JP2015060894A - 超音波厚みセンサの製造方法、及び超音波厚みセンサ - Google Patents

超音波厚みセンサの製造方法、及び超音波厚みセンサ Download PDF

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Abstract

【課題】乾燥収縮による焼結原料層の破損及び剥離を防ぐことができ、しかも、高感度の圧電センサを実現できる超音波厚みセンサの製造方法、及び超音波厚みセンサを提供すること。【解決手段】本発明の超音波厚みセンサの製造方法は、粉末のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を1000℃以上1200℃以下で熱処理する熱処理工程P1と、熱処理工程P1で熱処理したPZTを粉砕する粉砕工程P2と、粉砕工程P2で粉砕したPZTとPZTのゾルとを混合してスラリー化するスラリー化工程P3と、スラリー化工程P3で得られたスラリーを第1の電極上に成膜して焼結原料層を形成する成膜工程P4と、焼結原料層を焼結して圧電セラミックス前駆体とする焼結工程P5と、圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを得る分極処理工程P6と圧電セラミックス上に第2の電極を形成する電極形成工程と、を含むことを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、超音波厚みセンサの製造方法、及び超音波厚みセンサに関し、特に、チタン酸ジルコン酸鉛を含有する圧電セラミックスを用いた超音波厚みセンサの製造方法、及び超音波厚みセンサに関する。
従来、チタン酸バリウムを焼結する圧電セラミックスの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この圧電セラミックスの製造方法では、チタン酸バリウム粉末を所定形状に固めた後、電気的な抵抗加熱により第1焼結温度の1230℃〜1340℃で焼結してから、第2焼結温度の1150℃〜1200℃に下げて一定時間焼結する。これにより、高い圧電定数(d33)を有するチタン酸バリウムを主成分とする圧電セラミックスを製造することができる。
特開2008−150247号公報
しかしながら、特許文献1に記載の圧電セラミックスの製造方法では、焼結工程を2段階の温度で行う必要があるので、熱処理に時間を要する場合がある。
また、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:PbTiO−PbZrO)を用いた従来の圧電センサの製造方法では、PZTを構成する金属成分のアルコキシドを含有するゾル(液体:以下、「PZTゾル」という)とPZT粉末とを混合したスラリーをSUS(Stainless steel)板上に100μm程度の厚さに塗布及び乾燥して焼結原料層を形成する。そして、この焼結原料層を650℃程度に加熱してPZTゾルを分解してPZTにして圧電セラミックス前駆体とする。そして、圧電セラミックス前駆体に直流電圧を印加する電圧処理、又はコロナ放電処理により、PZTを分極させて圧電セラミックスとした後、この圧電セラミックスの表面に銀を塗布、焼付けして電極を設けることにより、圧電センサを製造する。
この場合、PZT粉末の粒径が1μm程度に小さい場合には、PZTゾルとPZT粉末とを混合したスラリーを塗布及び乾燥して焼結原料層を作製する際に、焼結原料層が乾燥収縮して破損する場合がある。また、焼結原料層の厚さを10μm〜30μm程度にすると乾燥収縮による焼結原料層の破損は防ぐことができるが、焼結原料層が薄くなり、十分な特性が得られない場合がある。さらに、近年、圧電センサの感度の向上が求められており、より感度が高い圧電センサが望まれている。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、乾燥収縮による焼結原料層の破損及び剥離を防ぐことができ、しかも、高感度の超音波厚みセンサが得られる超音波厚みセンサの製造方法、及び超音波厚みセンサを提供することを目的とする。
本発明の超音波厚みセンサの製造方法は、粉末のチタン酸ジルコン酸鉛を1000℃以上1200℃以下で熱処理する熱処理工程と、前記熱処理工程で熱処理した前記チタン酸ジルコン酸鉛を粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程で粉砕した前記チタン酸ジルコン酸鉛とチタン酸ジルコン酸鉛のゾルとを混合してスラリー化するスラリー化工程と、前記スラリー化工程で得られたスラリーを第1の電極上に成膜して焼結原料層を形成する成膜工程と、前記焼結原料層を焼結して圧電セラミックス前駆体とする焼結工程と、前記圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを得る分極処理工程と、前記圧電セラミックス上に第2の電極を形成する電極形成工程と、を含むことを特徴とする。
また本発明の超音波厚みセンサの製造方法は、粉末のチタン酸ジルコン酸鉛を1000℃以上1200℃以下で熱処理する熱処理工程と、前記熱処理工程で熱処理した前記チタン酸ジルコン酸鉛を粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程で粉砕した前記チタン酸ジルコン酸鉛とチタン酸ジルコン酸鉛のゾルとを混合してスラリー化するスラリー化工程と、前記スラリー化工程で得られたスラリーを第1の電極上に成膜して焼結原料層を形成する成膜工程と、前記焼結原料層を焼結して圧電セラミックス前駆体とする焼結工程と、前記圧電セラミックス前躯体上に第2の電極を形成する電極形成工程と、前記第2の電極形成後に、前記圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを得る分極処理工程と、を含むことを特徴とする。
