JP2013099880A - 液滴吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便なプロセス工程によりコストダウンを実現するとともに、長期にわたり吐出信頼性を獲得することができる液滴吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ノズル孔12を有するノズル形成基板10およびノズル孔12内部に撥水膜を形成する撥水膜形成工程と、ノズル形成基板10表面の撥水膜14に保護フィルム16を貼り付ける保護フィルム貼付工程と、ノズル孔12内部の撥水膜14をプラズマ処理により除去するプラズマ照射工程と、保護フィルム16を剥離する保護フィルム剥離工程と、を有し、保護フィルム16の粘着成分および基材にポリシロキサンを含有しない液滴吐出ヘッドの製造方法である。
【選択図】図4

Description

本発明は液滴吐出ヘッドの製造方法に係り、特に、液滴吐出ヘッドのノズルプレート表面に撥水膜を有する液滴吐出ヘッドの製造方法に関する。
液滴吐出装置、例えば、インクジェット記録装置で用いられる液滴吐出ヘッドでは、ノズルプレート表面にインクが付着していると、ノズルから吐出されるインク液滴が影響を受けて、インク液滴の吐出方向にばらつきが生じることがある。インクが付着すると、記録媒体上の所定位置にインク液滴を着弾させることが困難となり、画像品質が劣化する原因となる。
そこで、ノズルプレート表面にインクが付着することを防止し吐出性能を向上させるため、ノズルプレート表面には撥水膜が形成されている。ノズルプレート表面に撥水膜を形成することにより、ノズル部でメニスカスを形成し、ノズルから吐出させるための液体がノズルからあふれ出ることを防止することができる。ノズルプレート表面に撥水膜がないと、吐出液体が表面にあふれ出し、正確な吐出体積や吐出方向を制御することができない。また、ノズルプレート表面に紙粉などの屑や異物、液体の乾燥物などが付着固化しにくくすることができる。ノズルプレート表面に液体が付着すると、屑、異物や固化物などの付着につながる。そして、ノズルプレート表面は、定期的なメンテナンスによるワイピング動作が行われることが一般的であるが、このワイピング時に異物、固化物などがノズル内に付着すると、吐出に大きな支障をきたすことになる。
また、この撥水膜をノズルプレート表面に形成する場合、ノズルが開いた状態で撥水膜を形成すると、ノズル内部にも撥水膜が付着する。ノズル内部に撥水膜が形成されると、ノズル内部のメニスカス位置がさらにノズル奥部で形成されることで、吐出体積や吐出方向が不安定となり、最悪の場合は、不吐出を引き起こすことになる。また、ノズル内部に液体を充填する場合に、ぬれが悪いために気泡などを巻き込みやすく、気泡が巻き込まれると、そのノズルは不吐出になりやすいだけでなく、充填液体中を伝搬して他のノズルに気泡が移行し、他のノズルにも影響を及ぼす。そのため、ノズル内部に付着した撥水膜を除去する方法として、種々の方法が検討されている。
例えば、下記の特許文献1には、ノズル内部に回り込み付着した撥水膜を除去する方法として、ノズル面上を、弾性体やマスキング材で保護してノズル内部側からプラズマにより内部撥水膜を除去する方法が記載されている。下記の特許文献2には、ノズルプレート表面に撥液膜を形成した後、ノズル開口およびその周縁部に接着しないように保護部材を設け、撥液膜を除去する方法が記載されている。また、下記の特許文献3には、保護部材として感光性樹脂を用い、ノズル内部側からプラズマにより内部撥水膜を除去する方法が記載されている。
特開2007−261070号公報 特開2008−221653号公報 特許第4374811号公報
特許文献1から3に記載されている方法は、保護部材を使用しているためプラズマ処理の後に必ず除去することが前提であり、その除去性(ハンドリング性)、除去時の表面洗浄性が重要となる。そのため、保護部材の剥離時にwet処理を行ったり、剥離後の洗浄処理を行なう必要があるが、生産性工程が増えるため非効率となるだけでなく、ノズル内部にwet処理液が浸入し、ノズルおよび内部流路汚染の観点で問題となる。
また、ノズルプレートを保護するための保護フィルムにおいて、単なるノズルプレート表面への粘着材残渣だけでなく、プラズマ処理に伴うノズルプレート表面およびノズル内部へのプラズマ処理生成物の付着が重要因子となる。すなわち、保護部材(保護フィルム)の成分とプラズマとの相互作用で飛散した汚染物が、ノズル内部に付着し、その汚染物が付着した部分に吐出液体成分が優先的に付着固化することで、経時的に吐出体積、方向性が変化し、安定吐出制御が困難となっていた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡便なプロセス工程によりコストダウンを実現するとともに、長期にわたり吐出信頼性を獲得することができる液滴吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は前記目的を達成するために、ノズル孔を有するノズル形成基板および前記ノズル孔内部に撥水膜を形成する撥水膜形成工程と、前記ノズル形成基板表面の前記撥水膜表面に保護フィルムを貼り付ける保護フィルム貼付工程と、前記ノズル孔内部の前記撥水膜をプラズマ処理により除去するプラズマ照射工程と、前記保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離工程と、を有し、前記保護フィルムの粘着成分および基材にポリシロキサンを含有しない液滴吐出ヘッドの製造方法を提供する。
