JP5870928B2 - ポリウレタン弾性糸およびその製造方法 - Google Patents

ポリウレタン弾性糸およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、抗菌性および消臭性に優れ、かつ耐変色性に優れたポリウレタン弾性糸に関するものであり、抗菌性および消臭性を有する布帛を得るのに好適なポリウレタン弾性糸およびその製造方法に関する。
弾性繊維は、その優れた伸縮特性からレッグウエア、インナーウエア、スポーツウエアなどの伸縮性衣料用途、紙おむつや生理用ナプキンなどのサニタリー用途(衛材用途)、産業資材用途に幅広く使用されている。
近年、より快適な住環境が求められる中で、抗菌性塗料、抗菌性フィルム・シート、抗菌性フィラメント、抗菌性トイレタリー製品、抗菌性台所用品、抗菌性文房具、抗菌砂、抗菌ティシュ、抗菌繊維、抗菌性化粧品などのいわゆる「抗菌性商品」が広く出回るようになってきた。また、同様に、加齢臭などに対する消臭機能を具備する、衣類、寝具などの「消臭性製品」も出回るようになってきた。
これらの製品に利用されている抗菌剤としては、無機系抗菌剤、特に銀系抗菌剤が多く見受けられる。また消臭剤としては活性炭、銀含有ゼオライト、ゼオライト、微粒子酸化亜鉛などが挙げられる。
上記無機系抗菌剤は、有機抗菌剤に比べて、耐候性・耐薬品性に優れ、急性経口毒性が低いという優れた特性を有している。加えて、耐熱性が有機系抗菌剤に比べて著しく高い。そのため、無機系抗菌剤は合成樹脂に添加して多分野で使われるようになってきた。しかしながら、無機系抗菌剤を合成樹脂に添加して成形すると、無機抗菌剤に含有される金属の作用と、成形時の熱や成形物に照射される光の影響で成形品が変色して、製品価値が著しく低下するという問題が生じ易い。
そこで、無機系抗菌剤を添加した抗菌性樹脂の熱変色を抑制する技術が多く提案されている(特許文献1)。しかしながら、これらの技術によれば、抗菌、消臭性に一定の性能が認められるが、耐黄変性については環境や経日によって大きく変色し、完全に課題が解決されたとは言い難い。
また、有機系の抗菌剤として天然抗菌剤であるヒノキチオールとZn、Si、Cu、Ni、Fe、Al及びMgから選ばれた少なくとも1種の元素を含む金属酸化物及び/または複合金属酸化物とを含有する抗菌消臭ポリウレタン弾性繊維(特許文献2)が提案されており、ポリウレタン弾性糸の抗菌性と消臭性に一定の性能は認められている。しかし、乾式紡糸中の受熱により抗菌剤であるヒノキチオールが昇華することが認められるため、予め多めに紡糸原液に含有させておく必要がある。また、ヒノキチオールは紡糸の熱量条件などによって残存量が変化するため、安定した抗菌性を保有したポリウレタン弾性糸を生産することが難しい。また、天然抗菌剤であるヒノキチオールが高価であることからコスト面でも課題がある。
さらに有機系の合成抗菌剤の使用(特許文献3)なども提案されている。しかしながら、これは、単独での使用では消臭性に効果がなく、抗菌性と消臭性の両立という面では課題があった。
特許4485871号公報 特開2002−105757号公報 特開2004−292471号公報
本発明は、抗菌性および消臭性に優れ、かつ耐変色性に優れたポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記の課題を解決するための本発明は、以下のいずれかの手段を採用する。
(1) ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタン金属リン酸塩と4級アンモニウム塩系化合物とを含有する紡糸原液から紡糸されたポリウレタン弾性糸であって、分子量120以下のモノアミン化合物の放散量が100μg/m以上であるポリウレタン弾性糸。
(2) 前記金属リン酸塩の含有量が0.5wt%以上10wt%である、前記(1)に記載のポリウレタン弾性糸。
(3) 前記金属リン酸塩の平均一次粒子径が3.0μm以下である、前記(1)または(2)に記載のポリウレタン弾性糸。
(4) 前記金属リン酸塩が、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、およびトリポリリン酸二水素アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
(5) 放散する前記モノアミン化合物が第2級モノアミン化合物である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸
(6) 前記4級アンモニウム塩系化合物が下記構造を有する、前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
Figure 0005870928
) 前記4級アンモニウム塩系化合物の含有量が0.1重量%以上5重量%以下の範囲である、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸
本発明によれば、主構成成分がポリマージオールおよびジイソシアネートであるポリウレタン金属リン酸塩と4級アンモニウム塩系化合物とを含有する紡糸原液から紡糸されたポリウレタン弾性糸であって、分子量120以下のモノアミン化合物の放散量が100μg/m以上あるため、伸縮性、消臭性、抗菌性、耐変色性に優れたポリウレタン弾性糸を得ることができる。そのため、かかるポリウレタン弾性糸を使用した布帛は伸縮性、消臭性、抗菌性、耐変色性に優れたものになる。
パッケージにおける各部位の寸法を示す概略図である。
以下本発明について、さらに詳細に述べる。
まず本発明で使用するポリウレタンについて述べる。
本発明に使用されるポリウレタンは、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。また、その合成法も特に限定されるものではない。すなわち、例えば、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンからとなるポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとからなるポリウレタンウレタンであってもよい。また、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレアであってもよい。本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグライコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
ポリマージオールはポリエーテル系、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系ジオールが使用されることが好ましい。
ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(THF)および3−メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG(以下、3M−PTMGと略する)、THFおよび2,3−ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許第2615131号公報などに開示される側鎖を両側に有するポリオール、THFとエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが不規則に配列したランダム共重合体等が好ましく使用される。これらポリエーテル系ジオールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
ポリウレタン弾性糸として耐摩耗性や耐光性を得る観点からは、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、特開昭61−26612号公報などに開示されている側鎖を有するポリエステルポリオールなどのポリエステル系ジオールや、特公平2−289516号公報などに開示されているポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
こうしたポリマージオールは単独で使用してもよいし、2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
ポリマージオールの分子量は、糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを得る観点から、数平均分子量が1000以上8000以下のものが好ましく、1500以上6000以下がより好ましい。この範囲の分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性糸を容易に得ることができる。
次に、ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタン弾性糸の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
次にポリウレタンを合成するにあって用いられる鎖伸長剤は、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうちの少なくとも1種を使用するのが好ましい。なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。
好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p,p’−メチレンジアニリン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を容易に得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果が失わない程度に加えてもよい。
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1−メチル−1,2−エタンジオールなどが代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性がより高くなり、また、より強度の高い糸を得ることができるのである。
本発明においてポリウレタンの分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として30000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
ポリウレタンには、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤としては、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。中でもポリウレタン重合時の条件でポリウレタン弾性糸における分子量120以下のモノアミン化合物放散量を100μg/mとする観点からは、該末端封鎖剤として分子量120以下のモノアミンを使用することが好ましい。
本発明においては、以上のような基本構成を有するポリウレタンからなるポリウレタン弾性糸に、金属リン酸塩を含有させることで、ポリウレタン弾性糸が元来保有している酢酸ガス、ノネナールガス、イソ吉草酸ガスに対する消臭性を阻害することなく、アンモニアガスに対しても消臭性を向上させることが可能となる。また、同時に、分子量120以下のモノアミン化合物をポリウレタン弾性糸に含有させ、ポリウレタン弾性糸からの放散量が100μg/m以上、好ましくは100μg/m以上500μg/m以下となるようにすることで、優れた抗菌性を保有させることが可能となる。
本発明における金属リン酸塩は、消臭性という観点から、層状構造を有するリン酸ジルコニウムやリン酸チタン等の4価金属の酸性リン酸塩、および、トリポリリン酸二水素アルミニウム等が好ましい。より好ましくは、リン酸ジルコニウムである。これらは、単独で使用しても良いし、2種以上を混合しても良い。
金属リン酸塩の含有量は、ポリウレタン弾性糸全重量に対して0.5重量%以上10重量%以下の範囲であることが好ましい。金属リン酸塩の含有量が0.5重量%未満だと、布帛とした際に十分なアンモニアガスの消臭性が得られにくくなるので、好ましくない。より好ましくは1.0重量%以上である。一方、含有量が10重量%を越えると、伸縮特性の悪化やコスト面で好ましくない。より好ましくは7.0重量%以下である。アンモニアガスに対する消臭性と物性面、コスト面というバランスを考慮すると、1.5重量%以上5.0重量%以下の範囲が特に好ましい。
金属リン酸塩は、紡糸原液の紡糸口金への詰まりを抑えるという観点から、平均一次粒子径が3.0μm以下のものが好ましい。より好ましくは1.5μm以下である。また、分散性の観点から平均一次粒子径が0.05μmより小さい場合、凝集力が高まり紡糸原液中に均一に混合することが困難になるため、平均一次粒子径が0.05μm以上のものが好ましい。より好ましくは0.15μm以上である。
一方、ポリウレタン弾性糸からの分子量120以下のモノアミン化合物の放散量を100μg/m以上とするためには、例えば、ポリウレタンを含む紡糸原液にモノアミン化合物を0.01重量%以上0.5重量%以下の範囲で含有させて紡糸することが好ましい。紡糸原液における該モノアミン化合物含有量が0.01重量%未満ということは、紡糸されたポリウレタン弾性糸にモノアミンが十分に含まれていないということであり、その結果十分な抗菌性が得られないということになる。一方、モノアミン化合物を紡糸原液中に0.5重量%以上となるように含有させると、得られたポリウレタン弾性糸の黄化性など品質が悪化する。
