JP4086356B2 - 記録媒体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鮮明で光沢のある画像が得られる記録媒体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、インク等の記録用の液体(記録液)の微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて、紙などの記録媒体に付着させ、画像、文字などの記録を行なうものであり、高速低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きく、現像が不要などの特長があり、プリンターへの展開を初めとして、複写機、ワープロ、FAX、プロッター等の情報機器へ展開され急速に普及している。また、近年高性能のデジタルカメラ、デジタルビデオ、スキャナーが安価で提供されつつあり、パーソナルコンピューターの普及と相まって、これらから得られた画像情報をインクジェット記録方式で出力する機会が増えている。このため銀塩系写真や製版方式の多色印刷と比較して遜色無い画像をインクジェット方式で出力することが求められている。
【0003】
そのために、記録の高速化、高精細化、フルカラー化など記録装置、記録方式の改良が行われてきたが、記録媒体に対しても高度な特性が要求されるようになってきた。
【0004】
この様な状況下において一般的に記録媒体に要求される特性としては、
(1)インク吸収速度が速く、必要以上の滲みが無いこと、
(2)印字濃度及び発色性が高いこと、
(3)耐候性に優れていること
(4)得られた画像表面に直接触れても画像が損なわれないこと
などが挙げられる。
【0005】
このような要求に対し従来から多種多様の記録媒体が提案されてきた。例えば、特開昭52−9074号公報には、インク吸収速度を向上させるために比表面積の大きなシリカ系顔料を主成分とした空隙を有する層をインク受容層として設けた記録媒体が開示され、また特開昭63−22997号公報には、インク受容層を形成する顔料層の空隙量を調整してなる記録媒体が開示されている。特開昭55−51583号公報及び特開昭56−157号公報には、インク受理層によってインク吸収性を上げ、高い印字濃度やインク滲みが無い印字ドットを得るために、非晶質シリカ粉末を配合することが開示されている。
【0006】
また、特開昭55−144172号公報には、発色性、鮮明性はインク中の染料のインク受理層における分布状態に左右されることに着目し、染料成分を吸着する特定の物質を用いることが開示されている。特開平3−114873号公報には、紙層上に硫酸バリウムとゼラチンを含む塗層を設けたインクジェット記録媒体を使用することにより、インク吸収性、耐水性、耐光性を改善したことが開示されている。
【0007】
さらに、米国特許明細書第4879166号、同5104730号、特開平2−276670号公報、同4−37576号公報、同5−32037号公報には、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を含む層をインク受理層とする記録媒体が開示されている。これらアルミナ水和物を用いた記録媒体は、アルミナ水和物が正電荷を有しているため、インク染料の定着が良く、発色性の高い、高光沢性の画像が得られるなど、従来の記録媒体に比べて長所を有している。
【0008】
また、特開平7−89216号公報には、基材上に吸水性顔料を含む層と擬ベーマイトを含む最表層からなるインクジェット被記録材が開示され、擬ベーマイトのみを使用した場合のインク吸収性の不足分を下層の吸水性顔料によって補うことが開示されている。
【0009】
また、特開平7−23734号公報及び特開平8−2090号公報には、主に画像の耐水性、耐湿性、耐擦過性を向上させるために、顔料層の表層に熱可塑性樹脂粒子を含む層を設け、記録後に表層を皮膜化する方法が記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
インク受容層の上に表層として熱可塑性樹脂粒子を含む層を設けておき、記録後にこの表層を加熱により皮膜化する構成の記録媒体においては、この表層の加熱処理時に記録媒体がカールすることがある。記録媒体のカールの発生の有無やその程度は記録媒体を構成する各層の材質によって異なるが、紙等の繊維状の基材を用いた場合はカールの発生は顕著となる傾向がある。
