JP2004122705A - 空隙型インクジェット記録用紙の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】空隙型インクジェット記録用紙のインク受容層に形成された画像の有害ガスによる変褪色を防止し、生産効率が高く、安定した空隙型インクジェット記録用紙の製造方法の提供。
【解決手段】支持体上に形成された少なくとも1層の無機微粒子、バインダを含有する多孔質層のインク受容層上に、塗布液をスプレーコータにて塗設し、表面層を形成する空隙型インクジェット記録用紙の製造方法において、該塗布液は平均液滴径が5〜30μmの噴霧状態で該インク受容層上に塗設され、乾燥前の厚さが10〜50μmであることを特徴とする空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】支持体上に形成された少なくとも1層の無機微粒子、バインダを含有する多孔質層のインク受容層上に、塗布液をスプレーコータにて塗設し、表面層を形成する空隙型インクジェット記録用紙の製造方法において、該塗布液は平均液滴径が5〜30μmの噴霧状態で該インク受容層上に塗設され、乾燥前の厚さが10〜50μmであることを特徴とする空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空隙型インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)の製造方法に関し、詳しくは、有害ガスによる変褪色耐性に優れた記録用紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて記録用紙に付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。特に、最近ではプリンタの高画質化が進み写真画質に到達していることから、記録用紙も写真画質を実現し、かつ銀塩写真の風合い(光沢性、平滑性、コシなど)を再現することが求められている。
【0003】
銀塩写真の風合いを再現する方法の1つとして、支持体上にゼラチンやポリビニルアルコールなどの親水性バインダを塗設した、いわゆる膨潤型の記録用紙が知られている。しかしながら、この方法で作製された記録用紙は、インク吸収速度が遅い、プリント後に表面がべたつきやすい、保存中に湿度の影響を受けて画像がにじみやすい等の欠点を有している。特に、インク吸収速度が遅いため、吸収される前にインクの液滴同士が混ざり合い、異色間のにじみ(ブリーディング)や同色内の色むら(ビーディング)を発生させやすく、銀塩写真と同程度の画質を得るのは非常に困難となっている。
【0004】
上記膨潤型に代わり主流となりつつあるのがいわゆる空隙型であり、インク受容層に多孔質の無機微粒子を有しており、この多孔質の無機微粒子にインクを吸収させるため、吸収速度が速いのが特徴である。このような空隙型の記録用紙の例としては、特開平10−119423号、同10−119424号、同10−175364号、同10−193776号、同10−193776号、同10−217601号、同11−20300号、同11−106694号、同11−321079号、同11−348410号、同10−178126号、同11−348409号、特開2000−27093、同2000−94830、同2000−158807、同2000−211241等に記載されている。
【0005】
一方、画質や風合いに加え、耐久性や画像保存性に対する要求もより高度になり、耐光性、耐湿性、耐水性なども銀塩写真レベルに到達させる試みが数多くなされている。耐光性向上の例としては、特開昭57−74192号、同57−87989号、同57−74193号、同58−152072号、同64−36479号、特開平1−95091号、同1−115677号、同3−13376号、同4−7189号、同7−195824号、同8−25796号、同11−321090号、同11−277893号、特開2000−37951等に記載されている多数の技術が開示されている。
【0006】
空隙型の記録用紙の場合は、耐光性だけでなく、その空隙構造に起因してオゾン、オキシダント、SOx、NOxなど空気中の極微量の活性な有害ガスによる変褪色を起こしやすい問題がある。特に、一般のカラーインクジェットプリンタに採用されているフタロシアニン系水性染料で変褪色が起こりやすい。
【0007】
変褪色の現象を改善する技術については、インク受容層及びインク受容層上の表面層、出来上がった画像を保護する方法等から種々検討がなされている。インク受容層に対する技術としては、例えば、特開平1−218882号には、インク受容層上にアルミニウム化合物で表面処理した合成シリカを含む層を設ける技術、同1−258980号には、インク受容層にカチオン化処理された顔料を含ませる技術、同2−188287号には、インク受容層を超微粒子状無水シリカとカチオン性ポリマで構成させる技術、同7−266689号、同8−164664号には、インク受容層にβ−シクロアミロース又はポリアクリルアミンを含ませる技術、特開2001−247797には、インク受容層に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性定着剤及びジシアンジアミド系重合物を含ませる技術等が開示されている。
【0008】
これらの改良技術では、空隙構造がより微細なインクジェットの記録用紙に対してはオゾン、オキシダント、SOx、NOxなど空気中の極微量の活性な有害ガスに対する改良の効果が不十分であり、より抜本的な改善が望まれている。
【0009】
オゾン、オキシダント、SOx、NOxなど空気中の極微量の活性な有害ガスから画像を保護するためには、インクが吸着しているインク受容層にこれら有害ガスを入り込ませないことが効果的であることからインク受容層上の表面層に対する技術として、インク受容層上に0.5〜30μmの厚さの透明高分子膜を設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
インク受容層上に有害ガスの侵入を防止する表面層を設けることは効果的であるが、次の欠点を有しているため実用化されていないのが現状である。
【0011】
表面層の塗設は、塗布液をブロック塗布、グラビアロール塗布、押し出し塗布等により支持体に塗布しているが、これらの塗布方式の欠点としては次の事項が挙げられる。
【0012】
1)塗布速度が50m/min以上にすることが困難であるため稼働率が低い。
【0013】
2)塗布面に干渉ムラが発生し易く、商品価値が低くなる。
3)膜厚分布が不安定で均一な膜厚層が得られにくく、有害ガスの侵入を防止するためには不利である。
【0014】
4)膜厚が5〜20μmの薄膜塗布が難しいため、記録用紙が膜厚の影響を受け着色してしまう。又、乾燥工程での負荷が大きくなる。
【0015】
これらのことから、有害ガスの侵入を防止する表面層に対しては、薄く且つ均一な塗設方法の開発が望まれている。
【0016】
薄膜を塗布する方法としてスプレー塗布方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載されているスプレー塗布の場合は、中心が厚く、両端が薄くなり易く安定した薄膜が得られ難い欠点を有している。
【0017】
他の方法として、熱可塑性微粒子を表面に含有する記録用紙をプリント後、加熱又は加圧処理してガス遮断層を発現させる方法が知られている(例えば、特許文献3および4参照。)。又は、画像が記録された記録用紙にラミネート処理を施したり、フレームに入れるなどのガス遮断方法が行われている。
【0018】
これらの方法などは非常に効果的ではあるが、何れも後処理が必要となり、余分な工程が生産効率を上げる面から負荷となっている。特に、幅が60cm以上になる大判インクジェット記録においては、ラミネート処理やヒートロール処理が煩わしいのみならず、専用の機器も大型化し、高額であり、広く一般に普及しているとは言い難い。
【0019】
有害ガスに対する上記の問題の対策方法の1つとしては、膨潤型記録用紙を用いることにより改良はされるが、反面本質的な問題であるインク吸収速度の遅さを改善することが非常に困難である。又、顔料インクを用いたインクジェット記録方法により、ある程度の変褪色問題は解決しうるが、記録用紙上のギラツキ(ブロンジング)などの特性は、品質上十分な画質を与えるレベルに至っていないのが現状である。
【0020】
上記状況より、空隙型インクジェット記録用紙のインク受容層に形成された画像の有害ガスによる変褪色を防止し、生産効率が高く、薄膜の安定した表面層を有する空隙型記録用紙の製造方法の開発が望まれている。
【0021】
【特許文献1】
特開平7−237348号公報
【0022】
【特許文献2】
特開平6−214379号公報
【0023】
【特許文献3】
特開平11−245507号公報
【0024】
【特許文献4】
特開2000−71608号公報
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的としては、空隙型インクジェット記録用紙のインク受容層に形成された画像の有害ガスによる変褪色を防止し、生産効率が高く、安定した空隙型インクジェット記録用紙の製造方法を提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の上述の目的は、以下の構成により達成された。
【0027】
1)支持体上に形成された少なくとも1層の無機微粒子、バインダを含有する多孔質層のインク受容層上に、塗布液をスプレーコータにて塗設し、表面層を形成する空隙型インクジェット記録用紙の製造方法において、該塗布液は平均液滴径が5〜30μmの噴霧状態で該インク受容層上に塗設され、乾燥前の厚さが10〜50μmであることを特徴とする空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0028】
2)前記表面層が、ガスバリア層としての機能を有することを特徴とする1)に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0029】
3)前記表面層を形成する塗布液の粘度が0.7〜2mPa・sであることを特徴とする1)又は2)に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0030】
4)前記スプレーコータがカーテンスプレーコータであることを特徴とする1)〜3)のいずれか1項に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0031】
5)前記スプレーコータにて塗布液を塗設するときの空気の初速が50〜300m/minであることを特徴とする1)〜4)のいずれか1項に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0032】
6)前記スプレーコータとインク受容層との間隔が10〜30mmであることを特徴とする1)〜5)のいずれか1項に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態につき図1〜図5を参照して説明する。尚、本発明に使用する支持体は特に限定はないが、例えば帯状の支持体が好ましい。
【0034】
図1はカーテンスプレーコータによる記録用紙の表面層塗布の一例を示す概略斜視図である。
【0035】
図中、1はスプレーコータの中でも本発明に係る記録用紙の表面層塗布に最も好ましいカーテンスプレーコータを示し、101はカーテンスプレーコータへ塗布液を供給する塗布液供給管を示し、102a、102bはカーテンスプレーコータに供給された塗布液を液滴状にして、連続搬送される(図中の矢印方向)帯状の支持体2上のインク受容層202(図3を参照)上に噴霧塗布するための一対の加圧空気供給管を示す。201は、帯状の支持体2上のインク受容層202(図3を参照)上に形成された表面層を示す。3は、塗布時における帯状の支持体2の平面性を保つためのバックロールを示す。
【0036】
尚、カーテンスプレーコータ1は、塗布時に塗布位置に移動できるように、又、塗布後は待機位置に移動できるように塗布装置のフレーム(不図示)に配設されている。又、バックロール3も回転可能(図中の矢印方向)にフレーム(不図示)に軸支されている。
【0037】
帯状の支持体2は、カーテンスプレーコータの塗布液吐出部に対して相対的に移動させ(搬送させ)、連続的に塗布製造を行う。カーテンスプレーコータの塗布液噴出部は、少なくとも帯状の支持体2の塗布幅(帯状の支持体の搬送方向と交差する方向における帯状の支持体の被塗布部の長さのことを指す)に対応する長さを有し、帯状の支持体2の搬送方向と交差するように配置させることが好ましい。このように配置することで、カーテンスプレーコータに対して帯状の支持体を搬送させ、帯状の支持体上に塗布液を塗布幅にわたって液滴として噴霧することにより、乾燥負荷も少なく、膜厚均一性が高く、薄い塗布膜を塗布できることが可能となる。
【0038】
図2は図1のA−A′に沿った概略断面図である。
図中、103a〜103dはカーテンスプレーコータ1を構成している各ブロックを示す。104aは、ブロック103aとブロック103bとから構成される加圧空気ポケットを示し、105aはブロック103aとブロック103bとの間隙に形成される空気用ノズルを示す。104bは、ブロック103cとブロック103dとから構成される加圧空気ポケットを示し、105bはブロック103cとブロック103dとから構成される空気用ノズルを示す。
【0039】
加圧空気供給源(不図示)より、各加圧空気供給管102a、102bを介して供給された加圧空気は、各加圧空気ポケット104a、104bに一旦溜められた後、各空気用ノズル105a、105bを介して各開口端105a1、105b1(図3を参照)より噴出される。
【0040】
106は、ブロック103cとブロック103bとから構成され、塗布液供給管より供給される塗布液を一次的に溜める塗布液ポケットを示す。107は、ブロック103cとブロック103bとの間隙に挟持された櫛型部材108とにより形成される塗布液用ノズルを示す。塗布液ポケット106に溜められた塗布液は塗布液用ノズル107を介して噴霧口1aより噴霧され帯状の支持体2上のインク受容層202(図3を参照)上に塗布される。櫛型部材108に関しては図5で説明する。他の符号は図1と同義である。
【0041】
図3は図2のAで示される部分の拡大概略図である。
図中、105a1、105b1は各空気用ノズル105a、105bの開口端を示し、107aは塗布液用ノズル107の開口端を示す。108aは櫛型部材108(図5を参照)を構成している櫛刃を示す。4は噴霧口1aから噴霧された細分化された塗布液の液滴を示し、202は帯状の支持体2上のインク受容層を示す。噴霧口1aは塗布液用ノズル107の開口端107aと各空気用ノズル105a、105bの各開口端105a1、105b1とを有している。開口端107aの位置は、各開口端105a1、105b1に対して0〜2mmであってもよいし、開口端107aと、開口端105a1、105b1とは同じ位置にあり、櫛刃108aの先端108a1(図5を参照)が各開口端105a1、105b1に対して0〜2mmであってもよい。
【0042】
この範囲に配置することで最適な液滴の噴霧を行うことが可能となる。本図では塗布液用ノズル107の開口端107aの位置は、各空気用ノズル105a、105bの各開口端105a1、105b1の位置と同じの場合を示している。Lは液滴が帯状の支持体のインク受容層上に落ちる面積範囲の搬送方向の長さを示す。θは噴霧される液滴群の広がり角度を示す。Hは、噴霧口1aと帯状の支持体2上のインク受容層202の表面との距離を示す。他の符号は図2と同義である。
【0043】
距離Hは10〜30mmが好ましく、10mm未満の場合は櫛型部材に起因するスジが発生し易くなり、ガスバリア性及びインク吸収性にスジ状のムラを生じる場合がある。30mmを越えた場合は、塗布液の種類によってはスプレーの微細な液滴径を得ることが困難となり、再凝集し好ましい液滴範囲より大きくなりガスバリア性及びインク吸収性にムラが出る場合がある。又、液滴が帯状の支持体に付着せずに周囲に飛び散る割合が増加し周囲を汚染したり塗布液が無駄になる場合がある。
【0044】
次に、図3を用いて、液滴の形成及び噴霧塗布状態を説明する。塗布液用ノズル107の開口端107aより吐出された塗布液は、塗布液用ノズル107の上下に近接して設けられた各空気用ノズル105a、105bの各空気用ノズル105a、105bの開口端105a1、105b1から噴出する加圧空気により、細分化され液滴4として、噴霧口1aから帯状の支持体2上のインク受容層202の表面に均一に噴霧塗布される。
【0045】
インク受容層202上に噴霧塗布する塗布液の面積範囲は、常に均一であることが好ましいが、特に、液滴径分布が均一であること、搬送方向における長さLが塗布幅にわたって均一であることが好ましい。また、噴霧口1aを基点として帯状の支持体に対し、噴霧される液滴群の広がり角度θは、塗布幅にわたって均一であることが好ましい。インク受容層202上に落ちる衝突速度が均一であることが好ましい。これらによって、より塗布膜厚の均一性を確保することが可能となる。
【0046】