これらの方法によれば、1000℃以上1200℃以下の温度範囲での熱処理により、粉末のチタン酸ジルコン酸鉛が収縮して弱い結合力を有した塊となるので、粉末のチタン酸ジルコン酸鉛に含まれる各成分(例えばPbO、ZrO、TiO)が相互に固溶したペロブスカイト型結晶構造が得られる。これにより、高感度の圧電セラミックスが得られると共に、粒径の小さい粉末のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた場合であっても、チタン酸ジルコン酸鉛とチタン酸ジルコン酸鉛のゾルとのスラリーを成膜した焼結原料層の乾燥に伴う破損及び剥離を防ぐことができる。この結果、乾燥収縮による焼結原料層の破損及び剥離を防ぐことができ、しかも、高感度の超音波厚みセンサが得られる超音波厚みセンサの製造方法を実現できる。
本発明の超音波厚みセンサの製造方法においては、前記熱処理工程は、前記熱処理工程は、熱処理の時間が1時間以上20時間以下であることが好ましい。この方法により、圧電セラミックスの圧電特性が更に向上する。
本発明の超音波厚みセンサの製造方法においては、前記チタン酸ジルコン酸鉛は、下記式(1)で表されることが好ましい。この方法により、圧電セラミックスの圧電特性が更に向上する。
Pb(Zr,Ti1−x)O・・・式(1)
(式(1)中、xは、0.30以上0.70以下を表す。)
本発明の超音波厚みセンサの製造方法においては、前記圧電セラミックスの圧電定数(d33)が、40pC/N以上であることが好ましい。この方法によれば、圧電センサとして十分な圧電特性を有する超音波厚みセンサが得られる。
本発明の超音波厚みセンサは、上記超音波厚みセンサの製造方法によって得られたことを特徴とする。この構成によれば、1000℃以上1200℃以下の温度範囲で熱処理するので、粉末のチタン酸ジルコン酸鉛が収縮して弱い結合力を有した塊となり、粉末のチタン酸ジルコン酸鉛に含まれる各成分(例えば、PbO、ZrO、TiO)が相互に固溶したペロブスカイト型結晶構造が得られる。これにより、高感度の圧電セラミックスが得られ、粒径の小さい粉末のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた場合であっても、圧電セラミックスの破損及び剥離を防ぐことができる超音波厚みセンサを実現できる。
本発明によれば、乾燥収縮による焼結原料層の破損及び剥離を防ぐことができ、しかも、高感度の超音波厚みセンサが得られる超音波厚みセンサの製造方法、及び超音波厚みセンサを実現できる。
図1は、本発明の実施の形態に係る超音波センサの一例の概略構成を示す模式図である。 図2は、本発明の実施の形態に係る超音波センサの他の例の概略構成を示す模式図である。 図3は、本発明の実施の形態に係る超音波センサの製造方法の概略を示すフロー図である。 図4は、本発明の実施の形態に係る圧電セラミックスの圧電定数と熱処理温度との関係を示す図である。 図5は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す正面図である。 図6は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す断面図である。 図7は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す平面図である。 図8Aは、本発明の実施の形態に係る超音波厚みセンサの製造方法の概略を示すフロー図である。 図8Bは、本発明の実施の形態に係る超音波厚みセンサの製造方法の概略を示すフロー図である。 図9は、本発明の実施例1に係る圧電セラミックスの圧電定数と熱処理温度との関係を示す図である。 図10は、本発明の実施例2に係る圧電セラミックスの圧電定数と熱処理時間との関係を示す図である。 図11は、本発明の実施例3に係る圧電セラミックスの圧電定数と熱処理時間との関係を示す図である。 図12は、本発明の実施例4に係る圧電セラミックスの圧電定数と熱処理時間との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。
図1は、本実施の形態に係る超音波センサの一例の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る超音波厚みセンサ9は、所定の厚さを有する被測定体11(例えば、各種プラントの配管、各種容器の壁面)の上に接着層13を介して設けられる第1の電極1と、この第1の電極1の上に設けられ、チタン酸ジルコン酸鉛(以下、「PZT」ともいう)を含有する圧電セラミックス層3と、この圧電セラミックス層3の上に設けられる第2の電極5とを備える。第1の電極1には、一端が超音波厚み計(不図示)に電気的に接続されたリード線7Aが接続され、第2の電極には、一端が超音波厚み計(不図示)に電気的に接続されたリード線7Bが接続される。
この超音波厚みセンサ9においては、外部に設けられた超音波厚み計(不図示)からのパルス状の電圧の印加による振動によって被測定体11に超音波を発信すると共に、被測定体11の壁面内を伝播して反射した超音波を電気信号に変換する。そして、この電気信号を超音波厚み計に送信することにより、被測定体11の厚みを測定することが可能となる。
本実施の形態に係る超音波厚みセンサ9は、第1の電極1、圧電セラミックス層3、及び第2の電極5の3層構造を有し、センサ全体としての厚みは薄く、可撓性を有するものである。そのため、例えば、図2に示すように、被測定体11の湾曲面(屈曲部)に対して設けた場合であっても、湾曲面に沿って超音波厚みセンサ9を設けることが可能となり、被測定体11の湾曲部位における厚みの測定をすることも可能となる。
また、本実施の形態に係る超音波厚みセンサ9は、例えば、被測定体11としての配管の外側に保護材や断熱材などの外被を設ける場合であっても、配管の外周面に予め接着層13を介して接着することにより、配管を有する各種プラントが運転中に配管の厚みなどを適宜測定することが可能となる。このため、配管の厚み測定のための外被の剥離や、測定後の外被修復作業も不要となる。