【0011】
本発明の目的は、記録後に表層を加熱により皮膜化する構成を有し、カール防止性に優れた記録媒体を提供することにある。本発明の他の目的は、多数のシートとして重ね合せた際やロール状とした際に、重ね合された部分でのブロッキングや構成成分の転移(裏うつり現象)が生じない記録媒体を提供することにある。
【0012】
本発明の記録媒体は、基材の表側の面にインク受容層と表層としての多孔質熱可塑性樹脂粒子層とをこの順に設けた構造を有し、記録後該多孔質熱可塑性樹脂粒子層が加熱処理により皮膜化される記録媒体であって、該基材の裏側の面に熱可塑性樹脂粒子が溶融されて皮膜化されている裏打ち層を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の記録媒体では、表層と裏打ち層とがともに熱可塑性樹脂粒子を含む材料から形成されており、表層を皮膜化するための加熱処理における表層と裏打ち層との収縮率等に差が生じにくく、記録画像のカールの発生が効果的に防止される。更に、裏打ち層が予め皮膜化されていることで、多数のシート状の記録媒体を重ね合わせた状態で保管あるいは搬送する場合に、あるいはロール状として提供した際に、記録媒体が重なり合う部分を表面と裏面とが接触するように形成することで重なり合い部分におけるブロッキングや構成成分の転移(裏うつり現象)を防止できる。
【0014】
なお、本発明において、熱可塑性樹脂粒子を用いて形成された裏打ち層が皮膜化されている状態とは、加熱等によって熱可塑性樹脂粒子同士が強固に結着し、あるいは、熱可塑性樹脂粒子が溶融して連続したフィルム状に皮膜化された状態をいい、熱可塑性樹脂粒子が裏打ち層から剥がれない程度に緻密な膜の状態となっているものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の記録媒体に用いる基材は、透明でも不透明でも良く、記録媒体に所望の形態維持特性を付与できるものであれば良い。このような基材としては、上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、レジンコート紙、バライタ紙などの紙類、ポリエチレンテレフタレート、ジアセテート、トリアセテート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアクリレートなどのプラスチック材料からなるものを挙げることができる。
【0016】
基材として紙を用いる場合、繊維状からなる基紙の表面を硫酸バリウムを含む層でコートし、表面のベック平滑度を400秒以上で、かつ白色度を87%以上に調整してなる基材を使用した場合、銀塩写真に匹敵するような画像が得られるので、とりわけ好ましい。
【0017】
ここで用いる硫酸バリウムとしては、その平均粒径が0.4〜1.0μmが好ましくは、0.4〜0.8μmのものがより好ましい。このような硫酸バリウムを使用することで、所望の白色度、光沢度、インク等の記録用の液体(記録液:以下インク総称する)の溶媒成分に対する吸収性をより好適なものとすることができる。硫酸バリウムを結着させるためのバインダーとしては、ゼラチンが好ましく、硫酸バリウム100重量部に対して6〜12重量部の割合で用いることができる。硫酸バリウムを含む層の基紙への塗工量は、インクの溶媒成分に対する吸収性を更に好ましいものとし、また表面の平滑性をより良好とするために、20〜40g/m2の範囲が好ましい。また、硫酸バリウムを含む層の平滑度の上限は、インクの溶媒成分に対する吸収性をより好適なものとする上で、600秒が好ましく、500秒がより好ましい。
【0018】
基材上に設けられるインク受容層としては、種々の構成が使用できるが、銀塩写真に匹敵するような画像を得る上では、インク中の染料等の着色剤成分が主に定着される層にアルミナ水和物を含む多孔質層を用いた構成が好ましい。
【0019】