また、重合後にモノアミンを添加するのではなく、ポリウレタンを合成する際の末端封鎖剤として分子量120以下のモノアミンを用いることでも、ポリウレタン弾性糸における該モノアミン化合物の放散量を100μg/m以上とすることも可能である。具体的には、イソシアネート基とアミノ基とを反応させる際に、予めジアミン化合物等の鎖伸長剤と前記モノアミン化合物とを混合して使用することが好ましい。このときの鎖伸長剤中のアミノ基と該モノアミン化合物のアミノ基との比率は、5:1〜25:1の範囲であることが好ましい。更に好ましくは5:1〜20:1の範囲である。この鎖伸長剤と前記モノアミン化合物との混合物の、反応時使用量は、反応時におけるイソシアネート基濃度とアミノ末端基濃度とのモル比が1:1.04〜1:1.15の範囲となるようにすることが好ましい。これによって、通常の重合時よりもよりアミノ基が多く含まれるポリマ溶液が作られ、紡糸後の糸においても該モノアミンの放散量が100μg/m以上を確保することができる。
分子量120以下のモノアミン化合物としては、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、N−メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、N−ブチルメチルアミン、N−メチルイソブチルアミンなどの第2級アミン化合物や、エチルアミン、N−プロピルアミン、イソプロピルアミン、N−ブチルアミン、シクロヘキシルモノアミンなどの第1級アミン化合物が挙げられる。ポリウレタン紡糸原液の安定性という観点から第2級アミン化合物が好ましい。
上記のようなポリウレタン弾性糸には、抗菌性をさらに高めるために、4級アンモニウム塩系化合物も含有せしめることが好ましい。4級アンモニウム塩系化合物は、アンモニウムイオン中のアルキル基の鎖長により抗菌力に差があり、アルキル基の差長が長いと抗菌力が比較的高くなりやすい。また、鎖長が短すぎると紡糸時の熱で揮発したり変質しやすい。一方で、アルキル基の差長が長すぎると取り扱い性が悪くなる。したがって、所望する特性が得られるように、アルキル基等の鎖種、鎖長を選ぶことが好ましい。
抗菌力の観点から特に好ましいアンモニウムイオンは、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、オレイルトリメチルアンモニウムイオンなどである。これらは通常、下記のような構造を有し、該構造はスルホン酸塩、リン酸塩等の有機酸塩や塩化物、臭化物、ヨウ化物などの塩により供給される。中でも、変色や耐熱性等の安定性の観点からスルホン酸塩が好ましい。
Figure 0005870928
上記構造を有する塩の具体例としては、ジデシルジメチルアンモニウム3フッ化メチルスルホン酸塩、ジ−n−デシルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩、ジ−n−デシルジメチルアンモニウムペンタフルオロエタンスルホン酸塩、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩、及びベンジルジメチルヤシ油アルキルアンモニウムペンタフルオロエタンスルホン酸塩である。
4級アンモニウム塩系化合物は、抗菌性を発現し、変色や伸縮特性のバランスを保つという観点から、ポリウレタン弾性糸全重量に対して0.1重量%以上5重量%以下の範囲、さらには0.2重量%以上2重量%以下の範囲で含有することが好ましい。
さらに、ポリウレタン弾性糸には、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などにBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”(登録商標)などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)P−16などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタンなどの各種顔料、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、シリコーン、鉱物油などの滑剤、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらがポリマと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN−150などの酸化窒素補足剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80などの熱酸化安定剤、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ”(登録商標)300♯622などの光安定剤が使用されることも好ましい。
次に本発明のポリウレタン弾性糸の製造方法について詳細に説明する。
本発明においては、出発物質としてポリマージオールおよびジイソシアネートを用い、それらから得られるポリウレタンの紡糸原液に、金属リン酸塩および分子量120以下のモノアミン化合物を含有させて(すなわち存在せしめて)紡糸する。重合を安定化させるという観点から、予めポリウレタン溶液を作製しておき、それに金属リン酸塩分散液と分子量120以下のモノアミン化合物とを添加することが好ましい。なお、本発明における「紡糸原液」とは最終的に紡糸される液を言い、一方、ポリウレタン溶液とは、ポリウレタンを含む溶液を意味し、いかなる状態の液であってもよい。
ポリウレタン溶液の製法、また、溶液の溶質であるポリウレタンの製法は、溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少なく、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン弾性糸を得やすい。また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
ポリウレタンは、上記したようなポリマージオール、ジイソシアネート、鎖伸長剤を用いることができ、また必要に応じて上記したような末端封鎖剤を用いての重合することができる。特に好適なポリウレタンとしては、ポリマージオールとして分子量が1500以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミンのうちの少なくとも1種を使用して合成されたものが挙げられる。
ポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述の鎖伸長剤と反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、耐熱性に優れたものを得るという観点から、ポリウレタンの高温側の融点を200℃以上260℃以下の範囲に調節することが好ましい。代表的な方法は、ポリマージオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることにより達成され得る。ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
アミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
本発明においては、かかるポリウレタン溶液に金属リン酸塩および分子量120以下のモノアミン化合物を添加して紡糸原液とすることが好ましい。金属リン酸塩およびモノアミン化合物のポリウレタン溶液への添加方法としては、任意の方法が採用できる。その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法など各種の手段が採用できる。
金属リン酸塩およびモノアミン化合物は、それぞれを単独でポリウレタン溶液に添加してもよいし、予め混合しておき、それをポリウレタン溶液に添加してもよい。アンモニアガスに対する消臭性を発現させる観点からは、予めそれらを混合した分散液とした後にポリウレタン溶液に添加することが好ましい。
金属リン酸塩は、アンモニアガスに対する消臭性を向上させるため、0.5重量%以上10重量%以下の範囲でポリウレタン弾性糸に含有させることが好ましい。そのためには、紡糸前のポリウレタン紡糸原液に、金属リン酸塩を該紡糸原液の0.5重量%以上10重量%以下の範囲で斑なく分散させる必要があり、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を溶媒とするポリウレタン溶液に、上述の金属リン酸塩を加え、斑なく分散するよう攪拌、混合処理することで紡糸原液を得ることが好ましい。具体的には、金属リン酸塩を、あらかじめN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶媒に分散して金属リン酸塩分散液とし、その分散液をポリウレタン溶液に混合することが好ましい。ここで、添加される金属リン酸塩分散液の溶媒は、ポリウレタン溶液への均一な添加を行う観点から、ポリウレタン溶液と同一の溶剤を用いることが好ましい。また、金属リン酸塩のポリウレタン溶液への添加の際には、前記した、例えば、耐光剤、耐酸化防止剤などの薬剤や顔料などを同時に添加してもよい。
なお、本発明においては、ポリウレタンの重合後に該ポリウレタンを含む溶液にモノアミンを添加するのではなく、ポリウレタンを合成する際の末端封鎖剤として分子量120以下のモノアミンを多量に用いることで、最終的に紡糸に供する紡糸原液中に該モノアミン化合物を存在せしめても良い。
本発明においては、以上のようにして紡糸原液にポリウレタンと共に金属リン酸塩と分子量120以下のモノアミンを存在せしめるが、各種細菌への抗菌性を高めるために、分子量120以下のモノアミン化合物は紡糸原液に0.01重量%以上0.5重量%以下の範囲で含有させることが好ましい。
また、ポリウレタン紡糸原液におけるポリウレタンの濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
さらに、本発明においては、各種細菌への抗菌性を高めるために、4級アンモニウム塩系化合物を含有させる事も好ましい。そのためには、紡糸前のポリウレタン紡糸原液に上記したような4級アンモニウム塩系化合物を含有させ、紡糸を行う。4級アンモニウム塩系化合物を紡糸原液に含有させる方法としては単独でポリウレタン溶液と混合しても良いし、前記金属リン酸塩分散液に予め混合しておいても良い。
以上のように構成した紡糸原液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明のポリウレタン弾性糸を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
本発明のポリウレタン弾性糸の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
たとえば、本発明のポリウレタン弾性糸の永久歪率と応力緩和率は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。すなわち、所望の永久歪率と応力緩和率を有するポリウレタン弾性糸を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.10以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。
また、紡糸速度は、得られるポリウレタン弾性糸の強度を向上させる観点から、250m/分以上であることが好ましい。
本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。
[ポリウレタン弾性糸の強度、応力緩和率、永久歪率、伸度]
ポリウレタン弾性糸の強度、応力緩和率、永久歪率、伸度は、試料糸をインストロン4502型引張試験機にて、引張テストをすることにより測定した。
これらは下記により定義される。
すなわち、5cm(L1)の試料を50cm/分の引張速度で300%伸長させることを5回繰返した。この5回目の応力を(G1)とした。次に、そのまま300%伸長を30秒間保持した。30秒間保持後の応力を(G2)とした。次に伸長を回復せしめ応力が0になった際の試料糸の長さを(L2)とした。さらに6回目に試料糸が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G3)、破断時の試料糸の長さを(L3)とした。
以下、前記特性は下記式により与えられる。
強度[cN] =(G3)
応力緩和率[%]=100×((G1)−(G2))/(G1)
永久歪率[%]=100×((L2)−(L1))/(L1)
伸度[%] =100×((L3)−(L1))/(L1)
なお、引張テストは3回行い、平均値より求めた。
[消臭性、抗菌性評価用編み地の作成]
22dtexのポリウレタン弾性糸を3倍に延伸し、これに鞘糸としてポリアミド加工糸(商標キュープ、東レ(株)製、33デシテックス26フィラメント)を撚り数800T/mでカバーリングして、S撚りとZ撚りのシングルカバリング糸(SCY)を作製した。
