JP4034628B2 - インクジェット記録材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方式を利用したプリンターやプロッターに使用されるインクジェット記録材料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙等の記録材料に付着させ、画像・文字等の記録を行なうものであるが、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像及び定着が不要等の特徴があり、漢字を含め各種図形及びカラー画像等の記録装置として、種々の用途において急速に普及している。更に、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して遜色のない記録を得ることが可能であり、作成部数が少なくて済む用途では、写真技術によるよりも安価であることからフルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
最近では、銀塩写真の画像に匹敵する高精細な画像を出力できるインクジェットプリンター等が安価で市販されている。インクジェット記録材料は、銀塩写真方式と比べ同品質の画像が得られながら非常に安価であることから、大面積の画像が必要な広告や商品見本等で表示画像を頻繁に取り替える利用者にとって経済的に大きなメリットがある。また、最近一般的になってきたパーソナルコンピューター上で画像を作成し、このプリントアウトを見ながら配色やレイアウトを修正することは従来の銀塩写真方式では全く無理であったが、インクジェット記録ではこのような操作が気軽にできるという長所もある。
【0004】
インクジェット方式を利用したプリンターは、市場からのさらなる画像の品質向上に対する要求のために、高解像度化、色再現範囲の拡大が図られている。これに伴い、記録媒体であるインクジェット記録材料には、優れた画像品質を発現するための高いインク受理容量の確保や発色性の良好な塗層の塗設が不可欠となっている。加えて近年では、銀塩写真や商業印刷等の代替として出力が行われるようになってきており、光沢、剛直、色相等の外観、質感も銀塩写真あるいは商業印刷等に類似することが要望されてきている。
【0005】
これらインクジェット記録材料は、良好なインク吸収性を得るため、支持体上に無機微粒子を含有するインクジェット記録層を設けたインクジェット記録材料が提案されている(例えば、特許文献1)。また、より良好なインクジェット記録性能を得る等の目的で、2層以上のインク受理層を設けたインクジェット記録材料も提案されている(例えば、特許文献2)。
【0006】
また、光沢付与を目的に、一次粒子径が3nm〜30nmである、より小粒径の無機超微粒子を含有するインクジェット記録材料が提案されている(例えば、特許文献3、4)。また、特に良好なインクの定着性、インクの吸収性、表面光沢を得る等の目的で、無機超微粒子としてカチオン性無機超微粒子を含有するインクジェット記録材料が提案されている(例えば、特許文献5〜8)。
【0007】
こうした無機超微粒子を含有するインク受理層は、塗布後の乾燥時に非常に収縮する特性を有している。このため該インク受理層は乾燥後ひび割れ易い。このひび割れは、該インク受理層のインク受理性能に、インクのにじみ、インクの落ち込みによる画像濃度低下といった悪影響を与え、さらには表面光沢の低下を招く。良好なインク受理性能および表面光沢を得るには、塗層表面のひび割れを抑制することが必要となる。
【0008】
これらインクジェット記録材料のうち、2層以上のインク受理層を設けたインクジェット記録材料は、通常、インク受理層の塗液を支持体上に複数回に分けて塗布して製造される。しかし、インク受理層は多量の液体を吸収するように設計されているため、2回目以降に塗布される層は既に塗布されている下層にしみ込み、層分離が不完全になる。そのため、各層が完全に分離して形成されている場合に比べて、発色濃度やインクの吸収性などの性能が十分に発揮できない問題がある。
【0009】
2層以上のインク受理層を支持体に設けるその他の方法としては、複数層の塗液を積層して成る多層塗液膜を形成してカーテン塗布する同時多層塗布が挙げられる。この方法によれば、インク受理層の塗液を支持体に複数回塗布した場合に比べて大幅に生産性を向上できると共に、複数のインク受理層が湿潤状態で同時に形成されるため、隣接するインク受理層間のしみ込みは起こりにくく、良好な発色濃度やインク吸収性を得やすい。
【0010】
最上層に無機超微粒子を含有するインクジェット記録材料を、複数のインク受理層の塗液を積層して成る多層塗液膜をカーテン塗布して製造すると、隣接するインク受理層間のしみ込みが低減され、より少ない塗工量で表面光沢やインク吸収性等の要求品質が得られるメリットがある。一方で、同時多層塗布は、各層の塗液を逐次塗布した場合に比べ、塗層がひび割れやすいという問題があり、最上層の塗工量が少なくなっても乾燥時に最上層のひび割れが発生しやすく、面質が悪化する問題が生じていた。
【0011】
【特許文献1】
特開昭55−51583号公報(第1−3頁)
【特許文献2】
特開昭55−11829号公報(第1−4頁)
【特許文献3】
特開平10−203006号公報(第3−9頁)
【特許文献4】
特開平8−174992号公報(第3−6頁)
【特許文献5】
特開平5−50739号公報(第2−4頁)
【特許文献6】
特開平6−55829号公報(第2−3頁)
【特許文献7】
特開平8−324100号公報(第2−5頁)
【特許文献8】
