JP6057883B2 - 圧電センサの製造方法 - Google Patents

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本発明は、例えば、配管の厚みの検査に用いられるチタン酸ジルコン酸鉛を含有する圧電センサの製造方法、それにより得られる圧電センサ、及び圧電素子に関する。
従来、圧電センサに用いられる圧電セラミックスとしてチタン酸ジルコン酸鉛を含有する積層型圧電セラミックス素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この積層型圧電セラミックス素子においては、銅を主成分とする内部電極材料を用いることにより、積層型圧電セラミックス素子の内部電極の酸化膨張に基づく圧電セラミックスの内部剥離を防ぐと共に、内部電極の還元処理に伴う金属鉛の析出を防いでいる。
特開2005−136260号公報
ところで、従来の圧電センサの製造方法では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:PbTiO−PbZrO)を構成する金属成分のアルコキシドを含有するゾル(液体:以下、「PZTゾル」という)とPZT粉末とを混合したスラリーを、厚さ20μm程度の基材としてのSUS(Stainless steel)板上に100μm程度の厚さになるように塗布及び乾燥して焼結原料層を形成する。この焼結原料層は、650℃程度に加熱してPZTゾルを分解してPZTにして圧電セラミックス前駆体となり、この圧電セラミックス前駆体に直流電圧を印加する電圧処理、又はコロナ放電処理により、PZTを分極させて圧電セラミックスとなる。最後に、この圧電セラミックスの表面に銀をメッキして電極を設けることにより、圧電センサが製造される。
圧電センサは、金属配管の湾曲面に沿わせてSUS板を曲げて配置して用いられている。このような圧電センサにおいては、配管への圧電センサの着脱を繰り返すと、SUS板の湾曲に伴いSUS板と圧電セラミックスとが剥離する不具合が生じる場合がある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、湾曲面に配設して使用する場合であっても、基材からの圧電セラミックスの剥離を防ぐことが可能な圧電センサの製造方法、圧電センサ、及び圧電素子を提供することを目的とする。
本発明の圧電センサの製造方法は、レーザー回折法により測定した0.1μm以上5μm以下の第1の平均粒径を有する第1粉末100質量部に対して、レーザー回折法により測定した10μm以上50μm以下の第2の平均粒径を有する第2粉末100質量部以上500質量部以下を含む圧電セラミックスの原料粉末を1000℃以上1200℃以下で熱処理する熱処理工程と、前記熱処理工程で熱処理した前記原料粉末を粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程で粉砕した前記原料粉末をスラリー化するスラリー化工程と、前記スラリー化工程で得られたスラリーを基材上に成膜して焼結原料層を形成する成膜工程と、前記焼結原料層を焼結して圧電セラミックス前駆体とする焼結工程と、前記圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを得る分極処理工程と、を含むことを特徴とする圧電センサの製造方法。
この方法によれば、相互に平均粒径が異なる第1粉末及び第2粉末を含む原料粉末を焼成して圧電セラミックスを製造するので、基材と当該上に成膜した圧電セラミックスとの接触面積が向上する。また、第1粉末と第2粉末との粒径の差異が適度な範囲となるので、第2粉末に基づく圧電セラミックスと基材との間の密着性がより向上すると共に、第2粉末間に第1粉末が侵入して圧電セラミックスと基材との間の密着性がより向上する。第1粉末と第2粉末との配合量が適度な範囲となるので、第2粉末に基づく圧電セラミックスと基材との間の密着性が向上すると共に、第2粉末間に第1粉末が侵入して圧電セラミックスと基材との間の密着性がより向上する。これにより、基材と圧電セラミックスとの間の密着性が向上するので、基材を湾曲させて用いる場合であっても、基材からの圧電セラミックスの剥離を防ぐことが可能な圧電センサを実現することができる。
本発明の圧電センサの製造方法においては、前記第2粉末が、1000℃以上1200℃以下で前記第1粉末を所定時間熱処理して粉砕してなるものであることが好ましい。
本発明の圧電センサの製造方法においては、前記圧電セラミックスがチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)であることが好ましい。この構成により、圧電セラミックスの圧電性能が向上する。
本発明の圧電センサの製造方法においては、前記PZTの組成が、下記式(1)で表されることが好ましい。この方法により、圧電セラミックスの圧電特性が更に向上する。
Pb(Zr,Ti1−x)O・・・式(1)
(式1において、xは、0.30以上0.70以下を表す。)
本発明の圧電センサの製造方法においては、前記基材がSUS板であることが好ましい。この構成により、延性に優れたSUS板上に圧電セラミックスを形成するので、配管の湾曲面に圧電センサを配置することが容易になる。
本発明によれば、湾曲面に配設して使用する場合であっても、基材からの圧電セラミックスの剥離を防ぐことが可能な圧電センサの製造方法、圧電センサ、及び圧電素子を実現できる。
図1は、本実施の形態に係る超音波厚みセンサの模式図である。 図2は、図1に示す超音波探傷子の構造の一例を示す模式図である。 図3は、図1に示す超音波探傷子の構造の他の例を示す模式図である。 図4は、本実施の形態に係る圧電センサの製造方法の概略を示すフロー図である。 図5は、本実施の形態に係る圧電センサの製造方法の作用効果の説明図である。 図6は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す正面図である。 図7は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す断面図である。 図8は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す平面図である。 図9は、本発明の実施例に係る曲げ試験の説明図である。 図10は、本発明の実施例に係る曲げ試験の説明図である。 図11Aは、本発明の実施例に係る圧電センサの断面写真である。 図11Bは、本発明の実施例に係る圧電センサの断面写真である。 図12Aは、本発明の実施例に係る圧電センサの断面写真である。 図12Bは、本発明の実施例に係る圧電センサの断面写真である。 図13は、本発明の実施例及び比較例に係る曲げ試験の結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。
