JP2004338149A - 記録媒体及び記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高光沢で高画質な印字を可能とすると共にキズの入りにくい光沢面をもつ記録媒体の提供。
【解決手段】基材に一層以上のインク受容層を有し、かつ該インク受容層の20°表面光沢度が20%以上であるインクジェット用記録媒体において、最表層のインク受容層が少なくともアルミナ水和物と有機高分子化合物が混在したもので、該インク受容層内のアルミナ水和物に対する有機高分子化合物の混在比が表面部と内部で異なり、そのインク受容層内のアルミナ水和物に対する有機高分子化合物の混在比が、内部より表面部が大きくなっている。
【選択図】 図1
【解決手段】基材に一層以上のインク受容層を有し、かつ該インク受容層の20°表面光沢度が20%以上であるインクジェット用記録媒体において、最表層のインク受容層が少なくともアルミナ水和物と有機高分子化合物が混在したもので、該インク受容層内のアルミナ水和物に対する有機高分子化合物の混在比が表面部と内部で異なり、そのインク受容層内のアルミナ水和物に対する有機高分子化合物の混在比が、内部より表面部が大きくなっている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鮮明で高い光沢のある画像が得られ、キズに強いインクジェット用記録媒体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、インク等の記録用の液体(記録液)の微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて、紙などの記録媒体に付着させ、画像、文字などの記録を行なうものであり、高速低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きく、現像が不要などの特長があり、プリンターへの展開を初めとして、複写機、ワープロ、FAX、プロッター等の情報機器へ展開され急速に普及している。また、近年高性能のデジタルカメラ、デジタルビデオ、スキャナーが安価で提供されつつあり、パーソナルコンピューターの普及と相まって、これらから得られた画像情報をインクジェット記録方式で出力する機会が増えている。このため銀塩系写真や製版方式の多色印刷と比較して遜色無い画像をインクジェット方式で出力することが求められている。
【0003】
そのために、記録の高速化、高精細化、フルカラー化など記録装置、記録方式の改良が行われてきたが、記録媒体に対しても高度な特性が要求されるようになってきた。
【0004】
この様な状況下において一般的に記録媒体に要求される特性としては、(1)インク吸収速度が速く、必要以上の滲みが無いこと、(2)印字濃度及び発色性が高いこと、(3)光沢が高いこと(4)耐候性に優れていることなどが挙げられる。
【0005】
このような要求に対し従来から多種多様の記録媒体が提案されてきた。例えば、特開昭52−9074号公報には、インク吸収速度を向上させるために比表面積の大きなシリカ系顔料を主成分とした空隙を有する層をインク受容層として設けた記録媒体が開示され、また特開昭63−22997号公報には、インク受容層を形成する顔料層の空隙量を調整してなる記録媒体が開示されている。特開昭55−51583号公報及び特開昭56−157号公報には、インク受理層によってインク吸収性を上げ、高い印字濃度やインク滲みが無い印字ドットを得るために、非晶質シリカ粉末を配合することが開示されている。
【0006】
また、特開昭55−144172号公報には、発色性、鮮明性はインク中の染料のインク受理層における分布状態に左右されることに着目し、染料成分を吸着する特定の物質を用いることが開示されている。特開平3−114873号公報には、紙層上に硫酸バリウムとゼラチンを含む塗層を設けたインクジェット記録媒体を使用することにより、インク吸収性、耐水性、耐光性を改善したことが開示されている。
【0007】
さらに、米国特許明細書第4879166号、同5104730号、特開平2−276670号公報、同4−37576号公報、同5−32037号公報には、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を含む層をインク受理層とする記録媒体が開示されている。これらアルミナ水和物を用いた記録媒体は、アルミナ水和物が正電荷を有しているため、インク染料の定着が良く、発色性の高い、高光沢性の画像が得られるなど、従来の記録媒体に比べて長所を有している。
