JP2004284017A - インクジェット画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】RC(レジンコーテッド)支持体上にインク吸収層を有し、且つ表層にポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有するインクジェット記録媒体に画像を記録した後、加熱処理することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット画像形成方法に関し、詳しくは表面のひび割れがなく、光沢が高く、インク吸収が速いインクジェット画像形成方法に関する。更に、長期保存での画像面の割れ発生に関して改良されたインクジェット画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット技術の進歩は目覚ましく、プリンター技術、インク技術、専用記録媒体技術が相俟って写真画質と呼ばれるレベルになってきている。画質の向上に伴い、インクジェット画像の保存性を従来の銀塩写真と比較するようになり、多くの染料インクにおいて、インクジェット画像の耐水性、色材の移動を伴う耐にじみ性の劣化、更に耐光性や酸化性ガス耐性の弱さといった色材の化学反応を伴う劣化が指摘されている。
【0003】
染料インク画像の保存性を改良するために多くの提案がされている。インクジェット記録媒体(単に、記録媒体ともいう)に係る改良としては、特公平2−31673号においては、記録媒体最表層に熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設けて記録後、熱可塑性有機高分子粒子を溶融皮膜化し、結果として保護膜を設け、耐水性、耐候性の改良及び画像の光沢付与を達成している。
【0004】
しかし、従来の最表層に熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設けた記録媒体には、以下の課題がある。第一には、定着処理により光沢付与はするものの、その光沢は銀塩写真に比べ不十分な点である。特に、顔料インクを用いた場合に顕著である。また、高速画像形成を目的に印字後、時間をおかずに加熱定着する場合も、画像欠陥が発生したりして画質が低下する。二つ目は、最表層に熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設けることによるインク吸収速度の低下により、カラーブリード、あるいはビーディングが発生し、画質低下を引き起こすことである。特に近年、高速プリント需要に対応すべくプリンターの高速化がなされており、画質劣化はより大きい問題になる。第三番目としては、光沢発現のために、熱可塑性樹脂を添加するが、これが記録媒体表面のひび割れを引き起こすことが挙げられる。熱可塑性樹脂はガラス転移点温度が低ければ、記録媒体の塗布乾燥時の温度で、溶融を開始することとなり、塗布膜中でバインダーとして機能することとなるが、印字後加熱圧処理を行う場合は、記録媒体の製造時、製造後の保存温度で熱可塑性樹脂が溶融しないために、ガラス転移点の高い樹脂を選択する必要がある。そのため、実質的なバインダーの減量となる。このため塗布膜強度の低下を引き起こし、ひび割れが発生するものと推定される。熱可塑性樹脂量を減量すればひび割れは軽減されるが、光沢の低減を招く。
【0005】
特開平7−117334号には、平均粒子径が0.1μm未満の無機微粒子及び重合度4000以上のポリビニルアルコール(PVA)からなる、インクジェット記録シートに関する技術が開示されている。確かにこの技術により、ひび割れ、光沢の改良効果が得られるが、ポリビニルアルコールの重合度の著しい上昇は、インクジェット記録シートを製造するための塗布液の著しい増粘を招き、塗布故障の原因となりやすい。
【0006】
特開平8−318671号において、吸水性バインダーポリマーの媒体中に粒径0.3μm以下の疎水性ポリマー粒子を積層する技術が開示されている。該公報における技術の狙いは、透明支持体を用いた透過性記録媒体の光透過率向上である。
【0007】
また、特開2000−211243号においては、比表面積、粒子径を規定し、バインダーを含有する水系分散体からなるIJコート材に関する技術が開示されている。該公報においては、染料インクでの耐水性、透明性を向上させることを目的としている。
【0008】
我々の検討では、上記公報記載の技術については下記の課題があることが分った。
【0009】
第1は光沢が不十分で、銀塩写真と比較すると見劣りする。第2はインク吸収速度が遅く、近年の高速プリンタや、更にプリントサービスなどの商用の高速プリンターでは、ビーディングやカラーブリードが発生し画質が大幅に劣化してしまう。第3に製造時の塗布乾燥工程でひび割れ故障が発生し、満足な製品が安定して、低コストで生産することが難しい。更に、第4として、画像を長期間にわたり保存すると、画像表面に割れが発生する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的はひび割れがなく、高光沢でインク吸収性に優れるインクジェット画像形成方法を提供することである。加えて、長期間の保存で画像表面に割れの生じない画像形成方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は下記構成により達成された。
【0012】
(1) RC(レジンコーテッド)支持体上にインク吸収層を有し、且つ表層にポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有するインクジェット記録媒体に画像を記録した後、加熱処理することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【0013】
(2) 前記ポリビニルアルコールの重合度が300以上、1500以下であることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット画像形成方法。
【0014】
(3) RC(レジンコーテッド)支持体上にインク吸収層を有し、且つ表層に重合度300〜1500のポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有するインクジェット記録媒体に画像を記録した後、加熱処理することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【0015】
(4) 前記ポリビニルアルコールの重合度が1500より大きく4500以下であることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット画像形成方法。
【0016】
(5) 前記インクジェット記録媒体に前記画像を記録した後、乾燥し、加熱処理することを特徴とする前記(4)に記載のインクジェット画像形成方法。
【0017】
(6) 前記インクジェット記録媒体に前記画像を記録した後、前記インクジェット記録媒体を加熱処理および5〜20MPaの圧力で加圧処理することを特徴とする前記(4)または(5)に記載のインクジェット画像形成方法。
【0018】
(7) RC支持体上にインク吸収層を有し、且つ表層に重合度が1500より大きく4500以下のポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有するインクジェット記録媒体に画像を記録した後、乾燥し、加熱処理することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【0019】
(8) RC支持体上にインク吸収層を有し、且つ表層に重合度が1500より大きく4500以下のポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有するインクジェット記録媒体に画像を記録した後、加熱、加圧処理することを特徴とするインクジェット画像形成方法であって、加圧が5〜20MPaであることを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【0020】
(9) 前記ポリビニルアルコールのケン化度が90モル%以下であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0021】