ここで用いるアルミナ水和物としては、市販のもの、あるいはアルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解などを用いた公知の方法によって製造されたものを用いることができる。その粒子形状は繊毛状または針状、板状、紡錘状等に限定されず、また、配向性の有無も問わない。更に、アルミナ水和物は、透明性、光沢性、染料定着性の高いもので、且つ被膜形成時にクラック等が入らず、塗工性の良いものであればさらに良い。工業的に市販されているものとしては、例えば、触媒化成工業社製の「カタロイドAS−2」、「カタロイドAS−3」、日産化学社製「アルミナゾル−520」等が挙げられる。
【0020】
また、無配向性アルミナ水和物を調製するには、たとえば、アルミニウムアルコキシドの加水分解・解膠法及び硝酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムによる加水分解・解膠法を用いることができる。
【0021】
これらのアルミナ水和物は、通常粒子径が1μm以下と細かいものであり、優れた分散性を有するものであるため、記録媒体に非常に良好な平滑性、光沢性を持たせることができる。
【0022】
アルミナ水和物を結着するために使用されるバインダーとしては、水溶性高分子の中から自由に選択することができる。例えば、ポリビニルアルコールまたはその変性体、澱粉またはその変性体、ゼラチンまたはその変性体、カゼインまたはその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体などが好ましい。これらのバインダーは単独あるいは複数種混合して用いることができる。
【0023】
アルミナ水和物とバインダーの混合比は、重量比で、好ましくは1:1〜30:1であり、その下限は5:1が、その上限は25:1がより好ましい。バインダーの量をこれらの範囲とすることで、インク受容層の機械的強度を好ましいものとすることができ、ひび割れや粉落ちの発生の防止や、好適な細孔容積の維持が可能となる。
【0024】
アルミナ水和物を含む層を形成するための塗工液には、アルミナ水和物及びバインダーに加え、必要に応じて分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを、本発明の効果を損なわない範囲内で添加することも可能である。アルミナ水和物を含む層の塗工量としては、染料定着性をもたせ且つ必要な平滑性を持たせる為にも乾燥固形分換算で30g/m2以下が好ましく、20〜30g/m2の範囲がより好ましい。塗工・乾燥方法は特に限定されないが、必要に応じてアルミナ水和物及びバインダーを含む層を形成した後に焼成処理を施すことも可能である。かかる焼成処理を施すことにより、バインダーの架橋強度が上がり、インク受容層の機械的強度が向上し、また、アルミナ水和物層の表面光沢が向上する。
【0025】
さらに、上記のアルミナ水和物を含む層を形成するための塗工液に、特開平7−76161号公報で記載されているような、ホウ酸またはホウ酸塩などのバインダーの架橋剤を含有させても、インク受容層の機械的強度が向上するので好ましい。
【0026】
なお、本発明におけるインク受容層は、記録媒体に付与されたインクを主に吸収する部分であり、上述したように基材の表面に硫酸バリウムを含む層などのインク吸収性の層が予め設けられている場合、この基材側の層もインク受容層の一部として解釈することもできる。
【0027】
インク受容層上に設けられる表層としての多孔質熱可塑性樹脂層は、記録操作におけるインク付与時にはインクの透過性を有することでその下に設けられたインク受容層へインクを通過せる機能を有し、記録終了後に加熱により平滑な連続性のあるフィルムに変化させることが可能なものであり、例えば、熱可塑性樹脂粒子を用いて、各粒子間を、適度な多孔質性を維持できるように結合して層形態を保持する構成のものが好適に利用できる。
【0028】
熱可塑性樹脂粒子としては、各種の熱可塑性樹脂材料からなるものを用いることができる。熱可塑性樹脂粒子としては、例えば、塩化ビニル系、塩化ビニリデン系、スチレン系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エチレン系、塩化ビニル−酢酸ビニル系、塩化ビニル−酢酸ビニル系、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸系、SBR系、NBR系などのラテックスに含まれる熱可塑性樹脂粒子としてのラテックス粒子を好適に用いることができ、必要に応じてラテックスの固形分量を調整して用いることができる。これらの粒子は、成膜性等を損なわない範囲内で単独あるいは複数種混合して用いることもできる。
