JP6516121B2 - ポリウレタン弾性糸及びその製造方法 - Google Patents
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(1)ポリマージオール、ジイソシアネート、鎖伸長剤として低分子量ジアミンとを反応させてなるポリウレタンからなる弾性糸であって、鎖伸長剤としてエチレンジアミンを単独で用い、ポリエチレンイミン及び/又は変性ポリエチレンイミンを0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲で含有し、金属リン酸塩を0.5質量%以上5質量%以下の範囲で含有するポリウレタン弾性糸。
(2)金属リン酸塩がリン酸ジルコニウムまたはトリポリリン酸二水素アルミニウムのいずれかである(2)記載のポリウレタン弾性糸。
(3)ポリマージオール、ジイソシアネート、鎖伸長剤として低分子量ジアミンとを反応させてなるポリウレタンからなる弾性糸の製造方法であって、鎖伸長剤としてエチレンジアミンを単独で用い、ポリエチレンイミン及び/又は変性ポリエチレンイミンが溶液固形分に対して0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲で含有され、金属リン酸塩が溶液固形分に対して0.5質量%以上5質量%以下の範囲で含有されるポリウレタン溶液を乾式紡糸するポリウレタン弾性糸の製造方法。
[ポリエチレンイミン及び変性ポリエチレンイミン]
本発明に適用されるポリエチレンイミンは、特に制限はないが、ポリウレタン弾性糸との相溶性の観点から完全な線状高分子ではなく、分子中に、第一級アミノ基と、第二級アミノ基と、第三級アミノ基とを含む分岐構造を有していることが好ましい。かかるポリエチレンイミンの数平均分子量は、通常、200〜100,000、好ましくは300〜30,000の範囲が望ましい。また、その粘度は、25℃において、通常、800〜1000,000mPa・sの範囲が好ましい。特に、分子中の、第一級アミノ基と、第二級アミノ基と、第三級アミノ基との割合は、30〜40モル%、30〜40モル%、25〜35モル%の範囲が好ましい。本発明に適用されるポリエチレンイミンの具体例としては、分子中の、第一級アミノ基と、第二級アミノ基と、第三級アミノ基との割合が、35モル%、35モル%、30モル%であるポリエチレンイミンを例示できる。市販品としては、“エポミン”(登録商標)SP−003、SP−006,SP−012,SP−018,およびSP−200(日本触媒社製)を挙げることができる。また、ポリエチレンイミンの他に変性ポリエチレンイミンについても適用できる。ここで、変性ポリエチレンイミンとは、上記ポリエチレンイミンとエポキシ化合物、アクリル化合物、ハロゲン化合物などとの誘導体が挙げられる。市販品としては、“エポミン”(登録商標)RP−20、PP−061(日本触媒社製)を挙げることができる。
[金属リン酸塩]
本発明に使用される金属リン酸塩としては、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属リン酸塩などを用いることが好ましい。中でも、アンモニアに対する消臭性という観点から層状構造を有するリン酸ジルコニウム、リン酸チタン、トリポリリン酸二水素アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
[金属リン酸塩の粒子径]
また、本発明において金属リン酸塩は、製造時に紡糸原液の紡糸口金への詰まりを抑えるという観点から、平均一次粒子径が3.0μm以下のものが好ましい。より好ましくは1.5μm以下である。また、分散性の観点から平均一次粒子径が0.05μmより小さい場合、凝集力が高まり紡糸原液中に均一に混合することが困難になるため、平均一次粒子径が0.05μm以上のものが好ましい。なお、本発明における平均粒子径は、例えば堀場製作所(株)製の粒度分布測定装置LA−910等の一般的なレーザー回折・散乱法を原理とした測定装置によって求められる数平均粒子径である。
[ポリウレタン]
次に本発明のポリウレタン弾性糸に使用されるポリウレタンについて述べる。
[ポリマージオールに由来の部分構造]
ポリマージオールに由来の部分構造としてはポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系等の骨格を有するものが好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系の部分構造であることが好ましい。
[イソシアネートに由来の部分構造]
ジイソシアネートに由来の部分構造としては、次のジイソシアネートに由来のものを挙げることができる。ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートに由来の部分構造が、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンとするのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどに由来の部分構造もまた好ましい。脂肪族ジイソシアネートに由来の部分構造は、特にポリウレタン弾性糸の黄変を抑制に有効にである。そして、これらのジイソシアネートに由来の部分構造は1種のみでもよいし、2種以上を併用してもよい。
[ポリウレタンの分子量]
また、本発明においてポリウレタンの分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として30000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、本発明における分子量はGPCにより測定したポリスチレン換算の分子量である。
