JP2013239635A - 超音波厚みセンサの製造方法 - Google Patents

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克実 難波
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Abstract

【課題】超音波厚みセンサとして薄質で可撓性を示して、測定対象表面が湾曲している場合でもそれに追従させることができ、しかも測定対象個所に常時貼着させておくことを可能として、厚み測定前後の種々の作業を不要とし、厚み測定の手間と時間を大幅に削減し、かつ多数の箇所の同時的な厚み測定や、連続的な厚み測定も可能とし、さらに300℃以上の比較的高温でも使用可能な超音波厚み測定センサを製造する方法を提供する。
【解決手段】チタン酸ビスマスの粉末を、平均粒径0.15〜0.25μmの超微粉末に調製し、その超微粉末のペーストを、少なくとも表面が導電性を有しかつ一方の電極となるべき薄板状支持体の表面に塗布し、加熱、焼成して、比較的ポーラスで可撓性を示し得る薄質なチタン酸ビスマス焼結体層を薄板状支持体表面に形成し、その後、他方の電極の形成及び分極処理を行って、センサ全体として可撓性を示し得るようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物系圧電材料からなる圧電素子を用いて、超音波により各種配管の金属管、その他の管の管壁の厚み、あるいは各種金属容器の外壁の厚みなど、種々の厚みを検出するための超音波厚みセンサの製造方法に関するものである。
周知のように圧電素子を用いて超音波の送受信を行なって、各種の対象物、対象部位の検出や、各種測定、診断などを行なう装置は、従来から広く使用されている。例えば水中探査用のソナー、あるいは超音波探傷装置、超音波診断装置が従来から広く知られており、そのほか、金属板や金属管などの厚みを検出する厚みセンサにも、超音波センサが用いられている(例えば特許文献1、2など)。
このような超音波送受信用の圧電素子の材料としては、PZTと称されるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)で代表されるペロブスカイト結晶構造を有する酸化物系圧電材料(圧電セラミックス)が最も代表的である。
ところでこの種の酸化物系圧電材料からなる圧電素子の製造方法としては、PZTなどの原料粉末を円盤状あるいは立方体形状などの所定のバルク形状に成形し、その成形体を焼結して、セラミック焼結体とし、その後、焼結体に電極を取り付けてから分極処理を施し、圧電素子とするのが一般的である(例えば特許文献3参照)。
具体的には、例えばPZT圧電素子の場合、先ずPbO、ZrO、TiOなどのPZT用の原料粉末を所定の割合で配合し、その配合粉末に純水を加えてボールミルで混合粉砕し、乾燥して仮焼成し、再度粉砕して粉末とし、更に仮焼成してから再度粉砕して、ペロブスカイト型結晶構造を有する、粒径が数μmから数十μm程度のPZT粉末を得る。そしてそのPZT粉末に、PVA(ポリビニルアルコール)などのバインダを加えて混合し、適度の大きさの造粒粉とする。その後、造粒粉に圧力を加えて成形し、肉厚な円盤状あるいは立方体形状などの所定のバルク形状の成形体とする。更にその成形体を加熱してバインダを除去してから、高温に加熱して焼成(焼結)して、セラミック焼結体とし、その後、所定の製品形状(圧電素子形状)に加工した後、銀電極などの電極を焼付けなどにより取り付け、分極処理を行なって、圧電特性を付与するのが通常である。
上述のような従来の酸化物系圧電素子の製造法においては、成形体を焼結する際の加熱温度を1200℃程度以上に上げることによって急激に焼結体の緻密度が高まることが知られており、そこで一般には1200〜1300℃程度で焼結することが行なわれている。そしてこのように1200℃以上の高温で焼成することによって、焼結体は、密度90%以上に高密度化されて、緻密な焼結体が得られることが知られている。
このように、従来の製造方法において焼結体の高密度化を図っていた理由は、焼結体からなるセンサ素子が高密度となるほど、分極処理後の圧電特性が向上して、効率的に超音波を発振することが可能となり、超音波出力の高出力化が容易に図れることにある。そのため従来は、酸化物系圧電材料からなる圧電素子の製造にあたっては、焼成温度を1200℃以上の高温として焼結体の緻密化を図り、圧電特性をできるだけ高め、高出力化を図ろうとするのが常識であった。
例えば、超音波ソナーの場合は、センサから検出対象物までの距離が著しく大きく、そのため、確実に対象物を捕捉するためには、大出力を必要とする。また超音波探傷装置の場合、たとえ検出すべき部位までの距離が短くても、検出すべき傷や欠陥の形状が一様ではなく、しかも傷や欠陥からの反射波と、傷や欠陥よりも遠い位置に存在する管外表面/外部空間の境界面からの反射波との2種の反射波の受信信号を峻別することが必要であり、そのためある程度大出力とする必要がある。さらに更に超音波診断装置の場合も、検査対象部位の形状が一様ではなく、しかも人体組織を透過する際の超音波の減衰が大きいことなどから、やはりかなりの大出力とする必要がある。そこで、これらの用途では、セラミック圧電素子はできるだけ高密度とすることが必要とされている。そして厚みセンサについても、他の用途と同様に高密度化することが常識とされていたのである。
なお、圧電素子を高出力化すれば、それに伴って反射波のエネルギも大きくなる。そして反射波のエネルギが過大であれば、反射波の受信信号中のノイズが大きくなってしまう。そこで従来、過大な反射波が予想される場合には、反射波を減衰させるためのダンパを組み込んでおくことも行なわれている。
ところで従来の超音波厚みセンサでは、厚みの測定が必要になるたびごとに、センサの探触子の前面を、各種設備の配管などの測定対象物の外表面に、水などの超音波媒体を介して押し当て、超音波の送受信を行なって厚みを測定するのが通常である。
しかるに、各種設備の配管は、金属管の外表面が保護材や断熱材などの外被によって覆われていることが多い。このような場合に超音波厚みセンサによって配管の厚み測定を行なう際には、測定個所の外被を除去して金属管の外表面に媒体を塗布もしくは供給する準備作業が必要となり、また厚み測定後には、媒体を拭き取り、更に外被を修復する修復作業を必要とする。したがって1回の厚み測定作業に多くの手間と時間を要さざるを得なかったのが実情である。
更に、従来の超音波厚みセンサは、前述のように厚みの測定が必要になるたびごとに、センサの探触子の前面を、測定対象物の外表面に水などの超音波媒体を介して押し当てるのが通常であるため、配管や容器外壁などにおける多数の個所の厚み測定を同時に行なうことは困難であり、そのため多数の個所の厚み測定データを得たい場合には、膨大な手間と時間を要さざるを得なかった。
また同様の理由から、厚みの経時的な測定データを連続して得ることは困難であった。
一方、従来の製造方法によって得られた酸化物系圧電材料(セラミック圧電材料)を用いた圧電素子は、全体的に焼結体が緻密で、かつ厚いバルク形状を有しているため、可撓性(フレキシビリティ;屈曲性)を全く有していないのが通常である。そのため、このような圧電素子を配管や容器外壁などを対象とする超音波厚みセンサに用いた場合、次のような問題があった。
すなわち、配管のうちでもその管径が小さい配管、すなわち外面の曲率半径が小さい配管の管壁や、配管におけるL字状に屈曲した部あるいはL字状に溶接した部分、すなわちエルボー部分、さらにはT字状に溶接した部分の隅部の如く、湾曲した部分(凸状もしくは凹状に湾曲した部分)の厚みを測定しようとした場合、その湾曲部分に探触子の前面を均一に当てることは困難であり、そのため測定誤差が大きくなったり、厚み測定が困難となったりする問題もあった。
ところで、工場やプラントなどの配管においては、300℃程度以上の高温の流体が流れるものも多く、また各種容器としても、300℃程度以上の高温の媒体を収容するものも多いが、このような配管や容器に用いる超音波厚み測定センサは、300℃以上の比較的高温でも確実に作動して厚みを測定し得ることが必要である。
ここで、各種の用途の圧電素子に使用される酸化物系圧電材料としては、従来は前述のようにPZTと称されるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)が一般的であったが、PZTはそのキュリー温度が350℃程度以下であり、そのためPZTを300℃程度以上の高温域で使用すれば、分極が失われて、圧電特性を示さなくなり、厚み測定を行い得なくなってしまうおそれがある。したがって300℃程度以上の比較的高温の使用環境では、PZTを用いた厚みセンサは不適切であり、そこで300℃程度以上の比較的高温でも確実に厚み測定を行ない得る超音波厚みセンサの開発が望まれている。
また、通常は300℃以上の使用環境にはないが、火災や事故などによって周囲温度などが300℃以上に上昇する危険性があるような個所に設置される厚みセンサとしても、同様に300℃程度以上の比較的高温でも作動する超音波厚みセンサが望まれる。