【0008】
また、特開平7−89216号公報には、基材上に吸水性顔料を含む層と擬ベーマイトを含む最表層からなるインクジェット被記録材が開示され、擬ベーマイトのみを使用した場合のインク吸収性の不足分を下層の吸水性顔料によって補うことが開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような提案により、近年の記録媒体はかなり銀塩写真に近いものになりつつある。ところが、銀塩写真の光沢感を出す為に記録媒体の光沢が上がるにつれて、表面のキズが目立つようになりつつある。特に、連続印刷時に、裏面が表面の高光沢のインク受容層を擦った痕が、キズとして視認される場合が多い。
したがって、本発明の目的は、高光沢で高画質な印字を可能とすると共にキズの入りにくい光沢面をもつ記録媒体の提供にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成し得る本発明の記録媒体は、基材に一層以上のインク受容層を有し、かつ該インク受容層の20°表面光沢度が20%以上であるインクジェット用記録媒体において、最表層のインク受容層が少なくともアルミナ水和物と有機高分子化合物が混在したもので、該インク受容層内のアルミナ水和物に対する有機高分子化合物の混在比が表面部と内部で異なり、そのインク受容層内のアルミナ水和物に対する有機高分子化合物の混在比が、内部より表面部が大きくなっていることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の記録媒体に用いる基材は、不透明なものが良く、記録媒体に所望の形態維持特性を付与できるものであれば良い。このような基材としては、上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、レジンコート紙、バライタ紙などの紙類、白色化したポリエチレンテレフタレート、ジアセテート、トリアセテート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアクリレートなどのプラスチック材料からなるものを挙げることができる。
【0012】
基材上に設けられるインク受容層としては、単層、多層含め種々の構成が使用できるが、銀塩写真に匹敵するような画像を得る上では、インク中の染料等の着色剤成分が主に定着される層にアルミナ水和物を含む多孔質層を用いた構成が好ましい。
【0013】
ここで用いるアルミナ水和物としては、市販のもの、あるいはアルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解などを用いた公知の方法によって製造されたものを用いることができる。その粒子形状は繊毛状または針状、板状、紡錘状等に限定されず、また、配向性の有無も問わない。更に、アルミナ水和物は、透明性、光沢性、染料定着性の高いもので、且つ被膜形成時にクラック等が入らず、塗工性の良いものであればさらに良い。工業的に市販されているものとしては、例えば、触媒化成工業社製の「カタロイドAS−2」、「カタロイドAS−3」、日産化学社製「アルミナゾル−520」等が挙げられる。
【0014】
また、無配向性アルミナ水和物を調製するには、たとえば、アルミニウムアルコキシドの加水分解・解膠法及び硝酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムによる加水分解・解膠法を用いることができる。
【0015】
これらのアルミナ水和物は、通常粒子径が1μm以下と細かいものであり、優れた分散性を有するものであるため、記録媒体に非常に良好な平滑性、光沢性を持たせることができる。
【0016】
アルミナ水和物を結着するために使用されるバインダーとしては、水溶性高分子の中から自由に選択することができる。例えば、ポリビニルアルコールまたはその変性体、澱粉またはその変性体、ゼラチンまたはその変性体、カゼインまたはその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体などが好ましい。これらのバインダーは単独あるいは複数種混合して用いることができる。
【0017】
アルミナ水和物とバインダーの混合比は、重量比で、好ましくは1:1〜30:1であり、その下限は5:1が、その上限は25:1がより好ましい。バインダーの量をこれらの範囲とすることで、インク受容層の機械的強度を好ましいものとすることができ、ひび割れや粉落ちの発生の防止や、好適な細孔容積の維持が可能となる。
