層11baに導電性金属粉末を偏在させることが困難になる場合がある。なお、本発明において、導電性金属粉末の平均粒子径は、レーザー光回折法によって粒度分布測定をして得られた累積体積50%径である。
導電性金属粉末は、実質的にリチウムと合金化しない金属により構成されている。リチウムと合金化しない金属としては、銅、ニッケル、鉄、及びこれらの金属を含む合金などが挙げられる。銅及び銅合金は、電子伝導性に優れるため、導電性金属粉末には、銅及び銅合金の少なくとも一方が含まれることが好ましい。負極活物質層11bには、リチウムと合金化しない導電性金属粉末が含まれているので、負極活物質層11bは高い集電性を有する。
なお、導電性金属粉末に、リチウムと合金化する金属が含まれていてもよい。この場合、導電性金属粉末中において、リチウムと合金化する金属が、リチウムと合金化しない金属と合金化して存在することにより、導電性金属粉末全体として、実質的にリチウムと合金化しなければよい。導電性金属粉末が、錫やアルミニウムなどのリチウムと合金化する金属を含み、リチウムと合金化するものであった場合、これらの金属が、リチウム二次電池1の充放電の際に体積変化する。このため、負極活物質層11b内における導電性金属粉末の密着性が低下しやすい。
負極活物質層11bの負極集電体11aとは反対側の表層11baにおける導電性金属粉末の濃度は、負極活物質層11bの負極集電体11a側の表層11bbにおける導電性金属粉末の濃度よりも高い。このため、特に負極活物質層11bの表層11baでの集電性が高くなる。負極活物質層11b内において、導電性金属粉末が表層11baに偏在している場合、導電性金属粉末が負極活物質層11bに均一に分布している場合や表層11bbに偏在している場合よりも、表層11baにおける集電性をより効果的に向上させることができる。負極活物質層11bの表層11baにおける集電性が向上すると、充放電の際に、表層11baでの分極が小さくなり、リチウム二次電池1内での反応が均一化され、リチウム二次電池1の充放電サイクル特性が向上する。
さらに、負極活物質層11bにおいては、表層11ba以外の部分にも、導電性金属粉末が含まれる。これにより、負極活物質層11b全体の集電性が高められており、導電性金属粉末が表層11baにのみ存在する場合に比して、リチウム二次電池1の充放電サイクル特性が改善される。また、導電性金属粉末のアスペクト比が50〜80の場合、電極作製工程において電極が圧延される際、活物質粒子の周りに存在する導電性金属粉末が、その活物質粒子形状に沿って変形する。これにより、活物質粒子間の密着性が機械的に向上する。
また、リチウム二次電池1において、負極活物質層11bがケイ素及びケイ素合金の少なくとも一方を含み、正極活物質層がリチウム含有遷移金属酸化物を含む場合、負極活物質層11bに導電性金属粉末が含まれることによって、リチウム二次電池1の充放電過程におけるケイ素及びケイ素合金の少なくとも一方の劣化が抑制される。よって、リチウム二次電池1の充放電サイクル特性が改善される。この理由は、例えば、次のように考えることができる。
リチウム二次電池の充電過程では、正極からリチウムが放出される。このときの高電位状態において、リチウム含有遷移金属酸化物と非水電解質とが副反応して、リチウム含有遷移金属酸化物の表面の結晶構造が破壊されることがある。このとき、リチウム含有遷移金属酸化物中の遷移金属成分が、非水電解質中に溶出する。溶出した遷移金属成分は、負極に移動し、負極活物質の表面での非水電解質の分解反応を促進する。この分解反応が、ケイ素及びケイ素合金の少なくとも一方を含む負極活物質粒子の表面で生じると、ケイ素及びケイ素合金の少なくとも一方の変質も生じ、負極活物質が劣化する。
これに対して、負極11においては、負極活物質層11bの表層11baに、導電性金属粉末が多く分布するため、正極12から溶出した遷移金属成分は、負極活物質の表面に到達する前に導電性金属粉末によって、捕捉される。このため、負極活物質の劣化を抑制することができる。よって、負極活物質層11bがケイ素及びケイ素合金の少なくとも一方を含み、正極活物質層がリチウム含有遷移金属酸化物を含む場合、リチウム二次電池1の充放電サイクル特性の改善効果が大きい。
負極活物質層11bに含まれる導電性金属粉末の含有量は、3質量%〜45質量%程度であることが好ましく、5質量%〜40質量%程度であることがより好ましく、10質量%〜35質量%程度であることがさらに好ましい。