特開平1−202609号公報 特開2002−228431号公報 特開平7−45124号公報
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、酸化物系圧電材料を用いた超音波厚みセンサとして、全体的に薄質で可撓性を示すことができ、そのため測定対象個所の外表面が湾曲している場合でもその湾曲面に追従させて、湾曲面における厚み測定を確実に行なうことができ、しかも配管や容器外壁などの測定対象個所に厚みセンサを常時貼着させておくことにより、厚み測定前の準備作業や測定後の修復作業などを不要とし、これによって厚み測定の手間と時間を大幅に削減することができ、併せて多数の箇所の同時的な厚み測定や、連続的な厚み測定も可能とし、しかも300℃程度以上の高温に曝されても圧電特性が失われることなく超音波厚み測定を行ない得るようにした超音波厚み測定センサを製造する方法を提供する。
前述のように各種の対象物検出や検査、測定、診断などのための超音波送受信に使用される従来の酸化物系圧電材料からなる圧電素子は、高い圧電効率を得るために、密度が90%以上となるように緻密化しておくのが常識とされており、超音波厚みセンサでも、同様に90%以上の高密度の圧電素子が使用されていた。
しかるに、各種設備における配管の管壁や容器の外壁などの厚み測定にあたっては、他の用途の場合のような高い圧電効率、高出力は必ずしも必要としないことを本発明者等は知見した。
すなわち、既に述べたように、水中探査用の超音波ソナー、あるいは超音波探傷装置、超音波診断装置などの場合は、対象物までの距離が遠かったり、あるいは対象物の形状が不定形で一様ではなかったり、更には対象部位に超音波が到達するまでの間の減衰が大きかったりする、などの点から、高出力が望まれるが、配管や容器などの厚み測定の場合、
対象となる管壁や容器外壁の厚み(超音波を透過/反射させるべき距離)は数百μmからせいぜい十数mm程度と小さく、しかも反射面は一様な定形面となっており、更には、超音波探傷の場合のように2種以上の反射波の受信信号を峻別する必要もないため、他の用途よりも超音波出力が小さくても、確実に厚みを測定し得ることを知見した。言い換えれば、厚みセンサの場合は、他の用途よりも圧電効率が低くても、厚みセンサとして充分に機能させることができることを知見したのである。
一方、酸化物系圧電材料からなる圧電素子においては、焼結体の緻密度が低くなって、相対的にポーラスとなれば、圧電効率は下がるが、薄質な可撓性を有する支持体上に焼結体層をポーラスに薄く形成しておけば、可撓性(フレキシビリティ)を付与することが可能となる。またその場合、支持体を圧電素子に必要な一対の電極のうちの一方の電極と兼ねさせて、焼結体層を支持体上に形成した後もその支持体をそのまま一方の電極として機能させることにより、簡単な工程で厚みセンサを製造し得ることを見い出した。
このように、厚みセンサとしては、焼結体の緻密度をある程度小さくすると同時に薄肉化を測って、圧電効率を若干下げながらも、厚みセンサとして可撓性を付与したものとすることができることを新規に見い出した。
ここで、上述のように電極を兼ねる薄質な支持体上に焼結体層を薄く形成するためには、その支持体として金属薄板を用い、その金属薄板上に、前述のような粒径が数μmから数十μm程度の焼結原料粉末のペーストを塗布して、支持体(金属薄板)ごと加熱し、ペーストを焼成することが考えられる。この場合、前述の従来法に倣って、1200〜1300℃程度の高温に加熱するとすれば、電極兼支持体の金属薄板として、1200〜1300℃の高温でも酸化しないような優れた耐高温酸化性を有する白金(Pt)などを用いざるを得ない。しかしながら、このような白金などの優れた耐高温酸化性を有する材料は、極めて高価格であるのが通常であり、したがってその場合には、厚みセンサの材料コストが著しく高くなってしまう。
ところで、各種の酸化物系圧電材料のうちでも、BITと称されるチタン酸ビスマス(BiTi12)は、そのキュリー温度が約410℃程度と、PZTのキュリー温度よりも高い。そのため、BITを超音波厚みセンサの圧電素子材料として用いれば、PZTを用いた場合よりも高温まで使用可能となる。そこで本発明者等は、400℃程度まで使用可能な超音波センサの酸化物系圧電材料としてBITを使用することを考えた。
そして本発明者が、BITを圧電材料とした超音波厚みセンサを製造する方法について種々実験、研究を重ねた結果、焼結に供されるチタン酸ビスマス粉末として、平均粒径が0.15〜0.25μmの超微細粉を用いれば、600〜800℃程度の低温でも焼結可能となり、しかもその場合、分極処理後には超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性と可撓性が得られることを見い出した。
すなわちBITからなる圧電素子の製造においては、従来一般には、ボールミルによって粉砕された1〜10μm程度の粒径のBIT粉末を焼成するのが通常であったが、ビーズミルなどを用いて焼結原料としてのBIT粉末を従来よりも格段に微細化して、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に調製し、その超微粉末を用いれば、従来一般の焼成温度(1200〜1300℃程度)よりも格段に低い600〜800℃程度の低温で焼成しても、厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を示すことができると同時に可撓性を示し得る比較的低密度の焼結体層を得ることが可能であることを見い出した。そしてこのような比較的低温の焼成温度であれば、電極を兼ねる前記支持体として、高価な白金などを使用する必要がなくなり、ステンレス鋼などの安価な材料を使用することも可能となって、材料コストの低減に有効となることを知見し、その結果、300℃程度以上の比較的高温の温度域(但し通常は400℃程度以下)でも使用可能な、可撓性を有する超音波厚みセンサを低コストで製造し得ることを見い出し、本発明をなすに至ったのである。
したがって本発明の超音波厚みセンサの製造方法では、基本的には、BITセラミックの焼結原料となるBIT粉末を、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に調製し、そのペーストを、一方の電極となる薄板状支持体の表面に塗布して、ペースト層もしくは超微粉末層を薄板状支持体によって支持しながら加熱、焼成して、比較的ポーラスで可撓性を示し得る焼結体層を前記薄板状支持体の表面に形成し、その後、他方の電極の形成と分極処理を行って、センサ全体として可撓性を示し得るようにした。
具体的には、本発明の基本的な態様(第1の態様)の超音波厚みセンサの製造方法は、
チタン酸ビスマスからなる原料粉末を、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に調製する超微粉末調製工程と、
前記超微粉末を分散媒とともに混錬して、超微粉末ペーストとするペースト化工程と、
前記超微粉末ペーストを、少なくとも一方の板面が導電性を有する薄板状支持体からなる第1の電極の前記板面上に塗布して、そのペースト層を乾燥させ、第1の電極の板面上に超微粉末層を形成する超微粉末層形成工程と、
前記超微粉末層を加熱して焼成し、チタン酸ビスマスからなる焼結体層を第1の電極の一方の板面上に形成する焼成工程と、
前記焼成工程終了の前もしくは後に、前記焼結体層における前記第1の電極に対し反対側の表面に第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
前記焼結体層の厚み方向に電位差を与えて分極処理する分極処理工程と、
を有してなることを特徴とするものである。
このような本発明の基本的な態様の超音波厚みセンサの製造方法においては、チタン酸ビスマス(BIT)からなる原料粉末を、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に調製し、その超微粉末のペーストを第1の電極としての薄板状支持体に塗布して乾燥させ、薄板状支持体に超微粉末を支持させた状態で支持体上の超微粉末層を焼成して、BIT焼結体層とする。この焼成時には、焼結原料のペースト層もしくはそのペースト層を乾燥させた超微粉末層は、第1の電極としての薄板状支持体によって支持される。そのためペースト層やその乾燥後の超微粉末層の厚みを薄くしても、支障なく焼成することが可能である。またその薄板状支持体は、厚みセンサとしての使用時においても、電極として機能するのみならず、焼結体層(圧電セラミック層)の支持体としても機能して、焼結体層が剥落することを防止できる。
そして第1の電極としての薄板状支持体として、可撓性を示す程度に薄いものを用いて、かつ第2の電極も充分に薄質としておけば、厚みセンサとしてその全体の厚みを薄くして、可撓性を有するものとすることができる。さらに、平均粒径0.15〜0.25μmという超微粉を焼結するため、焼成工程においては、比較的低温の焼成温度(例えば600〜800℃)でも、ある程度の密度(例えば70〜80%程度)を有する焼結体層、すなわち超音波厚みセンサとして支障ない程度の圧電特性を分極処理後に得ることができる焼結体層を形成することができる。