さらに、パンスト編機(ロナティ社製、針数400本)の給糸口1、3口に上記S撚りSCYを、2、4口に上記Z撚りSCYを、編み込み張力1.0gで給糸し、編地を編成した。編地中のポリウレタン弾性糸の含有率は16%であった。
次いで、編地の染色加工を以下の通り実施し、タイツ編地を得た。
(1)プレセット:真空乾燥機使用、90℃×10分
(2)染色:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の染料“Lanaset”(登録商標) Black Bを2.0owf%使用して90℃で60分間処理し黒色に染めた。染色時のpH調整は酢酸と硫安で実施した。
(3)最後に柔軟処理を行い、セット工程(パンストセット機使用、セット:115℃×10秒、乾燥:120℃×30秒)を通して仕上げた。
[洗濯方法]
繊維製品新機能評価評議会が制定している、洗濯方法マニュアルに準拠した(JIS L0217:1995の付表1、洗い方103)。すなわち、JIS L0217:1995の付表1、洗い方103に規定される家庭電気洗濯機を使用し、40℃の水30リットルに対しJAFET標準洗剤(繊維製品新機能評価評議会製)40ミリリットルを溶解して洗濯液とし、この洗濯液に1kgの試料である被洗濯物を入れた。5分間洗濯、脱水、2分間濯ぎ洗い、脱水、2分間濯ぎ洗い、脱水の工程を1回とし、洗濯を行った。
[消臭性]
消臭試験は、消臭加工繊維製品認証基準(制定者:社団法人繊維評価技術協議会 製品認証部、制定日:平成14年9月1日)に準拠し、以下のように機器試験により臭気成分の消臭性評価を行なった。なお、社団法人繊維評価技術協議会で、該機器分析試験による各臭気成分の減少率について「消臭効果有り」とする合格基準を、表1に示す。
(検知管法)
1.サンプル(10cm×10cm)をテドラーバッグに入れる。
2.表1に示す所定量の試験ガスを注入し、2時間後の残存ガス濃度(ppm)を成分対応検知管(ガステック社製)で測定する。尚ガス充填量は3L、希釈ガスは乾燥空気または窒素ガスとする。
Figure 0005870928
3.サンプルを用いずに同様の評価を行い、空試験とする。
4.評価は下記の式に従って、残存ガス濃度の減少率を算出し、消臭率として表記する。
Figure 0005870928
なお、測定値はn=3の平均値で求めた。
[抗菌性]
抗菌試験は、社団法人繊維評価技術協議会が指定した抗菌性試験手順(JIS L1902:2008、菌液吸収法)に準拠して実施した。Xを無加工試料の18時間培養後の生菌数(個)、Yを試験生地の18時間培養後の生菌数(個)として、静菌活性値を下記の式から算出して抗菌力を評価した。なお、測定値はn=3の平均値で求めた。
Figure 0005870928
また、社団法人繊維評価技術協議会では、黄色ブドウ球菌の静菌活性値が2.2以上の時、抗菌に「効果有り」と認める。
[モノアミン化合物の放散量]
前処理:
ポリウレタン弾性糸を巻き取った後、35℃×65%RHの条件下で14日間保管した。その後、チャック付袋(生産日本社製J−4、340mm×240mm×0.04mm)にポリウレタン弾性糸を入れ、清浄空気を注入して速やかに密閉し、23℃の室温下で100時間保管した。
分析:
処理したポリウレタン弾性糸入りのチャック付袋より、ガスを全量捕集管に捕集した。捕集した有機成分を捕集管より加熱脱離し、GC/MSに導入、分析した。測定条件を表2に示す。
Figure 0005870928
定量はトルエンの検量線を用いてトータルイオン絶対面積による絶対検量法にて行った。なお、試料からの単位面積当たりの放散量は下記式にて測定し、測定値は同一水準のサンプルを2点測定し、n=2の平均値にて求めた。
Figure 0005870928
ここで、A、B、C、Dは図1のように定義した。なお、図1において、(a)はパッケージの上面図、(b)はパッケージの正面図である。
[NOx耐黄変性]
ポリウレタン弾性糸をステンレス板に10g巻き取り試料カードを作製した。この試料を、スコットテスターを使用して、空気中にNOガスを規定の濃度(7ppm)含有させたガス中に50時間暴露した。この暴露処理の前後で、カラーマスター(D25 DP−9000型 シグナルプロセッサー)を使用して“b”カラーを測定し、処理前後の差“△b”によって黄変程度を評価した。なお、測定値はn=3の平均値より求めた。
[平均一次粒子径]
無機粒子を日立製作所(株)製 電解放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)S−800にて撮影を行い、画像処理ソフトImage−Pro Version4.0にて解析して求めた。なお、投影面積円相当径を測定し、1サンプル当たりn=20の個数平均により求めた。
[金属リン酸塩の含有量]
ポリウレタン弾性糸を原糸吸光光度法によって分析し、金属リン酸塩の濃度を測定した。測定は、金属リン酸塩中の金属(Al、Zr、Ti)について行った。なお、測定値はn=3の平均より求め、金属リン酸塩の含有量を以下の式より求めた。
Figure 0005870928
[4級アンモニウム塩の含有量]
試料(ポリウレタン糸)1gを秤量し、メタノール100mlに入れ、4級アンモニウム塩を抽出した。抽出液について、液体クロマトグラフィーにて予め作成しておいた標準液から定量を行った。以下に分析条件を示す。なお、測定はn=2の平均より求めた。
カラム:LiChrospher 100 RP−18(5μm)、内径4.6mm、長さ150mm、カラム温度:35℃
検出:UV210nm
移動相:メタノール/水混合溶液(60/40容量%)、流速:1ml/分、注入量:2μl
なお以下において、実施例1〜14は、参考例である。
[実施例1]
分子量1800のPTMGとMDIとを1:1.58のモル比で90℃で2時間反応させ、イソシアネート末端のプレポリマとした後、35重量%となるようにDMAcに溶解してプレポリマ溶液を調整した。また、鎖伸長剤としてのエチレンジアミン、1,2プロパンジアミン、鎖停止剤(末端封鎖剤)としてのジエチルアミンを10:2:1のアミノ末端基濃度の比率で混合し、35重量%となるようにDMAcに溶解してアミン溶液を調整した。プレポリマ溶液とアミン溶液とをイソシアネート末端基とアミン末端基とのモル比が1:1.02となるように攪拌しながら混合し、ポリウレタンウレア重合体のDMAC溶液(濃度35重量%)を調整した。次に、酸化防止剤として、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462)と、p−クレゾ−ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)とを、2対1(重量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35重量%)を調整した。前記ポリウレタンウレア重合体のDMAc溶液96重量部と酸化防止剤DMAc溶液4重量部を混合し、ポリマ溶液A1とした。