導電性金属粉末の表面の少なくとも一部は、脂肪酸及び脂肪酸の熱分解物の少なくとも一方(以下、単に「脂肪酸」ということがある)で被覆されていることが好ましい。脂肪酸としては、炭素数が14〜22程度のものが好ましい。脂肪酸の具体例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、(9,12,15)−リノレン酸,(6,9,12)−リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などが挙げられる。また、脂肪酸は、脂肪酸の誘導体であってもよい。脂肪酸の誘導体としては、上記の脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミドなどが挙げられる。好ましい脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸アルミニウムなどが挙げられる。好ましい脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミドなどが挙げられる。
導電性金属粉末の表面の少なくとも一部が、脂肪酸で被覆されている場合、導電性金属粉末の表面の上の脂肪酸の量は、導電性金属粉末及び脂肪酸の合計質量中、1質量%〜10質量%程度であることが好ましく、2質量%〜5質量%程度であることがより好ましい。脂肪酸の量が1質量%未満である場合、導電性金属粉末の表面を脂肪酸で均一に被覆することが難しくなる。また、脂肪酸の量が10質量%を超える場合、導電性金属粉末の表面の全体が脂肪酸で厚く覆われ、導電性金属粉末の集電性が低下する場合がある。
負極活物質層11bには、導電性粉末がさらに含まれていてもよい。導電性粉末としては、例えば、黒鉛粉末などが挙げられる。導電性粉末は、負極活物質層11bに略均一に分散する。これにより、負極活物質層11bの内部における集電性が高められる。この場合、脂肪酸及び脂肪酸の熱分解物で被覆された導電性金属粉末による、負極活物質層11bの表層11baにおける集電性の向上に加えて、導電性粉末による、負極活物質層11bの内部における集電性の向上との相乗効果により、負極11にさらに高い集電性を付与することができる。よって、このような負極活物質層11bを有する負極11は、リチウム二次電池1に高い充放電サイクル特性を付与することができる。
負極活物質層11bは、負極バインダーを含んでいることが好ましい。負極バインダーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SB)、ポリイミド樹脂(PI)などが挙げられる。これらの中でも、負極バインダーは、ポリイミド樹脂を含むことがより好ましい。
ポリイミド樹脂は、そのモノマー成分であるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との脱水縮合により生成される。テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物としては、公知のものを使用することができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸1,2,4,5−二無水物(別名;ピロメリット酸二無水物)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
ジアミン化合物としては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3、3’−ジアミノベンゾフェノン、4、4’−ジアミノビフェニル、4、4’−ジアミノジフェニルスルホン、4、4’−ジアミノフェニルエーテル、4、4’−ジアミノフェニルメタン、2、2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1、4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1、4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。
ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、10000〜50000程度であることが好ましく、15000〜40000程度であることがより好ましく、20000〜35000程度であることがさらに好ましい。負極活物質層11bにおいて、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が、10000未満である場合、密着性が低下する場合がある。また、重量平均分子量が50000を超える場合、電極表面の電子伝導性が低下する場合がある。
ポリイミド樹脂は、高い機械的強度を有する。また、ポリイミド樹脂のイミド結合部は極性を有するため、ポリアミド樹脂は、負極活物質粒子や、導電性金属粉末との密着性が高い。よって、負極活物質層11bがポリイミド樹脂を含む場合、充放電過程において、負極活物質層11bの形状が大きく変化することが抑制され、リチウム二次電池1の充放電サイクル特性が改善される。
負極活物質層11b中バインダーの含有量は、2質量%〜20質量%程度であることが好ましく、4質量%〜15質量%程度であることがより好ましく、5質量%〜10質量%程度であることがさらに好ましい。
負極活物質層11bの厚み(両面合計)は、5μm〜100μm程度であることが好ましく、10μm〜70μm程度であることがより好ましく、20μm〜50μm程度であることがさらに好ましい。負極活物質層11bの厚みが5μm以下である場合、負極集電体11aに対して負極活物質層11bの厚みが小さく、電池のエネルギー密度が低下する場合がある。負極活物質層11bの厚みが100μm以上である場合、充放電時の厚み変化が大きくなり、集電性が低下する場合がある。
負極11は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、負極活物質粒子と、リチウムと合金化せず、表面の少なくとも一部が脂肪酸で被覆された導電性金属粉末と、負極バインダーとを混合して、負極合剤スラリーを得る。具体的には、まず、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒と負極バインダーとを混合して、負極バインダー溶液を得る。次に、この負極バインダー溶液と、負極活物質と、表面の少なくとも一部が脂肪酸で被覆された導電性金属粉末とを混合し、負極合剤スラリーを得る。負極活物質粒子、リチウムと合金化せず、表面の少なくとも一部が脂肪酸で被覆された導電性金属粉末、及び負極バインダーとしては、上述のものが使用できる。
次に、負極合剤スラリーを負極集電体11aの表面の上に塗布し、乾燥させて、負極集電体11aの上に負極活物質層11bを形成する。
負極合剤スラリーを得る工程において、導電性金属粉末として、表面の少なくとも一部が脂肪酸で被覆されたものを用いることにより、導電性金属粉末の表面に被覆された脂肪酸によって、負極合剤スラリーの表層に導電性金属粉末が浮かぶ、いわゆるリーフィング効果が生じる。このような負極合剤スラリーを負極集電体11aの表面の上に塗布すると、乾燥して得られる負極活物質層11bにおいても、その表層11baに導電性金属粉末が偏在する。リーフィング効果を大きくする観点から、導電性金属粉末は、扁平状であることが好ましい。
また、表面の少なくとも一部が脂肪酸で被覆された導電性金属粉末に加えて、上述の黒鉛粉末などの導電性粉末を使用してもよい。この場合、表面の少なくとも一部が脂肪酸で被覆された導電性金属粉末は、負極合剤スラリーの表層に偏在し、導電性粉末は、負極合剤スラリーに略均一に存在する。このため、負極活物質層11bの表層11baに導電性金属粉末を偏在させ、かつ、負極活物質層11bの内部においては、導電性粉末を略均一に分散させることができる。このような場合、上述のように、負極活物質層11bの表層11baにおける集電性の向上と、導電性粉末が存在することによる、負極活物質層11bの内部における集電性の向上との相乗効果により、負極11にさらに高い集電性を付与することができる。よって、このような負極11は、リチウム二次電池1に高い充放電サイクル特性を付与することができる。
導電性金属粉末の平均粒子径が、1μm〜20μm程度である場合、負極活物質層11bの表層11baに、導電性金属粉末を適度に偏在させることができる。導電性金属粉末の平均粒子径が20μmを超える場合、導電性金属粉末のリーフィング効果が小さくなり、負極活物質層11bの表層11baに、導電性金属粉末を適度に偏在させることが難しくなる場合がある。
