JP2013221236A - ビニロン混紡糸布帛及びその製造方法 - Google Patents

ビニロン混紡糸布帛及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】難燃性を低下させることなく、セルロース系繊維に由来する衣料に適する風合を維持しつつ、加えて、優れた防縮性および防皺性が付与されたビニロン混紡糸布帛を提供する。
【解決手段】本発明のビニロン混紡糸布帛は、LOI値が32以上であるビニロン繊維とセルロース系繊維との混紡糸を用いてなる布帛であって、グリオキザール系樹脂とシリコーン系樹脂とにより樹脂加工されており、JIS L 0217 103法に基づく洗濯10回後の収縮率が3%以下であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、ビニロン混紡糸布帛及びその製造方法に関する。
様々な繊維において、その用途や目的に応じ、各種機能(例えば、難燃性、染色性、風合いや強度の向上など)を付与することが検討されており、このような機能が付与された繊維は幅広い分野で使用されている。繊維に付与される機能のなかでも、難燃性は、安全性や防炎性への要求という社会ニーズの増大に伴い、今や、欠かすことのできない重要な機能となっている。
従来から、難燃性を有する繊維が数多く上市されており、産業資材から衣料までの幅広い分野で使用されている。そして、衣料分野に用いられる繊維においては、難燃性以外の機能、例えば、着用性に係わる風合い、吸湿性、染色性、安全衛生性、あるいは洗濯処理がほどこされた後の寸法安定性や防皺性などの機能も同時に求められている。
このような難燃性を有する繊維の具体例としては、繊維を形成するポリマー自体が難燃性を有するものであるアラミド繊維、難燃性モノマーが共重合されたアクリルやポリエステルからなる繊維(アクリル繊維、ポリエステル繊維)、難燃加工がほどこされた木綿やウールなどが挙げられる。
ここで、アラミド繊維は高い難燃性を有しているものの、染色性に問題があるとともにコストが高いという欠点がある。また、アクリル繊維は、燃焼される際に、強い毒性を有するシアンガスが発生するため、安全面における悪影響がある。ポリエステル繊維は、難燃性にやや劣るものであり、燃焼される際にメルトドリップ(溶液落下物)が発生するという問題がある。また、難燃加工がほどこされた木綿やウールなどにおいては、洗濯後における難燃性の耐久性(難燃性の洗濯耐久性)に劣ったり、染色堅牢度や繊維強度にやや劣ったりするという問題がある。
また、難燃性を有する繊維として、難燃性が付与されたビニロン繊維(難燃ビニロン繊維)も用いられている。難燃ビニロン繊維は、風合い、洗濯収縮性や防皺性に劣るという問題を有するものの、染色が可能であり、ドリップなどの燃焼時の問題も少なく、さらに難燃性の洗濯耐久性に優れるため、衣料分野において有用な素材である。
このような現状の下、難燃性を有する繊維に対して、衣料用途に適した機能性を付与することが強く望まれており、つまり該繊維の各種特性を改良することが種々提案されている(例えば、特許文献1〜3)。特許文献1および特許文献2においては、難燃性、親水性などの難燃ビニロン繊維が有する長所を損なうことなく、耐摩耗性などの一般的な物性を改善することを目的とし、種々の改良が検討されている。また、特許文献3においては、難燃性および乾湿寸法安定性を改良することが検討されている。
一方、特許文献4においては、セルロース系繊維を主体とした布帛に対し、洗濯収縮性を改善することが検討されている。さらに、特許文献5においては、風合い、吸湿性および染色性などの該セルロース系繊維が本来有する物性を維持しつつ、強力の低下が抑制され、さらに防縮性が優れたセルロース系繊維を得ることについての検討がされている。
ここで、特許文献1、特許文献2および特許文献3のいずれにおいても、難燃ビニロン繊維を製造する際の原料ポリマー(ポリビニルアルコールやポリ塩化ビニルなど)と、錫化合物およびアンチモン化合物などの難燃助剤とを、特定の組成で配合することにより、ビニロン繊維の難燃性を阻害することなく、各種物性を改良することを試みたものである。しかしながら、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載された難燃ビニロン繊維においては、布帛とされた場合の洗濯後における防縮性や防皺性は改善されておらず、衣料用途に適するものではないという問題がある。
