JP4406277B2 - 交撚糸及びその製造方法、並びに、該交撚糸を用いた編織物の製造方法 - Google Patents

交撚糸及びその製造方法、並びに、該交撚糸を用いた編織物の製造方法 Download PDF

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本発明は、交撚糸及びその製造方法、並びに、該交撚糸を用いた編織物の製造方法に関するものである。
従来より蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維とその他繊維との複合糸は多数提案、上市されている。蛋白繊維や脂肪族ポリエステル繊維は生体適合性に優れた素材であり、肌着や靴下、サポーター、寝具用途等々に好適に利用されている。特に蛋白繊維は保温、保湿性能に優れた素材として広く一般に認識されているが、湿潤時の強度保持率が乾燥時対比で絹糸が約80%、羊毛が約63%と何れも低下してしまう傾向にありハンカチや布巾などの用途には単体では使用し難い。そこで、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維とその他の繊維とを組み合わせて、更に別機能を加えた商品を得ることが可能である。例えば、特許文献1には、蛋白繊維や脂肪族ポリエステル繊維の有する特徴とレーヨンなどその他繊維の特徴を優性複合した布帛構造物を得る方法が開示されている。
しかしながら製編織された生機を精練する際に用いるアルカリ性溶液によって、蛋白繊維や脂肪族ポリエステル繊維の脆化や黄変等の問題が生じ易い。取り分け綿繊維と蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維の混紡糸の場合は、綿繊維の精練工程や綿側の染色性、光沢感を向上させる為のマーセル化処理(シルケット加工)において高pHの水酸化ナトリウム水溶液を用いるために、蛋白繊維や脂肪族ポリエステル繊維の脆化が著しい。これ故、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維とその他の繊維を組み合わせてなる複合糸条の精練および染色条件は、蛋白繊維側若しくは脂肪族ポリエステル繊維側の条件に合わせることが行われている。しかしながら、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維として絹を用いた場合は、pH=9〜10程度の弱アルカリ条件下でマルセル石鹸溶液などによる精練(脱セリシン)を施すため、その他の繊維(例えば、綿)は精練が不充分なものとなり、性能や品位的にも好ましいものは得られ難かった。
特許登録第2840599号公報
本発明は、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維と植物繊維とを用いた従来の交撚糸、或いは、該交撚糸を用いた繊維製品では得られなかった鮮明色、染色同色性、表面光沢感等の品位を更に向上させることを課題とする。
上記課題を解決することのできた本発明の交撚糸とは、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維と植物繊維とを少なくとも一部に使用してなる交撚糸であって、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を含む糸条Aが、植物繊維を含む糸条Bに捲回して構成されてなり、前記交撚糸の総質量の5質量%以上60質量%以下が蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維であり、前記交撚糸の総質量の10質量%以上90質量%以下が漂白及び/又はマーセル化処理された植物繊維であることを特徴とする。予め漂白及び/又はマーセル化処理された植物繊維を使用することによって、交撚糸としてから、比較的温和な条件で蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を精練できる。その結果、蛋白繊維や脂肪族ポリエステル繊維の脆化を抑制することができ、強度に優れる交撚糸が得られる。また、交撚糸を構成する植物繊維、及び、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維のいずれについても、十分に精練できるので、鮮明色、染色同色性、表面光沢感に優れる交撚糸が得られる。前記蛋白繊維としては、例えば、絹、獣毛、プロミックスよりなる群から選択される少なくとも一種を使用することが好ましい。また、前記脂肪族ポリエステル繊維として好ましいのは、大豆澱粉、トウモロコシ澱粉、落花生澱粉を主原料とする脂肪族ポリエステル繊維である。さらに、前記蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維は、マルチフィラメント糸であることが好ましい。
本発明の交撚糸の製造方法は、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を含む糸条Aを、予め漂白及び/又はマーセル化処理した植物繊維を含む糸条Bに捲回して交撚し、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維の精練条件で精練することを特徴とする。