[融点]
本発明においてポリウレタンの融点は、200℃以上260℃以下の範囲であることが好ましい。融点をかかる範囲に調節するには、後述するポリウレタンの製造時に鎖伸長剤として用いるジオールに耐熱性に優れたものを用いることにより融点をかかる範囲に調節することができる。かかる方法として例えば、ポリマージオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることが挙げられる。ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
[その他の成分]
本発明のポリウレタン弾性糸には、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などにBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”(登録商標)などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)P−16などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタンなどの各種顔料、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、シリコーン、鉱物油などの滑剤、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらがポリマと結合した状態で含まれることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN−150などの酸化窒素補足剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80などの熱酸化安定剤、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ”(登録商標)300♯622などの光安定剤を含むことも好ましい。
[ポリウレタン弾性糸の繊度、断面形状]
本発明のポリウレタン弾性糸の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
[ポリウレタン弾性糸の製造方法]
次に本発明のポリウレタン弾性糸の製造方法について説明する。
[ポリウレタンの末端封鎖剤]
ポリウレタンには、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤としては、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。
[触媒]
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
[ポリエチレンイミン及び/又は変性ポリエチレンイミンおよび金属リン酸塩の添加方法]
本発明においては、ポリウレタン溶液に、ポリエチレンイミン及び/又は変性ポリエチレンイミンと、必要に応じ金属リン酸塩とを含有せしめる。ポリエチレンイミン及び/又は変性ポリエチレンイミンおよび金属リン酸塩は、ポリウレタン溶液に順次添加しても良いし同時に添加してもよい。ポリエチレンイミン及び/又は変性ポリエチレンイミンおよび金属リン酸塩を同時にポリウレタン溶液へ添加する場合、添加方法としては任意の方法が採用できるが、代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法などを適用することができる。
消臭試験は、消臭加工繊維製品認証基準(制定者:社団法人繊維評価技術協議会 製品認証部、制定日:平成25年4月1日) に準拠し、以下のように機器試験により臭気成分の消臭性評価を行なった。
1.サンプル(ポリウレタン弾性糸1g)をテドラーバッグに入れる。
2.対象となるガス試験に準じた所定量の試験ガスを注入し、初発濃度をアンモニアガス試験では100ppm、酢酸ガス試験では30ppmとする。2時間後の残存ガス濃度(ppm)を成分対応検知管(ガステック社製)で測定する。尚ガス充填量は3L、希釈ガスは乾燥空気または窒素ガスとする。
3.サンプルを用いずに同様の評価を行い、空試験とする。
4.評価は下記の式に従って、残存ガス濃度の減少率を算出し、消臭率として表記する。
繊維製品新機能評価評議会が制定している、洗濯方法マニュアルに準拠した(JIS L0217:1995の付表1、洗い方103)。すなわち、JIS L0217:1995の付表1、洗い方103に規定される家庭電気洗濯機を使用し、40℃の水30リットルに対しJAFET標準洗剤(繊維製品新機能評価評議会製)40ミリリットルを溶解して洗濯液とし、この洗濯液に1kgの試料である被洗濯物を入れた。5分間洗濯、脱水、2分間濯ぎ洗い、脱水、2分間濯ぎ洗い、脱水の工程を1回とし、洗濯を行った。
(染色性)
1.ポリウレタン弾性糸をカセ取りで5g計量し、染色用サンプルとする。
2.サンプルをステンレスポッドに入れ、染料(MITSUI NYLON BLACK GL)4%owf、浴比1:40、ph4.0にて95℃で40分間染色処理を行う。
3.ソーピング処理を80℃×10分間行った後、フィックス剤(ハイフィックスGM)3%owf、を使用してフィックス処理を70℃×20分間行い、サンプルを水洗、風乾する。
4.サンプルの染色状態を濃染5級から淡染1級の5段階評価し、サンプルの濃染状態評価とする。級数が高いほうが、濃く染色された状態で好ましい。