【0029】
熱可塑性樹脂粒子の粒径としては、好ましくは0.1〜5.0μmの範囲であり、その下限は0.2μmが、上限は0.8μmがより好ましい。
【0030】
熱可塑性樹脂粒子を含む塗工液を調製するには、熱可塑性樹脂粒子を適当な溶媒、例えば水性溶媒中に分散させ、その固形分を10〜50重量%の範囲とすることが好ましいが、塗工方法に合わせて適宜調整することが可能である。塗工量としては、表面光沢を付与し、干渉色の発現を抑え、且つ保護膜として充分な機能を有する程度の厚さを得る上で、乾燥層厚で通常2〜10μmになるように調整するのが好ましい。表層の形成においては、各粒子間の空隙が保持された多孔質の層となるように、乾燥条件等を設定する。多孔質の状態で表層を形成する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂粒子を含む塗工液をインク受容層上に塗工した後、熱可塑性樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上であり、かつ最低造膜温度以下の温度で熱処理して多孔質層を形成する方法が利用できる。
【0031】
また、表層にも、必要に応じて分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを、本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。更に、裏打ち層には無機顔料を添加することもできる。無機顔料を添加することで、裏打ち層に筆記性等を付与することができる。その添加量は、1〜30重量%程度が好ましい。無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、硫酸バリウム、チタンホワイト、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、アルミナ、炭酸マグネシウム及び酸化チタン等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
【0032】
一方、本発明においては、基材の裏面にも同様に熱可塑性樹脂粒子を用いて裏打ち層を形成し、この層については加熱等による皮膜化を行う。裏打ち層形成用の塗工液も表層における場合と同様に調製でき、その塗工量は、裏打ち層の塗工量が、例えば10g/m2となるように調整することが好ましい。
【0033】
裏打ち層の皮膜化は、熱可塑性樹脂粒子を加熱溶融して所望とする皮膜を形成する方法等が挙げられる。加熱温度としては、基材、インク受容層及びインク等の材料への影響及び非孔質化後の表面性等を考慮すると、70℃〜180℃の範囲が好ましい。
【0034】
裏打ち層にも、必要に応じて分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを、本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0035】
表層と裏打ち層に設けられる熱可塑性樹脂粒子の構成材料は、所望とするカール防止効果が得られるようにな組合せとなるように選択するのが好ましく、製造における効率からは同じ材料を用いるのが都合が良い。また、表層に用いる熱可塑性樹脂粒子の粒径の分布としては、平均粒子径の1/5以下の粒子の割合が10%以下であることが好ましい。一方、裏打ち層に用いる熱可塑性樹脂粒子にはこのような粒径分布に関する要件は要求されないので粒径分布を調整する必要はない。
【0036】
なお、表層に小さい粒径領域をカットした粒径分布を有する熱可塑性樹脂粒子を用い、裏打ち層の粒径分布調整を行わずに小さい粒径のものが含まれている熱可塑性樹脂粒子を用いた場合に、裏打ち層を皮膜化しないで表層と同じように多孔質層のままとした構成では、多数のシート状の記録媒体を表層と裏打ち層とが接触するように重ね合せた場合やロール状に巻いた場合、裏打ち層から小さい粒径の熱可塑性樹脂粒子が脱離して、表層に転移し、表層の多孔性を損なうことがあるが、本発明では、記録媒体の重ね合せやロールの形成前に裏打ち層の皮膜化処理がなされるので、このような構成成分の転移を生じることはない。