まず、図1を参照して本実施の形態に係る超音波厚みセンサの製造方法によって得られる超音波厚みセンサの概要について説明する。図1は、本実施の形態に係る超音波厚みセンサの模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る超音波厚みセンサ1は、本実施の形態に係る超音波厚みセンサの製造方法によって製造され、被測定体としての配管11に配置された超音波探傷子(検出素子)12と、この超音波探傷子12に配線126,128を介して電気的に接続された超音波厚み計(制御部)13とを備える。
この超音波厚みセンサ1では、例えば、外径dが100mmであり、肉厚dが8mmの配管11の外周面に、直径dが10mmの超音波探傷子12が配置されている。超音波探傷子12は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:PbZrO−PbTi)O)を含む圧電セラミックスによって構成されている。この圧電セラミックスは、第1の平均粒径を有する第1粉末と、この第1粉末より相対的に平均粒径が大きい第2の平均粒径を有する第2粉末とを混合して製造される。
以下、図2を参照して、超音波探傷子12の構造について説明する。図2は、図1に示す超音波探傷子の構造の一例を示すII−II線断面模式図である。ここで、超音波探傷子12は、基材120が第1電極となる。なお、配管11が金属の場合、配線126を配管11に接続してもよく、この場合配管11が第1電極となる(不図示)。超音波探傷子12は、配管11に配置された基材120と、この基材120上に設けられた圧電セラミックス層122と、圧電セラミックス層122に積層された第2電極124と、配管11に接続された配線126と、第2電極124に接続された配線128と、を有する。配管11は、金属で形成された管である。基材120は、SUS板などの金属板で形成されており、配管11に沿った形状に形成された後、接着層(不図示)を介して配管11上に着脱可能に固定される。また、基材120は、配管11に対して繰り返し着脱可能に固定される。なお、この超音波厚みセンサ1においては、配管11を基材120として用いて構成することも可能であり、配管11上に圧電セラミックス層122を直接設けることも可能である。
圧電セラミックス層122は、配管11の表面(外周面)に積層されている。圧電セラミックス層122は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:PbZrO−PbTi)O)を含む圧電セラミックスで形成されている。第2電極124は、圧電セラミックス層122に積層されている。つまり、超音波探傷子12は、圧電セラミックス層122が第1電極となる基材120(又は配管11)と、第2電極124とで挟みこまれている。配線126は、配管11と超音波厚み計13とを接続している。配線128は、第2電極122と超音波厚み計13とを接続している。
超音波厚み計13は、配線126を介して基材120と接続され、配線128を介して第2電極124と接続されている。超音波厚み計13は、配線126,128を介して配管11と第2電極124とで圧電セラミックス層122を挟み込んだ回路を形成する。超音波厚み計13は、配線126,128を介して基材120(又は配管11)と第2電極124とに電圧を印加し、超音波探傷子12の圧電セラミックス層122にパルス状の電圧を印加することで、圧電セラミックス層122を振動させて超音波を発信させる。また、超音波探傷子12は、配管11の壁面内を伝播して反射した超音波を電気信号に変換する。超音波厚み計13は、超音波探傷子12によって変換された電子信号を検出することにより、配管11の肉厚dを測定する。
この超音波厚みセンサ1によれば、被測定体としての配管11上に超音波探傷子12が直接形成されているので、流体Fが配管11内を流れる場合であっても、配管11からの超音波探傷子12の脱落を防ぐことができる。これにより、配管11を備えた原子力発電所やボイラーなどの装置が運転中であっても、配管11を被覆する保温材などを剥がすことなく定期的に配管11の肉厚dを測定できる。
なお、図1に示す例では、配管11の外周面に超音波探傷子12を設ける例について説明しているが、超音波探傷子12は、配管11の肉厚dを検出できる範囲であれば、配管11の内周面などに設けてもよい。また、図1に示す例では、被測定体として配管11に超音波探傷子12を設ける例について説明しているが、被測定体は配管11に限定されるものではない。また、超音波厚み計13としては、超音波探傷子12によって配管11の肉厚dを測定できるものであれば特に制限はなく、例えば、超音波厚み計(型番:UI−25、菱電湘南エレクトロニクス社製)が挙げられる。
また、上記実施形態では、配管11の直管の部分、つまり、配管11の軸方向が直線となる部分に超音波探傷子12を設けたが、これに限定されない。図3は、図1に示す超音波探傷子の構造の他の例を示す模式図である。図3は、超音波探傷子12を配管11の屈曲している部分に配置した例を示している。超音波探傷子12は、基材120又は配管11が第1電極となる。超音波探傷子12は、配管11の屈曲部に積層された圧電セラミックス層122と、圧電セラミックス層122に積層された第2電極124と、基材120に接続された配線126と、第2電極124に接続された配線128と、を有する。
