JP2018104821A - 表面処理材及びこれを用いて作製した部品 - Google Patents

表面処理材及びこれを用いて作製した部品 Download PDF

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良聡 小林
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Abstract

【課題】本発明は、特にイオン化傾向が大きい卑な金属で主として構成され、健全なめっき被膜の形成が難しいとされる導電性基体上に、表面処理被膜を密着性よくかつ簡便に短時間で形成でき、かつ、耐食性に優れた表面処理材及びこれを用いて作製した部品を提供する。【解決手段】本発明の表面処理材100は、導電性基体1と、この導電性基体1上に形成された複数の金属層からなる表面処理被膜2とを有する表面処理材であって、導電性基体1が、アルミニウム又はアルミニウム合金であり、複数の金属層のうち、導電性基体1上に直接形成されている金属層である第1金属層21は、平均結晶粒径が0.01μm以上0.2μm未満であり、第1金属層21上に直接形成される第2金属層22は、平均結晶粒径が0.2μm以上であり、第1金属層21と第2金属層22とは、90質量%以上同一の金属成分を含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、表面処理材及びこれを用いて作製した部品に関し、特にイオン化傾向が大きい卑な金属で主として構成され、健全なめっき被膜の形成が難しいとされる導電性基体上に、複数の金属層からなる表面処理被膜を、密着性よく簡便に形成する技術に関する。
従来の電気接点等を形成するのに用いられる被めっき材料(導電性基体)には、安価であって、しかも比較的特性が優れているという観点から、銅、銅合金、鉄、鉄合金などの金属材料が広く使用されてきた。このような金属材料は、特に導電性や加工性が良好で、入手も比較的容易であり、さらには、その表面上に被覆処理を行うことが容易で、めっき密着性に優れた表面を有することなどから、現在も主流の導電性基体用材料として用いられている。
しかしながら、銅(比重8.96)や鉄(比重7.87)は比重が比較的大きい材料であることから、例えば車載向けのワイヤーハーネスや航空機の機体などでは、銅や鉄などに代えて、アルミニウム(比重2.70)やマグネシウム(比重1.74)のように比重が比較的小さい材料を適用するケースが増えてきている。
ところで、金属の中でも軽金属と呼ばれるアルミニウムは、表面をめっきする方法が煩雑であって、しかも密着性の良好なめっき被膜を形成することが難しいとされている。これは、アルミニウムは、その表面に不動態膜と呼ばれる酸化被膜が形成しやすく、この酸化被膜が安定な状態で存在していることや、アルミニウムのような卑な金属では、湿式でめっきを実施することが難しいことなどが要因として挙げられる。
アルミニウム系基材の表面における酸化被膜の形成を抑制するため、従来から、基材表面を錫などの金属によって被覆して、接触抵抗の維持ないし増加抑制を行うという対策が採られてきた(例えば特許文献1等)。
また、アルミニウム系基材の表面に、めっき密着性を向上させるなどの目的で形成されるニッケル層などの下地層と、電気接点用の金属(錫、銀など)からなる被覆層とを、例えば湿式めっき法によって順次形成する場合、基材表面に存在する酸化被膜によって、基材表面に、下地層を形成してから、この下地層上に被覆層を形成しても、通常は十分な密着性が得られない。
このため、従来では、下地層や被覆層の形成前に、亜鉛を含んだ溶液を用いてジンケート処理と呼ばれる亜鉛置換処理を行なうことによって、基材とめっき被膜(下地層および被覆層)との密着強度を高める前処理を行っていた(例えば特許文献2)。
特許文献3では、アルミニウム合金にめっきが施された電子部品材が示されており、十分な結合力を得るために、亜鉛層は一定量以上存在することが好ましいと考えられていた。特許文献3では、基材に対して亜鉛層を形成せずにめっきを行ってもよいと述べられているが、製造方法が明示されていない。したがって、亜鉛層を極限まで減少させた場合、もしくは亜鉛層を形成しない場合に得られる効果について検討されていない。
また、特許文献4では、活性酸処理液によるエッチングにより基材の表面に微細なエッチング凹部を形成する前処理を行ない、形成した微細なエッチング凹部によるアンカー効果によって密着強度を高めることが示されている。しかし、5-10μmのような凹凸は、変形時の応力集中点となるため、曲げ加工性が悪化する問題があった。
一般には、アルミニウム基材の表面上にジンケート処理を行ってから形成されためっき被膜においては、基材とめっき被膜との間に、例えば100nm程度の厚さで形成された亜鉛層が介在し、この亜鉛層上に本めっき層(めっき被膜)が形成されているため、加熱されると、亜鉛層の亜鉛が本めっき層中を拡散し、さらに本めっき層の表層にまで拡散・出現する。その結果、接触抵抗を上昇させてしまうという問題や、さらにはワイヤボンディング性の低下、はんだ濡れ性の低下など、様々な問題を引き起こしてしまう。特に、電車や電気機関車のモータは、軽量化のために、巻線のアルミ化が検討されているが、部位によっては、160℃に達するため、導体の表面に施されるめっきの耐熱性の向上が必要である。大型のバスバーなどは、アルミ化による軽量化の効果が大きい。これらは、いくつかの部品を溶接して製造されるが、溶接した箇所の近傍は、高温になるため、より耐熱性の高いめっきが求められている。また、近年、ゲリラ豪雨が増加しており、雷を受けた場合に瞬間的に大電流が流れ、そのときのジュール熱による発熱は、180℃以上とも言われている。配電盤などに用いられる導体には、耐熱性が必要である。さらに、自動車のワイヤーハーネスのアルミ化が進んでおり、エンジン周辺や高出力のモータ周辺で、150℃の耐熱が求められている。このような昨今の背景から、加速試験で、200℃で24時間保持した場合にも、密着性の劣化や、接触抵抗の上昇が起きないめっきが求められている。
