JP2013110239A - 電子部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】Niめっき層中に吸蔵された水素を低減し、IR特性が劣化しにくく、はんだ付け性に優れたSn層を有する外部端子電極をもつ電子部品を提供する
【解決手段】セラミック層と、内部電極と、前記内部電極と電気的に接続される外部電極層を有する電子部品において、前記外部電極層上に設けられるNiめっき層と、前記Niめっき層上に設けられるSnを主成分とするSn層と、を備え、前記Sn層は底部を有する開孔部を備えることを特徴とする電子部品。

【選択図】図3

Description

本発明は、セラミック層と内部電極とを有する電子部品に関するものである。
従来、電子部品の外部端子電極には、はんだ付けの際の耐熱性や耐蝕性、濡れ性などの機能が求められる。外部端子電極には、セラミック素体の端面に、素体側から順に、AgやCu等からなる外部電極層、めっき法によるNiめっき層及び第2のSn層12を備える構造を有するものが知られている。一般的には、かかる構造を有する外部端子電極のめっき層は、電解めっき法や無電解めっき法などの湿式めっき法により形成される。
しかしながら、この湿式めっき方法では、めっき中にめっき液の水分がセラミック素体の隙間に侵入してしまい、電子部品の電気特性を低下させるという問題があった。
この水分を除去するためには、めっき層形成後に熱処理を行い電子部品のセラミック素体の隙間に侵入した水分を取り除く手法が、特許文献1で提案されている。
特開2002−217002号公報
一方、外部端子電極においては、はんだ付け性に優れる更なる緻密なSnめっき層が要求されている。しかしながら、更なる緻密なSnめっき層をもつ外部端子電極では、めっき中に発生した水素が、Niめっき層に吸蔵されたままになり、電子部品の電気特性の中でも絶縁抵抗(IR)特性が劣化するという新たな課題がわかった。
吸蔵した水素を除去する方法としては、たとえば加熱処理が考えられる。しかし加熱にて水素を除去するには、高温の処理条件が必要であり、高温での熱処理は、外部端子電極の表面が酸化し、はんだ付け性を低下させるという新たな問題が生じてしまう。
そこで本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、外部端子電極中のNiめっき層に吸蔵された水素を低減することが可能で、IR特性が劣化しにくく、且つはんだ付け性に優れる電子部品を提供することにある。
上述した課題を解決し、目的を達成するため本発明の電子部品は、セラミック層と、内部電極と、前記内部電極と電気的に接続される外部電極層を有する電子部品において、前記外部電極層上に設けられるNiめっき層と、前記Niめっき層上に設けられるSnを主成分とするSn層と、を備え、前記Sn層は底部を有する開孔部を備えることを特徴とする。
この開孔部を持ったSn層は、Niめっき層の水素が抜け易いという作用がある。その結果、Niめっき層の内部に吸蔵された水素が外部に放出され、電子部品のIR特性の劣化を防ぐことができる。さらに、Niめっき層の表面は、Sn層の開孔部においても底部で覆われており、Niめっき層が酸化しにくいためはんだ付け性に優れるという効果も得られる。
本発明の望ましい態様としては、開孔部の底部の厚みが0.05μm以上0.4μm以下であることが好ましい。
底部の厚みが、0.05μmより厚くすることで、Niめっき層の酸化が抑制され、底部の厚みを0.4μmより薄くすることで水素が抜けやすいという作用がある。その結果はんだ付け性により優れ、IR特性の劣化を防止できるというより高い効果が得られる。
本発明の望ましい態様は、開孔部の数が3000個/mm以上39000個/mm以下であることが好ましい。
開孔部の数が3000個/mm以上とすることで水素が抜けやすく、39000個/mm以下とすることではんだ付け性に優れるという作用がある。これにより、より一層IR特性の劣化しにくく、はんだ付け性に優れるという効果が得られる。
本発明の望ましい態様は、開孔部の底部の径がSn層の表面の開孔径より小さいことが好ましい。