(10) 前記熱可塑性樹脂粒子のガラス転移点が40〜100℃であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0022】
(11) 前記の可塑性樹脂粒子の平均粒子径が300nm以下であることを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0023】
(12) 前記可塑性樹脂粒子の固形分付量が1〜10g/m2であることを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0024】
(13) 前記画像形成が顔料インクを用いて行われることを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0025】
(14) 表層に更に無機微粒子を含有することを特徴とする前記(1)〜(13)のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0026】
(15) 前記インクジェット記録媒体が一つの前記インク吸収層を有することを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0027】
(16) 前記インクジェット記録媒体が二つの前記インク吸収層を有することを特徴とする前記(1)〜(15)のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0028】
本発明者らは、表層に熱可塑性樹脂粒子を含有する記録媒体に記録後、加熱処理する画像形成方法について鋭意検討した。まず、種々の熱可塑性樹脂粒子を検討したところ、ポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を用いること、特に重合度300〜1500のポリビニルアルコールを用いた場合に、製造時のひび故障が軽減され、且つ高い光沢が得られることを見出した。また、通常高い光沢が得られにくい顔料インクにおいても、高い光沢が得られることを見出し、本発明に至った。これらの特性は、ポリビニルアルコールのケン価度が90モル%以下であるとき、あるいはガラス転位点(Tg)40〜100℃であるとき、また平均粒子径が300nm以下である時に、一層大きな効果を発現することを見出した。
【0029】
更に、熱可塑性樹脂粒子の固形分付き量が1〜10g/m2の場合、充分に高い光沢を得ること、さらにこの時にインク吸収性に優れていることを見出した。また、表層に無機微粒子を加えることで、インク吸収速度が特に大幅に向上することを見出した。
【0030】
更に表層のポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子のうち、ポリビニルアルコールの重合度が1500より大きく4500以下であるポリビニルアルコールを用いて合成した樹脂粒子を用いると、製造時のひび故障の大幅な軽減効果と、長期保存での画像割れ発生を防ぐ効果があることを見出した。
【0031】
またこの時、加熱処理およびその前条件について詳細に検討したところ特定の条件、例えば、画像を記録した後、乾燥し、加熱処理すること、あるいは画像を記録した後、加熱、加圧処理する際に、加圧を5〜20MPaで行うことにより、より高い光沢が得られることを見出した。
【0032】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の記録媒体について説明する。まず、熱可塑性樹脂粒子を含有する表層について説明する。
【0033】
表層にはポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有する。
【0034】
本発明に係る熱可塑性微粒子としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩等の微粒子が挙げられる。
【0035】
中でも、ポリアクリルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、SBRラテックスが好ましい。ポリアクリルエステル共重合体が最も好ましい。また熱可塑性微粒子モノマー組成及び粒径、重合度が違う複数の重合体を混合して用いてもよい。
【0036】
本発明の表層に含有される熱可塑性微粒子の選択の基準としては、ガラス転移点Tgが挙げられる。Tgが極端に低い場合には、例えば記録媒体製造時の塗布乾燥温度が既にTgより高く、インク溶媒が透過するための熱可塑性微粒子の空隙が消失してしまう。また、Tgが極端に高い場合には、インクによるインクジェット記録後、溶融製膜定着するために高温での定着操作が必要となり、装置上の負荷及び支持体の熱安定性等が問題となる。従って、本発明の表層に含有される熱可塑性微粒子のTgは、40〜100℃であることが好ましい。また、最低造膜温度(MFT)としては、40〜100℃のものが好ましい。
【0037】
また、熱可塑性微粒子の平均粒子径は300nm以下であり、下限は特にないが、80nm程度以上であることが、製造方法や取り扱いの点から好ましい。
【0038】
本発明に係る熱可塑性微粒子は、環境適性の観点からは水系に分散されたものが好ましく、特に乳化重合により得られた水性エマルジョンが好ましい。この際、乳化重合剤としてポリニビニルアルコールを用いることが、本発明の効果を得るためには必要だが、乳化力を制御するために、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤を併用してもよい。
【0039】
1つの実施態様ではポリビニルアルコールの重合度が300〜1500であることが好ましく、更に好ましくは重合度500〜1300である。
【0040】
別の実施態様としては、重合度が1500より大きく4500以下であるポリビニルアルコールが乳化重合用保護コロイドとして用いられる。製造時のヒビ故障減少及び、長期保存での画像割れの観点からはより高重合の方が好ましく、2500以上4500以下が特に好ましい。インク吸収速度の観点からは重合度が1500より大きく2500までが好ましい。
【0041】
また、ポリビニルアルコールのケン化度は90モル%以下であり、その下限は特に限定はないが20モル%以上である。用いる熱可塑性微粒子は臭気および安全性の観点から、残存するモノマー成分が少ない方が好ましく、重合体の固形分に対して3質量%以下が好ましく、更に1質量%以下が好ましく、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【0042】
この熱可塑性樹脂微粒子は、ポリビニルアルコールの存在下で乳化重合を行うことによって得られる。ポリビニルアルコールは熱可塑性樹脂微粒子を形成するモノマー、重合反応の前に必要に応じて溶剤を溶解しておくことが好ましい。ポリビニルアルコールは重合反応においては、少なくとも保護コロイドとして機能している。重合反応において、反応液の粘度の不要な上昇を抑え、生成する樹脂粒子を安定化している。更に確認はされていないが、重合反応の結果として熱可塑性樹脂微粒子の内部及び表面に、一部が取り込まれていると考えられる。ポリビニルアルコールの存在下で乳化重合された熱可塑性樹脂微粒子は、ポリビニルアルコールを用いないで重合された微粒子と比べると、このように化学的、物理的な性質が異なる。このため、これを表層に含むインクジェット記録媒体が、画像形成後、加熱または更に加圧処理されたとき、特異な働きをすると考えられる。
【0043】
用いられるポリビニルアルコールは、モノマー成分の1〜20%、好ましくは3〜15%で用いることができる。保護コロイドは重合開始前に共存させ、撹拌しておくのが好ましい。本発明ではラジカル重合にてエマルジョンを合成するのが好ましく、このとき通常用いられる過硫酸塩などの過酸化物あるいはアゾ化合物を用いることができ、必要に応じて連鎖移動剤を用いることもできる。
【0044】
ポリビニルアルコールを保護コロイドとして用いて重合した本発明のエマルジョン粒子表面には、ポリビニルアルコールの親水性部分が多く存在し、分散安定性に寄与している。その効果は以下のように考えられる。
【0045】
