JP2013123840A - 機能性膜の形成方法、およびガスバリア膜の形成方法 - Google Patents

機能性膜の形成方法、およびガスバリア膜の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 欠陥のない十分な機能を有する機能性膜を、容易に被転写体上に形成できる機能性膜の形成方法を提供する。
【解決手段】 基材フィルム上に順に、少なくとも、パーヒドロポリシラザンの塗膜層、機能性層、および高分子樹脂の支持層よりなる機能性膜を有する転写フィルムを作製する転写フィルム作製工程と、前記転写フィルムの前記機能性膜を接着剤により被転写体に接着する接着処理工程と、前記基材フィルムを前記被転写体から剥離する剥離処理工程とを備える機能性膜の形成方法であって、前記剥離処理工程の前に前記転写フィルムを加湿処理することを特徴とする機能性膜の形成方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、機能性膜の形成方法、特に、被転写体に転写して機能性膜を形成する機能性膜の形成方法、およびガスバリア膜の形成方法に関する。
これまで、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物薄膜をプラスチックフィルムの表面に形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素など各種ガスを遮断するガスバリア性を有しているため、食品、工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。
また、近年は、液晶表示素子や有機EL素子等の電子機器の分野においても、ガラス基板に代わって、薄くて軽いプラスチック基板が使用され始めている。液晶表示素子や有機EL素子等は、素子に対する酸素や水分の影響を防止するために、使用環境の酸素や水分を遮断するガスバリア性が必要である。
そして、プラスチック基板を用いた有機EL素子等に、ガスバリア膜を形成する方法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、ガスバリア膜と基材フィルムとの間に剥離層を有するガスバリア材料を用い、接着剤によりガスバリア膜を被転写体に接着して転写し、基材フィルムを剥離して、被転写体上にガスバリア膜を設ける方法が知られている。
特開2007−118564号公報
しかしながら、特許文献1に開示のもののような、ガスバリア膜と基材フィルムとの間に剥離層を有するガスバリア材料を用いる方法は、剥離層があるためにガスバリア膜と基材フィルムとの間の結合力が弱いために、このガスバリア材料を製造する工程からガスバリア膜を被転写体に転写する工程までの間に、ガスバリア膜が基材フィルムから剥離して欠落しやすく、十分なガスバリア性を有する欠陥のないガスバリア膜を被転写体上に形成することが困難であるという課題があった。
本発明は、上記課題を解決するもので、ガスバリア膜などの機能性膜を被転写体に転写形成する工程までの間に機能性膜が基材フィルムから剥離して欠落することがなく、欠陥のない十分な機能を有する機能性膜を、容易に被転写体上に形成できる機能性膜の形成方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明の機能性膜の形成方法は、基材フィルム上に順に、少なくとも、パーヒドロポリシラザンの塗膜層、機能性層、および高分子樹脂の支持層よりなる機能性膜を有する転写フィルムを作製する転写フィルム作製工程と、前記転写フィルムの前記機能性膜を接着剤により被転写体に接着する接着処理工程と、前記基材フィルムを前記被転写体から剥離する剥離処理工程とを備える機能性膜の形成方法であって、前記剥離処理工程の前に前記転写フィルムを加湿処理することを特徴とする。