【0018】
アルミナ水和物を含む層を形成するための塗工液には、アルミナ水和物及びバインダーに加え、必要に応じて分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを、本発明の効果を損なわない範囲内で添加することも可能である。
【0019】
本発明の記録媒体において、基材上にインク受容層を形成する方法としては、上記のアルミナを含む分散溶液を塗工装置を用いて基材上に塗布、乾燥する方法を用いることができる。塗工方法は特に制限されるものではなく、一般に用いられているブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、スプレー装置等による塗工技術を用いることができる。アルミナ水和物を含む層の塗工量としては、染料定着性をもたせ且つ必要な平滑性を持たせる為にも乾燥固形分換算で40g/m2以下が好ましく、25〜35g/m2の範囲がより好ましい。また、必要に応じてアルミナ水和物及びバインダーを含む層を形成した後に焼成処理を施すことも可能である。かかる焼成処理を施すことにより、バインダーの架橋強度が上がり、インク受容層の機械的強度が向上し、また、アルミナ水和物層の表面光沢が向上する。
【0020】
さらに、上記のアルミナ水和物を含む層を形成するための塗工液に、特開平7−76161号公報で記載されているような、ホウ酸またはホウ酸塩などのバインダーの架橋剤を含有させても、インク受容層の機械的強度が向上するので好ましい。
【0021】
本発明の表面部の有機高分子化合物のアルミナ水和物に対する混在比を大きくするには、上記のごとくインク受容層を形成した後、低濃度のラテックスを少量塗工することで作成することが出来る。
【0022】
その際に用いられるラテックスとしては、熱可塑性樹脂粒子をエマルジョンとして分散させたものが好適に用いることが出来る。熱可塑性樹脂粒子としては、各種の熱可塑性樹脂材料からなるものを用いることができ、例えば、塩化ビニル系、塩化ビニリデン系、スチレン系、アクリル系、アクリル酸エステル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、塩化ビニル−酢酸ビニル系、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸系、SBR系、NBR系などを好適に用いることができる。
【0023】
塗工の際には、必要に応じてラテックスの固形分量を調整して用いることができ、完全な皮膜化を防ぎインク受容層中への浸透が起こるようにするためには、ラテックスの固形分量を小さくすることが重要である。その浸透深さは、キズ防止効果とインク吸収性の観点から0.5μm〜2μmに制御することが望ましく、このような構造とする為にはラテックスの固形分濃度を1%以下に調整することが望ましい。
【0024】
また、本発明で用いることが出来るラテックス粒子の平均粒子径は50nm以上あることが望ましい。このようなラテックスを用いることで、インク受容層への浸透深さが大きくなりすぎるのを防ぎ、インク吸収性を確保することが出来る。用いるラテックスの平均粒子径が50nmに満たない場合は、インク受容層の表面全体に皮膜として存在しやすくなり、インク吸収性を悪化させる。さらに、水溶性樹脂を塗工することにより表面部の有機高分子化合物のアルミナ水和物に対する混在比を大きくした場合は、インク吸収性を著しく悪化させる。これは、水溶性樹脂がインク受容層の内部に深く浸透して細孔を過度に潰す結果であると推定される。つまり、本発明のポイントは、インク受容層の表面の微細な凹凸を熱可塑性樹脂で埋めてやることで、表面の強度を増すものであり、その際インク受容層中への樹脂の浸透深さを制御することで、インク吸収性を確保するものである。その態様を図1に模式的に示した。このように、インク受容層の表面の微細な凹凸を熱可塑性樹脂で埋めてやることで、表面平滑性が向上することから、光沢度が更に大きくなるという効果も発現させることができる。
【0025】
