JP2013133562A - 消臭性能に優れる布帛 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロース繊維とポリウレタン繊維とを混用した消臭性布帛であって、該布帛のpHは、6.0〜6.95であり、洗濯前及び洗濯50回後の、消臭加工繊維製品認定基準におけるアンモニア減少率はいずれも70%以上であり、かつ、ノネナール減少率はいずれも75%以上であることを特徴とする前記消臭性布帛。
【選択図】なし
Description
消臭性能の中でも特に高齢化社会の進行により、中高年の人が発する独特の体臭である加齢臭に対する消臭機能が求められている。一般に、加齢臭とは、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールの各臭気成分に起因すると考えられており、加齢臭の消臭には、これら4つの成分を全て除去する機能が必要とされている。
加齢臭の中の一つであるノネナールは、加齢による生体防御機構の衰えで分解されなかった過酸化脂質と、加齢と共に分泌量が多くなるパルミトレイン酸とによるものであり、過酸化脂質による酸化伝播でバルミトレイン酸がバルミトオレイン酸ヒドロペルオキシドとなり、これが開裂分解して、ノネナールとなることから、抑制する方法として、過酸化脂質による酸化伝播を遮断するため、キュレン抽出物やオウゴン抽出物等の抗酸化剤を繊維表面に付与する方法があるが、これら抗酸化剤そのものは洗濯耐久性がないという問題がある。
また、セルロース繊維の染色仕上布帛のpHは、7.5近辺の弱アルカリ性になっていることから、特に塩基性ガスであるアンモニア臭に対する消臭性能が著しく低下するという問題がある。
このように、現状では、セルロース繊維を改質した布帛や改質しないで使用した染色仕上布帛において、抗菌加工を施さなくて加齢臭に対する消臭性能に優れ、かつ性能の洗濯耐久性に優れ、肌面のベタツキがなくシャリ感のある風合を有し、染色性に優れ、洗濯後の変褪色の少ない染色製品は得られていない。
すなわち本発明は、以下のとおりのものである。
本発明は、セルロース繊維とポリウレタン繊維との混用布帛であり、染色仕上布帛のpHを弱酸性側に制御することで加齢臭、特にアンモニア、ノネナールに対する消臭性能の安定性に優れ、その洗濯耐久性を改良したものである。
本発明におけるセルロース繊維としては綿、麻等の天然セルロース系繊維やビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維をいい、再生セルロース繊維が好ましく使用でき、中でも銅アンモニア法によって得られるキュプラ(旭化成せんい製ベンベルグ)を用いた場合、本発明の効果が最も顕著に現れるため好ましい。
改質していないセルロース繊維とは、後処理にてカルボキシル基が実質的に付与されていないセルロース繊維である。本発明において、改質していないセルロース繊維を用いる混用布帛においては、セルロース繊維をセルロース分解酵素で処理し、繊維軸方向に特定の大きさの筋状溝を形成されたものであることが好ましい。これにより、アンモニア等の塩基性ガス、酢酸やイソ吉草酸の酸性ガスの消臭効果が高まる。特に、再生セルロース繊維(長繊維)は、セルロース分解酵素で処理する際に、繊維軸方向に特定筋状溝の幅、長さをコントロールがし易いという観点からも好ましい。
また、本発明のセルロース繊維中に、再生セルロース繊維が50%以上含まれるのが好ましく、再生セルロース繊維100%がより好ましい。セルロース繊維は単独で用いられていてもよく、セルロース繊維同士または他の繊維と複合されていてもよい。繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。そして、繊維が加工される糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸、エアジェット精紡糸等の紡績糸、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等がある。
セルロース繊維とその他の繊維を混用する場合の糸条の形態の例としては、混紡(混綿、フリース混紡、スライバー混紡、コアヤーン、サイロスパン、サイロフィル、ホロースピンドル等)、交絡混繊、交撚、意匠撚糸、カバリング(シングル、ダブル)、複合仮撚(同時仮撚、先撚仮撚)、伸度差仮撚、位相差、仮撚加工後に後混繊、2フィード(同時フィードやフィード差)空気噴射加工等による混用形態が挙げられる。