本発明者らは、撥水膜の撥水性が低下し、吐出性能の長期信頼性において不安定化に大きく影響を与える因子が、ノズル孔内部の撥水膜を除去するために貼り付けられる保護フィルムに含まれる離形剤成分であるポリシロキサンであることを突き止めた。離型材成分は、ノズル孔内部の撥水膜を除去した後に保護フィルムを剥離するために添加されている。
本発明によれば、ポリシロキサンを含有しない保護フィルムを使用しているため、ポリシロキサンが、撥水膜の表面に付着することを防止することができる。
ポリシロキサンは、インクの顔料成分が付着し、固化することを促進させるため、保護フィルムにポリシロキサンを含有しないフィルムを使用することで、撥水膜の撥水性を維持することができ、長期の吐出信頼性を得ることができる。
また、ポリシロキサン成分が含まれない保護フィルムを用いているので、保護フィルム剥離後にポリシロキサンを洗浄する洗浄工程が不要であり、簡便なプロセスで、工程コストダウンを実現することができる。
また、保護フィルムの剥離性は、保護フィルムを貼り付ける対象が撥水膜であるため、ポリシロキサンを含有しなくても、容易に剥離をすることができる。ポリシロキサンとしては、例えば、ポリジメチルシロキサンを挙げることができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、前記撥水膜形成工程の前に、前記ノズル形成基板に、吐出される液体が流れる流路および圧力室が形成された流路形成基板が接着され、前記流路形成基板に駆動用の圧電素子、配線が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、撥水膜を形成するノズル形成基板に流路形成基板が接着され、駆動用の圧電素子、配線が形成された状態で撥水膜の形成を行っている。撥水膜の形成は、液滴吐出ヘッドの製造の最終段階で行なうことが好ましい。最初にノズル形成基板に撥水膜を形成すると、その後の工程において異物が撥水膜に付着する、形成時に熱を付与することで、撥水膜が劣化するなどの問題がある。
また、このように、撥水膜を形成する際に、圧電素子、配線が形成されているため、熱やUVなどのエネルギー照射を行なうことなく、保護フィルムの剥離を行なうことが好ましい。剥離の際に、熱やUVを付与すること、液滴吐出ヘッドに形成された圧電素子や、接合時に使用した樹脂が劣化するため、好ましくない。しかしながら、本発明においては、ポリシロキサンを含有していないが、保護フィルムを撥水膜に貼付しているため、エネルギー照射をすることなく、また、離型剤としてのポリシロキサンを含まなくても、容易に剥離することができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、前記保護フィルムは、エア抜け性がよく、光学的に透明であることが好ましい。
本発明によれば、保護フィルムとしてエア抜け性の良いフィルムを使用している。エア抜け性の良いフィルムを使用することで、保護フィルムが浮くことなく、撥水膜に貼付することができる。したがって、ノズル形成基板表面の撥水膜が除去されることを低減することができる。
また、保護フィルムを光学的に透明なフィルムとすることで、フィルムに浮きが生じた場合に、目視で確認することができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、前記保護フィルムは、ポリシロキサンを含有する剥離フィルムを有し、前記保護フィルム貼付工程の前に、剥離フィルムを剥離する剥離工程を有することが好ましい。
本発明によれば、保護フィルムにポリシロキサンを含有しないが、使用前の保護フィルムを保護する剥離フィルムにポリシロキサンを含有させることで、剥離フィルムの剥離を容易に行なうことができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、前記保護フィルム貼付工程は、前記ノズル内部から減圧して行なうことが好ましい。
本発明によれば、保護フィルム貼付工程を、ノズル内部から減圧して行っているので、保護フィルムをノズル形成基板表面の撥水膜上で浮くことがなく、密着した状態で貼付することができる。したがって、ノズル形成基板表面の撥水膜が除去されることを低減することができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、前記保護フィルム貼付工程は、加熱雰囲気下で行なうことが好ましい。
本発明によれば、保護フィルム貼付工程を加熱雰囲気下で行っているので、保護フィルムの材質を柔らかくすることができるので、保護フィルムが浮くことなく、撥水膜上に貼付することができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、前記撥水膜はフッ素系シランカップリング材により形成されていることが好ましい。
