JP2006027163A - インクジェット記録媒体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、スジムラや塗布故障の発生が低減され、かつ塗布均一性に優れたインクジェット記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】 非吸収性支持体上に、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性バインダーとを含有する水系塗布液Aを塗布し、該水系塗布液Aにより形成した塗膜を乾燥させて多孔質インク吸収層を形成させた後、該非吸収性支持体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって、塗布液を供給する塗布液ノズルと該塗布液ノズルの開口端に近接してガスを噴出するガスノズルとを有するスロットノズルスプレー装置を用いて水系塗布液Bを該多孔質インク吸収層上に塗布する一連の工程を有するインクジェット記録媒体の製造方法において、該水系塗布液Bの動的表面張力が20〜55mN/mであることを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規のインクジェット記録媒体の製造方法に関する。
従来から、基材上に塗布液を塗布する方法は種々知られている。例えば、搬送される長尺の帯状基材(以下、単に基材ともいう)上に塗布液を高精度に塗布する方法としては、Edward Cohen,Edgar Gutoff著「MODERN COATING AND DRYING TECHNOLOGY」に述べられている如く、各種の方法が提案されており、例えば、ディップ塗布法、ブレード塗布法、エアーナイフ塗布法、ワイヤーバー塗布法、グラビア塗布法、リバース塗布法、リバースロール塗布法、エクストルージョン塗布法、スライドビード塗布法、カーテン塗布法等が知られている。そして、これらの塗布方法において、基材の幅方向に高精度に均一な乾燥膜厚を得るために、塗布時の(塗布後、乾燥前の)塗布膜厚精度、均一性等に注意を払い、塗布を行っている。
これらの塗布法の中で特に、流量規制型のダイスを有する塗布装置は、高速、薄膜、多層同時塗布が可能であり、その特徴により写真感光材料、インクジェット記録材料、磁気記録材料等の塗布装置として広く用いられている。
その好ましい一例としては、Russell等により米国特許第2,761,791号に提案されたスライドビード塗布装置、あるいはエクストルージョン塗布装置等が広く用いられている。またカーテン塗布装置もダイスを有する流量規制型の塗布装置であるが、同様に広く用いられている。
例えば、このスライドビード塗布装置の場合、塗布装置先端と搬送される基材との間に、ビードと称する塗布液溜まりを形成し、このビードを介して塗布が行われる。また、カーテン塗布装置の場合、塗布装置からカーテン状の塗布液膜を自由落下させ、落下先に基材を位置させることにより塗布が行われる。これらは、高精度に均一な乾燥膜厚を得るのに大変有用である。
しかし、これらダイスを有する塗布装置による塗布は、その原理上、ビードやカーテン膜等、塗布装置と基材との間を連続的に塗布液でつなぐことになる。基材上に均一な厚さの塗布膜を形成するためには、塗布装置からの塗布液流量は、常に一定で、途切れがあってはならない。すなわち、塗布膜を連続的に形成するため、また、塗布膜厚を精度高く一定にするために、所定量以上の塗布液を要することになる。よって、これらの方式において、塗布装置から吐出される塗布液量を極端に少なくすることは、均一な膜厚を得る目的からすると、困難を伴う。
そのため、塗布層あたりの溶質量が少ない、つまり、塗布液を塗布し乾燥する前の湿潤膜厚がごく薄い膜(例えば、1〜50μm程度)を形成する場合には、塗布液の溶媒量を増やし、塗布液全体を増量することが必要となる。特に塗布液の粘度が低い場合には、基材上で流れてしまうため、安定な塗布膜を形成することが難しく、塗布液量をますます増やさねばならない。
しかし、溶媒量を増やすと、塗布後、溶媒を飛ばして乾燥させる負荷(乾燥負荷)が大きくなり、生産効率上好ましくない。また、溶媒量が多かったり、乾燥に時間がかかると、当該塗布層の下に別の構成層が存在する場合には、該構成層に当該塗布層の塗布液が過度に浸透、拡散し、悪影響を及ぼす場合がある。
よって、薄膜を、塗布膜厚の精度高く、乾燥負荷が少なく、生産性高く設ける塗布方法が望まれている。
このような高精度に均一な塗布膜厚の薄膜を、構成層上に設けることが必要となる塗布製造物としては色々あるが、例えば、下記に述べるインクジェット用の空隙型記録媒体等が挙げられる。
インクジェット記録方法に用いられる記録媒体は、インク吸収層が、例えば、普通紙のように紙そのものであるものや、コート紙のように吸収体を兼ねる基材の上にインク吸収層を塗設したもの、あるいは樹脂被覆紙やポリエステルフィルムのような非吸収性の基材の上にインク吸収層を塗設したもの等がある。
中でも、非吸収性基材の上にインク吸収層を塗設したタイプの記録媒体は、基材の表面平滑性が高く、うねりが少ない等の理由から、光沢感、つや感、深み等銀塩写真のような高品位の質感を求められる出力に好ましく用いられる。更に、高い光沢感やつや感がある光沢型記録媒体としては、非吸収性基材の上に、インク吸収層としてポリビニルピロリドンやポリビニルアルコール等の水溶性バインダーを塗設した膨潤型記録媒体や、インク吸収層として顔料あるいは顔料とバインダーで微細な空隙構造を形成し、この空隙にインクを吸収させる、いわゆる空隙型記録媒体が用いられる。
空隙型記録媒体において、この空隙構造を有する多孔質インク吸収層は、主に親水性バインダーと微粒子とで形成されており、微粒子としては無機または有機の微粒子が知られているが、一般的には、より微粒子で光沢性が高い無機微粒子が用いられる。そして、該微粒子に対して比較的少量の親水性バインダーを使用することにより、微粒子間に空隙が形成されて多孔質インク吸収層が得られる。
一般に、上記の多孔質インク吸収層に対しては、さまざまな特性が要求され、これら種々の特性を改良するために、以下に記載の各添加剤の使用が提案されている。
1:高い発色性や光沢を達成するために、約0.1μm程度以下の多孔質を形成する安定な微粒子
2:微粒子の保持力が高く、かつインク吸収速度を低下させないための低膨潤性親水性バインダー
3:インク吸収速度や被膜の耐水性を改良するための親水性バインダーの架橋剤
4:最適なドット径を達成するため、表面に分布した界面活性剤や親水性ポリマー
5:色素の滲みや耐水性を改良するためのカチオン性の定着剤、多価金属化合物
6:色素画像の光や酸化性ガスなどによる退色性を改良するための退色防止剤
7:白地を改良するための蛍光増白剤や色調調整剤(赤み剤や青み剤など)
8:表面の滑り性を改良するためのマット剤や滑り剤
9:多孔質インク吸収層に柔軟性を持たせるための各種のオイル成分やラテックス粒子あるいは水溶性可塑剤
10:色素の滲みや耐水性あるいは耐候性を改良するための種々の無機塩類(多価金属塩)
11:多孔質インク吸収層の膜面pHを調整するための酸やアルカリ類
等が挙げられる。
しかしながら、上記の種々の目的で使用する各添加剤を多孔質インク吸収層を形成する塗布液に添加した場合、多くの添加剤において、製造工程の安定性の観点から、種々の制約を受けるケースが多い。
上記課題の解決方法の一つとして、多孔質インク吸収層の塗布液には前記添加剤を含有させず、基材上に構成層としてまず塗布し、減率乾燥前に前記添加剤を含有する塗布液を前記構成層上部に塗布する、いわゆるオーバーコート層を設ける方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。オーバーコート層の塗布液に含有される前記添加剤は、予め設けられた構成層(例えば、多孔質インク吸収層)に適度に浸透し、上記問題を起こすことなく好ましい機能を付与することが期待される。つまり、機能賦与化合物として働くことが期待される。もともと機能賦与化合物を多孔質インク吸収層に含浸させる目的であるから、オーバーコート層自体はごく薄いものでよい。また、ごく薄い方が好ましい。更に、親水性バインダーと微粒子を含有する多孔質層を形成する水溶性塗布液を塗布し、塗膜の含水量が乾燥後の多孔質層の空隙容量以下になった後、オンラインで添加剤含有溶液をオーバーコートするインクジェット記録媒体が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかし、構成層とオーバーコート層の2層を設ける場合、まず前記構成層を塗布乾燥してから、一旦ロールに巻き取り、再度ロールから繰り出してオーバーコート層を塗布乾燥する2工程(ツーライン)で行うと、製造コストが大幅に増大する問題がある。また、構成層を形成した後、しばらく経時すると、温度履歴や時間のばらつきにより、品質安定性に問題が生じるだけでなく、オーバーコート層を設ける際、塗布ムラが生じやすい等の問題が生じやすい。
この結果、オーバーコート層の塗布により、更にインク吸収層表面に多量の溶媒(水や有機溶媒)が付与される結果となり、乾燥時間や乾燥ゾーンの延長によるコストアップ、乾燥能力が規定されている場合には塗布速度の低下が必然となる。更に、厚膜のオーバーコート層を塗設することにより、乾燥までの間にインク吸収層への拡散、浸透の度合いが大きく、また、完全に乾燥するまでに時間がかかるため、多孔質インク層の塗布液に直接添加剤を含有させたような影響があり、オーバーコート層の利点を十分に発揮できない。
上記課題に対し、被塗布体を搬送し、該被塗布体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって、塗布液を供給する塗布液ノズルと、塗布液ノズルの開口端に近接してガスを噴出するガスノズルとを有するスロットノズルスプレー装置を用い、ガスを塗布液に衝突させて液滴を形成して噴霧を行うことにより、被塗布体上に塗布液を塗布する塗布方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
本発明者は、特許文献4に記載の方法について更に詳細に検討を行った結果、高精度に均一な膜厚の薄膜を高速に、乾燥負荷低く実現することができ、記録媒体の諸特性、塗膜均一性、塗布液安定性に優れた塗布方法であるが、特定の塗布条件によっては、飛翔する塗布液液滴の粒状ムラ、縦スジ状ムラ、あるいは粗大液滴の飛散による点状ムラが発生しやすいことが判明した。この課題を改善するためには、飛翔させるオーバーコート塗布液の液物性、用いる塗布装置の形状や特定部位の表面処理方法を適切なものにする必要がある。
特開平11−115308号公報 (特許請求の範囲) 特開平11−192777号公報 (特許請求の範囲) 特開2002−331745号公報 (特許請求の範囲) 特開2004−906号公報 (特許請求の範囲)
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、スジムラや塗布故障の発生が低減され、かつ塗布均一性に優れたインクジェット記録媒体の製造方法を提供する。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(請求項1)
非吸収性支持体上に、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性バインダーとを含有する水系塗布液Aを塗布し、該水系塗布液Aにより形成した塗膜を乾燥させて多孔質インク吸収層を形成させた後、該非吸収性支持体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって、塗布液を供給する塗布液ノズルと該塗布液ノズルの開口端に近接してガスを噴出するガスノズルとを有するスロットノズルスプレー装置を用いて水系塗布液Bを該多孔質インク吸収層上に塗布する一連の工程を有するインクジェット記録媒体の製造方法において、該水系塗布液Bの動的表面張力が20〜55mN/mであることを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法。
