JP2022133242A - ポリウレタン弾性糸およびその製造方法 - Google Patents

ポリウレタン弾性糸およびその製造方法 Download PDF

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Toshihiro Tanaka
達昭 上林
Tatsuaki Kamibayashi
克哉 鈴木
Katsuya Suzuki
和樹 苗代
Kazuki Naeshiro
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Abstract

【課題】抗菌性に優れたポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供する。【解決手段】主構成成分がポリマージオールおよびジイソシアネートであるポリウレタンからなる弾性糸であって、1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよびノニオン系界面活性剤を含有するポリウレタン弾性糸。【選択図】なし

Description

本発明は、抗菌性に優れ、かつ耐変色性に優れたポリウレタン弾性糸に関するものであり、抗菌性を有する布帛を得るのに好適なポリウレタン弾性糸およびその製造方法に関する。
弾性繊維は、その優れた伸縮特性からレッグウエア、インナーウエア、スポーツウエアなどの伸縮性衣料用途、紙おむつや生理用ナプキンなどのサニタリー用途(衛材用途)、産業資材用途に幅広く使用されている。
近年、より快適な住環境が求められる中で、抗菌性塗料、抗菌性フィルム・シート、抗菌性フィラメント、抗菌性トイレタリー製品、抗菌性台所用品、抗菌性文房具、抗菌砂、抗菌ティシュ、抗菌繊維、抗菌性化粧品などのいわゆる「抗菌性商品」が広く出回るようになってきた。
これらの製品に利用されている抗菌剤としては、無機系抗菌剤、特に銀系抗菌剤が多く見受けられる。
上記無機系抗菌剤は、有機抗菌剤に比べて、耐候性・耐薬品性に優れ、急性経口毒性が低いという優れた特性を有している。加えて、耐熱性が有機系抗菌剤に比べて著しく高いため、合成樹脂に添加して多分野で使われるようになった。
上記無機系抗菌剤を構成する金属イオンとしては、銀、水銀、銅、亜鉛、錫が挙げられ、中でも銀イオン、銅イオンが挙げられる。これらをガラス、ゼオライト、シリカゲル、ケイ酸塩、ウイスカ、アルミナ、セラミックスなどの多孔性構造をもった物質に担持させると、抗菌性に優れた効果をもたらすことができる。これらの繊維への適用技術が多く提案されている(特許文献1~3)。
しかしながら、無機系抗菌剤を合成樹脂に添加して成形すると、無機抗菌剤に含有される金属による架橋作用や触媒作用にて合成樹脂のゲル化や分子量変化による不具合、成形時の熱変色、成形物が暴露されるNOxガスによる変色、成形物に照射される光による変色によって、その製品価値が著しく低下するという問題が生じ易い。
そこで、無機系抗菌剤を添加した抗菌性樹脂の変色を抑制する技術が提案されている(特許文献4)。しかしながら、これらの技術によれば、抗菌性に一定の性能が認められるが、耐黄変性については環境や経日によって大きく変色し、充分に課題が解決されたとは言い難い。
特開平5-339810号公報 特開平6-93565号公報 特開2017-40007号公報 特許4485871号公報
本発明は、抗菌性に優れ、かつ耐変色性に優れたポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記の課題を解決するための本発明は、以下のいずれかの手段を採用する。
(1)主たる出発物質がポリマージオール、及びジイソシアネートであるポリウレタンを主構成成分とするポリウレタン弾性糸であって、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよび(b)ノニオン系界面活性剤を含有するポリウレタン弾性糸。
(2)(a)の含有量が0.1質量%以上30質量%以下である前記(1)に記載のポリウレタン弾性糸。
(3)(a)の平均一次粒子径が3.0μm以下である、前記(1)または(2)に記載のポリウレタン弾性糸。
(4)(a)が銀を含有する緩水溶性ガラスおよび/または銅を含有する緩水溶性ガラスである、前記(1)~(3)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
(5)(b)がポリオキシエチレンアルキルエーテルである、前記(1)~(4)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
(6)4級アンモニウム塩系抗菌剤を含有する前記(1)~(5)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
(7)ポリマージオールおよびジイソシアネートを主たる出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスを混合するとともに、ノニオン系界面活性剤を含有量が(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスに対して0.01質量%以上20質量%以下の範囲となるように混合して、該紡糸原液を乾式紡糸するポリウレタン弾性糸の製造方法。
(8)ポリマージオールおよびジイソシアネートを主たる出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスを分散液として混合する、前記(7)に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
(9)(a)1B族元素および/または2B族元素が銀および/または銅である、前記(7)または(8)に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
(10)(b)がポリオキシエチレンアルキルエーテルである、前記(7)~(9)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