(イ)有機ポリイソシアネート:R4−(NCO)x{式中、R4は、有機残基であり、そしてxは、2以上の整数である。}、
(ロ)ポリアルキレンエーテルジオール:HO−R5−OH{式中、R5は、ポリアルキレンエーテルジオールの残基である。}、
(ハ)イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物:H−R6−H及び/又はR7−H{式中、R6とR7は、活性水素含有化合物の残基である。}
で表した場合、基本的には、それらに由来する下記構造単位(A):
さらに、上記構造単位(A)、及び(B)を形成する有機ポリイソシアネート化合物の官能基数に対応して、R4基に結合するウレタン結合部分又はウレア結合部分は、増減することができ、また、上記ポリウレタン重合体の末端は、−R6−H又は−R7であることができる。
これ以外に、前記した構造単位(C)、及び下記構造単位(D):
共重合ポリアルキレンエーテルジオールは、下記式(1):
0.05≦(MD)/(MC+MD)≦0.50 ・・・ 式(1)
{式中、MC、及びMDは、各々、当該ポリアルキレンエーテルジオール中に存在する構造単位(C)と(D)の総数であり、そして構造単位(C)と構造単位(D)は、当該ポリアルキレンエーテルジオール中にランダム状又はブロック状のどちらで存在してもよい。}で表される特定比率のアルキル基を有するものが好ましい。式(1)は、より好ましくは、0.10≦(MD)/(MC+MD)≦0.45である。
ポリアルキレンエーテルジオールの製造において、テトラヒドロフランと共に用いることができる低分子ジオール、環状低分子化合物としては、例えば、ネオペンチルグルコール、3,3−ジメチルオキセタン、1,1−ジヒドロオキシエチルシクロヘキサン、1,1−ジヒドロオキシエチルシクロペンタン等が挙げられ、なかでも、ネオペンチルグリコール、3,3−ジメチルオキセタンが好ましい。
ポリアルキレンエーテルジオールの分岐鎖を有する特定の構造単位(B)と構造単位(A)であるテトラメチレン単位は、ランダム状又はブロック状のいずれで分布していてもよい。ヘテロポリ酸触媒を用いた反応ではブロック状又はランダム状いずれにも分布させることができ、ジオールの結晶性を種々効果的に変えることができ、ポリウレタンの特性に合わせて各々の結晶性を持つジオールを製造することができる。本発明においては、弾性特性の点から、ランダム状であることが好ましい。
ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量は、300〜30,000であることが好ましく、より好ましくは500〜5,000で、さらに好ましくは1,000〜4,000である。
さらに、上記ポリアルキレンエーテルジオールを、他のジオール等と任意の割合に混合又は併用使用してもよい。
0.06≦(TD)/(TC+TD)≦0.70 ・・・ 式(2)
{式中、TC、及びTDは、各々、当該ポリアルキレンエーテルジオールの末端に存在する構造単位(C)と(D)の総数である。}で表される特定比率のアルキル基末端を有することが好ましい。
構造単位(C)及び(D)の量が前記式(1)及び(2)の範囲内にあれば、乾熱セット性、耐湿熱性、及び弾性機能に優れるポリウレタン重合体が得られる。式(2)は、より好ましくは、0.12≦(TD)/(TC+TD)≦0.54である。
1.20≦{(TD)/(TC+TD)}/{(MD)/(MC+MD)}≦6.0 ・・・ 式(3)
{式中、MC、MD、TC、及びTDは、式(1)と式(2)中で定義したものと同じである。}
を満足することが好ましい。
すなわち、ポリアルキレンエーテルジオールの末端における構造単位(D)の比率が、ポリアルキレンエーテルジオール全体における構造単位(D)の比率よりも大きいことが好ましい。末端基比率が前記式(3)を満足すると、乾熱セット性の良好なポリウレタンが得られ、また、製造工程において、有機ポリイソシアネート化合物の反応性が良好で、反応が比較的短時間、低温で進行するため、副反応が生じず、アルファネート架橋結合の生成によるゲル化も生じない。
ポリアルキレンエーテルジオールの末端基比率を制御するためには、例えば、反応の終点において構造単位(D)に由来する化合物を多く加えることにより、末端基に構造単位(D)が多く存在することができる。
