JP6162566B2 - 織編物 - Google Patents

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Description

本発明は、リヨセル繊維を含む織編物に関する。
リヨセル繊維は、他の再生セルロース繊維であるレーヨンやキュプラ等に比べ強度が高く、風合いがソフトであることから、様々な衣料用途に使用されている。特に、光沢による上品な外観、ドレープ性、肌に心地よい感触、優れた発色性等、機能性とデザイン性を衣料に与えることから、ニーズが増加している。
近年、インナーシャツ、インナーパンツ等のインナー衣料は、例えば、デザイン性を持たしたステテコが流行しているように、機能性に加えてデザイン性が重視される傾向がある。そこで、機能性とデザイン性を付与するため、リヨセル繊維を用いたインナー衣料が注目されている。しかし、リヨセル繊維は、繊維長軸方向に分子が高度に配列しているため繊維が裂けてフィブリル化しやすく、特に湿潤状態においてフィブリル化しやすい欠点があり、フィブリル化した繊維が絡んでピリングが発生しやすいという問題があった。
リヨセルの湿潤状態におけるフィブリル化を抑える方法として、1分子中に2〜4個のクロルヒドリン基を有する化合物と、1分子中に2〜4個のグリシジル基を有する化合物と、水溶液中でアルカリ性を示す化合物と中性塩とからなる反応促進剤とを含む水溶液中で処理する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許4015289号公報
上記特許文献1に開示されている方法は、染色仕上げ工程中におけるフィブリル化、繰り返し洗濯によるフィブリル化等、湿潤状態におけるフィブリル化の抑制に有効である。しかし、例えばインナー衣料のように繰り返し着用による激しい摩擦等が与えられる用途においては、織編物の表面の繊維が摩擦等によって毛羽が立ち、この毛羽が更に絡み合い、小さな球状のかたまり(ピル)が生じることを抑制する機能(ピリング性)のさらなる向上が求められている。
本発明は、ピリング性に優れるリヨセル繊維を含む織編物、該織編物を用いたインナー衣料、及び該織編物の製造方法の提供を課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、リヨセル繊維の架橋処理について詳細に検討し、特定の2以上の処理剤で架橋することにより、インナー衣料のような繰り返し着用による激しい摩擦等が与えられる用途等においても適用が十分可能なピリング性に顕著に優れる織編物が得られることを見出した。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)リヨセル繊維を含む織編物であって、前記リヨセル繊維が、ジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物と、グリオキザール樹脂とによって架橋処理されたものであることを特徴とする織編物。
(2)前記リヨセル繊維が、綿の状態で前記ジグリシジルエーテル系化合物、前記ハロゲンヒドリン系化合物、前記ジイソシアネート系化合物、及び前記ポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物によって架橋処理されたものである前記(1)に記載の織編物。
(3)前記リヨセル繊維が、織編物の状態で前記グリオキザール樹脂によって架橋処理されたものである前記(2)に記載の織編物。
(4)シリコーン樹脂を含む前記(1)〜(3)のいずれかに記載の織編物。
(5)ピリングがJIS L−1076のICI法5時間評価で3級以上である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の織編物。
(6)金属酸化物、アミン化合物及びカチオン系アミン化合物を含む前記(1)〜(5)のいずれかに記載の織編物。
(7)社団法人繊維評価技術協議会の消臭加工繊維製品認定基準の消臭性測定法におけるアンモニア消臭率が70%以上、酢酸消臭率が80%以上、イソ吉草酸消臭率が85%以上、ノネナール消臭率が75%以上である前記(6)に記載の織編物。
(8)インナー衣料用である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の織編物。
(9)前記(1)〜(8)のいずれかに記載の織編物を用いたインナー衣料。
(10)前記ジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物にて架橋処理されたリヨセル繊維を含む織編物を、グリオキザール樹脂を含む水分散液に含浸した後に乾燥する、ことを特徴とする前記(1)記載の織編物の製造方法。
本発明によれば、前記特定の処理剤で架橋することによりピリングに顕著に優れる織編物を提供することができる。そして、本発明の織編物を用いることにより、ピリング性に優れたインナー衣料を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、ピリング性に優れる織編物を製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の織編物は、リヨセル繊維を含む。
