JP2006044040A - インクジェット記録材料及びその製造方法 - Google Patents

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洋一 斎藤
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Abstract

【課題】 高精度に均一な膜厚の薄膜を高速に、乾燥負荷低く実現させ、インク吸収層を構成層として、この上に薄膜のオーバーコート層を設ける際に、塗布の均一性を高め、強いては塗布液のロスを低減して生産性を高め、かつ、装置周辺の汚染の低減にもつながる製造方法及びその製造方法により諸特性に優れたインクジェット記録材料の提供。
【解決手段】 支持体上に少なくとも1層の親水性バインダーと無機微粒子を含有する水系塗布液を塗布してなる多孔質層上に、添加剤含有溶液をスロットノズルスプレー装置を用いて前記支持体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって液滴状に噴霧することにより塗布するインクジェット記録材料の製造方法において、前記添加剤含有溶液の塗布直前に前記支持体に加電し前記多孔質層の表面に電荷付与して得られたことを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、塗布液を液滴として噴霧することにより製造されるインクジェット記録材料及びその製造方法に関する。
従来から、支持体上に塗布液を塗布する方法は種々知られている。例えば、搬送される長尺の帯状支持体(以下、単に支持体ともいう)上に塗布液を高精度に塗布する方法としては、Edward Cohen,Edgar Gutoff著「MODERN COATING AND DRYING TECHNOLOGY」で述べられているように、各種の方法が提案されており、例えば、ディップ塗布法、ブレード塗布法、エアーナイフ塗布法、ワイヤーバー塗布法、グラビア塗布法、リバース塗布法、リバースロール塗布法、エクストルージョン塗布法、スライドビード塗布法、カーテン塗布法等が知られている。そして、これらの塗布方法において、支持体の幅方向に高精度に均一な乾燥膜厚を得るために、塗布時の(塗布後、乾燥前の)塗布膜厚精度、均一性等に注意を払い、塗布を行っている。
これらの塗布法の中で特に、流量規制型のダイスを有する塗布装置は、高速、薄膜、多層同時塗布が可能であり、その特徴により写真感光材料、インクジェット記録材料、磁気記録材料等の塗布装置として広く用いられている。
その好ましい一例としては、Russell等により米国特許第2,761,791号明細書に提案されたスライドビード塗布装置、あるいはエクストルージョン塗布装置等が広く用いられている。また、カーテン塗布装置もダイスを有する流量規制型の塗布装置であり、同様に広く用いられている。
例えば、このスライドビード塗布装置の場合、塗布装置先端と搬送される支持体との間に、ビードと称する塗布液溜まりを形成し、このビードを介して塗布が行われる。また、カーテン塗布装置の場合、塗布装置からカーテン状の塗布液膜を自由落下させ、落下先に基材を位置させることにより塗布が行われる。これらは、高精度に均一な乾燥膜厚を得るのに大変有用である。
しかし、これらダイスを有する塗布装置による塗布は、その原理上、ビードやカーテン膜等、塗布装置と支持体との間を連続的に塗布液でつなぐことになる。支持体上に均一な厚さの塗布膜を形成するためには、塗布装置からの塗布液流量を常に一定にし、途切れがあってはならない。すなわち、塗布膜を連続的に形成するため、また、塗布膜厚を高精度で一定にするために、所定量以上の塗布液を要することになる。よって、これらの方式において、塗布装置から吐出される塗布液量を極端に少なくすることは、均一な膜厚を得る目的からすると、困難を伴う。
そのため、塗布層あたりの溶質量が少ない、つまり、塗布液を塗布し乾燥する前の湿潤膜厚がごく薄い膜(例えば、1〜50μm程度)を形成する場合には、塗布液の溶媒量を増やし、塗布液全体を増量することが必要となる。特に塗布液の粘度が低い場合には、支持体上で流れてしまうため、安定な塗布膜を形成することが難しく、塗布液量をますます増やさねばならない。
しかし、溶媒量を増やすと、塗布後、溶媒を飛ばして乾燥させる負荷(乾燥負荷)が大きくなり、生産効率上好ましくない。また、溶媒量が多かったり、乾燥に時間がかかると、当該塗布層の下に別の構成層が存在する場合には、該構成層に当該塗布層の塗布液が過度に浸透、拡散し、悪影響を及ぼす場合がある。
よって、塗布膜厚の精度高く、乾燥負荷が少なく、生産性高く薄膜を設けることが可能な塗布方法が望まれている。
このような高精度に均一な塗布膜厚の薄膜を、構成層上に設けることが必要となる塗布製造物としては色々あるが、例えば、下記に述べるインクジェット用の空隙型記録材料等が挙げられる。
インクジェット記録方法に用いられる記録材料は、インク吸収層が、例えば普通紙のように紙そのものであるものや、コート紙のように吸収体を兼ねる基材の上にインク吸収層を塗設したもの、あるいは樹脂被覆紙やポリエステルフィルムのような非吸収性の支持体の上にインク吸収層を塗設したもの等がある。
中でも、非吸収性基材の上にインク吸収層を塗設したタイプの記録材料は、基材の表面平滑性が高く、うねりが少ない等の理由から、光沢感、つや感、深み等銀塩写真のような高品位の質感を求められる出力に好ましく用いられる。更に、高い光沢感やつや感がある光沢型記録材料としては、非吸収性基材の上に、インク吸収層としてポリビニルピロリドンやポリビニルアルコール等の水溶性バインダーを塗設した膨潤型記録材料や、インク吸収層として顔料あるいは顔料とバインダーで微細な空隙構造を形成し、この空隙にインクを吸収させる、いわゆる空隙型記録材料が用いられる。
空隙型記録材料において、この空隙構造を有する多孔質インク吸収層は、主に親水性バインダーと微粒子とで形成されており、微粒子としては無機または有機の微粒子が知られているが、一般的には、より微粒子で光沢性が高い無機微粒子が用いられる。そして、この微粒子に対して比較的少量の親水性バインダーを使用することにより、微粒子間に空隙が形成されて多孔質インク吸収層が得られる。
一般に、上記の多孔質インク吸収層に対しては、さまざまな特性が要求され、これら種々の特性を改良するために、以下に記載の各添加剤の使用が提案されている。
1:高い発色性や光沢を達成するために、約0.1μm程度以下の多孔質を形成する安定な微粒子
2:微粒子の保持力が高く、かつインク吸収速度を低下させないための低膨潤性親水性バインダー
3:インク吸収速度や被膜の耐水性を改良するための親水性バインダーの架橋剤
4:最適なドット径を達成するため、表面に分布した界面活性剤や親水性ポリマー
5:色素の滲みや耐水性を改良するためのカチオン性の定着剤、多価金属化合物
6:色素画像の光や酸化性ガスなどによる退色性を改良するための退色防止剤
7:白地を改良するための蛍光増白剤や色調調整剤(赤み剤や青み剤など)
8:表面の滑り性を改良するためのマット剤や滑り剤
9:多孔質インク吸収層に柔軟性を持たせるための各種のオイル成分やラテックス粒子あるいは水溶性可塑剤
10:色素の滲みや耐水性あるいは耐候性を改良するための種々の無機塩類(多価金属塩)
11:多孔質インク吸収層の膜面pHを調整するための酸やアルカリ類
等が挙げられる。
しかしながら、上記の種々の目的で使用する各添加剤を多孔質インク吸収層を形成する塗布液に添加した場合、多くの添加剤において、製造工程の安定性の観点から種々の制約を受けるケースが多い。
そのような問題点としては、例えば、
A:微粒子や添加剤同士の間で凝集が生じたり、塗布液中で相分離を起こすことにより、ムラのない安定した塗布が困難になる、光沢が低下してマット化する、塗布液のポットライフが短くなり、生産効率が大幅に低下する
B:調製した塗布液を長時間停滞させると、塗布液が大きく増粘してゲル化したり、逆に著しく減粘して、支持体上で塗布液が流れやすくなり、その結果安定した塗布が困難となり、均質な塗膜が得にくくなる
C:多孔質インク吸収層を塗布乾燥する際に、表面のひび割れが増大する
D:多孔質インク吸収層の空隙率が低下する
等が挙げられる。