(請求項2)
前記水系塗布液Bが、アセチレングリコール化合物またはアセチレンアルコール化合物を含有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
(請求項3)
前記スロットノズルスプレー装置の開口面、前記ガスノズルのガス流路壁及び前記塗布液ノズルの液流路壁から選ばれる少なくとも1つが、表面撥水化処理されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
(請求項4)
前記水系塗布液Bが、前記多孔質インク吸収層に対する機能付与化合物を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
(請求項5)
前記機能付与化合物が、親水性バインダーの架橋剤、画像安定剤、水溶性多価金属化合物、媒染剤及びpH調整剤から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
本発明によれば、スジムラや塗布故障の発生が低減され、かつ塗布均一性に優れたインクジェット記録媒体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明者は、被塗布体を搬送し、該被塗布体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって、塗布液を供給する塗布液ノズルと、塗布液ノズルの開口端に近接してガスを噴出するガスノズルとを有するスロットノズルスプレー装置を用いた際の塗布安定性について鋭意検討を行った結果、非吸収性支持体上に、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性バインダーとを含有する水系塗布液Aを塗布し、該水系塗布液Aにより形成した塗膜を乾燥させて多孔質インク吸収層を形成させた後、該非吸収性支持体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって、塗布液を供給する塗布液ノズルと該塗布液ノズルの開口端に近接してガスを噴出するガスノズルとを有するスロットノズルスプレー装置を用いて水系塗布液Bを該多孔質インク吸収層上に塗布する一連の工程を有するインクジェット記録媒体の製造方法において、該水系塗布液Bの動的表面張力を20〜55mN/mの範囲に規定することにより、スジムラや塗布故障の発生が低減され、かつ塗布均一性(巾手均一性、サイド塗布性)に優れたインクジェット記録媒体の製造方法を実現できることを見出したものである。
更に上期できて規定する本発明の条件に加えて、スロットノズルスプレー装置を構成する開口面、前記ガスノズルのガス流路壁及び前記塗布液ノズルの液流路壁から選ばれる少なくとも1つが、表面撥水化処理することにより、上記塗布性が更に向上し、より安定で均一な塗膜を得られることが分かった。これは、スロットノズルスプレー装置の特定の部位を撥水化処理をすることにより、ノズルから噴霧される液滴の液離れがよくなり、均一かつ微細な液滴を噴霧することが可能となると推定している。
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法(以下、単に製造方法ともいう)では、上述のごとく、非吸収性支持体上に、水系塗布液Aを塗布し、該水系塗布液Aにより形成した塗膜を乾燥させて多孔質インク吸収層を形成させた後、該非吸収性支持体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって、塗布液を供給する塗布液ノズルと該塗布液ノズルの開口端に近接してガスを噴出するガスノズルとを有するスロットノズルスプレー装置を用いて水系塗布液Bを該多孔質インク吸収層上に塗布する一連の工程を有するインクジェット記録媒体の製造方法において、該水系塗布液Bの動的表面張力(以下、DSTともいう)を20〜55mN/mの範囲に規定することを特徴とし、20〜50mN/mにすることがより好ましく、20〜40mN/mにすることが更に好ましい。
一般に、溶液の表面張力は、新たな面が形成されてから平衡に達するまでには一定の時間を要する。本発明においては、塗布液Bの液滴が、スロットノズルスプレー装置の塗布液ノズル部から噴射されて、新たな表面を形成する際、例えば、比表面積が拡張される際には、表面層において、塗布液B中に含まれる界面活性剤の配向速度、界面活性剤の種類の違いによる表面配向強度や溶剤の蒸発等の影響で時間経過により表面張力は変化しており、この様な非平衡状態の表面張力を動的表面張力として測定可能であり、本発明でもこれを動的表面張力として定義する。
動的表面張力の測定方法としては、公知の方法により測定することができ、例えば、メニスカス法、滴下法、γ/A曲線法、振動ジェット法、最大泡圧法、カーテンコーター法(ジャーナル・オブ・フルーイッド・メカニズム J.Fluid Mech.(1981),vol.112.p443〜458)等が挙げられるが、本発明では最大泡圧法を用いて測定した動的表面張力値で表す。
具体的な最大泡圧法による界面張力測定装置としては、例えば、クルス社製のBP2バブルプレッシャー動的表面張力計、協和界面科学社製のDynamic Surface Tension Meter BP−D4タイプ等を挙げることができる。
スロットノズルスプレー装置を用いて塗布する水系塗布液Bの動的表面張力を本発明の規定値まで低下させることで、液ノズルの流路に塗布液が均一に濡れ広がること、液滴サイズがより微粒化されることにより、本発明の効果が得られると推定する。
本発明に係る水系塗布液Bの動的表面張力値を、本発明で規定する値に調整する手段として、特に制限はないが、後述するアセチレングリコール化合物、アセチレンアルコール化合物を用いることが極めて有効である。更には、比較的疎水性を有する界面活性剤を用いること、あるいは自身が低い表面張力能を有する水溶性有機溶剤等を用いることもできる。
本発明の製造方法においては、本発明に係る水系塗布液Bが、アセチレングリコール化合物またはアセチレンアルコール化合物を含有することが好ましい。
本発明で用いることのできるアセチレングリコール化合物及びアセチレンアルコール化合物としては、特に制限はないが、以下に説明するアセチレングリコール化合物及びアセチレンアルコール化合物が好ましい。
本発明で用いられるアセチレングリコール化合物及びアセチレンアルコール化合物は、下記一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物である。
Figure 2006027163
一般式(1)において、R4、R6はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基、R5、R7はそれぞれ炭素数1〜20のアルキル基又はアリル基を表す。R4、R6としてはそれぞれがメチル基であることが好ましく、R5、R7はそれぞれがイソブチル基であることが好ましい。m、nはそれぞれ0〜40までの整数を表し、好ましくは、m、nの和は2〜30であり、より好ましくは2〜10である。
Figure 2006027163
一般式(2)において、R8、R10はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基、R9、R11はそれぞれ炭素数1〜20のアルキル基又はアリル基を表す。R8、R10はそれぞれがメチル基であることが好ましく、R9、R11はそれぞれエチル基又はイソブチル基であることが好ましい。
Figure 2006027163
一般式(3)において、R12は炭素数1〜3のアルキル基、R13は炭素数1〜20のアルキル基又はアリル基を表す。R12はメチル基であることが好ましく、R13はイソブチル基であることが好ましい。
本発明に係るアセチレングリコール化合物、アセチレンアルコール化合物は、分子中に三重結合を有し、その隣接炭素原子に水酸基およびアルキル基を有し、三重結合に対して左右対称構造であるものが好ましい。
本発明に係るアセチレングリコール化合物、アセチレンアルコール化合物は、ノニオン性ではあるが、三重結合とそれに隣接する水酸基の組み合わせにより、電子密度を非常に高め、分子中央部が強く極性を有する特徴がある。通常の他のノニオン性化合物とは異なる特性を有し、三重結合を二重結合、一重結合にしたものでは、本発明の効果を得ることはできない。
上記一般式(1)〜(3)で表される化合物の中で、本発明でより好ましく用いることのできる化合物は、一般式(1)で表されるアセチレングリコール化合物である。
本発明で用いられるアセチレングリコール化合物、アセチレンアルコール化合物は市販品として入手することができ、例えば、日信化学工業(株)製のサーフィノール、オルフィン、川研ファインケミカル社製のアセチレノールが挙げられる。
本発明に係るアセチレングリコール化合物又はアセチレンアルコール化合物の含有量としては、記録媒体1m2当たり1〜1000mgが好ましく、5〜300mgがより好ましい。
なお、インクジェット記録媒体において、アセチレングリコール化合物やアセチレンアルコール化合物をインクジェット記録媒体に用いることは既に知られている。例えば、特許3126128号、特開平11−286163号には吸収性紙支持体上にアセチレングリコールと微粒子とバインダーを有すインク受容層が設けられたインクジェット用紙が記載されている。また、特開2002−19279には、吸収性紙支持体上にアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物を有するインク吸収層の上に、キャスト処理によって塗設される光沢発現層を有するインクジェット記録媒体が開示されている。また、特開平2−551187号には基材上にインク保持層と、界面活性剤とアセチレングリコール及び/またはアルコールを併有するインク輸送層からなる被記録材が開示されている。さらに、特開平11−138978号には基材上にアルミナ水和物とポリビニルアルコールとアセチレングリコールを有するインク吸収層を設けたインクジェット記録媒体が開示されている。しかしながら、上述の各特許には、本発明の課題を踏まえ、本発明で規定するスプレーノズル装置を用いた水系塗布液Bに添加し、その動的表面張力の調整により、本発明の効果を十分発揮させるような記載は一切見られない。
また、本発明の製造方法においては、好ましく用いられる上記アセチレングリコール化合物、アセチレンアルコール化合物等の水系塗布液Bにおける溶解性、安定性を補助することを目的として、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、その他のノニオン性界面活性剤等の溶解性助剤を併用することもできる。
本発明の製造方法においては、水系塗布液Bが、多孔質インク吸収層に対する機能付与化合物を含有していることが好ましく、更には機能付与化合物が、親水性バインダーの架橋剤、画像安定剤、水溶性多価金属化合物、媒染剤及びpH調整剤から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
多孔質インク吸収層の膜面pHを低下させる目的で使用できる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸などの無機酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、フタル酸、こはく酸、蓚酸、ポリアクリル酸などの有機酸を挙げることができる。
多孔質インク吸収層の膜面pHを増大させる目的で使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ほう砂、燐酸ナトリウム、水酸化カルシウム、有機アミンなどが挙げられる。