本発明において、リヨセル繊維は、木質パルプを有機溶剤で溶解し乾湿式法で紡糸して得られる繊維である。木質パルプは、アカマツ、エゾマツ、モミ、スギ等から得られた針葉樹パルプ、ケヤキ、ブナ、ユーカリ等から得られた広葉樹パルプが挙げられる。また、有機溶剤は、アミンオキシド系溶剤であり、酸化ジメチルエタノールアミン、酸化トリエチルアミン、N−酸化−(ヒドロキシ−2−プロポキシ)−2−N,N−ジメチルアミン、N−酸化N−メチルモルフォリン、N−酸化N−メチルピペリジン、N−酸化N−メチルピロリジン、N−酸化−ジ−N−メチルシクロヘキシルアミン、N−酸化−ジメチルヘキシルアミン、N−酸化−N,N−ジメチルベンジルアミン等が挙げられる。本発明に用いるリヨセル繊維は、ユーカリから得られた木質パルプをN−酸化N−メチルモルフォリンの水溶液に溶解させて紡糸原液とし、N−酸化N−メチルモルフォリンの希薄溶液中に押出、繊維化したものが好ましい。
本発明の織編物はリヨセル繊維を含む紡績糸によって構成されるが、リヨセル繊維の他に綿、麻、羊毛等の天然繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリル等の合成繊維、又は他の再生セルロース繊維を混用することができる。混用の方法としては、混紡、交撚、精紡交撚、交編等一般的に用いられている方法が挙げられる。リヨセル繊維の混用率としては、50質量%以上が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、70〜100%がさらに好ましい。これにより、得られる織編物は、いっそう柔軟な風合となる。
本発明において、リヨセル繊維は、ジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物(以下、第一架橋剤と呼ぶことがある。)と、グリオキザール樹脂(以下、第二架橋剤と呼ぶことがある。)とによって架橋処理されたものであることが必要である。
本発明において、ジグリシジルエーテル系化合物としては、グリシジル基を分子内に2個有するエーテル系化合物であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
本発明において、ハロゲンヒドリン系化合物としては、エポキシ基とハロゲンを分子内に含む化合物であれば特に限定されないが、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ポリエチレングリコールジクロルヒドリン等が挙げられる。いっそうのフィブリル化抑制の観点から、ポリエチレングリコールジクロルヒドリンが好ましい。
本発明において、ジイソシアネート系化合物としては、イソシアネート基を分子内に2個有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
本発明において、ポリカルボン酸としては、カルボキシル基を分子内に2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸等が挙げられる。
本発明においては、第一架橋剤として、分子内にエポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基など、リヨセル繊維の分子内の水酸基と反応する官能基を有するものを用いることにより、リヨセル繊維を強固に架橋することができる。強固に架橋する観点から、エポキシ基を有するジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物がいっそう好ましい。
本発明において、グリオキザール樹脂としては、グリオキサールユニットを有する樹脂であれば特に限定されないが、一般に低ホルマリン系樹脂と呼ばれているジメチロールグリオキザール尿素系樹脂、一般にノンホルマリン樹脂と呼ばれているジメチルグリオキザール尿素系樹脂が挙げられ、特にジメチルグリオキザール尿素系樹脂が好ましい。ジメチルグリオキザール尿素系樹脂としては、例えば、1,3−ジメチル−4,5−ジヒドロキシエチレン尿素が挙げられる。
特許文献1に開示されている方法は、1分子中に2〜4個のクロルヒドリン基を有する化合物と、1分子中に2〜4個のグリシジル基を有する化合物とによってリヨセル繊維を架橋するので、染色仕上げ工程中におけるフィブリル化、繰り返し洗濯によるフィブリル化等、湿潤状態におけるフィブリル化の抑制に有効である。しかし、インナー衣料等激しい摩擦が起こる用途においては、湿潤状態におけるフィブリル化を抑制するのみでは、ピリングの発生を十分に抑制することができなかった。これに対し、本発明は、ジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物と、グリオキザール樹脂とによってリヨセル繊維を架橋処理することにより、ピリング性に顕著に優れ、インナー衣料用途等にも好適に用いることができることを見出したものである。加えて、後述するように、ジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物を用いることにより、織編物の染色性及び柔軟性が優れたものとなりやすい。
中でも、ハロゲンヒドリン系化合物とグリオキザール樹脂のみによって架橋処理した場合、ピリング性の耐洗濯性が向上するため特に好ましい。
