JP2022165326A - 抗ウイルス加工繊維製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】第四級アンモニウム塩の使用量を抑えながらも洗濯耐久性に富む、抗ウイルス性加工繊維製品を提供する。【解決手段】ポリウレタン弾性繊維を1~35重量%含む繊維からなる織編物の繊維製品であって、特定構造の第四級アンモニウム塩及び/又はその誘導体を0.05~0.4重量%含有する抗ウイルス加工繊維製品。【選択図】なし
Description
本発明は、抗ウイルス性の洗濯耐久性に優れた加工繊維製品に関する。
繊維製品への抗ウイルス加工は、病院や介護施設の白衣、食品工場の作業服など、今後の用途拡大が期待されている。ISO18184に基づく繊維製品上の抗ウイルス性の評価方法が確立して、一般社団法人繊維評価技術協議会による抗ウイルス加工繊維製品に対するマーク認証制度ができている。
しかし、繊維製品、とりわけ繰り返し洗濯を必要とする白衣や作業衣、及び病院のシーツやカーテンなどリネン製品については、抗ウイルス性能に対する洗濯耐久性の向上が課題となっている。
例えば特許文献1及び2では、少なくとも表面に抗ウイルス性化合物が固定された樹脂成形品や繊維製品であって、抗ウイルス性化合物が第四級アンモニウムハロゲン化合物からなるものが開示されている。しかし、これらの第四級アンモニウム塩は、水溶性が高いため、洗濯に対する耐久性を高めるには使用量を増やす必要があった。さらに、特許文献1及び2に開示されているジデシルジメチルアンモニウムクロリドは、劇物に指定されているため、繊維製品では使用量が制限されることになり、安全性を担保しながらでは良くても洗濯10回程度の洗濯耐久性しか得られていないのが現状であった。従って、第四級アンモニウム塩の使用量を少なくしても、高い洗濯耐久性が得られる技術が求められている。
本発明は、上述の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、第四級アンモニウム塩の使用量を極力抑えながらも洗濯耐久性に富む抗ウイルス加工繊維製品を提供することにある。更に、本発明は、家庭洗濯だけでなく、高温の工業洗濯においても繰り返し洗濯や着用による耐久性に優れた抗ウイルス加工繊維製品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、抗ウイルス性を有する特定の長鎖アルキル基を一つ以上持つ第四級アンモニウム塩を、特定のポリウレタン弾性繊維を含む織編物に含有させることで、抗ウイルス性の洗濯耐久性に極めて優れた製品を提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、以下の(1)~(7)の構成を有するものである。
(1)ポリウレタン弾性繊維を1~35重量%含む繊維からなる織編物の繊維製品であって、下記式[I]~[III]からなる群から選択される少なくとも一種の第四級アンモニウム塩及び/又はその誘導体を0.05~0.4重量%含有することを特徴とする抗ウイルス加工繊維製品。
上記式中、m、n、p、qは0~20の整数、R、R′は芳香族又は脂環族を含む環状アルキル基を示す。R及びR′は2、4、6位の炭素のいずれか1つ以上にメチレン基を有する芳香族環状アルキル基を含む。X-はハロゲン化物イオンである。
(2)ポリウレタン弾性繊維を1~35重量%含み、ポリエステル繊維を65~99重量%含む繊維からなる織編物であることを特徴とする(1)に記載の抗ウイルス加工繊維製品。
(3)ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン樹脂が、ポリマージオールと、ジイソシアネートと、更に鎖伸長剤として低分子量ジオールとを重合して得られるものであることを特徴とする(1)または(2)に記載の抗ウイルス加工繊維製品。
(4)鎖伸長剤が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、及び1-メチル-1,2-エタンジオールからなる群から選択される少なくとも一種の低分子量ジオールであることを特徴とする(3)に記載の抗ウイルス加工繊維製品。
(5)ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン樹脂が、-100~0℃のガラス転移点(Tg)を有することを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の抗ウイルス加工繊維製品。
(6)ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン樹脂のウレア結合に由来する窒素含有率が0.0~0.3%であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の抗ウイルス加工繊維製品。
(7)ポリウレタン弾性繊維を10~35重量%含む繊維からなる編物の繊維製品であって、少なくとも編物の片面を構成するニットループの全てにポリウレタン弾性繊維が存在することを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の抗ウイルス加工繊維製品。
(1)ポリウレタン弾性繊維を1~35重量%含む繊維からなる織編物の繊維製品であって、下記式[I]~[III]からなる群から選択される少なくとも一種の第四級アンモニウム塩及び/又はその誘導体を0.05~0.4重量%含有することを特徴とする抗ウイルス加工繊維製品。
上記式中、m、n、p、qは0~20の整数、R、R′は芳香族又は脂環族を含む環状アルキル基を示す。R及びR′は2、4、6位の炭素のいずれか1つ以上にメチレン基を有する芳香族環状アルキル基を含む。X-はハロゲン化物イオンである。
(2)ポリウレタン弾性繊維を1~35重量%含み、ポリエステル繊維を65~99重量%含む繊維からなる織編物であることを特徴とする(1)に記載の抗ウイルス加工繊維製品。
(3)ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン樹脂が、ポリマージオールと、ジイソシアネートと、更に鎖伸長剤として低分子量ジオールとを重合して得られるものであることを特徴とする(1)または(2)に記載の抗ウイルス加工繊維製品。
(4)鎖伸長剤が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、及び1-メチル-1,2-エタンジオールからなる群から選択される少なくとも一種の低分子量ジオールであることを特徴とする(3)に記載の抗ウイルス加工繊維製品。
(5)ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン樹脂が、-100~0℃のガラス転移点(Tg)を有することを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の抗ウイルス加工繊維製品。
(6)ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン樹脂のウレア結合に由来する窒素含有率が0.0~0.3%であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の抗ウイルス加工繊維製品。
(7)ポリウレタン弾性繊維を10~35重量%含む繊維からなる編物の繊維製品であって、少なくとも編物の片面を構成するニットループの全てにポリウレタン弾性繊維が存在することを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の抗ウイルス加工繊維製品。
本発明によれば、洗濯耐久性に優れた抗ウイルス性を持つ繊維製品を提供することができる。特に、本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、インフルエンザウイルス、ネコカリシウイルスなどのウイルスの減少、不活性効果があり、また、従来にない高いレベルの洗濯耐久性のある抗ウイルス性を有するため、スポーツ衣料や肌着、靴下、寝装品、衣料資材、リネン用途を含めて頻繁に洗濯する幅広い用途に好適である。
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、ポリウレタン弾性繊維を1~35重量%、好ましくは5~33重量%、更に好ましくは7~30重量%含む繊維からなる織編物の繊維製品である。ポリウレタン弾性繊維の混率が上記範囲より少ないと抗ウイルス性の洗濯耐久性が低下する場合があり、上記範囲より多いと染色堅牢度が悪くなったり、厚ぼったくゴムのような風合いとなる場合がある。
ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン樹脂としては、ポリマージオールとジイソシアネートを出発物質とするものであれば特に限定されず、その合成法も特に限定されるものではない。ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリマージオールと、ジイソシアネートと、鎖伸長剤とを重合したものであってもよい。また、本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグリコールやイソシアネート等を使用して得たポリウレタンを使用してもよい。
ポリマージオールとしては、ポリエーテル系、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。柔軟性、伸度を糸に付与する観点からは、ポリエーテル系ジオールが好ましい。
ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す)および3-メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG(以下、3M-PTMGと略す)、THFおよび2,3-ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許第2615131号公報などに開示される側鎖を両側に有するポリオール、THFとエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが不規則に配列したランダム共重合体等が挙げられる。これらのポリエーテル系ジオールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
ポリマージオールの分子量は、糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを得る観点から、数平均分子量が1000以上8000以下のものが好ましく、1500以上6000以下がより好ましい。この範囲の数平均分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性糸を容易に得ることができる。なお、数平均分子量は、GPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと略す)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5-ナフタレンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
鎖伸長剤としては、水酸基および/又はアミノ基を分子内に有する化合物を使用することができ、具体的には、低分子量ジオールおよび低分子量ジアミンのうちの少なくとも1種を使用することができるが、後述するポリウレタン樹脂中のウレア結合に由来する窒素含有率を低く抑えて抗ウイルス性の洗濯耐久性を高めるためには、低分子量ジアミンではなく低分子量ジオールを使用することが好ましく、特に数平均分子量300以下の低分子量ジオールを用いることが好ましい。
低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1-メチル-1,2-エタンジオールなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。好ましくは、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性がより高くなり、また、より強度の高い糸を得ることができる。
また、低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p,p′-メチレンジアニリン、1,3-シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)フォスフィンオキシドなどが挙げられる。
ポリウレタンの数平均分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、30000以上150000以下の範囲であることが好ましい。
ポリウレタンには、1種または2種以上の末端封鎖剤を混合使用することが好ましい。末端封鎖剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネート、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミンが挙げられるが、後述するポリウレタン樹脂中のウレア結合に由来する窒素含有率を低く抑えて抗ウイルス性の洗濯耐久性を高めるためには、モノアミンではなく、モノオールやモノイソシアネートを使用することが好ましい。
ポリウレタン樹脂の製法は、特に限定されないが、溶融重合法又は溶液重合法であることが好ましい。より好ましい製法は、溶液重合法である。溶液重合法では、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少ないため、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン弾性繊維を得やすい。また、溶液重合法の場合、重合されたポリウレタン樹脂を溶液にする操作が省けるという利点もある。溶液重合法では、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略す)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することによりポリウレタン樹脂が得られる。具体的には、かかる溶剤中に、各上記原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述の鎖伸長剤と反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
ポリウレタン樹脂は、ポリマージオールとして数平均分子量が1500以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤として低分子量ジオールを使用して合成されたものが特に好ましい。使用するポリマージオールの数平均分子量に応じてMDIの割合を相対的に調整することにより、ポリウレタンの融点やガラス転移点を希望の温度に調整することができる。
ポリウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)は、-100℃~0℃であることが好ましい。Tgは、抗ウイルス性の洗濯耐久性を高めるために重要である。より好ましくは-80℃~-40℃であり、特に好ましいのは-70℃~-50℃である。つまり、Tgが上記の範囲であると、ポリウレタン樹脂の保存安定性に問題が起こり難く、ポリウレタン弾性繊維への抗ウイルス剤の保持性が向上するため、抗ウイルス性の洗濯耐久性を高めることができる。
ガラス転移点(Tg)の測定は、粘弾性率測定機を用いて行なう。例えば、レオメトリック社製動的弾性率測定機RSAIIを用い、昇温速度10℃/分で、動的貯蔵弾性率E′の温度分散、動的損質弾性率E”の温度分散からの損失正接tanδ=E”/E′として測定することができる。
ポリウレタン樹脂のTgを-100℃~0℃の範囲内とする方法としては、例えば、全ポリオール中のポリマージオール成分の比率や、ポリマージオールとジイソシアネートの比率をコントロールすればよい。具体的には、全ポリオール中のポリマージオール成分は60モル%以上100モル%以下、更に好ましくは、70モル%以上100モル%以下にすることが好ましい。ポリマージオールの割合が少なすぎると耐熱強力保持率が低下したり、可紡性や糸の均斉度が低下したりする場合がある。なお、ポリマージオールは、ポリエーテルポリオール成分からなることが耐アルカリ性の点から好ましい。また、全ジイソシアネートのモル量とポリマージオールのモル比は、2.4~3.8が好ましく、2.5~3.5が更に好ましい。モル比が上記範囲より低いと得られるポリウレタン弾性繊維の耐熱性が不足する場合があり、モル比が上記範囲より高いと糸が硬く伸度も低くなる場合がある。
