JP2013143647A - 超音波厚みセンサの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】超音波厚みセンサとして薄質で可撓性を示して、測定対象表面が湾曲している場合でもそれに追従させることができ、しかも測定対象個所に常時貼着させておくことを可能として、厚み測定前後の種々の作業を不要とし、厚み測定の手間と時間を大幅に削減し、かつ多数の箇所の同時的な厚み測定や、連続的な厚み測定も可能とした超音波厚み測定センサを製造することができる方法を提供する。
【解決手段】酸化物系圧電材料の平均粒径1〜10μmの比較的粗大な原料粉末と、酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾル、もしくは酸化物系圧電材料のアルコキシド分解微粉末とを混合し、その混合物を、一方の電極となるべき薄質な金属板の表面に付着させて、加熱、焼成し、比較的ポーラスで可撓性を示し得る薄質な焼結体層を前記金属薄板表面に形成し、その後、他方の電極の取り付け及び分極処理を行って、センサ全体として可撓性を示し得るようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物系圧電材料からなる圧電素子を用いて、超音波により各種配管の金属管、その他の管の管壁の厚み、あるいは各種金属容器の外壁の厚みなど、種々の厚みを検出するための超音波厚みセンサの製造方法に関するものである。
周知のように圧電素子を用いて超音波の送受信を行なって、各種の対象物、対象部位の検出や、各種測定、診断などを行なう装置は、従来から広く使用されている。例えば水中探査用のソナー、あるいは超音波探傷装置、超音波診断装置が従来から広く知られており、そのほか、金属板や金属管などの厚みを検出する厚みセンサにも、超音波センサが用いられている(例えば特許文献1、2など)。
このような超音波送受信用の圧電素子の材料としては、PZTと称されるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)で代表されるペロブスカイト結晶構造を有する酸化物系圧電材料(圧電セラミックス)が最も代表的である。
ところでこの種の酸化物系圧電材料からなる圧電素子の製造方法としては、PZTなどの原料粉末を円盤状あるいは立方体形状などの所定のバルク形状に成形し、その成形体を焼結して、セラミック焼結体とし、その後、焼結体に電極を取り付けてから分極処理を施し、圧電素子とするのが一般的である(例えば特許文献3参照)。
具体的には、例えばPZT圧電素子の場合、先ずPbO、ZrO、TiOなどのPZT用の原料粉末を所定の割合で配合し、その配合粉末に純水を加えてボールミルで混合粉砕し、乾燥して仮焼成し、再度粉砕して粉末とし、更に仮焼成してから再度粉砕して、ペロブスカイト型結晶構造を有する、粒径が数μmから数十μm程度のPZT粉末を得る。そしてそのPZT粉末に、PVA(ポリビニルアルコール)などのバインダを加えて混合し、適度の大きさの造粒粉とする。その後、造粒粉に圧力を加えて成形し、肉厚な円盤状あるいは立方体形状などの所定のバルク形状の成形体とする。更にその成形体を加熱してバインダを除去してから、高温に加熱して焼成(焼結)して、セラミック焼結体とし、その後、所定の製品形状(圧電素子形状)に加工した後、銀電極などの電極を焼付けなどにより取り付け、分極処理を行なって、圧電特性を付与するのが通常である。
上述のような従来の酸化物系圧電素子の製造法においては、成形体を焼結する際の加熱温度を1200℃程度以上に上げることによって急激に焼結体の緻密度が高まることが知られており、そこで一般には1200〜1300℃程度で焼結することが行なわれている。そしてこのように1200℃以上の高温で焼成することによって、焼結体は、密度90%以上に高密度化されて、緻密な焼結体が得られることが知られている。
このように、従来の製造方法において焼結体の高密度化を図っていた理由は、焼結体からなるセンサ素子が高密度となるほど、分極処理後の圧電特性が向上して、効率的に超音波を発振することが可能となり、超音波出力の高出力化が容易に図れることにある。そのため従来は、酸化物系圧電材料からなる圧電素子の製造にあたっては、焼成温度を1200℃以上の高温として焼結体の緻密化を図り、圧電特性をできるだけ高め、高出力化を図ろうとするのが常識であった。
例えば、超音波ソナーの場合は、センサから検出対象物までの距離が著しく大きく、そのため、確実に対象物を捕捉するためには、大出力を必要とする。また超音波探傷装置の場合、たとえ検出すべき部位までの距離が短くても、検出すべき傷や欠陥の形状が一様ではなく、しかも傷や欠陥からの反射波と、傷や欠陥よりも遠い位置に存在する管外表面/外部空間の境界面からの反射波との2種の反射波の受信信号を峻別することが必要であり、そのためある程度大出力とする必要がある。さらに更に超音波診断装置の場合も、検査対象部位の形状が一様ではなく、しかも人体組織を透過する際の超音波の減衰が大きいことなどから、やはりかなりの大出力とする必要がある。そこで、これらの用途では、セラミック圧電素子はできるだけ高密度とすることが必要とされている。そして厚みセンサについても、他の用途と同様に高密度化することが常識とされていたのである。
なお、圧電素子を高出力化すれば、それに伴って反射波のエネルギも大きくなる。そして反射波のエネルギが過大であれば、反射波の受信信号中のノイズが大きくなってしまう。そこで従来、過大な反射波が予想される場合には、反射波を減衰させるためのダンパを組み込んでおくことも行なわれている。
ところで従来の超音波厚みセンサでは、厚みの測定が必要になるたびごとに、センサの探触子の前面を、各種設備の配管などの測定対象物の外表面に、水などの超音波媒体を介して押し当て、超音波の送受信を行なって厚みを測定するのが通常である。
しかるに、各種設備の配管は、金属管の外表面が保護材や断熱材などの外被によって覆われていることが多い。このような場合に超音波厚みセンサによって配管の厚み測定を行なう際には、測定個所の外被を除去して金属管の外表面に媒体を塗布もしくは供給する準備作業が必要となり、また厚み測定後には、媒体を拭き取り、更に外被を修復する修復作業を必要とする。したがって1回の厚み測定作業に多くの手間と時間を要さざるを得なかったのが実情である。
更に、従来の超音波厚みセンサは、前述のように厚みの測定が必要になるたびごとに、センサの探触子の前面を、測定対象物の外表面に水などの超音波媒体を介して押し当てるのが通常であるため、配管や容器外壁などにおける多数の個所の厚み測定を同時に行なうことは困難であり、そのため多数の個所の厚み測定データを得たい場合には、膨大な手間と時間を要さざるを得なかった。
また同様の理由から、厚みの経時的な測定データを連続して得ることは困難であった。
一方、従来の製造方法によって得られた酸化物系圧電材料(セラミック圧電材料)を用いた圧電素子は、全体的に焼結体が緻密で、かつ厚いバルク形状を有しているため、可撓性(フレキシビリティ;屈曲性)を全く有していないのが通常である。そのため、このような圧電素子を配管や容器外壁などを対象とする超音波厚みセンサに用いた場合、次のような問題があった。
すなわち、配管のうちでもその管径が小さい配管、すなわち外面の曲率半径が小さい配管の管壁や、配管におけるL字状に屈曲した部あるいはL字状に溶接した部分、すなわちエルボー部分、さらにはT字状に溶接した部分の隅部の如く、湾曲した部分(凸状もしくは凹状に湾曲した部分)の厚みを測定しようとした場合、その湾曲部分に探触子の前面を均一に当てることは困難であり、そのため測定誤差が大きくなったり、厚み測定が困難となったりする問題もあった。
特開平1−202609号公報 特開2002−228431号公報 特開平7−45124号公報
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、酸化物系圧電材料を用いた超音波厚みセンサとして、全体的に薄質で可撓性を示すことができ、そのため測定対象個所の外表面が湾曲している場合でもその湾曲面に追従させて、湾曲面における厚み測定を確実に行なうことができ、しかも配管や容器外壁などの測定対象個所に厚みセンサを常時貼着させておくことにより、厚み測定前の準備作業や測定後の修復作業などを不要とし、これによって厚み測定の手間と時間を大幅に削減することができ、併せて多数の箇所の同時的な厚み測定や、連続的な厚み測定も可能とした超音波厚み測定センサを、安価に製造することができる方法を提供することを課題とする。
前述のように各種の対象物検出や検査、測定、診断などのための超音波送受信に使用される従来の酸化物系圧電材料からなる圧電素子は、高い圧電効率を得るために、密度が90%以上となるように緻密化しておくのが常識とされており、超音波厚みセンサでも、同様に90%以上の高密度の圧電素子が使用されていた。