塗布幅方向において液滴径分布が均一であるとは、具体的には、塗布幅方向で、平均液滴径の変動が、±20%以下であることを言う。より好ましくは±10%以下である。
【0047】
平均液滴径の変動は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、計算することが可能である。具体的には以下の測定法により行う。
【0048】
まず、塗布液を液滴として噴霧するカラースプレーコータから、塗布液を噴霧させ、その噴霧状態を安定させる。噴霧開始直後では、塗布液の吐出量やガス圧が一定せず噴霧状態が安定しないので、所定の時間噴霧を続けることで安定させることができる。
【0049】
次に、液滴4の大きさ(平均液滴径)は、噴霧状態が安定した液滴群に対し、レーザー回折式粒度分布測定装置としてスプレーテックRTS5123(マルバーン社製)を用い、塗布幅方向において等間隔で5ヶ所、平均液滴径を測定する。帯状の支持体に落ちる液滴群の塗布幅方向の両端(塗布端)は、通常、噴霧濃度が極端に低くなるため有効塗布幅にはカウントしない。よって、有効塗布幅の両端を測定点の両端2点とする。具体的には、塗布端から1cm内側に入った所を測定点の両端2点とし、その内側の等間隔3点を加えて計5点とし、これを測定点とする。この5ヶ所で測定された平均液滴径から変動率を計算する。
【0050】
尚、平均液滴径は、スプレーテックRTS5123を用いれば簡単に測定できるが、前記測定箇所における液滴群の各液滴径を測定し、液滴径を横軸にとって積算プロットしたときに、体積パーセントで50%の位置にくる液滴径のことをさす。
【0051】
また、液滴がインク受容層上に落ちる面積範囲の搬送方向の長さが均一であるとは、塗布幅方向で、前記長さの変動が、±10%以下であることを言う。より好ましくは±5%以下である。
【0052】
尚、インク受容層上に落ちる液滴の面積範囲の搬送方向の長さの変動は、液滴のインク受容層上への接液部を可視化することによって測定することが可能である。具体的には以下の測定法により行う。
【0053】
まず、上記液滴径の変動の測定法と同様に、塗布液を液滴として噴霧するカーテンスプレーコータから、塗布液を噴霧させ、その噴霧状態を安定させる。
【0054】
次に、塗布幅方向において等間隔で5ヶ所、塗布幅方向から見た噴霧の様子を写真撮影する。撮影する5ヶ所の定義は上記同様である。カーテンスプレーコータの噴霧口1aを基点として、インク受容層に向かって広がる略三角形の噴霧の様子が5枚撮影されることになる。各三角形の底辺の長さ(インク受容層との接液部の長さ)が、インク受容層上に落ちる液滴の面積範囲の搬送方向の長さである。5ヶ所で撮影し、計測した該搬送方向の長さから、変動値を計算する。
【0055】
尚、各測定箇所において写真撮影する場合、塗布幅方向に対し直行する方向(帯状支持対の搬送方向)から1mmのスリット光を、噴霧される液滴に対して当てることにより、測定箇所の三角形を浮き上がらせ、写真撮影を行うことが出来る。
【0056】
また、インク受容層上に落ちる液滴の広がり角度が均一であるとは、塗布幅方向で、カーテンスプレーコータの噴霧口1aを基点として、インク受容層上に落ちる液滴の落下角度の変動が、±10%以下であることを言う。より好ましくは±5%以下である。
【0057】
液滴の広がり角度の変動は、カーテンスプレーコータの噴霧口を可視化することで測定し、計算することができる。具体的な測定方法は、インク受容層上に落ちる液滴の面積範囲の搬送方向の長さ変動の測定法に準じ、同様に5枚の撮影写真から、それぞれの広がり角度を計測し、変動を算出する。
【0058】
また、インク受容層上に落ちる液滴群の空間密度が均一であるとは、塗布幅方向で、インク受容層上に落ちる液滴群の空間密度の変動が、±10%以下であることを言う。より好ましくは±5%以下である。
【0059】
液滴群の空間密度の変動は、レーザー光の透過密度を用いることで測定することができる。具体的には、上記液滴径の変動の測定法に準じる。スプレーテックRTS5123を用い、上述のごとく塗布幅方向において等間隔の5ヶ所で、噴霧される液滴群のレーザー光不透過率を測定する。ここで不透過率を、液滴群の空間密度として扱う。5ヶ所の測定値から変動率を計算する。
【0060】
液滴の大きさ(平均液滴径)は5〜30μmであり、更に好ましくは5〜20μmである。5μm未満の場合は、塗膜に干渉ムラが発生し、インク受容層が着色して見える様になるため好ましくない。30μmを越えた場合は、塗膜全面に液滴が付着しなくなるため、白抜け部分が生じ易くなり、塗布ムラが発生し、ガスバリア性及びインク吸収性にムラが出るため好ましくない。
【0061】
塗布液用ノズルからの塗布液の供給量は、所望の塗布膜厚、塗布液の濃度、塗布速度等により一概には規定できないが、概ね塗設量として、1〜50g/m2の範囲が好ましい。1g/m2未満では、塗布液の種類によっては安定で均一な塗布膜を形成するのが難しくなる場合がある。50g/m2を越えると乾燥負荷等に影響が表れ、塗布液の種類によっては乾燥ムラが発生し易くなる場合がある。
【0062】
表面層201の乾燥前の厚さは10〜50μmであり、更に好ましくは15〜30μmである。10μm未満では、表面層のガスバリア性を均一にすることが困難となり、ムラが発生し易くなるため好ましくない。50μmを越えた場合、乾燥ムラが発生し易く、インク吸収ムラの原因となり又、乾燥負荷低減の観点からも好ましくない。乾燥前の表面層の厚さは、一定面積の帯状の支持体の乾燥前後の質量変化より測定した値である。
【0063】
このようなカーテンスプレーコータを用いて、上述のごとく塗布幅にわたって噴霧状態の均一性を高める方法としては、塗布液の粘度を比較的低くすること、空気用ノズルから噴出するガス圧を高くすることにより可能である。またカーテンスプレーコータの塗布液用ノズルの開口端の面積を小さくすること、開口端のピッチを狭くすることなどにより、噴霧の均一性を高めることが可能である。
【0064】
本発明に係る表面層用の塗布液の粘度は、0.7〜2mPa・sが好ましい。0.7mPa・s未満の場合は、塗布液用ノズル内での均一な分配が困難となり、幅手で分布を生じる場合がある。2mPa・sを越えた場合は、好ましい大きさの液滴径(30μm以下)とすることが非常に困難となり、ガスバリア性にムラが発生し易くなる場合がある。
【0065】
また、塗布幅にわたって均一な液滴の噴霧を行うには、塗布液の表面張力を20〜70mN/mに調整すること、好ましくは20〜50mN/m、さらに好ましくは20〜30mN/mとすることである。
【0066】
各空気用ノズル105a、105bの開口端から噴出する加圧空気の初速は50〜300m/minが好ましく、50m/min未満の場合は、微細な液滴(30μm以下)を形成できなくなることにより、ガスバリア性及びインク吸収性にムラが生じる場合がある。300m/minを越えた場合は、液滴が帯状の支持体に付着する効率が低下することにより、周囲を汚染したり、塗布液がムダになる場合がある。
【0067】
加圧空気の供給条件としては、概ね1〜50CMM/m(塗布幅あたりの流量)の範囲が好ましく、その時の空気用ノズルでの内圧としては、塗布の均一性の観点から、10kPa以上であることが好ましい。空気用ノズルからは、塗布に適した気体であればよく空気に限定することはなく、例えば不活性ガスであるチッソ、ヘリウム等が挙げられる。
【0068】
図4は、カーテンスプレーコータ1の噴霧口1aの側から見た概略図である。塗布液用ノズル107の開口端107aは、カーテンスプレーコータ1の噴霧口1aの塗布幅方向に複数個が配置されている。開口端107aの数は特に限定はなくカーテンスプレーコータ1の塗布幅、使用する塗布液の種類により適宜変更することが可能であるが、開口端107aの間隔(ピッチ)は一定であることが好ましい。Nは開口端107aの幅を示し、Mは櫛型部材108(図5を参照)の櫛刃108a(図5を参照)の先端108a1の幅を示す。開口端107aの幅Nは、50〜300μmの範囲が好ましい。50μm未満の場合は、強度が弱くなり不均一になり易く、更に詰まり易くなりスジを生じ易くなる場合がある。300μmを越える場合は、微細な液滴(30μm以下)を形成することが困難となる場合がある。櫛刃の先端108a1の幅Mは、開口端107aの幅Nと配置する数により適宜設定することが好ましい。また、開口端107aの形状は特に限定はなく、櫛型部材108(図5を参照)の櫛刃108a(図5を参照)の形状を変更することで変更が可能である。本図では矩形の場合を示している。他の符号は図2、図3と同義である。
【0069】
図5は図1に示すカーテンスプレーコータの概略分解斜視図である。
図中、109a、109bは側板を示す。108は、ブロック103cとブロック103bとの間隙に挟持し、塗布液用ノズル107を形成するための櫛型部材108を示し、108aは櫛型部材108を構成している櫛刃を示し、108a1は櫛刃108の先端を示す。110は組み立て用のネジ穴を示し、111は組み立て用のネジを示す。カーテンスプレーコータ1は各ブロック103a〜103dと各側板109a、109bとをネジ111により固定し組み立てることが可能である。
【0070】
本発明に係る表面層を構成する塗布液には、下記有機粒子A又は有機微粒子Bを含有することが好ましい。本発明に係る有機微粒子Aとは、SP値が18.414〜30.69(MPa)1/2で、かつ沸点が120℃以上の水溶性有機溶媒により溶解又は膨潤する水に不溶の有機微粒子で、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子と定義する。
【0071】
本発明でいうSP(Solubility Parameter)値とは、溶解度パラメーターのことであり、物質の溶解性を予測するための一つの有用な尺度である。SP値の単位は(MPa)1/2で表され、25℃における値を指す。
【0072】
有機溶媒のSP値に関しては、例えば、「POLYMER HANDBOOK」(J.Brandrup他、A Wiley−interscience Publication)のIV−337頁に記載されている他、各種の文献などに掲載されている。
【0073】
本発明で用いることのできる水溶性有機溶媒(括弧内に、代表的なSP値を示す)の例としては、アルコール類(例えば、ブタノール(23.3)、イソブタノール(21.5)、セカンダリーブタノール(22.1)、ターシャリーブタノール(21.7)、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール(23.3)、ベンジルアルコール(24.8)等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール(29.9)、ジエチレングリコール(24.8)、トリエチレングリコール(21.9)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール(25.8)、ジプロピレングリコール(20.5)、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール(21.1)、ペンタンジオール、グリセリン(33.8)、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールのアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(23.3)、エチレングリコールモノエチルエーテル(21.5)、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(17.6)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(23.3)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン(25.2)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)等が挙げられる。
【0074】
本発明において、特に好ましい水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコールのアルキルエーテル類、複素環類であり、これらから2〜3種選ばれるのが好ましい。
【0075】
本発明に係るSP値が18.414〜30.69の範囲の水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエタノールアミン、2−ピロリドン等が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値19.437、沸点230℃)である。
【0076】
本発明に係る水溶性有機溶媒は、沸点が120℃以上のものが選ばれる。沸点の上限は特に限定されないが、融点が30℃以下のものが好ましい。
【0077】
本発明に係る有機微粒子Aは、重量平均分子量としては5000以上の高分子が好ましく、その材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、SBR、NBR、ポリテトラフルオロエチレン、クロロプレン、タンパク質、多糖類、ロジンエステル、セラック樹脂等、従来公知のものから選ばれる。特に好ましい有機微粒子Aの材質は、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、SBR等であり、変成や共重合によって2種以上の単量体からなる樹脂も好ましく用いられ、樹脂に対して特定の修飾基を付加したものや脱離基を除いたものでもよく、2種以上の材質を混合して有機微粒子を形成してもよく、更には2種類以上の有機微粒子を混合して用いてもよい。
【0078】
本発明でいう「有機溶媒により溶解する」とは、有機微粒子Aとインク中の水溶性有機溶媒が平衡状態で単一の相をなすことを指し、「有機溶媒により膨潤する」とは有機微粒子Aが同水溶性有機溶媒を吸収して体積を増加させることを言う。膨潤したときの好ましい体積増加率は2〜8倍である。
【0079】
本発明に係る有機微粒子Aは、インクジェット記録中で溶解しないために、水に不溶でなければならない。ただし、インク吸収速度を妨げない範囲で水を吸収することは許される。有機微粒子Aの質量に対し20質量%までの水の吸収をしてもよい。また、本発明に係る有機微粒子Aは、顔料インクによるプリント後、該有機微粒子A含有層が軟化する程度の量含まれれば足りるが、好ましくは層中の固形分に対し質量比で50%以上であり、より好ましくは75%以上である。
【0080】
また、本発明に係る有機微粒子Aには、水溶性有機溶媒に対する溶解や膨潤に支障のない範囲で架橋剤を使用してもよい。本発明において、架橋剤としては有機物・無機物を問わず、従来公知の架橋剤を適宜選択して用いることができる。
【0081】
本発明に係る有機微粒子Aの平均粒子径は、記録用紙の表面光沢に大きく影響する。本発明においては、好ましい平均粒子径は1〜100nmであり、より好ましくは5〜100nmである。
【0082】
平均粒子径の測定法としては、例えば、有機微粒子含有層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、多数個の任意の有機微粒子Aの粒径を求め、その単純平均値(個数平均)として求める方法がある。なお、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。又は別の方法としては、有機微粒子Aを適当な分散媒に分散させ、レーザー回折散乱式粒度分布測定によって粒径を求めることもできる。本発明に係る有機微粒子Aの形状は、真球形である必要はなく、針状でも板状でもよい。粒径は、体積から球換算で求められる。
【0083】
次いで、本発明に係る有機微粒子Bについて説明する。
本発明でいう有機微粒子Bとは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上含有するポリマを有し、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子。
【0084】
【化1】
【0085】
〔式中、Xは−O−または−N(R2)−を表し、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xが−O−の場合、Jは、炭素数2〜8を有する、エーテル構造またはチオエーテル構造を有しても良いアルキレン基であり、Yは、ヒドロキシル基、アルコキシル基またはカルバモイル基を表し、Xが−N(R2)−の場合、Jは、単結合または炭素数2〜8を有する、エーテル構造またはチオエーテル構造を有してもよいアルキレン基であり、Yは、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシル基またはカルバモイル基を表す。〕
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上含有するポリマを有し、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子と定義する。
【0086】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位の詳細について、以下説明する。
