JP4815616B2 - インクジェット記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録媒体及び該記録媒体への画像形成方法に関し、詳しくは、インク吸収速度の速く、優れた光沢性を有するインクジェット記録媒体及びそれへの画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット技術の進歩は目覚ましく、プリンター技術、インク技術、専用記録媒体技術があいまって写真画質とよばれるようになっている。画質の向上に伴い、インクジェット画像の保存性を従来の銀塩写真と比較するようになり、多くの染料インクにおいてインクジェット画像の耐水性、耐にじみ性の弱さといった色剤の移動を伴う劣化や、耐光性や酸化性ガス耐性の弱さといった色剤の化学反応を伴う劣化が指摘されている。
【0003】
染料インク画像の保存性を改良するために多くの提案がされている。記録媒体としては、特公平2−31673号に記載のように記録媒体最表層に熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設け記録後、熱可塑性有機高分子粒子を溶融皮膜化し、結果として保護膜を設け、耐水性、耐候性の改良及び画像の光沢付与を達成している。
【0004】
しかし、従来の最表層に熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設けた記録媒体には、画質に関して2つの課題がある。一つは、定着処理により光沢付与はするものの、その光沢は銀塩写真に比べ不十分な点である。特に、顔料インクを用いた場合に顕著である。また、高速画像形成を目的に印字後時間をおかずに加熱定着する場合も、画像欠陥が発生したりして画質が低下する。二つ目は、最表層に熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設けることによるインク吸収速度の低下により、カラーブリード、あるいはビーディングが発生し、画質低下を引き起こすことである。特に近年の高速プリント需要に対応すべくプリンターの高速化がなされており、画質劣化はより大きい問題になる。これらの課題に対していくつかの検討がなされているが有効な手段は見い出されていない。特開2000−203151には、用いる熱可塑性有機高分子粒子の粒径を大きくすることが提案されているが、インク吸収速度の多少の向上はあるが、まだ不十分であるし、樹脂粒子が大きいと、定着処理をしても平滑化が不十分であり、充分な光沢がでない。また、大粒径化すると加熱処理で溶融皮膜化するさいの時間がかかり結果として高速画像形成に適さない。特開平11−5361には、平均粒径0.5μmのラテックスを最表層に用いているが光沢、インク吸収速度とも不十分である。特開平11−301108には、粒径1μmの熱可塑性樹脂粒子もしくは粒径0.01μmの熱可塑性樹脂粒子を最表層に用いているが光沢、インク吸収速度とも不十分である。粒径0.01μmの熱可塑性樹脂粒子を用いた場合は、特にインク吸収速度の低下が大きく問題である。
【0005】
これらの原因は特定できてないが、熱可塑性樹脂粒子の種々の特性に起因していると思われ、光沢発現とインク吸収速度向上に最適な熱可塑性樹脂粒子の選択、開発およびそれを用いた記録媒体の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インク吸収速度が速く、かつ光沢性の良好なインクジェット記録媒体及びそれを用いた画像形成方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0008】
(1)支持体上に顔料、水溶性バインダーを含有するインク吸収層を有し、かつ表層に熱可塑性微粒子を含有するインクジェット記録媒体において、該熱可塑性微粒子の平均粒子径が1μm以下で、2μm以上の粒子の割合が5%以下であり、該熱可塑性微粒子がノニオン性であり、形成する材料がエチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、またはメタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体であることを特徴とするインクジェット記録媒体。
【0010】
(2)前記水溶性バインダーの硬膜剤を含有することを特徴とする(1)記載のインクジェット記録媒体。
【0012】
(3)支持体上に無機微粒子を主体とするインク吸収層があり、その上に熱可塑性微粒子及び無機顔料からなる表層を有することを特徴とする(1)または(2)記載のインクジェット記録媒体。
【0013】
(4)防水性支持体を用いることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項記載のインクジェット記録媒体。
【0014】
(5)前記(1)〜(4)の何れか1項記載のインクジェット記録媒体に記録後、表層の熱可塑性樹脂を溶融若しくは皮膜化する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【0015】
(6)顔料インクを用いて記録することを特徴とする(5)記載の画像形成方法。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録媒体は、顔料、水溶性バインダーを含有するインク吸収層を有し、表層には熱可塑性微粒子を含有しており、該熱可塑性微粒子の平均粒子径が1μm以下で、2μm以上の粒子の割合を5%以下とすることにより、インク吸収速度の速い、かつ画像形成後加熱することにより光沢性の優れたインクジェット記録媒体とすることができたものである。
【0017】
インク吸収層は層内部に空隙部を有しており、空隙部は、主に顔料と親水性バインダーより形成されるものである。
【0018】