エマルジョン表面の親水性部分が水素結合により3次元で結合し、比較的強固な膜を形成するため、通常の界面活性剤を用いたエマルジョンに比べひび割れ発生が少ない。更に好ましい形態としては、水溶性バインダー及びシリカなどの無機微粒子との結合あるいは相互作用により、より強固な膜が形成され、ひび割れ発生が少なくなる。この際、ポリビニルアルコールの重合度を上げることが特に好ましい。
【0046】
このようにして、強固で、均一性が高く、且つ平滑な膜が形成でき、高い光沢を得ることができる。これはエマルジョンが微粒子で塗布液の均一性が高いためで、これらはポリビニルアルコールを乳化重合に用いたことに起因すると考えている。更に、通常用いる水系インクとの相溶性も高く、インク吸収性の観点からも好ましく、結果として高い光沢が得られる。加えて、本発明の実施態様では加熱処理を行うが、加熱処理時での表面平滑化処理に際して、エマルジョンを含む膜の変型自由度が大きく、且つ好ましく用いられる顔料インク中の顔料粒子との親和性も高く、顔料粒子を効果的に表面と膜に取り込み、結果としてこれまでにない高い光沢が得られる。
【0047】
熱可塑性樹脂粒子を含有する表層としては、水溶性バインダーを含有することが好ましい。水溶性バインダーとしては、熱可塑性樹脂粒子の1〜10%の範囲で用いることが好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は二種以上併用することも可能である。
【0048】
本発明で好ましく用いられるバインダーは、ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0049】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0050】
更に、表層にはバインダーの硬膜剤を含有することが好ましい。硬膜剤はインク吸収層中のバインダー間、もしくはバインダーとインク吸収層中の熱可塑性微粒子と反応し、架橋することを目的に添加することができる。
【0051】
硬膜剤は、バインダー及び熱可塑性微粒子の種類に応じて適宜選択して用いられる。硬膜剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ほう酸およびその塩、ほう砂、アルミ明礬等が挙げられる。特に好ましいバインダーとしてポリビニルアルコールおよびまたはカチオン変性ポリビニルアルコールを使用する場合には、ほう酸およびその塩又はエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤を使用するのが好ましい。
【0052】
最も好ましいのは、ほう酸およびその塩から選ばれる硬膜剤である。ほう酸またはその塩としては、ほう素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことを示し、具体的にはオルトほう酸、二ほう酸、メタほう酸、四ほう酸、五ほう酸、八ほう酸およびそれらの塩が含まれる。上記硬膜剤の使用量は水溶性樹脂の種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類や水溶性樹脂に対する比率等により変化するが、通常バインダー1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜300mgである。上記硬膜剤は、表層を形成する塗布液を塗布する際に、該塗布液中に添加してもよく、あるいは予め硬膜剤を含有する塗布液を塗布してある支持体上に、本発明のインク吸収層形成用水溶性塗布液を塗布してもよい。
【0053】
また、表層には画質向上の観点からカチオン性の水溶性ポリマーを含有することが好ましい。特に分子内に第四級アンモニウム塩を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有してもよく、インクジェット記録媒体1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0054】
また、熱可塑性樹脂を含有する表層としては、インク吸収速度向上の観点から無機微粒子を混合することが特に好ましい。
【0055】
混合する無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0056】
無機微粒子としては、シリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましく、シリカがより好ましい。
【0057】
シリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられ、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカであり、中でも気相法により合成された微粒子シリカは高い空隙率が得られる。また、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。
【0058】
無機微粒子は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機微粒子の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0059】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均粒径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーなどにより吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することができる。
【0060】
このとき、表層の熱可塑性樹脂と無機微粒子の固形分質量比としては、2/8〜8/2であることが好ましく、より好ましくは3/7〜7/3であり、更に好ましくは4/6〜6/4である。また、このとき表層中の全固形分に対する無機微粒子の比率が30%から70%であることが、インク吸収性の観点から特に好ましい。
【0061】
本発明の記録媒体は、熱可塑性樹脂を含有する表層と支持体の間にインク吸収層を設けることが好ましい。インク吸収層としては、大きく別けて、膨潤型と空隙型とがありどちらも用いることができる。
【0062】
膨潤型は、親水性バインダーとして、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用して塗布しこれをインク吸収層としたものを用いることができる。
【0063】
空隙型は、微粒子及び親水性バインダーを混合して塗布したもので、特に光沢性のあるものが好ましい。微粒子としては、アルミナもしくはシリカが好ましく、特に、粒径0.1μm以下のシリカを用いたものが好ましい。親水性バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用したものが好ましい。
【0064】
連続、あるいは高速プリントに適性を持たせるには、記録媒体のインク吸収速度が速い方が適しており、この点から、空隙型を特に好ましく用いることができる。
【0065】
以下、空隙型インク吸収層(空隙層ともいう)について更に詳細に説明する。
空隙層は、主に親水性バインダーと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られている。例えば、2種以上のポリマーを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマーを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子および親水性または疎水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録媒体を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬して固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダーに対して概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を作製する方法等が知られている。
【0066】
本発明においては、空隙層に、平均粒径が100nm以下の各種無機固体微粒子を含有させることによって形成されることが特に好ましい。