特開平8−207431号公報(第2−5頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、複数層のインク受理層を持つインクジェット記録材料の製造方法において、最上層のインク受理層中が光沢付与を目的に無機超微粒子が配合されてなり、塗層のひび割れがなく、表面の光沢感に優れ、インク吸収性が良好で、画像濃度の高いインクジェット記録材料を安定に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の発明を見出した。
【0014】
少なくともインク受理層、光沢発現層を含む、複数の塗布層の塗液を積層して成る多層塗液膜を支持体上に塗布・乾燥して形成されるインクジェット記録材料の製造方法において、該支持体が吸収性支持体であり、該インク受理層が白色顔料を含有し、光沢発現層が一次粒子径が100nm以下で、かつ二次粒子径が400nm以下である無機超微粒子および硝酸を含有し、かつ、該光沢発現層中にケン化度65%以上90%以下のポリビニルアルコールおよびポリジアリルアミン誘導体も含めたバインダーの配合比率が、乾燥固形分比率で無機超微粒子100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下含有することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法の発明である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のインクジェット記録材料の製造方法について説明する。
【0020】
本発明のインクジェット記録材料の製造方法は、少なくともインク受理層、光沢発現層を含む、複数の塗布層が、一連の塗布層の塗液を積層して成る多層塗液膜を支持体上に塗布・乾燥して形成され、光沢発現層が無機超微粒子および硝酸を含有し、かつ、該光沢発現層中にケン化度65%以上90%以下のポリビニルアルコールおよびポリジアリルアミン誘導体も含めたバインダーの配合比率が、乾燥固形分比率で無機超微粒子100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下含有することを特徴とする。本発明において、光沢発現層は光沢付与を目的とした層であり、光沢・透明性があること、インクを速やかに通過あるいは吸収できることが要求され、この要求を満たすため、主として無機超微粒子から構成される必要がある。本発明のように、少なくともインク受理層、光沢発現層を含む複数の塗布層を同時多層塗布方式によって形成した場合、支持体上にインク受理層、光沢発現層を順次塗布した場合に比べ、大幅に生産性を向上できるとともに、一連の塗布層が湿潤状態で同時に形成されるため、隣接する塗層間のしみ込みは起こりにくい。この結果、各塗層間の層分離が良好となり、インク吸収性・表面光沢・画像の発色といった諸特性の向上を図ることができる。なお、本発明において、光沢発現層およびインク受理層は、各層とも、配合が全く同一あるいは異なる2層以上の層から構成されていてもよい。こうした場合、本発明における、少なくともインク受理層、光沢発現層を含む、複数の塗布層とは、少なくともインク受理層の最上層と光沢発現層の最下層とを含む、複数の塗布層を指す。
【0021】
しかしながら、主として無機超微粒子から構成される光沢発現層は、塗布後の乾燥時に非常に収縮する特性を有しており、乾燥後塗層がひび割れやすいという問題を有している。特に、光沢発現層を含む複数の塗布層を、上記の同時多層塗布方式により形成する場合にはより顕著に現れる。インク受理層、光沢発現層を複数回に分けて逐次塗布した際には、塗層が比較的細かくひび割れるためそれほど問題とならないような場合でも、同時多層塗布方式で塗布した場合には、塗層のひび割れが大きくなる。このひび割れは、均一なインク吸収を妨げ、インクのにじみ、インクの落ち込みによる画像濃度低下といった悪影響を与え、さらには表面光沢の低下を招く。もっと酷い場合には、塗布面は粗く不均一な面となり、あるいは塗層が大きく裂け、インクジェット記録材料として用をなさない状態に陥る。おそらく、光沢発現層を含む複数の塗布層を同時多層塗布方式により設けた場合、光沢発現層と支持体の間には未乾燥で流動性のある塗布層が存在するため、光沢発現層は比較的自由に移動・収縮でき、結果として乾燥時に光沢発現層は細かくはひび割れず、より大きなひび割れが生じるものと考えられる。
【0022】
無機超微粒子の分散状態を不安定にし、凝集気味にすることで、塗層のひび割れを起こりにくくすることは可能である。しかしながら、無機超微粒子を凝集気味にすると、塗液の安定性や塗工適性に劣るばかりか、無機超微粒子の分散粒子径が大きくなることにより、光沢発現層の透明性・光沢感が低下したり、画像の発色が低下したりするという問題が生じる。本発明者らは、塗層のひび割れは無機超微粒子の分散状態が大きく影響していると考え、鋭意検討した結果、光沢発現層に無機超微粒子と一価の無機酸を含有させることで、無機超微粒子の分散状態が良好となるため光沢発現層の塗工適性に優れ、かつ塗層のひび割れを抑制でき、インク吸収性、表面光沢、画像の発色に優れたインクジェット記録材料を作製することが可能となることを見出したのである。
【0023】
一価の無機酸としては、例えば、硝酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、および次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸等のハロゲン族元素からなるオキソ酸等が挙げられる。これらのうち、工業性、作業性、着色性を考慮すると、無機超微粒子の分散性および塗層のひび割れの点で、硝酸、塩酸が好ましく使用でき、特に好ましくは硝酸である。硝酸が無機超微粒子の分散性および塗層のひび割れに特に有効である理由は必ずしも明らかではないが、無機超微粒子の表面に硝酸イオンが吸着し、無機超微粒子の分散状態を安定化するばかりでなく、吸着した硝酸イオンには無機超微粒子を含有する層の収縮を抑制する作用があるものと考えられる。