上記pH調整剤は、多孔質形成する塗布液中のpHが記録媒体の好ましい膜面pHと異なる場合に、特に好ましい。
記録媒体の多孔質インク吸収層の膜面pHは、インクの種類によっても異なるが、一般には、より酸性側で染料の耐水性や滲みが改善されるが、耐光性はより高pH側で改良される傾向が大きいため、使用するインクとの組み合わせで最適なpHは選定される。好ましい多孔質表面の膜面pHは、3〜7であり、特に3.5〜6.5が好ましい。ここでいう膜面pHとは、J.TAPPI 49に規定される紙の表面pH測定方法にしたがって測定した値であり、具体的には、記録媒体表面に50μlの純水(pH=6.2〜7.3)を滴下し、市販の平面電極を用いて測定した値を言う。
前記機能賦与化合物としては、親水性バインダーの架橋剤であってもよい。
このような架橋剤としては、公知のものを使用でき、好ましいものとしては、前述のホウ酸類、ジルコニウム塩、アルミニウム塩もしくはエポキシ系架橋剤である。
前記機能賦与化合物としては、画像安定剤(以下、退色防止剤ともいう)であってもよい。退色防止剤は、光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOxなどの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。
前記機能賦与化合物としては、カチオン性ポリマーを使用することができる。
一般に、カチオン性ポリマーは、染料の定着剤として作用し、耐水性や滲みを防止するため、予め多孔質受容層を形成する塗布液に添加しておくことが好ましいが、塗布液中に添加した際に問題が発生する場合には、オーバーコート法で供給することもできる。例えば、カチオン性ポリマーの添加により、塗布液が経時で増粘したり、あるいは、多孔質層内でカチオン性ポリマーの分布を持たせて発色性を改善する場合などでは、オーバーコート法で供給することが好ましい。カチオン性ポリマーをオーバーコート法で供給する場合、記録媒体1m2当たり概ね0.1〜5gの範囲である。
前記機能性付与化合物としては、水溶性多価金属化合物であってもよい。
水溶性多価金属化合物は、一般に、無機微粒子含有の塗布液中に存在すると凝集を起こしやすく、これにより微少な塗布故障や光沢性の低下を引き起こしやすいため、特にオーバーコート法が供給するのが好ましい。
そのような多価金属化合物としては、例えば、Mg2 +、Ca2 +、Zn2 +、Zr2 +、Ni2 +、Al3 +などの硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等が用いられる。
上記の各機能性付与化合物は、単独で使用しても、あるいは2種以上を併用することもできる。具体的には、退色防止剤を2種以上含む水溶液を用いることも、また、退色防止剤と架橋剤を含有する溶液、退色防止剤と界面活性剤を含有する溶液、更には架橋剤、水溶性の多価金属化合物、および退色防止剤を併用することもできる。
上記機能性付与化合物の溶媒としては、水または水混和性の有機溶媒と水との混合溶液であることができ、水を用いることが特に好ましい。また、水と水混和性を有する低沸点有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等)との混合溶媒も好ましい溶媒である。水と水混和性の有機溶媒とを併せて使用する場合、水の含有率としては質量比で50質量%以上であることが好ましい。
ここで水混和性を有する低沸点有機溶媒とは、室温で水に対して10質量%以上の溶解性を有し、沸点が約120℃以下の有機溶媒を言う。
前記機能性付与化合物としては、媒染剤であってもよい。
本発明では、媒染剤として、アルミニウム原子を含有する化合物を好適に用いることができる。アルミニウム原子を含有する化合物は、無機酸や有機酸の単塩および複塩、有機金属化合物、金属錯体などのいずれであっても良いが、ポリ塩化アルミニウム化合物、ポリ硫酸アルミニウム化合物、ポリ硫酸珪酸アルミニウム化合物であることが特に好ましい。
ポリ塩化アルミニウム化合物は、一般式〔Al2(OH)nCl6-n〕m、〔Al(OH)3〕n・AlCl3で示されるものであり、例えば、〔Al6(OH)153+、〔Al8(OH)204+、〔Al13(OH)345+などのような塩基性で、かつ高い正荷電の多核縮合イオン(高分子性)を有効成分として、安定に含んでいるポリ塩化アルミニウムである。
ポリ塩化アルミニウム化合物の市販品としては、例えば、浅田化学(株)製のポリ水酸化アルミニウム(Paho)、多木化学(株)製のポリ塩化アルミニウム(PAC)、(株)理研グリーン製のピュケラムWTが挙げられる。また、ポリ硫酸アルミニウム化合物は、一般式 〔Al2(OH)n(SO46-n/2〕m (但し、0<n<6)で表されるものであり、市販品としては浅田化学(株)製の塩基性硫酸アルミニウム(AHS)が挙げられる。ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム化合物の市販品としては、日本軽金属(株)製のPASSが挙げられる。
本発明の製造方法が好ましく適用できるインクジェット記録媒体は、非吸水性支持体上に平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性バインダーとを含有する水系塗布液Aを塗布し、該水系塗布液Aにより形成した塗膜を乾燥させて多孔質インク吸収層を形成する。
本発明で用いることのできる無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。また、各々単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
本発明においては、インクジェット記録媒体で高品位なプリントを得る観点から、無機微粒子として、アルミナ、擬ベーマイト、コロイダルシリカもしくは気相法により合成された微粒子シリカが好ましく、気相法で合成された微粒子シリカが特に好ましい。この気相法で合成されたシリカは、表面がAlで修飾されたものであっても良い。表面がAlで修飾された気相法シリカのAl含有率は、シリカに対して質量比で0.05〜5%のものが好ましい。
上記無機微粒子の粒径は、空隙率の大きな構造を得る上で、平均一次粒径として30nm以下であることを特徴とし、被膜の透明性を高める上で特には3〜10nmが好ましい。
上記無機微粒子の平均粒径は、多孔質物質層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
また、本発明に係る多孔質インク吸収層で用いることのできる親水性バインダーとしては、特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。
親水性バインダーとして特にポリビニルアルコールが好ましい。本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、平均重合度が1500〜5000のものが特に好ましく用いられる。
ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して通常0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールは例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号、および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
インク吸収層に用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、無機微粒子の種類、親水性バインダーの種類に大きく依存するが、一般には記録媒体1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
また、インク吸収層に用いられる無機微粒子と親水性バインダーの比率は質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。
本発明で用いることのできる支持体は、より高品位なプリントが得られる観点から、非吸水性支持体を用いる。本発明で好ましく用いられ支持体は、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルムおよび紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体である。
そのようなポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体について以下に説明する。
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及びまたはLDPの比率は10質量%〜70質量%が好ましい。
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもく、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
特にインク吸収層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して通常3質量%〜20質量%、好ましくは4質量%〜13質量%である。
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。
上記ポリエチレン被覆紙においては紙中の含水率を3質量%〜10質量%に保持するのが特に好ましい。
本発明に係る多孔質インク吸収層には、各種の添加剤を添加することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている褪色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
上記の多孔質インク吸収層を、非吸収性支持体上に塗布する際の温度は、一般的には、30〜60℃であり、塗布後の冷却温度は塗膜温度が概ね20℃以下になるようにすれば良く、特に、15℃以下にすることが好ましい。
冷却工程は、塗布後、例えば15℃以下に冷却されたゾーンを一定時間(好ましくは5秒間以上)通過させることで行うことができる。この冷却時点では、あまり強い風を吹き付けないことが、液ヨリを起こさず均一でムラのない塗膜を得る観点から好ましい。
一旦冷却した以降は、強い風を吹き付けても、塗布液自体の増粘のため、液ヨリを起こしにくくなり、強い風を吹き付けても液ヨリの発生を抑制することができる。また、吹き付ける強い風の温度は、20℃以上の風を吹き付けることができるが、徐々に風の温度を上げるのが好ましい。
多孔質インク吸収層用の塗布液を支持体上に塗布した後の乾燥工程は、風を吹き付けたり高温状態のゾーンを通過させる、もしくは両者を併用することで行われる。
高温ゾーンを通過させて乾燥させる場合、50〜150℃の乾燥ゾーンを通過させる。この際、乾燥温度は、支持体の耐熱性や塗膜への悪影響などを考慮して適切な乾燥温度を選択することが好ましい。乾燥する風は、通常、相対湿度が10〜50%、好ましくは15〜40%の風で行われる。乾燥時間は、湿潤膜厚にもよるが、概ね10分以内が好ましく、5分以内にするのが特に好ましい。
塗布速度は、湿潤膜厚や設備の乾燥能力に依存するが、概ね1分当たり10〜1000m、好ましくは20〜500mである。
上記多孔質インク吸収層用の塗布液の塗布方法としては、公知の方法から適宜選択して行うことができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、押し出し塗布方法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