リヨセル繊維が、綿の状態でジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物によって架橋処理されたものであることが好ましい。綿の状態とは、バラ毛、ステープルファイバーの形態の繊維を対象としている。これにより、染色工程のみならず、リヨセル繊維の紡績工程、製織編工程におけるリヨセル繊維のフィブリル化をより抑制しやすくなり、得られる織編物はよりピリング性に優れたものとなりやすくなる。
リヨセル繊維が綿の状態でジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物によって架橋処理されたものであることに加え、さらに、織編物の状態でグリオキザール樹脂によって架橋処理されたものであることが好ましい。リヨセル繊維を織編物の状態で架橋処理することにより、綿の状態での架橋処理との相乗作用でピリング性をさらに向上させることができる。
本発明において、グリオキザール樹脂の含有量は、リヨセル繊維質量に対し1〜5質量%の範囲が好ましい。該含有量が1〜5質量%とすることにより、得られる織編物のピリング性が優れたものとしつつ、摩耗強力が優れたものとしやすくなる。
前記第一架橋剤と前記第二架橋剤の比率は特に限定されないが、良好な架橋の観点から、第一架橋剤:第二架橋剤の比率が、1:3〜3:1であることが好ましく、1:2〜2:1であることがより好ましく、1:1がいっそう好ましい。
グリオキザール樹脂によってリヨセル繊維を架橋させる際、反応促進のために有機アミン塩、塩化マグネシウム、硝酸亜鉛、ホウフッ化亜鉛、硝酸マグネシウム、塩化亜鉛等の金属塩、有機酸等の触媒を使用することが好ましい。
本発明の織編物は、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。シリコーン樹脂としては、例えば、アミノ変性シリコーン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、アミド変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、フェニルメチルシリコーンが挙げられる。
本発明においてはグリオキザール樹脂を架橋剤として用いるが、シリコーン樹脂を含むことにより、ピリング性と柔軟性を両立しやすくなり、インナー衣料用途にさらに好適に用いることができやすくなる。また、後述するように、消臭性の機能を付与すべく、織編物が金属酸化物、アミン化合物を含むものとする場合は、金属酸化物、アミン化合物を織編物に付着せしめるバインダーとしての機能も発揮することができる点でも好ましい。
本発明において、織編物の質量に対するシリコーン樹脂の含有量としては、織編物に柔軟性を付与する観点と、金属酸化物、アミン化合物を織編物に付着せしめるバインダーとしての機能を発揮する観点とから、1〜10質量%が好ましい。
本発明の織編物は、ピリングがJIS L−1076のICI法5時間評価で3級以上であることが好ましく、4級以上であることがより好ましい。第一架橋剤や第二架橋剤の種類、量などを適宜調整することにより、該3級以上を達成することができる。
本発明の織編物は、金属酸化物、アミン化合物及びカチオン系アミン化合物を含むことが好ましい。これにより、アンモニア消臭性、酢酸消臭性、イソ吉草酸消臭性、ノネナール消臭性により優れたものとなる。
例えばインナー衣料用途においては、身体から発生する汗臭や加齢臭を軽減する消臭性が求められおり、特に中高年の男性に発生しやすいとされている加齢臭の成分であるノネナールの消臭性と、汗臭の成分であるンモニア、酢酸、イソ吉草酸の消臭性が強く望まれている。特に、リヨセル繊維を含む織編物を用いたインナー衣料は、デザイン性を持たすことが可能となり、例えば近年のオシャレステテコのようにカジュアルな外出着としても着用され得る。従って、リヨセル繊維を含む織編物は、特に上記消臭性が強く望まれる。そこで、本発明の織編物は、金属酸化物、アミン化合物及びカチオン系アミン化合物を含むことにより、カジュアルな外出着としても着用され得るインナー衣料用途としても特に好適に用いることができやすくなる。
本発明において、金属酸化物は、特に塩基性ガスであるアンモニアの分解と酸性ガスである酢酸、イソ吉草酸の分解を行い、織編物にアンモニア、酢酸及びイソ吉草酸に対する消臭性を付与しやすくなる。金属酸化物は、両性金属酸化物、酸性金属酸化物及び塩基性金属酸化物からなる群より選ばれた1種以上の金属酸化物を用いることが好ましい。両性金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化錫等を挙げることができ、塩基性金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が挙げることができ、酸性金属酸化物としては、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化鉄等を挙げることができる。中でも、本発明では、塩基性ガス、酸性ガスの消臭性の観点から、両性金属酸化物を含有することが好ましい。金属酸化物の含有量は織編物質量に対して0.1〜10質量%が好ましい。
