JP2010242240A - 消臭性布帛および繊維製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】染色堅牢性に優れる消臭性布帛および該消臭性布帛を用いてなる繊維製品を提供する。
【解決手段】消臭化処理が施されてなる消臭性布帛であって、特定の共重合ポリエステル繊維aを含むことを特徴とする消臭性布帛。
【選択図】なし

Description

本発明は、染色堅牢性に優れる消臭性布帛および繊維製品に関する。
快適生活を目指した生活環境の多様化に伴い、臭いに対する人間の関心が非常に高まっている。このような状況の下、悪臭を繊維構造体で取り除くために、繊維形成能を有する熱可塑性高分子化合物と臭気を吸着する吸着剤を主成分とする繊維原料を溶融紡糸するもの(例えば、特許文献1参照)や、後加工によって消臭剤を繊維構造体に付与したもの(例えば、特許文献2)、多孔性の活性炭繊維を使用したもの(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
しかしながら、これらの繊維を用いてなる布帛は染色堅牢性の点で充分とはいえなかった。
なお、本出願人は先に、常圧カチオン可染性繊維を用いて布帛を得た後、該布帛をカチオン染料で染色することにより、優れた発色性と染色堅牢性とを有し、布帛強度が高く、環境負荷の少ない染色織物を得ることを提案している。また、ナノファイバーと称せられる超極細繊維は例えば、特許文献4などにより提案されている。
特開平5−222614号公報 特開平10−102379号公報 特開平10−76250号公報 特開2007−2364号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、染色堅牢性に優れる消臭性布帛および該消臭性布帛を用いてなる繊維製品を提供することにある。
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、消臭化処理が施されてなる消臭性布帛に特定の共重合ポリエステル繊維を含ませることにより、染色堅牢性に優れる消臭性布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「消臭化処理が施されてなる消臭性布帛であって、下記要件を満足する共重合ポリエステル繊維aを含むことを特徴とする消臭性布帛。」が提供される。
(共重合ポリエステル繊維a)
共重合成分として、酸成分中にスルホイソフタル酸の金属塩(A)および下記式(I)で表される化合物(B)を下記数式(1)および(2)を同時に満足するよう含有し、かつ該共重合ポリエステルのガラス転移温度が70〜85℃の範囲内にあり、かつ該共重合ポリエステルの固有粘度が0.55〜1.00dL/gの範囲内にある共重合ポリエステルからなる共重合ポリエステル繊維である。
Figure 2010242240
[上記式中、Rは水素原子又は炭素数1〜10個のアルキル基を表し、Xは4級ホスホニ
ウムイオン又は4級アンモニウムイオンを表す。]
3.0≦A+B≦5.0 (1)
0.2≦B/(A+B)≦0.7 (2)
[上記数式中、Aは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とするスルホイソフタ
ル酸の金属塩(A)の共重合量(モル%)、Bは共重合ポリエステルを構成する全酸成分
を基準とする上記式(I)で表される化合物(B)の共重合量(モル%)を表す。]
その際、布帛がカチオン染料を用いて染色してなることが好ましい。また、前記共重合ポリエステル繊維aの単繊維径が単繊維径10〜1000nmの範囲内であることが好ましい。また、前記共重合ポリエステル繊維aのフィラメント数が500本以上であることが好ましい。また、前記共重合ポリエステル繊維aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条であることが好ましい。また、他の繊維として、単繊維径10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸bが布帛に含まれることが好ましい。また、前記消臭化処理が親水処理であることが好ましい。また、布帛の目付が30〜300g/mの範囲内であることが好ましい。また、下記により測定した染料移行汚染堅牢性が3級以上であることが好ましい。
試験片(5cm×5cm)と、該試験片と同一の白布に検討布帛と添付片(5cm×5cm)とが接触するようにアルミ板2枚の間に挟み込んだ後、そのアルミ板の上に44.1N(4.5kgf)の荷重をかけ、恒温加熱処理機で120℃×80分の熱処理を行い、試験片から添付白布への染料移行状態を汚染用グレースケールで1〜5級に等級判定を行う。
また、本発明によれば、前記の消臭性布帛を用いてなる、スポーツウェア、アウトドアウェア、レインコート、傘地、紳士衣服、婦人衣服、作業衣、防護服、人工皮革、履物、鞄、カーテン、防水シート、テント、カーシートの群より選ばれるいずれかの繊維製品が提供される。
本発明によれば、染色堅牢性に優れる消臭性布帛および該消臭性布帛を用いてなる繊維製品が得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に使用される共重合ポリエステル繊維aを形成する共重合ポリエステルとは、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール成分とを重縮合反応せしめて得られるエチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とする共重合ポリエステルであり、共重合成分としてスルホイソフタル酸の金属塩(A)及び下記式(I)で表される化合物(B)を下記数式(1)及び(2)を同時に満足する状態で含有する共重合ポリエステルであり、該共重合ポリエステルのガラス転移温度が70〜85℃の範囲にあり、かつ得られる共重合ポリエステルの固有粘度が0.55〜1.00dL/gの範囲にあることを特徴とするポリエステルである。
Figure 2010242240
[上記式中、Rは水素又は炭素数1〜10個のアルキル基を表し、Xは4級ホスホニウム
塩又は4級アンモニウム塩を表す。]
3.0≦A+B≦5.0 (1)
0.2≦B/(A+B)≦0.7 (2)
[上記数式中、Aは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とするスルホイソフタル酸の金属塩(A)の共重合量(モル%)、Bは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とする上記式(I)で表される化合物(B)の共重合量(モル%)を表す。]
ここでテレフタル酸のエステル形成性誘導体とは、テレフタル酸の、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル、ジヘキシルエステル、ジオクチルエステル、ジデシルエステル、若しくはジフェニルエステル又はテレフタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジブロマイドを挙げる事ができるが、これらの中でもテレフタル酸ジメチルエステルが好ましい。
(ポリエステルについて)