【0067】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、前述の表層で用いられる無機微粒子と同様のものを用いることができる。
【0068】
また、親水性バインダーとしては、前述の表層で記載した水溶性バインダーと同様の化合物を挙げることができる。
【0069】
インク吸収層に用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、無機微粒子の種類、水溶性樹脂の種類に大きく依存するが、一般にはインクジェット記録媒体1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0070】
また、インク吸収層に用いられる無機微粒子と水溶性樹脂の比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。
【0071】
インク吸収層は、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有してもよく、インクジェット記録媒体1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0072】
空隙層において、空隙の総量(空隙容量)は記録媒体1m2当り20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0073】
空隙型の他のタイプとして、無機微粒子を用いてインク溶媒吸収層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョンと水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ポリビニルアルコールとを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク溶媒吸収層を形成させてもよい。この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、さらにエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。
【0074】
上記ポリウレタン樹脂を用いたインク溶媒吸収層は、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0075】
インク吸収層の厚さは表層1層のみのときは20〜50μmである。表層とインク吸収層を有するときは、インク吸収層は20〜50μm、好ましくは20〜40μmであり、この場合、表層は2〜15μm、好ましくは5〜10μmである。
【0076】
インク吸収層には、硬膜剤、カチオン性水溶性ポリマーを含んでもよい。これらは、表層について述べたのと同様な化合物が用いられる。
【0077】
本発明のRC(レジンコーテッド)支持体は、原紙支持体の両面をプラスチック樹脂フィルム、特にポリエチレンでラミネートした紙支持体である。このポリエチレンでラミネートした紙支持体(RC)について以下に説明する。
【0078】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えて、ポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及び/またはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0079】
上記パルプには、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、四級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0080】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また叩解後の繊維長はJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が、30〜70質量%であることが好ましい。なお、42メッシュ残分の質量%は、20質量%以下であることが好ましい。原紙の坪量は30〜250g/m2が好ましく、特に50〜200g/m2が好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は、0.7〜1.2(JIS−P−8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるサイズ剤と同様のサイズ剤を使用できる。原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0081】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)やポリプロピレン等も一部使用することができる。ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、またポリエチレンを原紙表面上に溶融、押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って、通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。原紙の表裏のポリエチレンの使用量は、インク溶媒吸収層やバック層を設けた後で、低湿および高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、通常インク溶媒吸収層側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲である。
【0082】
更に上記ポリエチレンで被覆した紙支持体は、以下の特性を有していることが好ましい。
【0083】
1.引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で縦方向が2〜30kg、横方向が1〜20kgであることが好ましい
2.引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で縦方向が10〜200g、横方向が20〜200gが好ましい
3.圧縮弾性率≧98.1MPa
4.不透明度:JIS−P−8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい
5.白さ:JIS−Z−8729で規定されるL*、a*、b*において、L*=80〜95、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2であることが好ましい
6.クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm2/100である支持体が好ましい
7.原紙中の水分:中紙に対して4〜100質量%が好ましい。
【0084】
本発明の記録媒体の表層、インク吸収層、下引き層など必要に応じて適宜設けられる各種の構成層を支持体上に塗布する方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができる。好ましい方法としては、各層を構成する塗布液を支持体上に塗布して乾燥して記録媒体を得る方法が挙げられる。
【0085】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。また、本発明のインクジェット記録媒体の塗布に際して、塗布性を向上させるために増粘剤を用いてもよい。
【0086】
画像形成に用いるインクとしては、水系インク組成物、油系インク組成物、固体(相変化)インク組成物等を用いることができる。水系インク組成物(例えば、インク総質量あたり10質量%以上の水を含有する水系インクジェット記録液等)を、特に好ましく用いることができる。別の観点から、インクとしては染料インク、顔料インク、分散インク等の各種インクを用いることができ、特に画像保存性の良好な顔料インクを用いることが好ましい。
【0087】
顔料インクの着色成分である顔料は記録媒体の表層で捉えられ、画像を形成する。その後、加熱、必要に応じて更に加圧されることにより、熱可塑性樹脂粒子を含む表層は表面状態が変化し、画像の堅牢度を高め、更に好ましい表面の光沢を与える。
【0088】