本発明によれば、主構成成分がポリマージオールおよびジイソシアネートであるポリウレタンからなる弾性糸であって、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよびノニオン系界面活性剤を含有し、抗菌性、耐変色性、伸縮性に優れたポリウレタン弾性糸を得ることができる。そのため、かかるポリウレタン弾性糸を使用した布帛は抗菌性、耐変色性、伸縮性に優れたものになる。
以下本発明について、さらに詳細に述べる。
まず本発明のポリウレタン弾性糸において主構成成分として使用されるポリウレタンについて述べる。ここで、主構成成分とは、ポリウレタン弾性糸に50質量%を超えて含有される成分である。
本発明に使用されるポリウレタンは、ポリマージオールおよびジイソシアネートを主たる出発物質とする構造を有するものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。ここで、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするとは、得られるポリウレタン重合体がそれぞれの成分に由来する構造を有することを表す。すなわち、本明細書においてポリマージオールとジイソシアネートとを出発物質として得られるポリウレタン重合体の構造を特定するものであって、異なる原料から同等の構造が形成されたものであってもよく、原料自体を特定するものではない。また、その合成法も特に限定されるものではない。すなわち、例えば、ポリマージオールとジイソシアネートと鎖伸長剤として低分子量ジアミンからとなるポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリマージオールとジイソシアネートと鎖伸長剤として低分子量ジオールとからなるポリウレタンウレタンであってもよい。また、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレアであってもよい。本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグリコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。ここで、ポリマージオールおよびジイソシアネートを主たる出発物質とする構造を有するポリウレタンとは、出発物質においてイソシアネート化合物のうち、ジイソシアネートを50質量%を超えて含み、かつ、出発物質においてイソシアネート化合物と反応する成分(ポリマージオール、低分子量ジアミン、低分子量ジオール、水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物、多官能性のグリコール等)のうちポリマージオールを50質量%を超えて含むものをいう。なお、質量比率の計算をするに当たっては、実際に用いられた原料に関わらず、上記の成分を出発原料としたものと仮定して計算するものとする。また、ジオール化合物において、低分子量ジオールとは、分子量500未満のものをいい、分子量500以上のものをポリマージオールという(ジアミン化合物においても同じ)。
ポリマージオールはポリエーテル系、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系ジオールが使用されることが好ましい。
ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(THF)および3-メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG、テトラヒドロフラン(THF)および2-メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG、THFおよび2,3-ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許第2615131号公報などに開示される側鎖を両側に有するポリオール、THFとエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキサイドが不規則に配列したランダム共重合体等が好ましく使用される。これらポリエーテル系ジオールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
また、ポリウレタン弾性糸として耐摩耗性や耐光性を得る観点からは、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、特開昭61-26612号公報などに開示されている側鎖を有するポリエステルポリオールなどのポリエステル系ジオールや、特公平2-289516号公報などに開示されているポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
また、こうしたポリマージオールは単独で使用してもよいし、2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
ポリマージオールの分子量は、糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを得る観点から、数平均分子量が1000以上8000以下のものが好ましく、1500以上6000以下がより好ましい。この範囲の分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性糸を容易に得ることができる。
次に、ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5-ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。脂環族ジイソシアネートは、特にポリウレタン弾性糸の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
次にポリウレタンを合成するにあって用いられる鎖伸長剤は、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうちの少なくとも1種を使用するのが好ましい。なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を一分子中に両方有するものであってもよい。
