JP2014040356A - 超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法、酸化物系圧電材料粉末、超音波厚みセンサの製造方法、および超音波厚みセンサ - Google Patents

超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法、酸化物系圧電材料粉末、超音波厚みセンサの製造方法、および超音波厚みセンサ Download PDF

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Abstract

【課題】超音波厚みセンサとして薄質で可撓性を示し、しかも400℃程度の高温でも使用可能な、チタン酸ビスマスからなる酸化物系セラミックを用いてなる超音波厚み測定センサ用の圧電材料粉末(チタン酸ビスマス粉末)を製造する方法、特に超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を得ることが可能となる圧電材料粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】酸化チタンの粉末と酸化ビスマスの粉末とを混合する混合工程と、前記混合工程により得られた混合粉末を750℃〜900℃の範囲内の温度に加熱して、チタン酸ビスマスを合成する熱処理工程と、前記熱処理工程により得られたチタン酸ビスマスを粉砕して粉末とする粉砕工程とを有してなることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物系圧電材料からなる圧電素子を用いて、超音波によりボイラの水管などの管体や各種容器の壁の厚みなど、種々の部材の厚みを検出するための超音波厚みセンサに用いられる材料、とりわけ酸化物系圧電材料からなる圧電素子を用いた超音波厚みセンサにおける圧電素子の焼成原料となる粉末の製造方法、およびその方法によって製造された超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末、さらにその粉末を用いた超音波厚みセンサの製造方法と、それにより得られた超音波厚みセンサに関するものである。
周知のように圧電素子を用いて超音波の送受信を行なって、各種の対象物、対象部位の検出や、各種測定、診断などを行なう装置は、従来から広く使用されている。例えば水中探査用のソナー、あるいは超音波探傷装置、超音波診断装置が従来から広く知られており、そのほか、金属板や金属管などの厚みを検出する厚みセンサにも、超音波センサが用いられている(例えば特許文献1、2など)。
このような超音波送受信用の圧電素子の材料としては、PZTと称されるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)で代表されるペロブスカイト結晶構造を有する酸化物系圧電材料(圧電セラミックス)が最も代表的である。
ところでこの種の酸化物系圧電材料からなる圧電素子の製造方法としては、PZTなどの原料粉末を円盤状あるいは立方体形状などの所定のバルク形状に成形し、その成形体を焼結して、セラミック焼結体とし、その後、焼結体に電極を取り付けてから分極処理を施し、圧電素子とするのが一般的である(例えば特許文献3参照)。
具体的には、例えばPZT圧電素子の場合、先ずPbO、ZrO、TiOなどのPZT用の原料粉末を所定の割合で配合し、その配合粉末に純水を加えてボールミルで混合粉砕し、乾燥して仮焼成し、再度粉砕して粉末とし、更に仮焼成してから再度粉砕して、ペロブスカイト型結晶構造を有する、粒径が数μmから数十μm程度のPZT粉末を得る。そしてそのPZT粉末に、PVA(ポリビニルアルコール)などのバインダを加えて混合し、適度の大きさの造粒粉とする。その後、造粒粉に圧力を加えて成形し、肉厚な円盤状あるいは立方体形状などの所定のバルク形状の成形体とする。更にその成形体を加熱してバインダを除去してから、高温に加熱して焼成(焼結)して、セラミック焼結体とし、その後、所定の製品形状(圧電素子形状)に加工した後、銀電極などの電極を焼付けなどにより取り付け、分極処理を行なって、圧電特性を付与するのが通常である。
上述のような従来の酸化物系圧電素子の製造法においては、成形体を焼結する際の加熱温度を1200℃程度以上に上げることによって急激に焼結体の緻密度が高まることが知られており、そこで一般には1200〜1300℃程度で焼結することが行なわれている。そしてこのように1200℃以上の高温で焼成することによって、焼結体は、密度90%以上に高密度化されて、緻密な焼結体が得られることが知られている。
このように、従来の製造方法において焼結体の高密度化を図っていた理由は、焼結体からなるセンサ素子が高密度となるほど、分極処理後の圧電特性が向上して、効率的に超音波を発振することが可能となり、超音波出力の高出力化が容易に図れることにある。そのため従来は、酸化物系圧電材料からなる圧電素子の製造にあたっては、焼成温度を1200℃以上の高温として焼結体の緻密化を図り、圧電特性をできるだけ高め、高出力化を図ろうとするのが常識であった。
例えば、超音波ソナーの場合は、センサから検出対象物までの距離が著しく大きく、そのため、確実に対象物を捕捉するためには、大出力を必要とする。また超音波探傷装置の場合、たとえ検出すべき部位までの距離が短くても、検出すべき傷や欠陥の形状が一様ではなく、しかも傷や欠陥からの反射波と、傷や欠陥よりも遠い位置に存在する管外表面/外部空間の境界面からの反射波との2種の反射波の受信信号を峻別することが必要であり、そのためある程度大出力とする必要がある。さらに更に超音波診断装置の場合も、検査対象部位の形状が一様ではなく、しかも人体組織を透過する際の超音波の減衰が大きいことなどから、やはりかなりの大出力とする必要がある。そこで、これらの用途では、セラミック圧電素子はできるだけ高密度とすることが必要とされている。そして厚みセンサについても、他の用途と同様に高密度化することが常識とされていたのである。
なお、圧電素子を高出力化すれば、それに伴って反射波のエネルギも大きくなる。そして反射波のエネルギが過大であれば、反射波の受信信号中のノイズが大きくなってしまう。そこで従来、過大な反射波が予想される場合には、反射波を減衰させるためのダンパを組み込んでおくことも行なわれている。
ところで従来の超音波厚みセンサでは、厚みの測定が必要になるたびごとに、センサの探触子の前面を、管体や容器などの測定対象物の外表面に、水などの超音波媒体を介して押し当て、超音波の送受信を行なって厚みを測定するのが通常である。
しかるに、各種設備の配管などの管体は、金属管の外表面が保護材や断熱材などの外被によって覆われていることが多い。このような場合に超音波厚みセンサによって管体の厚み測定を行なう際には、測定個所の外被を除去して金属管の外表面に媒体を塗布もしくは供給する準備作業が必要となり、また厚み測定後には、媒体を拭き取り、更に外被を修復する修復作業を必要とする。したがって1回の厚み測定作業に多くの手間と時間を要さざるを得なかったのが実情である。
更に、従来の超音波厚みセンサは、前述のように厚みの測定が必要になるたびごとに、センサの探触子の前面を、測定対象物の外表面に水などの超音波媒体を介して押し当てるのが通常であるため、管体や容器などにおける多数の個所の厚み測定を同時に行なうことは困難であり、そのため多数の個所の厚み測定データを得たい場合には、膨大な手間と時間を要さざるを得なかった。
また同様の理由から、厚みの経時的な測定データを連続して得ることは困難であった。
一方、従来の製造方法によって得られた酸化物系圧電材料(セラミック圧電材料)を用いた圧電素子は、全体的に焼結体が緻密で、かつ厚いバルク形状を有しているため、可撓性(フレキシビリティ;屈曲性)を全く有していないのが通常である。そのため、このような圧電素子を管体や容器などを対象とする超音波厚みセンサに用いた場合、次のような問題があった。
すなわち、管体のうちでもその管径が小さい配管、すなわち外面の曲率半径が小さい管体の管壁や、配管におけるU字状もしくはL字状に屈曲した部分、さらにはT字状に溶接した部分の隅部の如く、湾曲した部分(凸状もしくは凹状に湾曲した部分)の厚みを測定しようとした場合、その湾曲部分に探触子の前面を均一に当てることは困難であり、そのため測定誤差が大きくなったり、厚み測定が困難となったりする問題もあった。
したがってこれらの観点から、管体や容器の壁の厚みを測定するための超音波厚みセンサとしては、薄質で可撓性(屈曲性;フレキシビリティ)を有していて、測定対象個所に常時貼着しておくことが可能なセンサの開発が望まれている。
ところで、例えばボイラに使用される水管や、そのほか工場やプラントの配管などにおいては、300℃以上の高温の流体が流れるものも多く、また各種容器としても、300℃程度以上の高温の媒体を収容するものも多いが、このような配管や容器に用いる超音波厚み測定センサは、300℃以上の比較的高温でも確実に作動して厚みを測定し得ることが必要である。
ここで、各種の用途の圧電素子に使用される酸化物系圧電材料としては、従来は、前述のようにPZTと称されるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)が一般的であったが、PZTはそのキュリー温度が350℃程度以下であり、そのためPZTを300℃程度以上の高温域で使用すれば、分極が失われて、圧電特性を示さなくなり、厚み測定を行い得なくなってしまうおそれがある。したがって300℃程度以上の比較的高温の使用環境では、PZTを用いた厚みセンサは不適切であり、そこで300℃程度以上の比較的高温域でも確実に厚み測定を行ない得る超音波厚みセンサの開発が望まれている。
また、通常は300℃以上の使用環境にはないが、火災や事故などによって周囲温度などが300℃以上に上昇する危険性があるような個所に設置される厚みセンサとしても、同様に300℃程度以上の高温でも作動する超音波厚みセンサが望まれる。
特開平1−202609号公報 特開2002−228431号公報 特開平7−45124号公報
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、薄質で可撓性を示すことができるとともに測定対象個所に常時貼着しておくことが可能であって、しかも300℃程度以上の高温に曝されても圧電特性が失われることなく超音波厚み測定を行ない得るようにした、酸化物系圧電材料を用いた超音波厚みセンサに好適な圧電材料粉末を製造する方法を提供することを課題としている。また同時に、そのような圧電材料粉末を用いて超音波厚みセンサを製造する方法、および超音波厚みセンサを提供することを課題としている。
前述のように各種の対象物検出や検査、測定、診断などのための超音波送受信に使用される従来の酸化物系圧電材料からなる圧電素子は、高い圧電効率を得るために、密度が90%以上となるように緻密化しておくのが常識とされており、超音波厚みセンサでも、同様に90%以上の高密度の圧電素子が使用されていた。
しかるに、各種設備における配管の管壁や容器の外壁などの厚み測定にあたっては、他の用途の場合のような高い圧電効率、高出力は必ずしも必要としないことを本発明者等は知見した。
すなわち、既に述べたように、水中探査用の超音波ソナー、あるいは超音波探傷装置、超音波診断装置などの場合は、対象物までの距離が遠かったり、あるいは対象物の形状が不定形で一様ではなかったり、更には対象部位に超音波が到達するまでの間の減衰が大きかったりする、などの点から、高出力が望まれるが、管体や容器などの厚み測定の場合、
対象となる管壁や容器外壁の厚み(超音波を透過/反射させるべき距離)は数百μmからせいぜい十数mm程度と小さく、しかも反射面は一様な定形面となっており、更には、超音波探傷の場合のように2種以上の反射波の受信信号を峻別する必要もないため、他の用途よりも超音波出力が小さくても、確実に厚みを測定し得ることを知見した。言い換えれば、厚みセンサの場合は、他の用途よりも圧電効率が低くても、厚みセンサとして充分に機能させることができることを知見した。
一方、酸化物系圧電材料からなる圧電素子においては、焼結体の緻密度が低くなって、相対的にポーラスとなれば、圧電効率は下がるが、薄質な可撓性を有する支持体上に焼結体層をポーラスに薄く形成しておけば、可撓性(フレキシビリティ)を付与することが可能となる。またその場合、支持体を圧電素子に必要な一対の電極のうちの一方の電極と兼ねさせて、焼結体層を支持体上に形成した後もその支持体をそのまま一方の電極として機能させることにより、簡単な工程で厚みセンサを製造し得ることを見い出した。
このように、厚みセンサとしては、焼結体の緻密度をある程度小さくすると同時に薄肉化を測って、圧電効率を若干下げながらも、厚みセンサとして可撓性を付与したものとすることができることを新規に見い出した。
ところで、各種の酸化物系圧電材料のうちでも、BITと称されるチタン酸ビスマス(BiTi12)は、そのキュリー温度が約410℃程度と、PZTのキュリー温度よりも高い。そのため、BITを超音波厚みセンサの圧電素子材料として用いれば、PZTを用いた場合よりも高温まで使用可能となる。そこで本発明者等は、400℃程度まで使用可能な超音波センサの酸化物系圧電材料としてBITを使用することを考えた。
チタン酸ビスマスは、ビスマス層状ペロブスカイト型結晶構造を有していて、分極処理を施せば、圧電特性が得られることが知られており、PZTとは異なって鉛(Pb)を含まないところから、環境面で優れており、その需要が増加しつつある。しかしながら単結晶体のチタン酸ビスマスは、たとえ薄肉としても、可撓性に欠けるため、前述のような可撓性を有することが望まれる超音波厚みセンサの用途には不適当である。また、チタン酸ビスマスの粉末を焼結してなる多結晶のセラミックでは、焼結体の密度を90%程度以上に高くした緻密な構造とすれば、ある程度の圧電特性が得られるが、その反面、やはり可撓性に欠けてしまう。一方、チタン酸ビスマスからなる焼結体について、可撓性を付与するべく、その緻密度を小さくした場合、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を、確実かつ安定して得ることは困難と考えられていた。
ここで、圧電体の圧電特性(変換効率)を示す指標としては、圧電歪定数の一つであるd33値が使用されることが多く、また実際の圧電体について簡易にd33値を調べる方法として、d33メータを用いて測定する方法が広く適用されている。そして厚みセンサ以外の前述のような一般的な用途では、d33メータによるd33値(単位:pC/N)として、少なくとも100程度を超えなければ実用的ではないとされているが、超音波厚みセンサの用途では、d33メータによるd33値が100pC/N程度以下でも充分であり、最低5〜10pC/N程度以上のd33値を有していれば、厚み測定が可能となり、さらに10pC/N程度以上のd33値が得られれば、厚み測定を確実かつ安定して行い得ることが判明している。しかしながら従来の一般的なチタン酸ビスマスの粉末を焼結原料に用い、それを焼結してさらに分極処理を施した後の焼結体(圧電素子)のd33メータによるd33値として、10pC/N程度以上のd33値を確実かつ安定して得ることは困難であった。