図4は、本実施の形態に係る圧電センサの製造方法の概略を示すフロー図である。本実施の形態に係る圧電センサの製造方法は、第1の平均粒径を有する第1粉末、及び第1の平均粒径より相対的に平均粒径が大きい第2の平均粒径を有する第2粉末を含む圧電セラミックスの原料粉末を1000℃以上1200℃以下で熱処理する熱処理工程P1と、熱処理工程P1で熱処理したチタン酸ジルコン酸鉛を粉砕する粉砕工程P2と、粉砕工程P2で粉砕したチタン酸ジルコン酸鉛をスラリー化するスラリー化工程P3と、スラリー化工程P3で得られたスラリーを基材上に成膜して焼結原料層を形成する成膜工程P4と、焼結原料層を焼結して圧電セラミックス前駆体とする焼結工程P5と、圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを得る分極処理工程P6と、を含む。そして、上記実施の形態に係る超音波厚みセンサ1は、得られた圧電セラミックス上に電極を形成する電極形成工程P7と、形成した電極に配線を接続する配線接続工程P8を経て製造される。以下各工程P1〜P8について詳細に説明する。
<熱処理工程P1>
熱処理工程では、第1の平均粒径を有する第1粉末、及び第1の平均粒径より相対的に平均粒径が大きい第2の平均粒径を有する第2粉末を含む圧電セラミックスの原料粉末を1000℃以上1200℃以下で熱処理する。本実施の形態に係る圧電セラミックスの製造方法により、従来の製造方法に対して基材からの圧電センサの剥離を防ぐことが可能となる作用効果の原理については、必ずしも明らかではないが以下のように推定される。
図5は、本実施の形態に係る圧電セラミックスの製造方法の作用効果の説明図である。図5に示すように、本実施の形態においては、第1の平均粒径を有する第1粉末122a、及び第1の平均粒径より相対的に平均粒径が大きい第2の平均粒径を有する第2粉末122bを含む圧電セラミックスの原料粉末を用いたスラリーを基材120上に塗布し、塗布したスラリーを焼成して圧電セラミックス層122(圧電セラミックス)を製造する。これにより、基材120上には、第1粉末122aに対して相対的に平均粒径が大きい第2粉末122bの粒子が存在する。この第2粉末122bの粒子は、焼結時に基材120との接触面が変形して基材120a表面との接触面積が向上すると推定される。そして、第2粉末122bの粒子の間には、第2粉末122bより相対的に平均粒径が小さい第1粉末122aの粒子が侵入する。これにより、第2粉末122b間の空間が充填されるので、第2粉末122bのみを用いた場合と比較して焼結して得られる圧電セラミックス層122と基材120との接触面積の低下を防ぐことができる。これらにより、本実施の形態によれば、圧電セラミックス層122と基材120との接触面積が従来の圧電セラミックスの製造方法に対して向上するので、湾曲面に配設して使用する場合であっても、基材120からの圧電セラミックス層122の剥離を防ぐことが可能な圧電センサの製造方法、圧電センサ、及び圧電素子を実現できる。
圧電セラミックスの原料粉末としては、本発明の効果を奏する範囲で各種圧電セラミックス材料を用いることが可能である。これらの中でも、圧電セラミックスの原料粉末としては、優れた圧電性能を有する観点から、粉末のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:PbTiO−PbZrO)などを用いることが好ましい。
PZTとしては、共沈殿法で得られたものを用いてもよく、アルコキシド法によって得られたものを用いてもよい。PZTは、例えば、以下のようにして得られる。まず、PbO、ZrO、TiOの各粉末を、所望のPZTが得られる組成となるように配合し、配合した各粉末をエタノールなどの溶剤やポリエチレンイミンなどの分散媒を適宜加えてボールミルなどにより混錬する。そして、得られた混錬物(スラリー)を乾燥して混合粉末とし、この混合粉末を粉体の状態で熱処理することによりPZTが得られる。なお、PZTとしては、市販品の粉末状のPZTを用いてもよい。
本発明においては、PZTとしては、本発明の効果を奏する範囲で各種組成のPZTを用いることができる。PZTとしては、高感度の圧電セラミックスが得られる観点から、下記式(1)で表されるものが好ましい。
Pb(Zr,Ti1−x)O・・・式(1)
(式(1)中、xは、0.3以上0.7以下)
なお、上記式(1)において、xとしては、より高感度の圧電セラミックスが得られる観点から、0.30以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましく、0.45以上であることが更に好ましく、0.50以上であることがより更に好ましく、また0.70以下であることが好ましく、0.65以下であることがより好ましく、0.60以下であることが更に好ましく、0.55以下であることがより更に好ましい。以上のことを考慮すると、xとしては、0.30以上0.70以下であることが好ましく、0.40以上0.65以下であることがより好ましく、0.45以上0.60以下であることが更に好ましく、0.50以上0.55以下であることがより更に好ましい。
また、PZTとしては、本発明の効果を奏する範囲で微量添加元素を含有するものであってもよい。微量添加元素としては、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、La、Nd、Sc、及びGdからなる群から選択された少なくとも1種が挙げられる。微量添加元素を含有するPZTとしては、例えば、上述した各元素をそれぞれ10質量%程度以下添加したものが挙げられる。なお、本発明は、必ずしもPZT系圧電セラミック材料のみを用いたものに限定されず、その他のペロブスカイト型結晶構造を有する圧電セラミック材料(例えば、LiNbO)など、更にはペロブスカイト結晶構造を持たないその他の圧電セラミック材料(例えば、BiTi12)を含むPZTなどにも適用することができる。
本発明においては、PZT粉末の熱処理を1000℃以上1200℃以下の温度範囲で実施する。このような温度範囲で熱処理することにより、PZT粉末が収縮して弱い結合力を有した塊となるので、混合粉末の各成分(例えば、PbO、ZrO、TiO)が相互に固溶してペロブスカイト型結晶構造が得られる。この結果、高感度の圧電セラミックスが得られると共に、粒径の小さいPZT粉末を用いた場合であっても、PZT粉末とPZTゾルとのスラリーを成膜した焼結原料層の乾燥収縮に伴う破損及び剥離を防ぐことができる。PZT粉末の熱処理は、1100℃以上1150℃以下で実施することがより好ましい。