また、ジンケート処理における亜鉛層の形成状態によっては、その後の本めっきでのコブの発生や、析出異常等のめっき不具合がたびたび発生するケースがあった。
さらに、ドローンやウエアラブルデバイスでは、雨や汗がデバイス内部に入り込む可能性があり、長期信頼性を確保するためにも、高い耐食性が求められる。風力発電のような塩水環境における変圧器のモータやインバータも同様である。しかしながら、亜鉛置換処理後に形成されるめっき層(下地層)を薄く形成すると、不均一なめっき層の形成やピンホールの形成により、亜鉛含有層を完全に被覆することは困難であり、塩水環境において亜鉛含有層に沿って侵食が優先的に進行し、その結果、下地層と基材の間において剥離が生じてしまうという問題がある。このため、上述したような問題が生じないようにするためにも、基体とめっき被膜との間には、亜鉛層が存在しないことが望ましく、また、亜鉛層の形成が必要な場合には、できるだけ厚さを薄くした亜鉛層を形成することが望まれていた。
亜鉛層を介さずにアルミニウム基材にめっきする手法については、例えばフッ化水素酸/又はその塩、ニッケル塩を用いた無電解ニッケルが提案されているが(例えば特許文献5)、ニッケルの析出が無秩序に発生し、格子不整合が大きくなるため、十分な密着性を得ることができなかった。
特開2014−63662号公報 特開2014−47360号公報 特開2012−087411号公報 特開2002−115086号公報 特開2011−99161号公報
そこで本発明の目的は、特にイオン化傾向が大きい卑な金属で主として構成され、健全なめっき被膜の形成が難しいとされる導電性基体上に、表面処理被膜を密着性よくかつ簡便に短時間で形成でき、かつ、耐食性に優れた表面処理材及びこれを用いて作製した部品を提供することにある。
本発明者らは、上記問題に対して鋭意検討を行った結果、導電性基体上に形成された表面処理被膜を構成する複数の金属層のうち、導電性基体上に直接形成されている金属層である第1金属層と、第1金属層上に直接形成される第2金属層の結晶粒径の適正化を図り、第1金属層と第2金属層とを、90質量%以上同一の金属成分で構成することにより、密着性が良好であり、かつ、耐食性に優れた表面処理材を提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)導電性基体と、該導電性基体上に形成された複数の金属層からなる表面処理被膜とを有する表面処理材であって、前記導電性基体が、アルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記複数の金属層のうち、前記導電性基体上に直接形成されている金属層である第1金属層は、平均結晶粒径が0.01μm以上0.2μm未満であり、前記第1金属層上に直接形成される第2金属層は、平均結晶粒径が0.2μm以上であり、前記第1金属層と前記第2金属層とは、90質量%以上同一の金属成分を含有することを特徴とする表面処理材。
(2)前記第1金属層の平均厚さが0.005μm以上0.5μm以下の範囲であることを特徴とする、上記(1)に記載の表面処理材。
(3)前記第2金属層の平均厚さが0.1μm以上2μm以下の範囲であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の表面処理材。
(4)前記第1及び第2金属層は、前記同一の金属成分が、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅又は銅合金であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面処理材。
(5)前記表面処理被膜は、前記第1及び第2金属層と、該第2金属層上に形成された1層以上の金属層とからなり、該1層以上の金属層が、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金、錫、錫合金、銀、銀合金、金、金合金、白金、白金合金、ロジウム、ロジウム合金、ルテニウム、ルテニウム合金、イリジウム、イリジウム合金、パラジウム及びパラジウム合金の群から選択されるいずれかで形成されたものであることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面処理材。
(6)前記1層以上の金属層は、2層以上の金属層からなることを特徴とする、上記(5)に記載の表面処理材。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理材を用いて形成される端子。
(8)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理材を用いて作製されたコネクタ。
(9)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理材を用いて作製されたバスバー。
(10)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理材を用いて作製されたリードフレーム。
(11)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理材を用いて作製された医療部材。
(12)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理材を用いて作製されたシールドケース。
(13)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理材を用いて作製されたコイル。
(14)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理材を用いて作製されたコンタクトスイッチ。
(15)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理材を用いて作製されたケーブル。
(16)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理材を用いて作製されたヒートパイプ。