【0037】
本発明の記録媒体は、例えば基材の表面にインク受容層を形成した後、裏面に皮膜化された裏打ち層を設け、最後にインク受容層上に熱可塑性樹脂粒子を用いた多孔質熱可塑性樹脂層を設ける方法によって得ることができる。
【0038】
本発明の記録媒体は、ロール状として、あるいはA4等の所定の大きさのシート状として提供することができ、記録情報に応じてインク滴を表層を介してインク受容層に付与することによって画像を形成することができる。記録終了後に、表層を加熱処理してこれを非多孔質の連続した透明なフィルム状の層に変化させることで、耐光性、耐水性、耐湿性、耐擦過性が向上した画像を得ることができる。
【0039】
記録媒体にインクを付与する方法としては、インクジェット方式が好ましく、その中でも、高速印字、高精細印字を可能とする点で、インクに熱エネルギーを作用させてインク滴を形成する方式であるバブルジェット方式を採用するのが好ましい。またインクとしては、水系のものが好ましく、色素としては染料もしくは顔料が使用できる。
【0040】
【実施例】
以下実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【0041】
実施例1
米国特許第4242271号に記載された方法に従ってアルミニウムアルコキシドを合成し、これを加水分解することによりアルミナコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを脱塩処理した後、酢酸を添加して解膠処理を行った。このコロイダルゾルを乾燥して得たアルミナ水和物をX線回折により測定したところ、擬ベーマイトであった。
【0042】
次に、このアルミナ水和物のコロイダルゾルを濃縮して15重量%の溶液を得た。一方、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)をイオン交換水に溶解して10重量%の溶液を得た。これらの2種の溶液を、アルミナ水和物とポリビニルアルコールの固形分が重量比で10:1になるように混合し、攪拌して分散させた後、ポリビニルアルコールの架橋剤としてホウ酸12重量部を添加して塗工液を得た。
【0043】
基材は、坪量150g/m2、ステキヒトサイズ度220秒、ベック平滑度360秒の木材パルプと填剤となからなるロール状の原紙(幅30cm、長さ50m)を用いた。このロール状の原紙の表面に、ダイコーターにより上記の分散液を乾燥塗工量30g/m2となるように塗工し、乾燥させてインク受容層を形成した。
【0044】
次に、この基材のインク受容層の塗布面とは逆の面(裏面)に裏打ち層として、ラテックス(日信化学工業社製、製品名:ビニフラン602、MFT(最低造膜温度):130℃)の20重量%液に、シリカゲル(グレース・デビゾン社製、製品名:サイロイドP−412)を1重量%添加した塗工液をダイコーターによって乾燥塗工量が10g/m2となるように塗布し、更に、MFTより高い140℃で乾燥し皮膜化した。
【0045】
更に、インク受容層の上に表層として固形分15重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸系ラテックス(平均粒子径:0.6μm、0.12μm以下の粒子の割合が7.5重量%、Tg:65℃、MFT:127℃)をダイコーターで塗布し、更に、MFTより低い65℃で乾燥して、約5μmの多孔質ラテックス層を形成した。
【0046】
以上のようにして、インク受容層、裏打ち層、表層の順に3段階の塗工を行い、少なくとも最終塗工後において、ロール状での巻取りを行って記録媒体のロールを得た。ロール内においては表層と裏打ち層が接触した状態にある。
【0047】
このロールからA4サイズの大きさにサンプルを切り出して、目視で観察したところ、表層の表面に裏うつり現象(ロール状態で保たれたことによる裏打ち層からの小粒径の粒子が表層表面に付着するという現象)は全くなかった。更に、このサンプルをインクジェットプリンタ(商品名:BJC610JW、キヤノン(株)社製)に搭載して画像を形成した後、140℃でサンプルを熱処理して、表層を熱融着による非多孔質化によって透明皮膜化したところ、銀塩写真画質でカールのない平面性の良好なプリントが得られた。更に、裏打ち層に画像を記録しても、インクがあふれずに、また、手でこすってもインクがかすれることがなく良好なインク吸収性が得られ、裏打ち層への記録も可能であった。