導電性金属粉末のアスペクト比が、50〜80程度であることにより、リーフィング効果が適度に生じ、負極活物質層11bの表層11baに導電性金属粉末を適度に偏在させることができる。導電性金属粉末のアスペクト比が50未満である場合、導電性金属粉末のリーフィング効果が低くなりすぎるため、負極活物質層11bの表層11baに導電性金属粉末を適度に偏在させることが難しくなる場合がある。アスペクト比が80を超える場合、リーフィング効果が大きくなりすぎるため、負極活物質層11b内の導電性金属粉末が表層11baに偏在しすぎる場合がある。この場合、負極活物質層11bの内部における集電性が低下する場合がある。
なお、導電性金属粉末の表面の上に脂肪酸を被覆する方法としては、導電性金属粉末に脂肪酸を加える方法などが挙げられる。
負極合剤スラリーを負極集電体11aの表面の上に塗布し、乾燥させた後に、熱処理をさらに行ってもよい。熱処理を行うことにより、負極活物質層11b内の負極活物質粒子や導電性金属粉末と負極バインダーとの密着性が向上するため好ましい。熱処理は、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。
熱処理の温度が、負極バインダーの融点またはガラス転移温度を超える場合、負極バインダーが可塑性を示すため、負極バインダーが融着しやすくなり、高い密着性を得ることが可能となる。
熱処理の温度は、負極活物質層11bに含まれる負極バインダーの5%重量減少開始温度を下回る温度であることが好ましい。熱処理の温度が、負極バインダーの5%重量減少開始温度を超える場合、負極バインダーが熱分解して強度が低下し、密着性が低下する場合がある。
導電性金属粉末が、銅及び銅合金の少なくとも一方を含む場合、熱処理の温度は、330℃〜350℃程度とすることが特に好ましい。熱処理の温度がこの範囲である場合、導電性金属粉末同士の間にも、焼結が適度に生じる。このため、負極活物質層11bの表層11baにおいて、導電性金属粉末による集電性の向上効果が高められる。また、導電性金属粉末のアスペクト比が50〜80の場合、電極作製工程において電極が圧延される際、活物質粒子の周りに存在する導電性金属粉末が、その活物質粒子形状に沿って変形する。その結果、活物質層の充填性が増し活物質粒子間の接触面積が増えるため、集電性の向上効果がさらに高められる。なお、熱処理の温度が、300℃未満である場合には、この効果が得られにくくなる場合がある。また、熱処理温度が、350℃を超える場合、導電性金属粉末の焼結が進み過ぎ、導電性金属粉末の形状が維持されなくなる場合がある。
なお、熱処理の温度によっては、導電性金属粉末の表面に存在する脂肪酸が熱分解する場合がある。この場合、導電性金属粉末を被覆する脂肪酸の量が減少するため、導電性金属粉末の導電性が向上する。また、導電性金属粉末を被覆する脂肪酸量が減少すると、導電性金属粉末と負極バインダーとが直接接触する部分が増えるため、導電性金属粉末と負極バインダーとの密着性が向上する。このため、負極11内の集電性が向上する。
正極12は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一方の表面の上に配された正極活物質層とを有する。正極集電体は、例えば、Alなどの金属、Alなどの金属を含む合金により構成することができる。
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質層は、正極活物質に加えて、結着剤、導電剤などの適宜の材料を含んでいてもよい。好ましく用いられる結着剤の具体例としては、例えばポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。好ましく用いられる導電剤の具体例としては、例えば、黒鉛、アセチレンブラックなどの炭素材料などが挙げられる。
正極活物質の種類は、特に限定されない。正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物が好ましく用いられる。リチウム含有遷移金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、コバルト−ニッケル−マンガンのリチウム複合酸化物、アルミニウム−ニッケル−マンガンのリチウム複合酸化物、アルミニウム−ニッケル−コバルトの複合酸化物などのコバルト及びマンガンの少なくとも1種を含むリチウム複合酸化物などが挙げられる。正極活物質は、1種類のみから構成されていてもよいし、2種類以上により構成されていてもよい。