好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p,p’-メチレンジアニリン、1,3-シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)フォスフィンオキシドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を容易に得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果が失わない程度に加えてもよい。
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1-メチル-1,2-エタンジオールなどが代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性がより高くなり、また、より強度の高い糸を得ることができるのである。
また、本発明においてポリウレタンの分子量は、耐久性や強度の高いポリウレタン弾性糸を得る観点から、数平均分子量として30000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
ポリウレタンには、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤としては、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。
本発明においては、以上のような基本構成を有するポリウレタンからなるポリウレタン弾性糸に、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよびノニオン系界面活性剤を含有させることで、優れた抗菌性を保有させることが可能となる。
緩水溶性ガラスとは、一般には、非水溶性であるケイ酸ガラス、すなわち、その主原料であるSiOに対して、Pおよび/またはBが合計で30質量%以上配合されて生成される緩やかに水に溶解するガラスである。本発明で用いられる緩水溶性ガラスは、(a)1B族元素および/または2B族元素を保持することができればよく、上記のSiOを主原料とする一般的な緩水溶性ガラスばかりでなく、単独でガラス化できるPおよび/またはBを主原料とするものであってもよく、SiOを全く含有しないものであってもよい。ここで本発明における緩水溶性ガラス中に含まれるPおよび/またはBが30質量%に満たないと、ポリウレタン弾性糸の水系加工工程、例えば染色加工工程で(a)1B族元素および/または2B族元素イオンの溶出が不調となり、抗菌効果が不十分となるためである。
本発明において、緩水溶性ガラスに含有される(a)1B族元素および/または2B族元素は、酸化物を原料として配合されることが好ましい。(a)1B族元素および/または2B族元素の酸化物としては、例えばAgO、AgO、Ag3、CuO、CuO、ZnO、Auが挙げられる。抗菌性の観点から(a)1B族元素および/または2B族元素の酸化数は物質として安定であれば、低い方が好ましく、特に好ましいのは、AgOおよびCuOである。かかる(a)1B族元素および/または2B族元素の酸化物は原料ベースで、リン酸系および/またはホウ酸系の緩水溶性ガラス粉末中に合計で1質量%以上配合されることが好ましい。
この(a)1B族元素および/または2B族元素を含有するリン酸系の緩水溶性ガラスおよび/またはホウ酸系の緩水溶性ガラスを使用して種々の方法により抗菌機能を持ったポリウレタン弾性糸を作成することができる。これら(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスは、単独で使用しても良いし、2種以上を混合しても良い。緩水溶性ガラス製造法は特に限定はなく、溶融急冷法、ゾルゲル法が好ましい。緩水溶性ガラス製造時に前述成分以外にも、微量成分として、SrO、BaO、TiO、ZrO、Nb、CsO、RbO、TeO、BeO、GeO、Bi、La、Y、WO、MoO、またはFe等も含め、ガラス固溶体とすることができる。さらに、F、Cl、SO、Sb、SnO、あるいはCe等を清澄剤として添加してもよい。
(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスの含有量は、ポリウレタン弾性糸全質量に対して0.1質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましい。(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスの含有量が0.1質量%未満だと、布帛とした際に十分な抗菌性が得られにくくなる場合がある。より好ましくは0.5質量%以上である。一方、含有量が30質量%を越えると、伸縮特性の悪化やコスト面で好ましくない場合がある。好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下である。抗菌性と物性面、コスト面というバランスを考慮すると、1.0質量%以上5.0質量%以下の範囲が特に好ましい。
また、本発明において(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスは、紡糸原液の紡糸口金への詰まりを抑えるという観点から、平均一次粒子径が3.0μm以下のものが好ましい。より好ましくは1.5μm以下である。また、分散性の観点から平均一次粒子径が0.05μmより小さい場合、凝集力が高まり紡糸原液中に均一に混合することが困難になるため、平均一次粒子径が0.05μm以上のものが好ましい。より好ましくは0.15μm以上である。平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて、例えば、数万倍視野での一次粒子を挟む一定方向の2本の平行線の間隔にある一次粒子に対して、それらの投影面積円相当を画像処理により生成せしめ、その直径を無作為に20個測定して、個数基準により上位5%(最大値)及び下位5%(最小値)の数値を除去し、残り90%(18個の値)の平均値を求めた。また、粒径分布は平均一次粒子径を最頻度粒子径(モード径)で除した値が0.5から1.5が好ましく、より好ましいのは0.8~1.2である。さらに、平均一次粒子径の2.0倍以内に粒径最大値が分布していることが好ましく、より好ましいのは1.5倍以内である。