しかるに本発明者が実験、研究を重ねた結果、超音波厚みセンサにおける酸化物系圧電材料、特に多結晶のセラミック圧電材料となるチタン酸ビスマスを合成するにあたって、その合成のための原料として酸化チタン(TiO)の粉末および酸化ビスマス(Bi)の粉末を用いて、それらの混合粉末を熱処理する際の熱処理温度を適切に調整しておけば、合成されたチタン酸ビスマスの粉末を焼結原料として、可撓性を付与するべく低密度で焼結した場合であっても、分極処理後に超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性、すなわちd33メータによるd33値として10pC/N以上の値が得られることを見い出した。
すなわちチタン酸ビスマスの合成原料である、酸化チタン粉末と酸化ビスマス粉末との混合粉末を、750℃〜900℃の範囲内の温度に加熱すること、より好ましくは800〜850℃の範囲内の温度に加熱してチタン酸ビスマスを合成すれば、その合成物に粉末を低密度で焼結した場合であっても、分極処理後のD33メータによるD33値として、安定して10pC/N程度以上の値が得られること、すなわち超音波厚みセンサとして確実に使用可能となることを見い出し、本発明をなすに至った。
具体的には、本発明の基本的な態様(第1の態様)の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法は、
圧電材料としてチタン酸ビスマスからなる酸化物系セラミックを用いてなる超音波厚みセンサ用の圧電材料粉末を製造する方法において;
酸化チタンの粉末と酸化ビスマスの粉末とを混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合粉末を、750℃〜900℃の範囲内の温度に加熱して、チタン酸ビスマスを合成する熱処理工程と、
前記熱処理工程により得られたチタン酸ビスマスを粉砕して粉末とする粉砕工程と、
を有してなることを特徴とするものである。
このように本発明の基本的な態様の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法においては、酸化チタンの粉末と酸化ビスマスの粉末との混合粉末を、750℃〜900℃の範囲内の温度に加熱することにより合成されたチタン酸ビスマスは、その粉末を用いて超音波厚みセンサを製造した場合に、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性、すなわちd33メータによるd33値として10pC/N程度以上の値を確実に示すことができる。
また本発明の第2の態様の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法は、第1の態様の方法において、前記熱処理工程における前記混合粉末の加熱温度を、特に800〜850℃の範囲内としたものである。
このように混合粉末の加熱温度を800〜850℃の範囲内とすれば、その粉末を用いて超音波厚みセンサを製造した場合に、より良好な圧電特性、すなわちd33メータによるd33値として15pC/N程度以上、20pC/N付近の値を得ることができ、そのため、より確実かつ安定して厚み測定を行なうことが可能となる。
また本発明の第3の態様の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法は、第1もしくは第2の態様の方法において、前記熱処理工程における混合粉末の加熱時間を、30分〜20時間の範囲内とするものである。
このように混合粉末の加熱時間を30分〜20時間の範囲内とすることによって、経済性を損なうことなく、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を安定して得ることができる。
さらに本発明の第4の態様の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法は、第1〜第3のうちのいずれかの態様の方法において、前記混合工程で、酸化チタンの粉末と酸化ビスマスの粉末とを、TiとBiのモル比が実質的に3:4となるように混合することを特徴とするものである。
このように、チタン酸ビスマス合成のための原料として、酸化チタンの粉末と酸化ビスマスの粉末とを炭酸リチウムの粉末とニオブの酸化物の粉末とを、TiとBiのモル比(原子個数比〕が実質的に3:4となるように混合した粉末を用いることによって、実質的に原料の100%をチタン酸ビスマスとすることができ、不純物の少ないチタン酸ビスマス粉末、したがって圧電特性を低下させる要因の少ない圧電材料粉末を得ることができる
さらに本発明の第5の態様の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法は、第1〜第4のうちのいずれかの態様の方法において、前記粉砕工程において、チタン酸ビスマスの粉末が、平均粒径10μm以下となるように粉砕することを特徴とするものである。
さらに本発明の第6の態様の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末は、第1〜第5のいずれかの態様の製造方法によって得られたものである。
一方、本発明の第7〜第9の態様は、前述の第1〜第5のいずれかの製造方法によって得られた超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末(チタン酸ビスマス粉末)を使用して、超音波厚みセンサを製造する方法についての態様である。
すなわち本発明の第7の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、
第1〜第5のうちのいずれかの態様の方法により得られたチタン酸ビスマスからなる酸化物系圧電材料粉末を用いて超音波厚みセンサを製造する方法であって;
チタンおよびビスマスのいずれか一方のアルコキシドのアルコール溶液と、他方の酢酸塩とを混合してTi−Biゾルを調製するゾル調製工程と、
前記Ti−Biゾルと、第1〜第5のうちのいずれかの態様の方法により得られたチタン酸ビスマスからなる平均粒径10μm以下の粉末とを混合して、その混合物からなる焼結原料を調製する焼結原料調製工程と、
少なくとも一方の板面が導電性を有する薄板状支持体を第1の電極とし、前記焼結原料を、前記薄板状支持体からなる第1の電極の前記一方の板面上に所定厚みで付着させて乾燥させることにより焼結原料層を形成する焼結原料層形成工程と、
前記焼結原料層を加熱により焼成して、チタン酸ビスマスからなる焼結体層を形成する焼成工程と、
前記焼結体層における第1の電極に対し反対側の表面上に第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
前記第2電極形成工程の前もしくは後に、前記焼結体層における厚み方向に電位差を与えて焼結体層を分極させる分極処理工程と、
を有してなることを特徴とするものである。
このような本発明の第7の態様の超音波厚みセンサの製造方法においては、チタン酸ビスマス(BIT;BiTi12)からなる比較的粗大な粉末(通常は平均粒径10μm程度以下、望ましくは平均粒径1〜5μmの範囲内)のみならず、それにチタン酸ビスマスの金属成分のアルコキシドのアルコール溶液と酢酸塩からなるゾル(Ti−Biゾル)を混合してなる混合物を焼結原料として、第1の電極としての薄板状支持体の板面上に付着させ、その支持体上の焼結原料層を焼成して、チタン酸ビスマス焼結体層とする。この焼成時には、第1の電極としての薄板状支持体は、焼結原料層を支持するための支持体として機能する。そのため焼結原料層の厚みを薄くしても、支障なく焼成することが可能である。またその薄板状支持体は、厚みセンサとしての使用時において電極として機能するのみならず、チタン酸ビスマスからなる焼結体層(圧電セラミック層)を支持体する機能を果たして、焼結体層が剥落することを防止することができる。
そして第1の電極としての薄板状支持体として、可撓性を示す程度に薄いものを用いて、かつ第2の電極も充分に薄質としておけば、厚みセンサとしてその全体の厚みを薄くして、可撓性を有するものとすることができる。さらに、焼結原料として、前述のような比較的粗大なチタン酸ビスマスの粉末(通常は平均粒径10μm以下、例えば平均粒径1〜5μm程度)と、チタン酸ビスマスの金属成分のゾル(Ti−Biゾル)とを混合してなる混合物を用いているため、焼成工程においては、比較的低温の焼成温度(例えば600〜800℃)でも、ある程度の密度(例えば70〜80%程度)を有する焼結体層、すなわち超音波厚みセンサとして支障ない程度の圧電特性を分極処理後に得ることができる焼結体層を形成することができる。
すなわち、焼成工程における焼成開始前の状態で、第1の電極としての薄板状支持体上の焼結原料層(混合物層)は、比較的粗大なチタン酸ビスマス粉末の粒子間の空隙に、Ti−Biゾル、すなわち同じチタン酸ビスマスを構成する金属成分であるTi、Biのいずれか一方のアルコキシドと他方の酢酸塩が存在しており、焼成時にはそのアルコキシドおよび酢酸塩が分解して反応し、チタン酸ビスマスとなる。その過程で、アルコキシドおよび酢酸塩の分解反応生成物は、比較的粗大なチタン酸ビスマス粉末の粒子間を結合する結合物質(焼結助剤)として機能するため、焼結体層は比較的低温の焼成温度でも70%以上の密度となり、しかもそれと同時に、アルコキシドおよび酢酸塩の分解生成物自体もチタン酸ビスマスとなるため、比較的低密度(70〜80%)でも、焼結層全体として厚みセンサに必要な程度の良好な圧電特性を示すことが可能となる。
しかもチタン酸ビスマスは、そのキュリー温度が約410℃程度と、PZTのキュリー温度よりも高く、そのため分極処理後のチタン酸ビスマスからなる焼結体層(圧電セラミック層)が400℃近くの高温に曝されても分極が失われることがなく、したがって400℃程度までは超音波厚みセンサとして使用することが可能となる。
また本発明の第8の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、
第1〜第5のうちのいずれかの態様の方法により得られたチタン酸ビスマスからなる酸化物系圧電材料粉末を用いて超音波厚みセンサを製造する方法であって;
前記チタン酸ビスマスからなる酸化物系圧電材料粉末を、平均粒径が0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に粉砕する超微粉末調製工程と、
前記超微粉末を分散媒とともに混錬して、超微粉末ペーストとするペースト化工程と、
前記超微粉末ペーストを、少なくとも一方の板面が導電性を有する薄板状支持体からなる第1の電極の前記板面上に塗布して、そのペースト層を乾燥させ、第1の電極の板面上に超微粉末層を形成する微粉末層形成工程と、
前記超微粉末層を加熱して焼成し、チタン酸ビスマスからなる焼結体層を第1の電極の一方の板面上に形成する焼成工程と、
前記焼成工程終了の前もしくは後に、前記焼結体層における前記第1の電極に対し反対側の表面に第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
前記焼結体層の厚み方向に電位差を与えて分極処理する分極処理工程と、
を有してなることを特徴とするものである。
このような本発明の第8の態様の超音波厚みセンサの製造方法においては、チタン酸ビスマスからなる原料粉末を、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に調製し、その超微粉末のペーストを第1の電極としての薄板状支持体に塗布して乾燥させ、薄板状支持体に超微粉末を支持させた状態で支持体上の超微粉末層を焼成して、チタン酸ビスマス焼結体層とする。この焼成時には、焼結原料のペースト層もしくはそのペースト層を乾燥させた超微粉末層は、第1の電極としての薄板状支持体によって支持される。そのためペースト層やその乾燥後の超微粉末層の厚みを薄くしても、支障なく焼成することが可能である。またその薄板状支持体は、厚みセンサとしての使用時においても、電極として機能するのみならず、焼結体層(圧電セラミック層)の支持体としても機能して、焼結体層が剥落することを防止できる。
そして第1の電極としての薄板状支持体として、可撓性を示す程度に薄いものを用いて、かつ第2の電極も充分に薄質としておけば、厚みセンサとしてその全体の厚みを薄くして、可撓性を有するものとすることができる。さらに、平均粒径0.15〜0.25μmという超微粉を焼結するため、焼成工程においては、比較的低温の焼成温度(例えば600〜800℃)でも、ある程度の密度(例えば70〜80%程度)を有する焼結体層、すなわち超音波厚みセンサとして支障ない程度の圧電特性を分極処理後に得ることができる焼結体層を形成することができる。
しかもチタン酸ビスマスは、前述のようにそのキュリー温度が約410℃程度と、PZTのキュリー温度よりも高く、そのため分極処理後のチタン酸ビスマスからなる焼結体層(圧電セラミック層)が400℃近くの高温に曝されても分極が失われることがなく、したがって400℃程度までは超音波厚みセンサとして使用することが可能となる。
一方本発明の第9の態様の超音波厚みセンサの製造方法は、第7、第8のうちのいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法において、前記分極処理工程で、焼結体層表面もしくは第2電極表面から離れた位置にコロナ放電用電極を配して、気体中においてコロナ放電用電極と支持体表面との間に電圧を印加することにより、その間にコロナ放電を生起させ、そのコロナ放電による電界領域内に焼結体層を曝すことにより焼結体層を分極させることを特徴とするものである。
このように第9の態様では、従来一般の分極処理法に代えて、コロナ放電による分極処理を適用しており、このようなコロナ放電によっても、チタン酸ビスマス焼結体層を、超音波厚みセンサとして必要な程度に分極させることができる。またここで、第2の電極が焼結体層の表面上に未だ形成されていない状態、および既に第2の電極が焼結体層上に形成されている状態の、いずれの状態でコロナ放電による分極処理を行っても、焼結体層を分極させることができる。
さらに本発明の第10の態様の超音波厚みセンサは、第7〜第9のうちのいずれかの態様の超音波厚みセンサの製造方法によって製造されたことを特徴とするものである。
本発明の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法によれば、酸化チタンの粉末と酸化ビスマスの粉末との混合粉末を、750℃〜900℃の範囲内の温度に加熱してチタン酸ビスマスを合成することによって、その粉末を用いて超音波厚みセンサを製造した場合に、焼結体層の密度が70〜80%と低密度であっても、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を示すことができる。