次に、東亞合成社リン酸ジルコニウム系消臭剤“ケスモン”(登録商標)NS−10(平均一次粒子径0.9μm)をホモミキサーによりDMAcに分散し、リン酸ジルコニウム分散液B1(35重量%)とした。
次にジエチルアミン(分子量73.14)をDMAcに35重量%に調製し、モノアミン溶液C1とした。
ポリマ溶液A1、B1、C1を96.9重量%、3重量%、0.1重量%で均一に混合し、紡糸原液D1とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として720m/分のスピードで乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が3重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
得られたポリウレタン弾性糸について、評価用編み地を作成し、消臭性と抗菌性を測定した。ポリウレタン弾性糸自体のモノアミン化合物の放散量、NOx耐黄変性と併せて表3、4、5に結果を示す。
[実施例2]
ポリマ溶液A1、B1、C1を97.98重量%、2重量%、0.02重量%で均一に混合し、紡糸原液D2とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が2重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例3]
リン酸ジルコニウム分散液B1に代えて、合成したリン酸チタン(平均一次粒子径1.1μm)をホモミキサーによりDMAcに分散し、リン酸チタン分散液B2(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B2、C1を96.98重量%、3重量%、0.02重量%で均一に混合し、紡糸原液D3とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸チタンの含有量が3重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例4]
モノアミン溶液C1に代えて、エチルメチルアミン(分子量89.14)をDMAcに35重量%に調製し、モノアミン溶液C2(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B1、C2を94.88重量%、5重量%、0.12重量%で均一に混合し、紡糸原液D4とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例5]
モノアミン溶液C1に代えて、ジイソプロピルアミン(分子量101.19)をDMAcに35重量%に調製し、モノアミン溶液C3(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B1、C3を99.35重量%、0.5重量%、0.15重量%で均一に混合し、紡糸原液D5とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が0.5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例6]
モノアミン溶液C1に代えて、イソプロピルメチルアミン(分子量73.14)をDMAcに35重量%に調製し、モノアミン溶液C4(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B1、C4を89.5重量%、10.0重量%、0.5重量%で均一に混合し、紡糸原液D6とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が10重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。ただし、紡糸中に口金の詰まりと思われる糸切れが発生し、紡糸性は良くなかった。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例7]
モノアミン溶液C1に代えて、N−ブチルアミン(分子量73.14)をDMAcに35重量%に調製し、モノアミン溶液C5(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B1、C5を95.9重量%、4.0重量%、0.1重量%で均一に混合し、紡糸原液D7とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が4重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例8]
ポリマ溶液A1、B2、C1を92.9重量%、7.0重量%、0.1重量%で均一に混合し、紡糸原液D8とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸チタンの含有量が7重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4に結果を示す。
[実施例9]
リン酸ジルコニウム分散液B1に代えて、別途合成したリン酸ジルコニウム(平均一次粒子径3.5μm)をホモミキサーによりDMAcに分散し、リン酸ジルコニウム分散液B3(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B3、C1を97.4重量%、2.5重量%、0.1重量%で均一に混合し、紡糸原液D9とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸チタンの含有量が2.5重量%であるポリウレタン糸の50g巻糸体を得た。ただし、紡糸中に口金の詰まりと思われる糸切れが多数発生し、紡糸性は悪かった。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例10]
ポリマ溶液A1、B1、C1を93.99重量%、6重量%、0.01重量%で均一に混合し、紡糸原液D10とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が6重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例11]