さらに、特許文献4には、セルロース系繊維布帛に対し、グリオキザール系樹脂を用いる化学的防縮加工と、圧縮収縮加工機を用いる物理的防縮加工とを併用することにより、防縮性を付与する技術が開示されている。しかしながら、この技術を難燃ビニロン繊維に対して適用したとしても、セルロース系繊維布帛に対して適用した場合と同等の防縮性および防皺性が得られないばかりか、洗濯後に風合いが大幅に硬化するという問題がある。
特許文献5には、酸化アンチモンを主体とする難燃剤が含有されたハロゲン含有繊維と、セルロース系繊維と、パラアラミド系繊維とから構成される複合糸が用いられてなる布帛が開示されている。特許文献5においては、パラアラミド系繊維を用いることにより、得られる布帛の強度低下を抑制することができる。しかしながら、特許文献5においては、該布帛の表面にパラアミド系繊維が混在するため、セルロース系繊維に由来する特性たる良好な風合いを大きく低下させてしまい、衣料分野には適さないという問題がある。
加えて、一般的に、難燃ビニロン繊維は、セルロース系繊維と比較すると、化学的防縮加工をおこなうことにより付与される防縮性および防皺性に劣るものである。また、難燃ビニロン繊維に化学的防縮加工をほどこすと、乾燥処理などによる加熱時に自重により伸びやすいという欠点がある。
特許第2571886号明細書 特許第2826136号明細書 特開平11−107044号公報 特開平4−163375号公報 特開平9−296335号公報
本発明は、このような現状に鑑み、難燃ビニロン繊維とセルロース系繊維との混紡糸を用いてなる布帛(ビニロン混紡糸布帛)において、難燃性を低下させることなく、セルロース系繊維に由来する風合いを維持しつつ、優れた防縮性および防皺性を有するビニロン混紡糸布帛の提供を目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)LOI値が32以上であるビニロン繊維とセルロース系繊維との混紡糸を用いてなる布帛であって、グリオキザール系樹脂とシリコーン系樹脂とにより樹脂加工されており、JIS L 0217 103法に基づく洗濯10回後の収縮率が3%以下であることを特徴とするビニロン混紡糸布帛。
(2)前記混紡糸におけるビニロン繊維の混率が55〜85質量%であることを特徴とする(1)のビニロン混紡糸布帛。
(3)前記グリオキザール系樹脂が布帛全質量に対し3〜10質量%の割合で付着していることを特徴とする(1)又は(2)のビニロン混紡糸布帛。
(4)前記シリコーン系樹脂が布帛全質量に対し1〜5質量%の割合で付着していることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかのビニロン混紡糸布帛。
(5)前記混紡糸が、芯部にビニロン繊維が配され、かつ鞘部にセルロース系繊維が配された芯鞘型二層構造をなしていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかのビニロン混紡糸布帛。
(6)グリオキザール系樹脂とシリコーン系樹脂とを含有する水溶液に布帛を含浸し、乾燥させ、次いで機械的防縮処理をほどこした後、150〜180℃の範囲でこれを熱処理することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかのビニロン混紡糸布帛の製造方法。
本発明によれば、LOI値が32以上であるビニロン繊維を用いているため、難燃性に優れるビニロン混紡糸布帛を得ることができる。さらに、該混紡糸は、セルロース系繊維を含有するものであるため、洗濯後も硬くなりづらく風合いのよいビニロン混紡糸布帛を得ることができる。
さらに、該ビニロン混紡糸布帛には、グリオキザール系樹脂およびシリコーン系樹脂が特定の割合で付与されているため、難燃ビニロン繊維の有する洗濯収縮しやすいという欠点が改良され、洗濯後においても皺の発現が抑制される(つまり、防縮性および防皺性に優れる)という効果が奏される。
さらに、本発明の製造方法によれば、布帛を機械的防縮処理した後に、グリオキザール系樹脂による繊維架橋が実施されるので、より防縮性に優れたビニロン混紡糸繊維布帛を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のビニロン混紡糸布帛は、LOI値が32以上であるビニロン繊維とセルロース系繊維との混紡糸を用いてなる布帛であって、グリオキザール系樹脂とシリコーン系樹脂とによる樹脂加工がほどこされてなるものである。さらに、このビニロン混紡糸布帛においては、家庭洗濯を10回繰り返した後の収縮率が3%以下であることを必須とする。