しかるに、各種設備における配管の管壁や容器の外壁などの厚み測定にあたっては、他の用途の場合のような高い圧電効率、高出力は必ずしも必要としないことを本発明者等は知見した。
すなわち、既に述べたように、水中探査用の超音波ソナー、あるいは超音波探傷装置、超音波診断装置などの場合は、対象物までの距離が遠かったり、あるいは対象物の形状が不定形で一様ではなかったり、更には対象部位に超音波が到達するまでの間の減衰が大きかったりする、などの点から、高出力が望まれるが、配管や容器などの厚み測定の場合、
対象となる管壁や容器外壁の厚み(超音波を透過/反射させるべき距離)は数百μmからせいぜい十数mm程度と小さく、しかも反射面は一様な定形面となっており、更には、超音波探傷の場合のように2種以上の反射波の受信信号を峻別する必要もないため、他の用途よりも超音波出力が小さくても、確実に厚みを測定し得ることを知見した。言い換えれば、厚みセンサの場合は、他の用途よりも圧電効率が低くても、厚みセンサとして充分に機能させることができることを知見したのである。
一方、酸化物系圧電材料からなる圧電素子においては、焼結体の緻密度が低くなって、相対的にポーラスとなれば、圧電効率は下がるが、薄質な可撓性を有する支持体上に焼結体層をポーラスに薄く形成しておけば、可撓性(フレキシビリティ)を付与することが可能となる。またその場合、支持体を圧電素子に必要な一対の電極のうちの一方の電極と兼ねさせて、焼結体層を支持体上に形成した後もその支持体をそのまま一方の電極として機能させることにより、簡単な工程で厚みセンサを製造し得ることを見い出した。
このように、厚みセンサとしては、焼結体の緻密度をある程度小さくすると同時に薄肉化を測って、圧電効率を若干下げながらも、厚みセンサとして可撓性を付与したものとすることができることを新規に見い出した。
ここで、上述のように電極を兼ねる薄質な支持体上に焼結体層を薄く形成するためには、その支持体として金属薄板を用い、その金属薄板上に、前述のような粒径が数μmから数十μm程度の焼結原料粉末のペーストを塗布して、支持体(金属薄板)ごと加熱し、ペーストを焼成することが考えられる。この場合、前述の従来法に倣って、1200〜1300℃程度の高温に加熱するとすれば、電極兼支持体の金属薄板として、1200〜1300℃の高温でも酸化しないような優れた耐高温酸化性を有する白金(Pt)などを用いざるを得ない。しかしながら、このような白金などの優れた耐高温酸化性を有する材料は、極めて高価格であるのが通常であり、したがってその場合には、厚みセンサの材料コストが著しく高くなってしまう。
しかるに本発明者が実験、研究を重ねた結果、前述のようにセラミック圧電材料を構成する各金属の酸化物粉末、例えばPbO、ZrO、TiOなどのPZT用の原料粉末を所定の割合で配合して、その配合粉末を加熱(仮焼成)して粉砕することにより得た、ペロブスカイト型結晶構造を有する粒径が数μmから数十μm程度の比較的粗大なPZT粉末と、セラミック圧電材料を構成する各金属のアルコキシドのゾルとを混合し、その混合物を焼結原料として焼成すれば、600〜800℃程度の低温でも焼結可能となることを見い出した。
また同時に、上記と同様にセラミック圧電材料を構成する各金属の酸化物粉末、例えばPbO、ZrO、TiOなどのPZT用の原料粉末を所定の割合で配合して、その配合粉末を加熱(仮焼成)して粉砕することにより得た、ペロブスカイト型結晶構造を有する粒径が数μmから数十μm程度の比較的粗大なPZT粉末と、アルコキシド分解法により調製された平均粒径が0.1〜1.0μm程度の超微細なPZT粉末とを混合し、その混合物(混合粉末)を焼結原料として、その混合粉末を焼成した場合にも、600〜800℃程度の低温で焼結可能となることを見い出した。
すなわち焼成に供される粉末としては、従来一般には、ボールミルによって粉砕された数μmから数十μm程度の粒径のものを用いるのが通常であったが、その比較的粗大な粉末を単独で焼結させるのではなく、その比較的粗大な粉末に、同じセラミック圧電材料を構成する金属のアルコキシドゾルを加えて焼成するか、または上記の比較的粗大な粉末に、アルコキシド分解法によりえられた同じセラミック圧電材料のより微細な超微細粉末(アルコキシド分解微粉末)を混合して焼成することにより、数μmから数十μm程度の比較的粗大な粉末を単独で焼結させる場合よりも格段に低温で焼結することが可能となることを見い出した。そしてこれらの場合には、600〜800℃程度の低温で焼成しても、厚みセンサとして必要な程度の比較的低密度の焼結体は得ることが可能であることを見い出した。さらにこのような比較的低温の焼成温度であれば、電極を兼ねる前記支持体として、高価な白金などを使用する必要がなくなり、ステンレス鋼などの安価な材料を使用することが可能となって、材料コストの低減に有効となることを知見し、本発明をなすに至ったのである。
したがって本発明の超音波厚みセンサの製造方法では、基本的には、圧電セラミックの原料となるPZTなどの酸化物系圧電材料の平均粒径1〜10μmの粉末(原料粉末)に、その原料粉末の金属成分のアルコキシドのゾル、もしくはアルコキシド分解法により調製された酸化物系圧電材料の超微粉末(アルコキシド分解微粉末)を配合し、その混合物を一方の電極となるべき薄質な金属薄板の表面に塗布などにより付着させ、その金属薄板を支持体として機能させながら加熱、焼成して、比較的ポーラスで可撓性を示し得る焼結体層を前記金属薄板表面に形成し、その後、他方の電極の取り付け、更に分極処理を行って、センサ全体として可撓性を示し得るようにした。
具体的には、本発明の基本的な態様(第1の態様)の超音波厚みセンサの製造方法は、
酸化物系圧電材料からなる平均粒径1〜10μmの粉末と、その酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾル、もしくはその酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドの分解微粉末とを混合して、その混合物からなる焼結原料を調製する焼結原料調製工程と、
前記焼結原料の混合物を、金属薄板からなる第1の電極の一方の板面に所定厚みで付着させて、第1の電極の一方の板面上に焼結原料層を形成する焼結原料層形成工程と、
前記焼結原料層を加熱により焼成し、圧電材料焼結体層を第1の電極の一方の板面上に形成する焼成工程と、
前記焼成工程終了後、圧電材料焼結体層における第1の電極に対し反対側の表面に第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
前記第1の電極と第2の電極との間に電位差を与えて分極処理する分極処理工程と、
を有してなることを特徴とするものである。
このような本発明の基本的な態様の超音波厚みセンサの製造方法においては、酸化物系圧電材料からなる比較的粗大な粉末(平均粒径1〜10μm)のみならず、それに、前記酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾル、もしくはアルコキシド分解微粉末とを混合してなる混合物を焼結原料として、第1の電極としての金属薄板の板面上に付着させ、金属薄板に支持させた状態で支持体上の焼結原料層を焼成して、圧電材料焼結体層とする。この焼成時には、第1の電極としての金属薄板は、混合物層を支持するための支持体として機能する。そのため混合物層(焼結原料層)の厚みを薄くしても、支障なく焼成することが可能である。またその金属薄板は、厚みセンサとしての使用時においても、電極として機能するのみならず、焼結体層(圧電セラミック層)の支持体としても機能して、焼結体層が剥落することを防止できる。
そして第1の電極としての金属薄板として、可撓性を示す程度に薄いものを用いて、かつ第2の電極も充分に薄質としておけば、厚みセンサとしてその全体の厚みを薄くして、可撓性を有するものとすることができる。さらに、焼結原料として、酸化物系圧電材料からなる比較的粗大な粉末(平均粒径1〜10μm)と、前記酸化物系圧電材料の金属成分と同じ金属成分を有するアルコキシドゾル、もしくはアルコキシド分解微粉末とを混合してなる混合物を用いているため、焼成工程においては、比較的低温の焼成温度(例えば600〜800℃)でも、ある程度の密度(例えば70〜80%程度)を有する焼結体層、すなわち超音波厚みセンサとして支障ない程度の圧電特性を分極処理後に得ることができる焼結体層を形成することができる。
また本発明の第2の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1の態様の超音波厚みセンサの製造方法において、前記焼結原料調製工程で、酸化物系圧電材料からなる平均粒径1〜10μmの粉末と、その酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾルとを混合して、酸化物圧電材料粉末とアルコキシドゾルとからなる混合物の焼結原料を調製することを特徴とするものである。