顔料としては、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料および、カーボンブラックを好ましく用いることができる。
【0089】
不溶性顔料としては、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
【0090】
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。中でも、C.I.ピグメントレッド122が好ましい。
【0091】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。中でも、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー128が好ましい。
【0092】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:
3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。中でもC.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。
【0093】
これらの顔料は、必要に応じて顔料分散剤を使用してもよく、使用できる顔料分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩をあげることができる。
【0094】
顔料の分散方法としては、その方法に特に制限はないが、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0095】
本発明に係る顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい方法である。
【0096】
顔料インク中の顔料の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性などを考慮して選択するが、加えて本発明のインクジェット顔料画像の
記録方法では、光沢向上、質感向上の観点からも粒径を選択するのが好ましい。本発明において、光沢向上、質感向上する理由は定かでは無いが、画像において顔料は熱可塑性微粒子が溶融した皮膜中に分散された状態にあることと関連していると推測している。高速処理を目的とすると、短時間で熱可塑性微粒子を溶融皮膜化し、更に顔料を充分に皮膜中に分散しなければならない。このとき顔料の表面積は大きく影響し、それゆえ平均粒径に最適領域が存在すると推測している。
【0097】
本発明に用いる顔料インクに含まれる顔料粒子の平均粒径は、300nm以下が好ましく、更に好ましくは30〜200nmであり、特に好ましくは30〜150nmである。
【0098】
顔料インクとして好ましい形態である水系インク組成物は、水溶性有機溶媒を併用することが好ましい。
【0099】
水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。好ましい水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類が挙げられる。さらに、多価アルコールと多価アルコールエーテルを併用することが特に好ましい。
【0100】
水溶性有機溶媒は、単独もしくは複数を併用しても良い。水溶性有機溶媒のインク中の添加量としては、総量で5〜60質量%であり、好ましくは10〜35質量%である。
【0101】
本発明に用いる顔料インクは、アセチレン系界面活性剤を含有することが好ましい。該アセチレン系界面活性剤としては、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【0102】
また、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物としては、Air Products社製サーフィノール82、サーフィノール104、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485等を好ましく用いられる。
【0103】
インク組成物は、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、熱可塑性微粒子、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜添加することもできる。
【0104】
インク組成物は、その飛翔時の表面張力として20mN/m以上が好ましく、インク吸収速度が大きく、従って画質の劣化がなく、加熱処理後に光沢の高い画像が得られ、且つ加熱操作迄の或いはそのものによって膜はがれ等の不具合の起こらないために、少なくとも1種のインクの表面張力が25〜50mN/mであることが好ましく、特に30〜45mN/mであることが、より好ましい。
【0105】
インク中の顔料固形分濃度は、0.1〜10%の範囲で選択でき、写真画像を得るには、顔料固形分濃度を各々変化した、いわゆる濃淡インクを用いることが好ましく、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの濃淡インクを各々用いることは特に好ましい。また、必要に応じて、赤、緑、青等の特色インクを用いることも、色再現性上好ましい。
【0106】
また、粒状感の向上させ階調性豊かで、高光沢な画像を得るために、記録インクセットのうち、少なくとも1色のインクは色材濃度の異なる2種以上のインクを用いて記録することも好ましい。特に、Y、M、C、Bkのうち好ましくは2色以上、より好ましくは3色以上について、色材濃度の異なる2種以上のインクを用いることが好ましく、このとき両者の色材濃度比(淡インク/濃インク)は0.5〜0.1が好ましい。更に、インク中に熱可塑性樹脂微粒子を含有してもよく、その際、濃インクと淡インクを用いて、滑らかな階調性を表現するとき、濃インクと淡インクが混在して印字され、広い濃度域で光沢性や耐擦過性を保持するには、濃インク中の顔料の含有量をP質量%、熱可塑性樹脂微粒子の含有量B質量%とし、淡インク中の顔料の含有量をp質量%、熱可塑性樹脂微粒子の含有量b質量%であるとき、P/B≧p/bであることが好ましい。
【0107】
又、インクセットの色剤濃度の異なるインク組成物において、濃インクの表面張力(γa)と淡インクの表面張力(γb)の比が、1.2≦γa/γb≦0.8であることが好ましく、更に好ましくは、1.1≦γa/γb≦0.9である。広い濃度範囲にわたって滑らかな階調性を表現し、かつ広い濃度域で光沢性や耐擦過性を保持するには、濃度の異なるインクの表面張力がなるべく同じであるのが好ましい。グリーンインク中に含まれる顔料の具体例としては、C.I.ピグメントグリーン7またはC.I.ピグメントグリーン36が挙げられる。
【0108】
また、さらに光沢性の高い画像、ざらつき感のない画像および耐擦過性に優れた画像を得るため、記録インクには熱可塑性樹脂を含有させてもよい。インクに添加する熱可塑性微粒子については、上記の記録媒体表層に添加することのできる熱可塑性樹脂あるいは微粒子の説明で記載した種類を利用できる。特に、インクに添加しても増粘、沈澱等の起こらないものを適用するのが好ましいこのとき、インク保存安定性や、上記添加のための目的を十分に発揮するように、熱可塑性樹脂微粒子の平均粒径が10〜200nmに調整することが好ましく、インク中の顔料の平均粒径の0.2〜2倍の範囲で選択すると安定性の観点で更に好ましい。また、添加する熱可塑性微粒子は、50〜200℃の範囲で溶融、軟化するものが好ましい。特に、黒インクに熱可塑性樹脂粒子を添加すると、指紋付着性、最大濃度高上の観点から特に好ましい。
【0109】
本発明のインクジェット画像を形成するには、市販されているプリンターのように記録媒体収納部、搬送部、インクカートリッジ、インクジェットプリントヘッドを有するものであれば特に制約はないが、少なくともロール状の記録媒体収納部、搬送部、インクジェットプリントヘッド、切断部、及び加圧部、必要に応じて加熱部、記録プリント収納部から構成される一連のプリンターセットであると、インクジェット写真を商用利用する場合に有用である。
【0110】