上記の染色したサンプル2.5gとポリアミド繊維からなる染色されていないベア編地2.5gを併せてステンレスポッドに入れ、0.8g/Lの洗剤液200ccで洗濯処理する。編地を取り出し水洗後、風乾する。試験繊維のベア編地の染色状態を濃染5級から淡染1級の5段階評価し、これを染色編地の洗濯後の濃染状態評価とする。級数が高いほうが、濃く染色された状態で好ましい。また、ポリアミド繊維からなるベア編地の着色汚染状態を淡染5級から濃染1級の5段階評価し、これを堅牢性評価とする。級数が高いほうが、着色汚染が少ない状態で好ましい。
分子量1800のPTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体のDMAC溶液(35質量%)を調製した。次に、酸化防止剤として、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462D)と、p−クレゾ−ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390D)とを2対1(質量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35質量%)を調整し、前記ポリウレタンウレア重合体のDMAc溶液96質量部と酸化防止剤溶液4質量部を混合し、ポリマ溶液A1を調製した。
日本触媒社製のポリエチレンイミン“エポミン”(登録商標)SP−006をDMAcに溶解し35質量%のポリエチレンイミン溶液B2を調製した。
日本触媒社製のポリエチレンイミン“エポミン”(登録商標)SP−018をDMAcに溶解し35質量%のポリエチレンイミン溶液B3を調製した。
実施例1で調製したのと同様のポリマ溶液A197.5質量部:と、実施例3で調製したのと同様のB3:0.5質量部と、実施例2で調製したのと同様のC1:2.0質量部とを均一に混合し、紡糸溶液D4を調製した。これを実施例1と同様の条件で乾式紡糸して、22デシテックス、2フィラメント、ポリエチレンイミンの含有量が0.5質量%、リン酸ジルコニウムの含有量が2.0質量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。評価結果について表1および表2に示す。
日本触媒社製のポリエチレンイミン“エポミン”(登録商標)SP−200をDMAcに溶解し35質量%のポリエチレンイミン溶液B4を調製した。実施例1で調製したのと同様のポリマ溶液A1:96.0質量部と、上記B4:2.0質量部と、実施例2で調製したのと同様のC1:2.0質量部とを均一に混合し、紡糸溶液D5を調製した。これを実施例1と同様の条件で乾式紡糸して、22デシテックス、2フィラメント、ポリエチレンイミンの含有量が2.0質量%、リン酸ジルコニウムの含有量が2.0質量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。評価結果について表1および表2に示す。
日本触媒社製のプロピレンオキサイド変性ポリエチレンイミン“エポミン”(登録商標)PP−061をDMAcに溶解し35質量%のポリエチレンイミン溶液B5を調製した。
実施例1で調製したのと同様のポリマ溶液A1のみを実施例1と同様の条件で乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメントのポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。各種評価結果について表1および表2に示す。
実施例1で調製したのと同様のポリマ溶液A1:98質量部と、C1:2質量部とを均一に混合し、紡糸溶液D7を調製した。これを実施例1と同様の条件で乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、リン酸ジルコニウムの含有量が2質量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。各種評価結果について表1および表2に示す。
実施例1で調製したのと同様のポリマ溶液A1:95.5質量部と、実施例6で調製したのと同様のC2:4.5質量部とを%、%で均一に混合し、紡糸溶液D8を調製した。これを実施例1と同様の条件で乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、トリポリリン酸二水素アルミニウムの含有量が4.5質量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。各種評価結果について表1および表2に示す。
Claims (3)
- ポリマージオール、ジイソシアネート、鎖伸長剤として低分子量ジアミンとを反応させてなるポリウレタンからなる弾性糸であって、鎖伸長剤としてエチレンジアミンを単独で用い、ポリエチレンイミン及び/又は変性ポリエチレンイミンを0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲で含有し、金属リン酸塩を0.5質量%以上5質量%以下の範囲で含有するポリウレタン弾性糸。
- 金属リン酸塩がリン酸ジルコニウムまたはトリポリリン酸二水素アルミニウムのいずれかである請求項1記載のポリウレタン弾性糸。
- ポリマージオール、ジイソシアネート、鎖伸長剤として低分子量ジアミンとを反応させてなるポリウレタンからなる弾性糸の製造方法であって、鎖伸長剤としてエチレンジアミンを単独で用い、ポリエチレンイミン及び/又は変性ポリエチレンイミンが溶液固形分に対して0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲で含有され、金属リン酸塩が溶液固形分に対して0.5質量%以上5質量%以下の範囲で含有されるポリウレタン溶液を乾式紡糸するポリウレタン弾性糸の製造方法。
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