また、本発明の編織物の製造方法は、上記本発明の交撚糸を製編織した生機を、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維の精練条件で精練することを特徴とする。前記精練後に、生機を染色することも好ましい態様である。
本発明によれば、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維と、綿に代表される植物繊維との交撚糸では従来得られなかった鮮明色染色、同色染色が可能になる他、光沢感も向上し製品品位的に優れた繊維製品を得ることが可能となる。
上記課題を解決することのできた本発明の交撚糸は、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維と植物繊維とを少なくとも一部に使用してなる交撚糸であって、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を含む糸条Aが、植物繊維を含む糸条Bに捲回して構成されてなり、前記交撚糸の総質量の5質量%以上60質量%以下が蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維であり、前記交撚糸の総質量の10質量%以上90質量%以下が、漂白及び/又はマーセル化処理された植物繊維であることを特徴とする。
まず、本発明で使用する蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を含む糸条Aについて説明する。前記蛋白繊維は、主鎖及び/又は側鎖にペプチド結合を有する繊維であれば特に限定されず、例えば、家蚕絹や野蚕絹の総称である絹、羊毛や山羊毛に代表される獣毛、ミルクガゼインとアクリロニトリルの共重合体であるプロミックス(東洋紡績社製・商品名シノン)等を挙げることができる。また前記脂肪族ポリエステル繊維は、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分とグリコール成分が脂肪族化合物を主成分とするものであれば特に限定されない。前記脂肪族ポリエステル繊維としては、大豆澱粉、トウモロコシ澱粉、落花生澱粉を主原料としたポリ(L−乳酸)繊維が好ましい。芳香族ポリエステル繊維とほぼ同等の機械物性が得られる他、何れも天然由来成分からなる繊維であり、また、生分解繊維として広く一般に知られており、癒しやエコロジーといった時代の要求にマッチしたものが得られるからである。
上記蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維は、単体のみならず、必要に応じて複数を適宜組み合わせて用いることが出来る。また、前記蛋白繊維、及び、前記脂肪族ポリエステル繊維は、カットファイバー(短繊維)やマルチフィラメント糸(長繊維)の何れの形態であってもよいが、光沢感や品位を考慮すると、マルチフィラメント糸であることが好ましい。勿論、絹紡糸などの紡績糸も使用可能であるが生地品位を向上させるにはマルチフィラメント糸使いとし、必要に応じて撚糸やオイリング等を施すことが好ましい。
次に、本発明で使用する植物繊維を含有する糸条Bについて説明する。
前記植物繊維は、種子毛繊維、靭皮繊維、葉脈繊維、果実繊維などのセルロースを主たる構成成分とする繊維であり、例えば、綿、カポック、ジュート、ケナフ、ラミー、リネン、ヘンプ、イチビ、バンブー、マニラアサ、アロエ、サイザルアサ、ココヤシなどが挙げられ、特に好ましくは綿である。
また本発明では、前記植物繊維として、予め漂白及び/又はマーセル化処理(シルケット加工)された植物繊維を使用することが好ましい態様である。予め漂白及び/又はマーセル化処理された植物繊維を使用することによって、交撚糸としてから、比較的温和な条件で蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を精練できる。その結果、強度、鮮明色、染色同色性、表面光沢感に優れる交撚糸が得られるからである。漂白された植物繊維としては、例えば、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等で漂白された植物繊維(特に好ましくは綿)を挙げることができ、マーセル化処理された植物繊維としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液の他、液体アンモニア等で処理された植物繊維(特に好ましくは綿)を挙げることができる。また本発明で使用する植物繊維は、予め、漂白若しくはマーセル化処理の少なくとも一方が施されていればよく、漂白およびマーセル化処理の両方の処理が施されていてもよい。いずれの場合においても、鮮明色、染色同色性、表面光沢に優れる交撚糸が得られるからである。
本発明の交撚糸は、上述した蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維と植物繊維とを少なくとも一部に使用してなるものであって、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を含む糸条Aが、植物繊維を含む糸条Bに捲回して構成されているものであれば、特に限定されない。例えば、本発明の交撚糸の好ましい態様としては、前記糸条Aが、実質的に上述した蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維からなり、前記糸条Bが、実質的に上述した漂白及び/又はマーセル化処理した植物繊維からなる態様;及び、前記糸条Aまたは糸条Bの少なくとも一方が、上記必須の繊維に加えてさらに第三の繊維を含有する態様などを挙げることができる。