本発明のインク受容層への光沢処理としては、リウエットキャスト法が好適に用いられる。リウエット法は、湿潤状態にあるインク受容層となる層を乾燥させる工程を有する形成方法によりインク受容層を形成した後に、再度熱湯等により処理してインク受容層を湿潤状態に戻し、湿潤状態にあるインク受容層の表面を加熱した鏡面ドラムに圧着して乾燥処理するものである。この結果、インク受容層の表面に強光沢を得る事が出きる。本方法が好ましい理由としては、鏡面ドラムに圧着して湿潤状態のインク受容層を乾燥する場合に、緻密な基材を用いた場合には、裏面からの水分の蒸発が極端に制限される為である。このため湿潤の際に少量の水分で可能なリウェットキャスト方法が好適に用いられる。また、本発明の光沢処理は、ラテックス塗工の前後いずれのタイミングで行うことが可能で、より平滑な表面が求められる場合はラテックス塗工後に行うことが望ましい。この場合には、使用するラテックスのTg(ガラス転移点)が80℃以下のものを選定することが望ましく、Tgが高すぎると十分な光沢が得られなくなる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各特性の測定と評価は下記の方法で行った。
【0027】
(1)インク吸収性、印字時キズ
インクジェットプリンター(商品名:BJF−850 キヤノン社製)を用いて、印刷用トレイにA4サイズの用紙を10枚まとめてセットし、インク受容層のある光沢面に写真情報に応じた画像を連続10枚印字した。その結果、光沢面にキズがつかないものを○、わずかにキズがつくものを△、キズが多数つくものを×とし、画像に滲みが無いものを○、わずかに滲みがあるものを△、顕著に滲みが観察されるものを×とした。
【0028】
(2)画像濃度
インクジェットプリンター(商品名:BJF−850 キヤノン社製)を用いて、Bkインクでベタ印字した画像の画像濃度を、マクベス反射濃度計RD−918を用いて評価した。その結果、1.7以上のものを○、1.5〜1.7のものを△、1.5に満たないものを×とした。
【0029】
(3)表面光沢度
デジタル変角光沢計(スガ試験機社製)を用いて評価をおこなった。表面光沢度が測定角20°で20%以上のものを○、15〜20%のものを△、15%に満たないものを×とした。
【0030】
(4)塗膜強度
記録媒体の裏面が上になるように固定し、その上に黒色の紙を重ね合わせその上に100gの重りを載せ、その黒色紙で記録媒体の裏面をこすり、黒色紙の白化度合いをみた。ほとんど白化しないものを○、少し白化したものを△、著しく白化したものを×とした。
【0031】
実施例1
米国特許第4242271号に記載された方法に従ってアルミニウムアルコキシドを合成し、これを加水分解することによりアルミナコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを脱塩処理した後、酢酸を添加して解膠処理を行った。このコロイダルゾルを乾燥して得たアルミナ水和物をX線回折により測定したところ、擬ベーマイトであった。
【0032】
次に、このアルミナ水和物のコロイダルゾルを濃縮して15重量%の溶液を得た。一方、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)をイオン交換水に溶解して10重量%の溶液を得た。これらの2種の溶液を、アルミナ水和物とポリビニルアルコールの固形分が重量比で10:1になるように混合し、攪拌して分散させた後、ポリビニルアルコールの架橋剤としてホウ酸12重量部を添加して塗工液を得た。
【0033】
基材は、坪量150g/m2、ステキヒトサイズ度220秒、ベック平滑度360秒の木材パルプと填剤となからなるロール状の原紙(幅110cm、長さ1000m)を用いた。このロール状の原紙の表面に、ダイコーターにより上記の分散液を乾燥塗工量30g/m2となるように塗工し、乾燥させてインク受容層を形成した。
【0034】
次に、熱可塑性樹脂層として最低造膜温度70℃、平均粒子径60nmのアクリル酸エステル系共重合エマルジョンを固形分濃度が0.5重量%になるように調整し塗工液とした。
【0035】
この塗工液をワイヤーバーコーターにより、乾燥塗工重量0.5g/m2となるように、前記インク受容層上に形成した。このときの乾燥温度は、120℃になるように設定した。
【0036】
以上のようにして、表面側のインク受容層、熱可塑性樹脂層の2段階の塗工を行った後、このロールのインク受容層表面にリウエットキャストコーターを用いて、熱湯(80℃)を用いたリウエットキャスト処理を行い記録媒体ロールを得た。このロールからA4サイズの大きさに切り出して、サンプル1とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット用記録媒体の一例の断面形状を示した模式図。
【符号の説明】
1 基材
2 有機高分子化合物の混在比の小さい領域
3 有機高分子化合物の混在比の大きい領域
【発明の属する技術分野】
