JP2004090588A - インクジェット記録用紙及びインクジェット記録用紙の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、各機能性添加剤の効果を十分に発揮すると共に、製造コストの大幅な増大を伴うことなく、画像ムラ、筋ムラが改良され、かつカール特性に優れた高品質の多孔質層を有するインクジェット記録用紙を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、親水性バインダーと微粒子とを含有する水溶性塗布液を塗布して多孔質層を形成し、該多孔質層の乾燥終了以降で、かつロール状に巻き取る前に、添加剤含有溶液を該多孔質層に付与し、付与された該添加剤含有溶液を乾燥させることによって得られたことを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に、親水性バインダーと微粒子とを含有する水溶性塗布液を塗布して多孔質層を形成し、該多孔質層の乾燥終了以降で、かつロール状に巻き取る前に、添加剤含有溶液を該多孔質層に付与し、付与された該添加剤含有溶液を乾燥させることによって得られたことを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)及びインクジェット記録用紙の製造方法に関し、更に詳しくは、画像ムラを抑制させた多孔質層を有するインクジェット記録用紙及びインクジェット記録用紙の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は、急速な画質向上が図られてきており、銀塩写真画質に迫りつつある。この様な写真画質をインクジェット記録で達成するための手段として、使用する記録用紙においても、様々な技術改良が試みられており、例えば、高平滑性を有する支持体上に、インクを吸収するための微小な空隙を有する多孔質層を設けた記録用紙は、高インク吸収性や高乾燥性であることから、最も写真画質に近いものが得られる方法の一つになりつつある。
【0003】
上述の多孔質インク層は、主に親水性バインダーと微粒子とで形成されており、微粒子としては無機または有機の微粒子が知られているが、一般的には、より微粒子で光沢性が高い無機微粒子が用いられる。そして、該微粒子に対して比較的少量の親水性バインダーを使用することにより、微粒子間に空隙部が形成されて多孔質層が得られる。
【0004】
一般に、インク受容層に対しては、様々な特性が要求され、これらの特性を改良するために、以下に記載の各添加剤の使用が提案されている。
【0005】
1:高い発色性や光沢を達成するために、約0.1μm以下の多孔質を形成する安定な微粒子
2:微粒子の保持力が高く、かつインク吸収速度を低下させないための低膨潤性親水性バインダー
3:インク吸収速度や皮膜の耐水性を改良するための親水性バインダーの架橋剤
4:最適なドット径を達成するため、記録用紙表面に分布した界面活性剤や親水性ポリマー
5:色素の滲みや耐水性を改良するためのカチオン性の定着剤
6:色素画像の光や酸化性ガスなどによる退色性を改良するための退色防止剤
7:白地を改良するための蛍光増白剤や色調調整剤(赤み剤や青み剤など)
8:表面の滑り性を改良するためのマット剤や滑り剤
9:皮膜に柔軟性を持たせるための各種のオイル成分やラテックス粒子あるいは水溶性可塑剤
10:色素の滲みや耐水性あるいは耐候性を改良するための種々の無機塩類(多価金属塩)
11:多孔質皮膜の膜面pHを調整するための酸やアルカリ類
等が挙げられる。
【0006】
しかしながら、上記の種々の目的で使用する各添加剤をインク受容層を形成する塗布液に添加した場合、多くの添加剤において、製造工程の安定性の観点から、種々の制約を受けるケースが多い。
【0007】
そのような問題点としては、例えば、
A:微粒子や添加剤同士の間で凝集が生じたり、塗布液中で相分離を起こすことにより、ムラのない安定した塗布が困難になる、光沢が低下してマット化する、塗布液のポットライフが短くなり、生産効率が大幅に低下する等の問題が生じる
B:調製した塗布液を長時間停滞させると、塗布液が大きく増粘してゲル化したり、逆に著しく減粘して、支持体上で塗布液が流動しやすくなり、その結果、安定した塗布が困難となり、均質な塗膜が得にくくなる
C:多孔質皮膜を塗布乾燥する際に、表面のひび割れが増大する
D:多孔質皮膜の空隙率が低下する
上記のA項やB項に係る問題は、主に添加剤の電気的な相互作用に基づく場合が多く、例えば、カチオン性の定着剤がその主因となり、アニオン基を有する種々の原材料と反応して、上記のような問題を引き起こす結果となる。
【0008】
一方、上記C項やD項に係る問題は、主に支持体が非吸水性支持体を用いた場合に顕著に発生し、問題を引き起こす。すなわち、吸水性を有していない支持体上に、空隙を有する多孔質層を設けたインクジェット記録用紙の場合、インクジェット記録する際に、全てのインクをインク吸収層である空隙層が一時的に保持する必要があるが、そのためには高い空隙容量を持たなければならず、その結果、厚い塗膜を、しかも高い空隙率で形成させる必要がある。
【0009】
この様な非インク吸収性支持体上に多孔質層を塗布する場合、乾燥膜厚として、25μm以上、好ましくは30μm以上、50μm以下の膜厚になるように塗布することが知られている。このような厚い膜厚の多孔質層を支持体上に塗布する場合の問題点として、多孔質層は本来硬い膜であることから、製造段階で、乾燥時にひび割れが起きやすくなったり、あるいは空隙率が低下する等の問題が発生し、特に、多孔質層を形成する塗布液に、種々の機能を付与するための各種添加剤を添加することにより、その影響はより大きくなる傾向がある。
【0010】
この多孔質層の乾燥時のひび割れは、乾燥時の塗膜収縮に起因するものであり、種々の要因に依存すると考えられるが、その一因として、親水性バインダーの微粒子の保持能力を低下させるような添加剤が存在することにより、ひび割れが起きやすくなると考えられる。
【0011】
また、空隙率は、微粒子同士もしくは微粒子と親水性バインダーとの間に相互作用があると高まる傾向があるが、ある種の添加剤を用いることにより、上記相互作用が減少し、空隙率が低下することがある。すなわち、微粒子同士がより細密充填しやすくなる。
【0012】
一般には、微粒子に対する親水性バインダーの使用量は、多孔質の空隙を埋めてインク吸収性が低下しないように、質量比で概ね1/2倍以下、特に1/3倍以下しか用いることができないのが現状である。このため、親水性バインダーによる微粒子の保護コロイド性は、僅かの添加剤により影響を受けやすくなる。
【0013】
多孔質層の乾燥過程では、少量の親水性バインダーが微粒子の表面を覆いながら、しかも親水性バインダー同士が絡み合って微粒子を保持する保護コロイド性を発揮して多孔質層を形成するが、この時、添加剤が存在すると親水性バインダー間の絡み合いを妨害し、皮膜としての強度を低下させるため、乾燥過程で皮膜が収縮する段階、特に、皮膜の乾燥が終了する付近において、ひび割れが発生しやすい為ではないかと考えられる。
【0014】
通常、インクジェット記録用紙は、連続して走行する支持体上に多孔質層を形成する塗布液を塗布し、乾燥した後、ロール状に巻き取って製造される。また、一旦ロール状に巻き取った後に、特定の添加剤を有する塗布液をその上部に付与する、いわゆるオーバーコートを行う方法(以下、オーバーコート法という)が知られているが、これらの方法の多くは、2回以上に分けて塗布を行う、すなわち2回以上ロール状に巻き取ることになるため、製造コストが大幅に増大する問題がある。また、多孔質層を形成した後、しばらく経時すると、温度履歴や時間のばらつきにより、品質安定性に問題が生じるだけでなく、オーバーコートの際の塗布ムラが生じやすい等の問題が生じやすい。
【0015】
一般に、塗布乾燥直後と経時保存した後の状態では、親水性バインダーの存在状態や結晶化の進行や添加剤の層内分布の再配向等により皮膜状態が異なることが多い。
【0016】
親水性バインダーは、塗布乾燥直後では、溶液状態の分布に近いと考えられるが、経時されて平衡状態になった時には、微粒子や添加剤との相互作用(架橋反応等)の結果、膨潤性が低下する傾向にある。特に、親水性バインダーとして最も有用なポリビニルアルコールなどは、オーバーコート液の吸水性や親水性バインダーに対する膨潤性が乾燥後の経時で変化することが多い。
【0017】
また、多孔質層表面の界面活性剤、親水性バインダーその他拡散性添加剤は、塗布後徐々に変質しやすく、オーバーコート液の塗布性に影響を及ぼし、オーバーコート時のムラを生じやすい。
【0018】
更に、多孔質層の経時による変動は、オーバーコートする添加剤の層内分布や効果に差が生じたりして、品質ばらつきの要因になることがある。
【0019】
多孔質皮膜に添加剤を含有する溶液をオーバーコートして供給する方法としては、インクジェット記録用紙を製造する際の1方法である含浸法として知られているが、多孔質層を形成した直後に、オンラインで製造する方法(一旦ロール状に巻き取らずにオーバーコートする方法)は、全く知られていない。
【0020】
従来、無機微粒子と水溶性樹脂を含む塗布液を支持体上に塗布し、塗布と同時または塗布した層が減率乾燥速度を示す前に、水溶性樹脂の架橋剤を含有する溶液を付与して硬化させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。減率乾燥速度を示す前とは、上記特許文献1にも記載してあるように、恒率乾燥部分のことであり、塗布層中の溶剤の含有量が一定の乾燥条件で有れば時間に比例して減少するような乾燥領域である。
【0021】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、この様な添加剤を恒率乾燥域でオーバーコートした場合、塗布液の溶媒が未だ充分に蒸発し切れていないため、乾燥終点付近でひび割れが発生したり、あるいはオーバーコートした瞬間に、オーバーコート液面に当たる乾燥風や機械的な振動により、吹かれムラ、すなわち表面への気流変動で生じる塗布ムラや搬送ムラを生じやすく、このため、高速塗布では問題があることが判明した。
【0022】
また、無機微粒子と水溶性樹脂からなる層(多孔質層)の表面に、第4級アンモニウム塩基を有するシランカップリング剤を含む溶液をオーバーコートする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、上記特許文献2には、多孔質皮膜を形成するのとオンラインでオーバーコート用の溶液を塗布する記載が無く、従来の一般的方法によるものであり前述の塗布ムラや品質の安定性等の課題がある。
【0023】
本出願人は、先の出願(特願2001−378510)において、支持体上に親水性バインダーと微粒子とを含有する多孔質層を形成する水溶性塗布液を塗布し、該塗布した多孔質層の減率乾燥部以降に、添加剤含有溶液を前記多孔質層上に付与して得られたことを特徴とするインクジェット記録用紙およびその製造方法について提案を行っている。しかしながら、その後の検討結果によれば、多孔質皮膜上に添加剤水溶液をオンラインでオーバーコートする際、オーバーコート時の条件を適切に設定しないと品質上の問題が生じやすいことが判明した。すなわち、多孔質皮膜に水分が残っている状態で添加剤含有溶液をオンラインでオーバーコートした場合、最終的に得られる記録用紙において、特に高速で記録されるインクジェットプリンターで記録した場合にマダラ状のムラが発生しやすいことが判明した。これは、多孔質皮膜中で添加剤が必ずしも均一に分布していないため、ミクロ的に見た場合に多孔質皮膜の吸収速度が変化していたり、あるいは、プリンターのY、M、C、Kの各インクに対するドット拡大率が微妙に変化するなどして、色再現性が変化しているためではないかと推定している。
【0024】
また、塗布後の乾燥を充分行わずにロール状に巻き取った場合、記録用紙の横方向(幅手方向)で含水量ムラが生じやすくなり、このロールを長期間保管した場合、カールが幅手方向で不均一になり、断裁後のシートのカール変動が大きくなりやすかったり、あるいはロールの保管中にロールに凹凸が発生して筋状のムラになりやすいことが判明した。
【0025】
【特許文献1】
特開平11−115308号公報(第1頁)
【0026】
【特許文献2】
特開平8−34160号公報(段落番号0035〜0037)
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の第1の目的は、支持体上に多孔質層を形成させる塗布液を塗布した後、添加剤を含有する溶液をオーバーコートする際、製造コストの大幅な増大を伴うことなく、また、インクジェットプリンターのプリント品質が安定し、画像ムラが低減された高品質のインクジェット記録用紙及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、オンラインオーバーコートしても、ロールの幅手方向でカールのばらつきが少なく、またロールの凹凸を押さえて品質が安定したインクジェット記録用紙及びその製造方法を提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
【0029】
1.支持体上に、親水性バインダーと微粒子とを含有する水溶性塗布液を塗布して多孔質層を形成し、該多孔質層の乾燥終了以降で、かつロール状に巻き取る前に、添加剤含有溶液を該多孔質層に付与し、付与された該添加剤含有溶液を乾燥させることによって得られたことを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0030】
2.前記添加剤含有溶液は、前記多孔質層の乾燥終了後の空隙容量以下の量だけ前記多孔質層に付与することを特徴とする前記1項記載のインクジェット記録用紙。
【0031】
3.前記添加剤含有溶液を乾燥させた後、前記多孔質層が形成されて作製された記録用紙を、ロール状に巻き取ることを特徴とする前記1又は2項に記載のインクジェット記録用紙。
【0032】
4.前記添加剤含有溶液の溶媒が50%以上乾燥された状態で、ロール状に巻き取られることを特徴とする前記3項記載のインクジェット記録用紙。
【0033】
5.前記添加剤含有溶液を多孔質層へ付与した後の乾燥が、温度30℃以上の温風で行うことを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0034】
6.前記添加剤含有溶液の溶媒が、水または水混和性の有機溶媒と水との混合溶液であることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0035】
7.前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙が、30℃以上で少なくとも24時間加温されたことを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0036】
8.前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙が、ロール状に巻き取られた状態又はシート状に断裁された後に、30℃以上で少なくとも24時間加温されたことを特徴とする前記7項記載のインクジェット記録用紙。
【0037】
9.前記支持体が、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆された樹脂被覆紙であることを特徴とする前記1〜8項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0038】
10.前記紙の含水率が、5〜10質量%であることを特徴とする前記9項記載のインクジェット記録用紙。
【0039】
11.前記添加剤含有溶液は、前記多孔質層の乾燥終了後15分以内に前記多孔質層に付与されることを特徴とする前記1〜10項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0040】
12.前記多孔質層は、親水性バインダーに対する微粒子の質量比が2〜20であることを特徴とする前記1〜11項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0041】
13.支持体上に、親水性バインダーと微粒子とを含有する水溶性塗布液を塗布して多孔質層を形成する塗布工程と、
該多孔質層を乾燥させる乾燥工程と、
該多孔質層の乾燥終了以降で、かつ該多孔質層が形成された支持体をロール状に巻き取る前に、添加剤含有溶液を該多孔質層に付与する工程と、
該添加剤含有溶液を乾燥させる工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【0042】
14.前記添加剤含有溶液は、前記多孔質層の乾燥終了後の空隙容量以下の量だけ前記多孔質層に付与することを特徴とする前記13項記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0043】
15.前記添加剤含有溶液を乾燥させた後、前記多孔質層が形成されて作製された記録用紙を、ロール状に巻き取る巻取工程を有することを特徴とする前記13又は14項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0044】
16.前記巻取工程では、前記添加剤含有溶液の溶媒が50%以上乾燥された状態で、前記支持体がロール状に巻き取られることを特徴とする前記15項記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0045】
17.前記添加剤含有溶液を前記多孔質層へ付与した後の乾燥が、30℃以上の温風を用いて行うことを特徴とする前記13〜16項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0046】
18.前記添加剤含有溶液の溶媒が、水または水混和性の有機溶媒と水との混合溶液であることを特徴とする前記13〜17項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0047】
19.前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙を、30℃以上で少なくとも24時間加温させることを特徴とする前記13〜18項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0048】
20.前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙が、ロール状に巻き取られた状態又はシート状に断裁された後に、30℃以上で少なくとも24時間加温させることを特徴とする前記19項記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0049】
21.前記支持体が、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆された樹脂被覆紙であることを特徴とする前記13〜20項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0050】
22.前記紙の含水率が、5〜10質量%であることを特徴とする前記21項記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0051】
23.前記添加剤含有溶液を、前記多孔質層の乾燥終了後15分以内に前記多孔質層に付与させることを特徴とする前記13〜22項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0052】
24.前記多孔質層は、親水性バインダーに対する微粒子の質量比が2〜20であることを特徴とする前記13〜23項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0053】
本発明者らは、上記課題を鑑みて鋭意検討を進めた結果、本発明に係る請求項1〜24のインクジェット記録用紙又はインクジェット記録用紙の製造方法により、インクジェット記録用紙の大幅な製造コストの増大を伴うことなく、画像ムラが抑制され、かつカール特性に優れた高品質のインクジェット記録用紙を提供することができ、また上記効果に加えて、本発明に係る請求項7、8、10、19、20及び22に記載の発明においては、更にインク吸収性を改善させることができ、その結果として筋ムラを低減することができることを見いだし、本発明に至った次第である。
【0054】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る添加剤含有溶液を付与する工程は、支持体上に、親水性バインダーと微粒子とを含有する多孔質層用水溶性塗布液を塗布した後、その塗膜(多孔質層)の乾燥終了以降の段階で行われる。
【0055】
ここで言う乾燥終了とは、多孔質皮膜の含水量がゼロになった状態をいう。また、これは、多孔質皮膜の温度と乾燥温度とが同一になった状態であり、温風により乾燥される場合は、多孔質皮膜の温度が乾燥する風の温度(乾球温度:Db)と等しくなる状態を乾燥終了とする。一般に、塗膜から水分が蒸発している間は、蒸発潜熱のために、塗膜温度は乾燥風のDbより低くなる。
【0056】
乾燥工程では、通常、湿潤状態の塗設物を連続的に搬送しながら、その表面あるいは裏面より、特定の温度及び湿度条件に制御された乾燥風を吹き付けて乾燥させる。