この第2の態様の超音波厚みセンサの製造方法では、焼成工程における焼成開始前の状態で、第1の電極としての金属薄板上の焼結原料層(混合物層)は、比較的粗大な酸化物系圧電材料粉末の粒子間の空隙に、同じ金属成分のアルコキシドが存在しており、焼成時にはそのアルコキシドも分解、焼成されて、酸化物系圧電材料(セラミック)となる。したがってそのアルコキシドの分解生成物は、比較的粗大な酸化物圧電材料粉末の粒子間を結合する結合物質(焼結助剤)として機能するため、比較的低温の焼成温度でも70%以上の密度となり、しかもそれと同時に、アルコキシドの分解生成物自体も酸化物系圧電材料となるため、比較的低密度(70〜80%)でも、焼結層全体として厚みセンサに必要な程度の良好な圧電特性を示すことが可能となる。
また本発明の第3の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1の態様の超音波厚みセンサの製造方法において、酸化物系圧電材料からなる平均粒径1〜10μmの粉末と、その酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドの分解による平均粒径0.1〜1.0μmの微粉末とを混合して、酸化物圧電材料粉末とアルコキシドゾルとの混合物からなる焼結原料を調製することを特徴とするものである。
この第3の態様の超音波厚みセンサの製造方法では、焼成工程における焼成開始前の状態で、第1の電極としての金属薄板上の焼結原料層(混合物層)は、比較的粗大な酸化物系圧電材料粉末(平均粒径1〜10μm)の粒子間の空隙に、相対的に微細なアルコキシド分解微粉末(平均粒径0.1〜1.0μm)が存在しており、焼成時にはそのアルコキシド分解微粉末も焼結される。したがって、そのアルコキシド分解微粉末は、比較的粗大な酸化物圧電材料粉末の粒子間を結合する結合物質(焼結助剤)として機能するため、比較的低温の焼成温度で70%以上の密度となり、しかもそれと同時に、そのアルコキシド分解微粉末も酸化物系圧電材料であるため、比較的低密度(70〜80%)でも、焼結層全体として良好な圧電特性を示すことが可能となる。
また本発明の第4の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第3のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、
前記前記焼成工程によって、密度が70〜80%の範囲内の圧電材料焼結体層を得ることを特徴とするものである。
この第4の態様の超音波厚みセンサの製造方法では、圧電材料焼結体層(圧電セラミック層)の密度を、従来一般の圧電セラミックよりも低密度の80%以下としておくことによって、その焼結体層を第1の電極の金属薄板に支持させた状態で可撓性を示すことができる。また同時に圧電材料焼結体層の密度を70%以上とすることによって、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電性能を確保することができるとともに、圧電材料焼結体層が過度に低密度となって脆くなることにより、焼結体層が第1の電極から剥離してしまうことを防止できる。
なお本明細書において焼結体層の密度とは、空隙率の逆数、すなわち相対密度を意味するものとする。
また本発明の第5の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第4のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、
前記前記焼成工程における加熱温度を、600〜800℃の範囲内とすることを特徴とするものである。
このように第5の態様の超音波厚みセンサの製造方法では、焼成工程における加熱温度を、従来一般の圧電セラミック製造における焼成温度より格段に低い600〜800℃の範囲内としているが、焼結原料が平均粒径0.15〜0.25μmと超微粉であるため、このような低温での焼結によっても焼結を進行させて、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を示しうる密度(従来よりも低い70〜80%程度)を有する焼結体層を形成することができる。そしてまた、このように比較的低い密度に焼結された焼結体層は、その焼結体層を第1の電極の金属薄板に支持させた状態で可撓性を示すことができ、また一方、焼結体層の密度が過度に小さくなって焼結体層が脆くなり、第1の電極から剥離してしまうことも防止できる。
そしてまた本発明の第6の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第5のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、
前記前記焼成工程によって、厚みが30〜150μmの範囲内の圧電材料焼結体層を得ることを特徴とするものである。
このような第6の態様によれば、圧電材料焼結体層の厚みが30〜150μmの範囲内と薄いため、圧電材料焼結体層を第1の電極に支持させた状態で、可撓性を示すことができる。
さらに本発明の第7の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第6のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、前記焼結原料層形成工程で、焼成前の状態の焼結原料層の厚みが70〜200μmの範囲内となるように焼結原料層を形成することを特徴とするものである。
このような第7の態様の超音波厚みセンサの製造方法では、焼成直前の状態での焼結原料層の厚みが70〜200μmと薄いため、焼成後に、30〜150μm程度の薄い焼結体層を得ることができる。
また、本発明の第8の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第7のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、
前記焼結原料層形成工程で、第1の電極の金属薄板として、その厚みが、15〜100μmの範囲内のものを用いることを特徴とするものである。
このような第8の態様では、第1の電極の金属薄板が薄いため、最終的に得られる厚みセンサとしても、容易に可撓性を有するものとすることができる。
また、本発明の第9の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第8のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、
前記第2電極形成工程で、第2の電極の厚みが、10〜100μmの範囲内となるように第2の電極を形成することを特徴とするものである。
このような第9の態様では、第2の電極も薄いため、その第2の電極が、最終的に得られる厚みセンサの可撓性を阻害するおそれが少ない。
また、本発明の第10の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第9のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、
前記酸化物系圧電材料からなる原料粉末として、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物系圧電材料を用いることを特徴とするものである。
また、本発明の第11の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第10の態様の超音波厚みセンサの製造方法において、
前記酸化物系圧電材料からなる原料粉末として、チタン酸ジルコン酸鉛系の圧電材料粉末を用いることを特徴とするものである。
また、本発明の第12の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第10のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、
前記第1の電極としてステンレス鋼の薄板を用いることを特徴とするものである。
また、本発明の第13の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第第1〜12のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、
前記第2電極形成工程において、前記圧電材料焼結体層の表面に、銀ペーストを塗布して焼付け、これによって第2の電極を形成することを特徴とするものである。