分子量2100のPTMG、MDI、エチレングリコールおよび末端封鎖剤として1−ブタノールからなるポリウレタンウレタン重合体のDMAC溶液(35重量%)を調整した。次に、酸化防止剤として、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462)と、p−クレゾ−ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)とを2対1(重量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35重量%)を調整した。前記ポリウレタン重合体のDMAc溶液96重量部と酸化防止剤DMAc溶液4重量部を混合し、ポリマ溶液A2とした。
ロンザジャパン(株)社製4級アンモニウム塩系化合物“BARQUAT”(登録商標)MS−100(ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド)をDMAcに35重量%に調製し、抗菌剤溶液C6とした。
ポリマ溶液A2、B1、C1、C6を96.8重量%、2.5重量%、0.2重量%、0.5重量%で均一に混合し、紡糸原液D11とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が2.5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例12]
リン酸ジルコニウム分散液B1に代えて、テイカ(株)社製のトリポリリン酸二水素アルミニウム系消臭剤“K−FRESH”(登録商標)#100P(平均一次粒子径1.0μm)をホモミキサーによりDMAcに分散し、トリポリリン酸二水素アルミニウム分散液B4(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B4、C1を94.8重量%、5重量%、0.2重量%で均一に混合し、紡糸原液D12とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、トリポリリン酸二水素アルミニウムの含有量が5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例13]
ポリマ溶液A2、B1、C1を96.9重量%、3重量%、0.1重量%で均一に混合し、紡糸原液D13とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が3重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例14]
分子量1800のPTMGとMDIとを1:1.58のモル比で混合し、90℃で2時間反応させ、イソシアネート末端のプレポリマとした後、35重量%となるようにDMAcに溶解してプレポリマ溶液を調整した。また、鎖伸長剤としてエチレンジアミン、鎖停止剤としてジエチルアミンを14:1のアミノ末端基濃度の比率で混合し、35重量%となるようにDMAcに溶解してアミン溶液を調整した。
プレポリマ溶液とアミン溶液とをイソシアネート末端基とアミン末端基とのモル比が1:1.06となるように攪拌しながら混合し、ポリウレタンウレア重合体のDMAC溶液(35重量%)を調整した。次に、酸化防止剤として、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462)と、p−クレゾ−ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)とを2対1(重量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35重量%)を調整し、前記ポリウレタン重合体のDMAc溶液96重量部と酸化防止剤DMAc溶液4重量部を混合し、ポリマ溶液A3とした。
ポリマ溶液A3、B1を97重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸原液D14とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が3重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例15]
日油化学(株)社製4級アンモニウム塩系化合物“ニッサンカチオン”(登録商標)EQ−01DをDMAcに35重量%に調製し、抗菌剤溶液C7とした。
ポリマ溶液A1、B1、C1、C7を96.8重量%、2.5重量%、0.2重量%、0.5重量%で均一に混合し、紡糸原液D15とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が2.5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例16]
三洋化成(株)社製4級アンモニウム塩系化合物“ネオジャーミDFS”をDMAcに35重量%に調製し、溶液C8(35重量%)とした。
ポリマ溶液A3、B1、C8を96.5重量%、2.5重量%、1重量%で均一に混合し、紡糸原液D16とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が2.5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[実施例17]
ポリマ溶液A3、B1、C8を97.4重量%、2.5重量%、0.1重量%で均一に混合し、紡糸原液D17とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が2.5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[比較例1]
ポリマ溶液A1を実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメントのポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[比較例2]
ポリマ溶液A1、B1を97.5重量%、2.5重量%で均一に混合し、紡糸原液D18とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が2.5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[比較例3]
ポリマ溶液A1、C2を99.8重量%、0.2重量%で均一に混合し、紡糸原液D19とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメントのポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[比較例4]