しかもBITは、そのキュリー温度が約410℃程度と、PZTのキュリー温度よりも高く、そのため分極処理後のBITからなる焼結体層(圧電セラミック層)が400℃近くの高温に曝されても分極が失われることがなく、したがって400℃程度までは超音波厚みセンサとして使用することが可能となる。
また本発明の第2の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1の態様の超音波厚みセンサの製造方法において、前記前記焼成工程によって、密度が70〜80%の範囲内のチタン酸ビスマスからなる焼結体層を得ることを特徴とするものである。
この第2の態様の超音波厚みセンサの製造方法では、BIT焼結体層(圧電セラミック層)の密度を、従来一般の圧電セラミックよりも低密度の80%以下としておくことによって、その焼結体層を第1の電極の薄板状支持体に支持させた状態で可撓性を示すことができる。また同時にBIT焼結体層の密度を70%以上とすることによって、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電性能を確保することができるとともに、BIT焼結体層が過度に低密度となって脆くなることにより、焼結体層が第1の電極から剥離してしまうことを防止できる。
なお本明細書において焼結体層の密度とは、空隙率の逆数、すなわち相対密度を意味するものとする。
一方、本発明の第3の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1、第2のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、前記前記焼成工程における加熱温度を、600〜800℃の範囲内とすることを特徴とするものである。
このように第3の態様の超音波厚みセンサの製造方法では、焼成工程における加熱温度を、従来一般の圧電セラミック製造における焼成温度より格段に低い600〜800℃の範囲内としているが、焼結原料が平均粒径0.15〜0.25μmと超微粉であるため、このような低温での焼結によっても焼結を進行させて、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を示しうる密度(従来よりも低い70〜80%程度)を有する焼結体層を形成することができる。そしてまた、このように比較的低い密度に焼結された焼結体層は、第1の電極の薄板状支持体により支持された状態で可撓性を示すことができ、また一方、焼結体層の密度が過度に小さくなって焼結体層が脆くなり、第1の電極から剥離してしまうことも防止できる。
また本発明の第4の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第3のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、湿式ビーズミルを用いて原料粉末を粉砕することを特徴とするものである。
このような第4の態様においては、超微粉末調製工程で湿式ビーズミルを用いることにより、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末を容易に得ることができる。
さらに本発明の第5の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第4のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、前記前記焼成工程によって、厚みが30〜150μmの範囲内のチタン酸ビスマス焼結体層を形成することを特徴とするものである。
このような第5の態様の超音波厚みセンサの製造方法では、BIT焼結体層として、その厚みが30〜150μmの範囲内と薄いものが得られるため、BIT焼結体層を第1の電極(薄板状支持体)に支持させた状態で、可撓性を示すことができる。
さらに本発明の第6の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、第5の態様の超音波厚みセンサの製造方法において、前記第1電極を構成する薄板状支持体として、その厚みが10〜150μmの範囲内の金属薄板を用い、また前記第2の電極を、その厚みが、10〜100μmの範囲内となるように形成することを特徴とするものである。
このような第6の態様の超音波厚みセンサの製造方法では、焼結体層の厚みが30〜150μmの範囲内と薄いことに加え、金属薄板(第1の電極)および第2の電極も薄いため、最終的に得られる厚みセンサとしても、容易に可撓性を示すものを得ることができる。
一方、本発明の第7の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、第5の態様の超音波厚みセンサの製造方法において、前記第1電極を構成する薄板状支持体として、その厚みが30〜100μmの範囲内の部分安定化ジルコニアからなるセラミック基板の表面に、良導電性を有する耐高温酸化性金属からなる平均膜厚5〜20μmのメタライズ層が形成されたメタライズ板を用い、また前記第2の電極を、その厚みが、10〜100μmの範囲内となるように形成することを特徴とすることを特徴とするものである。
この第7の態様のように、厚みが30〜100μmの部分安定化ジルコニアからなるセラミック基板の表面に、良導電性の耐高温酸化性金属からなる平均膜厚5〜20μmのメタライズ層が形成されたメタライズ板を用いた場合でも、最終的な超音波厚みセンサとして、容易に可撓性を示すものを得ることができる。
さらに本発明の第8の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第7のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、前記第2電極形成工程の前もしくは後に前記分極処理工程を行い、かつその分極処理工程においては、焼結体層表面もしくは第2の電極の表面に分極用電極が直接接触するように分極処理用電極を配置し、火花放電防止用媒体中において分極用電極と前記薄板状支持体の表面との間に電圧を印加することによって焼結体層を分極させることを特徴とするものである。
このように焼結体層に分極処理を施すことによって、BITからなる焼結体層は超音波厚みセンサに必要な程度の圧電特性を示し、超音波厚みセンサとして実際に使用可能となる。
一方、本発明の第9の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、前記第1〜第7のいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、前記第2電極形成工程の前もしくは後に前記分極処理工程を行い、かつその分極処理工程においては、焼結体層表面もしくは第2電極表面から離れた位置にコロナ放電用電極を配して、気体中においてコロナ放電用電極と支持体表面との間に電圧を印加することにより、その間にコロナ放電を生起させ、そのコロナ放電による電界領域内に焼結体層を曝すことにより焼結体層を分極させることを特徴とするものである。
このように、第9の態様においては、第8の態様で適用している従来一般の分極処理法に代えて、コロナ放電による分極処理を適用しているが、このようなコロナ放電による分極処理を適用することによっても、BIT焼結体層を、超音波厚みセンサとして必要な程度まで分極させることができる。またここで、第2の電極が焼結体層の表面上に未だ形成されていない状態、および既に第2の電極が焼結体層上に形成されている状態の、いずれの状態でコロナ放電による分極処理を行っても、焼結体層を分極させることができる。
本発明の超音波厚みセンサの製造方法によれば、センサ全体として薄質で可撓性を示す超音波厚みセンサを容易に製造することができる。特に本発明法では、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末の状態で、酸化物系圧電材料であるチタン酸ビスマス(BIT)の粉末を焼成するため、焼成温度を比較的低温とすることができ、したがって電極材料として耐高温酸化性が著しく優れた白金などの高価な材料を使用しなくて済むため、材料コストを抑えることができる。そして前述のように薄質で可撓性を示す超音波厚みセンサであれば、測定対象部位が湾曲面であってもその湾曲面に追従して変形させることが可能であるため、湾曲面における厚み測定を確実に行なうことができる。またこのような厚みセンサは、予め配管などの測定対象個所に貼り付けておいて、そのままの状態で配管設備などを稼動させ、必要な時に随時厚み測定を行なうことができ、その場合、厚み測定前後の作業、例えば配管における測定前の外被除去作業や媒体塗布作業、及び測定後の媒体拭き取り作業や外被修復作業などを不要とすることができ、そのため、厚み測定の手間と時間を大幅に削減することができ、さらには、多数の個所にそれぞれ厚みセンサを貼り付けておいて、多数の個所における厚みの同時測定を容易に行なうことができるとともに、経時的かつ連続的な厚み測定が可能もなるという、顕著な効果を得ることができる。