(17)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の表面処理材を用いて作製されたメモリーディスク。
本発明によれば、導電性基体、特にイオン化傾向が大きい卑な金属で主として構成され、健全なめっき被膜の形成が難しいとされる、アルミニウム又はアルミニウム合金である導電性基体と、導電性基体上に形成された複数の金属層からなる表面処理被膜とを有する表面処理材であって、複数の金属層のうち、導電性基体上に直接形成されている金属層である第1金属層は、平均結晶粒径が0.01μm以上0.2μm未満であり、第1金属層上に直接形成される第2金属層は、平均結晶粒径が0.2μm以上であり、第1金属層と第2金属層とは、90質量%以上同一の金属成分を含有することによって、導電性基体と表面処理被膜との間に、例えば100nm程度の厚さの亜鉛含有層(特にジンケート処理層)が介在する従来の表面処理材に比べて、工程が簡略化された結果低コストでかつ安全に製造できる。また、導電性基体上に直接形成されている第1金属層の平均結晶粒径が0.01μm以上0.2μm未満であることにより、機械的投錨効果(アンカー効果)を発揮させることができる。また、第2金属層の平均結晶粒径が0.2μm以上であることにより、第1金属層の密な結晶状態の上に、第2金属層を密に形成することができ、ピンホールが大幅に抑制された金属層を形成することができ、耐食性に優れた表面処理材を提供することができる。表面処理被膜を形成した後に得られる本来の特性を、例えば高温(例えば200℃程度)での使用環境下であっても劣化させずに維持することができ、長期信頼性が高い表面処理材及びこれを用いて作製される種々の部品(製品)、例えば端子、コネクタ、バスバー、リードフレーム、医療部材、シールドケース、コイル、アクセサリ、コンタクトスイッチ、ケーブル、ヒートパイプ、メモリーディスク等の提供が可能になった。
図1は、本実施形態の表面処理材の概略断面図である。 図2は、発明例2の表面処理材の断面観察写真である。
次に、本発明に従う実施形態を、図面を参照しながら以下で説明する。
図1は、本実施形態の表面処理材を概略断面で示したものである。図示の表面処理材100は、導電性基体1と表面処理被膜2とを有しており、表面処理被膜2は、導電性基体1上に直接形成される第1金属層21と、第1金属層21上に直接形成される第2金属層22と、最表面に形成される機能層23とからなる。
(導電性基体)
導電性基体1は、湿式めっき法を用いて健全なめっき被膜の形成が難しいとされる、アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金である。導電性基体1の形状は、図面においては条での例を示しているが、板、線、棒、管、箔などの形態でもよく、用途によって様々な形状を採ることができる。
ところで、導電性基体1を構成するアルミニウム(Al)又はアルミニウム合金は、イオン化傾向が大きい卑な金属である。そのため、導電性基体1上に表面処理被膜2を形成する際には、常法として亜鉛によって置換処理、いわゆるジンケート処理を行うのが一般的である。従来のジンケート処理では、基材と表面処理被膜(めっき被膜)との間に存在する亜鉛含有層の厚さが例えば100nm程度である。この亜鉛含有層の亜鉛が、表面処理被膜中を拡散し、さらに表面処理被膜の表層にまで拡散・出現する場合がある。そうすると、例えば電気接点として用いられる場合には、接触抵抗を上昇させてしまうという問題や、さらにはワイヤボンディング性の低下、はんだ濡れ性の低下、耐食性の低下など、様々な問題を引き起こす。結果として、表面処理材の特性が使用によって劣化して長期信頼性が損なわれるケースがあった。
このため、導電性基体1と表面処理被膜2との間に亜鉛含有層を存在させないことが望ましいが、従来の被膜形成技術では、亜鉛含有層(特にジンケート処理層)が存在しないと、イオン化傾向が大きい卑な金属である導電性基体1に対して密着性の良好な表面処理被膜(めっき被膜)を形成することが難しいとされていた。
そこで、本発明者らが鋭意検討を行なったところ、導電性基体1(例えばアルミニウム基材)の表面に、新規の表面活性化処理工程(第1金属層形成工程)を行うことによって、従来の亜鉛含有層(特にジンケート処理層)を形成しなくても、導電性基体1の表面に安定して存在する酸化被膜を有効に除去することができ、導電性基体1上に第1金属層21を直接形成することで、導電性基体1を構成する金属原子(例えばアルミニウム原子)と第1金属層21を構成する金属原子(例えばニッケル原子)が直接結合できる結果、第1金属層21を導電性基体1に対し密着性よくかつ簡便に形成できることを見出した。また、酸化被膜が除去されたことによって導電性基体1の表面には凹凸が形成されており、第1金属層21の結晶粒径を0.01μm以上0.2μm未満に制御することで、この凹凸に第1金属層21の結晶粒を侵入させることができ、アンカー効果を発揮させることができる。また、第1金属層21上に直接第2金属層を形成し、第2金属層の結晶粒を0.2μm以上に制御することで、曲げ加工性を改善することができる。さらに、第1金属層21と第2金属層22とを、90質量%以上同一の金属成分で構成することにより、第2金属層22を第1金属層21に対し密着性よく形成することができ、その結果、表面処理被膜2を導電性基体1に対し密着性よく形成することができることを見出した。
(第1金属層)
第1金属層21は導電性基体1上に直接形成されている金属層である。第1金属層21の平均結晶粒径は、0.01μm以上0.2μm未満である。平均結晶粒径が0.01μm未満となるような結晶粒の析出はあまり現実的ではない。一方、平均結晶粒径が0.2μmを超えると、後述する表面活性化処理により導電性基体1の表面に形成された凹凸に、第1金属層21の結晶粒が侵入しづらく、アンカー効果が十分に発揮されない可能性が高い。第1金属層21の平均結晶粒径は、好ましくは0.02μm以上0.15μm以下、さらに好ましくは0.03μm以上0.1μm以下である。なお、第1金属層21の平均結晶粒径は、例えばFIB装置を使用して断面試料を作製後、SIM装置やTEM装置を用い、例えば観察倍率10000〜50000倍にて直接観察することで測定することができる。