記録ヘッドは、ピエゾ方式、サーマル方式、コンティニュアス方式のいずれでもよい。インクに樹脂を添加する場合は、吐出安定性の観点からピエゾ方式が好ましく、高速プリンタを小型装置で実現するには、ヘッドのノズル集積度を高められるサーマル方式が好ましく、インク組成、プリンタ設計の仕様に応じて選択することができる。
【0111】
本発明において、インクジェット記録媒体にインクをインクジェット方式で像様に吐出し、付着した画像記録後の加熱方法としては、ヒートローラ等による加熱、ヒータによる加熱空気を送風する方法のいずれも用いることができる。また加熱温度は、記録媒体上の表層に含有される熱可塑性樹脂のガラス転移点Tg以上の温度であることが必要である。ガラス転移点Tgは採用する熱可塑性樹脂の固有の値であり、樹脂種によって加熱温度は異なる。加熱温度の上限としては、装置上の負荷、支持体の熱安定性の観点から通常150℃程度である。
【0112】
ヒートローラのうち、画像面に接する側のローラの平均面粗さ(ローラの平均面粗さは、例えばWYCO社製 RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システムを用いて測定することができる。同測定装置を用いると、ローラの曲率を補正した上で平均面粗さを測定することができ好ましい。)は、本発明の効果を得る上から100nm以下である。これは画像記録のために用いる色材に顔料インクを使う場合に特に好ましい条件となる。好ましくは20〜90nmであり、より好ましくは40〜70nmである。
【0113】
本発明で用いることができる加熱加圧定着方法としては、特に制限はないが、一対の加熱加圧ローラ、あるいは一対の加熱加圧ベルト、あるいは画像部に接触する部材はベルト、画像部の裏面に接する部分はローラというようにベルト/ローラからなる加熱加圧装置を用いることが好ましい。
【0114】
本発明の加熱加圧工程に用いられるローラは、金属ローラ又はシリコンゴムローラにより構成されていることが好ましい。そのうち、金属ローラは、鉄やアルミニウムのような一般的な素材を用いればよく、熱耐久性を高める目的でテトラフルオロエチレンやポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等により被覆されていてもよいし、定着後の平滑感を高めるために、鏡面仕上げされていてもよい。更に、定着後の光沢を向上させるために、塗設後加熱による硬化により皮膜形成させる硬化型シリコンと塗設することが好ましい。対面する2本のローラは、ローラ間に圧力を加えることによってローラを変形させいわゆるニップを形成させる。ニップ幅としては、通常1〜20mm、好ましくは1.5〜7mmである。また、この2本のローラ間に発生させる圧力としては、0.5〜10MPaが好ましい。これは加圧により皮膜化が促進されるためである。
【0115】
重合度が1500より大きく4500以下であるポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有する表層の場合は、圧力としては、充分な光沢を得るのには5MPa以上が望ましい。但し、過度の圧力をかけると支持体が変型し、大きな周期の凸凹ができるため20MPa以下である必要がある。好ましくは8〜15MPaがよい。
【0116】
本発明の加熱加圧工程に用いられるベルトは、シームレスのニッケル電鍮が好ましく、基材の厚さは10〜100μmが好ましい。また、基材の材料としては、ニッケル以外にもアルミニウム、鉄、ポリエチレン等を用いることができる。基材がローラ、ベルトの何れによらず、シリコーン樹脂層の厚さとしては、1〜50μmであることが好ましく、更に好ましくは10〜30μmである。
【0117】
加熱前の乾燥について説明する。本発明において、加熱処理前に記録後の画像を乾燥することは高い光沢を得る上で好ましい。特に、本発明の表層の第2の実施態様である重合度が1500より大きく4500以下であるポリビニルアルコールを、乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有する表層の場合は、高い光沢を得るために加熱前の乾燥を行うことが望ましい。
【0118】
前乾燥方法については、ファン等をプリント部と加熱定着部の間に設置し送風すること、ハロゲンランプ等を同ケ所に設置し加熱すること、及びこれらを組み合わせて用いることができる。この乾燥工程では、記録媒体からインク中の蒸発成分を適量蒸発させることが目的であり、例えば20ml/m2のインクが吐出された比較的インク量の多い画像においては、1〜10g/m2が蒸発する程度の乾燥が必要である。
【0119】
図1に、本発明で用いることのできる加熱ローラを有するインクジェット記録装置の一例を示す。また、図2には、本発明で用いることのできるベルト型加熱定着ローラーを有するインクジェット記録装置の他の一例を示す。
【0120】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0121】
実施例1
〔インクジェット記録媒体の作製〕
以下に示す手順に従って、インクジェット記録媒体を作製した。
【0122】
(シリカ分散液−1の調製)
1次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(トクヤマ社製:QS−20)125kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用いて、硝酸でpHを2.5に調整した620Lの純水中に室温で吸引分散した後、純水で全量を694Lに仕上げて、シリカ分散液−1を調製した。
【0123】
(シリカ分散液−2の調製)
下記カチオン性ポリマー(P−1)1.14kg、エタノール2.2L、n−プロパノール1.5Lを含む水溶液(pH=2.3)18Lに、上記調製したシリカ分散液−1の69.4Lを攪拌しながら添加し、次いでホウ酸260gとホウ砂230gを含む水溶液7.0Lを添加し、消泡剤SN381(サンノプコ株式会社製)を1g添加した。この混合液を、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で97Lに仕上げて、シリカ分散液−2を調製した。
【0124】
【化1】
【0125】
(下層塗布液の調製)
40℃で攪拌しながら、前記調製したシリカ分散液−2の600mlに、以下の添加剤を順次混合して、下層塗布液を調製した。
【0126】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA203)の10%水溶
液 6ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の7%水溶液
185ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0127】
(表層塗布液の調製)
表1に記載の重合度が異なるポリビニルアルコールを用いて、乳化重合させることによって得られたメチルメタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体(ガラス転移点80℃、平均粒径150nm)分散液及び前記シリカ分散液−2を用いて、熱可塑性樹脂からなる表層塗布液を、熱可塑性微粒子とシリカの固形分質量比が40:60になるように調製した。
【0128】
〔記録媒体101〜107の作製〕
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(RC原紙:厚み220μmでインク吸収面のポリエチレン中にはポリエチレンに対して13質量%のアナターゼ型酸化チタンを含有)に支持体側から順に、第1層として前記下層塗布液を湿潤膜厚が200μmとなるように、第2層として前記表層塗布液を熱可塑性樹脂の固形分質量が3.0g/m2となるように塗布し、乾燥を行った。表1に記載の条件で試料101〜107を作製した。
【0129】
〔記録媒体108〜110の作製〕
記録媒体101〜107で用いた支持体を、キャストコート紙(厚さ180μm)に変更し、表1に記載の条件に変更した以外は、同様にして記録媒体108〜110を作製した。
【0130】
〔記録媒体111〜113の作製〕
記録媒体101〜107で用いた支持体を、吸水性支持体(コート紙用中紙 厚さ165μm、紙支持体ともいう)に変更し、表1に記載の条件に変更した以外は、同様にして記録媒体111〜113を作製した。
【0131】
〔記録媒体114、115の作製〕