本発明の目的効果を好ましく発現せしめる観点から、有機微粒子Bとして、前記一般式(1)で表される繰り返し単位は親水性を有することが好ましく、具体的には、下記に示すアクリル系単量体、アクリルアミド系単量体及び/またはメタクリルアミド系単量体等の親水性単量体を重合させて得ることができるが、本発明ではこれらに限定されない。
【0087】
【化2】
【0088】
【化3】
【0089】
【化4】
【0090】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位に親水性を付与しているのは、前記一般式(1)を形成する、X、J及び置換基Y等の各々の部分構造であるが、本発明においては、置換基Yにより親水性が付与されることが好ましい。
【0091】
また、前記一般式(1)で表される繰り返し単位に親水性を付与する為に用いられる置換基としては、『薬物の構造活性相関(ドラッグデザインと作用機作への指針)』(化学の領域増刊122号)構造活性相関懇話会編、南江堂(1980)、p96〜103に記載のような、疎水性パラメータ(π)が負の置換基等を用いることができる。
【0092】
本発明に係る有機微粒子Bは、前記一般式(1)で表されるような特定の繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上もつことが必要であるが、10質量%以上含有することが好ましい。
【0093】
また、有機微粒子B自体としては、親水性ではあっても水溶性ではないことが好ましいので、10〜50質量%未満の範囲の含有率に調整されることが好ましい。
【0094】
以下、本発明に係る有微微粒子Bの構成成分として用いられる、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上含有するポリマの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0095】
【化5】
【0096】
【化6】
【0097】
一方、有機微粒子Bを構成するポリマの他の単量体成分としては、エチレン性不飽和基を有する従来公知の任意のものが選ばれる。これらは、単一の種類であっても、複数種類であっても良い。このような単量体の例としては、アクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステルまたはアルキルアミド等であり、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルアクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、または、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、または、ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート、ジブチルアミノメチルアクリレート、ジヘキシルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、(t−ブチル)アミノエチルアクリレート、ジイソヘキシルアミノエチルアクリレート、ジヘキシルアミノプロピルアクリレート、ジ(t−ブチル)アミノヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらのうち好ましく用いられるのは、スチレン、メチルメタアクリレート、n−ブチルアクリレートである。
【0098】
本発明に係る有機微粒子Bは、水系エマルジョンとして調製し、塗布液を構成することが好ましく、その場合のエマルジョン粒子のイオン性は塗布液と等しいか、または非イオン性であることが好ましい。また、有機微粒子Bを含有する層の塗布液のイオン性は、他の層の塗布液のイオン性と等しいか、または非イオン性であることが好ましい。また、最も好ましいのは有機微粒子Bと塗布液全てのイオン性がカチオン性または非イオン性であることである。
【0099】
通常、インクジェット記録用紙は、室温下で使用されるが、使用前の保存状態は必ずしも室温とは限らず、特に、夏場の密閉された車中では非常に高温状態となるため、そのような環境を経た後でも支障なく使用できることが望まれる。このため、有機微粒子Bのガラス転移温度(Tg)は70℃以上であることが必要であるが、好ましくは、80℃以上であり、更に好ましくは、90℃〜120℃である。
【0100】
前述の有機微粒子A及び有機微粒子Bのガラス転移温度(Tg)が70℃未満の場合には、加熱による有機微粒子の融着を生じやすくなり、その結果として、記録用紙表面の空隙が縮小または減少し、インク吸収速度の低減が起こりやすくなる。
【0101】
ここで、本発明に係る有機微粒子の構成成分であるポリマのTgは、共重合成分としての単量体単独重合体のTgおよび単量体組成比から質量分率によって計算で求めることが可能である。例えば、スチレン(単独重合体Tg=100℃=373K):n−ブチルアクリレート(単独重合体Tg=−54℃=219K)が4:1(質量比)の組成からなるポリマのTgとしては、1/((1/373K)×4/5+(1/219K)×1/5)=327K(=54℃)と求められる。単量体単独重合体のTgについては、POLYMER HANDBOOK(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION)に多数の測定値が掲載されている。
【0102】
また、有機微粒子Bの平均粒子径は100nm以下であることが必要であるが、好ましくは60nm以下であり、更に好ましくは、20〜40nmであり、本発明に係る有機微粒子Bは、従来公知の乳化重合法等により水中で合成されることが好ましい。その粒子径は、乳化剤の種類や量、単量体成分を調節するなど従来公知の手法により上述の20nm程度から100nm程度までの範囲になるように調節することが可能である。
【0103】
インク受容層の表面に配置する表層として、有機微粒子A又はBの含有率は50〜90質量%であることが好ましいが、表層中での有機微粒子同士の融着を効果的に防止し、インク吸収速度を更に高める観点から、後述するインク受容層で用いるのと同様の無機微粒子を含有しても良い。
【0104】
本発明に係る記録用紙は、インク受容層上に有機微粒子A又は有機微粒子Bを含有する表層を有しているが、本発明でいう表層とは、最表面層に限定されることはなく、インク受容層上にあり本発明の効果が発現する構成であれば、特に限定されるものではない。
【0105】
本発明でいう表層を明示するための好ましい構成例を以下に列挙するが、本発明に係る層構成は、これらに限定されるものではない。
【0106】
1:支持体上に1層以上の下層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている表層が最表層である構成。
【0107】
2:支持体上に1層以上の下層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている表層を設け、更にその上に、表面物性の改良を目的とした薄層を設けた構成。
【0108】
3:支持体上に1層以上の下層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている表層を設け、更にその上に、有害光をカットする目的で、紫外線吸収機能を有する薄層を設けた構成。
【0109】
4:支持体上に1層以上の下層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている表層を設け、更にその上に、マット剤を含む層を設けた構成。
【0110】
5:支持体上に1層以上の下層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている表層を設け、更にその上に、剥離可能な層を設けた構成。
【0111】
上記に記載の構成例の中で最も好ましい構成は、1に示す有機微粒子A又は有機微粒子Bの含有層が最表層である場合である。
【0112】
本発明に係る有機微粒子A又は有機微粒子Bを含む表層には、後述するインク受容層で用いるのと同様の無機微粒子、バインダ成分等を含んでも良い。
【0113】
本発明に係る表層及び後述の多孔質層の少なくとも1層が、多価金属元素を含む化合物を含有することが好ましい。
【0114】
本発明に係る記録用紙の各層には各種添加剤を使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はこれらの共重合体、尿素樹脂、又はメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、アニオン性、カチオン性、非イオン性、ベタイン型の各界面活性剤特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0115】
本発明で用いることのできる支持体としては、従来インクジェット記録用紙用として公知のものを適宜使用でき、吸水性支持体であってもよいが、非吸水性支持体であることが好ましい。すなわち、吸水性支持体の場合よりも非吸水性支持体の場合の方が、記録用紙中に顔料インク中の水溶性有機溶媒が多量に残留し、有機微粒子溶解等に対し効果的に作用するため、本発明の効果を顕著に奏することができると推定している。尚、正確には、「インク中の水溶性有機溶媒を吸収しない支持体」を使用するのが好ましいのであるが、ここでは非吸水性支持体を用いても、本発明の効果を顕著に奏することができると考えている。
【0116】
本発明で用いることのできる吸水性支持体としては、例えば、一般の紙、布、木材等を有するシートや板等を挙げることができるが、特に、紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。又、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することができる。
【0117】
上記紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。
【0118】
紙支持体は、前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。又、必要に応じて抄紙段階又は抄紙機にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理したり、各種コート処理したり、カレンダー処理したりすることもできる。
【0119】
本発明で好ましく用いることのできる非吸水性支持体には、透明支持体及び不透明支持体がある。透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料を有するフィルム等が挙げられ、中でもオーバーヘッドプロジェクター(OHP)用として使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、50〜200μmが好ましい。
【0120】
また、不透明支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆる、RCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに硫酸バリウム等の白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0121】
前記各種支持体とインク受容層の接着強度を大きくする等の目的で、インク受容層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明に係る記録用紙は必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
【0122】
本発明に係る記録用紙では、原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。
【0123】
そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
紙支持体に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPの何れも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP又はLDPの比率は10〜70質量%が好ましい。
【0124】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0125】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長は、JIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0126】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
【0127】
原紙は抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。また、原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良い。
【0128】
原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0129】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0130】
特に、インク受容層側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行われているようにルチル又はアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して通常3〜20質量%、好ましくは4〜13質量%である。
【0131】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、またポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。上記ポリエチレン被覆紙においては紙中の含水率を3〜10質量%に保持するのが特に好ましい。
【0132】
本発明に係る記録用紙の空隙層及び下引き層など必要に応じて適宜設けられる各種のインク受容層を支持体上に塗布する方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができる。好ましい方法は、各層を構成する塗布液を支持体上に塗設して乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての親水性バインダ層を1回の塗布で済ませる同時重層塗布方法が好ましい。
【0133】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0134】
次いで、本発明に係る下層及び多孔質層について説明する。
本発明に係る下層は、材質として従来公知のものから適宜選択される。
【0135】
非多孔質層を構成する主成分としては水溶性ポリマ、油溶性ポリマなどを従来公知の方法で塗工したものが考えられるが、塗工に際し有機溶剤を必要としない水溶性ポリマが好ましい。水溶性ポリマの例としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。または、非水溶性のポリマを水中に分散したエマルジョンを塗工したものも好ましく、この場合のポリマの材質としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、SBR、NBR、ポリテトラフルオロエチレン等が考えられる。
【0136】
本発明において、下層としては、多孔質層であることが好ましい。本発明における多孔質とは、5〜200nm程度の孔径をもつ空隙を多数有することを指す。空隙同士は単独に孤立するのではなく、連続的にお互いに導通していることが好ましい。この場合の空隙径の定義としては、例えば、水銀圧入法による測定値を用いることができる。
【0137】
以下、好ましい多孔質層について説明する。
多孔質層は、主に親水性バインダと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、二種以上のポリマを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子および親水性または疎水性樹脂を含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬し、固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダに対して、概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダを含有する塗布液を支持体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を形成する方法等が知られている。本発明においては、多孔質層に、平均液滴径が100nm以下の各種無機固体微粒子を含有させることによって形成されることが、特に好ましい。