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
(実施例1)
〔負極の作製〕
(1)負極活物質の作製
まず、内温800℃の流動層内に多結晶珪素微粒子を導入し、モノシラン(SiH)を送入することで粒状の多結晶ケイ素を作製した。次に、この粒状の多結晶ケイ素をジェットミルを用いて粉砕した後、分級機にて分級し、メディアン径が10μmの多結晶ケイ素粉末(負極活物質)を作製した。多結晶ケイ素粉末のメディアン径は、レーザー光回折法によって粒度分布測定をして得られた累積体積50%径である。得られた多結晶ケイ素粉末の結晶子サイズは、粉末X線回折のケイ素の(111)ピークの半値幅を用いたscherrerの式による算出で、44nmであった。
(2)負極バインダー溶液の作製
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を2当量のエタノールでエステル化したものとm−フェニレンジアミンとを、モル比で1:1となるように溶解させ、負極バインダー溶液を得た。
(3)負極合剤スラリーの作製
上記で得られた負極活物質と、導電性金属粉末としての平均粒径3.5μm、BET比表面積4m/g、アスペクト比63の扁平状の真鍮粉末(組成:Cuが90原子%、Znが10原子%)と、上記で得られた負極バインダー溶液とを、負極活物質粉末と導電性金属粉末と負極活物質層バインダー(負極バインダー溶液を乾燥させてNMPを除去したのち、重合反応及びイミド化反応を行って得られるポリイミド樹脂)の質量比が、80.6:13.3:6.1となるように混合し、負極合剤スラリーとした。なお、真鍮粉末の表面には、ステアリン酸が、ステアリン酸と真鍮粉末との合計質量中、4質量%被覆されている。
(4)負極活物質層の作製
上記のようにして得られた負極合剤スラリーを、厚さ12μm、長さ1000mm、幅58mmの銅合金箔(組成:Cuが99.7質量%、Crが0.2質量%、Zrが0.1質量%)の両面を、表面粗さRa(JIS B 0601−1994)が0.25μm、平均山間隔S(JIS B 0601−1994)が0.85μmとなるように電解銅粗化した負極集電体を用意した。次に、上記で得られた負極合剤スラリーを、この負極集電体の両面に、表裏同じ塗布パターンで、端から未塗布部の長さ80mm・幅58mm、塗布部の長さ900mm・幅58mmのパターンとなるようにして、25℃の空気中にて塗布した。次に、120℃の空気中で乾燥後、25℃の空気中で圧延した。更にこれを、アルゴン雰囲気下で300℃、10時間熱処理し、負極集電体の表面に負極活物質層を形成した。負極集電体上の負極活物質層量は8.0mg/cm(両面合計)、厚みは44μm(両面合計)であった。以上のようにして負極を作製した。得られた負極の端部にある未塗布部分に、負極集電タブとしてのニッケル板を接続した。
上記の熱処理によって、ポリイミド樹脂のモノマー成分であるベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を2当量のエタノールでエステル化したものとm−フェニレンジアミンとから、ポリイミド樹脂が生成したことを確認するために以下の実験を行った。
負極バインダー溶液を、120℃の空気中で乾燥させて溶媒を除去した後、アルゴン雰囲気下、330℃で10時間熱処理したものの赤外線(IR)吸収スペクトルを測定した。その結果、1720cm−1付近にイミド結合由来のピークが検出された。これにより、熱処理によって脱水縮合反応とイミド化反応とが進行してポリイミド樹脂が生成したことを確認した。
また、負極バインダー溶液を乾燥後、アルゴン雰囲気下、300℃で10時間熱処理して得られたものガラス転移温度(Tg)を示差走査熱量測定法(DSC)で測定したところ、290℃であった。
〔正極の作製〕
(1)リチウム含有遷移金属酸化物の作製
LiCOとCoCOとを、LiとCoとのモル比が1:1になるようにして乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて800℃で24時間熱処理後に粉砕して、平均粒子径10μmのLiCoOで表されるリチウム含有遷移金属酸化物の粉末を得た。得られたリチウム含有遷移金属酸化物の粉末のBET比表面積は0.37m/gであった。このリチウム含有遷移金属酸化物を正極活物質とした。