第1金属層21の平均厚さは、導電性基体1に対し第1金属層21を密着性よく形成することができれば特に限定されないが、0.005μm以上0.5μm以下の範囲であることが好ましい。平均厚さが0.005μm未満であると、導電性基体1上に形成されている凹凸へ第1金属層21の結晶粒を十分に挿入できない可能性がある。そのため、アンカー効果が弱く、導電性基体1と第1金属層21との密着性が不十分となる可能性がある。一方、平均厚さが0.5μmを超えると、曲げ加工性が悪くなる可能性がある。これらの観点から、第1金属層21の平均厚さは、より好ましくは0.01μm以上0.2μm以下、さらに好ましくは0.02μm以上0.15μm以下である。なお、平均厚さは、蛍光X線による測定装置(例えばSFT9400:日立ハイテク社(旧セイコーインスツル社)製)によって、コリメータ径200μmにおける任意の5点を測定して、その平均値を算出することにより求めることができる。
(第2金属層)
第2金属層22は第1金属層21上に直接形成されている金属層である。第2金属層22の平均結晶粒径は、0.2μm以上である。平均結晶粒径を0.2μm以上とすることにより、表面処理被膜2の曲げ加工性を改善することができる。また、導電性基体1の金属成分や表面処理被膜2の金属成分の拡散を防止する拡散バリア層として機能させることができ、例えば、200℃で24時間などの加熱試験後においても機能層23の機能を損ないにくくすることができる。さらに、機能層23において、核発生個所を少なくすることができ、その結果、表面処理において問題となるピンホールからの腐食を大幅に抑制することができる。例えば、5%塩水噴霧試験8時間などの腐食試験において、優れた耐食性を示す表面処理材を提供することができる。第2金属層22の平均結晶粒径は、0.2μm以上であれば上記効果が得られるが、耐食性向上の観点から、好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上である。なお、第2金属層22の平均結晶粒径は、第1金属層21の平均結晶粒径と同様の方法で測定することができる。
なお、第1金属層21の平均結晶粒径と第2金属層22の平均結晶粒径との比率は、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは6倍以上である。差がこの範囲にあると、塩水耐食性や曲げ加工性を良好に制御することが出来るためである。
第2金属層22の平均厚さは、アプリケーションに応じて適宜調整することができ、例えば、0.1μm以上2μm以下である。厚さが0.1μm未満であると、導電性基体1の金属成分の拡散を防止する拡散バリア層としての機能が弱いため、耐熱性が不十分となる可能性がある。一方、厚さが2μmを超えると、曲げ加工性が低下する可能性がある。これらの観点から、第2金属層22の平均厚さは、より好ましくは0.2μm以上1.5μm以下、さらに好ましくは0.25μm以上0.1μm以下である。なお、第2金属層22の平均厚さは、第1金属層21の平均厚さと同様の方法で測定することができる。また、第1金属層21と第2金属層22の厚さを測定する際、第1金属層21と第2金属層22との界面は、SIM装置やTEM装置を用い、例えば観察倍率10000〜50000倍にて直接判別することができる。図2における点線は、第1金属層21と第2金属層22との界面を示している。
また、第1金属層21の平均厚さと第2金属層22の平均厚さを合計した合計厚さは、0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。合計厚さが0.5μm未満であると、塩水耐食性が低下する傾向がある。
第2金属層22は、第1金属層21と90質量%以上同一の金属成分を含有する。なお、「第2金属層22は、第1金属層21と90質量%以上同一の金属成分を含有する」とは、第1の金属層の90質量%以上と、第2の金属層の90質量%以上とが、同一の金属成分であることを意味する。例えば、第1金属層がニッケルから構成されている場合、第2金属層もニッケルから構成される。また、第1金属層21が90質量%以上の銅を含有する銅合金から構成されている場合、第2金属層22も90質量%以上の銅を含有する銅合金から構成されるが、第1金属層21と第2金属層22において、銅以外の成分は一致していなくてもよい。第1金属層21及び第2金属層22を構成する金属成分は特に限定されないが、導電性基体1との密着性や、層形成の簡便性や、拡散バリア性を考慮すると、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金のうちいずれかからなることが好ましい。なお、第1、第2金属層がNiから構成されている場合は良好な耐熱性が得られ、Cuから構成されている場合は良好な成形性が得られる。また、第1、第2金属層がNi又はCoにより構成された場合、アルミ基体の腐食を軽減する効果がある。
(機能層)
機能層23は、表面処理被膜の最表面を構成する金属層である。機能層23は、例えばニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金、錫(Sn)、錫合金、銀(Ag)、銀合金、金(Au)、金合金、白金(Pt)、白金合金、ロジウム(Rh)、ロジウム合金、ルテニウム(Ru)、ルテニウム合金、イリジウム(Ir)、イリジウム合金、パラジウム(Pd)及びパラジウム合金の中から、所望の特性付与目的に応じて適宜選択される金属又は合金で形成することができる。機能層23は、2層以上の金属層からなることができる。
機能層23を構成する金属層の層数としては特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができる。例えば、第1金属層21及び第2金属層22としてニッケル層を形成した後、機能を付与する被覆層として金めっき層を形成することで、耐食性に優れためっき材を提供することができる。