上記のA項やB項に係る問題は、主に添加剤の電気的な相互作用に基づく場合が多く、例えば、カチオン性の定着剤がその主因となり、アニオン基を有する種々の原材料と反応して、様々な問題を引き起こす結果となる。
一方、上記C項やD項に係る問題は、主に支持体が非吸水支持体に用いた場合に顕著に発生し、問題を引き起こす。すなわち、吸水性を有していない支持体上に空隙を有する多孔質層を設けたインクジェット記録材料の場合では、インクジェット記録する際に、全てのインクをインク吸収層である空隙層が一時的に保持する必要が有るが、そのためには高い空隙容量を持たなければならず、その結果、厚い塗膜をしかも高い空隙率で形成させる必要がある。
上記課題の解決方法の一つとして、多孔質インク吸収層の塗布液には前記添加剤を含有させず、支持体上に構成層としてまず塗布し、減率乾燥前に前記添加剤を含有する塗布液を前記構成層上部に塗布する、いわゆるオーバーコート層を設ける方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。オーバーコート層の塗布液に含有される前記添加剤は、予め設けられた構成層(例えば、多孔質インク吸収層)に適度に浸透し、上記問題を起こすことなく好ましい機能を付与することが期待される。つまり、機能賦与化合物として働くことが期待される。もともと機能賦与化合物を多孔質インク吸収層に含浸させる目的であるから、オーバーコート層自体はごく薄いものでよく、また、ごく薄い方が好ましい。更に、親水性バインダーと微粒子を含有する多孔質層を形成する水溶性塗布液を塗布し、塗膜の含水量が乾燥後の多孔質層の空隙容量以下になった後、オンラインで添加剤含有溶液をオーバーコートするインクジェット記録材料が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、構成層とオーバーコート層の2層を設ける場合、まず前記構成層を塗布乾燥してから、一旦ロールに巻き取り、再度ロールから繰り出してオーバーコート層を塗布乾燥する2工程(ツーライン)で行うと、製造コストが大幅に増大する問題がある。また、構成層を形成した後、しばらく経時すると、温度履歴や時間のばらつきにより、品質安定性に問題が生じるだけでなく、オーバーコート層を設ける際、塗布ムラが生じやすい等の問題が生じやすい。
この結果、オーバーコート層の塗布により、更にインク吸収層表面に多量の溶媒(水や有機溶媒)が付与される結果となり、乾燥時間や乾燥ゾーンの延長によるコストアップ、乾燥能力が規定されている場合には塗布速度の低下が必然となる。更に、厚膜のオーバーコート層を塗設することにより、乾燥までの間にインク吸収層への拡散、浸透の度合いが大きく、また、完全に乾燥するまでに時間がかかるため、多孔質インク層の塗布液に直接添加剤を含有させたような影響があり、オーバーコート層の利点を十分に発揮できない。
一方、上述のインクジェット記録材料において、滲み耐性あるいは耐水性の改良を目的として、架橋剤として水溶性の多価金属イオンを予めインクジェット記録材料中に添加しておき、インクジェット記録時に染料を凝集固着させて不動化させる方法が知られている。
例えば、多価金属化合物として、ジルコニウム原子やアルミニウム原子を含有する化合物をインクジェット記録材料に用いることは既に知られている。例えば、特開昭55−53591号、同55−150396号、同56−86789号、同58−89391号および同58−94491号の各公報には、水溶性染料と結合して難溶性塩を形成する水溶性多価金属塩を添加したインクジェット記録材料が開示されている。また、特開昭60−67190号、同61−10484号、および同61−57379号の各公報には、カチオン性ポリマーと水溶性多価金属塩を添加したインクジェット記録材料が開示されている。また、特開昭60−257286号公報には、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物を含有したインクジェット記録材料が開示されている。
通常、これらの多価金属化合物、とりわけアルミニウム原子を含む化合物は、記録材料表面に印字した後、高湿下での色剤の滲み防止や耐水性を向上させる目的でインク吸収層に添加されているが、インク吸収層に多量に添加した場合には、調製した塗布液を長時間停滞させると、塗布液が大きく増粘してゲル化したり、逆に著しく減粘して基材上で塗布液が流れやすくなるため、安定した塗布が困難となり、均質な塗膜が得にくくなる。あるいは、多孔質インク吸収層を塗布乾燥する際に表面のひび割れが増大する等の問題を引き起こすため、自ずとその添加量に制限を受けているのが現状である。
これら課題を解決する手段の1つとして、特願2002−49715号公報でスロットノズルスプレー装置によるオンラインオーバーコート法を出願している。この方法によれば、上記のような塗布ムラや塗布欠陥を生ずることなく、効率的に極薄膜のオーバーコート層を設けることができる。しかしながら、塗布液を液滴上にして噴霧するため、粒状ムラ等の塗布欠陥が発生しやすく、また液滴が飛散しやすいため、収率の低下、周囲の汚染といった課題があった。
また、従来より、写真用感光材料の分野においては生産性向上のための高速塗布化のため、感光層の塗布に先立ち、塗布直前の支持体に電荷を付与し濡れ性を向上させる技術が知られていた。
例えば、古くは特公昭46−27423号公報や特公昭49−7050号公報には、接液部に電界や磁界をかけて塗布する方法が開示されており、特公平6−9671号、特開平5−61151号、特開平9−1029号、特開平11−128804号、特開2000−93861号の各公報には、スライドビード塗布やカーテン塗布における高速薄膜塗布のための改良技術が開示されていた。
そして、インクジェット記録材料の分野においてもインク吸収層を塗布する直前に支持体に加電処理を行い、塗布高速化がはかれる技術が開示されていた(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。
しかし前述のごとく、オンラインで多孔質のインク吸収層上に薄膜のオーバーコート層をスロットノズルスプレー装置により設けるに際し、多孔質層表面に電荷付与することで塗布均一性が高まり、記録材料として優れた諸特性が得られることは予想し得なかった。
特開平11−115308号公報 特開平11−192777号公報 特開2002−331745号公報 特開平11−309940号公報 特開2003−103921号公報
スロットノズルスプレー装置を用いて、インク吸収層を構成する例えば多孔質層に、オーバーコート液を液滴として噴霧してインクジェット記録材料を製造する方法に関しては、特願2002−49715号、同2002−253172号、同2002−272943号、同2002−272944号の各公報等に、スロットノズルスプレー装置を用いたインクジェット記録材料の製造条件の詳細について記載がなされている。
また、スロットノズルスプレー装置は多孔質インク吸収層の塗布工程ラインにおいて、減率乾燥から乾燥終点までに位置されることが好ましい。従って電荷の付与は、基本的にはそれ以前の塗布ライン中で行えば良いが、本発明の効果を有効に発揮するためには、スロットノズルスプレー装置で塗布液を噴霧する際に、連続搬送する多孔質インク吸収層を設けた支持体をバックアップロールで支持し、該バックアップロール上で電荷を付与して塗布するのが好ましい。
多孔質インク吸収層上に電荷を付与する方法は、公知の方法のいずれでも良いが、バックアップロール上で電荷を付与する方法としては、(1)コロナ放電による方法(2)バックアップロールへの直流電圧印可方法があり、(1)についてはワイヤー状の電極を用いる方法、(2)についてはセラミック等の高誘電性絶縁物で被覆されたローラーを用いる方法が知られている。しかし、コロナ放電は放電を発生させるための電位が高く、またオゾンの発生や均一処理が難しいといった問題があるため、(2)の方法が好ましい。(2)の方法については、特開平9−1029号公報、特開2000−93881号公報等に記載されている。
上記方法にてバックアップロールへの印可電圧は0.3〜2KVの範囲で制御されるが、0.4〜1.5KVが好ましく、0.5〜1.0KVが特に好ましい。
電荷付与によりオーバーコート液の多孔質層への塗布の均一性が向上する理由は明確ではないが、表面が分極してスプレーの液滴の吸着力が強くなり、付着効率が上がるためと思われる。また、前述のごとく乾燥終点以降であることから、多孔質層及びそれが設けられた支持体の温度も高くなっており、全体が分極しやすくなり、より静電吸着力が加速されたものと推定される。