ポリウレタン樹脂の全窒素含有率は、20%以上40%以下が好ましく、25%以上35%以下であることがより好ましい。全窒素含有率が低すぎると、イソシアネートとの反応に関わる結合の濃度が低下し、耐熱性や耐摩耗性が劣るため好ましくなく、全窒素含有率が高すぎると、ポリウレタン中のハードセグメントの凝集力が強くなり、弾性回復率が劣る場合がある。また、ポリウレタン樹脂の全窒素含有率の中でもウレア結合に由来する窒素含有率は、0.0~0.3%であることが好ましく、より好ましくは0.0~0.1%である。更に好ましくは0.0%である。ウレア結合の存在は、ポリウレタンの耐熱性や耐摩耗性を高めるが、一方ではハードセグメントの凝集力を非常に大きくする。そのため、ウレア結合が存在すると、ポリウレタン弾性繊維における抗ウイルス剤の保持力が低下しやすくなる傾向がある。なお、ポリウレタン樹脂のウレア結合に由来する窒素含有率は、上述のように、ポリウレタン樹脂の合成に使用する鎖伸長剤や末端封止剤として有機アミン系のものを使用しないことや、たとえ使用してもその量を少なくすることによって低く抑えることができる。
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、上述のポリウレタン弾性繊維以外にポリエステル繊維を含むことが好ましい。本発明の繊維製品の好ましい態様では、ポリウレタン弾性繊維を1~35重量%含み、ポリエステル繊維を65~99重量%含む織編物であり、更に好ましい態様では、ポリウレタン弾性繊維を7~30重量%含み、ポリエステル繊維を70~93重量%含む織編物である。また、繊維製品中のポリエステル繊維とポリウレタン弾性繊維が上記範囲であれば、別種類の繊維を織編物に混用してもよい。ポリウレタン弾性繊維の繊度は好ましくは5~450dtexであり、より好ましくは10~160dtex、更に好ましくは10~50dtexである。ポリウレタン弾性繊維の繊度が上記範囲未満になると、洗濯での抗ウイルス剤の保持力が低下し、上記範囲より大きいと、繊維製品中のポリウレタン弾性繊維の偏在化が起こり、洗濯後の抗ウイルス性が不安定になりやすくなる。
本発明の繊維製品に含まれるポリエステル繊維としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレングリコールテレフタレート、あるいは、これらの構成単位を主体とし、他の共重合成分を共重合したポリエステル系樹脂から得られたポリエステル繊維が挙げられる。特に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレート系繊維、即ち、主たるポリマーがポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエチレンテレフタレートである繊維である。なかでも、エチレンテレフタレート単位が90モル%以上繰り返し成分とするポリエステルからなる繊維が好ましく、エチレンテレフタレート単位が95モル%以上繰り返し成分とするポリエステルからなる繊維であることがより好ましい。このポリエチレンテレフタレート系繊維は、良好な風合い、光沢を有し、しわになりにくいなどのイージーケア性があり、伸縮性を有する布帛を構成する繊維素材として好適である。
ポリエステル繊維の繊度は、繊維がマルチフィラメントの延伸糸及び/又は仮撚加工糸である場合は、単糸繊度0.3~9.0dtexとすることが好ましい。より好ましくは0.5~8.0dtex、更に好ましくは1.0~6.0dtexであることが好ましい。繊維がステープルファイバーである場合の単糸繊度は、0.01~15.0dtexであることが好ましい。上記の単糸繊度は、単一繊度である必要はなく、複数の繊度の繊維を組み合わせて実現してもよい。単糸繊度が上記範囲を下回る超極細繊維では繊維の表面積が大きくなり、初期の抗ウイルス性能は良いが、繰り返し着用や洗濯によって脱落しやすく耐久性が低下する場合もある。また、単糸繊度が上記範囲を超過する超極太繊維では、繊維断面が大であることによって縫製部位でのチクツキ感が強く、強い皮膚刺激を与えたり、繊維製品が硬くなり過ぎたりして、衣料品やそれぞれの用途とするのに好ましくない場合がある。
また、紡績糸にする場合には、公知の方法に従って製造されることができ、例えば、リング・トラベラー法、オープンエンド法、結束法および精紡交撚法のいずれかの製造方法により得られることが好ましい。紡績糸の繊度は特に限定されないが、20~80英式番手が好ましい。番手とは糸の太さの単位のことをいい、番手数が大きくなるほどその糸は細くなる。
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、上述のポリウレタン弾性繊維とポリエステル繊維から常法に従って得られる織編物であることが好ましい。例えば、ポリウレタン弾性繊維にポリエステル繊維の紡績糸を被覆して得た被覆弾性糸からなる織編物であってもよいし、ポリエステル繊維の紡績糸にポリウレタン弾性繊維を裸糸(ベア)のまま織り・編みこんで交編織編地としてもよい。被覆弾性糸は、熱融着性弾性糸(弾性繊維)と、他の抗ウイルス機能を有する又は有さない非弾性糸(短繊維や長繊維)とを複合した弾性糸である。被覆弾性糸の具体例としては、長繊維と弾性繊維を合撚したフィラメント・ツイスティッド・ヤーン(FTY)、エアーで繊維同士を交絡させたエアー混繊糸、仮撚加工と同時混繊する仮撚複合糸等がある。短繊維と弾性繊維を複合したものとしては、コアスパンヤーン(CSY)、プライヤーン(PLY)等が挙げられる。
被覆弾性糸は、FTYの形態で使用することが特に好ましい。そうすることにより、エアー混繊糸やコアスパンヤーンのような複合形態に比べて、被覆弾性糸の中で弾性繊維が拘束され難く、伸長回復応力を下げたり、伸長回復性を高めやすくなる。FTYは、ポリウレタン弾性繊維に他の素材をコイル状に巻きつけたものである。例えば、弾性繊維を芯として一方向に被覆されているシングルカバードヤーン(SCY)と、下巻き、上巻きを逆方向に被覆されているダブルカバードヤーン(DCY)がある。本発明では、リング撚糸機やダブルツイスターを使って合撚したものもFTYとして扱うが、SCYやDCYにした方が被覆性がよく、また弾性繊維を拘束し難いため、より好適である。被覆弾性糸の総繊度は、20~150dtexとすることが好ましい。より好ましくは、30~100dtexである。FTYの総繊度は、弾性繊維がドラフトされて複合糸とし、巻上げた状態での実繊度を指す。
被覆弾性糸に用いるポリウレタン弾性繊維のドラフト率は、1.0~5.5倍が好ましく、より好ましくは1.2~5.0倍である。撚り数は、60~2500T/mが好ましく、より好ましくは80~2200T/m、更に好ましくは100~2000T/mである。撚り数が60T/mよりも低かったり、2500T/mより高いと、編機での編成時の加工安定性が低下する場合がある。
織編物は、製造時の熱処理により熱融着性弾性糸同士を融着させることで、織編物の切断面を纏ったり、折り返して縫製したり、ヘムを付けなくとも、複数回洗濯と着用を繰り返してもホツレ難くすることができる。融着処理は、乾熱や湿熱の熱処理にて行なうことができる。熱処理は、例えば150~210℃で15秒~3分間程度で行えばよいが、熱処理を染色加工工程で行う場合は、拡布で処理ができる熱風乾燥機やベーキング加工機、テンター、HTSスチーマ等を使用することができる。縫製工程で行う場合は、プレス機やヒートシーラー、ヒートカッターなどでも行うことができる。
本発明の抗ウイルス加工繊維製品が編物の場合、よこ(緯)編物であってもよく、また、たて(経)編物であってもよい。編物の組織は、よこ編は、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畦編、レース編、添毛等が好ましく、たて編は、デンビー編、アトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャカード編等が好ましい。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。製編は、丸編機、横編機、コットン式編機のような平型編機、トリコット編機、ラッシェル編機、ミラニーズ編機等によって行われるのが好ましい。なお、編物が、単相のよこ編の場合は、天竺やウエルト天竺、鹿の子等の丸編シングルニットが好ましい。2層以上のよこ編の場合は、リブ編、両面編等の丸編ダブルニットが好ましく、それらのジャガード編、レースであってもよい。具体的にはフライス編(ゴム編)、インターロック編、片袋編、畔編、モックロディ、ポンチローマ、ミラノリブ、ダブルピケ、スーパーローマ、ブリスター、シングルピケ、タックリップル、ウエルトリップル、両面パイル編等の編組織を有するものが挙げられる。
また、本発明では、これら組織の少なくとも一部に前述のポリウレタン弾性繊維を用いている。ポリウレタン弾性繊維はベア使いで非弾性糸と引き揃え(プレーティング)したり、被覆弾性糸にして交編して用いることができる。更に、本発明ではポリウレタン弾性繊維を、編物の少なくとも片面を構成するニットループの全体に存在させることが好ましい。少なくとも片面全体にポリウレタン弾性繊維が存在することで、抗ウイルス効果を編地全体に均一に発揮させることができ、しかも洗濯耐久性が向上しやすい。より好ましくは、編地の両面の全ニットループにポリウレタン弾性繊維を存在させることがよい。