有機ポリイソシアネート化合物としては、分子内に少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する化合物、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビス(3−メチル−4−イソシアナートフェニル)メタン、ビス(4−イソシアナートシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物としては、例えば、(イ)水、(ロ)エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、N,N′−ビス(γ−アミノプロピル)−N,N−ジメチルエチレンジアミンなどの2官能性脂肪族ジアミン、(ハ)1官能性アミノ化合物、例えば、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチル−n−プロピルアミン、メチル−イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチル−n−ブチルアミン、メチル−イソブチルアミン、メチルイソアミルアミン等の1官能性第2級アミン、(二)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール類、(ホ)本発明に用いられる前記ポリアルキレンエーテルジオール、(へ)公知の数平均分子量250〜5000程度のジオール類、及び(ト)一価アルコール類等が挙げられる。
前記の有機ポリイソシアネート化合物や活性水素含有化合物は、各々単独で用いてもよいが、必要に応じて予め混合して用いてもよい。
(イ)公知のポリウレタン化反応の技術、例えば、(ii)ポリアルキレンエーテルジオールと(i)有機ポリイソシアネート化合物とを、1:1〜1:3.0(当量比)、好ましくは1:1.3〜1:2.0の割合で有機ポリイソシアネート化合物過剰の条件下で反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した後、該プレポリマー中のイソシアネート基に対して、イソシアネート基と反応する(iii)活性水素含有化合物を添加して反応させる。
(ロ)(i)有機ポリイソシアネート化合物、(ii)ポリアルキレンエーテルジオール、(iii)活性水素含有化合物を同時に1段で反応させるワンショット重合法で反応させる。
ウレタン化反応においては、必要に応じて、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン等の溶媒を用いてもよい。
また、本発明で用いられる各種化合物の化学量論的割合は、前記(ii)で表されるポリアルキレンエーテルジオールの水酸基と、前記(iii)で表される活性水素含有化合物の活性水素の総和が、前記(i)で表される有機ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対して、0.9〜1.15当量であることが好ましく、1.0〜1.05当量であることがより好ましい。
ポリウレタン繊維には、必要に応じて金属酸化物、金属水酸化物を含有させてもよく、例えば、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト類化合物等を単独又は二種以上の混合物として用いてもよい。これらの添加量としては0.1〜6.0wt%が好ましい。また、ポリウレタン繊維には、その他公知の安定剤、紫外線吸収剤等が含有されていてもよい。
セルロース繊維と塩基性染料可染型繊維とを混用する場合の糸条の形態の例としては、混紡(混綿、フリース混紡、スライバー混紡、コアヤーン、サイロスパン、サイロフィル、ホロースピンドル等)、交絡混繊、交撚、意匠撚糸、カバリング(シングル、ダブル)、複合仮撚(同時仮撚、先撚仮撚)、伸度差仮撚、位相差、仮撚加工後に後混繊、2フィード(同時フィードやフィード差)空気噴射加工等による混用形態が挙げられる。
また、本発明のシャリ感のある風合を得るために、好ましくは、セルロース繊維と塩基性染料可染型繊維との複合仮撚にて、塩基性染料可染型繊維を融着させたり、未解撚部分を形成させたりする方法を用いたり、600〜1200T/mの撚数を入れた撚糸形態をったりするのがよい。
布帛形態としては、編物、織物、不織布、及びこれらの複合布帛(例えば、積層布等)が挙げられる。具体例としては、いわゆる機上混用品があり、製編織時にポリウレタン繊維の裸糸(裸糸の場合は編成や製織時に、2〜4倍程度に伸長させながら)又は被覆糸を機上にてセルロース繊維や塩基性染料可染型繊維や他の繊維と引き揃えて又は合糸して混用した編織物が挙げられる。