前記印可電圧が高いほど静電吸着力は強くなると予想されるが、2KVより大きい電圧ではかえって電荷ムラが生じオーバーコートの均一性が逆に低下し、塗布ムラが発生することがある。
しかしながら、その塗布方式の原理上、前述のような課題が少なからず発生してしまうことが判明した。
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、オーバーコート層となる添加剤溶液の塗布直前に、インク吸収層を構成する多孔質層表面に電荷付与することで、改善されることを見いだした。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高精度に均一な膜厚の薄膜を高速に、乾燥負荷低く実現したインクジェット記録材料の製造方法及びインクジェット記録材料を提供することにあり、特に、インク吸収層を構成層として、この上にスロットノズルスプレー装置により薄膜のオーバーコート層を設ける際に、塗布の均一性を高め、強いては塗布液のロスを低減して生産性を高め、かつ、スプレー装置周辺の汚染の低減にもつながる製造方法及びその製造方法により諸特性に優れたインクジェット記録材料を提供することである。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(請求項1)
支持体上に少なくとも1層の親水性バインダーと無機微粒子を含有する水系塗布液を塗布してなる多孔質層上に、添加剤含有溶液をスロットノズルスプレー装置を用いて前記支持体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって液滴状に噴霧することにより塗布するインクジェット記録材料の製造方法において、前記添加剤含有溶液の塗布直前に前記支持体に加電し前記多孔質層の表面に電荷付与して得られたことを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
(請求項2)
前記多孔質層の表面に電荷付与するために塗布直前のバックアップロールに直流電圧を印可することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録材料の製造方法。
(請求項3)
前記バックアップロールに直流電圧を印可するときの電位が0.3〜2kVであることを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録材料の製造方法。
(請求項4)
前記添加剤含有溶液がpH調整剤、界面活性剤、親水性バインダーの架橋剤、画像安定剤及び水溶性多価金属化合物から選ばれる少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット記録材料の製造方法。
(請求項5)
請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット記録材料の製造方法により製造されることを特徴とするインクジェット記録材料。
本発明によれば、多孔質のインク吸収層を構成層として、この上にスロットノズルスプレー装置により薄膜のオーバーコート層を設ける際に、前記多孔質表面に電荷付与することで塗布の均一性を高め、強いては塗布液のロスを低減して生産性を高めかつスプレー装置周辺の汚染の低減にもつながる製造方法及びその製造方法により諸特性に優れたインクジェット記録材料を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
はじめに、本発明の塗布装置であるスロットノズルスプレー装置について、図を交えてその詳細を説明する。ただし、本発明の塗布装置は、ここで例示する図で示す構成のみに限定されるものではない。
本発明の塗布方法は、被塗布体を搬送し、該被塗布体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって、塗布液を供給する塗布液ノズルと、該塗布液ノズルの開口端に近接してガスを噴出するガスノズルと、塗布液ノズル内に塗布液流路を構成するシムを有するスロットノズルスプレー装置を用い、前記ガスを前記塗布液に衝突させて液滴を形成して噴霧を行うことにより、前記被塗布体上に塗布液を塗布する。
ここで、本発明でいう被塗布体とは、本発明の塗布方法を用いて塗布液を液滴状にし、噴霧することで、塗布を行う被塗布対象物のことであり、その形態は問わないが、長尺の帯状支持体や、該帯状支持体上にすでに構成層、例えば、インク吸収層等を有するインクジェット記録材料であることが本発明の効果を十分に奏することができるため好ましいが、これに限られるものではない。被塗布体は、板状の支持体であっても、立体形状を有するものであっても構わず、被塗布部が面積を有していればよい。
また、被塗布体は、塗布装置の塗布液ノズルに対して相対的に移動させ(搬送させ)、連続的に塗布製造を行う。
塗布装置の塗布液ノズルは、少なくとも被塗布体の塗布幅(被塗布体の搬送方向と交差する方向における前記被塗布体の被塗布部の長さのことを指す)に対応する長さを有し、被塗布体の搬送方向と交差するように配置させることにより、塗布装置に対して被塗布体を搬送させるだけで、被塗布体上に塗布液を塗布する。被塗布体が長尺の帯状支持体である場合、帯状支持体の長手方向に帯状支持体自身を搬送させ、塗布装置の塗布液ノズルを、帯状支持体の幅手方向に(長手方向と直行する方向に)位置させることが好ましい。塗布装置に対し、被塗布体を一方向に搬送し、塗布液を塗布幅にわたって液滴として噴霧することにより、ごく薄い塗布膜を、乾燥負荷なく、膜厚均一性高く塗布できる。
また、塗布装置の塗布液ノズルから噴霧される液滴は、塗布幅方向において、
1:液滴径分布が均一であること
2:液滴が被塗布体上に落ちる面積範囲が、搬送方向に対し、その落下長さが均一であること
3:被塗布体上に落ちる角度が均一であること
4:被塗布体上に落ちる衝突速度が均一であること
によって、より塗布膜厚の均一性を確保することが可能となる。
塗布幅方向において液滴径分布が均一であるとは、具体的には、塗布幅方向で、平均液滴径の変動が、±20%以下であることを言う。より好ましくは±10%以下である。
平均液滴径の変動は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、計算することが可能である。具体的には以下の測定法により行う。
まず、塗布液を液滴として噴霧するスロットノズルスプレー装置等のスプレー装置から、塗布液を噴霧させ、その噴霧状態を安定させる。噴霧開始直後では、塗布液の吐出量やガス圧が一定せず噴霧状態が安定しないので、所定の時間噴霧を続けることで安定させることができる。
次に、噴霧状態が安定した液滴群に対し、レーザー回折式粒度分布測定装置としてスプレーテックRTS5123(マルバーン社製)を用い、塗布幅方向において等間隔で5ヶ所、平均液滴径を測定する。被塗布体に落ちる液滴群の塗布幅方向の両端(塗布端)は、通常、噴霧濃度が極端に低くなるため有効塗布幅にはカウントしない。よって、有効塗布幅の両端を測定点の両端2点とする。具体的には、塗布端から1cm内側に入った所を測定点の両端2点とし、その内側の等間隔3点を加えて計5点とし、これを測定点とする。この5ヶ所で測定された平均液滴径から、変動率を計算する。
尚、平均液滴径は、スプレーテックRTS5123を用いれば簡単に測定できるが、前記測定箇所における液滴群の各液滴径を測定し、液滴径を横軸にとって積算プロットしたときに、体積パーセントで50%の位置にくる液滴径のことをさす。
また、液滴が被塗布体上に落ちる面積範囲の搬送方向の長さが均一であるとは、塗布幅方向で、前記長さの変動が、±10%以下であることを言う。より好ましくは±5%以下である。
また、被塗布体上に落ちる液滴の広がり角度が均一であるとは、塗布幅方向で、塗布装置の塗布液ノズルを基点として、被塗布体上に落ちる液滴の落下角度の変動が、±10%以下であることをいう。より好ましくは±5%以下である。
また、被塗布体上に落ちる液滴群の空間密度が均一であるとは、塗布幅方向で、被塗布体上に落ちる液滴群の空間密度の変動が、±10%以下であることを言う。より好ましくは±5%以下である。