編物の厚みは、0.01~3mm、さらには0.05~2mmであることが好ましい。厚みが上記範囲よりも薄い場合には扱いにくく、消費段階の使用で破断し易い。上記範囲よりも厚い場合には、着用感が悪くなりやすくなる。また、編物の目付は、10~300g/m2、さらには100~275g/m2であることが好ましい。編物の密度は、コース密度30~75個/inch、ウエール密度30~75個/inchが好ましい。密度が上記範囲を超えても機能的には問題はないが、編地が非常に緻密になり、製編が難しくなりやすい。上記範囲を下回ると編み目が荒くなりすぎて、編地が引っ掛かり易くなったり、膝抜け等のワライが発生し易くなる。
本発明の抗ウイルス加工繊維製品が織物の場合、その組織は、平織、斜文織、朱子織等の三原組織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織等の変化組織、蜂の巣織、模紗織、梨地織等の特別組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、風通織、袋織、二重ビロード等の二重織組織、ベルト織等の多層組織、たてビロード、タオル、シール、ベロア等のたてパイル織、別珍、よこビロード、ベルベット、コール天等のよこパイル織、絽、紗、紋紗等のからみ組織等が好ましい。織物の厚みは、編物と同様であることが好ましい。織物の目付は、50~200g/m2であり、さらには100~200g/m2であることが好ましい。伸長率は、タテ方向および/またはヨコ方向とも5%以上であることが好ましい。
かかる織編物の繊維製品としては、特に限定されないが、衣服(下着、中衣、外衣、水着、紙オムツ等の衛生材)、タオル、靴下、サポーター、食品包装材、カーペット、内装材、カーシート、寝具類、建材、壁材およびフィルター素材などが挙げられる。
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、下記式[I]~[III]からなる群から選択される少なくとも一種の第四級アンモニウム塩及び/又はその誘導体(以下、単に第四級アンモニウム塩とも言う)を0.05~0.4重量%、好ましくは0.1~0.35重量%含有する繊維からなる織編物であることを特徴とする。
上記式中、m、n、p、qは0~20の整数、R、R′は芳香族又は脂環族を含む環状アルキル基を示す。R及びR′は2、4、6位の炭素のいずれか1つ以上にメチレン基を有する芳香族環状アルキル基を含む。X-はハロゲン化物イオンである。
上記式中、m、n、p、qは0~20の整数、R、R′は芳香族又は脂環族を含む環状アルキル基を示す。R及びR′は2、4、6位の炭素のいずれか1つ以上にメチレン基を有する芳香族環状アルキル基を含む。X-はハロゲン化物イオンである。
上記式[I]~[III]で表わされる第四級アンモニウム塩又はその誘導体は、長鎖アルキル基を含むものが好適である。例えば、塩化ベンザルコニウム、モノ(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)アルキルトルエン、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ノルマルヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、塩化ドファニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ドミフェン、塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムなどを挙げることができる。特に、塩化ジデシルジメチルアンモニウムやその誘導体等の使用が特に好適である。また、ポリマーであるポリ-オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライドや、ポリ〔オキシエチレン(ジメチルイミニオ)トリメチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロライド〕、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等も用いることができる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
第四級アンモニウム塩又はその誘導体は、一般に殺菌・消毒剤、乳化剤、防錆剤、帯電防止剤等として業界を問わず広く活用されているが、過剰に使用すると軽度の皮膚刺激や眼を含む粘膜への刺激があり、特に繊維製品の場合、過剰に使用すると経皮吸収され、皮膚刺激を生じさせる可能性が高い。そのため、使用濃度はできるだけ少ない方が好ましい。本発明によれば、洗濯耐久性が非常に優れるため、第四級アンモニウム塩又はその誘導体を過剰に使用することなく、最小限の付着量で耐久性を持続させることが可能となった。即ち、本発明における第四級アンモニウム塩の繊維重量に対する使用量は、好ましくは0.05~0.4%owf、より好ましくは0.1~0.35%owf、更に好ましくは0.2~0.35%owfである。使用量が上記範囲未満では、十分な抗ウイルス性が発揮し難くなり、上記範囲を超えると、着用中の人体への刺激性が高まるおそれが生じる。
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、前記式[I]~[III]からなる群から選択される少なくとも一種の第四級アンモニウム塩及び/又はその誘導体からなる抗ウイルス加工剤で織編物を後加工処理することによって得られる。後加工方法としては、吸尽法、パディング法、スプレー法、コーティング法、プリント法など公知の方法を採用することができる。例えば吸尽法の場合は、染色同浴処理、若しくは染色後の任意工程で別浴処理することが可能である。パディング法の場合は、染色後、マングルパッダー等で所定量の薬液を生地にピックアップさせた上、加熱処理する。加熱処理法は、パッドドライ法、パッドドライキュア法、パッドスチームキュア法、パッドドライベイク法など公知の方法で実施することが可能である。また、必要に応じて上記の方法の併用も可能である。
後加工処理の温度条件は、用いる繊維の種類によって異なるが、例えば吸尽法の場合は、湿熱70~135℃、より好ましくは湿熱90~130℃の範囲で適宜設定することができる。また、パディング法の場合は、パッド(ドライ)キュア法では例えばドライ温度100~130℃、キュアリング温度140~190℃の範囲を例示することができる。より好ましいキュア温度は160℃~180℃で30秒~2分処理するのがよい。キュア温度が高い程、第四級アンモニウム塩の洗濯後残存率が向上するが、第四級アンモニウム塩は、高温で分解しやすい。そのため、200℃以上でのキュア処理や5分以上の長時間処理すると繊維上で徐々に分解して有効成分が減少してしまう傾向がある。また、過剰な加熱処理は、各種堅牢度など生地物性に悪影響を引き起こす他、黄変の要因となるため、避けることが望ましい。
第四級アンモニウム塩は、黄変性、特にフェノール黄変しやすい傾向があり、必要により加工後の生地のpHを3~6の酸性域に留めると、黄変が抑制されるため、好ましい。生地pHの調整には、りんご酸やシュウ酸等の不揮発性の有機酸を適宜用いることができる。
本発明で使用する第四級アンモニウム塩のうち、比較的分子量が大きいものは水溶性が低下する。そのような第四級アンモニウム塩を均一に安定的に繊維に加工するために有機溶剤を混合してもよい。水と混和可能な有機溶剤であれば特に制限はないが、例えば、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類等、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられる。なお、水と有機溶剤の比率は特に限定されるものではない。
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、洗濯20回後のインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値Mvが3.0以上、さらには工業洗濯30回後でも抗ウイルス活性値2.0以上、好ましくは3.0以上であることができる。本発明に使用する第四級アンモニウム塩は、疎水性繊維、特にポリエスエル繊維やポリウレタン繊維への親和性が高いため、洗濯耐久性を向上することができる。