【0057】
湿潤塗膜の乾燥過程は、主に以下のように分類することができる。
乾燥の初期は、恒率乾燥部と呼ばれ、乾燥初期の水や溶剤を多く持つインクジェット記録用紙では、比較的自由な水や溶剤が蒸発潜熱を奪いながら蒸発していくため、多孔質層を有する面側の表面温度はほぼ一定である。この一定温度の期間を恒率乾燥部という。これに対し、親水性バインダーなどとインターラクションのある水や溶剤を蒸発させるときには、蒸発潜熱の他にそのインターラクションを解くためのエネルギーも必要となるので表面温度は上昇する。この期間を減率乾燥部という。減率乾燥部では、表面からの水分の蒸発が層内の塗膜中の水分移動が勝るときに起きる現象であり、一般には空隙が形成され始めるのは、減率乾燥部に入り水分が更に蒸発してからである。
【0058】
次いで、減率乾燥が終了すると、乾燥風の温度とインクジェット記録用紙の表面温度が一致する領域に入る。この時点が、乾燥終点と呼ばれている。
【0059】
以上説明した恒率乾燥部、減率乾燥部及び乾燥終点の確認方法としては、特に制限はないが、例えば、多孔質層を塗設した面の表面温度をモニターして、表面温度が一定である領域を恒率乾燥部、表面温度が上昇する領域を減率乾燥部及び乾燥温度と同一となった時点を、乾燥終点として求めることができる。
【0060】
また、他の方法としては、乾燥工程の各領域に含水量計、例えば、赤外線を用いて分光的に水分を検出する測定機器を設置し、塗膜の含水量を膜表面側からモニターすることにより得られる。また、含水量の減衰曲線からも各々の領域を規定することができる。
【0061】
本発明においては、添加剤含有溶液を付与した後、乾燥をDbが30℃以上の温風で行うことにより、乾燥時間を短縮することができ、その結果生産性の向上を図ることができるだけでなく、表面の点状故障の発生を抑制することができる。更に好ましくは、Dbが35〜80℃であって、相対湿度が60%以下の風で乾燥するのが生産性の観点で好ましい。
【0062】
次に、本発明のインクジェット記録用紙の詳細について説明する。
本発明のインクジェット記録用紙は、支持体上に親水性バインダーと微粒子を含有する多孔質層を形成する水溶性塗布液を塗布し、空隙を有する多孔質層を形成したものである。
【0063】
本発明に係る多孔質層は、主に微粒子と親水性バインダーから形成される。
本発明で用いることのできる微粒子としては、無機微粒子や有機微粒子を用いることができるが、特には、高光沢で、かつ高発色濃度が得られ、更に微粒子が容易に得やすいことから無機微粒子が好ましい。そのような無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。上記無機微粒子は、1次粒子のまま用いても、また、2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0064】
本発明においては、インクジェット記録用紙で高品位なプリントを得る観点から、無機微粒子として、シリカやアルミナが好ましく、更に好ましくはアルミナ、擬ベーマイト、コロイダルシリカもしくは気相法により合成された微粒子シリカであり、気相法で合成された微粒子シリカが特に好ましい。この気相法で合成されたシリカは、表面がAlで修飾されたものであっても良い。表面がAlで修飾された気相法シリカのAl含有率は、シリカに対して質量比で0.05〜5%のものが好ましい。
【0065】
上記無機微粒子の粒径は、いかなる粒径のものも用いることができるが、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。1μmを越えると、光沢性や発色性が低下しやすく、そのため、特には、0.2μm以下が好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。粒径の下限は特に限定されないが、無機微粒子の製造上の観点から、3nm以上、特に5nm以上が好ましい。
【0066】
上記無機微粒子の平均粒径は、多孔質層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0067】
また、微粒子の分散度は、光沢性や発色性の観点から0.5以下が好ましい。0.5以下であると光沢やプリント時の発色性が良好である。特に、0.3以下が好ましい。ここで、微粒子の分散度とは、上記平均粒径を求めるのと同様に電子顕微鏡で多孔質層の微粒子を観察し、その粒径に標準偏差を平均粒径で割ったものを示す。
【0068】
上記微粒子は、1次粒子のままで、あるいは2次粒子もしくはそれ以上の高次凝集粒子で多孔質皮膜中に存在していても良いが、上記の平均粒径は、電子顕微鏡で観察したときに多孔質層中で独立の粒子を形成しているものの粒径を言う。
【0069】
上記微粒子の水溶性塗布液における含有量は、5〜30質量%であり、特に7〜20質量%が好ましい。
【0070】
また、多孔質層中の親水性バインダーに対する微粒子の質量比は、2〜20であることが好ましい。該質量比が2倍以上であれば、十分な空隙率を有する多孔質膜が得られ、空隙容量も十分なものが得られる。また、インクジェット記録時に、親水性バインダーが膨潤して空隙を塞ぐという状況を抑えて、高インク吸収速度を達成できる要因となる。一方、この比率が20倍以下であれば、多孔質層を厚膜で塗布した際であっても、ひび割れが生じにくい。特に好ましい親水性バインダーに対する微粒子の比率は、2.5〜12倍、最も好ましくは3〜10倍である。
【0071】
多孔質層に含有される親水性バインダーとしては、特に制限はなく、従来公知の親水性バインダーを用いることができ、例えば、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーあるいは水分散性のラテックスを用いることができるが、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0072】
ポリビニルアルコールは、無機微粒子との相互作用を有しており、無機微粒子に対する保持力が特に高く、更に、吸湿性の湿度依存性が比較的小さなポリマーであり、塗布乾燥時の収縮応力が比較的小さいため、塗布乾燥時のひび割れに対する適性が優れる。本発明で好ましく用いられるポリビリルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0073】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1000〜5000のものが好ましく用いられる。ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0074】
カチオン変成ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、これらはカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0075】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0076】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0077】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号、および同63−307979号公報に記載されているビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号公報に記載されている水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0078】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0079】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなどの2種類以上を併用することもできる。特に、重合度が2000以上のポリビニルアルコールを使用する場合には、予め、無機微粒子分散液に重合度が1000以下のポリビニルアルコールを無機微粒子に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%添加してから、重合度が2000以上のポリビニルアルコールを添加すると、著しい増粘が無く好ましい。
【0080】
多孔質層の親水性バインダーに対する微粒子の比率は、質量比で2〜20倍であることが好ましい。質量比を2倍以上にすることにより、多孔質層の空隙率が低下し、充分な空隙容量が得にくくなるだけでなく、過剰の親水性バインダーがインクジェット記録時に膨潤して空隙を塞ぎ、インク吸収速度を低下させる要因となることを抑制できる。一方、この比率を20倍以下とすることにより、多孔質層を厚膜で塗布した際に、ひび割れが生じやすくなることを抑制することができる。特に好ましい親水性バインダーに対する微粒子の比率は、2.5〜12倍、最も好ましくは3〜10倍である。
【0081】
本発明のインクジェット記録用紙に用いられる支持体としては、吸水性支持体(例えば、紙など)や非吸水性支持体を用いることができるが、より高品位なプリントが得られる観点から、非吸水性支持体が好ましい。
【0082】
非吸水性支持体は、単に高品位なプリントが得られるということだけでなく、オーバーコートした各添加剤成分が、塗布後に紙中に拡散して、添加剤本来の効果を損うことを抑制できる。
【0083】
好ましく用いられる非吸水性支持体としては、例えば、ポリエステル系フィルム、ジアセテート系フィルム、トリアテセート系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリイミド系フィルム、セロハン、セルロイド等の材料からなる透明または不透明のフィルム、あるいは基紙の両面をポリオレフィン樹脂被覆層で被覆した樹脂被覆紙、いわゆるRCペーパー等が用いられる。
【0084】
上記支持体上に、前記の水溶性塗布液を塗布するに当たっては、表面と塗布層との間の接着強度を大きくする等の目的で、支持体にコロナ放電処理やポリビニルアルコールやゼラチンなどの下引処理等を行うことが好ましい。さらに、本発明のインクジェット記録用紙は、必ずしも白色である必要はなく着色された支持体であってもよい。
【0085】
本発明で好ましく用いられる支持体は、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルムおよび紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体であるが、本発明において特に好ましいのは、ポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体である。
【0086】
以下、最も好ましい態様のポリオレフィンの代表であるポリエチレンでラミネートした紙支持体について説明する。
【0087】
紙支持体に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、例えば、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPまたはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。
【0088】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0089】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0090】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlであることが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と、42メッシュ残分の質量%との和が30〜70質量%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は、20質量%以下であることが好ましい。
【0091】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理を施して、高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS−P−8118に規定の方法に準ずる)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で、20〜200gが好ましい。原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては、前記原紙中に添加できるサイズ剤と同様のものを使用することができる。原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法ににより測定した場合、5〜9であることが好ましい。
【0092】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0093】
また、塗布層側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものも使用することができる。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して、1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%である。
【0094】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目等の微粒面を形成したものも本発明で使用することができる。
【0095】
原紙の表裏のポリエチレン使用量は、水系塗布組成物の膜厚やバック層を設けた後で低湿および高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、本発明に係る水系塗布組成物を塗布する側のポリエチレン層としては20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲であることが好ましい。
【0096】
更に、上記ポリエチレン被覆紙支持体は、以下の特性を有していることが好ましい。
【0097】
1)引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で、縦方向が20〜300N、横方向が10〜200Nであることが好ましい
2)引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で、縦方向が0.1〜2N、横方向が0.2〜2Nが好ましい
3)圧縮弾性率:≧1030N/cm2
4)表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、500秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い
5)裏面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、100〜800秒が好ましい
6)不透明度:直線光入射/拡散光透過条件の測定条件で、可視域の光線での透過率が20%以下、特に15%以下が好ましい
7)白さ:JIS−P−8123に規定されるハンター白色度で、90%以上が好ましい。また、JIS−Z−8722(非蛍光)、JIS−Z−8717(蛍光剤含有)により測定し、JIS−Z−8730に規定された色の表示方法で表示したときの、L*=90〜98、a*=−5〜+5、b*=−15〜+5が好ましい。
【0098】
上記支持体のインク受容層側には、インク受容層との接着性を改良する目的で、下引き層を設けることが好ましい。下引き層のバインダーとしては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーやTgが−30〜60℃のラテックスポリマーなどが好ましい。これらバインダーは、記録用紙1m2当たり0.001〜2gの範囲で用いられる。下引き層中には、帯電防止の目的で、従来公知のカチオン性ポリマーなどの帯電防止剤を少量含有させることができる。
【0099】
上記支持体のインク受容層側と反対側の面には、滑り性や帯電特性を改善する目的でバック層を設けることもできる。バック層のバインダーとしては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーやTgが−30〜60℃のラテックスポリマーなどが好ましく、またカチオン性ポリマーなどの帯電防止剤や各種の界面活性剤、更には平均粒径が0.5〜20μm程度のマット剤を添加することもできる。バック層の厚みは、概ね0.1〜1μmであるが、バック層がカール防止のために設けられる場合には、概ね1〜20μmの範囲である。また、バック層は2層以上から構成されていても良い。
【0100】
下引き層やバック層の塗設に際しては、支持体表面にコロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を併用することが好ましい。
【0101】
上記多孔質層を形成する水溶性塗布液中には、各種の添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、カチオン性媒染剤、架橋剤、界面活性剤(カチオン、ノニオン、アニオン、両性)、白地色調調整剤、蛍光増白剤、防黴剤、粘度調整剤、低沸点有機溶媒、高沸点有機溶媒、ラテックスエマルジョン、退色防止剤、紫外線吸収剤、多価金属化合物(水溶性もしくは非水溶性)、マット剤、シリコンオイル等が挙げられるが、中でもカチオン媒染剤は、印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。
【0102】
カチオン媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基および第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が用いられるが、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いことなどから、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。
【0103】
好ましいポリマー媒染剤は、上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られる。
【0104】
また、親水性バインダーの架橋剤を含有させることも特に好ましい。架橋剤により、多孔質層の耐水性が改善され、また、インクジェット記録時に親水性バインダーの膨潤が抑制されるためにインク吸収速度が向上する。
【0105】
架橋剤としては、従来公知の架橋剤を使用することができ、無機系架橋剤(例えば、クロム化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、ホウ酸類など)や有機系架橋剤(例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、N−メチロール系架橋剤、アクリロイル系架橋剤、ビニルスルホン系架橋剤、活性ハロゲン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エチレンイミノ系架橋剤等)等を使用することができる。架橋剤は2種以上を併用することもできる。
【0106】
これらの架橋剤は、親水性バインダーに対して、概ね1〜50質量%であり、好ましくは2〜40質量%である。
【0107】
親水性バインダーがポリビニルアルコール類であり、微粒子がシリカである場合、架橋剤としては、ホウ酸類やジルコニウム化合物などの無機系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が、特に好ましい。
【0108】
特に好ましい態様として、ポリビニルアルコールとシリカ微粒子を用いた場合には、ホウ酸またはその塩を用いることにより、水溶性塗布液の温度を低下させた際に、その粘度が大きく上昇し、塗膜面に強い風を吹き付けても塗膜の乱れが大幅に抑制され、高速塗布が容易になることから好ましい。ホウ酸またはその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことを示し、具体的には、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸およびそれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)が含まれる。
【0109】
ホウ酸またはその塩の使用量は、塗布液の無機微粒子やポリビニルアルコールの濃度、pH等により広範に変わり得るが、ポリビニルアルコールに対して概ね5〜60質量%、好ましくは10〜40質量%である。
【0110】
ホウ酸を含有する塗布液について、更に詳細に説明する。
上記ホウ酸とポリビニルアルコール親水性バインダーとして含有する塗布液は、40℃における粘度に対して15℃における粘度が20倍以上高いと、塗布後に塗膜を冷却、セットさせた後、強風を吹き付けて乾燥することができ、高速塗布乾燥性の観点で好ましい。好ましい15℃における粘度の上昇は、40℃における粘度の50倍以上であり、特に好ましくは100倍以上である。また、塗布時の温度は、一般に30〜50℃であるが、40℃における塗布液粘度が10〜500mPa・s程度であることが、塗布液の取り扱い性が良好であり好ましい。ここでいう粘度とは、B型粘度計で測定した値を言う。