塩基性染料染着座席成分としては、スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、スルホイソフタル酸のホスホニウム塩及びこれから誘導されるエステル形成性誘導体を挙げることができる。具体的には、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸等のスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、5−(テトラアルキル)ホスホニウムスルホイソフタル酸及びこれから誘導されるエステル形成性誘導体等が挙げられる。中でも消臭性能の点から、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、5−(テトラブチル)ホスホニウムスルホイソフタル酸、及び5−(テトラエチル)ホスホニウムスルホイソフタル酸が好ましい。
また、塩基性染料染着座席成分の共重合量は、消臭性能の観点から、全酸成分に対して0.1〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.5〜3.5モル%である。共重合量が0.1モル%未満では、本発明の消臭性能が得られず、一方、5モル%を超える場合、原糸強度、耐光性の低下が顕在下するため好ましくない。
本発明の塩基性染料可染型繊維は、特に限定はしないが、総繊度が30〜300デシテックスでの繊維であることが好ましい。さらに断面形状は、丸型以外に扁平、くびれ付扁平、三角形、四角形、3以上の多葉形、C型、H型、X型、中空断面のいずれであってもよいが、シャリ感のある風合、消臭性能面より異形断面で単糸デシテックスが1.1デシテックスの繊維が好ましい。
また、本発明の塩基性染料可染型繊維中に、その他、絹、ウール、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル繊維が30%まで含まれていてもよい。
また繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。繊維が加工される糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸、エアジェット精紡糸等の紡績糸、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等がある。
本発明に係る改質していないセルロース繊維と塩基性可染型繊維とポリウレタン繊維との消臭性布帛においては、上記のような混用布帛を染色する前に、後述するセルロース分解酵素処理により、布帛重量の1.5%〜10%減量し、セルロース繊維表面に筋状溝を形成させることが好ましい。
減量率が上記の範囲にあると、セルロース繊維表面に繊維軸長さ50μm当たり、幅0.05〜1.50μm、長さ3〜25μmの筋状溝が10個以上存在している。尚、筋状溝は、繊維軸方向に対し、ほぼ平行である必用はなく、45度まで傾いていてもよい。このような筋状溝を有することで、繊維比表面積が増大し、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールの各臭気成分の補足量が増大し、塩基性染料可染型繊維とポリウレタン繊維との混用布帛での消臭効果が高まり、本発明でいう加齢臭の消臭効果の高いものが得られとともに、色の鮮明性も増す。上述の筋状溝の幅、長さの制御は、セルロース繊維の中でも再生セルロース繊維においてより容易である。
減量率が1.5%以上であれば、筋状溝の幅が0.05μm以上、長さが3μm以上となり、個数も10個以上となり、消臭効果を高めることができ、またしなやかな風合が得られ、色も鮮明となるため、好ましい。一方、減量率が10%を超えると、セルロース繊維の強力低下が大きくなるという問題がある。
本発明でいうセルロース分解酵素とは、エキソグルカナーゼ、エンドグルカナーゼ、セルビアーゼ、β−グルコシダーゼ、セロビアーゼ等のセルラーゼ類をいい、それぞれ、単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
処理後は酵素の失活処理を行うが、使用する酵素が失活する温度で処理すればよく、70〜100℃で、15分〜30分間が好ましい。また、処理浴にアルカリ剤を併用することは、酵素の脱着を促進するため、好ましい。