本発明において、アミン化合物は、特に加齢臭の主要因である不飽和アルデヒドの一種のノネナールと反応し、後述するカチオンアミン化合物と併用することにより、織編物にノネナールに対する消臭性を付与しやすくなる。アミン化合物としては、ヒドラジン化合物が好ましい。ヒドラジン化合物は、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジドが好ましい。また、アミン化合物は、前記した金属酸化物とは別に、金属酸化物を複合化したものであってもよい。アミン化合物の含有量は織編物質量に対して0.1〜10質量%が好ましい。
前述のように、上記金属酸化物及びアミン化合物は、シリコーン樹脂をバインダーとして織編物に付着させることが好ましい。すなわち、本発明の織編物は、金属酸化物及びアミン化合物を含むシリコーン樹脂層を含むことが好ましい。これにより、本発明の織編物は、ピリング性と、柔軟性と、アンモニア消臭性、酢酸消臭性、イソ吉草酸消臭性、ノネナール消臭性とを同時に備えたものとしやすくなることに加え、アンモニア消臭性、酢酸消臭性、イソ吉草酸消臭性、ノネナール消臭性を持続させやすくなり、インナー用途に特に好適なものとしやすくなる。
本発明において、カチオン系アミン化合物は、前述したアミン化合物と併用することにより、織編物にノネナールに対する消臭性を付与しやすくなる。カチオン系アミン化合物とは、アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物であるアミンの中の第四級アンモニウム基を含むものであり、具体的には、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、モノアリルアミン塩酸塩重合物、ジアリルアミン塩酸塩重合物等である。例えば、市販品としては、センカ株式会社製商品名チェーエルカットCF−2、一方社油脂工業株式会社製商品名パンフィックスHF−2、ニットーボーメディカル株式会社商品名ダンフィックスRE等が挙げられる。
上記カチオン系アミン化合物は、前述の金属酸化物及びアミン化合物を含むシリコーン樹脂層の表面に付着させることが好ましく、カチオン系アミン化合物が最外層となるように付着させることが特に好ましい。これにより、ノネナール消臭性が特に優れたものとなりやすくなる。上記カチオン系アミン化合物は、前述の金属酸化物及びアミン化合物を含むシリコーン樹脂層の表面に付着させるには、精練、染色を行ったリヨセル繊維を含む織編物に、シリコーン樹脂、金属酸化物及びアミン化合物を含む水分散体を含浸、乾燥させて金属酸化物及びアミン化合物を含むシリコーン樹脂層を形成し、該シリコーン樹脂層が形成された織編物にカチオン系アミン化合物を含む水分散体を含浸、乾燥させることにより可能となる。
本発明の織編物は、社団法人繊維評価技術協議会の消臭加工繊維製品認定基準の消臭性測定法におけるアンモニア消臭率が70%以上、酢酸消臭率が80%以上、イソ吉草酸消臭率が85%以上、ノネナール消臭率が75%以上であることが好ましい。上記消臭率とするには、上記のようにカチオン系アミン化合物を前述の金属酸化物及びアミン化合物を含むシリコーン樹脂層の表面に付着させることによりさらに容易となる。
織編物の組織、密度は、特に限定されない。編物の組織として、例えば、天竺、鹿の子、スムース等を挙げることができる。織物の組織として、例えば、平織、綾織、朱子織等およびその変化組織を挙げることができる。
本発明の織編物は、リヨセル繊維を含み、ピリング性に優れることから、インナー衣料用途に好適に用いることができる。インナー衣料としては、例えば、スリップ、ショーツ、ネグリジェ、ニューインナーなどのランジェリー類、ブラジャー、ガードルなどのファンデーション類、肌着などの各種下着シャツ類、ステテコ、キャミソール等が挙げられる。
次に、本発明の製造方法について一例に基づいて説明する。
本発明では、例えば、リヨセル繊維を綿の状態で架橋処理を行う。架橋処理液に含有させる架橋剤としては、ジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物を用いる。これにより、紡績工程、製織編工程、精練工程、染色工程においても、リヨセル繊維のフィブリル化の発生を低減することができ、得られる織編物はピリング性により優れたものとなる。
架橋処理に際し、上記化合物と、水に溶解させるとアルカリ性を示す化合物と、強酸と強塩基との中性塩からなる反応促進剤を用いることが好ましい。水に溶解させるとアルカリ性を示す化合物としては、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の弱酸と強塩基とのアルカリ性塩等を挙げることができ、使用濃度は、反応させるクロルヒドリン基およびグリシジル基と等モル%の塩基を用いる。強酸と強塩基の中性塩としては、硫酸、硝酸、塩酸等の強酸とナトリウム、カリウム、リチウム等の強塩基とからなる中性塩を挙げることができ、使用量は30〜150g/リットルが適当である。
架橋処理方法は、リヨセル繊維を綿の状態で20〜30℃の常温の処理液に浸漬した後、絞り率70〜100%の範囲で絞り、20〜30℃の室温で5〜24時間放置して架橋を完了させるウェットキュア法、あるいは20〜30℃の常温の処理液に浸漬した後、絞り率70〜100%の範囲で絞り、乾燥し、120〜150℃の温度範囲で時間1〜10分の熱処理によって架橋を完了させるドライキュア法、更には60〜100℃の処理浴に10〜90分の浸漬処理で架橋完了させる浸漬法によりおこなうことができる。なお、架橋処理の浸漬は、バラ毛染色機、オーバーマイヤー染色機等の処理機を用いることができる。