【0138】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0139】
無機微粒子の平均液滴径は、粒子そのものあるいは多孔質層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0140】
無機微粒子としては、シリカ、及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましい。
【0141】
本発明で用いることのできるシリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられるが、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカが好ましく、中でも気相法により合成された微粒子シリカは、高い空隙率が得られるので好ましい。また、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。
【0142】
無機微粒子は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機微粒子の一次粒子の平均液滴径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0143】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均液滴径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社製のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリームインダクターミキサーなどにより、容易に吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することができる。
【0144】
本発明においては、インク受容層に水溶性バインダを用いることができる。本発明で用いることのできる水溶性バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性バインダは、二種以上併用することも可能である。
【0145】
本発明で好ましく用いられる水溶性バインダは、ポリビニルアルコールである。
【0146】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0147】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0148】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0149】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0150】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0151】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0152】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0153】
本発明においては、染料定着剤として多価金属化合物を用いることが好ましく、本発明の目的効果を達成する範囲において、それらの化合物と共に、カチオン性ポリマを併用することを妨げるものではない。
【0154】
カチオン性ポリマの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、などが挙げられる。
【0155】
また、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性ポリマ、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0156】
インク受容層で用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、多孔質層の空隙率、無機顔料の種類、水溶性バインダの種類に大きく依存するが、一般には、記録用紙1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0157】
また、インク受容層に用いられる無機微粒子と水溶性バインダの比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に、3:1〜10:1であることが好ましい。
【0158】
また、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマを含有しても良く、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0159】
多孔質層において、空隙の総量(空隙容量)は記録用紙1m2当り20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0160】
インク保持能を有する多孔質層において、固形分容量に対する空隙容量を空隙率という。本発明において、空隙率を50%以上にすることが、不必要に膜厚を厚くさせないで空隙を効率的に形成できるので好ましい。
【0161】
空隙型の他のタイプとして、無機微粒子を用いてインク受容層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョン、これに水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ポリビニルアルコールを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク受容層を形成させてもよい。この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、さらにエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。上記ポリウレタン樹脂を用いたインク受容層は、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0162】
本発明においては、硬化剤を使用することが好ましい。硬化剤は、インクジェット記録用紙作製の任意の時期に添加することができ、例えば、インク受容層形成用の塗布液中に添加しても良い。
【0163】
本発明においては、インク受容層形成後に、水溶性バインダの硬化剤を供給する方法を単独で用いても良いが、好ましくは、上述の硬化剤をインク受容層形成用の塗布液中に添加する方法と併用して用いることである。
【0164】
本発明で用いることのできる硬化剤としては、水溶性バインダと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性バインダと反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性バインダが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性バインダの種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0165】
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0166】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0167】
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化する事が出来る。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることが出来る利点がある。上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性バインダ1g当たり1〜600mgが好ましい。
【0168】
本発明に係る記録用紙のインク受容層及び必要に応じて設けられるその他の層には、上述した以外の各種添加剤を使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はこれらの共重合体、尿素樹脂、又はメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、アニオン性、カチオン性、非イオン性、ベタイン型の各界面活性剤特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0169】
インク受容層は、2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらのインク受容層の構成はお互いに同じであっても異なっていても良い。
【0170】
上記のような多孔質層は、特に、インクジェット記録方法に好ましく用いられる。インクジェット記録方法に好ましい多孔質層の空隙容量は10〜30ml/m2である。
【0171】
本発明の記録用紙における塗工層は、従来公知の塗布方法で塗設することができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、スライドビード塗布方法、カーテン塗布方法、スロットノズルスプレー塗布方法あるいは、米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等が、好ましく用いられる。
【0172】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。尚、実施例中で「%」は特に断りのない限り質量%を示す。
【0173】
実施例1
〈多孔質インク受容層塗布済み帯状の支持体の作製〉
(分散液の調製)
カチオン性ポリマ(P1)の15%水溶液100gに、一次粒子の平均粒子径が12nmの微粒子シリカ(トクヤマ製、QS−20)の25%水分散液500g、ついで硼酸3.0g、ホウ砂0.7gを添加し、高速ホモジナイザーで分散し、青白色澄明な分散液を得た。
【0174】
【化7】
【0175】
(塗布液の調製)
上記調製した分散液を45℃に昇温し、ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA203)の10%水溶液及びポリビニルアルコール(クラレ製、PVA245)の6%水溶液をそれぞれ45℃に昇温した後に添加した。次いで、45℃の純水を加えて液量を調整して、半透明状の塗布液を得た。
【0176】
(塗布)
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚み230μm)上に、ワイヤーバーを用いて上記塗布液1を塗布、乾燥して、多孔質インク受容層塗布済み帯状の支持体を作製した。多孔質インク受容層塗布済み帯状の支持体の下層における各成分の付量は以下の通りで、乾燥膜厚は35μmである。
【0177】
微粒子シリカ 15g/m2
カチオン性ポリマ(P1) 2.2g/m2
ポリビニルアルコール 2.3g/m2
インク受容層用塗布液の塗布後は、10℃に保った冷却ゾーンを15秒間通過させて膜面の温度を10℃以下にまで低下させたあと、以下の温度の風を順次インク受容層表面に吹き付けながら乾燥工程の各ゾーンを通過させて乾燥した。
【0178】
なお、全乾燥工程は360秒とし、このうち前半の270秒は、吹き付ける風の平均相対湿度を30%以下とした。270秒以降は、相対湿度が40〜60%の調湿ゾーンとした。
【0179】
〔表面層の塗布〕
図5に示すカーテンスプレーコータを用い、下記に示す塗布液の平均液滴径及び乾燥前膜厚を表1に示す如く変化し、先に作製した多孔質インク受容層塗布済み帯状の支持体の多孔質インク受容層の上に表面層の塗設を行い試料101〜112を作製した。
【0180】
尚、平均液滴径の変化は、スプレーコータ内部の圧力を調整することで行った。又、乾燥前の膜厚の変化は、塗布液を調整するときの水の量を表1に示す様に変え、塗布液の送液量を電磁流量計で測りポンプの回転数を調整することで行った。
【0181】
表面層の塗設の条件として、塗布液の温度は40℃、空気の空気用ノズルからの初速200m/sec、カーテンスプレーコータの噴霧口とインク受容層との間隙は15mm、塗布速度は200m/secで行った。
【0182】
〈塗布液の調製〉
以下の組成からなる塗布液を調製した。
【0183】
分散液−1 99ml
有機微粒子エマルジョン−1 250ml
アクリル系エマルジョン 11ml
水の量は表1を参照。
【0184】
各試料101〜112用の塗布液の調製に使用した水の量及び塗布液の粘度を表1に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
(分散液−1の調製)
カチオン性ポリマ(P−1)15%水溶液100gに1次粒子の平均粒子径が12nmの微粒子シリカ(トクヤマ製、QS−20)の25%水分散液500g、ついで硼酸3.0g、ホウ砂0.7gを添加し、高速ホモジナイザーで分散し、青白色澄明な分散液−1得た。
【0187】
(有機微粒子エマルジョン−1の調製)
n−ブチルアクリレート:スチレン:2−ヒドロキシエチルメタクリレート:t−ブチルメタクリレート=10:50:20:20(質量比)のモノマーを用い乳化重合して、有機微粒子エマルジョン−1を調製した。用いた活性剤はステアリルトリメチルアンモニウムクロライドである。ガラス転位点(Tg)は76℃、レーザー散乱法で得られたエマルジョンの粒子径は30nmである。
【0188】
(アクリル系エマルジョン)
第一工業株式会社製の粒子径30nmで、非イオン性界面活性剤を使用し、ガラス転位点(Tg)が−30℃であるアクリル系エマルジョンを使用した。
【0189】
(評価)
得られた各試料101〜112に付き、虹ムラ、変褪色耐性及び斑ムラの評価を行い、結果を表2に示す。
【0190】
虹ムラの評価は、各試料101〜112につき、未記録部分の表面を目視判定し、以下の基準に則って虹ムラの評価を行った。
【0191】
○:30cmの観察距離でも虹ムラが認められない
△:60cmの観察距離では虹ムラが認められない
×:60cm以上の観察距離でも虹ムラが明らかに認められる
実用上問題がないレベルは○、△である。
【0192】
変褪色耐性の評価は、各試料101〜112について、以下に示すインクを、インクジェットプリンタMJ−800C(セイコーエプソン(株)製)を用いて、各試料101〜112に各色ベタ画像を印字した。インク吐出量は12ml/m2であった。この画像を23℃・55%RHの環境下で1時間乾燥させ変褪色耐性の試料とした。
【0193】
(インク液の調製)
以下の組成からなるシアンインク液を調製した。
【0194】
水 68.5部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 12部
ジエチレングリコール 10部
グリセリン 8部
C.I.Direct Blue 86 1部
界面活性剤(信越化学製 サーフィノール465) 0.5部
シアンのベタ印字画像部を、オフィス室内の窓際に貼り、外気流が曝露されるが直射日光の当たらない環境に6ヶ月間放置した。放置前後のプリント部の反射濃度を赤色の単色光で濃度測定し、下式に従い濃度残存率を求め、これを変褪色耐性の尺度とした。
【0195】
濃度残存率=(6ヶ月放置後の濃度/放置前の濃度)×100(%)
斑ムラの評価は、各試料101〜112につき、ベタ画像記録部分を目視判定し、以下の基準に則って斑ムラの評価を行った。
【0196】
○:30cmの観察距離でも斑ムラが認められない
△:60cmの観察距離では斑ムラが認められない
×:60cm以上の観察距離でも斑ムラが明らかに認められる
実用上問題がないレベルは○、△である。
【0197】
【表2】
【0198】
【発明の効果】
空隙型インクジェット記録用紙のインク受容層に形成された画像の有害ガスによる変褪色を防止し、生産効率が高く、安定した空隙型インクジェット記録用紙の製造方法を提供することができ、コストを下げることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】カーテンスプレーコータによる記録用紙の表面層塗布の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1のA−A′に沿った概略断面図である。
【図3】図2のAで示される部分の拡大概略図である。
【図4】カーテンスプレーコータの噴霧口の側から見た概略図である。
【図5】図1に示すカーテンスプレーコータの概略分解斜視図である。
【符号の説明】
1 カーテンスプレーコータ
1a 噴霧口
101 塗布液供給管
102a、102b 加圧空気供給管
103a〜103d ブロック
104a、104b 加圧空気ポケット
105a、105b 空気用ノズル
105a1、105b1、107a 開口端
106 塗布液ポケット
107 塗布液用ノズル
108 櫛型部材
2 帯状の支持体
201 表面層
202 インク受容層
4 液滴
θ 広がり角度
L 長さ
H 距離
【発明の属する技術分野】