本発明の超音波厚みセンサの製造方法によれば、センサ全体として薄質で可撓性を示す超音波厚みセンサを容易に製造することができる。特に本発明法では、酸化物系圧電材料の平均粒径1〜10μmの粉末(原料粉末)に、その原料粉末の金属成分のアルコキシドのゾル、もしくはアルコキシド分解法により調製された酸化物系圧電材料の超微粉末を配合して、その混合物を焼結原料としているため、焼成温度を比較的低温とすることができ、したがって電極材料として耐高温酸化性が著しく優れた白金などの高価な材料を使用しなくて済むため、材料コストを抑えることができる。そして前述のように薄質で可撓性を示す超音波厚みセンサであれば、測定対象部位が湾曲面であってもその湾曲面に追従して変形させることが可能であるため、湾曲面における厚み測定を確実に行なうことができる。またこのような厚みセンサは、予め配管などの測定対象個所に貼り付けておいて、そのままの状態で配管設備などを稼動させ、必要な時に随時厚み測定を行なうことができ、その場合、厚み測定前後の作業、例えば配管における測定前の外被除去作業や媒体塗布作業、及び測定後の媒体拭き取り作業や外被修復作業などを不要とすることができ、そのため、厚み測定の手間と時間を大幅に削減することができ、さらには、多数の個所にそれぞれ厚みセンサを貼り付けておいて、多数の個所における厚みの同時測定を容易に行なうことができるとともに、経時的かつ連続的な厚み測定が可能もなるという、顕著な効果を得ることができる。
本発明の超音波厚みセンサの製造方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。 本発明の超音波厚みセンサの製造方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。 本発明の製造方法により得られた超音波厚みセンサの一例を、その使用時の状況として示す略解的な縦断面図である。 本発明の製造方法により得られた超音波厚みセンサの一例の使用時の状況の他の例を示す略解的な縦断面図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本発明の第1の実施形態の超音波厚みセンサ製造方法を示す。
この第1の実施形態は、基本的には、酸化物系圧電材料からなる比較的粗大な粉末(平均粒径1〜10μmの粉末)と、その酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドのゾルとを混合して、その混合物を、第1電極を兼ねた金属薄板上で焼成するものである。
具体的には、図1に示しているように、
P1:酸化物系圧電材料、例えばPZTなどの平均粒径1〜100μmの原料粉末と、PZTなどの酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾルを用意し、これらを混合して、その混合物からなる焼結原料を調製する焼結原料調製工程、
P2:前記混合物からなる焼結原料を、金属薄板からなる第1の電極の一方の板面に所定厚みで付着させて、第1の電極の一方の板面上に焼結原料層を形成する焼結原料層形成工程、例えば前記混合物の分散液(ペースト)を、金属薄板からなる第1の電極の一方の板面に塗布して、その塗布層からなる焼結原料層を形成する工程、
P3:第1の電極を兼ねた前記金属薄板上の焼結原料層を加熱して焼成し、圧電材料焼結体層を第1の電極の一方の板面上に形成する焼成工程、
P4:前記焼成工程P3の終了後、前記圧電材料焼結体層における前記第1の電極に対して反対側の表面に第2の電極を形成する第2電極形成工程、
P5:第1の電極と第2の電極との間に電位差を与え、圧電材料焼結体層を分極処理する分極処理工程、
以上のP1〜P5の各工程からなるプロセスによって、セラミック圧電材料からなる超音波厚みセンサを製造する。
以下にこれらの各工程P1〜P5について、具体的に説明する。
〔焼結原料調製工程P1〕
予め、準備工程として、ペロブスカイト型結晶構造を有する強誘電体からなる酸化物系圧電材料、例えばPZTなどからなる平均粒径1〜10μmの原料粉末を準備しておく。
ここで、酸化物系圧電素子用の原料粉末としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する所定の成分組成の粒子からなる粉末、例えばPZT粉末が、セラミック粉末製造メーカなどから市販されており、したがって本発明の超音波厚みセンサの製造方法を実施するに当たっては、この種の市販のセラミック圧電素子用粉末を購入して、それを出発原料として、アルコキシドゾルと混合しても良い。但し、原料粉末の調製から出発してもよいことはもちろんであり、そこで、原料粉末調製のための工程を、準備工程として次に簡単に説明する。
すなわち、PZTなどの原料となる酸化物粉末、例えばPbO、ZrO、TiOの各粉末を、目標とするPZT組成となるように配合するとともに、エタノールなどの溶媒やポリエチレンイミンなどの分散媒を適宜加えてボールミルなどにより混錬し、えられた混錬物(スラリー)を乾燥して混合粉末とする。さらにこの混合粉末を、粉体の状態で仮焼成する。この仮焼成は、通常は、大気雰囲気中で700〜900℃程度の温度において1〜20時間程度加熱すればよい。このような仮焼成によって、混合粉末の各成分(例えばPbO、ZrO、TiO)が相互に固溶して、ペロブスカイト型結晶構造が得られる。得られた粉末(但し仮焼成後の状態では塊状)を、ボールミルなどにより粉砕すれば、平均粒径1〜10μmのPZTなどのセラミック圧電材料用粉末が得られる。
なお本発明において、対象となる酸化物系圧電材料(セラミック圧電材料)の種類、組成は、基本的には限定されないが、ペロブスカイト型結晶構造を有する強誘電体からなる酸化物系圧電材料であることが好ましく、またそのうちでも、PZTと称されるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、より具体的には、Pb(ZrTi1−x)O〔但し0.5≦x≦0.7〕が好ましく、更に上記のxの値が0.52前後の組成のPZTが最も好ましい。またその他、上記のPZT組成を基本として、それに微量添加元素として、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、La、Nd、Sc、Gdなどの1種又は2種以上を、それぞれ10重量%程度以下添加したものであってもよく、要は、PZT系(チタン酸ジルコン酸鉛系)の圧電セラミック材料と称される材料はすべて対象となる。さらに、PZT系圧電セラミック材料に限らず、その他のペロブスカイト型結晶構造を有する圧電セラミック材料、例えばLiNbOなど、更にはペロブスカイト結晶構造を持たないその他の圧電セラミック材料、例えばBiTi12なども適用することができる。
なおまた、原料粉末の粒径は平均粒径1〜10μmとしているが、これは、従来の一般的な手法、すなわち酸化物系圧電材料を構成する金属成分の酸化物の粉末を混合して焼成し、これを機械的に粉砕して得られる原料粉末は、通常平均粒径1〜10μm程度であるからである。ここで、原料粉末の平均粒径を1μm未満とすることは、粉砕効率の観点から困難であり、一方原料粉末の平均粒径を10μm超とすることは、、燒結性の観点から問題となる。
一方、上記の原料粉末の準備と並び、PZTなどの酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾルを準備する。ここで準備するアルコキシドゾルは、上記の酸化物系圧電材料の原料となる酸化物の金属成分のアルコキシド、すなわち金属成分をM、アルキル基をRとし、一般式 M(OR)で表される金属アルコキシドのゾルである。例えばPZTの場合は、金属成分Mは、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、およびチタン(Ti)が主成分であるから、鉛アルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、およびチタンアルコキシドの各ゾルを用意する。一方、アルキル基Rは特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ブチル基、イソブチル基、t―ブチル基、s−ブチル基などを適用することができる。より具体的には、PZTの場合、鉛アルコキシドとしては、鉛ジイソプロキシド、鉛ジブトキシドなど、またジルコニウムアルコキシドとしては、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシドなど、チタンアルコキシドとしては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシドなどを用いることが好ましい。
またこの場合、各アルコキシドゾルの配合は、その金属成分の割合が、目標とする酸化物系圧電材料における金属成分の割合と同等となるように定めることが望ましい。すなわち、一般式Pb(ZrTi1−x)Oで表されるPZTの場合、各アルコキシドの金属成分のモル比が、Pb:Zr:Ti=1:x:1−xの割合となるように配合することが望ましい。