記録媒体101〜107で用いた支持体を、合成紙に変更し、表1に記載の条件に変更した以外は、同様にして記録媒体114、115を作製した。
【0132】
〔インクの作製〕
〈イエロー顔料分散体1の調製〉
C.I.ピグメントイエロー74 20質量%
スチレン−アクリル酸共重合体(分子量10,000、酸価120)
12質量%
ジエチレングリコール 15質量%
イオン交換水 53質量%
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、イエロー顔料分散体1を得た。得られたイエロー顔料の平均粒径は112nmであった。
【0133】
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、マゼンタ顔料分散体1を得た。得られたマゼンタ顔料の平均粒径は105nmであった。
【0134】
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、シアン顔料分散体1を得た。得られたシアン顔料の平均粒径は87nmであった。
【0135】
〈ブラック顔料分散体1の調製〉
カーボンブラック 20質量%
スチレン−アクリル酸共重合体(分子量7,000、酸価150)10質量%
グリセリン 10質量%
イオン交換水 60質量%
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、ブラック顔料分散体1を得た。得られたブラック顔料の平均粒径は75nmであった。
【0136】
〔イエロー濃インク1の作製〕
イエロー顔料分散体1 15質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 54.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるイエロー濃インク1を作製した。該インク中の顔料の平均粒径は120nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0137】
〔イエロー淡インク1の作製〕
イエロー顔料分散体1 3質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 61.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるイエロー淡インク1を作製した。該インク中の顔料の平均粒径は118nmであり、表面張力γは37mN/mであった。
【0138】
〔マゼンタ濃インク1の作製〕
マゼンタ顔料分散体1 15質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 54.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるマゼンタ濃インク1を作製した。該インク中の顔料の平均粒径は113nmであり、表面張力γは35mN/mであった。
【0139】
〔マゼンタ淡インク1の作製〕
マゼンタ顔料分散体1 3質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 61.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるマゼンタ淡インク1を作製した。該インク中の顔料の平均粒径は110nmであり、表面張力γは37mN/mであった。
【0140】
〔シアン濃インク1の作製〕
シアン顔料分散体1 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 59.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるシアン濃インク1を作製した。該インク中の顔料の平均粒径は95nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0141】
〔シアン淡インク1の作製〕
シアン顔料分散体1 2質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.2質量%
イオン交換水 62.8質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるシアン淡インク1を作製した。該インク中の顔料の平均粒径は92nmであり、表面張力γは33mN/mであった。
【0142】
〔ブラック濃インク1の作製〕
ブラック顔料分散体1 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 59.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるブラック濃インク1を作製した。該インク中の顔料の平均粒径は85nmであり、表面張力γは35mN/mであった。
【0143】
〔ブラック淡インク1の作製〕
ブラック顔料分散体1 2質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 62.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるブラック淡インク1を作製した。該インク中の顔料の平均粒径は89nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0144】
〔インクジェット画像の作製〕
なお、インクジェットプリンタは8色対応ヘッドを用いて、図2のプリンターを用いて各々の画像形成を行った。印字画像はイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各ウエッジ画像、縦及び横に1cm巾でY、M、C、ブルー(B)、グリーン(G)、レッド(R)、Bkの帯を各々描いた格子状テストチャート、及び人物ポートレート像をプリントした。
【0145】
また画像形成後の加熱処理は、ベルト型定着ローラ表面温度120℃にて処理し、表層の熱可塑性樹脂を溶融皮膜化し、画像形成した。
【0146】
図2は、実施例で使用したベルト型加熱定着ローラーを有するインクジェット記録装置を示す概略構成図である。
【0147】
図2において、8色対応ヘッドにインク(Y、M、C、Bk)をセットし、ロール幅12.7cmロール状の記録媒体をセットし、記録媒体は8.9cm毎に内蔵カッターにて切断した。このようにしてL版相当のプリントを連続して作成した。
【0148】
上記の如く作製した記録媒体101〜117について、以下の基準に従い、ひび割れ、光沢、カラーブリード(インク吸収速度)を評価した。
【0149】
《ひび割れの評価》
10センチメートル四方の記録媒体中に見られるひび割れ数をカウントした。
【0150】
◎:ひび割れなし
○:ひび割れ3個以下(実用上問題なし)
△:ひび割れ10個以下(実用上問題)
×:ひび割れ11個以上
《光沢の評価》
◎:銀塩写真を上回る非常に高い光沢
○:銀塩写真同等の光沢感
△:銀塩写真未満の光沢
×:著しく低光沢
《カラーブリードの評価》
インク吸収速度に関係するカラーブリードの評価を行った。評価は印字したY、M、C、B、G、R、Bkの帯状テストチャートについて、境界における色にじみの発生の有無を目視評価し、以下に示す基準で評価を実施した。
【0151】
◎:全ての色の境界部でほとんど色にじみの発生なし
○:1、2色でわずかに境界の色にじみがみられるが実用上問題なし
△:数色で境界での色にじみが発生。
【0152】
×:数色でかなり激しい境界色にじみが発生
【0153】
【表1】
【0154】
表1より、支持体を本発明のRC支持体とする記録媒体においては、熱処理なしの比較は明らかに光沢が著しく劣り、またポリビニルアルコール重合度が本発明外の比較は光沢、ひび割れで本発明に劣る。また支持体を本発明外とする試料108〜115も総合的に本発明試料に劣ることは明らかである。
【0155】
実施例2
実施例1の記録媒体103において、熱可塑性樹脂付量を表2のようにした以外は、同様にして記録媒体201〜205を作製し、実施例1と同様の評価を実施した。
【0156】
【表2】
【0157】
いずれの試料も実用上問題ないレベルであるが、総合的には202、203の試料が優れていることは明らかである。
【0158】
実施例3