(2)正極の作製
NMPに、上記のようにして得られた正極活物質と、正極導電剤として炭素材料粉末と、正極バインダーとしてポリフッ化ビニリデンとを、正極活物質と正極導電剤と正極バインダーとの質量比(正極活物質:正極導電剤:正極バインダー)が、95:2.5:2.5となるように加えた後、混練して、正極合剤スラリーとした。
この正極合剤スラリーを、厚み15μm、長さ870mm、幅56.5mmのアルミニウム箔(アルミニウムの1085材)からなる正極集電体の両面に、表裏同じ塗布パターンとなるように、端から未塗布部の長さ40mm・幅56.5mm、塗布部の長さ830mm・幅56.5mmのパターンで25℃の空気中にて塗布し、120℃の空気中で乾燥後、25℃の空気中で圧延した。正極集電体上の正極活物質層の量、及び正極の厚みは、それぞれ、両面に正極活物質層が形成されている部分で、55mg/cm(両面合計)、162μm(両面合計)であった。以上のようにして正極を作製した。なお、正極の端部にある未塗布部分には、正極集電タブとしてアルミニウム板を接続した。
〔非水電解液の作製〕
アルゴン雰囲気下で、フルオロエチレンカーボネート(FEC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比2:8で混合した溶媒に対し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1モル/リットル溶解させた。次に、得られた溶液に対して0.4質量%の二酸化炭素ガスを溶存させて、非水電解液とした。
〔電極体の作製〕
電極体の作製には、上記で得られた正極を1枚、上記で得られた負極を1枚、厚さ14μm、長さ1060mm、幅60.5mm、突き刺し強度340g、空孔率49%のポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータを2枚用いた。正極と負極をセパレータで介して対向させ、正極タブが最内周部、負極タブ共に最外周部となるようにして、円柱型の巻き芯で、渦巻き状に巻回した。次に、巻き芯を引き抜いて、図1に示されるような、直径17.1mm、高さ60.5mmの円筒型(渦巻状)の電極体を作製した。
〔電池の作製〕
上記で得られた円筒型の電極体及び非水電解液を、25℃、1気圧のCO雰囲気下でSUS製の円筒型の外装体内に挿入して、図1に示されるような円筒型電池を作製した。円筒型電池の直径は18mm、高さは65mmであった。この円筒型電池は、上部に開口部を有する円筒型の金属外装缶と、正極と負極とをセパレータを介して対向させ渦巻き状に巻回させた電極体と、電極体内に含浸された非水電解液と、上記の金属外装缶の開口部を封口する封口蓋などにより構成されている。円筒型電池においては、封口蓋が正極端子、金属外装缶が負極端子となっている。電極体の上面側に取り付けられている正極集電タブが封口蓋と、下面側に取り付けられている2個の負極集電タブが金属外装缶と接続されている。電極体の上面及び下面は、電極体と金属外装缶とを絶縁するための上部絶縁板及び下部絶縁板で覆われている。封口蓋は、金属外装缶の開口部に絶縁パッキングを介してかしめられて固定されている。このように、円筒型電池は、二次電池として充電及び放電が可能な構造となっている。以上のようにして得られた円筒型電池を電池A1とする。
(比較例1)
実施例1の電池A1の作製において、負極合剤スラリーを作製する前に、真鍮粉末の表面に被覆されているステアリン酸を、シクロヘキサンで洗い流したこと以外は、実施例1と同様にして、電池B1を作製した。
(比較例2)
実施例1の電池A1の作製において、真鍮粉末を混合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、電池B2を作製した。
(実施例2)
実施例1の電池A1の作製において、平均粒径5μm、BET比表面積3.3m/g、アスペクト比74の真鍮粉末の表面に、ステアリン酸が、ステアリン酸と真鍮粉末との合計質量中、3質量%被覆されているものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池A2を作製した。
(実施例3)