上述のような均一な噴霧を達成するため、本発明では、スロットノズルスプレー装置を用いることが特徴である。スロットノズルスプレー装置とは、塗布液を吐出する塗布液吐出部を塗布幅方向に複数有する。各塗布液吐出部は、塗布幅方向に一列に並んでいても、千鳥に並んでいてもよい。そして、前記塗布液吐出部に近接してガスを噴出するガスノズル孔を有し、ここから噴出されるガスを前記塗布液ノズル孔から吐出された塗布液に衝突させて液滴を形成する機構を有する。
本発明に好ましく用いることのできるスロットノズルスプレー装置としては、例えば、特開平6−170308号公報に記載されているものを適用することが可能である。特開平6−170308号公報では、このスロットノズルスプレー装置を用いて「使い捨ておむつ」の接着剤を繊維上に塗布する例が開示されているが、極めて高粘度の塗布液(接着剤)をスロットノズルスプレー装置の塗布液ノズル(塗布液吐出部)からファイバー状に落下させるものであり、塗布装置と被塗布体(繊維)とが、前記ファイバー状の塗布液でつながっている。つまり、本発明の塗布方法のように不連続な液滴として被塗布体上に付与するものではない。塗布幅にわたって設けられた複数の塗布液ノズルおのおのから平行に落下するファイバー状塗布液が、前記塗布液ノズルに近接して設けられたガスノズルから噴出されるガスにより攪乱され、垂直落下することが妨げられ、被塗布体上のある面積範囲内でランダムに着地するのみである。ガスノズルなしでは、ファイバー状の塗布液がそのまま垂直落下することになるが、ガスノズルからガスを噴出することで、より広範囲に塗布液を分散して着地させることが可能となっているが、ラーメンを広げて載せただけのような塗布層となり、インクジェット記録材料の例で述べたような被塗布体全面にわたり、厳密に塗布膜厚の均一性が求められる塗布ではない。また、接着剤を塗布するものであるから、形成される塗布膜も極めて厚いものである。
また、特開平5−309310号公報に開示されるスロットノズルスプレー塗布装置も、本発明に好ましく用いることができる。特開平5−309310号公報で開示されている例は、上述の特開平6−170308号公報と同様に、ホットメルトタイプの接着剤を被塗布体上に塗布するものである。これも極めて高粘度の塗布液(接着剤)であるために、同様に塗布液を被塗布体表面にファイバー状に、連続的に、吐出する方法であり、厳密な膜厚均一性はなく、かつ形成する塗布膜も極めて厚膜なものである。
このようなスロットノズルスプレー装置を用いて、上述のごとく塗布幅にわたって噴霧状態の均一性を高める方法としては、塗布液の粘度を比較的低くすること、ガスノズルから噴出するガス圧を高くすることにより可能である。また、スロットノズルスプレー装置の塗布液ノズル開口端の面積を小さくすること、該開口端のピッチを狭くすることなどにより、噴霧の均一性を高めることができる。
塗布液の粘度としては、好ましくは0.1〜250mPa・s、より好ましくは0.1〜50mPa・s、更に好ましくは0.1〜20mPa・sであり、このような低粘度の塗布液をスロットノズルスプレー装置に適用することで、塗布幅にわたって均一な液滴の噴霧が可能である。
また、塗布幅にわたって均一な液滴の噴霧を行うには、塗布液の表面張力を20〜70mN/mに調整すること、好ましくは20〜50mN/m、更に好ましくは20〜30mN/mとすることである。
また、スロットノズルスプレー装置等を用いて、ガスを塗布液に衝突させて液滴を形成するときのガス内圧は、10kPa以上、好ましくは20kPa以上、更に好ましくは50kPa以上とすると均一な噴霧が行い易い。ガスの流量としては、3.5CMM/m以上、好ましくは7CMM/m以上、更に好ましくは10CMM/m以上である。
上記手段を用いて、塗布幅にわたり、連続ファイバー状ではなく、不連続な液滴状に飛散させることにより、塗布液が少量であっても、均一に、塗布液を被塗布体上に供給できる。結果として、塗布膜厚を均一にすることができる。また、不連続な液滴の被塗布体上への供給であって、塗布液量が少なくなるので、乾燥負荷もかからない。
次いで、本発明の塗布装置に用いるスロットノズルスプレー塗布装置の具体的な形態について、説明する。
図1は、本発明の塗布方法を説明するための概略図である。図中、1はスロットノズルスプレー装置(全容は不図示)のスロットノズルスプレー部、1aは塗布液吐出部、9は長尺の帯状支持体タイプの被塗布体である。
被塗布体9は、被塗布体9の長手方向である図中の矢印の搬送方向に、図示しない搬送手段により一定の速度で搬送される。スロットノズルスプレー部1の塗布液ノズル3は、搬送方向と直交する方向である被塗布体9の幅手方向に長さを有し、被塗布体9の塗布面に対向するように配置されている。塗布液ノズル3からは、塗布液が液滴状に噴霧され、搬送される被塗布体9上に液滴が着地することにより塗布が行われる。このとき被塗布体9の幅手方向の塗布液が付着する長さが図中矢印で示した塗布幅に相当する。図1では、塗布幅は、被塗布体9の幅手方向の長さよりも短くなっているが、同じでももちろん構わない。
図2は、図1で説明したスロットノズルスプレー部を含むスロットノズルスプレー装置の一例を示す概略断面図である。
図2において、スロットノズルスプレー部1には、ガスポケットAを有する1対のガスノズル2と塗布液ポケットBを有する塗布液ノズル3を有している。塗布液は、ファイバー状にならず液滴を形成できる粘度(0.1〜250mPa・sが好ましい)を有する、例えば、機能賦与化合物含有溶液などの塗布液を調製釜4に入れ、ポンプ5、流量計6を経て、塗布液ポケットBに供給されて、塗布液ノズル3に導かれる。一方、ガスノズル2へは、加圧空気源7より、弁8を介して、ガスポケットAに加圧空気が供給される。塗布に際しては、塗布液ノズル3より規定の塗布量となるように調製釜4より塗布液を供給すると同時に、一対のガスノズル2より加圧空気を吹き付け、塗布液を液滴状にして、被塗布体9上に噴霧、吐着させるものである。本発明の塗布方法においては、塗布液を、ファイバー状ではなく、微細な液滴として噴霧することができることが大きな特徴である。塗布液を微細な液滴として、被塗布体9表面に供給することにより、極めて均一性の高い薄膜を、乾燥負荷なく、高速で形成することができる。
次に、図3を用いて、スロットノズルスプレー部とそこで形成される液滴の形成及び飛翔状態を説明する。
図3において、塗布液ノズル3より吐出された塗布液は、塗布液ノズル3の両サイドに近接して設けられたガスノズル2より供給される圧縮空気により、細分化、液滴化され球形に近い液滴粒子10となり、飛翔し、被塗布体9表面に均一に着弾する。図3では、被塗布体9は、基材9a上にインク吸収層9bを構成層として塗布したモデルで示してある。被塗布体9上に着地する塗布液の液滴粒子の面積範囲は、常に均一であることが好ましいが、特に、搬送方向における長さ(図中、落下長さと記載)が塗布幅にわたって均一であることが好ましい。また、塗布液ノズル3の開口端を基点として被塗布体に対し、噴霧される液滴群の広がり角度θは、塗布幅にわたって均一であることが好ましい。
図4および図5は、図3のスロットノズルスプレー部1を塗布液吐出部1a側から見た概略図である。塗布幅方向に配置された複数の塗布液ノズル3の開口端とガスノズル2の開口端とを示している。
図4に示す塗布液吐出部1aは、円形の開口端を有する塗布液ノズル3が、塗布幅方向に21個並んでいる。そして、各塗布液ノズル3の開口端の両サイドに近接して、ガスノズル2が設けられている態様である。各塗布液ノズル3は、それぞれ等間隔に配列されており、同様に各ガスノズル2も等間隔に配列されている。ここでは、一つの塗布液ノズル3と対応する2つのガスノズル2が塗布幅方向と直行する方向に一直線上に配置されているが、塗布液ノズル3とガスノズル2とが、互い違いに、千鳥状に配置されていても構わない。また、塗布液ノズル3の開口端またはガスノズル2の開口端の間隔(ピッチ)は一定であることが好ましい。
図5に示す塗布液吐出部は、図4のものとは別の形態のものである。矩形の開口端を有する塗布液ノズル3が塗布幅方向に11個並んでいる。そして、塗布幅にわたって、全部の塗布液ノズル3に対し、その開口端の両サイドに近接して、スリット状のガスノズル2が一つずつ設けられている。この形態においても、複数の矩形の塗布液ノズルの開口は等間隔に配列されている。