図3は、本実施の形態に係る超音波センサの圧電セラミックスの製造方法の概略を示すフロー図である。本実施の形態に係る圧電セラミックスの製造方法は、粉末のチタン酸ジルコン酸鉛を1000℃以上1200℃以下で熱処理する熱処理工程P1と、熱処理工程P1で熱処理したチタン酸ジルコン酸鉛を粉砕する粉砕工程P2と、粉砕工程P2で粉砕したチタン酸ジルコン酸鉛とチタン酸ジルコン酸鉛のゾルとを混合してスラリー化するスラリー化工程P3と、スラリー化工程P3で得られたスラリーを成膜して焼結原料層を形成する成膜工程P4と、焼結原料層を焼結して圧電セラミックス前駆体(焼結体層)とする焼結工程P5と、圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを得る分極処理工程P6と、を含む。なお、分極処理工程P6の前工程として圧電セラミックス前躯体上に電極を形成する電極工程を設けてもよい。以下各工程P1〜P6について詳細に説明する。
<熱処理工程P1>
熱処理工程では、粉末のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:PbTiO−PbZrO)を1000℃以上1200℃以下の温度で熱処理する。PZTとしては、共沈殿法で得られたものを用いてもよく、アルコキシド法によって得られたものを用いてもよい。PZTは、例えば、以下のようにして得られる。まず、PbO、ZrO、TiOの各粉末を、所望のPZTが得られる組成となるように配合し、配合した各粉末をエタノールなどの溶剤やポリエチレンイミンなどの分散媒を適宜加えてボールミルなどにより混錬する。そして、得られた混錬物(スラリー)を乾燥して混合粉末とし、この混合粉末を粉体の状態で熱処理することによりPZTが得られる。なお、PZTとしては、市販品の粉末状のPZTを用いてもよい。
本発明においては、PZTとしては、本発明の効果を奏する範囲で各種組成のPZTを用いることができる。PZTとしては、高感度の圧電セラミックスが得られる観点から、下記式(1)で表されるものが好ましい。
Pb(Zr,Ti1−x)O・・・式(1)
(式(1)中、xは、0.3以上0.7以下)
なお、上記式(1)において、xとしては、より高感度の圧電セラミックスが得られる観点から、0.30以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましく、0.45以上であることが更に好ましく、0.50以上であることがより更に好ましく、また0.70以下であることが好ましく、0.65以下であることがより好ましく、0.60以下であることが更に好ましく、0.55以下であることがより更に好ましい。以上のことを考慮すると、xとしては、0.30以上0.70以下であることが好ましく、0.40以上0.65以下であることがより好ましく、0.45以上0.60以下であることが更に好ましく、0.50以上0.55以下であることがより更に好ましい。
また、PZTとしては、本発明の効果を奏する範囲で微量添加元素を含有するものであってもよい。微量添加元素としては、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、La、Nd、Sc、及びGdからなる群から選択された少なくとも1種が挙げられる。微量添加元素を含有するPZTとしては、例えば、上述した各元素をそれぞれ10質量%程度以下添加したものが挙げられる。なお、本発明においては、必ずしもPZT系圧電セラミック材料のみを用いたものに限定されず、その他のペロブスカイト型結晶構造を有する圧電セラミック材料(例えば、LiNbO)など、更にはペロブスカイト結晶構造を持たないその他の圧電セラミック材料(例えば、BiTi12)を含むPZTなどを用いることもできる。
PZT粉末の粒径は、例えば、平均粒径1μm以上10μm以下である。平均粒径1μm以上10μm以下のPZT粉末は、PZTを構成する各金属成分の酸化物の粉末を混合して焼結し、焼結によって得られた塊状のPZTを機械的に粉砕することにより容易にえることができる。PZT粉末の平均粒径は、粉砕効率の観点から、1μm以上が好ましく、燒結性の観点から10μm以下が好ましい。
本発明においては、PZT粉末の熱処理を1000℃以上1200℃以下の温度範囲で実施する。熱処理の温度が1000以下であると粒径が小さく、熱処理による収縮の発生により剥がれやすくなると共に、十分な圧電特性が得られない。そこで、本実施の形態においては、1000℃以上1200℃以下で熱処理することにより、PZT粉末が収縮して弱い結合力を有した塊となるので、混合粉末の各成分(例えば、PbO、ZrO、TiO)が相互に固溶してペロブスカイト型結晶構造が得られる。この結果、高感度の圧電セラミックスが得られると共に、粒径の小さいPZT粉末を用いた場合であっても、PZT粉末とPZTゾルとのスラリーを成膜した焼結原料層の乾燥収縮に伴う破損及び剥離を防ぐことができる。
図4は、本発明の実施の形態に係る圧電セラミックスの圧電定数と熱処理温度との関係を示す図である。なお、図4においては、横軸に熱処理時間を示し、縦軸に圧電定数(d33)を示している。図4に示すように、本実施の形態では、熱処理時間を長くするにつれて得られる圧電セラミックスの圧電定数が増大し、所定時間(例えば、10時間)以上ではほぼ一定となる傾向がある。このため、熱処理工程における熱処理の時間としては、塗布膜の破損及び剥離を防ぐ観点、並びに、粒の成長に必要な時間を確保して高感度の圧電セラミックスを得る観点から、1時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましく、3時間以上であることが更に好ましく、5時間程度が特に好ましい。また、熱処理の時間としては、生産効率の観点から、また20時間以下であることが好ましく、15時間以下であることがより好ましい。
<粉砕工程P2>
粉砕工程P2では、熱処理工程P1での熱処理によって塊状となったPZTをボールミルなどによって粉砕して粉末状のPZTを得る。粉末状のPZTの粒径としては、例えば、約2μm程度から数10μm程度である。なお、粉砕工程の粉砕方法については、特に制限はなく、粉末状のPZTを得ることができるものであればよい。
<スラリー化工程P3>