実施例1の記録媒体103において、ポリビニルアルコール重合度が1000であり、且つポリビニルアルコールケン化度を表3に記載の如くにした以外は、同様にして記録媒体301〜305を作製した。
【0159】
【表3】
【0160】
いずれの試料も実用上問題ないレベルであるが、総合的には303、304、305の試料が優れていることは明らかである。
【0161】
実施例4
実施例1の記録媒体103において、表層の熱可塑性樹脂粒子の合成時に用いるポリビニルアルコールの重合度を表4のように代える以外は、同様にして記録媒体401〜410を作製した。なお、塗布乾燥条件は以下の方法で行った。
【0162】
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚みが220μmでインク吸収層面のポリエチレン中にはポリエチレンに対して13質量%のアナターゼ型酸化チタン含有)に、支持体側から第1層として実施例1の下層塗布液を、その上に第2層目として実施例1の表層塗布液をスライドホッパーで同時多層塗布した後、乾燥した。なお、塗布液は40℃に加温して塗布し、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒冷却した後、25℃の風(相対湿度15%)で60秒間、50℃の風(相対湿度が25%)で60秒間、55℃の風(相対湿度が25%)で60秒間順次乾燥し、20〜25℃、相対湿度が40〜60℃の雰囲気下で2分間調湿して試料を巻き取った。
【0163】
画像作成は、試料103と同様に行った。但し、図2のプリンタを用いて、61のカッター手前に、乾燥機(送風ファン+ヒーター)を付けたこと、及び加熱処理の圧力を変えた以外は、同じ方法で画像を作成した。
【0164】
図2で用いた加熱ベルト44の製造方法
ベルト部材としては厚さ40μmのニッケル電鍮を用いて、以下に示す方法で離型性層を付与した。
【0165】
(離型性層の付与)
1.離型性層塗布液の調製
離型性層塗布液KS830E(信越化学工業(株)製) 500g
硬化用触媒CAT−PL−50T(信越化学工業(株)製) 5ml
トルエン 1500ml
上記の素材を混合攪拌し、離型性層塗布液を調製した。
【0166】
2.離型性層の塗設
得られた離型性層塗布液を内径15cm×高さ50cmの円筒形ビーカーに2リットル入れ、市販のディップ型塗布機に金属ローラをセットし、金属ローラを降下させて、ビーカー中に浸し、引き上げ速度を毎秒15mmに設定して塗布を行った。室温で5分放置後、100℃のオーブンで1時間加熱し、離型性層を塗設した。
【0167】
《長期保存での割れの評価》
上記形成した各画像を、40℃、80%RHの環境下で1日放置すること、25℃、50%RHの環境下で3日放置することをくり返し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのベタ画像表面を観察し、表面に割れが発生する日数を測定し、各色の平均日数を長期保存での割れ評価とした。
【0168】
△:計15日以内に割れる
○:計16日から100日以内に割れる
◎:計200日まで割れない
【0169】
【表4】
【0170】
表4より本発明の試料401〜409は総合的に優れた評価結果である。
【0171】
【発明の効果】
本発明によって、ひび割れ、光沢、カラーブリード(インク吸収速度)が改良され、且つ長期保存での画像面の割れ発生に関して改良されたインクジェット画像を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられる加熱ローラーを有するインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図。
【図2】本発明で用いられるベルト型加熱定着ローラーを有するインクジェット記録装置を示す概略構成図。
【符号の説明】
1 記録媒体
1a たるみ部
2 記録媒体の搬送手段
21 搬送ローラー対
3 記録ヘッド
34 記録媒体保持部
4 加熱加圧手段
41 加熱ローラー
42 圧着ローラー
43 発熱体
44 加熱ベルト
45 下部ベルト
46 従動ローラー
5 温度センサ
6 記録媒体の切断手段
61、62 カッタ
7 たるみ形成手段
71 第1のローラー対
72 第2のローラー対
Claims (16)
- RC(レジンコーテッド)支持体上にインク吸収層を有し、且つ表層にポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有するインクジェット記録媒体に画像を記録した後、加熱処理することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
- 前記ポリビニルアルコールの重合度が300以上、1500以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット画像形成方法。
- RC(レジンコーテッド)支持体上にインク吸収層を有し、且つ表層に重合度300〜1500のポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有するインクジェット記録媒体に画像を記録した後、加熱処理することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
- 前記ポリビニルアルコールの重合度が1500より大きく4500以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記インクジェット記録媒体に前記画像を記録した後、乾燥し、加熱処理することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記インクジェット記録媒体に前記画像を記録した後、前記インクジェット記録媒体を加熱処理および5〜20MPaの圧力で加圧処理することを特徴とする請求項4または5に記載のインクジェット画像形成方法。
- RC支持体上にインク吸収層を有し、且つ表層に重合度が1500より大きく4500以下のポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有するインクジェット記録媒体に画像を記録した後、乾燥し、加熱処理することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
- RC支持体上にインク吸収層を有し、且つ表層に重合度が1500より大きく4500以下のポリビニルアルコールを乳化重合用保護コロイドとして用いて合成された水性エマルジョンである熱可塑性樹脂粒子を含有するインクジェット記録媒体に画像を記録した後、加熱、加圧処理することを特徴とするインクジェット画像形成方法であって、加圧が5〜20MPaであることを特徴とするインクジェット画像形成方法。
- 前記ポリビニルアルコールのケン化度が90モル%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記熱可塑性樹脂粒子のガラス転移点が40〜100℃であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記の可塑性樹脂粒子の平均粒子径が300nm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記可塑性樹脂粒子の固形分付量が1〜10g/m2であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記画像形成が顔料インクを用いて行われることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 表層に更に無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記インクジェット記録媒体が一つの前記インク吸収層を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
- 前記インクジェット記録媒体が二つの前記インク吸収層を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
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