本発明で使用する糸条A又は糸条Bが、第三の繊維を含有する態様としては、例えば芳香族ポリエステル繊維やポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維に例示される合成繊維を例えばコアスパンヤーンの形態として糸条の芯部を形成するよう複合させることが好ましい。W&W性や強伸度、伸縮性等の物性を更に向上できるからである。本態様において、組み合わせるこれら合成繊維の断面形態や熱収縮率及び単糸繊度は、特に限定を加えるものでなく、用途や特性に応じて適宜選定することが可能である。勿論一種類のみでなく複数種を組み合わせて使用することも可能であるし、各種混繊や仮撚方法を用いた糸加工を施してあってもよい。芳香族ポリエステル繊維を使用する場合は高い染色温度を必要としない常圧分散染色可能な共重合ポリエステル、若しくはカチオン染料可染性共重合ポリエステルを用いると、本発明で使用する蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維の脆化が抑制されるので、好ましい。
また、本発明には、前記糸条Aに、必須的に含有させる蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維に加えて、漂白及び/又はマーセル化処理した植物繊維を任意的に含有させる態様や、前記糸条Bに、必須的に含有させる漂白及び/又はマーセル化処理された植物繊維に加えて、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を任意的に含有させる態様も含まれる。
本発明の交撚糸は、上述した蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を含む糸条Aが、植物繊維を含む糸条Bの周囲に捲回されているので、従来の紡績糸に比べて、表面露出毛羽が少なく光沢に優れるといった特徴がある。また毛羽が少なく均整度、取扱性も優れ、生地品位も向上するという利点を有する。また、捲回の態様としては、特に限定されないが、例えば、糸条Bの周囲に糸条Bの撚方向とは逆方向に糸条Aを70〜200回程度/m捲回させる態様が好ましい。
本発明の交撚糸は、その総質量の10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、90質量%以下、より好ましくは75質量%以下が、上記漂白及び/又はマーセル化処理された植物繊維である。植物繊維の混率が10質量%未満では適度な吸水・吸湿性能、力学的強度を保持することが出来ない。また混率が90質量%を超過する範囲では光沢感に欠ける他、表面毛羽も多く高級感を与える生地品位にならない。
また本発明の交撚糸は、その総質量の5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、60質量%以下、より好ましくは50質量%以下が蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維である。蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維が5質量%未満では蛋白繊維の有する光沢感や保温性、保湿性を充分に付与することが出来ず、60質量%を超過する範囲では湿潤時の強度が不足してしまい消費性能的に好ましいものにはならない。尚、蛋白繊維として絹を使用する場合における上記各繊維の混率は、交撚糸に含有される絹を精練した後の各繊維の混率とする。絹は、精練によって重量変化する場合があるからである。また、上記各繊維の混率の数値範囲の規定においては、植物繊維と蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維のそれぞれの混率の合計が100質量%を超えることがないことはもちろんのこと、100質量%以下であってもよい。上述したように、本発明の交撚糸は、植物繊維、蛋白繊維、脂肪族ポリエステル繊維に加えて、第三の繊維を含有する場合があるからである。
本発明の交撚糸の製造方法は、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を含む糸条Aを、予め漂白及び/又はマーセル化処理した植物繊維を含む糸条Bに捲回して交撚し、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維の精練条件で精練することを特徴とする。すなわち、本発明の製造方法は、予め漂白及び/又はマーセル化処理した植物繊維を用いて、これを蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維と交撚した後に、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を精練する温和な精練条件で精練するところに要旨がある。