本発明において、ビニロン繊維は、優れた難燃性を有するビニロン繊維であることが必要である。つまり、該ビニロン繊維は32以上のLOI値を有することが必要であり、35以上のLOI値を有することが好ましい。ビニロン繊維のLOI値が32未満であると、難燃性に劣るビニロン混紡糸布帛しか得られない。
LOI値とは、繊維における限界酸素指数を意味するものであり、繊維の燃焼性を判断するための尺度である。一般的に、LOI値が21未満である繊維は、空気中(例えば、酸素の含有率が20.8質量%である空気中)で容易に着火し、急速に燃焼する繊維であることを示し、LOI値が26以上である繊維は、特に優れた難燃性を有する繊維であると言われている。また、通常のビニロン繊維におけるLOI値は19程度である。
翻って、本発明のビニロン混紡糸布帛には、セルロース系繊維が混用されている。ところが、セルロース系繊維は、一般に難燃性を具備しないものである。したがって、布帛に所定の難燃性を付与するには、LOI値を適宜手段により32以上に高めたビニロン繊維を用いる必要がある。つまり、布帛の難燃性を高めるには、セルロース系繊維の非難燃性をカバーする必要があり、そのためにLOI値が32以上のビニロン繊維を用いるのである。
なお、LOI値は、JIS K 7201に従って求められる。
LOI値32以上のビニロン繊維は、例えば、以下のようにして製造される。すなわち、ポリビニルアルコールとポリ塩化ビニルのポリマー成分を主体とし、これに粉末の錫化合物やアンチモン系化合物などの難燃助剤を混合し、混合液を得る。次いで、この混合液を公知の手段により紡糸した後、適宜な条件で延伸および熱処理をほどこし、さらに必要に応じてアルデヒド類が含有された酸性浴にてアセタール化処理する。その後、得られた繊維を適宜手段により短繊維化する。
ここで、ビニロン繊維を構成するポリビニルアルコールとポリ塩化ビニルとの質量比率、難燃助剤の含有比率や含有量などについては、本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択される。
本発明において、セルロース系繊維は、優れた染色性、防縮性、防皺性および風合いを発現させるために用いられるものである。セルロース系繊維を構成するセルロースは、以下のような高分子である。つまり、D−グルコース単位がβ(1→4)グリコシド結合を介して連なる縮合体であり、2個のD−グルコース単位が互い違いに裏返しに並んだ繰り返し立体構造を有する。
セルロース系繊維としては、綿や麻などの天然植物繊維;木材、綿、竹などを溶解した後に繊維化して得られたレーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテートなどの再生繊維などが挙げられる。
ビニロン繊維およびセルロース系繊維の単糸繊度や繊維長は、特に限定されるものではない。なかでも、単糸繊度は、コストや強度、あるいは混紡糸とされる際の生産性などの観点から、0.6〜4.2dtexの範囲であることが好ましい。また、繊維長は10〜50mmであることが好ましい。
そして、上述のビニロン繊維とセルロース系繊維とを適宜手段で混紡し、得られた混紡糸を使用して本発明の布帛を構成する。
該混紡糸において、LOI値が32以上であるビニロン繊維の混率は55〜85質量%の範囲であることが好ましく、60〜75質量%であることがより好ましい。ビニロン繊維の混率が55質量%未満であると、ビニロン混紡糸布帛の難燃性および強度が低下する傾向にある。一方、混率が85質量%を超えると、セルロース系繊維の混率が過少となるために、セルロース系繊維に由来する染色性、防縮性、防皺性および風合いの向上が期待できない傾向にある。
混紡糸の形態としては、特に限定されず、構成繊維(つまり、ビニロン繊維とセルロース系繊維)が均一に混紡された形態であってもよい。または、ビニロン繊維およびセルロース系繊維の各々が集合した状態で混紡されている形態であってもよい。あるいはビニロン繊維およびセルロース系繊維が芯鞘型の二層構造をなす形態(芯鞘型二層構造混紡糸)であってもよい。
上記の芯鞘型二層構造混紡糸とは、断面が芯鞘型の二層構造をなし、芯部に鞘部が捲回した構造をなすものである。
二層構造混紡糸としては、鞘部にセルロース系繊維が配され、芯部にビニロン繊維が配されてなるものであってもよい。あるいは、鞘部にビニロン繊維が配され、芯部にセルロース系繊維が配されてなるものであってもよい。また、芯部および鞘部のいずれか一方において、ビニロン繊維とセルロース系繊維が混紡されて用いられてもよい。