セルロース分解酵素による処理においては、ロータリドラム染色機、パドル染色機、ウインスリール染色機、ジッガー染色機、液流染色機、気流染色機等の回転式染色装置を使用することができるが、パッド−ロール、パッド−ジッグ染色機のように拡布状で処理できる装置を使用した方が、本発明の筋状溝形成をコントロールし易いため、好ましい。
本発明に用いる芳香族ポリエステルポリエーテルブロック共重合体は、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とアルキレングリコール及び/又はポリアルキレングリコールとからなるブロック共重合体である。該共重合体の市販品としては、高松油脂(株)製のカチオン乳化したSR−C1800やアルカリ耐性のあるSR−2010Aやスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸が含まれたSR−5000等が挙げられ、SR−5000がシャリ感のある風合を得るのに好ましく使用できる。該共重合体の付与方法は特に限定されず、例えば、染色と同浴加工、パディング法、フラットスクリーンプリント法、ロータリースクリーンプリント法、ローラープリント法、グラビアロール法、キスロール法、泡加工機による方法が例示される。該共重合体の付与量は、混用布帛重量に対して固形分で0.1〜0.7重量%である。付与量が0.1重量%未満では、本発明の消臭性能が不十分で好ましくなく、一方、0.7重量%を越えた場合には、染色堅牢度、耐光性の低下が健在下するため好ましくない。
本発明でいう酸は、25℃水溶液中での酸解離定数pk1が2.800〜5.000で、無機性/有機性値が3.00〜6.50の範囲にある不揮発性有機酸を用いるのが好ましい。より好ましくは、酸解離定数pk1が3.000〜4.800で、無機性/有機性値が3.50〜6.30である。酸解離定数が2.800未満の場合、ポリウレタン繊維が脆化しやすくなる問題があり、また、5.000を超える場合は、塩基性染料可染型繊維が脆化しやすくなる問題があり好ましくない。
無機性/有機性値が3.00未満の場合、有機性が強くなり、揮発性が高くなることから仕上布帛のpHのコントロールが難しく、かつ経時により変化が大きくなる問題があり、特に保管期間において本発明の範囲での制御が難しい。また、6.50を超える場合、無機性が強すぎるためポリウレタン繊維が脆化しやすくなる問題があるので好ましくない。
また、酸の分子量は50〜200の範囲が好ましい。
また、仕上布帛のpHを前記所望の範囲内に維持しておけば、製品での保管時に変色や黄変が極めて起き難いという効果や繰り返し洗濯による変褪色が小さいという効果もある。
また、本発明の酸処理は、染色加工工程の最終段階にて、適宜実施すればよいが、通常は、可縫製向上剤、柔軟剤、帯電防止剤等の仕上剤を付与する際に、仕上加工剤水溶液中に、上述のいずれかの酸を添加し、通常、行われている方法にて付与し、熱処理を行い、仕上げればよい。この際の酸の使用濃度は、仕上布帛のpHが本発明の範囲内になるように適宜調整すればよく、目安として加工剤水溶液のpHは概ね4.5以下になるように調整するのが好ましい。
酸処理を行なわず、洗濯を繰り返すことによっても本発明が規定するpH値とすることは可能である。必要な洗濯回数は基布のpH等によって異なるが、30〜50回が好ましい。但しpH調整後、さらに洗濯を繰り返した後の消臭性能が低下したり、セルロース繊維がフィラメント使用の場合、フィラメント同士の膠着により風合が硬くなったり、色の褪色が大きくなる等の問題が起こりやすくなるため、酸処理によるpH調整の方が好ましい。
さらに、上記試験における、酢酸の減少率80%以上、イソ吉草酸の減少率85%以上を同時に達成することが好ましい。より好ましくは、酢酸の減少率85%以上、イソ吉草酸の減少率90%以上、さらに好ましくは酢酸の減少率90%以上、イソ吉草酸の減少率93%以上である。
本発明の消臭性布帛は上記消臭性能に加え、色の鮮明性に優れ、シャリ感のある風合を有し、かつ、堅牢度性能も良好であり、具体的には、JIS−L−0848 A法における汗アルカリ堅牢度が3級以上である商品価値の高い染色品である。
以下、実施例等で用いた特性値の測定法を示す。
(1)JTETC消臭性区分「加齢臭」消臭試験
臭気成分としてアンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール(2−ノネナール;CAS番号463−53−8)の4成分を用いて消臭試験を行い、下記の方法により消臭性能を評価した。
<消臭性能評価>