本発明において、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスはポリウレタン中に均質に分布していることが好ましい。そのためには各種界面活性剤を分散剤として使用して分散させることが公知であるが、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスをポリウレタン中に均質に分散し、極めて優れた紡糸性、抗菌性、耐変色性、伸縮性を有するポリウレタン弾性糸を得るにはノニオン系(非イオン系)界面活性剤を使用すればよいことを見いだした。また、ノニオン系界面活性剤を使用すると、特に抗菌性に対して相乗的に作用する効果があることもまた見いだした。一方、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系-カチオン系両性界面活性剤などイオン性の界面活性剤は衣料品用の布帛には必須の水系加工工程、例えば染色を経ると抗菌性が発現しない場合がある。
本発明におけるノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルモノグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ジエタノールアミドなどが挙げられる。これらのうち、いわゆる界面活性剤の親水部(Hydrophil)はエーテル型が好ましく、例えば、エチレンオキシド重合体、プロピレンオキシド重合体、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体のうち少なくとも1種であることが好ましい。ノニオン系界面活性剤としてエチレンオキシド重合体の末端変性誘導体、プロピレンオキシド重合体の末端変性誘導体、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体の末端変性誘導体のうちの少なくとも1種を含有することで、紡糸性を高めつつ、抗菌性を良好なものとすることができる。いわゆる界面活性剤の疎水部(Hydrophob)は前述の末端変性構造のことであるが、アルキル基、フェニル基、スチレン化フェニル基が好ましく、ノニオン系界面活性剤として、具体的には、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンエチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンプロピルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート等が挙げられる。より好ましいのはポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルであり、ポリオキシエチレンオキシプロピレントリススチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンモノスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレン‐2,4,6‐トリス(α,α‐ジメチルベンジル)フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレン‐2,4‐ビス(α,α‐ジメチルベンジル)フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレン‐2‐モノ(α,α‐ジメチルベンジル)フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレン‐4‐モノ(α,α‐ジメチルベンジル)フェニルエーテル等が挙げられる。最も好ましいのは、これらのスチレン基の付加モル数が分布を持ち、これらの混合物を用いる場合である。
本発明において、4級アンモニウム塩系抗菌剤を併用することが好ましい。衣料用や医療用の布帛、衛材用品の繊維構造物には特に適正な抗菌性レベルで皮膚感作性を制御することが重要である。1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスが完全な無機物であることに対して、有機物である4級アンモニウム塩系抗菌剤はポリウレタン弾性糸の表層に分布しやすく、4級アンモニウムの溶出がより速やかに進行することから、4級アンモニウム塩系抗菌剤は製造直後や染色など各種加工直後の初期の抗菌性能を制御することが容易である。一方、1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスの1B族元素および/または2B族元素の溶出は緩やかに進行することから、添加量や粒子径などを調製することにより、繰り返し洗濯後や長期エージング後も必要とするレベルの抗菌性が持続する様に制御することが容易である。このように、抗菌成分の溶出速度が異なる抗菌剤をポリウレタン弾性糸中に併存させることにより、初期状態から長期エージング後まで、抗菌性を最適なレベルに設計できるのである。4級アンモニウム塩系抗菌剤を併用する場合には、アンモニウムイオン中のアルキル基の鎖長により抗菌力に差があり、抗菌力の強いものが望ましいが、ポリウレタン弾性糸の製造上にかかる受熱による熱分解抑制の観点や、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスの(a)1B族元素および/または2B族元素の溶出を阻害するイオン性を抑制する観点からアルキル基等の鎖種、鎖長が大きく、すなわち炭素数の大きいアルキル基等を選ぶことが好まし。この観点から特に好ましいアンモニウムイオンは、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、オレイルトリメチルアンモニウムイオンなどである。また、4級アンモニウム塩を構成するカウンターアニオンにも配慮することが好ましい。これらは通常、塩化物、臭化物、ヨウ化物などの無機塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩等の有機酸塩により供給され、中でも、変色や耐熱性等の安定性、破断強伸度向上の観点からカルボン酸塩、スルホン酸塩が好ましく、カルボン酸塩が最も好ましい。