【0024】
本発明に係わる光沢発現層は無機超微粒子を含有する。本発明において無機超微粒子とは、一次粒子径が100nm以下で、かつ二次粒子径が400nm以下の無機微粒子を言う。例えば、特開平1−97678号公報、同2−275510号公報、同3−281383号公報、同3−285814号公報、同3−285815号公報、同4−92183号公報、同4−267180号公報、同4−275917号公報などに開示されているアルミナ水和物である擬ベーマイトゾル、特開昭60−219083号公報、同61−19389号公報、同61−188183号公報、同63−178074号公報、特開平5−51470号公報などに記載されているコロイダルシリカ、特公平4−19037号公報、特開昭62−286787号公報に記載されているようなシリカ/アルミナハイブリッドゾル、特開平10−119423号公報、特開平10−217601号公報に記載されている、気相法シリカを高速ホモジナイザーで分散したようなシリカゾル、その他にもヘクタイト、モンモリロナイトなどのスメクタイト粘土(特開平7−81210号公報)、ジルコニアゾル、クロミアゾル、イットリアゾル、セリアゾル、酸化鉄ゾル、ジルコンゾル、酸化アンチモンゾルなどを代表的なものとして挙げることができる。
【0025】
無機超微粒子のうちカチオン性無機超微粒子は、特に良好なインクの定着性、インクの吸収性が得られて好ましい。カチオン性無機超微粒子としては公知のものを用いることができるが、特にアルミナ、アルミナ水和物、カチオン変性コロイダルシリカをいずれか単独または2種類以上組み合わせて用いるのが好ましい。
【0026】
光沢発現層中における一価の無機酸の配合比率は、乾燥固形分比率で無機超微粒子100質量部に対し、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量部以上3質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以上2質量部以下である。配合比率が0.1質量部よりも小さいと、無機超微粒子の分散安定性が低下しやすく、また光沢も低下しやすい。また、5質量部を超えると、効果が飽和しやすく、却って塗層のひび割れ抑制効果が低減しやすい。光沢発現層に一価の無機酸以外の酸を添加することも可能であるが、一価の無機酸の効果を損なわない範囲でなければならない。
【0027】
本発明において、光沢発現層がさらにケン化度65%以上90%以下のポリビニルアルコールを含有すると、無機超微粒子の分散安定性がよりいっそう向上し、塗液は経時的にも安定となり、インクジェット記録材料の生産安定性が増すため好ましい。また、当初予期しなかったことであるが、光沢発現層の透明性が向上するせいか、画像の発色も向上するため好ましい。本発明に係わるケン化度65%以上90%以下のポリビニルアルコールは、各種変性を施されていてもよい。変性ポリビニルアルコールの例として、例えばカルボン酸、スルホン酸等を導入したアニオン変性ポリビニルアルコール、四級アンモニウム塩等を導入したカチオン変性ポリビニルアルコール、シラノール基等を導入した珪素変性ポリビニルアルコール、三元共重合変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコール、末端チオール変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0028】
本発明に係わるケン化度65%以上90%以下のポリビニルアルコールの重合度は特に規定されないが、無機超微粒子の分散安定性向上のため、重合度は100以上2000以下であることが好ましく、より好ましくは200以上1000以下である。
【0029】
光沢発現層中におけるケン化度65%以上90%以下のポリビニルアルコールの配合比率は、乾燥固形分比率で無機超微粒子100質量部に対し、1質量部以上45質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以上30質量部以下、特に好ましくは5質量部以上20質量部以下である。配合比率が1質量部よりも小さいと、無機超微粒子の分散安定性に対する寄与が小さくなりやすく、45部を超えると、分散安定性効果が飽和するばかりか、インク吸収性が低下しやすくなる。
【0030】
本発明において、光沢発現層がさらにポリジアリルアミン誘導体を含有すると、無機超微粒子の分散安定性を損なうことなく、塗液の塗層のひび割れがよりいっそう抑制されるため好ましい。おそらく、ポリジアリルアミン誘導体は、無機超微粒子の分散を適度に調節させる働きがあり、塗層のひび割れが良化するものと考えられる。また、ポリジアリルアミン誘導体はカチオン性樹脂であるため、インクジェットインクに含まれるアニオン性基と不溶性の塩を形成し、インクの定着性や耐水性を高めることが可能となる。
【0031】
本発明においてポリジアリルアミン誘導体とは、ジアリルアミンおよびその誘導体をモノマー成分として含有しているポリマーを指す。ジアリルアミンの誘導体としては、例えばメチルジアリルアミン、エチルジアリルアミン、ヒドロキシエチルジアリルアミン等のアルキル基置換体、ジメチルジアリルアンモニウム、エチルメチルジアリルアンモニウム等のアルキル基置換アンモニウム、およびこれらの塩を指す。
【0032】
本発明においてポリジアリルアミン誘導体は、ジアリルアミンおよびその誘導体以外のモノマー成分を含有していてもよい。ジアリルアミンおよびその誘導体と共重合可能なモノマー成分としては、例えばスルホニル、アクリルアミド及びその誘導体、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等が挙げられるが、これに限定されるものではない。ポリジアリルアミン誘導体中に含まれるモノマー成分としてのジアリルアミン及びその誘導体の成分比率は、モル比率で25%以上あることが好ましく、より好ましくは50%以上である。