また本発明の超音波厚みセンサの製造方法によれば、前述のように750℃〜900℃の範囲内の温度に加熱して合成したチタン酸ビスマスを用いることによって、焼結体層の密度が比較的低密度で、センサ全体として薄質で可撓性を示す超音波厚みセンサを、確実かつ容易に製造することができる。そしてこのように薄質で可撓性を示す超音波厚みセンサであれば、測定対象部位が湾曲面であってもその湾曲面に追従して変形させることが可能であるため、湾曲面における厚み測定を確実に行なうことができる。またこのような厚みセンサは、予め配管などの測定対象個所に貼り付けておいて、そのままの状態で配管設備などを稼動させ、必要な時に随時厚み測定を行なうことができ、その場合、厚み測定前後の作業、例えば配管における測定前の外被除去作業や媒体塗布作業、及び測定後の媒体拭き取り作業や外被修復作業などを不要とすることができ、そのため、厚み測定の手間と時間を大幅に削減することができ、さらには、多数の個所にそれぞれ厚みセンサを貼り付けておいて、多数の個所における厚みの同時測定を容易に行なうことができるとともに、経時的かつ連続的な厚み測定が可能もなるという、顕著な効果を得ることができる。
さらに本発明の超音波厚みセンサの製造方法によって得られた超音波厚みセンサは、その超音波送受信のための酸化物系圧電材料として、汎用のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)よりもキュリー温度が高いチタン酸ビスマス(BiTi12)を使用しているため、PZTを用いた場合よりも高い温度まで使用可能であって、400℃程度までは確実に作動するから、高温の流体が流れるボイラなどの管体や、同様に高温の媒体を収容する各種容器における厚み測定に最適であり、その他400℃近くの高温に曝される危険性がある個所での厚み測定の用途に使用すれば、400℃近くの高温に曝されている間やその後にも厚み測定を継続することができる。
本発明の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法の実施形態の概要を示すフローチャートである。 本発明の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法において、粉末合成温度(熱処理温度〕を変化させた場合の、超音波厚みセンサにおけるd33メータによるd33値(pC/N)の変化を、実施例2にしたがって示すグラフである。 本発明の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法により得られた粉末を用いて超音波厚みセンサを製造する方法の一実施形態の概要を示すフローチャートである。 本発明の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法により得られた粉末を用いた超音波厚みセンサの一例を、その使用時の状況として示す略解的な縦断面図である。 本発明の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法により得られた粉末を用いた超音波厚みセンサの一例の使用時の状況の他の例を示す略解的な縦断面図である。 本発明の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法により得られた粉末を用いて超音波厚みセンサを製造する方法の別の実施形態の概要を示すフローチャートである。 本発明の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法により得られた粉末を用いて超音波厚みセンサを製造する方法において適用されるコロナ放電による分極処理を実施している状況の一例を示す略解的な正面図である。 図7におけるVIII−VIII線での略解的な縦断側面図である。 図8におけるIX−IX線での略解的な横断平面図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本発明の実施形態の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法の概要を示す。
この実施形態は、基本的には、チタン酸ビスマス(BiTi12)の金属成分であるTi、Biのうち、Tiの供給原として酸化チタン(TiO)を用い、Biの供給原として酸化ビスマス(Bi)を用い、これらの粉末を混合して熱処理を施すことによって、チタン酸ビスマスを合成し、さらにその合成されたチタン酸ビスマス塊を粉末状に粉砕して、超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末としてのチタン酸ビスマス粉末を得るものである。
具体的には、図1に示しているように、
P1:酸化チタンの粉末と酸化ビスマスの粉末とを混合する混合工程、
P2:前記混合工程P1により得られた混合粉末を、750℃〜900℃の範囲内の温度に加熱して、チタン酸ビスマスを合成する熱処理工程
P3:前記熱処理工程P2により得られたチタン酸ビスマスを粉砕して粉末とする粉砕工程、
以上の各工程P1〜P3からなるプロセスによって、超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料としてのチタン酸ビスマス粉末を製造する。
以下にこれらの各工程について、具体的に説明する。
〔混合工程P1〕
本発明の方法におけるチタン酸ビスマス合成のためのTiの供給原としては、酸化チタン(TiO)の粉末を用いる。この酸化チタン粉末の粒径は特に限定しないが、通常は平均粒径が0.5〜10μmの範囲内のものを用いることが好ましい。平均粒径が0.5μm未満の微細な粉末は、高価となるため、コスト上昇を招くおそれがあり、一方10μmを越えれば、その後の熱処理工程においてチタン酸ビスマスが充分に合成されなくなるおそれが生じたり、また合成のために長時間を要するようになってしまうおそれがある。なお酸化チタン粉末の粒径は、平均粒径が1〜5μmの範囲内にあることが、より適切である。なおこのような粒径の酸化チタン粉末は、市販のものを容易に入手可能である。
一方、本発明の方法におけるチタン酸ビスマス合成のためのNbの供給原としては酸化ニオブ(Nb)の粉末を用いる。この酸化ニオブ粉末の粒径も特に限定しないが、酸化チタン粉末と同様に、通常は平均粒径が0.5〜10μmの範囲内のものを用いることが好ましい。平均粒径が0.5μm未満の微細な粉末は、高価となるため、コスト上昇を招くおそれがあり、一方10μmを越えれば、その後の熱処理工程においてチタン酸ビスマスが充分に合成されなくなるおそれが生じたり、また合成のために長時間を要するようになってしまうおそれがある。なお酸化ニオブ粉末の粒径は、平均粒径が1〜5μmの範囲内にあることがより適切である。なおこのような粒径の酸化ニオブ粉末は、市販のものを容易に入手することができる。
混合工程を実施するに当たっては、チタン供給原の酸化チタンの粉末と、ビスマス供給原の酸化ビスマス粉末とを、目標とするチタン酸ビスマス組成となるように配合して混合すれば良いが、この混合には湿式混練を適用することが好ましい。具体的には、例えば上記の各粉末を混合して、エタノールなどの溶媒やポリエチレンイミンなどの分散媒を適宜加えてボールミルなどにより混錬し、得られた混錬物(スラリー)を乾燥して混合粉末とすることが好ましい。
ここで、チタン供給原の酸化チタン粉末と、ビスマス供給原の酸化ビスマス粉末との配合比は、目標とするチタン酸ビスマス組成(BiTi12)となるように定めれば良い。すなわち、酸化チタン粉末および酸化ビスマス粉末中におけるチタン(Ti)とビスマス(Bi)とが、モル比(原子個数比)で実質的に3:4となるように定めれば良い。ここで、チタン(Ti)とビスマス(Bi)とのモル比が3:4から大きく外れれば、混合粉末中のチタンもしくはビスマスの全量がチタン酸ビスマスとならずに、酸化物チタンもしくは酸化ビスマスの形態のままで残ってしまい、圧電特性に悪影響を及ぼすおそれがある。但し、実際上は、±5%程度までの誤差は許容される。
〔熱処理工程P2〕
前記混合工程P1によって得られた混合粉末を、粉体の状態で熱処理する。この熱処理は、750〜900℃の範囲内の温度において30分〜20時間程度加熱すればよい。このような熱処理によって、混合粉末中における酸化ビスマスのBiが酸化チタン中に固溶して、ビスマス層状ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸ビスマス(BiTi12)が生成される。すなわち、次に示す反応式によってBiTi12が合成される。
3TiO+2Bi→BiTi12
ここで、上記の合成反応には酸化もしくは還元を伴わないから、熱処理雰囲気は特に限定されないが、通常は経済性などの点から、大気雰囲気で熱処理すれば良い。
さらに、上記の合成反応には、熱処理温度が重要である。
本発明者等が、熱処理温度を種々変化させて得られたチタン酸ビスマス粉末を用いて、実際に超音波厚みセンサを製造する実験を行い、分極処理後の圧電特性をd33メータによって調べたところ、熱処理温度が圧電特性に影響を与え、特に750〜900℃の範囲内の温度に加熱した場合に良好な圧電特性が得られること、そしてその範囲内でも特に800〜850℃の範囲内の熱処理温度とすることによって、より良好な圧電特性が得られることが判明した。
具体的には、後に実施例2として詳細に示すように、本発明者等が、酸化チタンの粉末と酸化ビスマスの粉末との混合粉末(TiとBiのモル比3:4)について、種々の温度で熱処理する実験を行ない、熱処理後の合成物(塊状のチタン酸ビスマス)を平均粒径2μmに粉砕して、超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料としてのチタン酸ビスマス粉末を製造し、さらにそのチタン酸ビスマス粉末を用いて、超音波厚みセンサを製造し、コロナ放電による分極処理を施した後の圧電特性を調べるため、分極処理後にd33メータを用いて圧電歪定数d33(単位:pC/N)を測定したところ、図2に示すように、熱処理温度によってd33値は大きく変化し、熱処理温度が825℃付近でピークを示すことが判明した。そして熱処理温度が825℃付近から低下すれば、それに伴ってd33値が低くなり、特に750℃より低温となれば、d33値として10pC/N程度よりも低い値しか得られなくなることが判明した。したがって熱処理温度の下限は750℃とした。一方、熱処理温度が825℃付近から上昇すれば、d33値が低くなり、900℃を越えれば、d33値として10pC/N程度よりも低い値となってしまうことが判明した。したがって熱処理温度は750〜900℃とした。
なお熱処理温度が750℃〜900℃の範囲内であれば、d33値として、10pC/N以上の値を得ることができるが、その範囲内でも、特に800〜850℃の範囲内とすれば、18〜20pC/N程度のd33値が得られ、したがって熱処理温度は、800〜850℃の範囲内とすることが望ましい。
上記範囲内の温度での熱処理時間は特に限定しないが、通常は30分〜20時間の範囲内とする。上記の温度での熱処理では、比較的短時間で合成反応が開始されるが、30分未満では、混合粉末の全量が反応せず、充分にチタン酸ビスマスが合成されないか、または合成されても微細過ぎて、充分な圧電特性が得られないおそれがある。一方20時間を越える長時間加熱しても、それ以上は無駄であって、生産性を阻害するおそれがある。好ましくは、熱処理時間は1〜10時間、より好ましくは2〜5時間とする。
〔粉砕工程P3〕
前記熱処理工程P2によって合成されたチタン酸ビスマス(BiTi12)は、熱処理直後の状態では通常は塊状となっている。そこでその塊状の合成物を、ボールミルなどにより粉砕して、望ましくは平均粒径10μm以下の微細なチタン酸ビスマス粉末とする。ここで、チタン酸ビスマス粉末の平均粒径が10μmを越えれば、そのチタン酸ビスマス粉末を用いて、後述する粉末―ゾル法によって超音波厚みセンサを製造した場合に、充分な圧電特性が得えられなくなるおそれがある。なお、粉末―ゾル法によって超音波厚みセンサを製造する場合のチタン酸ビスマス粉末の平均粒径は、1〜5μmの範囲内が好ましい。
以上のように、前記の温度条件で熱処理されて合成されたチタン酸ビスマスの粉末を用いて超音波厚みセンサを製造すれば、70〜80%程度の比較的低密度の焼結体であっても、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性を示すことができる。
本発明法によって製造したチタン酸ビスマス(BiTi12)の粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するための方法は、基本的には限定されないが、次のAもしくはBに示す方法を適用することが好ましい。
A:チタン酸ビスマスからなる粉末(平均粒径10μm以下、好ましくは1〜5μm)と、そのチタン酸ビスマスの金属成分であるTiとNbのうち、一方のアルコキシドのアルコール溶液と他方の酢酸塩とからなるゾル(Ti−Nbゾル)とを混合して、その混合物を焼結原料とし、超音波厚みセンサの第1電極を兼ねた金属薄板上で焼結原料を焼成し、さらに超音波厚みセンサの第2電極の形成および分極処理を行う方法。以下これを「粉末―ゾル法」と称する。
B:チタン酸ビスマスからなる粉末(通常は平均粒径10μm以下、例えば1〜5μm)を、さらに超微粉末(好ましくは平均粒径0.15〜0.25μm)に粉砕し、その超微粉末のペーストを焼結原料として、第1電極を兼ねた金属薄板上で焼結原料を焼成し、さらに超音波厚みセンサの第2電極の形成および分極処理を行う方法。以下これを「超微粉末法」と称する。
そこで、先ず上記のAの粉末―ゾル法に従って超音波厚みセンサを製造する方法の詳細を、図3を参照して説明する。
図3において、超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末製造プロセスP10は、図1のP1〜P3を参照して説明したように、酸化チタン粉末と酸化ビスマス粉末との混合粉末を熱処理してチタン酸ビスマスを合成し、平均粒径10μm程度以下、好ましくは平均粒径1〜5μm程度のチタン酸ビスマスの粉末を製造する工程である。そこで、ここでは超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末製造プロセスP10以外の工程P11〜P16A、P16Bについて説明する。
図3に示される実施形態の超音波厚みセンサの製造方法では、上記の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末製造プロセスP10以外の工程として、