さらに本発明の製造方法によって得られた超音波厚みセンサは、その超音波送受信のための酸化物系圧電材料として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)よりもキュリー温度が高いチタン酸ビスマス(BIT)を使用しているため、PZTを用いた場合よりも高温まで使用可能であって、400℃程度までは確実に作動するから、300℃程度以上の高温の流体が流れる配管や、同様に300℃程度以上の高温の媒体を収容する各種容器における厚み測定に最適であり、その他300℃程度以上の高温に曝される危険性がある個所での厚み測定の用途に使用すれば、300℃程度以上の高温に曝された後にも厚み測定を継続することができる。
本発明の超音波厚みセンサの製造方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。 本発明の製造方法により得られた超音波厚みセンサの一例を、その使用時の状況として示す略解的な縦断面図である。 本発明の製造方法により得られた超音波厚みセンサの一例の使用時の状況の他の例を示す略解的な縦断面図である。 本発明の超音波厚みセンサの製造方法において適用されるコロナ放電による分極処理を実施している状況の一例を示す略解的な正面図である。 図4におけるV−V線での略解的な縦断側面図である。 図4におけるVI−VI線での略解的な平面図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本発明の実施形態の超音波厚みセンサ製造方法を示す。
この実施形態は、基本的には、第1の電極となるべき薄板状支持体として、ステンレス鋼などの金属薄板を用い、チタン酸ビスマス(BIT)からなる超微粉末(平均粒径0.15〜0.25μm)のペーストを焼結原料として、第1電極を兼ねた金属薄板上で焼成するものである。
具体的には、図1に示しているように、
P1:チタン酸ビスマス(BIT)からなる原料粉末(粗粉末)を準備する準備工程(BIT粗粉末調製工程)、
P2:BITからなる原料粉末(粗粉末)を、湿式ビーズミルなどにより、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に調製する超微粉末調製工程、
P3:前記超微粉末を分散媒とともに混錬して、超微粉末ペーストとするペースト化工程、
P4:前記ペーストを金属薄板からなる第1の電極の一方の板面に所定厚みで塗布して、そのペースト層を乾燥させ、第1の電極の一方の板面上に超微粉末層を形成する超微粉末層形成工程、
P5:超微粉末層形成工程終了後、超微粉末層を加熱して焼成し、BIT焼結体層を第1の電極の一方の板面上に形成する焼成工程、
P6A、P6B:前記焼成工程P5の終了後、次の分極処理工程の前に、焼結体層における前記第1の電極に対して反対側の表面に第2の電極を形成する第2電極形成工程(注:この第2電極形成工程は、焼成工程P5の終了後、次の分極処理工程の前に施す場合(図1においてP6Aと表示)と、分極処理工程に先立って行なう場合(図1においてP6Bと表示)とがある)、
P7A、P7B:焼結体層の厚み方向に電位差を与え、焼結体層を分極処理する分極処理工程(注:この分極処理を第2電極形成工程P6Aの後に行う場合を図1においてP7Aと表示し、第2電極形成工程P6Bの前に行う場合を図1においてP7Bと表示)、
以上の各工程からなるプロセスによって、酸化物系圧電材料としてBITを用いた超音波厚みセンサを製造する。
以下にこれらの各工程について、具体的に説明する。
〔準備工程(BIT粗粉末調製工程)P1〕
先ず、準備工程として、平均粒径1〜10μm程度のBIT粗粉末を準備しておく。
ここで、セラミック粉末製造メーカなどからは、圧電素子用の原料粉末としてBIT粉末が市販されており、したがって本発明の超音波厚みセンサの製造方法を実施するに当たっては、この種の市販のBIT粉末を購入して、それをそのまま、あるいは平均粒径1〜10μm程度に粉砕して使用しても良い。但し、BIT粗粉末の調製から出発してもよいことはもちろんであり、そこで、BIT粗粉末調製のための工程を、超微粉末調製工程に先立つ準備工程として次に簡単に説明する。
すなわち、BITの原料となる酸化物粉末、例えば酸化チタン(TiO)および酸化ビスマス(Bi)の各粉末を、目標とするBIT組成となるように配合するとともに、エタノールなどの溶媒やポリエチレンイミンなどの界面活性剤を適宜加えてボールミルなどにより混錬し、得られた混錬物(スラリー)を乾燥して混合粉末とする。さらにこの混合粉末を、粉体の状態で仮焼成する。この仮焼成は、通常は、大気雰囲気中で700〜1000℃程度の温度において1〜20時間程度加熱すればよい。このような仮焼成によって、混合酸化物粉末の各成分が相互に固溶して、ビスマス層状ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸ビスマス(BIT;BiTi12)が生成される。得られたもの(仮焼成後の状態では通常は塊状)を、ボールミルなどにより粉砕すれば、平均粒径1〜10μm程度のBIT粗粉末(原料粉末)が得られる。
なお本発明においては、BIT組成を基本として、それに微量添加元素として、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、La、Nd、Sc、Gdなどの1種又は2種以上を、それぞれ10重量%程度以下添加してもよく、要は、BIT系(チタン酸ビスマス系)の圧電セラミック材料と称される材料はすべて対象となる。
〔超微粉末調製工程P2〕
この超微粉末調製工程は、前述のようにして準備されたBITからなる粗粉末を、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に調製する工程であり、通常は、前述のような粒径が1〜10μm程度の粗粉末を、湿式ビーズミルを用いて粉砕すれば良い。
湿式ビーズミルは、粉砕対象の粗粉末と粉砕媒体のビーズを、水などの液体からなる分散媒とともに粉砕室に装入し、アジテータ(撹拌用ロータ)を数千rpmで高速回転させることによりビーズを撹拌して運動エネルギを与え、その運動するビーズにより粗粉末に対する摩擦、せん断、衝突などにより、粗粉末を超微粒子化するものである。ここで、粉砕媒体のビーズとしては、直径0.1mm〜1mm程度、一般には0.5mm程度の硬質物質からなる球体粒子が用いられる。またその硬質物質としては、セラミックス、ガラス、金属などがあるが、通常はジルコニア、ジルコニア強化型アルミナなどが好ましい。
なお湿式ビーズミルにおける分散媒としては、水のほか、エタノールなどのアルコール、その他ヘキサン等を用いることができる。
ここで、超微粉末調製工程で得るBIT超微粉末の平均粒径が0.25μmを越えれば、後の焼成工程において、600〜800℃程度の比較的低温の焼成温度では、所定の密度(例えば70〜80%)まで緻密化することが困難となり、超音波厚みセンサとして必要な圧電特性が得られなくなるおそれがある。一方、平均粒径が0.15μm未満となるまで超微粉化することは、生産性を阻害してコストアップを招くばかりでなく、凝集の原因となる問題もある。
このようにして得られた超微粉末は、分散媒に分散したスラリー状となっており、分散媒の種類によっては、そのスラリーをそのまま次のペースト工程でペースト化しても良いが、通常は、一旦乾燥させて乾燥超微粉末とした後、次のペースト化工程に進む。
〔ペースト化工程P3〕
このペースト化工程は、前記超微粉末調製工程によって得られた平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内のBITからなる超微粉末を分散媒とともに混錬して、次の超微粉末層形成工程でのペースト塗布に適した粘度を有する超微粉末ペーストとする工程である。
具体的には、微粉末用の公知の分散・混錬機を使用して分散媒とともに混錬すれば良いが、例えば3本ロールミル、すなわち3本のロールの回転差を利用した分散・混錬機を用いることが好ましい。なお際に用いる分散媒の種類は特に限定されず、エタノール、あるいはブチルカルビトール、PVBエタノールなどを用いることができる。またこのペースト化工程で生成するペーストは、その粘度が1000〜10000mPa・sであることが好ましい。ペーストの粘度が1000mPa・s未満では、続く微粉末層形成工程において、ペーストを金属薄板上に均一な厚みで形成することが困難となり、一方10000mPa・sを越えれば、粘度が高すぎてレベリングなどの平滑化などにおいて問題が生じるおそれがある。
〔超微粉末層形成工程P4〕
この超微粉末層形成工程は、前記超微粉末ペースト(焼結原料)を、第1の電極としての金属薄板の板面に所定の厚みで付着させてペースト層を形成し、さらにそのペースト層を乾燥させて、金属薄板の表面に所定の厚みの超微粉末層を形成する工程である。