但し、Pb(ZrTi1−x)O〔但し0.5≦x≦0.7〕のPZT組成を基本として、それに微量添加元素として、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、La、Nd、Sc、Gdなどの1種又は2種以上を添加したPZT系圧電セラミック材料を対象とする場合、アルコキシドゾルとしては、必ずしもこれらの微量元素金属のアルコシシドまで含んでいなくても良く、主成分であるPb、Zr、Tiのアルコキシドを含んでいればで充分である。もちろん場合によっては、これらの微量添加元素の金属アルコキシドを含むゾルであってもよい。
以上のようなアルコキシドゾルを得るための方法は特に限定されるものではなく、常法に従えば良く、例えばアルコキシドを溶剤に溶解するなどの方法によれば良い。
上述のようなペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物系圧電材料からなる比較的粗大な原料粉末(平均粒径1〜10μm)と、同じ酸化物系圧電材料の金属成分を有するアルコキシドゾルとを、エタノールやブタノール、酢酸エチルなどの適宜の溶剤を用いて混合、混錬し、乾燥させれば、焼結原料としての混合物が得られる。
なお、上記の原料粉末とアルコキシドゾルの混合比は特に限定しないが、通常は、同じ金属成分で比較して、原料粉末中の金属成分に対するアルコキシドゾル中の金属成分のモル比が、0.2〜1.0の範囲内となるように混合することが望ましい。上記のモル比が
0.2未満では、アルコキシドゾルが少なすぎて、焼成工程においてゾルの分解生成物が焼結助剤として充分に機能せず、そのため低温での焼結が困難となり、一方上記のモル比が1.0を越えれば、アルコキシドゾルが多すぎて、第1の電極を兼ねる金属薄板上で焼成したときに、比較的粗大な原料粉末の粒子が充分に結合されず、焼結体層が粉っぽくなり、飛散または剥落してしまうおそれが大きくなる。
〔焼結原料層形成工程P2〕
この焼結原料層形成工程は、前記混合物(焼結原料)を、第1の電極としての金属薄板の板面に所定の厚みで付着させて、金属薄板の表面に所定の厚みの焼結原料層を形成する工程である。
上記金属薄板は、電極として機能するだけではなく、乾燥後の焼成工程や厚みセンサとしての使用時において支持体として機能するものである。その金属薄板の材質は特に限定されないが、本発明の場合、焼結原料としての比較的粗大な粉末とアルコキシドゾルとの混合物を用いているため、600〜800℃程度の比較的低温で焼成することができ、したがって800℃程度までの耐酸化性を有する汎用の耐熱金属を使用することができる。すなわち、白金などの如く1200℃以上まで耐えうる高価な金属を用いる必要はなく、ステンレス鋼やその他の汎用の耐熱鋼を、第1の電極を兼ねる金属薄板として使用することができる。具体的には、18Cr−8Niとして知られるSUS304系統のオーステナイト系ステンレス鋼、あるいは18Cr−12Ni−2.5MoのSUS316系統のオーステナイト系ステンレス鋼、その他、22Ni−12CrのSUH309系統のオーステナイト系耐熱鋼を用いることができる。これらは、いずれも白金よりも格段に安価に入手することができる。
前記第1の電極としての金属薄板の厚みは、15μm〜100μmとすることが好ましい。その厚みが15μm未満では、強度が不充分で、センサ製造工程中のハンドリングに支障をきたすおそれがあるとともに、厚みセンサとしての使用時において変形あるいは破損してしまうおそれがある。一方、その厚みが100μmを越えれば、金属薄板の可撓性が失われて、厚みセンサ全体としてもその可撓性が劣ることとなり、そのため使用時において厚み測定対象の配管の湾曲部分に貼着することが困難となるおそれがある。
なお前記焼結原料としての混合物を金属薄板上に付着させるための手段としては、その混合物の分散液もしくはペーストを金属薄板表面に塗布する方法が代表的である。またその場合の塗布手段としては、ロールコーターや、その他、一般の印刷技術で適用されている塗布・印刷手段を任意に適用することができる。このように分散液またはペーストとして塗布した場合、塗布後に乾燥させて焼結原料層とする。
ここで、塗布層を乾燥させた状態では、乾燥前の状態から収縮して、乾燥前の1/2〜1/4程度の厚みとなるが、乾燥後の焼結原料層の厚み(したがって後述する焼成工程開始直前の段階での厚み)は、70〜200μmの範囲内とすることが望ましい。焼成工程開始直前の段階での焼結原料層の厚みが70μm未満では、焼成後の焼結体層の厚みが薄すぎて、センサを湾曲させた時に、焼結体層が第1の電極としての金属薄板から剥離するおそれがある。一方、焼成工程開始直前の段階での厚みが200μmを越えれば、焼成後の焼結体層の厚みも厚くなりすぎ、その結果、後述するように充分な可撓性を焼結体層に与えることが困難となるおそれがある。
なお、第1電極を兼ねる金属薄板上に焼結原料の分散液もしくはペーストを塗布してその塗布層を形成した後の乾燥は、次の焼成工程における焼結のための加熱の初期段階で行なっても良い。
〔焼成工程P3〕
続いて、前述のようにして第1の電極としての金属薄板の板面に焼結原料層を形成した状態で、その焼結原料層を加熱して焼成する。
この焼成工程では、比較的粗大な原料粉末の粒子(平均粒径1〜10μm)の間に存在しているアルコキシドが分解し、超微粉末状の分解生成物が生成され、かつその分解生成物が、比較的粗大な原料粉末の粒子を焼結結合させる役割、すなわち焼結助剤として機能する。しかもその分解生成物は、それ自体でPZTなどの目標とする酸化物系セラミック圧電材料組成を有するため、圧電特性を向上させる機能も果たす。したがってこのように比較的粗大な原料粉末とともにアルコキシドゾルを混合して焼成することにより、比較的低温でも焼結が進行し、かつ圧電特性も向上する。
ここで、焼成工程では、加熱温度を600〜800℃の範囲内として、焼成後の状態(圧電材料焼結体層)の密度が70〜80%の範囲内となるように焼成することが望ましい。
焼成後のセラミック焼結体の密度が80%と越える高密度となれば、焼結体層の剛性が高くなって、可撓性が劣る状態となり、その結果、厚みセンサとしての使用時においてセンサを湾曲させれば、焼結体層が第1の電極としての金属薄板から剥離したり、クラックが発生したりするおそれがあり、したがって厚さ測定対象の配管などの湾曲部分に適用することが困難となる。また同時に密度が80%と越える高密度となるように焼成した場合、焼成時の収縮が大きくなって、第1の電極としての金属薄板(支持体)から剥離してしまうおそれが強く、その結果、第1の電極としての金属薄板上に密着した焼結体層を得ることが困難となる。
一方、焼成後のセラミック焼結体の密度が70%未満の低密度では、焼結体層の空隙率が高すぎて、焼結体層内部の粒子が充分に結合されていない状態となり、そのため、その後の工程におけるハンドリング時やセンサとしての使用時に焼結体層が粉体状に剥落してしまうおそれがあり、また同時に、焼結体層内部の空隙率が高くなって、厚さ測定のため超音波センサとして充分な圧電特性が得られなくなるおそれがある。
したがって焼成後のセラミック焼結体の密度は、70〜80%の範囲内とすることが望ましいが、このような密度の焼結体層を形成するためには、焼成温度を600〜800℃の範囲内とすることが好ましい。このように従来一般の酸化物系圧電材料(セラミック圧電材料)の焼成温度よりも低い600〜800℃の焼成温度でも、焼結原料に配合されているアルコキシドの分解生成物が焼結助剤として機能するため、超音波厚みセンサとして必要な圧電特性を示す焼結体密度を充分に得ることができる。
ここで焼成温度が800℃を超える高温となれば、焼成時に粉体粒子同士の焼結反応が急速に進行して、密度が80%以下の焼結体層を得ることが困難となる。一方、焼成温度が600℃未満の低温では、粉体粒子同士の焼結反応が充分に進行せず、焼結体層の密度を70%以上に高めることが困難となる。なお焼成温度は、600〜800℃の範囲内でも、特に650〜750℃の範囲内が好ましい。
また焼成時の雰囲気は大気とすることが好ましい。さらに焼成時間は、焼成温度によっても異なるが、通常は1〜10時間とすることが好ましい。
このような焼成工程によって、支持体を兼ねた第1の電極としての金属薄板の一方の板面に、所定の厚み、所定の密度の圧電材料焼結体層が形成される。
〔第2電極形成工程P4〕
この第2電極形成工程は、前記第1の電極(金属薄板)の対極となる第2の電極を、前記圧電材料焼結体層の上面(第1の電極に対し反対側の面)に形成する工程である。
第2の電極形成のための具体的手段は特に限定されないが、例えば銀(Ag)などの電極用の導電性金属の粉末をペースト化しておき、そのペーストを焼結体層表面に塗布して焼き付けたり、あるいは電極用の導電性金属の薄膜を焼結体層の表面に載置もしくは貼着して焼き付けたりすれば良い。なおこの第2電極の厚みは、10〜100μmとすることが好ましい。第2の電極の厚みが100μmを越えれば、厚みセンサの可撓性を損なうおそれがあり、一方10μm未満に薄く第2の電極を形成した場合、焼結体層表面の凹凸によって局部的に第2の電極が不連続となってしまうおそれがある。