なかでも、得られるビニロン混紡糸布帛の染色性、風合いなどの観点から、芯部にビニロン繊維が配され、鞘部にセルロース系繊維が配された芯鞘型二層構造混紡糸を用いることが好ましい。なお、このような場合において、鞘部においてはビニロン繊維とセルロース系繊維が混紡されて用いられてもよい。他方、難燃性向上の観点では、鞘部にビニロン繊維が配されてなる芯鞘型二層構造混紡糸を用いることが好ましい。このような場合において、芯部にビニロン繊維とセルロース系繊維が混紡されて用いられてもよい。
上記のような芯鞘型二層構造紡績糸の製造方法としては、特に限定されるものではなく、カバーリング機を用いて製造する方法や、それぞれの繊維でまず繊維束を作製し、後に粗紡または精紡を通じて両者を芯鞘状に複合する方法などが挙げられる。
布帛の形態としては、織物であってもよいし、編物であってもよい。織物としては、平織組織、綾織組織あるいは朱子組織などの織物が挙げられる。これらの織物はエアージェット織機、レピア織機あるいはフライシャトル織機などを使用して得られる。また、編物としては、天竺、鹿の子あるいはスムースなどの編組織のものが挙げられる。これらの編物は丸編機、経編機などを使用して得られるものである。
なお、本発明における混紡糸の番手(英国式綿番手)、布帛の目付などは、特に限定されず、目的とされる用途に応じて適宜選択される。
また、該布帛においては、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、染色などの各種の加工がほどこされていてもよい。
さらに、本発明のビニロン混紡糸布帛には、グリオキザール系樹脂とシリコーン系樹脂とによる樹脂加工がほどこされている。
具体的には、グリオキザール系樹脂が、布帛を構成するビニロン繊維およびセルロース系繊維の水酸基と反応し、分子鎖間に架橋結合が生成されることにより、布帛において洗濯処理後の収縮やしわの発生を抑制するものである。加えて、シリコーン系樹脂とグリオキザール系樹脂とを併用することにより、布帛を構成する繊維間の潤滑性を向上させ、より柔軟な風合いの布帛とすることができる。
つまり、樹脂加工に際しシリコーン系樹脂とグリオキザール系樹脂とを併用することで、優れた風合い、防縮性および防皺性が同時に達成されたビニロン混紡糸布帛を得ることができる。なお、グリオキザール系樹脂以外の物質、例えば、メラミン系樹脂、メチロール尿素系樹脂、スルホン系樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂を用いて構成繊維間に架橋結合を生成させたとしても、繊維との反応性が低いために本発明の効果を奏することができない。
グリオキザール系樹脂としては、低ホルマリン系樹脂と呼ばれているジメチロールグリオキザール尿素系樹脂、ノンホルマリン樹脂と呼ばれているジメチルグリオキザール尿素系樹脂などが挙げられる。
グリオキザール系樹脂の付与量は、最終的に得られる布帛100質量%に対して3〜10質量%の範囲であることが好ましく、5〜8質量%であることがより好ましい。グリオキザール系樹脂の付与量が3質量%未満であると、防縮性および防皺性に劣るビニロン混紡糸布帛しか得られない場合がある。一方、10質量%を超えると、ビニロン繊維内部およびセルロース系繊維内部において架橋が進み過ぎ、強度の低下が生じる場合があるため好ましくない。なお、このような過度の架橋は、特に、セルロース系繊維において顕著に見受けられる。
グリオキザール系樹脂は、市販品を好適に使用することができ、例えば、住友化学社製「スミテックスレジンNS−11」、大日本インキ化学工業社製「ベッカミンLKS」などが入手可能である。
本発明においては、シリコーン系樹脂は、上述のように、柔軟な風合いのビニロン混紡糸布帛を得るために用いられる。シリコーン系樹脂の具体例としては、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、アミド変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーンおよびフェニルメチルシリコーンなどが挙げられる。
本発明のビニロン混紡糸布帛におけるシリコーン系樹脂の付与量は、最終的に得られる布帛100質量%に対して1〜5質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。シリコーン系樹脂の付与量が1質量%未満であると、風合いの硬いビニロン混紡糸布帛しか得られず、特に洗濯処理後の風合いが著しく硬化してしまう場合がある。一方、5質量%を超えて付与させても、風合い向上に対する効果が飽和してしまい、コストなどにおいて不利になる場合があるため好ましくない。