【0111】
上記のような塗布液物性を得るためには、親水性バインダーと無機微粒子との間に水素結合性の相互作用を持たせることが有効な手段である。この水素結合は、比較的弱い結合のため、温度を上げることで分子運動により容易に切れやすく、高温で低粘度、低温で高粘度になりやすい。それ故に、上記水溶性塗布液を支持体上に塗布した後は、塗布液を冷却して著しく増粘させることが前述の如く好ましい。
【0112】
塗布液の塗布温度は、一般的には、30〜60℃であり、塗布後の冷却温度は塗膜温度が概ね20℃以下になるようにすれば良く、特に、15℃以下にすることが好ましい。
【0113】
冷却は、塗布後の塗設物を、例えば、15℃以下に冷却されたゾーンを一定時間(好ましくは5秒間以上)通過させることで行うことができる。この冷却時点では、あまり強い風を吹き付けないことが、液ヨリを起こさず均一でムラのない塗膜を得る観点から好ましい。
【0114】
一旦冷却した以降は、強い風を吹き付けても、塗布液自体の増粘のため、液ヨリを起こしにくくなり、強い風を吹き付けても液ヨリの発生を抑制することができる。また、吹き付ける強い風の温度は、20℃以上の風を吹き付けることができるが、徐々に風の温度を上げるのが好ましい。
【0115】
水溶性塗布液を支持体上に塗布した後の乾燥は、風を吹き付けたり高温状態のゾーンを通過させる、もしくは両者を併用することで行われる。
【0116】
高温ゾーンを通過させて乾燥させる場合、50〜150℃の乾燥ゾーンを通過させる。この際、乾燥温度は、支持体の耐熱性や塗膜への悪影響などを考慮して適切な乾燥温度を選択することが好ましい。乾燥する風は、通常、相対湿度が10〜50%、好ましくは15〜40%の風で行われる。乾燥時間は、湿潤膜厚にもよるが、概ね10分以内が好ましく、5分以内にするのが特に好ましい。
【0117】
塗布速度は、湿潤膜厚や設備の乾燥能力に依存するが、概ね1分当たり10〜1000m、好ましくは20〜500mである。
【0118】
なお、上記塗布液に添加しても、直ちに反応してゲル化や凝集を起こしたり分解しないが、塗布液の長時間の停滞で反応や分解を起こす特性を有する添加剤は、塗布液に塗布直前にインライン混合する方法を用いることが好ましい。ここでいう塗布直前とは、添加剤の混合後、塗布までの時間が1秒〜2分程度以内を示す。
【0119】
上記塗布液の塗布方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0120】
また、塗布後の乾燥は、従来公知の乾燥方法を用いることができるが、塗布液が低温で増粘しやすい場合には、たとえば写真工学の基礎(銀塩写真編)、256〜259頁(コロナ社発行,1979年)に記載されているようなair loop乾燥やつる巻き乾燥など、乾燥長が膨大であっても乾燥室としては比較的狭い面積で行うことのできる乾燥方式を採用することができる。この方法は高速塗布に適した方法であり、本発明においても塗布液が低温増粘性が高い場合には使用するのが好ましい。
【0121】
本発明の記録用紙に係る多孔質層は、単層であっても多層であっても良く、多層構成の場合には、全ての層を同時に塗布することが、製造コスト低減の観点から好ましい。
【0122】
次に、オーバーコート(多孔質層に付与)する添加剤含有溶液について説明する。
【0123】
オーバーコートする上記溶液が含有する添加剤としては、前記の多孔質層用塗布液に添加することができる化合物であっても、乾燥時にひび割れを増大させ易い化合物、あるいは前記の多孔質層用の塗布液中に添加すると凝集を形成したり、多孔質層用の塗布液の粘度を大幅に低下もしくは増大させる化合物、更には多孔質層用の塗布液中に添加した場合に、塗膜中で水分もしくは他の添加剤との反応等により有効な効果が得にくい種々の化合物に適用することができる。例えば、その添加剤の使用により、pHが変化する有機または無機の酸、もしくは各種のアルカリ性の添加剤、水溶性多価金属イオンの水溶性塩、アニオン、カチオン、両性、もしくはノニオン系の各種界面活性剤、退色防止剤、カチオン性定着剤、親水性バインダーの架橋剤等が挙げられる。
【0124】
多孔質皮膜の膜面pHは、種々の観点から最適なpHが選択される。膜面pHはインク吸収特性、耐光性、滲み耐性、耐水性、ガス退色性、白地変化、ドット径への影響があり、使用するプリンターやインクとの組み合わせで最適なpHが選定される。しかしながら、前述のごとく、多孔質の皮膜を形成する塗布液を調整する場合、塗布液のpHの設定は凝集性や塗布液粘度の観点で制約があり、必ずしも満足のいく膜面pHに合わせることは難しいが、本発明のオンラインオーバーコートの方法によれば方法によれば、塗布液のpHとは独立に記録用紙の膜面pHを1回の塗布(オーバーコート)でコントロールすることが可能である。
【0125】
多孔質皮膜の膜面pHを低下させる目的で使用できる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸などの無機酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、フタル酸、こはく酸、蓚酸、ポリアクリル酸などの有機酸を挙げることができる。この溶液のpHとしては、0〜6が好ましく、pHが1〜5であることが特に好ましい。また、pH調整後の最終の膜面pHは3〜7が好ましく、特に3.5〜6が特に好ましい。
【0126】
一方、多孔質皮膜の膜面pHを増大させる目的で使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ほう砂、燐酸ナトリウム、水酸化カルシウム、有機アミンなどが挙げられる。このアルカリを含有する溶液のpHは8〜14であり、添加剤含有溶液のpHは特に好ましくは9〜12である。
【0127】
記録用紙の多孔質層の膜面pHは、インクの種類によっても異なるが、一般には、より酸性側で染料の耐水性や滲みが改善されるが、耐光性はより高pH側で改良される傾向が大きいため、使用するインクとの組み合わせで最適なpHは選定される。好ましい多孔質表面の膜面pHは、3〜7であり、特に3.5〜6.5が好ましい。ここでいう膜面pHとは、J.TAPPI 49に規定される紙の表面pH測定方法にしたがって測定した値であり、具体的には、記録用紙表面に50μlの純水(pH=6.2〜7.3)を滴下し、市販の平面電極を用いて測定した値を言う。
【0128】
オンラインでオーバーコートする添加剤含有溶液は、親水性バインダーの架橋剤を含有していることが好ましい態様の一つである。
【0129】
本発明で用いることのできる架橋剤としては、前述の架橋剤を挙げることができる。
【0130】
本発明において、多孔質皮膜を形成する水溶性塗布液が、予め親水性バインダーの架橋剤を含有しておき、さらにオーバーコートする添加剤含有溶液がさらに架橋剤を含有する場合には、親水性バインダーの架橋効果が著しく増大して、インク吸収性改良効果が大きく好ましい態様の一つである。これは、多孔質を形成する塗布液中に架橋剤を添加しておくことで、親水性バインダーの分子量が見かけ上増大し、それらが皮膜になった状態で架橋剤を供給することで、膨潤しにくい皮膜が形成されると考えられる。
【0131】
架橋剤をオーバーコートする場合に用いる架橋剤としては、水溶性塗布液に含有する架橋剤と同じであっても、異なっていても良い。オーバーコートする架橋剤は、乾燥終点での多孔質層の親水性バインダーに対して、1〜100質量%、好ましく5〜50質量%の範囲で用いられる。特に好ましい架橋剤は、前述のホウ酸類、ジルコニウム塩、アルミニウム塩もしくはエポキシ系架橋剤である。
【0132】
オンラインでオーバーコートする添加剤含有溶液は、画像安定剤(以下、退色防止剤ともいう)であることも好ましい態様の一つである。
【0133】
本発明では、従来インクジェットで公知の退色防止剤を用いることができる。この退色防止剤は、光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOxなどの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。そのような退色防止剤としては、例えば、特開昭57−74192号、同57−87989号および同60−72785号に記載の酸化防止剤、特開昭57−74193号に記載の紫外線吸収剤、特開昭61−154989号に記載のヒドラジド類、特開昭61−146591号に記載のヒンダードアミン系酸化防止剤、特開昭61−177279号に記載の含窒素複素環メルカプト系化合物、特開平1−115677号および同1−36479号に記載のチオエーテル系酸化防止剤、特開平1−36480号に記載の特定構造のヒンダードフェノール系酸化防止剤、特開平7−195824号および同8−150773号に記載のアスコルビン酸類、特開平7−149037号に記載の硫酸亜鉛、特開平7−314882号に記載のチオシアン酸塩類など、特開平7−314883号に記載のチオ尿素誘導体など、特開平7−276790号および同8−108617号に記載の糖類、特開平8−118791号に記載のリン酸系酸化防止剤が、特開平8−300807号に記載の亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩などが、また、特開平9−267544号に記載のヒドロキシルアミン誘導体等を退色防止剤として挙げることができる。更に、特開2000−263928等に記載のジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンの重縮合物なども、インクジェットにおける有効な退色防止剤の一つである。上記退色防止剤は、多孔質皮膜を形成する塗布液に添加することもできるが、本発明においては、塗布液の凝集やひび割れの増大を防止するには、オーバーコート法が、より多く添加することができ好ましい。
【0134】
退色防止剤の添加量は、記録用紙1m2当たり0.01〜5g、好ましくは0.1〜2gの範囲である。添加量が多ければそれだけ退色防止効果は大きいが、空隙容量を低下させるため、自ずと制限がある。
【0135】
添加剤含有溶液には、カチオン性ポリマーを含有することができる。一般に、カチオン性ポリマーは、染料の定着剤として作用し、耐水性や滲みを防止するため、予め多孔質受容層を形成する塗布液に添加しておくことが好ましいが、塗布液中に添加した際に問題が発生する場合には、オーバーコート法で供給することもできる。例えば、カチオン性ポリマーの添加により、塗布液が経時で増粘したり、あるいは、多孔質層内でカチオン性ポリマーの分布を持たせて発色性を改善する場合などでは、オーバーコート法で供給することが好ましい。カチオン性ポリマーをオーバーコート法で供給する場合、記録用紙1m2当たり0.1〜5gの範囲である。
【0136】
オンラインでオーバーコートする添加剤含有溶液の別の好ましい例は、添加剤が、水溶性多価金属化合物の場合である。
【0137】
水溶性多価金属化合物は、一般に、無機微粒子含有の塗布液中に存在すると凝集を起こしやすいことが多く、これにより微少な塗布故障や光沢性の低下を引き起こしやすいため、特にオーバーコート法で供給するのが好ましい。
【0138】
そのような多価金属化合物としては、例えば、Mg2 +、Ca2 +、Zn2 +、Zr2 +、Ni2 +、Al3 +などの硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等で用いられる。なお、塩基性ポリ水酸化アルミニウムや酢酸ジルコニルなどの無機ポリマー化合物も、好ましい水溶性多価金属化合物の例に含まれる。これらの水溶性の化合物は、一般に、耐光性を向上したり、滲みや耐水性を向上させる機能を有するものが多い。これらの水溶性多価金属イオンは、記録用紙1m2当たり、0.05〜20ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲で用いられる。
【0139】
オンラインでオーバーコートする添加剤含有溶液の別の例は、界面活性剤を含有している態様である。
【0140】
界面活性剤は、インクジェット記録時にドット径をコントロールすることが可能であり、そのような界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性、もしくはノニオン系界面活性剤を挙げることができる。また、界面活性剤は、2種以上を併用することもできる。界面活性剤の添加量は、記録用紙1m2当たり0.01〜50mgである。50mgを越えると、インクジェット記録時にマダラ状のムラになりやすい。
【0141】
添加剤含有溶液は、上記以外にも種々の添加剤を含有することができ、そのような添加剤としては、例えば、白地の色調を調整する染料、防黴剤、水溶性ポリマー、可塑剤(グリセリン、ジエチレングリコールなど)等を挙げることができる。
【0142】
上記の各添加剤は、単独で使用しても、あるいは2種以上を併用することもできる。具体的には、退色防止剤を2種以上含む水溶液を用いることも、また、退色防止剤と架橋剤を含有する溶液、退色防止剤と界面活性剤を含有する溶液、更には架橋剤、水溶性の多価金属化合物、および退色防止剤を併用することもできる。
【0143】
上記添加剤含有溶液の溶媒として、本発明では、水または水混和性の有機溶媒と水との混合溶液であることが好ましく、水を用いることが特に好ましい。また、水と水混和性を有する低沸点有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等)との混合溶媒も好ましい溶媒である。水と水混和性の有機溶媒とを併せて使用する場合、水の含有率が溶媒全体に対して質量比で50質量%以上含有していることが好ましい。
【0144】
ここで水混和性を有する低沸点有機溶媒とは、室温で水に対して10質量%以上の溶解性を有し、沸点が約120℃以下の有機溶媒を言う。
【0145】
上記各添加剤の含有溶液の粘度は、100mPa・m以下であることが好ましい。粘度を100mPa・s以下とすることにより、多孔質皮膜層中への浸透性を向上でき、表面でムラになったりインク吸収能を低下させることを抑制できる。好ましい粘度は20mPa・s以下であり、特に好ましい粘度は0.5〜5mPa・sである。
【0146】
また、添加剤含有溶液の表面張力は、室温で200〜600μN/cmであることが、均一な塗布性を得る観点から好ましい。
【0147】
次に、上記各添加剤含有溶液を付与、乾燥する方法について説明する。
本発明において、各添加剤含有溶液の付与(オーバーコート)は、前述したように、塗布した多孔質層の乾燥終了以降に行われる。
【0148】
各添加剤含有溶液の付与のタイミングは、多孔質層の乾燥終点から1時間以内、好ましくは15分以内、更に好ましくは5分以内である。
【0149】
乾燥終点は、前記のごとく多孔質皮膜の温度が乾燥する風の温度と同じになった点であるが、乾燥終点以前に添加剤含有溶液を付与すると、特に高速プリンターでプリントしたときにマダラが発生しやすい。乾燥終点以前においては多孔質皮膜に水分が残存しているために、この水分により皮膜中のバインダーが膨潤状態にあり添加剤含有溶液の吸収速度が低下するために皮膜中に添加剤の不均一性が生じてマダラが生じやすいのではないかと推定される。好ましくは、乾燥終点後、5秒以上経過してから添加剤を付与するのが好ましい。なお、乾燥終点から15分以内、好ましくは5分以内、更に好ましくは30秒以内に添加剤含有溶液を多孔質層に付与することが好ましい。
【0150】
また、添加剤水溶液を付与する際の多孔質皮膜温度は25〜70℃の間が好ましい。皮膜温度を25℃以上とすることにより、添加剤含有溶液の吸収速度が低下してマダラが生じることを抑制することができ、また、70℃以下とすることにより、添加剤含有溶液の蒸発が早すぎて不均一な塗膜面が形成されるのを抑制することができる。好ましい皮膜温度は、30〜65℃である。
【0151】
添加剤水溶液の付与量は多孔質皮膜の空隙容量以下であることが好ましい。空隙容量とは、この記録用紙をJ.TAPPI 51に規定される紙および板紙の液体吸収性試験方法(ブリストー法)で測定したときの接触時間2秒における液体転移量を言う。
【0152】
添加剤含有溶液の供給量を空隙容量以下とすることにより、得られる記録用紙の吸収性に不均一性が生じてマダラが発生するのを抑制できる。また、乾燥直後の皮膜状態は、膨潤性が比較的高く、充分な吸収性を有していないため、好ましくは空隙容量の80%以下の溶液付与量とするのが好ましい。添加剤含有溶液の付与量の下限は、添加剤の付与量と溶解性、あるいは添加剤含有溶液の付与方式にも依存するが、記録用紙1m2あたり2ml以上である。
【0153】
溶液の塗布方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができ、具体的な塗布方式としては、前述の多孔質層の塗布で記載の方法を用いることができるが、特に好ましい方式は、グラビア塗布方式、もしくは特願2002−49715に記載された溶液を液滴として噴霧する方式であり、特に好ましくは微少ノズルを塗布幅にわたって複数有し、ガスを噴出するガスノズルを備えたスロットノズルスプレー装置を用いて溶液を供給する方式である。
【0154】
溶液の塗布は、室温以上、60℃以下の温度で塗布するのが好ましい。
溶液は塗布に先立って濾過することが好ましく、特に、塗布方式として上記のガスノズルを備えたスロットノズルスプレー装置を用いる場合には、微小の異物・ゴミなどがノズルを目詰まらせて塗布筋の原因となりやすい。通常は5〜20μm程度の粒子を除去できるフィルターを用いることが好ましい。
【0155】
溶媒を塗布した後、記録用紙は乾燥してロール状に巻き取ることが好ましい。この際、オーバーコートで供給した溶媒の50%以上が乾燥された状態で巻き取ることが本発明では好ましい。
【0156】
付与した溶媒の50%以上が乾燥された状態で巻き取ることにより、断裁後にカールが大きくなるのを抑制でき、またこのロールの保管中での凹凸の発生を抑制でき、その結果、筋状故障を低減することができる。好ましくは、付与した溶媒の1/3以下の質量になるまで乾燥することであり、特に、周囲の環境と平衡状態になるまで乾燥させるのが好ましい。
【0157】
また、記録用紙を保管する際には、本発明の記録用紙は、オーバーコートして乾燥した後、ロールに保管したまま、あるいはシート状に断裁した後、保管することが好ましい。30℃以上で一定時間、例えば、1日〜1ヶ月間保管すると、インク吸収速度が更に改善されてマダラ状のムラの軽減に役立つ。好ましい保管条件は、30〜50℃で1〜30日である。
【0158】
以下に、本発明の記録用紙の上記以外の好ましい物理特性値を示す。
1)光沢度:60度光沢度が20〜60%(光沢面)、12〜40%(微粒面)、5〜12%(マット面)
なお、プリント後の光沢度は水性染料インクでプリントした場合、未プリント部分より−5%〜+20%が好ましい
2)ベック平滑度(JIS−P−8119に規定):インク受容層表面は、800秒以上(光沢面)、200〜1000秒(微粒面)、50〜300秒(マット面)で有ることが好ましい
3)粗さ(JIS−B−0601に規定される表面粗さRa):0.1〜0.8μm(光沢面)、1.0〜3.0μm(微粒面)が好ましい。また裏面のRaは0.5〜5μmが好ましい
4)不透明度(JIS−P−8138に規定):90%以上、特に92%以上が好ましい
5)テーバー剛度(JIS−P−8125に規定):0.3〜3mN・m/MD、0.2〜2.5mN・m/CDが好ましい
6)白さ(JIS−P−8123/蛍光増白剤を含有しない場合、JIS−P−8143/蛍光増白剤を含有する場合):90%以上が好ましい
7)白さ(JIS−Z−8722(非蛍光)またはJIS−Z−8717(蛍光剤含有)にしたがって測定しJIS−Z−8730にしたがって表示):L*=90〜98、a*=−3〜+3、b*=−10〜+2が好ましい。但し、印刷用紙の場合には、日本、アメリカ、ヨーロッパでそれぞれ好ましい白地が推奨されており(例えば、JAPAN COLOR)、そのような目的で使用する場合にはそこに推奨される白さを有することが好ましい。
【0159】
本発明の記録用紙は、主に酸性染料を含有するインクジェット記録用として用いられるが、水性または油性の顔料インクを用いるインクジェット記録用にも用いることができる。
【0160】
次に、本発明のインクジェット記録用紙の製造方法を実施するための製造ラインの一例を図1を用いて説明する。
【0161】
ここでは、支持体Sとして、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した樹脂被覆紙を用いている。図示していない搬送手段により支持体元巻きから繰り出された支持体Sが、サポートローラ3を通過し、更にバックアップローラ2の位置で反転搬送される過程で、流量規制型のスライドビード塗布装置1より供給される多孔質層用の塗布液が、支持体S上に塗布される。この状態以降の支持体Sを基体5と称す。
【0162】
この多孔質層用の塗布液は、親水性バインダーを含有しているので、冷却ゾーン4で一旦冷却して固化する。支持体S上に多孔質層を有する基体5は、次いで乾燥工程に搬送される。
【0163】
