JP4015289B2 - 溶剤紡糸セルロース繊維のフィブリル化防止加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶剤紡糸セルロース繊維のフィブリル化を防止する加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶剤紡糸セルロース繊維は、主原料であるパルプを副原料のアミンオキサイド溶剤で物理的に溶解し、セルロース分子を極力分断せずに繊維とする画期的な製法によって製造されるので、既存のセルロース系繊維、例えば木綿やビスコース法にて製造するレーヨン等に比べて、乾湿強度や繊維収縮等に優れ、ソフトで肌触りが良く、湿潤状態で摩擦・揉布処理を行うと繊維がフィブリル化するという特性を有している。
このフィブリル化特性を利用したピーチスキン調の独特の表面感による溶剤紡糸セルロース繊維商品が数多く上市されているが、着用時の繰り返し洗濯によってフィブリルの生成が進行し、ピリングが生じたり、生地表面が白化してくるという問題がある。
【0003】
溶剤紡糸セルロース繊維のフィブリル化を低減する加工方法として、特表平9−512591号公報や、特開平7−70930号公報には、N−メチロール化合物等の繊維素反応型樹脂を用い、溶剤紡糸セルロース繊維と架橋反応を行う方法が開示されている。
しかし、この方法は架橋反応を行うのに熱処理が必要なため、繊維形態が織物や編物等の布帛の場合は処理が可能であるが、綿や糸での処理は非常に困難であり、風合いが硬くなるという問題点がある。
【0004】
また、特開平8−13336号公報には、多官能カチオン化剤を用いたフィブリル化低減加工方法が開示されている。
この方法では、多官能カチオン化剤とセルロースとを化学反応させるのにアルカリ触媒を使用するので、染色後にこのフィブリル化低減加工を行った場合は、染料がアルカリにより加水分解され、変色してしまうという問題があり、また染色を行う前にこのフィブリル化低減加工を行った場合は、セルロースと染料の親和性が非常に高くなるので、淡色に染めることができなくなり、濃色においては染めむらが発生しやすくなるという問題点がある。
【0005】
また、特開平9−158050号公報には、ジグリシジルエーテルまたはポリグリシジルエーテルと反応触媒として硫酸ナトリウムまたは硫酸カリウムを50g/リットル以上用い、溶剤紡糸セルロース繊維の架橋改質反応を行い、抗ピリング性を付与した加工方法が開示されている。
この方法は、溶剤紡糸セルロース繊維がフィブリル化し、このフィブリル化した繊維が絡み合ってピリングになるのを抑制するもので、溶剤紡糸セルロース繊維のフィブリル化を防止するまでには至っていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑みて行われたものであり、染色仕上げ工程中におけるフィブリル生成を防止すること、並びに着用時の繰り返し洗濯によるフィブリルの生成を防止することを目的とした溶剤紡糸セルロース繊維のフィブリル化防止加工方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の目的を達成するもので、次の構成よりなるものである。すなわち、本発明は溶剤紡糸セルロース繊維を、1分子中に2〜4個のクロルヒドリン基を有する化合物と、水溶液中でアルカリ性を示す化合物と中性塩とからなる反応促進剤を含む水溶液中で処理することを特徴とする溶剤紡糸セルロース繊維のフィブリル化防止加工方法を要旨とするものである。
また、溶剤紡糸セルロース繊維を、1分子中に2〜4個のクロルヒドリン基を有する化合物と、1分子中に2〜4個のグリシジル基を有する化合物と、水溶液中でアルカリ性を示す化合物と中性塩とからなる反応促進剤とを含む水溶液中で処理することを特徴とする溶剤紡糸セルロース繊維のフィブリル化防止加工方法を要旨とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる溶剤紡糸セルロース繊維とは、パルプを原料に用い、これを溶解し得る溶剤、例えばN−メチルモルフォリン−N−オキサイド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピペリジン−N−オキサイド、ジメチルアセトアミド等に溶解させ、濾過して不純分を取り除いた後、溶液を乾式または湿式紡糸法により紡糸することにより得られる繊維である。
本発明では上記の溶剤紡糸セルロース繊維からなる綿、糸、織物、編物、不織布または溶剤紡糸セルロース繊維を混用する綿、糸、織物、編物、不織布を用いる。