【0048】
実施例2
シリカゲルの代りにチタン酸カリウム(チタン工業(株)製HT−300)を用いる以外は実施例1と同様にして記録媒体のロールを得た。このロールからのA4サイズのサンプルも実施例1と同様、表層の裏うつり現象はなく、裏打ち層に画像を記録しても良好なインク吸収性が得られた。
【0049】
比較例1
実施例1で裏打ち層形成用のラテックスを含む塗工液を基材に塗工した後の塗工層の乾燥温度を65℃とし、塗工層の皮膜化を行わずに多孔質ラテックス層とした以外は実施例1と同様にして記録媒体のロールを得た。このロールから切り出したA4サイズのサンプルを目視で観察したところ、裏うつり現象が顕著に表われ、裏打ち層の小粒径の粒子が表層の付着していた。このように裏打ち層を皮膜化していないと裏うつり現象が起ってしまい、良好な平面性を有する状態で記録媒体を使用することが困難となる。
【0050】
実施例3
裏打ち層にシリカゲルを添加しない以外は実施例1と同様にして記録媒体のロールを得た。このロールより得られるA4サイズのサンプルを観察したところ表層の表面での裏うつり現象は見られなかった。なお、裏打ち層への記録は可能であるが、実施例1と比較して画像の乾燥定着により長い時間を要した。
【0051】
実施例4
実施例1で用いたのと同じ原紙を用い、さらにこの原紙の一方の表面に、平均粒径0.7μmの硫酸バリウム105重量部、ゼラチン水溶液10重量部、ポリエチレングリコール3.5重量部、クロム明礬0.5重量部を配合した塗工液を、乾燥塗工量で30g/m2で塗布した。その後、スーパーカレンダー処理にて表面平滑化を行って表面平滑度410秒のロール状の基材を得た。
【0052】
この基材を用いて実施例1と同様にして硫酸バリウムを含む層上へのインク受容層の形成、皮膜化された裏打ち層の形成及び表層の形成を行い記録媒体のロールを得た。このロールから得られるA4サイズのサンプルは実施例1の結果と同様に裏うつり現象はなく、インク受容層へ記録した画像も良好で、カールのない平面性の良好なプリントであった。また、裏打ち層に画像を記録したところ、良好なインク吸収性が得られた。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、基材表面上のインク受容層上に設けられた多孔質熱可塑性樹脂層からなる表層と、基材裏面に設けられた裏打ち層とがともにラテックスを主体として形成されていることで、表層の加熱による透明フィルム化処理後のカールを効果的に防止することができるとともに、表層と裏打ち層とを同種の材料から形成するので製造コストの低減も可能となる。更に、裏打ち層が皮膜化された状態で記録媒体が提供されるので、複数のシート状の記録媒体を表層と裏打ち層とが接触させた状態で重ね合せて、あるいはこれらの層が接触した状態でロール状として保管、搬送等を行った場合でも、これらの層のブロッキングや裏打ち層からの構成成分の表層への転移(裏うつり現象)を効果的に防止できる。
Claims (4)
- 基材の表側の面にインク受容層と表層としての多孔質熱可塑性樹脂粒子層とをこの順に設けた構造を有し、記録後該多孔質熱可塑性樹脂粒子層が加熱処理により皮膜化される記録媒体であって、該基材の裏側の面に熱可塑性樹脂粒子が溶融されて皮膜化されている裏打ち層を有することを特徴とする記録媒体。
- 前記裏打ち層が無機顔料を含有する請求項1に記載の記録媒体。
- 請求項1または2に記載の記録媒体の製造方法であって、
a)前記基材上に前記インク受容層を設ける工程と、
b)前記基材の前記インク受容層と反対の面に熱可塑性樹脂粒子を含む塗工液を塗工、乾燥した後、加熱により皮膜化して前記裏打ち層を形成する工程と、
c)前記インク受容層上に前記多孔質熱可塑性樹脂粒子層を形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体の製造方法。 - 前記インク受容層上に前記多孔質熱可塑性樹脂粒子層を形成する工程は、熱可塑性樹脂粒子のガラス転移温度以上、最低造膜温度以下の温度で熱処理乾燥する方法であることを特徴とする請求項3に記載の記録媒体の製造方法。
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