次いで、本発明のインクジェット記録媒体の製造方法において、水系塗布液Bの塗布に用いるスロットノズルスプレー装置について、図を交えてその詳細を説明する。ただし、本発明に係るスロットノズルスプレー塗布装置(以下、単に塗布装置ともいう)は、ここで例示する図で示す構成のみに限定されるものではない。
本発明の製造方法は、非吸収性支持体上に、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性バインダーとを含有する水系塗布液Aを塗布し、該水系塗布液Aにより形成した塗膜を乾燥させて多孔質インク吸収層を形成させた後、被塗布体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって、塗布液を供給する塗布液ノズルと該塗布液ノズルの開口端に近接してガスを噴出するガスノズルとを有するスロットノズルスプレー装置を用いて水系塗布液Bを該多孔質インク吸収層上に塗布する。
ここで、本発明でいう被塗布体とは、本発明の製造方法を用いて水系塗布液Bを液滴状にし、噴霧することで、塗布を行う被塗布対象物のことであり、その形態は問わないが、長尺の帯状支持体や、該帯状支持体上にすでにインク吸収層等を有するインクジェット記録媒体である。
また、本発明において、被塗布体は、塗布装置の塗布液ノズルに対して相対的に移動させ(搬送させ)、連続的に塗布製造を行う。塗布装置の塗布液ノズルは、少なくとも被塗布体の塗布幅(被塗布体の搬送方向と交差する方向における前記被塗布体の被塗布部の長さのことを指す)に対応する長さを有し、被塗布体の搬送方向と交差するように配置させることにより、塗布装置に対して被塗布体を搬送させるだけで、被塗布体上に塗布液を塗布する。被塗布体が長尺の帯状支持体である場合、帯状支持体の長手方向に帯状支持体自身を搬送させ、塗布装置の塗布液ノズルを、帯状支持体の幅手方向に(長手方向と直行する方向に)位置させることが好ましい。塗布装置に対し、被塗布体を一方向に搬送し、塗布液を塗布幅にわたって液滴として噴霧することにより、ごく薄い塗布膜を、乾燥負荷なく、膜厚均一性高く塗布できる。
また、塗布装置の塗布液ノズルから噴霧される液滴は、塗布幅方向において、
1:液滴径分布が均一であること、
2:液滴が被塗布体上に落ちる面積範囲が、搬送方向に対し、その落下長さが均一であること、
3:被塗布体上に落ちる角度が均一であること、
4:被塗布体上に落ちる衝突速度が均一であること、
によって、より塗布膜厚の均一性を確保することが可能となる。
塗布幅方向において液滴径分布が均一であるとは、具体的には、塗布幅方向で、平均液滴径の変動が、±20%以下であることを言う。より好ましくは±10%以下である。
平均液滴径の変動は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、計算することが可能である。具体的には以下の測定法により行う。
まず、塗布液を液滴として噴霧するスロットノズルスプレー装置等のスプレー装置から、塗布液を噴霧させ、その噴霧状態を安定させる。噴霧開始直後では、塗布液の吐出量やガス圧が一定せず噴霧状態が安定しないので、所定の時間噴霧を続けることで安定させることができる。
次に、噴霧状態が安定した液滴群に対し、レーザー回折式粒度分布測定装置としてスプレーテックRTS5123(マルバーン社製)を用い、塗布幅方向において等間隔で5ヶ所、平均液滴径を測定する。被塗布体に落ちる液滴群の塗布幅方向の両端(塗布端)は、通常、噴霧濃度が極端に低くなるため有効塗布幅にはカウントしない。よって、有効塗布幅の両端を測定点の両端2点とする。具体的には、塗布端から1cm内側に入った所を測定点の両端2点とし、その内側の等間隔3点を加えて計5点とし、これを測定点とする。この5ヶ所で測定された平均液滴径から、変動率を計算する。
尚、平均液滴径は、スプレーテックRTS5123を用いれば簡単に測定できるが、前記測定箇所における液滴群の各液滴径を測定し、液滴径を横軸にとって積算プロットしたときに、体積パーセントで50%の位置にくる液滴径のことをさす。
また、液滴が被塗布体上に落ちる面積範囲の搬送方向の長さが均一であるとは、塗布幅方向で、前記長さの変動が、±10%以下であることを言う。より好ましくは±5%以下である。
また、被塗布体上に落ちる液滴の広がり角度が均一であるとは、塗布幅方向で、塗布装置の塗布液ノズルを基点として、被塗布体上に落ちる液滴の落下角度の変動が、±10%以下であることをいう。より好ましくは±5%以下である。
また、被塗布体上に落ちる液滴群の空間密度が均一であるとは、塗布幅方向で、被塗布体上に落ちる液滴群の空間密度の変動が、±10%以下であることを言う。より好ましくは±5%以下である。
上述のような均一な噴霧を達成するため、本発明では、スロットノズルスプレー装置を用いることが特徴である。スロットノズルスプレー装置とは、塗布液を吐出する塗布液ノズル孔を塗布幅方向に複数有する。各塗布液ノズル孔は、塗布幅方向に一列に並んでいても、千鳥に並んでいてもよい。そして、前記塗布液ノズル孔に近接してガスを噴出するガスノズル孔を有し、ここから噴出されるガスを前記塗布液ノズル孔から吐出された塗布液に衝突させて液滴を形成する機構を有する。
本発明に好ましく用いることのできるスロットノズルスプレー装置としては、例えば、特開平6−170308号公報に記載されているものを適用することが可能である。特開平6−170308号公報では、このスロットノズルスプレー装置を用いて、使い捨ておむつの接着剤を繊維上に塗布する例が開示されているが、極めて高粘度の塗布液(接着剤)をスロットノズルスプレー装置の塗布液ノズル(塗布液吐出部)からファイバー状に落下させるものであり、塗布装置と被塗布体(繊維)とが、前記ファイバー状の塗布液でつながっている。つまり、本発明の製造方法のように不連続な液滴として被塗布体上に付与するものではない。塗布幅にわたって設けられた複数の塗布液ノズルおのおのから平行に落下するファイバー状塗布液が、前記塗布液ノズルに近接して設けられたガスノズルから噴出されるガスにより攪乱され、垂直落下することが妨げられ、被塗布体上のある面積範囲内でランダムに着地するのみである。ガスノズルなしでは、ファイバー状の塗布液がそのまま垂直落下することになるが、ガスノズルからガスを噴出することで、より広範囲に塗布液を分散して着地させることが可能となっているが、ラーメンを広げて載せただけのような塗布層となり、インクジェット記録媒体の例で述べたような被塗布体全面にわたり、厳密に塗布膜厚の均一性が求められる塗布ではない。また、接着剤を塗布するものであるから、形成される塗布膜も極めて厚いものである。
また、特開平5−309310号公報に開示されるスロットノズルスプレー塗布装置も、本発明に好ましく用いることができる。特開平5−309310号公報で開示されている例は、上述の特開平6−170308号公報と同様に、ホットメルトタイプの接着剤を被塗布体上に塗布するものである。これも極めて高粘度の塗布液(接着剤)であるために、同様に塗布液を被塗布体表面にファイバー状に、連続的に吐出する方法であり、厳密な膜厚均一性はなく、かつ形成する塗布膜も極めて厚膜なものである。
本発明においては、特に、塗布均一性、塗布容易性等の観点から、特開2004−906号公報に記載のスロットノズルスプレー塗布装置を好ましく用いることができる。
このようなスロットノズルスプレー装置を用いて、上述のごとく塗布幅にわたって噴霧状態の均一性を高める方法としては、塗布液の粘度を比較的低くすること、ガスノズルから噴出するガス圧を高くすることにより可能である。また、スロットノズルスプレー装置の塗布液ノズル開口端の面積を小さくすること、該開口端のピッチを狭くすることなどにより、噴霧の均一性を高めることができる。
塗布液Bの粘度としては、好ましくは0.1〜250mPa・s、より好ましくは0.1〜50mPa・s、更に好ましくは0.1〜20mPa・sであり、このような低粘度の塗布液をスロットノズルスプレー装置に適用することで、塗布幅にわたって均一な液滴の噴霧が可能である。
また、塗布幅にわたって均一な液滴の噴霧を行うには、塗布液の静的表面張力を20〜70mN/mに調整すること、好ましくは20〜50mN/m、更に好ましくは20〜40mN/mとすることである。
また、スロットノズルスプレー装置等を用いて、ガスを塗布液に衝突させて液滴を形成するときのガス内圧は、10kPa以上、好ましくは20kPa以上、更に好ましくは50kPa以上とすると均一な噴霧が行い易い。ガスの流量としては、3.5CMM/m以上、好ましくは7CMM/m以上、更に好ましくは10CMM/m以上である。
上記手段を用いて、塗布幅にわたり、連続ファイバー状ではなく、不連続な液滴状に飛散させることにより、塗布液が少量であっても、均一に、塗布液を被塗布体上に供給できる。結果として、塗布膜厚を均一にすることができる。また、不連続な液滴の被塗布体上への供給であって、塗布液量が少なくなるので、乾燥負荷もかからない。
次いで、本発明に係る塗布装置に用いるスロットノズルスプレー塗布装置の具体的な形態について、説明する。
図1は、本発明の製造方法を説明するための概略図である。図中、参照符号1は、スロットノズルスプレー装置(全容は不図示)のスロットノズルスプレー部、9は長尺の帯状支持体タイプの被塗布体である。
被塗布体9は、被塗布体9の長手方向である図中の矢印の搬送方向に、図示しない搬送手段により一定の速度で搬送される。スロットノズルスプレー部1の塗布液ノズルCは、搬送方向と直交する方向である被塗布体9の幅手方向に長さを有し、被塗布体9の塗布面に対向するように配置されている。塗布液ノズルCからは、塗布液が液滴状に噴霧され、搬送される被塗布体9上に液滴が着地することにより塗布が行われる。このとき被塗布体9の幅手方向の塗布液が付着する長さが図中矢印で示した塗布幅に相当する。図1では、塗布幅は、被塗布体9の幅手方向の長さよりも短くなっているが、同じでももちろん構わない。
図2は、図1で説明したスロットノズルスプレー部を含むスロットノズルスプレー装置の一例を示す概略断面図である。
スロットノズルスプレー部1は、一対の内部ダイブロック3a、3bと、該一対の内部ダイブロック3a、3bの各々の外側に外部ダイブロック2a、2bを有し、一対の内部ダイブロック3a、3b間に塗布液ノズルCが形成され、内部ダイブロック3aと外部ダイブロック2a間、及び内部ダイブロック3bと外部ダイブロック2b間にそれぞれガスノズルDが構成されている。
図2において、スロットノズルスプレー部1には、ガスポケットAを有する1対のガスノズルDと塗布液ポケットBを有する塗布液ノズルCを有している。塗布液は、ファイバー状にならず液滴を形成できる粘度(0.1〜250mPa・sが好ましい)を有する例えば機能賦与化合物含有溶液などの塗布液を調製釜4に入れ、ポンプ5、流量計6を経て、塗布液ポケットBに供給されて塗布液ノズル3に導かれる。一方、ガスノズル2へは、加圧空気源7より、弁8を介して、ガスポケットAに加圧空気が供給される。塗布に際しては、塗布液ノズルCより規定の塗布量となるように調製釜4より塗布液を供給すると同時に、一対のガスノズルDより加圧空気を吹き付け、塗布液を液滴状にして、被塗布体9上に噴霧、吐着させるものである。本発明の製造方法においては、塗布液を、ファイバー状ではなく、微細な液滴として噴霧することができることが大きな特徴である。塗布液を微細な液滴として、被塗布体9表面に供給することにより、極めて均一性の高い薄膜を、乾燥負荷なく、高速で形成することができる。
次に、図3を用いて、スロットノズルスプレー部とそこで形成される液滴の形成及び飛翔状態を説明する。