上記金属薄板は、電極として機能するだけではなく、乾燥後の焼成工程や厚みセンサとしての使用時において支持体として機能するものである。その金属薄板の材質は特に限定されないが、本発明の場合、焼結原料粉末として平均粒径0.15〜0.25μmの超微粉末を用いているため、600〜800℃程度の比較的低温で焼成することができ、したがって800℃程度までの耐酸化性を有する汎用の耐熱金属を使用することができる。すなわち、白金などの如く1200℃以上まで耐えうる高価な金属を用いる必要はなく、ステンレス鋼やその他の汎用の耐熱鋼を、第1の電極を兼ねる金属薄板として使用することができる。具体的には、18Cr−8Niとして知られるSUS304系統のオーステナイト系ステンレス鋼、あるいは18Cr−12Ni−2.5MoのSUS316系統のオーステナイト系ステンレス鋼、その他、22Ni−12CrのSUH309系統のオーステナイト系耐熱鋼を用いることができる。これらは、いずれも白金よりも格段に安価に入手することができる。
前記第1の電極としての金属薄板の厚みは、10μm〜150μmとすることが好ましい。その厚みが10μm未満では、強度が不充分で、センサ製造工程中のハンドリングに支障をきたすおそれがあるとともに、厚みセンサとしての使用時において変形あるいは破損してしまうおそれがある。一方、その厚みが150μmを越えれば、金属薄板の可撓性が失われて、厚みセンサ全体としてもその可撓性が劣ることとなり、そのため使用時において厚み測定対象の配管の湾曲部分に貼着することが困難となるおそれがある。
なお前記焼結原料としてペーストを金属薄板上に付着させるための手段としては、そのペーストを金属薄板表面に塗布する方法が代表的である。またその場合の塗布手段としては、ロールコーターやスキージ、その他、一般の印刷技術で適用されている塗布・印刷手段を任意に適用することができる。このように塗布した後には、乾燥させて超微粉末層(焼結原料層)とする。乾燥手段は特に限定しないが、通常は自然乾燥すればよく、また場合によっては乾燥の促進のため、60℃程度以下に加熱しても良い。
ここで、塗布層を乾燥させた状態では、乾燥前の状態から収縮して、乾燥前の1/2〜1/4程度の厚みとなるが、乾燥後の超微粉末層(焼結原料層)の厚み(したがって後述する焼成工程開始直前の段階での厚み)は、70〜200μmの範囲内とすることが望ましい。焼成工程開始直前の段階での超微粉末層の厚みが70μm未満では、焼成後の焼結体層の厚みが薄すぎて、センサを湾曲させた時に、焼結体層が第1の電極としての金属薄板から剥離するおそれがある。一方、焼成工程開始直前の段階での厚みが200μmを越えれば、焼成後の焼結体層の厚みも厚くなりすぎ、その結果、後述するように充分な可撓性を焼結体層に与えることが困難となるおそれがある。
なお、第1電極を兼ねる金属薄板上にペーストを塗布した後の乾燥は、次の焼成工程における焼結のための加熱の初期段階で行なっても良い。
〔焼成工程P5〕
続いて、前述のようにして第1の電極としての金属薄板の板面に超微粉末層(焼結原料層)を形成した状態で、その超微粉末層を加熱して焼成し、BITからなる焼結体層を形成する。
この焼成工程では、加熱温度を600〜800℃の範囲内として、焼成後の状態(BIT焼結体層)の密度が70〜80%の範囲内となるように焼成することが望ましい。
焼成後のBIT焼結体層の密度が80%と越える高密度となれば、焼結体層の剛性が高くなって、可撓性が劣る状態となり、その結果、厚みセンサとしての使用時においてセンサを湾曲させれば、焼結体層が第1の電極としての金属薄板から剥離したり、クラックが発生したりするおそれがあり、したがって厚さ測定対象の配管などの湾曲部分に適用することが困難となる。また同時に密度が80%と越える高密度となるように焼成した場合、焼成時の収縮が大きくなって、第1の電極としての金属薄板から剥離してしまうおそれが強く、その結果、第1の電極としての金属薄板上に密着した焼結体層を得ることが困難となる。
一方、焼成後のBIT焼結体層の密度が70%未満の低密度では、焼結体層の空隙率が高すぎて、焼結体層内部の粒子が充分に結合されていない状態となり、そのため、その後の工程におけるハンドリング時やセンサとしての使用時に焼結体層が粉体状に剥落してしまうおそれがあり、また同時に、焼結体層内部の空隙率が高くなって、厚さ測定のため超音波センサとして充分な圧電特性が得られなくなるおそれがある。
したがって焼成後のBIT焼結体層の密度は、70〜80%の範囲内とすることが望ましいが、このような密度の焼結体層を形成するためには、焼成温度を600〜800℃の範囲内とすることが好ましい。このように従来一般の酸化物系圧電材料(セラミック圧電材料)の焼成温度よりも低い600〜800℃の焼成温度でも、焼結前の粉末が超微粉末であるため、超音波厚みセンサとして必要な圧電特性を示す焼結体密度を充分に得ることができる。
ここで焼成温度が800℃を超える高温となれば、焼成時に粉体粒子同士の焼結反応が急速に進行して、密度が80%以下の焼結体層を得ることが困難となる。一方、焼成温度が600℃未満の低温では、粉体粒子同士の焼結反応が充分に進行せず、焼結体層の密度を70%以上に高めることが困難となる。なお焼成温度は、600〜800℃の範囲内でも、特に650〜750℃の範囲内が好ましい。
また焼成時の雰囲気は大気(空気)とすることが好ましい。さらに焼成時間は、焼成温度によっても異なるが、通常は1〜10時間とすることが好ましい。
このような焼成工程によって、支持体を兼ねた第1の電極としての金属薄板の一方の板面に、所定の厚み、所定の密度のチタン酸ビスマス(BIT)からなる焼結体層が形成される。
〔第2電極形成工程P6A、P6B〕
この第2電極形成工程は、前記第1の電極(金属薄板)の対極となる第2の電極を、前記BIT焼結体層の上面(第1の電極に対し反対側の面)に形成する工程であり、次の分極処理工程P7Aを実施する前の工程(P6A)、あるいは分極処理工程P7Bを行なった後の工程(P6B)として実施される。
第2の電極形成のための具体的手段は特に限定されないが、例えば銀(Ag)などの電極用の導電性金属の粉末をペースト化しておき、そのペーストを焼結体層表面に塗布して焼き付けたり、あるいは電極用の導電性金属の薄膜を焼結体層の表面に載置もしくは貼着して焼き付けたりすれば良い。なおこの第2電極の厚みは、10〜100μmとすることが好ましい。第2の電極の厚みが100μmを越えれば、厚みセンサの可撓性を損なうおそれがあり、一方10μm未満に薄く第2の電極を形成した場合、焼結体層表面の凹凸によって局部的に第2の電極が不連続となってしまうおそれがある。
このようにして、支持体を兼ねた第1の電極(金属薄板)の一方の板面に、圧電材料としてのBITからなる焼結体層が形成され、さらにその焼結体層の表面に第2の電極が形成された積層体が得られる。
〔分極処理工程P7A、P7B〕
この分極処理工程は、第2電極形成工程P6Aを経て、第1の電極(金属薄板)上のBIT焼結体層の上面に第2の電極が形成された積層体、あるいは第2電極形成工程P6Bの実施前で第1の電極(金属薄板)上のBIT焼結体層の上面に第2の電極が未だ形成されていない積層体を対象とし、その積層体におけるBIT焼結体層の厚み方向に電位差を与えて、BIT焼結体を分極させる工程である。
この分極処理としては、
A:従来の一般的な分極処理方法、すなわち一対の分極用電極によって積層体を直接挟み、シリコンオイルなどの放電防止用液体中に浸漬させ、その状態で分極用電極間に高電圧を印加して、焼結体を分極させる方法(従来分極法)、
B:従来の一般的な分極処理方法とは異なり、気体(通常は空気)中において発生させたコロナ放電による電界領域内に焼結体を曝して、焼結体を分極させる方法(コロナ放電分極法)、
以上のAまたはBのいずれかを適用する。
Aの従来分極法を適用する場合、例えば前記積層体を、その両側から分極用電極によって挟み、かつ絶縁破壊による火花放電(全路放電)の発生を防止するためのシリコンオイルなどの放電防止用媒体(液体)中に浸漬させた状態で、焼結体層の厚み1mmあたり2000〜3000V程度の高電圧の直流電圧もしくはパルス電圧を焼結体層の厚み方向に加えればよい。また分極を促進するため、適宜80〜200℃程度に加熱したシリコンオイル中で高電圧を加えても良い。この分極法A自体は従来と同様であればよいから、その詳細は省略する。
一方Bのコロナ放電分極法は、有機材料の表面改質のための分極には従来から適用されているが、無機材料(酸化物系無機圧電材料)の分極のためには従来は適用されていなかった。しかるに本発明者等は、超音波厚みセンサとして使用される70〜80%の低密度のBIT焼結体であれば、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性が得られるように分極させることが可能であることを見い出した。