そして、特に、本発明のガスバリア膜の形成方法は、基材フィルム上に順に、少なくとも、パーヒドロポリシラザンの塗膜層、ガスバリア層、および高分子樹脂の支持層よりなるガスバリア膜を有する転写フィルムを作製する転写フィルム作製工程と、前記転写フィルムの前記ガスバリア膜を接着剤により被転写体に接着する接着処理工程と、前記基材フィルムを前記被転写体から剥離する剥離処理工程とを備えるガスバリア膜の形成方法であって、前記剥離処理工程の前に前記転写フィルムを加湿処理することを特徴とする。
本発明の機能性膜の形成方法によれば、転写フィルムの機能性膜は、基材フィルム上に順に、少なくとも、パーヒドロポリシラザンの塗膜層、機能性層、および高分子樹脂の支持層を有するものであり、剥離処理工程の前に転写フィルムを加湿処理することにより、パーヒドロポリシラザンの塗膜層の接合力を低下させ離型層として機能させる方法であるので、転写フィルムの機能性膜を被転写体に接着する接着処理工程までは、基材フィルムと機能性膜との接合力は十分な強度が維持でき、接着処理工程までに機能性膜が基材フィルムから剥離して欠落することがなく、十分な機能を有する機能性膜が形成できるとともに、剥離処理工程の前の加湿処理することにより、パーヒドロポリシラザンの塗膜層と基材フィルムとの界面の接合力が低下し離型層として機能するので、弱い力で基材フィルムが剥離でき、容易に機能性膜を被転写体上に形成することができる。
本発明の機能性膜の形成方法について、以下に詳細に説明する。本発明の機能性膜の形成方法は、基材フィルム上に順に、少なくとも、パーヒドロポリシラザンの塗膜層、ガスバリア層、および高分子樹脂の支持層よりなるガスバリア膜を有する転写フィルムを作製する転写フィルム作製工程と、前記転写フィルムの前記ガスバリア膜を接着剤により被転写体に接着する接着処理工程と、前記基材フィルムを前記被転写体から剥離する剥離処理工程とを備えるガスバリア膜の形成方法であって、前記剥離処理工程の前に前記転写フィルムを加湿処理することを特徴とする機能性膜の形成方法である。
まず、本発明の転写フィルム作製工程について説明する。本発明の転写フィルムは、基材フィルム上に順に、少なくとも、パーヒドロポリシラザンの塗膜層、機能性層、および高分子樹脂の支持層とからなる機能性膜を形成したものである。
本発明の転写フィルムは、後記で詳細に説明するように、剥離処理工程の前の転写フィルムを加湿処理することにより、パーヒドロポリシラザンの塗膜層と基材フィルムとの界面の接合力を低下させて、塗膜層を離型層として機能させる必要があるので、本発明の転写フィルムに用いられる基材フィルムとしては、湿度を透過しやすい性質、つまり、水蒸気透過度の大きな材料が好ましく、水蒸気透過度や、機械的特性、比較的安価な点等の観点から、材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の2軸延伸ポリエステル樹脂フィルムが好ましい。また、基材フィルムの厚さは、上記の水蒸気透過度の観点から薄いほど好ましいが、厚さが12μmより薄い場合には、転写フィルムの製造時および使用時における取り扱い性が低下するので好ましくない。
はじめに、基材フィルム上にパーヒドロポリシラザンの塗膜層を形成する。パーヒドロポリシラザンの塗膜層は、パーヒドロポリシリラザンを含有するコーティング剤を乾燥膜厚が50〜1000nm程度となるように塗布し、オーブン等で有機溶媒を蒸発させ乾燥して形成することができる。なお、塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などの公知の塗布方法を採用することができる。
さらに、パーヒドロポリシラザンの塗膜層の上に機能性層を形成する。機能性層としては、目的に応じて、湿度や各種気体に対する遮断機能を有するガスバリア層、耐擦傷性や耐磨耗性機能を有するハードコート層、金属光沢や光反射の機能を有する光反射層、紫外線カット、赤外線カット、および電磁波カット等の機能を有する光または電磁波吸収層、反射防止や防眩の機能を有する反射防止層、透明電極や帯電防止の機能を有する透明導電層など、種々の機能性層、およびこれらの複数の層を形成する。そして、機能性層を形成するための材料としては、金属、金属酸化物、および有機化合物など公知なものが使用できる。また、形成方法としては、真空蒸着等の乾式法または塗料の塗布等の湿式法をその機能性層を形成する材料によって適宜選択すればよい。