表面処理被膜2は、用途に応じて、上述したような第1金属層21及び第2金属層22と、第2金属層22上に形成される1層以上の機能層23とを適正に組み合わせて様々な層構成に変更して形成することが可能である。例えば本発明の表面処理材をリードフレームに使用する場合には、導電性基体1上に第1金属層21及び第2金属層22としてニッケル層を形成した後、この第2金属層22上に、銀めっき、銀合金めっき、パラジウムめっき、パラジウム合金めっき、金めっき及び金合金めっきの中から選択される1種以上のめっきからなる金属層(機能めっき層)を形成して表面処理被膜2を構成することで、半田濡れ性やワイヤボンディング性、反射率改善などの機能を付与することができる。また、本発明の表面処理材を電気接点材で使用する場合には、導電性基体1上に第1金属層21及び第2金属層22として銅めっき層を形成した後、銀めっき又は銀合金めっきからなる金属層(機能めっき層)を形成して表面処理被膜2を構成することで、接触抵抗の安定した電気接点材料を提供することができる。このように、機能層23を、1層以上の金属層で形成することにより、各用途に応じた必要な特性を具備した優れた表面処理材100を提供することができる。なお、機能層23の形成方法としては、特に限定されないが、湿式めっき法によって行なうことが好ましい。
(表面処理材の製造方法)
次に、本発明に従う表面処理材の製造方法におけるいくつかの実施形態を以下で説明する。
例えば図1に示す断面層構造をもつ表面処理材を製造するには、アルミニウム(例えばJIS H4000:2014で規定されているA1100などの1000系のアルミニウム、及びアルミニウム合金(例えばJIS H4000:2014で規定されているA6061などの6000(Al−Mg−Si)系合金)の基材である板材、棒材又は線材に対し、電解脱脂工程、第1金属層形成工程、第2金属層形成工程及び機能層形成工程を順次行なえばよい。また、上記各工程の間には、必要に応じて水洗工程をさらに行なうことが好ましい。
(電解脱脂工程)
電解脱脂工程は、導電性基体1を電解脱脂処理する工程である。例えば、20〜200g/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)のアルカリ脱脂浴中に陰極として導電性基体1を浸漬させ、電流密度2.5〜5.0A/dm、浴温60℃、処理時間10〜100秒の条件で電解脱脂する方法が挙げられる。
(第1金属層形成工程)
電解脱脂工程を行った後に、第1金属層形成工程を行う。第1金属層形成工程は、従来の活性化処理とは異なる新規な活性化処理を行う工程であって、本発明における第1金属層21を形成する工程である。
第1金属層形成工程は、電解脱脂処理を行った後の導電性基体1の表面を、(1)硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸およびリン酸の中から選択されるいずれかの酸溶液10〜500mL/Lと、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケルおよびスルファミン酸ニッケルからなる群から選択されるニッケル化合物(ニッケルのメタル分に換算して0.1〜500g/L)とを含有する活性化処理液、(2)硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸およびリン酸の中から選択されるいずれかの酸溶液10〜500mL/Lと、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルトおよびスルファミン酸コバルトからなる群から選択されるコバルト化合物(コバルトのメタル分に換算して0.1〜500g/L)とを含有する活性化処理液、(3)硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸およびリン酸の中から選択されるいずれかの酸溶液10〜500mL/Lと、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅およびスルファミン酸銅からなる群から選択される銅化合物(銅のメタル分に換算して0.1〜500g/L)とを含有する活性化処理液の3種の活性化処理液のいずれかを使用し、処理温度10〜20℃、電流密度10〜20A/dm2及び処理時間1〜100秒にて処理することによって行うことが好ましい。なお、上記金属化合物の濃度、処理温度、電流密度を適正に制御することで所望の結晶粒径を有する結晶粒を形成させることができる。また、処理時間を適正に制御することで所望の厚さを有する第1金属層21を形成させることができる。アルミ基体の溶解を抑えつつ、第1金属層の結晶粒径を0.01μm以上0.2μm未満とするため、上記の条件とした。なお、第1金属層の組成は、活性化処理液中に含まれる金属化合物による。例えば、活性化処理液中に含まれる金属化合物がニッケル化合物である場合、第1金属層は90質量%以上のニッケル又はニッケル合金を含有する。活性化処理液中に含まれる金属化合物がコバルト化合物である場合、第1金属層は90質量%以上のコバルト又はコバルト合金を含有する。また、活性化処理液中に含まれる金属化合物が銅化合物である場合、第1金属層は90質量%以上の銅又は銅合金を含有する。
(第2金属層形成工程)
第1金属層形成工程を行った後に、第2金属層形成工程を行う。第2金属層22は、第1金属層21と90質量%以上同一の金属成分を含有することが必要である。具体的に、第2金属層22は、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金のうちいずれかからなることが好ましい。第2金属層22の形成は、第1金属層形成工程で用いた活性化処理液中の主成分金属と同一の金属成分を含有するめっき液を用い、電解めっき又は無電解めっきの湿式めっき法によって行うことができる。表1〜表3に、それぞれニッケル(Ni)めっき、コバルト(Co)めっき及び銅(Cu)めっきにより第2金属層22を形成する際のめっき浴組成及びめっき条件を例示する。
(機能層形成工程)