このようにして、支持体を兼ねた第1の電極(金属薄板)の一方の板面にセラミック圧電材料からなる焼結体層が形成され、さらにその焼結体層の表面に第2の電極が形成された積層体が得られる。なおここで、第1、第2の電極は、次の分極処理時における分極電圧印加のための電極として機能すると同時に、厚さセンサとしての使用時において超音波送受信のための電極として機能するものである。
〔分極処理工程P5〕
その後、前記積層体における第1及び第2の電極の間に直流の電位差を印加して、分極処理を行う。この分極処理は、従来の一般的な圧電素子の製造の場合と同様に行なえばよい。
このように分極処理を施すことによって、焼結体層は圧電特性を示すようになり、したがって超音波厚みセンサに使用できるようになる。
なお実際の超音波センサでは、前記第1の電極、第2の電極に、超音波測定の電圧信号の入出力ためにリード線を取り付けておく必要がある。そこで分極処理の後、もしくは分極処理の前に、各電極に導電ペーストなどを用いてそれぞれリード線を取り付けておくのが通常である。
次に図2を参照して、本発明の第2の実施形態の超音波厚みセンサ製造方法を説明する。
この第2の実施形態は、基本的には、酸化物系圧電材料からなる比較的粗大な粉末(平均粒径1〜100μmの粉末)と、同じく酸化物系圧電材料からなりかつアルコキシド分解法により生成された微粉末(平均粒径0.1〜1.0μmの微粉末)とを混合して、その混合物を第1電極を兼ねた金属薄板上で焼成するものである。
具体的には、図1に示しているように、
P1:酸化物系圧電材料、例えばPZTなどの平均粒径1〜10μmの原料粉末と、同じくPZTなどの酸化物系圧電材料からなるアルコキシド分解微粉末を混合して、その混合物からなる焼結原料を調製する焼結原料調製工程、
P2:前記混合物からなる焼結原料を金属薄板からなる第1の電極の一方の板面に所定厚みで付着させて、第1の電極の一方の板面上に焼結原料層を形成する焼結原料層形成工程、例えば前記混合物の分散液(ペースト)を、金属薄板からなる第1の電極の一方の板面に塗布して、その塗布層からなる焼結原料層を形成する工程、
P3:第1の電極を兼ねた前記金属薄板上の焼結原料層を加熱して焼成し、圧電材料焼結体層を第1の電極の一方の板面上に形成する焼成工程、
P4:前記焼成工程P3の終了後、前記圧電材料焼結体層における前記第1の電極に対して反対側の表面に第2の電極を形成する第2電極形成工程、
P5:第1の電極と第2の電極との間に電位差を与え、圧電材料焼結体層を分極処理する分極処理工程、
以上のP1〜P5の各工程からなるプロセスによって、セラミック圧電材料からなる超音波厚みセンサを製造する。
このような第2の実施形態における各工程P1〜P5について、以下に具体的に説明する。
〔焼結原料調製工程P1〕
予め、準備工程として、前述の第1の実施形態と同様に、ペロブスカイト型結晶構造を有する強誘電体からなる酸化物系圧電材料、例えばPZTなどからなる平均粒径1〜10μmの比較的粗大な粉末原料粉末を準備しておく。その具体的な方法は、第1の実施形態と同じであればよく、そこでその説明は省略する。
一方、上記の比較的粗大な原料粉末の準備と並び、PZTなどの酸化物系圧電材料の微粉末(平均粒径0.1〜1.0μm程度)をアルコキシド分解法によって生成させておく。
ここで、PZTなどの酸化物系圧電材料の微粉末をアルコキシド分解法によって生成するための具体的方法は、従来知られているアルコキシド分解法と同様であればよく、特に限定されるものではないが、通常は、PZTなどの酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドのゾルを、例えば、混合アルコキシドに水を加えて加水分解すれば良い。ここで準備するアルコキシドゾルは、上記の酸化物系圧電材料の原料となる酸化物の金属成分のアルコキシド、すなわち金属成分をM、アルキル基をRとし、一般式 M(OR)で表される金属アルコキシドのゾルである。例えばPZTの場合は、金属成分Mは、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、およびチタン(Ti)が主成分であるから、鉛アルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、およびチタンアルコキシドの各ゾルを用意する。一方、アルキル基Rは特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ブチル基、イソブチル基、t―ブチル基、s−ブチル基などを適用することができる。より具体的には、PZTの場合、鉛アルコキシドとしては、鉛ジイソプロキシド、鉛ジブトキシドなど、またジルコニウムアルコキシドとしては、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシドなど、チタンアルコキシドとしては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシドなどを用いることが好ましい。
またこの場合、各アルコキシドゾルの配合は、その金属成分の割合が、目標とする酸化物系圧電材料における金属成分の割合と同等となるように定めることが望ましい。すなわち、一般式Pb(ZrTi1−x)Oで表されるPZTの場合、各アルコキシドの金属成分のモル比が、Pb:Zr:Ti=1:x:1−xの割合となるように配合することが望ましい。
なおPb(ZrTi1−x)O〔但し0.5≦x≦0.7〕のPZT組成を基本として、それに微量添加元素として、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、La、Nd、Sc、Gdなどの1種又は2種以上を添加したPZT系圧電セラミック材料を対象とする場合、アルコキシドゾルとしては、必ずしも微量元素金属のアルコシシドまで含んでいなくても良く、主成分であるPb,ZrTiのアルコキシドゾルで充分である。もちろん場合によっては、これらの微量添加元素の金属アルコキシドを含むゾルであってもよい。
以上のようなアルコキシドゾルを、前述のように加水分解すれば、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物系圧電材料からなる平均粒径0.1〜1.0μmの微細粉末(アルコキシド分解微粉末)が得られる。ここで、アルコキシド分解微粉末の平均粒径を0.1μm未満とすることは、一般的なアルコキシド分解法では困難であり、一方、1.0μmを越える大径粒子では、焼成工程において後述する焼結助剤の機能が期待できなくなる。
前述のようなペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物系圧電材料からなる比較的粗大な原料粉末(平均粒径1〜10μm)と、同じくペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物系圧電材料からなる微細な原料粉末(平均粒径0.1〜1.0μm)とを、エタノールや酢酸エチルなどの適宜の溶剤を用いて混合、混錬し、乾燥させれば、焼結原料としての混合物が得られる。
なお、上記の比較的粗大な原料粉末とアルコキシド分解微粉末との混合比は特に限定しないが、通常は、同じ金属成分で比較して、原料粉末中の金属成分に対するアルコキシド分解微粉末中の金属成分のモル比が、0.2〜1.0の範囲内となるように混合することが望ましい。上記のモル比が0.2未満では、アルコキシド分解微粉末が少なすぎて、焼成工程においてその微粉末が焼結助剤として充分に機能せず、低温での焼結が困難となり、一方上記のモル比が1.0を越えれば、アルコキシド分解微粉末が多すぎて、第1の電極を兼ねる金属薄板上で焼成したときに、比較的粗大な原料粉末の粒子が充分に結合されず、焼結体層が粉っぽくなり、飛散または剥落してしまうおそれが強くなる。
〔焼結原料層形成工程P2〕
この焼結原料層形成工程は、前記混合物(焼結原料)を、第1の電極としての金属薄板の板面に所定の厚みで付着させて、金属薄板の表面に所定の厚みの焼結原料層を形成する工程である。
上記金属薄板は、電極として機能するだけではなく、乾燥後の焼成工程や厚みセンサとしての使用時において支持体として機能するものである。その金属薄板の材質は特に限定されないが、本発明の場合、焼結原料としての比較的粗大な粉末とアルコキシド分解微粉末との混合物を用いているため、600〜800℃程度の比較的低温で焼成することができ、そのため800℃程度までの耐酸化性を有する汎用の耐熱金属を使用することができる、すなわち、第1の実施形態に関して述べたと同様に、白金などの如く1200℃以上まで耐えうる高価な金属を用いる必要はなく、ステンレス鋼やその他の汎用の耐熱鋼を、第1の電極を兼ねる金属薄板として使用することができる。
また第1の電極としての金属薄板の厚みは、第1の実施形態に関して述べたと同様に、