実施例1の電池A1の作製において、平均粒径15μm、BET比表面積0.6m/g、アスペクト比43の銅粉末の表面に、ステアリン酸が、ステアリン酸と真鍮粉末との合計質量中、1質量%被覆されているものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池A3を作製した。
(実施例4)
実施例1の電池A1の負極の作製において、熱処理温度を350℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、電池A4を作製した。
(実施例5)
実施例1の電池A1の負極の作製において、熱処理温度を400℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、電池A5を作製した。
(比較例3)
比較例2の電池B2の負極の作製において、熱処理温度を350℃としたこと以外は、比較例2と同様にして、電池B3を作製した。
(比較例4)
比較例2の電池B2の負極の作製において、熱処理温度を400℃としたこと以外は、比較例2と同様にして、電池B4を作製した。
(実施例6)
実施例1の電池A1の負極の作製において、負極合剤スラリーに、さらに平均粒径3μm、BET比表面積12.5m/gの黒鉛粉末を添加し、負極活物質粉末と真鍮粉末と黒鉛粉末と負極バインダー(負極バインダー前駆体溶液a1を乾燥させてNMPを除去したのち、重合反応及びイミド化反応を行って得られるポリイミド樹脂)の質量比が79.3:1.6:13.1:6.0となるように混合して負極合剤スラリーを作製したこと、熱処理後の負極集電体上の負極活物質層量が8.15m/g(両面合計)、厚みは45μm(両面合計)となるように塗布したこと以外は、実施例1と同様にして電池A6を作製した。
(充放電サイクル特性の評価)
上記の電池A1〜A6及び電池B1〜B4について、それぞれ、下記の条件にて、初期充放電効率及びサイクル数を測定し、充放電サイクル特性を評価した。
[充放電サイクル条件]
1サイクル目の充電条件:170mAの電流で4時間定電流充電を行った後、680mAの電流で電池電圧が4.25Vとなるまで定電流充電を行い、さらに、4.25Vの電圧で電流値が170mAとなるまで定電圧充電を行った。
1サイクル目の放電条件:680mAの電流で電池電圧が3.1Vとなるまで定電流放電を行った。
2サイクル目以降の充電条件:1700mAの電流で電池電圧が4.25Vとなるまで定電流充電を行い、さらに4.25Vの電圧で電流値が60mAとなるまで定電圧充電を行った。
2サイクル目以降の放電条件:1700mAの電流で電池電圧が3.1Vとなるまで定電流放電を行った。
以下の計算方法で、初期充放電効率及びサイクル数を求めた。
初期充放電効率:1サイクル目の放電容量/1サイクル目の充電容量×100
サイクル数:2サイクル目の放電容量に対する容量維持率が80%になったときのサイクル数
電池A1〜A6及び比較電池B1〜B4の初期充放電効率及びサイクル数を表1に示す。
〔負極活物質層の厚み方向での導電性金属粉末の分布確認〕
実施例1の電池A1及び比較例1の電池B1について、負極活物質層の断面の走査電子顕微鏡(SEM)による観察を下記の条件で行った。
断面作製装置:JEOL社製のクロスセクションポリッシャー(SM−09010)
SEM観察装置:JEOL社製の走査電子顕微鏡(JSM−6500F)
電池A1及び電池B1それぞれの負極活物質層の断面の1000倍の反射電子像をそれぞれ図3及び図4に示す。
実施例と比較例の比較より、負極作製の際に導電性金属粉末の表面に脂肪酸を被覆していない電池B1及び導電性金属粉末が負極活物質層に存在しない電池B2では、電池A1に比べ、充放電特性が低いことが分かる。
また、図3から明らかなように、電池A1の負極では、負極活物質層の負極集電体とは反対側の表層における導電性金属粉末の割合が、負極活物質層の負極集電体側の表層における割合に比べて高い。これに対し、図4では、負極活物質層の負極集電体とは反対側の表層における導電性金属粉末の割合が、負極活物質層の負極集電体側の表層における割合に比べて高くない。このことからも、負極の作製の際に、導電性金属粉末の表面に脂肪酸を被覆しておくことにより、負極活物質層の表面での導電性金属粉末の割合を中央部よりも高くできることが分かる。なお、図3及び4において、反射が大きく、白色に映っている部分が導電性金属粉末である。
また、電池A1〜A3の比較より、導電性金属粉末のアスペクト比が50〜80程度のものが、特に優れた充放電特性を示すことが分かる。