乾燥工程では、エアを吹き出して塗布膜表面と非接触で反転搬送させるリバーサ6と、基体5の裏面に接触して反転搬送させる通常の搬送ローラ7とを交互に設けて、基体5を蛇行搬送させている。この乾燥工程においては、基体5に温風を吹き付けて乾燥する。なお、温風吹きつけ手段は、不図示。図1では、乾燥工程として、第1ゾーンから第10ゾーンまで10個の乾燥ゾーンを設けた例を示してある。この乾燥過程の途中、乾燥終点(図1の例では、第7ゾーンの出口付近)以降の位置(図1では、第9ゾーン)でスロットノズルスプレー装置8によって、液滴噴霧による添加剤含有溶液の塗布が行われる。
【0164】
図1においては、1つのスロットノズルスプレー装置8を使用したが、必要に応じて複数個用いても良い。特に、多段に分けて液滴噴霧を行うことにより、乾燥負荷がより低減されると共に、塗膜均一性も高まるため好ましい。
【0165】
多孔質層上に添加剤含有溶液を付与する際の塗布速度としては、用いる塗布液の種類、濃度、溶媒含有量、乾燥能力等により変化するが、好ましくは50〜300m/minであり、より好ましくは100〜300m/minである。
【0166】
また、多孔質層を形成するための塗布工程と多孔質層上に添加剤含有溶液を付与するための工程とは、図1に示すように同一製造ライン上で、かつ連続して行うことが好ましい。また、添加剤含有溶液を多孔質層上に付与する工程は、図1に示すように、多孔質層を乾燥させるための乾燥工程ないにおいて実施することができる。乾燥工程では、湿潤状態の塗布膜を連続的に搬送しながら、その表面あるいは裏面より、特定の温度及び湿度条件に制御された乾燥風を吹き付けて乾燥を行うことが好ましい。
【0167】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で記載の「%」は、特に断りのない限り質量%を表す。
【0168】
実施例1
《記録用紙1〜7の作製》
〔シリカ分散液D1、D2の調製〕
予め均一に分散されている、1次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製:アエロジル200)を25%と、水溶性蛍光増白剤UVITEXNFW LIQUID(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を0.1%とを含むシリカ分散液B1(pH=2.3、エタノール1質量%含有)の400Lを、カチオン性ポリマーP−1を12%、n−プロパノールを10%およびエタノールを2%含有する水溶液C1(pH=2.5、サンノブコ社製の消泡剤SN381を2g含有)の110Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。次いで、ホウ酸とほう砂の1:1質量比の混合水溶液A1(各々3%の濃度)の54Lを攪拌しながら徐々に添加した。
【0169】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで、3kN/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D1を得た。
【0170】
一方、上記シリカ分散液B1の400Lを、カチオン性ポリマーP−2を12%、n−プロパノール10%およびエタノールを2%含有する水溶液C2(pH=2.5)の120Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加し、次いで、上記混合水溶液A1の52Lを攪拌しながら徐々に添加した。
【0171】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで3kN/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D2を得た。
【0172】
上記シリカ分散液D1、D2を、30μmの濾過精度を有するアドバンテック東洋社製のTCP−30タイプのフィルターを用いて濾過を行った。
【0173】
〔オイル分散液の調製〕
ジイソデシルフタレート20kgと酸化防止剤(AO−1)20kgとを45kgの酢酸エチルに加熱溶解し、酸処理ゼラチン8kg、カチオン性ポリマーP−1を2.9kgおよびサポニン5kgとを含有するゼラチン水溶液210Lと55℃で混合し、高圧ホモジナイザーで乳化分散した後、全量を純水で300Lに仕上げて、オイル分散液を調製した。
【0174】
【化1】
【0175】
〔多孔質層塗布液の調製〕
上記調製した各分散液を使用して、以下に記載の各添加剤を順次混合して、多孔質層用の各塗布液を調製した。なお、各添加量は塗布液1L当たりの量で表示した。
【0176】
(第1層用塗布液:最下層)
シリカ分散液D1 620ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液6ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)6.5%
水溶液 300ml
オイル分散液 40ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製:AE803) 22ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0177】
(第2層用塗布液)
シリカ分散液D1 650ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液6ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)6.5%
水溶液 290ml
オイル分散液 20ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製:AE803) 22ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0178】
(第3層用塗布液)
シリカ分散液D2 650ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液6ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)6.5%
水溶液 280ml
オイル分散液 20ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製:AE803) 15ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0179】
(第4層用塗布液:最上層)
シリカ分散液D2 690ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液7ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)6.5%
水溶液 260ml
カチオン型界面活性剤−1の4%水溶液 4ml
サポニンの25%水溶液 2ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0180】
【化2】
【0181】
上記の様にして調製した各塗布液を、20μmの濾過精度を持つアドバンテック東洋社製のTCPD−30フィルターで濾過した後、10μmの濾過精度を有するTCPD−10フィルターで濾過した。
【0182】
〔記録用紙の作製〕
次に、上記の各塗布液を下記に記載の湿潤膜厚となるよう、両面にポリエチレンを被覆した紙支持体上に、カーテン塗布装置を用いて40℃の各塗布液を4層同時に塗布した。
【0183】
〈湿潤膜厚〉
第1層:30μm
第2層:33μm
第3層:33μm
第4層:34μm
なお、上記紙支持体は、幅が約1.5m、長さが約4000mのロール状に巻かれた下記の支持体を用いた。
【0184】
使用した紙支持体は、含水率が8%で、坪量が170gの写真用原紙表面を、アナターゼ型酸化チタンを4%含有するポリエチレンを厚さ30μmで押し出し溶融塗布し、裏面には厚さ29μmのポリエチレンを押し出し溶融塗布した。表面側は、コロナ放電した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA235)を記録用紙1m2当たり0.05gになるように下引き層を塗布し、裏面側にはコロナ放電加工した後、Tgが約80℃のスチレン・アクリル酸エステル系ラテックスバインダー約0.4g、帯電防止剤(カチオン性ポリマー)0.1gおよび平均粒径が約1μmのシリカ0.1gをマット剤として含有するバック層を塗布した。
【0185】
インク受容層用塗布液の塗布後の乾燥は、5℃に保った冷却ゾーンを20秒間通過させて膜面の温度を11℃にまで低下させたあと、air loop方式で以下の温度の風を順次インク受容層表面に吹き付けながら各ゾーンを通過させて乾燥し、ロール状に巻き取って比較の記録用紙1を得た。
【0186】
なお、吹き付ける風はいずれも平均相対湿度が30%以下であり、第10ゾーンは、設定相対湿度が50%の調湿ゾーンである。
【0187】
第1ゾーン:25℃、30秒間
第2ゾーン:35℃、30秒間
第3ゾーン:50℃、30秒間
第4ゾーン:60℃、30秒間
第5ゾーン:60℃、30秒間
第6ゾーン:60℃、30秒間
第7ゾーン:50℃、30秒間
第8ゾーン:45℃、30秒間
第9ゾーン:45℃、30秒間
第10ゾーン:23℃、90秒間
以上のようにして作製した記録用紙1の空隙容量は、記録用紙1m2当たり24mlであった。
【0188】
膜面温度を測定した結果、第4ゾーンまでは恒率乾燥部であり、第5ゾーンの途中から減率乾燥部を示し、乾燥終点(膜面温度が風の温度と一致する箇所)は第7ゾーンであった。なお、各ゾーンの出口での塗膜含水量(空隙容量=24ml/m2を100として表示)は、以下の通りであった。
【0189】
第5ゾーン:90(塗膜含水量=21.6ml/m2)
第6ゾーン:20(塗膜含水量=4.8ml/m2)
第7ゾーン:0(塗膜含水量=0ml/m2)
第8ゾーン:0(塗膜含水量=0ml/m2)
次いで、上記記録用紙1の作製において、第7ゾーンの出口付近で皮膜温度が約50℃の状態の時に、3%ホウ酸溶液(25℃)を特願2002−49715の実施例1における塗布方法2に記載のガスノズルを有するスロットノズルスプレー装置により、湿潤膜厚が10μm(10.08ml/m2 空隙容量の約42%に相当する)になるようにオーバーコート塗布し、第8ゾーンで乾燥終了させた以外は同様にして、記録用紙2を得た。
【0190】
この水溶液の粘度は室温で約1mPa・s、表面張力は約600〜700μN/cmであった。
【0191】
次に、上記記録用紙2の作製において、オーバーコートする位置を第8ゾーンの出口付近で行った以外は同様にして、記録用紙3を得た。乾燥終点は第9ゾーンの出口であった。また、記録用紙3のオーバーコート時の膜面温度は45℃であった。
【0192】
次いで、前記記録用紙2の作製において、オーバーコートする位置を第10ゾーンの入り口付近で行った以外は同様にして、記録用紙4を得た。記録用紙4のオーバーコート時の膜面温度は28℃であった。また、記録用紙4の巻き取り時の皮膜含水量は、記録用紙1m2あたり3mlであった。
【0193】
次いで、前記記録用紙2の作製において、オーバーコートする位置を第10ゾーンの中間付近で行った以外は同様にして、記録用紙5を得た。記録用紙5のオーバーコート時の膜面温度は23℃であった。また、記録用紙5の巻き取り時の皮膜含水量は、記録用紙1m2あたり7mlであった。
【0194】
次いで、前記記録用紙2の作製において、オーバーコートする位置を乾燥が終了していない第6ゾーン出口で行った以外は同様にして、記録用紙6を得た。
【0195】
また、前記記録用紙2の作製において、オーバーコートする位置を乾燥が終了していない第5ゾーンの出口付近で行った以外は同様にして、記録用紙7を得た。
【0196】
〔画像印字及び評価〕
上記のようにして得られた各記録用紙を、エプソン株式会社製のインクジェットプリンターPM950Cを用い、塗布の幅手方向でサンプリングした各試料に青色のベタ画像をプリントした。プリントは最も印字速度が速いPM写真用紙設定で双方向印字の条件で行った。紙サイズはそれぞれA6サイズで行った。
【0197】
以上のようにして得られたベタ画像の濃度測定を、マイクロデンシトメーターで行い、下記の方法に則り画像ムラ及びカールの測定を行った。
【0198】
(画像ムラの測定)
画像ムラの判定は、粒状度を測定して、これを基に行った。粒状度は、5cm角の試料の中の任意の10点を100μm×100μmのアパーチュアーで濃度測定し、その平均値と標準偏差を求め、標準偏差を平均濃度値で割った値を100倍したものである。この数値が高いほど粒状度が悪化し、すなわち画像ムラがより多いことを表す。
【0199】
(カールの測定)
各記録用紙をA4サイズに断裁した後、20枚を重ねて23℃、相対湿度55%の雰囲気下でビニール製袋に入れて1週間保管した後、23℃、相対湿度20%の環境で開封して1枚づつ平らな台に1時間放置したときのカールを測定した。カールは4隅の持ち上がりの高さの平均とし、インク吸収層面側を上にした時、4隅が持ち上がる時を+で表示し、下記の基準に則り判定を行った。
【0200】
◎:カール値の絶対値が6.0未満であり、実用上全く問題がない
○:カール値の絶対値が6.0以上、10.0未満であり、問題はない
△:カール値の絶対値が10.0以上、13.0未満であるが、実用上許容範囲にある
×:カール値の絶対値が13.0以上であり、実用上は問題がある
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0201】
【表1】
【0202】
表1より明らかなように、記録用紙1に対し、記録用紙2〜5は、ホウ酸をオーバーコートすることにより、吸収速度が増加して、画像ムラの発生が低減していることが分かる。しかし、減率乾燥部でオーバーコートした記録用紙6、7では、ホウ酸のオーバーコートによる改良効果が不十分であることが分かる。一方、カールの評価結果から、水分残存率が約3mlである状態で、ロールに巻き取った記録用紙4は、水分の約7割が残存したままでロールに巻き取られた記録用紙5よりも、低湿条件のカールが小さくなっていることが分かる。ただし、記録用紙5も、カール状態は概ね許容されるレベルである。
【0203】
実施例2
実施例1で作製した記録用紙1〜7の作製を、塗布後ロール状に巻き取った状態で、35℃、1週間のエージング処理を行った。エージング処理後、ロール状記録用紙の筋ムラを目視観察し、下記の基準に則り筋ムラの評価を行った。
【0204】
◎:全く筋ムラの発生が認められない
○:微細な筋ムラの発生が認められるが、全く問題ない
△:目視観察で稍筋ムラの発生が認められるが、実用上許容の範囲にある
×:明瞭な筋ムラが認められ、実用上問題のある品質である
また、実施例1と同様の方法で、画像ムラ及びカールの評価を行い、得られた結果を表2に示す。
【0205】
【表2】
【0206】
表2より明らかなように、ロール状に巻き取ったままエージング処理した場合、乾燥を充分に行ってから巻き取った記録用紙2、3は、乾燥を充分に行わずに巻き取った記録用紙4、5に対し、筋ムラの発生が抑制され、特に、水分の7割を残して巻き取った記録用紙5に比較して、筋ムラの抑制効果が大きいことが分かる。
【0207】
また、エージング処理で、それぞれ吸収速度は向上して画像ムラの発生が低減していることが分かるが、特に、減率乾燥以降でオーバーコートした場合の改良効果が大きいことが分かる。
【0208】
実施例3
実施例2で作製した記録用紙2〜7において、添加剤含有溶液を以下の退色防止剤を含有する溶液に変更した以外は同様にして、記録用紙12〜17を作製し、これに実施例1で作製した記録用紙1を加えて、実施例1と同様にして画像ムラ及びカールを評価した。更に、シアンのベタ画像をプリントした後、外気を直接プリント画像面に1ヶ月間吹き付けてシアン画像の退色性を評価した。退色性は初期濃度に対する保存後の画像残存率で示した。以上により得られた結果を表3に示す。
【0209】
退色防止剤−1:HOC2H4−S−CH2−CH2−S−C2H4OH
退色防止剤−2:HO−N(C2H4SO3Na)2
【0210】
【表3】
【0211】
表3より明らかなように、退色防止剤をオーバーコートした記録用紙12〜17はいずれも退色性が改善されているが、減率乾燥終了前にオーバーコートした記録用紙16と17は、いずれも実施例2の結果と同様に、画像ムラが記録用紙12〜15に比較し劣化していることが分かる。
【0212】
実施例4
実施例2で作製した記録用紙2〜7において、添加剤含有溶液を3%酢酸ジルコニル水溶液(滲み防止剤)に変更した以外は実施例2と同様にして記録用紙22〜27を作製し、これに実施例1で作製した記録用紙1を加えて、実施例1と同様にして画像ムラ及びカールを評価した。更に、マゼンタ背景色の中に線幅が約200μmの黒色のラインを印字し、40℃、相対湿度80%で1週間保存して黒線の滲み耐性を評価した。滲み耐性は、線幅をマイクロデンシトメーターにて測定して保存前の線幅に対する保存後の線幅の増幅幅(μm)で表示した。
【0213】
以上により得られた結果を、表4に示す。
【0214】
【表4】
【0215】
表4より明らかなように、酢酸ジルコニルをオーバーコートした記録用紙22〜27はいずれも滲み耐性が改善されているが、減率乾燥終了前にオーバーコートした記録用紙26と27は、いずれも実施例2の結果と同様に画像ムラが記録用紙22〜25に比較して劣化していることが分かる。
【0216】
実施例5
実施例2で作製した記録用紙2〜7において、添加剤含有溶液を5%硫酸マグネシウム水溶液(耐光性改良剤)に変更した以外は同様にして記録用紙32〜37を作製し、これに実施例1で作製した記録用紙1を加えて、実施例1と同様にして画像ムラ及びカールを評価した。更に、濃度約1.0のマゼンタのベタ画像をプリントし、キセノン耐光試験機で耐光性を評価した。耐光性は、キセノン光照射前後での濃度残存率で表示した。
【0217】
以上により得られた結果を、表5に示す。
【0218】
【表5】
【0219】
表5より明らかなように、硫酸マグネシウムをオーバーコートした記録用紙32〜37はいずれも耐光性が改善されているが、減率乾燥終了前にオーバーコートした記録用紙36と37は、いずれも実施例2と同様に、画像ムラが記録用紙32〜35に比較して劣化していることが分かる。
【0220】
【発明の効果】
多孔質層皮膜の乾燥終了以降で、かつロール状に巻き取る前に、添加剤を含有する水溶性塗布液を付与することで、添加剤の諸効果を十分に発揮すると共に、製造コストの大幅な増大を伴うことなく、画像ムラ、カール特性が改良されたインクジェット記録用紙を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録用紙の製造方法を実施するための製造ラインの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
S 支持体
1 スライドビード塗布装置
2 バックアップローラ
3 サポートローラ
4 冷却ゾーン
5 基体
6 リバーサ
7 搬送ローラ
8 スロットノズルスプレー装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)及びインクジェット記録用紙の製造方法に関し、更に詳しくは、画像ムラを抑制させた多孔質層を有するインクジェット記録用紙及びインクジェット記録用紙の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は、急速な画質向上が図られてきており、銀塩写真画質に迫りつつある。この様な写真画質をインクジェット記録で達成するための手段として、使用する記録用紙においても、様々な技術改良が試みられており、例えば、高平滑性を有する支持体上に、インクを吸収するための微小な空隙を有する多孔質層を設けた記録用紙は、高インク吸収性や高乾燥性であることから、最も写真画質に近いものが得られる方法の一つになりつつある。
【0003】
上述の多孔質インク層は、主に親水性バインダーと微粒子とで形成されており、微粒子としては無機または有機の微粒子が知られているが、一般的には、より微粒子で光沢性が高い無機微粒子が用いられる。そして、該微粒子に対して比較的少量の親水性バインダーを使用することにより、微粒子間に空隙部が形成されて多孔質層が得られる。
【0004】
一般に、インク受容層に対しては、様々な特性が要求され、これらの特性を改良するために、以下に記載の各添加剤の使用が提案されている。
【0005】
1:高い発色性や光沢を達成するために、約0.1μm以下の多孔質を形成する安定な微粒子
2:微粒子の保持力が高く、かつインク吸収速度を低下させないための低膨潤性親水性バインダー
3:インク吸収速度や皮膜の耐水性を改良するための親水性バインダーの架橋剤
4:最適なドット径を達成するため、記録用紙表面に分布した界面活性剤や親水性ポリマー
5:色素の滲みや耐水性を改良するためのカチオン性の定着剤
6:色素画像の光や酸化性ガスなどによる退色性を改良するための退色防止剤
7:白地を改良するための蛍光増白剤や色調調整剤(赤み剤や青み剤など)
8:表面の滑り性を改良するためのマット剤や滑り剤
9:皮膜に柔軟性を持たせるための各種のオイル成分やラテックス粒子あるいは水溶性可塑剤
10:色素の滲みや耐水性あるいは耐候性を改良するための種々の無機塩類(多価金属塩)
11:多孔質皮膜の膜面pHを調整するための酸やアルカリ類
等が挙げられる。
【0006】
しかしながら、上記の種々の目的で使用する各添加剤をインク受容層を形成する塗布液に添加した場合、多くの添加剤において、製造工程の安定性の観点から、種々の制約を受けるケースが多い。