溶剤紡糸セルロース繊維と混用する他の繊維としては、木綿、麻等の天然セルロース繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、ハイウェットモジュラスレーヨン等の再生セルロース繊維、羊毛、絹等の天然繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の合成繊維を挙げることができ、混用方法としては一般的に用いられている方法、具体的には混綿、混紡、交撚、精紡交撚、交織、交編等の方法で混用すればよく、混用量は任意の割合でよい。
【0009】
本発明では溶剤紡糸セルロース繊維と、クロルヒドリン基をする化合物とを反応させる、又は溶剤紡糸セルロース繊維と、クロルヒドリン基をする化合物と、グリシジル基を有する化合物とを反応させる。
本発明で用いるクロルヒドリン基を有する化合物は、1分子中に2〜4個のクロルヒドリン基を有する化合物で、具体的には、ソルビトールポリクロルヒドリン、ソルビタンポリクロルヒドリン、ポリグルセロールポリクロルヒドリン、グルセロールポリクロルヒドリン、エチレングルコールジクロルヒドリン、ポリエチレングルコールジクロルヒドリン、ポリプロピレングルコールジクロルヒドリン、トリメチロールプロパンポリクロルヒドリン、ペンタエリスリトールポリクロルヒドリン等を挙げることができる。
【0010】
本発明で用いるグリシジル基を有する化合物は、1分子中に2〜4個のグリシジル基を有する化合物で、具体的には、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、グルセロールポリグリシジルエーテル、ポリグルセロールポリグリシジルエーテル、エチレングルコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングルコールジグリシジルエーテル、プロピレングルコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングルコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0011】
本発明では、溶剤紡糸セルロース繊維と、クロルヒドリン基をする化合物とを反応させる、又は、溶剤紡糸セルロース繊維と、クロルヒドリン基をする化合物と、グリシジル基を有する化合物とを反応させるため、水に溶解させるとアルカリ性を示す化合物と、強酸と強塩基との中性塩からなる反応促進剤を用いる。
本発明で用いる水に溶解させるとアルカリ性を示す化合物としては、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の弱酸と強塩基とのアルカリ性塩等を挙げることができ、使用濃度は、反応させるクロルヒドリン基およびグリシジル基と等モル%の塩基を用いる。
【0012】
本発明で用いる強酸と強塩基の中性塩としては、硫酸、硝酸、塩酸等の強酸とナトリウム、カリウム、リチウム等の強塩基とからなる中性塩を挙げることができ、使用量は30〜150g/リットルが適当である。
【0013】
本発明では、溶剤紡糸セルロース繊維を、クロルヒドリン基を有する化合物と、アルカリ性を示す化合物と中性塩とからなる反応促進剤とを含む水溶液中で処理する、又は、溶剤紡糸セルロース繊維を、クロルヒドリン基を有する化合物と、グリシジル基を有する化合物と、アルカリ性を示す化合物と中性塩とからなる反応促進剤とを含む水溶液中で処理する。
この処理を行うのに使用する加工機としては、形態が綿、糸の場合は綿または糸染め用として使用されているパッケージ染色機を用い、形態が織物、編物等の布帛の場合は、液流染色機、気流染色機等のバッチ式染色機を用いる。
【0014】
本発明では、一般に行われている通常の方法にて、糊抜き、精練等の前処理を行った後に、本発明のフィブリル化防止処理を行うが、糊抜き、精練等の前処理は、できるだけ溶剤紡糸セルロース繊維をフィブリル化させないような工程、具体的にはパディング法等の連続工程を用いることが望ましい。
【0015】
処理時間は、生地の投入量、使用する装置、布の回転速度等の条件によって異なるが、10〜90分が適当である。処理時間が10分以下になると、十分なフィブリル防止効果が得られず、また90分以上処理を行っても架橋反応が完了しているので、それ以上のフィブリル防止効果がない。
処理温度は、40℃以上、好ましくは60〜100℃が望ましい。40℃以下になると反応速度が遅くなるので処理時間が長くなり、100℃以上になると反応ムラが生じやすくなる。
【0016】
【実施例】