開孔部の底部の径が、Sn層の表面の開孔径より小さい、すなわち、開孔部は底部からSn層の表面に近づくに従い広がっている形状を有する。開孔部の内部をSn層の形成後の洗浄工程において、洗浄し易いという作用がある。このため、開孔部内部に残るめっき液成分が減少し、Sn層が腐食し難くなるという効果が得られる。
本発明は、外部端子電極のNiめっき層中に吸蔵された水素を低減することができ、IR特性とはんだ付け性が劣化しにくい、外部端子電極を備えた電子部品を提供できるという効果を奏する。
図1は、本実施形態による電子部品を模式的に示す斜視図である。 図2は、図1のI―I線の断面を模式的に示す断面図である。 図3は、図2のIIを拡大して模式的に示す断面図である。 図4は、本実施形態による開孔部の断面を模式的に示す断面図である。 図5は、実施例1による開孔部を有したSn層の表面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 図6は、実施例1による開孔部の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。
本発明を実施するための形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
図1、図2又は図3は、本実施形態による電子部品を説明するためのものである。
図1は、本実施形態による電子部品を模式的に示す斜視図である。電子部品1は、セラミック素体4と、このセラミック素体4の両端に設けられた外部端子電極2A、2Bから構成されている。
図2は、図1のI―I線の断面図である。
セラミック素体4は、セラミック材料から構成される複数のセラミック層5と、このセラミック層5の間に設けられた内部電極3から構成される。換言すれば、セラミック素体4は、セラミック層5と内部電極3とが交互に積層された積層体からなる。このセラミック素体4において、内部電極3は、それらの一方の端部がセラミック素体4における、対向した異なる端面にそれぞれ露出するように設けられており、その露出した部分で外部端子電極2A、2Bに接続されている。外部端子電極2A、2Bは、外部電極層6A、6B、Niめっき層7A、7B、及びSn層8A、8Bから構成されている。そしてSn層8A、8Bは、開孔部9を有している。
図3は、図2のIIを拡大した断面図である。Sn層8A、8Bは、Niめっき層7A、7B上に形成され、底部10を備える開孔部9を有している。
セラミック層5を構成するセラミック材料は、電子部品の種類に応じてそれぞれ必要となる特性に応じて選択される。例えば、コンデンサ、バリスタ、サーミスタ等の電子部品の用途に応じて、セラミック材料としては、公知の誘電体セラミック、半導体セラミック、磁性体セラミック等を適宜選択して適用することができる。例えばBaTiO、CaTiO、SrTiO、CaZrOなどの誘電体セラミック材料などがある。
外部電極層6A、6Bは、Cuや、Ag、Niを主成分とした導電材料から構成される。例えば外部電極層6A、6Bは、ガラス成分を含む導電性ペーストを焼成して形成される。またはセラミックス素体4に直接湿式めっき法によって外部電極層6A、6Bを形成することもできる。
但し、外部電極層6A、6Bを構成する材料、及び製造方法は例示したものに限定されるものではない。
内部電極3は、例えばCuや、Ag、Ni等の金属で形成されている。
但し、内部電極3を構成する材料は例示したものに限定されるものではない。
Niめっき層7A、7Bは、例えば、はんだ付けの際の熱による、外部電極層6A、6Bの金属がはんだへ拡散するのを防止する防御層として機能する。
Niめっき層7A、7Bは、Niあるいは、Ni合金によって構成されることが好ましい。Niによって構成される場合は、不可避的に混入した不純物も含まれる。Ni合金から構成される場合は、例えばNi−P合金や、Ni−B合金が可能である。いずれにおいても、Niめっき層を構成する元素は、98原子%以上がNiあるいは、Ni合金によって構成されることが好ましい。
例えばNiめっき層7A、7Bの形成には、次亜リン酸、水素化ホウ素化合物、を還元剤として用いる無電解Niめっき法などで形成することができる。無電解Niめっき法によるNiめっき層7A、7Bを形成する工程は、Ni元素として例えばNiの塩化物または硫酸塩を用いる。さらに、還元剤として、例えば次亜リン酸ナトリウムや水素化ホウ素ナトリウムを用いる。Niめっき液の安定性を保つためには、錯化剤として、例えばクエン酸やこはく酸やりんご酸、を加えてもよい。