【0007】
そのような問題点としては、例えば、
A:微粒子や添加剤同士の間で凝集が生じたり、塗布液中で相分離を起こすことにより、ムラのない安定した塗布が困難になる、光沢が低下してマット化する、塗布液のポットライフが短くなり、生産効率が大幅に低下する等の問題が生じる
B:調製した塗布液を長時間停滞させると、塗布液が大きく増粘してゲル化したり、逆に著しく減粘して、支持体上で塗布液が流動しやすくなり、その結果、安定した塗布が困難となり、均質な塗膜が得にくくなる
C:多孔質皮膜を塗布乾燥する際に、表面のひび割れが増大する
D:多孔質皮膜の空隙率が低下する
上記のA項やB項に係る問題は、主に添加剤の電気的な相互作用に基づく場合が多く、例えば、カチオン性の定着剤がその主因となり、アニオン基を有する種々の原材料と反応して、上記のような問題を引き起こす結果となる。
【0008】
一方、上記C項やD項に係る問題は、主に支持体が非吸水性支持体を用いた場合に顕著に発生し、問題を引き起こす。すなわち、吸水性を有していない支持体上に、空隙を有する多孔質層を設けたインクジェット記録用紙の場合、インクジェット記録する際に、全てのインクをインク吸収層である空隙層が一時的に保持する必要があるが、そのためには高い空隙容量を持たなければならず、その結果、厚い塗膜を、しかも高い空隙率で形成させる必要がある。
【0009】
この様な非インク吸収性支持体上に多孔質層を塗布する場合、乾燥膜厚として、25μm以上、好ましくは30μm以上、50μm以下の膜厚になるように塗布することが知られている。このような厚い膜厚の多孔質層を支持体上に塗布する場合の問題点として、多孔質層は本来硬い膜であることから、製造段階で、乾燥時にひび割れが起きやすくなったり、あるいは空隙率が低下する等の問題が発生し、特に、多孔質層を形成する塗布液に、種々の機能を付与するための各種添加剤を添加することにより、その影響はより大きくなる傾向がある。
【0010】
この多孔質層の乾燥時のひび割れは、乾燥時の塗膜収縮に起因するものであり、種々の要因に依存すると考えられるが、その一因として、親水性バインダーの微粒子の保持能力を低下させるような添加剤が存在することにより、ひび割れが起きやすくなると考えられる。
【0011】
また、空隙率は、微粒子同士もしくは微粒子と親水性バインダーとの間に相互作用があると高まる傾向があるが、ある種の添加剤を用いることにより、上記相互作用が減少し、空隙率が低下することがある。すなわち、微粒子同士がより細密充填しやすくなる。
【0012】
一般には、微粒子に対する親水性バインダーの使用量は、多孔質の空隙を埋めてインク吸収性が低下しないように、質量比で概ね1/2倍以下、特に1/3倍以下しか用いることができないのが現状である。このため、親水性バインダーによる微粒子の保護コロイド性は、僅かの添加剤により影響を受けやすくなる。
【0013】
多孔質層の乾燥過程では、少量の親水性バインダーが微粒子の表面を覆いながら、しかも親水性バインダー同士が絡み合って微粒子を保持する保護コロイド性を発揮して多孔質層を形成するが、この時、添加剤が存在すると親水性バインダー間の絡み合いを妨害し、皮膜としての強度を低下させるため、乾燥過程で皮膜が収縮する段階、特に、皮膜の乾燥が終了する付近において、ひび割れが発生しやすい為ではないかと考えられる。
【0014】
通常、インクジェット記録用紙は、連続して走行する支持体上に多孔質層を形成する塗布液を塗布し、乾燥した後、ロール状に巻き取って製造される。また、一旦ロール状に巻き取った後に、特定の添加剤を有する塗布液をその上部に付与する、いわゆるオーバーコートを行う方法(以下、オーバーコート法という)が知られているが、これらの方法の多くは、2回以上に分けて塗布を行う、すなわち2回以上ロール状に巻き取ることになるため、製造コストが大幅に増大する問題がある。また、多孔質層を形成した後、しばらく経時すると、温度履歴や時間のばらつきにより、品質安定性に問題が生じるだけでなく、オーバーコートの際の塗布ムラが生じやすい等の問題が生じやすい。
【0015】
一般に、塗布乾燥直後と経時保存した後の状態では、親水性バインダーの存在状態や結晶化の進行や添加剤の層内分布の再配向等により皮膜状態が異なることが多い。
【0016】
親水性バインダーは、塗布乾燥直後では、溶液状態の分布に近いと考えられるが、経時されて平衡状態になった時には、微粒子や添加剤との相互作用(架橋反応等)の結果、膨潤性が低下する傾向にある。特に、親水性バインダーとして最も有用なポリビニルアルコールなどは、オーバーコート液の吸水性や親水性バインダーに対する膨潤性が乾燥後の経時で変化することが多い。
【0017】
また、多孔質層表面の界面活性剤、親水性バインダーその他拡散性添加剤は、塗布後徐々に変質しやすく、オーバーコート液の塗布性に影響を及ぼし、オーバーコート時のムラを生じやすい。
【0018】
更に、多孔質層の経時による変動は、オーバーコートする添加剤の層内分布や効果に差が生じたりして、品質ばらつきの要因になることがある。
【0019】
多孔質皮膜に添加剤を含有する溶液をオーバーコートして供給する方法としては、インクジェット記録用紙を製造する際の1方法である含浸法として知られているが、多孔質層を形成した直後に、オンラインで製造する方法(一旦ロール状に巻き取らずにオーバーコートする方法)は、全く知られていない。
【0020】
従来、無機微粒子と水溶性樹脂を含む塗布液を支持体上に塗布し、塗布と同時または塗布した層が減率乾燥速度を示す前に、水溶性樹脂の架橋剤を含有する溶液を付与して硬化させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。減率乾燥速度を示す前とは、上記特許文献1にも記載してあるように、恒率乾燥部分のことであり、塗布層中の溶剤の含有量が一定の乾燥条件で有れば時間に比例して減少するような乾燥領域である。
【0021】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、この様な添加剤を恒率乾燥域でオーバーコートした場合、塗布液の溶媒が未だ充分に蒸発し切れていないため、乾燥終点付近でひび割れが発生したり、あるいはオーバーコートした瞬間に、オーバーコート液面に当たる乾燥風や機械的な振動により、吹かれムラ、すなわち表面への気流変動で生じる塗布ムラや搬送ムラを生じやすく、このため、高速塗布では問題があることが判明した。
【0022】
また、無機微粒子と水溶性樹脂からなる層(多孔質層)の表面に、第4級アンモニウム塩基を有するシランカップリング剤を含む溶液をオーバーコートする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、上記特許文献2には、多孔質皮膜を形成するのとオンラインでオーバーコート用の溶液を塗布する記載が無く、従来の一般的方法によるものであり前述の塗布ムラや品質の安定性等の課題がある。
【0023】
本出願人は、先の出願(特願2001−378510)において、支持体上に親水性バインダーと微粒子とを含有する多孔質層を形成する水溶性塗布液を塗布し、該塗布した多孔質層の減率乾燥部以降に、添加剤含有溶液を前記多孔質層上に付与して得られたことを特徴とするインクジェット記録用紙およびその製造方法について提案を行っている。しかしながら、その後の検討結果によれば、多孔質皮膜上に添加剤水溶液をオンラインでオーバーコートする際、オーバーコート時の条件を適切に設定しないと品質上の問題が生じやすいことが判明した。すなわち、多孔質皮膜に水分が残っている状態で添加剤含有溶液をオンラインでオーバーコートした場合、最終的に得られる記録用紙において、特に高速で記録されるインクジェットプリンターで記録した場合にマダラ状のムラが発生しやすいことが判明した。これは、多孔質皮膜中で添加剤が必ずしも均一に分布していないため、ミクロ的に見た場合に多孔質皮膜の吸収速度が変化していたり、あるいは、プリンターのY、M、C、Kの各インクに対するドット拡大率が微妙に変化するなどして、色再現性が変化しているためではないかと推定している。
【0024】
また、塗布後の乾燥を充分行わずにロール状に巻き取った場合、記録用紙の横方向(幅手方向)で含水量ムラが生じやすくなり、このロールを長期間保管した場合、カールが幅手方向で不均一になり、断裁後のシートのカール変動が大きくなりやすかったり、あるいはロールの保管中にロールに凹凸が発生して筋状のムラになりやすいことが判明した。
【0025】
【特許文献1】
特開平11−115308号公報(第1頁)
【0026】
【特許文献2】
特開平8−34160号公報(段落番号0035〜0037)
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の第1の目的は、支持体上に多孔質層を形成させる塗布液を塗布した後、添加剤を含有する溶液をオーバーコートする際、製造コストの大幅な増大を伴うことなく、また、インクジェットプリンターのプリント品質が安定し、画像ムラが低減された高品質のインクジェット記録用紙及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、オンラインオーバーコートしても、ロールの幅手方向でカールのばらつきが少なく、またロールの凹凸を押さえて品質が安定したインクジェット記録用紙及びその製造方法を提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
【0029】
1.支持体上に、親水性バインダーと微粒子とを含有する水溶性塗布液を塗布して多孔質層を形成し、該多孔質層の乾燥終了以降で、かつロール状に巻き取る前に、添加剤含有溶液を該多孔質層に付与し、付与された該添加剤含有溶液を乾燥させることによって得られたことを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0030】
2.前記添加剤含有溶液は、前記多孔質層の乾燥終了後の空隙容量以下の量だけ前記多孔質層に付与することを特徴とする前記1項記載のインクジェット記録用紙。
【0031】
3.前記添加剤含有溶液を乾燥させた後、前記多孔質層が形成されて作製された記録用紙を、ロール状に巻き取ることを特徴とする前記1又は2項に記載のインクジェット記録用紙。
【0032】
4.前記添加剤含有溶液の溶媒が50%以上乾燥された状態で、ロール状に巻き取られることを特徴とする前記3項記載のインクジェット記録用紙。
【0033】
5.前記添加剤含有溶液を多孔質層へ付与した後の乾燥が、温度30℃以上の温風で行うことを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0034】
6.前記添加剤含有溶液の溶媒が、水または水混和性の有機溶媒と水との混合溶液であることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0035】
7.前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙が、30℃以上で少なくとも24時間加温されたことを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0036】
8.前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙が、ロール状に巻き取られた状態又はシート状に断裁された後に、30℃以上で少なくとも24時間加温されたことを特徴とする前記7項記載のインクジェット記録用紙。
【0037】
9.前記支持体が、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆された樹脂被覆紙であることを特徴とする前記1〜8項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0038】
10.前記紙の含水率が、5〜10質量%であることを特徴とする前記9項記載のインクジェット記録用紙。
【0039】
11.前記添加剤含有溶液は、前記多孔質層の乾燥終了後15分以内に前記多孔質層に付与されることを特徴とする前記1〜10項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0040】
12.前記多孔質層は、親水性バインダーに対する微粒子の質量比が2〜20であることを特徴とする前記1〜11項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0041】
13.支持体上に、親水性バインダーと微粒子とを含有する水溶性塗布液を塗布して多孔質層を形成する塗布工程と、
該多孔質層を乾燥させる乾燥工程と、
該多孔質層の乾燥終了以降で、かつ該多孔質層が形成された支持体をロール状に巻き取る前に、添加剤含有溶液を該多孔質層に付与する工程と、
該添加剤含有溶液を乾燥させる工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【0042】
14.前記添加剤含有溶液は、前記多孔質層の乾燥終了後の空隙容量以下の量だけ前記多孔質層に付与することを特徴とする前記13項記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0043】
15.前記添加剤含有溶液を乾燥させた後、前記多孔質層が形成されて作製された記録用紙を、ロール状に巻き取る巻取工程を有することを特徴とする前記13又は14項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0044】
16.前記巻取工程では、前記添加剤含有溶液の溶媒が50%以上乾燥された状態で、前記支持体がロール状に巻き取られることを特徴とする前記15項記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0045】
17.前記添加剤含有溶液を前記多孔質層へ付与した後の乾燥が、30℃以上の温風を用いて行うことを特徴とする前記13〜16項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0046】
18.前記添加剤含有溶液の溶媒が、水または水混和性の有機溶媒と水との混合溶液であることを特徴とする前記13〜17項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0047】
19.前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙を、30℃以上で少なくとも24時間加温させることを特徴とする前記13〜18項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0048】
20.前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙が、ロール状に巻き取られた状態又はシート状に断裁された後に、30℃以上で少なくとも24時間加温させることを特徴とする前記19項記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0049】
21.前記支持体が、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆された樹脂被覆紙であることを特徴とする前記13〜20項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0050】
22.前記紙の含水率が、5〜10質量%であることを特徴とする前記21項記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0051】
23.前記添加剤含有溶液を、前記多孔質層の乾燥終了後15分以内に前記多孔質層に付与させることを特徴とする前記13〜22項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0052】
24.前記多孔質層は、親水性バインダーに対する微粒子の質量比が2〜20であることを特徴とする前記13〜23項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0053】
本発明者らは、上記課題を鑑みて鋭意検討を進めた結果、本発明に係る請求項1〜24のインクジェット記録用紙又はインクジェット記録用紙の製造方法により、インクジェット記録用紙の大幅な製造コストの増大を伴うことなく、画像ムラが抑制され、かつカール特性に優れた高品質のインクジェット記録用紙を提供することができ、また上記効果に加えて、本発明に係る請求項7、8、10、19、20及び22に記載の発明においては、更にインク吸収性を改善させることができ、その結果として筋ムラを低減することができることを見いだし、本発明に至った次第である。
【0054】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る添加剤含有溶液を付与する工程は、支持体上に、親水性バインダーと微粒子とを含有する多孔質層用水溶性塗布液を塗布した後、その塗膜(多孔質層)の乾燥終了以降の段階で行われる。
【0055】
ここで言う乾燥終了とは、多孔質皮膜の含水量がゼロになった状態をいう。また、これは、多孔質皮膜の温度と乾燥温度とが同一になった状態であり、温風により乾燥される場合は、多孔質皮膜の温度が乾燥する風の温度(乾球温度:Db)と等しくなる状態を乾燥終了とする。一般に、塗膜から水分が蒸発している間は、蒸発潜熱のために、塗膜温度は乾燥風のDbより低くなる。
【0056】
乾燥工程では、通常、湿潤状態の塗設物を連続的に搬送しながら、その表面あるいは裏面より、特定の温度及び湿度条件に制御された乾燥風を吹き付けて乾燥させる。
【0057】
湿潤塗膜の乾燥過程は、主に以下のように分類することができる。
乾燥の初期は、恒率乾燥部と呼ばれ、乾燥初期の水や溶剤を多く持つインクジェット記録用紙では、比較的自由な水や溶剤が蒸発潜熱を奪いながら蒸発していくため、多孔質層を有する面側の表面温度はほぼ一定である。この一定温度の期間を恒率乾燥部という。これに対し、親水性バインダーなどとインターラクションのある水や溶剤を蒸発させるときには、蒸発潜熱の他にそのインターラクションを解くためのエネルギーも必要となるので表面温度は上昇する。この期間を減率乾燥部という。減率乾燥部では、表面からの水分の蒸発が層内の塗膜中の水分移動が勝るときに起きる現象であり、一般には空隙が形成され始めるのは、減率乾燥部に入り水分が更に蒸発してからである。
【0058】
次いで、減率乾燥が終了すると、乾燥風の温度とインクジェット記録用紙の表面温度が一致する領域に入る。この時点が、乾燥終点と呼ばれている。
【0059】
以上説明した恒率乾燥部、減率乾燥部及び乾燥終点の確認方法としては、特に制限はないが、例えば、多孔質層を塗設した面の表面温度をモニターして、表面温度が一定である領域を恒率乾燥部、表面温度が上昇する領域を減率乾燥部及び乾燥温度と同一となった時点を、乾燥終点として求めることができる。
【0060】
また、他の方法としては、乾燥工程の各領域に含水量計、例えば、赤外線を用いて分光的に水分を検出する測定機器を設置し、塗膜の含水量を膜表面側からモニターすることにより得られる。また、含水量の減衰曲線からも各々の領域を規定することができる。
【0061】
本発明においては、添加剤含有溶液を付与した後、乾燥をDbが30℃以上の温風で行うことにより、乾燥時間を短縮することができ、その結果生産性の向上を図ることができるだけでなく、表面の点状故障の発生を抑制することができる。更に好ましくは、Dbが35〜80℃であって、相対湿度が60%以下の風で乾燥するのが生産性の観点で好ましい。
【0062】
次に、本発明のインクジェット記録用紙の詳細について説明する。
本発明のインクジェット記録用紙は、支持体上に親水性バインダーと微粒子を含有する多孔質層を形成する水溶性塗布液を塗布し、空隙を有する多孔質層を形成したものである。
【0063】
本発明に係る多孔質層は、主に微粒子と親水性バインダーから形成される。
本発明で用いることのできる微粒子としては、無機微粒子や有機微粒子を用いることができるが、特には、高光沢で、かつ高発色濃度が得られ、更に微粒子が容易に得やすいことから無機微粒子が好ましい。そのような無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。上記無機微粒子は、1次粒子のまま用いても、また、2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0064】
本発明においては、インクジェット記録用紙で高品位なプリントを得る観点から、無機微粒子として、シリカやアルミナが好ましく、更に好ましくはアルミナ、擬ベーマイト、コロイダルシリカもしくは気相法により合成された微粒子シリカであり、気相法で合成された微粒子シリカが特に好ましい。この気相法で合成されたシリカは、表面がAlで修飾されたものであっても良い。表面がAlで修飾された気相法シリカのAl含有率は、シリカに対して質量比で0.05〜5%のものが好ましい。
【0065】
上記無機微粒子の粒径は、いかなる粒径のものも用いることができるが、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。1μmを越えると、光沢性や発色性が低下しやすく、そのため、特には、0.2μm以下が好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。粒径の下限は特に限定されないが、無機微粒子の製造上の観点から、3nm以上、特に5nm以上が好ましい。