本発明に使用される共重合ポリエステル繊維aにおけるポリエステルとは、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルであり、主たる繰り返し単位とはポリエステルを構成する全繰り返し単位あたり80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることを指している。他の20モル%以下の範囲内で他の成分が共重合されていても良い。好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることである。その他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸を挙げる事ができ、グリコール成分として1,2−プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビス(トリメチレングリコール)、ビス(テトラメチレングリコール)、トリエチレングリコール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げる事ができ、これらの1種以上のジカルボン酸と1種以上のグリコール成分を反応させて得られる成分を繰り返し単位として共重合されていても良い。
(スルホイソフタル酸の金属塩(A)について)
本発明に使用される共重合ポリエステル繊維aで使用されるスルホイソフタル酸の金属塩(A)としては、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩)が例示される。必要に応じてこれら化合物のマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類塩を併用しても良い。また、これらのエステル形成性誘導体も好ましく例示される。エステル形成性誘導体としてはジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル、ジヘキシルエステル、ジオクチルエステル、ジデシルエステル、ジフェニルエステル、5−スルホイソフタル酸金属塩のジハロゲン化物を挙げる事ができるが、これらの中でもジメチルエステルが好ましい。これらの化合物群の中では、熱安定性、コストなどの面から、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩が好ましく例示され、特に5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はそのジメチルエステルである5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルが特に好ましく例示される。これらの条件を満たす化合物である場合に、繊維とした場合の充分なカチオン可染性と充分な繊維強度の両立が可能となる。
(化合物(B)について)
また、上記式(I)で表される化合物(B)としては、5−スルホイソフタル酸又はその低級アルキルエステルの4級ホスホニウム塩又は4級アンモニウム塩である。4級ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩としては、リン原子又は窒素原子にアルキル基、ベンジル基又はフェニル基が結合した4級ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩が好ましく、特に4級ホスホニウム塩であることが好ましい。また、4つある置換基は同一であっても異なっていても良い。上記式(I)で表される化合物の具体例としては、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸エチルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラメチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラエチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラブチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラフェニルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩、あるいはこれらイソフタル酸誘導体のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロプルエステル、ジブチルエステル、ジへキシルエステル、ジオクチルエステル、ジデシルエステルが好ましく例示される。これらのイソフタル酸誘導体の中でも、5−スルホイソフタル酸ジメチルテトラブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルベンジルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルテトラフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルテトラメチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルテトラエチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルテトラブチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルベンジルトリメチルアンモニウム塩がより好ましく例示される。これらの条件を満たす化合物である場合に、ポリエステル繊維とした場合の充分なカチオン可染性と充分な繊維強度の両立が可能となる。
(数式(1)について)
本発明において、ポリエステルに共重合させる上記のスルホイソフタル酸の金属塩(A)と上記の化合物(B)の合計は共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準として、(A)成分と(B)成分の和A+Bが3.0〜5.0モル%の範囲である必要がある。3.0モル%より少ないと、常圧下でのカチオン染色では十分な染着を得ることができない。一方、5.0モル%より多くなると、得られるポリエステル糸の強度が低下するため実用に適さない。さらに染料を過剰に消費するため、コスト面でも不利である。好ましくは3.2〜4.8モル%であり、より好ましくは3.3〜4.7モル%である。
(数式(2)について)
また、スルホイソフタル酸の金属塩(A)と化合物(B)の成分比は上記のモル%の値にて、B/(A+B)が0.2〜0.7の範囲にある必要がある。0.2以下、つまり成分Aの割合が多い状態では、スルホイソフタル酸金属塩による増粘効果により、得られる共重合ポリエステルの重合度を上げることが困難になる。一方、0.7以上、つまり化合物(B)の割合が多い状態では、重縮合反応が遅くなり、さらに化合物(B)の比率が多くなると熱分解反応が進むため重合度を上げることが困難となる。さらに、化合物(B)の比率多くなると共重合ポリエステルの熱安定性が悪化し、溶融紡糸段階で再溶融した際の熱分解反応による分子量の低下が大きくなるため、得られるポリエステル糸の強度が低下するため、好ましくない。好ましくは0.23〜0.65であり、より好ましくは0.