ウイルスには、エンベロープを持つウイルスと、エンベロープを持たないウイルスに大別される。エンベロープとは、単純ヘルペスウイルスやインフルエンザウイルスなど一部のウイルス粒子(ビリオン)に見られる膜状構造物で、ウイルスの基本構造を形成するウイルスゲノムやカプシド蛋白質などを覆う、ウイルス粒子(ビリオン)の最外殻を構成するものである。エンベロープは、大部分が脂質からなり、アルコールや有機溶媒などで処理すると容易に破壊できる為、エンベロープを持つウイルスよりもエンベロープを持たないウイルスの方が一般的には不活化し難いという特徴を有する。
エンベロープを持つウイルスとしては、インフルエンザウイルス、はしかウイルス、風疹ウイルス、エイズウイルス、ヘルペスウイルスなどが例示される。また、エンベロープを持たないウイルスとしては、ノロウイルス、ロタウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなどが代表例として例示される。本発明に使用する第四級アンモニウム塩は、エンベロープを持たないウイルスへの効果は低い傾向にあるが、炭素数が18以上の同じ直鎖アルキル基を二つ持つ第四級アンモニウム塩はエンベロープを持たないウイルスへの抗ウイルス効果が優れている。
本発明の抗ウイルス繊維製品は、家庭洗濯だけでなく、高温の工業洗濯においても洗濯耐久性に優れた抗ウイルス性能を示し、さらに風合変化や変色、生地物性変化が少ないので、病院白衣などに好適に用いることができる。また、食品白衣などのレンタルユニフォーム類、シーツ、カーテン、インナーウェア、シャツ、スクールユニフォーム、体操服など広範囲の分野にも好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性測定方法は下記に基づくものである。
<ポリウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)>
ポリウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)は、レオメトリック社製動的弾性率測定機RSAIIを用い、昇温速度10℃/分で、動的貯蔵弾性率E′の温度分散、動的損質弾性率E”の温度分散からの損失正接tanδ=E”/E′として測定した。
ポリウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)は、レオメトリック社製動的弾性率測定機RSAIIを用い、昇温速度10℃/分で、動的貯蔵弾性率E′の温度分散、動的損質弾性率E”の温度分散からの損失正接tanδ=E”/E′として測定した。
<ポリウレタン樹脂の全窒素含有量>
ポリウレタン樹脂の全窒素含有量は、ポリマー合成で利用した有機イソシアネート化合物のモル数から下記式により算出した。
全窒素含有量(%)=(有機イソシアネートのモル数×分子中のイソシアネート基数×14/全重量)×100
ポリウレタン樹脂の全窒素含有量は、ポリマー合成で利用した有機イソシアネート化合物のモル数から下記式により算出した。
全窒素含有量(%)=(有機イソシアネートのモル数×分子中のイソシアネート基数×14/全重量)×100
<ポリウレタン樹脂のウレア結合に由来する窒素含有量>
ポリウレタン樹脂のウレア結合に由来する窒素含有量は、鎖伸長剤及び末端封鎖剤として使用した有機アミン量から、下記式によりアミン含有量を算出した。
ウレア結合に由来する窒素含有量(%)=(有機アミンのモル数×分子中の窒素数×14)/全重量)×100
ポリウレタン樹脂のウレア結合に由来する窒素含有量は、鎖伸長剤及び末端封鎖剤として使用した有機アミン量から、下記式によりアミン含有量を算出した。
ウレア結合に由来する窒素含有量(%)=(有機アミンのモル数×分子中の窒素数×14)/全重量)×100
<厚み>
JIS-L1096:2010 8.4厚さの試験方法に準拠して測定した。
JIS-L1096:2010 8.4厚さの試験方法に準拠して測定した。
<目付>
JIS-L1096:2010 8.3単位面積当たりの重量の試験方法に準拠して測定した。
JIS-L1096:2010 8.3単位面積当たりの重量の試験方法に準拠して測定した。
<密度>
JIS-L1096:2010 8.6密度に準拠して測定した。編物の密度は8.6.2に基づいて測定した。
JIS-L1096:2010 8.6密度に準拠して測定した。編物の密度は8.6.2に基づいて測定した。
<フリーカット特性>
ウェール方向に対して、40°の切り込みを3cm、編始め、編終わりの両方向に交互に5箇所入れ、タテ方向の裁断面を合わせて筒状に縫製した後、JIS-L0217-103法に準拠して、以下のように洗濯時間のみ300分として洗濯を行った。
洗濯(300分)→遠心脱水→すすぎ(2分)→遠心脱水→すすぎ(2分)→遠心脱水その後、平干しで風乾し、裁断した編地の端のほつれの程度を以下の基準で評価した。3級以上を端面が切れっぱなしでも使えるものと判断した。
ほつれ評価基準
5級:傷みが認められず、洗濯前との差がない
4級:傷みが認められないが、洗濯前に比べへたっている部分がある
3級:やや傷みが認められるが、糸端の飛び出しがない
2級:痛みが認められ、糸端が飛び出している
1級:痛みが激しく、裁断面の編地組織が崩れている
ウェール方向に対して、40°の切り込みを3cm、編始め、編終わりの両方向に交互に5箇所入れ、タテ方向の裁断面を合わせて筒状に縫製した後、JIS-L0217-103法に準拠して、以下のように洗濯時間のみ300分として洗濯を行った。
洗濯(300分)→遠心脱水→すすぎ(2分)→遠心脱水→すすぎ(2分)→遠心脱水その後、平干しで風乾し、裁断した編地の端のほつれの程度を以下の基準で評価した。3級以上を端面が切れっぱなしでも使えるものと判断した。
ほつれ評価基準
5級:傷みが認められず、洗濯前との差がない
4級:傷みが認められないが、洗濯前に比べへたっている部分がある
3級:やや傷みが認められるが、糸端の飛び出しがない
2級:痛みが認められ、糸端が飛び出している
1級:痛みが激しく、裁断面の編地組織が崩れている
<洗濯方法>
一般財団法人繊維評価技術協議会製品認証部発行の「SEKマーク繊維製品の洗濯方法」(2020年10月30日改定版・文書番号JEC326)に従い、下記の条件で洗濯処理を実施した。
・標準洗濯法(1995年度版JIS-L0217:1995 103法記載の方法)を用いて洗濯処理を実施し、乾燥は吊り干しで行い、洗濯20回行った評価試料を作成した。更にJEC326の高温加速洗濯法に準じて、ワッシャー洗濯機で80℃洗濯、家庭洗濯機で濯ぎを行い、洗濯10回規定の製品の洗濯方法を3回繰り返して高温洗濯30回とした。
一般財団法人繊維評価技術協議会製品認証部発行の「SEKマーク繊維製品の洗濯方法」(2020年10月30日改定版・文書番号JEC326)に従い、下記の条件で洗濯処理を実施した。
・標準洗濯法(1995年度版JIS-L0217:1995 103法記載の方法)を用いて洗濯処理を実施し、乾燥は吊り干しで行い、洗濯20回行った評価試料を作成した。更にJEC326の高温加速洗濯法に準じて、ワッシャー洗濯機で80℃洗濯、家庭洗濯機で濯ぎを行い、洗濯10回規定の製品の洗濯方法を3回繰り返して高温洗濯30回とした。
<抗ウイルス性試験>
2014年度版ISO18184記載の方法に準じて抗ウイルス活性値Mvを評価した。試験対象ウイルスは下記の2種である。この抗ウイルス活性値Mvが大きいほど、抗ウイルス性に優れる。
・A型インフルエンザウイルス(H3N2)(ATCC VR-1679)
・ネコカリシウイルス(F-9)(ATCC VR-782)
2014年度版ISO18184記載の方法に準じて抗ウイルス活性値Mvを評価した。試験対象ウイルスは下記の2種である。この抗ウイルス活性値Mvが大きいほど、抗ウイルス性に優れる。
・A型インフルエンザウイルス(H3N2)(ATCC VR-1679)
・ネコカリシウイルス(F-9)(ATCC VR-782)
(ポリウレタン樹脂の合成)
ポリウレタン樹脂として、ポリウレタン樹脂A及びBを合成した。ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bは、ウレア結合に由来する窒素含有量が異なり、ポリウレタン樹脂Aはウレア結合に由来する窒素含有量が0.0%であるのに対して、ポリウレタン樹脂Bはウレア結合に由来する窒素含有量が0.21%である。
ポリウレタン樹脂として、ポリウレタン樹脂A及びBを合成した。ポリウレタン樹脂Aとポリウレタン樹脂Bは、ウレア結合に由来する窒素含有量が異なり、ポリウレタン樹脂Aはウレア結合に由来する窒素含有量が0.0%であるのに対して、ポリウレタン樹脂Bはウレア結合に由来する窒素含有量が0.21%である。