【0066】
上記無機微粒子の平均粒径は、多孔質層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0067】
また、微粒子の分散度は、光沢性や発色性の観点から0.5以下が好ましい。0.5以下であると光沢やプリント時の発色性が良好である。特に、0.3以下が好ましい。ここで、微粒子の分散度とは、上記平均粒径を求めるのと同様に電子顕微鏡で多孔質層の微粒子を観察し、その粒径に標準偏差を平均粒径で割ったものを示す。
【0068】
上記微粒子は、1次粒子のままで、あるいは2次粒子もしくはそれ以上の高次凝集粒子で多孔質皮膜中に存在していても良いが、上記の平均粒径は、電子顕微鏡で観察したときに多孔質層中で独立の粒子を形成しているものの粒径を言う。
【0069】
上記微粒子の水溶性塗布液における含有量は、5〜30質量%であり、特に7〜20質量%が好ましい。
【0070】
また、多孔質層中の親水性バインダーに対する微粒子の質量比は、2〜20であることが好ましい。該質量比が2倍以上であれば、十分な空隙率を有する多孔質膜が得られ、空隙容量も十分なものが得られる。また、インクジェット記録時に、親水性バインダーが膨潤して空隙を塞ぐという状況を抑えて、高インク吸収速度を達成できる要因となる。一方、この比率が20倍以下であれば、多孔質層を厚膜で塗布した際であっても、ひび割れが生じにくい。特に好ましい親水性バインダーに対する微粒子の比率は、2.5〜12倍、最も好ましくは3〜10倍である。
【0071】
多孔質層に含有される親水性バインダーとしては、特に制限はなく、従来公知の親水性バインダーを用いることができ、例えば、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーあるいは水分散性のラテックスを用いることができるが、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0072】
ポリビニルアルコールは、無機微粒子との相互作用を有しており、無機微粒子に対する保持力が特に高く、更に、吸湿性の湿度依存性が比較的小さなポリマーであり、塗布乾燥時の収縮応力が比較的小さいため、塗布乾燥時のひび割れに対する適性が優れる。本発明で好ましく用いられるポリビリルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0073】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1000〜5000のものが好ましく用いられる。ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0074】
カチオン変成ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、これらはカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0075】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0076】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0077】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号、および同63−307979号公報に記載されているビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号公報に記載されている水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0078】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0079】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなどの2種類以上を併用することもできる。特に、重合度が2000以上のポリビニルアルコールを使用する場合には、予め、無機微粒子分散液に重合度が1000以下のポリビニルアルコールを無機微粒子に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%添加してから、重合度が2000以上のポリビニルアルコールを添加すると、著しい増粘が無く好ましい。
【0080】
多孔質層の親水性バインダーに対する微粒子の比率は、質量比で2〜20倍であることが好ましい。質量比を2倍以上にすることにより、多孔質層の空隙率が低下し、充分な空隙容量が得にくくなるだけでなく、過剰の親水性バインダーがインクジェット記録時に膨潤して空隙を塞ぎ、インク吸収速度を低下させる要因となることを抑制できる。一方、この比率を20倍以下とすることにより、多孔質層を厚膜で塗布した際に、ひび割れが生じやすくなることを抑制することができる。特に好ましい親水性バインダーに対する微粒子の比率は、2.5〜12倍、最も好ましくは3〜10倍である。
【0081】
本発明のインクジェット記録用紙に用いられる支持体としては、吸水性支持体(例えば、紙など)や非吸水性支持体を用いることができるが、より高品位なプリントが得られる観点から、非吸水性支持体が好ましい。
【0082】
非吸水性支持体は、単に高品位なプリントが得られるということだけでなく、オーバーコートした各添加剤成分が、塗布後に紙中に拡散して、添加剤本来の効果を損うことを抑制できる。
【0083】
好ましく用いられる非吸水性支持体としては、例えば、ポリエステル系フィルム、ジアセテート系フィルム、トリアテセート系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリイミド系フィルム、セロハン、セルロイド等の材料からなる透明または不透明のフィルム、あるいは基紙の両面をポリオレフィン樹脂被覆層で被覆した樹脂被覆紙、いわゆるRCペーパー等が用いられる。
【0084】
上記支持体上に、前記の水溶性塗布液を塗布するに当たっては、表面と塗布層との間の接着強度を大きくする等の目的で、支持体にコロナ放電処理やポリビニルアルコールやゼラチンなどの下引処理等を行うことが好ましい。さらに、本発明のインクジェット記録用紙は、必ずしも白色である必要はなく着色された支持体であってもよい。
【0085】
本発明で好ましく用いられる支持体は、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルムおよび紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体であるが、本発明において特に好ましいのは、ポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体である。
【0086】
以下、最も好ましい態様のポリオレフィンの代表であるポリエチレンでラミネートした紙支持体について説明する。
【0087】
紙支持体に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、例えば、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPまたはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。
【0088】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0089】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0090】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlであることが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と、42メッシュ残分の質量%との和が30〜70質量%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は、20質量%以下であることが好ましい。
【0091】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理を施して、高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS−P−8118に規定の方法に準ずる)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で、20〜200gが好ましい。原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては、前記原紙中に添加できるサイズ剤と同様のものを使用することができる。原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法ににより測定した場合、5〜9であることが好ましい。
【0092】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0093】
また、塗布層側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものも使用することができる。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して、1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%である。
【0094】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目等の微粒面を形成したものも本発明で使用することができる。
【0095】
原紙の表裏のポリエチレン使用量は、水系塗布組成物の膜厚やバック層を設けた後で低湿および高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、本発明に係る水系塗布組成物を塗布する側のポリエチレン層としては20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲であることが好ましい。
【0096】
更に、上記ポリエチレン被覆紙支持体は、以下の特性を有していることが好ましい。
【0097】
1)引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で、縦方向が20〜300N、横方向が10〜200Nであることが好ましい
2)引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で、縦方向が0.1〜2N、横方向が0.2〜2Nが好ましい
3)圧縮弾性率:≧1030N/cm2
4)表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、500秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い
5)裏面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、100〜800秒が好ましい
6)不透明度:直線光入射/拡散光透過条件の測定条件で、可視域の光線での透過率が20%以下、特に15%以下が好ましい
7)白さ:JIS−P−8123に規定されるハンター白色度で、90%以上が好ましい。また、JIS−Z−8722(非蛍光)、JIS−Z−8717(蛍光剤含有)により測定し、JIS−Z−8730に規定された色の表示方法で表示したときの、L*=90〜98、a*=−5〜+5、b*=−15〜+5が好ましい。
【0098】
上記支持体のインク受容層側には、インク受容層との接着性を改良する目的で、下引き層を設けることが好ましい。下引き層のバインダーとしては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーやTgが−30〜60℃のラテックスポリマーなどが好ましい。これらバインダーは、記録用紙1m2当たり0.001〜2gの範囲で用いられる。下引き層中には、帯電防止の目的で、従来公知のカチオン性ポリマーなどの帯電防止剤を少量含有させることができる。
【0099】
上記支持体のインク受容層側と反対側の面には、滑り性や帯電特性を改善する目的でバック層を設けることもできる。バック層のバインダーとしては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーやTgが−30〜60℃のラテックスポリマーなどが好ましく、またカチオン性ポリマーなどの帯電防止剤や各種の界面活性剤、更には平均粒径が0.5〜20μm程度のマット剤を添加することもできる。バック層の厚みは、概ね0.1〜1μmであるが、バック層がカール防止のために設けられる場合には、概ね1〜20μmの範囲である。また、バック層は2層以上から構成されていても良い。
【0100】
下引き層やバック層の塗設に際しては、支持体表面にコロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を併用することが好ましい。
【0101】
上記多孔質層を形成する水溶性塗布液中には、各種の添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、カチオン性媒染剤、架橋剤、界面活性剤(カチオン、ノニオン、アニオン、両性)、白地色調調整剤、蛍光増白剤、防黴剤、粘度調整剤、低沸点有機溶媒、高沸点有機溶媒、ラテックスエマルジョン、退色防止剤、紫外線吸収剤、多価金属化合物(水溶性もしくは非水溶性)、マット剤、シリコンオイル等が挙げられるが、中でもカチオン媒染剤は、印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。
【0102】
カチオン媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基および第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が用いられるが、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いことなどから、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。
【0103】
好ましいポリマー媒染剤は、上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られる。
【0104】
また、親水性バインダーの架橋剤を含有させることも特に好ましい。架橋剤により、多孔質層の耐水性が改善され、また、インクジェット記録時に親水性バインダーの膨潤が抑制されるためにインク吸収速度が向上する。
【0105】
架橋剤としては、従来公知の架橋剤を使用することができ、無機系架橋剤(例えば、クロム化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、ホウ酸類など)や有機系架橋剤(例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、N−メチロール系架橋剤、アクリロイル系架橋剤、ビニルスルホン系架橋剤、活性ハロゲン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エチレンイミノ系架橋剤等)等を使用することができる。架橋剤は2種以上を併用することもできる。
【0106】
これらの架橋剤は、親水性バインダーに対して、概ね1〜50質量%であり、好ましくは2〜40質量%である。
【0107】
親水性バインダーがポリビニルアルコール類であり、微粒子がシリカである場合、架橋剤としては、ホウ酸類やジルコニウム化合物などの無機系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が、特に好ましい。
【0108】
特に好ましい態様として、ポリビニルアルコールとシリカ微粒子を用いた場合には、ホウ酸またはその塩を用いることにより、水溶性塗布液の温度を低下させた際に、その粘度が大きく上昇し、塗膜面に強い風を吹き付けても塗膜の乱れが大幅に抑制され、高速塗布が容易になることから好ましい。ホウ酸またはその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことを示し、具体的には、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸およびそれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)が含まれる。
【0109】
ホウ酸またはその塩の使用量は、塗布液の無機微粒子やポリビニルアルコールの濃度、pH等により広範に変わり得るが、ポリビニルアルコールに対して概ね5〜60質量%、好ましくは10〜40質量%である。
【0110】
ホウ酸を含有する塗布液について、更に詳細に説明する。
上記ホウ酸とポリビニルアルコール親水性バインダーとして含有する塗布液は、40℃における粘度に対して15℃における粘度が20倍以上高いと、塗布後に塗膜を冷却、セットさせた後、強風を吹き付けて乾燥することができ、高速塗布乾燥性の観点で好ましい。好ましい15℃における粘度の上昇は、40℃における粘度の50倍以上であり、特に好ましくは100倍以上である。また、塗布時の温度は、一般に30〜50℃であるが、40℃における塗布液粘度が10〜500mPa・s程度であることが、塗布液の取り扱い性が良好であり好ましい。ここでいう粘度とは、B型粘度計で測定した値を言う。
【0111】
上記のような塗布液物性を得るためには、親水性バインダーと無機微粒子との間に水素結合性の相互作用を持たせることが有効な手段である。この水素結合は、比較的弱い結合のため、温度を上げることで分子運動により容易に切れやすく、高温で低粘度、低温で高粘度になりやすい。それ故に、上記水溶性塗布液を支持体上に塗布した後は、塗布液を冷却して著しく増粘させることが前述の如く好ましい。
【0112】
塗布液の塗布温度は、一般的には、30〜60℃であり、塗布後の冷却温度は塗膜温度が概ね20℃以下になるようにすれば良く、特に、15℃以下にすることが好ましい。
【0113】
冷却は、塗布後の塗設物を、例えば、15℃以下に冷却されたゾーンを一定時間(好ましくは5秒間以上)通過させることで行うことができる。この冷却時点では、あまり強い風を吹き付けないことが、液ヨリを起こさず均一でムラのない塗膜を得る観点から好ましい。
【0114】
一旦冷却した以降は、強い風を吹き付けても、塗布液自体の増粘のため、液ヨリを起こしにくくなり、強い風を吹き付けても液ヨリの発生を抑制することができる。また、吹き付ける強い風の温度は、20℃以上の風を吹き付けることができるが、徐々に風の温度を上げるのが好ましい。
【0115】
水溶性塗布液を支持体上に塗布した後の乾燥は、風を吹き付けたり高温状態のゾーンを通過させる、もしくは両者を併用することで行われる。
【0116】
高温ゾーンを通過させて乾燥させる場合、50〜150℃の乾燥ゾーンを通過させる。この際、乾燥温度は、支持体の耐熱性や塗膜への悪影響などを考慮して適切な乾燥温度を選択することが好ましい。乾燥する風は、通常、相対湿度が10〜50%、好ましくは15〜40%の風で行われる。乾燥時間は、湿潤膜厚にもよるが、概ね10分以内が好ましく、5分以内にするのが特に好ましい。
【0117】
塗布速度は、湿潤膜厚や設備の乾燥能力に依存するが、概ね1分当たり10〜1000m、好ましくは20〜500mである。
【0118】
なお、上記塗布液に添加しても、直ちに反応してゲル化や凝集を起こしたり分解しないが、塗布液の長時間の停滞で反応や分解を起こす特性を有する添加剤は、塗布液に塗布直前にインライン混合する方法を用いることが好ましい。ここでいう塗布直前とは、添加剤の混合後、塗布までの時間が1秒〜2分程度以内を示す。
【0119】
上記塗布液の塗布方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0120】
また、塗布後の乾燥は、従来公知の乾燥方法を用いることができるが、塗布液が低温で増粘しやすい場合には、たとえば写真工学の基礎(銀塩写真編)、256〜259頁(コロナ社発行,1979年)に記載されているようなair loop乾燥やつる巻き乾燥など、乾燥長が膨大であっても乾燥室としては比較的狭い面積で行うことのできる乾燥方式を採用することができる。この方法は高速塗布に適した方法であり、本発明においても塗布液が低温増粘性が高い場合には使用するのが好ましい。
【0121】
本発明の記録用紙に係る多孔質層は、単層であっても多層であっても良く、多層構成の場合には、全ての層を同時に塗布することが、製造コスト低減の観点から好ましい。
【0122】
次に、オーバーコート(多孔質層に付与)する添加剤含有溶液について説明する。
【0123】