そして、さらに、機能性層の上に高分子樹脂の支持層を形成する。高分子樹脂の支持層は、上記のパーヒドロポリシラザンの塗膜層および機能性層を保持するとともに、上記の塗膜層および機能性層と合わせて機能性膜を成すものである。高分子樹脂の支持層を形成するための材料としては、アルキドメラミン樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシメラミン樹脂、アミノアルキッド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂等の塗料を用いて形成することができる。また、高分子樹脂の支持層の厚さは、厚くなるほど強度が向上するので好ましいが、200nm〜5、000nmの範囲とすれば、転写時に膜としての形状を保持する機能を有するものとなるので、特に好ましい。
次に、本発明の接着処理工程について説明する。接着処理工程は、上記の転写フィルムの機能性膜を接着剤により被転写体に接着する工程である。接着剤としては、感圧式粘着剤が好ましく、特に、機能性膜が光学的用途の場合にはアクリル系光学用透明粘着剤が好ましい。また、被転写体は、特に制限はなく、機能性膜が形成される対象製品の部材であり、その製品の内容に応じて決定される。
そして、次に、剥離処理工程において、基材フィルムを被転写体から剥離する。そして、本発明の機能性膜の形成方法において、特に重要な点は、剥離処理工程の前に転写フィルムを加湿処理することである。すなわち、下記実施例で説明するように、転写フィルムを加湿処理することにより、パーヒドロポリシラザンの塗膜層と基材フィルムとの界面の接合力が低下し、パーヒドロポリシラザンの塗膜層が離型層として機能するので、弱い力で基材フィルムが剥離でき、容易に機能性膜を被転写体上に形成することができる。
加湿処理の条件としては、基材フィルムの水蒸気透過度等によって最適条件を適宜選択することが好ましいが、温度50〜90℃、湿度60〜100%RHの雰囲気で、2〜15時間程度放置して、処理することが好ましい。なお、加湿処理は、剥離処理工程の前であれば、接着処理工程の後であっても接着処理工程の直前であってもどちらでも良い。
以下、本発明の機能性膜の形成方法について、ガスバリア膜の形成方法の実施例に基づいて以下に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
本実施例において、本発明のガスバリア膜の形成方法による試料は、以下のような方法で作製した。まず、本発明のガスバリア膜の形成方法に用いる転写フィルムとして、基材フィルム上に順に、パーヒドロポリシラザンの塗膜層、ガスバリア層、および高分子樹脂の支持層の3層のガスバリア膜を有する転写フィルムを7種作製した。これら7種の転写フィルムを用い、転写フィルムのガスバリア膜を接着剤により被転写体に接着したのち、基材フィルムを被転写体から剥離して、被転写体にガスバリア膜を形成した本実施例のガスバリア膜の形成方法による試料を7種作製した。
一方、上記の実施例のほかに、比較例として、転写フィルムおよびガスバリア膜の転写形成方法の異なる、比較例のガスバリア膜の形成方法による試料を3種作製した。作製した本実施例による7種の試料、および比較例による3種の試料の内容と作製方法について、(表1)に示すとともに、以下に具体的に説明する。(表1)におけるPHPSは、パーヒドロポリシラザンの塗膜層を表す。
なお、実施例および比較例の転写フィルムの作製に用いた基材フィルムは、いずれも、厚さ125μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、Q65FA)であり、実施例および比較例のガスバリア膜の形成方法に用いた被転写体は、いずれも、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、HB)である。