(ポリウレタン樹脂Aの合成)
(i)両末端NCO基プレポリマーの合成
窒素ガスでシールした80℃の反応釜にジイソシアネートとしてMDI(以下MDIとする)を47.4重量部仕込み、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤の混合物2.2重量部を添加し、撹拌しながらポリマージオールとして数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール(以下PTMGとする)を100重量部注入し、1時間撹拌を継続して、両末端NCO基プレポリマーを得た。
(i)両末端NCO基プレポリマーの合成
窒素ガスでシールした80℃の反応釜にジイソシアネートとしてMDI(以下MDIとする)を47.4重量部仕込み、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤の混合物2.2重量部を添加し、撹拌しながらポリマージオールとして数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール(以下PTMGとする)を100重量部注入し、1時間撹拌を継続して、両末端NCO基プレポリマーを得た。
(ii)両末端OH基プレポリマーの合成
ジイソシアネートとして、MDI25重量部を窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜に仕込み、ポリマージオールとして、数平均分子量2,000のPTMG100重量部を撹拌しながら注入した。1時間反応後、鎖伸長剤の低分子量ジオールとして、1,4-ブタンジオール27.6重量部を更に注入し、両末端OH基プレポリマーを合成した。
ジイソシアネートとして、MDI25重量部を窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜に仕込み、ポリマージオールとして、数平均分子量2,000のPTMG100重量部を撹拌しながら注入した。1時間反応後、鎖伸長剤の低分子量ジオールとして、1,4-ブタンジオール27.6重量部を更に注入し、両末端OH基プレポリマーを合成した。
得られた両末端NCO基プレポリマーと両末端OH基プレポリマーを1:0.475の重量比で、撹拌翼を有する容量2,200mlのポリウレタン弾性繊維用の連続反応器に供給した。反応器内での平均滞留時間は約1時間、反応温度は約190℃で反応させてポリウレタン樹脂Aを得た。このポリウレタン樹脂AのTgは-68℃であった。また、このポリウレタン樹脂Aにおける全窒素含有量%は28%、ウレア結合に由来する窒素含有量%は0.0%であった。
(ポリウレタン樹脂Bの合成)
数平均分子量2000のPTMG200重量部と、MDI40重量部とを、乾燥窒素雰囲気下、60℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液とした。他方、末端封鎖剤としてエチレンジアミン3.38重量部及びジエチルアミン0.54重量部を、乾燥ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下で添加して、ポリウレタン樹脂B(固形分濃度30重量%)のジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリウレタン樹脂BのTgは-61℃であった。得られたポリウレタン樹脂Bにおける全窒素含有量%は26%、ウレア結合に由来する窒素含有量%は0.21%であった。
数平均分子量2000のPTMG200重量部と、MDI40重量部とを、乾燥窒素雰囲気下、60℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液とした。他方、末端封鎖剤としてエチレンジアミン3.38重量部及びジエチルアミン0.54重量部を、乾燥ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下で添加して、ポリウレタン樹脂B(固形分濃度30重量%)のジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリウレタン樹脂BのTgは-61℃であった。得られたポリウレタン樹脂Bにおける全窒素含有量%は26%、ウレア結合に由来する窒素含有量%は0.21%であった。
(ポリウレタン弾性繊維の製造)
ポリウレタン弾性繊維として、ポリウレタン弾性繊維(a)、(b)、(c)を製造した。ポリウレタン弾性繊維(a)及び(b)は、いずれもポリウレタン樹脂Aを原料とするものであるが、繊度が異なる。一方、ポリウレタン弾性繊維(c)は、ポリウレタン樹脂Bを原料とするものである。
ポリウレタン弾性繊維として、ポリウレタン弾性繊維(a)、(b)、(c)を製造した。ポリウレタン弾性繊維(a)及び(b)は、いずれもポリウレタン樹脂Aを原料とするものであるが、繊度が異なる。一方、ポリウレタン弾性繊維(c)は、ポリウレタン樹脂Bを原料とするものである。
(ポリウレタン弾性繊維(a)及び(b)の製造)
上述のようにして得られたポリウレタン樹脂Aを固化することなく、192℃の温度に保った紡糸ヘッドに導入した。紡糸用ポリマーをヘッドに設置したギアポンプにより計量、加圧し、フィルターでろ過後、1ホールのノズルから紡糸筒内に吐出させ、油剤を付与しながら溶融紡糸することで、繊度28dtexのポリウレタン弾性繊維(a)を得た。また、ギアポンプの吐出量を変えた以外は同様にして紡糸することで、繊度22dtexのポリウレタン弾性繊維(b)を得た。
上述のようにして得られたポリウレタン樹脂Aを固化することなく、192℃の温度に保った紡糸ヘッドに導入した。紡糸用ポリマーをヘッドに設置したギアポンプにより計量、加圧し、フィルターでろ過後、1ホールのノズルから紡糸筒内に吐出させ、油剤を付与しながら溶融紡糸することで、繊度28dtexのポリウレタン弾性繊維(a)を得た。また、ギアポンプの吐出量を変えた以外は同様にして紡糸することで、繊度22dtexのポリウレタン弾性繊維(b)を得た。
(ポリウレタン弾性繊維(c)の製造)
上述のようにして得られたポリウレタン樹脂Bのジメチルアセトアミド溶液に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と紫外線吸収剤をそれぞれ、ポリウレタン固形分に対して1.00重量%、0.25重量%になるように添加・混合、更に脱泡して紡糸原液とした。この紡糸原液を1ホールのノズルから500m/分、熱風温度310℃で乾式紡糸し、油剤を付与して28dtexのポリウレタン弾性繊維(c)を得た。
上述のようにして得られたポリウレタン樹脂Bのジメチルアセトアミド溶液に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と紫外線吸収剤をそれぞれ、ポリウレタン固形分に対して1.00重量%、0.25重量%になるように添加・混合、更に脱泡して紡糸原液とした。この紡糸原液を1ホールのノズルから500m/分、熱風温度310℃で乾式紡糸し、油剤を付与して28dtexのポリウレタン弾性繊維(c)を得た。
(実施例1)
28dtexのポリウレタン弾性繊維(a)と22dtex,12フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(d)をリング撚糸機を使って合撚(撚数300回/m、ポリウレタン弾性繊維のドラフト率2.5倍)することでFTY(フィラメント・ツイスティッド・ヤーン)(e)を製造した。このFTY(e)を編物の裏面及び繋ぎ糸に使用し、一方、編物の表面にはポリウレタン弾性繊維(a)と84dtex,48フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(f)をプレーティングして表面全面に使用して、図1に示すベアモックロディ編組織の編物を製造した。具体的には、福原精機製ダブルニット丸編機(釜径:33インチ、ゲージ:28本/インチ)をインターロックゲーティングで使用して、編機のシリンダー側はポリウレタン弾性繊維(a)を、ドラフト率2.5にて、ポリエチレンテレフタレートの仮撚加工糸(f)とともにプレーティング組織として編成(F3,F6)し、ダイヤル側(F2,F5)と繋ぎ糸(F1,F4)にFTY(e)を用いて編成した。この編地のポリエステル繊維の混率は72重量%、ポリウレタン弾性繊維の混率は28重量%であった。