スラリー化工程P3では、粉砕工程P2で得られたPZT粉末とPZTゾルとを混合して混錬物(スラリー)を得る。ここでは、必要に応じてエタノール、ブタノール、及び酢酸エチルなど溶剤を用いてもよい。なお、本発明において、PZTゾルとは、下記一般式(2)で表される3種類の金属成分を含有する金属アルコキシドのゾルである。PZTゾルは、鉛アルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、及びチタンアルコキシドの各ゾルを溶剤などと混合することにより得られる。
M(OR)・・・式(2)
(式(2)中、Mは、鉛(Pb)、チタン(Ti)、又はジルコニウム(Zr)を表し、Rは、アルキル基を表す。Yは、任意の数を表す。)
上記一般式(2)の金属アルコキシドのゾルとしては、Rとしてはアルキル基であれば特に制限はなく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、及びs−ブチル基などのアルコキシドのゾルを用いることができる。
鉛アルコキシドとしては、鉛ジイソプロキシド、及び鉛ジブトキシドなどが挙げられる。ジルコニウムアルコキシドとしては、ジルコニウムテトラブトキシド、及びジルコニウムテトラプロポキシドなどが挙げられる。チタンアルコキシドとしては、チタンテトライソプロポキシド、及びチタンテトラプロポキシドなどが挙げられる。
また、各アルコキシドゾルの配合は、金属成分の割合が、所望のPZTの組成における金属成分の割合と同等となるように定めることが望ましい。例えば、上記一般式(1)で表されるPZTの場合、各アルコキシドの金属成分のモル比が、Pb:Zr:Ti=1:x:1−xの割合となるように配合することが望ましい。
なお、PZTゾルとしては、上記一般式(2)で表されるPZTゾルの組成に、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、La、Nd、Sc、及びGdからなる群から選択された少なくとも1種の微量添加元素を含むPZTゾルとしてもよい。
PZTゾルを得るための方法については特に制限はない。PZTゾルは、例えば、上記一般式(2)で表される金属アルコキシドを溶剤に溶解するなどの常法によって得ることができる。
スラリー化工程P3におけるPZT粉末とPZTゾルとの混合比については特に制限されない。例えば、PZT粉末中の金属成分に対するPZTゾル中の金属成分のモル比が、0.2以上1.0以下の範囲内となるようにすることが好ましい。上記モル比が0.2以上であれば、アルコキシドゾルが充分に配合されるので、焼結工程P5においてゾルの分解生成物が焼結助剤として充分に機能し、比較的低温で焼結を行うことが可能となる。また、上記モル比が1.0以下であれば、アルコキシドゾルが適度な範囲となるので、圧電セラミックス前躯体上に電極を設けて焼結した場合であっても、PZTの粒子が充分に結合され、圧電セラミックス前躯体の剥落や破損を防ぐことができる。
<成膜工程P4>
成膜工程P4では、導電性部材上にPZT粉末とPZTゾルとの混合スラリーを成膜して所定の厚みを有する焼結原料層を形成する。この導電性部材は、第1の電極としての機能を有するだけではなく、焼結工程P5や圧電セラミックスの使用時における支持体としての機能を有する。第1の電極としては、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限はなく、各種金属板などを用いることができる。本発明においては、PZT粉末とPZTゾルとの混合物を用いるので、後述する焼結工程P5では、600℃以上800℃以下の比較的低温で焼結することができる。このため、第1の電極として白金などのように1200℃以上まで耐えうる高価な金属を用いる必要はなく、800℃程度までの耐酸化性を有する汎用の耐熱金属を使用することができるので、ステンレス鋼やその他の汎用の耐熱鋼の金属板を、第1の電極として使用することができる。
金属板としては、例えば、18Cr−8NiのSUS304系統のオーステナイト系ステンレス鋼、又は18Cr−12Ni−2.5MoのSUS316系統のオーステナイト系ステンレス鋼、その他、22Ni−12CrのSUH309系統のオーステナイト系耐熱鋼を用いることができる。これらは、いずれも白金よりも格段に安価に入手することができる。
第1の電極の厚みとしては、15μm以上100μm以下が好ましい。第1の電極の厚みが15μm以上であれば、第1の電極の強度が充分となり圧電セラミックスを容易に製造することができる。また、第1の電極の厚みが100μm以下であれば、第1の電極に可撓性が得られるので、例えば、圧電セラミックスを配管の湾曲部分に貼着して使用することができる。
PZT粉末とPZTゾルとのスラリーの成膜方法としては、例えば、スラリーを金属板表面に塗布する方法が挙げられる。また、スラリーをロールコーターや、一般的な印刷方法で成膜してもよい。
乾燥後の焼結原料層の厚みは、例えば、70μm以上200μm以下の範囲内とすることが好ましい。乾燥後の焼結原料層の厚みが70μm以上であれば、焼結によって得られる圧電セラミックス前駆体層の厚みが十分な範囲になるので、圧電セラミックスを湾曲させても圧電セラミックスから第1の電極が剥離することがない。また、乾燥後の焼結原料層の厚みが200μm以下であれば、焼結及び分極を経て得られる圧電セラミックスの厚みが適度な範囲となるので、圧電セラミックスに可撓性を付与することができる。なお、焼結原料層は、乾燥後の厚みが乾燥前の1/2〜1/4程度の厚みとなるので、厚みの減少分を考慮して塗布することが好ましい。また、焼結原料層の乾燥は、焼結工程P5における焼結のための加熱の初期段階で行なってもよい。
<焼結工程P5>
焼結工程P5では、焼結原料層を600℃以上800℃以下の温度範囲に加熱して圧電セラミックス前躯体とする。この焼結工程P5では、PZT粉末の粒子の間に介在しているPZTゾルに含まれるアルコキシドが分解し、超微粉末状の分解生成物が生成される。この分解生成物は、PZT粉末の粒子を焼結結合させる焼結助剤として機能する。また、分解生成物は、PZT粉末と同様の組成を有するので、得られる圧電セラミックスの圧電特性を損なうことがない。このため、PZT粉末と共にPZTゾルを混合して加熱することにより、比較的低温でも焼結が進行し、かつ圧電特性も向上する。