熱処理工程における熱処理の時間としては、得られる圧電セラミックスの破損及び基材からの剥離を防ぐ観点、並びに、高感度の圧電セラミックスを得る観点から、1時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましく、3時間以上であることが更に好ましく、また20時間以下であることが好ましく、15時間以下であることがより好ましく、10時間以下であることが更に好ましい。
本実施の形態に係る圧電センサの製造方法においては、第2粉末としては、熱処理工程で1000℃以上1200℃以下の条件で第1粉末を所定時間熱処理して粉砕したものを用いることができる。これにより、第2粉末を別途作製する必要がなくなり、予め熱処理工程で作製した第2粉末を圧電センサの製造に用いることができるので、圧電セラミックスの製造工程を簡略化することができる。
原料粉末の平均粒径としては、第1の平均粒径が0.1μm以上5μm以下であり、第2の平均粒径が10μm以上50μm以下であることが好ましい。これにより、第1粉末と第2粉末との粒径の差異が適度な範囲となるので、上述した作用効果により、第2粉末に基づく圧電セラミックスと基材との間の密着性が向上すると共に、第2粉末間に第1粉末が侵入して圧電セラミックスと基材との間の密着性がより向上する。なお、本実施の形態に係る圧電センサの製造方法においては、平均粒径とは、レーザー回折式粒度測定器により測定した平均粒径である。この平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度測定器装置(Granulometer HR850B、CILAS社製)により測定することができる。
第1の平均粒径としては、上述した作用効果が一層向上する観点から、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることが更に好ましく、0.7μm以上であることがより更に好ましく、1.0μm以上であることがより更に好ましく、また4.5μm以下であることがより好ましく、4.0μm以下であることが更に好ましく、3.5μm以下であることがより更に好ましく、3.0μm以下であることがより更に好ましい。以上を考慮すると、第1の平均粒径としては、0.3μm以上4.5μm以下がより好ましく、0.5μm以上4.0μm以下が更に好ましく、0.7μm以上3.5μm以下がより更に好ましく、1.0μm以上3.0μm以下がより更に好ましい。
第2の平均粒径としては、基材と圧電セラミックスとの接触面積を十分に向上して基材と圧電セラミックスとの密着性を得る観点から、10μm以上であることが好ましく、また圧電セラミックスに十分な可撓性を付与して基材と圧電セラミックスとの剥離を防ぐ観点から、50μm以下であることが好ましい。第2の平均粒径としては、上述した作用効果が一層向上する観点から、12.5μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが更に好ましく、17.5μm以上であることがより更に好ましく、20μm以上であることがより更に好ましく、また47.5μm以下であることがより好ましく、45μm以下であることが更に好ましく、42.5μm以下であることがより更に好ましく、40μm以下であることがより更に好ましい。以上を考慮すると、第1の平均粒径としては、12.5μm以上47.5μm以下がより好ましく、15μm以上45μm以下が更に好ましく、17.5μm以上42.5μm以下がより更に好ましく、20μm以上40μm以下がより更に好ましい。
本実施の形態に係る圧電センサの製造方法においては、第1粉末及び第2粉末の配合量としては、基材と圧電セラミックスとの接着性及び圧電セラミックスの強度の観点から、第1粉末100質量部に対して、第2粉末100質量部以上500質量部を以下配合してなることが好ましい。この構成により、第1粉末と第2粉末との配合量が適度な範囲となるので、上述した作用効果による第2粉末に基づく圧電セラミックスと基材との間の密着性が向上すると共に、第2粉末間に第1粉末が侵入して圧電セラミックスと基材との間の密着性がより向上する。
第1粉末及び第2粉末の配合量としては、基材と圧電セラミックスとの接着性及び圧電セラミックスの強度の観点から、第1粉末100質量部に対して、第2粉末が150質量部以上であることがより好ましく、200質量部以上であることが更に好ましく、また、450質量部以下であることがより好ましく、400質量部以下であることが更に好ましく、300質量部以下がより更に好ましい。以上を考慮すると、第1粉末及び第2粉末の配合量としては、第1粉末100質量部に対して、第2粉末が150質量部以上450質量部以下であることがより好ましく、200質量部以上400質量部以下であることが更に好ましく、200質量部以上300質量部以下であることがより更に好ましい。
<粉砕工程P2>
粉砕工程P2では、熱処理工程P1での熱処理によって塊状となった圧電セラミックスの原料粉末をボールミルなどによって粉砕して粉末状にする。ここでの粉末状の圧電セラミックスの原料粉末の粒径としては、例えば、約2μm程度から数10μm程度である。なお、粉砕工程の粉砕方法については、特に制限はなく、粉末状の原料粉末を得ることができるものであればよい。
<スラリー化工程P3>
スラリー化工程P3では、粉砕工程P2で得られた原料粉末と原料粉末のゾルとを混合して混錬物(スラリー)を得る。ここでは、必要に応じてエタノール、ブタノール、及び酢酸エチルなど溶剤を用いてもよい。なお、原料粉末のゾルとしては、例えば、下記一般式(2)で表される3種類の金属成分を含有する金属アルコキシドのPZTゾルである。このPZTゾルは、鉛アルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、及びチタンアルコキシドの各ゾルを溶剤などと混合することにより得られる。
M(OR)・・・式(2)
(式(2)中、Mは、鉛(Pb)、チタン(Ti)、又はジルコニウム(Zr)を表し、Rは、アルキル基を表す。Yは、任意の数を表す。)
上記一般式(2)の金属アルコキシドのゾルとしては、Rとしてはアルキル基であれば特に制限はなく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ブチル基、イソブチル基、t―ブチル基、及びs−ブチル基などのアルコキシドのゾルを用いることができる。