図3において、塗布液ノズルCより吐出された塗布液Eは、塗布液ノズルCの両サイドに近接して設けられたガスノズルDより供給される圧縮空気Gにより、細分化、液滴化され球形に近い液滴粒子12となり、飛翔し、ギャップL5を隔てた被塗布体9表面に均一に着弾する。図3では、被塗布体9は、基材10上にインク吸収層11を構成層として塗布したモデルで示してある。被塗布体9上に着地する塗布液の液滴粒子12の面積範囲は、常に均一であることが好ましいが、特に、搬送方向における長さ(図中、落下長さL5と記載)が塗布幅にわたって均一であることが好ましい。また、塗布液ノズルCの開口端を基点として被塗布体に対し、噴霧される液滴群の広がり角度θは、塗布幅にわたって均一であることが好ましい。
図4は、本発明で用いるスロットノズルスプレー部の構成の特徴を示す概略断面図である。
図4において、内部ダイブロック3a、3b間に構成される塗布液ノズルCと、内部ダイブロック3aと外部ダイブロック2a間、及び内部ダイブロック3bと外部ダイブロック2b間で構成されるガスノズルDとがなす角度βが、15度以上、60度以下であることが好ましい。具体的には、多くの場合、塗布液ノズルCは、被塗布体面に対し垂直に配置されるケースが多く、その場合、ガスノズルDは、垂直方向に対し15度以上、60度以下の傾斜角を設けて配置されることになる。この様に、塗布液ノズルCとガスノズルDとを、特定の角度を設けて配置させることにより、安定した塗布液の液滴形成が可能となり、スジムラや塗布故障が低減され、高い塗布均一性を有する塗布を実現することができる。
また、本発明に係る塗布装置においては、被塗布体と対向する位置にある一対の外部ダイブロックの底面のなす角αが、170度以上、240度以下であることが好ましい。
上述の図4において、外部ダイブロック2a、2bの被塗布体9と対向する位置にあるそれぞれの底面を2c、2dとしたとき、底面2cと底面2dとのなす角αが170度以上、240度以下であることが好ましい。図4においては、ぞれぞれの底面2c、2dが被塗布体9に対し水平に位置し、角度αが180度である状態を例示してあるが、それぞれの底面2c、2dが被塗布体9に対し傾きを有する状態で形成されていても良い。
また、本発明に係る塗布装置においては、被塗布体と対向する位置にある一対の内部ダイブロックの底面のぞれぞれの幅L1、L2が1mm以下であり、かつ被塗布体と対向する位置にある一対の外部ダイブロックの底面のそれぞれの幅L3、L4が0.1〜50mmであることが好ましい。すなわち、図4において、内部ダイブロック3a、3bの被塗布体9と対向する位置にあるそれぞれの底面を3c、3dとしたとき、底面3c、3dのそれぞれの幅L1、L2が1mm以下であることが好ましく、より好ましく0.2〜1.0mmである。
また、外部ダイブロック2a、2bの被塗布体9と対向する位置にあるそれぞれの底面を2c、2dとしたとき、底面2c、2dのそれぞれの幅L3、L4が0.1〜50mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜30mmである。
また、図5は、本発明で用いるスロットノズルスプレー部の他の構成の特徴を示す概略断面図である。図5に示すスロットノズルスプレー部は、上記図4に対し、一対の内部ダイブロックに底部3c、3dを設けずに、先端を鋭角に形成した構成からなるものである。
以上の構成からなるスロットノズルスプレー装置からなる本発明に係る塗布装置においては、安定した塗布と、噴霧した液滴の付着等を防止する観点から、スロットノズルスプレー装置の開口面、前記ガスノズルのガス流路壁及び前記塗布液ノズルの液流路壁から選ばれる少なくとも1つが、表面撥水化処理されていることが好ましい。
スロットノズルスプレー装置の開口面とは、図2に示すスロットノズルスプレー装置において、被塗布体9に対向する位置にあるスロットノズルスプレー部1の底面部2c、2d、3c、3dであり、以降、本発明に係る塗布液ノズルまたはガスノズルの吐出口に隣接する面を底面または底面部ともいう。
また、本発明に係る塗布装置においては、ガスノズルのガス流路壁または塗布液ノズルの液流路壁にも表面撥水化処理を施すことが、本発明の目的効果をより一層発揮させる観点から好ましい。
本発明でいうガスノズルのガス流路壁とは、加圧空気源7より、弁8を介して、加圧空気が供給されるガスポケットAからガスノズルDまでの流路を形成する壁面をいう。また、塗布液ノズルの液流路壁とは、ポンプ5、流量計6を経て、塗布液を供給する塗布液ポケットBから塗布液ノズルCまでの流路を形成する壁面をいう。
本発明に係る塗布装置においては、本発明に係るスロットノズルスプレー装置の上記で説明した特定部位の表面が撥水化処理されていれば本発明の目的効果を得ることができ、上記各特定部位を撥水性を有する素材で構成すること、あるいは撥水性フィルム等で被覆すること、あるいは撥水化剤によるコーティングや蒸着等の手段で表面加工を施すことで、所望の表面撥水能を付与することができる。
本発明でいう表面撥水化処理とは、部材表面の純水に対する接触角が90°以上となるように処理を施すことを意味し、純水に対する接触角が100°以上であることが好ましく、105°以上となることがより好ましい。本発明においては、スロットノズルスプレー部本体に使用する材質としては、加工精度や耐久性等の観点から金属材質、特にステンレスで構成することが極めて好ましいため、本発明に係る表面撥水化処理としては、含フッ素シランカップリング剤、アモルファス含フッ素重合体、フッ素樹脂、撥水メッキ加工で表面撥水化処理することが好ましい。
含フッ素シランカップリング剤としては、例えば、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)、信越化学工業(株)、ダイキン工業(株)(例えば、オプツールDSX)、また、Gelest Inc.、ソルベイ ソレクシス(株)等により上市されており、容易に入手することができる他、例えば、J.Fluorine Chem.,79(1).87(1996)、材料技術,16(5),209(1998)、Collect.Czech.Chem.Commun.,44巻,750〜755頁、J.Amer.Chem.Soc.1990年,112巻,2341〜2348頁、Inorg.Chem.,10巻,889〜892頁,1971年、米国特許第3,668,233号明細書等、また、特開昭58−122979号、特開平7−242675号、特開平9−61605号、同11−29585号、特開2000−64348号、同2000−144097号公報等に記載の合成方法、あるいはこれに準じた合成方法により製造することができる。
また、アモルファス含フッ素重合体としては、サイトップ(旭硝子(株)製)、ポリジパーフルオロアルキルフマレート、テフロン(登録商標)AF(以上、DuPont社製)のようなフッ素系重合体、あるいはジパーフルオロアルキルフマレートとスチレンの交互重合体、三フッ化塩化エチレンとビニルエステルとの交互重合体、4フッ化塩化エチレンとビニルエステルとの交互重合体などの含フッ素エチレンと炭化水素系エチレンとの交互重合体もしくはその類似体ないし誘導体、フマライト(日本油脂(株)製)が好ましく用いられる。
これらの含フッ素重合体は、選択的にフッ素系有機溶剤に溶解することから、溶媒に任意の濃度で溶解してコーティングすることにより、粉体または分散媒の形態でしか塗布できないポリテトラフルオロエチレンやポリクロロトリフルオロエチレンなどに比べ、形成されたコーティング層がスロットノズルスプレー部本体の各部材に対する密着性が高く、かつ均一なコーティング層の形成が可能となる。コーティング液の含フッ素重合体濃度としては0.01%〜7質量%の範囲である。
上記含フッ素シランカップリング剤に用いられるフッ素系有機溶剤としては、ノベックHFEなどが好ましく用いることができ、アモルファス含フッ素樹脂用に用いられるフッ素系有機溶剤としてはシランフロリナート、ノベックHFE(以上、3M社製)、ガルデン(モンテフルオス社製)、トリフルオロメチルベンゼン、ハイドロフルオロカーボンなどが好ましく用いられる。
含フッ素重合体のスロットノズルスプレー部本体に対するコーティング方法としては、公知の塗布方法を適用することができ、例えば、ディピング法、スプレーコート法、スピンコート法、転写法、蒸着法を適宜選択して用いることができる。
スロットノズルスプレー部本体に対する含フッ素重合体の塗設量としては、所望の水に対する接触角を実現できる範囲であれば特に制限はないが、含フッ素シランカップリング剤を用いる場合には、概ね0.001〜0.1g/m2であり、好ましくは0.001〜0.01g/m2であり、またアモルファス含フッ素樹脂を用いる場合には、概ね0.01〜10.0g/m2であり、好ましくは0.01〜1.0g/m2である。
また、フッ素含有樹脂によるコーティングは、フッ素樹脂を、基材に塗布し熱で焼成する方法で、基材に対する高い密着性が得られる。
本発明に係るフッ素含有樹脂によるコーティングに用いられるフッ素含有樹脂としては、公知のフッ素含有樹脂が広く利用できる。具体的には、テフロン(登録商標)(Du Pont社)の名で知られる、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー)、また、ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー)、FVDF(ポリフッ化ビニデリン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチン)、TFE/PDD(テトラフルオロエチレン−パーフルオロジイオキソールコポリマー)などが挙げられる。
フッ素含有樹脂のコーティング方法としては、ディッピング法、スプレーコート法、スピンコート法などを用いることができる。また、電着塗装法も用いることができる。
フッ素樹脂の密着性を上げるために、コーティング前に、前処理を行うことが好ましい。ここでいう前処理とは、フッ素樹脂の基材への密着性を上げるために行われる処理全般をさし、基材の溶剤洗浄、空焼きなどの脱脂作業、ブラストにより表面の荒さを増す作業、金属やセラミックの溶射を行う作業が含まれる。これらの前処理はひとつのみを行っても良いし、複数の作業を組み合わせて行っても良い。脱脂の後、ブラスト処理を行うことが好ましい。コーティングは一層であっても良いし、複数層あっても良い。
フッ素樹脂は単独でコーティングに用いても良いし、複数のフッ素樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、フッ素樹脂以外の樹脂と組み合わせてもよい。この場合のフッ素樹脂以外の樹脂は、エポキシ樹脂、ポリアミノイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などの樹脂を用いることが出来る。
フッ素樹脂はコーティング後に熱処理により焼成を行う。熱処理の温度は用いる樹脂により異なるが、一般に250℃〜400℃が好ましい。また、この際の熱処理によるステンレスの歪みを低減するため、フッ素含有樹脂のコーティング前にステンレスの母材に熱処理を行ってから、塗布装置の形状に加工することが好ましい。
また、フッ素樹脂コーティングの後、平滑性、真直度を出すために研削加工を行うことが好ましい。研削後の膜厚としては、10〜100μmが好ましく、20〜70μmがより好ましい。
また、本発明で適用しうる表面撥水化処理として、フッ素樹脂を共析させるメッキ法を適用することができ、メッキ液中にフッ素樹脂を分散させておいて、メッキ皮覆を基材に付与する方法で、高い密着性と、硬度を得ることが出来る。
フッ素樹脂を共析させるメッキ皮膜は、公知のメッキ皮膜が広く利用できるが、硬度、耐食性、母材との密着性等の点からニッケル、クロムなどが好ましい。さらに、メッキ膜厚の均一性、真直性、平滑性などを高度に要求されるため特に化学反応を利用した無電解ニッケルメッキが好ましい。