〈実施例1〉
まず、実施例1のガスバリア膜の形成方法に用いた転写フィルムは、以下のようにして作製した。準備した基材フィルムに、パーヒドロポリシリラザンを20%含有するコーティング剤アクアミカ(登録商標、AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を乾燥膜厚が200nmとなるようにバーコーターでコーティングし、120℃のオーブンで5分間乾燥し有機溶媒を蒸発させパーヒドロポリシラザンの塗膜層を形成した。このパーヒドロポリシラザンの塗膜層の上に、バリア層となる酸化ケイ素の層を50nm真空蒸着して積層した。この酸化ケイ素層の上に、アルキドメラミン樹脂系のコーティング剤を乾燥膜厚が200nmとなるようにバーコーターでコーティングし、150℃で15分間の焼き付けを実施して、転写時に膜として保持機能を有する高分子樹脂の支持層を形成した。以上により、実施例1のガスバリア膜の形成方法に用いた転写フィルムを得た。
次に、上記の転写フィルムとポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの被転写体とを、感圧式粘着剤を25nmの厚みで塗布した被転写体の粘着剤面と転写フィルムの高分子樹脂の支持層とが対面する向きで張り合わせた。そして、これを、60℃95%RHの恒温恒湿槽に12時間放置し加湿処理した。加湿処理した後、転写フィルムの基材フィルムを剥離した。以上により、実施例1のガスバリア膜の形成方法による被転写体であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにガスバリア膜を形成した試料を得た。
〈実施例2〉
実施例2のガスバリア膜の形成方法が実施例1と異なる点は、用いた転写フィルムにおけるパーヒドロポリシラザンの塗膜層の膜厚のみであり、その他の条件および方法は、実施例1と全く同様にして行った。実施例2で用いた転写フィルムでは、乾燥膜厚が1000nmのパーヒドロポリシラザンの塗膜層を形成した。
〈実施例3〉
実施例3のガスバリア膜の形成方法が実施例1と異なる点は、用いた転写フィルムにおけるパーヒドロポリシラザンの塗膜層の膜厚のみであり、その他の条件および方法は、実施例1と全く同様にして行った。実施例3で用いた転写フィルムでは、乾燥膜厚が50nmのパーヒドロポリシラザンの塗膜層を形成した。
〈実施例4〉
実施例4のガスバリア膜の形成方法が実施例1と異なる点は、用いた転写フィルムにおける高分子樹脂の支持層のみであり、その他の条件および方法は、実施例1と全く同様にして行った。実施例4で用いた転写フィルムでは、実施例1のアルキドメラミン樹脂に代えて紫外線硬化型エポキシ樹脂を用い、120℃で5分間乾燥させた後、1000mj/cmの紫外線を照射して硬化させて高分子樹脂の支持層を形成した。乾燥膜厚は、実施例1と同様に200nmとした。
〈実施例5〉
実施例5のガスバリア膜の形成方法が実施例1と異なる点は、用いた転写フィルムにおける高分子樹脂の支持層のみであり、その他の条件および方法は、実施例1と全く同様にして行った。実施例5で用いた転写フィルムでは、実施例1のアルキドメラミン樹脂に代えて2液硬化型アクリルウレタンを用い高分子樹脂の支持層を形成した。乾燥膜厚は、実施例1と同様に200nmとした。
〈実施例6〉
実施例6のガスバリア膜の形成方法が実施例1と異なる点は、用いた転写フィルムにおけるバリア層となる酸化ケイ素の層の厚さのみであり、その他の条件および方法は、実施例1と全く同様にして行った。実施例6で用いた転写フィルムでは、厚さが20nmの酸化ケイ素の層を形成した。
〈実施例7〉
実施例7のガスバリア膜の形成方法が実施例1と異なる点は、用いた転写フィルムにおけるバリア層となる酸化ケイ素の層の厚さのみであり、その他の条件および方法は、実施例1と全く同様にして行った。実施例7で用いた転写フィルムでは、厚さが100nmの酸化ケイ素の層を形成した。
〈比較例1〉
比較例1のガスバリア膜の形成方法が実施例1と異なる点は、加湿処理を施さなかった点であり、実施例1の転写フィルムを用い、加湿処理をせずに、その他は実施例1と同様にして行った。