オーバーコートする上記溶液が含有する添加剤としては、前記の多孔質層用塗布液に添加することができる化合物であっても、乾燥時にひび割れを増大させ易い化合物、あるいは前記の多孔質層用の塗布液中に添加すると凝集を形成したり、多孔質層用の塗布液の粘度を大幅に低下もしくは増大させる化合物、更には多孔質層用の塗布液中に添加した場合に、塗膜中で水分もしくは他の添加剤との反応等により有効な効果が得にくい種々の化合物に適用することができる。例えば、その添加剤の使用により、pHが変化する有機または無機の酸、もしくは各種のアルカリ性の添加剤、水溶性多価金属イオンの水溶性塩、アニオン、カチオン、両性、もしくはノニオン系の各種界面活性剤、退色防止剤、カチオン性定着剤、親水性バインダーの架橋剤等が挙げられる。
【0124】
多孔質皮膜の膜面pHは、種々の観点から最適なpHが選択される。膜面pHはインク吸収特性、耐光性、滲み耐性、耐水性、ガス退色性、白地変化、ドット径への影響があり、使用するプリンターやインクとの組み合わせで最適なpHが選定される。しかしながら、前述のごとく、多孔質の皮膜を形成する塗布液を調整する場合、塗布液のpHの設定は凝集性や塗布液粘度の観点で制約があり、必ずしも満足のいく膜面pHに合わせることは難しいが、本発明のオンラインオーバーコートの方法によれば方法によれば、塗布液のpHとは独立に記録用紙の膜面pHを1回の塗布(オーバーコート)でコントロールすることが可能である。
【0125】
多孔質皮膜の膜面pHを低下させる目的で使用できる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸などの無機酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、フタル酸、こはく酸、蓚酸、ポリアクリル酸などの有機酸を挙げることができる。この溶液のpHとしては、0〜6が好ましく、pHが1〜5であることが特に好ましい。また、pH調整後の最終の膜面pHは3〜7が好ましく、特に3.5〜6が特に好ましい。
【0126】
一方、多孔質皮膜の膜面pHを増大させる目的で使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ほう砂、燐酸ナトリウム、水酸化カルシウム、有機アミンなどが挙げられる。このアルカリを含有する溶液のpHは8〜14であり、添加剤含有溶液のpHは特に好ましくは9〜12である。
【0127】
記録用紙の多孔質層の膜面pHは、インクの種類によっても異なるが、一般には、より酸性側で染料の耐水性や滲みが改善されるが、耐光性はより高pH側で改良される傾向が大きいため、使用するインクとの組み合わせで最適なpHは選定される。好ましい多孔質表面の膜面pHは、3〜7であり、特に3.5〜6.5が好ましい。ここでいう膜面pHとは、J.TAPPI 49に規定される紙の表面pH測定方法にしたがって測定した値であり、具体的には、記録用紙表面に50μlの純水(pH=6.2〜7.3)を滴下し、市販の平面電極を用いて測定した値を言う。
【0128】
オンラインでオーバーコートする添加剤含有溶液は、親水性バインダーの架橋剤を含有していることが好ましい態様の一つである。
【0129】
本発明で用いることのできる架橋剤としては、前述の架橋剤を挙げることができる。
【0130】
本発明において、多孔質皮膜を形成する水溶性塗布液が、予め親水性バインダーの架橋剤を含有しておき、さらにオーバーコートする添加剤含有溶液がさらに架橋剤を含有する場合には、親水性バインダーの架橋効果が著しく増大して、インク吸収性改良効果が大きく好ましい態様の一つである。これは、多孔質を形成する塗布液中に架橋剤を添加しておくことで、親水性バインダーの分子量が見かけ上増大し、それらが皮膜になった状態で架橋剤を供給することで、膨潤しにくい皮膜が形成されると考えられる。
【0131】
架橋剤をオーバーコートする場合に用いる架橋剤としては、水溶性塗布液に含有する架橋剤と同じであっても、異なっていても良い。オーバーコートする架橋剤は、乾燥終点での多孔質層の親水性バインダーに対して、1〜100質量%、好ましく5〜50質量%の範囲で用いられる。特に好ましい架橋剤は、前述のホウ酸類、ジルコニウム塩、アルミニウム塩もしくはエポキシ系架橋剤である。
【0132】
オンラインでオーバーコートする添加剤含有溶液は、画像安定剤(以下、退色防止剤ともいう)であることも好ましい態様の一つである。
【0133】
本発明では、従来インクジェットで公知の退色防止剤を用いることができる。この退色防止剤は、光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOxなどの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。そのような退色防止剤としては、例えば、特開昭57−74192号、同57−87989号および同60−72785号に記載の酸化防止剤、特開昭57−74193号に記載の紫外線吸収剤、特開昭61−154989号に記載のヒドラジド類、特開昭61−146591号に記載のヒンダードアミン系酸化防止剤、特開昭61−177279号に記載の含窒素複素環メルカプト系化合物、特開平1−115677号および同1−36479号に記載のチオエーテル系酸化防止剤、特開平1−36480号に記載の特定構造のヒンダードフェノール系酸化防止剤、特開平7−195824号および同8−150773号に記載のアスコルビン酸類、特開平7−149037号に記載の硫酸亜鉛、特開平7−314882号に記載のチオシアン酸塩類など、特開平7−314883号に記載のチオ尿素誘導体など、特開平7−276790号および同8−108617号に記載の糖類、特開平8−118791号に記載のリン酸系酸化防止剤が、特開平8−300807号に記載の亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩などが、また、特開平9−267544号に記載のヒドロキシルアミン誘導体等を退色防止剤として挙げることができる。更に、特開2000−263928等に記載のジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンの重縮合物なども、インクジェットにおける有効な退色防止剤の一つである。上記退色防止剤は、多孔質皮膜を形成する塗布液に添加することもできるが、本発明においては、塗布液の凝集やひび割れの増大を防止するには、オーバーコート法が、より多く添加することができ好ましい。
【0134】
退色防止剤の添加量は、記録用紙1m2当たり0.01〜5g、好ましくは0.1〜2gの範囲である。添加量が多ければそれだけ退色防止効果は大きいが、空隙容量を低下させるため、自ずと制限がある。
【0135】
添加剤含有溶液には、カチオン性ポリマーを含有することができる。一般に、カチオン性ポリマーは、染料の定着剤として作用し、耐水性や滲みを防止するため、予め多孔質受容層を形成する塗布液に添加しておくことが好ましいが、塗布液中に添加した際に問題が発生する場合には、オーバーコート法で供給することもできる。例えば、カチオン性ポリマーの添加により、塗布液が経時で増粘したり、あるいは、多孔質層内でカチオン性ポリマーの分布を持たせて発色性を改善する場合などでは、オーバーコート法で供給することが好ましい。カチオン性ポリマーをオーバーコート法で供給する場合、記録用紙1m2当たり0.1〜5gの範囲である。
【0136】
オンラインでオーバーコートする添加剤含有溶液の別の好ましい例は、添加剤が、水溶性多価金属化合物の場合である。
【0137】
水溶性多価金属化合物は、一般に、無機微粒子含有の塗布液中に存在すると凝集を起こしやすいことが多く、これにより微少な塗布故障や光沢性の低下を引き起こしやすいため、特にオーバーコート法で供給するのが好ましい。
【0138】
そのような多価金属化合物としては、例えば、Mg2 +、Ca2 +、Zn2 +、Zr2 +、Ni2 +、Al3 +などの硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等で用いられる。なお、塩基性ポリ水酸化アルミニウムや酢酸ジルコニルなどの無機ポリマー化合物も、好ましい水溶性多価金属化合物の例に含まれる。これらの水溶性の化合物は、一般に、耐光性を向上したり、滲みや耐水性を向上させる機能を有するものが多い。これらの水溶性多価金属イオンは、記録用紙1m2当たり、0.05〜20ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲で用いられる。
【0139】
オンラインでオーバーコートする添加剤含有溶液の別の例は、界面活性剤を含有している態様である。
【0140】
界面活性剤は、インクジェット記録時にドット径をコントロールすることが可能であり、そのような界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性、もしくはノニオン系界面活性剤を挙げることができる。また、界面活性剤は、2種以上を併用することもできる。界面活性剤の添加量は、記録用紙1m2当たり0.01〜50mgである。50mgを越えると、インクジェット記録時にマダラ状のムラになりやすい。
【0141】
添加剤含有溶液は、上記以外にも種々の添加剤を含有することができ、そのような添加剤としては、例えば、白地の色調を調整する染料、防黴剤、水溶性ポリマー、可塑剤(グリセリン、ジエチレングリコールなど)等を挙げることができる。
【0142】
上記の各添加剤は、単独で使用しても、あるいは2種以上を併用することもできる。具体的には、退色防止剤を2種以上含む水溶液を用いることも、また、退色防止剤と架橋剤を含有する溶液、退色防止剤と界面活性剤を含有する溶液、更には架橋剤、水溶性の多価金属化合物、および退色防止剤を併用することもできる。
【0143】
上記添加剤含有溶液の溶媒として、本発明では、水または水混和性の有機溶媒と水との混合溶液であることが好ましく、水を用いることが特に好ましい。また、水と水混和性を有する低沸点有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等)との混合溶媒も好ましい溶媒である。水と水混和性の有機溶媒とを併せて使用する場合、水の含有率が溶媒全体に対して質量比で50質量%以上含有していることが好ましい。
【0144】
ここで水混和性を有する低沸点有機溶媒とは、室温で水に対して10質量%以上の溶解性を有し、沸点が約120℃以下の有機溶媒を言う。
【0145】
上記各添加剤の含有溶液の粘度は、100mPa・m以下であることが好ましい。粘度を100mPa・s以下とすることにより、多孔質皮膜層中への浸透性を向上でき、表面でムラになったりインク吸収能を低下させることを抑制できる。好ましい粘度は20mPa・s以下であり、特に好ましい粘度は0.5〜5mPa・sである。
【0146】
また、添加剤含有溶液の表面張力は、室温で200〜600μN/cmであることが、均一な塗布性を得る観点から好ましい。
【0147】
次に、上記各添加剤含有溶液を付与、乾燥する方法について説明する。
本発明において、各添加剤含有溶液の付与(オーバーコート)は、前述したように、塗布した多孔質層の乾燥終了以降に行われる。
【0148】
各添加剤含有溶液の付与のタイミングは、多孔質層の乾燥終点から1時間以内、好ましくは15分以内、更に好ましくは5分以内である。
【0149】
乾燥終点は、前記のごとく多孔質皮膜の温度が乾燥する風の温度と同じになった点であるが、乾燥終点以前に添加剤含有溶液を付与すると、特に高速プリンターでプリントしたときにマダラが発生しやすい。乾燥終点以前においては多孔質皮膜に水分が残存しているために、この水分により皮膜中のバインダーが膨潤状態にあり添加剤含有溶液の吸収速度が低下するために皮膜中に添加剤の不均一性が生じてマダラが生じやすいのではないかと推定される。好ましくは、乾燥終点後、5秒以上経過してから添加剤を付与するのが好ましい。なお、乾燥終点から15分以内、好ましくは5分以内、更に好ましくは30秒以内に添加剤含有溶液を多孔質層に付与することが好ましい。
【0150】
また、添加剤水溶液を付与する際の多孔質皮膜温度は25〜70℃の間が好ましい。皮膜温度を25℃以上とすることにより、添加剤含有溶液の吸収速度が低下してマダラが生じることを抑制することができ、また、70℃以下とすることにより、添加剤含有溶液の蒸発が早すぎて不均一な塗膜面が形成されるのを抑制することができる。好ましい皮膜温度は、30〜65℃である。
【0151】
添加剤水溶液の付与量は多孔質皮膜の空隙容量以下であることが好ましい。空隙容量とは、この記録用紙をJ.TAPPI 51に規定される紙および板紙の液体吸収性試験方法(ブリストー法)で測定したときの接触時間2秒における液体転移量を言う。
【0152】
添加剤含有溶液の供給量を空隙容量以下とすることにより、得られる記録用紙の吸収性に不均一性が生じてマダラが発生するのを抑制できる。また、乾燥直後の皮膜状態は、膨潤性が比較的高く、充分な吸収性を有していないため、好ましくは空隙容量の80%以下の溶液付与量とするのが好ましい。添加剤含有溶液の付与量の下限は、添加剤の付与量と溶解性、あるいは添加剤含有溶液の付与方式にも依存するが、記録用紙1m2あたり2ml以上である。
【0153】
溶液の塗布方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができ、具体的な塗布方式としては、前述の多孔質層の塗布で記載の方法を用いることができるが、特に好ましい方式は、グラビア塗布方式、もしくは特願2002−49715に記載された溶液を液滴として噴霧する方式であり、特に好ましくは微少ノズルを塗布幅にわたって複数有し、ガスを噴出するガスノズルを備えたスロットノズルスプレー装置を用いて溶液を供給する方式である。
【0154】
溶液の塗布は、室温以上、60℃以下の温度で塗布するのが好ましい。
溶液は塗布に先立って濾過することが好ましく、特に、塗布方式として上記のガスノズルを備えたスロットノズルスプレー装置を用いる場合には、微小の異物・ゴミなどがノズルを目詰まらせて塗布筋の原因となりやすい。通常は5〜20μm程度の粒子を除去できるフィルターを用いることが好ましい。
【0155】
溶媒を塗布した後、記録用紙は乾燥してロール状に巻き取ることが好ましい。この際、オーバーコートで供給した溶媒の50%以上が乾燥された状態で巻き取ることが本発明では好ましい。
【0156】
付与した溶媒の50%以上が乾燥された状態で巻き取ることにより、断裁後にカールが大きくなるのを抑制でき、またこのロールの保管中での凹凸の発生を抑制でき、その結果、筋状故障を低減することができる。好ましくは、付与した溶媒の1/3以下の質量になるまで乾燥することであり、特に、周囲の環境と平衡状態になるまで乾燥させるのが好ましい。
【0157】
また、記録用紙を保管する際には、本発明の記録用紙は、オーバーコートして乾燥した後、ロールに保管したまま、あるいはシート状に断裁した後、保管することが好ましい。30℃以上で一定時間、例えば、1日〜1ヶ月間保管すると、インク吸収速度が更に改善されてマダラ状のムラの軽減に役立つ。好ましい保管条件は、30〜50℃で1〜30日である。
【0158】
以下に、本発明の記録用紙の上記以外の好ましい物理特性値を示す。
1)光沢度:60度光沢度が20〜60%(光沢面)、12〜40%(微粒面)、5〜12%(マット面)
なお、プリント後の光沢度は水性染料インクでプリントした場合、未プリント部分より−5%〜+20%が好ましい
2)ベック平滑度(JIS−P−8119に規定):インク受容層表面は、800秒以上(光沢面)、200〜1000秒(微粒面)、50〜300秒(マット面)で有ることが好ましい
3)粗さ(JIS−B−0601に規定される表面粗さRa):0.1〜0.8μm(光沢面)、1.0〜3.0μm(微粒面)が好ましい。また裏面のRaは0.5〜5μmが好ましい
4)不透明度(JIS−P−8138に規定):90%以上、特に92%以上が好ましい
5)テーバー剛度(JIS−P−8125に規定):0.3〜3mN・m/MD、0.2〜2.5mN・m/CDが好ましい
6)白さ(JIS−P−8123/蛍光増白剤を含有しない場合、JIS−P−8143/蛍光増白剤を含有する場合):90%以上が好ましい
7)白さ(JIS−Z−8722(非蛍光)またはJIS−Z−8717(蛍光剤含有)にしたがって測定しJIS−Z−8730にしたがって表示):L*=90〜98、a*=−3〜+3、b*=−10〜+2が好ましい。但し、印刷用紙の場合には、日本、アメリカ、ヨーロッパでそれぞれ好ましい白地が推奨されており(例えば、JAPAN COLOR)、そのような目的で使用する場合にはそこに推奨される白さを有することが好ましい。
【0159】
本発明の記録用紙は、主に酸性染料を含有するインクジェット記録用として用いられるが、水性または油性の顔料インクを用いるインクジェット記録用にも用いることができる。
【0160】
次に、本発明のインクジェット記録用紙の製造方法を実施するための製造ラインの一例を図1を用いて説明する。
【0161】
ここでは、支持体Sとして、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した樹脂被覆紙を用いている。図示していない搬送手段により支持体元巻きから繰り出された支持体Sが、サポートローラ3を通過し、更にバックアップローラ2の位置で反転搬送される過程で、流量規制型のスライドビード塗布装置1より供給される多孔質層用の塗布液が、支持体S上に塗布される。この状態以降の支持体Sを基体5と称す。
【0162】
この多孔質層用の塗布液は、親水性バインダーを含有しているので、冷却ゾーン4で一旦冷却して固化する。支持体S上に多孔質層を有する基体5は、次いで乾燥工程に搬送される。
【0163】
乾燥工程では、エアを吹き出して塗布膜表面と非接触で反転搬送させるリバーサ6と、基体5の裏面に接触して反転搬送させる通常の搬送ローラ7とを交互に設けて、基体5を蛇行搬送させている。この乾燥工程においては、基体5に温風を吹き付けて乾燥する。なお、温風吹きつけ手段は、不図示。図1では、乾燥工程として、第1ゾーンから第10ゾーンまで10個の乾燥ゾーンを設けた例を示してある。この乾燥過程の途中、乾燥終点(図1の例では、第7ゾーンの出口付近)以降の位置(図1では、第9ゾーン)でスロットノズルスプレー装置8によって、液滴噴霧による添加剤含有溶液の塗布が行われる。
【0164】
図1においては、1つのスロットノズルスプレー装置8を使用したが、必要に応じて複数個用いても良い。特に、多段に分けて液滴噴霧を行うことにより、乾燥負荷がより低減されると共に、塗膜均一性も高まるため好ましい。
【0165】
多孔質層上に添加剤含有溶液を付与する際の塗布速度としては、用いる塗布液の種類、濃度、溶媒含有量、乾燥能力等により変化するが、好ましくは50〜300m/minであり、より好ましくは100〜300m/minである。
【0166】
また、多孔質層を形成するための塗布工程と多孔質層上に添加剤含有溶液を付与するための工程とは、図1に示すように同一製造ライン上で、かつ連続して行うことが好ましい。また、添加剤含有溶液を多孔質層上に付与する工程は、図1に示すように、多孔質層を乾燥させるための乾燥工程ないにおいて実施することができる。乾燥工程では、湿潤状態の塗布膜を連続的に搬送しながら、その表面あるいは裏面より、特定の温度及び湿度条件に制御された乾燥風を吹き付けて乾燥を行うことが好ましい。
【0167】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で記載の「%」は、特に断りのない限り質量%を表す。
【0168】
実施例1
《記録用紙1〜7の作製》
〔シリカ分散液D1、D2の調製〕
予め均一に分散されている、1次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製:アエロジル200)を25%と、水溶性蛍光増白剤UVITEXNFW LIQUID(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を0.1%とを含むシリカ分散液B1(pH=2.3、エタノール1質量%含有)の400Lを、カチオン性ポリマーP−1を12%、n−プロパノールを10%およびエタノールを2%含有する水溶液C1(pH=2.5、サンノブコ社製の消泡剤SN381を2g含有)の110Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。次いで、ホウ酸とほう砂の1:1質量比の混合水溶液A1(各々3%の濃度)の54Lを攪拌しながら徐々に添加した。
【0169】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで、3kN/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D1を得た。
【0170】
一方、上記シリカ分散液B1の400Lを、カチオン性ポリマーP−2を12%、n−プロパノール10%およびエタノールを2%含有する水溶液C2(pH=2.5)の120Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加し、次いで、上記混合水溶液A1の52Lを攪拌しながら徐々に添加した。
【0171】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで3kN/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D2を得た。
【0172】
上記シリカ分散液D1、D2を、30μmの濾過精度を有するアドバンテック東洋社製のTCP−30タイプのフィルターを用いて濾過を行った。
【0173】