25〜0.60である。
スルホイソフタル酸の金属塩(A)をポリエステルに共重合することによりカチオン可染性は付与する事ができるが、スルホン酸金属塩基間のイオン結合に由来すると思われる共重合ポリエステルの溶融粘度の増粘効果のため共重合ポリエステルを高重合度化することが困難であった。そのため十分に高い重合度、高い固有粘度を有する共重合ポリエステルが得られず、その高い固有粘度でない共重合ポリエステルから得られるポリエステル繊維は、繊維強度が著しく低下する問題があった。一方その問題を解消するためにスルホイソフタル酸のテトラアルキルアンモニウム塩又はスルホイソフタル酸のテトラアルキルホスホニウム塩、即ち化合物(B)をポリエステルに共重合することが開示されているが、当該化合物は重合反応中に熱分解を起こしやすいため、共重合量を上げようとすると熱分解反応が進みやすい問題があり、繊維強度を高い値にすることが依然として困難であった。本発明の共重合ポリエステルにおいては、これらのスルホイソフタル酸の金属塩(A)と化合物(B)を併用し、双方の化合物の共重合量、共重合比率、共重合ポリエステルのガラス転移温度及び固有粘度を特定の範囲に設定することによって、充分なカチオン染料による染色性と高い繊維強度を両立させ、且つ熱セット性が良好で捲縮を固定しやすいと言った物性をも同時に有する。この熱セット性が良好で捲縮を固定しやすいという物性をも有することは驚くべき事である。
(ガラス転移温度について)
前記共重合ポリエステルは、DSC(示差走査熱量測定)法による測定方法(昇温
速度=20℃/min)でのガラス転移温度(Tg)が70〜85℃の範囲であることが肝要である。Tgが70℃以下の場合、溶融紡糸による得られたポリエステル繊維の熱セット性が悪化し、仮撚捲縮加工性が悪化し、撚りがかからない状態となるため、該共重合ポリエステルからなるポリエステル繊維から得られる布帛の風合いが悪化するおそれがある。ガラス転移温度を下げる方法としては、アジピン酸、セバシン酸、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを共重合することで成されるが、本発明においてはこれら共重合成分が、上記のガラス転移温度の条件を満足する範囲であれば微量共重合されていても良い。Tgの好ましい値の範囲は71〜80℃である。
通常、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度は70〜80℃くらいであることが知られているので、本発明において、共重合ポリエステルは、上述のように他の共重合成分が共重合されていても良いが、共重合した結果ガラス転移温度を著しく降下させる成分については共重合させることは好ましくない。ガラス転移温度を上記の値の範囲にするには、例えば上述の共重合ポリエステルの説明の項で挙げた共重合されても良い化合物の種類・共重合率を適宜調整して共重合させることを挙げる事ができる。
(固有粘度について)
前記共重合ポリエステルの固有粘度(溶媒:オルトクロロフェノール、測定温度:35℃)は0.55〜1.00dL/gの範囲であることが肝要である。固有粘度が0.55dL/g以下である場合、得られるポリエステル繊維の強度が不足し、一方、1.00dL/g以上とする場合、溶融粘度が高くなりすぎて溶融成型が困難になるため好ましくなく、また、溶融重合法に引続いて固相重合法により共重合ポリエステルの重縮合工程での生産コストが大幅に増大するため好ましくない。共重合ポリエステルの固有粘度としては、0.60〜0.90dL/gの範囲がさらに好ましい。共重合ポリエステルの固有粘度を0.55〜1.00dL/gの範囲にするためには、溶融重合を行う際の最終の重合温度、重合時間を調整したり、溶融重合法のみでは困難な場合には固相重合を行って適宜調整することができる。本発明においては、スルホイソフタル酸の金属塩(A)及び化合物(B)を上記数式(1)及び(2)を満たすようにポリエチレンテレフタレートに対して共重合を行うことで上述のような手法により固有粘度を0.55〜1.00dL/gにすることが可能となる。
(DEG含有量について)
前記共重合ポリエステルに含有されるジエチレングリコールは、2.5重量%以下であることが好ましい。より好ましくは2.2重量%以下、さらにより好ましくは1.85〜2.2重量%である。一般にカチオン可染性ポリエステルを製造する際には、ポリエステルの製造工程において副生するジエチレングリコール(DEG)量を抑制するために、DEG抑制剤として少量のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、水酸化テトラアルキルホスホニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアミンなどの少なくとも1種類を、使用するカチオン可染性モノマー(本発明の場合はスルホイソフタル酸の金属塩(A)及び化合物(B)の全モル量)に対して、1〜20モル%程度を添加することが好ましい。
(共重合ポリエステルの製造方法について)