【0033】
光沢発現層中におけるポリジアリルアミン誘導体の配合比率は、乾燥固形分比率で無機超微粒子100質量部に対し、0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上15質量部以下、特に好ましくは2質量部以上10質量部以下である。配合比率が0.5質量部よりも小さいと、塗層のひび割れ抑制効果が小さくなりやすく、20質量部を超えると、無機超微粒子の分散安定性が低下しやすくなる。
【0034】
本発明に係わる光沢発現層はケン化度65%以上90%以下のポリビニルアルコール以外にバインダーを配合することができる。バインダーとしては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、或はこれら各種重合体のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性接着剤、ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの重合体または共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系接着剤等が挙げられ、1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明に係わる光沢発現層には、インクの定着性や耐水性を高めるため、ポリジアリルアミン誘導体以外の1級〜3級アミン、4級アンモニウム塩のモノマー、オリゴマー、ポリマー等のカチオン性樹脂を配合することができる。カチオン性樹脂としては例えば、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン縮合物、ポリビニルアミン共重合物、ポリビニルアミジン共重合物、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物等のジシアン系カチオン樹脂、ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン共重合物等が挙げられる。
【0036】
光沢発現層中に含まれる、ケン化度65%以上90%以下のポリビニルアルコールおよびポリジアリルアミン誘導体も含めたバインダーおよびカチオン樹脂の配合比率は、乾燥固形分比率で無機超微粒子100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、好ましくは8質量%以上30質量%以下である。バインダーおよびカチオン樹脂の配合比率が上記比率より少ないと、塗層強度が不足しやすく、上記比率を超えるとインク吸収性が低下しやすい。
【0037】
本発明に係わるインク受理層は、光沢発現層を透過してきたインクを文字通り吸収・受理するための層であり、光沢付与に関する要求が光沢発現層ほど重要でないことより、通常光沢発現層よりも粒子径が大きくインク吸収性の高い白色顔料から構成される。白色顔料としては、以下の顔料或いは粒子を1種以上用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム等の無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。これらのうち、インク吸収性の点で、多孔性無機顔料が好ましく、多孔性合成非晶質シリカ、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナ等が挙げられ、特に細孔容積の大きい多孔性合成非晶質シリカが好ましい。
【0038】
本発明に係わるインク受理層は、白色顔料以外の成分として、バインダーあるいはカチオン樹脂を配合することができる。バインダーあるいはカチオン樹脂としては、光沢発現層で使用可能な化合物が使用できる。
【0039】
インク受理層中に含まれるバインダーおよびカチオン樹脂の配合比率は、乾燥固形分比率で無機超微粒子100質量部に対し、5質量部以上75質量部以下、好ましくは10質量部以上50質量部以下である。バインダーおよびカチオン樹脂の配合比率が5質量部より少ないと、塗層強度が不足しやすく、75質量部を超えるとインク吸収性が低下しやすい。
【0040】
本発明に係わる光沢発現層塗布液およびインク受理層塗布液の表面張力を調整するために、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型などのノニオン系界面活性剤、ベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体などの両性系界面活性剤を塗布液に任意の量を混合することができる。
【0041】
本発明に係わる光沢発現層およびインク受理層は、添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤等を適宜配合することができる。
【0042】
本発明に係わる支持体は透明、半透明、及び不透明のいずれであっても良く、紙、各種不織布、織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、セラミック紙、ガラス板など、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、紙、各種不織布、織布といった吸収性支持体は、本発明のように、光沢発現層を含む複数の塗布層を同時多層塗布方式により設けた場合に問題となっていた塗層のひび割れが発生しにくいため、好ましく使用される。おそらく、吸収性支持体は、非吸収性支持体に比べ、塗布後にインク受理層塗液が支持体に吸収・脱水され、インク受理層の不動化が速やかに行われ、インク受理層の流動性に起因する光沢発現層の移動・収縮が抑制されるため、塗層のひび割れの発生が良化するのではないかと考えられる。