焼結工程P5では、加熱温度を600℃以上800℃以下として、焼結後の圧電セラミックスの密度が70%以上80%以下となるようにする。加熱温度が800℃以下であれば、焼結時のPZT粉体同士の焼結反応が穏やかに進行して密度が80%以下の圧電セラミックスを得ることができる。また、加熱温度が600℃以上であれば、PZT粉体同士の焼結反応が充分に進行して、圧電セラミックス前躯体の密度を70%以上に高めることができる。
圧電セラミックスは、密度が80%以下であれば、圧電セラミックスの剛性、及び焼結時の圧電セラミックスの収縮が適度な範囲となるので、圧電セラミックスに可撓性を付与することができる。これより、各種部材の曲面に圧電セラミックスを形成する場合であっても、金属板との剥離及び破損を防ぐことができる。また、焼結後の圧電セラミックスの密度が70%以上であれば、圧電セラミックスの空隙率が適度な範囲となるので、圧電セラミックス内部の粒子が充分に結合されている状態となる。これにより、焼結工程P5後の工程におけるハンドリングが良好になり、圧電セラミックスが粉体状に剥落することを防ぐことができると共に、圧電素子に用いられる圧電セラミックスとして充分な圧電特性を得ることができる。
本実施の形態によれば、従来の酸化物系圧電材料(セラミックス圧電材料)の焼結温度よりも低い600℃以上800℃以下の焼結温度であっても、圧電セラミックス前躯体に含まれるPZTゾルのアルコキシドの分解生成物が焼結助剤となるので、圧電素子として必要な圧電特性が得られる密度を有する圧電セラミックスを得ることができる。
なお、焼結工程P5における加熱は、大気雰囲気下で行うことができる。また、焼結工程における加熱時間は、600℃以上800℃以下の目標温度に達してから1分以上10分以下でよい。
<分極処理工程P6>
分極処理工程P6では、圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを形成する。圧電セラミックス前躯体の分極処理方法としては、例えば、一対の第1の電極と第2の電極との間に圧電セラミックス前躯体を挟持して一対の電極間に高電圧の直流電圧(例えば、3000V/mm)を印加する方法が挙げられる。また、圧電セラミックス前躯体と所定間隔離れた位置に金メッキが施されたタングステン線を用いたコロナ放電線を設置し、このコロナ放電線に高電圧(例えば、8000V程度)を印加してコロナ放電を行う方法が挙げられる。タングステン線としては、例えば、直径100μmのものを用いることができる。コロナ放電の処理時間としては、例えば、5分〜10分である。
ここで、図5〜図7本実施の形態に係る圧電セラミックスの製造方法に用いられるコロナ放電処理装置の一例について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す正面図であり、図6は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す断面図であり、図7は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す平面図である。
図5〜図7に示すように、本実施の形態に係るコロナ放電処理装置は、床面などの水平面上に設置される固定台21と、この固定台21上に垂直方向に伸びるガイド軸27を介して昇降可能に設けられた電極台23とを有する。この電極台23は、油圧シリンダなどの流体圧シリンダ、ボールねじ機構、又は各種のリンク機構などによって自動又は手動によって昇降可能な昇降調整機構25によって昇降可能に支持される。
電極台23は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼などの導電性材料を含んで構成され、上面が導電性を有する水平な平坦面23Aとなっている。また、電極台23は、アース線29によって電気的に接地されており、接地電位を保つように構成されている。なお、電極台23は、必要に応じて、電気ヒータ、温水ヒータ、又はオイルヒータなどの加熱手段を備えていてもよい。
電極台23の上面には、第1の電極1と圧電セラミックス前躯体3とが積層されてなる積層体40が配置される。また、電極台23の上方には、積層体40の圧電セラミックス前躯体3との間で所定の間隔でコロナ放電用電極31が設けられている。このコロナ放電用電極31は、例えば、タングステン線などの高融点導電性線材によって構成された少なくとも1つの線状電極31A〜31C(本実施の形態では3つ)によって構成される。これらの線状電極31A〜31Cは、延在方向が電極台23の上面23Aと平行になるように、互いに等しい間隔Sで配置されている。なお、線状電極31A〜31Cの外径は、例えば、50μm〜100μmとすることができる。
線状電極31A〜31Cは、例えば、アーム状の電極支持部材33から所定の間隔を置いて下方に突出する一対の支持部33A、33B間に設けられており、水平状態を保つようになっている。また、線状電極31A〜31Cは、直流高電圧電源からなる分極電圧印加用の電源35の正極又は負極にリード線36を介して電気的に接続されている。
以上のように、本実施の形態に係るコロナ放電処理装置においては、電極台23の上方の所定距離G離れた位置に、電極台23の上面23Aと平行にコロナ放電用の線状電極31A〜31Cが配設されている。そして、電極台23の上面23Aと線状電極31A〜31Cとの間の距離G、及び第1の電極1と線状電極31A〜31Cとの間の距離Gが、昇降調整機構25により電極台23の垂直方向における位置を替えることにより、適宜調整可能となっている。
なお、上記コロナ放電処理装置では、電極台23の垂直方向における位置を固定し、電極支持部材33に昇降調整機構を設け、電極支持部材33を昇降させることによって電極台23の上面23Aと線状電極31A〜31Cとの間の距離を調整するように構成してもよい。
次に、上記構成を有するコロナ放電処理装置を用いたコロナ放電処理方法について説明する。なお、以下においては、第1の電極1と圧電セラミックス前躯体3とが積層された積層体40をコロナ放電処理する例について説明するが、積層体40の圧電セラミックス前躯体3上に更に第2の電極が形成された積層体をコロナ放電処理することも可能である。