表面処理被膜2を構成する複数の金属層のうち、第1金属層21及び第2金属層以外の機能層23を形成する場合に行われる。機能層23の形成は、表面処理材に特性を付与する目的に応じて、電解めっき又は無電解めっきの湿式めっき法によって行うことができる。表1〜表10に、それぞれニッケル(Ni)めっき、コバルト(Co)めっき、銅(Cu)めっき、錫(Sn)めっき、銀(Ag)めっき、銀(Ag)−錫(Sn)めっき、銀(Ag)−パラジウム(Pd)めっき、金(Au)めっき、パラジウム(Pd)めっき及びロジウム(Rh)めっきにより金属層を形成する際のめっき浴組成及びめっき条件を例示する。
本発明の表面処理材は、基材(導電性基体)として、従来において使用していた鉄、鉄合金、銅、銅合金などの基材に代えて、より軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金などの基材を使用することができ、端子、コネクタ、バスバー、リードフレーム、医療部材(例えばカテーテル用ガイドワイヤー、ステント、人工関節等)、シールドケース(例えば電磁波防止用)、コイル(例えばモータ用)、アクセサリ(例えばネックレス、イヤリング、指輪等)、コンタクトスイッチ、ケーブル(例えば航空機用ワイヤーハーネス)、ヒートパイプ、メモリーディスクなどの各種部品(製品)に適用することができる。これは、従来の100nm程度の厚い亜鉛含有層(特にジンケート処理層)を基材と表面処理被膜との間に存在させることなしに、基材の表面活性化を可能にしたことにより、従来の鉄、鉄合金、銅、銅合金からなる製品群と同じ使用環境でも耐えうる構成になったためであり、特に軽量化を必要とされる自動車用ワイヤーハーネスや航空宇宙用途の筐体や電磁波シールドケースなど、様々な製品において使用できる。
なお、上述したところは、この発明のいくつかの実施形態を例示したにすぎず、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。上記本実施形態では、第2金属層22の上に機能層23を形成する場合を示したが、機能層23を形成せずに、導電性基体1上に、第1金属層21と第2金属層22とをこの順に形成するのみでもよい。その場合、最表層は、第2金属層22となる。
次に、この発明に従う表面処理材を試作し、性能評価を行なったので、以下で説明する。
(発明例1〜41)
発明例1〜41は、表11、12に示すアルミニウム系基材(サイズ0.2mm×30mm×30mm)上に、上述した条件で電解脱脂処理を行った。その後、第1金属層形成処理により、導電性基体1上に第1金属層を形成した。第1金属層形成処理は、発明例1〜15、18〜25では、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸及びリン酸の中から選択されるいずれかの酸溶液10〜500mL/Lと、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル及びスルファミン酸ニッケルからなる群から選択されるニッケル化合物(ニッケルのメタル分に換算して0.1〜500g/L)とを含有する活性化処理液を使用し、処理温度10〜20℃、電流密度10〜20 A/dm及び処理時間1〜100秒にて処理する条件で行った。また、発明例16では、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸及びリン酸の中から選択されるいずれかの酸溶液300mL/Lと、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト及びスルファミン酸コバルトからなる群から選択されるコバルト化合物(コバルトのメタル分に換算して50g/L)とを含有する活性化処理液を使用し、処理温度15℃、電流密度15A/dm及び処理時間1〜100秒にて処理する条件で行った。さらに、発明例17および28〜41では、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸及びリン酸の中から選択されるいずれかの酸溶液10〜500mL/Lと、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅及びスルファミン酸銅からなる群から選択される銅化合物(銅のメタル分に換算して0.1〜500g/L)とを含有する活性化処理液を使用し、処理温度10〜20℃、電流密度10〜20A/dm及び処理時間1〜100秒にて処理する条件で行った。その後、発明例1〜19および28〜37では、上述した第2金属層形成処理によって、第1金属層21上に第2金属層22を形成し、本発明の表面処理材100を作製した。また、発明例20〜25および38〜41では、上述した第2金属層形成処理によって第1金属層21上に第2金属層22を形成した後、上述した機能層形成処理によって第2金属層22上に機能層23を形成し、本発明の表面処理材100を作製した。基材(導電性基体1)の種類、第1金属層21と第2金属層22を構成する金属化合物の種類、平均結晶粒径及び平均厚さ、機能層23を構成する金属化合物の種類及び平均厚さ、並びに、第1金属層21と第2金属層22の合計厚さを表11、表12に示す。なお、第2金属層22、機能層23の形成条件については、表1〜表10に示すめっき条件により行なった。
(従来例1)
従来例1は、特開2002−115086号公報の実施例を参照する被膜を模擬して形成したものである。まず、表11に示すアルミニウム基材(サイズ0.2mm×30mm×30mm)上に、上述した条件で電解脱脂処理を行った。その後、塩酸を主成分とする活性酸液である「NAS−727」(18%塩酸が主成分、サンライト社製)を2倍に薄めたエッチング溶液中に、35℃の温度で2分間浸漬し、エッチング処理した前処理材を作製した。そして、上述した機能層形成処理によって、アルミニウム基材上にニッケルめっき層からなる被膜を形成し、表面処理材を作製した。表11では、このニッケルめっき層を第1金属層と記した。
(従来例2)