15μm〜100μmとすることが好ましい。
さらに、なお前記焼結原料としての混合物を金属薄板上に付着させるための手段としては、その混合物の分散液もしくはペーストを金属薄板表面に塗布する方法が代表的である。またその場合の塗布手段としては、ロールコーターや、その他、一般の印刷技術で適用されている塗布・印刷手段を任意に適用することができる。このように分散液またはペーストとして塗布した場合、塗布後に乾燥させて焼結原料層とする。
ここで、乾燥後の焼結原料層の厚みも、前記第1の実施形態と同様に、焼成工程開始直前の段階での厚み)は、70〜200μmの範囲内とすることが望ましい。
なお、第1電極を兼ねる金属薄板上に焼結原料の分散液もしくはペーストを塗布してその塗布層を形成した後の乾燥は、次の焼成工程における焼結のための加熱の初期段階で行なっても良いことも、第1の実施形態と同様である。
〔焼成工程P3〕
続いて、前述のようにして第1の電極としての金属薄板の板面に焼結原料層を形成した状態で、その焼結原料層を加熱して焼成する。
この焼成工程では、比較的粗大な原料粉末の粒子(平均粒径1〜10μm)の間に存在しているアルコキシド分解微粉末(平均粒径0.1〜1.0μm)が、比較的粗大な原料粉末の粒子を焼結結合させる役割、すなわち焼結助剤として機能する。しかもその微粉末自体も、PZTなどの目標とする酸化物系セラミック圧電材料組成であるため、圧電特性を向上させる機能も果たす。したがってこのように比較的粗大な原料粉末とともにアルコキシド分解微粉末を混合して焼成することにより、比較的低温でも焼結が進行し、かつ圧電特性も向上する。
以上のような焼成工程によって、支持体を兼ねた第1の電極としての金属薄板の一方の板面に、所定の厚み、所定の密度の圧電材料焼結体層が形成される。
〔第2電極形成工程P4〕
この第2電極形成工程は、第1の実施形態の場合と同様であるから、その説明は省略する。
〔分極処理工程P5〕
この分極処理も、第1の実施形態の場合と同様であるから、その説明は省略する。
この分極処理を施すことによって、焼結体層は圧電特性を示すようになり、したがって超音波厚みセンサに使用できるようになる。
なおこの第2の実施形態の場合も、分極処理の後、もしくは分極処理の前に、各電極に導電ペーストなどを用いてそれぞれリード線を取り付けておくのが通常である。
以上のような第1もしくは第2の実施形態の方法によって製造された超音波厚みセンサ、及びその使用時の状況を図3に示す。
図3において、符号1は、超音波厚みセンサ9の第1の電極(支持体を兼ねた金属薄板)であり、その第1の電極1の一方の板面に、圧電材料焼結体層(例えばPZT圧電セラミック層)3が形成されており、更にその圧電材料焼結体層3の表面に第2の電極5が形成されている、そして第1の電極1、第2の電極5のそれぞれからは、リード線7A、7Bが引き出されている。このように構成された厚みセンサ9は、その第1の電極1の片面が厚さ測定対象物(金属管の管壁、容器の外壁など)11の表面に接するように、接着剤13などを用いて貼り付けることによって、その測定対象物の厚みを随時測定することができる。なおこの際の接着剤13としては、銀ペースト、ガラスペースト、白金ペースト、金ペーストなどを使用すればよい。
ここで、本発明の各実施形態により製造された超音波厚みセンサは、全体として第1の電極、焼結体層、第2の電極の3層構造からなる極めて薄型のものであって、配管の外側に保護や断熱などのために外被を設ける場合でも、配管組み立て時において予め配管の外面に接着しておき、その厚みセンサの外側から配管の保護や断熱のための外被を設け、その状態で配管設備をそのまま使用し、そのままの状態で適宜厚み測定をおこなうことができる。そしてその場合には、厚み測定前における外被の剥離や、測定後の外被修復作業が不要となり、また厚み測定前に対象物の表面に超音波媒体を塗布する作業、及び測定後に超音波媒体を拭き取る作業も不要となる。
またこの超音波厚みセンサは、全体として薄質で可撓性を有しているため、図3に示したように、測定対象物11の表面が湾曲している場合であっても、その湾曲面に沿って超音波厚みセンサを接着して、湾曲部位における厚み測定を行なうことができる。
以下に本発明の実施例を記す。
この実施例1は、第1の実施形態の方法に従い、PZT粉末とPZTの金属成分のアルコキシドゾルとの混合物を第1電極としての金属薄板に付着させて焼成する方法によって超音波厚みセンサを製造した実施例である。
先ずPZT用の原料粉末として、酸化鉛(PbO)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)の粉末を用意し、これらを、PbO:1モル、ZrO:0.5モル、TiO:0.5モルの割合で配合し、溶媒をエタノール、分散剤をポリエチレンイミンとして、ボールミルにより24時間湿式混練し、スラリーとした。そのスラリーを乾燥させて混合粉末塊とした後、アルミナるつぼに入れて、アルミナの蓋をし、850℃、10時間の熱処理(仮焼成)を行い、ペロブスカイト型結晶構造を有するPZT粉末塊を得た。そのPZT粉末塊を粉砕し、300ミクロンの篩いを通過させたものをボールミルに入れ、エタノール中で、ジルコニアボールを粉砕媒体として24時間粉砕することにより、平均粒径2μmのPZT粉末とし、乾燥させた。
一方、鉛アルコキシドとして鉛ジイソプロキシド、ジルコニウムアルコキシドとしてジルコニウムテトラブトキシド、チタンアルコキシドとしてチタンテトライソプロポキシドを用意し、これらをPb:Zr:Ti=1:0.5:0.5のモル比となるように配合してキシレンに溶解させ、そのアルコキシドゾルに、前述の平均粒径2μmのPZT粉末を分散させ、アルコキシドゾル‐PZT混合分散液を得た。
次いでそのアルコキシドゾルーPZT混合分散液を、第1の電極としてのSUS304からなる金属薄板(厚さ50μm、1cm×2cm角)の中央に、8mm角の方形状に厚さ100μmで塗布した。具体的な塗布方法としては、前記金属薄板の板面に、8mm角の開口部が形成されるように100μm厚のテープでマスキングし、ロールコーターで前記開口部にアルコキシドゾルーPZT混合分散液を100μm厚で塗布した。
塗布後、乾燥させてから、700℃で熱処理を行うことにより、PZTを焼き付けた。具体的には、電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度2℃/minで700℃まで加熱し、700℃において1時間保持したのち、炉令した。これにより、焼成されたPZTからなる厚み50μmの圧電材料焼結体層が、第1の電極としての厚さ100μmのSUS304からなる金属薄板の上に焼き付けられたものが得られた。
次に、そのPZTからなる圧電材料焼結体層(8mm角)の中央に、4mm丸の大きさで第2の電極用の銀ペーストを塗布し、500℃で焼き付け、平均厚み20μmの第2の電極(銀電極)を形成した。
このようにして第1の電極(SUS304)上にPZTからなる圧電材料焼結体層(圧電セラミック層)が形成されかつその圧電材料焼結体層上に第2の電極(銀)が形成された積層体が得られた。なお圧電材料焼結体層の密度は、約75%であった。
その後、積層体を150℃のシリコンオイル中に浸漬し、積層体における第1の電極と第2の電極の間に3000V/mmの電位差を与える分極処理を5分間実施した。その後、第1の電極(SUS304)と第2の電極(銀)のそれぞれにリード線を導電ペーストにより接着し、厚みセンサとした。
分極処理後のサンプルについて、d33メータを用いて分極状況(圧電定数d33)を調べたところ、良好に分極されていることが確認された。また実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径10cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として銀ペーストを用いて貼り付け、管壁の厚み測定を行なったところ、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
この実施例2は、第2の実施形態の方法に従い、酸化物原料混合加熱法により製造した比較的粗大なPZT粉末と、アルコキシド分解法によって製造されたPZT微粉末との混合物を第1電極としての金属薄板に付着させて焼成する方法によって超音波厚みセンサを製造した実施例である。
すなわち、先ずPZT微粉末をアルコキシド分解法で調製した。具体的には、鉛アルコキシドとして鉛ジイソプロキシド、ジルコニウムアルコキシドとしてジルコニウムテトラブトキシド、チタンアルコキシドとしてチタンテトライソプロポキシドを用意し、これらをPb:Zr:Ti=1:0.5:0.5の割合になるように配合して、50℃で水を加えて加水分解し、平均粒径が0.15μmのアルコキシド分解PZT微粉末を得た。