本発明によれば、撥水膜がフッ素系シランカップリング材で形成されているので、撥水膜の撥水性を向上させるとともに、撥水膜からの保護フィルムの剥離性を維持することができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、前記撥水膜形成工程は、前記フッ素系シランカップリン材を蒸着により形成することが好ましい。
本発明によれば、撥水膜形成工程を蒸着法により行っているので、緻密な膜を成膜することができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、前記プラズマ処理工程は、真空減圧プラズマ処理により行なうことが好ましい。
本発明によれば、プラズマ処理工程を真空減圧プラズマ処理により行っているため、効率良く撥水膜の除去を行なうことができる。
本発明の他の態様に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、前記プラズマ処理工程は、ガスフローによる大気圧プラズマ処理により行なうことが好ましい。
本発明によれば、プラズマ処理工程をガスフローによる大気圧プラズマ処理により行なっているため、効率良く撥水膜の除去を行なうことができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、ポリシロキサンを含まない保護フィルムを用いてノズル形成基板表面を保護しているので、ノズル内部の撥水膜を除去するためのプラズマ照射によっても、ノズルプレート表面にポリシロキサンが付着することを防止することができる。したがって、ポリシロキサンが原因となり、インクが付着することを防止することができるので、長期にわたり吐出信頼性を獲得することができる。
インクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。 インクジェットヘッドの構造例を示す平面透視図である。 インク室ユニットの立体構成を示す断面図である。 撥水膜の形成方法を説明する工程図である。 保護フィルムの断面図である。 プラズマ処理の方法を説明する図である。 従来の製造方法の問題点を説明するための図である。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
<インクジェット記録装置の全体構成>
最初に本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法により製造される液滴吐出ヘッドが適用される液滴吐出装置として、インクジェット記録装置について説明する。
図1は、インクジェット記録装置の構成図である。このインクジェット記録装置100は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体124(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体124上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体124上に画像形成を行なう2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
図示のように、インクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部114、描画部116、乾燥部118、定着部120、および排出部122を備えて構成される。
(給紙部)
給紙部112は、記録媒体124を処理液付与部114に供給する機構であり、当該給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されている。給紙部112には、給紙トレイ150が設けられ、この給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
図1に示すように、処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム154、および処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、記録媒体124を保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置156によれば、処理液を計量しながら記録媒体124に塗布することができる。
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
(描画部)
描画部116は、描画ドラム(第2の搬送体)170、用紙抑えローラ174、およびインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。描画ドラム170に固定された記録媒体124は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yからインクが付与される。
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)とすることが好ましい。インク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体124の記録面に向かって各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図1に示すように、乾燥ドラム176、および溶媒乾燥装置178を備えている。
乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
(定着部)
定着部120は、定着ドラム184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、およびインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
定着ドラム184の回転により、記録媒体124は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
定着部120によれば、乾燥部118で形成された薄層の画像層内の熱可塑性樹脂微粒子が定着ローラ188によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体124に固定定着させることができる。また、定着ドラム184の表面温度を50℃以上に設定することで、定着ドラム184の外周面に保持された記録媒体124を裏面から加熱することによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができるとともに、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
また、インク中にUV硬化性モノマーを含有させた場合は、乾燥部で水分を充分に揮発させた後に、UV照射ランプを備えた定着部で、画像にUVを照射することで、UV硬化性モノマーを硬化重合させ、画像強度を向上させることができる。
(排出部)
図1に示すように、定着部120に続いて排出部122が設けられている。排出部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。
また、図には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行なうヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
なお、図1においてはドラム搬送方式のインクジェット記録装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、ベルト搬送方式のインクジェット記録装置などにおいても用いることができる。
〔インクジェットヘッドの構造〕
次に、インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの構造について説明する。なお、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの構造は共通しているので、以下では、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
図2(a)は、インクジェットヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図2(b)は、インクジェットヘッド250の他の構造例を示す平面透視図である。図3は、インク室ユニットの立体的構成を示す断面図である。
記録紙面上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、インクジェットヘッド250におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のインクジェットヘッド250は、図2(a)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252などからなる複数のインク室ユニット253を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
紙搬送方向と略直交する方向に記録媒体124の全幅に対応する長さにわたり一列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図2(a)の構成に代えて、図2(b)に示すように、複数のノズル251が2次元に配列された短尺のヘッドブロック(ヘッドチップ)250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体124の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
図3に示すように、各ノズル251は、インクジェットヘッド250のインク吐出面250aを構成するノズルプレート260に形成されている。ノズルプレート260は、例えば、Si、SiO2、SiN、石英ガラスのようなシリコン系材料、Al、Fe、Ni、Cuまたはこれらを含む合金のような金属系材料、アルミナ、酸化鉄のような酸化物材料、カーボンブラック、グラファイトのような炭素系材料、ポリイミドのような樹脂系材料で構成されている。
ノズルプレート260の表面(インク吐出側の面)には、インクに対して撥水性を有する撥水膜262が形成されており、インクの付着防止が図られている。