本発明のインク吸収層の空隙部は、顔料を水溶性バインダー中に分散させることによって形成される。上記の目的で使用される顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料微粒子が挙げられる。濃度の高い画像が形成されること、鮮明な画像が記録できること、低コストで製造できること等の観点から、顔料としては、気相法により合成された微粒子シリカ、コロイダルシリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた顔料を用いることが好ましい。アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。現在、このような気相法によって合成された微粒子シリカが市販されており、市販の微粒子シリカには日本アエロジル社の各種のアエロジルがある。本発明の効果を得るためには、顔料の粒径は特に制限されないが、100nm以下が好ましく、空隙部を形成するために最も適する粒径は化合物によって異なるが、例えば、上記気相法シリカの場合、1次粒子の状態で分散された顔料の1次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)としては、4〜20nmが最も好ましい。
【0019】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均粒径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社製のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリームインダクターミキサーなどにより、容易に吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することができる。
【0020】
顔料の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙型のインク吸収層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、100個の任意粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0021】
本発明で用いることのできる親水性バインダー(以下、水溶性樹脂ともいう)としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの親水性バインダーは、二種以上併用することも可能である。
【0022】
本発明で好ましく用いられる親水性バインダーは、ポリビニルアルコールである。
【0023】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0024】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0025】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0026】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0027】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0028】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0029】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0030】
インク吸収層で用いられる顔料の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙率、顔料の種類、親水性バインダーの種類に大きく依存するが、一般には、記録用紙1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0031】
また、インク吸収層に用いられる顔料と親水性バインダーの比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に、3:1〜10:1であることが好ましい。
【0032】
また、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有しても良く、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0033】
空隙の総量(空隙容量)は記録用紙1m2当り20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0034】
固形分容量に対する空隙容量を空隙率という。本発明において、空隙率を50%以上にすることが、不必要に膜厚を厚くさせないで空隙を効率的に形成できるので好ましい。
【0035】
本発明において、空隙容量は、J.TAPPIの紙パルプ試験方法No.51−87紙及び板紙の液体吸収性試験方法(ブリストー法)に記載された方法で測定し、吸収時間2秒における液体転移量(ml/m2)で表される。なお、上記の測定方法では、測定に純水(イオン交換水)が使用されているが、測定面積の判別を容易にするために、2%未満の水溶性染料を含有させてもよい。
【0036】
本発明の支持体としては、従来からインクジェット記録媒体に用いられている支持体、例えば、普通紙、アート紙、コート紙およびキャストコート紙などの紙支持体、プラスティック支持体、両面をポリオレフィンで被覆したRC支持体、これらを張り合わせた複合支持体等を用いることができる。
【0037】
本発明の表層に含有される熱可塑性微粒子としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩等の微粒子が挙げられる。中でも、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、SBRラテックスが好ましい。また熱可塑性微粒子モノマー組成及び粒径、重合度が違う複数の重合体を混合して用いても良い。
【0038】
本発明の表層に含有される熱可塑性微粒子の平均粒子径は1μm以下であり、2μm以上の粒子が5%以下であり、好ましくは平均粒子径が0.6μm以下であり、1μm以上の粒子が5%以下であり、より好ましくは平均粒子径が0.3μm以下であり、0.5μm以上の粒子が5%以下である。特に、平均粒子径の下限はないが、0.08μm程度以上であることが、製造方法や取扱いの点から好ましい。
【0039】