一方、比較的粗大なPZT粉末用の原料粉末として、酸化鉛(PbO)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)の粉末を用意し、これらを、PbO:1モル、ZrO:0.5モル、TiO:0.5モルの割合で配合し、溶媒をエタノール、分散剤をポリエチレンイミンとして、ボールミルにより24時間湿式混練し、スラリーとした。そのスラリーを乾燥させて混合粉末塊とした後、アルミナるつぼに入れて、アルミナの蓋をし、850℃、10時間の熱処理(仮焼成)を行い、ペロブスカイト型結晶構造を有するPZT粉末塊を得た。そのPZT粉末塊を粉砕し、300ミクロンの篩いを通過させたものをボールミルに入れ、エタノール中で、ジルコニアボールを粉砕媒体として24時間粉砕することにより、平均粒径2μmのPZT粉末とし、乾燥させた。
前述のようにして得られた平均粒径0.15μmのアルコキシド分解PZT微粉末と、平均粒径2μmのPZT粉末とを、同じ金属成分で比較して、PZT粉末1モルに対しアルコキシド分解PZT微粉末0.3モルの割合で混合し、分散媒(溶剤)としてブチルカルビトールを加えて混錬し、ペーストを得た。
次いでそのペーストを、第1の電極としてのSUS304からなる金属薄板(厚さ50μm、1cm×2cm角)の中央に、8mm角の方形状に厚さ100μmで塗布した。具体的な塗布方法としては、前記金属薄板の板面に、8mm角の開口部が形成されるように100μm厚のテープでマスキングし、ロールコーターで前記開口部に前記ペーストを100μm厚で塗布した。
塗布後、乾燥させてから、700℃で熱処理を行うことにより、PZTを焼き付けた。具体的には、電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度2℃/minで700℃まで加熱し、700℃において30分保持したのち、炉令した。これにより、焼成されたPZTからなる厚み60μmの圧電材料焼結体層が、第1の電極としての厚さ100μmのSUS304からなる金属薄板の上に焼き付けられたものが得られた。
次に、そのPZTからなる圧電材料焼結体層(8mm角)の中央に、4mm丸の大きさで第2の電極用の銀ペーストを塗布し、500℃で焼き付け、平均厚み30μmの第2の電極(銀電極)を形成した。
このようにして第1の電極(SUS304)上にPZTからなる圧電材料焼結体層(圧電セラミック層)が形成されかつその圧電材料焼結体層上に第2の電極(銀)が形成された積層体が得られた。なお圧電材料焼結体層の密度は、約73%であった。
その後、積層体を150℃のシリコンオイル中に浸漬し、積層体における第1の電極と第2の電極の間に3000V/mmの電位差を与える分極処理を5分間実施した。その後、第1の電極(SUS304)と第2の電極(銀)のそれぞれにリード線を導電ペーストにより接着し、厚みセンサとした。
分極処理後のサンプルについて、d33メータを用いて分極状況(圧電定数d33)を調べたところ、良好に分極されていることが確認された。また実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径10cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として金ペーストを用いて貼り付け、管壁の厚み測定を行なったところ、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
以上、本発明の好ましい実施形態、実施例について説明したが、これらの実施形態、実施例は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。
1 第1の電極(金属薄板)
3 圧電材料焼結体層(PZT圧電セラミックス層)
5 第2の電極
9 超音波厚みセンサ
11 厚さ測定対象物

Claims (14)

  1. 酸化物系圧電材料からなる平均粒径1〜10μmの粉末と、その酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾル、もしくはその酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドの分解微粉末とを混合して、その混合物からなる焼結原料を調製する焼結原料調製工程と、
    前記焼結原料の混合物を、金属薄板からなる第1の電極の一方の板面に所定厚みで付着させて、第1の電極の一方の板面上に焼結原料層を形成する焼結原料層形成工程と、
    前記焼結原料層を加熱により焼成し、圧電材料焼結体層を第1の電極の一方の板面上に形成する焼成工程と、
    前記焼成工程終了後、圧電材料焼結体層における第1の電極に対し反対側の表面に第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
    前記第1の電極と第2の電極との間に電位差を与えて分極処理する分極処理工程と、
    を有してなることを特徴とする超音波厚みセンサの製造方法。
  2. 前記焼結原料調製工程において、酸化物系圧電材料からなる平均粒径1〜10μmの粉末と、その酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドゾルとを混合して、酸化物圧電材料粉末とアルコキシドゾルとからなる混合物の焼結原料を調製することを特徴とする請求項1に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  3. 前記焼結原料調製工程において、酸化物系圧電材料からなる平均粒径1〜10μmの粉末と、その酸化物系圧電材料の金属成分のアルコキシドの分解による平均粒径0.1〜1.0μmの微粉末とを混合して、酸化物圧電材料粉末とアルコキシドゾルとの混合物からなる焼結原料を調製することを特徴とする請求項1に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  4. 前記前記焼成工程によって、密度が70〜80%の範囲内の圧電材料焼結体層を得ることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  5. 前記前記焼成工程における加熱温度を、600〜800℃の範囲内とすることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  6. 前記前記焼成工程によって、厚みが30〜150μmの範囲内の圧電材料焼結体層を得ることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  7. 前記焼結原料層形成工程で、焼成前の状態の焼結原料層の厚みが70〜200μmの範囲内となるように焼結原料層を形成することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  8. 前記超微粉末層形成工程において、前記前記第1の電極の金属薄板として、その厚みが、
    10〜150μmの範囲内のものを用いることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  9. 前記第2電極形成工程において、第2の電極の厚みが、10〜100μmの範囲内となるように第2の電極を形成することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  10. 前記超微粉末調製工程において、湿式ビーズミルを用いて原料粉末を粉砕することを特徴とすることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  11. 前記酸化物系圧電材料からなる原料粉末として、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物系圧電材料を用いることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  12. 前記前記酸化物系圧電材料からなる原料粉末として、チタン酸ジルコン酸鉛系の圧電材料粉末を用いることを特徴とする請求項11に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  13. 前記第1の電極としてステンレス鋼の薄板を用いることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  14. 前記第2電極形成工程において、前記圧電材料焼結体層の表面に、銀ペーストを塗布して焼付け、これによって第2の電極を形成する請求項1〜請求項13のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2021012942A (ja) * 2019-07-05 2021-02-04 本多電子株式会社 超音波振動子及びその製造方法

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