これらの無電解Niめっき液に、外部電極層6A、6Bを有するセラミック素体4を浸漬し、外部電極層6A、6Bの表面にNiめっき層7A、7Bを形成する。
Sn層8A、8Bは、例えば、まず底部10を有する開口部を備える。具体的には、Sn層は底部を形成する第1のSn層11と開口部の周縁部を形成する第2の層12を有する。Sn層の開口部は、第1のSn層11に不均一に第2の層12を形成することにより形成される。この時、第1のSn層11を不均一に形成することが開口部9を形成することで好ましい。
Sn層8A、8Bの厚みは、はんだ付け性と生産性を考慮し1μm以上4μm以下とすることが好ましい。
外部端子電極のSn層8A、8Bは、はんだ付け性を向上させる機能を有している。Sn層8A、8Bが、外部電極層6A、6Bの表面に設けられていることにより、当該外部電極層6A、6Bのはんだ付けを良好に行うことが可能となる。さらに、外部電極層6A、6BとSn層8A、8Bとの間にNiめっき層7A、7Bが設けられていることにより、外部電極層6A、6B内の金属の相互拡散に起因して生じ易いはんだ付け不良及び長期信頼性の低下を抑制することができる。
Sn層8A、8Bは、Snを主成分として構成される層、つまり主としてSn元素によって構成されることが好ましい。Snを主成分として構成するとは、不可避的に混入した不純物も含まれるが、はんだ付け性の点において98原子%以上がSn元素によって構成されることが好ましい。
Sn層8A、8Bの第1のSn層11と第2のSn層12は、バレルめっき法で形成することが好ましい。バレルめっき法では、底部10を不均一にする作用が大きい。バレルめっき法でより不均一にされた第1のSn層11は、Sn層8A、8Bとしては、第1のSn層11をもとに第2のSn層12が不均一に成長することにより、より開孔部9が形成され易いという効果が得られる。
Sn層8A、8Bにおける第1のSn層11上への第2のSn層12の形成には、バレルめっき法にかえて、無電解Snめっき法を用いることができる。無電解Snめっき液に、セラミック素体4と外部電極層6A、6BとNiめっき層7A、7Bと第1のSn層11を有する電子部品を浸漬し、第1のSn層11の表面に第2のSn層12を析出しSn層8A、8Bを形成する。
無電解Snめっき液には、Sn元素を含む、例えば塩化Snや硫酸Snやメタンスルホン酸Snと、の水溶液を用いる。さらにSn元素を還元反応によって析出させるための還元剤を含み、この還元剤には、次亜リン酸、水素化ホウ素化合物、アミンボラン、ヒドラジン誘導体などを使うことができる。さらに錯化剤を含むことが、めっき液の安定の観点から好ましい。錯化剤としてはチオ尿素、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、ピロリン酸やその塩などが使用できる。
Sn層における開孔部9の数は、好ましい範囲は3000個/mm以上39000個/mm以下、より好ましい範囲は8000個/mm以上30000個/mm以下である。開孔部9の数を3000個/mm以上39000個/mm以下とすることで、Niめっき層7A、7Bの水素が抜けやすいという作用がある。その結果、IR特性の低下しにくく、はんだ付け性に優れた電子部品が得られるという効果がある。さらに8000個/mm以上30000個/mmとすることで、よりIR特性の低下しにくい、よりはんだ付け性に優れた電子部品が得られるという効果がある。
図6は、本実施形態の開孔部9の断面を模式的に示す断面図である。
Sn層8A,8Bに形成される開孔部9は、底部10からSn層表面に向かって広がることが好ましい。言いかえると、底部10の開孔径αとSn層の表面の開孔径βを比較すると、開孔径の大きさがαよりβが大きいことが好ましい。これにより、Sn層形成後の洗浄時に、開孔部9の内部まで洗浄液が入りやすいという作用がある。この結果、開孔部9の内部の洗浄が容易になり、内部に残る洗浄除去を意図しているめっき液等の不要な成分が少なくなるという効果が得られる。