本発明は、空隙型インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)の製造方法に関し、詳しくは、有害ガスによる変褪色耐性に優れた記録用紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて記録用紙に付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。特に、最近ではプリンタの高画質化が進み写真画質に到達していることから、記録用紙も写真画質を実現し、かつ銀塩写真の風合い(光沢性、平滑性、コシなど)を再現することが求められている。
【0003】
銀塩写真の風合いを再現する方法の1つとして、支持体上にゼラチンやポリビニルアルコールなどの親水性バインダを塗設した、いわゆる膨潤型の記録用紙が知られている。しかしながら、この方法で作製された記録用紙は、インク吸収速度が遅い、プリント後に表面がべたつきやすい、保存中に湿度の影響を受けて画像がにじみやすい等の欠点を有している。特に、インク吸収速度が遅いため、吸収される前にインクの液滴同士が混ざり合い、異色間のにじみ(ブリーディング)や同色内の色むら(ビーディング)を発生させやすく、銀塩写真と同程度の画質を得るのは非常に困難となっている。
【0004】
上記膨潤型に代わり主流となりつつあるのがいわゆる空隙型であり、インク受容層に多孔質の無機微粒子を有しており、この多孔質の無機微粒子にインクを吸収させるため、吸収速度が速いのが特徴である。このような空隙型の記録用紙の例としては、特開平10−119423号、同10−119424号、同10−175364号、同10−193776号、同10−193776号、同10−217601号、同11−20300号、同11−106694号、同11−321079号、同11−348410号、同10−178126号、同11−348409号、特開2000−27093、同2000−94830、同2000−158807、同2000−211241等に記載されている。
【0005】
一方、画質や風合いに加え、耐久性や画像保存性に対する要求もより高度になり、耐光性、耐湿性、耐水性なども銀塩写真レベルに到達させる試みが数多くなされている。耐光性向上の例としては、特開昭57−74192号、同57−87989号、同57−74193号、同58−152072号、同64−36479号、特開平1−95091号、同1−115677号、同3−13376号、同4−7189号、同7−195824号、同8−25796号、同11−321090号、同11−277893号、特開2000−37951等に記載されている多数の技術が開示されている。
【0006】
空隙型の記録用紙の場合は、耐光性だけでなく、その空隙構造に起因してオゾン、オキシダント、SOx、NOxなど空気中の極微量の活性な有害ガスによる変褪色を起こしやすい問題がある。特に、一般のカラーインクジェットプリンタに採用されているフタロシアニン系水性染料で変褪色が起こりやすい。
【0007】
変褪色の現象を改善する技術については、インク受容層及びインク受容層上の表面層、出来上がった画像を保護する方法等から種々検討がなされている。インク受容層に対する技術としては、例えば、特開平1−218882号には、インク受容層上にアルミニウム化合物で表面処理した合成シリカを含む層を設ける技術、同1−258980号には、インク受容層にカチオン化処理された顔料を含ませる技術、同2−188287号には、インク受容層を超微粒子状無水シリカとカチオン性ポリマで構成させる技術、同7−266689号、同8−164664号には、インク受容層にβ−シクロアミロース又はポリアクリルアミンを含ませる技術、特開2001−247797には、インク受容層に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性定着剤及びジシアンジアミド系重合物を含ませる技術等が開示されている。
【0008】
これらの改良技術では、空隙構造がより微細なインクジェットの記録用紙に対してはオゾン、オキシダント、SOx、NOxなど空気中の極微量の活性な有害ガスに対する改良の効果が不十分であり、より抜本的な改善が望まれている。
【0009】
オゾン、オキシダント、SOx、NOxなど空気中の極微量の活性な有害ガスから画像を保護するためには、インクが吸着しているインク受容層にこれら有害ガスを入り込ませないことが効果的であることからインク受容層上の表面層に対する技術として、インク受容層上に0.5〜30μmの厚さの透明高分子膜を設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
インク受容層上に有害ガスの侵入を防止する表面層を設けることは効果的であるが、次の欠点を有しているため実用化されていないのが現状である。
【0011】
表面層の塗設は、塗布液をブロック塗布、グラビアロール塗布、押し出し塗布等により支持体に塗布しているが、これらの塗布方式の欠点としては次の事項が挙げられる。
【0012】
1)塗布速度が50m/min以上にすることが困難であるため稼働率が低い。
【0013】
2)塗布面に干渉ムラが発生し易く、商品価値が低くなる。
3)膜厚分布が不安定で均一な膜厚層が得られにくく、有害ガスの侵入を防止するためには不利である。
【0014】
4)膜厚が5〜20μmの薄膜塗布が難しいため、記録用紙が膜厚の影響を受け着色してしまう。又、乾燥工程での負荷が大きくなる。
【0015】
これらのことから、有害ガスの侵入を防止する表面層に対しては、薄く且つ均一な塗設方法の開発が望まれている。
【0016】
薄膜を塗布する方法としてスプレー塗布方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載されているスプレー塗布の場合は、中心が厚く、両端が薄くなり易く安定した薄膜が得られ難い欠点を有している。
【0017】
他の方法として、熱可塑性微粒子を表面に含有する記録用紙をプリント後、加熱又は加圧処理してガス遮断層を発現させる方法が知られている(例えば、特許文献3および4参照。)。又は、画像が記録された記録用紙にラミネート処理を施したり、フレームに入れるなどのガス遮断方法が行われている。
【0018】
これらの方法などは非常に効果的ではあるが、何れも後処理が必要となり、余分な工程が生産効率を上げる面から負荷となっている。特に、幅が60cm以上になる大判インクジェット記録においては、ラミネート処理やヒートロール処理が煩わしいのみならず、専用の機器も大型化し、高額であり、広く一般に普及しているとは言い難い。
【0019】
有害ガスに対する上記の問題の対策方法の1つとしては、膨潤型記録用紙を用いることにより改良はされるが、反面本質的な問題であるインク吸収速度の遅さを改善することが非常に困難である。又、顔料インクを用いたインクジェット記録方法により、ある程度の変褪色問題は解決しうるが、記録用紙上のギラツキ(ブロンジング)などの特性は、品質上十分な画質を与えるレベルに至っていないのが現状である。
【0020】
上記状況より、空隙型インクジェット記録用紙のインク受容層に形成された画像の有害ガスによる変褪色を防止し、生産効率が高く、薄膜の安定した表面層を有する空隙型記録用紙の製造方法の開発が望まれている。
【0021】
【特許文献1】
特開平7−237348号公報
【0022】
【特許文献2】
特開平6−214379号公報
【0023】
【特許文献3】
特開平11−245507号公報
【0024】
【特許文献4】
特開2000−71608号公報
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的としては、空隙型インクジェット記録用紙のインク受容層に形成された画像の有害ガスによる変褪色を防止し、生産効率が高く、安定した空隙型インクジェット記録用紙の製造方法を提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の上述の目的は、以下の構成により達成された。
【0027】
1)支持体上に形成された少なくとも1層の無機微粒子、バインダを含有する多孔質層のインク受容層上に、塗布液をスプレーコータにて塗設し、表面層を形成する空隙型インクジェット記録用紙の製造方法において、該塗布液は平均液滴径が5〜30μmの噴霧状態で該インク受容層上に塗設され、乾燥前の厚さが10〜50μmであることを特徴とする空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0028】
2)前記表面層が、ガスバリア層としての機能を有することを特徴とする1)に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0029】
3)前記表面層を形成する塗布液の粘度が0.7〜2mPa・sであることを特徴とする1)又は2)に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0030】
4)前記スプレーコータがカーテンスプレーコータであることを特徴とする1)〜3)のいずれか1項に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0031】
5)前記スプレーコータにて塗布液を塗設するときの空気の初速が50〜300m/minであることを特徴とする1)〜4)のいずれか1項に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0032】
6)前記スプレーコータとインク受容層との間隔が10〜30mmであることを特徴とする1)〜5)のいずれか1項に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態につき図1〜図5を参照して説明する。尚、本発明に使用する支持体は特に限定はないが、例えば帯状の支持体が好ましい。
【0034】
図1はカーテンスプレーコータによる記録用紙の表面層塗布の一例を示す概略斜視図である。
【0035】
図中、1はスプレーコータの中でも本発明に係る記録用紙の表面層塗布に最も好ましいカーテンスプレーコータを示し、101はカーテンスプレーコータへ塗布液を供給する塗布液供給管を示し、102a、102bはカーテンスプレーコータに供給された塗布液を液滴状にして、連続搬送される(図中の矢印方向)帯状の支持体2上のインク受容層202(図3を参照)上に噴霧塗布するための一対の加圧空気供給管を示す。201は、帯状の支持体2上のインク受容層202(図3を参照)上に形成された表面層を示す。3は、塗布時における帯状の支持体2の平面性を保つためのバックロールを示す。
【0036】
尚、カーテンスプレーコータ1は、塗布時に塗布位置に移動できるように、又、塗布後は待機位置に移動できるように塗布装置のフレーム(不図示)に配設されている。又、バックロール3も回転可能(図中の矢印方向)にフレーム(不図示)に軸支されている。
【0037】
帯状の支持体2は、カーテンスプレーコータの塗布液吐出部に対して相対的に移動させ(搬送させ)、連続的に塗布製造を行う。カーテンスプレーコータの塗布液噴出部は、少なくとも帯状の支持体2の塗布幅(帯状の支持体の搬送方向と交差する方向における帯状の支持体の被塗布部の長さのことを指す)に対応する長さを有し、帯状の支持体2の搬送方向と交差するように配置させることが好ましい。このように配置することで、カーテンスプレーコータに対して帯状の支持体を搬送させ、帯状の支持体上に塗布液を塗布幅にわたって液滴として噴霧することにより、乾燥負荷も少なく、膜厚均一性が高く、薄い塗布膜を塗布できることが可能となる。
【0038】
図2は図1のA−A′に沿った概略断面図である。
図中、103a〜103dはカーテンスプレーコータ1を構成している各ブロックを示す。104aは、ブロック103aとブロック103bとから構成される加圧空気ポケットを示し、105aはブロック103aとブロック103bとの間隙に形成される空気用ノズルを示す。104bは、ブロック103cとブロック103dとから構成される加圧空気ポケットを示し、105bはブロック103cとブロック103dとから構成される空気用ノズルを示す。
【0039】
加圧空気供給源(不図示)より、各加圧空気供給管102a、102bを介して供給された加圧空気は、各加圧空気ポケット104a、104bに一旦溜められた後、各空気用ノズル105a、105bを介して各開口端105a1、105b1(図3を参照)より噴出される。
【0040】
106は、ブロック103cとブロック103bとから構成され、塗布液供給管より供給される塗布液を一次的に溜める塗布液ポケットを示す。107は、ブロック103cとブロック103bとの間隙に挟持された櫛型部材108とにより形成される塗布液用ノズルを示す。塗布液ポケット106に溜められた塗布液は塗布液用ノズル107を介して噴霧口1aより噴霧され帯状の支持体2上のインク受容層202(図3を参照)上に塗布される。櫛型部材108に関しては図5で説明する。他の符号は図1と同義である。
【0041】
図3は図2のAで示される部分の拡大概略図である。
図中、105a1、105b1は各空気用ノズル105a、105bの開口端を示し、107aは塗布液用ノズル107の開口端を示す。108aは櫛型部材108(図5を参照)を構成している櫛刃を示す。4は噴霧口1aから噴霧された細分化された塗布液の液滴を示し、202は帯状の支持体2上のインク受容層を示す。噴霧口1aは塗布液用ノズル107の開口端107aと各空気用ノズル105a、105bの各開口端105a1、105b1とを有している。開口端107aの位置は、各開口端105a1、105b1に対して0〜2mmであってもよいし、開口端107aと、開口端105a1、105b1とは同じ位置にあり、櫛刃108aの先端108a1(図5を参照)が各開口端105a1、105b1に対して0〜2mmであってもよい。
【0042】
この範囲に配置することで最適な液滴の噴霧を行うことが可能となる。本図では塗布液用ノズル107の開口端107aの位置は、各空気用ノズル105a、105bの各開口端105a1、105b1の位置と同じの場合を示している。Lは液滴が帯状の支持体のインク受容層上に落ちる面積範囲の搬送方向の長さを示す。θは噴霧される液滴群の広がり角度を示す。Hは、噴霧口1aと帯状の支持体2上のインク受容層202の表面との距離を示す。他の符号は図2と同義である。
【0043】
距離Hは10〜30mmが好ましく、10mm未満の場合は櫛型部材に起因するスジが発生し易くなり、ガスバリア性及びインク吸収性にスジ状のムラを生じる場合がある。30mmを越えた場合は、塗布液の種類によってはスプレーの微細な液滴径を得ることが困難となり、再凝集し好ましい液滴範囲より大きくなりガスバリア性及びインク吸収性にムラが出る場合がある。又、液滴が帯状の支持体に付着せずに周囲に飛び散る割合が増加し周囲を汚染したり塗布液が無駄になる場合がある。
【0044】
次に、図3を用いて、液滴の形成及び噴霧塗布状態を説明する。塗布液用ノズル107の開口端107aより吐出された塗布液は、塗布液用ノズル107の上下に近接して設けられた各空気用ノズル105a、105bの各空気用ノズル105a、105bの開口端105a1、105b1から噴出する加圧空気により、細分化され液滴4として、噴霧口1aから帯状の支持体2上のインク受容層202の表面に均一に噴霧塗布される。
【0045】
インク受容層202上に噴霧塗布する塗布液の面積範囲は、常に均一であることが好ましいが、特に、液滴径分布が均一であること、搬送方向における長さLが塗布幅にわたって均一であることが好ましい。また、噴霧口1aを基点として帯状の支持体に対し、噴霧される液滴群の広がり角度θは、塗布幅にわたって均一であることが好ましい。インク受容層202上に落ちる衝突速度が均一であることが好ましい。これらによって、より塗布膜厚の均一性を確保することが可能となる。
【0046】
塗布幅方向において液滴径分布が均一であるとは、具体的には、塗布幅方向で、平均液滴径の変動が、±20%以下であることを言う。より好ましくは±10%以下である。
【0047】
平均液滴径の変動は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、計算することが可能である。具体的には以下の測定法により行う。
【0048】
まず、塗布液を液滴として噴霧するカラースプレーコータから、塗布液を噴霧させ、その噴霧状態を安定させる。噴霧開始直後では、塗布液の吐出量やガス圧が一定せず噴霧状態が安定しないので、所定の時間噴霧を続けることで安定させることができる。
【0049】
次に、液滴4の大きさ(平均液滴径)は、噴霧状態が安定した液滴群に対し、レーザー回折式粒度分布測定装置としてスプレーテックRTS5123(マルバーン社製)を用い、塗布幅方向において等間隔で5ヶ所、平均液滴径を測定する。帯状の支持体に落ちる液滴群の塗布幅方向の両端(塗布端)は、通常、噴霧濃度が極端に低くなるため有効塗布幅にはカウントしない。よって、有効塗布幅の両端を測定点の両端2点とする。具体的には、塗布端から1cm内側に入った所を測定点の両端2点とし、その内側の等間隔3点を加えて計5点とし、これを測定点とする。この5ヶ所で測定された平均液滴径から変動率を計算する。
【0050】
尚、平均液滴径は、スプレーテックRTS5123を用いれば簡単に測定できるが、前記測定箇所における液滴群の各液滴径を測定し、液滴径を横軸にとって積算プロットしたときに、体積パーセントで50%の位置にくる液滴径のことをさす。