次に、綿の状態で架橋処理したリヨセル繊維を紡績糸とする。本発明において、紡績方法は限定されるものでなく、開繊をおこなう混打綿工程、繊維の除塵と平行化をおこなう梳綿工程、太い繊維束に均斉化する練糸工程、ドラフトを掛け繊維束を細くする粗紡工程、ドラフトを掛けながら撚りを掛ける精紡工程を経て紡績糸とするような、一般的な方法でおこなうことができる。
架橋処理したリヨセル繊維を含む紡績糸を用い製織編した織編物に精練、染色を施した後、グリオキザール樹脂及びシリコーン樹脂を含む水分散液に含浸、乾燥することができる。これにより、得られる織編物はピリング性により優れたものとなる。また、ジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物による架橋処理を綿の状態でおこない、かつ、グリオキザール樹脂による架橋処理を染色後におこなうことにより、得られる織編物は染色性がより優れたものとなる。この理由として、ジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物はリヨセル繊維の染色性を向上させ、グリオキザール樹脂はリヨセル繊維の染色性を低下させる傾向があるので、上記のように染色工程を挟み2段で架橋処理することで、いっそう染色性が向上し得る。
また、グリオキザール樹脂で架橋した織編物は風合いが固くなる傾向があるところ、シリコーン樹脂を含むことにより、ピリング性と柔軟性の両立がしやすくなる。
グリオキザール樹脂及びシリコーン樹脂を含む水分散液には、金属酸化物及びアミン系化合物を含有させることができる。シリコーン樹脂、金属酸化物及びアミン系化合物を含有する水分散液に織編物を含浸、乾燥させることにより、金属酸化物及びアミン系化合物をシリコーン樹脂をバインダーとして強固に織編物に付着させることができ、消臭性を維持しやすくなる。
グリオキザール樹脂及びシリコーン樹脂を含む水分散液は、アニオン性あるいはアニオン・ノニオン性であることが望ましい。これにより、後述するカチオン系アミン化合物が織編物に付着しやすくなる。
グリオキザール樹脂及びシリコーン樹脂を含む水分散液に含浸、乾燥させた織編物に、さらにカチオン系アミン化合物を含む水分散液を含浸して乾燥することができる。このように2段処理とすることにより、カチオン系アミン化合物が最外層となるように織編物に付着させることができ、ノネナールに対する消臭性が特に優れたものとなる。なお、処理液の織編物への浸透性向上のために、ノニオン系界面活性剤をグリオキザール樹脂及びシリコーン樹脂を含む水分散液、及び/またはカチオン系アミン化合物を含む水分散液に含有させることができる。
前述したグリオキザール樹脂及びシリコーン樹脂を含む水分散液、及びカチオン系アミン化合物を含む水分散液への含浸、乾燥は、例えば、パッドドライ法にておこなうことができる。パッドドライ法において、パディング時の絞り率は80〜110%の範囲が好ましい。また、乾燥は、温度80〜150℃、時間1〜10分が好ましい。また、グリオキザール樹脂及びシリコーン樹脂を含む水分散液への含浸、乾燥工程において、乾燥の後に温度160〜170℃、時間30〜300秒の範囲の熱処理を施した場合、ピリング性の耐洗濯性が向上するので好ましい。
以下、実施例および比較例によって、本発明を具体的に説明する。なお、実施例、比較例における評価方法は下記の通りである。
1.消臭性
社団法人繊維評価技術協議会の消臭加工繊維製品認定基準(JED301)の方法に従い、アンモニア消臭率と酢酸消臭率は検知管法により、イソ吉草酸消臭率とノネナール消臭率はガスクロマトグラフィー法により、試料として、得られた編物と、JEC326「SEKマーク繊維製品の洗濯マニュアル」に従い洗剤としてJAFET標準配合洗剤を用い10回洗濯をおこなった編物とを用いて、アンモニア消臭率、酢酸消臭率、イソ吉草酸消臭率、ノネナール消臭率を求めた。アンモニア消臭率は70%以上、酢酸消臭率は80%以上、イソ吉草酸消臭率は85%以上、ノネナール消臭率は75%以上を合格とした。
2.ピリング性
得られた編物について、JIS L 1076:2006 A法に従い評価した。3級以上を合格とした。
3.柔軟性
得られた編物の風合い(柔軟性)について、5人のパネラーによる官能評価を行った。各々の試料で風合いが良好なもの(柔らかい)を10点満点として1〜10点の10段階で評価し5人の平均値を算出し、下記基準により評価し、○以上を合格とした。
◎:7点以上
○:5点以上7点未満
×:5点未満
(実施例1)
リヨセル繊維(レンチング社製、単糸繊度1.5デシテックス、繊維長38mm)を用い、ステープルファイバーの状態で常法に従い精練を行った後、オーバーマイヤー染色機(日阪製作所社製)にて浴比1:10で下記処方1により90℃×45分の架橋処理を行い、綿の状態で架橋処理されたリヨセル繊維を得た。
<処方1>
ポリエチレングリコールジクロルヒドリン :30g/l
水酸化ナトリウム :6.5g/l
無水芒硝 :140g/l