リン酸ジルコニウム分散液B1に代えて、シナネンゼオミック(株)社製銀含有ゼオライト“ゼオミック”(登録商標)SW−10N(平均一次粒子径1.0μm)をホモミキサーによりDMAcに分散し、ゼオライト分散液B3(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B3を96重量%、4重量%で均一に混合し、紡糸原液D20とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、銀含有ゼオライトの含有量が4重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[比較例5]
モノアミン溶液C1に代えて、ジアミルアミン(分子量157.3)をDMAcに35重量%に調製し、モノアミン溶液C9(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B1、C9を97.9重量%、2.0重量%、0.1重量%で均一に混合し、紡糸原液D21とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が2重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[比較例6]
リン酸ジルコニウム分散液B1に代えて、東ソー(株)社製ハイシリカゼオライトHSZ−980HOA(平均一次粒子径2.0μm)をホモミキサーによりDMAcに分散し、ゼオライト分散液B5(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B5、C1を96.8重量%、3重量%、0.2重量%で均一に混合し、紡糸原液D22とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、ゼオライトの含有量が3重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[比較例7]
リン酸ジルコニウム分散液B1に代えて、堺化学(株)社製超微粒子酸化亜鉛“FINEX”−25(平均一次粒子径0.04μm)をホモミキサーによりDMAcに分散し、酸化亜鉛分散液B6(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B6、C1を96.9重量%、3重量%、0.1重量%で均一に混合し、紡糸原液D23とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、酸化亜鉛の含有量が3重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[比較例8]
モノアミン溶液C1に代えて、天然抗菌剤のヒノキチオールをDMAcに35重量%に調製し、溶液C10(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B6、C10を96.9重量%、3重量%、0.1重量%で均一に混合し、紡糸原液D24とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、酸化亜鉛の含有量が3重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[比較例9]
ポリマ溶液A1、C8を99重量%、1重量%で均一に混合し、紡糸原液D25とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、酸化亜鉛の含有量が3重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[比較例10]
モノアミン溶液C1に代えて、東亞合成(株)社製銀含有抗菌剤“ノバロン”(登録商標)AGT330(平均一次粒子径0.5μm)をホモミキサーによりDMAcに分散し、無機系抗菌剤分散液C11(35重量%)とした。ポリマ溶液A1、B1、B6、C11を96.5重量%、1.5重量%、1.0重量%、1.0重量%で均一に混合し、紡糸原液D26とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が1.5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
[比較例11]
ポリマ溶液A2、B1を97.5重量%、2.5重量%で均一に混合し、紡糸原液D27とした。これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が2.5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
各種評価結果について表3、4、5に結果を示す。
Figure 0005870928
Figure 0005870928
Figure 0005870928
本発明によれば、伸縮性、消臭性、抗菌性、耐変色性に優れたポリウレタン弾性糸を得ることができるので、かかるポリウレタン弾性糸を使用することで、伸縮性、消臭性、抗菌性、耐変色性に優れた布帛を得ることができる。
A パッケージの外径
B 紙管の外径
C 最外層の糸巻き幅
D 最内層の糸巻き幅

Claims (7)

  1. ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタン金属リン酸塩と4級アンモニウム塩系化合物とを含有する紡糸原液から紡糸されたポリウレタン弾性糸であって、分子量120以下のモノアミン化合物の放散量が100μg/m以上であるポリウレタン弾性糸。
  2. 前記金属リン酸塩の含有量が0.5wt%以上10wt%である、請求項1に記載のポリウレタン弾性糸。
  3. 前記金属リン酸塩の平均一次粒子径が3.0μm以下である、請求項1または2に記載のポリウレタン弾性糸。
  4. 前記金属リン酸塩が、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、およびトリポリリン酸二水素アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
  5. 放散する前記モノアミン化合物が第2級モノアミン化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
  6. 前記4級アンモニウム塩系化合物が下記構造を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
    Figure 0005870928
  7. 前記4級アンモニウム塩系化合物の含有量が0.1重量%以上5重量%以下の範囲である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
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