共析するフッ素樹脂は、公知のフッ素樹脂が広く利用できる。具体的には、テフロン(登録商標)(Du Pont社)の名で知られる、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー)、また、ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー)、FVDF(ポリフッ化ビニデリン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチン)、TFE/PDD(テトラフルオロエチレン−パーフルオロジイオキソールコポリマー)などがあげられる。撥水性と言う点で、PTFEを用いることが好ましい。
共析するフッ素樹脂の大きさとしては、均一に被覆されるという点から直径0.1μm〜1μmが好ましく、さらに0.3〜0.6μmが好ましい。
また、メッキ液中のフッ素樹脂の量としては、撥水性また、均一に被覆されるという点から、5〜35%が好ましく、さらには20〜30%が好ましい。
本発明でいうメッキ処理は、具体的には、例えば、テフロン(登録商標)微粒子を分散共析した無電解メッキとしては、上村工業株式会社で販売されている、ニムフロンFRS、ニムフロン、ニムフロン−T、奥野製薬工業株式会社より販売されている、トップニコジットTF、トップニコジットFL、トップニコジットAL、日本カニゼン株式会社より販売されているカニフロン等が挙げられる。
メッキ皮膜の形成前には、基材の前処理を行うことが出来る。ここでいう前処理とは、熱、溶剤、電解に等による脱脂、酸などによる洗浄、下地のメッキ皮膜の付与などが含まれる。通常はこれらの処理が組み合わされて行われる。メッキ皮膜の密着性を上げるために、脱脂、酸による洗浄後、下地としてNiメッキを施すことが好ましい。
メッキ皮膜に、高い硬度が要求される場合には、フッ素樹脂を共析させるメッキ皮膜の形成後に200℃〜300℃程度、1時間程度の熱処理を施すことも可能である。また、その場合は熱処理によるステンレスの歪みを低減するため、メッキ処理前にステンレスの母材に熱処理を行ってから、塗布装置の形状に加工することが好ましい。
また、メッキ皮膜の形成後、平滑性、真直度を出すために研削処理を行うことも可能である。メッキ皮膜の膜厚は均一性という点から2〜20μmが好ましく、さらに、3〜10μmが好ましい。研削を行う場合のメッキ被覆の膜厚は、研削後2〜20μmが好ましく、更には、3〜10μmが好ましい。
更に、本発明に係る塗布装置の詳細について説明する。
図6および図7は、図2のスロットノズルスプレー部を塗布液ノズルC側から見た概略図である。塗布幅方向に配置された複数の塗布液ノズルCの開口端とガスノズルDの開口端とを示している。
図6に示す塗布液ノズルは、円形の開口端を有する塗布液ノズルCが、塗布幅方向に21個並んでいる。そして、各塗布液ノズルCの開口端の両サイドに近接して、ガスノズルDが設けられている態様である。各塗布液ノズルCは、それぞれ等間隔に配列されており、同様に各ガスノズルDも等間隔に配列されている。ここでは、一つの塗布液ノズルCと対応する2つのガスノズルDが塗布幅方向と直行する方向に一直線上に配置されているが、塗布液ノズルCとガスノズルDとが、互い違いに、千鳥状に配置されていても構わない。塗布液ノズルCの開口端またはガスノズルDの開口端の間隔(ピッチ)は一定であることが好ましい。
図7に示す塗布液ノズルは、図6に記載の形態とは別のものである。矩形の開口端を有する塗布液ノズルCが塗布幅方向に11個並んでいる。そして、塗布幅にわたって、全部の塗布液ノズルCに対し、その開口端の両サイドに近接して、スリット状のガスノズルDが一つずつ設けられている。この形態においても、複数の矩形の塗布液ノズルの開口は等間隔に配列されている。
図8は、図6のタイプの塗布液ノズルを有するスロットノズルスプレー部の分解斜視図である。図中、参照符号の3aおよび3bは、所定の距離を有する塗布液用スリットを形成し、このスリットに塗布液を流下させるための内部ダイブロックである。片方のダイブロック3aは、図示しない塗布液供給源から供給される塗布液を受け入れ、塗布液ポケットBまで連通する塗布液供給管61を有している。塗布液ポケットBに滞留した塗布液は、内部ダイブロック3aおよび3bの間に形成された塗布液用スリットを流下することになる。1dは、内部ブロック3aおよび3bに挟まれたシム(詰め金)であり、2つの内部ダイブロック3aおよび3bの間隙に形成された塗布液用スリットを垂直方向に分断して塗布幅方向に複数の塗布液ノズルを形成する。
また、2aおよび2bは、ガス供給用の外部ダイブロックで、外部ダイブロック2aおよび2bのそれぞれとの間隙に圧縮ガスが流通するガスノズルD(不図示)を形成する。この場合のガスノズルDは塗布幅方向に延びるスリットである。図示しないエア供給源から圧縮エアがそれぞれの外部ダイブロック2a、2bのそれぞれのエア供給管81に供給され、一端ガスポケットAに滞留した後、内部ダイブロックと外部ダイブロックとの間隙に形成されたガスノズルD(不図示)を圧力をもって流下する。
上記シム1dの間を流下してきた塗布液および2つのガスノズルを流下してきた圧縮エアは、スロットノズルスプレー部1の底部である塗布液ノズルにおいて衝突し、液滴を形成して、被塗布対象物である被塗布体上に飛翔する。
本発明に用いられるスロットノズルスプレー装置において、塗布液ノズルの開口端の形状としては、円形でも矩形でも良く、そのサイズとしては50〜300μmの範囲で用いることができ、それらのピッチ(間隔)は、100〜3000μmとすることが好ましい。一方、ガスノズルの開口端の形状としては、円形でも塗布幅に延びるスリット状でもよく、このときの円形での直径(図6に示すd)、あるいはスリット間隔(図6に示すw)としては、概ね50〜500μmの範囲で用いることができる。塗布液ノズルに対するガスノズルの角度としては、15〜60度の範囲であることが特徴であるが、好ましくは15〜45度である。また、スロットノズルスプレー部の塗布液ノズルと被塗布体間の距離(図2に示すL5)は、概ね0.2〜10cmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜6.0cmであり、更に好ましくは1.0〜3.5cmである。
塗布液ノズルからの塗布液の供給量は、所望の塗布膜厚、塗布液の濃度、塗布速度等により一概には規定できないが、概ね被塗布体上の塗設量として、0.5〜50g/m2の範囲が好ましい。0.5g/m2未満では、安定で均一な塗布膜を形成するのが難しく、逆に50g/m2を越えると乾燥負荷等に影響が表れ、本発明の効果を有効に発揮させることが難しくなる。塗布液の湿潤膜厚としては、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜30μmである。
一方、ガスノズルから噴出されるガスは、塗布に適した気体であればよく、一般にはエア(空気)を用いるが、ガスの供給条件としては、概ね1〜50CMM/m(塗布幅あたりの流量)の範囲が好ましく、その時のガスノズルでの内圧としては、塗布の均一性の観点から、10kPa以上であることが好ましい。
エアー線速度vは、100〜400m/sであることが本発明の目的を顕著に達成できるという観点において好ましい。特に、vが100m/s以上であれば塗布乾燥性の観点で好ましく、また400m/s以下であれば塗布収率の観点で好ましい。
本発明でいうエアー線速度とは、ガスノズル出口直後におけるエアー線速度であり、レーザードップラ風速計、例えば、KANOMAX社製の1D FLV system8851により測定して求めることができる。また、塗布収率とは、被塗布体上に塗布された塗布液量/供給した全塗布液量×100(%)であり、質量法により算出する。すなわち、被塗布体上に塗布された塗布液量は、被塗布体上への塗布前後の質量変化から算出し、供給した全塗布液量は塗布液ノズルへ送液、供給した質量、すなわち、送液流量×塗布時間より求めることができる。
また、このときの塗布液の液滴の平均粒径は、10〜70μmであることが本発明の目的を顕著に達成できるという観点において好ましい。本発明でいう液滴の平均粒径とは、塗布ギャップ(塗布液ノズルと被塗布体間の距離L5)位置における平均粒径であり、レーザ回折方式粒径測定機、例えば、MALVAN社製のRTS114により測定して、求めることができる。
本発明の製造方法においては、塗布を開始する方法として、スロットノズルスプレー装置のガスを噴出するガスノズルよりガスを供給した後に、塗布液を供給する塗布液ノズルより水系塗布液Bを供給することが、飛散物の発生及び付着による塗布故障の発生を低減できる観点から好ましい。
図9は、上記説明したようなスロットノズルスプレー装置を配置した塗布製造ラインの一例を示している。ここでは、被塗布体としては支持体上に構成層を塗布したものを用いている。該構成層を塗布後、乾燥する工程内に、複数(多段で)スロットノズルスプレー装置を配置した。このように同一ライン上で、構成層の形成と本発明によるオーバーコート層(最表層)の塗布とを行うことをオンライン塗布と呼んでいる。
図示しない搬送手段によって支持体の元巻きから、支持体が搬送ローラ21を通過し、更にバックアップロール22の位置にて反転搬送される過程で流量規制型のスライドビード塗布装置20より供給される多孔質インク吸収層(構成層)用の塗布液が塗布される。この多孔質インク吸収層用の塗布液は、親水性バインダを含有しているので、冷却ゾーン30で一端冷却して固定する。この支持体上に構成層を有する被塗布体9は、乾燥工程に搬送される。乾燥工程では、エアを吹き出して塗布膜表面と非接触で反転搬送させるリバーサ23と被塗布体9の裏面に接触して反転搬送させる通常の搬送ローラ24とを交互に設けて、被塗布体9を蛇行搬送させている。この乾燥工程においては、温風を吹き付けられて乾燥される(温風吹きつけ手段は不図示)。この乾燥工程の途中、好ましくは減率乾燥以降の位置に、2つのスロットノズルスプレー装置1によって本発明の上記説明したような液滴噴霧による塗布が行われる。2つのスロットノズルスプレーのうち、少なくとも1つは、乾燥終点以降の位置に載置されることが乾燥性の観点で好ましい。ここでは2つのスロットノズルスプレー装置を使用したが、1つでももちろんよく、3つ以上でもかまわない。多段に分けて液滴噴霧による塗布を行うことにより、乾燥負荷がより少なくなると同時に、膜厚均一性も高まることがわかった。
本発明の製造方法を用いて、被塗布体上に薄膜を形成する際の塗布速度としては、用いる塗布液の種類、濃度、溶媒含有量、乾燥能力等により変化し、一概に規定することはできないが、塗布速度として、50〜500m/minであることが好ましく、より好ましくは100〜300m/minである。
本発明の製造方法を用いて、少なくとも1層の構成層を支持体上に有する被塗布体上に、塗布を行う場合の塗布時期としては、支持体上に形成した構成層の減率乾燥以降、好ましくは乾燥終点以降である。また、前記構成層をスライドビード塗布等を用いて行う塗布工程と本発明のスロットノズルスプレー装置を用いる等により行う塗布工程は、同じ製造ライン上で、連続して行うことが好ましい(オンライン塗布と言う)。本発明にかかる塗布方法は、少量の塗布液であっても塗布が可能であるため、該構成層が完全に乾燥していない状態で行っても乾燥負荷が少なく、該構成層への悪影響も少ない。また、該構成層が完全に乾燥する前に本発明にかかる塗布を行う方が、かえって構成層のひび割れ等のデメリットを防ぐことも出来ることがわかった。
本発明の製造方法は、乾燥負荷が少ないので、該構成層の乾燥工程内において実施することができる。乾燥工程は、通常は、湿潤状態の塗布膜を連続的に搬送しながら、その表面あるいは裏面より、特定の温度及び湿度条件に制御された乾燥風を吹き付けて乾燥させることが好ましい。
湿潤状態の塗布膜の乾燥過程は、主に以下のように分類することができる。乾燥の初期は、恒率乾燥部と呼ばれ、塗布液の溶媒である水や溶剤が蒸発潜熱を奪いながら蒸発していくため、構成層の表面温度はほぼ一定である。この一定温度の期間を恒率乾燥部という。恒率乾燥部以降では、塗布液の溶質とインターラクションのある水や溶剤を蒸発させるため、蒸発潜熱の他にそのインターラクションを解くためのエネルギーも必要となるので表面温度は上昇する。この期間を減率乾燥部という。減率乾燥とは、表面からの溶媒の蒸発が層内の塗膜中の水分移動が勝るときに起きる現象である。次いで、減率乾燥が終了すると、乾燥風の温度とインクジェット記録媒体の表面温度が一致する領域に入る。この時点が、乾燥終点と呼ばれている。