ノズルプレート260は、流路形成基板264に接合されており、流路形成基板264には、各ノズル251に対応して圧力室252が設けられている。圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル251と供給口254が設けられている。各圧力室252は供給口254を介して共通流路255と連通されている。共通流路255はインク供給源たるインク供給タンク(不図示)とインク供給口259を介して連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路255を介して各圧力室252に分配供給される。なお、共通流路255は、図2(a)に示す副走査方向のインク室ユニット253に共通して設けられているため、共通流路255にインクを供給するインク供給口259は、共通流路255に1ヶ所設けられていればよい。
圧力室252の天面を構成し共通電極と兼用される振動板256には個別電極257を備えた圧電素子258が接合されており、個別電極257に駆動電圧を印加することによって圧電素子258が変形してノズル251からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に供給される。
なお、ノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に一列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、ライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、用紙の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを用紙の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると用紙を幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の用紙の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して用紙の印字領域の全面にわたって印字を行なうシリアル方式を適用してもよい。
<撥水膜の形成方法>
次に液滴吐出ヘッドに設けられる撥水膜の形成方法について説明する。
図4は、本発明に係る液滴吐出ヘッドの撥水膜の形成方法を説明するための工程図である。撥水膜の形成は、(1)ノズルプレート表面およびノズル内部に撥水膜を形成する撥水膜形成工程と、(2)ノズルプレート表面の撥水膜表面に保護フィルムを貼り付ける保護フィルム貼付工程と、(3)プラズマ処理によりノズル内部の撥水膜を除去するプラズマ照射工程と、(4)保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離工程と、で構成される。以下、各工程について詳しく説明する。
(1)撥水膜形成工程
図4(a)、(b)に示すように、ノズル12を有するノズル形成基板(ノズルプレート)10に撥水膜14を形成する。ノズル形成基板10には、圧力室、振動板、駆動用の圧電素子、フレキシブルケーブルなどの配線などがすでに形成された状態のものを使用することが好ましい。すなわち、撥水膜14の形成は、液滴吐出ヘッドの製造の最終段階で行なうことが好ましい。ノズルプレート表面の撥水膜を形成した後に、液滴吐出ヘッドの加工を行なうと、撥水膜に加工時の異物が撥水膜上に付着する、あるいは、形成時に熱を加えることにより、撥水膜の性能に変化を及ぼす可能性があるので、最終段階で行なうことが好ましい。ノズルはエッチング加工により形成することができる。また、ノズルのサイズは直径10〜30μmとすることができる。
撥水膜14の形成方法としては、シリコン(Si)基材に、孔加工されたノズルのノズル面側にフッ素系シランカップリング剤を用いて、撥水膜の形成を行なう。
撥水膜14として、例えば、蒸着法などの物理的気相成長法で成膜することができる。蒸着法とは、成膜基板を真空チャンバ内にセットし、真空チャンバ内で成膜したい材料を、気化する条件(すなわち蒸気圧が十分となる条件)で気化し、成膜する方法である。シランカップリング剤の場合は、シランカップリング剤を加熱して気化することにより成膜する方法が一般的である。また、浸漬処理やスピンコート法による液相法においても形成することができる。
フッ素系シランカップリング剤としては、塩素型、メトキシ型、エトキシ型、イソシアナト型などを用いることが好ましい。シランカップリング剤は、YSiX4−n(n=1、2、3)で表されるケイ素化合物である。Yはアルキル基などの比較的不活性な基、または、ビニル基、アミノ基、あるいはエポキシ基などの反応性基を含むものである。Xは、ハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセトキシ基などの基質表面の水酸基あるいは吸着水との縮合により結合可能な基からなる。シランカップリング剤は、ガラス繊維強化プラスチックなどの有機質と無機質からなる複合材料を製造する際に、これらの結合を仲介するものとして幅広く用いられており、Yがアルキル基などの不活性な基の場合は、改質表面上に、付着や摩擦の防止、つや保持、撥水、潤滑などの性質を付与する。また、反応性基を含む場合は、主として接着性の向上に用いられる。
さらに、Yに直鎖状のフッ化炭素鎖を導入したフッ素系シランカップリング剤を用いて改質した表面は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)表面のように低表面自由エネルギーを持ち、撥水、潤滑、離型などの性質が向上し、さらに撥油性も発現する。