P11:チタン酸ビスマスの金属成分であるTi、Biのうちの一方のアルコキシドのアルコール溶液と、他方の酢酸塩とを用意し、これらを混合して、その混合物からなるゾル(Ti−Biゾル)を調製するゾル調製工程、
P12:チタン酸ビスマスからなる平均粒径10μm以下、好ましくは1〜5μmの原料粉末と、前記Ti−Biゾルとを混合して、その混合物からなる焼結原料(スラリー)を調製する焼結原料調製工程、
P13:前記焼結原料スラリーを、薄板状支持体としての金属薄板からなる第1の電極の一方の板面に所定厚みで付着させて、第1の電極の一方の板面上に焼結原料層を形成する焼結原料層形成工程、例えば前記スラリーを、金属薄板からなる第1の電極の一方の板面に塗布して乾燥させる工程、
P14:第1の電極を兼ねた前記金属薄板上の焼結原料層を加熱して焼成し、チタン酸ビスマスからなる焼結体層を第1の電極の一方の板面上に形成する焼成工程、
P15A、P15B:前記焼成工程P4の終了後、焼結体層における前記第1の電極に対して反対側の表面に第2の電極を形成する第2電極形成工程(注:この第2電極形成工程は、焼成工程P14の終了後、次の分極処理工程の前に施す場合(図3においてP15Aと表示)と、分極処理工程の後に行なう場合(図3においてP15Bと表示)とがある)、
P16A、P16B:焼結体層の厚み方向に電位差を与え、焼結体層を分極処理する分極処理工程(注:この分極処理を第2電極形成工程P15Aの後に行う場合を図3においてP16Aと表示し、第2電極形成工程P15Bの前に行う場合を図3においてP16Bと表示)、
以上の各工程P11〜P16A、P16Bからなるプロセスによって、酸化物系圧電材料としてチタン酸ビスマスを用いた超音波厚みセンサを製造する。
さらに、これらの各工程P11〜P16A、P16Bについて、具体的に説明する。
〔ゾル調製工程P11〕
このゾル調製工程P11に先立っては、チタン酸ビスマス(BiTi12)を構成する金属成分であるTiおよびBiのうち、いずれか一方のアルコキシドと、他方の酢酸塩を準備する。
すなわち、アルコキシドとしては、アルキル基をRとし、一般式Ti(OR)で表されるチタンアルコキシド、またはBi(OR)で表されるビスマスアルコキシドを準備し、酢酸塩として酢酸ビスマスまたは酢酸チタンを用意する。
上記のアルコキシドにおけるアルキル基Rは特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ブチル基、イソブチル基、t―ブチル基、s−ブチル基などを適用することができる。より具体的には、チタンアルコキシドとしては、チタンジブトキシド、チタンジイソプロキシド、あるいはチタンイソプロポキシドなど、またビスマスアルコキシドとしては、ビスマスブトキシド、ビスマスイソプロポキシドなどを用いることが好ましい。
一方、酢酸塩としての酢酸ビスマスは、CBiOと表せるものである。また酢酸チタンとしては、一般に二酢酸チタン(CTi)、三酢酸チタン(CTi)、四酢酸チタン(C12Ti)があるが、これらのいずれを使用しても良い。
ここで、アルコキシドと酢酸塩との組み合わせとしては、
イ:チタンアルコキシドと酢酸ビスマスとの組み合わせ、
ロ:酢酸チタンとビスマスアルコキシドとの組み合わせ、
のうち、いずれの組み合わせを用いても良いが、総合的な入手のしやすさおよび原材料コストの点からは、イの組み合わせを用いることが望ましい。
またTi―Biゾルにおけるアルコキシドおよび酢酸塩の配合は、TiとBiの割合が、目標とするチタン酸ビスマスにおけるTiとBiの割合と同等となるように定めることが望ましい。すなわち、チタン酸ビスマスはBiTi12であるから、TiとBiのモル比(原子個数比)Ti:Biが3:4の割合となるように配合することが望ましい。
さらに、TiもしくはBiのアルコキシドを溶解させるアルコールの種類は特に限定しないが、一般には溶解のしやすさや安定性などの点から、アルコキシドのアルキル基と同じアルコールを用いた溶液とすることが望ましい。
〔焼結原料調製工程P12〕
前述のように、図1のP1〜P3の工程(図3のP10)によって得られたチタン酸ビスマス粉末(平均粒径10μm以下、好ましくは1〜5μm)と、前記のゾル調製工程P11によって得られたTi−Biゾルとを、混合、混錬すれば、焼結原料としてのスラリー状の混合物が得られる。
なお、上記のチタン酸ビスマス粉末とTi−Biゾルの配合比は特に限定しないが、通常は、チタン酸ビスマス粉末中の金属成分(TiおよびBi)に対するTi―Biゾル中の金属成分(TiおよびBi)のモル比が、0.2〜1.0の範囲内となるように配合することが望ましい。上記のモル比が0.2未満では、Ti−BIゾル中のTi、Biが少なすぎて、焼成工程においてゾルの分解反応生成物が焼結助剤として充分に機能せず、そのため低温での焼結が困難となり、一方上記のモル比が1.0を越えれば、Ti−Biゾルが多すぎて、第1の電極を兼ねる金属薄板上で焼成したときに、Ti−Biゾルからの分解反応生成物の量が過剰となり、焼結体層が緻密化されてしまって可撓性が得られなくなってしまうおそれがある。
さらに、Ti−Biゾルと、チタン酸ビスマス粉末との直接的な混合割合自体も、特に限定しないが、通常は、Ti−Biゾル:チタン酸ビスマス粉末が重量比で4:1〜2:3の範囲内となるように混合することが望ましい。Ti−Biゾルと、チタン酸ビスマス粉末との重量比が4:1未満では、混合物スラリーの粘度が低すぎて、次の焼結原料層形成工程において充分な厚みで塗布することが困難となるとともに、焼成工程においてTi−Biゾルの分解反応生成物の量が過剰となり、前述のように焼結体層が緻密化して可撓性が失われるおそれがある。一方上記の重量比が2:3を越えれば、混合物スラリーの粘度が高すぎて、次の焼結原料層形成工程において混合物スラリーの塗布が困難となるとともに、焼成工程においてTi−Biゾルの分解反応生成物の量が過少となり、前述のように焼成工程においてゾルの分解反応生成物が焼結助剤として充分に機能せず、そのため低温での焼結が困難となるおそれがある。
〔焼結原料層形成工程P13〕
この焼結原料層形成工程P13は、前記混合物スラリー(焼結原料)を、第1の電極としての金属薄板の板面に所定の厚みで付着させて、金属薄板の表面に所定の厚みの焼結原料層を形成する工程である。
上記金属薄板は、電極として機能するだけではなく、乾燥後の焼成工程や厚みセンサとしての使用時において支持体として機能するものである。その金属薄板の材質は特に限定されないが、本発明の場合、焼結原料として比較的粗大なチタン酸ビスマス粉末とTI−Biゾルとの混合物を用いているため、600〜800℃程度の比較的低温で焼成することができ、したがって800℃程度までの耐酸化性を有する汎用の耐熱金属を使用することができる。すなわち、白金などの如く1200℃以上まで耐えうる高価な金属を用いる必要はなく、ステンレス鋼やその他の汎用の耐熱鋼を、第1の電極を兼ねる金属薄板として使用することができる。具体的には、18Cr−8Niとして知られるSUS304系統のオーステナイト系ステンレス鋼、あるいは18Cr−12Ni−2.5MoのSUS316系統のオーステナイト系ステンレス鋼、その他、22Ni−12CrのSUH309系統のオーステナイト系耐熱鋼を用いることができる。これらは、いずれも白金よりも格段に安価に入手することができる。
前記第1の電極としての金属薄板の厚みは、10μm〜150μmとすることが好ましい。その厚みが10μm未満では、強度が不充分で、センサ製造工程中のハンドリングに支障をきたすおそれがあるとともに、厚みセンサとしての使用時において変形あるいは破損してしまうおそれがある。一方、その厚みが150μmを越えれば、金属薄板の可撓性が失われて、厚みセンサ全体としてもその可撓性が劣ることとなり、そのため使用時において厚み測定対象の配管の湾曲部分に貼着することが困難となるおそれがある。
なお前記焼結原料としての混合物を金属薄板上に付着させるための手段としては、その混合物のスラリーを金属薄板表面に塗布する方法が代表的である。またその場合の塗布手段としては、加圧噴射(スプレー)や、ロールコーター、その他、一般の印刷技術で適用されている塗布・印刷手段を任意に適用することができる。このように塗布した後には、乾燥させて焼結原料層とする。乾燥手段は特に限定しないが、通常は自然乾燥すればよく、また場合によっては乾燥の促進のため、50℃程度以下に加熱しても良い。
ここで、塗布層を乾燥させた状態では、乾燥前の状態から収縮して、乾燥前の1/2〜1/4程度の厚みとなるが、乾燥後の焼結原料層の厚み(したがって後述する焼成工程開始直前の段階での厚み)は、70〜200μmの範囲内とすることが望ましい。焼成工程開始直前の段階での焼結原料層の厚みが70μm未満では、焼成後の焼結体層の厚みが薄すぎて、センサを湾曲させた時に、焼結体層が第1の電極としての金属薄板から剥離するおそれがある。一方、焼成工程開始直前の段階での厚みが200μmを越えれば、焼成後の焼結体層の厚みも厚くなりすぎ、その結果、後述するように充分な可撓性を焼結体層に与えることが困難となるおそれがある。
なお、第1電極を兼ねる金属薄板上に混合物スラリーを塗布した後の乾燥は、次の焼成工程P14における焼結のための加熱の初期段階で行なっても良い。
〔焼成工程P14〕
続いて、前述のようにして第1の電極としての金属薄板の板面に焼結原料層を形成した状態で、その焼結原料層を加熱して焼成し、厚みが好ましくは30〜150μm程度の薄質なチタン酸ビスマスからなる焼結体層を形成する。
この焼成工程では、比較的粗大なチタン酸ビスマス粉末の粒子(平均粒径10μm以下、好ましくは1〜5μm)の間に存在しているTi−Niゾルのアルコキシドおよび酢酸塩が分解して反応し、超微粉末状の分解反応生成物が生成され、かつその分解反応生成物が、比較的粗大なチタン酸ビスマス粉末の粒子を焼結結合させる役割、すなわち焼結助剤として機能する。しかもその分解反応生成物は、それ自体でチタン酸ビスマスの組成を有するため、圧電特性を向上させる機能も果たす。したがってこのように比較的粗大なチタン酸ビスマス粉末とともにTi−Biゾルを混合して焼成することにより、比較的低温でも焼結が進行し、かつ圧電特性も向上する。
ここで、焼成工程では、加熱温度を600〜800℃の範囲内として、焼成後の状態(圧電材料焼結体層)の密度が70〜80%の範囲内となるように焼成することが望ましい。
焼成後のセラミック焼結体の密度が80%と越える高密度となれば、焼結体層の剛性が高くなって、可撓性が劣る状態となり、その結果、厚みセンサとしての使用時においてセンサを湾曲させれば、焼結体層が第1の電極としての金属薄板から剥離したり、クラックが発生したりするおそれがあり、したがって厚さ測定対象の配管などの湾曲部分に適用することが困難となる。また同時に密度が80%と越える高密度となるように焼成した場合、焼成時の収縮が大きくなって、第1の電極としての金属薄板から剥離してしまうおそれが強く、その結果、第1の電極としての金属薄板上に密着した焼結体層を得ることが困難となる。
一方、焼成後のチタン酸ビスマス焼結体層の密度が70%未満の低密度では、焼結体層の空隙率が高すぎて、焼結体層内部の粒子が充分に結合されていない状態となり、そのため、その後の工程におけるハンドリング時やセンサとしての使用時に焼結体層が粉体状に剥落してしまうおそれがあり、また同時に、焼結体層内部の空隙率が高くなって、厚さ測定のため超音波センサとして充分な圧電特性が得られなくなるおそれがある。
したがって焼成後のチタン酸ビスマス焼結体層の密度は、70〜80%の範囲内とすることが望ましいが、このような密度の焼結体層を形成するためには、焼成温度を600〜800℃の範囲内とすることが好ましい。このように従来一般の酸化物系圧電材料(セラミック圧電材料)の焼成温度よりも低い600〜800℃の焼成温度でも、焼結原料に配合されているアルコキシドおよび酢酸塩の分解反応生成物が焼結助剤として機能するため、超音波厚みセンサとして必要な圧電特性を示す焼結体密度を充分に得ることができる。
ここで焼成温度が800℃を超える高温となれば、焼成時に粉体粒子同士の焼結反応が急速に進行して、密度が80%以下の焼結体層を得ることが困難となる。一方、焼成温度が600℃未満の低温では、粉体粒子同士の焼結反応が充分に進行せず、焼結体層の密度を70%以上に高めることが困難となる。なお焼成温度は、600〜800℃の範囲内でも、特に650〜750℃の範囲内が好ましい。
また焼成時の雰囲気は大気とすることが好ましい。さらに焼成時間は、焼成温度によっても異なるが、通常は0.1〜1時間とすることが好ましい。
このような焼成工程によって、支持体を兼ねた第1の電極としての金属薄板の一方の板面に、所定の厚み、所定の密度のチタン酸ビスマスからなる焼結体層が形成される。
〔第2電極形成工程P15A、P15B〕
この第2電極形成工程P15AもしくはP15Bは、前記第1の電極(金属薄板)の対極となる第2の電極を、前記チタン酸ビスマス焼結体層の上面(第1の電極に対し反対側の面)に形成する工程であり、次の分極処理工程P16Aを実施する前の工程(P15A)、あるいは分極処理工程P16Bを行なった後の工程(P15B)として実施される。
第2の電極形成のための具体的手段は特に限定されないが、例えば銀(Ag)などの電極用の導電性金属の粉末をペースト化しておき、そのペーストを焼結体層表面に塗布して焼き付けたり、あるいは電極用の導電性金属の薄膜を焼結体層の表面に載置もしくは貼着して焼き付けたりすれば良い。なおこの第2電極の厚みは、10〜100μmとすることが好ましい。第2の電極の厚みが100μmを越えれば、厚みセンサの可撓性を損なうおそれがあり、一方10μm未満に薄く第2の電極を形成した場合、焼結体層表面の凹凸によって局部的に第2の電極が不連続となってしまうおそれがある。
このようにして、支持体を兼ねた第1の電極(金属薄板)の一方の板面に、圧電材料としてのチタン酸ビスマスからなる焼結体層が形成され、さらにその焼結体層の表面に第2の電極が形成された積層体が得られる。
〔分極処理工程P16A、P16B〕
この分極処理工程P16A、P16Bは、第2電極形成工程P15Aを経て、第1の電極(金属薄板)上の焼結体層の上面に第2の電極が形成された積層体、あるいは第2電極形成工程P15Bの実施前で第1の電極(金属薄板)上の焼結体層の上面に第2の電極が未だ形成されていない積層体を対象とし、その積層体におけるチタン酸ビスマス焼結体層の厚み方向に電位差を与えて、チタン酸ビスマス焼結体を分極させる工程である。
この分極処理としては、
i):従来の一般的な分極処理方法、すなわち一対の分極用電極によって積層体を直接挟み、シリコンオイルなどの火花放電防止用媒体中に浸漬させ、その状態で分極用電極間に高電圧を印加して、焼結体を分極させる方法(従来分極法)、
ii):従来の一般的な分極処理方法とは異なり、気体(通常は空気)中において発生させたコロナ放電による電界領域内に焼結体を曝して、焼結体を分極させる方法(コロナ放電分極法)、
以上のi)、またはii)のいずれかの手法を適用する。