本発明のビニロン混紡糸布帛においては、LIS L 0217 103法(1995)に従って、10回洗濯を繰り返した後の収縮率が3%以下であることが必要である。本発明において該収縮率が3%以下であることは、優れた防縮性を有する布帛であることの指標となる。なお、この場合の10回洗濯とは、各洗濯が終了するごとに布帛を脱水、乾燥するものとし、乾燥はライン乾燥を採用する。ライン乾燥とは、脱水後、たて方向に垂直となるように布帛を数箇所つかみ、風通しのない場所にて吊るして乾燥させる方法をいう。
次に、本発明のビニロン混紡糸布帛の製造方法について説明する。
本発明のビニロン混紡糸布帛の製造方法は、グリオキザール系樹脂とシリコーン系樹脂とを含有する水溶液に、上述のような布帛を含浸し、次いで、乾燥、機械的防縮処理をほどこした後、150〜180℃の範囲でこれを熱処理するものである。
つまり、本発明の製造方法は、予め、布帛に対してグリオキザール系樹脂とシリコーン系樹脂とを付着させておき、機械的防縮処理で布帛を長さ方向に収縮させてから、熱処理をおこなうことによりビニロン繊維とセルロース系繊維をグリオキザール系樹脂で架橋するという工程を有するものである。このような手法を採用することにより、機械的防縮処理をほどこす前に生じた布帛の伸びを収縮させ、次いで熱処理によりグリオキザール系樹脂により架橋するため、優れた防縮性を効率的に得ることができる。
これに対し、従来から実施されている方法、すなわちグリオキザール系樹脂で繊維を架橋した後に機械的防縮処理すると、当該架橋前に布帛に付与された様々な伸びが、そのまま布帛に固定化される。そうすると、その後に布帛を機械的防縮処理しても、防縮効果は一時的なものとなるに過ぎず、洗濯耐久性に優れる防縮性を得ることができない。
水溶液に含浸する布帛とは、通常の方法や装置を用い、上述のような混紡糸から得られた織物あるいは編物である。
なお、このような布帛には、予め染色がほどこされていてもよい。染色をほどこす場合には、例えば、糊抜き精練、漂白、シルケットなどの処理をおこなった後、通常の染料や染色法を用い、染色をおこなえばよい。
染色の際に用いられる染料については、衣料用途にて求められる染色堅牢度および染色濃度に応じ、適宜選択することができる。一般的に、ビニロン繊維に対しては、スレン染料あるいは金属錯塩酸性染料などが好適に用いられる。また、セルロース系繊維に対しては、直接染料、反応染料あるいはスレン染料などが好適に用いられる。また、染色方法としては、連続染色法あるいはバッチ染色法などが挙げられる。
そして、グリオキザール系樹脂とシリコーン系樹脂とを含有する水溶液に上記のような布帛を含浸し、絞り、乾燥させた後に機械的防縮処理をほどこし、次いで熱処理をおこなう。
グリオキザール系樹脂を用いることにより、上述のように、布帛を構成する繊維中の水酸基と反応し、該繊維間において架橋構造を形成することで防皺性を発現させることができるという効果が奏される。ここで、該水溶液において、架橋反応をより促進するために、有機アミン塩、塩化マグネシウム、硝酸亜鉛、ホウフッ化亜鉛、硝酸マグネシウム、塩化亜鉛などの金属塩;あるいは有機酸などの触媒を含有させることが好ましい。
水溶液中のグリオキザール系樹脂の濃度は、例えば、含浸に際してパディング時の絞り率を60%程度に設定する場合であれば、30〜165g/lであることが好ましい。30g/l未満であると、本発明の製造方法にて得られたビニロン混紡糸布帛において、グリオキザール系樹脂の含有量が上述の範囲とならない場合がある。また、165g/lを超えて含有されても、グリオキザール系樹脂による架橋効果が飽和してしまい、コストなどにおいて不利な場合がある。
水溶液中のシリコーン系樹脂の濃度についても、例えば、含浸に際してパディング時の絞り率を60%程度に設定する場合であれば、20〜83g/lであることが好ましい。20g/l未満であると、本発明の製造方法にて得られたビニロン混紡糸布帛において、シリコーン系樹脂の含有量が上述の範囲とならない場合がある。また、83g/lを超えて含有されても、シリコーン系樹脂による風合い向上効果が飽和してしまい、コストなどにおいて不利な場合がある。
水溶液には、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、その他にも抗菌剤、消臭剤などの成分が含有されていてもよい。
グリオキザール系樹脂とシリコーン系樹脂とを含有する水溶液に対して布帛を含浸させる方法としては、通常のパッドドライ法などを用いればよい。含浸に際してパディング時の絞り率は、特に限定されるものではなく、例えば、60〜110%の範囲の絞り率であればよい。