【0043】
支持体として用いる紙としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプと従来公知の顔料を主成分として、バインダー及びサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を1種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種装置で製造された原紙、更に原紙に、澱粉、ポリビニルアルコール等でのサイズプレスやアンカーコート層を設けた原紙や、それらの上にコート層を設けたアート紙、コート紙、キャストコート紙等の塗工紙も含まれる。この様な原紙及び塗工紙に、そのまま本発明における塗層を設けても良いし、平坦化をコントロールする目的で、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置を使用しても良い。
【0044】
本発明のインクジェット記録材料の製造方法では、少なくともインク受理層、光沢発現層を含む複数の塗布層の塗液を積層して成る多層塗液膜を支持体上に塗布・乾燥する同時多層塗布方式によって形成される必要がある。複数の塗布層の塗液を積層して成る多層塗液膜を支持体上に塗布・乾燥して形成する塗工方法としては、エクストルージョンホッパー型カーテン塗布装置、スライドホッパー型カーテン塗布装置等のカーテン塗布装置、スライドビード塗布装置、スロット塗布装置等が挙げられるが、写真感光材料などに使用されている特公昭49−24133号公報に開示されたスライドホッパー型カーテン塗布装置を特に好ましく用いることができる。このスライドホッパー型カーテン塗布装置を用いると一連の塗布層の塗液を積層して成る多層塗液膜を容易に塗布することができる。
【0045】
多層塗液膜を構成する塗液は、塗布時の層間混合を少なくしたり均一な塗布膜を形成したりするため、各塗液の粘度、表面張力を調節し使用する。各層の塗液の粘度差は少ないほうが層間の混合が少なく、各層の塗液の粘度差は100mPa・s以下が好ましい。また、各層の塗液の表面張力は、下層となる塗液の表面張力が上層より小さいと、上層の塗液膜が下層の塗液膜上ではじく現象が発生し、均一な多層塗液膜ができず塗布品質が悪化する場合があり好ましくない。各層の塗液の表面張力が同一であるとはじく現象が発生しにくく好ましく、下層となる層より上層となる層のほうが小さくなる様に設定するとより良好な塗布品質が得られて特に好ましい。3層以上の層を同時に塗布する場合には、最下層すなわち最も支持体に近い層から順に支持体から最も遠い最上層にかけて表面張力が順々に小さくなる様に調節するのが好ましい。また、各塗層間の層分離をいっそう向上させるため、各塗液膜間に、界面活性剤等で表面張力を調整された水溶液あるいは希薄水溶性高分子塗液等からなる塗液膜を形成し、多層塗液膜とすることも何ら問題なく行うことができる。
【0046】
インク受理層および光沢発現層の乾燥塗工量は、適用する顔料やバインダーの種類及び量、適用する塗工方式、インクジェット記録装置の種類により異なるが、好ましくは各々2g/m2以上30g/m2、より好ましくは4g/m2以上20g/m2以下の範囲である。通常、同時多層塗布方式により塗層を設けた場合は、支持体上にインク受理層、光沢発現層を順次塗布した場合に比べ、塗層の層分離が良好であるため、より少ない乾燥塗工量で同一のインク吸収性、表面光沢、画像の発色等の性能を出すことができる。
【0047】
本発明において、インク受理層または光沢発現層を塗工、乾燥後、平坦化をコントロールしたり表面光沢をさらに高めたりする目的で、スーパーカレンダー、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置を使用しても良い。また、表面光沢向上のため、一般に印刷用キャストコート紙の製造方法で使用されているような、直接法、凝固法、再湿潤法(リウェット法)等のキャスト処理を行っても良い。本発明のインクジェット記録材料を提供する形態としては、カットシートのみならずロールでも構わず、インクジェット記録材料中の任意の層に、電気的、磁気的、または光学的に情報が記録可能な材料を含有させても良い。また、支持体上のインク受理層が設けられている面とは反対側の面に、カール防止や帯電防止などを目的としてバックコート層を設けたり、粘着剤、剥離紙を順次積層してシール、ラベルやタックの用途に使用したり、インク受理層等を設け両面インクジェット記録可能としたりする等、公知の技術を使用することは何ら問題はなく行うことができる。
【0048】
本発明におけるインクジェット記録材料は、インクジェット記録材料としての使用に留まらず、記録時に液状であるインクを使用するどのような記録材料として用いてもかまわない。例えば、熱溶融性物質、染顔料などを主成分とする熱溶融性インクを樹脂フィルム、高密度紙、合成紙などの薄い支持体上に塗布したインク用紙を、その裏面より加熱し、インクを溶融させて転写する熱転写記録用受像シート、熱溶融性インクを加熱溶融して微小液滴化、飛翔記録するインクジェット記録シート、油溶性染料を溶媒に溶解したインクを用いたインクジェット記録シート、光重合型モノマー及び無色または有色の染顔料を内包したマイクロカプセルを用いた感光感圧型ドナーシートに対応する受像シートなどが挙げられる。
【0049】