本発明は、鮮明で高い光沢のある画像が得られ、キズに強いインクジェット用記録媒体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、インク等の記録用の液体(記録液)の微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて、紙などの記録媒体に付着させ、画像、文字などの記録を行なうものであり、高速低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きく、現像が不要などの特長があり、プリンターへの展開を初めとして、複写機、ワープロ、FAX、プロッター等の情報機器へ展開され急速に普及している。また、近年高性能のデジタルカメラ、デジタルビデオ、スキャナーが安価で提供されつつあり、パーソナルコンピューターの普及と相まって、これらから得られた画像情報をインクジェット記録方式で出力する機会が増えている。このため銀塩系写真や製版方式の多色印刷と比較して遜色無い画像をインクジェット方式で出力することが求められている。
【0003】
そのために、記録の高速化、高精細化、フルカラー化など記録装置、記録方式の改良が行われてきたが、記録媒体に対しても高度な特性が要求されるようになってきた。
【0004】
この様な状況下において一般的に記録媒体に要求される特性としては、(1)インク吸収速度が速く、必要以上の滲みが無いこと、(2)印字濃度及び発色性が高いこと、(3)光沢が高いこと(4)耐候性に優れていることなどが挙げられる。
【0005】
このような要求に対し従来から多種多様の記録媒体が提案されてきた。例えば、特開昭52−9074号公報には、インク吸収速度を向上させるために比表面積の大きなシリカ系顔料を主成分とした空隙を有する層をインク受容層として設けた記録媒体が開示され、また特開昭63−22997号公報には、インク受容層を形成する顔料層の空隙量を調整してなる記録媒体が開示されている。特開昭55−51583号公報及び特開昭56−157号公報には、インク受理層によってインク吸収性を上げ、高い印字濃度やインク滲みが無い印字ドットを得るために、非晶質シリカ粉末を配合することが開示されている。
【0006】
また、特開昭55−144172号公報には、発色性、鮮明性はインク中の染料のインク受理層における分布状態に左右されることに着目し、染料成分を吸着する特定の物質を用いることが開示されている。特開平3−114873号公報には、紙層上に硫酸バリウムとゼラチンを含む塗層を設けたインクジェット記録媒体を使用することにより、インク吸収性、耐水性、耐光性を改善したことが開示されている。
【0007】
さらに、米国特許明細書第4879166号、同5104730号、特開平2−276670号公報、同4−37576号公報、同5−32037号公報には、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を含む層をインク受理層とする記録媒体が開示されている。これらアルミナ水和物を用いた記録媒体は、アルミナ水和物が正電荷を有しているため、インク染料の定着が良く、発色性の高い、高光沢性の画像が得られるなど、従来の記録媒体に比べて長所を有している。
【0008】
また、特開平7−89216号公報には、基材上に吸水性顔料を含む層と擬ベーマイトを含む最表層からなるインクジェット被記録材が開示され、擬ベーマイトのみを使用した場合のインク吸収性の不足分を下層の吸水性顔料によって補うことが開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような提案により、近年の記録媒体はかなり銀塩写真に近いものになりつつある。ところが、銀塩写真の光沢感を出す為に記録媒体の光沢が上がるにつれて、表面のキズが目立つようになりつつある。特に、連続印刷時に、裏面が表面の高光沢のインク受容層を擦った痕が、キズとして視認される場合が多い。