次いで、布帛に対して乾燥をおこなう。乾燥の条件は特に限定されるものではなく、例えば、80〜140℃の温度で、1〜10分間おこなえばよい。なお、乾燥温度が140℃を超えると、機械的防縮処理前にグリオキザール系繊樹脂による架橋が起こってしまい、目的とする防縮性、防皺性を達成することができない場合がある。
乾燥後、機械的防縮処理をおこなう。機械的防縮処理とは、無端の肉厚ゴムベルトやフェルトの伸縮を利用し、布帛を圧縮させるとともに、長さ方向に収縮させておこなう防縮処理のことをいう。機械的防縮加工機の具体例としては、サンフォライズ加工機やカムフィット加工機などが挙げられる。
機械的防縮処理においては、長さ方向に5%以上圧縮して収縮させることが好ましい。圧縮率が5%未満であると、染色工程を経るまでに伸ばされた布帛に対する圧縮が不足し、優れた防縮性が得られない場合がある。
機械的防縮処理の後、熱処理をおこなう。熱処理は、ピンテンターなどの通常の熱処理機を用いておこなうことができる。熱処理時の温度条件は、150〜180℃の範囲であることが好ましく、160〜170℃の範囲であることがより好ましい。熱処理温度が150℃未満であると、グリオキザール系樹脂による架橋が十分におこなわれず、防縮性又は防皺性に劣るビニロン混紡糸布帛しか得られないことがある。一方、熱処理温度が180℃を超えると、ビニロン繊維が過度に加熱されることとなるため自重で伸びてしまい、かえって防縮性に劣るものとなることがある。なお、熱処理時間は、特に限定されるものではないが、例えば、30〜300秒間であればよい。
また、熱処理後に、再度の機械的防縮処理をおこなうと、より柔軟な風合いを有するビニロン混紡糸布帛が得られるという効果が奏される。
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
本発明の各種評価は、以下の方法によりおこなった。
(1)難燃性(LOI値)
JIS K 7201の酸素指数(LOI)法に従って、布帛のLOI値を測定し、難燃性を評価した。なお、布帛の場合、LOI値としては26以上が好ましく、この範囲を満足していると難燃性に優れる布帛と判定できる。
(2)防縮性(収縮率)
JIS L 0217 103法に従って布帛を10回洗濯後に脱水し、次いでライン乾燥をおこなった後、収縮率を測定し、防縮性を判断した。
(3)防皺性
JIS L 1096 A法に従って布帛を5回洗濯した後、ドリップ乾燥をおこなった。後に、洗濯後の皺を1級(劣)〜5級(優)の範囲で級判定することにより防皺性を判断した。なお、ドリップ乾燥とは、脱水することなく、たて方向が垂直になるように試料を数箇所つかみ、風通しのない場所で吊るして乾燥させる方法をいう。
(4)風合い(官能評価)
洗濯前のビニロン混紡糸布帛と、JIS L 0217 103法に従って10回洗濯繰り返した後、ドリップ乾燥した後のビニロン混紡糸布帛とを、各々ハンドリングにより官能検査をおこない、下記の基準で評価した。
◎:衣料に適した非常に柔軟性な風合いであった。
○:衣料に適した柔軟性な風合いであった。
△:衣料に適するがやや硬い風合いであった。
×:衣料に適さない非常に硬い風合いであった。
(5)布帛への樹脂付着量
下記式から算出した。
付着量(%)=樹脂水溶液濃度(%)×[使用樹脂固形分濃度(%)/100]×[絞り率(%)/100]
(実施例1)
LOI値35のビニロン繊維(クラレ社製)(単糸繊度:1.5dtex、繊維長:38mm)と綿繊維(単糸繊度:1.42dtex、繊維長:32mm)とを用意し、それぞれを通常の紡績方法により練条スライバーとした。次いで、これらを粗紡機に導入し、ビニロン繊維からなるスライバーを芯部に、綿繊維からなるスライバーを鞘部に配して、撚係数0.95の複合粗糸とした。そして、続く精紡工程において、上記の粗糸に42.4倍のドラフトを与えながら、撚係数3.5で加撚し、15番手(英式綿番手)の芯鞘型二層構造混紡糸を得た。この二層構造混紡糸中のビニロン繊維の混率は60質量%であり、綿繊維の混率は40質量%であった。
この混紡糸を用い、エアージェット織機(石川製作所社製)を用いて、経糸密度88本/インチ、かつ緯糸密度59本/インチの綾組織の織物を製織した。そして、この織物に対して、通常の糊抜き精練、漂白、シルケットをおこなった。その後、スレン染料を用いた通常の連続染色法により染色をほどこし、ブルー色の織物とした。
次に下記処方1の水溶液を調製し、該水溶液に上記のようにして得られた織物を浸漬した。その後、織物を取り出しマングルにて絞り(絞り率:80%)、ネット乾燥機にて130℃×2分の条件で乾燥をおこなった。
<処方1>
・グリオキザール系樹脂(三木理研工業社製、「リケンレジンMS−150」、固形分濃度:60質量%) 150g/l