前記共重合ポリエステルの製造は特に限定されず、スルホイソフタル酸の金属塩(A)(以下化合物Aと略称することがある。)及び化合物(B)を請求項1に記載の条件を満たすように留意する他は、通常知られているポリエステルの製造方法が用いられる。すなわち、テレフタル酸とエチレングリコールの直接エステル化反応させる、あるいはテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸のエステル形成性誘導体とエチレングリコールとをエステル交換反応させて低重合体を製造する。次いでこの反応生成物を重縮合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることにより製造される。スルホイソフタル酸を含有する芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル誘導体(スルホイソフタル酸の金属塩(A)及び化合物(B))を共重合する方法についても通常知られている製造方法を用いる事ができる。これらの化合物の反応工程への添加時期は、エステル交換反応又はエステル化反応の開始当初から重縮合反応の開始までの任意の時期に添加することができる。
またエステル交換反応時の触媒についても通常のエステル交換反応を行う際に用いられる触媒化合物を用いる事ができる。重縮合触媒についても通常用いられるアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物を用いる事ができる。またチタン化合物と芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応生成物、チタン化合物とリン化合物の反応生成物を用いても良い。
(その他添加剤について)
また、前記共重合ポリエステルは、必要に応じて少量の添加剤、例えば酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤又は艶消し剤などを含んでいても良い。特に酸化防止剤、艶消し剤などは特に好ましく添加される。
(溶融紡糸について)
前記共重合ポリエステルの製糸方法は、特に制限は無く、従来公知の方法が採用される。すなわち、乾燥した共重合ポリエステルを270〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の引取り速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られるポリエステル繊維の強度も十分なものであると共に、安定して巻取りを行うこともできる。さらに、上述の方法で得られた未延伸糸もしくは部分延伸糸を、延伸工程にて1.2倍〜6.0倍程度の範囲で延伸し、熱セットすることが好ましい。この延伸は未延伸ポリエステル繊維を一旦巻き取ってから行ってもよく、一旦巻き取ることなく連続的に行ってもよい。また、紡糸時に使用する口金の形状についても特に制限はなく、円形、扁平、くびれ付扁平、三角形・四角形等の多角形、3以上の多葉形、C型断面、H型断面、X型断面、中空断面のいずれであってもよい。
かくして得られた共重合ポリエステル繊維aにおいて、繊維強度(引張強度)が3.0cN/dtex以上(より好ましくは3.0〜5.0cN/dtex)であることが好ましい。なお、このような繊維強度を有する共重合ポリエステル繊維は、前記のように共重合ポリエステルを紡糸、延伸することにより得られる。
なお、かかる共重合ポリエステル繊維aは、その単繊維径(単繊維の直径)が10〜1000nm(好ましくは100〜800nm、特に好ましくは550〜800nm)の超極細繊維であってもよい。かかる単繊維径を単糸繊度に換算すると、0.000001〜0.01dtexに相当する。該単繊維径が1000nmを超える場合には、充分な消臭性が得られないおそれがある。逆に、該単繊維径が10nm未満の場合には繊維強度が低くなるため実用上好ましくない。ここで、単繊維の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
前記共重合ポリエステル繊維aにおいて、フィラメント数は特に限定されないが、優れた消臭性を得る上で500本以上(より好ましくは2000〜10000本)であることが好ましい。また、共重合ポリエステル繊維aの総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との積)としては、5〜150dtexの範囲内であることが好ましい。
前記共重合ポリエステル繊維aの繊維形態は特に限定されないが、長繊維(マルチフィラメント糸)であることが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。
また、前記共重合ポリエステル繊維aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条であることが好ましい。例えばまず、下記のような海島型複合繊維用の海成分ポリマーと島成分ポリマーを用意する。
海成分ポリマーは、好ましくは島成分との溶解速度比が200以上であればいかなるポリマーであってもよいが、特に繊維形成性の良好なポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどが好ましい。例えば、アルカリ水溶液易溶解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが好適である。また、ナイロン6は、ギ酸溶解性があり、ポリスチレン・ポリエチレンはトルエンなど有機溶剤に非常によく溶ける。なかでも、アルカリ易溶解性と海島断面形成性とを両立させるため、ポリエステル系のポリマーとしては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングルコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。ここで、5−ナトリウムイソフタル酸は親水性と溶融粘度向上に寄与し、ポリエチレングリコール(PEG)は親水性を向上させる。なお、PEGは分子量が大きいほど、その高次構造に起因すると考えられる親水性増加効果が大きくなるが、反応性が悪くなってブレンド系になるため、耐熱性・紡糸安定性などの点から好ましくなくなる。また、共重合量が10重量%以上になると、本来溶融粘度低下作用があるので、本発明の目的を達成することが困難になる。したがって、上記の範囲で、両成分を共重合することが好ましい。