i)の従来分極法を適用する場合、例えば前記積層体を、その両側から分極用電極によって挟み、かつ絶縁破壊による火花放電(全路放電)の発生を防止するためのシリコンオイルなどの火花放電防止用媒体中に浸漬させた状態で、焼結体層の厚み1mmあたり2000〜3000V程度の高電圧の直流電圧もしくはパルス電圧を焼結体層の厚み方向に加えればよい。また分極を促進するため、適宜80〜200℃程度に加熱したシリコンオイル中で高電圧を加えても良い。この分極法A自体は、従来と同様であればよいから、その詳細は省略する。
一方、ii)のコロナ放電分極法は、有機材料の表面改質のための分極処理としては従来から適用されているが、無機材料(酸化物系無機圧電材料)の分極のためには従来は適用されていなかった。しかるに本発明者等は、超音波厚みセンサとして使用される70〜80%の低密度のチタン酸ビスマス焼結体であれば、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性が得られるように分極させることが可能であることを見い出した。
すなわち、気体(通常は大気)中において、線状電極もしくは針状電極からなるコロナ放電用電極と、それに対向する平板上のベース電極との間に高電圧を印加して、コロナ放電用電極からベース電極に向けて気体の電離によるコロナ放電を生起させ、かつそのコロナ放電による電界領域(放電域)内に前記積層体の焼結体層を曝せば、焼結体層の厚み方向に電位差を与えて分極させることができる。なおこのコロナ放電による分極処理は、それ以前の第2電極形成工程によって焼結体層の表面に予め第2の電極が形成されている場合、および焼結体層の表面に未だ第2の電極が形成されていない場合(すなわち分極処理工程の後に第2電極形成工程を実施する場合)のいずれの場合でも実施可能であることが確認されている。
このようなコロナ放電による分極処理を実施するための装置の具体的な例およびそれを用いた分極処理の詳細については、後に図7〜図9を参照して改めて説明する。
上述のようなi)の従来分極法もしくはii)のコロナ放電分極法ii)によって分極処理を施すことによって、焼結体層は圧電特性を示すようになり、したがって超音波厚みセンサに使用できるようになる。
なお、分極処理工程の前に第2電極形成工程を行なっていない場合には、分極処理工程P16Aの後工程として、第2電極形成工程P15Bを実施し、既に分極されている焼結体層の表面に前記と同様にして第2の電極を形成する。
なおまた、実際の超音波センサでは、前記第1の電極、第2の電極に、超音波測定の電圧信号の入出力ためにリード線を取り付けておく必要がある。そこで分極処理の後、もしくは分極処理の前に、各電極に導電ペーストなどを用いてそれぞれリード線を取り付けておくのが通常である。
以上のような実施形態の超音波厚みセンサ製造方法によって製造された超音波厚みセンサ、及びその使用時の状況を図4、図5に示す。
図4、図5において、符号1は、超音波厚みセンサ9の第1の電極(支持体を兼ねた金属薄板)であり、その第1の電極1の一方の板面に、チタン酸ビスマスからなる焼結体層(圧電セラミック層)3が形成されており、更にその焼結体層3の表面に第2の電極5が形成されている、そして第1の電極1、第2の電極5のそれぞれからは、リード線7A、7Bが引き出されている。このように構成された厚みセンサ9は、その第1の電極1の片面が厚さ測定対象物(金属管の管壁、容器の外壁など)11の表面に接するように、接着剤13などを用いて貼り付けることによって、その測定対象物の厚みを随時測定することができる。なおこの際の接着剤13としては、銀ペースト、白金ペースト、金ペーストなどを使用すればよい。
ここで、本発明の実施形態の製造方法により製造された超音波厚みセンサは、全体として第1の電極(金属薄板)、焼結体層、第2の電極の3層構造からなる極めて薄型のものであって、配管の外側に保護や断熱などのために外被を設ける場合でも、配管組み立て時において予め配管の外面に接着しておき、その厚みセンサの外側から配管の保護や断熱のための外被を設け、その状態で配管設備をそのまま使用し、そのままの状態で適宜厚み測定をおこなうことができる。そしてその場合には、厚み測定前における外被の剥離や、測定後の外被修復作業が不要となり、また厚み測定前に対象物の表面に超音波媒体を塗布する作業、及び測定後に超音波媒体を拭き取る作業も不要となる。
またこの超音波厚みセンサは、全体として薄質で可撓性を有しているため、図5に示したように、測定対象物11の表面が湾曲している場合であっても、その湾曲面に沿って超音波厚みセンサ9を接着して、湾曲部位における厚み測定を行なうことができる。
ここで、本発明の実施形態により製造された超音波厚みセンサは、圧電材料としてキュリー温度が約410℃程度のチタン酸ビスマス(BIT)を使用しているため、400℃程度までは圧電材料であるチタン酸ビスマス焼結体層が分極を失うことがなく、そのため400℃程度までの比較的高温域でも厚み測定を確実に行なうことができる。
なお、以上の実施形態では、合成されたチタン酸ビスマスの粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するにあたって、Aの粉末―ゾル法を適用しており、かつその場合のTi−Biゾルとして、イ)、ロ)として記載したように、チタンおよびビスマスのいずれか一方のアルコキシドのアルコール溶液と、他方の酢酸塩との混合液を用いている。しかしながら、粉末―ゾル法を適用する場合のTi−Biゾルの態様は、上記のイ)、ロ)に限定されるものではなく、場合によっては、チタンのアルコキシドおよびビスマスのアルコキシドの混合アルコール溶液をTi−Biゾルとして用いることも許容される。例えば、チタンブトキシドとビスマスブトキシドのブタノール溶液をTi−Biゾルとして用い、それをチタン酸ビスマス粉末と混合して焼結原料としても良い。その場合も、チタンのアルコキシドとビスマスのアルコキシドのとの配合割合は、TiとBiのモル比が3:4となるように調整することが望ましい。
次に、前述のBの超粉末法に従って超音波厚みセンサを製造する方法の詳細を、図6を参照して説明する。
図6において、超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末製造プロセス(P10)は、図1のP1〜P3を参照して説明したように、酸化チタン粉末と酸化ビスマス粉末との混合粉末を熱処理してチタン酸ビスマスを合成し、平均粒径10μm程度以下、好ましくは1〜5μm程度のチタン酸ビスマスの粉末を製造する工程である。そこで、ここでは超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末製造プロセスP10以外の工程P22〜P27A、P27Bについて説明する。
図6に示される実施形態の超音波厚みセンサの製造方法では、上記の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末製造プロセスP10以外の工程として、
P21:前述のようにして製造されたチタン酸ビスマスからなる平均粒径10μm程度以下、通常は1〜5μm程度の原料粉末(粗粉末)を、湿式ビーズミルなどにより、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に調製する超微粉末調製工程、
P22:前記超微粉末を分散媒とともに混錬して、超微粉末ペーストとするペースト化工程、
P23:前記ペーストを金属薄板からなる第1の電極の一方の板面に所定厚みで塗布して、そのペースト層を乾燥させ、第1の電極の一方の板面上に超微粉末層を形成する超微粉末層形成工程、
P24:超微粉末層形成工程終了後、超微粉末層を加熱して焼成し、チタン酸ビスマス焼結体層を第1の電極の一方の板面上に形成する焼成工程、
P25A、P25B:前記焼成工程P24の終了後、焼結体層における前記第1の電極に対して反対側の表面に第2の電極を形成する第2電極形成工程(注:この第2電極形成工程は、焼成工程P24の終了後、次の分極処理工程の前に施す場合(図6においてP25Aと表示)と、分極処理工程の後に行なう場合(図6においてP25Bと表示)とがある)、
P26A、P26B:焼結体層の厚み方向に電位差を与え、焼結体層を分極処理する分極処理工程(注:この分極処理を第2電極形成工程P25Aの後に行う場合を図6においてP26Aと表示し、第2電極形成工程P25Bの前に行う場合を図6においてP26Bと表示)、
以上の各工程P21〜P26A、P26Bからなるプロセスによって、酸化物系圧電材料としてチタン酸ビスマスを用いた超音波厚みセンサを製造する。
さらに、これらのBの超微粉末法における各工程P21〜P26A、P26Bについて、具体的に説明する。
〔超微粉末調製工程P21〕
この超微粉末調製工程P21は、前述のように図1のP1〜P3のプロセス(図6のP10)によって得られたチタン酸ビスマスの粗粉末(平均粒径10μm以下、例えば1〜5μm)を、平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に調製する工程であり、通常は前述のような粒径の粗粉末を、湿式ビーズミルを用いて粉砕すれば良い。
湿式ビーズミルは、粉砕対象の粗粉末と粉砕媒体のビーズを、水などの液体からなる分散媒とともに粉砕室に装入し、アジテータ(撹拌用ロータ)を数千rpmで高速回転させることによりビーズを撹拌して運動エネルギを与え、その運動するビーズにより粗粉末に対する摩擦、せん断、衝突などにより、粗粉末を超微粒子化するものである。ここで、粉砕媒体のビーズとしては、直径0.1mm〜1mm程度、一般には0.5mm程度の硬質物質からなる球体粒子が用いられる。またその硬質物質としては、セラミックス、ガラス、金属などがあるが、通常はジルコニア、ジルコニア強化型アルミナなどが好ましい。
なお湿式ビーズミルにおける分散媒としては、水のほか、エタノールなどのアルコール、その他ヘキサン等を用いることができる。
ここで、超微粉末調製工程で得るチタン酸ビスマス超微粉末の平均粒径が0.25μmを越えれば、後の焼成工程において、600〜800℃程度の比較的低温の焼成温度では、所定の密度(例えば70〜80%)まで緻密化することが困難となり、超音波厚みセンサとして必要な圧電特性が得られなくなるおそれがある。一方、平均粒径が0.15μm未満となるまで超微粉化することは、生産性を阻害してコストアップを招くばかりでなく、凝集の原因となる問題もある。
このようにして得られた超微粉末は、分散媒に分散したスラリー状となっており、分散媒の種類によっては、そのスラリーをそのまま次のペースト化工程でペースト化しても良いが、通常は、一旦乾燥させて乾燥超微粉末とした後、次のペースト化工程に進む。
〔ペースト化工程P22〕
このペースト化工程は、前記超微粉末調製工程P21によって得られた平均粒径0.15〜0.25μmの範囲内のチタン酸ビスマスからなる超微粉末を、分散媒とともに混錬して、次の超微粉末層形成工程でのペースト塗布に適した粘度を有する超微粉末ペーストとする工程である。
具体的には、微粉末用の公知の分散・混錬機を使用して分散媒とともに混錬すれば良いが、例えば3本ロールミル、すなわち3本のロールの回転差を利用した分散・混錬機を用いることが好ましい。なおこの際に用いる分散媒の種類は特に限定されず、エタノール、あるいはブチルカルビトール、PVBエタノールなどを用いることができる。またこのペースト化工程で生成するペーストは、その粘度が1000〜10000mPa・sであることが好ましい。ペーストの粘度が1000mPa・s未満では、続く微粉末層形成工程において、ペーストを金属薄板上に均一な厚みで形成することが困難となり、一方10000mPa・sを越えれば、粘度が高すぎてレベリングなどの平滑化などにおいて問題が生じるおそれがある。
〔超微粉末層形成工程P23〕
この超微粉末層形成工程23は、前記超微粉末ペースト(焼結原料)を、第1の電極としての金属薄板の板面に所定の厚みで付着させてペースト層を形成し、さらにそのペースト層を乾燥させて、金属薄板の表面に所定の厚みの超微粉末層を形成する工程である。
上記金属薄板は、前述のAの粉末―ゾル法による場合と同様に、電極として機能するだけではなく、乾燥後の焼成工程や厚みセンサとしての使用時において支持体として機能するものである。その金属薄板の材質は特に限定されないが、焼結原料粉末として平均粒径0.15〜0.25μmの超微粉末を用いているため、Aの粉末―ゾル法による場合と同様に、600〜800℃程度の比較的低温で焼成することができ、したがって800℃程度までの耐酸化性を有する汎用の耐熱金属を使用することができる。すなわち、白金などの如く1200℃以上まで耐えうる高価な金属を用いる必要はなく、ステンレス鋼やその他の汎用の耐熱鋼を、第1の電極を兼ねる金属薄板として使用することができる。具体的には、18Cr−8Niとして知られるSUS304系統のオーステナイト系ステンレス鋼、あるいは18Cr−12Ni−2.5MoのSUS316系統のオーステナイト系ステンレス鋼、その他、22Ni−12CrのSUH309系統のオーステナイト系耐熱鋼を用いることができる。これらは、いずれも白金よりも格段に安価に入手することができる。
前記第1の電極としての金属薄板の厚みは、前述のAの粉末―ゾル法の場合と同様に、10μm〜150μmとすることが好ましい。
なお前記焼結原料としてペーストを金属薄板上に付着させるための手段としては、そのペーストを金属薄板表面に塗布する方法が代表的であり、またその場合の塗布手段としては、前述のAの粉末―ゾル法の場合と同様に、ロールコーターやスキージ、その他、一般の印刷技術で適用されている塗布・印刷手段を任意に適用することができる。このように塗布した後には、乾燥させて超微粉末層(焼結原料層)とする。乾燥手段は特に限定しないが、通常は自然乾燥すればよく、また場合によっては乾燥の促進のため、50℃程度以下に加熱しても良い。
ここで、塗布層を乾燥させた状態では、乾燥前の状態から収縮して、乾燥前の1/2〜1/4程度の厚みとなるが、乾燥後の超微粉末層(焼結原料層)の厚み(したがって後述する焼成工程開始直前の段階での厚み)も、前述のAの粉末―ゾル法の場合と同様に、70〜200μmの範囲内とすることが望ましい。なお、第1電極を兼ねる金属薄板上にペーストを塗布した後の乾燥は、次の焼成工程P24における焼結のための加熱の初期段階で行なっても良い。
〔焼成工程P24〕
続いて、前述のようにして第1の電極としての金属薄板の板面にチタン酸ビスマスからなる超微粉末層(焼結原料層)を形成した状態で、その超微粉末層を加熱して焼成し、厚みが好ましくは30〜150μm程度の薄質なチタン酸ビスマス焼結体層を形成する。
この焼成工程では、前記Aの粉末―ゾル法の場合と同様に、加熱温度を600〜800℃の範囲内として、焼成後の状態(チタン酸ビスマス焼結体層)の密度が70〜80%の範囲内となるように焼成することが望ましい。