上記構造を有する塩の具体例としては、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート、ジデシルジメチルアンモニウムグルコネート、ジデシルジメチルアンモニウムプロピオネート等のジデシルジメチルアンモニウムのカルボン酸塩、オレイルトリメチルアンモニウムアジペート、オレイルトリメチルアンモニウムグルコネート等のオレイルトリメチルアンモニウムのカルボン酸塩、ジデシルジメチルアンモニウム3フッ化メチルスルホン酸塩、ジ-n-デシルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩、ジ-n-デシルジメチルアンモニウムペンタフルオロエタンスルホン酸塩、n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩、及びベンジルジメチルヤシ油アルキルアンモニウムペンタフルオロエタンスルホン酸塩等のスルホン酸塩である。
4級アンモニウム塩系抗菌剤は、抗菌性を発現し、変色や伸縮特性のバランスを保つという観点から、ポリウレタン弾性糸全質量に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲で含有することが好ましい。本発明のポリウレタン弾性糸には、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などにBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA-80などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”(登録商標)などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)P-16などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタンなどの各種顔料、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、シリコーン、鉱物油などの滑剤、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらがポリマと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN-150などの酸化窒素補足剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA-80などの熱酸化安定剤、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ”(登録商標)300♯622などの光安定剤が使用されることも好ましい。
次に本発明のポリウレタン弾性糸の製造方法について詳細に説明する。
本発明においては、主たる出発物質としてポリマージオールおよびジイソシアネートを用い、それらから得られるポリウレタンの紡糸原液に、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよびノニオン系界面活性剤を含有させて乾式紡糸する。(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよびノニオン系界面活性剤を混合して、ポリウレタンの紡糸原液を調整する際、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラス100質量部に対してノニオン系界面活性剤を0.01質量部以上20質量部以下の範囲となるように混合する。より好ましくは、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスを微細粉末化する工程で予めノニオン系界面活性剤を微細粉末と混錬し、微細粉末をノニオン系界面活性剤で被覆することが好ましい。ポリウレタン溶液の製法、また、溶液の溶質であるポリウレタンの製法は、溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少なく、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン弾性糸を得やすい。また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリマージオールとして分子量が1500以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてエチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミンのうちの少なくとも1種を使用して合成されたものが挙げられる。
ポリウレタンは、例えば、ジメチルアセトアミド(以下DMAcと略す)、ジメチルスルホキシド(以下DMFと略す)、ジメチルスルホキシド(以下DMSOと略す)、n-メチルピロリジノン(以下NMPと略す)などやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述の鎖伸長剤と反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、耐熱性に優れたものを得るという観点から、ポリウレタンの高温側の融点を200℃以上260℃以下の範囲に調節することが好ましい。代表的な方法は、ポリマージオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることにより達成され得る。ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)が1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