一方、島成分ポリマーとして前記の共重合ポリエステルを用いる。
上記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる海島型複合繊維は、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。かかる関係にある場合には、海成分の複合重量比率が40%未満と少なくなっても、島同士が接合したり、島成分の大部分が接合して海島型複合繊維とは異なるものになり難い。
好ましい溶融粘度比(海/島)は、1.1〜2.0、特に1.3〜1.5の範囲である。この比が1.1倍未満の場合には溶融紡糸時に島成分が接合しやすくなり、一方2.0倍を越える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸調子が低下しやすい。
次に島数は、多いほど海成分を溶解除去して極細繊維を製造する場合の生産性が高くなるので100以上(より好ましくは300〜1000)であることが好ましい。なお、島数があまりに多くなりすぎると紡糸口金の製造コストが高くなるだけでなく、加工精度自体も低下しやすくなるので10000以下とするのが好ましい。
次に、島成分の径(直径)は、10〜1000nm(好ましくは100〜800nm)の範囲とすることが好ましい。島成分の径を該範囲内とすることにより、最終的に得られる布帛に、単繊維径(単繊維の直径)が10〜1000nmのマルチフィラメント糸が含まれることになる。ここで、島成分の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を島成分の径とする。なお、島成分の径(直径)は、海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去したのち、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。例えば中空ピンや微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流とを合流し、これを圧縮することにより海島断面形成がなされるいかなる紡糸口金でもよい。
吐出された海島型断面複合繊維は、冷却風によって固化され、好ましくは400〜6000m/分で溶融紡糸された後に巻き取られる。得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する複合繊維とするか、あるいは、一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程をとおした後に巻き取る方法のいずれでも構わない。
ここで、特に微細な島径を有する海島型複合繊維を高効率で製造するために、通常のいわゆる配向結晶化を伴うネック延伸(配向結晶化延伸)に先立って、繊維構造は変化させないで繊維径のみを極細化する流動延伸工程を採用することが好ましい。流動延伸を容易とするため、熱容量の大きい水媒体を用いて繊維を均一に予熱し、低速で延伸することが好ましい。このようにすることにより延伸時に流動状態を形成しやすくなり、繊維の微細構造の発達を伴わずに容易に延伸することができる。このプロセスでは、特に海成分および島成分が共にガラス転移温度100℃以下のポリマーであることが好ましく、なかでもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステルに好適である。具体的には60〜100℃、好ましくは60〜80℃の範囲の温水バスに浸漬して均一加熱を施し、延伸倍率は10〜30倍、供給速度は1〜10m/分、巻取り速度は300m/分以下、特に10〜300m/分の範囲で実施することが好ましい。予熱温度不足および延伸速度が速すぎる場合には、高倍率延伸を達成することができなくなる。
得られた流動状態で延伸された延伸糸は、その強伸度などの機械的特性を向上させるため、定法にしたがって60〜220℃の温度で配向結晶化延伸する。該延伸条件がこの範囲外の温度では、得られる繊維の物性が不十分なものとなる。なお、この延伸倍率は、溶融紡糸条件、流動延伸条件、配向結晶化延伸条件などによって変わってくるが、該配向結晶化延伸条件で延伸可能な最大延伸倍率の0.6〜0.95倍で延伸すればよい。
かくして得られた海島型複合繊維において、その海島複合重量比率(海:島)は、40:60〜5:95の範囲が好ましく、特に30:70〜10:90の範囲が好ましい。かかる範囲であれば、島間の海成分の厚みを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分の極細繊維への転換が容易になるので好ましい。ここで海成分の割合が40%を越える場合には海成分の厚みが厚くなりすぎ、一方5%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に接合が発生しやすくなる。