鉛アルコキシドとしては、鉛ジイソプロキシド、及び鉛ジブトキシドなどが挙げられる。ジルコニウムアルコキシドとしては、ジルコニウムテトラブトキシド、及びジルコニウムテトラプロポキシドなどが挙げられる。チタンアルコキシドとしては、チタンテトライソプロポキシド、及びチタンテトラプロポキシドなどが挙げられる。
また、各アルコキシドゾルの配合は、金属成分の割合が、所望のPZTの組成における金属成分の割合と同等となるように定めることが望ましい。例えば、上記一般式(1)で表されるPZTの場合、各アルコキシドの金属成分のモル比が、Pb:Zr:Ti=1:x:1−xの割合となるように配合することが望ましい。
なお、PZTゾルとしては、上記一般式(2)で表されるPZTゾルの組成に、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、La、Nd、Sc、及びGdからなる群から選択された少なくとも1種又は2種以上の微量添加元素を含むPZTゾルとしてもよい。
PZTゾルを得るための方法については特に制限はない。PZTゾルは、例えば、上記一般式(2)で表される金属アルコキシドを溶剤に溶解するなどの常法によって得ることができる。
スラリー化工程P3における原料粉末と原料粉末のゾルとの混合比については特に制限されない。例えば、原料粉末中の金属成分に対する原料粉末のゾル中の金属成分のモル比が、0.2〜1.0の範囲内となるようにすることが好ましい。上記モル比が0.2以上であれば、アルコキシドゾルが充分に配合されるので、焼結工程P5においてゾルの分解生成物が焼結助剤として充分に機能し、比較的低温で焼結を行うことが可能となる。また、上記モル比が1.0以下であれば、アルコキシドゾルが適度な範囲となるので、圧電セラミックス前躯体上に電極を設けて焼結した場合であっても、原料粉末の粒子が充分に結合され、圧電セラミックス前躯体の剥落や破損を防ぐことができる。
<成膜工程P4>
成膜工程P4では、金属板などの基材上に、原料粉末と原料粉末ゾルとの混合スラリーを成膜して所定の厚みを有する焼結原料層を形成する。この基材は、第1の電極としての機能を有するだけではなく、焼結工程P5や圧電セラミックスの使用時における支持体としての機能を有する。基材としては、本発明の効果を奏する範囲で各種金属板を用いることができる。基材としては、金属配管などに圧電センサに沿って配置する際に、任意の形状に湾曲させることができる観点から、SUS板を用いることが好ましい。本実施の形態においては、原料粉末と原料粉末ゾルとの混合物を用いるので、後述する焼結工程P5では、600℃以上800℃以下の比較的低温で焼結することができる。このため、白金などの如く1200℃以上まで耐えうる高価な金属を用いる必要はなく、800℃程度までの耐酸化性を有する汎用の耐熱金属を使用することができるので、ステンレス鋼やその他の汎用の耐熱鋼を、金属板として使用することができる。
基材としては、例えば、18Cr−8NiのSUS304系統のオーステナイト系ステンレス鋼、又は18Cr−12Ni−2.5MoのSUS316系統のオーステナイト系ステンレス鋼、その他、22Cr−12NiのSUH309系統のオーステナイト系耐熱鋼を用いることができる。これらは、いずれも白金よりも格段に安価に入手することができる。
基材の厚みとしては、15μm〜100μmが好ましい。基材の厚みが15μm以上であれば、基材の強度が充分となり圧電セラミックスを容易に製造することができる。また、基材の厚みが100μm以下であれば、十分な可撓性が得られるので、例えば、圧電セラミックスを配管の湾曲部分に貼着して使用することができる。
原料粉末と原料ゾルとのスラリーの成膜方法としては、例えば、スラリーを金属板表面に塗布する方法が挙げられる。また、スラリーをロールコーターや、一般的な印刷方法で成膜してもよい。
乾燥後の焼結原料層の厚みは、例えば、70μm以上200μm以下の範囲内とすることが好ましい。乾燥後の焼結原料層の厚みが70μm以上であれば、焼結によって得られる圧電セラミックス前駆体層の厚みが十分な範囲になるので、圧電セラミックスを湾曲させても圧電セラミックスから金属板が剥離しにくい。また、焼成後の焼結原料層の厚みが200μm以下であれば、焼成後の圧電セラミックスが厚くなりすぎるのを防ぐことができ、十分な可撓性を付与することができる。なお、焼結原料層は、乾燥後の厚みが乾燥前の1/2〜1/4程度の厚みとなるので、厚みの減少分を考慮して塗布することが好ましい。また、焼結原料層の乾燥は、焼結工程P5における焼結のための加熱の初期段階で行なってもよい。
<焼結工程P5>
焼結工程P5では、焼結原料層を600℃〜800℃の温度範囲に加熱して圧電セラミックス前躯体とする。この焼結工程P5では、原料粉末の粒子の間に介在している原料ゾルに含まれるアルコキシドが分解し、超微粉末状の分解生成物が生成される。この分解生成物は、原料粉末の粒子を焼結結合させる焼結助剤として機能する。また、分解生成物は、原料粉末と同様の組成を有するので、得られる圧電セラミックスの圧電特性を損なうことがない。このため、原料粉末と共に原料ゾルを混合して加熱することにより、比較的低温でも焼結が進行し、かつ圧電特性も向上する。
焼結工程P5では、加熱温度を600℃以上800℃以下として、焼結後の圧電セラミックスの密度が70%以上80%以下となるようにする。加熱温度が800℃以下であれば、焼結時の原料粉末同士の焼結反応が穏やかに進行して密度が80%以下の圧電セラミックスを得ることができる。また、加熱温度が600℃以上であれば、原料粉体同士の焼結反応が充分に進行して、圧電セラミックス前躯体の密度を70%以上に高めることができる。
圧電セラミックスは、密度が80%以下であれば、圧電セラミックスの剛性、及び焼結時の圧電セラミックスの収縮が適度な範囲となるので、圧電セラミックスに可撓性を付与することができる。これより、各種部材の曲面に圧電セラミックスを形成する場合であっても、基材からの圧電セラミックスの剥離及び破損を防ぐことができる。また、焼結後の圧電セラミックスの密度が70%以上であれば、圧電セラミックスの空隙率が適度な範囲となるので、圧電セラミックス内部の粒子が充分に結合されている状態となる。これにより、焼結工程P5後の工程におけるハンドリングが良好になり、圧電セラミックスが粉体状に剥落することを防ぐことができると共に、圧電素子に用いられる圧電セラミックスとして充分な圧電特性を得ることができる。