また、本発明の表層に含有される熱可塑性微粒子の選択の基準としては、ガラス転移点Tgが挙げられる。Tgが極端に低い場合には、例えば、記録媒体製造時の塗布乾燥温度が既にTgより高く、インク溶媒が透過するための熱可塑性微粒子の空隙が消失してしまう。また、Tgが極端に高い場合には、インクによるインクジェット記録後、溶融製膜定着するために高温での定着操作が必要となり、装置上の負荷及び支持体の熱安定性等が問題となる。したがって本発明の表層に含有される熱可塑性微粒子のTgは、50〜150℃であることが好ましい。
【0040】
また、最低造膜温度(MFT)としては、50〜150℃のものが好ましい。
熱可塑性微粒子は、環境適性の観点からは水系に分散されたものが好ましく、特に、乳化重合により得られた水系ラテックスが好ましい。この際、用いられる乳化剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも用いることができるが、ノニオン系分散剤を乳化剤として用いて乳化重合したタイプは、好ましく用いることができる形態である。また、用いる熱可塑性微粒子は、臭気および安全性の観点から、残存するモノマー成分が少ない方が好ましく、重合体の固形分に対して3質量%以下が好ましく、さらに1質量%以下が好ましい、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0041】
本発明の表層は、熱可塑性微粒子を含み、且つ無機顔料を含有することが好ましい。
【0042】
無機顔料としては、前述の空隙層に用いることのできる顔料から選択することができる。
【0043】
例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0044】
好ましい無機顔料は、シリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましく、シリカがより好ましい。
【0045】
無機顔料は熱可塑性微粒子より多く含まれていることがより好ましい。熱可塑性微粒子/無機顔料の固形分質量比としては、90/10〜10/90の範囲から選択でき、好ましく70/30〜30/70の範囲であり、より好ましくは60/40〜40/60の範囲である。
【0046】
無機顔料および熱可塑性微粒子を含む表層は、固形分量として、特に制限は無いが、2g/m2〜50g/m2の範囲が好ましく、3g/m2〜30g/m2の範囲が、より好ましい。
【0047】
本発明の記録媒体において、表層に含有される熱可塑性微粒子の固形分量としては、0.5g/m2〜15g/m2の範囲が好ましく、1g/m2〜7g/m2の範囲が特に好ましい。熱可塑性微粒子の固形分量が少なすぎると、充分な皮膜が形成されず、顔料インクを用いた場合、充分に皮膜中に分散することができないため、画質、光沢が充分に向上しない。また、熱可塑性微粒子の固形分量が多すぎると、短時間の加熱工程で熱可塑性微粒子を完全に皮膜化できず、微粒子のまま残り不透明性がありかえって画質が低下する。また、インク吸収速度も低下させてしまい境界にじみが発生し問題となる。
【0048】
熱可塑性微粒子および無機顔料を含む表層用塗布液の場合は、無機顔料および熱可塑性微粒子を同時に分散しても良いし、各々分散調製したものを、塗布液調製時に混合する方法でもよい。
【0049】
本発明の記録媒体は、染料インク、顔料インク、水系インク、油性インク、ホットメルトインクのいずれにも使用可能だが、特に、水系染料インク、水系顔料インク、油性顔料インクに適しており、水系染料インク、水系顔料インクに更に適しており、その中でも、水系顔料インクが最も適している。
【0050】
支持体とインク吸収層の接着強度を大きくする等の目的で、インク吸収層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。さらに、本発明の支持体は、必ずしも無色である必要はなく、着色された支持体であってもよい。
【0051】
本発明の支持体としては、原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体(RC)について以下に説明する。
【0052】
紙支持体に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及び/またはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0053】
上記パルプには、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、四級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0054】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。原紙の坪量は、30〜250g/m2が好ましく、特に50〜200g/m2が好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は、0.7〜1.2(JIS−P−8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるサイズ剤と同様のサイズ剤を使用できる。原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0055】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)やポリプロピレン等も一部使用することができる。ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融、押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。原紙の表裏のポリエチレンの使用量は、インク溶媒吸収層やバック層を設けた後で、低湿および高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、通常インク溶媒吸収層側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲である。
【0056】
更に上記ポリエチレンで被覆した紙支持体は、以下の特性を有していることが好ましい。
【0057】
1.引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で縦方向が2〜30kg、横方向が1〜20kgであることが好ましい