アミン系触媒としては、例えば、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ビス-2-ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’-ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチル-N’-ジメチルアミノエチル-ピペラジン、N-(2-ジメチルアミノエチル)モルホリン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
こうして得られるポリウレタン溶液におけるポリウレタンの濃度は、通常、30質量%以上80質量%以下の範囲が好ましい。
本発明においては、かかるポリウレタン溶液に(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよびノニオン系界面活性剤を添加する。(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよびノニオン系界面活性剤のポリウレタン溶液への添加方法としては、任意の方法が採用できる。その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法など各種の手段が採用できる。
そして、本発明においては、抗菌性を向上させるため、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスを0.5質量%以上10質量%以下の範囲でポリウレタン弾性糸に含有させることが好ましい。そのためには、紡糸前のポリウレタン紡糸原液に、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスを0.5質量%以上10質量%以下の範囲で斑なく分散させる必要があり、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等を溶媒とするポリウレタンの紡糸原液に、上述の(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよびノニオン系界面活性剤を加え、斑なく分散するよう攪拌、混合処理することが好ましい。具体的には、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよびノニオン系界面活性剤を、あらかじめN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の溶媒に分散して(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラス分散液とし、その分散液をポリウレタン紡糸原液に混合することが好ましい。ここで、添加される(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラス分散液の溶媒は、ポリウレタン溶液への均一な添加を行う観点から、ポリウレタン溶液と同一の溶剤を用いることが好ましい。また、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスのポリウレタン溶液への添加の際には、前記した、例えば、耐光剤、耐酸化防止剤などの薬剤や顔料などを同時に添加してもよい。さらに、抗菌性を発現させる観点から(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよびノニオン系界面活性剤を予め混合した分散液とした後にポリウレタン紡糸原液に混合することが好ましい。
また、本発明においては、各種細菌への抗菌性を高めるために4級アンモニウム塩系抗菌剤を含有させる事も好ましい。そのためには、紡糸前のポリウレタン紡糸原液に4級アンモニウム塩系抗菌剤を含有させ、紡糸を行う。4級アンモニウム塩系抗菌剤を紡糸原液に含有させる方法としては単独で紡糸原液と混合しても良いし、前記(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよびノニオン系界面活性剤分散液に予め混合しておいても良い。混合する順序はノニオン系界面活性剤と1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスを予め混合した分散液とした後に4級アンモニウム塩系抗菌剤を混合する順序とすることがより好ましく、次にこの分散液をポリウレタン紡糸原液に混合することがより好ましい。最も好ましい4級アンモニウム塩系抗菌剤を紡糸原液に含有させる方法としてはノニオン系界面活性剤と1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスを予め混合した分散液とは独立して、4級アンモニウム塩系抗菌剤を単独で紡糸原液と混合することである。
以上のように構成した紡糸原液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明のポリウレタン弾性糸を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
本発明のポリウレタン弾性糸の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
たとえば、本発明のポリウレタン弾性糸の永久歪率と応力緩和は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。すなわち、所望の永久歪率と応力緩和を有するポリウレタン弾性糸を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.10以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。
また、紡糸速度は、得られるポリウレタン弾性糸の強度を向上させる観点から、250m/分以上であることが好ましい。
本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