【0051】
また、液滴がインク受容層上に落ちる面積範囲の搬送方向の長さが均一であるとは、塗布幅方向で、前記長さの変動が、±10%以下であることを言う。より好ましくは±5%以下である。
【0052】
尚、インク受容層上に落ちる液滴の面積範囲の搬送方向の長さの変動は、液滴のインク受容層上への接液部を可視化することによって測定することが可能である。具体的には以下の測定法により行う。
【0053】
まず、上記液滴径の変動の測定法と同様に、塗布液を液滴として噴霧するカーテンスプレーコータから、塗布液を噴霧させ、その噴霧状態を安定させる。
【0054】
次に、塗布幅方向において等間隔で5ヶ所、塗布幅方向から見た噴霧の様子を写真撮影する。撮影する5ヶ所の定義は上記同様である。カーテンスプレーコータの噴霧口1aを基点として、インク受容層に向かって広がる略三角形の噴霧の様子が5枚撮影されることになる。各三角形の底辺の長さ(インク受容層との接液部の長さ)が、インク受容層上に落ちる液滴の面積範囲の搬送方向の長さである。5ヶ所で撮影し、計測した該搬送方向の長さから、変動値を計算する。
【0055】
尚、各測定箇所において写真撮影する場合、塗布幅方向に対し直行する方向(帯状支持対の搬送方向)から1mmのスリット光を、噴霧される液滴に対して当てることにより、測定箇所の三角形を浮き上がらせ、写真撮影を行うことが出来る。
【0056】
また、インク受容層上に落ちる液滴の広がり角度が均一であるとは、塗布幅方向で、カーテンスプレーコータの噴霧口1aを基点として、インク受容層上に落ちる液滴の落下角度の変動が、±10%以下であることを言う。より好ましくは±5%以下である。
【0057】
液滴の広がり角度の変動は、カーテンスプレーコータの噴霧口を可視化することで測定し、計算することができる。具体的な測定方法は、インク受容層上に落ちる液滴の面積範囲の搬送方向の長さ変動の測定法に準じ、同様に5枚の撮影写真から、それぞれの広がり角度を計測し、変動を算出する。
【0058】
また、インク受容層上に落ちる液滴群の空間密度が均一であるとは、塗布幅方向で、インク受容層上に落ちる液滴群の空間密度の変動が、±10%以下であることを言う。より好ましくは±5%以下である。
【0059】
液滴群の空間密度の変動は、レーザー光の透過密度を用いることで測定することができる。具体的には、上記液滴径の変動の測定法に準じる。スプレーテックRTS5123を用い、上述のごとく塗布幅方向において等間隔の5ヶ所で、噴霧される液滴群のレーザー光不透過率を測定する。ここで不透過率を、液滴群の空間密度として扱う。5ヶ所の測定値から変動率を計算する。
【0060】
液滴の大きさ(平均液滴径)は5〜30μmであり、更に好ましくは5〜20μmである。5μm未満の場合は、塗膜に干渉ムラが発生し、インク受容層が着色して見える様になるため好ましくない。30μmを越えた場合は、塗膜全面に液滴が付着しなくなるため、白抜け部分が生じ易くなり、塗布ムラが発生し、ガスバリア性及びインク吸収性にムラが出るため好ましくない。
【0061】
塗布液用ノズルからの塗布液の供給量は、所望の塗布膜厚、塗布液の濃度、塗布速度等により一概には規定できないが、概ね塗設量として、1〜50g/m2の範囲が好ましい。1g/m2未満では、塗布液の種類によっては安定で均一な塗布膜を形成するのが難しくなる場合がある。50g/m2を越えると乾燥負荷等に影響が表れ、塗布液の種類によっては乾燥ムラが発生し易くなる場合がある。
【0062】
表面層201の乾燥前の厚さは10〜50μmであり、更に好ましくは15〜30μmである。10μm未満では、表面層のガスバリア性を均一にすることが困難となり、ムラが発生し易くなるため好ましくない。50μmを越えた場合、乾燥ムラが発生し易く、インク吸収ムラの原因となり又、乾燥負荷低減の観点からも好ましくない。乾燥前の表面層の厚さは、一定面積の帯状の支持体の乾燥前後の質量変化より測定した値である。
【0063】
このようなカーテンスプレーコータを用いて、上述のごとく塗布幅にわたって噴霧状態の均一性を高める方法としては、塗布液の粘度を比較的低くすること、空気用ノズルから噴出するガス圧を高くすることにより可能である。またカーテンスプレーコータの塗布液用ノズルの開口端の面積を小さくすること、開口端のピッチを狭くすることなどにより、噴霧の均一性を高めることが可能である。
【0064】
本発明に係る表面層用の塗布液の粘度は、0.7〜2mPa・sが好ましい。0.7mPa・s未満の場合は、塗布液用ノズル内での均一な分配が困難となり、幅手で分布を生じる場合がある。2mPa・sを越えた場合は、好ましい大きさの液滴径(30μm以下)とすることが非常に困難となり、ガスバリア性にムラが発生し易くなる場合がある。
【0065】
また、塗布幅にわたって均一な液滴の噴霧を行うには、塗布液の表面張力を20〜70mN/mに調整すること、好ましくは20〜50mN/m、さらに好ましくは20〜30mN/mとすることである。
【0066】
各空気用ノズル105a、105bの開口端から噴出する加圧空気の初速は50〜300m/minが好ましく、50m/min未満の場合は、微細な液滴(30μm以下)を形成できなくなることにより、ガスバリア性及びインク吸収性にムラが生じる場合がある。300m/minを越えた場合は、液滴が帯状の支持体に付着する効率が低下することにより、周囲を汚染したり、塗布液がムダになる場合がある。
【0067】
加圧空気の供給条件としては、概ね1〜50CMM/m(塗布幅あたりの流量)の範囲が好ましく、その時の空気用ノズルでの内圧としては、塗布の均一性の観点から、10kPa以上であることが好ましい。空気用ノズルからは、塗布に適した気体であればよく空気に限定することはなく、例えば不活性ガスであるチッソ、ヘリウム等が挙げられる。
【0068】
図4は、カーテンスプレーコータ1の噴霧口1aの側から見た概略図である。塗布液用ノズル107の開口端107aは、カーテンスプレーコータ1の噴霧口1aの塗布幅方向に複数個が配置されている。開口端107aの数は特に限定はなくカーテンスプレーコータ1の塗布幅、使用する塗布液の種類により適宜変更することが可能であるが、開口端107aの間隔(ピッチ)は一定であることが好ましい。Nは開口端107aの幅を示し、Mは櫛型部材108(図5を参照)の櫛刃108a(図5を参照)の先端108a1の幅を示す。開口端107aの幅Nは、50〜300μmの範囲が好ましい。50μm未満の場合は、強度が弱くなり不均一になり易く、更に詰まり易くなりスジを生じ易くなる場合がある。300μmを越える場合は、微細な液滴(30μm以下)を形成することが困難となる場合がある。櫛刃の先端108a1の幅Mは、開口端107aの幅Nと配置する数により適宜設定することが好ましい。また、開口端107aの形状は特に限定はなく、櫛型部材108(図5を参照)の櫛刃108a(図5を参照)の形状を変更することで変更が可能である。本図では矩形の場合を示している。他の符号は図2、図3と同義である。
【0069】
図5は図1に示すカーテンスプレーコータの概略分解斜視図である。
図中、109a、109bは側板を示す。108は、ブロック103cとブロック103bとの間隙に挟持し、塗布液用ノズル107を形成するための櫛型部材108を示し、108aは櫛型部材108を構成している櫛刃を示し、108a1は櫛刃108の先端を示す。110は組み立て用のネジ穴を示し、111は組み立て用のネジを示す。カーテンスプレーコータ1は各ブロック103a〜103dと各側板109a、109bとをネジ111により固定し組み立てることが可能である。
【0070】
本発明に係る表面層を構成する塗布液には、下記有機粒子A又は有機微粒子Bを含有することが好ましい。本発明に係る有機微粒子Aとは、SP値が18.414〜30.69(MPa)1/2で、かつ沸点が120℃以上の水溶性有機溶媒により溶解又は膨潤する水に不溶の有機微粒子で、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子と定義する。
【0071】
本発明でいうSP(Solubility Parameter)値とは、溶解度パラメーターのことであり、物質の溶解性を予測するための一つの有用な尺度である。SP値の単位は(MPa)1/2で表され、25℃における値を指す。
【0072】
有機溶媒のSP値に関しては、例えば、「POLYMER HANDBOOK」(J.Brandrup他、A Wiley−interscience Publication)のIV−337頁に記載されている他、各種の文献などに掲載されている。
【0073】
本発明で用いることのできる水溶性有機溶媒(括弧内に、代表的なSP値を示す)の例としては、アルコール類(例えば、ブタノール(23.3)、イソブタノール(21.5)、セカンダリーブタノール(22.1)、ターシャリーブタノール(21.7)、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール(23.3)、ベンジルアルコール(24.8)等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール(29.9)、ジエチレングリコール(24.8)、トリエチレングリコール(21.9)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール(25.8)、ジプロピレングリコール(20.5)、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール(21.1)、ペンタンジオール、グリセリン(33.8)、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールのアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(23.3)、エチレングリコールモノエチルエーテル(21.5)、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(17.6)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(23.3)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン(25.2)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)等が挙げられる。
【0074】
本発明において、特に好ましい水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコールのアルキルエーテル類、複素環類であり、これらから2〜3種選ばれるのが好ましい。
【0075】
本発明に係るSP値が18.414〜30.69の範囲の水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエタノールアミン、2−ピロリドン等が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値19.437、沸点230℃)である。
【0076】
本発明に係る水溶性有機溶媒は、沸点が120℃以上のものが選ばれる。沸点の上限は特に限定されないが、融点が30℃以下のものが好ましい。
【0077】
本発明に係る有機微粒子Aは、重量平均分子量としては5000以上の高分子が好ましく、その材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、SBR、NBR、ポリテトラフルオロエチレン、クロロプレン、タンパク質、多糖類、ロジンエステル、セラック樹脂等、従来公知のものから選ばれる。特に好ましい有機微粒子Aの材質は、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、SBR等であり、変成や共重合によって2種以上の単量体からなる樹脂も好ましく用いられ、樹脂に対して特定の修飾基を付加したものや脱離基を除いたものでもよく、2種以上の材質を混合して有機微粒子を形成してもよく、更には2種類以上の有機微粒子を混合して用いてもよい。
【0078】
本発明でいう「有機溶媒により溶解する」とは、有機微粒子Aとインク中の水溶性有機溶媒が平衡状態で単一の相をなすことを指し、「有機溶媒により膨潤する」とは有機微粒子Aが同水溶性有機溶媒を吸収して体積を増加させることを言う。膨潤したときの好ましい体積増加率は2〜8倍である。
【0079】
本発明に係る有機微粒子Aは、インクジェット記録中で溶解しないために、水に不溶でなければならない。ただし、インク吸収速度を妨げない範囲で水を吸収することは許される。有機微粒子Aの質量に対し20質量%までの水の吸収をしてもよい。また、本発明に係る有機微粒子Aは、顔料インクによるプリント後、該有機微粒子A含有層が軟化する程度の量含まれれば足りるが、好ましくは層中の固形分に対し質量比で50%以上であり、より好ましくは75%以上である。
【0080】
また、本発明に係る有機微粒子Aには、水溶性有機溶媒に対する溶解や膨潤に支障のない範囲で架橋剤を使用してもよい。本発明において、架橋剤としては有機物・無機物を問わず、従来公知の架橋剤を適宜選択して用いることができる。
【0081】
本発明に係る有機微粒子Aの平均粒子径は、記録用紙の表面光沢に大きく影響する。本発明においては、好ましい平均粒子径は1〜100nmであり、より好ましくは5〜100nmである。
【0082】
平均粒子径の測定法としては、例えば、有機微粒子含有層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、多数個の任意の有機微粒子Aの粒径を求め、その単純平均値(個数平均)として求める方法がある。なお、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。又は別の方法としては、有機微粒子Aを適当な分散媒に分散させ、レーザー回折散乱式粒度分布測定によって粒径を求めることもできる。本発明に係る有機微粒子Aの形状は、真球形である必要はなく、針状でも板状でもよい。粒径は、体積から球換算で求められる。
【0083】
次いで、本発明に係る有機微粒子Bについて説明する。
本発明でいう有機微粒子Bとは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上含有するポリマを有し、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子。
【0084】
【化1】
【0085】
〔式中、Xは−O−または−N(R2)−を表し、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xが−O−の場合、Jは、炭素数2〜8を有する、エーテル構造またはチオエーテル構造を有しても良いアルキレン基であり、Yは、ヒドロキシル基、アルコキシル基またはカルバモイル基を表し、Xが−N(R2)−の場合、Jは、単結合または炭素数2〜8を有する、エーテル構造またはチオエーテル構造を有してもよいアルキレン基であり、Yは、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシル基またはカルバモイル基を表す。〕
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上含有するポリマを有し、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子と定義する。
【0086】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位の詳細について、以下説明する。
本発明の目的効果を好ましく発現せしめる観点から、有機微粒子Bとして、前記一般式(1)で表される繰り返し単位は親水性を有することが好ましく、具体的には、下記に示すアクリル系単量体、アクリルアミド系単量体及び/またはメタクリルアミド系単量体等の親水性単量体を重合させて得ることができるが、本発明ではこれらに限定されない。
【0087】
【化2】
【0088】
【化3】
【0089】
【化4】
【0090】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位に親水性を付与しているのは、前記一般式(1)を形成する、X、J及び置換基Y等の各々の部分構造であるが、本発明においては、置換基Yにより親水性が付与されることが好ましい。
【0091】
また、前記一般式(1)で表される繰り返し単位に親水性を付与する為に用いられる置換基としては、『薬物の構造活性相関(ドラッグデザインと作用機作への指針)』(化学の領域増刊122号)構造活性相関懇話会編、南江堂(1980)、p96〜103に記載のような、疎水性パラメータ(π)が負の置換基等を用いることができる。
【0092】
本発明に係る有機微粒子Bは、前記一般式(1)で表されるような特定の繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上もつことが必要であるが、10質量%以上含有することが好ましい。
【0093】