2.引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で縦方向が10〜200g、横方向が20〜200gが好ましい
3.圧縮弾性率≧98.1MPa
4.不透明度:JIS−P−8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい
5.白さ:JIS−Z−8729で規定されるL*、a*、b*がL*=80〜95、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2であることが好ましい
6.クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm2/100である支持体が好ましい
7.原紙中の水分:中紙に対して4〜100質量%が好ましい。
【0058】
本発明の記録媒体の表層、インク吸収層、下引き層など必要に応じて適宜設けられる各種の構成層を支持体上に塗布する方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができる。好ましい方法としては、各層を構成する塗布液を支持体上に塗布して乾燥して記録媒体を得る方法が挙げられる。
【0059】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。また、本発明のインクジェット記録媒体の塗布に際して、塗布性を向上させるために増粘剤を用いてもよい。
【0060】
本発明において、インクジェット記録媒体にインクをインクジェット方式で像様に吐出し付着した画像記録後の加熱方法としては、ヒートローラ等による加熱、ヒータによる加熱空気を送風する方法のいずれも用いることができる。また加熱温度は、記録媒体上の表層に含有される熱可塑性樹脂のガラス転移点Tg以上の温度であることが必要である。ガラス転移点Tgは採用する熱可塑性樹脂の固有の値であり、樹脂種によって加熱温度は異なる。加熱温度の上限としては、装置上の負荷、支持体の熱安定性の観点から通常150℃程度である。
【0061】
本発明に用いられるヒートローラのうち、画像面に接する側のローラの平均面粗さ(ローラの平均面粗さは、例えばWYCO社製 RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システムを用いて測定することができる。同測定装置を用いると、ローラの曲率の補正した上で平均面粗さを測定することができ好ましい。)は、本発明の効果を得る上から100nm以下である。これは画像記録のために用いる色材に顔料インクを使う場合に特に好ましい条件となる。好ましくは20〜90nmであり、より好ましくは40〜70nmである。20nm未満ではオフセット性が劣化することがある。
【0062】
本発明の加熱加圧工程に用いられるローラは、金属ローラ又はシリコンゴムローラにより構成されていることが好ましい。そのうち、金属ローラは、鉄やアルミニウムのような一般的な素材を用いればよく、熱耐久性を高める目的でテトラフルオロエチレンやポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等により被覆されていてもよいし、定着後の平滑感を高めるために、鏡面仕上げされていてもよい。対面する2本のローラはローラ間に圧力を加えることによってローラを変形させいわゆるニップを形成させる。ニップ幅としては通常1〜20mm、好ましくは1.5〜7mmである。また、この2本のローラ間に発生させる圧力としては、1×10-5〜5×10-6Paが好ましい。これは加圧により皮膜化が促進されるためである。
【0063】
図1に、本発明で用いることのできる加熱ローラを有するインクジェット記録装置の一例を示す。また、図2には、本発明で用いることのできるベルト型加熱定着ローラーを有するインクジェット記録装置の他の一例を示す。
【0064】
次に本発明のインクジェット画像形成に用いるプリンタについて説明する。
本発明で用いることのできるプリンタは、市販されているプリンタのように、例えば、記録媒体収納部、搬送部、インクカートリッジ、インクジェットプリントヘッドを有するものであれば特に制約はないが、少なくともロール状の記録媒体収納部、搬送部、インクジェットプリントヘッド、切断部、及び、加熱部或いは加圧部、及び記録プリント収納部から構成される一連のプリンタセットであることが好ましい。記録ヘッドは、ピエゾ方式、サーマル方式、コンティニュアス方式のいずれでもよい。
【0065】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
実施例1
《インクジェット記録媒体の作製》
以下に示す手順に従って、インクジェット記録媒体を作製した。
【0067】
〔無機微粒子分散液の調製〕
(シリカ分散液−1の調製)
1次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(トクヤマ社製:QS−20)125kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用いて、硝酸でpHを2.5に調整した620Lの純水中に室温で吸引分散した後、純水で全量を694Lに仕上げて、シリカ分散液−1を調製した。
【0068】
(シリカ分散液−2の調製)
下記カチオン性ポリマー(P−1)1.14kg、エタノール2.2L、n−プロパノール1.5Lを含む水溶液(pH=2.3)18Lに、上記調製したシリカ分散液−1の69.4Lを攪拌しながら添加し、次いで、ホウ酸260gとホウ砂230gを含む水溶液7.0Lを添加し、消泡剤SN381(サンノプコ株式会社製)を1g添加した。この混合液を、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で97Lに仕上げて、シリカ分散液−2(QS−20)を調製した。
【0069】
【化1】
【0070】
〔熱可塑性微粒子塗布液の調製〕
(熱可塑性微粒子分散液の調製)
分散剤として、カチオン性、アニオン性、ノニオン性の活性剤を用い、下記表1に示す熱可塑性微粒子分散液(固形分比率20〜40%)を調製した。
【0071】
【表1】
【0072】
(下層塗布液の調製)