〔オイル分散液の調製〕
ジイソデシルフタレート20kgと酸化防止剤(AO−1)20kgとを45kgの酢酸エチルに加熱溶解し、酸処理ゼラチン8kg、カチオン性ポリマーP−1を2.9kgおよびサポニン5kgとを含有するゼラチン水溶液210Lと55℃で混合し、高圧ホモジナイザーで乳化分散した後、全量を純水で300Lに仕上げて、オイル分散液を調製した。
【0174】
【化1】
【0175】
〔多孔質層塗布液の調製〕
上記調製した各分散液を使用して、以下に記載の各添加剤を順次混合して、多孔質層用の各塗布液を調製した。なお、各添加量は塗布液1L当たりの量で表示した。
【0176】
(第1層用塗布液:最下層)
シリカ分散液D1 620ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液6ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)6.5%
水溶液 300ml
オイル分散液 40ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製:AE803) 22ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0177】
(第2層用塗布液)
シリカ分散液D1 650ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液6ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)6.5%
水溶液 290ml
オイル分散液 20ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製:AE803) 22ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0178】
(第3層用塗布液)
シリカ分散液D2 650ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液6ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)6.5%
水溶液 280ml
オイル分散液 20ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製:AE803) 15ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0179】
(第4層用塗布液:最上層)
シリカ分散液D2 690ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液7ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)6.5%
水溶液 260ml
カチオン型界面活性剤−1の4%水溶液 4ml
サポニンの25%水溶液 2ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0180】
【化2】
【0181】
上記の様にして調製した各塗布液を、20μmの濾過精度を持つアドバンテック東洋社製のTCPD−30フィルターで濾過した後、10μmの濾過精度を有するTCPD−10フィルターで濾過した。
【0182】
〔記録用紙の作製〕
次に、上記の各塗布液を下記に記載の湿潤膜厚となるよう、両面にポリエチレンを被覆した紙支持体上に、カーテン塗布装置を用いて40℃の各塗布液を4層同時に塗布した。
【0183】
〈湿潤膜厚〉
第1層:30μm
第2層:33μm
第3層:33μm
第4層:34μm
なお、上記紙支持体は、幅が約1.5m、長さが約4000mのロール状に巻かれた下記の支持体を用いた。
【0184】
使用した紙支持体は、含水率が8%で、坪量が170gの写真用原紙表面を、アナターゼ型酸化チタンを4%含有するポリエチレンを厚さ30μmで押し出し溶融塗布し、裏面には厚さ29μmのポリエチレンを押し出し溶融塗布した。表面側は、コロナ放電した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA235)を記録用紙1m2当たり0.05gになるように下引き層を塗布し、裏面側にはコロナ放電加工した後、Tgが約80℃のスチレン・アクリル酸エステル系ラテックスバインダー約0.4g、帯電防止剤(カチオン性ポリマー)0.1gおよび平均粒径が約1μmのシリカ0.1gをマット剤として含有するバック層を塗布した。
【0185】
インク受容層用塗布液の塗布後の乾燥は、5℃に保った冷却ゾーンを20秒間通過させて膜面の温度を11℃にまで低下させたあと、air loop方式で以下の温度の風を順次インク受容層表面に吹き付けながら各ゾーンを通過させて乾燥し、ロール状に巻き取って比較の記録用紙1を得た。
【0186】
なお、吹き付ける風はいずれも平均相対湿度が30%以下であり、第10ゾーンは、設定相対湿度が50%の調湿ゾーンである。
【0187】
第1ゾーン:25℃、30秒間
第2ゾーン:35℃、30秒間
第3ゾーン:50℃、30秒間
第4ゾーン:60℃、30秒間
第5ゾーン:60℃、30秒間
第6ゾーン:60℃、30秒間
第7ゾーン:50℃、30秒間
第8ゾーン:45℃、30秒間
第9ゾーン:45℃、30秒間
第10ゾーン:23℃、90秒間
以上のようにして作製した記録用紙1の空隙容量は、記録用紙1m2当たり24mlであった。
【0188】
膜面温度を測定した結果、第4ゾーンまでは恒率乾燥部であり、第5ゾーンの途中から減率乾燥部を示し、乾燥終点(膜面温度が風の温度と一致する箇所)は第7ゾーンであった。なお、各ゾーンの出口での塗膜含水量(空隙容量=24ml/m2を100として表示)は、以下の通りであった。
【0189】
第5ゾーン:90(塗膜含水量=21.6ml/m2)
第6ゾーン:20(塗膜含水量=4.8ml/m2)
第7ゾーン:0(塗膜含水量=0ml/m2)
第8ゾーン:0(塗膜含水量=0ml/m2)
次いで、上記記録用紙1の作製において、第7ゾーンの出口付近で皮膜温度が約50℃の状態の時に、3%ホウ酸溶液(25℃)を特願2002−49715の実施例1における塗布方法2に記載のガスノズルを有するスロットノズルスプレー装置により、湿潤膜厚が10μm(10.08ml/m2 空隙容量の約42%に相当する)になるようにオーバーコート塗布し、第8ゾーンで乾燥終了させた以外は同様にして、記録用紙2を得た。
【0190】
この水溶液の粘度は室温で約1mPa・s、表面張力は約600〜700μN/cmであった。
【0191】
次に、上記記録用紙2の作製において、オーバーコートする位置を第8ゾーンの出口付近で行った以外は同様にして、記録用紙3を得た。乾燥終点は第9ゾーンの出口であった。また、記録用紙3のオーバーコート時の膜面温度は45℃であった。
【0192】
次いで、前記記録用紙2の作製において、オーバーコートする位置を第10ゾーンの入り口付近で行った以外は同様にして、記録用紙4を得た。記録用紙4のオーバーコート時の膜面温度は28℃であった。また、記録用紙4の巻き取り時の皮膜含水量は、記録用紙1m2あたり3mlであった。
【0193】
次いで、前記記録用紙2の作製において、オーバーコートする位置を第10ゾーンの中間付近で行った以外は同様にして、記録用紙5を得た。記録用紙5のオーバーコート時の膜面温度は23℃であった。また、記録用紙5の巻き取り時の皮膜含水量は、記録用紙1m2あたり7mlであった。
【0194】
次いで、前記記録用紙2の作製において、オーバーコートする位置を乾燥が終了していない第6ゾーン出口で行った以外は同様にして、記録用紙6を得た。
【0195】
また、前記記録用紙2の作製において、オーバーコートする位置を乾燥が終了していない第5ゾーンの出口付近で行った以外は同様にして、記録用紙7を得た。
【0196】
〔画像印字及び評価〕
上記のようにして得られた各記録用紙を、エプソン株式会社製のインクジェットプリンターPM950Cを用い、塗布の幅手方向でサンプリングした各試料に青色のベタ画像をプリントした。プリントは最も印字速度が速いPM写真用紙設定で双方向印字の条件で行った。紙サイズはそれぞれA6サイズで行った。
【0197】
以上のようにして得られたベタ画像の濃度測定を、マイクロデンシトメーターで行い、下記の方法に則り画像ムラ及びカールの測定を行った。
【0198】
(画像ムラの測定)
画像ムラの判定は、粒状度を測定して、これを基に行った。粒状度は、5cm角の試料の中の任意の10点を100μm×100μmのアパーチュアーで濃度測定し、その平均値と標準偏差を求め、標準偏差を平均濃度値で割った値を100倍したものである。この数値が高いほど粒状度が悪化し、すなわち画像ムラがより多いことを表す。
【0199】
(カールの測定)
各記録用紙をA4サイズに断裁した後、20枚を重ねて23℃、相対湿度55%の雰囲気下でビニール製袋に入れて1週間保管した後、23℃、相対湿度20%の環境で開封して1枚づつ平らな台に1時間放置したときのカールを測定した。カールは4隅の持ち上がりの高さの平均とし、インク吸収層面側を上にした時、4隅が持ち上がる時を+で表示し、下記の基準に則り判定を行った。
【0200】
◎:カール値の絶対値が6.0未満であり、実用上全く問題がない
○:カール値の絶対値が6.0以上、10.0未満であり、問題はない
△:カール値の絶対値が10.0以上、13.0未満であるが、実用上許容範囲にある
×:カール値の絶対値が13.0以上であり、実用上は問題がある
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0201】
【表1】
【0202】
表1より明らかなように、記録用紙1に対し、記録用紙2〜5は、ホウ酸をオーバーコートすることにより、吸収速度が増加して、画像ムラの発生が低減していることが分かる。しかし、減率乾燥部でオーバーコートした記録用紙6、7では、ホウ酸のオーバーコートによる改良効果が不十分であることが分かる。一方、カールの評価結果から、水分残存率が約3mlである状態で、ロールに巻き取った記録用紙4は、水分の約7割が残存したままでロールに巻き取られた記録用紙5よりも、低湿条件のカールが小さくなっていることが分かる。ただし、記録用紙5も、カール状態は概ね許容されるレベルである。
【0203】
実施例2
実施例1で作製した記録用紙1〜7の作製を、塗布後ロール状に巻き取った状態で、35℃、1週間のエージング処理を行った。エージング処理後、ロール状記録用紙の筋ムラを目視観察し、下記の基準に則り筋ムラの評価を行った。
【0204】
◎:全く筋ムラの発生が認められない
○:微細な筋ムラの発生が認められるが、全く問題ない
△:目視観察で稍筋ムラの発生が認められるが、実用上許容の範囲にある
×:明瞭な筋ムラが認められ、実用上問題のある品質である
また、実施例1と同様の方法で、画像ムラ及びカールの評価を行い、得られた結果を表2に示す。
【0205】
【表2】
【0206】
表2より明らかなように、ロール状に巻き取ったままエージング処理した場合、乾燥を充分に行ってから巻き取った記録用紙2、3は、乾燥を充分に行わずに巻き取った記録用紙4、5に対し、筋ムラの発生が抑制され、特に、水分の7割を残して巻き取った記録用紙5に比較して、筋ムラの抑制効果が大きいことが分かる。
【0207】
また、エージング処理で、それぞれ吸収速度は向上して画像ムラの発生が低減していることが分かるが、特に、減率乾燥以降でオーバーコートした場合の改良効果が大きいことが分かる。
【0208】
実施例3
実施例2で作製した記録用紙2〜7において、添加剤含有溶液を以下の退色防止剤を含有する溶液に変更した以外は同様にして、記録用紙12〜17を作製し、これに実施例1で作製した記録用紙1を加えて、実施例1と同様にして画像ムラ及びカールを評価した。更に、シアンのベタ画像をプリントした後、外気を直接プリント画像面に1ヶ月間吹き付けてシアン画像の退色性を評価した。退色性は初期濃度に対する保存後の画像残存率で示した。以上により得られた結果を表3に示す。
【0209】
退色防止剤−1:HOC2H4−S−CH2−CH2−S−C2H4OH
退色防止剤−2:HO−N(C2H4SO3Na)2
【0210】
【表3】
【0211】
表3より明らかなように、退色防止剤をオーバーコートした記録用紙12〜17はいずれも退色性が改善されているが、減率乾燥終了前にオーバーコートした記録用紙16と17は、いずれも実施例2の結果と同様に、画像ムラが記録用紙12〜15に比較し劣化していることが分かる。
【0212】
実施例4
実施例2で作製した記録用紙2〜7において、添加剤含有溶液を3%酢酸ジルコニル水溶液(滲み防止剤)に変更した以外は実施例2と同様にして記録用紙22〜27を作製し、これに実施例1で作製した記録用紙1を加えて、実施例1と同様にして画像ムラ及びカールを評価した。更に、マゼンタ背景色の中に線幅が約200μmの黒色のラインを印字し、40℃、相対湿度80%で1週間保存して黒線の滲み耐性を評価した。滲み耐性は、線幅をマイクロデンシトメーターにて測定して保存前の線幅に対する保存後の線幅の増幅幅(μm)で表示した。
【0213】
以上により得られた結果を、表4に示す。
【0214】
【表4】
【0215】
表4より明らかなように、酢酸ジルコニルをオーバーコートした記録用紙22〜27はいずれも滲み耐性が改善されているが、減率乾燥終了前にオーバーコートした記録用紙26と27は、いずれも実施例2の結果と同様に画像ムラが記録用紙22〜25に比較して劣化していることが分かる。
【0216】
実施例5
実施例2で作製した記録用紙2〜7において、添加剤含有溶液を5%硫酸マグネシウム水溶液(耐光性改良剤)に変更した以外は同様にして記録用紙32〜37を作製し、これに実施例1で作製した記録用紙1を加えて、実施例1と同様にして画像ムラ及びカールを評価した。更に、濃度約1.0のマゼンタのベタ画像をプリントし、キセノン耐光試験機で耐光性を評価した。耐光性は、キセノン光照射前後での濃度残存率で表示した。
【0217】
以上により得られた結果を、表5に示す。
【0218】
【表5】
【0219】
表5より明らかなように、硫酸マグネシウムをオーバーコートした記録用紙32〜37はいずれも耐光性が改善されているが、減率乾燥終了前にオーバーコートした記録用紙36と37は、いずれも実施例2と同様に、画像ムラが記録用紙32〜35に比較して劣化していることが分かる。
【0220】
【発明の効果】
多孔質層皮膜の乾燥終了以降で、かつロール状に巻き取る前に、添加剤を含有する水溶性塗布液を付与することで、添加剤の諸効果を十分に発揮すると共に、製造コストの大幅な増大を伴うことなく、画像ムラ、カール特性が改良されたインクジェット記録用紙を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録用紙の製造方法を実施するための製造ラインの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
S 支持体
1 スライドビード塗布装置
2 バックアップローラ
3 サポートローラ
4 冷却ゾーン
5 基体
6 リバーサ
7 搬送ローラ
8 スロットノズルスプレー装置
Claims (24)
- 支持体上に、親水性バインダーと微粒子とを含有する水溶性塗布液を塗布して多孔質層を形成し、該多孔質層の乾燥終了以降で、かつロール状に巻き取る前に、添加剤含有溶液を該多孔質層に付与し、付与された該添加剤含有溶液を乾燥させることによって得られたことを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 前記添加剤含有溶液は、前記多孔質層の乾燥終了後の空隙容量以下の量だけ前記多孔質層に付与することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用紙。
- 前記添加剤含有溶液を乾燥させた後、前記多孔質層が形成されて作製された記録用紙を、ロール状に巻き取ることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記添加剤含有溶液の溶媒が50%以上乾燥された状態で、ロール状に巻き取られることを特徴とする請求項3記載のインクジェット記録用紙。
- 前記添加剤含有溶液を多孔質層へ付与した後の乾燥が、温度30℃以上の温風で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記添加剤含有溶液の溶媒が、水または水混和性の有機溶媒と水との混合溶液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙が、30℃以上で少なくとも24時間加温されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙が、ロール状に巻き取られた状態又はシート状に断裁された後に、30℃以上で少なくとも24時間加温されたことを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録用紙。
- 前記支持体が、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆された樹脂被覆紙であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記紙の含水率が、5〜10質量%であることを特徴とする請求項9記載のインクジェット記録用紙。
- 前記添加剤含有溶液は、前記多孔質層の乾燥終了後15分以内に前記多孔質層に付与されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記多孔質層は、親水性バインダーに対する微粒子の質量比が2〜20であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 支持体上に、親水性バインダーと微粒子とを含有する水溶性塗布液を塗布して多孔質層を形成する塗布工程と、
該多孔質層を乾燥させる乾燥工程と、
該多孔質層の乾燥終了以降で、かつ該多孔質層が形成された支持体をロール状に巻き取る前に、添加剤含有溶液を該多孔質層に付与する工程と、
該添加剤含有溶液を乾燥させる工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。 - 前記添加剤含有溶液は、前記多孔質層の乾燥終了後の空隙容量以下の量だけ前記多孔質層に付与することを特徴とする請求項13記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記添加剤含有溶液を乾燥させた後、前記多孔質層が形成されて作製された記録用紙を、ロール状に巻き取る巻取工程を有することを特徴とする請求項13又は14に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記巻取工程では、前記添加剤含有溶液の溶媒が50%以上乾燥された状態で、前記支持体がロール状に巻き取られることを特徴とする請求項15記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記添加剤含有溶液を前記多孔質層へ付与した後の乾燥が、30℃以上の温風を用いて行うことを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記添加剤含有溶液の溶媒が、水または水混和性の有機溶媒と水との混合溶液であることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙を、30℃以上で少なくとも24時間加温させることを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記添加剤含有溶液の多孔質層への付与後に乾燥工程を経て作製された記録用紙が、ロール状に巻き取られた状態又はシート状に断裁された後に、30℃以上で少なくとも24時間加温させることを特徴とする請求項19記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記支持体が、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆された樹脂被覆紙であることを特徴とする請求項13〜20のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記紙の含水率が、5〜10質量%であることを特徴とする請求項21記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記添加剤含有溶液を、前記多孔質層の乾燥終了後15分以内に前記多孔質層に付与させることを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記多孔質層は、親水性バインダーに対する微粒子の質量比が2〜20であることを特徴とする請求項13〜23のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
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2002
- 2002-09-04 JP JP2002258715A patent/JP2004090588A/ja active Pending
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