したがって、本発明の目的は、高光沢で高画質な印字を可能とすると共にキズの入りにくい光沢面をもつ記録媒体の提供にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成し得る本発明の記録媒体は、基材に一層以上のインク受容層を有し、かつ該インク受容層の20°表面光沢度が20%以上であるインクジェット用記録媒体において、最表層のインク受容層が少なくともアルミナ水和物と有機高分子化合物が混在したもので、該インク受容層内のアルミナ水和物に対する有機高分子化合物の混在比が表面部と内部で異なり、そのインク受容層内のアルミナ水和物に対する有機高分子化合物の混在比が、内部より表面部が大きくなっていることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の記録媒体に用いる基材は、不透明なものが良く、記録媒体に所望の形態維持特性を付与できるものであれば良い。このような基材としては、上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、レジンコート紙、バライタ紙などの紙類、白色化したポリエチレンテレフタレート、ジアセテート、トリアセテート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアクリレートなどのプラスチック材料からなるものを挙げることができる。
【0012】
基材上に設けられるインク受容層としては、単層、多層含め種々の構成が使用できるが、銀塩写真に匹敵するような画像を得る上では、インク中の染料等の着色剤成分が主に定着される層にアルミナ水和物を含む多孔質層を用いた構成が好ましい。
【0013】
ここで用いるアルミナ水和物としては、市販のもの、あるいはアルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解などを用いた公知の方法によって製造されたものを用いることができる。その粒子形状は繊毛状または針状、板状、紡錘状等に限定されず、また、配向性の有無も問わない。更に、アルミナ水和物は、透明性、光沢性、染料定着性の高いもので、且つ被膜形成時にクラック等が入らず、塗工性の良いものであればさらに良い。工業的に市販されているものとしては、例えば、触媒化成工業社製の「カタロイドAS−2」、「カタロイドAS−3」、日産化学社製「アルミナゾル−520」等が挙げられる。
【0014】
また、無配向性アルミナ水和物を調製するには、たとえば、アルミニウムアルコキシドの加水分解・解膠法及び硝酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムによる加水分解・解膠法を用いることができる。
【0015】
これらのアルミナ水和物は、通常粒子径が1μm以下と細かいものであり、優れた分散性を有するものであるため、記録媒体に非常に良好な平滑性、光沢性を持たせることができる。
【0016】
アルミナ水和物を結着するために使用されるバインダーとしては、水溶性高分子の中から自由に選択することができる。例えば、ポリビニルアルコールまたはその変性体、澱粉またはその変性体、ゼラチンまたはその変性体、カゼインまたはその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体などが好ましい。これらのバインダーは単独あるいは複数種混合して用いることができる。
【0017】
アルミナ水和物とバインダーの混合比は、重量比で、好ましくは1:1〜30:1であり、その下限は5:1が、その上限は25:1がより好ましい。バインダーの量をこれらの範囲とすることで、インク受容層の機械的強度を好ましいものとすることができ、ひび割れや粉落ちの発生の防止や、好適な細孔容積の維持が可能となる。
【0018】
アルミナ水和物を含む層を形成するための塗工液には、アルミナ水和物及びバインダーに加え、必要に応じて分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを、本発明の効果を損なわない範囲内で添加することも可能である。
【0019】
本発明の記録媒体において、基材上にインク受容層を形成する方法としては、上記のアルミナを含む分散溶液を塗工装置を用いて基材上に塗布、乾燥する方法を用いることができる。塗工方法は特に制限されるものではなく、一般に用いられているブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、スプレー装置等による塗工技術を用いることができる。アルミナ水和物を含む層の塗工量としては、染料定着性をもたせ且つ必要な平滑性を持たせる為にも乾燥固形分換算で40g/m2以下が好ましく、25〜35g/m2の範囲がより好ましい。また、必要に応じてアルミナ水和物及びバインダーを含む層を形成した後に焼成処理を施すことも可能である。かかる焼成処理を施すことにより、バインダーの架橋強度が上がり、インク受容層の機械的強度が向上し、また、アルミナ水和物層の表面光沢が向上する。
【0020】