従来例2は、表11に示すアルミニウム基材(サイズ0.2mm×30mm×30mm)上に、上述した条件で電解脱脂処理を行い、その後、従来の亜鉛置換処理(ジンケート処理)を行なうことによって、厚さ110nmの亜鉛含有層を形成した。その後、表面活性化処理を行うことなく、上述した機能層形成処理によって、表12に示す厚さでニッケルめっき層と金めっき層からなる2層の金属層で構成される表面処理被膜を形成し、表面処理材を作製した。表12では、ニッケルめっき層を第2金属層、金めっき層を機能層と記した。
(比較例1)
比較例1では、発明例と同様に、電解脱脂工程を行い、その後、第1金属層形成処理により、アルミニウム系基材上に第1金属層を形成した。第1金属層形成処理は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸及びリン酸の中から選択されるいずれかの酸溶液200mL/Lと、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル及びスルファミン酸ニッケルからなる群から選択されるニッケル化合物(ニッケルのメタル分に換算して10g/L)とを含有する活性化処理液を使用し、処理温度15℃、電流密度0.05A/dm及び処理時間20秒にて処理する条件で行った。その後、上述した第2金属層形成処理によって第1金属層上に第2金属層を形成し、表面処理材を作製した。
(比較例2)
比較例2においては、発明例2と同じ条件にて第1金属層を形成後、第2金属層を形成する条件として、表1に示すニッケルめっき液の製造条件のうち、電流密度を25A/dmとして作成することによって形成した。
(比較例3)
また、比較例3の試料においては、発明例20〜25と同条件での第1金属層を形成し、さらに比較例2の条件にて第2金属層を形成し、さらにその最表層に機能層として金めっき層を形成したものを準備した。
(評価方法)
<基材(導電性基体に対する表面処理被膜の密着性>
基材に対する表面処理被膜の密着性(以下、単に「密着性」という。)は、上述した方法で作製した供試材(表面処理材)について剥離試験を行い評価した。剥離試験は、JIS H 8504:1999に規定される「めっきの密着性試験方法」の「15.1 テープ試験方法」に基づき行なった。表13,14に密着性の評価結果を示す。なお、表13,14に示す密着性は、めっき剥離が見られなかった場合を「◎(優)」、試験面積の95%以上が良好に密着していた場合を「○(良)」、試験面積の85%以上95%未満が良好に密着していた場合を「△(可)」、そして、密着領域が試験面積の85%未満である場合を「×(不可)」とし、本試験では、「◎(優)」、「○(良)」及び「△(可)」に該当する場合を、密着性が合格レベルにあるとして評価した。
<曲げ加工性>
曲げ加工性は、上述した方法で作製した各供試材(表面処理材)について、曲げ加工半径0.5mmにてV曲げ試験を圧延筋(圧延方向)に対して直角方向に実施した後、その頂上部をマイクロスコープ(VHX200;キーエンス社製)にて観察倍率200倍で表面観察を行い評価した。表13,14に評価結果を示す。なお、表13,14に示す曲げ加工性は、頂上部の表面に全く割れが認められなかった場合を「◎(優)」、割れではないがしわが発生している場合を「○(良)」、軽微な割れが生じている場合を「△(可)」とし、そして、比較的大きな割れが生じている場合を「×(不可)」とし、本試験では、「◎(優)」、「○(良)」及び「△(可)」に該当する場合を、曲げ加工性が合格レベルにあるとして評価した。
<塩水耐食性>
塩水耐食性は、上述した方法で作製した各供試材(表面処理材)について、JIS H8502において規定される塩水噴霧試験を行い評価した。5%NaCl水溶液を8時間ほど噴霧する噴霧試験を実施し、その腐食状態についてレイティングナンバー(RN)を判定した。表13,14に評価結果を示す。なお、表13,14に示す塩水耐食性は、RNが8以上であるものを「◎(優)」、RNが6以上8未満であるものを「○(良)」、RNが4以上6未満であるもの「△(可)」、RNが4未満のものを「×(不可)」とし、本試験では、「◎(優)」、「○(良)」及び「△(可)」に該当する場合を、塩水耐食性が合格レベルにあるとして評価した。
<接触抵抗の測定方法>
接触抵抗は、作製した供試材(表面処理材)ごとに、表面処理被膜を形成したまま(めっきまま)の状態(未熱処理状態)と、大気中で200℃、24時間の熱処理を施した後の状態(熱処理後の状態)の2種類のサンプルを作製し、4端子法を用いて、未熱処理状態の表面処理材と熱処理後の状態の表面処理材について測定を行った。測定条件は、Agプローブ半径R=2mm、荷重0.1Nの条件下で10mA通電時の抵抗値を10回測定して平均値を算出した。表13,14に評価結果を示す。なお、表13,14に示す接触抵抗は、10mΩ以下である場合を「◎(優)」、10mΩ超え50mΩ以下である場合を「○(良)」、50mΩ超え100mΩ以下「△(可)」、100mΩを超える場合を「×(不可)」とし、本試験では、「◎(優)」、「○(良)」及び「△(可)」に該当する場合を、接触抵抗が合格レベルにあるとして評価した。
<半田濡れ性>
半田濡れ性は、作製した供試材(表面処理材)ごとに、表面処理被膜を形成したまま(めっきまま)の状態(未熱処理状態)と、大気中で200℃、24時間の熱処理を施した後の状態(熱処理後の状態)の2種類のサンプルを作製し、ソルダーチェッカー(SAT−5100(商品名、(株)レスカ製))を用いて半田濡れ時間を測定し、この測定値から評価した。表13,14に評価結果を示す。なお、表13,14に示す半田濡れ性は、測定条件詳細は以下の条件とし、はんだ濡れ時間が3秒未満である場合を「◎(優)」と判定し、3秒以上5秒未満である場合を「○(良)」と判定し、5秒以上10秒未満である場合を「△(可)」と判定し、そして、10秒浸漬しても接合しなかった場合を「×(不可)」と判定し、本試験では、「◎(優)」、「○(良)」及び「△(可)」に該当する場合を、半田濡れ性が合格レベルにあるとして評価した。
半田の種類:Sn−3Ag−0.5Cu
温度:250℃
試験片サイズ:10mm×30mm
フラックス:イソプロピルアルコール−25%ロジン
浸漬速度:25mm/sec.