28dtexのポリウレタン弾性繊維(a)と22dtex,12フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(d)をリング撚糸機を使って合撚(撚数300回/m、ポリウレタン弾性繊維のドラフト率2.5倍)することでFTY(フィラメント・ツイスティッド・ヤーン)(e)を製造した。このFTY(e)を編物の裏面及び繋ぎ糸に使用し、一方、編物の表面にはポリウレタン弾性繊維(a)と84dtex,48フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(f)をプレーティングして表面全面に使用して、図1に示すベアモックロディ編組織の編物を製造した。具体的には、福原精機製ダブルニット丸編機(釜径:33インチ、ゲージ:28本/インチ)をインターロックゲーティングで使用して、編機のシリンダー側はポリウレタン弾性繊維(a)を、ドラフト率2.5にて、ポリエチレンテレフタレートの仮撚加工糸(f)とともにプレーティング組織として編成(F3,F6)し、ダイヤル側(F2,F5)と繋ぎ糸(F1,F4)にFTY(e)を用いて編成した。この編地のポリエステル繊維の混率は72重量%、ポリウレタン弾性繊維の混率は28重量%であった。
出来上がった生機を開反し、乾熱185℃,1分間のプレセットを行ない、日阪製作所社製高圧液流染色機を用いて精練及び染色を行なった。染色では、高松油脂社製ポリエステル系吸水SR剤(商標名:SR-1000、)2%owfの共存下、湿熱130℃条件で分散染料による染色を施した。染色後は、ハイドロサルファイトナトリウム及びソーダ灰を用いた定法の還元洗浄処理した後、湯洗、水洗を実施し、脱水後に拡布状態でショートループドライヤーによる乾燥処理を施した。
次いで上記の方法で得られた生地を下記処方1の溶液を用いて、パッドドライキュア法によって処理した。因みに生地の樹脂パディングはドライオンウェット処方(乾燥した生地に薬液を浸漬後、搾液し所定の薬剤量を生地に処理する方法)にて実施した。マングル圧を前記編物のW.P.U%(ウエットピックアップ率 繊維重量当たりの液付着率)が100%となるように調整した。パッダーで処方1の水溶液を付与してマングルで絞った。乾燥温度120℃、キュアリング温度170℃で1分間、最終セットを兼ねて熱処理を行った。
処方1:
塩化ジデシルジメチルアンモニウム 0.35%solution
シリコーン系消泡剤 0.01%solution
りんご酸 1.00%solution
塩化ジデシルジメチルアンモニウム 0.35%solution
シリコーン系消泡剤 0.01%solution
りんご酸 1.00%solution
編物への塩化ジデシルジメチルアンモニウム(第四級アンモニウム塩)の付着量は、0.35%owf(on the weight of fiber:繊維重量比)であった。仕上がった編地は、密度54コース/インチ、56ウエール/インチ、目付130g/m2、厚み0.61mmであった。また、抗ウイルス活性値Mvは、4.5(洗濯20回後3.8、洗濯30回後3.5)、フリーカット性は4級であった。得られた加工布を性能評価した結果を表1に示す。
(実施例2)
22dtexのポリウレタン弾性繊維(b)と56dtex,36フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(g)をリング撚糸機を使って合撚(撚数300回/m、ポリウレタン弾性繊維のドラフト率2.5倍)することでFTY(h)を製造した。このFTY(h)を編物の裏面及び繋ぎ糸に使用し、一方、編物の表面にはポリウレタン弾性繊維(b)とポリエチレンテレフタレート短繊維100%の紡績糸(60s単糸、繊度1.5dtex、異形度1.5の三角断面、カット長38mm)(i)を使用して、図1に示すベアモックロディ編組織の編物を製造した。具体的には、福原精機製ダブルニット丸編機(釜径:33インチ、ゲージ:28本/インチ)をインターロックゲーティングで使用して、編機のシリンダー側にて、ポリウレタン弾性繊維(b)とポリエチレンテレフタレート紡績糸(i)をプレーティング組織として編成(F3,F6)し、ダイヤル側(F2,F5)と繋ぎ糸(F1,F4)にFTY(h)を用いて編成した。この編地のポリエステル繊維の混率は86重量%、ポリウレタン弾性繊維の混率は14重量%であった。出来上がった生機を開反し、実施例1と同様に染色加工、及び抗ウイルス加工を施して仕上げた。処方1のW.P.Uは同じく100%であった。仕上がった編地は、密度55コース/インチ、52ウエール/インチ、目付115g/m2、厚み0.55mmであった。また、抗ウイルス活性値Mvは、4.3(洗濯20回後3.6、洗濯30回後3.3)、フリーカット性は4級であった。得られた加工布を性能評価した結果を表1に示す。
22dtexのポリウレタン弾性繊維(b)と56dtex,36フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(g)をリング撚糸機を使って合撚(撚数300回/m、ポリウレタン弾性繊維のドラフト率2.5倍)することでFTY(h)を製造した。このFTY(h)を編物の裏面及び繋ぎ糸に使用し、一方、編物の表面にはポリウレタン弾性繊維(b)とポリエチレンテレフタレート短繊維100%の紡績糸(60s単糸、繊度1.5dtex、異形度1.5の三角断面、カット長38mm)(i)を使用して、図1に示すベアモックロディ編組織の編物を製造した。具体的には、福原精機製ダブルニット丸編機(釜径:33インチ、ゲージ:28本/インチ)をインターロックゲーティングで使用して、編機のシリンダー側にて、ポリウレタン弾性繊維(b)とポリエチレンテレフタレート紡績糸(i)をプレーティング組織として編成(F3,F6)し、ダイヤル側(F2,F5)と繋ぎ糸(F1,F4)にFTY(h)を用いて編成した。この編地のポリエステル繊維の混率は86重量%、ポリウレタン弾性繊維の混率は14重量%であった。出来上がった生機を開反し、実施例1と同様に染色加工、及び抗ウイルス加工を施して仕上げた。処方1のW.P.Uは同じく100%であった。仕上がった編地は、密度55コース/インチ、52ウエール/インチ、目付115g/m2、厚み0.55mmであった。また、抗ウイルス活性値Mvは、4.3(洗濯20回後3.6、洗濯30回後3.3)、フリーカット性は4級であった。得られた加工布を性能評価した結果を表1に示す。
(実施例3)
ポリウレタン弾性繊維(a)の代わりに28dtexのポリウレタン弾性繊維(c)を用いた以外は実施例1と全く同様にして、図1に示すベアモックロディ編組織の編物を製編した。なお、実施例3でポリウレタン弾性繊維(a)の代わりにポリウレタン弾性繊維(c)を用いて製造されたFTYをFTY(j)と称する。この編地のポリエステル繊維の混率は72重量%、ポリウレタン弾性繊維の混率は28重量%であった。
ポリウレタン弾性繊維(a)の代わりに28dtexのポリウレタン弾性繊維(c)を用いた以外は実施例1と全く同様にして、図1に示すベアモックロディ編組織の編物を製編した。なお、実施例3でポリウレタン弾性繊維(a)の代わりにポリウレタン弾性繊維(c)を用いて製造されたFTYをFTY(j)と称する。この編地のポリエステル繊維の混率は72重量%、ポリウレタン弾性繊維の混率は28重量%であった。
出来上がった生機を乾熱185℃,1分間のプレセットすることで、熱融着性弾性糸を融着させた。その後、合成繊維丸編地の一般的な工程条件にて精練したのち、処方1にてW.P.Uは同じく100%で抗ウイルス加工を行い、ファイナルセットを兼ねてキュアリング処理してオフホワイトで仕上げた。仕上がった編地は、密度54コース/インチ、56ウエール/インチ、目付130g/m2、厚み0.61mmであった。また、抗ウイルス活性値Mvは、4.4(洗濯20回後3.2、洗濯30回後2.8)、フリーカット性は4級であった。得られた加工布を性能評価した結果を表1に示す。
(実施例4)
28dtexのポリウレタン弾性繊維(a)と22dtex,12フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維dの仮撚加工糸をリング撚糸機を使って合撚(撚数300回/m、ポリウレタン弾性繊維のドラフト率2.5倍)することで、実施例1と同じFTY(e)を製造した。このFTY(e)を編物の繋ぎ糸に使用し、84dtex,48フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(f)を表面に使用し、56dtex,36フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(g)とFTY(e)を一本交互で裏面に使用して、図1に示すベアモックロディ編組織の編物を製造した。具体的には、福原精機製ダブルニット丸編機(釜径:33インチ、ゲージ:28本/インチ)をインターロックゲーティングで使用して、編機のシリンダー側は仮撚加工糸(f)で編成(F3,F6)し、ダイヤル側は仮撚加工糸(g)をF2に、FTY(e)をF5として1コースおきにウレタン弾性糸が存在するようにし、繋ぎ糸(F1,F4)にはFTY(e)を用いて編成した。この編地のポリエステル繊維の混率は90重量%、ポリウレタン弾性繊維の混率は10重量%であった。
