JP2013149457A - 内部電極用導電ペースト - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性粉末、樹脂、有機溶剤、TiBaO3を主とするセラミックス粉末の共材、および凝集抑制剤からなる。前記有機溶剤が、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルプロピオナート、イソボルニルイソブチレートのうち、少なくとも一種以上を含み、かつペースト中の溶剤成分重量比において、50重量%以上であり、前記凝集抑制剤の含有量が0.1重量%以上5重量%以下であり、下記組成式(1)で示される物質からなり、Rは、炭素数nが8〜16のアルキル基、アルケン基、アルキン基のいずれか一つからなり、且つ前記Rは2級もしくは3級アミンのアミン基と結合し、少なくとも1基のポリオキシエチレン基が、前記アミン基に結合したもので、Yの値が0〜2、Zの値が1〜2である。
【選択図】なし
Description
その導電ペーストの主な用途である積層セラミックコンデンサは、電子回路に多用され、その構造は、内部電極層と誘電体層とが交互に積み重なり、両端に外部電極が設けられた構造を採り、その内部電極層を形成する材料には、従来、銀やパラジウムなどの貴金属が用いられてきたが、現在では、低価格のニッケルへの転換が進んでいる。
ここに用いられる導電ペーストは、微細な導電粉末と、導電粉末よりさらに微細な誘電体粉末を、エチルセルロース等の樹脂とターピネオール等の有機溶剤等と、混練して形成されるものである。
そのためには、積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層および内部電極層についても薄層化を図ることが必要となってきている。具体的に示すと、積層セラミックコンデンサの誘電体層の薄層化に伴い、焼成後の積層セラミックコンデンサの内部電極の厚みは、現在1μm程度にまで薄くなってきており、さらに厚み1μm以下のものまでも提供され始めている。
そのため、積層セラミックコンデンサの内部電極用導電ペーストに用いられる導電粉末として、従来は平均粒径が0.4μmの球状の導電粉末が用いられていたが、0.2μm以下の導電粉末が要求されるようになってきている。
この再凝集した導電ペーストは、内部電極膜中で突起物を生成し、さらに積層時には誘電体層をつき抜け、電気特性の悪化を招いてしまう問題を引き起こす。
また、これら固形成分の再凝集により、ペースト粘度も経時的に増粘してしまうという状況も起こりうる。
すなわち、薄層化が進んだ積層セラミックコンデンサは、誘電体層も非常に薄くなっているため、導電ペーストを印刷し乾燥させた乾燥膜、すなわち内部電極表面に再凝集による凹凸があると、積層セラミックコンデンサ製造時の積層工程から圧着工程において、内部電極表面の凸部がその上に積層された誘電体層を突き抜けてしまい、内部電極のショート不良が発生しやすくなる。
分散性の悪い粉末は、凝集体を形成するために内部電極表面に凹凸が形成されやすく、平坦性を悪化させる。よって、平均粒径の小さい金属粉末(導電粉末)やセラミックス粉末を用いたとしても、それらの分散性が悪い場合、あるいは粗大粒子を含んでいる場合には、薄層化された積層セラミックコンデンサにおいては、内部電極のショート不良が発生しやすくなるという問題を生じ易いと言える。
したがって、導電ペーストの長期保管性に対しては、アミン系物質などのアルカリ性成分の存在は、これらの諸問題を引き起こす恐れが大きいことを知見した。
このことは、誘電体グリーンシート上に、内部電極用導電ペーストを印刷して乾燥されるまでの間に、導電ペースト中の溶剤成分が誘電体グリーンシート中に含まれる樹脂成分もしくは溶剤成分を溶解し、シート構造を破壊してしまう現象、所謂シートアタックである。
誘電体グリーンシートへの形成には、主にスクリーン印刷法が用いられる。このスクリーン印刷法では、内部電極用ペーストの粘度が印刷形状、厚みのコントロールに重要となる。