浸漬時間:10秒
浸漬深さ:10mm
表13に示すように、発明例1〜19および28〜37はいずれも、密着性、曲げ加工性及び塩水耐食性が良好である。図2は、第1金属層21の平均結晶粒径が0.03μm、平均厚さが0.15μmであり、第2金属層22の平均結晶粒径が0.3μm、平均厚さが1.2μmである発明例2の表面処理材の断面観察写真である。図2に示すように、導電性基体1上に形成されている凹凸に第1金属層が侵入していることが分かる。
また、表14に示すように、発明例20〜25および38〜41はいずれも、密着性、曲げ加工性及び塩水耐食性が良好であり、200℃における接触抵抗及び半田濡れ性の劣化も抑制されている。特に発明例20〜23および38〜41は、いずれの性能ともバランスよく優れているのが分かる。
これに対し、従来例1では、第1金属層の平均結晶粒径が0.3μmと大きく、さらに、第2金属層が形成されていないため、曲げ加工性及び塩水耐食性が劣っていた。また、従来例2では、第1金属層の平均結晶粒径が0.005μmと小さいため、200℃における接触抵抗及び半田濡れ性が劣っていた。また、比較例1では、第1金属層の平均結晶粒径が0.25μmと大きいため、曲げ加工性が劣っていた。比較例2では、第2金属層の平均結晶粒径が0.15μmと小さいため、塩水耐食性が劣っていた。比較例3では、第2金属層の平均結晶粒径が0.15μmと小さいため、塩水耐食性、200℃における接触抵抗及び半田濡れ性が劣っていた。
本発明によれば、導電性基体、特にイオン化傾向が大きい卑な金属で主として構成され、健全なめっき被膜の形成が難しいとされる、アルミニウム又はアルミニウム合金である導電性基体と、該導電性基体上に形成された複数の金属層からなる表面処理被膜とを有する表面処理材であって、複数の金属層のうち、導電性基体上に直接形成されている金属層である第1金属層は、平均結晶粒径が0.01μm以上0.2μm未満であり、第1金属層上に直接形成される第2金属層は、平均結晶粒径が0.2μm以上であり、第1金属層と第2金属層とは、90質量%以上同一の金属成分を含有することによって、導電性基体とめっき被膜との間に、例えば100nm程度の厚さの亜鉛含有層(特にジンケート処理層)が介在する従来の表面処理材に比べて、工程が簡略化された結果、低コストでかつ安全に製造できる。また、第1金属層が、導電性基体表面の凹凸に侵入することによって機械的投錨効果が得られる結果として優れた密着性を示し、さらに製造時間も大幅に短縮することができる表面処理材が提供できるようになる。その結果、表面処理被膜を形成した後に得られる本来の特性を、例えば高温(例えば200℃程度)での使用環境下であっても劣化させずに維持することができ、長期信頼性が高い表面処理材及びこれをを用いて作製される種々の部品(製品)、例えば端子、コネクタ、バスバー、リードフレーム、医療部材、シールドケース、コイル、コンタクトスイッチ、ケーブル、ヒートパイプ、メモリーディスク等の提供が可能になった。
1 導電性基体(又は基材)
2 表面処理被膜
21 第1金属層
22 第2金属層
23 機能層
100 表面処理材

Claims (17)

  1. 導電性基体と、該導電性基体上に形成された複数の金属層からなる表面処理被膜とを有する表面処理材であって、
    前記導電性基体が、アルミニウム又はアルミニウム合金であり、
    前記複数の金属層のうち、
    前記導電性基体上に直接形成されている金属層である第1金属層は、平均結晶粒径が0.01μm以上0.2μm未満であり、
    前記第1金属層上に直接形成される第2金属層は、平均結晶粒径が0.2μm以上であり、
    前記第1金属層と前記第2金属層とは、90質量%以上同一の金属成分を含有することを特徴とする表面処理材。
  2. 前記第1金属層の平均厚さが0.005μm以上0.5μm以下の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理材。
  3. 前記第2金属層の平均厚さが0.1μm以上2μm以下の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の表面処理材。
  4. 前記第1及び第2金属層は、前記同一の金属成分が、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅又は銅合金であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理材。
  5. 前記表面処理被膜は、前記第1及び第2金属層と、該第2金属層上に形成された1層以上の金属層とからなり、該1層以上の金属層が、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金、錫、錫合金、銀、銀合金、金、金合金、白金、白金合金、ロジウム、ロジウム合金、ルテニウム、ルテニウム合金、イリジウム、イリジウム合金、パラジウム及びパラジウム合金の群から選択されるいずれかで形成されたものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理材。
  6. 前記1層以上の金属層は、2層以上の金属層からなることを特徴とする、請求項5に記載の表面処理材。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理材を用いて形成される端子。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理材を用いて作製されたコネクタ。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理材を用いて作製されたバスバー。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理材を用いて作製されたリードフレーム。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理材を用いて作製された医療部材。
  12. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理材を用いて作製されたシールドケース。
  13. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理材を用いて作製されたコイル。
  14. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理材を用いて作製されたコンタクトスイッチ。
  15. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理材を用いて作製されたケーブル。
  16. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理材を用いて作製されたヒートパイプ。
  17. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理材を用いて作製されたメモリーディスク。
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