また、前記の海島型複合繊維において、その島間の海成分厚みが500nm以下、特に20〜200nmの範囲が適当であり、該厚みが500nmを越える場合には、該厚い海成分を溶解除去する間に島成分の溶解が進むため、島成分間の均質性が低下するだけでなく、毛羽やピリングなど着用時の欠陥や染め斑も発生しやすくなる。
次いで、該海島型複合繊維にアルカリ水溶液処理を施し、海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去することにより、海島型複合繊維フィラメント糸を単繊維径が10〜1000nmの共重合ポリエステル繊維とする。その際、アルカリ水溶液処理の条件としては、濃度3〜4%のNaOH水溶液を使用し55〜65℃の温度で処理するとよい。また、アルカリ水溶液処理は、布帛を織編成する前でもよいが、布帛を織編成した後のほうが好ましい。
(布帛の製造について)
前記の共重合ポリエステル繊維aを用いて布帛を製造する。その際、かかる布帛は前記の共重合ポリエステル繊維aのみで構成されていてもよいが、他の繊維が含まれていてもよい。その際、他の繊維は布帛重量に対して40重量%以下であることが好ましい。かかる他の繊維としては、ポリエステルフィラメントが好ましく、なかでも、その単繊維径(単繊維の直径)が10〜1000nm(好ましくは100〜800nm、特に好ましくは550〜800nm)であるポリエチレンテレフタレートからなるポリエステルフィラメントが優れた消臭性を得る上で好ましい。
本発明において、布帛は前記の共重合ポリエステル繊維aを用いてなる。その際、前記のように、必要に応じて他の繊維も用いてもよい。
かかる布帛の組織は特に限定されず織物でも編物でも不織布でもよい。例えば、織組織としては、平織、斜文織、朱子織等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。編物の場合は、よこ編物であってもよいしたて編物であってもよい。よこ編組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示され、たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。
その際、消臭性の点で厚みが0.4〜1.5mmの布帛が好ましい。また、織編物の密度としては、消臭性の点で高密度のほうが好ましく、経緯とも100〜200本/2.54cmの範囲内であることが好ましい。織編物の密度が該範囲よりも小さいと十分な消臭性が得られないおそれがある。逆に、織編物の密度が該範囲より大きいと製編織性が困難となるおそれがある。
(染色加工について)
染色加工はカチオン染料を用いて行うことが好ましい。カチオン染料を用いて染色を行うと、カチオン染料がイオン結合により繊維にしっかりと吸着されるため、優れた染色堅牢性が得られる。分散染料を用いた染色では、十分な染色堅牢性が得られないおそれがある。かかるカチオン染料は市販されている通常のカチオン染料でよい。また、染色加工の条件としては、高圧で染色してもよいが、前記共重合ポリエステル繊維構造体は常圧(100℃)で染色可能であるので、常圧(100℃)で染色することが地球環境にやさしく、また染色コストを低減することができ好ましい。なお、染色の際に、染色助剤等を用いることは何らさしつかえない。また、染色機も液流染色機、ビーム染色機、ジッガーなど通常の染色機でよく特に限定はない。
(消臭加工について)
次いで、該布帛に消臭加工を施す。かかる消臭加工としては、通常の消臭加工でよいが、該布帛に親水加工を施すとより高い臭気吸着性を得ることができ好ましい。親水加工に用いる親水剤としては、構成繊維と親和性のある親水剤であればいずれもが使用でき、特にポリエステル系繊維と親和性のある親水性重合体が好ましく用いられる。例えば、ポリエチレングリコールジアクリレートやその誘導体、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)と、テレフタル酸および/またはイソフタル酸および低級アルキレングリコール(エチレングリコールなど)をブロック共重合してなるブロック共重合体などを例示することができる。その際、1種類の親水剤のみを使用しても、または2種類以上の親水剤を併用してもよい。親水剤の付与方法は特に限定されず、例えば、染色と同浴加工、パディング法、フラットスクリーンプリント法、ロータリースクリーンプリント法、ローラープリント法、グラビアロール法、キスロール法、泡加工機による方法などが例示される。かかる親水化剤の付着量は、布帛の重量に対して0.20〜0.50重量%の範囲であることが好ましい。
また、染色工程や消臭加工の前および/または後の工程において、なお、常法の精練、リラックス、プレセット、ファイナルセットなどの各種加工を施してもよい。さらには、起毛加工、撥水加工、カレンダー加工、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
かくして得られた消臭性布帛において、前記共重合ポリエステル繊維aがカチオン染料により着色することにより、優れた染色堅牢性を有する。その際、下記により測定した染料移行汚染堅牢性が3級以上であることが好ましい。
試験片(5cm×5cm)と、該試験片と同一の白布に検討布帛と添付片(5cm×5cm)とが接触するようにアルミ板2枚の間に挟み込んだ後、そのアルミ板の上に44.1N(4.5kgf)の荷重をかけ、恒温加熱処理機で120℃×80分の熱処理を行い、試験片から添付白布への染料移行状態を汚染用グレースケールで1〜5級に等級判定を行う。