すなわち、気体(通常は大気)中において、線状電極もしくは針状電極からなるコロナ放電用電極と、それに対向する平板上のベース電極との間に高電圧光電を印加して、コロナ放電用電極からベース電極に向けて気体の電離によるコロナ放電を生起させ、かつそのコロナ放電による電界領域(放電域)内に前記積層体の焼結体層を曝せば、焼結体層の厚み方向に電位差を与えて分極させることができる。なおこのコロナ放電による分極処理は、それ以前の第2電極形成工程によって焼結体層の表面に予め第2の電極が形成されている場合、および焼結体層の表面に未だ第2の電極が形成されていない場合(すなわち分極処理工程の後に第2電極形成工程を実施する場合)のいずれの場合でも実施可能であることが確認されている。
このようなコロナ放電による分極処理を実施するための装置の具体的な例およびそれを用いた分極処理の詳細については、後に図4〜図6を参照して改めて説明する。
上述のような従来分極法Aもしくはコロナ放電分極法Bによって分極処理を施すことによって、焼結体層は圧電特性を示すようになり、したがって超音波厚みセンサに使用できるようになる。
なお、分極処理工程の前に第2電極形成工程を行なっていない場合には、分極処理工程P7Bの後工程として、第2電極形成工程P6Bを実施し、既に分極されている焼結体層の表面に前記と同様にして第2の電極を形成する。
なおまた、実際の超音波センサでは、前記第1の電極、第2の電極に、超音波測定の電圧信号の入出力ためにリード線を取り付けておく必要がある。そこで分極処理の後、もしくは分極処理の前に、各電極に導電ペーストなどを用いてそれぞれリード線を取り付けておくのが通常である。
以上のような実施形態の方法によって製造された超音波厚みセンサ、及びその使用時の状況を図2、図3に示す。
図2、図3において、符号1は、超音波厚みセンサ9の第1の電極(支持体を兼ねた金属薄板)であり、その第1の電極1の一方の板面に、BITからなる焼結体層(圧電セラミック層)3が形成されており、更にその焼結体層3の表面に第2の電極5が形成されている。そして第1の電極1、第2の電極5のそれぞれからは、リード線7A、7Bが引き出されている。このように構成された厚みセンサ9は、その第1の電極1の片面が厚さ測定対象物(金属管の管壁、容器の外壁など)11の表面に接するように、接着剤13などを用いて貼り付けることによって、その測定対象物の厚みを随時測定することができる。なおこの際の接着剤13としては、銀ペースト、ガラスペースト、白金ペースト、金ペーストなどを使用すればよい。
ここで、本発明の実施形態により製造された超音波厚みセンサは、全体として第1の電極(金属薄板)、焼結体層、第2の電極の3層構造からなる極めて薄型のものであって、配管の外側に保護や断熱などのために外被を設ける場合でも、配管組み立て時において予め配管の外面に接着しておき、その厚みセンサの外側から配管の保護や断熱のための外被を設け、その状態で配管設備をそのまま使用し、そのままの状態で適宜厚み測定をおこなうことができる。そしてその場合には、厚み測定前における外被の剥離や、測定後の外被修復作業が不要となり、また厚み測定前に対象物の表面に超音波媒体を塗布する作業、及び測定後に超音波媒体を拭き取る作業も不要となる。
またこの超音波厚みセンサは、全体として薄質で可撓性を有しているため、図3に示したように、測定対象物11の表面が湾曲している場合であっても、その湾曲面に沿って超音波厚みセンサを接着して、湾曲部位における厚み測定を行なうことができる。
さらに、本発明の実施形態により製造された超音波厚みセンサは、圧電材料としてキュリー温度が約410℃程度のチタン酸ビスマス(BIT)を使用しているため、400℃程度までは圧電材料であるBIT焼結体層が分極を失うことがなく、そのため400℃程度までの比較的高温域でも厚み測定を確実に行なうことができる。
次に、分極処理工程にコロナ放電分極法を適用する場合において、その分極処理を実施するためのコロナ放電分極処理装置の一例を図4〜図6に示し、さらにその装置を用いての分極処理の望ましい態様について説明する。
図4〜図6において、床面などの固定水平面上に設置された固定台21の上方に電極台23が位置しており、この電極台23は、固定台21に、昇降調整機構25を介して上下方向に位置調整に支持されている。例えば電極台32は、固定台1から垂直上方に伸びるガイド軸27によって昇降可能に支持されるとともに、油圧シリンダなどの流体圧シリンダあるいは回転螺子機構、その他、各種のリンク機構など、自動もしくは手動の任意の構成の昇降調整機構5によって昇降されるように構成されている。
前記電極台23は、その上面が水平な平坦面23Aとされており、またその電極台23は、基本的には少なくともその上面(平坦面)23Aが導電性を有する構成とされていればよいが、本実施形態の場合は、電極台23の全体がアルミニウムやアルミニウム合金、銅や銅合金などの導電性材料からなる構成とされている。そしてこの電極台23は、接地電位を保つように、アース線29によって電気的に接地されている。なお電極台23には、必要に応じて、電熱ヒータや温水ヒータ、オイルヒータなどの図示しない加熱手段が組み込まれていても良い。
さらに電極台23の上方には、コロナ放電用電極31として、直線状の導電性線材からなる1本または2本以上(図示の例では3本)の線状電極31A〜31Cが、その長さ方向が水平となるように(したがって電極台23の上面23Aと平行となるように)、かつ同じ水平面内において平行に等しい間隔Sで配設されている。これらの線状電極31A〜31Cは、タングステン(W)などの高融点導電材料によって外径50〜100μm程度の線材に作られたものである。そして線状電極31A〜31Cは、例えばアーム状の電極支持部材33から間隔をおいて下方に突出する一対の支持部33A、33B間に張設されて、水平状態を保つようになっている。また線状電極31A〜31Cは、直流高電圧電源からなる分極電圧印用の電源35の一方側(正極もしくは負極側)に、リード線36を介して電気的に接続されている。
以上のようにして、電極台23の上方の所定距離Gだけ離れた位置に、その電極台23の上面23Aと平行なコロナ放電用の線状電極31A〜31Cが配設された分極処理装置が構成されている。そして電極台23の上面23Aと線状電極31A〜31Cの間の距離Gは、昇降調整機構25によって電極台23の垂直方向位置を変えることによって、適宜調整可能となっている。
但し、場合によっては、電極台23の上下方向位置は固定しておく一方、電極支持部材33を昇降可能として、その電極支持部材33に昇降調整機構を設けておき、必要に応じて電極支持部材33を昇降させることによって線状電極31A〜31Cを上下動させ、これによって電極台23の上面23Aと線状電極31A〜31Cの間の距離Gを調整することも可能である。したがって、要は、電極台23の上面23Aと線状電極31A〜31Cの間の距離Gを調整する間隔調整手段として、電極台23と電極支持部材33のいずれかに昇降調整機構が設けられていれば良い。
次に、図4〜図6に示されるコロナ放電分極処理装置を用いて、前記積層体におけるBITからなる焼結体層に分極処理を施す方法について説明する。
ここで、積層体40は、既に述べたようにステンレス鋼や白金などの導電性を有する10〜150μm程度の薄質な金属薄板(第1の電極)1を支持体とし、その金属薄板1の一方の板面(上面)に、30〜150μm程度の薄い層状にBITからなる焼結体層3が形成されたもの(分極処理工程の前に第2電極形成工程を実施しない場合)、あるいは、上記と同様に支持体としての金属薄板(第1の電極)1の板面にBITからなる焼結体層3が形成され、さらにその焼結体層3の表面に第2の電極5が形成されたものである。但し図4〜図6の例では、第2の電極5を形成していない積層体40を示している。ここで、上記の金属薄板3は、コロナ放電のための電圧印加時に、コロナ放電用電極(線状電極31;31A〜31C)の対極の平板状ベース電極としても機能するものである。
前述のような積層体40における焼結体層3に分極処理を施すにあたっては、積層体40を、金属薄板1の板面(下面)が電極台23の上面23Aに接するように載置する。この状態では、電極台23と金属薄板1との間が電気的に導通されて、金属薄板1が電極台23と同電位(通常は接地電位)となり、金属薄板1自体が、コロナ放電時の平板状ベース電極として機能し得ることになる。またこの状態では、層状焼結体3の上面は水平となっており、同じく水平に張設された線状電極31A〜31Cとの間に所定の間隔が存在する。
この状態で分極電圧印用電源35を駆動させれば、線状電極31A〜31Cと金属薄板1との間に高電圧が加えられ、これによって各線状電極31A〜31Cから金属薄板1に向けてコロナ放電が発生して、電界領域(放電域;電位差領域)が形成される。層状焼結体3は、金属薄板1に対して線状電極31A〜31Cの側に形成されているから、その焼結体層3は、コロナ放電による電界に曝され、その結果、焼結体層3が分極されることになる。
本発明者等の実験によれば、密度が70〜80%と低密度でかつ厚みが数百μmオーダー以下の薄質なBITからなる焼結体層であれば、コロナ放電によって、超音波厚みセンサとして必要な程度の分極特性、圧電特性が得られることが判明している。