架橋処理されたリヨセル繊維を原綿として、混打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡をおこない、50番手のリヨセル繊維紡績糸とした。得られた紡績糸を用いて28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて天竺組織の目付130g/m2の編物とした。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、常圧染色機スイングエース(ニッセン社製)にて浴比1:30で下記処方2により80℃×60分の染色を行い、グレー色の編物とした。
<処方2>
Kayacion Yellow E−SNA(日本化薬社製:反応染料)
:0.045%o.w.f
Kayacion Brown E−NR(日本化薬社製:反応染料)
:0.235%o.w.f
Kayacion Blue A−B(日本化薬社製:反応染料)
:0.092%o.w.f
無水芒硝:40g/l
炭酸ナトリウム:20g/l
次に、下記処方3の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。
<処方3>
デナシスY−UMN(長瀬カラーケミカル社製:酸化亜鉛水分散体 アニオン性)
:60g/l
ザオバタックSW(大和化学工業社製:アミン化合物担持無機金属塩水分散体 ノニオン性):60g/l
KM2002T(信越化学工業社製:シリコーン樹脂エマルジョン アニオン性)
:60g/l
ユニレジンNF−174J(ユニオン化学工業社製:グリオキザール樹脂)
:30g/l
ユニカカタリストJS−30(ユニオン化学工業社製:グリオキザール樹脂用触媒)
:10g/l
次いで、下記処方4の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工した編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
<処方4>
チューエルカットCF−2(センカ社製:アミン化合物 カチオン性):20g/l
(実施例2)
実施例1と全く同一方法で得られたリヨセル繊維紡績糸と、84デシテックス72フィラメントのポリエステル加工糸を用い、28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて、リヨセル繊維紡績糸の混用率70質量%、ポリエステル加工糸の混用率30質量%のジャガード組織の目付150g/m2のジャガード柄編物を得た。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、液流染色機サーキュラー(日阪製作所社製)にて浴比1:20で下記処方5により130℃×30分の染色を行い、まずポリエステル加工糸をブルーに染色した。次に下記処方6により80℃×60分の染色を行い、架橋処理されたリヨセル繊維をネービーに染色しブルー/ネービーに配色された編物を得た。
<処方5>
Kayalon poly Blue EBL−E(日本化薬社製:分散染料)
:0.2%o.w.f
ニッカサンソルトSN−250E(日華化学社製:分散剤):0.5g/l
48%酢酸:0.1cc/l
<処方6>
Kayacion Navy E−NF(日本化薬社製:反応染料)
:3.5%o.w.f
無水芒硝:80g/l
炭酸ナトリウム:20g/l
次に、下記処方7の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。
<処方7>
デナシスY−UMN(長瀬カラーケミカル社製:酸化亜鉛水分散体 アニオン性)
:50g/l
ザオバタックSW(大和化学工業社製:アミン化合物担持無機金属塩水分散体 ノニオン性):50g/l
KT7014(高松油脂社製:シリコーン樹脂エマルジョン アニオン性)
:50g/l
リケンレジンMS−150(三木理研工業社製:グリオキザール樹脂):25g/l
リケンフィクサーMX−27N(三木理研工業社製:グリオキザール樹脂用触媒)
:8g/l
次いで、下記処方8の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
<処方8>
パンフィックスHF−2(一方社油脂工業社製:アミン化合物 カチオン性)
:20g/l
(実施例3)
実施例1と全く同一方法で得られたリヨセル繊維紡績糸と、84デシテックス36フィラメントのポリエステル加工糸と、22デシテックスモノフィラメントのポリウレタン弾性糸とを用い、28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて、リヨセル繊維紡績糸の混用率70質量%、ポリエステル加工糸の混用率25質量%、ポリウレタン弾性糸の混用率5質量%の天竺組織の目付130g/m2の編物を得た。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、液流染色機サーキュラー(日阪製作所社製)にて浴比1:20で前記処方5により130℃×30分の染色を行い、まずポリエステル加工糸をブルーに染色した。この際にポリウレタン弾性糸に汚染した分散染料は、下記処方9により80℃×30分で洗浄を行った。次に前記処方6により80℃×60分の染色を行い、架橋処理されたリヨセル繊維をネービーに染色しブルー/ネービーに配色された編物を得た。
<処方9>
ハイドロサルファイト:2g/l
水酸化ナトリウム:1g/l
サンモールFL(日華化学社製:非イオン界面活性剤):1g/l