・複合金属塩(三木理研工業社製、「リケンフィクサーMX−27」、固形分濃度:35%) 45g/l
・アミノ変性シリコーン系樹脂(三木理研工業社製、「リケンソフナーAS−18」、固形分濃度:15%) 100g/l
次いで、サンフォライズ機(サンフォライズ社製)を用い、シリンダー温度120℃、圧縮率5%の条件で機械的防縮処理をおこなった。その後、テンター(市金工業社製)にて160℃×2分の条件で熱処理をおこない、実施例1のビニロン混紡糸布帛を得た。このビニロン混紡糸布帛は染色性にも優れており、深みのある色合いが発現されていた。
(実施例2)
ビニロン繊維の混率を55質量%、綿繊維の混率を45質量%とし、さらに太さを40番手に変更した以外は実施例1と同様の方法を用い、二層構造混紡糸を得た。この二層構造混紡糸を用い、28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて、目付が150g/mである天竺編地を得た。次いで、この天竺編地に対して、常法に従って精練、漂白をおこなった。その後、液流染色機サーキュラー(日阪製作所社製)を用い、スレン染料でバッチ染色をほどこし、グリーン色の編地を得た。この布帛は染色性にも優れており、深みのある色合いが発現されていた。
次に下記処方2の水溶液を調製し、該水溶液に上記のようにして得られた天竺編地を浸漬した。そして、マングルにて絞り(絞り率:100%)、テンター(市金工業社製)にて130℃×2分の条件で乾燥をおこなった。その後、実施例1と同一の方法により、機械的収縮処理、次いで熱処理をおこない、実施例2のビニロン混紡糸布帛を得た。
<処方2>
・グリオキザール系樹脂(三木理研工業社製「リケンレジンRG−85」、固形分濃度:45質量%) 100g/l
・複合金属塩(三木理研工業社製「リケンフィクサーMX−18」、固形分濃度:25質量%) 30g/l
・エポキシ変性シリコーン系樹脂(三木理研工業社製「リケンソフナーS−103B」、固形分濃度:15質量%) 70g/l
(実施例3)
ビニロン繊維の混率を75%、綿繊維の混率を35%とすること、および二層構造混紡糸に代えて通常の紡績方法により混紡糸とする以外は、実施例1と同一の方法により、実施例3のビニロン混紡糸布帛を得た。
(実施例4)
処方1において、グリオキザール系樹脂の濃度を150g/lに代えて、200g/lとする以外は、実施例1と同一の方法により、実施例4のビニロン混紡糸布帛を得た。
(実施例5)
処方1において、アミノ変性シリコーン系樹脂の濃度を100g/lに代えて、400g/lとする以外は、実施例1と同一の方法により、実施例5のビニロン混紡糸布帛を得た。
(実施例6、7)
熱処理温度を160℃に代えて、それぞれ150℃(実施例6)、180℃(実施例7)とする以外は、実施例1と同一の方法により、実施例6、7のビニロン混紡糸布帛を得た。
(実施例8)
ビニロン繊維からなるスライバーを鞘部に、綿繊維からなるスライバーを芯部に配して複合粗糸となす以外、実施例1と同一の方法により、実施例8のビニロン混紡糸布帛を得た。なお、得られた二層構造混紡糸中のビニロン繊維の混率は40質量%であり、綿繊維の混率は60質量%であった。
(比較例1)
機械的防縮処理後に熱処理する工程に代えて、熱処理後に機械的防縮処理する工程を採用する以外は、実施例1と同一の方法により、比較例1のビニロン混紡糸布帛を得た。
(比較例2)
処方1中のアミノ変性シリコーン系樹脂を省略した以外は、実施例1と同一の方法により、比較例2のビニロン混紡糸布帛を得た。
(比較例3)
処方1中のグリオキザール系樹脂を省略した以外は、実施例1と同一の方法により、比較例3のビニロン混紡糸布帛を得た。
(比較例4)
LOI値35のビニロン繊維に代えて、LOI値30のビニロン繊維を用いた以外は、実施例1と同一の方法により、比較例4のビニロン混紡糸布帛を得た。
(比較例5)
二層構造混紡糸に代えて、LOI値35のビニロン繊維からなる15番手の紡績糸を用いた以外は、実施例1と同一の方法により、比較例5のビニロン紡績糸布帛を得た。
(比較例6、7)
熱処理温度を160℃に代えて、それぞれ140℃(比較例6)、190℃(比較例7)とする以外は、実施例1と同一の方法により、比較例6、7のビニロン混紡糸布帛を得た。
(比較例8)
二層構造混紡糸に代えて、15番手の綿紡績糸に用いた以外は、実施例1と同一の方法により、比較例8の綿紡績糸布帛を得た。
実施例1〜8および比較例1〜8にて得られたビニロン混紡糸布帛(または、ビニロン紡績糸布帛、綿紡績糸布帛)の評価結果を、表1および表2に併せて示す。
Figure 2013221236
Figure 2013221236