また、有機微粒子B自体としては、親水性ではあっても水溶性ではないことが好ましいので、10〜50質量%未満の範囲の含有率に調整されることが好ましい。
【0094】
以下、本発明に係る有微微粒子Bの構成成分として用いられる、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上含有するポリマの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0095】
【化5】
【0096】
【化6】
【0097】
一方、有機微粒子Bを構成するポリマの他の単量体成分としては、エチレン性不飽和基を有する従来公知の任意のものが選ばれる。これらは、単一の種類であっても、複数種類であっても良い。このような単量体の例としては、アクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステルまたはアルキルアミド等であり、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルアクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、または、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、または、ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート、ジブチルアミノメチルアクリレート、ジヘキシルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、(t−ブチル)アミノエチルアクリレート、ジイソヘキシルアミノエチルアクリレート、ジヘキシルアミノプロピルアクリレート、ジ(t−ブチル)アミノヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらのうち好ましく用いられるのは、スチレン、メチルメタアクリレート、n−ブチルアクリレートである。
【0098】
本発明に係る有機微粒子Bは、水系エマルジョンとして調製し、塗布液を構成することが好ましく、その場合のエマルジョン粒子のイオン性は塗布液と等しいか、または非イオン性であることが好ましい。また、有機微粒子Bを含有する層の塗布液のイオン性は、他の層の塗布液のイオン性と等しいか、または非イオン性であることが好ましい。また、最も好ましいのは有機微粒子Bと塗布液全てのイオン性がカチオン性または非イオン性であることである。
【0099】
通常、インクジェット記録用紙は、室温下で使用されるが、使用前の保存状態は必ずしも室温とは限らず、特に、夏場の密閉された車中では非常に高温状態となるため、そのような環境を経た後でも支障なく使用できることが望まれる。このため、有機微粒子Bのガラス転移温度(Tg)は70℃以上であることが必要であるが、好ましくは、80℃以上であり、更に好ましくは、90℃〜120℃である。
【0100】
前述の有機微粒子A及び有機微粒子Bのガラス転移温度(Tg)が70℃未満の場合には、加熱による有機微粒子の融着を生じやすくなり、その結果として、記録用紙表面の空隙が縮小または減少し、インク吸収速度の低減が起こりやすくなる。
【0101】
ここで、本発明に係る有機微粒子の構成成分であるポリマのTgは、共重合成分としての単量体単独重合体のTgおよび単量体組成比から質量分率によって計算で求めることが可能である。例えば、スチレン(単独重合体Tg=100℃=373K):n−ブチルアクリレート(単独重合体Tg=−54℃=219K)が4:1(質量比)の組成からなるポリマのTgとしては、1/((1/373K)×4/5+(1/219K)×1/5)=327K(=54℃)と求められる。単量体単独重合体のTgについては、POLYMER HANDBOOK(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION)に多数の測定値が掲載されている。
【0102】
また、有機微粒子Bの平均粒子径は100nm以下であることが必要であるが、好ましくは60nm以下であり、更に好ましくは、20〜40nmであり、本発明に係る有機微粒子Bは、従来公知の乳化重合法等により水中で合成されることが好ましい。その粒子径は、乳化剤の種類や量、単量体成分を調節するなど従来公知の手法により上述の20nm程度から100nm程度までの範囲になるように調節することが可能である。
【0103】
インク受容層の表面に配置する表層として、有機微粒子A又はBの含有率は50〜90質量%であることが好ましいが、表層中での有機微粒子同士の融着を効果的に防止し、インク吸収速度を更に高める観点から、後述するインク受容層で用いるのと同様の無機微粒子を含有しても良い。
【0104】
本発明に係る記録用紙は、インク受容層上に有機微粒子A又は有機微粒子Bを含有する表層を有しているが、本発明でいう表層とは、最表面層に限定されることはなく、インク受容層上にあり本発明の効果が発現する構成であれば、特に限定されるものではない。
【0105】
本発明でいう表層を明示するための好ましい構成例を以下に列挙するが、本発明に係る層構成は、これらに限定されるものではない。
【0106】
1:支持体上に1層以上の下層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている表層が最表層である構成。
【0107】
2:支持体上に1層以上の下層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている表層を設け、更にその上に、表面物性の改良を目的とした薄層を設けた構成。
【0108】
3:支持体上に1層以上の下層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている表層を設け、更にその上に、有害光をカットする目的で、紫外線吸収機能を有する薄層を設けた構成。
【0109】
4:支持体上に1層以上の下層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている表層を設け、更にその上に、マット剤を含む層を設けた構成。
【0110】
5:支持体上に1層以上の下層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている表層を設け、更にその上に、剥離可能な層を設けた構成。
【0111】
上記に記載の構成例の中で最も好ましい構成は、1に示す有機微粒子A又は有機微粒子Bの含有層が最表層である場合である。
【0112】
本発明に係る有機微粒子A又は有機微粒子Bを含む表層には、後述するインク受容層で用いるのと同様の無機微粒子、バインダ成分等を含んでも良い。
【0113】
本発明に係る表層及び後述の多孔質層の少なくとも1層が、多価金属元素を含む化合物を含有することが好ましい。
【0114】
本発明に係る記録用紙の各層には各種添加剤を使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はこれらの共重合体、尿素樹脂、又はメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、アニオン性、カチオン性、非イオン性、ベタイン型の各界面活性剤特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0115】
本発明で用いることのできる支持体としては、従来インクジェット記録用紙用として公知のものを適宜使用でき、吸水性支持体であってもよいが、非吸水性支持体であることが好ましい。すなわち、吸水性支持体の場合よりも非吸水性支持体の場合の方が、記録用紙中に顔料インク中の水溶性有機溶媒が多量に残留し、有機微粒子溶解等に対し効果的に作用するため、本発明の効果を顕著に奏することができると推定している。尚、正確には、「インク中の水溶性有機溶媒を吸収しない支持体」を使用するのが好ましいのであるが、ここでは非吸水性支持体を用いても、本発明の効果を顕著に奏することができると考えている。
【0116】
本発明で用いることのできる吸水性支持体としては、例えば、一般の紙、布、木材等を有するシートや板等を挙げることができるが、特に、紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。又、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することができる。
【0117】
上記紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。
【0118】
紙支持体は、前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。又、必要に応じて抄紙段階又は抄紙機にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理したり、各種コート処理したり、カレンダー処理したりすることもできる。
【0119】
本発明で好ましく用いることのできる非吸水性支持体には、透明支持体及び不透明支持体がある。透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料を有するフィルム等が挙げられ、中でもオーバーヘッドプロジェクター(OHP)用として使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、50〜200μmが好ましい。
【0120】
また、不透明支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆる、RCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに硫酸バリウム等の白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0121】
前記各種支持体とインク受容層の接着強度を大きくする等の目的で、インク受容層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明に係る記録用紙は必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
【0122】
本発明に係る記録用紙では、原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。
【0123】
そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
紙支持体に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPの何れも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP又はLDPの比率は10〜70質量%が好ましい。
【0124】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0125】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長は、JIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0126】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
【0127】
原紙は抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。また、原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良い。
【0128】
原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0129】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0130】
特に、インク受容層側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行われているようにルチル又はアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して通常3〜20質量%、好ましくは4〜13質量%である。
【0131】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、またポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。上記ポリエチレン被覆紙においては紙中の含水率を3〜10質量%に保持するのが特に好ましい。
【0132】
本発明に係る記録用紙の空隙層及び下引き層など必要に応じて適宜設けられる各種のインク受容層を支持体上に塗布する方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができる。好ましい方法は、各層を構成する塗布液を支持体上に塗設して乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての親水性バインダ層を1回の塗布で済ませる同時重層塗布方法が好ましい。
【0133】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0134】
次いで、本発明に係る下層及び多孔質層について説明する。
本発明に係る下層は、材質として従来公知のものから適宜選択される。
【0135】
非多孔質層を構成する主成分としては水溶性ポリマ、油溶性ポリマなどを従来公知の方法で塗工したものが考えられるが、塗工に際し有機溶剤を必要としない水溶性ポリマが好ましい。水溶性ポリマの例としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。または、非水溶性のポリマを水中に分散したエマルジョンを塗工したものも好ましく、この場合のポリマの材質としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、SBR、NBR、ポリテトラフルオロエチレン等が考えられる。
【0136】
本発明において、下層としては、多孔質層であることが好ましい。本発明における多孔質とは、5〜200nm程度の孔径をもつ空隙を多数有することを指す。空隙同士は単独に孤立するのではなく、連続的にお互いに導通していることが好ましい。この場合の空隙径の定義としては、例えば、水銀圧入法による測定値を用いることができる。
【0137】
以下、好ましい多孔質層について説明する。
多孔質層は、主に親水性バインダと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、二種以上のポリマを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子および親水性または疎水性樹脂を含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬し、固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダに対して、概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダを含有する塗布液を支持体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を形成する方法等が知られている。本発明においては、多孔質層に、平均液滴径が100nm以下の各種無機固体微粒子を含有させることによって形成されることが、特に好ましい。
【0138】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0139】
無機微粒子の平均液滴径は、粒子そのものあるいは多孔質層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0140】
無機微粒子としては、シリカ、及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましい。
【0141】
本発明で用いることのできるシリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられるが、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカが好ましく、中でも気相法により合成された微粒子シリカは、高い空隙率が得られるので好ましい。また、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。
【0142】
無機微粒子は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機微粒子の一次粒子の平均液滴径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0143】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均液滴径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社製のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリームインダクターミキサーなどにより、容易に吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することができる。