40℃で攪拌しながら、前記調製したシリカ分散液−2(QS−20)の600mlに、以下の添加剤を順次混合して、下層塗布液を調製した。
【0073】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA203)
の10%水溶液 6ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)
の7%水溶液 185ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0074】
(上層塗布液の調製)
前記調製した熱可塑性微粒子分散液及び前記シリカ分散液−2(QS−20)を用いて、熱可塑性微粒子からなる上層塗布液及び、熱可塑性微粒子と無機顔料を含有する各上層塗布液(表2記載の量比となるように調製)を調製した。
【0075】
各塗布液を市販のフィルター(東洋濾紙株式会社製TCP10あるいはTCP30)を用いて濾過した。
【0076】
〔インクジェット記録媒体の作製〕
(記録媒体1の作製)
吸水性紙支持体(コート紙用中紙 厚さ165μm、紙支持体という)上に、支持体側から順に、第1層として前記下層塗布液を湿潤膜厚200μmで塗布、乾燥し、その上に第2層として前記熱可塑性微粒子分散液Lx−10(平均粒径1.2μm)を用いた上層塗布液を熱可塑性微粒子の固形分量として3.0g/m2となる条件で塗布及び乾燥を行った。なお、上、下層の塗布及び乾燥条件は同一条件で行い、各塗布液は、40℃に加温して塗布し、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒冷却した後、25℃の風(相対湿度15%)で60秒間、45℃の風(相対湿度が25%)で60秒間、50℃の風(相対湿度が25%)で60秒間順次乾燥し、20〜25℃、相対湿度が40〜60℃の雰囲気下で2分間調湿した後、巻き取って、記録媒体1を作製した。
【0077】
(記録媒体2の作製)
上記記録媒体1の作製において、熱可塑性微粒子分散液Lx−10をLx−5とした以外は同様にして、記録媒体2を作製した。
【0078】
(記録媒体3の作製)
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(RC紙ともいい、厚みが220μmで、インク吸収層面のポリエチレン中にはポリエチレンに対して13質量%のアナターゼ型酸化チタンを含有)に、支持体側から順に、第1層として前記下層塗布液を湿潤膜厚200μmで、第2層として前記上層塗布液を熱可塑性微粒子Lx−5(平均粒径0.9μm)の固形分量として3.0g/m2となる条件で、塗布及び乾燥を行った。塗布及び乾燥条件は記録媒体1と同様にして記録媒体3を作製した。
【0079】
(記録媒体4〜10の作製)
以下同様にして、支持体及び下層塗布液、上層塗布液に含有する熱可塑性樹脂粒子、及び無機顔料等を表2記載のように変更した以外は記録媒体1と同様にして各記録媒体4〜10を作製した。
【0080】
(記録媒体11〜13及び15〜18の作製)
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体に、支持体側から順に、第1層として前記下層塗布液を湿潤膜厚180μmで、第2層として表2記載の各熱可塑性微粒子及び無機顔料を含有する上層塗布液を固形分量、湿潤膜厚として表2記載となる条件で、スライドホッパーを用いて2層同時塗布及び乾燥を行った。なお、各塗布液は、40℃に加温して塗布し、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒冷却した後、25℃の風(相対湿度15%)で60秒間、45℃の風(相対湿度が25%)で60秒間、50℃の風(相対湿度が25%)で60秒間順次乾燥し、20〜25℃、相対湿度が40〜60℃の雰囲気下で2分間調湿した後、試料を巻き取って、各記録媒体を作製した。
【0081】
(記録媒体14の作製)
前記記録媒体12において、支持体をRC紙から白色ポリエチレンテレフタレート(厚さ100μm、WPと略す)のフィルム支持体に変更した以外は同様にして、記録媒体14を作製した。
【0082】
各記録媒体の構成を下記表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
《インクの作製》
〔水系顔料インクの調製〕
(顔料分散液の調製)
〈イエロー顔料分散体1の調製〉
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、イエロー顔料分散体1を得た。得られたイエロー顔料の平均粒径は112nmであった。
【0085】
〈マゼンタ顔料分散体1の調製〉
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、マゼンタ顔料分散体1を得た。得られたマゼンタ顔料の平均粒径は105nmであった。
【0086】
〈シアン顔料分散体1の調製〉
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、シアン顔料分散体1を得た。得られたシアン顔料の平均粒径は87nmであった。
【0087】
〈ブラック顔料分散体1の調製〉
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、ブラック顔料分散体1を得た。得られたブラック顔料の平均粒径は75nmであった。
【0088】
(顔料インクの調製)
〈イエロー濃インク1の調製〉
イエロー顔料分散体1 15質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 54.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるイエロー濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は120nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0089】
〈イエロー淡インク1の調製〉