本実施の形態によれば、従来の酸化物系圧電材料(セラミックス圧電材料)の焼結温度よりも低い600℃以上800℃以下の焼結温度であっても、圧電セラミックス前躯体に含まれるPZTゾルのアルコキシドの分解生成物が焼結助剤となるので、圧電素子として必要な圧電特性が得られる密度を有する圧電セラミックスを得ることができる。
なお、焼結工程P5における加熱は、大気雰囲気下で行うことができる。また、焼結工程における加熱時間は、600℃以上800℃以下の目標温度に達してから1分以上10分以下でよい。
<分極処理工程P6>
分極処理工程P6では、圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを形成する。圧電セラミックス前躯体の分極処理方法としては、例えば、一対の第1電極と第2電極との間に圧電セラミックス前躯体を挟持して一対の電極間に高電圧の直流電圧(例えば、3000V/mm)を印加する方法が挙げられる。また、圧電セラミックス前躯体と所定間隔離れた位置に金メッキが施されたタングステン線を用いたコロナ放電線を設置し、このコロナ放電線に高電圧(例えば、8000V程度)を印加してコロナ放電を行う方法が挙げられる。タングステン線としては、例えば、直径100μmのものを用いることができる。コロナ放電の処理時間としては、例えば、5分〜10分である。
ここで、図6〜図8を参照して本実施の形態に係る圧電センサの製造方法に用いられるコロナ放電処理装置の一例について説明する。図6は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す正面図であり、図7は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す断面図であり、図8は、本発明の実施の形態に係るコロナ放電分極処理装置を模式的に示す平面図である。
図6〜図8に示すように、本実施の形態に係るコロナ放電処理装置は、床面などの水平面上に設置される固定台21と、この固定台21上に垂直方向に伸びるガイド軸27を介して昇降可能に設けられた電極台23とを有する。この電極台23は、油圧シリンダなどの流体圧シリンダ、ボールねじ機構、又は各種のリンク機構などによって自動又は手動によって昇降可能な昇降調整機構25によって昇降可能に支持される。
電極台23は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼などの導電性材料を含んで構成され、上面が導電性を有する水平な平坦面23Aとなっている。また、電極台23は、アース線29によって電気的に接地されており、接地電位を保つように構成されている。なお、電極台23は、必要に応じて、電気ヒータ、温水ヒータ、又はオイルヒータなどの加熱手段を備えていてもよい。
電極台23の上面には、基材と圧電セラミックス前躯体とが積層されてなる積層体40が配置される。また、電極台23の上方には、積層体40の圧電セラミックス前躯体との間で所定の間隔でコロナ放電用電極31が設けられている。このコロナ放電用電極31は、例えば、タングステン線などの高融点導電性線材によって構成された少なくとも1つの線状電極31A〜31C(本実施の形態では、3つ)によって構成される。これらの線状電極31A〜31Cは、延在方向が電極台23の平坦面23Aと平行になるように、互いに等しい間隔Sで配置されている。なお、線状電極31A〜31Cの外形は、例えば、50μm〜100μmとすることができる。
線状電極31A〜31Cは、例えば、アーム状の電極支持部材33から所定の間隔を置いて下方に突出する一対の支持部33A,33B間に設けられており、水平状態を保つようになっている。また、線状電極31A〜31Cは、直流高電圧電源からなる分極電圧印加用の電源35の正極又は負極にリード線36を介して電気的に接続されている。
以上のように、本実施の形態に係るコロナ放電処理装置においては、電極台23の上方の所定距離G離れた位置に、電極台23の上面23Aと平行にコロナ放電用の線状電極31A〜31Cが配設されている。そして、電極台23の平坦面23Aと線状電極31A〜31Cとの間の距離G、及び第1電極と線状電極31A〜31Cとの間の距離Gが、昇降調整機構25により電極台23の垂直方向における位置を替えることにより、適宜調整可能となっている。
なお、上記コロナ放電処理装置では、電極台23の垂直方向における位置を固定し、電極支持部材33に昇降調整機構を設け、電極支持部材33を昇降させることによって電極台23の平坦面23Aと線状電極31A〜31Cとの間の距離を調整するように構成してもよい。
次に、上記構成を有するコロナ放電処理装置を用いたコロナ放電処理方法について説明する。なお、以下においては、基材120と圧電セラミックス層122とが積層された積層体40をコロナ放電処理する例について説明するが、積層体40の圧電セラミックス層122上に更に第2電極が形成された積層体をコロナ放電処理することも可能である。
本実施の形態に係るコロナ放電処理方法においては、基材120(第1電極)は、電極台23の上面23Aに電気的に導通され、電極台23と導電位(接地電位)となっており、コロナ放電のための電圧印加時に、コロナ放電用電極31の対極のベース電極としても機能する。分極電圧用電源35を駆動させるとコロナ放電用電極31と基材120との間に高電圧が印加され、コロナ放電用電極31から基材120に向けて電界領域(放電域:電位差領域)が形成される。ここで、圧電セラミックス層122は、基材120に対してコロナ放電用電極31側に形成されているので、コロナ放電による電界に曝されて分極される。なお、加熱手段を備えたコロナ放電処理装置を用いる場合には、分極処理時に電極台23及び基材120を介して圧電セラミックス層122を、例えば、80℃以上200℃以下に加熱することにより、コロナ放電による分極を促進することもできる。
図6〜図8に示した例では、平行に配置された3つのコロナ放電用電極31を用いるので、線状電極31A〜31Cとベース電極としての基材120との間には、それぞれコロナ放電によって電界領域41A〜41Cが形成される。この電界領域41A〜41Cは、それぞれ線状電極31A〜31Cの延在方向に沿う帯状の領域として、最大幅(第1電極近傍)Wで形成される。そのため、各電界領域41A〜41Cの幅方向の端部付近が互いに重なりあうように線状電極31A〜31Cの相互間の間隔S、及び線状電極31A〜31Cと電極台23との間の距離Gを設定しておくことにより、圧電セラミックス層122の全体が電界領域中に曝され、圧電セラミックス層122の全体を同時に分極させることが可能となる。