図6は、図5のタイプの塗布液吐出部を有するスロットノズルスプレー部1の分解斜視図である。図中、1cおよび1eは、所定の距離を有する塗布液用スリットを形成し、このスリットに塗布液を流下させるためのダイブロックである。片方のダイブロック1cは、図示しない塗布液供給源から供給される塗布液を受け入れ、塗布液ポケットBまで連通する塗布液供給管61を有している。塗布液ポケットBに滞留した塗布液は、ダイブロック1cおよび1eの間に形成された塗布液用スリットを流下することになる。1dは、ブロック1cおよび1eに挟まれたシム(詰め金)であり、2つのダイブロック1cおよび1eの間隙に形成された塗布液用スリットを垂直方向に分断して塗布幅方向に複数の塗布液ノズルを形成する。
また、1bおよび1fはガスブロックで、ダイブロック1cおよび1eのそれぞれとの間隙に圧縮ガスが流通するガスノズルを形成する。このときのガスノズルは塗布幅方向に延びるスリット形状である。図示しないエア供給源から圧縮エアがそれぞれのガスブロックのエア供給管81に供給され、一旦塗布液ポケットBに滞留した後、ダイブロックとガスブロックとの間隙に形成されたガスノズルを圧力をもって流下する。
上記シム1dの間を流下してきた塗布液および2つのガスノズルを流下してきた圧縮エアは、スロットノズルスプレー部1の底部である塗布液吐出部において衝突し、液滴を形成して、被塗布対象物である基体上に飛翔する。
本発明に用いられるスロットノズルスプレー装置において、塗布液ノズル3の開口端の形状としては、円形でも矩形でも良く、そのサイズとしては50〜300μmの範囲で用いることができ、それらのピッチ(間隔)は、100〜3000μmとすることが好ましい。一方、ガスノズルの開口端の形状としては、円形でも塗布幅に延びるスリット状でもよく、このときの円形での直径、あるいはスリット間隔としては、概ね50〜500μmの範囲で用いることができる。塗布液ノズルに対するガスノズルの角度としては、5〜50degの範囲が好ましい。また、スロットノズルスプレー部の塗布液吐出部と基体間の距離は、概ね2〜50mmの範囲で、適宜選択することができる。
塗布液ノズルからの塗布液の供給量は、所望の塗布膜厚、塗布液の濃度、塗布速度等により一概には規定できないが、概ね被塗布体上の塗設量として、1〜50g/m2の範囲が好ましい。1g/m2未満では、安定で均一な塗布膜を形成するのが難しく、逆に50g/m2を越えると乾燥負荷等に影響が表れ、本発明の効果を有効に発揮させることが難しくなる。塗布液の湿潤膜厚としては、1〜50μmであることが特徴であり、好ましくは5〜30μmである。
一方、ガスノズルから噴出されるガスは、塗布に適した気体であればよく、一般にはエア(空気)を用いるが、ガスの供給条件としては、概ね1〜50CMM/m(塗布幅あたりの流量)の範囲が好ましく、その時のガスノズルでの内圧としては、塗布の均一性の観点から、10kPa以上であることが好ましい。
エアー線速度vは、100〜400m/sであることが本発明の目的を顕著に達成できるという観点において好ましい。特に、vが100m/s以上であれば塗布乾燥性の観点で好ましく、また400m/s以下であれば塗布収率の観点で好ましい。
本発明におけるエアー線速度とは、ガスノズル出口直後におけるエアー線速度であり、レーザードップラ風速計等により測定して求めることができる。また、塗布収率とは、被塗布体上に塗布された塗布液量/供給した全塗布液量×100(%)であり、質量法により算出する。すなわち、被塗布体上に塗布された塗布液量は、被塗布体上への塗布前後の質量変化から算出し、供給した全塗布液量は塗布液ノズルへ送液、供給した質量、すなわち、送液流量×塗布時間より求めることができる。
また、このときの塗布液の液滴の平均粒径は、10〜70μmであることが本発明の目的を顕著に達成できるという観点において好ましい。本発明でいう液滴の平均粒径とは、塗布ギャップ(塗布液ノズルと被塗布体間の距離L5)位置における平均粒径であり、レーザー回折方式粒径測定機、例えば、MALVAN社製のRTS114により測定して、求めることができる。
図7は、上記説明したようなスロットノズルスプレー装置を配置した塗布製造ラインの一例を示している。ここでは、被塗布体としては支持体上に構成層を塗布したものを用いている。前記構成層を塗布後、乾燥する工程内に、複数(多段で)スロットノズルスプレー装置を配置した。このように同一ライン上で、構成層の形成と本発明によるオーバーコート層(最表層)の塗布とを行うことをオンライン塗布と呼んでいる。
図示しない搬送手段によって支持体の元巻きから、支持体が搬送ローラ21を通過し、更にバックアップロール22の位置にて反転搬送される過程で流量規制型のスライドビード塗布装置20より供給される多孔質インク吸収層(構成層)用の塗布液が塗布される。この多孔質インク吸収層用の塗布液は、親水性バインダーを含有しているので、冷却ゾーン30で一旦冷却して固定する。この支持体上に構成層を有する被塗布体9は、乾燥工程に搬送される。乾燥工程では、エアーを吹き出して塗布膜表面と非接触で反転搬送させるリバーサー23と被塗布体9の裏面に接触して反転搬送させる通常の搬送ロール24とを交互に設けて、被塗布体9を蛇行搬送させている。この乾燥工程においては、温風を吹き付けられて乾燥される(温風吹きつけ手段は不図示)。この乾燥工程の途中、好ましくは減率乾燥以降の位置に、2つのスロットノズルスプレー装置1によって本発明の上記説明したような液滴噴霧による塗布が行われる。2つのスロットノズルスプレーのうち、少なくとも1つは、乾燥終点以降の位置に載置されることが乾燥性の観点で好ましい。ここでは2つのスロットノズルスプレー装置を使用したが、1つでももちろんよく、3つ以上でもかまわない。多段に分けて液滴噴霧による塗布を行うことにより、乾燥負荷がより少なくなると同時に、膜厚均一性も高まることがわかった。
本発明においてスロットノズルスプレー装置で塗布液を噴霧する前に電荷を付与することが必要だが、前述のごとく連続搬送する多孔質を設けた支持体をバックアップロール25、26で支持し直流電源27、28で該バックアップロールの表面に電荷印可するのが好ましい。ここでバックアップロール25、26は一般に使われている金属ロールが使用可能だが、更に、被塗布体への接触表面にはポリマーまたはセラミックの被覆加工が施されていると感電等の危険が避けられるような利点が生ずる。
本発明の塗布方法を用いて、被塗布体上に薄膜を形成する際の塗布速度としては、用いる塗布液の種類、濃度、溶媒含有量、乾燥能力等により変化し、一概に規定することはできないが、塗布速度として、50〜500m/minであることが好ましく、より好ましくは100〜300m/minである。
本発明の塗布方法を用いて、少なくとも1層の構成層を支持体上に有する被塗布体上に、塗布を行う場合の塗布時期としては、支持体上に形成した構成層の減率乾燥以降、好ましくは乾燥終点以降である。また、前記構成層をスライドビード塗布等を用いて行う塗布工程と本発明のスロットノズルスプレー装置を用いる等により行う塗布工程は、同じ製造ライン上で、連続して行うことが好ましい(オンライン塗布と言う)。本発明にかかる塗布方法は、少量の塗布液であっても塗布が可能であるため、前記構成層が完全に乾燥していない状態で行っても乾燥負荷が少なく、前記構成層への悪影響も少ない。また、前記構成層が完全に乾燥する前に本発明にかかる塗布を行う方が、かえって構成層のひび割れ等のデメリットを防ぐことも出来ることがわかった。
本発明の塗布方法は、乾燥負荷が少ないので、前記構成層の乾燥工程内において実施することができる。乾燥工程は、通常は、湿潤状態の塗布膜を連続的に搬送しながら、その表面あるいは裏面より、特定の温度及び湿度条件に制御された乾燥風を吹き付けて乾燥させることが好ましい。
湿潤状態の塗布膜の乾燥過程は、主に以下のように分類することができる。乾燥の初期は、恒率乾燥部と呼ばれ、塗布液の溶媒である水や溶剤が蒸発潜熱を奪いながら蒸発していくため、構成層の表面温度はほぼ一定である。この一定温度の期間を恒率乾燥部という。恒率乾燥部以降では、塗布液の溶質とインターラクションのある水や溶剤を蒸発させるため、蒸発潜熱の他にそのインターラクションを解くためのエネルギーも必要となるので表面温度は上昇する。この期間を減率乾燥部という。減率乾燥とは、表面からの溶媒の蒸発が層内の塗膜中の水分移動が勝るときに起きる現象である。次いで、減率乾燥が終了すると、乾燥風の温度とインクジェット記録材料の表面温度が一致する領域に入る。この時点が、乾燥終点と呼ばれている。