以上説明した恒率乾燥部、減率乾燥部及び乾燥終点の確認方法としては、特に制限はないが、例えば、表面温度をモニターして、表面温度が一定である領域を恒率乾燥部、表面温度が上昇する領域を減率乾燥部及び乾燥温度と同一となった時点を、乾燥終点として求めることができる。
また、他の方法としては、各領域に含水量計を設置し、塗膜の含水量をモニターし、含水量の減少曲線がフラットになった領域を乾燥終点として規定することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《記録媒体の作製》
〔被塗布体の作製〕
(支持体の作製)
木材パルプ(LBKP/NBSP=50/50)100質量部に対して、ポリアクリルアミドを1質量部、灰分(タルク)を4質量、カチオン化澱粉を2質量部、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を0.5質量部、及び種々の添加量のアルキルケテンダイマー(サイズ剤)を含有するスラリー液を調製し、長網抄紙機で坪量が170g/m2になるように基紙を抄造した。これにカレンダー処理した後、7質量%のアナターゼ型酸化チタンおよび少量の色調調整剤を含有する密度0.92の低密度ポリエチレン樹脂を320℃で厚さ28μmになるように溶融押し出しコーティング法で基紙の片面を被覆し、鏡面クーリングローラーで直後に冷却した。次いで、反対側の面を密度0.96の高密度ポリエチレン/密度0.92の低密度ポリエチレン=70/30の混合した溶融物を同様に溶融押し出し法で、厚さが32μmになるように被覆した。
インク吸収層を設ける側の面の60度光沢度は56%、中心線平均粗さRaは0.12μmであった。
この支持体の酸化チタン含有層側に、コロナ放電した後、ゼラチン0.05g/m2を下引き層として塗布した。
一方反対側には、平均粒径約1.0μmのシリカ微粒子(マット剤)と少量のカチオン性ポリマー(導電剤)を含有するスチレン/アクリル系エマルジョンを、乾燥膜厚が約0.5μmになるように塗布して、インク吸収層を塗布するための支持体を作製した。
バック面側は、光沢度が約18%、中心線平均粗さRaが約4.5μm、ベック平滑度は160〜200秒であった。
このようにして得られた支持体の基紙の含水率は7.0〜7.2%であった。
また、この支持体の不透明度は96.5%、白さは、L*=95.2、a*=0.56、b*=−4.35であった。
(インク吸収層塗布液の調製)
下記の手順に従って、下記の組成からなるインク吸収層用塗布液を調製した。
〈酸化チタン分散液1の調製〉
平均粒径が約0.25μmの酸化チタン20kg(石原産業製:W−10)を、pH=7.5のトリポリリン酸ナトリウムを150g、ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製:PVA235)を500g、カチオンポリマー(P−1)を150g及びサンノブコ株式会社の消泡剤SN381を10g含有する水溶液90Lに添加し、高圧ホモジナイザー(三和工業株式会社製)で分散した後、全量を100Lに仕上げて均一な酸化チタン分散液1を得た。
Figure 2006027163
〈シリカ分散液1の調製〉
水 71L
ホウ酸 0.27kg
ほう砂 0.24kg
エタノール 2.2L
カチオン性ポリマー(P−1)25%水溶液 17L
退色防止剤(AF1 *1)10%水溶液 8.5L
蛍光増白剤水溶液(*2) 0.1L
全量を純水で100Lに仕上げた。
無機微粒子として、気相法シリカ(平均一次粒子径 約12nm)を50kg用意し、これに上記添加剤を添加した後、特開2002−47454号公報の実施例5に記載された分散方法により分散してシリカ分散液1を得た。
*1:退色防止剤(AF−1) HO−N(C24SO3Na)2
*2:チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、UVITEX NFW LIQUID
〈シリカ分散液2の調製〉
上記シリカ分散液1の調製において、カチオン性ポリマー(P−1)を、カチオン性ポリマー(P−2)に変更した以外は同様にして、シリカ分散液2を調製した。
Figure 2006027163
〈インク吸収層塗布液の調製〉
第1層、第2層、第3層及び第4層の各インク吸収層用塗布液を、以下の手順で調製した。
〈第1層用塗布液〉
シリカ分散液1の610mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
220ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
酸化チタン分散液 30ml
ポリブタジエン分散液(平均粒径約0.5μm、固形分濃度40%) 15ml
界面活性剤(SF1)5%水溶液 1.5ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
〈第2層用塗布液〉
シリカ分散液1の630mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
ポリブタジエン分散液(平均粒径約0.5μm、固形分濃度40%) 15ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
〈第3層用塗布液〉
シリカ分散液2の650mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
〈第4層用塗布液〉
シリカ分散液2の650mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
サポニン50%水溶液 4ml
界面活性剤(SF1)5%水溶液 6ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
Figure 2006027163
上記のようにして調製した各塗布液を、20μmの捕集可能なフィルターで2段ろ過した。
上記各塗布液は、いずれも40℃において30〜80mPa・s、15℃において30000〜100000mPa.sの粘度特性を示した。
(インク吸収層の形成)
このようにして得られた各塗布液を、上記作製したポリオレフィンで両面を被覆した支持体の表側に、第1層(35μm)、第2層(45μm)、第3層(45μm)、第4層(40μm)の順になるように各層を同時塗布した。なお、各層のかっこ内の数値は、それぞれの湿潤膜厚を示す。塗布は、各塗布液を40℃で4層式カーテンコーターを用い、塗布幅:約1.5m、塗布速度:200m/分で同時塗布を行った。
塗布直後に8℃に保持した冷却ゾーンで12秒間冷却した後、20〜30℃、相対湿度20%以下で18秒間、60℃、相対湿度20%以下で72秒間、55℃、相対湿度20%以下で36秒間、各々の乾燥風を吹き付けて乾燥した。恒率乾燥域における皮膜温度は8〜30℃であり、減率乾燥域で皮膜温度が徐々に上昇した後、23℃、相対湿度40〜60%の調湿ゾーンで調湿してロール状に巻き取って被塗布体を得た。
〔試料101の作製〕
(水系塗布液Bの調製及び塗布)
〈オーバーコート液1の調製〉
下記水溶性染料を0.10質量%含む水溶液を調製し、これをオーバーコート液1とした。このオーバーコート液1の粘度は室温で1.0mPa・s、動的表面張力(DST)は70mN/m、静的表面張力(SST)は71mN/mであった。
なお、動的表面張力(DST)の測定は、塗布液温度25℃において、クルス社製のBP2を使用し、連続的に泡を発生させ、バブルプレッシャー法により50ms時の表面張力の値を測定した。また、静的表面張力(SST)は、表面張力計(協和界面科学製:CBVP−Z)を使用し、塗布液温度25℃の時の白金プレート法による表面張力値を測定した。
Figure 2006027163
〈オーバーコート〉
図5に記載の構成からなるスロットノズルスプレー装置を用いて、上記オーバーコート液1の塗布を行った
塗布に用いたスロットノズルスプレー装置は、外部ダイブロックの底面2c、2dのなす角度αは180度、塗布液ノズルの塗布液吐出口とガスノズルのガス吐出口のなす角度βを30度、外部ダイブロックの底面のそれぞれの幅L3、L4を40mmとし、外部ダイブロックの底面と被塗布体表面との距離を20mmとした。用いた各ノズル形状は図7の形状とし、塗布液ノズルの開口端は150μm角の矩形、ピッチは500μmピッチで、ガスノズルは150μm幅のスリット状とした。また、塗布開始にあたっては、ガスノズルから空気を200m/secの風量で供給した後、液ノズルからオーバーコート液1を供給して塗布を開始した。
図9に記載の塗布ライン(図9に記載の後半のオーバーコートゾーンを使用し、インク吸収層の乾燥終点にコーターを設置とした)で、図2、図5に記載の構成からなるスロットノズルスプレー装置を用いて、上記調製したオーバーコート液1を、前記作製した被塗布体上に、塗布速度200m/min、湿潤膜厚11.5μmとなるように塗布を行い、試料101を作製した。
〔試料102の作製〕
上記試料101の作製において、オーバーコート液1に代えて、オーバーコート液1に本発明に係るアセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンE1010(日信化学工業(株)製:一般式(2)で表される化合物、エチレンオキサイド付加モル数N(m+n)=10)を濃度0.01%となるように添加して調製したオーバーコート液2を用いた以外は同様にして、試料102を作製した。オーバーコート液2のDSTは60mN/m、SSTは50mN/mであった。
Figure 2006027163
〔試料103〜105の作製〕
上記試料102の作製において、表1に示すようにオーバーコート液2に添加するオルフィンE1010の添加量を変化させて、オーバーコート液のDST、SSTを変化させた以外は同様にして、試料103〜105を作製した。
〔試料106〜109の作製〕
上記試料102の作製において、表1に示すようにオーバーコート液に添加する界面活性剤を、下記界面活性剤Aに変更し、かつ添加量を変更して、オーバーコート液のDST、DDTを変化させた以外は同様にして、試料106〜109を作製した。
Figure 2006027163
《記録媒体の評価》
上記作製した各記録媒体について、下記の方法に従って各評価を行った。
〔スジ故障耐性の評価〕
塗布、乾燥が終了した各記録媒体のオーバーコート塗布を行った表面を目視観察して、下記の判断基準に従ってスジ故障耐性の評価を行った。
A:塗布面に、筋状故障が全く認められない
B:塗布面に、やや軽微の筋状故障が認められるが、実用上許容内である
C:塗布面に、やや強い筋状故障が認められ、実用上問題がある
D:塗布面に、極めて強い筋状故障が認められる
なお、本発明でいう筋状故障とは、塗布面の塗布巾手方向に濃淡の変動が生じる塗布筋状の濃度ムラのことを示す。
〔濃度ムラ耐性の評価:RMSの測定〕
各記録媒体のオーバーコート塗布を行った表面の濃度を、スキャナー(Epson社製 ES−8000)で読み取り、測定した濃度測定値を下式(1)に従って塗布ムラを評価する指標としてRMSを算出した。これは、平均濃度に対する各ポイントでの濃度差の二乗平均から塗布ムラを定量化したものであり、塗布ムラが小さいほどRMS値は小さい値となる。本発明においては、RMS算出値と目視評価の相関から、RMS値が4以下の場合には実技上問題ないと判断した。
Figure 2006027163
式中、Xi:濃度測定値、X:濃度測定平均値、n:測定点数を表す。
〔ヘリ部塗布性の評価〕