さらに、開孔部9のSn層8A、8Bの表面への広がりの角度θは、開孔部内で均一な角度θでないことが好ましい。均一な角度θとは、例えば開孔径のαとβのその中心軸が、開孔部において異なり、そのため開孔部内において角度θが一定でないことや、底部10からSn層表面への開孔部内が連続した角度で形成していないこと等を示すものである。このように開孔部9において、異なる角度θで広がりを持つことによって、開孔部内の洗浄液の表面張力効果が低減され、内部の洗浄液の交換効率が向上する。
底部10の開孔径αがSn層表面の開孔径βより小さく形成される理由は明らかではないが、次のように考えている。めっきによりSn層8A,8Bを形成する場合は、第2のSn層12の析出に伴い析出部周辺のめっき液中のSn2+イオンが減少する。このためSn層8A,8Bでは、表面に向かってSn2+イオンが薄くなる濃度勾配を持ったイオン拡散層が形成される。このため、イオン濃度が高い底部と表面近傍でのSn析出速度が変わり、開孔径αとβが異なり形成される。
開孔部9の底部10の開孔径αは、直径として0.1μm以上1.8μm以下が好ましい。0.1μm以上とすることで、開孔部9の内部に洗浄水が入りやすく、開孔部9内部のめっき液成分が洗浄後に残ることが少なくなる。さらに1.8μm以下とすることで、はんだ付け時に開孔部9がはんだで覆われやすくなるため、ボイドが発生しにくく、より高い接合強度得られる。これらにより、はんだ付け性と接合強度に優れた電子部品が得られるという効果がある。
底部10は、好ましくは主としてSnから構成される。主として構成するとは、不可避的に混入した不純物も含まれるが、はんだ付け性の点において98原子%以上がSn元素によって構成されることが好ましい。
底部10の厚みは、好ましい範囲は0.05μm以上0.4μm以下である。底部10の厚みを0.05μm以上0.4μmとすることで水素が抜けやすく、且つNiの酸化を防ぐ作用がある。これにより、IR特性が劣化しにくく、且つはんだ付け性の劣化を抑制する効果が得られる。かならずしも全ての開孔部9の内部において、Niめっき表面が底部で覆われている必要はない。好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上覆われていれば良い。80%以上覆われていることでNiめっき層7A、7Bの酸化を防ぐ作用がある。これによりはんだ付け性の劣化を抑制する効果が得られる。
開孔部9を作成する工程において第1のSn層11の厚みは、不均一な厚みであることが好ましく、さらには平均厚みを0.05μm以上0.4μm以下とすることが好ましい。これは、めっき層のわずかな表面の粗さの影響によって第1のSn層11が不均一になりやすいためである。このようにして得られた不均一な厚みの第1のSn層11は、第2のSn層12を不均一に成長させるという作用がある。これにより開孔部9をもったSn層8A、8Bが形成されるという効果が得られる。
第1のSn層11は、バレルめっき法や無電解めっき法にかえて、スパッタリング法、真空蒸着法などの方法で形成することができる。このとき、レジストなどのマスキング方法を用いて、選択的にNiめっき層7A、7Bの表面に底部10を形成することができる。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例試料の被処理物として、セラミック層と内部電極を備えるセラミック素体と、外部電極層としてCuとを備える積層セラミックコンデンサ1005M(長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mm)と、縦5mm、横5mm、厚さ0.5mmのCu板を使用した。
積層セラミックコンデンサとCu板は、いずれも同じ条件でNiめっき層およびSn層を形成し、積層セラミックコンデンサで電気特性であるIR特性を測定し、Cu板でNiめっき層中に吸蔵された水素を測定した。
実施例試料の被処理物は、イソプロパノールに浸漬し1分超音波洗浄した後、1分間水洗をおこなった。
次に脱脂液(奥野製薬社製:ICPクリーンSC)中に浸漬し水洗した。脱脂によって表面が洗浄される。さらにPd触媒液(奥野製薬社製:NNPアクセラ)中に30℃、2分浸漬しPd触媒を付与した後、1分間水洗をおこなった。余分な触媒を除去するため除去液(奥野製薬社製;ポストディップ)中に35℃、2分浸漬し水洗した。
次に無電解Niめっき液(奥野製薬工業(株)製:ICPニコロンSOF)中に85℃、30分浸漬し無電解Niめっきを行い、さらに蒸留水で洗浄した。平均3.0μmのNiめっき層を形成した。