すなわち、スクリーン印刷法では、粘度が適していないと、膜厚のバラつき、表面粗さの悪化を招き、最悪、印刷できないという状況となる。この印刷膜厚のバラつきは、その後の積層、圧着工程で、均一な積層体を作製できなくなり、焼成工程では、焼結に伴う収縮挙動が均一におこらず、デラミネーションと呼ばれる構造破壊や、クラックが生じやすくなるという問題を有している。
この長期保管性とは、上記の表面粗さ、粘度の長期安定性の両方の安定性を示すもので、表面粗さの悪化は、導電粉末やセラミックス粉末の再凝集に伴い発生する場合が多く、表面粗さの悪化は、薄層化された積層セラミックコンデンサにおいては、内部電極のショート不良発生の要因となる。
一般には、ニッケルペースト中に含まれる樹脂の燃焼性を制御するために金属粉末には、硫黄を含有させたものを用いる場合が多く、樹脂成分の燃焼制御が不十分の場合、セラミックコンデンサの焼成工程において、内部電極層からの樹脂成分のガス化により、内部圧力が生じ、最悪の場合、破裂等の構造欠陥を引き起こすという問題を有している。
この提案によれば、導電ペーストの経時増粘が抑制され、かつ脱脂工程におけるガス発生を抑制することができる導電ペーストが得られる事が開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示される導電ペースト組成では、Cu粉の導電性粉末への対応しか述べられておらず、ペースト中に含まれる共材と呼ばれるセラミックス粒子への影響については何も述べられていない。
具体的には、共材成分の凝集を抑制し、導電ペーストの長期保管性に優れ、ペーストを印刷し乾燥させたときに表面粗さが十分に小さく、積層セラミックコンデンサの薄層化を可能とする導電ペースト組成物を提供することにある。
この本発明の導電ペースト中の溶剤成分において、50重量%以上の割合で含まれる溶剤成分は、第一に内部電極用導電ペーストに使用されている樹脂、エチルセルロース、ポリビニルブチラールへの溶解性を有する。第二に誘電体グリーンシートへのシートアタック性が非常に低い。そのため薄層化された誘電体グリーンシートに用いる有機溶剤として好適である。
そこで、本発明に使用する添加剤(以下、所謂、分散剤にあたる)は、共材のセラミック粉末に対して、カチオン界面活性剤としての機能を有し、共材表面の酸性サイトへのアミンの吸着がなされると共に、ポリオキシエチレン基の親水性が、溶剤への分散性維持の機能を促し、その結果、導電ペースト中での分散性維持効果を発揮する添加剤を選択する。
一方、アルカリ性における共材の融解による炭酸Baの生成に対しては、その生成を防ぐために、上記選択した添加剤においては、非常に弱いアルカリ性であることが必要となる。
導電ペーストには、導電物である金属粉末と共材と呼ばれるセラミックス微粉末を含んでいる。
金属粉末は、焼成後の内部電極として機能する物質であり、セラミックス粉末は、焼成時の金属粉末の焼結(収縮)挙動を、セラミックス誘電体と、マッチングさせるために必要とされる物質である。したがって両者は、導電性ペースト中に混在している。
これは、共材表面が比較的極性の状態である事を示し、結果としてニッケル粉末に有効な分散剤はセラミックス粉末に対しては、ほとんど効果がないか、最悪の場合には逆効果となり、凝集体を形成してしまう。そこで、セラミックス粉末の分散性に効果のある添加剤を調査したところ、アミンを有する物質が比較的有効であることを知見した。
この知見は、共材表面は酸性の性質が強いこと、さらには比較的極性が強い表面を有していることを示している。
一方、この知見で得られたアミンを有する物質は、アルカリ性が比較的強いという性質を有しているため、アルカリ性の存在下ではBaTiO3を主とするセラミック粉末は、溶解したBa等が空気中の炭酸ガスと結合し、炭酸Baという固形物を生成し、ペースト塗膜中での異物、突起となり、電気特性の悪化を招いてしまうために、アミン系物質の存在は、長期保管性に問題を生じさせてしまう。
本発明で用いる凝集抑制剤は、非イオン系界面活性剤に属するが、その構造上、カチオン界面活性剤としての特性も具備している。