また、電池A1、A4、A5の比較から、負極活物質層内に導電性金属粉末が含まれている電池の負極では、熱処理温度を300〜350℃程度とした場合に、特に優れた充放電サイクル特性を示すことが分かる。一方、電池B2〜B4の比較から、負極活物質層内に導電性金属粉末が含まれていない電池の負極では、熱処理温度を300〜350℃程度としても、充放電サイクル特性は優れないことが分かる。
脂肪酸を被覆した導電性金属粉末が負極活物質層の表層に配され、かつ、導電性粉末である黒鉛粉末が負極活物質層の内部に含まれている電池A6は、更に優れた充放電サイクル特性を示すことが分かる。
1…リチウム二次電池
10…電極体
11…負極
11a…負極集電体
11b…負極活物質層
11ba,11bb…負極活物質層の表層
12…正極
13…セパレータ
17…電池容器

Claims (16)

  1. 負極活物質粒子と、リチウムと合金化せず、表面の少なくとも一部が脂肪酸で被覆された導電性金属粉末と、負極バインダーとを混合して、負極合剤スラリーを得る工程と、
    前記負極合剤スラリーを負極集電体の表面の上に塗布し、乾燥させて、前記負極集電体の上に負極活物質層を形成する工程と、
    を備える、リチウム二次電池の負極の製造方法。
  2. 前記導電性金属粉末として、アスペクト比が50〜80の導電性金属粉末を用いる、請求項1に記載のリチウム二次電池の負極の製造方法。
  3. 前記導電性金属粉末として、銅または銅合金を含む導電性金属粉末を用いる、請求項1または2に記載のリチウム二次電池の負極の製造方法。
  4. 前記負極合剤スラリーを前記負極集電体の表面の上に塗布し、乾燥させた後に、熱処理をさらに行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の負極の製造方法。
  5. 前記熱処理の温度を300℃〜350℃とする、請求項4に記載のリチウム二次電池の負極の製造方法。
  6. 前記負極バインダーとして、ポリイミド樹脂を含むバインダーを用いる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の負極の製造方法。
  7. 前記負極活物質粒子として、ケイ素及びケイ素合金の少なくとも一方を含む粒子を用いる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の負極の製造方法。
  8. 負極集電体と、
    前記負極集電体の表面の上に設けられた負極活物質層と、
    を備え、
    前記負極活物質層は、負極活物質粒子と、リチウムと合金化しない扁平状の導電性金属粉末と、負極バインダーとを含み、
    前記負極活物質層の前記負極集電体とは反対側の表層における前記導電性金属粉末の濃度が、前記負極活物質層の前記負極集電体側の表層における前記導電性金属粉末の濃度よりも高い、リチウム二次電池の負極。
  9. 前記導電性金属粉末のアスペクト比が50〜80である、請求項8に記載のリチウム二次電池の負極。
  10. 前記導電性金属粉末の表面の少なくとも一部が、脂肪酸及び脂肪酸の熱分解物の少なくとも一方で被覆されている、請求項8または9に記載のリチウム二次電池の負極。
  11. 前記導電性金属粉末は、銅及び銅合金の少なくとも一方を含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の負極。
  12. 前記負極バインダーは、ポリイミド樹脂を含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の負極。
  13. 前記負極活物質粒子は、ケイ素及びケイ素合金の少なくとも一方を含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の負極。
  14. 請求項8〜13のいずれか一項に記載の負極と、正極と、非水電解質と、セパレータとを備える、リチウム二次電池。
  15. 前記正極は、リチウム含有遷移金属酸化物を含む、請求項14に記載のリチウム二次電池。
  16. 表面の少なくとも一部が脂肪酸及び脂肪酸の熱分解物の少なくとも一方で被覆され、リチウムと合金化しない扁平状の導電性金属粉末である、リチウム二次電池の負極用の導電性金属粉末。
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