図6〜図8に示した例では、線状電極31A〜31Cと電極台23との間の距離Gとしては、絶縁破壊による火花放電(全路放電)を防ぐ観点から0.5cm以上が好ましく、コロナ放電の効率の観点から2.0cm以下が好ましい。コロナ放電時の電圧としては、コロナ放電の効率の観点から5000V以上が好ましく、線状電極の耐久性の観点から15000V以下が好ましい。分極処理の時間としては、例えば、分極効率の観点から1分以上5分以下である。
上記実施の形態によって得られる圧電セラミックスは、原料粉末が収縮して弱い結合力を有した塊となり、原料粉末に含まれる各成分(例えば、PbO、ZrO、TiO)が相互に固溶したペロブスカイト型結晶構造が得られるので、圧電定数(d33)を30pC/N以上とすることができ、圧電センサとして十分な圧電特性を有する圧電セラミックスが得られる。
<電極形成工程P7>
次に、圧電セラミックス前躯体上に第2電極としての金属板を設ける電極形成工程P7を実施する。この電極形成工程P7では、基材120との間で圧電セラミックス前躯体を挟むように圧電セラミックス前躯体上に第2電極としての金属板を設ける。この金属板は、第2電極として機能するだけでなく、超音波厚みセンサを支持する支持体とても機能する。この第2電極を形成することにより、圧電セラミックスが一対の基材120(第1電極)と第2電極との間に挟持されるので、超音波厚みセンサを配管に沿って配置する際の形状の安定性が向上する。第2電極としては、基材と同様の材質のものを用いることができる。また、第1電極及び第2電極は、超音波厚みセンサの超音波送受信のための電極としても機能する。なお、電極形成工程P7は、分極処理工程P6の前に実施してもよい。
第2電極の形成方法としては、特に制限はなく、一般的な電極形成方法を用いることができる。第2電極の形成方法としては、例えば、銀(Ag)などの電極用の導電性金属の粉末をペースト化しておき、このペーストを圧電セラミックス前躯体の表面に塗布して焼き付ける方法や、第2電極用の導電性金属の膜を圧電セラミックス前躯体の表面に載置又は貼着して焼き付ける方法が挙げられる。
第2電極の厚みとしては、10μm〜100μmであることが好ましい。電極の厚みが100μm以下であれば、超音波厚みセンサの可撓性を損なうことがなく、10μm以上であれば、圧電セラミックス前躯体の表面の凹凸の影響を受けずに圧電セラミックスの表面に均一に電極を形成することができる。
<配線接続工程P8>
最後に、第1電極に一端が超音波厚み測定計に接続されたリード線を電気的に接続すると共に、第2電極に一端が超音波厚み測定計に接続されたリード線を電気的に接続する配線接続工程P8を実施する。以上の工程により、図1及び図2に示した超音波厚みセンサを製造することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、相互に平均粒径が異なる第1粉末及び第2粉末を含む原料粉末を焼成して圧電セラミックスを製造するので、基材と当該上に成膜した圧電セラミックスとの接触面積が向上する。これにより、基材と圧電セラミックスとの間の密着性が向上するので、基材を湾曲させて用いる場合であっても、基材からの圧電セラミックスの剥離を防ぐことが可能な圧電センサを実現することができる。また本発明に係る圧電センサは、上記圧電センサの製造方法によって得られるものであり、本発明に係る圧電素子は、この圧電センサを含むものである。
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
まず、本発明者らは、上記実施の形態に係る圧電センサの製造方法により作製した圧電センサと、従来の圧電センサの製造方法によって作製した圧電センサとを用いて基材の曲げ試験を実施して基材からの圧電センサの剥離の有無を調べた。以下、本発明者らが調べた内容について説明する。
(実施例1)
第1粉末としては、平均粒径が1μmの原料粉末を用いた。第2粉末としては、第1粉末を1150℃にて5時間熱処理した塊状の原料粉末を粒径が20μm〜30μmとなるように粉砕した粉末を用いた。第1粉末100質量部に対して第2粉末を100質量部配合した原料粉末に対して、1000℃以上1200℃以下にて熱処理を実施し、熱処理後の原料粉末を粉砕した後、粉砕した原料粉末をスラリー化して基材120としての厚さ20μmのSUS板上に厚さが100μm程度となるように塗布して焼結原料層を形成した。その後、焼結原料層を焼結して圧電セラミックス前駆体とし、圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックス層122とした後、圧電セラミックス上に第2電極124としての銀電極を形成して圧電センサを作製した。以上のようにして合計10個の圧電センサを作製し、作製した10個の圧電センサを第1の試験サンプル〜第10の試験サンプルとして曲げ試験を実施した。
曲げ試験は、図9及び図10に示すように、Rが20mmであり、60°の角度に折り曲げ可能な治具110の上に基材120を配置し、基材120を平板状態と60°折り曲げた状態とを交互に繰り返した後に、A−A断面及びB−B断面を電子顕微鏡で断面観察して基材120からの圧電センサの剥離の有無をそれぞれ評価した。曲げ試験は、第1の試験サンプルについては、曲げ試験1回後に断面観察を実施し、第2の試験サンプルについては、曲げ試験2回後に断面観察を実施し、第3の試験サンプルについては、曲げ試験3回後に断面観察を実施し、第4の試験サンプルについては、曲げ試験4回後に断面観察を実施し、第5の試験サンプルについては、曲げ試験5回後に断面観察を実施し、第6の試験サンプルについては、曲げ試験6回後に断面観察を実施し、第7の試験サンプルについては、曲げ試験7回後に断面観察を実施し、第8の試験サンプルについては、曲げ試験8回後に断面観察を実施し、第9の試験サンプルについては、曲げ試験9回後に断面観察を実施し、第10の試験サンプルについては、曲げ試験10回後に断面観察を実施した。第1の試験サンプルの断面写真を図11A及び図11Bに示す。図11A及び図11Bに示すように、本実施の形態に係る圧電センサの製造方法で作製した圧電センサは、平均粒径が大きい粒子と、平均粒径が小さい粒子とが混在していた。また、実施例1の圧電センサは、第1の試験サンプル〜第6の試験サンプルについては、基材120から圧電セラミックス層122が剥離することがなく、第7の試験サンプル〜第10の試験サンプルについては、基材120から圧電セラミックス層122が剥離していた。