以上説明した恒率乾燥部、減率乾燥部及び乾燥終点の確認方法としては、特に制限はないが、例えば、表面温度をモニターして、表面温度が一定である領域を恒率乾燥部、表面温度が上昇する領域を減率乾燥部及び乾燥温度と同一となった時点を、乾燥終点として求めることができる。
また、他の方法としては、各領域に含水量計を設置し、塗膜の含水量をモニターし、含水量の減少曲線がフラットになった領域を乾燥終点として規定することができる。
本発明の塗布方法における塗布液の粘度は、0.1〜250mPa・sであることが好ましい。より好ましくは0.1〜50mPa・sである。更に好ましくは0.1〜20mPa・sである。
本発明の塗布方法は、薄層を均一に形成することができ、幅広い分野に適用することができ、例えば、一般銀塩感光材料の最表面に機能層を賦与する、反射防止膜の形成、電子写真で用いる感光体の電荷発生層、電荷輸送層の塗布、インクジェット記録材料上への塗布等に用いることができるが、特に好ましくはインクジェット記録材料上へのオーバーコート層の塗布に適用することである。
本発明の塗布方法が好ましく適用できるインクジェット記録材料は、支持体上に親水性バインダーと微粒子を含有する多孔質インク吸収層を構成層として有し、その上に本発明の塗布方法でオーバーコート層を設けたものである。
多孔質インク吸収層は、主に微粒子と親水性バインダーから形成される。微粒子としては、気相法で合成された微粒子シリカを、親水性バインダーとしては、ポリビニルアルコールなどが好ましく用いられる。
このようなインクジェット記録材料に用いられる支持体としては、吸水性支持体(例えば、紙など)や非吸水性支持体を用いることができるが、より高品位なプリントが得られる観点から、非吸水性支持体が好ましい。このような支持体としては、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体がある。
上記ポリビニルアルコールと微粒子シリカを含有する多孔質インク吸収層用(構成層用)の塗布液は、高温で低粘度、低温で高粘度になりやすい。それ故に、上記水溶性塗布液を支持体上に塗布した後は、塗布液を冷却して著しく増粘させることが好ましい。
多孔質インク吸収層の塗布温度は、一般的には、30〜60℃であり、塗布後の冷却温度は塗膜温度が概ね20℃以下になるようにすれば良く、特に、15℃以下にすることが好ましい。
冷却工程は、塗布後、例えば15℃以下に冷却されたゾーンを一定時間(好ましくは5秒間以上)通過させることで行うことができる。この冷却時点では、あまり強い風を吹き付けないことが、液ヨリを起こさず均一でムラのない塗膜を得る観点から好ましい。
一旦冷却した以降は、強い風を吹き付けても、塗布液自体の増粘のため、液ヨリを起こしにくくなり、強い風を吹き付けても液ヨリの発生を抑制することができる。また、吹き付ける強い風の温度は、20℃以上の風を吹き付けることができるが、徐々に風の温度を上げるのが好ましい。
多孔質インク吸収層用の塗布液を支持体上に塗布した後の乾燥工程は、風を吹き付けたり高温状態のゾーンを通過させる、もしくは両者を併用することで行われる。
高温ゾーンを通過させて乾燥させる場合、50〜150℃の乾燥ゾーンを通過させる。この際、乾燥温度は、支持体の耐熱性や塗膜への悪影響などを考慮して適切な乾燥温度を選択することが好ましい。乾燥する風は、通常、相対湿度が10〜50%、好ましくは15〜40%の風で行われる。乾燥時間は、湿潤膜厚にもよるが、概ね10分以内が好ましく、5分以内にするのが特に好ましい。
塗布速度は、湿潤膜厚や設備の乾燥能力に依存するが、概ね1分当たり10〜1000m、好ましくは20〜500mである。
上記多孔質インク吸収層用の塗布液の塗布方法としては、公知の方法から適宜選択して行うことができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、押し出し塗布方法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
次に、本発明のスロットノズルスプレー装置を用いて、インクジェット記録材料の多孔質インク吸収層上にオーバーコート層を設ける場合の、該オーバーコート層用の塗布液について、以下に説明する。
オーバーコート層用の塗布液は、インクジェット記録材料の構成層表面に対する機能賦与化合物を含有していることが特徴である。
その機能賦与化合物の使用により、pHが変化する有機または無機の酸、もしくは各種のアルカリ性の添加剤、水溶性多価金属イオンの水溶性塩、アニオン、カチオン、両性、もしくはノニオン系の各種界面活性剤、退色防止剤、カチオン性定着剤、親水性バインダーの架橋剤等が挙げられる。
多孔質インク吸収層の膜面pHを低下させる目的で使用できる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸などの無機酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、フタル酸、こはく酸、蓚酸、ポリアクリル酸などの有機酸を挙げることができる。
多孔質インク吸収層の膜面pHを増大させる目的で使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ほう砂、燐酸ナトリウム、水酸化カルシウム、有機アミンなどが挙げられる。
上記pH調整剤は、多孔質形成する塗布液中のpHが記録材料の好ましい膜面pHと異なる場合に、特に好ましい。
インクジェット記録材料の多孔質インク吸収層の膜面pHは、インクの種類によっても異なるが、一般には、より酸性側で染料の耐水性や滲みが改善されるが、耐光性はより高pH側で改良される傾向が大きいため、使用するインクとの組み合わせで最適なpHは選定される。好ましい多孔質表面の膜面pHは、3〜7であり、特に3.5〜6.5が好ましい。ここでいう膜面pHとは、J.TAPPI 49に規定される紙の表面pH測定方法にしたがって測定した値であり、具体的には、記録材料表面に50μlの純水(pH=6.2〜7.3)を滴下し、市販の平面電極を用いて測定した値を言う。
前記機能賦与化合物としては、界面活性剤であってもよい。
界面活性剤は、インクジェット記録時にドット径をコントロールすることが可能であり、そのような界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性、もしくはノニオン系界面活性剤を挙げることができる。また、界面活性剤は、2種以上を併用することもできる。界面活性剤の添加量は、記録材料1m2当たり概ね0.01〜50mgである。50mgを越えると、インクジェット記録時にマダラ状のムラになりやすい。
前記機能賦与化合物としては、親水性バインダーの架橋剤であってもよい。
このような架橋剤としては、公知のものを使用でき、好ましいものとしては、前述のホウ酸類、ジルコニウム塩、アルミニウム塩もしくはエポキシ系架橋剤である。
前記機能賦与化合物としては、画像安定剤(以下、退色防止剤ともいう)であってもよい。退色防止剤は、光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOxなどの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。
前記機能賦与化合物としては、カチオン性ポリマーを使用することができる。
一般に、カチオン性ポリマーは、染料の定着剤として作用し、耐水性や滲みを防止するため、予め多孔質受容層を形成する塗布液に添加しておくことが好ましいが、塗布液中に添加した際に問題が発生する場合には、オーバーコート法で供給することもできる。例えば、カチオン性ポリマーの添加により、塗布液が経時で増粘したり、あるいは、多孔質層内でカチオン性ポリマーの分布を持たせて発色性を改善する場合などでは、オーバーコート法で供給することが好ましい。カチオン性ポリマーをオーバーコート法で供給する場合、記録材料1m2当たり概ね0.1〜5gの範囲である。
前記機能性付与化合物としては、水溶性多価金属化合物であってもよい。