JTETCが定める消臭加工繊維製品認証基準に従い、上記4成分について機器分析を行った。尚、洗濯はJIS−L−0217−103法に従い実施した。
機器分析試験:容器に臭気成分とサンプルを入れ、2時間放置後の臭気成分の残留濃度(2時間後の試料試験濃度)を測定した。臭気成分のみを入れた容器の残留濃度を空試験濃度として、下記式:
減少率(%)=(2時間後の空試験濃度−2時間後の試料試験濃度)/(2時間後の空試験濃度)×100
により、臭気成分の減少率を計算した。アンモニアと酢酸は検知管法により、イソ吉草酸とノネナールはガスクロマトグラフィー法により測定した。
判定は、アンモニアの減少率70%以上、酢酸の減少率80%以上、イソ吉草酸の減少率85%以上、ノネナールの減少率75%以上の条件を全て満足する場合を合格「(○」、それ以外を不合格「×」と判定した(以下、表1を参照のこと)。
判定者6名のうち、5名以上が下記基準により臭気を弱と判断した場合を合格とした(以下、表1を参照のこと)。
臭気「強」:判定臭ガスより強い場合
臭気「弱」:判定臭ガスと比較して同等又はより弱い場合
走査型電子顕微鏡(日立製作所製、形式S−3500N)を用いて、試料のセルロース繊維表面を1800倍に拡大し、適宜に5ヶ所写真撮影し、スケールゲージと比較して、筋状溝の幅、長さ、及び数を測定し、繊維長50μmあたりの数(個)を算出して平均値を求めた。
JIS L−0217 103法に従って、50回行った。尚、洗剤は、花王製アタック 1g/Lを用いた。
染色品について、JIS−L−0848−A法に準じて汗アルカリ人工汗液を用いて評価した。試験片の変褪色と添付白布片の汚染の程度を、それぞれ、変褪色用グレースケール、汚染用グレースケールと比較して判定した。
染色仕上品50gを常温の蒸留水500mlに30分間浸漬し、その水溶液のpHを
JIS−Z−8802に準じて測定を行った。
洗濯前の布帛に対して、洗濯50回後の変褪色評価として、色差(ΔE)を分光測色計
(Gretagmacbeth社製、形式Color−Eye7000A)にて測定した。
84dtex/45fのキュプラ(旭化成せんい製ベンベルグ)を用い、特許第3239146号公報の方法にて、メタクリル酸グラフト化率10%のカルボキシル化処理を行った。
次に、数平均分子量1800のポリテトラオキシメチレングリコールに4,4’−ジフェニルメタンイソシアネートを当量比1:1.6の割合で加え、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、N,N’−ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を得た。エチレンジアミン及びジエチルアミンをN,N’−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下添加して、固形分濃度30%のポリウレタン溶液を得た。
次に、以下の方法で3級窒素化合物含有の共重合ポリウレタン化合物を作製した。
100gのN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−1,1−ジメチルプロピルアミン、79.3gのN−ブチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、198.7gのイソホロンジイソシアネート、及び378gのN,N−ジメチルアセトアミドの溶液を、乾燥窒素ガス中、室温で攪拌下、該溶液に、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.15gを添加し、1時間攪拌後、系内を70℃にし、さらに5時間反応させ、赤外スペクトルで反応溶液中に未反応のイソシアネート基の2270cm−1における吸収が消失したことを確認してから反応を終了させた。得られた共重合ポリウレタン化合物の溶解度パラメーターδは10.86であった。
得られた3級窒素化合物含有の共重合ポリウレタン化合物を3部、及び少量の青み剤を含む酸化チタン2部を上記のポリウレタン溶液に加えた後、均一に分散溶解した。この溶液を脱泡し、通常の乾式紡糸法により33dtexのポリウレタン繊維を得た。
次に、得られたセルロース繊維とポリウレタン繊維を用い、常法により36ゲージにて、ベアー天竺丸編地を作製した。この編地中のセルロース繊維の混用率は87%であった。
次いで、拡布状60℃でプレウエットした後、185℃でプレセットを行い、下記に示す条件にて染色を行った。
反応染料:レマゾール ターコイズ ブルー G:1.4%omf