本発明における植物繊維の漂白方法は、特に限定されず、例えば、植物繊維として綿を使用する場合には、塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の溶液に綿糸を浸漬して、これを洗浄する方法を挙げることができる。また、マーセル化処理としては、例えば、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液の他、液体アンモニア等の溶液に綿糸を浸漬して、これを洗浄する方法を挙げることができる。
前記糸条Aを糸条Bに捲回して交撚する方法としては、例えば、セルフツイスト方式及び仮撚挿入法の応用方式、Leesona−カバースパン方式、実撚挿入ラッピング方式、仮撚ラッピング方式及びこれらの応用方式、サイロスパン方式及びその応用方式、エアジェット方式及びその応用方式、コンベンショナルカバリング方式(シングルカバード、ダブルカバード)、合撚その他公知の技術を用いることが出来る。またこれらの交撚方法はオンラインによる生産方式のみならずオフラインによる生産方式により、後から交撚させることも可能である。
本発明の製造方法では、糸条Aと糸条Bとを交撚した後、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維の精練条件で精練する。前記蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維の精練条件は、繊維の種類に応じて適宜決定することができる。例えば、糸条Aの蛋白繊維として絹生糸(きいと)を使用する場合、絹生糸のまま交撚し、絹生糸のセリシン成分をマルセル石鹸、炭酸水素ナトリウム、珪酸ナトリウム、酵素(アルカリ性蛋白質分解酵素)などで精練(溶解除去)して練絹とする。かかる精練処理によって、絹の光沢感が向上し、鮮明色染色が可能になる。また絹は、必要に応じて、精練後にハイドロサルファイトナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、二酸化チオ尿素による還元漂白や過酸化水素による酸化漂白を併用して白度を向上させることも出来る。特に過酸化水素は絹、綿双方の漂白に有効であるが処理pHを勘案して処理することが望ましい。例えば、pH=10〜12以上となるような強アルカリ条件で精練すると、蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維の脆化、黄変を引き起こすので、このような強アルカリ条件で精練することは避けることが好ましい。
脂肪族ポリエステル繊維を有する糸条Aを使用する場合は、脂肪族ポリエステル繊維に付着した紡糸油剤等を精練除去するのみでよく、漂白は特に必要としない。
また、上述した本発明の交撚糸を用いて、製編織して得られる生機の状態で上記精練をすることも本発明の好ましい態様である。
上述のようにして蛋白繊維若しくは脂肪族ポリエステル繊維を精練して得られた本発明の交撚糸、或いは、該交撚糸を用いて製編織して得られる生機は、鮮明色、染色同色性、および、表面光沢感などに優れる。染色方法については公知の糸染め方法及び生機を得た後の浸染、捺染方法で実施することが出来る。糸染め方法はオーバーマイヤー染色機等を用いカセやマフ捲等の形態で染色するが、染色後には適当な仕上げ油剤を付与し製織編性を向上させることが望ましい。使用する染料についても特に限定を加えるものでなく反応染料、酸性染料、含金染料その他組み合わせる素材に応じた染料を用いて染色することが出来る。糸染め及び生地浸染の何れも該当染料溶液のpHや温度に応じた複数浴染色とすることが製品品位面で好ましい。更に必要に応じて紫外線吸収剤、抗菌・制菌加工剤、防臭加工剤、難燃加工剤、帯電防止剤、防黴仕上剤、その他機能加工剤を上記の染色工程の任意工程でパッドスチーム法、パッドドライ法、吸尽法、スプレー法等の公知の方法で付与することが可能である。また蛋白繊維の黄変等の問題を防止する為、例えば、蛋白繊維の−NH2基を他の官能基を有するモノマーとグラフト重合させて封鎖すると共に他の機能を付与させることも可能である。
本発明の交撚糸は、製編織された後、繊維製品として縫製される。繊維製品に加工する任意の工程において各種堅牢度や物性面を更に向上させるため、必要に応じてコーティングやラミネート、ボンディング、樹脂含浸などの樹脂加工や各種機能加工を施すことも可能である。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)繊維の混率(混用率)
JIS L1030繊維製品の混用率試験方法に準ずる。組成繊維の種類を顕微鏡、焼却又は化学試験等により鑑別し、溶解法、解除法または顕微鏡法により混用率を求める。
(2)色の評価
JIS Z8723表面色の視感比較方法に準じ、CIE D65 標準光源を用い、色判定、色評価を目視で実施した。
[交撚糸の作製及び評価]
(実験例1)
綿コーマ糸(英式綿番手50番単糸)を糸条の形態で低濃度の水酸化ナトリウム水溶液による精練、過酸化水素による酸化漂白を実施した後、引き続き、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液によるマーセル化処理(シルケット加工)を施し、シルケット綿糸を得た。該綿コーマ糸の周囲に絹生糸(きいと)28中2諸撚糸(62デシテックス相当)をコンベンショナルカバリング装置によってシングルカバードし交撚糸とし、オイリングを施して巻き取った。該交撚糸を経緯糸双方に用いて製織し生機を得た後、マルセル石鹸による絹精練(脱セリシン)を実施した。脱セリシン後における綿と絹の複合比率は質量比でそれぞれ75.2質量%:24.8質量%である。続いて反応染料により浴温80℃で染色を施し得られた生地を用いてハンカチを縫製した。鮮明色及び同色性、光沢にも優れた商品となった。