〈比較例2〉
比較例2のガスバリア膜の形成方法が実施例1と異なる点は、用いた転写フィルムであり、比較例2における転写フィルムでは、パーヒドロポリシラザンの塗膜層を設けなかった。その他の条件および方法は、実施例1と全く同様にして行った。
〈比較例3〉
比較例3のガスバリア膜の形成方法が実施例1と異なる点は、用いた転写フィルムであり、比較例3における転写フィルムでは、高分子樹脂の支持層を設けなかった。その他の条件および方法は、実施例1と全く同様にして行った。
以上により作製した、転写フィルムおよびガスバリア膜の転写形成方法の異なる、本実施例による7種の試料、および比較例による3種の試料について、水蒸気透過度(WVTR、単位:g/m/day)を評価した。また、これらの試料作製に用いた転写フィルムのガスバリア膜の剥離特性を評価した。評価結果を、その試料No.および試料の内容とともに、(表1)に示す。
なお、水蒸気透過度(WVTR)は、JIS K7129B法(赤外線センサ法)に準測定した。具体的には、モダンコントロール社製Permatranを用い、測定条件は40℃、90%RHとした。
また、上述において示した、実施例および比較例のガスバリア膜の形成方法に用いた被転写体である厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの水蒸気透過度の値についても、同様の方法で測定した。この被転写体の水蒸気透過度(WVTR)の測定値は、25g/m/dayであった。
そして、試料作製に用いた転写フィルムのガスバリア膜の剥離特性の評価は、比較例1を除いて、転写フィルムを60℃95%RHの恒温恒湿槽に12時間放置して加湿処理した後、JIS K5600−5−6に準じてクロスカット法により評価した。具体的には、それぞれの転写フィルムにおける基材フィルム上のガスバリア膜に、金属製のカッターガイドを用い1mmの幅で縦横垂直に切り傷を入れて碁盤目状に100分割にした。これにセロハンテープを圧着したのちセロハンテープを引き剥がし、100個のうちのガスバリア膜が残っているマス目の数を数え評価した。
Figure 2013123840

(表1)のクロスカット試験結果および備考に示したように、実施例1と同様の転写フィルムを用い加湿処理を施さなかった比較例1の転写フィルム、およびパーヒドロポリシラザンの塗膜層を設けなかった比較例2の転写フィルムは、ガスバリア膜の剥離性が極めて悪く、基材フィルム上のガスバリア膜を被転写体に転写することができなかった。したがって、比較例1および比較例2の方法によっては、ガスバリア膜を形成した被転写体は得られなかった。
一方、(表1)のクロスカット試験結果に示したように、実施例1〜7で用いたパーヒドロポリシラザンの塗膜層を設け加湿処理を施した転写フィルムは、加湿処理を施すことにより、基材フィルム上のガスバリア膜の剥離特性が大幅に改善され、弱い力で基材フィルムからガスバリア膜が剥離でき、良好な状態でガスバリア膜を被転写体上に転写して形成することができた。これは、剥離の前に転写フィルムを加湿処理することにより、パーヒドロポリシラザンの塗膜層と基材フィルムとの界面の接合力が低下し、基材フィルム上のガスバリア膜の剥離特性が大幅に改善されたためである。そして、(表1)の水蒸気透過度測定結果に示したように、実施例1〜7の方法によるガスバリア膜を形成した被転写体の水蒸気透過度は、いずれも、被転写体のみの水蒸気透過度(25g/m/day)に比較して小さく、被転写体に良好なガスバリア膜が形成されていることが確認できた。
なお、高分子樹脂の支持層を設けなかった転写フィルムを用いた比較例3では、ガスバリア膜を被転写体に転写することはできたが、ガスバリア膜の膜としての強度が極めて弱く、ガスバリア膜に多量のクラックを生じ、被転写体の水蒸気透過度は、被転写体のみの水蒸気透過度と同程度であり、良好なガスバリア膜は形成できなかった。