次に、前記処方7の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。
次いで、前記処方8の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工した編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
(実施例4)
リヨセル繊維(レンチング社製、単糸繊度1.5デシテックス、繊維長38mm)を用い、ステープルファイバーの状態で常法に従い精練を行った後、オーバーマイヤー染色機(日阪製作所社製)にて浴比1:10で前記処方1により90℃×45分の架橋処理を行い、綿の状態で架橋処理されたリヨセル繊維を得た。
架橋処理されたリヨセル繊維を原綿として、混打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡をおこない、50番手のリヨセル繊維紡績糸とした。得られた紡績糸を用いて28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて天竺組織の目付130g/m2の編物とした。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、常圧染色機スイングエース(ニッセン社製)にて浴比1:30で前記処方2により80℃×60分の染色を行い、グレー色の編物とした。
次に、前記処方3の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い、編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
(実施例5)
リヨセル繊維(レンチング社製、単糸繊度1.5デシテックス、繊維長38mm)を用い、ステープルファイバーの状態で常法に従い精練を行った後、オーバーマイヤー染色機(日阪製作所社製)にて浴比1:10で前記処方1により90℃×45分の架橋処理を行い、綿の状態で架橋処理されたリヨセル繊維を得た。
架橋処理されたリヨセル繊維を原綿として、混打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡をおこない、50番手のリヨセル繊維紡績糸とした。得られた紡績糸を用いて28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて天竺組織の目付130g/m2の編物とした。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、常圧染色機スイングエース(ニッセン社製)にて浴比1:30で前記処方2により80℃×60分の染色を行い、グレー色の編物とした。
次に、下記処方10の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。なお、シリコーン樹脂は含有させなかった。
<処方10>
デナシスY−UMN(長瀬カラーケミカル社製:酸化亜鉛水分散体 アニオン性)
:60g/l
ザオバタックSW(大和化学工業社製:アミン化合物担持無機金属塩水分散体 ノニオン性):60g/l
ライトエポックAX−45(北広ケミカル社製:アクリル樹脂エマルジョン アニオン性):60g/l
ユニレジンNF−174J(ユニオン化学工業社製:グリオキザール樹脂)
:30g/l
ユニカカタリストJS−30(ユニオン化学工業社製:グリオキザール樹脂用触媒)
:10g/l
次いで、前記処方4の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工した編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
(比較例1)
リヨセル繊維(レンチング社製、単糸繊度1.5デシテックス、繊維長38mm)を用い、ステープルファイバーの状態で常法に従い精練を行い、リヨセル繊維を得た。なお、綿の状態での架橋処理はおこなわなかった。
得られたリヨセル繊維を原綿として、混打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡をおこない、50番手のリヨセル繊維紡績糸とした。得られた紡績糸を用いて28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて天竺組織の目付130g/m2の編物とした。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、常圧染色機スイングエース(ニッセン社製)にて浴比1:30で前記処方2により80℃×60分の染色を行い、グレー色の編物とした。
次に、前記処方3の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。
次いで、前記処方4の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
(比較例2)
リヨセル繊維(レンチング社製、単糸繊度1.5デシテックス、繊維長38mm)を用い、ステープルファイバーの状態で常法に従い精練を行った後、オーバーマイヤー染色機(日阪製作所社製)にて浴比1:10で前記処方1により90℃×45分の架橋処理を行い、綿の状態で架橋処理されたリヨセル繊維を得た。