また、かかる消臭性布帛は布帛強度が高い。さらには、常圧で染色できるので、環境負荷が少ない。
また、かかる消臭性布帛において、優れた消臭性を得る上で、目付が30〜300g/mの範囲内であることが好ましい。また、布帛が織物である場合、優れた消臭性を得る上で、経糸のカバーファクターおよび緯糸のカバーファクターがいずれも500〜5000(さらに好ましくは、500〜2500)の織物であることが好ましい。なお、本発明でいうカバーファクターCFは下記の式により表されるものである。
経糸カバーファクターCF=(DWp/1.1)1/2×MWp
緯糸カバーファクターCF=(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWは経糸総繊度(dtex)、MWは経糸織密度(本/2.54cm)、DWは緯糸総繊度(dtex)、MWは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
次に、本発明の繊維製品は、前記の染色布帛を用いてなる、スポーツウェア、アウトドアウェア、レインコート、傘地、紳士衣服、婦人衣服、作業衣、防護服、人工皮革、履物、鞄、カーテン、防水シート、テント、カーシートの群より選ばれるいずれかの繊維製品である。かかる繊維製品は前記の消臭性布帛を用いているので、消臭性を有するだけでなく、優れた染色堅牢度を有し、布帛強度が高く、さらには、環境負荷が少ない。
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
<溶解速度>海・島ポリマーの各々0.3Φ−0.6L×24Hの口金にて1000〜2000m/分の紡糸速度で糸を巻き取りし、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製した。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
<単繊維径>
布帛を電子顕微鏡で写真撮影した後、n数5で単繊維径を測定しその平均値を求めた。
<染料移行汚染堅牢性>
試験片(5cm×5cm)と、該試験片と同一の白布に検討布帛と添付片(5cm×5cm)とが接触するようにアルミ板2枚の間に挟み込んだ後、そのアルミ板の上に44.1N(4.5kgf)の荷重をかけ、恒温加熱処理機で120℃×80分の熱処理を行い、試験片から添付白布への染料移行状態を汚染用グレースケールで1〜5級に等級判定を行った。
<引裂き強度、伸度>
JIS L1096により測定した。
<タフネス>
下記式により算出した。
タフネス= 強度 × √伸度
<目付>
JIS L1096 6.4.2に従って測定した。
<環境負荷>
染色工程において、1バッチあたりの蒸気使用量が、通常の高圧染色対比20%以上少ない場合、環境負荷の点で良好と判定した。
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100重量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4.1重量部とエチレングリコール60重量部の混合物に、酢酸マンガン0.03重量部、酢酸ナトリウム三水和物0.12重量部を添加し、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながらエステル交換反応を行った。その後、正リン酸0.03重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
その後、反応生成物に三酸化アンチモン0.05重量部と5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホネート2.8重量部と水酸化テトラエチルアンモニウム0.3重量部とトリエチルアミン0.003重量部を添加して重縮合槽に移し、285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空にて重縮合反応を行い、重縮合槽の攪拌機電力の値が所定電力に到達した段階若しくは所定時間を経過した段階で反応を終了させ、常法に従いチップ化し、島成分用ポリマーとした。
一方、海成分用ポリマーとして5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレートを用意した((溶解速度比(海/島)=230)、海:島=40:60、島数=500)。
次いで、前記島成分用ポリマーと海成分用ポリマーとを用いて、紡糸温度280℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸して海島型複合未延伸糸を一旦巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた海島型複合繊維(延伸糸)は50dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の径は700nmであった。
次いで、該延伸糸を無撚にて経糸および緯糸に全量配し、経密度225本/2.54cm、緯密度200本/2.54cmの織密度にて、通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。