本実施の形態に係るコロナ放電処理方法においては、第1の電極1は、電極台23の上面23Aに電気的に導通され、電極台23と同電位(接地電位)となっており、コロナ放電のための電圧印加時に、コロナ放電用電極31の対極のベース電極としても機能する。分極電圧用電源35を駆動させるとコロナ放電用電極31と第1の電極1との間に高電圧が印加され、コロナ放電用電極31から第1の電極1に向けて電界領域(放電域:電位差領域)が形成される。ここで、圧電セラミックス前躯体3は、第1の電極1に対してコロナ放電用電極31側に形成されているので、コロナ放電による電界に曝されて分極される。なお、加熱手段を備えたコロナ放電処理装置を用いる場合には、分極処理時に電極台23及び第1の電極1を介して圧電セラミックス前躯体3を、例えば、80℃以上200℃以下に加熱することにより、コロナ放電による分極を促進することもできる。
図5〜図7に示した例では、平行に配置された3つのコロナ放電用電極31を用いるので、線状電極31A〜31Cとベース電極としての第1の電極1との間には、それぞれコロナ放電によって電界領域41A〜41Cが形成される。この電界領域41A〜41Cは、それぞれ線状電極31A〜31Cの延在方向に沿う帯状の領域として、最大幅(第1の電極1近傍)Wで形成される。そのため、各電界領域41A〜41Cの幅方向の端部付近が互いに重なりあるように線状電極31A〜31Cの相互間の間隔S、及び線状電極31A〜31Cと電極台23との間の距離Gを設定しておくことにより、圧電セラミックス前躯体3の全体が電界領域中に曝され、圧電セラミックス前躯体3の全体を同時に分極させることが可能となる。
図5〜図7に示した例では、線状電極31A〜31Cと電極台23との間の距離Gとしては、絶縁破壊による火花放電(全路放電)を防ぐ観点から0.5cm以上が好ましく、コロナ放電の効率の観点から2.0cm以下が好ましい。コロナ放電時の電圧としては、コロナ放電の効率の観点から5000V以上が好ましく、線状電極の耐久性の観点から15000V以下が好ましい。分極処理の時間としては、例えば、分極効率の観点から1分以上5分以下である。
上記実施の形態によって得られる圧電セラミックスは、PZT粉末が収縮して弱い結合力を有した塊となり、PZT粉末に含まれる各成分(例えば、PbO、ZrO、TiO)が相互に固溶したペロブスカイト型結晶構造が得られるので、圧電定数(d33)を40pC/N以上とすることができる。また、本発明に係る圧電セラミックスは、上記実施の形態に係る圧電セラミックスの製造方法によって得られるものであり、本発明に係る圧電素子は、上記実施の形態に係る圧電セラミックスを含むものである。
次に、図8A、及び図8Bを参照して本実施の形態に係る圧電セラミックスの製造方法によって得られる圧電セラミックスを用いた超音波厚みセンサの製造方法について説明する。図8Aは、本実施の形態に係る超音波厚みセンサの製造方法の一例を示すフロー図であり、図8Bは、本実施の形態に係る超音波厚みセンサの製造方法の一例を示すフロー図である。なお、以下においては、上述した圧電セラミックスの製造方法と重複する部分については説明を省略する。
図8Aに示す例では、まず、焼結工程P5によって得られた第1の電極と圧電セラミックス前躯体との積層体の上に第2の電極を設ける前に分極処理工程P6を実施する。この場合、分極処理工程P6では、圧電セラミックス前躯体が一対の電極によって挟持されていないので、上述した高電圧の直流電流を流す分極処理方法を用いることはできず、図5〜図7に示したコロナ放電処理装置を用いたコロナ放電による分極処理方法を用いる。この分極処理によって第1の電極上に圧電セラミックスが積層された積層体が得られる。
次に、焼結工程P5で用いた第1の電極としての金属板との間で圧電セラミックス前躯体を挟むように圧電セラミックス前躯体上に第2の電極としての導電性を有する金属板を設ける電極形成工程P7を実施する。この金属板は、第2の電極として機能するだけでなく、超音波厚みセンサを支持する支持体とても機能する。なお、第1の電極及び第2の電極は、超音波厚みセンサの超音波送受信のための電極としても機能する。
第2の電極の形成方法としては、特に制限はなく、一般的な電極形成方法を用いることができる。第2の電極の形成方法としては、例えば、銀(Ag)などの電極用の導電性金属の粉末をペースト化しておき、このペーストを圧電セラミックス前躯体の表面に塗布して焼き付ける方法や、第2の電極用の導電性金属の膜を圧電セラミックス前躯体の表面に載置又は貼着して焼き付ける方法が挙げられる。
第2の電極の厚みとしては、10μm以上100μm以下であることが好ましい。第2の電極の厚みが100μm以下であれば、超音波厚みセンサの可撓性を損なうことがなく、10μm以上であれば、圧電セラミックス前躯体の表面の凹凸の影響を受けずに圧電セラミックスの表面に均一に電極を形成することができる。
最後に、第1の電極に一端が超音波厚み測定計に接続されたリード線を電気的に接続する共に、第2の電極に一端が超音波厚み測定計に接続されたリード線を電気的に接続する配線接続工程P8を実施する。以上の工程により、図1及び図2に示した超音波厚みセンサを製造することができる。
図8Bに示す例では、まず、焼結工程P5で用いた第1の電極としての金属板との間で圧電セラミックス前躯体を挟むように圧電セラミックス前躯体上に第2の電極としての金属板を設ける電極形成工程P7を実施し、第1の電極、圧電セラミックス前躯体、及び第2の電極がこの順に積層された積層体を形成する。この第2の電極を形成することにより、圧電セラミックスが一対の第1の電極と第2の電極との間に挟持されるので、後工程である分極処理工程P6において、第1の電極と第2の電極との間に直流電圧を印加することにより、分極処理を行うことが可能となる。