イエロー顔料分散体1 3質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 61.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるイエロー淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は118nmであり、表面張力γは37mN/mであった。
【0090】
〈マゼンタ濃インク1の調製〉
マゼンタ顔料分散体1 15質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 54.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるマゼンタ濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は113nmであり、表面張力γは35mN/mであった。
【0091】
〈マゼンタ淡インク1の調製〉
マゼンタ顔料分散体1 3質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 61.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるマゼンタ淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は110nmであり、表面張力γは37mN/mであった。
【0092】
〈シアン濃インク1の調製〉
シアン顔料分散体1 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 59.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるシアン濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は95nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0093】
〈シアン淡インク1の調製〉
シアン顔料分散体1 2質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.2質量%
イオン交換水 62.8質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるシアン淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は92nmであり、表面張力γは33mN/mであった。
【0094】
〈ブラック濃インク1の調製〉
ブラック顔料分散体1 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 59.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるブラック濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は85nmであり、表面張力γは35mN/mであった。
【0095】
〈ブラック淡インク1の調製〉
ブラック顔料分散体1 2質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 62.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるブラック淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は89nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0096】
(染料インクの調製)
以下に記載の方法に従って、染料インクを調製した。
【0097】
〈イエローインク〉
C.I.Acid Yellow23 3質量%
ジエチレングリコール 25質量%
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.01質量%
水で100質量%に仕上げる
〈マゼンタインク〉
C.I.Direct Red227 3質量%
ジエチレングリコール 29質量%
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.01質量%
水で100質量%に仕上げる
〈シアンインク〉
C.I.Direct Blue199 3質量%
ジエチレングリコール 25質量%
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.01質量%
水で100質量%に仕上げる
〈ブラックインク〉
C.I.Food Black2 3質量%
ジエチレングリコール 25質量%
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.01質量%
水で100質量%に仕上げる
《インクジェット画像の作成》
表3に記載の各記録媒体及びインクの種類を組み合わせて、インクジェット画像試料No.1〜36を形成した。
【0098】
なお、インクジェットプリンタは、染料インクを用いる場合には、4色対応ヘッドを用い、顔料インクを使用する水準では、8色対応ヘッドを用いて、下記に説明する図2のプリンターを用いて各々の画像形成を行った。印字画像は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各ウエッジ画像、縦及び横に1cm巾でY、M、C、ブルー(B)、グリーン(G)、レッド(R)、Bkの帯を各々描いた格子状テストチャート、及び人物ポートレート像をプリントした。
【0099】
図2は、実施例で使用したベルト型加熱定着ローラーを有するインクジェット記録装置を示す概略構成図である。
【0100】
図2において、プリンタの4色対応ヘッド、或いは8色対応ヘッドにインク(Y、M、C、Bk)をセットし、ロール幅12.7cmロール状の記録媒体をセットし、記録媒体は、8.9cm毎に内蔵カッターにて切断した。このようにしてL版相当のプリントを連続して作成した。
【0101】
インクジェット記録後の後処理は、ベルト型加熱定着ローラー表面温度100℃にて処理し、表層の熱可塑性微粒子を溶融、皮膜化して、画像を形成した。
【0102】
《出力画像の評価》
以上のように出力した画像について、以下の各評価を行った。
【0103】