水溶性多価金属化合物は、一般に、無機微粒子含有の塗布液中に存在すると凝集を起こしやすく、これにより微少な塗布故障や光沢性の低下を引き起こしやすいため、特にオーバーコート法が供給するのが好ましい。
そのような多価金属化合物としては、例えば、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Zr2+、Ni2+、Al3+などの硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等が用いられる。
なお、塩基性ポリ水酸化アルミニウムや酢酸ジルコニル等の無機ポリマー化合物も好ましい水溶性多価金属化合物の例に含まれる。これらの水溶性の化合物は、一般に、耐光性を向上させたり、滲みや耐水性を向上させる機能を有するものが多い。これらの水溶性多価金属イオンは、記録材料1m2当たり、概ね0.05〜20ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲で用いられる。
上記の各機能性付与化合物は、単独で使用しても、あるいは2種以上を併用することもできる。具体的には、退色防止剤を2種以上含む水溶液を用いることも、また、退色防止剤と架橋剤を含有する溶液、退色防止剤と界面活性剤を含有する溶液、更には架橋剤、水溶性の多価金属化合物、および退色防止剤を併用することもできる。
上記機能性付与化合物の溶媒としては、水または水混和性の有機溶媒と水との混合溶液であることができ、水を用いることが特に好ましい。また、水と水混和性を有する低沸点有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等)との混合溶媒も好ましい溶媒である。水と水混和性の有機溶媒とを併せて使用する場合、水の含有率としては質量比で50質量%以上であることが好ましい。
ここで水混和性を有する低沸点有機溶媒とは、室温で水に対して10質量%以上の溶解性を有し、沸点が約120℃以下の有機溶媒を言う。
また、本発明の塗布方法に用いる塗布液の表面張力は、室温で20〜60mN/mであることが、均一な塗布性を得る観点から好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
《記録材料1の作製》
4層構成の多孔質インク吸収層を支持体上に形成した記録材料1を作製した。
〔支持体の作製〕
含水率が6%、坪量が200g/m2の写真用原紙の裏面側に、押し出し塗布法により密度が0.92の低密度ポリエチレンを35μmの厚さで塗布した。次いで、表面側にアナターゼ型酸化チタンを5.5%含有する密度が0.92の低密度ポリエチレンを40μmの厚さで押し出し塗布法で塗布して両面をポリエチレンで被覆した支持体を作製した。表側にコロナ放電を行いポリビニルアルコールからなる下引き層を0.03g/m2、裏面にもコロナ放電を行った後、スチレンブタジエンラテックスからなるラテックス層を0.12g/m2になるように塗布した。裏面のラテックス層には平均粒径3μmのシリカ系マット剤とカチオン性の帯電防止剤、シリコン系分散液、フッ素系界面活性剤をラテックスの樹脂成分に対してそれぞれ10質量%、5質量%、2質量%及び3質量%含有する。
〔各分散液の調製〕
(シリカ分散液D1、D2の調製)
予め均一分散されている1次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製:アエロジル200)を25%と、水溶性蛍光増白剤UVITEX NEW LIQUID(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を0.3%含むシリカ分散液B1(pH2.3、エタノール1質量%含有)の400Lを、カチオン性ポリマーP−1を12%、n−プロパノールを10%及びエタノールを2%含有する水溶液C1(pH2.5、サンノプコ社製消泡剤SN381を2g含有)の110Lに、室温でホモミキサーで3000rpmで攪拌しながら添加した。
次いでホウ酸とホウ砂の1:1質量比の混合水溶液A1(各々3%濃度)の54Lを撹拌しながら徐々に添加した。
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで、3000N/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D1を得た。
一方、上記シリカ分散液B1の400Lをカチオン性ポリマーP−2を12%、n−プロパノール10%及びエタノールを2%含有する水溶液C2(pH2.5)の120Lに、室温でホモミキサー3000rpmで攪拌しながら添加し、次いで上記混合水溶液A1の52Lを攪拌しながら徐々に添加した。
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで、3000N/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D2を得た。
上記シリカ分散液D1、D2を30μmの濾過精度を有するアドバンテック東洋社製のTCP−30タイプのフィルターを用いて濾過を行った。
(オイル分散液の調製)
ジイソデシルフタレート20kgと酸化防止剤(A0−1)20kgを45kgの酢酸エチルに加熱溶解し、酸処理ゼラチン8kg、カチオン性ポリマーP−1を2.9kgおよびサポニン10.5kgを含有するゼラチン水溶液210Lと55℃で混合し、高圧ホモジナイザーで乳化分散したあと全量を純水で300Lに仕上げて、オイル分散液を調製した。
Figure 2006044040
(多孔質層塗布液の調製)
上記調製した各分散液を使用して、以下に記載の各添加剤を順次混合し、多孔質層用の各塗布液を調製した。なお、各添加量は塗布液1L当たりの量で表示した。
〈第1層用塗布液:最下層〉
シリカ分散液D1 580ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235とPVA245の7:3の混合物)
6.5%水溶液 290ml
オイル分散液 30ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製 ポリゾールAE803) 20ml
エタノール 8.5ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
〈第2層用塗布液〉
シリカ分散液D1 600ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235とPVA245の7:3の混合物)
6.5%水溶液 270ml
オイル分散液 20ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製:ポリゾールAE803) 5ml
エタノール 8ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
〈第3層用塗布液〉
シリカ分散液D2 630ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235とPVA245の7:3の混合物)
6.5%水溶液 270ml
オイル分散液 25ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製 ポリゾールAE803) 5ml
エタノール 3ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
〈第4層用塗布液:最上層〉
シリカ分散液D2 660ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235とPVA245の7:3の混合物)
6.5%水溶液 250ml
ベタイン型界面活性剤−1の4%水溶液 2ml
サポニンの25%水溶液 1ml
エタノール 3ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
Figure 2006044040
上記のようにして調製した各塗布液を、20μmの濾過精度を持つアドバンテック東洋社製のTCPD−30フィルターで濾過した後、TCPD−10フィルターで濾過した。
次に、上記の各塗布液を下記の湿潤膜厚となるよう、40℃で上記支持体上に、図7に記載の工程からなる塗布ラインを用いて、スライドビード型塗布装置を用いて4層同時塗布して、記録材料1を作製した。
〈湿潤膜厚〉