(実験例2)
綿100%スライバの状態で低濃度の水酸化ナトリウム水溶液による精練、亜塩素酸ナトリウムによる精練漂白を精練処理液がイン→アウトに循環するように実施した。脱水、オイリングを施した後、絹生糸(きいと)21中4諸撚糸(93デシテックス相当)が周囲を捲回するようにLeesona−カバースパン方式による交撚糸を作製した。該交撚糸を経緯糸双方に用いて製織し生機を得た後、マルセル石鹸による絹精練(脱セリシン)を実施した。脱セリシン後における綿と絹の複合比率は質量比でそれぞれ89.5質量%:10.5質量%である。続いて反応染料により浴温80℃で染色を施し得られた生地を用いてハンカチを縫製した。鮮明色及び同色性に優れ、光沢にも優れた商品となった。
(実験例3)
実験例1で用いた綿コーマ糸(英式綿番手50番単糸)を精練なしで用い、絹生糸(きいと)28中2諸糸(62デシテックス相当)が該綿コーマ糸を捲回するようにコンベンショナルカバリング装置によってシングルカバードし交撚糸とした。引き続き高濃度の水酸化ナトリウム水溶液で綿の精練漂白を実施したが、絹の脆化や黄変が著しく糸条として消費性能を満足する品位を有するものにはならなかった。また、精練漂白後糸速250m/分でリワインドを試みたところ、脆化した絹繊維の切断毛羽及び扱きによるネップが要因で糸切れが多く正常な操業ができなかった。
(実験例4)
実験例1で得られた生機を絹精練を施さずに反応染料による染色を実施し該生地を用いてハンカチを縫製した。綿側は鮮明な色調が得られたが、絹側は綿側対比で濃色に染着してしまい同色性を得ることが出来ず、光沢感や品位的にも満足なものにはならなかった。
(実験例5)
実験例1で使用した綿コーマ糸(英式綿番手50番単糸)を綿精練を施さずに経緯糸双方に用いて製織し生機を得た後、マルセル石鹸による絹精練(脱セリシン)を実施した。続いて反応染料による染色を実施し該生地を用いてハンカチを縫製した。綿側が不鮮明な色調になってしまう他、絹との同色性が得られず品位的に優れたものにはならなかった。
(実験例6)
綿コーマ糸(英式綿番手30番双糸)を糸条の形態で低濃度の水酸化ナトリウム水溶液による精練、過酸化水素による酸化漂白を実施した後、引き続き高濃度の水酸化ナトリウム水溶液によるシルケット加工を施し、シルケット綿糸を得た。該綿コーマ糸の周囲に絹生糸(きいと)14中単糸(16デシテックス相当)をコンベンショナルカバリング装置によってシングルカバードし交撚糸とし、オイリングを施して巻き取った。該交撚糸を経緯糸双方に用いて製織し生機を得た後、マルセル石鹸による絹精練(脱セリシン)を実施した。脱セリシン後における綿と絹の複合比率は質量比でそれぞれ95.5質量%:4.5質量%である。続いて反応染料により浴温80℃で染色を施し得られた生地を用いてハンカチを縫製した。鮮明色、同色性が得られたものの、練絹の特徴である光沢感は少なくなり、従来の綿ハンカチと同様な新規性に欠ける商品となった。
(実験例7)
綿100%スライバの状態で低濃度の水酸化ナトリウム水溶液による精練、亜塩素酸ナトリウムによる精練漂白を精練処理液がイン→アウトに循環するように実施した。脱水、オイリングを施した後、絹生糸(きいと)28中9諸撚糸(280デシテックス相当)が周囲を捲回するようにLeesona−カバースパン方式による交撚糸を作成した。綿と絹の複合該交撚糸を経緯糸双方に用いて製織し生機を得た後、マルセル石鹸による絹精練(脱セリシン)を実施した。脱セリシン後における綿と絹の複合比率は質量比でそれぞれ9.0質量%:91.0質量%である。続いて反応染料により浴温80℃で染色を施し得られた生地を用いてハンカチを縫製した。鮮明色及び同色性に優れ、光沢にも優れた商品となったが、綿混率が少ない為、湿潤時強力が不十分となり、ハンカチとして好ましいものにはならなかった。
本発明は、ハンカチ、布巾、タオル、カーテン、テーブルクロス、ベッドカバー、枕カバー、ブックカバー、ランプシェード、タペストリー、鞄、靴などに用いられる交撚糸およびその製造方法として好適である。

Claims (5)

  1. 絹生糸および/またはプロミックスを含む糸条Aを、植物繊維を含む糸条Bに捲回して構成された未精練の交撚糸を精練して得られる交撚糸であって、前記交撚糸の総質量の5質量%以上60質量%以下が練絹および/または精練されたプロミックスであり、前記交撚糸の総質量の10質量%以上90質量%以下が、漂白及び/又はマーセル化処理された植物繊維であることを特徴とする交撚糸。
  2. 前記植物繊維が綿である請求項1に記載の交撚糸。
  3. 請求項1または2に記載の交撚糸の製造方法であって、絹生糸および/またはプロミックスを含む糸条Aを、予め漂白及び/又はマーセル化処理した植物繊維を含む糸条Bに捲回して交撚し、絹生糸の精練条件で精練することを特徴とする交撚糸の製造方法。
  4. 絹生糸および/またはプロミックスを含む糸条Aを、予め漂白及び/又はマーセル化処理した植物繊維を含む糸条Bに捲回して交撚し、得られた未精練の交撚糸を製編織した生機を、絹生糸の精練条件で精練することを特徴とする編織物の製造方法。
  5. 前記精練後に、染色する請求項に記載の編織物の製造方法。
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