このように従来一般の酸化物系圧電材料(セラミック圧電材料)の焼成温度よりも低い600〜800℃の焼成温度でも、焼結前の粉末が超微粉末であるため、超音波厚みセンサとして必要な圧電特性を示す焼結体密度を充分に得ることができる。
ここで焼成温度が800℃を超える高温となれば、焼成時に粉体粒子同士の焼結反応が急速に進行して、密度が80%以下の焼結体層を得ることが困難となる。一方、焼成温度が600℃未満の低温では、粉体粒子同士の焼結反応が充分に進行せず、焼結体層の密度を70%以上に高めることが困難となる。なお焼成温度は、600〜800℃の範囲内でも、特に650〜750℃の範囲内が好ましい。
また焼成時の雰囲気は大気(空気)とすることが好ましい。さらに焼成時間は、焼成温度によっても異なるが、通常は1〜10時間とすることが好ましい。
このような焼成工程によって、支持体を兼ねた第1の電極としての金属薄板の一方の板面に、所定の厚み、所定の密度のチタン酸ビスマスからなる焼結体層が形成される。
〔第2電極形成工程P25A、P25B〕
この第2電極形成工程は、第1の電極(金属薄板)の対極となる第2の電極を、前記チタン酸ビスマス焼結体層の上面(第1の電極に対し反対側の面)に形成する工程であり、前述のAの粉末―ゾル法による場合と同様に、次の分極処理工程P26Aを実施する前の工程(P25A)、あるいは分極処理工程P26Bを行なった後の工程(P25B)として実施される。これらの第2電極形成工程P25A、P25Bは、前述のAの粉末―ゾル法における第2電極形成工程P15A、P15Bと同様であればよい。
このようにして、支持体を兼ねた第1の電極(金属薄板)の一方の板面に、圧電材料としてのチタン酸ビスマスからなる焼結体層が形成され、さらにその焼結体層の表面に第2の電極が形成された積層体が得られる。
〔分極処理工程P26A、P26B〕
この分極処理工程P26A、P26Bは、第2電極形成工程P25Aを経て、第1の電極(金属薄板)上の焼結体層の上面に第2の電極が形成された積層体、あるいは第2電極形成工程P25Bの実施前で第1の電極(金属薄板)上の焼結体層の上面に第2の電極が未だ形成されていない積層体を対象とし、その積層体におけるチタン酸ビスマス焼結体層の厚み方向に電位差を与えて、焼結体を分極させる工程である。
この分極処理としては、Aの粉末―ゾル法による場合と同様に、前述のi)の従来分極法、またはii)のコロナ放電分極法のいずれかの手法を適用すれば良い。これらの各分極法i)、ii)は、既に述べたとおりであり、そのうちii)のコロナ放電分極法の詳細については、後に図7〜図9を参照して改めて説明する。
上述のようなi)の従来分極法もしくはii)のコロナ放電分極法ii)によって、チタン酸ビスマスからなる焼結体層に分極処理を施すことによって、焼結体層は圧電特性を示すようになり、したがって超音波厚みセンサに使用できるようになる。
なお、分極処理工程の前に第2電極形成工程を行なっていない場合には、分極処理工程P26Bの後工程として、第2電極形成工程P25Bを実施し、既に分極されている焼結体層の表面に前記と同様にして第2の電極を形成すれば良い。
なおまた、分極処理の後、もしくは分極処理の前には、前述のAの粉末―ゾル法による場合と同様に、各電極に導電ペーストなどを用いてそれぞれリード線を取り付けておくのが通常である。
以上のようなBの微粉末法によっても、既に説明した図4、図5に示すような超音波厚みセンサを得ることができる。
前述のようにAの粉末―ゾル法、Bの超微粉末法のいずれの場合においても、分極処理工程としてコロナ放電分極法を適用することが出来るが、コロナ放電分極処理を実施するためのコロナ放電分極処理装置の一例、特にコロナ放電用電極として線状電極を用いたコロナ放電分極処理装置の一例を図7〜図9に示し、さらにその装置を用いての分極処理の望ましい態様について説明する。
図7〜図9において、床面などの固定水平面上に設置された固定台21の上方に電極台23が位置しており、この電極台23は、固定台21に、昇降調整機構25を介して上下方向に位置調整に支持されている。例えば電極台23は、固定台1から垂直上方に伸びるガイド軸27によって昇降可能に支持されるとともに、油圧シリンダなどの流体圧シリンダあるいは回転螺子機構、その他、各種のリンク機構など、自動もしくは手動の任意の構成の昇降調整機構25によって昇降されるように構成されている。
前記電極台23は、その上面が水平な平坦面23Aとされており、またその電極台23は、基本的には少なくともその上面(平坦面)23Aが導電性を有する構成とされていればよいが、本実施形態の場合は、電極台23の全体がアルミニウムやアルミニウム合金、銅や銅合金、ステンレス鋼などの導電性材料からなる構成とされている。そしてこの電極台23は、接地電位を保つように、アース線29によって電気的に接地されている。なお電極台23には、必要に応じて、電熱ヒータや温水ヒータ、オイルヒータなどの図示しない加熱手段が組み込まれていても良い。
さらに電極台23の上方には、コロナ放電用電極31として、直線状の導電性線材からなる1本または2本以上(図示の例では3本)の線状電極31A〜31Cが、その長さ方向が水平となるように(したがって電極台23の上面23Aと平行となるように)、かつ同じ水平面内において平行に等しい間隔Sで配設されている。これらの線状電極31A〜31Cは、タングステン(W)などの高融点導電材料によって外径50〜100μm程度の線材に作られたものである。そして線状電極31A〜31Cは、例えばアーム状の電極支持部材33から間隔をおいて下方に突出する一対の支持部33A、33B間に張設されて、水平状態を保つようになっている。また線状電極31A〜31Cは、直流高電圧電源からなる分極電圧印用の電源35の一方側(正極もしくは負極側)に、リード線36を介して電気的に接続されている。
以上のようにして、電極台23の上方の所定距離Gだけ離れた位置に、その電極台23の上面23Aと平行なコロナ放電用の線状電極31A〜31Cが配設された分極処理装置が構成されている。そして電極台23の上面23Aと線状電極31A〜31Cの間の距離Gは、昇降調整機構25により電極台23の垂直方向位置を変えることによって、適宜調整可能となっている。
但し、場合によっては、電極台23の上下方向位置は固定しておく一方、電極支持部材33を昇降可能として、その電極支持部材33に昇降調整機構を設けておき、必要に応じて電極支持部材33を昇降させることによって線状電極31A〜31Cを上下動させ、これによって電極台23の上面23Aと線状電極31A〜31Cの間の距離Gを調整することも可能である。したがって、要は、電極台23の上面23Aと線状電極31A〜31Cの間の距離Gを調整する間隔調整手段として、電極台23と電極支持部材33のいずれかに昇降調整機構が設けられていれば良い。
次に、図7〜図9に示されるコロナ放電分極処理装置を用いて、前記積層体におけるチタン酸ビスマスからなる焼結体層に分極処理を施す方法について説明する。
ここで、積層体40は、既に述べたようにステンレス鋼や白金などの導電性を有する10〜150μm程度の薄質な金属薄板(第1の電極)1を支持体とし、その金属薄板1の一方の板面(上面)に、30〜150μm程度の薄い層状にチタン酸ビスマスからなる焼結体層3が形成されたもの(分極処理工程の前に第2電極形成工程を実施しない場合)、あるいは、上記と同様に支持体としての金属薄板(第1の電極)1の板面にチタン酸ビスマスからなる焼結体層3が形成され、さらにその焼結体層3の表面に第2の電極5が形成されたものである。但し図7〜図9の例では、第2の電極5を形成していない積層体40を示している。ここで、上記の金属薄板1は、コロナ放電のための電圧印加時に、コロナ放電用電極31(線状電極31A〜31C)の対極の平板状ベース電極としても機能するものである。
前述のような積層体40における焼結体層3に分極処理を施すにあたっては、積層体40を、金属薄板1の板面(下面)が電極台23の上面23Aに接するように載置する。この状態では、電極台23と金属薄板1との間が電気的に導通されて、金属薄板1が電極台23と同電位(通常は接地電位)となり、金属薄板1自体が、コロナ放電時の平板状ベース電極として機能し得ることになる。またこの状態では、焼結体層3の上面は水平となっており、同じく水平に張設された線状電極31A〜31Cとの間に所定の間隔が存在する。
この状態で分極電圧印用電源35を駆動させれば、線状電極31A〜31Cと金属薄板1との間に高電圧が加えられ、これによって各線状電極31A〜31Cから金属薄板1に向けてコロナ放電が発生して、電界領域(放電域;電位差領域)が形成される。焼結体層3は、金属薄板1に対して線状電極31A〜31Cの側に形成されているから、その焼結体層3は、コロナ放電による電界に曝され、その結果、焼結体層3が分極されることになる。
本発明者等の実験によれば、密度が70〜80%と低密度でかつ厚みが数百μmオーダー以下の薄質なチタン酸ビスマスからなる焼結体層であれば、コロナ放電によって、超音波厚みセンサとして必要な程度の分極特性、圧電特性が得られることが判明している。
なお、場合によっては、既に述べたように分極処理装置として電極台23に予め加熱手段を組み込んだ構成を適用しておき、分極処理時に加熱手段を作動させて、電極台23および金属薄板1を介して焼結体層3を、例えば80〜200℃程度に加熱し、その状態でコロナ放電を生起させて、分極を促進しても良い。
なお図7から図9に示す例の場合、コロナ放電用電極としては、従来のコロナ放電において一般的な針状電極ではなく線状電極を用いているが、線状電極であっても、その径が小さければ、水平に伸びる線状電極の垂直断面で見れば点状となっており、そのため平板状ベース電極(金属薄板1)に向かってコロナ放電を生じさせることができる。しかも各線状電極31A〜31Cからは、その線状電極の長さ方向に沿う帯状に電界(放電域)が形成されるため、ある表面積を有する焼結体層3に対して、その表面における広がりを持った領域を同時に電界に曝し、これによって焼結体層のある広さの領域を、一斉に分極させることができる。
特に本例のように、線状電極として平行な複数本のもの(31A〜31C)を設けておけば、同時に広い面積にわたって焼結体層3をコロナ放電による電界中に曝すことができる。
例えば図7〜図9に示す例では、間隔を置いて平行に配列された3本の線状電極31A、31B、31Cのそれぞれと平板状ベース電極に相当する金属薄板1との間には、それぞれコロナ放電によって電界領域(放電域)41A、41B、41Cが形成される。これらの電界領域41A、41B、41Cは、それぞれ線状電極31A、31B、31Cの長さ方向に沿う帯状の領域として、最大幅(金属薄板表面付近での幅)Wで形成される。そして各電界領域41A、41B、41Cの幅方向の端部付近が互いに重なり合うように、線状電極31A、31B、31Cの相互間の間隔S、および線状電極31A、31B、31Cと電極台23との間の距離Gを設定しておけば、金属薄板1上に形成されている焼結体層3の全体が電界領域中に曝されることになり、その焼結体層3の全体を同時に分極させることが可能となる。
なお、分極のためのコロナ放電時におけるコロナ放電用電極31としての線状電極31A〜31Cと、それに対向する平板状のベース電極(金属薄板1)との間の間隔Gは、0.5〜2cm程度が好ましい。間隔Gが0.5mm未満では、対向電極間の距離が小さすぎて、絶縁破壊による火花放電(全路放電)が生じてしまうおそれがあり、一方間隔Gが2cmを越えれば、コロナ放電が生じにくくなってしまう。
また分極のためのコロナ放電時において印加する印加電圧は、間隔Gによっても異なるが、通常は5000〜15000V程度が好ましい。5000V未満ではコロナ放電が生じにくくなり、一方15000Vを越えれば、細い線状電極が焼切れてしまうおそれがある。なお本発明者等の実験によれば、チタン酸ビスマスからなる焼結体層の密度が70〜80%で、かつ厚みが30〜150μm程度と薄質であれば、上記の電極間距離条件、印加電圧条件の範囲内でのコロナ放電によって、超音波厚みセンサとして必要な程度の分極特性(圧電特性)が得られることが確認されている。
さらに、高電圧を印加する時間、すなわちコロナ放電によって分極処理を行う時間は、1〜5分程度とすることが望ましい。分極処理時間が1分未満では、70〜80%の低密度の焼結体について、超音波厚みセンサとして必要な程度まで分極させることができなくなってしまうおそれがあり、一方、5分を越えて分極処理を行っても、70〜80%の低密度の焼結体ではそれ以上分極が進行せず、生産性を損なうだけである。但し、分極しにくい圧電材料の場合には、5分を越える長時間の分極処理を行うことも許容される。
なお、図7〜図9では、焼結体層3の表面に第2の電極5が予め形成されていない場合についてコロナ放電による分極処理を行う例として示しているが、第2の電極5が予め形成されている焼結体層3に対してコロナ放電による分極処理を行ってもよいことはもちろんであり、その場合においても、焼結体層3の表面に予め第2の電極5が形成されていない状態での分極処理条件と同様な条件で分極させ得ることが確認されている。
さらに、以上の説明では、焼結体層を支持するための薄板状支持体(超音波厚みセンサとしての第1の電極を兼ねるもの)として、ステンレス鋼や白金などの金属薄板を用いることとしているが、基本的には、薄板状支持体は、第1の電極として機能させるべく、少なくとも表面に導電性が付与されているものであれば良い。したがって例えばジルコニア系セラミックスからなる平均厚み30〜100μm程度の薄い基板の板面に、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、その他、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)など、導電性を有しかつ耐高温酸化特性に優れた金属をメタライズして、平均膜厚5〜20μm程度のメタライズ層を形成した薄板状支持体を使用することも許容される。
すなわち、ジルコニア系セラミックスは、各種のセラミックスのうちでも、一般に靭性、延性が優れていて、薄質であれば、ある程度の可撓性を示すことができ、そのため本発明で対象としている超音波厚みセンサにおいて、板状支持体として金属薄板の代わりに使用することができる。特にジルコニア系セラミックスのうちでも、部分安定化ジルコニアは、靭性、延性に優れており、したがって超音波厚みセンサに使用することができる。部分安定化ジルコニアとしては、イットリウム(Y)で代表される希土類元素の酸化物(例えばイットリア:Y)や酸化マグネシウム(マグネシア:MgO)、あるいは酸化カルシウム(カルシア:CaO)などがある。これらのうちでも、イットリアを安定化剤として添加したイットリア部分安定化ジルコニア(3YSZ)を用いることが、特性(可撓性)およびコスト面から最も望ましい。
以下に本発明の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法に従って圧電材料粉末(チタン酸ビスマス粉末)を製造し、さらにそのチタン酸ビスマス粉末を用いて超音波厚みセンサを製造した実施例を記す。