直鎖状のフルオロアルキルシランとして、例えば、Y=CFCHCH,CF(CFCHCH,CF(CFCHCHなどを挙げることができる。
また、Yの部分は、パーフルオロエーテル(PFPE)基(−CF−O−CF−)を有する材料を用いることができる。
また、シランカップリング剤としては、片側のみでなく、両側にシランカップリング基が結合した材料XSiYSiXを用いることもできる。
また、ダイキン工業(株)製オプツール、(株)ハーベス製デュラサーフ、住友3M(株)製ノベックEGC1720、ソルベイソレクシス(株)製フルオロリンクS−10、(株)ティーアンドケイ製ナノス、信越化学工業(株)製サイフェルKY−100・AGC製サイトップMタイプなど、市販のシランカップリング撥水材料を用いることもできる。
しかし、ノズル内部にもSi、もしくは、自然酸化膜SiOが露出しているため、撥水膜はノズル内部においてもシランカップリング結合し、撥水膜14が形成される。そのため、ノズルプレート表面の撥水膜のみ残して、ノズル内部の撥水膜を除去する必要がある。
(2)保護フィルム貼付工程
次に、図4(c)に示すように、撥水膜14を残したい箇所に保護フィルム16を貼り付ける。保護フィルム16の断面図を図5に示す。保護フィルム16としては、基材ベース22に粘着材24を付与し、使用時に剥離する剥離フィルム26から構成される。使用時に剥離フィルム26を剥離する剥離工程を有し、粘着材24側を貼り付ける対象物に接触させることで、保護フィルムの貼付を行なう。保護フィルム16としては、例えば、厚み80μmのポリエステルフィルムを基材ベースとし、粘着材にオレフィン系エラストマーを用いた弱粘着性フィルムを用いることができる。本実施形態においては、保護フィルム16、すなわち基材ベース22、粘着材24はポリシロキサン、例えば、官能基(CHSiOを有するポリジメチルシロキサン(PDMS、通称:シリコン)を含まないことが重要である。以下、ポリシロキサンとしてポリジメチルシロキサン(PDMS)を例に挙げて説明するが、本発明はPDMSに限定されるものではない。
一般的にPDMSは、離型材として広く使用されており、保護フィルムにおいては、再剥離性を向上させるために使用されている。しかしながら、テープ本体にはPDMSを使用せず、他成分添加により離型性を向上させた保護フィルムが市販されている。本実施形態においては、PDMSを含有せず、可塑剤としてフタル酸を含有する保護フィルムを使用した。
保護フィルム16にPDMSを含有しないフィルムを使用することで、次工程でのプラズマ照射工程で、保護フィルム16にプラズマが照射され、PDMSが飛散し、ノズルプレート表面にPDMSが付着することを防止することができる。PDMSが付着すると、PDMSとインクの顔料成分が付着し、その部分で固化するため、インクの吐出不良が発生しやすくなる。
また、ノズル形成基板10に保護フィルム16を貼付する際、ノズル孔近傍の保護フィルム16が浮くことを防止するため、エア抜け性が良いことが好ましく、ノズル形成基板の硬さ(柔らかさ)を最適化することが好ましい。仮にノズル近傍で保護フィルムが浮いてしまうと、その部分のノズルプレート表面の撥水膜14が、後のプラズマ工程で除去されるため、そのノズルにおいては、メニスカス溢れによる吐出不良や、ノズル近傍での異物付着によるノズル詰まりにつながりやすい。したがって、ノズル形成基板から保護フィルム16が浮くことなく貼付されていることを確認するためにも、保護フィルムは透明であることが好ましい。保護フィルム16に着色フィルムを用いると、仮にエアが入り込んで浮きが生じていても、保護フィルム16上面から確認することが困難である。
なお、保護フィルム16の浮きを防止するため、ノズル内部を減圧して保護フィルム16を貼付することも可能である。これにより、さらに安定してノズル近傍のエッジ部の保護フィルム16の浮きを防止することができる。さらに、フィルム貼り付け時に温度を上げてフィルムを柔らかくすることで、保護フィルム16の浮きを防止することができる。
なお、保護フィルム貼り付け時の温度を上げて保護フィルムの材質を軟化させ、浮きが発生しにくい条件とすることで、保護フィルムが浮く箇所を大幅に低減することができる。その結果、ノズルプレート表面で除去される撥水膜を減らすことができるので、吐出不良を低減することができる。貼り付け時の雰囲気温度は、液滴吐出ヘッドの圧電素子、接着剤の樹脂に影響がない温度であれば、特に限定されないが、30℃以上100℃以下であることが好ましい。
保護フィルム16としては、上述した基材ベースにポリエステルフィルムを用い、粘着材にオレフィン系エラストマーを用いたフィルムに限定されず、他の材料を使用することもできる。例えば、基材ベースとして、ポリイミド、ポリプロピレンの材料を使用することができ、粘着材として、アクリル系の材料を使用することができる。
また、保護フィルム本体には、PDMSを含有させないため、保護フィルムの使用時に剥離する剥離フィルム26を容易に剥がすことができるように、剥離フィルム26にPDMSを含有させることが好ましい。これにより、保護フィルムからの剥離フィルムの剥離性を維持することができる。剥離フィルム側にPDMSを含有しないと、保護フィルムから剥離フィルムを剥離することが困難になる。