なお、場合によっては、既に述べたように分極処理装置として電極台23に予め加熱手段を組み込んだ構成を適用しておき、分極処理時に加熱手段を作動させて、電極台23および金属薄板1を介して層状焼結体3を、例えば80〜200℃程度に加熱し、その状態でコロナ放電を生起させて、分極を促進しても良い。
なお本例の場合、コロナ放電用電極としては、従来のコロナ放電において一般的な針状電極ではなく線状電極を用いているが、線状電極であっても、その径が小さければ、水平に伸びる線状電極の垂直断面で見れば点状となっており、そのため平板状ベース電極(金属薄板1)に向かってコロナ放電を生じさせることができる。しかも各線状電極31A〜31Cからは、その線状電極の長さ方向に沿う帯状に電界(放電域)が形成されるため、ある表面積を有する層状焼結体3に対して、その表面における広がりを持った領域を同時に電界に曝し、これによって層状焼結体のある広さの領域を、一斉に分極させることができる。
ここで、線状電極31として平行な複数本のもの(31A〜31C)を設けておけば、同時に広い面積にわたって層状焼結体3をコロナ放電による電界中に曝すことができる。
例えば図4〜図6に示す例では、間隔を置いて平行に配列された3本の線状電極31A、31B、31Cのそれぞれと平板状ベース電極に相当する金属薄板1との間には、それぞれコロナ放電によって電界領域(放電域)41A、41B、41Cが形成される。これらの電界領域41A、41B、41Cは、それぞれ線状電極31A、31B、31Cの長さ方向に沿う帯状の領域として、最大幅(金属薄板表面付近での幅)Wで形成される。そして各電界領域41A、41B、41Cの幅方向の端部付近が互いに重なり合うように、線状電極31A、31B、31Cの相互間の間隔S、および線状電極31A、31B、31Cと電極台23との間の距離Gを設定しておけば、金属薄板1上に形成されている焼結体層3の全体が電界領域中に曝されることになり、その層状焼結体3の全体を同時に分極させることが可能となる。
なお、分極のためのコロナ放電時におけるコロナ放電用電極としての線状電極31(31A〜31C)と、それに対向する平板状のベース電極(金属薄板39)との間の間隔Gは、0.5〜2cm程度が好ましい。間隔Gが0.5cm未満では、対向電極間の距離が小さすぎて、絶縁破壊による火花放電(全路放電)が生じてしまうおそれがあり、一方間隔Gが2cmを越えれば、コロナ放電が生じにくくなってしまう。
また分極のためのコロナ放電時において印加する印加電圧は、間隔Gによっても異なるが、通常は5000〜15000V程度が好ましい。5000V未満ではコロナ放電が生じにくくなり、一方15000Vを越えれば、細い線状電極が焼切れてしまうおそれがある。なお本発明者等の実験によれば、焼結体層の密度が70〜80%で、かつ厚みが30〜150μm程度と薄質であれば、上記の電極間距離条件、印加電圧条件の範囲内でのコロナ放電によって、超音波厚みセンサとして必要な程度の分極特性(圧電特性)が得られることが確認されている。
さらに、高電圧を印加する時間、すなわちコロナ放電によって分極処理を行う時間は、1〜5分程度とすることが望ましい。分極処理時間が1分未満では、70〜80%の低密度の焼結体について、超音波厚みセンサとして必要な程度まで分極させることができなくなってしまうおそれがあり、一方、5分を越えて分極処理を行っても、70〜80%の低密度の焼結体ではそれ以上分極が進行せず、生産性を損なうだけである。但し、分極しにくい圧電材料の場合には、5分を越える長時間の分極処理を行うことも許容される。
なお、図4〜図6では、焼結体層3の表面に第2の電極5が予め形成されていない場合についてコロナ放電による分極処理を行う例として示しているが、第2の電極5が予め形成されている焼結体層3に対してコロナ放電による分極処理を行ってもよいことはもちろんであり、その場合においても、焼結体層3の表面に予め第2の電極5が形成されていない状態での分極処理条件と同様な条件で分極させ得ることが確認されている。
さらに、以上の説明では、焼結体層を支持するための薄板状支持体(超音波厚みセンサとしての第1の電極を兼ねるもの)として、ステンレス鋼などの金属薄板を用いることとしているが、基本的には、薄板状支持体は、第1の電極として機能させるべく、少なくとも表面に導電性が付与されているものであれば良い。したがって例えばジルコニア系セラミックスからなる平均厚み30〜100μm程度の薄い基板の板面に、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、その他、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)など、導電性を有しかつ耐高温酸化特性に優れた金属をメタライズして、平均膜厚5〜20μm程度のメタライズ層を形成した薄板状支持体を使用することも許容される。
すなわち、ジルコニア系セラミックスは、各種のセラミックスのうちでも、一般に靭性、延性が優れていて、薄質であれば、ある程度の可撓性を示すことができ、そのため本発明で対象としている超音波厚みセンサにおいて、板状支持体として金属薄板の代わりに使用することができる。特にジルコニア系セラミックスのうちでも、部分安定化ジルコニアは、靭性、延性に優れており、したがって超音波厚みセンサに使用することができる。部分安定化ジルコニアとしては、イットリウム(Y)で代表される希土類元素の酸化物(例えばイットリア:Y)や酸化マグネシウム(マグネシア:MgO)、あるいは酸化カルシウム(カルシア:CaO)などがある。これらのうちでも、イットリアを安定化剤として添加したイットリア部分安定化ジルコニア(3YSZ)を用いることが、特性(可撓性)およびコスト面から最も望ましい。
以下に本発明の実施例を記す。
この実施例1は、酸化ビスマス(Bi)および酸化チタン(TiO)の粉末からチタン酸ビスマス(BIT:BiTi12)の粗粉末(原料粉末)を製造し、さらにそのBIT粗粉末を、湿式ビーズミルによって超微粉末に調製し、その超微粉末のペーストを焼結原料として、第1の電極となる薄板状支持体の金属薄板に塗布、乾燥させてから焼成し、さらに分極処理としては一対の分極用電極によって挟んでシリコンオイル中で処理する方法を適用して、超音波厚みセンサを製造した実施例である。
すなわち、先ずBIT生成用の原料粉末として、酸化ビスマス(Bi)および酸化チタン(TiO)の粉末を用意し、これらを、Bi:2モル、TiO:3モルの割合で配合し、溶媒をエタノール、分散剤をポリエチレンイミンとして、ボールミルにより24時間湿式混練し、スラリーとした。そのスラリーを乾燥させて混合粉末塊とした後、アルミナるつぼに入れて、アルミナの蓋をし、850℃、10時間の熱処理(仮焼成)を行い、BIT、すなわちBiTi12の粉末塊を得た。そのBIT粉末塊を粉砕し、300ミクロンの篩いを通過させたものをボールミルに入れ、エタノール中で、ジルコニアボールを粉砕媒体として24時間粉砕することにより、平均粒径2.2μmのBIT粗粉末とし、乾燥させた。
次に、その粗粉末を、湿式ビーズミルを用いて、平均粒径0.2μmとなるまで粉砕した。なお湿式ビーズミルにおけるビーズ(粉砕媒体)としては、粒径0.5mmのジルコニアを用い、また分散媒としては水を用いた。
得られた超微粉スラリーを乾燥して、平均粒径0.2μmのBIT超微粉末を得た。
このBIT超微粉末に、分散媒としてブチルカルビトールを添加して、3本ロールミルで混練することにより、超微粉末のペーストを得た。
次いでその超微粉末ペーストを、第1の電極としてのSUS304からなる金属薄板(厚さ50μm、1cm×2cm角)の中央に、8mm角の方形状に厚さ100μmで塗布した。具体的な塗布方法としては、前記金属薄板の板面に、8mm角の開口部が形成されるように100μm厚のテープでマスキングし、ロールコーターで前記開口部にペーストを100μm厚で塗布した。
塗布後、ペーストを乾燥させてから、電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度2℃/minで700℃まで加熱し、700℃において1時間保持した後、炉令した。これにより、焼成されたBITからなる厚み60μmのBIT焼結体層が、第1の電極としての厚さ50μmのSUS304からなる金属薄板の上に焼き付けられたものが得られた。
更にそのBITからなる焼結体層(8mm角)の中央に、4mm丸で第2の電極用の銀ペーストを塗布し、500℃で焼き付けて、平均厚み30μmの第2の電極(銀電極)を形成した。
このようにして第1の電極(SUS304)上にBITからなる焼結体層(セラミック層)が形成されかつその焼結体層上に第2の電極(銀)が形成された積層体が得られた。なお焼結体層の密度は、約75%であった。
その後、積層体を150℃のシリコンオイル中に浸漬し、積層体における第1の電極と第2の電極の間に3000V/mmの電位差を与える分極処理を5分間実施した。その後、第1の電極(SUS304)と第2の電極(銀)のそれぞれにリード線を導電ペーストにより接着し、厚みセンサとした。