【0144】
本発明においては、インク受容層に水溶性バインダを用いることができる。本発明で用いることのできる水溶性バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性バインダは、二種以上併用することも可能である。
【0145】
本発明で好ましく用いられる水溶性バインダは、ポリビニルアルコールである。
【0146】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0147】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0148】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0149】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0150】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0151】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0152】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0153】
本発明においては、染料定着剤として多価金属化合物を用いることが好ましく、本発明の目的効果を達成する範囲において、それらの化合物と共に、カチオン性ポリマを併用することを妨げるものではない。
【0154】
カチオン性ポリマの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、などが挙げられる。
【0155】
また、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性ポリマ、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0156】
インク受容層で用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、多孔質層の空隙率、無機顔料の種類、水溶性バインダの種類に大きく依存するが、一般には、記録用紙1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0157】
また、インク受容層に用いられる無機微粒子と水溶性バインダの比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に、3:1〜10:1であることが好ましい。
【0158】
また、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマを含有しても良く、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0159】
多孔質層において、空隙の総量(空隙容量)は記録用紙1m2当り20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0160】
インク保持能を有する多孔質層において、固形分容量に対する空隙容量を空隙率という。本発明において、空隙率を50%以上にすることが、不必要に膜厚を厚くさせないで空隙を効率的に形成できるので好ましい。
【0161】
空隙型の他のタイプとして、無機微粒子を用いてインク受容層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョン、これに水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ポリビニルアルコールを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク受容層を形成させてもよい。この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、さらにエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。上記ポリウレタン樹脂を用いたインク受容層は、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0162】
本発明においては、硬化剤を使用することが好ましい。硬化剤は、インクジェット記録用紙作製の任意の時期に添加することができ、例えば、インク受容層形成用の塗布液中に添加しても良い。
【0163】
本発明においては、インク受容層形成後に、水溶性バインダの硬化剤を供給する方法を単独で用いても良いが、好ましくは、上述の硬化剤をインク受容層形成用の塗布液中に添加する方法と併用して用いることである。
【0164】
本発明で用いることのできる硬化剤としては、水溶性バインダと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性バインダと反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性バインダが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性バインダの種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0165】
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0166】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0167】
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化する事が出来る。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることが出来る利点がある。上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性バインダ1g当たり1〜600mgが好ましい。
【0168】
本発明に係る記録用紙のインク受容層及び必要に応じて設けられるその他の層には、上述した以外の各種添加剤を使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はこれらの共重合体、尿素樹脂、又はメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、アニオン性、カチオン性、非イオン性、ベタイン型の各界面活性剤特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0169】
インク受容層は、2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらのインク受容層の構成はお互いに同じであっても異なっていても良い。
【0170】
上記のような多孔質層は、特に、インクジェット記録方法に好ましく用いられる。インクジェット記録方法に好ましい多孔質層の空隙容量は10〜30ml/m2である。
【0171】
本発明の記録用紙における塗工層は、従来公知の塗布方法で塗設することができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、スライドビード塗布方法、カーテン塗布方法、スロットノズルスプレー塗布方法あるいは、米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等が、好ましく用いられる。
【0172】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。尚、実施例中で「%」は特に断りのない限り質量%を示す。
【0173】
実施例1
〈多孔質インク受容層塗布済み帯状の支持体の作製〉
(分散液の調製)
カチオン性ポリマ(P1)の15%水溶液100gに、一次粒子の平均粒子径が12nmの微粒子シリカ(トクヤマ製、QS−20)の25%水分散液500g、ついで硼酸3.0g、ホウ砂0.7gを添加し、高速ホモジナイザーで分散し、青白色澄明な分散液を得た。
【0174】
【化7】
【0175】
(塗布液の調製)
上記調製した分散液を45℃に昇温し、ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA203)の10%水溶液及びポリビニルアルコール(クラレ製、PVA245)の6%水溶液をそれぞれ45℃に昇温した後に添加した。次いで、45℃の純水を加えて液量を調整して、半透明状の塗布液を得た。
【0176】
(塗布)
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚み230μm)上に、ワイヤーバーを用いて上記塗布液1を塗布、乾燥して、多孔質インク受容層塗布済み帯状の支持体を作製した。多孔質インク受容層塗布済み帯状の支持体の下層における各成分の付量は以下の通りで、乾燥膜厚は35μmである。
【0177】
微粒子シリカ 15g/m2
カチオン性ポリマ(P1) 2.2g/m2
ポリビニルアルコール 2.3g/m2
インク受容層用塗布液の塗布後は、10℃に保った冷却ゾーンを15秒間通過させて膜面の温度を10℃以下にまで低下させたあと、以下の温度の風を順次インク受容層表面に吹き付けながら乾燥工程の各ゾーンを通過させて乾燥した。
【0178】
なお、全乾燥工程は360秒とし、このうち前半の270秒は、吹き付ける風の平均相対湿度を30%以下とした。270秒以降は、相対湿度が40〜60%の調湿ゾーンとした。
【0179】
〔表面層の塗布〕
図5に示すカーテンスプレーコータを用い、下記に示す塗布液の平均液滴径及び乾燥前膜厚を表1に示す如く変化し、先に作製した多孔質インク受容層塗布済み帯状の支持体の多孔質インク受容層の上に表面層の塗設を行い試料101〜112を作製した。
【0180】
尚、平均液滴径の変化は、スプレーコータ内部の圧力を調整することで行った。又、乾燥前の膜厚の変化は、塗布液を調整するときの水の量を表1に示す様に変え、塗布液の送液量を電磁流量計で測りポンプの回転数を調整することで行った。
【0181】
表面層の塗設の条件として、塗布液の温度は40℃、空気の空気用ノズルからの初速200m/sec、カーテンスプレーコータの噴霧口とインク受容層との間隙は15mm、塗布速度は200m/secで行った。
【0182】
〈塗布液の調製〉
以下の組成からなる塗布液を調製した。
【0183】
分散液−1 99ml
有機微粒子エマルジョン−1 250ml
アクリル系エマルジョン 11ml
水の量は表1を参照。
【0184】
各試料101〜112用の塗布液の調製に使用した水の量及び塗布液の粘度を表1に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
(分散液−1の調製)
カチオン性ポリマ(P−1)15%水溶液100gに1次粒子の平均粒子径が12nmの微粒子シリカ(トクヤマ製、QS−20)の25%水分散液500g、ついで硼酸3.0g、ホウ砂0.7gを添加し、高速ホモジナイザーで分散し、青白色澄明な分散液−1得た。
【0187】
(有機微粒子エマルジョン−1の調製)
n−ブチルアクリレート:スチレン:2−ヒドロキシエチルメタクリレート:t−ブチルメタクリレート=10:50:20:20(質量比)のモノマーを用い乳化重合して、有機微粒子エマルジョン−1を調製した。用いた活性剤はステアリルトリメチルアンモニウムクロライドである。ガラス転位点(Tg)は76℃、レーザー散乱法で得られたエマルジョンの粒子径は30nmである。
【0188】
(アクリル系エマルジョン)
第一工業株式会社製の粒子径30nmで、非イオン性界面活性剤を使用し、ガラス転位点(Tg)が−30℃であるアクリル系エマルジョンを使用した。
【0189】
(評価)
得られた各試料101〜112に付き、虹ムラ、変褪色耐性及び斑ムラの評価を行い、結果を表2に示す。
【0190】
虹ムラの評価は、各試料101〜112につき、未記録部分の表面を目視判定し、以下の基準に則って虹ムラの評価を行った。
【0191】
○:30cmの観察距離でも虹ムラが認められない
△:60cmの観察距離では虹ムラが認められない
×:60cm以上の観察距離でも虹ムラが明らかに認められる
実用上問題がないレベルは○、△である。
【0192】
変褪色耐性の評価は、各試料101〜112について、以下に示すインクを、インクジェットプリンタMJ−800C(セイコーエプソン(株)製)を用いて、各試料101〜112に各色ベタ画像を印字した。インク吐出量は12ml/m2であった。この画像を23℃・55%RHの環境下で1時間乾燥させ変褪色耐性の試料とした。
【0193】
(インク液の調製)
以下の組成からなるシアンインク液を調製した。
【0194】
水 68.5部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 12部
ジエチレングリコール 10部
グリセリン 8部
C.I.Direct Blue 86 1部
界面活性剤(信越化学製 サーフィノール465) 0.5部
シアンのベタ印字画像部を、オフィス室内の窓際に貼り、外気流が曝露されるが直射日光の当たらない環境に6ヶ月間放置した。放置前後のプリント部の反射濃度を赤色の単色光で濃度測定し、下式に従い濃度残存率を求め、これを変褪色耐性の尺度とした。
【0195】
濃度残存率=(6ヶ月放置後の濃度/放置前の濃度)×100(%)
斑ムラの評価は、各試料101〜112につき、ベタ画像記録部分を目視判定し、以下の基準に則って斑ムラの評価を行った。
【0196】
○:30cmの観察距離でも斑ムラが認められない
△:60cmの観察距離では斑ムラが認められない
×:60cm以上の観察距離でも斑ムラが明らかに認められる
実用上問題がないレベルは○、△である。
【0197】
【表2】
【0198】
【発明の効果】
空隙型インクジェット記録用紙のインク受容層に形成された画像の有害ガスによる変褪色を防止し、生産効率が高く、安定した空隙型インクジェット記録用紙の製造方法を提供することができ、コストを下げることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】カーテンスプレーコータによる記録用紙の表面層塗布の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1のA−A′に沿った概略断面図である。
【図3】図2のAで示される部分の拡大概略図である。
【図4】カーテンスプレーコータの噴霧口の側から見た概略図である。
【図5】図1に示すカーテンスプレーコータの概略分解斜視図である。
【符号の説明】
1 カーテンスプレーコータ
1a 噴霧口
101 塗布液供給管
102a、102b 加圧空気供給管
103a〜103d ブロック
104a、104b 加圧空気ポケット
105a、105b 空気用ノズル
105a1、105b1、107a 開口端
106 塗布液ポケット
107 塗布液用ノズル
108 櫛型部材
2 帯状の支持体
201 表面層
202 インク受容層
4 液滴
θ 広がり角度
L 長さ
H 距離
Claims (6)
- 支持体上に形成された少なくとも1層の無機微粒子、バインダを含有する多孔質層のインク受容層上に、塗布液をスプレーコータにて塗設し、表面層を形成する空隙型インクジェット記録用紙の製造方法において、該塗布液は平均液滴径が5〜30μmの噴霧状態で該インク受容層上に塗設され、乾燥前の厚さが10〜50μmであることを特徴とする空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記表面層が、ガスバリア層としての機能を有することを特徴とする請求項1に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記表面層を形成する塗布液の粘度が0.7〜2mPa・sであることを特徴とする請求項1又は2に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記スプレーコータがカーテンスプレーコータであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記スプレーコータにて塗布液を塗設するときの空気の初速が50〜300m/minであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記スプレーコータとインク受容層との間隔が10〜30mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の空隙型インクジェット記録用紙の製造方法。
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