(実施例2)
第2粉末を200質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして圧電センサを作製して曲げ試験を実施した。その結果、実施例2の圧電センサは、第1の試験サンプル〜第10の試験サンプルのいずれも基材120から圧電セラミックス層122が剥離することがなかった。
(実施例3)
第2粉末を300質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして圧電センサを作製して曲げ試験を実施した。その結果、実施例3の圧電センサは、第1の試験サンプル〜第10の試験サンプルのいずれも基材120から圧電セラミックス層122が剥離することがなかった。
(実施例4)
第2粉末を400質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして圧電センサを作製して曲げ試験を実施した。その結果、実施例4の圧電センサは、第1の試験サンプル〜第8の試験サンプルについては、基材120から圧電セラミックス層122が剥離することがなく、第9の試験サンプル〜第10の試験サンプルについては、基材120から圧電セラミックス層122が剥離していた。
(実施例5)
第2粉末を500質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして圧電センサを作製して曲げ試験を実施した。その結果、実施例5の圧電センサは、第1の試験サンプル〜第6の試験サンプルについては、基材120から圧電セラミックス層122が剥離することがなく、第7の試験サンプル〜第10の試験サンプルについては、基材120から圧電セラミックス層122が剥離していた。
(比較例1)
次に、平均粒径が1μmの原料粉末のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧電センサを作製して評価した。第2の試験サンプルの断面写真を図12A及び図12Bに示す。図12A及び図12Bに示すように、比較例1に係る圧電センサは、平均粒径が小さな粒子のみが存在しており、曲げ試験の2回目で基材120からの圧電セラミックス層122が剥離していた。また、比較例1の圧電センサは、第1の試験サンプルについては、基材120から圧電セラミックス層122が剥離することがなかったが、第2の試験サンプル〜第10の試験サンプルについては、基材120から圧電セラミックス層122が剥離していた。
以上の実施例1〜実施例5及び比較例1の結果を図13に示す。なお、図13においては、横軸に第1粉末100質量部に対する第2粉末の配合量を示し、縦軸に曲げ試験で基材120からの圧電セラミックス層122の剥離が生じた回数を示している。図13に示すように、第1粉末100質量部に対して第2粉末100質量部〜500質量部の範囲で配合した実施例1〜実施例5については、いずれも曲げ試験の6回目以降で基材120からの圧電セラミックス層122の剥離が生じていることが分かる。この結果は、上述した作用効果により、基材120と圧電セラミックス層122との接触面積が向上して基材120と圧電セラミックス層122との密着性が向上したためと考えられる。なお、実施例4及び実施例5で基材120からの圧電セラミックス層122の剥離が生じたのは、第2粉末の配合量が増大して実施例2及び実施例3に対して相対的に可撓性が低下したためと考えられる。また、第1粉末のみを用いた比較例1では、曲げ試験の1回目で基材120からの圧電セラミックス層122の剥離が生じた。この結果は、第1粉末より相対的に平均粒径が大きい第2粉末を用いなかったので、上述した本願発明の作用効果が得られなかったためと考えられる。
1 超音波厚みセンサ
21 固定台
23 電極台
23A 平坦面
25 昇降調整機構
27 ガイド軸
29 アース線
31 コロナ放電用電極
31A〜31C 線状電極
33 電極支持部材
33A,33B 支持部
35 電源
36 リード線
40 積層体
120 基材
122 圧電セラミックス層
124 第2電極
126,128 配線

Claims (5)

  1. レーザー回折法により測定した0.1μm以上5μm以下の第1の平均粒径を有する第1粉末100質量部に対して、レーザー回折法により測定した10μm以上50μm以下の第2の平均粒径を有する第2粉末100質量部以上500質量部以下を含む圧電セラミックスの原料粉末を1000℃以上1200℃以下で熱処理する熱処理工程と、
    前記熱処理工程で熱処理した前記原料粉末を粉砕する粉砕工程と、
    前記粉砕工程で粉砕した前記原料粉末をスラリー化するスラリー化工程と、
    前記スラリー化工程で得られたスラリーを基材上に成膜して焼結原料層を形成する成膜工程と、
    前記焼結原料層を焼結して圧電セラミックス前駆体とする焼結工程と、
    前記圧電セラミックス前躯体を分極処理して圧電セラミックスを得る分極処理工程と、
    を含むことを特徴とする圧電センサの製造方法。
  2. 前記第2粉末が、1000℃以上1200℃以下で前記第1粉末を所定時間熱処理して粉砕してなるものである、請求項1に記載の圧電センサの製造方法。
  3. 前記圧電セラミックスが、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)である、請求項1又は請求項に記載の圧電センサの製造方法。
  4. 前記PZTの組成が、下記式(1)で表される、請求項に記載の圧電センサの製造方法。
    Pb(Zr,Ti1−x)O・・・式(1)
    (式1において、xは、0.30以上0.70以下を表す。)
  5. 前記基材がSUS板である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の圧電センサの製造方法。
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