この実施例1は、チタン酸ビスマス合成用の原料粉末として、酸化チタン(TiO)の粉末および酸化ビスマス(Bi)の粉末を用い、かつ合成されたチタン酸ビスマス粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するにあたって、前述のAの粉末―ゾル法を適用し、さらに分極処理としては、前記ii)のコロナ放電による分極処理を適用し、超音波厚みセンサを製造した実施例である。
すなわち、先ずチタン酸ビスマス粉末合成用の原料粉末として、酸化チタン(TiO)の平均粒径1μmの粉末および酸化ビスマス(Bi)の平均粒径2μmの粉末とを用意し、これらを、TiとBiのモル比が3:4となるように配合し、溶媒をエタノール、分散剤をポリエチレンイミンとして、ボールミルにより24時間湿式混練し、スラリーとした。そのスラリーを乾燥させて混合粉末塊とした後、パット上で乾燥させ、大気中にて大気圧下で、825℃、3時間の熱処理を行なった。熱処理後の粉末塊についてX線回折法により分析したところ、純粋なBiTi12となっていることが確認された。その粉末塊を粉砕し、150ミクロンの篩いを通過させたものをボールミルに入れ、エタノール中で、ジルコニアボールを粉砕媒体として24時間粉砕することにより、平均粒径2μmのチタン酸ビスマス粉末とし、乾燥させた。
一方、チタンアルコキシドとしてのチタンブトキシドのブタノール溶液と、ビスマスの酢酸塩として酢酸ビスマスを用意し、これらをTi:Bi=3:4のモル比となるように配合して、Ti−Biゾルを調製した。なおこのTi−Biゾルは、金属成分としてのTiおよびBiを、ゾルの全重量に対して合計で10%含むものである。
前記Ti−Biゾルに、前述の平均粒径2μmのBIT粉末を、Ti−Biゾル:チタン酸ビスマス粉末が重量比で2:1の割合となるように混合し、焼結原料スラリーとした。
次いでその焼結原料スラリーを、第1の電極としてのSUS304からなる金属薄板(厚さ25μm、1cm×2cm角)の中央に、10mmφの円形状に厚さ50〜150μmで塗布した。具体的な塗布方法としては、前記金属薄板の板面に、10mmφの開口部が形成されるように100μm厚のテープでマスキングし、ロールコーターで前記開口部に焼結原料スラリーを50〜150μm厚で塗布し、焼結原料層を形成した。
塗布後、乾燥させてから、650℃で加熱することにより、焼結原料層を焼結させ、チタン酸ビスマス焼結体層とした。具体的には、電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度10℃/minで650℃まで加熱し、650℃において0.5時間保持したのち、炉冷した。これにより、焼成されたチタン酸ビスマスからなる厚み50μmの焼結体層が、第1の電極としての厚さ25μmのSUS304からなる金属薄板の上に焼き付けられたものが得られた。
次に、そのチタン酸ビスマスからなる焼結体層(8mm角)の中央に、4mm丸の大きさで第2の電極用の銀ペーストを塗布し、500℃で焼き付け、平均厚み20μmの第2の電極(銀電極)を形成した。
このようにして第1の電極(SUS304)上にチタン酸ビスマスからなる焼結体層(セラミック層)が形成されかつその焼結体層上に第2の電極(銀)が形成された積層体が得られた。なお焼結体層の密度は、約75%であった。
その後、コロナ放電による分極処理を、次のようにして施した。すなわち、コロナ放電分極処理装置として図7〜図9に示す装置を用い、その電極台23上に積層体40を載置して、コロナ放電による分極処理を行なった。ここでコロナ放電用電極31としては、タングステン(W)からなる外径50μm、長さ150mmの3本の線状電極31A〜31Cを、30mmの間隔で平行に配列し、また積層体40と線状電極31A〜31Cとの間隔は1cmとし、9000Vの電圧を線状電極31A〜31Cと電極台23との間に加え、5分間処理を行った。
その後、第1の電極(SUS304)と第2の電極(銀)のそれぞれにリード線を導電ペーストにより接着し、厚みセンサとした。
分極処理後のサンプルについて、d33メータとして、中国科学院音響研究所(Institute of Acoustics, Chinese Academy of Siences)製 ピエゾd33メータ ZJ−3Bを用いて分極状況(圧電定数d33)を調べたところ、d33値として約20pC/Nの値が得られ、このことから良好に分極されていることが確認された。また実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径10cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として銀ペーストを用いて貼り付け、室温において管壁の厚み測定を行なったところ、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。さらに、上記の厚み測定対象の管壁を350℃に加熱して、その状態で上記と同様に厚み測定を行なったところ、室温の場合と同様に良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
この実施例2は、実施例1と同様に、酸化チタン(TiO)の粉末および酸化ビスマス(Bi)の粉末からなる混合粉末に熱処理を施してチタン酸ビスマスを合成し、さらに合成されたチタン酸ビスマスの粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するにあたって、前述のAの粉末―ゾル法を適用し、さらに分極処理としては、前記ii)のコロナ放電による分極処理を適用し、超音波厚みセンサを製造した実施例であるが、本実施例2では、チタン酸ビスマスを合成するにあたって、熱処理温度を700〜1000℃の範囲内の種々の温度に変化させた。
すなわち、実施例1と同様に、チタン酸ビスマス粉末合成用の原料粉末として、酸化チタン(TiO)の平均粒径1.5μmの粉末および酸化ビスマス(Bi)の平均粒径2.5μmの粉末とを用意し、これらを、TiとBiのモル比が3:4となるように配合し、溶媒をエタノール、分散剤をポリエチレンイミンとして、ボールミルにより24時間湿式混練し、スラリーとした。そのスラリーを乾燥させて混合粉末塊とした後、パット上で乾燥させ、大気中にて大気圧下で、700℃、750℃、800℃、825℃、850℃、900℃、950℃、1000℃の各温度で、3時間の熱処理を行なった。熱処理後の粉末塊を粉砕し、150ミクロンの篩いを通過させたものをボールミルに入れ、エタノール中で、ジルコニアボールを粉砕媒体として24時間粉砕することにより、平均粒径2μmのチタン酸ビスマス粉末とし、乾燥させた。
一方、実施例1と同様にしてモル比がTi:Bi=3:4のTi−Biゾルを調製し、そのTi−Biゾルに、前述の各温度で熱処理された平均粒径2μmのチタン酸ビスマス粉末を、Ti−Biゾル:チタン酸ビスマス粉末が重量比で2:1の割合となるように混合し、焼結原料スラリーとした。
その後、第1の電極(金属薄板)として実施例2と同様に厚み25μmのSUS304板を用いて、実施例1と同じ条件で、焼結原料スラリーの塗布、乾燥を行い、得られた焼結原料層を、実施例1と同じく650℃に加熱して焼結させ、さらに実施例1と同じく第1電極の形成、およびコロナ放電による分極処理、リード線の取り付けを行なって、それぞれ超音波厚みセンサとした。
その後、実施例1で用いたものと同じd33メータによって、各厚みセンサ(それぞれチタン酸ビスマスの合成温度が異なるもの)の圧電特性(d33値、単位:pC/N)を調べたところ、図2に示す結果が得られた。
図2に示すように、熱処理温度によってd33値は大きく変化し、熱処理温度が825℃付近でd33値が20pC/N付近のピークを示すことが判明した。そして熱処理温度が825℃程度から低下すれば、それに伴ってd33値が低くなり、特に750℃より低温となれば、d33値として10pC/N程度よりも低い値しか得られなくなることが判明した。一方、熱処理温度が825℃程度から上昇すれば、d33値が低くなり、900℃を越えれば、d33値として10pC/N程度よりも低い値しか得られなくなることが判明した。なお、熱処理温度が1000℃では、チタン酸ビスマスが溶融して、サンプルの回収が困難となった。
この実施例3は、チタン酸ビスマス合成原料としては実施例1と同様な粉末(酸化チタン(TiO)の粉末+酸化ビスマス(Bi)の粉末)を用いて、実施例1と同じ条件でチタン酸ビスマス粉末(平均粒径2μm)を製造し、さらにそのチタン酸ビスマス粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するプロセス中において、粉末―ゾル法によって焼結原料を調製するにあたり、Ti−Biゾルとして、実施例1とは変えて、Biのアルコキシドであるビスマスブトキシドのアルコール溶液と二酢酸チタンとの混合ゾルを用いた例である。
すなわちこの実施例3では、実施例1と同じ条件で、チタン酸ビスマス粉末(平均粒径2μm)を製造した。そしてそのチタン酸ビスマス粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するに当たって、ビスマスアルコキシドとしてのビスマスブトキシドのブタノール溶液と、チタンの酢酸塩として二酢酸チタンを用意し、これらをTi:Bi=3:4のモル比となるように配合して、Ti−Biゾルを調製した。なおこのTi−Biゾルは、金属成分としてのTiおよびBiを、ゾルの全重量に対して合計で10%含むものである。
得られたTi−Biゾルに、前述の平均粒径2μmのチタン酸ビスマス粉末を、Ti−Biゾル:チタン酸ビスマス粉末が重量比で2:1の割合となるように混合し、焼結原料スラリーとした。
その後は、実施例1と同様に金属薄板(第1の電極)として厚み25μmのSUS304板を用い、実施例1と同様に塗布、乾燥、焼結、さらに第2電極(銀)の形成を行ない、コロナ放電による分極処理を行い、各電極にリード線を取り付けて、超音波厚みセンサとした。
分極処理後のサンプルについて、前記と同じd33メータを用いて分極状況(圧電定数d33)を調べたところ、d33値として約15pC/Nの値が得られ、このことから良好に分極されていることが確認された。また実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径10cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として銀ペーストを用いて貼り付け、室温において管壁の厚み測定を行なったところ、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。さらに、上記の厚み測定対象の管壁を350℃に加熱して、その状態で上記と同様に厚み測定を行なったところ、室温の場合と同様に良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
このように、実施例3では、チタン酸ビスマス粉末を用いて、粉末―ゾル法によって超音波厚みセンサを製造するにあたり、ゾル原料としてビスマスのアルコキシドとチタンの酢酸塩を用いたが、この場合も良好な結果が得られることが判明した。
この実施例4は、チタン酸ビスマス合成原料としては、実施例1と同様な粉末(酸化チタン(TiO)の粉末+酸化ビスマス(Bi)の粉末)を用いて、実施例1と同じ条件でチタン酸ビスマス粉末(平均粒径2μm)を製造し、さらにそのチタン酸ビスマス粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するプロセス中において、粉末―ゾル法によって焼結原料を調製するにあたり、Ti−Biゾルとして、実施例1、実施例3とは変えて、TiのアルコキシドおよびBiのアルコキシドの混合アルコール溶液を用いた例である。
すなわちこの実施例4では、実施例1と同じ条件で、チタン酸ビスマス粉末(平均粒径2μm)を製造した。そしてそのチタン酸ビスマス粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するに当たって、チタンアルコキシドとしてのチタンブトキシドとビスマスアルコキシドとしてのビスマスブトキシドのブタノール溶液を、Ti:Bi=3:4のモル比となるように配合して、Ti−Biゾルを調製した。なおこのTi−Biゾルは、金属成分としてのTiおよびBiを、ゾルの全重量に対して合計で5%含むものである。
得られたTi−Biゾルに、前述の平均粒径2μmのチタン酸ビスマス粉末を、Ti−Biゾル:チタン酸ビスマス粉末が重量比で2:1の割合となるように混合し、焼結原料スラリーとした。
その後は、実施例1と同様に金属薄板(第1の電極)として厚み25μmのSUS304板を用い、実施例1と同様に塗布、乾燥、焼結、さらに第2電極(銀)の形成を行ない、コロナ放電による分極処理を行い、各電極にリード線を取り付けて、超音波厚みセンサとした。
分極処理後のサンプルについて、d33メータを用いて分極状況(圧電定数d33)を調べたところ、d33値として約18pC/Nの値が得られ、このことから良好に分極されていることが確認された。また実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径10cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として銀ペーストを用いて貼り付け、室温において管壁の厚み測定を行なったところ、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。さらに、上記の厚み測定対象の管壁を350℃に加熱して、その状態で上記と同様に厚み測定を行なったところ、室温の場合と同様に良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
このように、実施例4では、チタン酸ビスマス粉末を用い、粉末―ゾル法によって超音波厚みセンサを製造するにあたり、Ti−Biゾル原料としてチタンのアルコキシドとビスマスのアルコキシドを用いたが、この場合も良好な結果が得られることが判明した。
この実施例5は、チタン酸ビスマス合成原料としては、実施例1と同様な粉末(酸化チタン(TiO)の粉末+酸化ビスマス(Bi)の粉末)を用いて、実施例1と同じ条件でチタン酸ビスマス粉末(平均粒径2μm)を製造し、さらにそのチタン酸ビスマス粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するプロセス中において、焼結原料を調製するにあたり、実施例1〜実施例4の粉末―ゾル法とは変えて、超微粉末法を適用した例である。