[NOx耐黄変性]
ポリウレタン弾性糸をステンレス板に10g巻き取り試料カードを作製した。この試料を、スコットテスターを使用して、空気中にNOガスを規定の濃度(7ppm)含有させたガス中に50時間暴露した。この暴露処理の前後で、カラーマスター(D25 DP-9000型 シグナルプロセッサー)を使用して“b”カラーを測定し、処理前後の差“Δb”によって黄変程度を評価した。なお、測定値はn=3の平均値より求めた。
[平均一次粒子径]
無機粒子を日立製作所(株)製 電解放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)S-800にて撮影を行い、画像処理ソフトImage-Pro Version4.0にて解析して求めた。なお、測定パラメーターは投影面積円相当径を用い、1サンプル当たりn=20の個数平均により求めた。
[紡糸性・糸切れ頻度]
紡糸液固形分あたりの糸切れ頻度を糸切れ回数/t換算で計測した。
[1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスの作成]
SiO;24mol%、B;52mol%、NaO;10mol%、TiO;10 mol%、AgO;4mol%を混合し、800℃~1300℃で溶融し、冷却後得られたガラスを粉砕し、平均一次粒子径10μm以下を分級し、平均一次粒子径0.8μmに湿式ミリングし、白色粉末を得た。これを緩水溶性銀ガラス1とした。
また、P;48mol%、MgO;48mol%、AgO;4mol%を混合し、800℃~1300℃で溶融し、冷却後得られたガラスを粉砕し、平均一次粒子径10μm以下を分級し、平均一次粒子径0.8μmに湿式ミリングし、白色粉末を得た。これを緩水溶性銀ガラス2とした。
[抗菌性評価用編み地の作成]
22dtexのポリウレタン弾性糸を3倍に延伸し、これに鞘糸としてポリアミド加工糸(商標キュープ、東レ(株)製、33デシテックス26フィラメント)を撚り数800T/mでカバーリングして、S撚りとZ撚りのシングルカバリング糸(SCY)を作製した。
さらに、パンスト編機(ロナティ社製、針数400本)の給糸1、3に上記S撚りSCYを、給糸2、4に上記Z撚りSCYを、編み込み張力1.0gで給糸し、編地を編成した。編地中のポリウレタン弾性糸の含有率は16%であった。
次いで、編地の染色加工を以下の通り実施し、タイツ編地を得た。
(1) プレセット:真空乾燥機使用、90℃×10分
(2) 染色: チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の染料“Lanaset”(登録商標)Black Bを2.0owf%使用して90℃で60分間処理し黒色に染めた。染色時のpH調整は酢酸と硫安で実施した。
(3) 最後に柔軟処理を行い、セット工程(パンストセット機使用、セット:115℃×10秒、乾燥:120℃×30秒)を通して仕上げた。
[洗濯方法]
繊維製品新機能評価評議会が制定している、洗濯方法マニュアルに準拠した(JIS L0217:2020の付表1、洗い方103)。すなわち、JIS L0217:2020の付表1、洗い方103に規定される家庭電気洗濯機を使用し、40℃の水30リットルに対しJAFET標準洗剤(繊維製品新機能評価評議会製)40ミリリットルを溶解して洗濯液とし、この洗濯液に1kgの試料である被洗濯物を入れた。5分間洗濯、脱水、2分間濯ぎ洗い、脱水、2分間濯ぎ洗い、脱水の工程を1回とし、洗濯を行った。
[抗菌性]
抗菌試験は、社団法人繊維評価技術協議会が指定した抗菌性試験手順(JIS L1902:2015、菌液吸収法)に準拠して実施した。Xを無加工試料の18時間培養後の生菌数(個)、Yを試験生地の18時間培養後の生菌数(個)として、抗菌活性値を算出して抗菌力を評価した。なお、測定値はn=3の平均値で求めた。
また、社団法人繊維評価技術協議会では、黄色ブドウ球菌の抗菌活性値が2.2以上の時、抗菌に「効果有り」としている。
[ポリウレタン弾性糸の強度、応力緩和率、永久歪率、伸度]
ポリウレタン弾性糸の強度、応力緩和率、永久歪率、伸度は、試料糸をインストロン4502型引張試験機にて、引張テストをすることにより測定した。
これらは下記により定義される。
すなわち、5cm(L1)の試料を50cm/分の引張速度で300%伸長させることを5回繰返した。この5回目の応力を(G1)とした。次に、そのまま300%伸長を30秒間保持した。30秒間保持後の応力を(G2)とした。次に伸長を回復せしめ応力が0になった際の試料糸の長さを(L2)とした。さらに6回目に試料糸が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G3)、破断時の試料糸の長さを(L3)とした。
以下、前記特性は下記式により与えられる。
強度[cN]=(G3)
応力緩和率[%]=100×((G1)-(G2))/(G1)
永久歪率[%]=100×((L2)-(L1))/(L1)
伸度[%] =100×((L3)-(L1))/(L1)
なお、引張テストは3回行い、平均値より求めた。
[実施例1]
分子量1800のPTMGとMDIとを1:1.58のモル比で90℃下で2時間反応させ、イソシアネート末端のプレポリマとした後、35質量%となるようにDMAcに溶解してプレポリマ溶液を調整した。また、鎖伸長剤としてエチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、鎖停止剤としてジエチルアミンを5:1:1の質量比率で混合し、35質量%となるようにDMAcに溶解してアミン溶液を調整した。