炭酸ナトリウム:10g/リットル
芒硝:30g/リットル
助剤:イマコール C−2GL(浴中柔軟剤):4g/リットル
浴比:1:20
染色温度60℃
染色時間50分
染色後は、90℃で湯洗及び水洗を繰り返し、脱水後、可縫製向上剤、柔軟剤水溶液中にリンゴ酸(酸解離定数;3.460、無機性/有機性値;5.00、分子量:134)を添加し、パッド法にて仕上剤を付与し、乾燥、160℃の熱処理にて仕上げた。この際のリンゴ酸の使用濃度は、仕上布帛のpHが6.5となるように調整した。仕上げた染色布帛の目付は210g/m2、コース密度は110本/インチ、ウエル密度は60本/インチであった。
得られた染色布帛の消臭性能、汗アルカリ堅牢度の評価結果及び、洗濯50回後の消臭性能、色差の評価結果を、以下の表1に示す。
表1の結果から、実施例1で得られた布帛は、消臭性能の安定性に優れ、ソフトな風合であり、かつ洗濯による変褪色の小さい商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
比較例1として、実施例1で得られたベアー天竺丸編地を用い、実施例1と同様の方法にて染色を行い、仕上剤処理時に酸を添加せずに同様の方法にて同じ性量となるように熱セットを行い仕上げた。この際の仕上布帛のpHは7.6であった。
得られた染色布帛の消臭性能、汗アルカリ堅牢度の評価結果及び洗濯50回後の消臭性能の評価結果を、以下の表1に示す。
比較例2として、実施例1で得られたベアー天竺丸編地を用い、実施例1と同様の方法にて染色を行い、仕上剤処理時にクエン酸(酸解離定数;3.128、無機性/有機性値;4.17、分子量:192)を添加し、同様の方法にて同じ性量となるように熱セットを行い仕上げた。
この際のクエン酸の濃度は、仕上布帛のpHが4.5となるように調整した。
得られた染色布帛の消臭性能、汗アルカリ堅牢度の評価結果及び洗濯50回後の消臭性能の評価結果を、以下の表1に示す。
表1の結果から、本発明の実施例1で得られた染色布帛は、比較例1、2で得られた布帛に比べ、消臭性能の優れる商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
三菱レイヨン(株)製の塩基性染料可染型ポリエステル繊維(商品名:A.H.Y.)70dtex/48fのPOYを常法により185℃にて仮撚加工を行い、未解撚部分を残し、加工工程中に56dtex/45fのキュプラ(旭化成せんい製ベンベルグ)を挿入し、インターレース混繊し、106dtex/93fの複合糸を得た。
次に、得られた複合糸と実施例1のポリウレタン繊維を用い、常法により28ゲージにて、ベアー天竺丸編地を作製した。この編地中のセルロース繊維の混用率は48%で、塩基性染料可染型繊維の混用率は42%で、ポリウレタン繊維の混用率は10wt%であった。
次いで、拡布状で60℃でプレウエットした後、185℃でプレセットを行い、下記に示す酵素処理条件を用い、減量率が2.5%となるように液流染色機を用い処理時間を調整し、減量処理を行った。
酵素溶液:セルラーゼT(天野エンザイム社製、エンド+エキソ型セルラーゼ)8%omf
pH:4.5(酢酸と酢酸ナトリウムにて調整)
助剤:イマコール C2GL:4g/L
浴比:1:30
処理温度:45℃
処理後は、80℃で15分間の失活処理を行った後、水洗を行い、下記の条件にて塩基性染料可染型繊維の染色を行った。
分散型カチオン染料:カヤクリル ブルー 2RL−ED:1.0%omf
硫酸ナトリウム:4g/リットル
pH:4.5
芳香族ポリエステルポリエーテルブロック共重合体:
SR−5000:2%omf(高松油脂製、固形分8.5%)
SR−2010A:2%omf(高松油脂製、固形分8.5%)
浴比:1:20
染色温度:100℃
染色時間:45分
染色後は、80℃で湯洗及び水洗を繰り返し、下記の条件にてセルロース繊維の染色を行なった。
反応染料:スミフィックス HF ブルー BG :0.4%omf
硫酸ナトリウム:20g/L
炭酸ナトリウム:10g/L
助剤:イマコール C−2GL:4g/L
浴比:1:20
染色温度:60℃
染色時間:45分
染色後は、85℃で湯洗及び水洗を繰り返し、脱水後、可縫製向上剤、柔軟剤水溶液中にクエン酸を添加し、パッド法にて仕上剤を付与し、乾燥、160℃の熱処理にて仕上げた。この際のクエン酸の使用濃度は、仕上布帛のpHが6.5となるように調整した。
仕上げた染色布帛の目付は205g/m2、コース密度は100/インチ、ウエル密度50/インチであった。