また、アルキル基を有しており、これはニッケル表面の非極性表面に対して、親和性が良い。一方、導電ペーストに使用されている溶剤は、極性的性質を有する。したがって本発明で用いる凝集抑制剤は、ニッケル粉末表面にアルキル基を配し、溶剤成分にアミンおよびポリオキシエチレン基を配した状態で、存在すると予測される。そのような状態となることによりニッケル粉末に対しての分散効果を発現すると考えられる。
一方、共材であるBaTiO3の融解、炭酸Baの生成に対しては、本発明で用いる凝集抑制剤は、非常に弱いアルカリ性を示しており、炭酸Baの生成にはほとんど影響を与えない。
これらの効果により、金属粉末の分散性を維持しつつ、かつ共材の分散性も発揮し、さらに共材からの溶出物に起因する炭酸Baの生成も抑制されるのである。
その結果、導電ペーストの長期保管に伴う粘度上昇が抑制され、凝集体も生成せず、表面粗さも好適に保たれるペーストを得る事ができるのである。
また、Rと結合するアミン基は、2級、若しくは3級アミンが望ましく、一方、そのアミン基が1級では、アルキル基とポリオキシエチレン基を有する事が出来ず、本発明の効果が得られない。
本発明において、ポリオキシエチレン基のY、Zが2を超える場合では、凝集抑制剤としての溶解性が著しく低下するために分散効果が得られない。また、分散効果を得るには、少なくとも1基のポリオキシエチレン基に置換されていることが必要である。
これら溶剤の導電ペースト中の含有量は、35重量%以上45重量%以下の範囲が望ましい。
その結果、ペーストの長期保管に伴う粘度上昇が抑制され、凝集体も生成せず、表面粗さも好適に保たれる導電ペーストを得る事ができる。
先ず、供試材とした導電ペーストは、エチルセルロース樹脂3.5重量%を表1に示した溶剤:39.2重量%に投入し撹拌しながら80℃に加熱してエチルセルロースの溶け込んだ溶液を作製した。続いて、この溶液と、ニッケル粉末46.8重量%と、共材10.5重量%と、さらに表1で示した添加剤種、添加量とを混合し、3本ロールミルにて混練して所望の導電ペーストを作製した。この作製した導電ペーストを用いて以下の評価を行った。
[表面粗さRy]
2.54cm(1インチ)角の耐熱強化ガラス上に、作製した導電ペーストをスクリーン印刷し、大気中120℃で1時間乾燥させることにより、20mm角、膜厚1〜3μmの乾燥膜を作製した。
作製した乾燥膜の表面粗さRa(算術平均表面粗さ)を、JIS B0601−1994の規格に基づいて測定した。
本発明における表面粗さRyは、JIS B0601−1994に規定される最大粗さ(Ry)である。
Ryの値が2.5μm以下であるものを合格とした。この値を表面粗さ初期値とした。
その後、作製した同ペーストを25℃恒温度中にて90日間保管し、同様に表面粗さRyを測定した。この値を表面粗さ経時値とした。
上記2点の値より、表面粗さ変化率[%]を下記数式(1)を用いて算出した。表面粗さ変化率が+30%以下であるものを「合格」とした。
作製した導電ペーストを、ブルックフィールド社製粘度計を用いて25℃恒温度中にて、10rpm粘度を測定した。この値を粘度初期値とした。
その後、その導電ペーストを25℃恒温度中にて90日間保管し、その後、同様に10rpm粘度を測定した。この粘度を粘度経時値とした。
以上の粘度初期値と粘度経時値の2点の値より、下記数式(2)を用いて粘度変化率[%]を算出した。その粘土変化率が−30%〜+30%の間にあるものを「合格」とした。
作製した導電ペーストを、グリーンシート上にスクリーンにスクリーン印刷し、大気中80℃で10分間乾燥させ、膜厚1〜3μmの乾燥膜を作製し、室温まで放置冷却した後に、グリーンシートをベースフィルムから剥がし、印刷膜がベースフィルム上への残留の有無を確認した。
シートアタックした場合には、ベースフィルム上に印刷膜が残留し、不合格とした。
ニッケル粉末には、住友金属鉱山株式会社製 NR−730を使用した。
作製した導電ペーストの、諸特性を測定し、その結果を表1に合わせて記した。なお、ニッケル粉末には住友金属鉱山株式会社製 NR−730を使用した。
作製した導電ペーストの、諸特性を測定し、その結果を表1に合わせて記した。なお、ニッケル粉末には住友金属鉱山株式会社製 NR−730を使用した。