第1層:42μm
第2層:39μm
第3層:38μm
第4層:40μm
インク吸収層用塗布液の塗布後は、5℃に保った冷却ゾーンを15秒間通過させて膜面の温度を13℃にまで低下させたあと、20〜30℃、相対湿度20%以下で30秒間、60℃、相対湿度20%以下で120秒間、55℃、相対湿度20%以下で60秒間、各々の乾燥風を吹き付けて乾燥した。恒率乾燥域における皮膜温度は8〜30℃であり、減率乾燥域で皮膜温度が徐々に上昇した後、23℃、相対湿度40〜60%の調湿ゾーンで調湿して記録材料1を作製した。
〔オーバーコートの実施〕
(オーバーコート液1の調製)
下記水溶性染料を1.0質量%含む水溶液を調製しこれをオーバーコート液1とした。
Figure 2006044040
(オーバーコート)
塗布装置として、図2、3、5、6に示したスロットノズルスプレー装置を用意した。このときの塗布液ノズルの開口端は、120μm角の矩形、ピッチは1000μmであった。ガスノズルは200μm巾のスリット状とした。この際のガス内圧は、20kPa、空気の流量は12CMM/mに設定し、塗布液吐出部と記録材料との距離は、18mmに設定した。
塗布製造ラインとしては、図7と同様にした。ただし、スロットノズルスプレー装置は1台とし、前記多孔質インク吸収層の乾燥工程の200秒の位置(減率乾燥部であって、乾燥終点前)に配置した。
オーバーコート液が塗布される時に支持体の裏面が接触するバックアップロールに直流電圧を印可した。
塗布条件としては、湿潤膜厚が15μmになるように、塗布速度としては150m/minでオーバーコートを行った。
<相対反射濃度>
比較として、オーバーコートせず一旦まきとり、2パス目でスライドビード塗布装置で前記オーバーコート液1を2倍に希釈した液を湿潤膜厚保30μmになるように塗布した。
この時の反射濃度を1としたときの相対的な反射濃度を測定した。
この濃度が1に近いほどスロットノズルスプレー塗布による液滴飛散によるロスが少なく周囲の汚染も改善方向にある。
<粒状ムラ評価>
1:ムラが全くなし
2:ムラが僅かに認められるが実用上は問題ないレベル
3:ムラがやや強くはっきりわかり、実用上問題があるレベル
4:ムラが非常に強く実用に耐えないレベル
ここで言う粒状ムラとは液滴状に噴霧して塗布することによって発生する局部的に不均一なムラを目視で官能評価した。
Figure 2006044040
表1記載の結果より、オーバーコート時のバックアップロールに電圧印可することで相対濃度が上がりことから液滴飛散によるロスが改善することがわかり、また粒状ムラも改善され良好な塗布の均一性が得られることがわかる。印可電圧が2.5KVになると電荷ムラによると思われる別種のムラが発生し均一性がやや低下した。
実施例2
実施例1に記載の塗布方法において、水溶性染料を1.0質量%含む水溶液にかえて、4%ホウ酸溶液に変更した以外は同様に塗布をおこなった。この塗布液の粘度は、室温で1.6mPa・s、表面張力は、60〜70mN/mであった。
Figure 2006044040
表2記載の結果より、ホウ酸をオーバーコートすることで吸収速度は飛躍的に増大するが、バックアップロールに電圧印可することで膜面ムラが向上すると共に、インク吸収性も良好であることがわかる。印可電圧が2.5KVになると膜面ムラがやや低下した。
(膜面ムラ評価)
セイコーエプソン社製のインクジェットプリンターPM770Cを用い、反射濃度が約1.0のニュートラルグレー色を全面ベタ印字して、下記に示す基準の則り、ムラの有無を目視で5段階評価した。
1:ムラが全くなし
2:ムラが僅かに認められるがベタ印字しても実技上は問題ないレベル
3:ムラがベタ印字でははっきりわかるが、実際のプリントではほとんど問題ないレベル
4:グレーの色むらが認められ実技上許容されないレベル
5:全く許容されないレベル
上記の評価ランクにおいて、実用上、4及び5は商品価値が無い。
(インク吸収性評価)
熊谷理機工業株式会社製のBristow試験器II型(加圧式)を使用し、接触時間0.2秒間におけるインク転移量(ml/m2)をインク吸収性の尺度として測定した。なお、測定に際してはマゼンタ染料を1%、ジエチレングリコールを15%、グリセリンを15%含有する水性インクを使用した。
実施例3
実施例1に記載の塗布方法において、水溶性染料を1.0質量%含む水溶液にかえて、退色防止剤水溶液に変更し、前記退色防止剤の乾燥後付量が0.5g/m2になるようにした以外は同様に塗布をおこなった。
退色防止剤:HOCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OH
(退色性)
シアンのウェッジ画像をプリントし初期濃度1.0の濃度点について、外気を連続的に1ヶ月間プリント表面に吹きつけた状態で放置した後、その濃度点の濃度を測定し、初期濃度に対する濃度残存率を測定した。
(画像均一性)
上記膜面ムラ評価で作製したプリントの反射濃度を幅手方向5カ所、長手方向4カ所、計20カ所について、青、緑及び赤の反射濃度を測定し下式により画像均一性評価を行った。
画像均一性={(δb/Db)2+(δg/Dg)2+(δr/Dr)21/2
但し、Db、Dg及びDrは青、緑、及び赤の反射濃度の平均値を表し、δb、δg、δrは各色の反射濃度の標準偏差を示す。数値が小さいほど濃度の均一性が高い。
Figure 2006044040
表3記載の結果より、退色防止剤をオーバーコートすることで退色性は大きく改善するが、バックアップロールに電圧印可することで退色処理した後も改良されていることが判る。
本発明の塗布方法を説明するための概略図である。 スロットノズルスプレー部を含むスロットノズルスプレー装置の概略断面図である。 スロットノズルスプレー部とそこで形成される液滴の形成及び飛翔状態を説明する図である。 スロットノズルスプレー部を塗布液吐出部側から見た概略図である。 スロットノズルスプレー部を塗布液吐出部側から見た別の形態の概略図である。 図5のタイプの塗布液吐出部を有するスロットノズルスプレー部の分解斜視図である。 スロットノズルスプレー装置を配置した塗布製造ライン及び、本発明の塗布バックロールを介した加電の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 スロットノズルスプレー部
2 ガスノズル
3 塗布液ノズル
4 調整釜
5 ポンプ
6 流量計
7 加圧空気源
8 弁
9 基体
A ガスポケット
B 塗布液ポケット
10 液滴粒子
9b インク吸収層
20 スライドビード塗布装置
25、26 バックアップロール
27、28 直流電源
30 冷却ゾーン

Claims (5)

  1. 支持体上に少なくとも1層の親水性バインダーと無機微粒子を含有する水系塗布液を塗布してなる多孔質層上に、添加剤含有溶液をスロットノズルスプレー装置を用いて前記支持体の搬送方向と交差する方向の塗布幅にわたって液滴状に噴霧することにより塗布するインクジェット記録材料の製造方法において、前記添加剤含有溶液の塗布直前に前記支持体に加電し前記多孔質層の表面に電荷付与して得られたことを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
  2. 前記多孔質層の表面に電荷付与するために塗布直前のバックアップロールに直流電圧を印可することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録材料の製造方法。
  3. 前記バックアップロールに直流電圧を印可するときの電位が0.3〜2kVであることを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録材料の製造方法。
  4. 前記添加剤含有溶液がpH調整剤、界面活性剤、親水性バインダーの架橋剤、画像安定剤及び水溶性多価金属化合物から選ばれる少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット記録材料の製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット記録材料の製造方法により製造されることを特徴とするインクジェット記録材料。
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