すなわち実施例5では、実施例1と同じ条件で、チタン酸ビスマス粉末(平均粒径2μm)を製造し、さらにそのチタン酸ビスマス粉末(粗粉末)を用いて超音波厚みセンサを製造するに当たって、その平均粒径2μmのチタン酸ビスマス粗粉末を、湿式ビーズミルを用いて、平均粒径0.2μmとなるまで粉砕した。なお湿式ビーズミルにおけるビーズ(粉砕媒体)としては、粒径0.5mmのジルコニアを用い、また分散媒としては水を用いた。得られた超微粉末スラリーを乾燥して、平均粒径0.2μmのチタン酸ビスマス超微粉末を得た。
次いでその超微粉末ペーストを、第1の電極としてのSUS304からなる金属薄板(厚さ50μm、1cm×2cm角)の中央に、8mm角の方形状に厚さ100μmで塗布した。具体的な塗布方法としては、前記金属薄板の板面に、8mm角の開口部が形成されるように100μm厚のテープでマスキングし、ロールコーターで前記開口部にペーストを100μm厚で塗布した。
塗布後、ペーストを乾燥させてから、電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度2℃/minで700℃まで加熱し、700℃において1時間保持した後、炉令した。これにより、焼成されたチタン酸ビスマスからなる厚み60μmの焼結体層が、第1の電極としての厚さ50μmのSUS304からなる金属薄板の上に焼き付けられたものが得られた。
更にそのチタン酸ビスマスからなる焼結体層(8mm角)の中央に、4mm丸で第2の電極用の銀ペーストを塗布し、500℃で焼き付けて、平均厚み30μmの第2の電極(銀電極)を形成した。
このようにして第1の電極(SUS304)上にチタン酸ビスマスからなる焼結体層(セラミック層)が形成されかつその焼結体層上に第2の電極(銀)が形成された積層体が得られた。なお焼結体層の密度は、約75%であった。
その後、分極処理として実施例1と同様なコロナ放電による分極処理を施した後、各電極のそれぞれにリード線を導電ペーストにより接着し、厚みセンサとした。
分極処理後のサンプルについて、d33メータを用いて分極状況(圧電定数d33)を調べたところ、d33値として約17pC/Nの値が得られ、このことから良好に分極されていることが確認された。また実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径10cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として銀ペーストを用いて貼り付け、室温において管壁の厚み測定を行なったところ、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。さらに、上記の厚み測定対象の管壁を350℃に加熱して、その状態で上記と同様に厚み測定を行なったところ、室温の場合と同様に良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
このように、実施例5では、チタン酸ビスマス粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するにあたり、超微粉末法を適用したが、この場合も良好な結果が得られることが判明した。
なおこの実施例5に準じて、酸化チタン粉末と酸化ビスマスの混合粉末を熱処理する際の加熱温度(×3時間)を、実施例2の場合と同様に、700℃〜1000℃の範囲内で変化させ、得られた各チタン酸ビスマス粉末(熱処理温度を異ならしめたもの)を使用して、それぞれ実施例2と同様に超音波厚みセンサを製造し、前記と同様なd33メータによってd33値を調べた。その結果、図2に示した実施例2の結果とほぼ同様の結果が得られることが確認された。すなわち、チタン酸ビスマス粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するプロセスにおいて、実施例2の粉末―ゾル法に代えて、超微粉末法を適用した場合も、チタン酸ビスマスの合成温度が圧電特性に及ぼす影響は、粉末―ゾル法を適用した場合と同様であることが確認された。
この実施例6は、チタン酸ビスマス合成原料として、実施例1と同様に、酸化チタンの粉末および酸化ビスマスの粉末を用い、かつ合成されたチタン酸ビスマス粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するにあたって、前述のAの粉末―ゾル法を適用し、さらに分極処理として、前記ii)のコロナ放電による分極処理を適用するにあたって、実施例1〜5とは変えて、チタン酸ビスマスからなる焼結体層上に第2の電極が未だ形成されていない状態でコロナ放電分極処理を実施し、その後に第2の電極を、分極処理後の焼結体層上に形成して、超音波厚みセンサを製造した例である。
すなわち、金属薄板(厚さ25μmのSUS304板)上にチタン酸ビスマスからなる焼結体層(密度約75%)を形成するまでは、実施例1と全く同様とし、その焼結体層上に第2の電極を形成していない状態の積層体を、図7〜図9に示すコロナ放電分極処理装置の電極台23上に載置し、実施例1と同じ条件で、コロナ放電による分極処理を行った。
分極処理後、チタン酸ビスマスからなる焼結体層(8mm角)の中央に、4mm丸の大きさで第2の電極用の銀ペーストを塗布し、500℃で焼き付け、平均厚み20μmの第2の電極(銀電極)を形成した。その後、第1の電極(白金)と第2の電極(銀)のそれぞれにリード線を銀ペーストにより接着し、超音波厚みセンサとした。
得られた超音波厚みセンサについて、前記と同じd33メータを用いて分極状況(圧電定数d33)を調べたところ、d33値として約16pC/Nの値が得られ、このことから良好に分極されていることが確認された。また実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径8cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として銀ペーストを用いて貼り付け、室温において管壁の厚み測定を行なったところ、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。さらに、上記の厚み測定対象の管壁を350℃に加熱して、その状態で上記と同様に厚み測定を行なったところ、室温の場合と同様に良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
このように、実施例6は、チタン酸ビスマスからなる焼結体層上に第2の電極が未だ形成されていない状態でコロナ放電分極処理を実施し、その後に第2の電極を、分極処理後の焼結体層上に形成して、超音波厚みセンサを製造した例であるが、その場合にも、チタン酸ビスマスからなる焼結体層上に第2の電極を形成した後にコロナ放電による分極処理を施した場合と同様に、良好に分極されて、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性が得られることが判明した。
この実施例7は、チタン酸ビスマス合成原料として、実施例1と同様に、酸化チタンの粉末および酸化ビスマスの粉末を用い、かつ合成されたチタン酸ビスマス粉末を用いて超音波厚みセンサを製造するにあたって、前述のAの粉末―ゾル法を適用し、さらに分極処理として、前記ii)のコロナ放電による分極処理に代えて、前記i)の従来法、すなわち、一対の分極用電極によって挟んでシリコンオイル中で処理する方法を適用して、超音波厚みセンサを製造した実施例である。
すなわち、チタン酸ビスマス粉末の製造は、実施例1と同様に行い、その粉末を用いての超音波厚みセンサを製造するプロセス中、第1の電極(SUS304板)上にチタン酸ビスマスからなる焼結体層(密度約75%)を形成し、さらにその焼結体層上に第2の電極(銀)を形成して、積層体を得るまでの工程は、実施例1と同様とした。
その後、積層体を150℃のシリコンオイル中に浸漬し、積層体における第1の電極と第2の電極の間に3000V/mmの電位差を与える分極処理を5分間実施した。その後、第1の電極(白金)と第2の電極(銀)のそれぞれにリード線を導電ペーストにより接着し、超音波厚みセンサとした。
得られた超音波厚みセンサについて、前記と同じd33メータを用いて分極状況(圧電定数d33)を調べたところ、d33値として約18pC/Nの値が得られ、このことから良好に分極されていることが確認された。また実際に超音波厚みセンサとして、ステンレス鋼製の外径8cm、肉厚8mmの管の管壁に、接着剤として銀ペーストを用いて貼り付け、室温において管壁の厚み測定を行なったところ、良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。さらに、上記の厚み測定対象の管壁を350℃に加熱して、その状態で上記と同様に厚み測定を行なったところ、室温の場合と同様に良好に作動しかつ正しく厚みが測定されることが確認された。
このように実施例7は、分極処理として、ii)のコロナ放電分極処理に代えて、i)の従来法による処理を施した例であるが、その場合にも、コロナ放電による分極処理を施した場合と同様に、良好に分極されて、超音波厚みセンサとして必要な程度の圧電特性が得られることが判明した。
以上、本発明の好ましい実施形態、実施例について説明したが、これらの実施形態、実施例は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。
1 金属薄板(第1の電極;薄板状支持体)
3 焼結体層(チタン酸ビスマス圧電セラミックス層)
5 第2の電極
9 超音波厚みセンサ
11 厚さ測定対象物
31 コロナ放電用電極
31A〜31C 線状電極

Claims (10)

  1. 圧電材料としてチタン酸ビスマスからなる酸化物系セラミックを用いてなる超音波厚みセンサ用の圧電材料粉末を製造する方法において;
    酸化チタンの粉末と酸化ビスマスの粉末とを混合する混合工程と、
    前記混合工程により得られた混合粉末を、750℃〜900℃の範囲内の温度に加熱して、チタン酸ビスマスを合成する熱処理工程と、
    前記熱処理工程により得られたチタン酸ビスマスを粉砕して粉末とする粉砕工程と
    を有してなることを特徴とする超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法。
  2. 前記熱処理工程において、前記混合粉末の加熱温度を、800〜850℃の範囲内としたを特徴とする請求項1に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法。
  3. 前記熱処理工程において、前記熱処理工程における混合粉末の加熱時間を、30分〜20時間の範囲内とすることを特徴とする請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料の製造方法。
  4. 前記混合工程において、酸化チタンの粉末と酸化ビスマスの粉末とを、TiとBiのモル比が実質的に3:4となるように混合することを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法。
  5. 前記粉砕工程において、チタン酸ビスマスの粉末が、平均粒径10μm以下となるように粉砕することを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法。
  6. 請求項1〜請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末の製造方法によって得られたことを特徴とする超音波厚みセンサ用酸化物系圧電材料粉末。
  7. 請求項1〜請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の方法により得られたチタン酸ビスマスからなる酸化物系圧電材料粉末を用いて超音波厚みセンサを製造する方法であって;
    チタンおよびビスマスのいずれか一方のアルコキシドのアルコール溶液と、他方の酢酸塩とを混合してTi−Biゾルを調製するゾル調製工程と、
    前記Ti−Biゾルと、第1〜第5のうちのいずれかの態様の方法により得られたチタン酸ビスマスからなる平均粒径10μm以下の粉末とを混合して、その混合物からなる焼結原料を調製する焼結原料調製工程と、
    少なくとも一方の板面が導電性を有する薄板状支持体を第1の電極とし、前記焼結原料を、前記薄板状支持体からなる第1の電極の前記一方の板面上に所定厚みで付着させて乾燥させることにより焼結原料層を形成する焼結原料層形成工程と、
    前記焼結原料層を加熱により焼成して、チタン酸ビスマスからなる焼結体層を形成する焼成工程と、
    前記焼結体層における第1の電極に対し反対側の表面上に第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
    前記第2電極形成工程の前もしくは後に、前記焼結体層における厚み方向に電位差を与えて焼結体層を分極させる分極処理工程と、
    を有してなることを特徴とする超音波厚みセンサの製造方法。
  8. 請求項1〜請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の方法により得られたチタン酸ビスマスからなる酸化物系圧電材料粉末を用いて超音波厚みセンサを製造する方法であって;
    前記チタン酸ビスマスからなる酸化物系圧電材料粉末を、平均粒径が0.15〜0.25μmの範囲内の超微粉末に粉砕する超微粉末調製工程と、
    前記超微粉末を分散媒とともに混錬して、超微粉末ペーストとするペースト化工程と、
    前記超微粉末ペーストを、少なくとも一方の板面が導電性を有する薄板状支持体からなる第1の電極の前記板面上に塗布して、そのペースト層を乾燥させ、第1の電極の板面上に超微粉末層を形成する微粉末層形成工程と、
    前記超微粉末層を加熱して焼成し、チタン酸ビスマスからなる焼結体層を第1の電極の一方の板面上に形成する焼成工程と、
    前記焼成工程終了の前もしくは後に、前記焼結体層における前記第1の電極に対し反対側の表面に第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
    前記焼結体層の厚み方向に電位差を与えて分極処理する分極処理工程と、
    を有してなることを特徴とする超音波厚みセンサの製造方法。
  9. 前記分極処理工程において、焼結体層表面もしくは第2電極表面から離れた位置にコロナ放電用電極を配して、気体中においてコロナ放電用電極と支持体表面との間に電圧を印加することにより、その間にコロナ放電を生起させ、そのコロナ放電による電界領域内に焼結体層を曝すことにより焼結体層を分極させることを特徴とする請求項7、請求項8のいずれかの請求項に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  10. 請求項7〜請求項9のうちのいずれかの請求項に記載の方法によって製造された超音波厚みセンサ。
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