架橋処理されたリヨセル繊維を原綿として、混打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡をおこない、50番手のリヨセル繊維紡績糸とした。得られた紡績糸を用いて28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて天竺組織の目付130g/m2の編物とした。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、常圧染色機スイングエース(ニッセン社製)にて浴比1:30で前記処方2により80℃×60分の染色を行い、グレー色の編物とした。
次に、下記処方11の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。なお、グリオキザール樹脂は含有させなかった。
<処方11>
デナシスY−UMN(長瀬カラーケミカル社製:酸化亜鉛水分散体 アニオン性)
:60g/l
ザオバタックSW(大和化学工業社製:アミン化合物担持無機金属塩水分散体 ノニオン性):60g/l
KM2002T(信越化学工業社製:シリコーン樹脂エマルジョン アニオン性)
:60g/l
次いで、前記処方4の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
実施例、比較例、参考例で得られた編物の評価結果を表1に示す。
実施例1〜5の編物は、リヨセル繊維がハロゲンヒドリン系化合物とグリオキザール樹脂とによって架橋処理されたものであり、特に、綿の状態でハロゲンヒドリン系化合物によって架橋処理され、かつ、編物の状態でグリオキザール樹脂によって架橋されたものであったことから、ピリング性に特に優れたものであった。そして、実施例1〜4の編物は、シリコーン樹脂を含むものであったことから、柔軟性に特に優れたものであった。また、実施例1〜3及び5の編物は、金属酸化物、アミン化合物及びカチオン系アミン化合物を含むものであり、特に、カチオン系アミン化合物が最外層となるように付着していたことから、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸及びノネナールの消臭性に特に優れたものであった。加えて、実施例1〜3の編物は、金属酸化物、アミン化合物及びカチオン系アミン化合物をシリコーン樹脂をバインダーとして含むものであったことから、洗濯後においても優れた消臭性を発揮するものであった。従って、実施例1〜3の編物は、インナー衣料用途として特に好適に用いることができるものであった。
一方、比較例1の編物は、リヨセル繊維がグリオキザール樹脂のみによって架橋処理されたものであったことから、ピリング性に劣るものであった。また、比較例2の編物は、リヨセル繊維がハロゲンヒドリン系化合物のみによって架橋処理されたものであったことから、ピリング性に劣るものであった。

Claims (10)

  1. リヨセル繊維を含む織編物であって、
    前記リヨセル繊維が、ジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物と、グリオキザール樹脂とによって架橋処理されたものであることを特徴とする織編物。
  2. 前記リヨセル繊維が、綿の状態で前記ジグリシジルエーテル系化合物、前記ハロゲンヒドリン系化合物、前記ジイソシアネート系化合物、及び前記ポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物によって架橋処理されたものである請求項1に記載の織編物。
  3. 前記リヨセル繊維が、織編物の状態で前記グリオキザール樹脂によって架橋処理されたものである請求項2に記載の織編物。
  4. シリコーン樹脂を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の織編物。
  5. ピリングがJIS L−1076のICI法5時間評価で3級以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の織編物。
  6. 金属酸化物、アミン化合物及びカチオン系アミン化合物を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の織編物。
  7. 社団法人繊維評価技術協議会の消臭加工繊維製品認定基準の消臭性測定法におけるアンモニア消臭率が70%以上、酢酸消臭率が80%以上、イソ吉草酸消臭率が85%以上、ノネナール消臭率が75%以上である請求項6に記載の織編物。
  8. インナー衣料用である請求項1〜7のいずれか1項に記載の織編物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の織編物を用いたインナー衣料。
  10. 前記ジグリシジルエーテル系化合物、ハロゲンヒドリン系化合物、ジイソシアネート系化合物、及びポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物にて架橋処理されたリヨセル繊維を含む織編物を、グリオキザール樹脂を含む水分散液に含浸した後に乾燥する、ことを特徴とする請求項1記載の織編物の製造方法。
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