仕上げた染色布帛を電子顕微鏡にて1800倍の倍率にて観察したとき、セルロース繊維表面には、繊維長50μmあたり、幅0.4μm、長さ8.1μmの筋状溝が13本存在していた。
得られた染色布帛は、シャリ感のある風合を有しており、その消臭性能、汗アルカリ堅牢度の評価結果及び、洗濯50回後の消臭性能、色差の評価結果を、以下の表1に示す。
表1の結果から、実施例2で得られた布帛は、消臭性能の安定性、堅牢度性能に優れ、、洗濯による変褪色の小さい商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
比較例3として、実施例2で得られたベアー天竺丸編地を用い、酵素処理を行なわず、実施例2と同様の方法にて染色を実施した。但し、塩基性染料可染型繊維の染色時に芳香族ポリエステルポリエーテルブロック共重合体は併用せずに染色を実施した。また、仕上剤処理時に酸を添加せずに同様の方法にて同じ性量となるように熱セットを行い仕上げた。この際の仕上布帛のpHは7.3であった。
得られた染色布帛の消臭性能、汗アルカリ堅牢度の評価結果及び洗濯50回後の消臭性能、色差の評価結果を、以下の表1に示す。
比較例4として、実施例2で得られたベアー天竺丸編地を用い、酵素処理を行わずに実施例2と同様の染色編地を作成し、仕上剤処理時にクエン酸(酸解離定数;3.128、無機性/有機性値;4.17、分子量:192)を添加し、同様の方法にて同じ性量となるように熱セットを行い仕上げた。この際のクエン酸の濃度は、仕上布帛のpHが5.5となるように調整した。
得られた染色布帛の消臭性能、汗アルカリ堅牢度の評価結果及び洗濯50回後の消臭性能の評価結果を、以下の表1に示す。
比較例5として、56dtex/48fのキュプラをあらかじめ実施例1と同様な方法にてメタクリル酸グラフト化率10%のカルボキシル化処理を行い、実施例2と同様な方法にて複合糸、ベアー天竺丸編地を作製し、酵素処理を行わずに実施例2と同様の方法にて染色を実施。但し、塩基性染料可染型繊維の染色時に芳香族ポリエステルポリエーテルブロック共重合体は使用せずに、アミン系抗菌加工剤としてPAA−D41−HCL(ニットーボーメディカル社製、アリルアミン・ジアリルアミン系重合体)5%omf併用し染色を行った。仕上剤処理時には酸を添加せずに実施例2と同様の方法にて同じ性量となるように熱セットを行い仕上げた。この際の仕上布帛のpHは7.3であった。
得られた染色布帛の消臭性能、汗アルカリ堅牢度の評価結果及び洗濯50回後の消臭性能、色差の評価結果を、以下の表1に示す。
表1の結果から、本発明の実施例2で得られた染色布帛は、比較例3、4、5で得られた布帛に比べ、消臭性能の優れ、洗濯による変褪色の小さい商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
Claims (8)
- セルロース繊維とポリウレタン繊維とを混用した消臭性布帛であって、該布帛のpHは、6.0〜6.95であり、洗濯前及び洗濯50回後の、消臭加工繊維製品認定基準におけるアンモニア減少率はいずれも70%以上であり、かつ、ノネナール減少率はいずれも75%以上であることを特徴とする前記消臭性布帛。
- 洗濯前と洗濯50回後との色差が2.5以下である、請求項1に記載の消臭性布帛。
- 前記セルロース繊維がカルボキシル基が付与された改質セルロース繊維である、請求項1又は2に記載の消臭性布帛。
- 前記セルロース繊維と塩基性染料可染型繊維に加え、ポリウレタン繊維がさらに混用されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の消臭性布帛。
- 前記塩基性染料可染型繊維がカチオン染料で染色されている、請求項4に記載の消臭性布帛。
- 芳香族ポリエステルポリエーテルブロック共重合体が0.1〜0.7重量%で含有されている、請求項4又は5に記載の消臭性布帛。
- 酸解離定数pk1が2.800〜5.000であり、かつ、無機性/有機性値が3.00〜6.50である酸で処理する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の消臭性布帛の製造方法。
- セルロース分解酵素により60℃以下の温度で1.5〜10%減量処理する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の消臭性布帛の製造方法。
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