次にNiめっき層上に底部を形成するため、無電解Snめっき法にてバレルめっきを行い、Niめっき層上に第1のSn層を形成した。第1のSn層を形成するための無電解Snめっきの時間は、10分、20分、30分、40分とし、底部の厚みの異なる実施例試料を作製した。無電解Snめっき法にて形成した第1のSn層は、Niめっき層の表面粗さや還元剤に対する活性度の違いによって厚さが不均一になり、一部不連続なところも観察された。引き続き、無電解Snめっき法にてバレルめっきを行い、上記底部上に、開孔部を備えるSn層を形成した。1分間水洗を行った後、200℃で1時間乾燥した。バレルめっきによって第1のSn層は、厚みやその表面が不均一になり、開孔部が形成されやすくなっていると考えられる。めっきの時間を変えることでSn層の厚みの異なる実施例1から4とした。
Sn層の厚みは、蛍光X線膜厚計(セイコーインスツル株式会社、SFT−9400)により測定し、実施例試料表面の任意の箇所を5点測定し平均値を求めた。
底部の厚みは、実施例試料の断面を鏡面研磨して走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ、SFT−3400N)により10000倍の倍率で観察し、任意の開孔部5点の測定から平均値を求めた。
開孔部の数は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ、SFT−3400N)により2000倍の倍率で観察し、実施試料表面の任意の箇所の観察画像5点を測定しその平均数値を求めた。
Niめっき層に含まれる水素量は、Cu板の実施例試料を昇温脱離ガス分析法で評価した。測定装置は、電子科学株式会社製(WA1000S/W)を用いた。150℃から200℃を昇温速度:20℃/minで加熱し、その間の水素量をNiめっき層に含まれる水素量として測定した。測定結果からCu板の単位重量あたりの水素量が4.0×10−10ng/g以上のものを◎とし、2.6×10−10ng/g以上4.0×10−10ng/g未満のものを○とし、2.6×10−10ng/g未満のものを×とした。2.6×10−10ng/g未満の試料は、熱処理によって水素が十分に抜けず、残った水素によって電子部品のIR特性が劣化するため×とした。
はんだ付け性の評価には、Sn−3.0Ag−0.5Cu鉛フリーはんだ(千住金属工業株式会社製:M705)を用いた。非活性ロジンフラックスに浸漬後、245±2℃のはんだ槽に3秒浸漬した後、新しいはんだで覆われている面積を求めた。95%以上の面積がはんだに濡れているものを◎とし、90%以上95%未満のものを○、90%未満のものを×とした。面積90%以上あれば十分な接合強度が得られ、95%以上あることでさらに優れた接合強度を持った電子部品が得られる。
これら得られた実施例1から4の結果を表1に示す。
またNiめっき層を形成するまでは実施例1から4と同じ方法で行い、次にNiめっき層上に第1のSn層を形成するため、電解Snめっき法にてバレルめっきを行い、Niめっき層上に第1のSn層を形成した。電解Snめっき法にて形成された第1のSn層は、Niめっき層の表面粗さの影響によって厚みが不均一になっていた。さらに、電解Snめっきの時間は全て40分とし、電流値を変えて底部となる第1のSn層の厚みの異なる試料を作製した。引き続き、無電解Snめっき法にてバレルめっきを行い、上記第1のSn層上に、第2のSn層12を形成した。1分間水洗を行った後、200℃で1時間乾燥した。めっきの時間を変えることでSn層の厚みの異なる実施例試料を作製した。この方法により実施例5から7を実施し、実施例1から4と同じ評価を行った。結果を表1に示す。
またNiめっき層を形成するまでは実施例1から4と同じ方法で行い、次にNiめっき層上に第1のSn層を形成するため、Snをターゲットとして用いたスパッタリング法にてNiめっき層上に第1のSn層を形成した。スパッタリング法にて形成された第1のSn層は、Niめっき層の表面粗さの影響によって厚みが不均一になっていた。引き続き、無電解Snめっき法にてバレルめっきを行い、上記底部上に、第2のSn層12を形成した。1分間水洗を行った後、200℃で1時間乾燥した。めっきの時間を変えることでSn層の厚みの異なる実施例を作製した。この方法により実施例8から9を実施し、実施例1から4と同じ評価を行った。結果を表1に示す。