次に、上述した分極処理工程P6を実施して圧電セラミックス前躯体を分極させて圧電セラミックスとする。図8Bに示す例では、圧電セラミックス前躯体が一対の第1の電極及び第2の電極によって挟持された構成を有するので、この一対の第1の電極と第2の電極との間に高電圧(例えば、3000V)の直流電流を流す分極処理方法、及び図5〜図7に示したコロナ放電処理装置を用いたコロナ放電による分極処理方法のいずれも用いることができる。最後に図8Aに示した例と同様に、第1の電極及び第2の電極リード線を電気的に接続する配線接続工程P8を実施ことにより、図1及び図2に示した超音波厚みセンサを製造することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、1000℃以上1200℃以下の温度範囲の熱処理により、PZTが収縮して弱い結合力を有した塊となるので、PZT粉末に含まれる各成分(例えば、PbO、ZrO、TiO)が相互に固溶したペロブスカイト型結晶構造が得られる。これにより、高感度の圧電セラミックスが得られると共に、粒径の小さい粉末のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた場合であっても、PZT粉末とPZTゾルとのスラリーを成膜した焼結原料層の乾燥に伴う破損及び剥離を防ぐことができる。そして、得られた圧電セラミックスを用いることにより、高感度の超音波厚みセンサを得ることができる。
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
(実施例1)
まず、本発明者らは、熱処理工程における熱処理の温度と得られる圧電セラミックスの圧電定数(d33)との関係を調べた。以下、本発明者らが調べた結果について説明する。
まず、酸化鉛(PbO)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)を、PbO:1モル、ZrO:0.7モル、TiO:0.3モルの割合で配合し、組成がPb(Zr0.7,Ti0.3)O原料粉末を作製した。次に、ボールミルを用いて配合した原料粉末と溶剤としてのエタノールと分散剤としてのポリエチレンイミンとを混練してスラリーとし、このスラリーを乾燥させて混合粉末塊を得た。次に、得られた混合粉末塊をアルミナるつぼに入れ、アルミナの蓋をした状態で800℃にて5時間加熱することにより、PZT粉末が焼結して弱い結合力を有する塊状のPZTが得られた。
次に、塊状のPZTを粉砕して300μmのふるいを通過させたものをボールミルに入れ、エタノール中でジルコニアボールを粉砕媒体として24時間粉砕して乾燥させた。その結果、平均粒径10μmのPZT粉末が得られた。
次に、鉛ジイソプロキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、及びチタンテトライソプロポキシドをPb:Zr:Ti=1:0.7:0.3のモル比となるように配合してキシレンに溶解させてPZTゾルを作製した。次に、作製したPZTゾルに、上述した平均粒径2μmのPZT粉末を分散させてPZT粉末とPZTゾルとのスラリーを得た。
次に、得られたスラリーを金属板(SUS304:厚さ30μm、15mm×20mm角)の上に直径10mm、厚さ100μmとなるようにスプレー塗布した後、塗布膜を乾燥させて焼結原料層を作製した。その結果、金属板から焼結原料層が剥離及び破損することなく焼結原料層を成膜できた。
次に、得られた焼結原料層を電気炉に入れ、大気雰囲気にて昇温速度2℃/minで700℃まで加熱し、700℃において30分保持した後、炉冷して圧電セラミックス前躯体を得た。その結果、厚さ70μmの圧電セラミックス前躯体が得られた。なお、圧電セラミックス前躯体の密度は約75%であった。
次に、コロナ放電装置(型番:ELSYS−15KNCl、メーカー:エレメント社製)にて圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを得た。分極処理では、電圧を8000Vとし、処理時間を5分とし、コロナ放電線としてのタングステン線と圧電セラミックス前躯体との間の距離を10μmとした。
得られた圧電セラミックスの中央に、第2の電極形成用の銀ペーストを塗布し、500℃で焼き付けて平均厚み20μmの第2の電極を形成した。次に、第1の電極(SUS304)及び第2の電極(銀)のそれぞれにリード線を導電ペーストにより接着し、ピエゾd33メータ(型番:ZJ−3B、中国科学院音響研究所社製)により圧電特性を測定した。
次に、熱処理温度を900℃、1000℃、1100℃、及び1200℃としたこと以外は、同様の操作で4つの圧電セラミックスを作製した。そして、得られた熱処理温度を800℃、900℃、1000℃、1100℃、及び1200℃とした5つの圧電セラミックスの圧電特性を比較した。圧電定数の測定結果を図9に示す。なお、図9においては、横軸に熱処理温度を示し、縦軸に圧電定数(d33)を示している。
図9に示すように、本実施の形態に係る製造方法による熱処理温度を1000℃、1100℃、及び1200℃とした圧電セラミックスについては、いずれも高い圧電特性が得られた(1000℃:約44pC/N、1100℃:約61pC/N、1200℃:約58pC/N)。これに対し、熱処理温度を800℃、及び900℃とした圧電セラミックスについては、いずれも著しく圧電特性が低下した(800℃:約16pC/N、900℃:約26pC/N)。これらの結果から、熱処理工程における熱処理温度を1000℃以上1200℃以下の温度範囲とすることにより、圧電特性に優れた圧電セラミックスが得られることが分かる。
次に、本発明者らは、PZT粉末の組成と圧電定数(d33)との関係について調べた。以下、本発明者らが調べた結果について説明する。
(実施例2)
組成がPb(Zr0.4,Ti0.6)Oで表されるPZT粉末を用いると共に、鉛ジイソプロキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、及びチタンテトライソプロポキシドをPb:Zr:Ti=1:0.4:0.6のモル比となるように配合したPZTゾルを用いたこと以外は実施例1と同様にして5つの圧電セラミックスを作製した。圧電定数の測定結果を図10に示す。なお、図10においては、横軸に熱処理温度を示し、縦軸に圧電定数(d33)を示している。