(カラーブリードの評価)
インク吸収速度に関係するカラーブリードの評価を行った。評価は、印字したY、M、C、B、G、R、Bkの帯状テストチャートについて、境界における色にじみの発生の有無を目視観察し、以下に示す基準に則り評価を行った。
【0104】
4:全ての色の境界部でほとんど色にじみの発生が認められない
3:1、2色でわずかに境界で色にじみが観察された
2:数色において、境界での色にじみが観察された
1:数色で、かなり激しい境界色にじみが確認された
(光沢性の評価)
評価サンプル画像を写像性測定器ICM−1DP(スガ試験機械社製)で反射60度、光学くし2mmでの写像性(光沢値C値%)を測定した。評価は、以下の基準によって行った。
【0105】
4:C値%が60以上
3:C値%が50〜60未満
2:C値%が40〜50未満
1:C値%が40未満
上記評価ランクにおいて、4、3が実用上好ましいランクと判断した。
【0106】
(耐水性(膜はがれ)の評価)
試料No.1〜18について、各形成画像を20℃の水に1時間浸漬した後、2日間放置し、自然乾燥させ膜はがれの発生を観察した。この操作を順次繰り返して、下記に記載の基準に則り判定した。
【0107】
3:5回目迄の繰り返し浸漬で、画像の膜はがれの発生がない
2:2〜5回の繰り返し浸漬で、画像の膜はがれが発生
1:1回目の浸漬中に、画像の膜はがれが発生
(酸化性ガス耐性の評価)
酸化性ガス耐性の評価は、各形成画像を、オフィス(室温25℃)の壁に外部直射日光が画像に直接当たらないように張り付け、外気を強制的、かつ連続的に流入し暴露する環境下で4か月間保存した後、光学濃度変化を測定した。
【0108】
なお、測定に際しては、シアン画像の濃度低下がもっとも大きいので、シアン画像(反射濃度1付近)の濃度低下を評価対象とし、以下に記載の基準に則り評価を行った。
【0109】
3:4か月間保存した後の濃度低下率が5%未満
2:4か月間保存した後の濃度低下率が5%以上、10%未満
1:4か月間保存した後の濃度低下率が10%以上
(ブロンズの評価)
顔料インクを用いた際の特有の現象であるブロンジングについて、試料1〜18について、下記の方法にて評価を行った。
【0110】
ブロンズの評価は、各画像を蛍光灯下で種々の角度(真上を90°とし、真横を0°とした時、80°、60°、45°、30°)から観察して、金属光沢が認められる画像を1、見られない画像を2として評価した。
【0111】
(耐水にじみの評価)
耐水にじみの評価は、試料No.19〜36について各形成画像を25℃の純水に1時間浸漬し、にじみ、色流れを目視で評価した。
【0112】
3:ほとんどにじまない
2:高濃度部で少しにじむ
1:高濃度部で少しにじみがあり、格子状チャートの交点がぼやけが目立つ。
【0113】
以上により得られた各評価結果を、表3に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
表3より明らかなように、顔料インクを用いた系においては、比較品に対し、本発明の試料は、カラーブリード、光沢性、ブロンズ、耐水性(膜剥がれ)、酸化性ガス耐性、及び耐水にじみに優れていることが判る。特に、表層として熱可塑性樹脂と無機顔料を併用すること、水溶性バインダーの硬化剤を用いることによりその効果がより一層発揮されていることが判る。
【0116】
一方、染料インクを用いた系においても、酸化性ガス耐性に関しては、顔料インクに対しては劣るが、比較品に対し、顔料インク系と同様の効果を確認することができた。
【0117】
【発明の効果】
本発明により、カラーブリードの発生が少なく、高い光沢性、耐水性に優れ、かつ酸化性ガスによる画像の劣化や耐水にじみの少ないインクジェット記録媒体及びそれを用いたインクジェット画像形成方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられる加熱ローラーを有するインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図。
【図2】本発明で用いられるベルト型加熱定着ローラーを有するインクジェット記録装置を示す概略構成図。
【符号の説明】
1 記録媒体
1a たるみ部
2 記録媒体の搬送手段
21 搬送ローラー対
3 記録ヘッド
34 記録媒体保持部
4 加熱加圧手段
41 加熱ローラー
42 圧着ローラー
43 発熱体
44 加熱ベルト
45 下部ベルト
46 従動ローラー
5 温度センサ
6 記録媒体の切断手段
61、62 カッタ
7 たるみ形成手段
71 第1のローラー対
72 第2のローラー対
Claims (6)
- 支持体上に顔料、水溶性バインダーを含有するインク吸収層を有し、かつ表層に熱可塑性微粒子を含有するインクジェット記録媒体において、該熱可塑性微粒子の平均粒子径が1μm以下で、2μm以上の粒子の割合が5%以下であり、該熱可塑性微粒子がノニオン性であり、形成する材料がエチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、またはメタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体であることを特徴とするインクジェット記録媒体。
- 前記水溶性バインダーの硬膜剤を含有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録媒体。
- 支持体上に無機微粒子を主体とするインク吸収層があり、その上に熱可塑性微粒子及び無機顔料からなる表層を有することを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録媒体。
- 防水性支持体を用いることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のインクジェット記録媒体。
- 請求項1〜4の何れか1項記載のインクジェット記録媒体に記録後、表層の熱可塑性樹脂を溶融若しくは皮膜化する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
- 顔料インクを用いて記録することを特徴とする請求項5記載の画像形成方法。
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