また比較のため、市販されている光沢剤を添加した電解Snめっき液を用い、電解Snめっき法によるバレルめっきによって、Snめっき層を有する試料を作製した。Niめっき層を形成するまでは実施例1から4と同じ処理を施した。次に電解Snめっき法で、Snめっき層の緻密性を向上させるための光沢剤を含む電解Snめっき液を使用し、バレルめっきによってSnめっき層を形成し、1分間水洗を行った後、200℃で1時間乾燥し、比較実施例1を実施した。得られたSnめっき層は光沢が有り、開孔部は観察されなかった。実施例1から4と同じ評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1から9では、いずれもNiめっき層上に設けられるSnを主成分とするSn層に底部を有する開孔部が確認された。そのうち、図4は、実施例1のSn層の表面状態を示す、走査型電子顕微鏡の開孔部を有するSn層の観察結果である。
図5は、実施例1の開孔部の断面を示す走査型電子顕微鏡の観察結果である。開孔部は、内部においてNiめっき層表面が、底部で覆われており、開孔径がSn層の表面の開孔径より小さくなっていることが観察された。
Figure 2013110239
実施例1から9では、開孔部を有するSn層は水素が抜けやすいことが確認された。特に底部の厚みが0.05μm以上0.4μm以下、開孔数が3000個/mm以上39000個/mm以下の場合は、水素が抜けやすく、且つはんだ付け性に優れている。
一方、比較実施例1では、開孔部が形成されなかったために、はんだ付け性に優れるが水素が抜け難い。このことからも、緻密な粒界をもつSn層は、はんだ付け性に優れるが、水素が抜け難いことが確認された。
電子部品としての電気特性であるIR特性については、実施例試料の被処理物である外部電極層を備えるセラミックコンデンサの特性を初期値として、Sn層まで付与した後の特性と比較し、10分の1以内の低下に抑制されたものを特性劣化に抑制の効果があったと判断した。実施例1から9では、いずれもIR特性の変化が10分の1以内の低下に抑制されていた。
これらによって、実施例1から9では、はんだ付け性に優れ、IR特性が良好であることがわかる。これは、底部によりNiめっき層の酸化が抑制され、Niめっき層に吸蔵された水素が乾燥時に開孔部から抜けたためである。
一方、比較実施例1では、はんだ付け性に優れるが、IR特性の劣化が大きい。比較実施1では、緻密なSnめっき層がNiめっき層の酸化を抑制するためはんだ付け性に優れる。しかし、開孔部を有さないため、Niめっき層に吸蔵された水素が抜けにくく、IR特性が劣化したと考えられる。
以上のように、本発明に係る開孔部と底部を有した電子部品は、水素が抜けやすく、Niめっき層が酸化しにくい。このためIR特性が劣化しにくく、且つはんだ濡れ性に優れた電子部品を提供することができる。
1 電子部品
2A、2B 外部端子電極
3 内部電極
4 セラミック素体
5 セラミック層
6A、6B 外部電極層
7A、7B Niめっき層
8A、8B Sn層
9 開孔部
10 底部
11 第1のSn層
12 第2のSn層

Claims (4)

  1. セラミック層と、内部電極と、前記内部電極と電気的に接続される外部電極層を有する電子部品において、前記外部電極層上に設けられるNiめっき層と、前記Niめっき層上に設けられるSnを主成分とするSn層と、を備え、前記Sn層は底部を有する開孔部を備えることを特徴とする電子部品。
  2. 前記底部は、厚みが0.05μm以上0.4μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
  3. 前記開孔部の数は、3000個/mm以上39000個/mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品。
  4. 前記開孔部の底部の径は、前記Sn層の表面の開孔径より小さいことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の電子部品。
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