なお、上記の実施例において、ガスバリア層として、酸化ケイ素を真空蒸着して形成した例を説明したが、必ずしもこの方法でなくとも良い。ガスバリア層は、金属酸化物を主成分とする透明な薄膜であり、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウムなどの群より選ばれた1種または2種以上の金属酸化物から構成される。金属酸化物を主成分とする透明薄膜のガスバリア層の形成は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などのPVD法(物理蒸着法)、あるいはCVD法(化学蒸着法)など一般的な種々の方法により行うことができる。さらに、ガスバリア層は、有機膜と無機膜とを交互に積層した構造とすることや、2層以上の金属酸化物の層を積層した構造とすることも、水蒸気バリア性を高め、水蒸気透過度を極めて小さくできるので、好ましい。
以上説明したように、本発明の実施例のガスバリア膜の形成方法は、基材フィルム上に順に、少なくとも、パーヒドロポリシラザンの塗膜層、ガスバリア層、および高分子樹脂の支持層よりなるガスバリア膜を有する転写フィルムを作製する転写フィルム作製工程と、前記転写フィルムの前記ガスバリア膜を接着剤により被転写体に接着する接着処理工程と、前記基材フィルムを前記被転写体から剥離する剥離処理工程とを備えるガスバリア膜の形成方法であって、前記剥離処理工程の前に前記転写フィルムを加湿処理する構成としている。
そして、上記の構成であるので、本発明の実施例のガスバリア膜の形成方法によれば、剥離処理工程の前に転写フィルムを加湿処理することにより、パーヒドロポリシラザンの塗膜層の接合力を低下させ離型層として機能させる方法であるので、転写フィルムのガスバリア膜を被転写体に接着する接着処理工程までは、基材フィルムとガスバリア膜との接合力は十分な強度が維持でき、接着処理工程までにガスバリア膜が基材フィルムから剥離して欠落することがなく、十分なガスバリア性を有するガスバリア膜が形成できるとともに、剥離処理工程の前の加湿処理することにより、パーヒドロポリシラザンの塗膜層と基材フィルムとの界面の接合力が低下し離型層として機能するので、弱い力で基材フィルムが剥離でき、容易にガスバリア膜を被転写体上に形成することができる。
本発明に係る機能性膜の形成方法は、欠陥のない機能性膜を容易に被転写体上に転写形成できる機能性膜の形成方法であり、特に、本発明に係るガスバリア膜の形成方法は、欠陥のないガスバリア膜を容易に被転写体上に転写形成できるガスバリア膜の形成方法であるので、プラスチック基板を用いた液晶表示素子、有機EL素子等の表示素子、および有機薄膜太陽電池などに、ガスバリア膜を形成する方法として、特に有用である。

Claims (3)

  1. 基材フィルム上に順に、少なくとも、パーヒドロポリシラザンの塗膜層、機能性層、および高分子樹脂の支持層よりなる機能性膜を有する転写フィルムを作製する転写フィルム作製工程と、前記転写フィルムの前記機能性膜を接着剤により被転写体に接着する接着処理工程と、前記基材フィルムを前記被転写体から剥離する剥離処理工程とを備える機能性膜の形成方法であって、前記剥離処理工程の前に前記転写フィルムを加湿処理することを特徴とする機能性膜の形成方法。
  2. 機能性層は、ガスバリア層、ハードコート層、光反射層、光または電磁波吸収層、反射防止層、透明導電層、のいずれかもしくは複数の層であることを特徴とする請求項1に記載の機能性膜の形成方法。
  3. 基材フィルム上に順に、少なくとも、パーヒドロポリシラザンの塗膜層、ガスバリア層、および高分子樹脂の支持層よりなるガスバリア膜を有する転写フィルムを作製する転写フィルム作製工程と、前記転写フィルムの前記ガスバリア膜を接着剤により被転写体に接着する接着処理工程と、前記基材フィルムを前記被転写体から剥離する剥離処理工程とを備えるガスバリア膜の形成方法であって、前記剥離処理工程の前に前記転写フィルムを加湿処理することを特徴とするガスバリア膜の形成方法。
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