次に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、実施例における試料のフィブリル化度合いは、染色加工上がりの試料と家庭洗濯(JISL−0217 103法)30洗後の試料の表面写真を走査型電子顕微鏡で撮り、相対的に次の3段階で評価した。
○;フィブリルが生成していない。
△;フィブリルの生成が少ない。
×;フィブリルの生成が多い。
【0017】
実施例1
チーズ巻にした溶剤紡糸セルロース繊維(レンチング社製)100%の糸(番手30/1)を、パッケージ染色機を用いて、通常の方法で精練を行った後、浴比1:10で、下記処方1により60℃×60分の処理を行い、本発明の加工糸を得た。
処方1
ポリエチレングリコールジクロルヒドリン 30g/リットル
水酸化ナトリウム 7g/リットル
無水ボウ硝 30g/リットル
この糸を用いて18ゲージの丸編機で天竺組織の編物を編成し、日本染色機械製の液流染色機「ユニエース」を用いて、浴比1:20で、下記処方2により95℃×30分の染色を行い、本発明の加工編物を得た。
処方2
カヤラススプラブルーFJL 3%owf(日本化薬株式会社製、直接染料)
無水ボウ硝 10g/リットル
【0018】
比較例1
本発明との比較のため、実施例1と同一の糸を用い、処方1を下記処方3に変える以外は、実施例1と全く同一の方法を用い、比較例1の加工編物を得た。
処方3
デナコール EX−810 20g/リットル(ナガセ化成工業株式会社製、エチレングリコールジグリシジルエーテル)
無水ボウ硝 100g/リットル
【0019】
比較例2
本発明との比較のため、実施例1の精練を行っただけの糸を用い、実施例1と全く同一の方法にて編物を編成し染色を行い、比較例2の未処理編物を得た。
本発明および、比較用編物の染色加工上り、および家庭洗濯30回後の表面写真を走査型電子顕微鏡で撮り、フィブリル化度の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
表1から明らかなように、本発明の実施例1の加工編物は、染色加工上がり、洗濯30回後においてもフィブリルの生成がなく、フィブリルの生成が染色仕上げ工程および繰り返し洗濯のいずれにおいても防止されていることがわかる。
一方、比較例1の加工編物は、染色加工上がりはフィブリルの生成が少ないが、洗濯30回後ではフィブリルが多数生成しており、比較例2の未処理編物は、染色加工上がりも洗濯30回後においてもフィブリルが多数生成している。
【0022】
実施例2
上記実施例1において、処方1を下記処方4に代える以外は、実施例1と全く同一の方法を用い、本発明の加工編物を得た。
処方4
デナコール EX−810 20g/リットル(ナガセ化成工業株式会社製、エチレングリコールジグリシジルエーテル)
ポリエチレングリコールジクロルヒドリン 10g/リットル
水酸化ナトリウム 12g/リットル
無水ボウ硝 30g/リットル
本発明との比較のため、本発明の加工編物との比較となり得る前述の比較例1の加工編物を、本発明の比較に供した。
本発明および、比較用編物の染色加工上り、および家庭洗濯30回後の表面写真を走査型電子顕微鏡で撮り、フィブリル化度の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0023】
【表2】
【0024】
表2から明らかなように、本発明の実施例2の加工編物は、染色加工上がり、洗濯30回後においてもフィブリルの生成がなく、フィブリルの生成が染色仕上げ工程および繰り返し洗濯のいずれにおいても防止されていることがわかる。
一方、比較例1の加工編物は、染色加工上がりはフィブリルの生成が少ないが、洗濯30回後ではフィブリルが多数生成している。
【0025】
【発明の効果】
本発明方法によれば、染色仕上げ工程および繰り返し洗濯のいずれにおいても、溶剤紡糸セルロース繊維のフィブリル化を防止することができる。
Claims (2)
- 溶剤紡糸セルロース繊維を、1分子中に2〜4個のクロルヒドリン基を有する化合物と、水溶液中でアルカリ性を示す化合物と中性塩とからなる反応促進剤とを含む水溶液中で処理することを特徴とする溶剤紡糸セルロース繊維のフィブリル化防止加工方法。
- 溶剤紡糸セルロース繊維を、1分子中に2〜4個のクロルヒドリン基を有する化合物と、1分子中に2〜4個のグリシジル基を有する化合物と、水溶液中でアルカリ性を示す化合物と中性塩とからなる反応促進剤とを含む水溶液中で処理することを特徴とする溶剤紡糸セルロース繊維のフィブリル化防止加工方法。
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