28dtexのポリウレタン弾性繊維(a)と22dtex,12フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維dの仮撚加工糸をリング撚糸機を使って合撚(撚数300回/m、ポリウレタン弾性繊維のドラフト率2.5倍)することで、実施例1と同じFTY(e)を製造した。このFTY(e)を編物の繋ぎ糸に使用し、84dtex,48フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(f)を表面に使用し、56dtex,36フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(g)とFTY(e)を一本交互で裏面に使用して、図1に示すベアモックロディ編組織の編物を製造した。具体的には、福原精機製ダブルニット丸編機(釜径:33インチ、ゲージ:28本/インチ)をインターロックゲーティングで使用して、編機のシリンダー側は仮撚加工糸(f)で編成(F3,F6)し、ダイヤル側は仮撚加工糸(g)をF2に、FTY(e)をF5として1コースおきにウレタン弾性糸が存在するようにし、繋ぎ糸(F1,F4)にはFTY(e)を用いて編成した。この編地のポリエステル繊維の混率は90重量%、ポリウレタン弾性繊維の混率は10重量%であった。
出来上がった生機を乾熱185℃,1分間のプレセットすることで、熱融着性弾性糸を融着させた。その後、合成繊維丸編地の一般的な工程条件にて精練したのち、処方1にてW.P.Uは同じく100%で抗ウイルス加工を行い、ファイナルセットを兼ねてキュアリング処理してオフホワイトで仕上げた。仕上がった編地は、密度52コース/インチ、51ウエール/インチ、目付115g/m2、厚み0.52mmであった。また、抗ウイルス活性値Mvは、4.4(洗濯20回後3.1、洗濯30回後2.0)、フリーカット性は2.5級であった。得られた加工布を性能評価した結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリウレタン弾性繊維を使用しないモックロディを製編した。具体的には、福原精機製ダブルニット丸編機(釜径:33インチ、ゲージ:28本/インチ)を使用して、84dtex,48フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(f)を編機ダイヤル側(F2,F5)と、繋ぎ糸(F1,F4)と、編機シリンダー側(F3,F6)の全てに使用して、モックロディ編組織の編物を製造した。なお、実施例1~4で使用した、図1に示す「ベアモックロディ編組織」は、比較例1で使用した「モックロディ編組織」においてスパンデックスをベア(生)で交編している編組織のことである。出来上がった生機を開反し、実施例1と同様に染色加工を行い、W.P.Uが100%になるようにマングル圧を調整して、他の実施例と同様に処方1で抗ウイルス加工を施して仕上げた。仕上がった編地は、密度50コース/インチ、49ウエール/インチ、目付112g/m2、厚み0.49mmであった。また、抗ウイルス活性値Mvは、4.5(洗濯20回後2.8、30回後1.3)、フリーカット性は1.5級であった。得られた加工布を性能評価した結果を表1に示す。
ポリウレタン弾性繊維を使用しないモックロディを製編した。具体的には、福原精機製ダブルニット丸編機(釜径:33インチ、ゲージ:28本/インチ)を使用して、84dtex,48フィラメントのポリエチレンテレフタレート長繊維の仮撚加工糸(f)を編機ダイヤル側(F2,F5)と、繋ぎ糸(F1,F4)と、編機シリンダー側(F3,F6)の全てに使用して、モックロディ編組織の編物を製造した。なお、実施例1~4で使用した、図1に示す「ベアモックロディ編組織」は、比較例1で使用した「モックロディ編組織」においてスパンデックスをベア(生)で交編している編組織のことである。出来上がった生機を開反し、実施例1と同様に染色加工を行い、W.P.Uが100%になるようにマングル圧を調整して、他の実施例と同様に処方1で抗ウイルス加工を施して仕上げた。仕上がった編地は、密度50コース/インチ、49ウエール/インチ、目付112g/m2、厚み0.49mmであった。また、抗ウイルス活性値Mvは、4.5(洗濯20回後2.8、30回後1.3)、フリーカット性は1.5級であった。得られた加工布を性能評価した結果を表1に示す。
表1からわかるように、本発明の要件を満たす実施例1~4はいずれも、抗ウイルス性の洗濯耐久性に優れる。ただし、実施例2では、実施例1と比べて編物中のポリウレタン弾性繊維の含有量が少ないため、抗ウイルス性の洗濯耐久性は実施例1より劣る。同様に、実施例3では、ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン樹脂中のウレア結合に由来する窒素含有率が実施例1よりも高いため、抗ウイルス性の洗濯耐久性は実施例1より劣る。実施例1では編物の両面にポリウレタン弾性繊維が配置されているのに対して、実施例4では、編物の表面にはポリウレタン弾性繊維が配置されておらず、それに加えて編物の裏面にはポリウレタン弾性繊維を含むFTY(e)とポリエステルの仮撚加工糸(g)が一本ずつ交互に配置されているため、編物中のポリウレタン弾性繊維の含有量が実施例2よりさらに少なく、抗ウイルス性の洗濯耐久性は実施例1だけでなく実施例2と比べても劣る。比較例1では、編物がポリウレタン弾性繊維を全く含有しないため、抗ウイルス性の洗濯耐久性は実施例1~4と比べて著しく劣り、実際の使用では許容できないレベルである。
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、抗ウイルス特性の洗濯耐久性に優れており、各種衣料、寝装寝具、生活資材等々に広く活用することができる。とりわけ病院や介護・養護施設など各種医療機関などで着用する白衣、予防衣、各種作業衣、及び食品工場や厨房など食べ物を取扱う現場や製薬工場や飲料工場など衛生面を特に重要視すべき現場で着用する作業服、作業衣などへの適用が可能である。
Claims (7)
- ポリウレタン弾性繊維を1~35重量%含み、ポリエステル繊維を65~99重量%含む繊維からなる織編物であることを特徴とする請求項1に記載の抗ウイルス加工繊維製品。
- ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン樹脂が、ポリマージオールと、ジイソシアネートと、更に鎖伸長剤として低分子量ジオールとを重合して得られるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の抗ウイルス加工繊維製品。
- 鎖伸長剤が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、及び1-メチル-1,2-エタンジオールからなる群から選択される少なくとも一種の低分子量ジオールであることを特徴とする請求項3に記載の抗ウイルス加工繊維製品。
- ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン樹脂が、-100~0℃のガラス転移点(Tg)を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の抗ウイルス加工繊維製品。
- ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン樹脂のウレア結合に由来する窒素含有率が0.0~0.3%であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の抗ウイルス加工繊維製品。
- ポリウレタン弾性繊維を10~35重量%含む繊維からなる編物の繊維製品であって、少なくとも編物の片面を構成するニットループの全てにポリウレタン弾性繊維が存在することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の抗ウイルス加工繊維製品。
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