(3)プラズマ照射工程
次に、図4(d)に示すように、ノズル12内部をプラズマ処理することにより、プラズマ暴露し、ノズル12内部の撥水膜14の除去を行なう。
プラズマ処理の方法としては、例えば、真空チャンバ中にノズル形成基板10を配置した後、真空引き後、酸素置換を行い、酸素プラズマを発生させる。酸素プラズマの発生条件としては、例えば、出力30W、流量30sccmとし、15分間プラズマを発生させることで行なうことができる。プラズマ照射は、図6に示すように、液体流路の導入側であるインク供給口259と排出側(図示せず)を通って、圧力室を経由してノズル内部に到達することで、撥水膜の除去をすることができる。
なお、圧電素子258に直接プラズマを暴露することは、圧電素子258の劣化を引き起こすため、圧電素子258上にシリコンプレートで蓋をして圧電素子258に直接プラズマが暴露されないようにする。
また、プラズマ処理工程は、上記のような真空減圧プラズマに限定されず、ガスフローによる大気圧プラズマを用いることもできる。この場合、ガスフローに乾燥空気または窒素(N)を用い、プラズマの発生条件として、電圧15kV、周波数100Hz、出力150Wとして、ガス流量は20〜40L/minとすることで、製造された液滴吐出ヘッドが、真空減圧プラズマにより形成した液滴吐出ヘッドと同様の吐出特性を得ることができており、ノズル内部の撥水膜が除去されていることが確認できる。
(4)保護フィルム剥離工程
最後に図4(e)に示すように、保護フィルム16をノズルプレート表面から剥離し、取り去ることで、液滴吐出ヘッドを製造する。
一般的な保護フィルムにおいては、再剥離性を向上させるため、離型剤成分であるPDMSを含有させている。本発明においては、PDMSを含有していない保護フィルムを用いているが、保護フィルムをフッ素系の撥水膜に貼り付けているため、PDMSを含有していなくても、良好な再剥離性を得ることができる。
また、上述したように、ノズル形成基板は、すでに、駆動用の圧電体などが形成されているため、保護フィルム16を剥離する際に、熱を付与することで圧電体に応力がかかったり、UVを照射することでノズル形成基板を作製する際に使用した接着剤が劣化し、樹脂にダメージを与える可能性がある。したがって、保護フィルムを剥離させるためには、熱を加えたり、UVを照射しない条件で行なう必要がある。本発明においては、PDMSを使用しなくても、保護フィルムを貼付する撥水膜をフッ素系とすることで、再剥離性を向上させることができる。
[実施例]
≪吐出試験≫
上記の方法により製造された液滴吐出ヘッドを用いて、顔料インクを用いた連続吐出耐久評価を行った。また、比較例として、PDMSを含有する保護フィルムを用いた場合についても評価を行った。
インク吐出駆動条件は、顔料インクを用い、駆動用圧電体の駆動電圧30V、周波数100kHzとした。なお、印字において、目標印字位置より20μm以上吐出方向が変化した場合を吐出不良と判定した。不吐出ノズルについても吐出不良と判断した。また、0.5億dotごとにワイピング操作によるノズル面の洗浄メンテナンスも行なった。
PDMSを含有した一般的な保護フィルムを用いた場合は、10億dotの連続印字試験において、約15%の吐出不良が生じていた。一方で、PDMSを含有しないフィルムを用いた場合は、10億dotの連続印字試験で、吐出不良率は1%以下であった。
≪吐出不良原因の調査≫
次に、PDMS含有保護フィルムでの吐出不良原因の調査を行なった。TOF−SIMSにより不良ノズル近傍の組成解析を行なった。分析には、ION−TOF製SIMSIVを用いて成分解析を行なった。その結果、ノズルプレート表面のノズルに連接した付近でCF量が低下し、SiCHを含むPDMS成分が特異的に検出された。一方で、吐出不良率の低い、PDMS成分を含まない保護フィルムを用いて製造した液滴吐出ヘッドにおいては、PDMSは検出されなかった。これにより、PDMS成分がノズルプレート表面に付着していると、インクの顔料成分が強力に付着しやすくなり、インク固化が発生しやすくなることが確認できた。
PDMSを含有する保護フィルムを使用することで、ノズル近傍にのみPDMS成分が付着する検証を行なった。保護フィルムをノズル面に貼り付けてから顕微鏡によりノズル近傍の観察を行なった。その結果、図7に示すように、いくつかのノズルのノズル近傍部(ノズルと連接した付近)でフィルムが浮いている部分が確認された。また、ノズル近傍部だけでなく、ノズル周辺部でもエアが抜けきらずフィルムが浮いている部分(ノズルとの間に保護フィルムで隔たりがある付近)が確認された。その後、プラズマ処理によりノズル内部の撥水膜の除去、保護フィルムの剥離をした後、吐出試験を行なった。その結果、エアによるフィルム浮きが発生している近傍ノズルと吐出不良ノズルがほぼ一致していることが確認できた。図7(b)は、図7(a)のノズル近傍部の拡大図である。図7(b)に示すように、保護フィルム16がノズル近傍部で浮いているため、保護フィルム16が浮いている部分のノズル近傍部の撥水膜が除去されていた。また、保護フィルム16にプラズマが照射されることにより、保護フィルム16のPDMS成分がノズルプレート表面に付着していると考えられる。したがって、ノズルプレート表面に付着したPDMSにインクの顔料成分が付着、析出固化するため、吐出不良が発生すると考えられる。また、近傍ノズル部分以外のノズルのエア浮き部は特に吐出不良と関連していないことも確認できた。