これらの記録シートの共通点は、記録時にインクが液体状態である点である。液状インクは、硬化、固化又は定着までに、記録シートのインク受理層の深さ方向又は水平方向に対して浸透又は拡っていく。上述した各種記録シートは、それぞれの方式に応じた吸収性を必要とするもので、本発明のインクジェット記録材料を上述した各種の記録シートとして利用しても何ら構わない。更に、複写機・プリンター等に広く使用されている電子写真記録方式のトナーを加熱定着する記録シートとして、本発明におけるインクジェット記録材料を使用しても構わない。
【0050】
【実施例】
以下に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、実施例に於いて示す「部」及び「%」は特に明示しない限り質量部及び質量%を示す。
【0051】
インク受理層塗液の作製
下記の組成の混合液をホモミキサーで撹拌し、インク受理層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は17.0%である。
合成非晶質シリカ(平均粒子径8μm) 100部
10%ポリビニルアルコール水溶液 300部
30%ポリアミン系樹脂水溶液 67部
ポリオキシエチレンアルキルフェノール系界面活性剤 0.4部
水 417部
【0052】
アルミナ水和物の作製
容量2000ccのガラス製反応器(セパラブルフラスコ、撹拌羽根、温度計付き)に、水900gとイソプロパノール676gを仕込み、マントルヒーターにより液温を75℃に加熱した。撹拌しながらアルミニウムイソプロポキシド306gを添加し、液温を75〜78℃に保持しながら5時間加水分解を行った。そのあと95℃に昇温し、酢酸9gを添加して48時間、75〜78℃に保持して解膠した。さらにこの液を75℃でスプレー乾燥してアルミナ水和物を得た。このアルミナ水和物の平均二次粒子径は150nmであった。
【0053】
参考例1
(A)光沢発現層塗液の作製
アルミナ水和物の作製で得たアルミナ水和物を用い、下記の組成の混合液をホモミキサーで撹拌し、光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.3%である。
アルミナ水和物 100部
10%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−217;
ケン化度86.5〜89.5:クラレ社製) 150部
20%硝酸水溶液 15部
ポリオキシエチレンアルキルフェノール系界面活性剤 1部
水 567部
【0054】
(B)インクジェット記録材料の作製
インク受理層塗液、(A)で作製した光沢発現層塗液を用い、スライドホッパー型カーテン塗布装置により、下層側からインク受理層塗液、光沢発現層塗液の順で、塗布速度80m/分、乾燥塗工量がそれぞれ8g/m2の塗工をすべく、カーテン流量を設定した多層塗液膜を形成し、この多層塗液膜を100g/m2の上質紙の上に塗布、乾燥させた後、マシンカレンダー処理を行い、本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0055】
参考例2
(A)光沢発現層塗液の作製において使用したポリビニルアルコールを、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−235;ケン化度86.5〜89.5:クラレ社製)188部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は13.7%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0056】
参考例3
(A)光沢発現層塗液の作製において使用したポリビニルアルコールを、10%ポリビニルアルコール水溶液(L−8;ケン化度69.5〜72.5:クラレ社製)150部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.3%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0057】
参考例4
(A)光沢発現層塗液の作製において使用したポリビニルアルコールを、10%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−117;ケン化度98.0〜99.0:クラレ社製)150部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.3%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0058】
参考例5
(A)光沢発現層塗液の作製において使用したポリビニルアルコールを、4%メチルセルロース水溶液(マーポローズM25;松本油脂製薬社製)375部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は11.3%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0059】
参考例6
(A)光沢発現層塗液の作製において使用したポリビニルアルコールを、10%ポリビニルピロリドン水溶液150部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.3%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0060】
参考例7
(A)光沢発現層塗液の作製において使用したポリビニルアルコールを、50%酢酸ビニル−エチレン共重合体エマルション30部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は16.7%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0061】
参考例8