プレポリマ溶液とアミン溶液とをイソシアネート末端基とアミン末端基とのモル比が1:1.02となるように攪拌しながら混合し、ポリウレタンウレア重合体のDMAC溶液(35質量%)を調整した。次に、酸化防止剤として、t-ブチルジエタノールアミンとメチレン-ビス-(4-シクロヘキシルイソシアネ-ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462)と、p-クレゾ-ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)とを2対1(質量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35質量%)を調整し、前記ポリウレタンウレア重合体のDMAc溶液96質量部と酸化防止剤溶液4質量部を混合し、ポリマ溶液A1とした。次に、1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスとして緩水溶性銀ガラス1とノニオン系界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(三洋化成工業製イオネットMO)をホモミキサーによりDMAcに分散し、分散液B1(35質量%)とした。次にポリマ溶液A1、B1を97質量%、2質量%で均一に混合し、紡糸溶液D1とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として720m/分のスピードで乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメント、緩水溶性ガラス抗菌剤の含有量が2質量%、ノニオン系界面活性剤が0.1質量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
得られたポリウレタン弾性糸について、紡糸性、NOx耐黄変性、伸縮特性を測定した。さらに、評価用編み地を作成し、抗菌性を測定した。各種評価結果を表1、表2に示す。
[実施例2]~[実施例8]
実施例1と同様の方法で、表1に示す抗菌剤成分および界面活性剤成分からなる組成にてポリウレタン弾性糸を得た。得られたポリウレタン弾性糸について、紡糸性、NOx耐黄変性、伸縮特性を測定した。さらに、評価用編み地を作成し、抗菌性を測定した。各種評価結果を表1、表2に示す。
[実施例9]および[実施例10]
表1に示す抗菌剤成分、界面活性剤成分および4級アンモニウム塩系抗菌剤からなる組成とした以外は、実施例1と同様の方法で、ポリウレタン弾性糸を得た。なお、4級アンモニウム塩系抗菌剤は、ポリマ溶液A1と緩水溶性銀ガラス1とノニオン系界面活性剤を含む分散液とを混合した後に、添加し溶解して紡糸溶液とした。得られたポリウレタン弾性糸について、紡糸性、NOx耐黄変性、伸縮特性を測定した。さらに、評価用編み地を作成し、抗菌性を測定した。各種評価結果を表1、表2に示す。
[比較例1]
実施例1と同様に、ポリマ溶液A1を乾式紡糸し、22デシテックス、2フィラメントのポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。得られたポリウレタン弾性糸について、紡糸性、NOx耐黄変性、伸縮特性を測定した。さらに、評価用編み地を作成し、抗菌性を測定した。各種評価結果を表1、表2に示す。
[比較例2]~[比較例8]
実施例1と同様の方法で、表1に示す抗菌剤成分および界面活性剤成分からなる組成にてポリウレタン弾性糸を得た。得られたポリウレタン弾性糸について、紡糸性、NOx耐黄変性、伸縮特性を測定した。さらに、評価用編み地を作成し、抗菌性を測定した。各種評価結果を表1、表2に示す。
Figure 2022133242000001
Figure 2022133242000002

Claims (10)

  1. 主たる出発物質がポリマージオール、及びジイソシアネートであるポリウレタンを主構成成分とするポリウレタン弾性糸であって、(a)1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスおよび(b)ノニオン系界面活性剤を含有するポリウレタン弾性糸。
  2. (a)の含有量が0.1質量%以上30質量%以下である請求項1に記載のポリウレタン弾性糸。
  3. (a)の平均一次粒子径が3.0μm以下である請求項1または2に記載のポリウレタン弾性糸。
  4. (a)が銀を含有する緩水溶性ガラスおよび/または銅を含有する緩水溶性ガラスである請求項1~3のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
  5. (b)がポリオキシエチレンアルキルエーテルである請求項1~4のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
  6. 4級アンモニウム塩系抗菌剤を含有する請求項1~5のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
  7. ポリマージオールおよびジイソシアネートを主たる出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に、1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスを混合するとともに、ノニオン系界面活性剤を含有量が1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラス100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下の範囲となるように混合して、該紡糸原液を乾式紡糸するポリウレタン弾性糸の製造方法。
  8. ポリマージオールおよびジイソシアネートを主たる出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に、1B族元素および/または2B族元素を含有する緩水溶性ガラスを分散液として混合する、請求項7に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
  9. 1B族元素および/または2B族元素が銀および/または銅である、請求項7または8に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
  10. (b)がポリオキシエチレンアルキルエーテルである、請求項7~9のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
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