作製した導電ペーストの、諸特性を測定し、その結果を表1に合わせて記した。なお、ニッケル粉末には住友金属鉱山株式会社製 NR−730を使用した。
実施例4〜6は、実施例1〜3とは添加剤の種類を変え、実施例4は実施例1〜3と同じ溶剤、実施例5〜7は、実施例1〜4とは異なる溶剤を使用した。実施例6ではシートアタック性のあるターピネオールも用いているが、含有比率が一定の値以下であれば問題が無いことがわかる。
溶剤をシートアタックする溶剤であるターピネオールと、シートアタック性を示さないイソボルニルイソブチレートとの2種混合とし、混合割合を60重量%:40重量%とした。
溶剤の混合範囲が本特許請求外組成であるため、シートアタックが確認され、満足な特性が得られなかった。
凝集抑制剤が無添加である以外は実施例1と同様にして導電ペースト作製した。
時間が経つにつれ凝集が発生し、表面粗さRyが大幅に悪化してしまった。また大幅な経時増粘が確認され、満足する特性が得られなかった。
添加する凝集抑制剤の量を7重量%とした以外は実施例4と同様にして導電ペーストを作製した。
得られた特性は、凝集抑制剤の添加剤種が異なるが、その添加量が5重量%の実施例3とほとんど変わらず、明らかな特性の向上が見られなかった。
溶剤をシートアタック性のあるターピネオールに変えた以外は、実施例4と同様にして導電ペーストを作製した。
シートアタックが発生しており、満足すべき特性を得られなかった。
実施例5と同様に39.2重量%のイソボルニルイソブチレートを溶剤として含み、一般的な分散剤として知られるオレイン酸を用いて導電ペーストを作製した。
初期分散性は良好であったが、経時変化により凝集体が発生し、表面粗さRyが大幅に悪化した。また経時変化による増粘も見られ、満足すべき特性を得られなかった。
実施例4と同じ凝集抑制剤を用い、33.0重量%のイソボルニルイソブチレートを溶剤として含む導電ペーストを作製した。
初期分散性、経時変化、表面粗さRyともに問題のないレベルであったが、そもそもの粘度が大きく上昇し、塗布膜にカスレ等が発生し、実用には適さなかった。
実施例4と同じ凝集抑制剤を用い、47.0重量%のイソボルニルイソブチレートを溶剤として含む導電ペーストを作製した。
初期分散性、表面粗さRyともに問題のないレベルであったが、そもそもの粘度が大きく低下し、塗布膜ににじみ等が発生し、実用には適さないレベルであった。
Claims (3)
- 導電性粉末、樹脂、有機溶剤、TiBaO3を主とするセラミックス粉末の共材、および凝集抑制剤からなる内部電極用導電ペーストであって、
前記有機溶剤の全量が35重量%以上、45重量%以下からなり、
前記有機溶剤が、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルプロピオナート、イソボルニルイソブチレートのうち、少なくとも一種以上を含み、かつペースト中の溶剤成分重量比において、50重量%以上であり、
前記凝集抑制剤の含有量が0.1重量%以上5重量%以下であり、下記組成式(1)で示される物質からなり、
Rは、炭素数nが8〜16のCnH2n+1で示されるアルキル基、CnH2n−1で示されるアルケン基、CnH2n−2で示されるアルキン基のいずれか一つからなり、且つ前記Rは2級もしくは3級アミンのアミン基と結合し、少なくとも1基のポリオキシエチレン基が、前記アミン基に結合したもので、Yの値が0〜2、Zの値が1〜2であることを特徴とする内部電極用導電ペースト。
- 前記導電性粉末が、Ni、Cu、Ag、Pdの少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の内部電極用導電ペースト。
- 前記樹脂が、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂のうち、少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の内部電極用導電ペースト。
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