各記録媒体のオーバーコート塗布を行った表面の幅手方向の全幅の濃度を、スキャナー(Epson社製 ES−8000)で読み取り、平均濃度の90%以上となる測定点Zの塗布両端(ヘリ部)からの距離Lを求めた。
A:測定点Zのヘリ部からの距離は5mm以下であり、実用上全く問題ない
B:測定点Zのヘリからの距離は5mm以上、10mm未満であり、実用上問題ない
C:測定点Zのヘリからの距離は10mm以上、20mm未満であり、実用上許容内である
D:測定点Zのヘリからの距離は20mm以上であり、実用上問題である
以上により得られた各評価結果を、表1に示す。
Figure 2006027163
表1に記載の結果より明らかなように、界面活性剤を添加していない試料101は、スジ故障耐性、濃度ムラ耐性、ヘリ塗布性ともに実用上問題があり、また、界面活性剤を添加した試料102、106でも、動的表面張力が55mN/mを越える場合には、スジ故障耐性、濃度ムラ耐性、ヘリ塗布性ともに実用上問題がある。
これに対し、界面活性剤を添加し、動的表面張を55mN/m以下とした本発明の試料は、比較例に対しスジ故障耐性、濃度ムラ耐性、ヘリ塗布性に改良効果が認められ、その中でも、特に、DSTが50mN/m以下であることが好ましく、40mN/m以下であることが更に好ましいことが分る。
実施例2
《記録媒体の作製》
〔試料201〜204の作製〕
実施例1に記載の試料101、103〜105の作製において、各オーバーコート液の湿潤膜厚を8.0μmに変更した以外は同様にして、試料201〜204を作製した。
〔試料205〜208の作製〕
実施例1に記載の試料101、103〜105の作製において、各オーバーコート液の粘度が5mPa・sとなるようにカルボキシメチルセルロースを添加して、オーバーコート液を調製した以外は同様にして、試料205〜208を作製した。
〔試料209〜212の作製〕
実施例1に記載の試料101、103〜105の作製において、各オーバーコート液の粘度が10mPa・sとなるようにカルボキシメチルセルロースを添加して、オーバーコート液を調製した以外は同様にして、試料209〜212を作製した。
《記録媒体の評価》
上記作製した各記録媒体について、実施例1に記載の方法と同様にして、スジ故障耐性の評価、濃度ムラ耐性の評価(RMSの測定)及びヘリ部塗布性の評価を行い、得られた結果を表2に示す。
Figure 2006027163
表2に記載の結果より明らかなように、オーバーコート液の湿潤膜厚をさせても本発明の試料202〜204では、良好な効果が得られていることが分かる。また、オーバーコート液の粘度を変化させた場合にも、本発明の試料206〜208、210〜213は、比較例に対し、各特性において優れたの効果が得られ、実技上問題ない塗布性であることが分かる。特に、オーバーコート液のDSTを50mN/m以下に低下させることにより、オーバーコート液の粘度に依らず好ましい塗布性が得られていることが分かる。
実施例3
《記録媒体の作製》
〔試料301の作製〕
(スロットノズルスプレー装置の表面撥水処理)
表面撥水化処理剤としてオプツールDSX(ダイキン工業株式会社製:20%溶液)をHFE7100(3M社製)で希釈し、オプツールDSXの0.1%溶液を調製した。
次いで、図2に記載の外部ダイブロックの底面2c、2d、内部ダイブロックの底面3d、3c、およびガスノズル2の壁面、および塗布液ノズル3をオプツールDSXの0.1%溶液を均一に塗布し、室温で24h乾燥させ、スロットノズルスプレーのリップ部分に撥水化処理を施した。
次いで、実施例1に記載の試料104の作製において、スロットノズルスプレー装置として、上記の表面撥水処理を施したスロットノズルスプレー装置を用いた以外は同様にして、試料301を作製した。
〔試料302の作製〕
上記試料301の作製において、表面撥水化処理剤としてサイトップ105P(旭硝子株式会社製)を20質量部、CT−SOLV100(旭硝子株式会社製)を80質量部で混合して調製したサイトップ105P溶液を用いた以外は同様にして試料302を作製した。
〔試料303、304の作製〕
上記試料301の作製において、スロットノズルスプレー装置の表面撥水化処理を、テフロン(登録商標)コーティング加工(ECTFEを使用)及び撥水めっき加工(ニムロン、上村工業社製を使用)にそれぞれ変更した以外は同様にして、試料303、304を作製した。
《記録媒体の評価》
上記作製した各記録媒体について、実施例1に記載の方法と同様にして、スジ故障耐性の評価、濃度ムラ耐性の評価(RMSの測定)及びヘリ部塗布性の評価を行い、得られた結果を表3に示す。
Figure 2006027163
表3に記載の結果より明らかなように、表面撥水化処理を施したスロットノズルスプレー装置を用いて作製した試料301〜304は、各特性がより一層向上していることが分かる。
実施例4
《記録媒体の作製》
〔試料401の作製〕
実施例1に記載の試料101の作製において、オーバーコート液1に添加した水溶性染料を除いた以外は同様して、試料401を作製した。
〔試料402〜405の作製〕
上記試料401の作製において、表4に示すようにオーバーコート液に添加する界面活性剤の種類、添加量、付量を変化させてDSTを調整した以外は同様にして試料402〜405を作製した。
〔試料406〜409の作製〕
実施例1に記載の被塗布体の作製において、インク吸収層の第4層用塗布液に、試料402〜405と界面活性剤の付量(mg/m2)が等しくなるように界面活性剤を添加し、塗布した以外は同様にして試料406〜409を作製した。
上記作製した各試料は、それぞれ36℃で3日間保管した。
《記録媒体の評価》
上記作製した各記録媒体について、下記の方法に従って各評価を行った。
〔ひび割れ耐性の評価〕
各記録媒体のオーバーコート塗布を行った表面0.3m2当たりに発生しているひび割れ点数を目視でカウントした。
〔光沢度の測定〕
各記録媒体のオーバーコート塗布を行った表面を、日本電色工業株式会社製の変角光度計(VGS−101DP)を用いて75度鏡面光沢度を測定した。
〔プリント品質の評価〕
(濃度ムラ耐性の評価:RMSの測定)
セイコーエプソン社製のインクジェットプリンター PM950Cで、ブルーのベタ画像を全面にプリントし、この画像濃度をスキャナー(Epson社製 ES−8000)で読み取り、測定した濃度測定値を前式(1)に従って塗布ムラを評価する指標としてRMSを算出した。これは、平均濃度に対する各ポイントでの濃度差の二乗平均から濃度ムラを定量化したものであり、濃度ムラが小さいほどRMS値は小さい値となる。
〔ブロンジング耐性の評価〕
25℃、相対湿度80%の環境下において、セイコーエプソン社製インクジェットプリンター PM950Cで、ブルーのベタ画像をプリントし、25℃、相対湿度80%の環境下で24時間保存した後、プリント画像のブロンジングの発生具合を目視観察し、下記の基準に従ってブロンジング耐性を評価した。
◎:ブロンジングが全く認められない
○:わずかにブロンジングが認められるが問題ない
△:一部でブロンジングが認められるが実用上問題ない
×:ブロンジングが激しく発生し、実用に耐えない
以上により得られた結果を、表4に示す。
Figure 2006027163
表4に記載の結果より明らかなように、界面活性剤をインク吸収層に添加して作製した試料406〜409は、界面活性剤添加量の増加に伴い、ひび割れ耐性が低下し、光沢が劣化していることが分かる。これに対し、オーバーコート塗布液に界面活性剤を添加し、動的表面張力を55mN/m以下として作製した本発明の試料402〜405は、ひび割れ耐性及び光沢性が良好で、かつプリント品質においても問題ない性能が得られていることが分かる。更に、アセチレングリコールタイプの界面活性剤を用いた試料402、403は、界面活性剤の添加量によらず良好な性能が得られることが分かった。
実施例5
実施例1〜4に記載の塗布方法において、染料水溶液に代えて、機能性付与化合物として、親水性バインダーの架橋剤、画像安定剤、水溶性多価金属化合物をそれぞれ含む各オーバーコート液を用いて、同様の塗布を行って、塗布性及び画像性能評価を行った結果、実施例1〜4に記載の結果と同様に、本発明で規定する条件を満たすオーバーコート塗布液をスロットノズルスプレー装置を用いて塗布した本発明の製造方法は、比較例に対し、スジ故障耐性、濃度ムラ耐性(RMSの測定)及びヘリ部塗布性がに優れ、安定して良質な画像性能を付与できることが確認できた。
本発明の塗布方法を説明するための概略図である。 スロットノズルスプレー部を含むスロットノズルスプレー装置の一例を示す概略断面図である。 スロットノズルスプレー部とそこで形成される液滴の形成及び飛翔状態を説明する模式図である。 本発明で用いるスロットノズルスプレー部の構成の特徴の一例を示す概略断面図である。 本発明で用いるスロットノズルスプレー部の他の構成の特徴の一例を示す概略断面図である。 図2のスロットノズルスプレー部を塗布液ノズルC側から見た一例を示す概略図である。 図2のスロットノズルスプレー部を塗布液ノズルC側から見た他の一例を示す概略図である。 スロットノズルスプレー装置の塗布液ノズルを有するスロットノズルスプレー部の一例を示す分解斜視図である。 スロットノズルスプレー装置を配置した塗布製造ラインの一例を示す模式図である。
符号の説明
1 スロットノズルスプレー部
1d シム
2a、2b 外部ダイブロック
2c、2d 外部ダイブロックの底面
3a、3b 内部ダイブロック
3c、3d 内部ダイブロックの底面
4 調整釜
5 ポンプ
6 流量計
7 加圧空気源
8 弁
9 被塗布体
10 基材
11 インク吸収層
12 液滴粒子
20 スライドビード塗布装置
30 冷却ゾーン
A ガスポケット
B 塗布液ポケット
C 塗布液ノズル
D ガスノズル
E 塗布液
G 圧縮空気
L1、L2 内部ダイブロックの底面の幅
L3、L4 外部ダイブロックの底面の幅

Claims (5)

  1. 非吸収性支持体上に、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性バインダーとを含有する水系塗布液Aを塗布し、該水系塗布液Aにより形成した塗膜を乾燥させて多孔質インク吸収層を形成させた後、該非吸収性支持体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって、塗布液を供給する塗布液ノズルと該塗布液ノズルの開口端に近接してガスを噴出するガスノズルとを有するスロットノズルスプレー装置を用いて水系塗布液Bを該多孔質インク吸収層上に塗布する一連の工程を有するインクジェット記録媒体の製造方法において、該水系塗布液Bの動的表面張力が20〜55mN/mであることを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法。
  2. 前記水系塗布液Bが、アセチレングリコール化合物またはアセチレンアルコール化合物を含有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
  3. 前記スロットノズルスプレー装置の開口面、前記ガスノズルのガス流路壁及び前記塗布液ノズルの液流路壁から選ばれる少なくとも1つが、表面撥水化処理されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
  4. 前記水系塗布液Bが、前記多孔質インク吸収層に対する機能付与化合物を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
  5. 前記機能付与化合物が、親水性バインダーの架橋剤、画像安定剤、水溶性多価金属化合物、媒染剤及びpH調整剤から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
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