表1から明らかなように、実施例1〜7で得られたビニロン混紡糸布帛は、難燃性、防縮性、防皺性および風合いのいずれにおいても優れており、衣料分野に適するものであった。
実施例8で得られたビニロン混紡糸布帛には、鞘部においてではなく芯部にセルロース系繊維を配し、鞘部にビニロン繊維を配する二層構造混紡糸が用いられていたため、風合いに改善の余地を残すものであったが、十分に実用に耐えうるものであった。
比較例1にて得られたビニロン混紡糸布帛においては、熱処理が、機械的防縮処理の後ではなく機械的防縮処理の前におこなわれた。そのため、ビニロン混紡糸布帛がタテ方向に延ばされた状態の下で繊維が架橋、固定化されたため、その後の機械的防縮処理による効果が乏しく、防縮性に劣るビニロン混紡糸布帛しか得られなかった。
比較例2にて得られたビニロン混紡糸布帛においては、シリコーン系樹脂による加工がほどこされていなかった。そのため、風合いに劣るビニロン混紡糸布帛しか得られなかった。
比較例3にて得られたビニロン混紡糸布帛においては、グリオキザール系樹脂による加工がほどこされていなかった。そのため、防縮性、防皺性に劣るビニロン混紡糸布帛しか得られなかった。
比較例4にて得られたビニロン混紡糸布帛は、ビニロン繊維としてLOI値が32未満であるビニロン繊維が用いられていた。そのため、難燃性に劣るものであった。
比較例5にて得られたビニロン紡績糸布帛は、セルロース系繊維が用いられていなかった。そのため、風合いに顕著に劣るものであり、かつ防縮性、防皺性にも劣るビニロン紡績糸布帛しか得られなかった。
比較例6にて得られたビニロン混紡糸布帛においては、熱処理温度が140℃であったためにグリオキザール系樹脂による架橋が不十分であった。そのため、防縮性、防皺性に劣るビニロン混紡糸布帛しか得られなかった。
比較例7にて得られたビニロン混紡糸布帛においては、熱処理温度が190℃であったために、ビニロン繊維がタテ方向において僅かな張力で伸びやすい状態になり、グリオキザール系樹脂による架橋を行っても防縮性、防皺性に劣るビニロン混紡糸布帛しか得られなかった。
比較例8にて得られた綿紡績糸布帛は、ビニロン系繊維が用いられていなかった。そのため、難燃性が顕著に劣る綿紡績糸布帛しか得られなかった。

Claims (6)

  1. LOI値が32以上であるビニロン繊維とセルロース系繊維との混紡糸を用いてなる布帛であって、グリオキザール系樹脂とシリコーン系樹脂とにより樹脂加工されており、JIS L 0217 103法に基づく洗濯10回後の収縮率が3%以下であることを特徴とするビニロン混紡糸布帛。
  2. 前記混紡糸におけるビニロン繊維の混率が55〜85質量%であることを特徴とする請求項1記載のビニロン混紡糸布帛。
  3. 前記グリオキザール系樹脂が布帛全質量に対し3〜10質量%の割合で付着していることを特徴とする請求項1又は2記載のビニロン混紡糸布帛。
  4. 前記シリコーン樹脂が布帛全質量に対し1〜5質量%の割合で付着していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のビニロン混紡糸布帛。
  5. 前記混紡糸が、芯部にビニロン繊維が配され、かつ鞘部にセルロース系繊維が配された芯鞘型二層構造をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のビニロン混紡糸布帛。
  6. グリオキザール系樹脂とシリコーン系樹脂とを含有する水溶液に布帛を含浸し、乾燥させ、次いで機械的防縮処理をほどこした後、150〜180℃の範囲でこれを熱処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のビニロン混紡糸布帛の製造方法。
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JP2016113725A (ja) * 2014-12-15 2016-06-23 ユニチカトレーディング株式会社 難燃性布帛
CN107604656A (zh) * 2017-09-26 2018-01-19 思迈(青岛)防护科技有限公司 电焊防护服面料的制备方法和制得的电焊防护服面料
JP2018123453A (ja) * 2017-02-01 2018-08-09 帝人株式会社 布帛および繊維製品
CN109778374A (zh) * 2018-12-21 2019-05-21 冯国海 一种含有混纺包覆层的空心纱的制备方法

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