(A)光沢発現層塗液の作製において使用した硝酸水溶液を、20%塩酸水溶液15部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.3%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0062】
実施例1
(C)光沢発現層塗液の作製
アルミナ水和物の作製で得たアルミナ水和物を用い、下記の組成の混合液をホモミキサーで撹拌し、光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は15.0%である。
アルミナ水和物 100部
10%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−217;
ケン化度86.5〜89.5:クラレ社製) 150部
60%ポリメチルジアリルアミン塩酸塩樹脂水溶液
(PAS−M−1:日東紡社製) 13部
20%硝酸水溶液 15部
ポリオキシエチレンアルキルフェノール系界面活性剤 1部
水 567部
【0063】
こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0064】
実施例2
(C)光沢発現層塗液の作製において使用したポリメチルジアリルアミン塩酸塩樹脂水溶液を、40%ポリジメチルジアリルアンモニウム・スルホニル塩酸塩樹脂水溶液(PAS−A−5:日東紡社製)20部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.9%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0065】
実施例3
(C)光沢発現層塗液の作製において使用したポリメチルジアリルアミン塩酸塩樹脂水溶液を、25%ポリジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド塩酸塩樹脂水溶液(PAS−J−81:日東紡社製)32部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.7%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0066】
参考例9
(C)光沢発現層塗液の作製において使用したポリメチルジアリルアミン塩酸塩樹脂水溶液を、40%ポリアリルアミン塩酸塩樹脂水溶液(PAA−HCL−10L:日東紡社製)20部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.9%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0067】
参考例10
(C)光沢発現層塗液の作製において使用したポリメチルジアリルアミン塩酸塩樹脂水溶液を、25%ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂水溶液(WS547:日本PMC社製)32部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.7%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0068】
参考例11
(C)光沢発現層塗液の作製において使用したポリビニルアルコールを、4%メチルセルロース水溶液(マーポローズM25;松本油脂製薬社製)375部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は11.8%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0069】
参考例12
(D)光沢発現層塗液の作製
下記の組成の混合液をホモミキサーで撹拌し、光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は17.9%である。
コロイダルシリカ(平均二次粒子径100nm、固形分20%) 500部
10%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−217;
ケン化度86.5〜89.5:クラレ社製) 150部
20%硝酸水溶液 15部
ポリオキシエチレンアルキルフェノール系界面活性剤 1部
【0070】
こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は参考例1と同様にして本発明のインクジェット記録材料を作製した。
【0071】
参考例13
参考例1において使用した支持体を、白色PETフィルムに変更した以外は参考例1と同様にして参考例13のインクジェット記録材料を作製した。
【0072】
参考例14
実施例1において使用した支持体を、白色PETフィルムに変更した以外は実施例1と同様にして参考例14のインクジェット記録材料を作製した。
【0073】
比較例1
(A)光沢発現層塗液の作製において使用した硝酸水溶液を、20%硫酸水溶液15部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.3%である。しかし、この塗液は調液直後から凝集の発生が認められ、支持体に塗工することはできなかった。
【0074】
比較例2
(A)光沢発現層塗液の作製において使用した硝酸水溶液を、20%酢酸水溶液15部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.3%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【0075】
比較例3
(A)光沢発現層塗液の作製において使用した硝酸水溶液を、20%乳酸水溶液15部に変更して光沢発現層塗液を作製した。この塗液の固形分濃度は14.3%である。こうして得た光沢発現層塗液を用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【0076】