そして、該織物を60℃にて湿熱処理した後、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、60℃にて40%減量(アルカリ減量)した。その後、下記のカチオン染色加工と親水加工とを同浴処理を行うことにより、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体)を織物重量に対して0.30重量%付着させた。
(染色加工条件)
CATHILON BLUE CD−FRLH)0.2g/L、CD−FBLH0.2g/L(いずれも保土ヶ谷化学株式会社製のカチオン可染性染料)、硫酸ナトリウム3g/L、酢酸0.3g/Lの染色液中にて100℃(常圧)で1時間、浴比1:50で染色を行った。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維(単繊維径700nm)により構成されていることを確認した。
得られた織物において、目付は62g/mであり、臭気吸着率は、アンモニアに対しては91%、硫化水素に対しては83%、酢酸に対しては87%と優れた吸着性を有していた。また、織物に含まれる繊維のタフネスは31であった。染料移行堅牢度は4−5級であった。環境負荷も良好であった。
次いで、該織物(消臭性布帛)を用いてスポーツウェアを得て着用したところ、消臭性に優れるだけでなく染色堅牢性にも優れるものであった。
[比較例1]
実施例1において、島成分としての通常のポリエチレンテレフタレートを用いることと、染色加工の際に通常の分散染料を用いること以外は実施例1と同様にした。臭気吸着率は、アンモニアに対しては91%、硫化水素に対しては83%、酢酸に対しては95%と優れた吸着性を有していたが、染料移行堅牢度は2級であった。
本発明によれば、染色堅牢性に優れる消臭性布帛および該消臭性布帛を用いてなる繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。

Claims (10)

  1. 消臭化処理が施されてなる消臭性布帛であって、下記要件を満足する共重合ポリエステル繊維aを含むことを特徴とする消臭性布帛。
    (共重合ポリエステル繊維a)
    共重合成分として、酸成分中にスルホイソフタル酸の金属塩(A)および下記式(I)で表される化合物(B)を下記数式(1)および(2)を同時に満足するよう含有し、かつ該共重合ポリエステルのガラス転移温度が70〜85℃の範囲内にあり、かつ該共重合ポリエステルの固有粘度が0.55〜1.00dL/gの範囲内にある共重合ポリエステルからなる共重合ポリエステル繊維である。
    Figure 2010242240
    [上記式中、Rは水素原子又は炭素数1〜10個のアルキル基を表し、Xは4級ホスホニ
    ウムイオン又は4級アンモニウムイオンを表す。]
    3.0≦A+B≦5.0 (1)
    0.2≦B/(A+B)≦0.7 (2)
    [上記数式中、Aは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とするスルホイソフタ
    ル酸の金属塩(A)の共重合量(モル%)、Bは共重合ポリエステルを構成する全酸成分
    を基準とする上記式(I)で表される化合物(B)の共重合量(モル%)を表す。]
  2. 布帛がカチオン染料を用いて染色してなる、請求項1に記載の消臭性布帛。
  3. 前記共重合ポリエステル繊維aのフィラメント数が500本以上である、請求項1または請求項2に記載の消臭性布帛。
  4. 前記共重合ポリエステル繊維aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条である、請求項1〜3のいずれかに記載の消臭性布帛。
  5. 他の繊維として、単繊維径10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸bが布帛に含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の消臭性布帛。
  6. 前記共重合ポリエステル繊維aの単繊維径が単繊維径10〜1000nmの範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載の消臭性布帛。
  7. 前記消臭化処理が親水処理である、請求項1〜6のいずれかに記載の消臭性布帛。
  8. 布帛の目付が30〜300g/mの範囲内である、請求項1〜7のいずれかに記載の消臭性布帛。
  9. 下記により測定した染料移行汚染堅牢性が3級以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の消臭性布帛。
    試験片(5cm×5cm)と、該試験片と同一の白布に検討布帛と添付片(5cm×5cm)とが接触するようにアルミ板2枚の間に挟み込んだ後、そのアルミ板の上に44.1N(4.5kgf)の荷重をかけ、恒温加熱処理機で120℃×80分の熱処理を行い、試験片から添付白布への染料移行状態を汚染用グレースケールで1〜5級に等級判定を行う。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の消臭性布帛を用いてなる、スポーツウェア、アウトドアウェア、レインコート、傘地、紳士衣服、婦人衣服、作業衣、防護服、人工皮革、履物、鞄、カーテン、防水シート、テント、カーシートの群より選ばれるいずれかの繊維製品。
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