さらに、上記のアルミナ水和物を含む層を形成するための塗工液に、特開平7−76161号公報で記載されているような、ホウ酸またはホウ酸塩などのバインダーの架橋剤を含有させても、インク受容層の機械的強度が向上するので好ましい。
【0021】
本発明の表面部の有機高分子化合物のアルミナ水和物に対する混在比を大きくするには、上記のごとくインク受容層を形成した後、低濃度のラテックスを少量塗工することで作成することが出来る。
【0022】
その際に用いられるラテックスとしては、熱可塑性樹脂粒子をエマルジョンとして分散させたものが好適に用いることが出来る。熱可塑性樹脂粒子としては、各種の熱可塑性樹脂材料からなるものを用いることができ、例えば、塩化ビニル系、塩化ビニリデン系、スチレン系、アクリル系、アクリル酸エステル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、塩化ビニル−酢酸ビニル系、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸系、SBR系、NBR系などを好適に用いることができる。
【0023】
塗工の際には、必要に応じてラテックスの固形分量を調整して用いることができ、完全な皮膜化を防ぎインク受容層中への浸透が起こるようにするためには、ラテックスの固形分量を小さくすることが重要である。その浸透深さは、キズ防止効果とインク吸収性の観点から0.5μm〜2μmに制御することが望ましく、このような構造とする為にはラテックスの固形分濃度を1%以下に調整することが望ましい。
【0024】
また、本発明で用いることが出来るラテックス粒子の平均粒子径は50nm以上あることが望ましい。このようなラテックスを用いることで、インク受容層への浸透深さが大きくなりすぎるのを防ぎ、インク吸収性を確保することが出来る。用いるラテックスの平均粒子径が50nmに満たない場合は、インク受容層の表面全体に皮膜として存在しやすくなり、インク吸収性を悪化させる。さらに、水溶性樹脂を塗工することにより表面部の有機高分子化合物のアルミナ水和物に対する混在比を大きくした場合は、インク吸収性を著しく悪化させる。これは、水溶性樹脂がインク受容層の内部に深く浸透して細孔を過度に潰す結果であると推定される。つまり、本発明のポイントは、インク受容層の表面の微細な凹凸を熱可塑性樹脂で埋めてやることで、表面の強度を増すものであり、その際インク受容層中への樹脂の浸透深さを制御することで、インク吸収性を確保するものである。その態様を図1に模式的に示した。このように、インク受容層の表面の微細な凹凸を熱可塑性樹脂で埋めてやることで、表面平滑性が向上することから、光沢度が更に大きくなるという効果も発現させることができる。
【0025】
本発明のインク受容層への光沢処理としては、リウエットキャスト法が好適に用いられる。リウエット法は、湿潤状態にあるインク受容層となる層を乾燥させる工程を有する形成方法によりインク受容層を形成した後に、再度熱湯等により処理してインク受容層を湿潤状態に戻し、湿潤状態にあるインク受容層の表面を加熱した鏡面ドラムに圧着して乾燥処理するものである。この結果、インク受容層の表面に強光沢を得る事が出きる。本方法が好ましい理由としては、鏡面ドラムに圧着して湿潤状態のインク受容層を乾燥する場合に、緻密な基材を用いた場合には、裏面からの水分の蒸発が極端に制限される為である。このため湿潤の際に少量の水分で可能なリウェットキャスト方法が好適に用いられる。また、本発明の光沢処理は、ラテックス塗工の前後いずれのタイミングで行うことが可能で、より平滑な表面が求められる場合はラテックス塗工後に行うことが望ましい。この場合には、使用するラテックスのTg(ガラス転移点)が80℃以下のものを選定することが望ましく、Tgが高すぎると十分な光沢が得られなくなる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各特性の測定と評価は下記の方法で行った。
【0027】
(1)インク吸収性、印字時キズ
インクジェットプリンター(商品名:BJF−850 キヤノン社製)を用いて、印刷用トレイにA4サイズの用紙を10枚まとめてセットし、インク受容層のある光沢面に写真情報に応じた画像を連続10枚印字した。その結果、光沢面にキズがつかないものを○、わずかにキズがつくものを△、キズが多数つくものを×とし、画像に滲みが無いものを○、わずかに滲みがあるものを△、顕著に滲みが観察されるものを×とした。
【0028】
(2)画像濃度