分極処理後のサンプルについて、d33メータを用いて分極状況(圧電定数d33)を調べたところ、良好に分極されていることが確認された。また実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径10cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として銀ペーストを用いて貼り付け、室温において管壁の厚み測定を行なったところ、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。さらに、上記の厚み測定対象の管壁を350℃に加熱して、その状態で上記と同様に厚み測定を行なったところ、室温の場合と同様に良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
この実施例2は、BIT超微粉末としては、実施例1と同様にして調製されたものを用い、分極処理方法としては、前記実施例1とは変えて、コロナ放電による分極処理を適用し、超音波厚みセンサを製造した実施例である。
すなわち、実施例1と同様にして平均粒径0.2μmのBITからなる超微粉末を調製し、更に実施例1と同様にしてペーストとし、第1の電極としての金属薄板(SUS304)に塗布、乾燥、焼成し、得られたBITからなる焼結体層上に第2電極を形成し、積層体とした。
次いでコロナ放電による分極処理を、次のようにして施した。すなわち、コロナ放電分極処理装置として図4〜図6に示す装置を用い、その電極台23上に積層体40を載置して、コロナ放電による分極処理を行なった。ここでコロナ放電用電極31としては、タングステン(W)からなる外径100μm、長さ150mmの3本の線状電極31A〜31Cを、30mmの間隔で平行に配列し、また積層体40と線状電極31A〜31Cとの間隔は1cmとし、9000Vの電圧を線状電極31A〜31Cと電極台23との間に加え、5分間処理を行った。
その後、第1の電極(SUS304)と第2の電極(銀)のそれぞれにリード線を導電ペーストにより接着し、厚みセンサとした。
コロナ放電による分極処理後のサンプルについて、d33メータを用いて分極状況(圧電定数d33)を調べたところ、実施例1と同様に良好に分極されていることが確認された。また実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径10cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として金ペーストを用いて貼り付け、実施例1と同様に、室温状態および350℃加熱状態で、管壁の厚み測定を行なったところ、室温、350℃加熱のいずれの状態においても良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
この実施例3は、BIT超微粉末としては、実施例1と同様にして調製されたものを用い、分極処理方法としては、コロナ放電による分極処理を、実施例2とは変えて、BITからなる焼結体層上に第2の電極が未だ形成されていない状態で実施し、その後に第2の電極を分極処理後の焼結体層上に形成して、超音波厚みセンサを製造した例である。
すなわち、金属薄板(SUS304)上にBITからなる焼結体層を形成するまでは、実施例2と全く同様とし、その焼結体層上に第2の電極を形成していない状態の積層体を、図4〜図6に示すコロナ放電分極処理装置の電極台23上に載置し、実施例2と同様な条件で、コロナ放電による分極処理を行った。
分極処理後、BITからなる焼結体層(8mm角)の中央に、4mm丸の大きさで第2の電極用の銀ペーストを塗布し、500℃で焼き付け、平均厚み20μmの第2の電極(銀電極)を形成した。その後、第1の電極(SUS304)と第2の電極(銀)のそれぞれにリード線を導電ペーストにより接着し、厚みセンサとした。
コロナ放電による分極処理後のサンプルについて、d33メータを用いて分極状況(圧電定数d33)を調べたところ、実施例2と同様に、良好に分極されていることが確認された。また実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径10cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として金ペーストを用いて貼り付け、実施例1と同様に、室温状態および350℃加熱状態で、管壁の厚み測定を行なったところ、室温、350℃加熱のいずれの状態においても良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
以上、本発明の好ましい実施形態、実施例について説明したが、これらの実施形態、実施例は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。
1 金属薄板(第1の電極;薄板状支持体)
3 焼結体層(BIT圧電セラミックス層)
5 第2の電極
9 超音波厚みセンサ
11 厚さ測定対象物
31、31A〜31C 線状電極(コロナ放電用電極)
40 積層体
41A〜41C 電界領域(放電域)

Claims (9)

  1. チタン酸ビスマスからなる原料粉末を、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に調製する超微粉末調製工程と、
    前記超微粉末を分散媒とともに混錬して、超微粉末ペーストとするペースト化工程と、
    前記超微粉末ペーストを、少なくとも一方の板面が導電性を有する薄板状支持体からなる第1の電極の前記板面上に塗布して、そのペースト層を乾燥させ、第1の電極の板面上に超微粉末層を形成する超微粉末層形成工程と、
    前記超微粉末層を加熱して焼成し、チタン酸ビスマスからなる焼結体層を第1の電極の一方の板面上に形成する焼成工程と、
    前記焼成工程終了の前もしくは後に、前記焼結体層における前記第1の電極に対し反対側の表面に第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
    前記焼結体層の厚み方向に電位差を与えて分極処理する分極処理工程と、
    を有してなることを特徴とする超音波厚みセンサの製造方法。
  2. 前記前記焼成工程によって、密度が70〜80%の範囲内のチタン酸ビスマスからなる焼結体層を得ることを特徴とする請求項1に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  3. 前記前記焼成工程における加熱温度を、600〜800℃の範囲内とすることを特徴とする請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  4. 前記超微粉末調製工程において、湿式ビーズミルを用いて原料粉末を粉砕することを特徴とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  5. 前記前記焼成工程によって、厚みが30〜150μmの範囲内のチタン酸ビスマス焼結体層を得ることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  6. 前記第1電極を構成する薄板状支持体として、その厚みが10〜150μmの範囲内の金属薄板を用い、また前記第2の電極を、その厚みが、10〜100μmの範囲内となるように形成することを特徴とする請求項5に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  7. 前記第1電極を構成する薄板状支持体として、その厚みが30〜100μmの範囲内の部分安定化ジルコニアからなるセラミック基板の表面に、良導電性を有する耐高温酸化性金属からなる平均膜厚5〜20μmのメタライズ層が形成されたメタライズ板を用い、また前記第2の電極を、その厚みが、10〜100μmの範囲内となるように形成することを特徴とすることを特徴とする請求項5に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  8. 前記第2電極形成工程の前もしくは後に前記分極処理工程を行い、かつその分極処理工程においては、焼結体層表面もしくは第2の電極の表面に分極用電極が直接接触するように分極処理用電極を配置し、火花放電防止用媒体中において分極用電極と前記薄板状支持体の表面との間に電圧を印加することによって焼結体層を分極させることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  9. 前記第2電極形成工程の前もしくは後に前記分極処理工程を行い、かつその分極処理工程においては、焼結体層表面もしくは第2電極表面から離れた位置にコロナ放電用電極を配して、気体中においてコロナ放電用電極と支持体表面との間に電圧を印加することにより、その間にコロナ放電を生起させ、そのコロナ放電による電界領域内に焼結体層を曝すことにより焼結体層を分極させることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
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