撥水膜異常部は、撥水性が低下しているため、表面張力の低い液体をノズル面に塗布すると異常ノズルのみノズル近傍に濡れ残ることがわかっている。このため、プラズマ処理により内面の撥水膜を除去する工程を行なった後、ノズル面を低表面張力液体で拭いて全ノズル検査を行なうことで異常ノズルの検出を行なうことができる。低表面張力液体として、30mN/mの水溶液を用いた。ノズル面をワイピングしてすぐに、ノズル検査顕微鏡による自動画像撮像を行い、画像処理により異常ノズルを検出する。なお、上記のエアにより浮きが生じた場合においても、この全ノズル検査装置を用いることで効率的に評価を行なうことができる。
以上より、ノズル内部をプラズマ照射し撥水膜を除去する際に、ノズルに連接したエア浮き部では、ノズルプレート表面まで、プラズマが回り込み、結果的にノズル近傍のノズルプレート表面の撥水性を低下させていることが確認できた。具体的には、撥水性機能(撥水膜)のCF量が低下し、さらに、保護フィルムの成分のPDMSがプラズマ照射により分散付着していることが確認できた。
なお、保護フィルム貼り付け時の温度を上げてテープ材質を軟化させ、浮きが発生しにくい条件とすることで、保護フィルムが浮く箇所を大幅に低減することができ、結果的に吐出不良を低減することができることが確認されており、上記メカニズムを裏付けている。
しかしながら、高温で貼付する場合においても、根本的にPDMS付着を回避することは困難であるため、根本的に保護フィルムからPDMS成分を除外することが重要となる。
PDMS非含有のフィルムを用いた場合、ノズル近傍からはPDMSも当然検出されず、インク固化現象も発生しなかった。
10…ノズル形成基板、12…ノズル、14…撥水膜、16…保護フィルム、22…基材ベース、24…粘着材、26…剥離フィルム、100…インクジェット記録装置、112…給紙部、114…処理液付与部、116…描画部、118…乾燥部、120…定着部、122…排出部、124…記録媒体、154…処理液ドラム、156…処理液塗布装置、170…描画ドラム、172M、172K、172C、172Y…インクジェットヘッド、176…乾燥ドラム、180…温風噴出しノズル、182…IRヒータ、184…定着ドラム、186…ハロゲンヒータ、188…定着ローラ、192…排出トレイ、196…搬送ベルト

Claims (10)

  1. ノズル孔を有するノズル形成基板および前記ノズル孔内部に撥水膜を形成する撥水膜形成工程と、
    前記ノズル形成基板表面の前記撥水膜表面に保護フィルムを貼り付ける保護フィルム貼付工程と、
    前記ノズル孔内部の前記撥水膜をプラズマ処理により除去するプラズマ照射工程と、
    前記保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離工程と、を有し、
    前記保護フィルムの粘着成分および基材にポリシロキサンを含有しない液滴吐出ヘッドの製造方法。
  2. 前記撥水膜形成工程の前に、前記ノズル形成基板に、吐出される液体が流れる流路および圧力室が形成された流路形成基板が接着され、前記流路形成基板に駆動用の圧電素子、配線が形成されている請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  3. 前記保護フィルムは、エア抜け性がよく、光学的に透明である請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記保護フィルムは、ポリシロキサンを含有する剥離フィルムを有し、
    前記保護フィルム貼付工程の前に、剥離フィルムを剥離する剥離工程を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記保護フィルム貼付工程は、前記ノズル内部から減圧して行う請求項1から4のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記保護フィルム貼付工程は、加熱雰囲気下で行う請求項1から5のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記撥水膜はフッ素系シランカップリング材により形成されている請求項1から6のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  8. 前記撥水膜形成工程は、前記フッ素系シランカップリン材を蒸着により形成する請求項1から7のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  9. 前記プラズマ処理工程は、真空減圧プラズマ処理により行う請求項1から8のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  10. 前記プラズマ処理工程は、ガスフローによる大気圧プラズマ処理により行う請求項1から8のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
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