インクジェットプリンター(商品名:BJF−850 キヤノン社製)を用いて、Bkインクでベタ印字した画像の画像濃度を、マクベス反射濃度計RD−918を用いて評価した。その結果、1.7以上のものを○、1.5〜1.7のものを△、1.5に満たないものを×とした。
【0029】
(3)表面光沢度
デジタル変角光沢計(スガ試験機社製)を用いて評価をおこなった。表面光沢度が測定角20°で20%以上のものを○、15〜20%のものを△、15%に満たないものを×とした。
【0030】
(4)塗膜強度
記録媒体の裏面が上になるように固定し、その上に黒色の紙を重ね合わせその上に100gの重りを載せ、その黒色紙で記録媒体の裏面をこすり、黒色紙の白化度合いをみた。ほとんど白化しないものを○、少し白化したものを△、著しく白化したものを×とした。
【0031】
実施例1
米国特許第4242271号に記載された方法に従ってアルミニウムアルコキシドを合成し、これを加水分解することによりアルミナコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを脱塩処理した後、酢酸を添加して解膠処理を行った。このコロイダルゾルを乾燥して得たアルミナ水和物をX線回折により測定したところ、擬ベーマイトであった。
【0032】
次に、このアルミナ水和物のコロイダルゾルを濃縮して15重量%の溶液を得た。一方、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)をイオン交換水に溶解して10重量%の溶液を得た。これらの2種の溶液を、アルミナ水和物とポリビニルアルコールの固形分が重量比で10:1になるように混合し、攪拌して分散させた後、ポリビニルアルコールの架橋剤としてホウ酸12重量部を添加して塗工液を得た。
【0033】
基材は、坪量150g/m2、ステキヒトサイズ度220秒、ベック平滑度360秒の木材パルプと填剤となからなるロール状の原紙(幅110cm、長さ1000m)を用いた。このロール状の原紙の表面に、ダイコーターにより上記の分散液を乾燥塗工量30g/m2となるように塗工し、乾燥させてインク受容層を形成した。
【0034】
次に、熱可塑性樹脂層として最低造膜温度70℃、平均粒子径60nmのアクリル酸エステル系共重合エマルジョンを固形分濃度が0.5重量%になるように調整し塗工液とした。
【0035】
この塗工液をワイヤーバーコーターにより、乾燥塗工重量0.5g/m2となるように、前記インク受容層上に形成した。このときの乾燥温度は、120℃になるように設定した。
【0036】
以上のようにして、表面側のインク受容層、熱可塑性樹脂層の2段階の塗工を行った後、このロールのインク受容層表面にリウエットキャストコーターを用いて、熱湯(80℃)を用いたリウエットキャスト処理を行い記録媒体ロールを得た。このロールからA4サイズの大きさに切り出して、サンプル1とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット用記録媒体の一例の断面形状を示した模式図。
【符号の説明】
1 基材
2 有機高分子化合物の混在比の小さい領域
3 有機高分子化合物の混在比の大きい領域
Claims (5)
- 基材に一層以上のインク受容層を有し、かつ該インク受容層の20°表面光沢度が20%以上であるインクジェット用記録媒体において、最表層のインク受容層が少なくともアルミナ水和物と有機高分子化合物が混在したもので、該インク受容層内のアルミナ水和物に対する有機高分子化合物の混在比が表面部と内部で異なることを特徴とするインクジェット用記録媒体。
- 前記インク受容層内のアルミナ水和物に対する有機高分子化合物の混在比が、内部より表面部が大きくなっている請求項1に記載の記録媒体。
- 前記インク受容層内のアルミナ水和物に対する有機高分子化合物の混在比が異なる領域が、0.5μm以下である請求項1に記載の記録媒体。
- インク受容層形成後、ラテックスを塗工することにより、有機高分子化合物の混在比が異なる領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体の製造方法。
- 前記ラテックスの平均粒子径が、50nm以上である請求項4に記載の製造方法。
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JP2003135322A JP2004338149A (ja) | 2003-05-14 | 2003-05-14 | 記録媒体及び記録媒体の製造方法 |
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