比較例4
インク受理層塗液を用い、カーテン塗布装置により、塗布速度160m/分、乾燥塗工量が8g/m2の塗工をすべく、カーテン流量を設定した単層塗液膜を形成し、この単層塗液膜を100g/m2の上質紙の上に塗布、乾燥した。さらに、実施例1で使用したのと同一の光沢発現層塗液を用い、カーテン塗布装置により、塗布速度160m/分、乾燥塗工量が8g/m2の塗工をすべく、カーテン流量を設定した単層塗液膜を形成し、この単層塗液膜を前記支持体のインク受理層塗工面上に塗布、乾燥させた後、マシンカレンダー処理を行い、インクジェット記録材料を作製した。
【0077】
比較例5
実施例1で使用したのと同一の光沢発現層塗液を用い、カーテン塗布装置により、塗布速度80m/分、乾燥塗工量が16g/m2の塗工をすべく、カーテン流量を設定した単層塗液膜を形成し、この単層塗液膜を100g/m2の上質紙の上に塗布、乾燥させた後、マシンカレンダー処理を行い、インクジェット記録材料を作製した。
【0078】
<塗液の状態>
実施例1〜3、参考例1〜14、比較例1〜5で使用した光沢発現層塗液の状態を、調液直後と調液1日後に目視で観察し、以下の基準で判定した。結果を表1に示した。
◎:塗液は滑らかであり、良好。
○:塗液は滑らかであるが、塗液粘度がやや高くなっている。
△:やや凝集気味で、塗液の滑らかさが失われているが、かろうじて塗工はできるレベル。
×:凝集の発生が認められ、塗工不能なレベル。
【0079】
<光沢発現層の表面観察>
実施例1〜3、参考例1〜14、比較例2〜5で作製したインクジェット記録材料の光沢発現層表面を目視により観察し、塗層表面のひび割れの状態を調べた。ひび割れは1〜10の数値で表した。1はひび割れが最も悪いことを表し、数値が大きくなるほど良好となり、10はひび割れが最良なことを示す。6以上であれば実用上問題ないレベルである。結果を表1に示した。
【0080】
<印字特性>
実施例1〜3、参考例1〜14、比較例2〜5で作製したインクジェット記録材料に、セイコーエプソン社製カラーインクジェットプリンター(PM750C)を用いてブラックインクで幅5cm、長さ5cmの印字を行い、印字部の濃度を濃度計(マクベスRD918)を用いて測定した。また、印字部のインク吸収性を目視により観察した。インク吸収性は1〜5の数値で表した。1はインクの吸収性が最も悪いことを表し、数値が大きくなるほど良好となり、5はインクの吸収性が最良なことを示す。3以上であれば実用上問題ないレベルである。結果を表1に示した。
【0081】
【表1】
【0082】
表1より明らかなように、光沢発現層が無機超微粒子および一価の無機酸を含有してなり、かつ少なくともインク受容層、光沢発現層を含む、複数の塗布層を積層して成る多層塗液膜を支持体上に塗布・乾燥して製造する本発明のインクジェット記録材料の製造方法によれば、塗層表面のひび割れの発生が少なく、表面の光沢感に優れ、印画像濃度が高く、インク吸収性に優れたインクジェット記録材料を安定して製造することが可能となる。特に、一価の無機酸が硝酸である場合には、上記特性が特に優れている。参考例1〜7の比較より、光沢発現層がさらにケン化度65%以上90%以下のポリビニルアルコールを含有した参考例1〜3では、調液直後および経時での塗液の安定性が高まることで製造安定性が高まり、また、画像濃度が向上するため好ましい。また、実施例1〜3、参考例11のように、光沢発現層がさらにポリジアリルアミン誘導体を含有すると、塗層のひび割れが良化するため好ましい。特に、光沢発現層がケン化度65%以上90%以下のポリビニルアルコールとポリジアリルアミン誘導体の両方を含有した実施例1〜3は、塗液の安定性が高く、塗層のひび割れが良好かつ画像濃度も高いため好ましい。参考例1と参考例13、および実施例1と参考例14の比較より、支持体が吸収性支持体である参考例1、実施例1は、塗層のひび割れが良好で、インク吸収性に優れるため好ましい。
【0083】
一方、光沢発現層が無機超微粒子と硫酸を含有した比較例1は、塗液が凝集し塗工不能となった。光沢発現層が無機超微粒子と酢酸あるいは乳酸を含有した比較例2、3では、塗層のひび割れを抑制することができず、印字品質も劣ったものとなる。また、光沢発現層が無機超微粒子と一価の無機酸を含有しているものの、インク受理層と光沢発現層を逐次塗布した比較例4、光沢発現層のみを塗布した比較例5では、インク吸収性が不十分となり、画像の発色も劣る。
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、塗層のひび割れがなく、表面の光沢感に優れ、インク吸収性が良好で、画像濃度の高いインクジェット記録材料を安定に製造することができる。
Claims (1)
- 少なくともインク受理層、光沢発現層を含む、複数の塗布層の塗液を積層して成る多層塗液膜を支持体上に塗布・乾燥して形成されるインクジェット記録材料の製造方法において、該支持体が吸収性支持体であり、該インク受理層が白色顔料を含有し、該光沢発現層が一次粒子径が100nm以下で、かつ二次粒子径が400nm以下の無機超微粒子および硝酸を含有し、かつ、該光沢発現層中にケン化度65%以上90%以下のポリビニルアルコールおよびポリジアリルアミン誘導体も含めたバインダーの配合比率が、乾燥固形分比率で無機超微粒子100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下含有することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
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