図10に示すように、実施例1とは組成が異なるPZTを用いた場合であっても、熱処理温度が1000℃、1100℃、及び1200℃とした圧電セラミックスについては、いずれも高い圧電特性が得られた(1000℃:約42pC/N、1100℃:約68pC/N、1200℃:約62pC/N)。これに対し、熱処理温度を800℃、及び900℃とした圧電セラミックスについては、いずれも著しく圧電特性が低下した(800℃:約14pC/N、900℃:約26pC/N)。
(実施例3)
組成がPb(Zr0.5,Ti0.5)Oで表されるPZT粉末を用いると共に、鉛ジイソプロキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、及びチタンテトライソプロポキシドをPb:Zr:Ti=1:0.5:0.5のモル比となるように配合したPZTゾルを用いたこと以外は実施例1と同様にして5つの圧電セラミックスを作製した。圧電定数の測定結果を図11に示す。なお、図11においては、横軸に熱処理温度を示し、縦軸に圧電定数(d33)を示している。
図11に示すように、実施例1とは組成が異なるPZTを用いた場合であっても、熱処理温度が1000℃、1100℃、及び1200℃とした圧電セラミックスについては、いずれも高い圧電特性が得られた(1000℃:約45pC/N、1100℃:約68pC/N、1200℃:約69pC/N)。これに対し、熱処理温度を800℃、及び900℃とした圧電セラミックスについては、いずれも著しく圧電特性が低下した(800℃:約22pC/N、900℃:約30pC/N)。
(実施例4)
組成がPb(Zr0.4,Ti0.6)Oで表されるPZT粉末を用いると共に、鉛ジイソプロキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、及びチタンテトライソプロポキシドをPb:Zr:Ti=1:0.4:0.6のモル比となるように配合したPZTゾルを用いたこと以外は実施例1と同様にして5つの圧電セラミックスを作製した。圧電定数の測定結果を図12に示す。なお、図12においては、横軸に熱処理温度を示し、縦軸に圧電定数(d33)を示している。
図12に示すように、実施例1とは組成が異なるPZTを用いた場合であっても、熱処理温度が1000℃、1100℃、及び1200℃とした圧電セラミックスについては、いずれも高い圧電特性が得られた(1000℃:約42pC/N、1100℃:約68pC/N、1200℃:約62pC/N)。これに対し、熱処理温度を800℃、及び900℃とした圧電セラミックスについては、いずれも著しく圧電特性が低下した(800℃:約14pC/N、900℃:約26pC/N)。
以上の実施例2〜実施例4の結果から、熱処理工程における熱処理温度を1000℃以上1200℃以下とすることにより、組成が異なるPZTの組成を用いた場合であっても、圧電特性に優れた圧電セラミックスが得られることが分かる。
1 第1の電極
3 圧電セラミックス前躯体
5 第2の電極
9 超音波厚みセンサ
11 被測定体
13 接着層
21 固定台
23 電極台
23A 平坦面
25 昇降調整機構
27 ガイド軸
29 アース線
31 コロナ放電用電極
31A〜31C 線状電極
33 電極支持部材
33A、33B 支持部
35 電源
36 リード線
40 積層体

Claims (6)

  1. 粉末のチタン酸ジルコン酸鉛を1000℃以上1200℃以下で熱処理する熱処理工程と、
    前記熱処理工程で熱処理した前記チタン酸ジルコン酸鉛を粉砕する粉砕工程と、
    前記粉砕工程で粉砕した前記チタン酸ジルコン酸鉛とチタン酸ジルコン酸鉛のゾルとを混合してスラリー化するスラリー化工程と、
    前記スラリー化工程で得られたスラリーを第1の電極上に成膜して焼結原料層を形成する成膜工程と、
    前記焼結原料層を焼結して圧電セラミックス前駆体とする焼結工程と、
    前記圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを得る分極処理工程と、
    前記圧電セラミックス上に第2の電極を形成する電極形成工程と、
    を含むことを特徴とする、超音波厚みセンサの製造方法。
  2. 粉末のチタン酸ジルコン酸鉛を1000℃以上1200℃以下で熱処理する熱処理工程と、
    前記熱処理工程で熱処理した前記チタン酸ジルコン酸鉛を粉砕する粉砕工程と、
    前記粉砕工程で粉砕した前記チタン酸ジルコン酸鉛とチタン酸ジルコン酸鉛のゾルとを混合してスラリー化するスラリー化工程と、
    前記スラリー化工程で得られたスラリーを第1の電極上に成膜して焼結原料層を形成する成膜工程と、
    前記焼結原料層を焼結して圧電セラミックス前駆体とする焼結工程と、
    前記圧電セラミックス前躯体上に第2の電極を形成する電極形成工程と、
    前記第2の電極形成後に、前記圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを得る分極処理工程と、
    を含むことを特徴とする、超音波厚みセンサの製造方法。
  3. 前記熱処理工程は、熱処理の時間が1時間以上20時間以下である請求項1又は請求項2に記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  4. 前記チタン酸ジルコン酸鉛は、組成が下記式(1)で表される請求項1から請求項3のいずれかに記載の超音波厚みセンサの製造方法。
    Pb(Zr,Ti1−x)O・・・式(1)
    (式(1)中、xは、0.3以上0.7以下を表す。)
  5. 前記圧電セラミックスは、圧電定数(d33)が40pC/N以上である請求項1から請求項4のいずれかに記載の超音波厚みセンサの製造方法。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の超音波厚みセンサの製造方法によって得られたことを特徴とする、超音波厚みセンサ。
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